(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械の制御装置、および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240614BHJP
E02F 3/76 20060101ALI20240614BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
E02F9/22 Q
E02F3/76 A
B60T7/12 A
(21)【出願番号】P 2020204927
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡宗 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】北村 司
(72)【発明者】
【氏名】興津 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】上前 健志
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-299102(JP,A)
【文献】特開平08-142819(JP,A)
【文献】特開平09-142270(JP,A)
【文献】特開2001-341624(JP,A)
【文献】特開2003-184808(JP,A)
【文献】特開2004-036304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 3/76
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する車体と、
前記車体に支持された作業機と、
前記車体の走行速度を増加するために操作されるアクセル操作装置と、
前記車体の走行速度を減少するために操作されるブレーキ操作装置と、
コントローラとを備え、
走行しながら作業を行う、作業機械であって、
前記コントローラは、
前記ブレーキ操作装置の操作により前記車体の走行速度が閾値以下となったときに制動力を保持して前記車体の走行停止状態を維持し、前記アクセル操作装置の操作により制動力の保持を解除する、自動ブレーキ保持制御を実行し、
走行している前記作業機械が前記作業機による作業中であるか否かを判別し、作業中の場合には前記自動ブレーキ保持制御を無効とする、
作業機械。
【請求項2】
前記作業機の動作を制限する作業機ロック装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記作業機ロック装置の操作状態に基づいて作業中であるか否かを判別する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
オペレータが前記作業機を操作するための作業機操作部をさらに備え、
前記コントローラは、前記作業機操作部の操作状態に基づいて作業中であるか否かを判別する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
オペレータが前記車体の走行方向を操作するためのステアリング操作部をさらに備え、
前記コントローラは、前記ステアリング操作部の操作状態に基づいて作業中であるか否かを判別する、請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記自動ブレーキ保持制御を有効にする設定を選択するために操作されるスイッチをさらに備え、
前記コントローラは、前記スイッチの操作により前記自動ブレーキ保持制御を有効にする設定がされている状態で、前記作業機による作業中でないと判別した場合に、前記自動ブレーキ保持制御を実行する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
走行する車体と、
前記車体に支持された作業機と、
前記車体の走行速度を増加するために操作されるアクセル操作装置と、
前記車体の走行速度を減少するために操作されるブレーキ操作装置と、
を備える
、走行しながら作業を行う作業機械の制御装置であって、
前記ブレーキ操作装置の操作により前記車体の走行速度が閾値以下となったときに制動力を保持して前記車体の走行停止状態を維持し、前記アクセル操作装置の操作により制動力の保持を解除する、自動ブレーキ保持制御を実行し、
走行している前記作業機械が前記作業機による作業中であるか否かを判別し、作業中の場合には前記自動ブレーキ保持制御を無効とする、作業機械の制御装置。
【請求項7】
走行する車体と、
前記車体に支持された作業機と、
前記車体の走行速度を増加するために操作されるアクセル操作装置と、
前記車体の走行速度を減少するために操作されるブレーキ操作装置と、
を備える
、走行しながら作業を行う作業機械の制御方法であって、
前記ブレーキ操作装置の操作により前記車体の走行速度が閾値以下となったときに制動力を保持して前記車体の走行停止状態を維持し、前記アクセル操作装置の操作により制動力の保持を解除する、自動ブレーキ保持制御を実行することと、
走行している前記作業機械が前記作業機による作業中であるか否かを判別し、作業中の場合には前記自動ブレーキ保持制御を無効とすることと、を備える、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、作業機械の制御装置、および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000-33859号公報(特許文献1)には、ドライバーによって操作可能なスイッチ手段と、車両のブレーキ状態を保持するブレーキ保持手段とを備え、車輪が停止しかつスイッチ手段の操作状態がONであるときにブレーキ保持手段の作動を許可し、スイッチ手段の操作状態がOFFであるときにブレーキ保持手段の作動を禁止する、停車ブレーキ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行しながら作業を行うモータグレーダなどの作業機械では、作業に影響を及ぼすことなく、自動ブレーキ保持機能を用いることが好ましい。
【0005】
本開示では、作業に支障をきたすことなく自動ブレーキ保持機能を実現できる、作業機械、作業機械の制御装置、および作業機械の制御方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、作業機械に自動ブレーキ保持機能を適用するにあたり、乗用車と同様の機能を単に取り入れただけでは、微速で走行しながらの作業の制約要因になることを見出した。本発明者らは、自動ブレーキ保持機能を備える作業機械であっても作業を円滑に実行できるようさらに検討を進め、以下の構成を案出した。
【0007】
すなわち、本開示に従うと、走行する車体と、車体に支持された作業機と、車体の走行速度を増加するために操作されるアクセル操作装置と、車体の走行速度を減少するために操作されるブレーキ操作装置と、コントローラとを備える、作業機械が提案される。コントローラは、ブレーキ操作装置の操作により車体の走行速度が閾値以下となったときに制動力を保持して車体の走行停止状態を維持し、アクセル操作装置の操作により制動力の保持を解除する、自動ブレーキ保持制御を実行する。コントローラは、作業機による作業中であるか否かを判別し、作業中の場合には自動ブレーキ保持制御を無効とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に従えば、作業に支障をきたすことなく、作業機械の自動ブレーキ保持機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に基づくモータグレーダの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるモータグレーダの側面図である。
【
図3】実施形態に基づくモータグレーダのキャブ内部の構成を示す平面図である。
【
図4】実施形態に基づくモータグレーダにおける走行輪の駆動制御に関する構成を概略的に示す図である。
【
図5】モータグレーダのシステム構成を示すブロック図である。
【
図6】自動ブレーキ保持機能のONおよびOFFを切り替える制御ロジックの一例を示す模式図である。
【
図7】自動ブレーキ保持制御OFFの状態における処理の流れを示すフロー図である。
【
図8】自動ブレーキ保持制御READYの状態における処理の流れを示すフロー図である。
【
図9】自動ブレーキ保持制御ONの状態における処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、実施形態に基づくモータグレーダ1の構成を概略的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示されるモータグレーダ1の側面図である。
【0012】
図1および
図2に示されるように、実施形態に基づくモータグレーダ1は、走行輪である前輪11と、走行輪である後輪12と、車体フレーム2と、キャブ3と、作業機4とを主に備えている。前輪11は、左右の片側において一輪ずつを有している。後輪12は、左右の片側において二輪ずつを有している。図においては、片側一輪ずつの2つの前輪11と片側二輪ずつの4つの後輪12とからなる全6輪の走行輪が示されているが、前輪および後輪の数および配置はこれに限られない。
【0013】
モータグレーダ1は、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品を備えている。作業機4は、ブレード42を含んでいる。モータグレーダ1は、ブレード42で整地作業、除雪作業、軽切削、材料混合などの作業を行なうことができる。
【0014】
以下の図の説明において、モータグレーダ1が直進走行する方向を、モータグレーダ1の前後方向という。モータグレーダ1の前後方向において、作業機4に対して前輪11が配置されている側を、前方向とする。モータグレーダ1の前後方向において、作業機4に対して後輪12が配置されている側を、後方向とする。モータグレーダ1の左右方向、または側方とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。モータグレーダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0015】
図においては、前後方向を図中矢印X、左右方向を図中矢印Y、上下方向を図中矢印Zで示している。
【0016】
図1,2に示される車体フレーム2は、前後方向(
図2においては図中の左右方向)に延びている。車体フレーム2は、リアフレーム21と、フロントフレーム22とを含んでいる。リアフレーム21は、フロントフレーム22の後方に配置されている。リアフレーム21は、外装カバー25と、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品とを支持している。外装カバー25はエンジン室6を覆っている。リアフレーム21には、上記のたとえば片側二輪の後輪12の各々が取り付けられている。4つの後輪12の各々は、エンジンからの駆動力によって回転駆動可能である。
【0017】
フロントフレーム22は、リアフレーム21の前方に配置されている。フロントフレーム22には、上記のたとえば片側一輪の前輪11が回転可能に取り付けられている。フロントフレーム22の後端部が、キャブ3の下方に配置され上下方向に延びる図示しない連結軸により、リアフレーム21の前端部と連結されている。リアフレーム21は、フロントフレーム22に回動可能に連結されている。
【0018】
モータグレーダ1は、リアフレーム21に対してフロントフレーム22を両方向に回動させるアーティキュレート動作が可能である。フロントフレーム22とリアフレーム21との間に、アーティキュレートシリンダ54が連結されている。リアフレーム21に対するフロントフレーム22の回動は、キャブ3からの操作により、アーティキュレートシリンダ54を伸縮させることで行なわれる。
【0019】
フロントフレーム22をリアフレーム21に対して回動させる(アーティキュレートさせる)ことで、モータグレーダ1の旋回時の旋回半径をより小さくすること、および、オフセット走行による溝掘や法切作業が可能である。オフセット走行とは、フロントフレーム22をリアフレーム21に対して回動させる方向と、前輪11をフロントフレーム22に対して旋回させる方向とをそれぞれ逆方向とすることにより、モータグレーダ1を直進走行させることをいう。
【0020】
車体フレーム2の前端には、カウンタウェイト51が取り付けられている。カウンタウェイト51は、フロントフレーム22に取り付けられるアタッチメントの一例である。カウンタウェイト51は、前輪11に負荷される下向きの荷重を増加して、操舵を可能にするとともにブレード42の押付荷重を増加するために、フロントフレーム22に装着されている。
【0021】
キャブ3は、フロントフレーム22に搭載されている。キャブ3は、オペレータが搭乗するための室内空間を有しており、フロントフレーム22の後端に配置されている。キャブ3は、リアフレーム21に搭載されていてもよい。
【0022】
キャブ3の内部には、キャブ3に搭乗したオペレータが着座するための運転席31が配置されている。運転席31は、前後方向および左右方向においてキャブ3の略中央に配置されている。キャブ3は、運転席31を上方から覆う屋根部3Rと、屋根部3Rを支持する複数のピラーとを有している。屋根部3Rは、運転席31の上方に配置されている。各々のピラーは、キャブ3の床部と屋根部3Rとに連結されている。
【0023】
キャブ3は、ISO3471として規格化されているROPS(転倒時保護構造)およびISO3449として規格化されているFOPS(落下物保護構造)に適合した、高剛性な構造を有している。モータグレーダ1の転倒時またはキャブ3への落下物の飛来時にもキャブ3に搭乗しているオペレータが保護されるように、キャブ3の変形が効果的に抑制されている。
【0024】
作業機4は、ドローバ40と、旋回サークル41と、ブレード42と、旋回モータ49と、各種の油圧シリンダとを主に有している。
【0025】
ドローバ40は、フロントフレーム22の下方に配置されている。ドローバ40の前端部は、玉軸部を用いて、フロントフレーム22の先端部に揺動可能に連結されている。ドローバ40の後端部は、一対のリフトシリンダ44,45によってフロントフレーム22に支持されている。一対のリフトシリンダ44,45の同期した伸縮によって、ドローバ40の後端部がフロントフレーム22に対して上下に昇降可能である。リフトシリンダ44,45の異なった伸縮によって、ドローバ40は車両進行方向に沿った軸を中心に上下に揺動可能である。
【0026】
フロントフレーム22とドローバ40の側端部とには、ドローバシフトシリンダ46が取り付けられている。このドローバシフトシリンダ46の伸縮によって、ドローバ40の後端部が、フロントフレーム22に対して左右に移動可能である。
【0027】
旋回サークル41は、フロントフレーム22の下方に配置されている。旋回サークル41は、ドローバ40の下方に配置されている。旋回サークル41は、ドローバ40の後端部に支持されている。旋回モータ49は、たとえば油圧モータである。旋回サークル41は、旋回モータ49によって、ドローバ40に対し車両上方から見て時計方向または反時計方向に旋回駆動可能である。旋回サークル41は、ドローバ40に対して相対回転可能である。旋回サークル41の旋回駆動によって、平面視におけるフロントフレーム22に対するブレード42の傾斜角度が調整される。
【0028】
旋回サークル41の旋回中心に、スイベルジョイント43が配置されている。スイベルジョイント43を介して、ドローバ40から旋回サークル41に油圧が送られている。
【0029】
ブレード42は、旋回サークル41に支持されている。ブレード42は、旋回サークル41およびドローバ40を介して、フロントフレーム22に支持されている。
【0030】
図示しないブレードシフトシリンダが、旋回サークル41およびブレード42に取り付けられており、ブレード42の長手方向に沿って配置されている。このブレードシフトシリンダによって、ブレード42は旋回サークル41に対して、ブレード42の長手方向に移動可能である。
【0031】
チルトシリンダ48は、旋回サークル41およびブレード42に取り付けられている。このチルトシリンダ48を伸縮させることによって、ブレード42は旋回サークル41に対してブレード42の長手方向に延びる軸を中心に揺動して、上下方向に向きを変更することができる。チルトシリンダ48は、車両進行方向に対するブレード42の傾斜角度を変更することができる。
【0032】
以上のように、ブレード42は、ドローバ40と旋回サークル41とを介して、車両に対する上下の昇降、車両進行方向に沿った軸を中心とする揺動、前後方向に対する傾斜角度の変更、ブレード42の長手方向の移動、および、ブレード42の長手方向に延びる軸を中心とする揺動を行なうことが可能に構成されている。
【0033】
図3は、実施形態に基づくモータグレーダ1のキャブ3内部の構成を示す平面図である。モータグレーダ1は、キャブ3内に、
図2にも示される運転席31およびステアリングホイール34に加えて、右側コンソール32Rと、左側コンソール32Lと、操作レバーと、右側アームレスト33Rと、左側アームレスト33Lと、アクセルペダル36と、ブレーキペダル37とを主に有している。
【0034】
オペレータは、運転席31に着座し、前方を向いてモータグレーダ1を操作する。キャブ3の運転席31の前方に、オペレータがモータグレーダ1の走行方向を操作するためのステアリングホイール34が配置されている。ステアリングホイール34は、ステアリングコンソール32Fに取り付けられており、ステアリングコンソール32Fによって支持されている。オペレータがステアリングホイール34を回転操作することにより前輪11の向きが変更され、モータグレーダ1は進行方向を変更することが可能である。
【0035】
運転席31の側方には、右側コンソール32Rおよび左側コンソール32Lの各々が配置されている。具体的には、運転席31の右側には右側コンソール32Rが配置されており、運転席31の左側には左側コンソール32Lが配置されている。
【0036】
右側コンソール32Rおよび左側コンソール32Lの各々の上部には、操作レバーが支持されている。操作レバーは、電気式のレバーである。右側コンソール32Rの上部に支持された操作レバーは、少なくとも1つの作業機レバー35Rを有している。左側コンソール32Lの上部に支持された操作レバーは、少なくとも1つの作業機レバー35Lと、ステアリング操作レバー5とを有している。ステアリング操作レバー5は、作業機レバー35Lの後方に配置されている。
【0037】
作業機レバー35L,35Rの各々は、たとえば前後に動かすことによって操作することができる。ステアリング操作レバー5は、たとえばジョイスティックレバーである。ステアリング操作レバー5の操作方向は、作業機レバー35L,35Rの各々の操作方向と交差する方向(たとえば直交する方向)である。ステアリング操作レバー5は、たとえば左右に動かすことによって操作することができる。
【0038】
作業機レバー35L,35Rは、オペレータが作業機4を操作するための、実施形態の作業機操作部に相当する。ステアリング操作レバー5は、ステアリングホイール34と同様に、オペレータがモータグレーダ1の走行方向を操作するために用いられる。ステアリングホイール34とステアリング操作レバー5とは、実施形態のステアリング操作部を構成する。なお、ステアリング操作レバー5は、主に作業機4を操作しながらの操舵、すなわち作業中の操舵のために用いられ、ステアリングホイール34は、主に非作業中(回送中)の操舵のために用いられる。
【0039】
運転席31の右側に、右側アームレスト33Rが配置されている。右側アームレスト33Rは、運転席31に着座したオペレータが右肘を載せるための部分である。運転席31の左側に、左側アームレスト33Lが配置されている。左側アームレスト33Lは、運転席31に着座したオペレータが左肘を載せるための部分である。右側アームレスト33Rおよび左側アームレスト33Lの各々は、運転席31の座部および背もたれ部の双方の側方に位置している。
【0040】
右側アームレスト33Rは、右側コンソール32R上に配置されており、右側コンソール32Rに支持されている。左側アームレスト33Lは、左側コンソール32L上に配置されており、左側コンソール32Lに支持されている。
【0041】
アクセルペダル36、ブレーキペダル37およびフットレスト38は、キャブ3の床面30に配置されている。
図3に示されるように、アクセルペダル36とブレーキペダル37とは、ステアリングコンソール32Fの右側に配置されている。フットレスト38は、ステアリングコンソール32Fの左側に配置されている。
【0042】
アクセルペダル36は、エンジンの回転数を所望の回転数に設定するためにオペレータが右足で踏む操作具である。アクセルペダル36は、モータグレーダ1の走行速度を増加するために操作される実施形態のアクセル操作装置に相当する。ブレーキペダル37は、後輪12を制動するためにオペレータが右足で踏む操作具である。ブレーキペダル37は、モータグレーダ1の走行速度を減少させるために操作される実施形態のブレーキ操作装置に相当する。フットレスト38は、オペレータが左足を載せ置くための台である。
【0043】
キャブ3の内壁に、作業機ロックスイッチ61と、ブレーキ保持スイッチ62とが取り付けられている。典型的には、作業機ロックスイッチ61とブレーキ保持スイッチ62とは、前後方向におけるキャブ3の中央部に配置された左右一対のピラー(いわゆるBピラー)のうち、右側のピラーに取り付けられている。作業機ロックスイッチ61とブレーキ保持スイッチ62とは、たとえばステアリング操作レバー5をロックするためのスイッチなどの他の種類のスイッチと一体に、スイッチボックスに設けられてもよく、そのスイッチボックスが、右側のBピラーに取り付けられてもよい。
【0044】
作業機ロックスイッチ61は、作業機4の動作を制限するためにオペレータによって操作されるスイッチである。作業機ロックスイッチ61がONにされると、作業機4の動作に用いられる油圧アクチュエータに供給される油圧の制御が制限される。これにより、作業機レバー35L,35Rが操作されても油圧アクチュエータに供給される油圧が変更されなくなり、作業機4の動作が制限される。作業機ロックスイッチ61は、実施形態の作業機ロック装置に相当する。
【0045】
実施形態のモータグレーダ1は、オペレータによるブレーキペダル37の操作により走行速度が閾値以下となったときに、オペレータがブレーキペダル37から足を離しても制動力を保持して走行停止状態を維持する、自動ブレーキ保持機能を有している。オペレータがアクセルペダル36を操作するまでの間、制動力が保持される。オペレータによるアクセルペダル36の操作により、制動力の保持が解除される。
【0046】
ブレーキ保持スイッチ62は、自動ブレーキ保持機能を有効にするか無効にするかを選択するためにオペレータによって操作されるスイッチである。ブレーキ保持スイッチ62がONにされると、自動ブレーキ保持機能が有効にされる。ブレーキ保持スイッチ62がOFFにされると、自動ブレーキ保持機能が無効にされる。
【0047】
ブレーキ保持スイッチ62の配置は、上述した右側のBピラーのほか、右側コンソール32Rであってもよく、ステアリングホイール34付近であってもよい。ブレーキ保持スイッチ62をBピラーに配置すれば、運転席31に着座したオペレータがブレーキ保持スイッチ62を操作するには手を伸ばす必要があるので、ブレーキ保持スイッチ62の誤操作が抑制される点で好ましい。
【0048】
図4は、実施形態に基づくモータグレーダ1における走行輪の駆動制御に関する構成を概略的に示す図である。実施形態のモータグレーダ1は、エンジン71の駆動力が後輪12に伝達され後輪12を駆動輪とする、後輪駆動車である。エンジン71は、リアフレーム21に支持されている。オペレータによるアクセルペダル36の操作に従ってエンジン71への燃料の供給量が制御されることにより、エンジン71の回転数が制御される。エンジン71の回転数は、エンジン回転数センサ79によって検出される。
【0049】
図4に示されるように、エンジン71からの駆動力を後輪12に伝達するための動力伝達装置は、トルクコンバータ72と、変速機73と、終減速装置74と、タンデム装置75L,75Rとを有している。
【0050】
トルクコンバータ72は、エンジン71の出力側に接続されている。トルクコンバータ72は、オイルを媒体としてエンジン71からの駆動力を伝達する流体クラッチである。トルクコンバータ72には、トルクコンバータ72の入力側と出力側とを直結するロックアップクラッチが設けられていてもよい。オペレータの選択によって、流体クラッチとロックアップクラッチとのいずれを介して動力を伝達するかが切り替えられてもよい。
【0051】
変速機73は、複数の速度段に対応した複数のクラッチを有している。各クラッチの連結状態および非連結状態が切り替えられることにより、変速機73は減速比を複数段階に切り替えることができる。変速機73の出力軸には速度センサ76Vが設けられている。速度センサ76Vは、変速機73の出力軸の回転数を検出する。
【0052】
変速機73の出力軸に、終減速装置74が接続されている。変速機73から出力された駆動力は、終減速装置74を介して、左右のタンデム装置75L,75Rに伝達される。左のタンデム装置75Lには、一対の左後輪12Lが接続されている。右のタンデム装置75Rには、一対の右後輪12Rが接続されている。エンジン71は、トルクコンバータ72、変速機73、終減速装置74およびタンデム装置75L,75Rを介して、左後輪12Lと右後輪12Rとを回転駆動する。
【0053】
回転速度センサ76Lは、左後輪12Lの回転速度を検出する。回転速度センサ76Lは、たとえばタンデム装置75Lにおける回転軸の回転速度を測定することにより、左後輪12Lの回転速度を測定する。回転速度センサ76Rは、右後輪12Rの回転速度を検出する。回転速度センサ76Rは、たとえばタンデム装置75Rにおける回転軸の回転速度を測定することにより、右後輪12Rの回転速度を測定する。
【0054】
変速機73の出力軸に、パーキングブレーキ78が設けられている。パーキングブレーキは、モータグレーダ1の走行停止状態を維持するために用いられるブレーキである。パーキングブレーキ78は、たとえばネガティブ式のブレーキである。キャブ3内に配置されたパーキングブレーキスイッチをオペレータが操作することにより、パーキングブレーキ78の制動状態と非制動状態とが切り替えられる。パーキングブレーキスイッチは、右側コンソール32Rに設けられていてもよい。パーキングブレーキスイッチは、作業機レバー35Rの後方に配置されていてもよい。
【0055】
終減速装置74とタンデム装置75L,75Rとの間に、オペレータによるブレーキペダル37の操作により駆動するサービスブレーキ77が設けられている。サービスブレーキ77は、モータグレーダ1の走行中に走行速度を減少させるために用いられるブレーキである。サービスブレーキ77の制動力は、ブレーキペダル37の操作量に応じて調整可能である。サービスブレーキ77は、たとえばポジティブ式のブレーキである。
【0056】
図5は、モータグレーダ1のシステム構成を示すブロック図である。実施形態のモータグレーダ1は、コントローラ80を備えている。コントローラ80は、モータグレーダ1全体の動作を制御するコントローラであり、CPU(Central Processing Unit)、不揮発性メモリ、タイマなどにより構成されている。
【0057】
ステアリング操作部を構成するステアリング操作レバー5およびステアリングホイール34と、作業機操作部に相当する作業機レバー35L,35Rと、アクセルペダル36と、ブレーキペダル37とは、キャブ3内に配置されており、キャブ3に搭乗したオペレータによって操作される。ステアリング操作レバー5、ステアリングホイール34、作業機レバー35L,35R、アクセルペダル36およびブレーキペダル37の各々の操作方向および操作量を検出するセンサが設けられている。センサにより検出された検出信号が、コントローラ80に入力される。
【0058】
作業機ロックスイッチ61、ブレーキ保持スイッチ62およびパーキングブレーキスイッチ63は、キャブ3内に配置されており、キャブ3に搭乗したオペレータによって操作される。作業機ロックスイッチ61、ブレーキ保持スイッチ62およびパーキングブレーキスイッチ63の各々の操作状態を検出するセンサが設けられている。センサにより検出された検出信号が、コントローラ80に入力される。
【0059】
速度センサ76Vは、変速機73の出力軸の回転数を検出することにより、モータグレーダ1の移動時(走行時)の移動速度(モータグレーダ1の走行速度)を検出する。速度センサ76Vは、たとえばGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して、モータグレーダ1の移動速度を検出してもよい。回転速度センサ76L,76Rは、左後輪12Lおよび右後輪12Rの回転速度をそれぞれ検出する。エンジン回転数センサ79は、エンジン71の回転数を検出する。速度センサ76V、回転速度センサ76L,76Rおよびエンジン回転数センサ79により検出された検出信号が、コントローラ80に入力される。
【0060】
コントローラ80は、ブレーキ制御部82を有している。ブレーキ制御部82は、自動ブレーキ保持制御を実行する。メモリには、モータグレーダ1の走行速度に係る閾値が記憶されている。ブレーキ制御部82は、ブレーキ保持スイッチ62が操作されて自動ブレーキ保持機能を有効にする設定がされている状態で、オペレータによるブレーキペダル37の操作によりモータグレーダ1の走行速度が閾値以下となったときに、制動力を保持してモータグレーダ1の走行停止状態を維持する。ブレーキ制御部82は、モータグレーダ1の走行停止状態を維持しているときにオペレータによりアクセルペダル36が操作されると、制動力の保持を解除する。
【0061】
コントローラ80は、無効化部84を有している。無効化部84は、モータグレーダ1が作業機4による作業中であるか否かを判別する。無効化部84は、モータグレーダ1が作業機4による作業中の場合には、自動ブレーキ保持制御を無効とする。
【0062】
コントローラ80は、オペレータによる作業機操作部(作業機レバー35L,35R)の操作に従って、各種の油圧アクチュエータ、具体的にはリフトシリンダ44,45、ドローバシフトシリンダ46、チルトシリンダ48および旋回モータ49を動作させる制御信号を出力する。油圧アクチュエータが制御されることにより、作業機4の動作が制御される。
【0063】
より詳細には、モータグレーダ1は、エンジン71の駆動力を受けて駆動される図示しない油圧ポンプと、図示しないメインバルブとを備え、油圧ポンプから吐出された作動油がメインバルブを介して各種の油圧アクチュエータに供給されるように構成されている。メインバルブは、ロッド状のスプールを軸方向に動かして油圧アクチュエータへの作動油の供給量を調整するスプール方式の弁である。コントローラ80は、メインバルブのスプールを移動させる制御信号を、メインバルブに送信する。これにより、各種の油圧アクチュエータの動作が制御される。
【0064】
コントローラ80はまた、オペレータによる作業機ロックスイッチ61の操作に従って、作業機4をロック状態とする制御信号を出力する。コントローラ80は、メインバルブのスプールを停止させて油圧アクチュエータへの作動油の供給量が変動しないように制御することで、オペレータが作業機レバー35L,35Rを操作しても作業機4が動作しないロック状態とする。
【0065】
コントローラ80は、オペレータによるステアリング操作部およびアクセルペダル36の操作に従った制御信号を、エンジン71および変速機73に送信する。エンジン71および変速機73が制御されることにより、モータグレーダ1の走行動作が制御される。
【0066】
コントローラ80は、オペレータによるパーキングブレーキスイッチ63の操作に従った制御信号を、パーキングブレーキ78に送信する。パーキングブレーキ78が制御されることにより、モータグレーダ1が走行停止状態に維持され、またはモータグレーダ1が走行可能な状態となる。
【0067】
コントローラ80は、オペレータによるブレーキペダル37の操作に従った制御信号を、サービスブレーキ77に送信する。サービスブレーキ77が作動することにより、モータグレーダ1の走行速度が減少することになる。
【0068】
コントローラ80は、通知部90に制御信号を送信する。通知部90は、モータグレーダ1の運転状態に関する情報を、オペレータに通知する。通知部90はたとえば、作業機ロックスイッチ61の操作により作業機4がロックされているときに点灯し作業機4のロックが解除されると消灯する、作業機ロック表示灯を含んでもよい。通知部90はたとえば、ブレーキ保持スイッチ62の操作により自動ブレーキ保持機能が有効であるときに点灯し自動ブレーキ保持機能が無効であるときに消灯する、自動ブレーキ保持表示灯を含んでもよい。
【0069】
作業機ロック表示灯および自動ブレーキ保持表示灯は、各々、作業機ロックスイッチ61およびブレーキ保持スイッチ62に設けられてもよい。または、通知部90は、モニタを含んでもよく、作業機ロック表示灯および自動ブレーキ保持表示灯はモニタに表示されてもよい。作業機ロック表示灯および自動ブレーキ保持表示灯が点灯するときに、モニタにポップアップ表示されてもよい。
【0070】
モニタには、モータグレーダ1の走行速度、燃料残量、作動油温度などの車体情報が表示されてもよい。車体後方の視認用のリアビューカメラなどの撮像装置をモータグレーダ1が備えている場合に、撮像装置による撮像画像がモニタに表示されてもよい。
【0071】
図6は、自動ブレーキ保持機能のONおよびOFFを切り替える制御ロジックの一例を示す模式図である。
図7は、自動ブレーキ保持制御OFFの状態における処理の流れを示すフロー図である。
【0072】
エンジン71が始動されると(ステップS11)、自動ブレーキ保持制御OFFの状態とされる(ステップS12)。自動ブレーキ保持制御OFFの状態において、コントローラ80は、第1条件が成立したか否かを判定する。
【0073】
第1条件は、ブレーキ保持スイッチ62がONとされていることと、作業機4による作業中でないことと、の全てが成立することである。第1条件が成立することは、自動ブレーキ保持機能を有効にしたい、かつ、作業機4による作業はしない、というオペレータの意図が示されることであると言える。ブレーキ保持スイッチ62がONであり(ステップS13においてYES)、かつ、作業機4による作業中でなければ(ステップS14においてNO)、第1条件が成立し、自動ブレーキ保持制御OFFの状態から、自動ブレーキ保持制御READYの状態へと変更される(ステップS15)。
【0074】
ステップS14の判断において、コントローラ80は、たとえば、作業機ロックスイッチ61の操作状態に基づいて、作業機4による作業中であるか否かを判別してもよい。具体的には、モータグレーダ1の回送走行中には作業機4がロックされるので、作業機ロックスイッチ61がONとされ作業機4がロック状態であるならば、作業中ではなく走行中であると判別され、作業機ロックスイッチ61がOFFとされ作業機4のロックが解除されているならば、作業中であると判別されてもよい。
【0075】
ステップS14の判断において、コントローラ80は、たとえば、作業機操作部(作業機レバー35L,35R)の操作状態に基づいて、作業機4による作業中であるか否かを判別してもよい。作業中にはオペレータが作業機レバー35L,35Rを操作するので、いずれか1つまたは複数の作業機レバー35L,35Rを操作していることを示す電気信号がコントローラ80に入力されていれば、作業中であると判別されてもよい。作業機レバー35L,35Rにオペレータが触れていることを検出するタッチセンサを設け、タッチセンサによりオペレータが作業機レバー35L,35Rに触れていることが検出されれば、作業中であると判別されてもよい。
【0076】
ステップS14の判断において、コントローラ80は、作業機レバー35L,35Rの操作状態に加えて、ステアリング操作部の操作状態に基づいて作業機4による作業中であるか否かを判別してもよい。たとえば、一定時間(一例として60秒間)オペレータによる作業機レバー35L,35Rの操作がなく、かつ、その一定時間が経過した時点でステアリング操作部が操作されていることを示す電気信号がコントローラ80に入力されていれば、作業中でないと判別されてもよい。
【0077】
ブレーキ保持スイッチ62がOFFであるか(ステップS13においてNO)、または、作業機4による作業中であれば(ステップS14においてYES)、第1条件は不成立であり、ステップS13の判断に戻り、自動ブレーキ保持制御OFFの状態のままとされる。
【0078】
図8は、自動ブレーキ保持制御READYの状態における処理の流れを示すフロー図である。自動ブレーキ保持制御READYの状態とは、作業に関する条件と、ブレーキ保持スイッチ62に関する条件は成立したが、モータグレーダ1が走行を停止していないので、モータグレーダ1の走行停止状態を維持する制御を実行できていないものの、モータグレーダ1が走行を停止したならば直ちにモータグレーダ1の走行停止状態を維持する制御を実行できる状態、であると言える。自動ブレーキ保持制御READYの状態において、コントローラ80はまず、第2条件が成立したか否かを判定する。
【0079】
第2条件は、ブレーキ保持スイッチ62がOFFとされていることと、作業機4による作業中であることと、のいずれかが成立することである。第2条件が成立することは、オペレータのいずれかの操作によって、ブレーキ保持機能を解除したいというオペレータの意図が示されることであると言える。ブレーキ保持スイッチ62がOFFであるか(ステップS21においてYES)、または、作業機4による作業中であれば(ステップS22においてYES)、第2条件が成立し、自動ブレーキ保持制御READYの状態から、自動ブレーキ保持制御OFFの状態に移り(ステップS23)、自動ブレーキ保持制御は解除される。作業機4による作業中であると判別された場合には、自動ブレーキ保持制御が無効化される。
【0080】
ブレーキ保持スイッチ62がONであり(ステップS21においてNO)、かつ、作業機4による作業中でなければ(ステップS22においてNO)、第2条件は不成立であり、コントローラ80は続いて、第3条件が成立したか否かを判定する。
【0081】
第3条件は、モータグレーダ1の走行速度が所定の閾値(一例として1.0km/h)以下となり停車したと判断されることと、ブレーキペダル37の操作が所定時間(一例として3秒間)以上継続していることと、アクセルペダル36の操作量が所定の閾値(一例として0%)以下であることと、の全てが成立することである。第3条件が成立することは、モータグレーダ1の走行を停止させようとするオペレータの意図が示されることであると言える。走行速度の閾値は0km/hであってもよく、モータグレーダ1が完全停止したときにのみ自動ブレーキ保持制御ONとなってもよい。
【0082】
オペレータがブレーキペダル37を操作することで、走行速度が閾値以下になり(ステップS24においてYES)、ブレーキペダル37の操作時間が所定時間継続され(ステップS25においてYES)、かつ、アクセルペダル36の操作量が閾値以下であれば(ステップS26においてYES)、第3条件が成立し、自動ブレーキ保持制御READYの状態から、自動ブレーキ保持制御ONの状態へと変更される(ステップS27)。
【0083】
走行速度が閾値より大きいか(ステップS24においてNO)、ブレーキペダル37の操作時間が所定時間継続しないか(ステップS25においてNO)、または、アクセルペダル36の操作量が閾値より大きければ(ステップS26においてNO)、第3条件は不成立であり、ステップS21の判断に戻り、自動ブレーキ保持制御READYの状態のままとされる。
【0084】
自動ブレーキ保持制御ONの状態で、コントローラ80は、パーキングブレーキ78を制動状態にする、またはサービスブレーキ77を制動状態にすることで、制動力を保持してモータグレーダ1の走行停止状態を維持する。この際、コントローラ80は、燃費向上およびブレーキ保護のため、変速機73をニュートラルに変速してもよい。モニタに速度段設定が表示される場合には、自動ブレーキ保持制御に伴って変速機73の設定がニュートラルに変更されても、モニタの表示は変更せずに元の速度段設定の表示のままにしてもよい。オペレータがブレーキペダル37を操作することで点灯する制動灯を、ブレーキペダル37から足を離しても点灯したままとしてもよい。自動ブレーキ保持機能が有効であることを、モニタに表示するなどして、オペレータに通知してもよい。
【0085】
図9は、自動ブレーキ保持制御ONの状態における処理の流れを示すフロー図である。自動ブレーキ保持制御ONの状態において、コントローラ80はまず、第2条件が成立したか否かを判定する。
【0086】
ブレーキ保持スイッチ62がOFFであるか(ステップS31においてYES)、または、作業機4による作業中であれば(ステップS32においてYES)、第2条件が成立し、自動ブレーキ保持制御ONの状態から自動ブレーキ保持制御OFFの状態に移り、自動ブレーキ保持制御は解除されることになる。ブレーキ保持スイッチ62がONであり(ステップS31においてNO)、かつ、作業機4による作業中でなければ(ステップS32においてNO)、第2条件は不成立であり、コントローラ80は続いて、第4条件が成立したか否かを判定する。
【0087】
第4条件は、ブレーキ保持スイッチ62がONとされていることと、作業機4による作業中でないことと、アクセルペダル36の操作量が所定の閾値以上であることと、の全てが成立することである。第4条件が成立することは、自動ブレーキ保持機能は有効としたままでモータグレーダ1を走行させようとするオペレータの意図が示されることであると言える。なお、第4条件に含まれる3つの条件のうち、作業機4による作業中でないことと、ブレーキ保持スイッチ62がONとされていることとは、第1条件にも含まれる条件である。
【0088】
ブレーキ保持スイッチ62がONであり、かつ、作業機4による作業中でないことは、第2条件が不成立であることの判定において判断済みである。さらに、アクセルペダル36の操作量が閾値以上であれば(ステップS34においてYES)、第4条件が成立し、自動ブレーキ保持制御ONの状態から、自動ブレーキ保持制御READYの状態へと変更される(ステップS35)。つまり、オペレータがアクセルペダル36を操作することで、制動力の保持が解除され、モータグレーダ1は走行可能な状態となる。
【0089】
なお、ステップS27でコントローラ80が変速機73をニュートラルに変速していた場合には、第4条件が成立して自動ブレーキ保持制御READYの状態に移ったときに、コントローラ80は変速機73を元の速度段設定に復帰させる。
【0090】
アクセルペダル36の操作量が閾値より小さければ(ステップS34においてNO)、第4条件は不成立であり、ステップS31の判断に戻り、自動ブレーキ保持制御ONの状態のままとされる。
【0091】
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0092】
図5に示されるように、コントローラ80は、ブレーキ制御部82と、無効化部84とを有している。ブレーキ制御部82は、ブレーキペダル37の操作によりモータグレーダ1の走行速度が閾値以下となったときに制動力を保持してモータグレーダ1の走行停止状態を維持し、アクセルペダル36の操作により制動力の保持を解除する、自動ブレーキ保持制御を実行する。
図6~9に示されるように、無効化部84は、モータグレーダ1が作業機4による作業中であるか否かを判別し、作業中の場合には自動ブレーキ保持制御を無効とする。
【0093】
モータグレーダ1に自動ブレーキ保持制御を適用することにより、モータグレーダ1を操作するオペレータの疲労を軽減することができる。モータグレーダ1が作業中の場合には自動ブレーキ保持制御が無効にされるので、モータグレーダ1が微速で走行しながらの作業に支障をきたすことがない。したがって、モータグレーダ1の操作性を向上することができる。
【0094】
図3,5に示されるように、モータグレーダ1は、作業機4の動作を制限する作業機ロックスイッチ61をさらに備えている。コントローラ80は、作業機ロックスイッチ61の操作状態に基づいて、モータグレーダ1が作業機4による作業中であるか否かを判別してもよい。モータグレーダ1の回送走行中には作業機4がロックされるので、作業機ロックスイッチ61がONとされ作業機4がロック状態であるならば、作業中ではなく走行中であると判別され、作業機ロックスイッチ61がOFFとされ作業機4のロックが解除されているならば、作業中であると判別されてもよい。これにより、モータグレーダ1が作業機4による作業中であるか否かを精度よく判別することができる。
【0095】
図3,5に示されるように、モータグレーダ1は、オペレータが作業機4を操作するための作業機レバー35L,35Rをさらに備えている。コントローラ80は、作業機レバー35L,35Rの操作状態に基づいて、モータグレーダ1が作業機4による作業中であるか否かを判別してもよい。作業中にはオペレータが作業機レバー35L,35Rを操作するので、オペレータが作業機レバー35L,35Rを操作している、またはオペレータが作業機レバー35L,35Rに触れていることが検出されれば、作業中であると判別されてもよい。これにより、モータグレーダ1が作業機4による作業中であるか否かを精度よく判別することができる。
【0096】
図3,5に示されるように、モータグレーダ1は、オペレータがモータグレーダ1の走行方向を操作するためのステアリング操作部をさらに備えている。コントローラ80は、ステアリング操作部の操作状態に基づいて、モータグレーダ1が作業機4による作業中であるか否かを判別してもよい。たとえば、所定の期間内におけるステアリングホイール34の操作の頻度が、ステアリング操作レバー5の操作の頻度を大幅に下回ったときに作業中であると判別されてもよい。または、オペレータによる作業機レバー35L,35Rの操作がなく、かつ、ステアリングホイール34が操作されていることが検出されれば、作業中ではなく回送走行中であると判別されてもよい。これにより、モータグレーダ1が作業機4による作業中であるか否かを精度よく判別することができる。
【0097】
図3,5に示されるように、モータグレーダ1は、自動ブレーキ保持制御を有効にする設定を選択するために操作されるブレーキ保持スイッチ62をさらに備えている。
図9に示されるように、コントローラ80は、ブレーキ保持スイッチ62の操作により自動ブレーキ保持制御を有効にする設定がされている状態で、モータグレーダ1が作業機4による作業中であるか否かを判別し、作業中でないと判別した場合に、自動ブレーキ保持制御を実行する。これにより、モータグレーダ1の作業に影響を及ぼすことなく自動ブレーキ保持機能を用いることができる。
【0098】
上記の実施形態では、自動ブレーキ保持機能を有効にするか無効にするかを選択するためにオペレータによって操作されるブレーキ保持スイッチ62を備える例について説明した。ブレーキ保持スイッチ62に替えて、自動ブレーキ保持機能の有効と無効とを、タッチパネルであるモニタを操作して選択可能とするなど、他の任意の手段を適用してもよい。
【0099】
実施形態では、作業機レバー35L,35Rが電気式のレバーである例について説明した。オペレータが作業機4を操作するための操作レバーは、油圧式のレバーであってもよい。この場合、レバーの操作によって油圧が変動することを圧力センサで検出することで、レバーの操作状態を判断することができる。その判断の結果に基づいて、作業機4による作業中であるか否かを判別してもよい。
【0100】
実施形態では、エンジン71からの駆動力を後輪12に伝達するための動力伝達装置が機械式の変速機73を有する例について説明した。動力伝達装置は、エンジン71で油圧ポンプを駆動することにより圧油を発生させ、油圧ポンプから吐出した圧油によって油圧モータが駆動されることで回転力が再び発生する、HST(Hydraulic Static Transmission)を有してもよい。
【0101】
モータグレーダ1は、後輪駆動車に限られず、全輪駆動車であってもよい。この場合、エンジン71から後輪12への動力伝達装置は、機械式の変速機73を有してもよく、HSTを有してもよい。エンジン71から前輪11への動力伝達装置は、HSTを有してもよい。
【0102】
実施形態では、作業機械の一例としてモータグレーダ1を挙げているが、モータグレーダ1に限らず、ホイールローダなどの他の種類の走行しながら作業を行う作業機械にも適用可能である。さらに、エンジンで発電機を駆動するディーゼルエレクトリック車、二次電池式電気駆動車(BEV)、燃料電池駆動車(FCV)など他の駆動システムに、実施形態の思想を適用してもよい。
【0103】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
1 モータグレーダ、3 キャブ、4 作業機、5 ステアリング操作レバー、11 前輪、12 後輪、12L 左後輪、12R 右後輪、30 床面、31 運転席、32F,32L,32R コンソール、34 ステアリングホイール、35L,35R 作業機レバー、36 アクセルペダル、37 ブレーキペダル、40 ドローバ、41 旋回サークル、42 ブレード、44,45 リフトシリンダ、46 ドローバシフトシリンダ、48 チルトシリンダ、49 旋回モータ、54 アーティキュレートシリンダ、61 作業機ロックスイッチ、62 ブレーキ保持スイッチ、63 パーキングブレーキスイッチ、71 エンジン、72 トルクコンバータ、73 変速機、74 終減速装置、75L,75R タンデム装置、76L,76R 回転速度センサ、76V 速度センサ、77 サービスブレーキ、78 パーキングブレーキ、79 エンジン回転数センサ、80 コントローラ、82 ブレーキ制御部、84 無効化部、90 通知部。