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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】リフィル及びリフィルを備えた筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/02 20060101AFI20240614BHJP
   B43K 3/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B43K7/02
B43K3/00 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020213814
(22)【出願日】2020-12-23
(62)【分割の表示】P 2016244358の分割
【原出願日】2016-12-16
(65)【公開番号】P2021045978
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-01-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】万田 純裕
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳
【合議体】
【審判長】殿川 雅也
【審判官】藤本 義仁
【審判官】門 良成
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-65188(JP,A)
【文献】特開2005-74922(JP,A)
【文献】特開2010-274667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 7/02, 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部と、後端部と、前記先端部に設けられた筆記部と、前記後端部に装着されたリフィル栓とを具備する管状のリフィルであって、
前記リフィル栓の中心軸線方向の長さにおける変位可能量が1mm以上であると共に、圧縮力(N)変位可能量(mm)の変化率が9以上であり、
前記リフィル栓の後端面の中心軸線近傍に、横断面において非円形に画成された孔が形成され、前記リフィル栓が、径方向に肉厚な複数の厚肉部と、該厚肉部の間を周方向に連結し且つ該厚肉部よりも径方向に肉薄な薄肉部とを備えた弾性変形部を有し、前記厚肉部の内面と前記薄肉部との内面とによって、前記孔が画成されていることを特徴とするリフィル。
【請求項2】
前記リフィル栓が、当該リフィルに圧入される圧入部を有し、
前記圧入部の側面には通気溝が形成され、前記弾性変形部の側面には空気流通溝が形成され、
前記通気溝と前記空気流通溝とは、略一直線上の溝を形成することを特徴とする請求項1に記載のリフィル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するリフィル及びリフィルを軸筒内に収容した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管状のリフィルを軸筒内に収容した筆記具であるボールペンとして、様々なものが提供されている。このリフィルには、内部にインクが収容されている。したがって、筆記に伴い中のインクが減るので、その分だけ中に空気を導入する必要がある。そのため、このリフィルは、内部に加圧ガスを密閉したいわゆる加圧式ボールペンの場合を除き、何らかの手段で外部に向け開放した構造を有する必要がある。
【0003】
例えば、インクの粘度が低くて流動性の高いインクを使用する場合には、リフィルの後端部は閉鎖しつつ先端側に空気孔を設け、この空気孔とリフィルの内部とで、外部との気圧差を緩衝するいわゆるコレクターを介して空気の流通を図ることが行われている。一方、油性インクやいわゆるゲルインク等の粘度が比較的高くて流動性の低いインクを使用する場合には、リフィルの後端部に何ら栓のようなものを装着しないで開放させたままにすることが行われている。
【0004】
また、このようなリフィルは、軸筒内に収容されるに際し、内部で動いたりすると筆記先端が揺れるなどして筆記に悪影響を及ぼすため、軸筒の内部で固定される必要がある。その固定の方法としては、リフィルの先端側で固定する方法と、リフィルの後端側で固定する方法とがある。リフィルの後端側で軸筒に固定する方法として、リフィルの後端部に後軸内壁に当接する弾性変形部を設ける方法が公知である(例えば例えば特許文献1及び特許文献2)。
【0005】
特許文献1の弾性変形部は、リフィルの後端部に装着され且つその中心軸線に沿った空気孔を有するリフィル栓に設けられ、複数本の厚肉部と厚肉部の間を連結し且つ厚肉部より肉薄な薄肉部とを備え、軸筒後端部付近の内壁と当接するように構成されている。中心軸線に沿って設けられた空気孔及び厚肉部間の間隙から、空気の流通が可能となっている。また、リフィルを軸筒内に挿入する際に、この弾性変形部が軸筒内壁に押圧されることで、径方向内側に弾性変形する。この弾性変形に対する復元力によって、リフィルの後端部が軸筒内壁を押圧することで、リフィルの固定が実現されている。さらに、この弾性変形によって、リフィル製造時に生ずる軸方向の寸法ばらつきを吸収することも可能となっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の弾性変形部では、リフィルを軸筒内に挿入する際の径方向の弾性変形によって、中心軸線に沿って設けられた空気孔の形状が変化してしまう。その結果、特に、リフィルの軸方向の寸法が規定寸法より若干大きい場合には径方向の弾性変形がより大きくなり、リフィルの内部と外部との間の空気流通路を十分に確保できなくなる可能性がある。
【0007】
この問題を解決するため特許文献2には、先端部と、後端部と、先端部に設けられた筆記部と、後端部に装着されたリフィル栓とを具備する管状のリフィルであって、当該リフィルの内部及び外部間を連通する空気流通路を具備し、リフィル栓が、当該リフィルを軸筒内へ収容した際に該軸筒の後端部内壁に当接し、当該リフィルの外部から該空気流通路内へ続く開口部が後端部の側面部又はリフィル栓の側面部に設けられていることを特徴とするリフィルの発明が開示されている。特許文献2に記載の発明によれば、リフィルの内部及び外部間を連通する空気流通路内へ続く外部の開口部を、後端部の側面部又はリフィル栓の側面部に設けたことによって、リフィル栓の後端部の変形に拘わらず、リフィルの内部と外部との間の空気流通を確実にすることができるという効果を奏している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-74922号公報
【文献】特開2014-65188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の弾性変形部によれば、リフィル栓の後端面に形成され且つ弾性変形を可能にするための遊びの空間である孔が、円形に画成されていることによって、径方向における全方位からの加重に対して強固である。そのため、リフィルの固定を実現する弾性変形部において十分な変形量を得ることができない場合がある。したがって、後端部にリフィル栓を装着したリフィルを先軸に収容し、次いで、先軸の後端部に後軸を取り付ける等の組み立ての際に、大きな力を必要とする場合がある。
【0010】
本発明は、一態様において、リフィルの内部と外部との間の空気流通路を確保しつつ、比較的容易に変形することで組み立ての際に強い力を必要としないリフィル及びリフィルを備えた筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、先端部と、後端部と、前記先端部に設けられた筆記部と、前記後端部に装着されたリフィル栓とを具備する管状のリフィルであって、前記リフィル栓の中心軸線方向の長さにおける変位可能量が1mm以上であると共に、圧縮力(N)に対する変位可能量(mm)の変化率が9以上であることを特徴とするリフィルが提供される。なお、「前」とは筆記部側を示し、他端側を「後」という。
【0012】
また、別の態様によれば、前記リフィル栓は、当該リフィルの内部及び外部間を連通する空気流通路を具備し、当該リフィルの外部から該空気流通路内へ続く開口部が、前記後端部の側面部又は前記リフィル栓の側面部に設けられ、前記リフィル栓の後端面の中心軸線近傍に、横断面において非円形に画成された孔が形成されていることを特徴とするリフィルが提供される。
【0013】
また、前記非円形は、中心軸線に向かう凹部を有することが好ましい。
【0014】
また、前記リフィル栓が、径方向に肉厚な複数の厚肉部と、該厚肉部の間を周方向に連結し且つ該厚肉部よりも径方向に肉薄な薄肉部とを備えた弾性変形部を有し、前記厚肉部の内面と前記薄肉部との内面とによって、前記孔が画成されることを特徴とするリフィルが提供される。なお、厚肉部の最も薄い部分の肉厚(t1)は、薄肉部の肉厚(t2)の2倍~10倍の範囲内であることが好ましく、上記凹部を画成する薄肉部の曲率半径(R)は、孔の内接円の直径(φ)より小さいことが好ましい。
【0015】
また、前記リフィル栓の前端部の外周面には、テーパー面が形成されていることが好ましい。
【0016】
また、別の態様によれば、軸筒と、該軸筒内に収容された上記リフィルとを具備し、前記リフィル栓が、当該リフィルを軸筒内へ収容する際に該軸筒内の係合部と係合することを特徴とする筆記具が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様によれば、リフィルの内部及び外部間を連通する空気流通路内へ続く外部の開口部を、後端部の側面部又はリフィル栓の側面部に設けたことによって、リフィル栓の後端部が容易に変形する構成であるにも拘わらず、リフィルの内部と外部との間の空気流通を確実にすることができる。また、リフィル栓の中心軸線方向の長さにおける変位可能量が1mm以上かつリフィル栓の圧縮力(N)に対する変位可能量(mm)の変化率を9以上とすることで変形容易かつ耐久性を保つことができる。すなわち、本発明の態様によれば、リフィルの内部と外部との間の空気流通路を確保しつつ、比較的容易に変形することで組み立ての際に強い力を必要としないという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一態様によるリフィルを備えたボールペンを示す縦断面図である。
図2】本発明の第1実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓の図である。
図3図1に示されたボールペンの後端部を拡大した拡大縦断面図である。
図4】本発明の第2実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓の図である。
図5】本発明の第3実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓の図である。
図6】本発明の第4実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓の図である。
図7】本発明の第5実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓の図である。
図8】本発明の第6実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓の図である。
図9図2のリフィル栓の変形状態を示した図である。
図10】本発明の一態様によるリフィルを備えたノック式のボールペンを示す縦断面図である。
図11】リフィルの先端部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0020】
図1は、本発明の一態様によるリフィル10を備えた筆記具であるボールペン1を示す縦断面図である。ボールペン1は、リフィル10と、筒状に延びる軸筒11と、キャップ12とを有する。軸筒11は、筒状の先軸13と、先軸13の後端部にその前端部が螺合する後軸14とを有する。先軸13の前端には、後述のリフィル10の筆記先端部17を突出させるための孔が形成される。なお、本明細書中では、ボールペンの中心軸線方向において、筆記先端部17側を「前」側と規定し、筆記先端部17とは反対側を「後」側と規定する。また、「中心軸線」とは、ボールペン1又はリフィル10の中心軸線を意味する。
【0021】
リフィル10は、管状のリフィル本体15と、継ぎ手部材16と、筆記先端部17と、リフィル栓30とを有する。リフィル本体15は、例えばポリプロピレンといった樹脂材料又は金属材料から形成され、インクを収容するように構成される。継ぎ手部材16は、例えばポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンといった樹脂材料又は金属材料から形成され、リフィル本体15の前端部内にその後端部が圧入される。また、継ぎ手部材16の前端部内には筆記先端部17の後端部が装着される。リフィル10は、軸筒11内に収容され、筆記先端部17の一部は、軸筒11内に収容された状態において、上述の先軸13の孔を介して露出される。筆記部となる筆記先端部17は、先端にボールを包持し、筆記時のボールの回転に応じて、リフィル本体15部分に収容されたインクが継ぎ手部材16内を介して吐出される。リフィル本体15の後端部には、リフィル栓30が圧入され、この圧入による嵌合によって装着されている。リフィル栓30については後述する。
【0022】
キャップ12は、クリップ部材18と、キャップ本体19と、第1消去部材20とを有する。クリップ部材18は、キャップ本体19との間に書類や衣類等の物品を、挟持することができるような弾性を有するように構成されている。クリップ部材18を形成する材料として、ポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン等の合成樹脂が挙げられる。なお、第1消去部材20とは別に、第2消去部材21が、後軸14の後端部に設けられている。
【0023】
図2は、本発明の第1実施形態によるリフィル10に用いられるリフィル栓30の図である。図2(A)は、リフィル栓30の斜視図であり、図2(B)は、リフィル栓30の別の斜視図であり、図2(C)は、リフィル栓30の平面図であり、図2(D)は、リフィル栓30の底面図であり、図2(E)は、リフィル栓30の側面図であり、図2(F)は、リフィル栓30の図2(E)の線A-Aにおける縦断面図である。なお、リフィル栓30は、仮にリフィル本体15に装着した場合に、筆記先端部17の方向を「前」とし、その反対側を「後」とする。
【0024】
リフィル栓30は、リフィル本体15の後端部から露出して後軸14の内壁と当接する当接部31と、リフィル本体15に圧入される部分である圧入部32とから構成される。当接部31の前端面31aは、リフィル本体15の後端面15aと当接するように構成されている。また、当接部31は、弾性変形部33を有する。弾性変形部33は、後方へ向かって延びる、径方向に肉厚な複数の厚肉部33aと、厚肉部33aよりも径方向に肉薄な薄肉部33bとを有する。
【0025】
厚肉部33aは、中心軸線に対する垂直断面、すなわち横断面が略扇状を呈すると共に中心軸線に対して120度で等配されている。厚肉部33aの後端部の外周面には、テーパー面33eが形成され、それによって厚肉部33aの後端面は、中心軸線を円弧の中心とする略円弧状を呈する。テーパー面33eと厚肉部33aの後端面との間には、中心軸線を軸線とする円筒面の一部からなるストレート部33f(図2(E)及び図2(F))が形成されている。ストレート部33fによって、射出金型での成形が容易になるという効果を奏する。
【0026】
薄肉部33bは、厚肉部33aの各々を中心軸線寄りの部分で周方向に連結し、横断面が、径方向外方に円弧の中心が配置された略円弧状を呈する。すなわち、厚肉部33aと薄肉部33bとが交互に配置されている。それによって、弾性変形部33の後端面は、厚肉部33aの後端面を含むような円を考えた場合、隣接する厚肉部33aの対向する円弧の端部を支点に反転させて薄肉部33bの略円弧状の後端面を形成したような形状を呈する。薄肉部33bは、中心軸線方向に亘って略均一の肉厚に形成されている。
【0027】
各厚肉部33aと、それらの間にある薄肉部33bとによって、溝状の空気流通溝33cが形成されている。また、弾性変形部33の後端面には、中心軸線近傍において、厚肉部33a又は薄肉部33bによって、弾性変形部33の弾性変形を可能にするための遊びの空間である孔33dが形成される。孔33dは、上述した弾性変形部33の後端面の内縁によって画成される形状が中心軸線方向に向かって延びる形状で、内部空間が画成される。したがって、孔33dは、連結された厚肉部33aの内面及び薄肉部33bの内面によって画成されることから、孔33dの内部空間は、一連の面によって画成される。隣接する厚肉部33aの対向する縁は、空気流通溝33cを跨いで円錐面の一部を形成するように抉られ、曲面33gを形成する。
【0028】
圧入部32は、当接部31よりも径の小さい略円柱形状から構成される。圧入部32は、周方向に形成された嵌合突起32aを複数有している。リフィル本体15の後端部への圧入の際に、この嵌合突起32aが径方向内側に僅かに弾性変形し、リフィル本体15の内壁とより確実な嵌合を実現している。また、圧入部32には、前端面32bから中心軸線に対して平行に後方に向かって延びる3本の通気溝32cがその側面部に形成されている。この通気溝32cは、中心軸線に対して120度で等配されており、この配置は、弾性変形部33の空気流通溝33cの配置とは、中心軸線に対して60度だけずれている。中心軸線に対して垂直な面における通気溝32cの断面形状は、略矩形となっている。また、通気溝32cは、圧入部32を越えて、すなわち当接部31の前端面31aを越えてさらに後方へ延びている。例えば、図2に示されたリフィル栓30では、通気溝32cは、圧入部32の通気溝32cの径方向深さと同じ長さだけ、当接部31の前端面31aから後方へ延びている。
【0029】
さらに、圧入部32の前端面には、孔32dが形成され、それによって金型による成形時のヒケが防止される。さらに、圧入部32の前端部の外周面には、テーパー面32eが形成され、それによってリフィル本体15の後端部への圧入が容易になる。中心軸線に対するテーパー面32eの角度は、本実施形態では約45度である。また、前端面32bには、中心軸線を軸線とした円筒状からなるストレート部32f(図2(E)及び図2(F))が形成されている。ストレート部32fによって、射出金型での成形が容易になるという効果を奏する。また、テーパー面32eの後端部には、丸く面取りされたような曲面32gが形成され、リフィル本体15の後端部への挿入を容易にしている。
【0030】
図2(C)の平面図において、厚肉部33aの最も薄い部分、すなわち後端部近傍の径方向に厚み、すなわち肉厚をt1とし、薄肉部33bの肉厚をt2とすると、t1は、0.2mm~1.0mmの範囲内であることが好ましく、t2は、0.1mm~0.5mmの範囲内であることが好ましい。言い換えると、t1はt2の2倍~10倍の範囲内であることが好ましい。また、孔33dの内接円、すなわち、薄肉部33bの内面に当接する円の直径をφとすると、φは、1.5mm~3.0mmの範囲内であることが好ましい。また、略円弧状の薄肉部33bの内面側、すなわち孔33dに面した側の曲率半径をRとすると、Rは、1.0mm~2.0mmの範囲内であることが好ましい。また、Rは、φより小さいことが好ましい。
【0031】
図3は、図1に示されたボールペン1の後端部を拡大した拡大縦断面図である。リフィル栓30をリフィル本体15の後端部に嵌合させると、通気溝32cとリフィル本体15の後端部内壁及びリフィル本体15の後端面15aとが協働して空気流通路35を形成する。空気流通路35は、リフィル栓30をリフィル本体15に装着した状態で、リフィル本体15の内部及び外部間を連通する。すなわち、リフィル栓30の前端面又はリフィル栓30の側面部に、空気流通路35の出入口となる開口部36が形成されている。
【0032】
また、図3に示されるように、後軸14の後端部内壁には、係合部として、軸方向に走る5本の突条22が形成されている。この突条22の先端部分には、先端方向への傾斜面22aが形成されており、この傾斜面22aにリフィル栓30の後端部分が当接する。すなわち、リフィル10を軸筒11内に収容すると、リフィル栓30の弾性変形部33の厚肉部33aの後端部が、後軸14の後端部内壁の突条22の傾斜面22aに圧接される。これにより、厚肉部33aは中心軸線に向かって、すなわち径方向内側に弾性変形する。これと同時に、各厚肉部33a間の薄肉部33bも、周方向に収縮するように、すなわち横断面における円弧が撓むように、弾性変形する。
【0033】
これらの弾性変形により、厚肉部33aが軸筒内壁を押圧して係合し、リフィル10の固定が実現される。さらにこれらの弾性変形によって、主にリフィル本体15に起因するリフィル10の製造時に生ずる軸方向の寸法ばらつきを吸収することも可能となる。また、厚肉部33aに直接かかる荷重が、薄肉部33bによっても支えられるため、全体としてリフィル栓30への荷重が弾性変形部33全体へ分散されることとなる。また、厚肉部33aの間を薄肉部33bが連結することによって、厚肉部33aの弾性疲労の発生も抑制できる。
【0034】
また、特許文献2に記載の弾性変形部では、上述したように、遊びの空間である孔が円形に画成されていることによって、十分な変形量を得ることができない場合があった。これに対し、本発明によるリフィル栓30の弾性変形部33の孔33dは、横断面において円形でなく非円形に、特に薄肉部33bの内面によって中心軸線に向かう凹部を有する非円形に画成されていることから、特許文献2に記載の弾性変形部よりも容易に変形させることが可能となる。すなわち、本発明によれば、リフィル10の内部と外部との間の空気流通路を確保しつつ、比較的容易に変形することで組み立ての際に強い力を必要としないリフィル10及びリフィル10を備えた筆記具を提供することが可能となる。
【0035】
リフィル栓30は、上述のように、後軸14の後端部内壁と当接して弾性変形するため、軸筒11、すなわち後軸14よりも軟質な材料で形成されることが望ましい。例えば、軸筒11がポリカーボネートやABSで形成されている場合には、リフィル栓30は、それらよりも軟質なポリプロピレン、ポリアセタールや熱可塑性エラストマー等で形成される。
【0036】
本発明によるリフィル10は、上述のようにリフィル栓30の側面部に空気流通路35の出入口となる開口部36を有する。したがって、リフィル栓30の中心軸線に空気孔が設けられた特許文献1に記載された発明のように、空気流通路が変形するようなこともない。そのため、本発明によるリフィル10によれば、リフィル10の内部と外部との間の空気流通路を十分に確保することが可能となる。
【0037】
また、特許文献1に記載の発明の場合は、リフィル栓がリフィル本体に圧入によって嵌合しているため、リフィル本体の嵌合部とその近傍は、リフィル栓の弾性力によって径方向外側に向かって常に力が加わっている。その結果、リフィル本体に割れが発生し、リフィル栓との嵌合が不十分となり、リフィル栓が脱落してしまう場合がある。しかしながら、本発明のリフィル10によれば、リフィル栓30の圧入部32に通気溝32cが設けられている。このため、圧入によって径方向内側に収縮した嵌合突起32aは、その収縮に応じて通気溝32cの部分において周方向に膨張する。それによって、リフィル本体に割れを生じさせるような径方向外側に作用する力が緩和される。したがって、本発明のリフィル10によれば、リフィル本体15とリフィル栓30との間に十分な嵌合力を維持しつつ、リフィル本体15の割れの発生を抑えることが可能となる。
【0038】
弾性変形部33は、リフィル本体15と一体に形成することも可能である。弾性変形部33がリフィル本体15と一体に形成された場合には、空気流通路は、単に側面部に設けられた孔であってもよい。なお、等配される厚肉部33aの個数には特に限定はない。また、通気溝32cの形状、及び、その本数、すなわち空気流通路35の数も任意である。
【0039】
以下、上述した効果と同様の効果を奏する本発明の他の実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓、特に弾性変形部の後端面の中心軸線近傍に形成された、横断面において非円形の孔の様々な態様について説明する。
【0040】
図4は、本発明の第2実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓40の図である。図4(A)は、リフィル栓40の斜視図であり、図4(B)は、リフィル栓40の別の斜視図であり、図4(C)は、リフィル栓40の平面図であり、図4(D)は、リフィル栓40の底面図であり、図4(E)は、リフィル栓40の側面図であり、図4(F)は、リフィル栓40の図4(E)の線B-Bにおける縦断面図である。図4に示されたリフィル栓40は、図2に示された本発明の第1実施形態によるリフィル10に用いられるリフィル栓30と比較して、通気溝の形状のみが異なる。
【0041】
すなわち、図2に示されたリフィル栓30では、通気溝32cは、圧入部32の通気溝32cの径方向深さと同じ長さだけ、当接部31の前端面31aから後方へ延びている構成であったが、図4に示されたリフィル栓40の通気孔42cは、当接部31の前端面31aからさらに後方へ延びている。それによって、リフィル栓40をリフィル本体15に装着した状態で形成される空気流通路の出入口となる開口部が大きくなり、より大きな通気量を確保することが可能となる。
【0042】
図5は、本発明の第3実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓50の図である。図5(A)は、リフィル栓50の斜視図であり、図5(B)は、リフィル栓50の別の斜視図であり、図5(C)は、リフィル栓50の平面図であり、図5(D)は、リフィル栓50の底面図であり、図5(E)は、リフィル栓50の側面図であり、図5(F)は、リフィル栓50の図5(E)の線C-Cにおける縦断面図である。図5に示されたリフィル栓50は、図2に示された本発明の第1実施形態によるリフィル10に用いられるリフィル栓30と比較して、圧入部のテーパー面の形状のみが異なる。
【0043】
すなわち、図2に示されたリフィル栓30では、圧入部32のテーパー面32eの中心軸線に対する角度が、約45度であったが、図5に示されたリフィル栓50のテーパー面52eは、軸線(栓C-C)に対して45度よりも小さく、10度~40度の範囲内であることが好ましい。それによってリフィル本体15の後端部への圧入がさらに容易になる。
【0044】
図6は、本発明の第4実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓60の図である。図6(A)は、リフィル栓60の斜視図であり、図6(B)は、リフィル栓60の別の斜視図であり、図6(C)は、リフィル栓60の平面図であり、図6(D)は、リフィル栓60の底面図であり、図6(E)は、リフィル栓60の側面図であり、図6(F)は、リフィル栓60の図6(E)の線D-Dにおける縦断面図である。図6に示されたリフィル栓60は、図2に示された本発明の第1実施形態によるリフィル10に用いられるリフィル栓30と比較して、弾性変形部の空気流通溝の位置及び形状のみが異なる。
【0045】
すなわち、図2に示されたリフィル栓30では、弾性変形部33の空気流通溝33cは、圧入部32の通気溝32cに対して、中心軸線周りに60度だけずれて配置されていたが、図6に示されたリフィル栓60の空気流通溝63cは、圧入部32の通気溝32cと整列するように配置されている。さらに、リフィル栓60の空気流通溝63cは、図2に示されたリフィル栓30の空気流通溝33cよりもさらに前方へ延び、当接部31の前端面31aを貫通している。それによって、通気溝32cと空気流通溝63cとは、略一直線上の溝を形成し、幼児がリフィル栓60を誤飲した場合の窒息防止という効果を奏する。
【0046】
図7は、本発明の第5実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓70の図である。図7(A)は、リフィル栓70の斜視図であり、図7(B)は、リフィル栓70の別の斜視図であり、図7(C)は、リフィル栓70の平面図であり、図7(D)は、リフィル栓70の底面図であり、図7(E)は、リフィル栓70の側面図であり、図7(F)は、リフィル栓70の図7(E)の線E-Eにおける縦断面図である。図7に示されたリフィル栓70は、図2に示された本発明の第1実施形態によるリフィル10に用いられるリフィル栓30と比較して、弾性変形部の空気流通溝の位置及び形状と、弾性変形部の孔の形状とが異なる。
【0047】
すなわち、図2に示されたリフィル栓30では、弾性変形部33の空気流通溝33cは、圧入部32の通気溝32cに対して、中心軸線周りに60度だけずれて配置されていたが、図7に示されたリフィル栓70の空気流通溝73cは、図6に示されたリフィル栓60と同様に、圧入部32の通気溝32cと整列するように配置されている。したがって、リフィル栓70の空気流通溝73cは、図2に示されたリフィル栓30の空気流通溝33cよりもさらに前方へ延び、当接部31の前端面31aを貫通している。それによって、通気溝32cと空気流通溝73cとは、略一直線上の溝を形成し、幼児がリフィル栓70を誤飲した場合の窒息防止という効果を奏する。
【0048】
弾性変形部33の孔73dには、横断面が角を丸めた三角形状を呈する内部空間が画成されている。すなわち、厚肉部73aの内面によって三角形の頂点が画成され、薄肉部73bの内面によって三角形の辺が画成される。厚肉部73aの外形は、図2に示されたリフィル栓30の厚肉部33aと略同一であるが、薄肉部73bは、平板状に形成されている。
【0049】
図8は、本発明の第6実施形態によるリフィルに用いられるリフィル栓80の図である。図8(A)は、リフィル栓80の斜視図であり、図8(B)は、リフィル栓80の別の斜視図であり、図8(C)は、リフィル栓80の平面図であり、図8(D)は、リフィル栓80の底面図であり、図8(E)は、リフィル栓80の側面図であり、図8(F)は、リフィル栓80の図8(E)の線F-Fにおける縦断面図である。図8に示されたリフィル栓80は、図2に示された本発明の第1実施形態によるリフィル10に用いられるリフィル栓30と比較して、弾性変形部の孔の形状と、弾性変形部の曲面の形状と、圧入部の孔の位置とが異なる。
【0050】
弾性変形部33の孔83dには、横断面が、大小2つの同心円の円弧を周方向に沿って60度毎に交互に切り出し、それらを接続することによって形成したような内部空間が画成されている。すなわち、厚肉部83aの内面によって大きい円の円弧部分が画成され、薄肉部83bの内面によって小さい方の円弧部分が画成される。厚肉部83aの外形は、図2に示されたリフィル栓30の厚肉部33aと略同一であるが、薄肉部83bは、上述した小さい方の円を形成するように、横断面が略円弧状を呈するように形成されている。
【0051】
弾性変形部33の曲面83gは、図2に示されたリフィル栓30の曲面33gよりも深く、すなわち当接部31の前方まで抉られている。また、図2に示されたリフィル栓30では、圧入部32の孔32dは、圧入部32の前端面に形成されていたが、図8に示されたリフィル栓80の圧入部32の孔82dは、弾性変形部33の孔83dの底面に形成されている。すなわち、圧入部32の前端面は閉塞している。
【0052】
図9は、図2のリフィル栓30の変形状態を示した図である。図9(A)は、リフィル栓30の変形前の縦断面図であり、図9(B)は、リフィル栓30の変形後の縦断面図である。同様に、図9(C)及び図9(D)は、図9(A)及び図9(B)にそれぞれ対応するリフィル栓30の側面図である。
【0053】
リフィル栓30は、中心軸線方向の長さである全長における変位可能量Xが1mm以上となるように構成される。変位可能量Xは、リフィル10を軸筒11内に挿入する際に後軸14の後端部内壁との当接によって通常加わる力程度で変形する可能性のある変位量を示す。変位可能量を1mm以上とすることによって、リフィル10の製造時に生ずる軸方向の寸法ばらつきを吸収することが可能となる。
【0054】
また、リフィル栓30に所定の圧縮力(N)が加わった場合の変位可能量(mm)の変化率(すなわち、圧縮力(N)/変位可能量(mm)で表される圧縮力(N)に対する変位量(mm)の変化率)を9以上、望ましくは10以上12以下となるように構成される。それによって、筆記時の筆記圧によるリフィル10の没入量及びその復元量を抑えることができ、適切な圧縮性及び剛性を得ることができる。その結果、ボールペン1による快適な書き味が得られるとともに、リフィル栓30の変形に対する耐久性を確保することができる。リフィル栓30の圧縮力は、リフィル栓30の中心軸線方向に沿った荷重ではなく、後軸14の後端部内壁の傾斜面22a(図3)のような傾斜面に当接させて測定される。なお、上述した変形に関する説明は、他の実施形態におけるリフィル栓においても同様に適用される。
【0055】
図10は、本発明の一態様によるリフィル110を備えたノック式のボールペン100を示す縦断面図であり、図11は、リフィル110の先端部分の斜視図である。上述した実施形態において、本発明をリフィル10が収容されたキャップ式のボールペンに適用してきたが、本実施形態によって、本発明がノック式のボールペン100にも適用できることを示す。
【0056】
ボールペン100は、筒状に形成され且つ先軸102及び後軸103を備えた軸筒104と、軸筒104内に配置されたリフィル110と、リフィル110を後方へ付勢するスプリング105と、軸筒104の後端部、すなわち後軸103の後端部に配置されたノック機構とを有する。ノック機構は、それぞれ筒状に形成された操作部120と回転子130とを有する。操作部120の後端部には、消去部材106が設けられ、消去部材106は、カバー部材107によって覆われている。消去部材106又はカバー部材107を介して操作部を前方に押圧するノック操作を行うことによって、ノック式のボールペン100の筆記状態と非筆記状態とを切り替えることができる。
【0057】
リフィル110は、上述したボールペン1のリフィル10と比較して、継ぎ手部材の形状のみが異なる。すなわち、図11に明示されているように、リフィル110の継ぎ手部材116の外周面には、中心軸線方向に延びる複数の微小な突起116aが形成されている。突起116aは、中心軸線に対して120度で等配されている。継ぎ手部材116は、スプリング105の一端を突起116aの直後の支持面116bで受けるが、複数の突起116aによってスプリング105のがたつきが防止される。なお、複数の突起116aは、例えばリフィル用のキャップを確実に装着させるための嵌合突起としてもよい。
【0058】
本実施形態において、リフィル110のリフィル本体15の後端部には図2に示されるリフィル栓30が装着されているが、上述した他のリフィル栓を装着してもよい。なお、上述したボールペン1では、リフィル栓の弾性変形部を、後軸14の後端部内壁に対して圧接することで弾性変形させながら係合させたが、ノック式のボールペン100の場合は、リフィル栓の弾性変形部を、回転子130に対して同様に係合させている。すなわち、回転子130には係合部が設けられている。
【0059】
軸筒104内において、操作部120及び回転子130の前方には、筒状に形成されたノックロック部材140が配置されている。後軸103の内面には、突起である係止部150が形成されている。ノックロック部材140は、重力によって軸筒104内を前後方向に移動可能である。したがって、図10では、ボールペン100の前端が下向き、すなわち鉛直下方を向いていることから、ノックロック部材140は、軸筒104内において前端側に寄っている。操作部120の前端面にはカム面121が形成され、対向するノックロック部材140の後端面には、操作部120のカム面121と相補的な形状を有するカム受け面141が形成されている。
【0060】
ボールペン100の前端を上向きにすると、ノックロック部材140は、後端に向かって移動し、カム受け面141と、操作部120のカム面121とが当接する。この当接によって、操作部120のカム面121とノックロック部材140のカム受け面141とが協働してノックロック部材140を周方向へ回転させ、後軸103の係止部150とノックロック部材140とを係止状態にさせる。この係止によって、操作部120の前方への移動が阻止され、ノック操作ができない状態にさせる。その結果、消去部材106を用いた当該ボールペン100による筆跡の消去時に、安定した擦過動作を行うことが可能となる。すなわち、ボールペン100を持ち替えて、消去部材106を筆記面に対して押圧して擦過動作を行っても、操作部120ががたつくことがない。
【0061】
上述した実施形態におけるリフィルには、熱変色性インクを収容してもよい。この場合、ボールペンは、熱変色性筆記具であり、消去部材である摩擦体によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、ボールペンの筆跡を熱変色可能である。なお、リフィルには、消しゴムで消去可能な消しゴム消去式インクを収容してもよい。
【0062】
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いたボールペンでは上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して消去部材としての摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【0063】
また、消しゴムで消去可能な消しゴム消去式インクを収容したボールペンとする場合における消しゴム消去性インクは、水と、平均粒子径1.0~15μmの非熱可塑性着色樹脂粒子をインキ組成物全量に対して、3~30重量%と、0.1~10重量%の非着色粒子とを少なくとも含有することが必要である。本発明の水性インキに用いる着色樹脂粒子は、着色された樹脂粒子からなるものであり、非熱可塑性であり、かつ、平均粒子径が1.0~15μmとなるものであり、例えば、樹脂粒子中に顔料からなる着色剤が分散された着色樹脂粒子、樹脂粒子の表面が顔料からなる着色剤で被覆された着色樹脂粒子、樹脂粒子に染料からなる着色剤が染着された着色樹脂粒子などが挙げられる。本実施形態では、着色樹脂粒子が非熱可塑性で上記平均粒子径を充足するものであれば、その構造〔中空構造あり、中空構造なし(密実)〕、形状(球状、多角形状、扁平状、繊維状)等は特に限定されるものでないが、好ましくは、優れた消しゴム消去性、筆記性、インキとしての経時安定性を発揮させる点から、ガラス転移点が150℃以上で熱分解温度に近く、更にはメルトフローインデックス値が0.1未満であるような分子内架橋を持つ粒子で粘着性を有せず、かつ、平均粒子径が1.0~15μmとなる球状の着色樹脂微粒子の使用が望ましい。なお、本発明(実施例等含む)で規定する「平均粒子径」は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社製)〕にて測定したD50の値である。
【0064】
消去部材を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の熱硬化性ゴムやスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物を、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)で荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が10mg以上となるように構成し、消去部材を形成する。さらに、テーバー摩耗量が10mg以上となるように調整するために、消去部材の材料に対して、より柔軟性を出すためのフタル酸系可塑剤を添加してもよい。消去部材が、環境ホルモンを含まない可塑剤を含むことによって、消去部材がより摩耗しやすくなるため、紙面を傷めず且つ印刷文字等を掠れさせることなく、筆跡の消去が可能となる。さらに、消去部材は、JIS K6203に規定されたデュロメータA硬度が70以上であることが望ましい。それによって、所定の硬さが確保でき、より安定した擦過動作が可能となる。なお、消去部材は、タッチペン、スタイラスペンとしても適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 ボールペン
10 リフィル
11 軸筒
12 キャップ
30 リフィル栓
33d 孔
35 空気流通路
36 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11