(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】進行性骨化性線維異形成症のげっ歯類モデル
(51)【国際特許分類】
A01K 67/027 20240101AFI20240614BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240614BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240614BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240614BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C12N15/12
C12N15/09 100
C12N5/10
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2020568406
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 US2019036719
(87)【国際公開番号】W WO2019241350
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-03-31
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ハットセル, サラ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】エコノマイズ, アリス エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ショーエンヘール, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】イドン, ヴィンセント ジェイ.
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512037(JP,A)
【文献】Sci Transl Med. (Author manuscript),2015年,Vol.7, No.303, 303ra137,<doi:10.1126/scitranslmed.aac4358.>
【文献】Am J Med Genet A. (Author manuscript),2015年,Vol.167, No.10, pp.2265-2271,<doi:10.1002/ajmg.a.37205.>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/10-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子修飾げっ歯類であって、そのゲノムが、内因性げっ歯類Acvr1座内の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含み、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
SRRS’の前記第1対および第2の対が、リコンビナーゼが、変異げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向され、
前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、前記ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1ヌクレオチド異なり、前記ヒトACVR1エクソン7と前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されて
おり、
前記ヒトACVR1エクソン7が、配列番号1に記載の核酸配列からなる、遺伝子
修飾げっ歯類。
【請求項2】
前記リコンビナーゼをコードする前記遺伝子が、前記遺伝子修飾げっ歯類のゲノム中にあり、前記リコンビナーゼの活性が、誘導性である、請求項1に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
【請求項3】
前記リコンビナーゼが、Creである、請求項1または2に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
【請求項4】
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、前記Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、請求項3に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
【請求項5】
前記ERの前記リガンド結合ドメインが、T2変異を含む、請求項4に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
【請求項6】
前記リガンドが、タモキシフェンである、請求項4または5に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
【請求項7】
前記遺伝子修飾げっ歯類が、修飾Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である、請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の遺伝子修飾げっ歯類に由来する変異げっ歯類であって、前記変異げっ歯類が、センス方向の改変エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子を含むゲノムを有し、前記改変Acvr1対立遺伝子が、異所性骨形成をもたらす前記変異げっ歯類で発現され
、前記変異げっ歯類が、前記改変Acvr1対立遺伝子に対してホモ接合性である、変異げっ歯類。
【請求項9】
マウスまたはラットから選択される、請求項1~8のいずれかに記載のげっ歯類。
【請求項10】
核酸であって、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含み、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
SRRS’の前記第1の対および第2の対が、リコンビナーゼが、変異げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除できるように配向され、
前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、前記ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1ヌクレオチド異なり、前記ヒトACVR1エクソン7と前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されて
おり、
前記ヒトACVR1エクソン7が、配列番号1に記載の核酸配列からなる、核酸。
【請求項11】
前記リコンビナーゼの活性が、誘導性である、請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
前記リコンビナーゼが、Creである、請求項10または11に記載の核酸。
【請求項13】
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、請求項12に記載の核酸。
【請求項14】
前記ERの前記リガンド結合ドメインが、T2変異を含む、請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
前記リガンドが、タモキシフェンである、請求項13または14に記載の核酸。
【請求項16】
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、請求項10~15のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項17】
請求項10に記載の核酸を含む、げっ歯類ゲノム。
【請求項18】
前記SRRS’を認識し、改変エクソンを反転させる前記リコンビナーゼをコードする遺伝子をさらに含む、請求項17に記載のげっ歯類ゲノム。
【請求項19】
前記リコンビナーゼの活性が、誘導性である、請求項18に記載のげっ歯類ゲノム。
【請求項20】
前記リコンビナーゼが、Creである、請求項19に記載のげっ歯類ゲノム。
【請求項21】
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、前記Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、請求項20に記載のげっ歯類ゲノム。
【請求項22】
前記ERの前記リガンド結合ドメインが、T2変異を含む、請求項21に記載のげっ歯類ゲノム。
【請求項23】
前記リガンドが、タモキシフェンである、請求項21または22に記載のげっ歯類ゲノム。
【請求項24】
前記げっ歯類ゲノムが、前記修飾Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である、請求項17~23のいずれか一項に記載のげっ歯類ゲノム。
【請求項25】
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、請求項17~24のいずれか一項に記載のげっ歯類ゲノム。
【請求項26】
請求項17~25のいずれか一項に記載のげっ歯類ゲノムを含む、単離されたげっ歯類組織または細胞。
【請求項27】
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、請求項26に記載の単離されたげっ歯類組織または細胞。
【請求項28】
前記げっ歯類細胞が、胚性幹細胞である、請求項26または27に記載の単離されたげっ歯類組織または細胞。
【請求項29】
げっ歯類ゲノム中のAcvr1遺伝子の標的修飾のための核酸構築物であって、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
SRRS’の前記第1の対および第2の対が、リコンビナーゼが、変異げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向され、
前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、前記ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1ヌクレオチド異なり、前記ヒトACVR1エクソン7と前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されて
おり、
前記ヒトACVR1エクソン7が、配列番号1に記載の核酸配列からなる、核酸構築物。
【請求項30】
前記SRRS’の第1の対および第2の対が、Lox2372およびLoxPであるか、またはその逆である、請求項29に記載の核酸構築物。
【請求項31】
前記リコンビナーゼが、Creである、請求項29に記載の核酸構築物。
【請求項32】
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)と融合され、その結果、前記Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、請求項31に記載の核酸構築物。
【請求項33】
前記ERが、T2変異を含む、請求項32に記載の核酸構築物。
【請求項34】
前記リガンドが、タモキシフェンである、請求項32に記載の核酸構築物。
【請求項35】
前記げっ歯類が、マウスまたはラットから選択される、請求項29~34のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項36】
遺伝子修飾げっ歯類を作製する方法であって、内因性げっ歯類Acvr1座内の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含むようにげっ歯類ゲノムを修飾することを含み、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7であって、前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
SRRS’の前記第1の対および第2の対が、リコンビナーゼが、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向され、
前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、前記ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1ヌクレオチド異なり、前記ヒトACVR1エクソン7と前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されて
おり、
前記ヒトACVR1エクソン7が、配列番号1に記載の核酸配列からなる、方法。
【請求項37】
前記げっ歯類ゲノムが、
a.げっ歯類胚性幹(ES)細胞に核酸構築物を導入することであって、前記核酸構築物が、
前記SRRS’の第1の対に隣接したセンス方向の前記実質的なヒトACVR1エクソン7と、
前記SRRS’の第2の対に隣接したアンチセンス方向でR258Gをコードする前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
前記核酸構築物が、前記内因性げっ歯類Acvr1座内に前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子をもたらす前記内因性げっ歯類Acvr1座を標的とする、導入することと、
b.そのゲノムが前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類ES細胞を取得することと、
c.b)からの前記遺伝子修飾げっ歯類ES細胞を使用して遺伝子修飾げっ歯類を作製することと、を含むプロセスによって修飾される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記遺伝子修飾げっ歯類が、修飾Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記げっ歯類ES細胞が、前記リコンビナーゼをコードする遺伝子をさらに含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記リコンビナーゼの活性が、誘導性である、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記リコンビナーゼが、Creである、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、前記Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ERの前記リガンド結合ドメインが、T2変異を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記リガンドが、タモキシフェンである、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記げっ歯類の細胞または組織において前記リコンビナーゼの活性を誘導することをさらに含み、前記リコンビナーゼが、改変エクソン7を反転させ、実質的なヒトエクソン7を削除し、それによって、前記改変エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が、前記細胞または組織で発現されることを可能にする、請求項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記げっ歯類が、マウスまたはラットから選択される、請求項37~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
育種する方法であって、そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む第1のげっ歯類を第2のマウスと育種させ、そのゲノムが前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む子孫げっ歯類をもたらすことを含み、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
SRRS’の前記第1の対および第2の対が、リコンビナーゼが、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向され、
前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、前記ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1ヌクレオチド異なり、前記ヒトACVR1エクソン7と前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されて
おり、
前記ヒトACVR1エクソン7が、配列番号1に記載の核酸配列からなる、方法。
【請求項48】
前記第1のげっ歯類が、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第2のげっ歯類が、誘導性リコンビナーゼを含む、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記誘導性リコンビナーゼが、誘導性Creリコンビナーゼである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記誘導性Creリコンビナーゼが、タモキシフェン誘導性Cre-ER
T2リコンビナーゼを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記子孫げっ歯類の細胞または組織において前記誘導性リコンビナーゼを誘導することをさらに含み、その結果、誘導されたリコンビナーゼが、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記細胞または組織中の前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、それによって、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子を生成する、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、請求項47~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
請求項47~53のいずれか一項に記載の方法に従って生成される子孫げっ歯類。
【請求項55】
異所性骨形成を治療するための候補治療化合物を試験する方法であって、
請求項1~7および9のいずれか一項に記載の遺伝子修飾げっ歯類を提供することと、
前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように、前記げっ歯類において前記リコンビナーゼの活性を誘導することと、
前記候補化合物を前記げっ歯類に投与することと、
前記候補化合物が、前記げっ歯類における異所性骨形成の発症を阻害するかを決定することと、を含む、方法。
【請求項56】
前記候補化合物が、前記リコンビナーゼ活性の誘導の前、間、または後に前記げっ歯類に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記候補化合物が、小分子化合物である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記候補化合物が、核酸である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記候補化合物が、抗体またはその抗原結合断片である、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体またはその抗原結合断片が、アクチビン受容体1に対する抗体またはその抗原結合断片である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記抗体またはその抗原結合断片が、アクチビン受容体2A型に対する抗体またはその抗原結合断片である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記抗体またはその抗原結合断片が、アクチビン受容体2B型に対する抗体またはその抗原結合断片である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記抗体またはその抗原結合断片が、アクチビンAに対する抗体またはその抗原結合断片である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、請求項55~63のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月13日に出願された米国仮出願第62/684,582号、および2019年4月3日に出願された米国仮出願第62/828,532号からの優先権の利益を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、遺伝子修飾げっ歯類動物およびヒト疾患のげっ歯類モデルに関する。より詳細には、本開示は、そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類、異所性骨形成などの進行性骨化性線維異形成症(FOP)の表現型の特徴を示すげっ歯類、そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む単離されたげっ歯類組織および細胞、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む単離された核酸、遺伝子修飾げっ歯類を作製する成分および方法、育種する方法、ならびに遺伝子修飾げっ歯類を使用する方法に関する。
【0003】
配列表の参照による組み込み
2019年6月6日に作成され、EFS-Webを介して米国特許商標庁に提出された36190_10461US01__SequenceListing.txtという名称の4KBのASCIIテキストファイルの形態をとる配列表が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
特許、特許出願、公開特許出願、受入番号、技術論文、および学術論文を含む様々な公表文献が、本明細書に引用される。これらの引用された公表文献のそれぞれは、参照により、その全体およびすべての目的のために、この文書に組み込まれる。
Acrv1は、骨形成タンパク質(BMP)のI型受容体である。アミノ酸修飾R206HまたはR258Gを生じさせる変異を含むヒトACVR1遺伝子の特定の変異は、進行性骨化性線維異形成症(FOP)と強く関連している(例えば、米国特許出願出版第2009/0253132号、Pignolo,R.J.(2011)Orphanet Journal of Rare Diseases,6:80,1-6、およびKaplan et al.,Am J Med Genet A.2015;167(10):2265-2271を参照されたい)。Acvr1中にR206H変異を保有するキメラマウスは、FOP様表現型を発現する(例えば、Chakkalakal et al.(2012)J.Bone and Mineral Res.27:1746-1756を参照されたい)。例えば、R206H Acvr1タンパク質バリアントをもたらすAcvr1遺伝子における特定の変異は、マウスにおいて周産期致死性であり、げっ歯類の生殖細胞系を介して変異を含むノックイン遺伝子を継ぐための課題を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2009/0253132号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Pignolo,R.J.(2011)Orphanet Journal of Rare Diseases,6:80,1-6
【文献】Kaplan et al.,Am J Med Genet A.2015;167(10):2265-2271
【文献】Chakkalakal et al.(2012)J.Bone and Mineral Res.27:1746-1756を
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む核酸配列をその生殖系列に含む遺伝子修飾げっ歯類動物を対象とする。
修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む核酸配列をその生殖系列に含む遺伝子修飾げっ歯類動物が提供され、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子は、げっ歯類Acvr1遺伝子の条件付き改変を含み、改変により、げっ歯類動物は異所性骨形成に対して感受性となる。
【0008】
条件付き改変Acvr1エクソンを含む修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む核酸配列をその生殖系列に含む遺伝子修飾げっ歯類動物が提供され、条件付き改変Acvr1エクソンの発現の誘導は、げっ歯類動物に異所性骨形成に対する感受性を付与する。一実施形態では、改変Acvr1エクソンは、エクソン7である。特定の実施形態では、改変Acvr1エクソン7は、Acvr1タンパク質におけるR258Gアミノ酸変化をもたらす改変を含む。
【0009】
改変Acvr1対立遺伝子を条件付きで発現するげっ歯類動物が提供される。様々な態様では、改変Acvr1対立遺伝子は、対立遺伝子を発現するげっ歯類動物に病理学的表現型を付与する対立遺伝子である。様々な態様では、げっ歯類動物は、部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)と共に上流および下流に隣接したAcvr1対立遺伝子の改変エクソンを含み、げっ歯類動物は、SRRS’を認識するリコンビナーゼを含み、リコンビナーゼの活性は誘導性である。
【0010】
げっ歯類動物が、異所性骨形成を生じ(一実施形態では、ヘテロ接合体において;一実施形態では、ホモ接合体において)、促進するか、またはげっ歯類の動物をそれに対して感受性にする、げっ歯類Acvr1遺伝子の修飾を含むげっ歯類動物が提供される。
【0011】
げっ歯類Acvr1遺伝子の条件付き改変を含むげっ歯類動物が提供され、改変Acvr1対立遺伝子は、子宮内では発現せず、周産期に発現せず、げっ歯類の動物は、改変Acvr1対立遺伝子を条件付き様式で発現し、条件付き発現は、げっ歯類動物に目的の化合物を投与することによって誘導される。
【0012】
一態様では、そのゲノムが、アンチセンス方向の改変Acvr1エクソンを含む修飾げっ歯類Acvr1座を含むげっ歯類動物が提供され、改変Acvr1エクソンは、SRRS’を認識するリコンビナーゼの作用を受けたときに反転を指示するように方向付けられたSRRS’によって上流および下流に隣接している。
【0013】
いくつかの実施形態では、そのゲノムが内因性げっ歯類Acvr1座内の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含むげっ歯類動物が提供され、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子は、センス方向で、SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した機能性Acvr1エクソン7と、アンチセンス方向で、SRRS’の第2の対が上流および下流に隣接した改変Acvr1エクソン7と、を含み、SRRS’の第1および第2の対は、リコンビナーゼが、改変Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、機能性Acvr1エクソン7を削除し、改変Acvr1対立遺伝子(すなわち、改変を含むAcvr1対立遺伝子)をもたらすことができるように配向される。様々な実施形態では、エクソン7を除いて、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子の残りのエクソンは、内因性げっ歯類Acvr1遺伝子の機能性エクソン、例えば、内因性げっ歯類Acvr1座に存在する野生型げっ歯類エクソンである。様々な実施形態では、改変Acvr1対立遺伝子は、対立遺伝子を発現するげっ歯類動物に病理学的表現型を付与する対立遺伝子である。
【0014】
いくつかの実施形態では、そのゲノムが内因性げっ歯類Acvr1座内の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類が本明細書で提供され、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子は、(a)SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した、センス方向でR258をコードする機能性Acvr1エクソン7と、(b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258G変化をコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、SRRS’の第1および第2の対は、リコンビナーゼが、改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、機能性ACVR1エクソン7を削除し、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される。いくつかの実施形態では、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子の発現は、異所性骨形成をもたらす。様々な実施形態では、エクソン7を除いて、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子の残りのエクソンは、内因性げっ歯類Acvr1遺伝子の機能性エクソン、例えば、内因性げっ歯類Acvr1座に存在する野生型げっ歯類エクソンである。
【0015】
いくつかの実施形態では、R258をコードする機能性Acvr1エクソン7は、天然に発生する機能性げっ歯類Acvr1エクソン7、すなわち野生型げっ歯類Acvr1エクソン7である。いくつかの実施形態では、R258をコードする機能性Acvr1エクソン7は、実質的なヒトACVR1エクソン7である。いくつかの実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、天然に発生しする、機能性ヒトACVR1エクソン7、すなわち野生型ヒトACVR1エクソン7である。他の実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1つのヌクレオチド(すなわち、1つ以上のヌクレオチド)異なり、野生型ヒトACVR1エクソン7と改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている。いくつかの実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする。
【0016】
いくつかの実施形態では、SRRS’の第1の対は、第1のSRRSおよび第二のSRRSを含み、第1および第2のSRRS’は、互いに互換性があり、反転を指示するように配向される。いくつかの実施形態では、SRRS’の第2の対は、第3のSRRSおよび第4のSRRSを含み、第3および第4のSRRS’は、互いに互換性があり、反転を指示するように配向されているが、第1または第2のSRRSとは互換性がない。
【0017】
いくつかの実施形態では、げっ歯類の生殖系列のAcvr1座に修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類が提供され、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子は、Acvr1遺伝子の転写の方向に関して、(i)センス方向の機能性エクソン7(例えば、実質的なヒトエクソン7)と、(ii)アンチセンス方向の改変エクソン7と、を含み、かつ第1のSRRS(SRRS1)および第2のSRRS(SRRS2)からなるSRRS’の第1の対と、第3ののSRRS(SRRS3)および第4のSRRS(SRRS4)からなるSRRS’の第2の対を含み、SRRS1はSRRS2と互換性があり、SRRS3はSRRS4と互換性がるが、SRRS1もSRRS2も、SRRS3またはSRRS4と互換性がなく、SRRS1は、機能性エクソン7の上流に位置し、SRRS2は、アンチセンス改変エクソン7のすぐ下流(Acvr1遺伝子の転写方向に関して)に位置し、SRRS1およびSRRS2は、反転を指示するように配向されており、SRRS3は、機能性エクソン7と改変アンチセンスエクソン7との間に配置されており、SRRS4は、SRRS2の下流(Acvr1遺伝子の配向の方向に関して)に位置しており、SRRS3およびSRRS4は、反転を指示するように配向される。いくつかの実施形態では、SRRS’1~4の各々は、Creなどの同じリコンビナーゼによって認識される。
【0018】
いくつかの実施形態では、SRRS’の第1の対は、Lox2372部位の対であり、SRRS’の第2の対は、LoxP部位の対である。いくつかの実施形態では、SRRS’の第1の対は、LoxP部位の対であり、SRRS’の第2の対は、Lox2372部位の対である。
【0019】
いくつかの実施形態では、遺伝子修飾げっ歯類動物は、SRRS’を認識し、アンチセンス改変Acvr1エクソンをセンス方向に反転させることができる誘導性リコンビナーゼをさらに含む。一実施形態では、誘導性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、げっ歯類の生殖細胞系にあり、例えば、内因性のげっ歯類ROSA26座に組み込まれている。
【0020】
リコンビナーゼの誘導性は、転写(遺伝子発現)レベル、またはタンパク質活性レベルで達成され得る。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子の発現は、誘導性であり、および/または発生的に制御され、および/または特定の組織または細胞型に特異的である。他の実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子の発現は構成的であり、リコンビナーゼの活性は誘導性である。
【0021】
いくつかの実施形態では、リコンビナーゼは、Creである。いくつかの実施形態では、SRRS’は、Creによって認識されるlox部位またはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ(例えば、Cre)は、リガンドによる結合に応答するリガンド結合ドメインと融合される。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ(例えば、Cre)は、ステロイド受容体、グルココルチコイド受容体、レチノイド受容体、甲状腺受容体、またはエストロゲン受容体(ER)などの受容体のリガンド結合ドメインであるリガンド結合ドメインと融合されるか、または受容体のリガンド結合ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、Creは、T2変異(本明細書ではCre-ERT2と称される)を含むERリガンド結合ドメインと融合される。Cre-ERT2融合タンパク質は、リガンド、例えば、タモキシフェンまたはその機能的類似体/誘導体による結合に応答する(すなわち、それにより活性化される)。一実施形態では、CreERT2をコードする遺伝子は、遺伝子修飾げっ歯類のROSA26座に存在する。
【0022】
いくつかの実施形態では、上述の遺伝子修飾げっ歯類に由来する(すなわち、アンチセンス方向の条件付きAcvr1改変を含む修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類に由来する)変異げっ歯類が提供され、変異げっ歯類は、センス方向のAcvr1改変を含むゲノムを有し、改変を含むAcvr1遺伝子は、いくつかの実施形態では、異所性骨形成をもたらす変異げっ歯類で発現される。
【0023】
一実施形態では、遺伝子修飾げっ歯類は、遺伝子型Acvr1[R258G]FlEx/+;Gt(ROSA26)SorCreERt2/+を有するマウスである。
【0024】
いくつかの実施形態では、機能性Acvr1エクソン7(例えば、子宮内および周産期)を含むAcvr1対立遺伝子を発現する遺伝子修飾げっ歯類が提供され、リコンビナーゼによる遺伝子修飾げっ歯類の作用により、げっ歯類は、R258Gアミノ酸変化を含むバリアントAcvr1タンパク質を発現する。
【0025】
いくつかの実施形態では、R258G変化により特徴付けされるAcvr1遺伝子産物を発現する成体げっ歯類が提供され、げっ歯類の細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%は、R258G変化をコードする改変Acvr1遺伝子を含む。他の実施形態では、特定の組織または細胞型においてR258G変化により特徴付けされるAcvr1遺伝子産物を発現する成体げっ歯類が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態では、遺伝子修飾げっ歯類が提供され、げっ歯類は、その生殖細胞系列に修飾げっ歯類Acvr1座を含み、リコンビナーゼによる作用により、R258G変化を含むAcvr1タンパク質を発現する。
【0027】
いくつかの実施形態では、R258G変化を含むタンパク質バリアントを発現するげっ歯類が提供され、げっ歯類は非キメラである(すなわち、げっ歯類中の全ての細胞は、バリアントタンパク質を発現する)。いくつかの実施形態では、R258G変化を含むタンパク質バリアントを発現するげっ歯類が提供され、げっ歯類の細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%がタンパク質バリアントを発現する。
【0028】
いくつかの実施形態では、げっ歯類の生殖系列中の改変げっ歯類Acvr1座からタンパク質バリアントを発現するげっ歯類が提供され、げっ歯類の全てのAcvr1発現細胞は、R258G変化を含むAcvr1タンパク質をコードする修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む。一実施形態では、げっ歯類の全ての生殖細胞は、R258G変化を有するAcvr1タンパク質をコードする条件付き遺伝子修飾を含む修飾げっ歯類Acrv1座を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、遺伝子修飾げっ歯類は、遺伝子修飾、すなわち、条件付き改変を含む修飾げっ歯類Acvr1遺伝子に対してヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、げっ歯類は、遺伝子修飾に対してホモ接合性である。
【0030】
様々な実施形態では、遺伝子修飾げっ歯類は、マウス、ラット、およびハムスターからなる群から選択される。いくつかの特定の実施形態では、げっ歯類は、マウスである。いくつかの特定の実施形態では、げっ歯類は、ラットである。
【0031】
別の態様では、本明細書に記載される修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む核酸が本明細書に開示される。
【0032】
いくつかの実施形態では、核酸中の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子は、センス方向で、SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した機能性Acvr1エクソン7と、アンチセンス方向で、SRRS’の第2の対が上流および下流に隣接した改変Acvr1エクソン7と、を含み、SRRS’の第1および第2の対は、リコンビナーゼが、改変Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、機能性Acvr1エクソン7を削除すことができるように配向される。様々な実施形態では、エクソン7を除いて、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子の残りのエクソンは、げっ歯類Acvr1遺伝子の機能性エクソン、例えば、内因性げっ歯類Acvr1遺伝子の野生型エクソンである。
【0033】
いくつかの実施形態では、核酸中の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子は、(a)SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した、センス方向でR258をコードする機能性Acvr1エクソン7と、(b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258G変化をコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、SRRS’の第1および第2の対は、リコンビナーゼが、改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、機能性ACVR1エクソン7を削除し、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される。いくつかの実施形態では、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子の発現は、異所性骨形成をもたらす。様々な実施形態では、エクソン7を除いて、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子の残りのエクソンは、げっ歯類Acvr1遺伝子の機能性エクソン、例えば、げっ歯類Acvr1遺伝子の野生型エクソンである。
【0034】
いくつかの実施形態では、R258をコードする機能性Acvr1エクソン7は、野生型げっ歯類Acvr1エクソン7である。いくつかの実施形態では、R258をコードする機能性Acvr1エクソン7は、実質的なヒトACVR1エクソン7である。いくつかの実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7である。他の実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1つのヌクレオチド異なり、野生型ヒトACVR1エクソン7と改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている。いくつかの実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする。
【0035】
いくつかの実施形態では、SRRS’の第1の対は、第1のSRRSおよび第二のSRRSを含み、第1および第2のSRRS’は、互いに互換性があり、反転を指示するように配向される。いくつかの実施形態では、SRRS’の第2の対は、第3のSRRSおよび第4のSRRSを含み、第3および第4のSRRS’は、互いに互換性があり、反転を指示するように配向されているが、第1または第2のSRRSとは互換性がない。
【0036】
いくつかの実施形態では、核酸中の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子は、Acvr1遺伝子の転写の方向に関して、(i)センス方向の機能性エクソン7(例えば、実質的なヒトエクソン7)と、(ii)アンチセンス方向の改変エクソン7と、を含み、かつ第1のSRRS(SRRS1)および第2のSRRS(SRRS2)からなるSRRS’の第1の対と、第3ののSRRS(SRRS3)および第4のSRRS(SRRS4)からなるSRRS’の第2の対を含み、SRRS1はSRRS2と互換性があり、SRRS3はSRRS4と互換性がるが、SRRS1もSRRS2も、SRRS3またはSRRS4と互換性がなく、SRRS1は、機能性エクソン7の上流に位置し、SRRS2は、アンチセンス改変エクソン7のすぐ下流(Acvr1遺伝子の転写方向に関して)に位置し、SRRS1およびSRRS2は、反転を指示するように配向されており、SRRS3は、機能性エクソン7と改変アンチセンスエクソン7との間に配置されており、SRRS4は、SRRS2の下流(Acvr1遺伝子の配向の方向に関して)に位置しており、SRRS3およびSRRS4は、反転を指示するように配向される。いくつかの実施形態では、SRRS’1~4の各々は、Creなどの同じリコンビナーゼによって認識される。
【0037】
別の態様では、上述の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む核酸を含むげっ歯類ゲノムが本明細書に開示される。
【0038】
いくつかの実施形態では、げっ歯類ゲノムは、SRRS’を認識する誘導性リコンビナーゼをコードする遺伝子をさらに含み、改変エクソン7を反転させ、機能性エクソン7を削除することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、リコンビナーゼは、Creである。いくつかの実施形態では、SRRS’は、Creによって認識されるlox部位またはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ(例えば、Cre)は、リガンド、例えば、Cre-ERT2による結合に応答するリガンド結合ドメインと融合され、これは、タモキシフェンまたはその機能的類似体/誘導体による結合に応答する(すなわち、それによって活性化される)。一実施形態では、CreERT2をコードする遺伝子は、げっ歯類ゲノムのROSA26座に組み込まれる。
【0040】
さらなる態様では、そのゲノムが上述の核酸を含み、すなわち、組織または細胞のゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む、単離されたげっ歯類組織または細胞が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、単離されたげっ歯類組織または細胞は、内因性げっ歯類Acvr1座内に修飾Acvr1遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、単離されたげっ歯類細胞は、胚性幹(ES)細胞である。いくつかの実施形態では、単離されたげっ歯類組織または細胞は、げっ歯類卵子またはげっ歯類胚である。単離されたげっ歯類組織または細胞は、例えば、マウスまたはラットの組織または細胞を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、そのゲノム中に修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む単離されたげっ歯類組織または細胞は、センス方向で、SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した機能性Acvr1エクソン7と、アンチセンス方向で、SRRS’の第2の対が上流および下流に隣接した改変Acvr1エクソン7と、を含み、SRRS’の第1および第2の対は、リコンビナーゼが、改変Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、機能性Acvr1エクソン7を削除すことができるように配向される。様々な実施形態では、エクソン7を除いて、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子の残りのエクソンは、内因性げっ歯類Acvr1遺伝子の機能性エクソン、例えば、内因性げっ歯類Acvr1座に存在する野生型エクソンである。
【0042】
いくつかの実施形態では、そのゲノム中に修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む単離されたげっ歯類組織または細胞は、(a)SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した、センス方向でR258をコードする機能性Acvr1エクソン7と、(b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258G変化をコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、SRRS’の第1および第2の対は、リコンビナーゼが、改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、機能性ACVR1エクソン7を削除し、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される。いくつかの実施形態では、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子の発現は、異所性骨形成をもたらす。様々な実施形態では、エクソン7を除いて、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子の残りのエクソンは、内因性げっ歯類Acvr1遺伝子の機能性エクソン、例えば、内因性げっ歯類Acvr1座に存在する野生型エクソンである。
【0043】
いくつかの実施形態では、R258をコードする機能性Acvr1エクソン7は、野生型げっ歯類Acvr1エクソン7である。いくつかの実施形態では、R258をコードする機能性Acvr1エクソン7は、実質的なヒトACVR1エクソン7である。いくつかの実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7である。他の実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1つのヌクレオチド異なり、野生型ヒトACVR1エクソン7と改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている。いくつかの実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする。
【0044】
いくつかの実施形態では、SRRS’の第1の対は、第1のSRRSおよび第二のSRRSを含み、第1および第2のSRRS’は、互いに互換性があり、反転を指示するように配向される。いくつかの実施形態では、SRRS’の第2の対は、第3のSRRSおよび第4のSRRSを含み、第3および第4のSRRS’は、互いに互換性があり、反転を指示するように配向されているが、第1または第2のSRRSとは互換性がない。
【0045】
いくつかの実施形態では、そのゲノム中に修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む単離されたげっ歯類組織または細胞は、Acvr1遺伝子の転写の方向に関して、(i)センス方向の機能性エクソン7(例えば、実質的なヒトエクソン7)と、(ii)アンチセンス方向の改変エクソン7と、を含み、かつ第1のSRRS(SRRS1)および第2のSRRS(SRRS2)からなるSRRS’の第1の対と、第3ののSRRS(SRRS3)および第4のSRRS(SRRS4)からなるSRRS’の第2の対を含み、SRRS1はSRRS2と互換性があり、SRRS3はSRRS4と互換性がるが、SRRS1もSRRS2も、SRRS3またはSRRS4と互換性がなく、SRRS1は、機能性エクソン7の上流に位置し、SRRS2は、アンチセンス改変エクソン7のすぐ下流(Acvr1遺伝子の転写方向に関して)に位置し、SRRS1およびSRRS2は、反転を指示するように配向されており、SRRS3は、機能性エクソン7と改変アンチセンスエクソン7との間に配置されており、SRRS4は、SRRS2の下流(Acvr1遺伝子の配向の方向に関して)に位置しており、SRRS3およびSRRS4は、反転を指示するように配向されている。いくつかの実施形態では、SRRS’1~4の各々は、Creなどの同じリコンビナーゼによって認識される。
【0046】
さらなる態様では、げっ歯類ゲノム中のAcvr1遺伝子の標的化修飾のための核酸構築物が本明細書に開示されており、「標的化核酸」とも称される。
【0047】
いくつかの実施形態では、標的化核酸は、(a)SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した、センス方向でR258をコードする機能性Acvr1エクソン7と、(b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258G変化をコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、SRRS’の第1および第2の対は、リコンビナーゼが、改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、機能性ACVR1エクソン7を削除できるように配向される。いくつかの実施形態では、機能性エクソン7および改変エクソン7は、それぞれイントロン配列に隣接している。典型的には、標的化核酸構築物は、相同アーム間の相同組み換えおよび核酸配列の組み込みを媒介する5’および3’相同性アーム(標的化される座のヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列)を含む。いくつかの実施形態では、標的化核酸構築物はまた、適切に標的化されたクローンの特定および選択を促進する選択マーカー遺伝子を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、R258をコードする機能性Acvr1エクソン7は、野生型げっ歯類Acvr1エクソン7である。いくつかの実施形態では、R258をコードする機能性Acvr1エクソン7は、実質的なヒトACVR1エクソン7である。いくつかの実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7である。他の実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1つのヌクレオチド異なり、野生型ヒトACVR1エクソン7と改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている。いくつかの実施形態では、実質的なヒトACVR1エクソン7は、野生型ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする。
【0049】
いくつかの実施形態では、SRRS’の第1の対は、第1のSRRSおよび第二のSRRSを含み、第1および第2のSRRS’は、互いに互換性があり、反転を指示するように配向される。いくつかの実施形態では、SRRS’の第2の対は、第3のSRRSおよび第4のSRRSを含み、第3および第4のSRRS’は、互いに互換性があり、反転を指示するように配向されているが、第1または第2のSRRSとは互換性がない。
【0050】
いくつかの実施形態では、標的化核酸は、Acvr1遺伝子の転写の方向に関して、(i)センス方向の機能性エクソン7(例えば、実質的なヒトエクソン7)と、(ii)アンチセンス方向の改変エクソン7と、を含み、かつ第1のSRRS(SRRS1)および第2のSRRS(SRRS2)からなるSRRS’の第1の対と、第3ののSRRS(SRRS3)および第4のSRRS(SRRS4)からなるSRRS’の第2の対を含み、SRRS1はSRRS2と互換性があり、SRRS3はSRRS4と互換性がるが、SRRS1もSRRS2も、SRRS3またはSRRS4と互換性がなく、SRRS1は、機能性エクソン7の上流に位置し、SRRS2は、アンチセンス改変エクソン7のすぐ下流(Acvr1遺伝子の転写方向に関して)に位置し、SRRS1およびSRRS2は、反転を指示するように配向されており、SRRS3は、機能性エクソン7と改変アンチセンスエクソン7との間に配置されており、SRRS4は、SRRS2の下流(Acvr1遺伝子の配向の方向に関して)に位置しており、SRRS3およびSRRS4は、反転を指示するように配向される。いくつかの実施形態では、SRRS’1~4の各々は、Creなどの同じリコンビナーゼによって認識される。
【0051】
別の態様では、本明細書に記載される内因性げっ歯類Acvr1座内に修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含むようにげっ歯類ゲノムを修飾することを含む、遺伝子修飾げっ歯類を作製する方法が本明細書に開示される。
【0052】
いくつかの実施形態では、げっ歯類ゲノムは、本明細書に記載される標的化核酸構築物をげっ歯類胚性幹(ES)細胞に導入することと、そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含むげっ歯類ES細胞を取得することと、修飾ゲノムを含むげっ歯類ES細胞を使用して遺伝子修飾げっ歯類を作製することと、を含むプロセスにより修飾される。例えば、標的化核酸がげっ歯類ES細胞に導入され、標的化核酸は、(a)SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した、センス方向でR258をコードする機能性Acvr1エクソン7と、(b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258G変化をコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、SRRS’の第1および第2の対は、リコンビナーゼが、改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、機能性ACVR1エクソン7を削除できるように配向される。そのゲノムが修飾されており、SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した、センス方向でR258をコードする機能性Acvr1エクソン7と、SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258G変化をコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含む、げっ歯類ES細胞を選択することができる。かかるげっ歯類ES細胞を使用して、げっ歯類を作製することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって作製され、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類は、誘導性リコンビナーゼ(例えば、Cre)をさらに含む。いくつかの実施形態では、誘導性リコンビナーゼをコードする核酸は、標的化核酸構築物が導入されたげっ歯類ES細胞のゲノム中に存在する。いくつかの実施形態では、そのゲノム中に修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含むげっ歯類は、最初に作製され、次いでそのゲノム中に誘導性リコンビナーゼをコードする核酸を含む別のげっ歯類と交配される。
【0054】
いくつかの実施形態では、誘導性リコンビナーゼは、げっ歯類において活性化され、改変エクソン7を反転させ、機能性エクソンを削除し、改変(例えば、R258G)を含むAcvr1タンパク質が発現できるように作用する。
【0055】
さらなる態様では、取得されたげっ歯類およびげっ歯類子孫を育種する方法が本明細書に開示される。
【0056】
いくつかの実施形態では、そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む第1のげっ歯類を第2のげっ歯類と育種させ、そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む子孫げっ歯類をもたらす方法が本明細書に開示される。修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が本明細書に記載されており、例えば、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子は、センス方向で、SRRS’の第1の対が上流および下流に隣接した機能性Acvr1エクソン7と、アンチセンス方向で、SRRS’の第2の対が上流および下流に隣接した改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み得、SRRS’の第1および第2の対は、リコンビナーゼが、改変Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、機能性Acvr1エクソン7を削除すことができるように配向される。いくつかの実施形態では、改変げっ歯類Acvr1エクソン7は、R258G変化をコードし、機能性Acvr1エクソン7は、R258をコードする実質的なヒトACVR1エクソン7である。
【0057】
いくつかの実施形態では、第2のげっ歯類は、誘導性リコンビナーゼを含む。いくつかの実施形態では、誘導性リコンビナーゼは、誘導性Creリコンビナーゼである。いくつかの実施形態では、誘導性Creリコンビナーゼは、タモキシフェンまたはその機能的誘導体もしくは類似体などのリガンドの結合によって誘導されるCre-ERT2リコンビナーゼである。
【0058】
いくつかの実施形態では、子孫げっ歯類は、誘導性リコンビナーゼを含む。いくつかの実施形態では、誘導性リコンビナーゼは、誘導性Creリコンビナーゼである。いくつかの実施形態では、誘導性Creリコンビナーゼは、Cre-ERT2リコンビナーゼである。
【0059】
いくつかの実施形態では、誘導性リコンビナーゼは、細胞または組織、例えば、子孫げっ歯類の選択された細胞または組織で発現される。いくつかの実施形態では、発現されたリコンビナーゼは、細胞または組織中で作用し、改変Acvr1エクソン7をセンス配向に反転させ、機能性Acvr1エクソン7を削除し、それによって、改変エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現すことができる。
【0060】
また、本明細書に開示される育種方法から取得される子孫げっ歯類が本明細書に提供される。
【0061】
さらに別の態様では、改変Acvr1対立遺伝子を発現する遺伝子修飾げっ歯類動物が、異所性骨化症のモデルとして使用される。一実施例では、異所性骨化症は、進行性骨化性線維異形成症(FOP)である。いくつかの実施形態では、改変Acvr1対立遺伝子を発現する遺伝子修飾げっ歯類動物を使用して、候補化合物がげっ歯類における異所性骨形成の発生を阻害することができるかを決定するための候補治療化合物を評価する。
(項目1)
遺伝子修飾げっ歯類であって、そのゲノムが、内因性げっ歯類Acvr1座内の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含み、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
前記第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、変異げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される、遺伝子改変げっ歯類。
(項目2)
前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、前記ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1ヌクレオチド異なり、前記ヒトACVR1エクソン7と前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている、項目1に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
(項目3)
前記リコンビナーゼをコードする前記遺伝子が、前記遺伝子修飾げっ歯類のゲノム中にあり、前記リコンビナーゼの活性が、誘導性である、項目1に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
(項目4)
前記リコンビナーゼが、Creである、項目1~3のいずれか一項に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
(項目5)
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、前記Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、項目4に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
(項目6)
前記ERの前記リガンド結合ドメインが、T2変異を含む、項目5に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
(項目7)
前記リガンドが、タモキシフェンである、項目5または6に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
(項目8)
前記遺伝子修飾げっ歯類が、修飾Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である、項目1~7のいずれか一項に記載の遺伝子修飾げっ歯類。
(項目9)
項目1~8のいずれかに記載の遺伝子修飾げっ歯類に由来する変異げっ歯類であって、前記変異げっ歯類が、センス方向の改変エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子を含むゲノムを有し、前記改変Acvr1対立遺伝子が、異所性骨形成をもたらす前記変異げっ歯類で発現される、変異げっ歯類。
(項目10)
マウスまたはラットから選択される、項目1~9のいずれかに記載のげっ歯類。
(項目11)
核酸であって、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含み、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
前記第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、変異げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除できるように配向される、核酸。
(項目12)
前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、前記ヒトACVR1エクソン7と少なくとも11ヌクレオチド異なり、前記ヒトACVR1エクソン7と前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている、項目11に記載の核酸。
(項目13)
前記リコンビナーゼの活性が、誘導性である、項目11に記載の核酸。
(項目14)
前記リコンビナーゼが、Creである、項目11~13のいずれか一項に記載の核酸。
(項目15)
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、項目14に記載の核酸。
(項目16)
前記ERの前記リガンド結合ドメインが、T2変異を含む、項目15に記載の核酸。
(項目17)
前記リガンドが、タモキシフェンである、項目15または16に記載の核酸。
(項目18)
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、項目11~17のいずれか一項に記載の核酸。
(項目19)
項目11または12に記載の核酸を含む、げっ歯類ゲノム。
(項目20)
前記SRRS’を認識し、改変エクソンを反転させる前記リコンビナーゼをコードする遺伝子をさらに含む、項目19に記載のげっ歯類ゲノム。
(項目21)
前記リコンビナーゼの活性が、誘導性である、項目20に記載のげっ歯類ゲノム。
(項目22)
前記リコンビナーゼが、Creである、項目21に記載のげっ歯類ゲノム。
(項目23)
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、前記Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、項目22に記載のげっ歯類ゲノム。
(項目24)
前記ERの前記リガンド結合ドメインが、T2変異を含む、項目23に記載のげっ歯類ゲノム。
(項目25)
前記リガンドが、タモキシフェンである、項目23または24に記載のげっ歯類ゲノム。
(項目26)
前記げっ歯類ゲノムが、前記修飾Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である、項目19~25のいずれか一項に記載のげっ歯類ゲノム。
(項目27)
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、項目19~26のいずれか一項に記載のげっ歯類ゲノム。
(項目28)
項目19~27のいずれか一項に記載のげっ歯類ゲノムを含む、単離されたげっ歯類組織または細胞。
(項目29)
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、項目28に記載の単離されたげっ歯類組織または細胞。
(項目30)
前記げっ歯類細胞が、胚性幹細胞である、項目28または29に記載の単離されたげっ歯類組織または細胞。
(項目31)
げっ歯類ゲノム中のAcvr1遺伝子の標的修飾のための核酸構築物であって、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
前記第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、変異げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される、核酸構築物。
(項目32)
前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、前記ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1ヌクレオチド異なり、前記ヒトACVR1エクソン7と前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている、項目31に記載の核酸構築物。
(項目33)
前記SRRSの第1の対および第2の対が、Lox2372およびLoxPであるか、またはその逆である、項目31に記載の核酸構築物。
(項目34)
前記リコンビナーゼが、Creである、項目31に記載の核酸構築物。
(項目35)
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)と融合され、その結果、前記Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、項目34に記載の核酸構築物。
(項目36)
前記ERが、T2変異を含む、項目35に記載の核酸構築物。
(項目37)
前記リガンドが、タモキシフェンである、項目35に記載の核酸構築物。
(項目38)
前記げっ歯類が、マウスまたはラットから選択される、項目31~37のいずれか一項に記載の核酸構築物。
(項目39)
遺伝子修飾げっ歯類を作製する方法であって、内因性げっ歯類Acvr1座内の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含むようにげっ歯類ゲノムを修飾することを含み、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7であって、前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
前記第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される、方法。
(項目40)
前記げっ歯類ゲノムが、
a.げっ歯類胚性幹(ES)細胞に核酸構築物を導入することであって、前記核酸構築物が、
前記SRRS’の第1の対に隣接したセンス方向の前記実質的なヒトACVR1エクソン7と、
前記SRRS’の第2の対に隣接したアンチセンス方向でR258Gをコードする前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
前記核酸構築物が、前記内因性げっ歯類Acvr1座内に前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子をもたらす前記内因性げっ歯類Acvr1座を標的とする、導入することと、
b.そのゲノムが前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類ES細胞を取得することと、
c.b)からの前記遺伝子修飾げっ歯類ES細胞を使用して遺伝子修飾げっ歯類を作製することと、を含むプロセスによって修飾される、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記遺伝子修飾げっ歯類が、修飾Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である、項目39または40に記載の方法。
(項目42)
前記げっ歯類ES細胞が、前記リコンビナーゼをコードする遺伝子をさらに含む、項目40または41に記載の方法。
(項目43)
前記リコンビナーゼの活性が、誘導性である、項目39~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記リコンビナーゼが、Creである、項目39~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、前記Creの活性が、前記ERとのリガンド結合によって誘導される、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記ERの前記リガンド結合ドメインが、T2変異を含む、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記リガンドが、タモキシフェンである、項目45または46に記載の方法。
(項目48)
前記げっ歯類の細胞または組織において前記リコンビナーゼの活性を誘導することをさらに含み、前記リコンビナーゼが、改変エクソン7を反転させ、実質的なヒトエクソン7を削除し、それによって、前記改変エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が、前記細胞または組織で発現されることを可能にする、項目43~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記げっ歯類が、マウスまたはラットから選択される、項目40~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
育種する方法であって、そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む第1のげっ歯類を第2のマウスと育種させ、そのゲノムが前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む子孫げっ歯類をもたらすことを含み、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a.部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、前記実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b.前記SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
前記第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される、方法。
(項目51)
前記第1のげっ歯類が、前記修飾げっ歯類Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記第2のげっ歯類が、誘導性リコンビナーゼを含む、項目50または51に記載の方法。
(項目53)
前記誘導性リコンビナーゼが、誘導性Creリコンビナーゼである、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記誘導性Creリコンビナーゼが、タモキシフェン誘導性Cre-ER
T2
リコンビナーゼを含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記子孫げっ歯類の細胞または組織において前記誘導性リコンビナーゼを誘導することをさらに含み、その結果、誘導されたリコンビナーゼが、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、前記細胞または組織中の前記実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、それによって、前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子を生成する、項目52~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、項目50~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
項目50~56のいずれか一項に記載の方法に従って生成される子孫げっ歯類。
(項目58)
異所性骨形成を治療するための候補治療化合物を試験する方法であって、
項目1~8および10のいずれか一項に記載の遺伝子修飾げっ歯類を提供することと、
前記改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように、前記げっ歯類において前記リコンビナーゼの活性を誘導することと、
前記候補化合物を前記げっ歯類に投与することと、
前記候補化合物が、前記げっ歯類における異所性骨形成の発症を阻害するかを決定することと、を含む、方法。
(項目59)
前記候補化合物が、前記リコンビナーゼ活性の誘導の前、間、または後に前記げっ歯類に投与される、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記候補化合物が、小分子化合物である、項目58に記載の方法。
(項目61)
前記候補化合物が、核酸である、項目58に記載の方法。
(項目62)
前記候補化合物が、抗体またはその抗原結合断片である、項目58に記載の方法。
(項目63)
前記抗体またはその抗原結合断片が、アクチビン受容体1に対する抗体またはその抗原結合断片である、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記抗体またはその抗原結合断片が、アクチビン受容体2A型に対する抗体またはその抗原結合断片である、項目62に記載の方法。
(項目65)
前記抗体またはその抗原結合断片が、アクチビン受容体2B型に対する抗体またはその抗原結合断片である、項目62に記載の方法。
(項目66)
前記抗体またはその抗原結合断片が、アクチビンAに対する抗体またはその抗原結合断片である、項目62に記載の方法。
(項目67)
前記げっ歯類が、マウスまたはラットである、項目58~66のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】Acvr1野生型からR258GFlExの概略図を示す。上の概略図は、ノックインおよびNeo削除後のAcvr1ゲノム領域を示す。下の概略図は、Cre介在性反転および削除後のゲノム領域を示し、変異エクソンをその正常な位置および方向に配置する。ヒトエクソン(白抜きのボックス)および隣接するイントロン(白抜きのバー)配列を使用して、転写中の逆位マウスエクソン/イントロン(縞模様のボックス/縞模様のバー)配列によるヘアピン形成を低減した。マウスエクソンとの配列同一性をさらに低減させるために、ヒトエクソンに追加のヌクレオチド変更を行った。
【
図2】Acvr1
[R258G]FlEx/+;Gt(ROSA26)
SorCreERt2/+マウスが、タモキシフェン治療後に異所性骨化(HO)を発症したことを示す。4匹のAcvr1
[R258G]FlEx/+;Gt(ROSA26)Sor
CreERt2/+マウスに、1日5回40mg/kgのタモキシフェン注射を投与した。2週間後、全てのマウスはHO形成を示した。
【
図3】抗アクチビンA遮断抗体が、Acvr1
R258G条件付きノックインマウスにおけるHO形成を阻害することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、異所性骨形成の常染色体優性障害である。およそ95%のFOPは、アクチビンAI型受容体(Acvr1)におけるR206H変異により引き起こされる。しかしながら、R258Gを含むGSドメインまたはキナーゼドメインのいずれかにおけるいくつかの他の変異は、より重度の表現型を伴う非定型FOPを引き起こすことが報告されている。R258G変異を有する2人の患者は、出生後の異所性骨化の発症に加えて、深刻な発達異常を有する(Kaplan et al.,Am J Med Genet A.2015;167(10):2265-2271)。
【0064】
異所性骨形成を特徴とする障害、例えばFOPをもたらす変化を含むAcvr1タンパク質を発現することができる遺伝子修飾げっ歯類が提供される。いくつかの実施形態では、改変Acvr1タンパク質を発現するげっ歯類は、キメラではないげっ歯類、例えば、そのゲノムが、一旦発現されるとげっ歯類において異所性骨形成をもたらす条件付き改変を含む修飾Acvr1遺伝子を担持するげっ歯類を含む。
【0065】
機能性エクソンの条件付き削除および機能性エクソンの改変エキソンによる置換を提供するFlEx設計を含む遺伝子修飾げっ歯類が提供される。機能性エクソンは、機能性である、すなわち、その期待される生物学的機能を果たすタンパク質のアミノ酸をコードする。いくつかの実施形態では、機能性エクソンは、天然に発生する野生型エクソンである。いくつかの実施形態では、機能性エクソンは、野生型エクソンと同じアミノ酸をコードする。FlExは、アンチセンス鎖内の改変エクソン(ここでは「逆改変エクソン」と称される)をコードする核酸配列を、後に削除される機能性エクソンの隣に配置することにより、条件付き対立遺伝子を形成することを可能にする。選択された部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)を利用することにより、それらの同族リコンビナーゼの存在下で、逆改変エクソンがセンス鎖に運ばれ、したがって残りの遺伝子と共にフレーム内にも取り込まれ、機能性エクソンは削除される。このFlExアプローチは、機能性および改変エクソンを囲む互換性のないSRRS’(例えば、lox2372およびloxP)の配置に依存する。したがって、FlExアプローチの1つの利点は、FlEx対立遺伝子が選択されたリコンビナーゼ(複数可)によって作用されない限り、(周産期/胚性)致死性変異は発現しないことである。このFlExアプローチの別の利点は、選択されたリコンビナーゼへの曝露時に機能エクソンを永久的に除去することであり、したがって、逆転後のゲノムに逆方向反復が残らないため、野生型アレルを再生成する可能性が排除される。またFlExアプローチの別の利点は、2つの異なる型のSRRSのそれぞれのうちの1つ(例えば、2つのlox2372部位のうちの1つ、およびloxP部位のうちの1つ)の除去から生じる、センス鎖における改変エクソンの永久固定である。また、野生型げっ歯類エクソンのヒト化によって誘導される機能エクソンは、逆方向反復配列を最小化し、それによってクローニングステップを容易にし、標的化中および標的化後の再配列の懸念、ならびに対応するmRNAの成熟中のRNAスプライシングアーティファクトを軽減する。いくつかの実施形態では、実質的なヒト野生型エクソンが、FlEx設計に使用される。「ヒト野生型エクソン」または「ヒトエクソン」は、ヒト由来の天然に発生する機能性エクソンを指す。「実質的なヒト野生型エクソン」または「実質的なヒトエクソン」という用語は、天然に発生する、機能性ヒトエクソンおよびその修飾形態の両方を含み、天然に発生するヒトエクソンの1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上)ヌクレオチドが改変されている。特定の実施形態では、1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上)ヌクレオチドは、コードされたアミノ酸(本質的な改変コドン選択)を変更することなく改変されており、げっ歯類エクソンとの配列同一性を減少させ、これにより、逆方向反復配列がさらに最小化され、再構成の可能性が低減される。
【0066】
FlEx対立遺伝子を保有するげっ歯類をリコンビナーゼ含有げっ歯類と育種させた場合、改変対立遺伝子が子宮内の子孫で発現され、改変が周産期/胚性致死性改変である場合、対立遺伝子を発現する研究可能な動物を作製する目的が損なわれ得る。したがって、FlEx対立遺伝子を保有するげっ歯類は、非制御リコンビナーゼ含有げっ歯類と育種されない。代わりに、FlEx対立遺伝子を保有するげっ歯類は、その活性が誘導性である(例えば、誘導物質に応答する)(すなわち、誘導性リコンビナーゼ)リコンビナーゼを発現するげっ歯類と育種される。誘導性リコンビナーゼは、リコンビナーゼをタンパク質のリガンド結合ドメインと融合することによって作製することができ、その同族リガンドまたは同族リガンドの機能的誘導体と結合すると、タンパク質を機能的にする(例えば、タンパク質を安定化することによって)。同族リガンドの機能的誘導体は、構造が類似しており、同族リガンドと実質的に同じ機能(すなわち、同じ受容体への結合)を実行する化合物を指す。かかるリガンド結合ドメインの例には、ステロイド受容体、グルココルチコイド受容体、レチノイド受容体、および甲状腺受容体のリガンド結合ドメインが含まれるが、これらに限定されない(Eilers et al.(1989)Nature340:66-68、Picard et al.(1988)Cell 54:1073-1080)。いくつかの実施形態では、誘導性リコンビナーゼは、Creと、T2変異(Cre-ERT2対立遺伝子によりコードされる)で修飾されたエストロゲン受容体(ER)との間の融合タンパク質である。この融合タンパク質では、Creリコンビナーゼは、ERのリガンドの非存在下では不活性であり(Indra,A.et al.(1999),Nucleic Acids Res.27(22):4324-4327、Feil,R.et al.(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.237:752-757、米国特許第7,112,715号)、Creリコンビナーゼは、ERのリガンド、例えば、タモキシフェン、またはタモキシフェンの機能的誘導体と共に提供されると活性になる。したがって、本明細書に記載されるようにCre応答性SRRS’で構築され、Cre-ERT2対立遺伝子を含有する条件付き対立遺伝子を含むげっ歯類は、げっ歯類がERのリガンドに曝露されてCre活性を誘導しない限り、機能エクソンを含む対立遺伝子を発現することになる。このようにして、げっ歯類は、その生殖系列内に修飾Acvr1遺伝子を含有するが、げっ歯類がER(例えば、タモキシフェン)のリガンドに曝露されない限り、かつ曝露されるまで、対応するバリアントAcvr1タンパク質を発現しないげっ歯類が生成される。リガンドへの曝露後、Cre-ERT2融合タンパク質が活性化され、条件付き対立遺伝子が対応する改変対立遺伝子に変換される。
【0067】
リガンドは、非経口および非経口でない投与経路を含む、リコンビナーゼの活性を誘導するために様々な経路を介してげっ歯類に投与することができる。非経口経路には、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄内、髄腔内、脳室内、頭蓋内、胸膜内、または他の注射経路が含まれる。非経口でない経路には、例えば、経口、鼻、経皮、肺、直腸、頬側、膣、眼球が含まれる。特定の実施形態では、リガンドは、腹腔内注射を介してげっ歯類に投与される。
【0068】
様々な実施形態では、改変対立遺伝子への変換は不可逆的であり、機能性エクソンが削除される。このようにして、致死性Acvr1変異を含有するげっ歯類系統は、実質的に無期限に維持され、所望される遺伝子病変および所望されるときにいつでも付随する表現型を生成することができる。
【0069】
本明細書で提供されるげっ歯類には、例えば、マウス、ラット、およびハムスターが含まれる。育種実施形態では、げっ歯類は、マウスまたはラットである。特定の実施形態では、げっ歯類は、マウスである。Acvr1は、種間で高度に保存されており、R258は、マウスおよびラットで保存されており、同じ位置である。
【0070】
いくつかの実施形態では、げっ歯類は、C57BL系統、例えば、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、およびC57BL/Olaから選択されるC57BL系統のマウスである。別の実施形態では、げっ歯類は、129系統、例えば、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129/SvJae、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2からなる群から選択される129系統のマウスである(例えば、Festing et al.(1999),Mammalian Genome 10:836、Auerbach et al.(2000),Biotechniques 29(5):1024-1028,1030,1032を参照されたい)。いくつかの実施形態では、げっ歯類は、前述の129系統および前述のC57BL/6系統を混合したマウスである。特定の実施形態では、マウスは、前述の129系統の混合(すなわち、交雑)、または前述のC57BL系統の混合、またはC57BL系統および129系統の混合である。特定の実施形態では、当該マウスは、C57BL/6系統と129系統の混合である。特定の実施形態では、マウスは、VGF1系統であり、これは、C57BL/6および129の交雑であるF1H4系統としても知られる。他の実施形態では、マウスは、BALB系統、例えばBALB/c系統である。いくつかの実施形態では、マウスは、BALB系統および別の前述の系統の混合である。
【0071】
いくつかの実施形態では、げっ歯類は、ラットである。特定の実施形態では、ラットは、Wistarラット、LEA系統、Sprague Dawley系統、Fischer系統、F344、F6、およびDark Agoutiから選択される。他の実施形態では、ラットは、Wistar、LEA、Sprague Dawley、Fischer、F344、F6、およびDark Agoutiからなる群から選択される2つ以上の系統の混合である。
【0072】
R258G変化を含む条件付きAcvr1対立遺伝子は、FlEx法を利用して操作することができる。例えば、Schnutgen,F.et al.(2003)Nat.Biotech.21:562-565、および米国特許第7,205,148号を参照されたい。FlExは、同じリコンビナーゼ(Cre)によって認識されるが、互いに反応せず、A-B/[A-B]構成で配置された、FlExアレイと称される変異Lox部位の対を採用しており、「[A-B]」は「A-B」に対して反対の鎖にあり、アレイに隣接するDNA配列の反転を可能にする。いくつかの実施形態において、LoxP-Lox2372の対は、本明細書に記載される条件付き対立遺伝子に対する変異Lox部位の組み合わせとして使用される。これら2つの変異Lox部位は、交差反応性を示さない。各アレイ内、すなわち各アレイのLoxPとLox2372部位との間に含まれる配列は、Creによって作用が行われると削除される。条件付き対立遺伝子の一実施形態が
図1に示される。
【0073】
マウスAcvr1は、様々なスプライスバリアント(例えば、Acvr1-201、202、203、204)を示す。FOPで変異したエクソンは、Acvr1の全てのタンパク質コード化スプライスバリアントによって共有される。一実施形態では、アイソフォームAcvr1-201のエクソン7(ENSMUSE00001232449)の修飾を含む条件付きAcvr1対立遺伝子が本明細書に開示される。
【0074】
Acvr1[R258G]FlEx対立遺伝子は、げっ歯類Acvr1(例えば、ENSMUSE00001232449)のアミノ酸258コード化エクソンの改変版をアンチセンス鎖に配置することによって操作することができ、それにより改変エクソンはAcvr1の転写物に組み込まれない。エクソン7によってコードされる配列がAcvr1機能に必要とされるため、機能性エクソン7も設計に組み込まれることが必要である(エクソン7は、Acvr1のすべてのタンパク質コード化スプライスバリアントによって共有される)。さらに、エクソンは補助イントロン配列なしではそのように認識されないため、エクソンの上流および下流の配列も、改変および機能性アミノ酸258コード化エクソンの両方に組み込まれる。しかしながら、そうすることで、大きな逆方向反復が生成され、かかるDNA構造は、標的化ベクターの構築に必要な遺伝子操作ステップ、および標的化後のインビボでの両方で、本質的な組換えを起こしやすい傾向がある(Holkers,M.et al.(2012)Nucleic Acids Res.40:1984-1999)。さらに、アミノ酸258コード化エクソンの野生型げっ歯類配列、およびエクソンと関連する上流および下流のイントロン配列が無傷で保持され、改変げっ歯類エクソンに先行する場合、この野生型領域は、相同性アームとして作用し、げっ歯類ES細胞における標的化中に利用され得、それによって、改変エクソンが標的化対立遺伝子から除外される。
【0075】
したがって、Acvr1[R258G]FlEx対立遺伝子は、以下のような様式で設計できる:
a)大きな逆方向反復は回避される。これを達成するために、R258コード化エクソン(例えば、ENSMUSE00001232449)ならびに関連する上流および下流のイントロン配列を、ヒトACVR1からの対応する領域と置換することができる。
b)R258コード化エクソン(例えば、ENSMUSE00001232449)の野生型げっ歯類配列は、タンパク質レベルで保存される。エクソンENSMUSE00001232449およびENSE00001009617によってコードされるマウスおよびヒトのタンパク質配列はそれぞれ同一である。しかしながら、可能な場合、ヒトエクソン配列(例えば、ENSE00001009617)内のコドンは、エクソンによってコードされるアミノ酸を改変することなく、げっ歯類とヒトエクソンとの間のヌクレオチド配列同一性をさらに減少させるように改変され得る。
c)導入されたヒト配列は、Creによる作用で完全に削除される。したがって、Acvr1[R258G]変異遺伝子が転写される「条件付きオン」状態においては、ヒト配列は残らず、結果として生じる表現型は、無関係な配列の存在に起因するものではない。
【0076】
より詳細には、例として、mmuAcvr1におけるヌクレオチド58468399~58468770(すなわち、マウス染色体2のヌクレオチド58468399~58468770、GRCm38/mm10)により囲まれた領域を、hsaACVR1エクソンENSE00001009617を含む導入された配列が、結果として生じる修飾Acvr1[R258G]FlEx座の一部として転写されるような方法で、hsaACVR1のヌクレオチド157770252~157770625(すなわち、ヒト2番染色体のヌクレオチド157770252~157770625、GRCh38/hg38)で構成される核酸に置換した。さらに、コドン選択を改変することにより、ヒトエクソンENSE00001009617のヌクレオチド配列を改変し、コードされたタンパク質を改変することなく、マウスとヒトエクソンとの間の配列同一性を低減した。この導入したヒト配列を、以降、hsa_e7+と称した。したがって、FlEx要素(改変エクソンENSMUSE00001232449ならびに関連する上流および下流のイントロン配列-以下を参照)の反転の前に、結果として生じる座Acvr1[R258G]FlExは、野生型として機能するべきである。
【0077】
R258G変化を、ヌクレオチド58468530~58468532によって定義されるコドンをAGG(アルギニンをコードする)からGGG(グリシンをコードする)に改変することにより、対応する位置でエクソンENSMUSE00001232449を改変することによってモデル化した。得られた変異エクソンを、隣接するイントロン配列と共に、hsa_e7+の3’側およびmmuAcvr1のアンチセンス鎖に配置した。さらに、LOAプローブに対応する小さな削除を作製するために、mmuAcvr1のヌクレオチド58468771~58468815を削除した(Gomez-Rodriguez,J.et al.(2008)Nucleic Acids Res.36:e117、Valenzuela,D.et al.(2003)High-throughput engineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis,Nat.Biotech.21:652-659)。この導入した変異マウス配列は、以後、mmu_e7R258G+と称した。
【0078】
ヒトエクソン7、R258Gをコードする改変マウスエクソン7、および改変ヒトエクソン7の例示的な配列を、上流および下流イントロン配列と共に以下に要約し、配列表に記載する。
配列番号の説明
1 ヒトエクソン7
2 コドン改変を有するヒトエクソン7
3 コドン改変エクソン7および周囲のイントロンを含むヒト配列
4 R258Gをエンコードするマウス改変エクソン7
5 マウス改変エクソン7(構築物中で逆転)
6 改変エクソン7および周囲のイントロンを含むマウス配列
7 改変エクソン7および周囲のイントロンを含むマウス配列(構築物中で逆転)
8 ヒトエクソン7
【0079】
mmu_e7R258G+のCre依存性反転およびhsa_e7+の同時削除を可能にするために、LoxアレイのようなFlExの組み合わせを以下のように使用した:
a)hsa_e7+は、LoxP部位が前にあり、Lox2372部位がそれに続く。この点において、hsa_e7+は5’LoxP-Lox2372 FlEx様アレイに収容される。
b)mmu_e7R258G+は、3’LoxP-Lox2372 FlEx-様アレイが続くが、このアレイは、5’LoxP-Lox2372 FlEx-様アレイに対する鏡像構成になるように設計されている。これにより、Creによるmmu_e7R258G+のセンス鎖への永続的な反転が可能になる。
【0080】
得られた対立遺伝子Acvr1[R258G]FlExがCreに曝露されると、hsa_e7+は削除され、mmu_e7R258G+はセンス鎖に反転される。結果として、Acvr1[R258G]はAcvr1の代わりに表現される。
【0081】
上述のAcvr1 FlEx対立遺伝子を含む標的化核酸構築物は、げっ歯類ゲノム内にAcvr1 FlEx対立遺伝子を導入するために作製することができる。Acvr1 FlEx配列(センス方向および周囲のイントロン配列の実質的なヒトエクソン7、アンチセンス方向でR258Gをコードし、周囲のイントロン配列の改変げっ歯類エクソン7、ならびに組換え認識部位)に加えて、核酸構築物は、内因性げっ歯類Acvr1座へのAcvr1FlEx配列の相同組換えおよび組み込みを媒介することができるように、好適な長さであり、内因性げっ歯類Acvr1座でげっ歯類Acvr1遺伝子配列と相同である隣接配列を含むことができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、Acvr1 FlEx対立遺伝子を含む標的化核酸構築物は、げっ歯類胚性幹(ES)細胞に導入され、ES細胞のゲノムを修飾する。マウスES細胞およびラットES細胞の両方が当技術分野で記載されている。例えば、米国特許第7,576,259号、第7,659,442号、および第7,294,754号、ならびに米国公開第2008/0078000 A1号(その全ては参照により本明細書に組み込まれる)は、マウスES細胞および遺伝子修飾マウスを作製するためのVELOCIMOUSE(登録商標)方法を記載しており、米国公開第2014/0235933 A1号および米国公開第2014/0310828 A1号(その全ては参照により本明細書に組み込まれる)は、ラットES細胞および遺伝子修飾ラットを作製する方法を記載しているので参照されたい。
【0083】
内因性げっ歯類Acvr1座位内に組み込まれたAcvr1FlEx対立遺伝子を有するES細胞を選択することができる。次に、ゲノムに組み込まれたAcvr1 FlEx対立遺伝子を有するES細胞は、VELOCIMOUSE(登録商標)法(例えば、米国特許第7,576,259号、第7,659,442号、および第7,294,754号、ならびに米国公開2008/0078000 A1号を参照されたい)、または米国公開第2014/0235933 A1号および第2014/0310828 A1号に記載される方法を使用して、桑実胚前期胚(例えば、8細胞期胚)に注射するためのドナーES細胞として使用される。ドナーES細胞を含む胚は、胚盤胞期まで培養し、次に代理母に移植して、完全にドナーES細胞に由来するF0げっ歯類を産生する。FlEx対立遺伝子を持つげっ歯類の子は、例えば、対立遺伝子アッセイの喪失を用いて、尾部断片から単離されたDNAの遺伝子型決定によって特定することができる(Valenzuela et al.,前述)。
【0084】
様々な実施形態では、Acvr1 FlEx対立遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類は、FlEx対立遺伝子を含むようにげっ歯類ES細胞を修飾し、誘導性リコンビナーゼ(例えば、Cre-ERT2)をコードする遺伝子を含むように同じES細胞を修飾し、ES細胞をドナー細胞として使用して、FlEx対立遺伝子および誘導性リコンビナーゼをコードする遺伝子を含むげっ歯類を作製することによって作製される。いくつかの実施形態では、Acvr1 FlEx対立遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類は、誘導性リコンビナーゼ(例えば、Cre-ERT2)をコードする遺伝子を既に含むげっ歯類ES細胞を使用して作製され、かかるげっ歯類ES細胞を修飾してFlEx対立遺伝子を含むように作製される。他の実施形態では、Acvr1 FlEx対立遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類が作製され、誘導性リコンビナーゼ(例えば、Cre-ERT2)をコードする遺伝子を含むげっ歯類と交配されて、FlEx対立遺伝子および誘導性リコンビナーゼをコードする遺伝子を含む子孫が取得される。
【0085】
Acvr1
R258GFlEx/+;Gt(ROSA26)Sor
CreERt2/+成体マウスは表現型は正常であったが、R258Gコード化Acvr1対立遺伝子の全身の活性化は進行性骨化をもたらし、米国特許第9,510,569号に記載されるAcvr1R206H Flexマウスで見られるのと同様の方法で、タモキシフェン投与後2週間という早い時期にエックス線撮影で明らかとなった。
図2も参照されたい。
【0086】
本明細書に提供されるげっ歯類は、FOPなどの異所性骨障害の発生の根底にある分子機構をよりよく理解することを可能にする。さらに、かかるげっ歯類は、FOPを含む異所性骨障害の阻害、予防、および/または治療のための治療化合物のスクリーニングおよび開発に使用することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、候補治療化合物は、本明細書に開示されるげっ歯類、すなわち、Acvr1 FlEx対立遺伝子を保有するげっ歯類に化合物を投与することによって、インビボで試験される。
【0088】
候補治療化合物は、これらに限定されないが、小分子化合物、抗体、阻害性核酸、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。特定の実施形態では、化合物は、抗体またはその抗原結合断片、例えば、抗Acvr1抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、化合物は、アクチビン受容体1、アクチビン受容体2A型、およびアクチビン受容体2B型のうちの1つ以上のアンタゴニストを含む。任意のかかるアンタゴニストは、抗体を含み得る。いくつかの実施形態では、化合物は、アクチビンAに対する抗体を含む。アクチビン受容体1に対する、アクチビン受容体2A型に対する、アクチビン受容体2B型に対する、またはアクチビンAに対するアンタゴニストまたは抗体は、米国特許 第2018/0111983号に記載または例示される任意のアンタゴニストまたは抗体であり得る。
【0089】
化合物の投与は、げっ歯類におけるリコンビナーゼ活性の誘導の前、最中、または後に実施して、変異Acvr1対立遺伝子の発現を可能にし得る。候補治療化合物は、非経口および非経口でない投与経路を含む任意の所望の投与経路を介して投与することができる。非経口経路には、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄内、髄腔内、脳室内、頭蓋内、胸膜内、または他の注射経路が含まれる。非経口でない経路には、例えば、経口、鼻、経皮、肺、直腸、頬側、膣、眼球が含まれる。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)からの持続放出、および/または静脈内注射によるものであり得る。
【0090】
記載したげっ歯類動物から得られた試料を使用して、投与された化合物の薬物動態特性を決定するために、様々なアッセイを実施することができる。薬物動態特性としては、これらに限定されないが、非ヒト動物がどのように薬剤を処理して様々な代謝物にするか(または、限定されないが有毒代謝物を含む1つ以上の薬剤代謝物の有無の検出)、化合物の半減期、循環レベル(例えば、血清濃度)、抗化合物応答(例えば、抗体)、吸収および分布、投与経路、排泄および/またはクリアランスの経路が含まれる。
【0091】
いくつかの実施形態では、アッセイを行うことは、化合物が投与された変異げっ歯類動物と、化合物が投与されていない変異げっ歯類動物との間の差を決定すること、および化合物がげっ歯類における異所性骨形成の発症および/または進行を阻害できるかを決定することが含まれる。
【0092】
本明細書は、限定するものとして解釈すべきではない以下の実施例により、さらに例示される。全ての引用参考文献(本出願全体で引用される文献参照、発行特許、および公表された特許出願を含む)は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0093】
実施例1
mmuAcvr1におけるヌクレオチド58468399~58468770(すなわち、マウス染色体2のヌクレオチド58468399~58468770、GRCm38/mm10)により囲まれた領域を、hsaACVR1エクソンENSE00001009617を含む導入された配列が、結果として生じる修飾Acvr1[R258G]FlEx座の一部として転写されるような方法で、hsaACVR1のヌクレオチド157770252~157770625(すなわち、ヒト2番染色体のヌクレオチド157770252~157770625、GRCh38/hg38)で構成される核酸に置換した。さらに、コドン選択を改変することにより、ヒトエクソンENSE00001009617のヌクレオチド配列を改変し、コードされたタンパク質を改変することなく、マウスとヒトエクソンとの間の配列同一性を低減した。この導入したヒト配列を、以降、hsa_e7+と称した。したがって、FlEx要素(改変エクソンENSMUSE00001232449ならびに関連する上流および下流のイントロン配列-以下を参照)の反転の前に、結果として生じる座Acvr1[R258G]FlExは、野生型として機能するべきである。
【0094】
R258G変化を、ヌクレオチド58468530~58468532によって定義されるコドンをAGG(アルギニンをコードする)からGGG(グリシンをコードする)に改変することにより、対応する位置でエクソンENSMUSE00001232449を改変することによってモデル化した。得られた改変エクソンを、隣接するイントロン配列と共に、hsa_e7+の3’側およびmmuAcvr1のアンチセンス鎖に配置した。さらに、LOAプローブに対応する小さな削除を作製するために、mmuAcvr1のヌクレオチド58468771~58468815を削除した(Gomez-Rodriguez,J.et al.(2008)Nucleic Acids Res.36:e117、Valenzuela,D.et al.(2003)High-throughput engineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis,Nat.Biotech.21:652-659)。この導入した変異マウス配列は、以後、mmu_e7R258G+と称した。
【0095】
mmu_e7R258G+のCre依存性反転およびhsa_e7+の同時削除を可能にするために、LoxアレイのようなFlExの組み合わせを以下のように使用した:
a)hsa_e7+は、LoxP部位が前にあり、Lox2372部位がそれに続く。この点において、hsa_e7+は5’LoxP-Lox2372 FlEx様アレイに収容される。
b)mmu_e7R258G+は、3’LoxP-Lox2372 FlEx-様アレイが続くが、このアレイは、5’LoxP-Lox2372 FlEx-様アレイに対する鏡像構成になるように設計されている。これにより、Creによるmmu_e7R258G+のセンス鎖への永続的な反転が可能になる。
【0096】
得られた対立遺伝子Acvr1[R258G]FlExがCreに曝露されると、hsa_e7+は削除され、mmu_e7R258G+はセンス鎖に反転される。結果として、Acvr1[R258G]はAcvr1の代わりに表現される。
【0097】
ホモ接合性Acvr1[R258G]FlEx/R258G]FlEx]マウスは、このマウスではスプライシングが正常であり、野生型Acvr1が発現していたことを示唆して、予想したメンデル比で出生した。
【0098】
実施例2
Acvr1[R258G]FlExマウスにおいてFOPを誘導する
Acvr1[R258G]FlEx対立遺伝子の時間制御されるが全身での反転を可能にするために、Acvr1[R258G]FlExマウスをGt(ROSA26)SorCreERT2/+マウスと交配させ、Acvr1[R258G]FlEx;Gt(ROSA26)SorCreERT2/+を生成した。これらは、混合-C57BL/6NTac-129S6/SvEvTacバックグラウンドでヘテロ接合性に維持された。全ての実験は、Regeneronの動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee of Regeneron)に従って実施した。雄および雌マウスは共に8~11週齢で使用したが、マウスは年齢および性別を群間で一致させた。年齢および性別に関連する表現型は認められなかった。モデルは、R258Gコード化エクソンをセンス鎖に反転させることによって開始され、これはAcvr1[R258G]FlEx;Gt(ROSA26)SorCreERT2/+マウスを、油中の40mg/kgのタモキシフェン(Sigma)を腹腔内(i.p.)に5日間処理することによって達成した(CreERT2を活性化するため)。異所性骨形成を評価するために、マウスをイソフルオランで麻酔し、インビボμCT(Quantum FX,PerkinElmer,Hopkinton,MA,USA)を使用して、60mm×120mmの視野で全身スキャンした。X線源を、電流160μA、電圧90 kVp、ボクセルサイズ120または240μmに設定した。
【0099】
Acvr1
R258GFlEx/+;Gt(ROSA26)Sor
CreERt2/+成体マウスは表現型は正常であったが、R258G変異Acvr1対立遺伝子の全身の活性化は進行性骨化をもたらし、米国特許第9,510,569号に記載されるAcvr1R206HFlexマウスで見られるのと同様の方法で、タモキシフェン投与後2週間という早い時期にエックス線撮影で明らかとなった。
図2も参照されたい。
【0100】
マウスの抗体投与
治療試験では、Acvr1[R258G]FlEx/+;RosaCreERT2マウスを、分離し、群間で年齢と性別の一致を確認し、タモキシフェン投与と同日に治療を開始した。マウスに、ヒトアクチビンAに対して生成された中和抗体(米国特許出願第2015/0037339号)またはアイソタイプ対照抗体のいずれか25mg/kgを週に1回、6週間皮下(s.c.)注射した。異所性骨形成をインビボμCTイメージングによって週に1回モニタリングした。
【0101】
図3に示すように、アイソタイプ対照抗体を受容したマウスは、4週間でHOを発症し、アクチビンAを遮断する抗体を受容したマウスは、4週間後にμCTバックグラウンドを上回るHO形成を検出しなかった。
【0102】
要約すると、ACVR1R206HまたはACVR1R258Gの条件付きノックイン対立遺伝子は、マウスなどのげっ歯類における進行性骨化性線維異形成症(FOP)を忠実にモデル化し、アクチビンA中和抗体は、かかるげっ歯類モデルにおける異所性骨化の発症を遮断する。
さらなる実施形態
1.遺伝子修飾げっ歯類は、そのゲノムが、内因性げっ歯類Acvr1座内の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含み、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a)部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、変異げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される。
2.項目1に記載の遺伝子修飾げっ歯類は、実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と少なくとも1ヌクレオチド異なり、ヒトACVR1エクソン7と改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている。
3.項目1に記載の遺伝子修飾げっ歯類は、リコンビナーゼをコードする遺伝子が、遺伝子修飾げっ歯類のゲノム中にあり、リコンビナーゼの活性が、誘導性である。
4.項目1~3のいずれか1つに記載の遺伝子修飾げっ歯類は、リコンビナーゼが、Creである。
5.項目4に記載の遺伝子修飾げっ歯類は、Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、Creの活性が、ERとのリガンド結合によって誘導される。
6.項目5に記載の遺伝子修飾げっ歯類は、ERのリガンド結合ドメインが、T2変異を含む。
7.項目5または6に記載の遺伝子修飾げっ歯類は、リガンドが、タモキシフェンである。
8.項目1~7のいずれか1つに記載の遺伝子修飾げっ歯類は、遺伝子修飾げっ歯類が、修飾Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である。
9.項目1~8のいずれかに記載の遺伝子修飾げっ歯類に由来する変異げっ歯類は、変異げっ歯類が、センス方向の改変エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子を含むゲノムを有し、改変Acvr1対立遺伝子が、異所性骨形成をもたらす変異げっ歯類で発現される。
10.項目1~9のいずれかに記載のげっ歯類は、マウスまたはラットから選択される。
11.核酸は、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含み、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a)部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、変異げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、実質的なヒトACVR1エクソン7を削除できるように配向される。
12.項目11に記載の核酸は、実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と少なくとも11ヌクレオチド異なり、ヒトACVR1エクソン7と改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている。
13.項目11に記載の核酸は、リコンビナーゼの活性が、誘導性である。
14.項目11~13のいずれか1つに記載の核酸は、リコンビナーゼが、Creである。
15.項目14に記載の核酸は、Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、Creの活性が、ERとのリガンド結合によって誘導される。
16.項目15に記載の核酸は、ERのリガンド結合ドメインが、T2変異を含む。
17.項目15または16に記載の核酸は、リガンドが、タモキシフェンである。
18.項目11~17のいずれか1つに記載の核酸は、げっ歯類が、マウスまたはラットである。
19.げっ歯類ゲノムは、項目11または12に記載の核酸を含む。
20.項目19に記載のげっ歯類ゲノムは、SRRS’を認識し、改変エクソンを反転させるリコンビナーゼをコードする遺伝子をさらに含む。
21.項目20に記載のげっ歯類ゲノムは、リコンビナーゼの活性が、誘導性である。
22.項目21に記載のげっ歯類ゲノムは、リコンビナーゼが、Creである。
23.項目22に記載のげっ歯類ゲノムは、Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、Creの活性が、ERとのリガンド結合によって誘導される。
24.項目23に記載のげっ歯類ゲノムは、ERのリガンド結合ドメインが、T2変異を含む。
25.項目23または24に記載のげっ歯類ゲノムは、リガンドが、タモキシフェンである。
26.項目19~25のいずれか1つに記載のげっ歯類ゲノムは、げっ歯類ゲノムが、修飾Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である。
27.項目19~26のいずれか1つに記載のげっ歯類ゲノムは、げっ歯類が、マウスまたはラットである。
28.単離されたげっ歯類組織または細胞は、項目19~27のいずれか1つに記載のげっ歯類ゲノムを含む。
29.項目28に記載の単離されたげっ歯類組織または細胞は、げっ歯類が、マウスまたはラットである。
30.項目28または29に記載の単離されたげっ歯類組織または細胞は、げっ歯類細胞が、胚性幹細胞である。
31.げっ歯類ゲノム中のAcvr1遺伝子の標的修飾のための核酸構築物は、
a)部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、変異げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される。
32.項目31に記載の核酸構築物は、実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と少なくとも31ヌクレオチド異なり、ヒトACVR1エクソン7と改変げっ歯類Acvr1エクソン7との間の配列同一性と比較して、改変げっ歯類Acvr1エクソン7との配列同一性が低減されている。
33.項目31に記載の核酸構築物は、SRRSの第1の対および第2の対が、Lox2372およびLoxPであるか、またはその逆である。
34.項目31に記載の核酸構築物は、リコンビナーゼが、Creである。
35.項目34に記載の核酸構築物は、Creが、エストロゲン受容体(ER)と融合され、その結果、Creの活性が、ERとのリガンド結合によって誘導される。
36.項目35に記載の核酸構築物は、ERが、T2変異を含む。
37.項目35に記載の核酸構築物は、リガンドが、タモキシフェンである。
38.項目31~37のいずれか1つに記載の核酸構築物は、げっ歯類が、マウスまたはラットから選択される。
39.遺伝子修飾げっ歯類を作製する方法は、内因性げっ歯類Acvr1座内の修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含むようにげっ歯類ゲノムを修飾することを含み、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a)部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される。
40.項目39に記載の方法は、げっ歯類ゲノムが、
a)げっ歯類胚性幹(ES)細胞に核酸構築物を導入することであって、核酸構築物が、
SRRS’の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7と、
SRRS’の第2の対に隣接したアンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
核酸構築物が、内因性げっ歯類Acvr1座内に修飾げっ歯類Acvr1遺伝子をもたらす内因性げっ歯類Acvr1座を標的とする、導入することと、
b)そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む遺伝子修飾げっ歯類ES細胞を取得することと、
c)b)からの遺伝子修飾げっ歯類ES細胞を使用して遺伝子修飾げっ歯類を作製することと、を含むプロセスによって修飾される。
41.項目39または40に記載の方法は、遺伝子修飾げっ歯類が、修飾Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である。
42.項目40または41に記載の方法は、げっ歯類ES細胞が、リコンビナーゼをコードする遺伝子をさらに含む。
43.項目39~42のいずれか1つに記載の方法は、リコンビナーゼの活性が、誘導性である。
44.項目39~43のいずれか1つに記載の方法は、リコンビナーゼが、Creである。
45.項目44に記載の方法は、Creが、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインと融合され、その結果、Creの活性が、ERとのリガンド結合によって誘導される。
46.項目45に記載の方法は、ERのリガンド結合ドメインが、T2変異を含む。
47.項目45または46に記載の方法は、リガンドが、タモキシフェンである。
48.項目43~47のいずれか1つに記載の方法は、げっ歯類の細胞または組織においてリコンビナーゼの活性を誘導することをさらに含み、リコンビナーゼが、改変エクソン7を反転させ、実質的なヒトエクソン7を削除し、それによって、改変エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が、細胞または組織で発現されることを可能にする。
49.項目40~48のいずれか1つに記載の方法は、げっ歯類が、マウスまたはラットから選択される。
50.育種する方法は、そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む第1のげっ歯類を第2のマウスと育種させ、そのゲノムが修飾げっ歯類Acvr1遺伝子を含む子孫げっ歯類をもたらすことを含み、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子が、
a)部位特異的リコンビナーゼ認識部位(SRRS’)の第1の対に隣接したセンス方向の実質的なヒトACVR1エクソン7であって、実質的なヒトACVR1エクソン7が、ヒトACVR1エクソン7と同じアミノ酸をコードする、実質的なヒトACVR1エクソン7と、
b)SRRS’の第1の対とは異なるSRRS’の第2の対に隣接した、アンチセンス方向でR258Gをコードする改変げっ歯類Acvr1エクソン7と、を含み、
第1および第2のSRRS’が、リコンビナーゼが、改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように配向される。
51.項目50に記載の方法は、第1のげっ歯類が、修飾げっ歯類Acvr1遺伝子に対してホモ接合性である。
52.項目50または51に記載の方法は、第2のげっ歯類が、誘導性リコンビナーゼを含む。
53.項目52に記載の方法は、誘導性リコンビナーゼが、誘導性Creリコンビナーゼである。
54.項目53に記載の方法は、誘導性Creリコンビナーゼが、タモキシフェン誘導性Cre-ERT2リコンビナーゼを含む。
55.項目52~54のいずれか1つに記載の方法は、子孫げっ歯類の細胞または組織において誘導性リコンビナーゼを誘導することをさらに含み、その結果、誘導されたリコンビナーゼが、改変げっ歯類Acvr1エクソン7をセンス方向に反転させ、細胞または組織中の実質的なヒトACVR1エクソン7を削除し、それによって、改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子を生成する。
56.項目50~55のいずれか1つに記載の方法は、げっ歯類が、マウスまたはラットである。
57.子孫げっ歯類は、項目50~56のいずれか1つに記載の方法に従って生成される。
58.異所性骨形成を治療するための候補治療化合物を試験する方法は、
項目1~8および10のいずれか1つに記載の遺伝子修飾げっ歯類を提供することと、
改変げっ歯類Acvr1エクソン7を含む改変Acvr1対立遺伝子が発現できるように、げっ歯類においてリコンビナーゼの活性を誘導することと、
候補化合物をげっ歯類に投与することと、
候補化合物が、げっ歯類における異所性骨形成の発症を阻害するかを決定することと、を含む。
59.項目58に記載の方法は、候補化合物が、リコンビナーゼ活性の誘導の前、間、または後にげっ歯類に投与される。
60.項目58に記載の方法は、候補化合物が、小分子化合物である。
61.項目58に記載の方法は、候補化合物が、核酸である。
62.項目58に記載の方法は、候補化合物が、抗体またはその抗原結合断片である。
63.項目62に記載の方法は、抗体またはその抗原結合断片が、アクチビン受容体1に対する抗体またはその抗原結合断片である。
64.項目62に記載の方法は、抗体またはその抗原結合断片が、アクチビン受容体2A型に対する抗体またはその抗原結合断片である。
65.項目62に記載の方法は、抗体またはその抗原結合断片が、アクチビン受容体2B型に対する抗体またはその抗原結合断片である。
66.項目62に記載の方法は、抗体またはその抗原結合断片が、アクチビンAに対する抗体またはその抗原結合断片である。
67.項目58~66のいずれか1つに記載の方法は、げっ歯類が、マウスまたはラットである。
【配列表】