(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】オデビキシバットの結晶変態
(51)【国際特許分類】
C07D 285/36 20060101AFI20240614BHJP
A61K 31/554 20060101ALI20240614BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240614BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240614BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240614BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20240614BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240614BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C07D285/36
A61K31/554
A61P1/00
A61P1/04
A61P1/16
A61P9/10
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P1/10
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/06
(21)【出願番号】P 2020570784
(86)(22)【出願日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 SE2019050602
(87)【国際公開番号】W WO2019245448
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509100737
【氏名又は名称】アルビレオ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ルンドクヴィスト
(72)【発明者】
【氏名】イングヴァル・イメン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ボーリン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ・ビュレード
(72)【発明者】
【氏名】ペル-ヨーラン・ギルベリ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ-マリア・ティバート
(72)【発明者】
【氏名】リカルド・ブリランド
(72)【発明者】
【氏名】アン-カルロッテ・ダールキスト
(72)【発明者】
【氏名】イェシカ・エルヴェルソン
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・オーヴェ・グスタフソン
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-545739(JP,A)
【文献】特表2004-521961(JP,A)
【文献】特表2014-532662(JP,A)
【文献】特表2013-541584(JP,A)
【文献】Journal of Pharmacy and Pharmacology,2010年,62,1534-1546
【文献】Pharmaceutical Research,1995年,Vol.12, No.7,945-954
【文献】"新医薬品の規格及び試験方法の設定について",医薬審発第568号,2001年05月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 285/36
A61K 31/554
A61P 1/00
A61P 1/04
A61P 1/16
A61P 9/10
A61P 9/00
A61P 43/00
A61P 35/00
A61P 1/10
A61P 3/00
A61P 3/10
A61P 3/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα1線で得られた、°2θ位置5.6±0.2、6.7±0.2、及び/又は12.1±0.2にピークを有するXRPDパターンを有する、
セスキ水和物である、オデビキシバットの結晶変態1。
【請求項2】
CuKα1線で得られた、°2θ位置5.6±0.2、6.7±0.2、及び12.1±0.2に特定のピークと、特徴的なピーク:4.1±0.2、4.6±0.2、9.3±0.2、9.4±0.2、及び10.7±0.2のうちの1つ又は複数とを有するXRPDパターンを有する、請求項1に記載のオデビキシバットの結晶変態1。
【請求項3】
約99%超の結晶化度を有する、請求項1又は2に記載のオデビキシバットの結晶変態1。
【請求項4】
水と、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、DMF、及びDMSOからなる群から選択される有機溶媒とを含む溶媒混合物中のオデビキシバットの溶液から
、オデビキシバットの結晶変態2A, 2B又は2Cを単離する工程を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のオデビキシバットの結晶変態1を調製するための
方法であって、
オデビキシバットの結晶変態2Aが、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、5.1±0.2、及び/又は11.8±0.2にピークを有するXRPDパターンを有し、
オデビキシバットの結晶変態2Bが、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.8±0.2、5.1±0.2、及び/又は11.6±0.2にピークを有するXRPDパターンを有し、
オデビキシバットの結晶変態2Cが、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、6.2±0.2、9.4±0.2、及び/又は23.9±0.2にピークを有するXRPDパターンを有する、方法。
【請求項5】
オデビキシバットの結晶変態2Aを単離することを含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
オデビキシバットの結晶変態2Aが、水とエタノールとの混合物から得られる、請求項
4又は
5に記載の方法。
【請求項7】
溶媒混合物中のエタノール含有率が、約55~約75%(v/v)である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載のオデビキシバットの結晶変態1を、医薬として許容される希釈剤又は担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項9】
循環器疾患又は脂肪酸代謝の障害又はグルコース利用障害、例えば、高コレステロール血症;脂肪酸代謝の障害;1型及び2型真性糖尿病;糖尿病の合併症、例えば、白内障、細小及び大血管疾患、網膜症、神経障害、腎症、及び創傷治癒の遅延、組織虚血、糖尿病性足病変、動脈硬化症、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害、及び血管再狭窄;糖尿病関連疾患、例えば、インスリン抵抗性(グルコース恒常性の障害)、高血糖、高インスリン血症、脂肪酸又はグリセロールの血中レベルの上昇、肥満、脂質異常症、高脂血症、例えば、高トリグリセリド血症、メタボリック症候群(X症候群)、アテローム性動脈硬化症、及び高血圧;並びに高密度リポタンパク質レベルの増加の治療又は予防に使用するための、請求項1から3のいずれか一項に記載のオデビキシバットの結晶変態1。
【請求項10】
胃腸疾患又は障害、例えば、便秘(慢性便秘、機能性便秘、慢性特発性便秘(CIC)、断続的/散発性便秘、真性糖尿病に続発する便秘、脳卒中に続発する便秘、慢性腎臓病に続発する便秘、多発性硬化症に続発する便秘、パーキンソン病に続発する便秘、全身性硬化症に続発する便秘、薬物性便秘、便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)、混合型過敏性腸症候群(IBS-M)、小児機能性便秘、及びオピオイド誘発性便秘が含まれる);クローン病;一次胆汁酸吸収不良;過敏性腸症候群(IBS);炎症性腸疾患(IBD);回腸の炎症;並びに逆流症及びその合併症、例えば、バレット食道、胆汁逆流食道炎、及び胆汁逆流胃炎の治療又は予防に使用するための、請求項1から3のいずれか一項に記載のオデビキシバットの結晶変態1。
【請求項11】
肝疾患又は障害、例えば、肝臓の遺伝性代謝障害;胆汁酸合成の先天性代謝異常;先天性胆管走行異常;胆道閉鎖;葛西手術後の胆道閉鎖;肝臓移植後の胆道閉鎖;新生児肝炎;新生児胆汁うっ滞;遺伝形式の胆汁うっ滞;脳腱黄色腫症;BA合成の二次的欠陥;ツェルウェガー症候群;嚢胞性線維症に関連する肝疾患;α1アンチトリプシン欠損症;アラジール症候群(ALGS);バイラー症候群;胆汁酸(BA)合成の一次的欠陥;進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)、例えば、PFIC-1、PFIC-2、PFIC-3、及び非特定PFIC、胆汁分流後のPFIC、並びに肝臓移植後のPFIC;良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)、例えば、BRIC1、BRIC2、及び非特定BRIC、胆汁分流後のBRIC、並びに肝臓移植後のBRIC;自己免疫性肝炎;原発性胆汁性肝硬変(PBC);肝線維症;非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD);非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);門脈圧亢進症;胆汁うっ滞;ダウン症候群の胆汁うっ滞;薬物性胆汁うっ滞;妊娠の肝内胆汁うっ滞(妊娠中の黄疸);肝内胆汁うっ滞;肝外胆汁うっ滞;経静脈栄養に関連する胆汁うっ滞(PNAC);低リン脂質に関連する胆汁うっ滞;リンパ浮腫胆汁うっ滞症候群1(LSC1);原発性硬化性胆管炎(PSC);免疫グロブリンG4に関連する胆管炎;原発性胆汁性胆管炎;胆石症(胆石);胆道結石症(biliary lithiasis);総胆管結石症;胆石性膵炎;カロリー病;胆管の悪性腫瘍;胆樹の閉塞を引き起こす悪性腫瘍;胆管狭窄;AIDS胆管症;虚血性胆管症;胆汁うっ滞又は黄疸によるそう痒;膵臓炎;進行性胆汁うっ滞に至る慢性自己免疫性肝疾患;肝脂肪変性;アルコール性肝炎;急性脂肪肝;妊娠の脂肪肝;薬物性肝炎;鉄過剰症;先天性胆汁酸代謝異常症1型(BAS1型);薬物性肝障害(DILI);肝線維症;先天性肝線維症;肝硬変;ランゲルハンス細胞組織球症(LCH);新生児魚鱗癬硬化性胆管炎(NISCH);骨髄性プロトポルフィリン症(EPP);特発性成人胆管減少(IAD);突発性新生児肝炎(INH);非症候性肝内胆管減少症(NS PILBD);NAIC (North American Indian childhood cirrhosis);肝サルコイドーシス;アミロイドーシス;壊死性腸炎;血清中胆汁酸が引き起こす毒性、例えば、異常な血清中胆汁酸プロファイルの状況での心律動障害(例えば、心房細動)、肝硬変に関連する心筋症(「コレカルディア(cholecardia)」)、及び胆汁うっ滞性肝疾患に関連する骨格筋消耗;ウイルス性肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、及びE型肝炎が含まれる);肝細胞癌(肝細胞腫);胆管癌;胆汁酸に関係する胃腸癌;並びに肝臓、胆道、及び膵臓の腫瘍及び新生物によって引き起こされる胆汁うっ滞の治療又は予防に使用するための、請求項1から3のいずれか一項に記載のオデビキシバットの結晶変態1。
【請求項12】
過吸収症候群(無βリポタンパク血症、家族性低βリポタンパク血症(FHBL)、カイロミクロン停滞病(CRD)、及びシトステロール血症が含まれる);ビタミン過剰症及び大理石骨病;高血圧;糸球体過剰濾過;並びに腎不全のそう痒の治療又は予防に使用するための、請求項1から3のいずれか一項に記載のオデビキシバットの結晶変態1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年6月20日に出願したスウェーデン特許出願第1850761-6号、及び2018年6月20日に出願したスウェーデン特許出願第1850762-4号(これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている)の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシプロピル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン(オデビキシバット)の結晶変態、より具体的には、オデビキシバットの結晶変態1及び2に関する。本発明はまた、オデビキシバットの結晶変態1を調製するための方法、結晶変態1を含む医薬組成物、及び本明細書に記載する通りの様々な状態の治療におけるこの結晶変態の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
化合物1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-a-[N-((S)-1-カルボキシプロピル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン(オデビキシバット;A4250としても公知である)は、WO 03/022286に開示されている。オデビキシバットの構造を以下に示す。
【0004】
【0005】
回腸胆汁酸輸送体(IBAT)機序の阻害剤として、オデビキシバットは、回腸から肝門脈循環への胆汁酸の自然な再吸収を阻害する。回腸から再吸収されない胆汁酸は、代わりに糞便中に排泄される。腸肝循環から胆汁酸が全体的に除去されると、血清中及び肝臓内の胆汁酸レベルが減少する。したがって、オデビキシバット又は医薬として許容されるその塩は、脂質異常症、便秘、糖尿病、及び肝疾患、とりわけ胆汁酸レベルの上昇に関連する肝疾患等の疾患の治療又は予防に有用である。
【0006】
WO 03/022286の実験の部によれば、オデビキシバットの調製での最後の工程は、tert-ブチルエステルの酸性条件下での加水分解を含む。粗化合物は、減圧下で溶媒を蒸発させ、その後分取HPLCによって残留物を精製することによって得られた(実施例29)。結晶性材料は確認されなかった。
【0007】
非晶質材料は、高レベルの残留溶媒を含有していることがあり、これは医薬品に使用されるはずの材料には非常に望ましくない。また、非晶質材料は、結晶質材料と比較して化学的及び物理的安定性が低いため、より速い分解を示したり、可変の結晶化度で自発的に結晶を形成したりすることがある。これによって、溶解速度に再現性がなくなり、材料の保存及び取り扱いが困難になり得る。医薬製剤では、医薬品有効成分(API)は、この理由から、結晶性の高い状態で使用されること好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO 03/022286
【文献】WO 2004/089350
【文献】WO 2012/064266
【文献】WO 2012/064268
【非特許文献】
【0009】
【文献】Daneseら、PLoS One. 2017、第12(6)巻: e0179200
【文献】Kooistraら、「KLIFS: A structural kinase-ligand interaction database」、Nucleic Acids Res. 2016、第44巻、番号D1、D365-D371頁
【文献】Gunaydin, M.ら、Hepat Med. 2018、第10巻、95~104頁
【文献】R. Jenkins及びR.L. Snyder、「Introduction to X-ray powder diffractometry」、John Wiley & Sons、1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、安定性、バルクハンドリング、及び溶解性に関して向上した特性を有するオデビキシバットの結晶変態に対する必要性が存在する。特に、高レベルの残留溶媒を含有せず、向上した化学的安定性を有し、高レベルの結晶化度で得ることができる、オデビキシバットの安定な結晶変態を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、オデビキシバットの結晶変態を提供する。第1の態様では、結晶変態は、オデビキシバットの結晶性水和物である。この結晶性水和物は、チャンネル水和物(channel hydrate)であり、これは、1モルのオデビキシバット当たり結晶に結合した2モルまでの水を含有し得る。本明細書で算出される水の量は、結晶の表面に吸着された水を除外する。一実施形態では、結晶性水和物は、セスキ水和物、すなわち、1モルのオデビキシバット当たり結晶に結合した約1.5モルの水を含有する。第1の態様と関係する別の態様では、本発明は、オデビキシバットの結晶変態1を提供する。結晶変態1は、30%の相対湿度(RH)で1モルのオデビキシバット当たり約1.5モルの水を含有する、安定な結晶性水和物である。
【0012】
別の態様では、本発明は、オデビキシバットの二水和物-二溶媒和物を提供する。この混合溶媒和物は、異なる等構造の溶媒和物として存在することができ、有機溶媒として、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、DMF、又はDMSOを含み得る。混合溶媒和物を乾燥させると、その溶媒和分子を失い、オデビキシバットの結晶変態1に転移する。この態様に関係する別の態様では、本発明はオデビキシバットの結晶変態2A、2B、及び2Cを提供し、これらは、本明細書では総称してオデビキシバットの結晶変態2と呼ぶ。乾燥すると、結晶変態2はその有機溶媒分子を失い、オデビキシバットの結晶変態1を生じる。
【0013】
本発明は更に、本明細書に記載する状態の治療におけるオデビキシバットの結晶変態1の使用、オデビキシバットの結晶変態1を含む医薬組成物、並びにオデビキシバットの結晶変態1を調製するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】乾燥した結晶変態1のX線粉末回折図を示す図である。
【
図2】過水和した結晶変態1の試料のX線粉末回折図を示す図である。
【
図3】下が過水和した結晶変態1の試料、上が乾燥した試料のX線粉末回折図(2θ範囲5~13°)である、結晶変態1の乾燥を示す図である。
【
図4】下が過水和した結晶変態1の試料、上が乾燥した試料のX線粉末回折図(2θ範囲18~25°)である、結晶変態1の乾燥を示す図である。
【
図5】エタノール(60~80%v/v)と水(20~40%v/v)との混合物から得たときの結晶変態2(下)からの、結晶変態12(中央)を介する結晶変態1(上)への転移を示す図である。
【
図6】エタノールと水との混合物(70:30%v/v)から得たときの結晶変態2AのX線粉末回折図を示す図である。
【
図7】アセトンと水との混合物(50:50%v/v)から得たときの結晶変態2AのX線粉末回折図を示す図である。
【
図8】2-プロパノールと水との混合物(50:50%v/v)から得たときの結晶変態2AのX線粉末回折図を示す図である。
【
図9】1,4-ジオキサンと水との混合物(50:50%v/v)から得たときの結晶変態2AのX線粉末回折図を示す図である。
【
図10】メタノールから得たときの結晶変態2BのX線粉末回折図を示す図である。2形が結晶化するのに必要な水は、メタノールの吸湿性の結果として空気から得られた。
【
図11】アセトニトリルと水との混合物(40:60%v/v)から得たときの結晶変態2BのX線粉末回折図を示す図である。
【
図12】DMSOと水との混合物(50:50%v/v)から得たときの結晶変態2CのX線粉末回折図を示す図である。
【
図13】結晶変態1についての熱重量分析(TGA)の質量変化のグラフを示す図である。
【
図14】エタノールと水との混合物の気相に結晶変態1を暴露することによって生成した結晶変態2についての熱重量分析(TGA)の質量変化のグラフを示す図である。
【
図15】結晶変態1についての動的蒸気吸脱着測定(DVS)の質量変化のグラフを示す図である。
【
図16】約50%の結晶分画を有するオデビキシバットの試料のDSCトレースを示す図(予熱及び冷却後)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載する本発明は、オデビキシバットに関する広範な研究で発見された結晶変態に関する。オデビキシバットは、種々の有機溶媒(又は溶媒の混合物)から、溶媒和分子をその構造に組み込み、それによって様々な溶媒和物又は混合溶媒和物を形成することによって結晶化させることができることが観察されている。これらの(混合)溶媒和物の殆どは空気中で不安定であり、乾燥すると非晶質になるが、驚くべきことに、オデビキシバットのある種の混合溶媒和物は、乾燥してオデビキシバットの安定な結晶形に転移することができることが見出された。以降オデビキシバットの結晶変態1と呼ぶこの安定な形を、オデビキシバットの異なる混合溶媒和物から形成することができることは、注目に値する。
【0016】
よって、第1の態様では、本発明は、オデビキシバットの結晶変態1に関する。この安定な結晶変態は、水とエタノール等の有機溶媒との混合物中のオデビキシバットのスラリーから得ることができる。これらの条件下で、1モルのオデビキシバット当たり約2モルの水と約1~約3モル、例えば約2~約3モルのエタノールとを含有する混合溶媒和物(例えば、二水和-二エタノール和物又は二水和-三エタノール和物)が最初に形成される。幾つかの実施形態では、この混合溶媒和物は、結晶変態2と呼ばれる。この混合溶媒和物を乾燥させると、混合溶媒和物はその有機溶媒分子を失い、結晶変態1となる。理論に束縛されることを望むものではないが、溶媒分子は、結晶の溶解及び再結晶を行うことなく除去することができると考えられる。
【0017】
結晶変態1は、相対湿度に応じて、1モルのオデビキシバット当たり結晶に結合した約2モルまでの水を含有できる空隙容量を含有する。したがって、この形は、形式的にはチャンネル水和物である。しかし、約30%の相対湿度で、結晶変態1は、1モルの有機化合物当たり実質的に化学量論量の約1.5モルの水を含有し、よってセスキ水和物である。結晶の含水率は、約30%~約70%RHである通常の相対湿度の範囲内で湿度が変化しても実質的に一定のままであるために、この実質的に化学量論量の水は有利であると考えられる。実際に、約30~約70%RHの間等の常湿で、結晶変態1は比較的低い吸湿性を呈する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.6±0.2、6.7±0.2、及び/又は12.1±0.2に少なくとも特定のピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、オデビキシバットの結晶変態1に関する。
【0019】
その特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.6±0.2、6.7±0.2、及び12.1±0.2に特定のピークと、特徴的なピーク:4.1±0.2、4.6±0.2、9.3±0.2、9.4±0.2、及び10.7±0.2のうちの1つ又は複数とを有するXRPDパターンを有する、結晶変態1に関する。
【0020】
そのより特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.6±0.2、5.6±0.2、6.7±0.2、9.3±0.2、9.4±0.2、及び12.1±0.2に特定のピークを有するXRPDパターンを有する、結晶変態1に関する。
【0021】
その更により特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.1±0.2、4.6±0.2、5.6±0.2、6.7±0.2、9.3±0.2、9.4±0.2、10.7±0.2、及び12.1±0.2と、8.1±0.2、8.6±0.2、13.4±0.2、13.8±0.2、13.9±0.2、16.6±0.2、17.3±0.2、17.7±0.2、18.3±0.2、18.9±0.2、19.4±0.2、19.7±0.2、20.5±0.2、20.8±0.2、21.6±0.2、23.2±0.2、24.3±0.2、29.8±0.2、及び30.6±0.2のうちの1つ又は複数とに特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、結晶変態1に関する。
【0022】
そのなお更により特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.1±0.2、4.6±0.2、5.6±0.2、6.7±0.2、8.1±0.2、8.6±0.2、9.3±0.2、9.4±0.2、10.7±0.2、12.1±0.2、13.4±0.2、13.8±0.2、13.9±0.2、16.6±0.2、17.3±0.2、17.7±0.2、18.3±0.2、18.9±0.2、19.4±0.2、19.7±0.2、20.5±0.2、20.8±0.2、21.6±0.2、23.2±0.2、24.3±0.2、29.8±0.2、及び30.6±0.2に特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、結晶変態1に関する。
【0023】
特別な実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、実質的に
図1に示す通りのXRPDパターンを有する結晶変態1に関する。
【0024】
結晶変態1は、約30%の相対湿度で約3.5%(w/w)(全結晶質量に対して)の水を含有するセスキ水和物であるが、湿度が95%RHまで増加すると、結晶は、1.5%(w/w)の追加的な水を吸収し得ることが観察されている。この追加的な水の吸着及び脱着は、完全に可逆的である(例えば、実施例10を参照されたい)。追加的な水は、表面上に吸着されることもあるし、構造のチャンネルを更に満たすこともある。幾つかの実施形態では、「過水和した」という用語は、1モルのオデビキシバット当たり約1.5~約4モルの水、例えば1モルのオデビキシバット当たり約1.5~約3.5、又は例えば約1.5~3、又は例えば約1.5~約2.5、又は例えば約1.5~約2モルの水を含有する結晶変態1を指す。幾つかの実施形態では、「過水和した」という用語は、1モルのオデビキシバット当たり約2~約4モルの水、例えば1モルのオデビキシバット当たり約2~約3.5、又は例えば約2~約3、又は例えば約2~2.5モルの水を含有する結晶変態1を指す。
【0025】
過水和した結晶変態1のXRPDパターンは、それを乾燥させると(例えば、真空中50℃で)、若干変化することが観察されている。
図3及び
図4にそれぞれ示す通りに、ピークの小さなシフトが5~13°及び18~25°の2θ範囲に最も明白に見られる。乾燥した変態を、上昇した相対湿度、例えば95%RHまで暴露すると、過水和した変態のXRPDパターンが再び出現する。ピークシフトは、水分子が結晶構造に出入りするときに生じる、単位格子体積の変化の結果である。
【0026】
したがって、別の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.7±0.2、6.7±0.2、及び/又は12.0±0.2に少なくとも特定のピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、過水和した結晶変態1に関する。
【0027】
ある種の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.7±0.2、6.7±0.2、及び12.0±0.2に特定のピークと、特徴的なピーク:4.0±0.2、9.4±0.2、9.6±0.2、及び10.8±0.2のうちの1つ又は複数とを有するXRPDパターンを有する、過水和した結晶変態1に関する。
【0028】
より特別な実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.0±0.2、5.7±0.2、6.7±0.2、9.4±0.2、9.6±0.2、10.8±0.2、及び12.1±0.2に特定のピークを有するXRPDパターンを有する、過水和した結晶変態1に関する。
【0029】
更なる実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.0±0.2、5.7±0.2、6.7±0.2、9.4±0.2、9.6±0.2、10.8±0.2、及び12.1±0.2と、4.7±0.2、8.0±0.2、8.6±0.2、13.3±0.2、14.1±0.2、15.3±0.2、16.5±0.2、17.3±0.2、19.3±0.2、19.7±0.2、19.9±0.2、20.1±0.2、20.8±0.2、21.7±0.2、23.6±0.2、26.2±0.2、26.5±0.2、28.3±0.2、及び30.9±0.2のうちの1つ又は複数とに特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、過水和した結晶変態1に関する。
【0030】
なお更なる実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.0±0.2、4.7±0.2、5.7±0.2、6.7±0.2、8.0±0.2、8.6±0.2、9.4±0.2、9.6±0.2、10.8±0.2、12.1±0.2、13.3±0.2、14.1±0.2、15.3±0.2、16.5±0.2、17.3±0.2、19.3±0.2、19.7±0.2、19.9±0.2、20.1±0.2、20.8±0.2、21.7±0.2、23.6±0.2、26.2±0.2、26.5±0.2、28.3±0.2、及び30.9±0.2に特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、過水和した結晶変態1に関する。
【0031】
更に別の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、実質的に
図2に示す通りのXRPDパターンを有する、オデビキシバットの過水和した結晶変態1に関する。
【0032】
幾つかの実施形態では、結晶変態1の結晶化度は約99%より大きい。結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)法によって、例えば、実験の部に開示するように測定されてもよい。
【0033】
結晶変態1には、非晶質のオデビキシバットに優る幾つかの利点がある。30~70%RH等の常湿での結晶変態1の比較的低い吸湿性は、オデビキシバットの取り扱い及び保存を容易にする。加えて、結晶変態1は、高レベルの残留溶媒を含有しない。対照的に、非晶質の粗オデビキシバットの回分は、規制限度を遙かに超えるレベルで残留溶媒(ギ酸等)を含有することがあることが観察されている。安定性実験から、オデビキシバットの結晶変態1は、非晶質のオデビキシバットより高い化学的安定性を示すことが更に示されている。
【0034】
結晶変態1は、非晶質のオデビキシバットより高い物理的及び熱力学的安定性;非晶質のオデビキシバットより再現性が高い溶解性;又は製剤に加工する能力の向上等の1つ又は複数の追加的な利点を有し得る。そのような特性は、オデビキシバットの医薬製剤に大きく関連する。
【0035】
第2の態様では、本発明は、オデビキシバットの結晶変態2に関する。結晶変態2は、上記のようなエタノールと水との混合物からだけでなく、メタノール、並びに溶媒と水とのある種の他の混合物、例えば、メタノールと水との、2-プロパノールと水との、アセトンと水との、アセトニトリルと水との、1,4-ジオキサンと水との、DMFと水との、及びDMSOと水との混合物から得ることができることが発見された。結晶変態2は、1モルのオデビキシバット当たり約2モルの水と約1~約3モルの有機溶媒とを含有する混合溶媒和物である。幾つかの実施形態では、混合溶媒和物は、結晶中に1モルのオデビキシバットに結合した約1.7~約2.3、約1.8~約2.2、約1.9~約2.1、又は約1.95~約2.05モルの水を含む(結晶の表面に吸着されている可能性がある水はいずれも除外する).
【0036】
興味深いことに、これらの異なる混合物から得られた結晶変態のXRPDパターンは本質的に同じである(
図6~
図12を参照されたい)。したがって、結晶変態2は異なる等構造溶媒和物(同形溶媒和物としても公知である)として存在することができると考えられる。これらの等構造溶媒和物では、結晶変態2は、異なる溶媒を(水との混合物として)収容する。異なる溶媒が存在すると単位格子に小さな体積変化が引き起こされるが、それ以外では結晶変態2の結晶構造に有意な歪みは何も生じない。それにもかかわらず、等構造溶媒和物のXRPDパターンは若干異なることがある。類似しているが若干異なる形の3つの結晶変態2を、本明細書では結晶変態2A、2B、及び2Cと呼び、総称して「結晶変態2」と呼ぶ。重要なことに、乾燥すると、結晶変態2A、2B、及び2Cは、結晶変態2を結晶化させた溶媒混合物にかかわらず、結晶変態1を形成し得ることが見出された。
【0037】
第1の実施形態では、結晶性混合溶媒和物は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、5.1±0.2、及び/又は11.8±0.2に少なくとも特定のピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、エタノールと水との、アセトンと水との、1,4-ジオキサンと水との、DMFと水との、又は2-プロパノールと水との混合物から得たときの結晶変態2Aである。
【0038】
その特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、5.1±0.2、及び11.8±0.2に特定のピークと、特徴的なピーク:6.4±0.2、6.6±0.2、及び9.5±0.2のうちの1つ又は複数とを有するXRPDパターンを有する、エタノールと水との、アセトンと水との、1,4-ジオキサンと水との、DMFと水との、又は2-プロパノールと水との混合物から得たときの結晶変態2Aに関する。
【0039】
そのより特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、5.1±0.2、6.4±0.2、6.6±0.2、9.5±0.2、及び11.8±0.2に特定のピークを有するXRPDパターンを有する、エタノールと水との、アセトンと水との、1,4-ジオキサンと水との、DMFと水との、又は2-プロパノールと水との混合物から得たときの結晶変態2Aに関する。
【0040】
その更により特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ5.0±0.2、5.1±0.2、6.4±0.2、6.6±0.2、9.5±0.2及び11.8±0.2と、5.9±0.2、8.8±0.2、9.8±0.2、10.1±0.2、11.0±0.2、11.2±0.2、11.4±0.2、12.7±0.2、13.9±0.2、14.7±0.2、15.1±0.2、15.8±0.2、16.3±0.2、17.2±0.2、17.9±0.2、19.7±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.3±0.2、22.1±0.2、22.5±0.2、22.9±0.2、23.2±0.2、23.6±0.2、24.0±0.2、24.1±0.2、24.7±0.2、25.3±0.2、26.7±0.2、26.9±0.2、29.8±0.2、30.4±0.2、30.8±0.2、及び31.6±0.2のうちの1つ又は複数とに特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、エタノールと水との混合物から得たときの結晶変態2Aに関する。
【0041】
そのなお更により特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、5.1±0.2、5.9±0.2、6.4±0.2、6.6±0.2、8.8±0.2、9.5±0.2、9.8±0.2、10.1±0.2、11.0±0.2、11.2±0.2、11.4±0.2、11.8±0.2、12.7±0.2、13.9±0.2、14.7±0.2、15.1±0.2、15.8±0.2、16.3±0.2、17.2±0.2、17.9±0.2、19.7±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.3±0.2、22.1±0.2、22.5±0.2、22.9±0.2、23.2±0.2、23.6±0.2、24.0±0.2、24.1±0.2、24.7±0.2、25.3±0.2、26.7±0.2、26.9±0.2、29.8±0.2、30.4±0.2、30.8±0.2、及び31.6±0.2に特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、エタノールと水との混合物から得たときの結晶変態2Aに関する。
【0042】
特別な一実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、実質的に
図6に示す通りのXRPDパターンを有する、エタノールと水との混合物から得たときの結晶変態2Aに関する。
【0043】
別の特別な実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、実質的に
図7に示す通りのXRPDパターンを有する、アセトンと水との混合物から得たときの結晶変態2Aに関する。
【0044】
更に別の特別な実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、実質的に
図8に示す通りのXRPDパターンを有する、2-プロパノールと水との混合物から得たときの結晶変態2Aに関する。
【0045】
更に別の特別な実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、実質的に
図9に示す通りのXRPDパターンを有する、1,4-ジオキサンと水との混合物から得たときの結晶変態2Aに関する。
【0046】
第2の実施形態では、結晶性混合溶媒和物は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.8±0.2、5.1±0.2、及び/又は11.6±0.2に少なくとも特定のピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、メタノールから、又はメタノールと水との、若しくはアセトニトリルと水との混合物から得たときの結晶変態2Bである。
【0047】
特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.8±0.2、5.1±0.2、及び11.6±0.2に特定のピークと、特徴的なピーク:6.2±0.2、6.7±0.2、9.5±0.2、及び20.3±0.2のうちの1つ又は複数とを有するXRPDパターンを有する、メタノールから、又はメタノールと水との、若しくはアセトニトリルと水との混合物から得たときの結晶変態2Bに関する。
【0048】
そのより特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.8±0.2、5.1±0.2、6.2±0.2、6.7±0.2、9.5±0.2、11.6±0.2、及び20.3±0.2に特定のピークを有するXRPDパターンを有する、メタノールから、又はメタノールと水との、若しくはアセトニトリルと水との混合物から得たときの結晶変態2Bに関する。
【0049】
その更により特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.8±0.2、5.1±0.2、6.2±0.2、6.7±0.2、9.5±0.2、11.6±0.2、及び20.3±0.2と、5.8±0.2、8.7±0.2、9.7±0.2、10.1±0.2、10.7±0.2、11.5±0.2、13.4±0.2、13.5±0.2、14.4±0.2、14.5±0.2、15.2±0.2、16.5±0.2、16.8±0.2、19.4±0.2、20.6±0.2、21.2±0.2、21.5±0.2、23.8±0.2、23.9±0.2、25.4±0.2、26.3±0.2、26.7±0.2、30.1±0.2、及び30.6±0.2のうちの1つ又は複数とに特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、メタノールと水とから得た結晶変態2Bに関する。
【0050】
そのなお更により特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.8±0.2、5.1±0.2、5.8±0.2、6.2±0.2、6.7±0.2、8.7±0.2、9.5±0.2、9.7±0.2、10.1±0.2、10.7±0.2、11.5±0.2、11.6±0.2、13.4±0.2、13.5±0.2、14.4±0.2、14.5±0.2、15.2±0.2、16.5±0.2、16.8±0.2、19.4±0.2、20.3±0.2、20.6±0.2、21.2±0.2、21.5±0.2、23.8±0.2、23.9±0.2、25.4±0.2、26.3±0.2、26.7±0.2、30.1±0.2、及び30.6±0.2に特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、メタノールと水とから得た結晶変態2Bに関する。
【0051】
特別な一実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、実質的に
図10に示す通りのXRPDパターンを有する、メタノールから得たときの結晶変態2Bに関する。
【0052】
別の特別な実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、実質的に
図11に示す通りのXRPDパターンを有する、アセトニトリルと水との混合物から得たときの結晶変態2Bに関する。
【0053】
第3の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、6.2±0.2、9.4±0.2、及び/又は23.9±0.2に少なくとも特定のピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、DMSOと水との混合物から得たときの結晶変態2Cに関する。
【0054】
その特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、6.2±0.2、9.4±0.2、及び23.9±0.2に特定のピークと、特徴的なピーク:11.5±0.2、19.5±0.2、及び20.2±0.2のうちの1つ又は複数とを有するXRPDパターンを有する、DMSOと水との混合物から得たときの結晶変態2Cに関する。
【0055】
そのより特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、6.2±0.2、9.4±0.2、11.5±0.2、19.5±0.2、20.2±0.2、及び23.9±0.2に特定のピークを有するXRPDパターンを有する、DMSOと水との混合物から得たときの結晶変態2Cに関する。
【0056】
その更により特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置5.0±0.2、6.2±0.2、9.4±0.2、11.5±0.2、19.5±0.2、20.2±0.2、及び23.9±0.2と、4.9±0.2、5.8±0.2、6.6±0.2、8.6±0.2、9.7±0.2、10.0±0.2、10.8±0.2、13.5±0.2、15.1±0.2、17.7±0.2、17.9±0.2、19.0±0.2、19.3±0.2、20.7±0.2、21.1±0.2、21.2±0.2、21.2±0.2、22.8±0.2、25.3±0.2、26.6±0.2、27.3±0.2、27.4±0.2、28.6±0.2、30.1±0.2、及び30.2±0.2のうちの1つ又は複数とに特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、DMSOと水との混合物から得たときの結晶変態2Cに関する。
【0057】
そのなお更により特定の実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、°2θ位置4.9±0.2、5.0±0.2、5.8±0.2、6.2±0.2、6.6±0.2、8.6±0.2、9.4±0.2、9.7±0.2、10.0±0.2、10.8±0.2、11.5±0.2、13.5±0.2、15.1±0.2、17.7±0.2、17.9±0.2、19.0±0.2、19.3±0.2、19.5±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.1±0.2、21.2±0.2、21.3±0.2、22.8±0.2、23.9±0.2、25.3±0.2、26.6±0.2、27.3±0.2、27.4±0.2、28.6±0.2、30.1±0.2、及び30.2±0.2に特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、DMSOと水との混合物から得たときの結晶変態2Cに関する。
【0058】
特別な一実施形態では、本発明は、CuKα1線で得られた、実質的に
図12に示す通りのXRPDパターンを有する、DMSOと水との混合物から得たときの結晶変態2Cに関する。
【0059】
上記から理解されるように、安定な結晶変態1の単離及び特徴付けは単純ではなかった。水和物であるにもかかわらず、結晶変態1は、水からの結晶化によって直接得ることができない。幾つかの実施形態では、結晶変態1は、例えば、オデビキシバットを水とある種の有機溶媒との混合物から結晶化させることによって形成される結晶変態2を単離し、乾燥させることによって、間接的に得られる。幾つかの実施形態では、結晶変態1は、結晶変態2から、溶媒分子を蒸発させた後に得られる。幾つかの実施形態では、結晶変態2から結晶変態1への転移は、結晶中間体、具体的には変態12を介して進行する(
図5を参照されたい)。幾つかの実施形態では、溶媒分子は、結晶の溶解及び再結晶化を行うことなく変態2から除去される。
【0060】
別の態様では、本発明は、オデビキシバットの結晶変態1を調製するための方法における、本明細書で記載する通りのオデビキシバットの結晶変態2(2A、2B、又は2C)の使用に関する。
【0061】
更に別の態様では、本発明は、オデビキシバットの結晶変態1を調製するための方法に関する。幾つかの実施形態では、この方法は、水と、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、DMF、及びDMSO、並びにそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒とを含む溶媒混合物中のオデビキシバットの溶液から、オデビキシバットの結晶変態2を単離する工程を含む。幾つかの実施形態では、該方法は、水と、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、DMF、及びDMSOからなる群から選択される有機溶媒とを含む溶媒混合物中のオデビキシバットの溶液から、オデビキシバットの結晶変態2を単離する工程を含む。
【0062】
幾つかの実施形態では、結晶変態1の結晶化度は、乾燥プロセスに依存する。実験の部に示すように、結晶変態1の優れた結晶化度は、結晶変態2を真空下(例えば、5mbar未満)又は窒素流下で乾燥させたときに得ることができることが観察されている。結晶変態2をこれらの条件下で乾燥させると脱水形が生じ、それが次にすぐに空気から水を吸収すると考えられる。
【0063】
したがって、幾つかの実施形態では、オデビキシバットの結晶変態1を調製するための方法は、
a)水と、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、DMF、及びDMSOからなる群から選択される有機溶媒とを含む溶媒混合物中のオデビキシバットの溶液から、オデビキシバットの結晶変態2を単離する工程;並びに
b)該固体を、真空下又は窒素流下で乾燥させる工程
を含む。
【0064】
好ましい実施形態では、オデビキシバットの結晶変態2は、オデビキシバットの結晶変態2Aである。より好ましい実施形態では、オデビキシバットの結晶変態2Aは、水とエタノールとの混合物から得られる。
【0065】
幾つかの実施形態では、オデビキシバットの結晶変態1を調製するための方法は、
a)水とエタノールとの混合物中のオデビキシバットの溶液から、オデビキシバットの結晶変態2Aを単離する工程;及び
b)該固体を、真空下又は窒素流下で乾燥させる工程
を含む。
【0066】
幾つかの実施形態では、結晶変態1の結晶化度は、水と有機溶媒との混合物の組成に依存する。例えば、結晶変態1の優れた結晶化度は、エタノールと水との60:40(%v/v)混合物中のオデビキシバットのスラリーから22℃で得られた結晶変態2Aの試料から得ることができる。好ましい実施形態では、溶媒混合物中のエタノール含有率は、約55~約75%(v/v)、例えば約60~約70%(v/v)である。幾つかの実施形態では、溶媒混合物中のエタノール含有率は、約60%(v/v)である。幾つかの実施形態では、溶媒混合物中のエタノール含有率は、約65%(v/v)である。幾つかの実施形態では、溶媒混合物中のエタノール含有率は、約70%(v/v)である。
【0067】
幾つかの実施形態では、結晶変態2Aの結晶化度は、単離された結晶が40~60%(v/v)のエタノールを含有するエタノール/水の雰囲気に少なくとも24時間暴露されると増加する。
【0068】
幾つかの実施形態では、該方法は、
a)水と、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、DMF、及びDMSOからなる群から選択される有機溶媒との混合物中のオデビキシバットの飽和溶液を調製する工程;
b)スラリーが得られるように、工程a)の飽和溶液に過剰なオデビキシバットを添加する工程;
c)該スラリーの撹拌を、約0~約25℃の温度で少なくとも24時間維持する工程;
d)工程c)で得られた固体を回収する工程;
e)該固体を、真空下又は窒素流下で乾燥させる工程
を含む。
【0069】
幾つかの実施形態では、該方法は、
a)水とエタノールとの混合物中のオデビキシバットの飽和溶液を調製する工程;
b)スラリーが得られるように、工程a)の飽和溶液に過剰なオデビキシバットを添加する工程;
c)該スラリーの撹拌を、約20~約25℃、好ましくは約22℃の温度で少なくとも24時間維持する工程;
d)工程c)で得られた固体を回収する工程;
e)任意選択により工程d)の結晶をエタノール/水の雰囲気に暴露する工程;及び
f)該固体を、真空下又は窒素流下で乾燥させる工程
を含む。
【0070】
代替的に、結晶変態1は、水と適切な有機溶媒との混合物中のオデビキシバットの飽和溶液に種晶を添加することによって得ることができる。よって、別の実施形態では、該方法は、
a)水と、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、DMF、及びDMSOからなる群から選択される有機溶媒との混合物中のオデビキシバットの飽和溶液を調製する工程;
b)工程a)の飽和溶液に種晶を添加する工程;
c)該スラリーの撹拌を、約0~約25℃の温度で少なくとも24時間維持する工程;
d)工程c)で得られた固体を回収する工程;
e)該固体を、真空下又は窒素流下で乾燥させる工程
を含む。
【0071】
幾つかの実施形態では、該方法は、
a)水とエタノールとの混合物中のオデビキシバットの飽和溶液を調製する工程;
b)工程a)の飽和溶液に種晶を添加する工程;
c)該スラリーの撹拌を、約20~約25℃、好ましくは22℃の温度で少なくとも24時間維持する工程;
d)工程c)で得られた固体を回収する工程;
e)任意選択により工程d)の結晶をエタノール/水の雰囲気に暴露する工程;及び
f)該固体を、真空下又は窒素流下で乾燥させる工程
を含む。
【0072】
結晶変態2のスラリー試料を種晶として使用してもよい。代替的に、結晶変態1を使用してもよい。この形は、結晶化プロセスの溶媒混合物に添加されるとすぐに結晶変態2に転移すると考えられる。
【0073】
更なる態様では、本発明は、
a)水と、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、DMF、及びDMSOからなる群から選択される有機溶媒とを含む溶媒混合物中のオデビキシバットの溶液からオデビキシバットの結晶変態2を単離する工程;並びに
b)該固体を、真空下又は窒素流下で乾燥させる工程
を含む方法によって調製される、オデビキシバットの結晶変態1に関する。
【0074】
更なる態様では、本発明はまた、治療用の、本明細書に記載する通りのオデビキシバットの結晶変態1に関する。
【0075】
オデビキシバットは、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)阻害剤である。回腸胆汁酸輸送体(IBAT)は、胆汁酸を消化管から再吸収するための主要な機序である。それを部分的又は全体的に遮断することによって、オデビキシバットの機序は、小腸壁、門脈、肝実質、肝内胆管系、及び胆嚢を含めた肝外胆管系における胆汁酸の濃度を下げることになる。IBAT機序の部分的又は全体的遮断から恩恵を受ける可能性のある疾患は、根本的な病態生理学的欠損として、血清中及び上述の器官内の胆汁酸が過剰濃度となる症状を有するものであり得る。したがって、本明細書に記載する通りのオデビキシバットの結晶変態1は、循環器疾患、脂肪酸代謝及びグルコース利用障害、胃腸疾患及び障害、肝疾患及び障害等の、胆汁酸循環の阻害が望ましい状態、障害、及び疾患の治療又は予防に有用である。
【0076】
循環器疾患並びに脂肪酸代謝及びグルコース利用障害として、高コレステロール血症;脂肪酸代謝の障害;1型及び2型真性糖尿病;糖尿病の合併症、例えば、白内障、細小及び大血管疾患、網膜症、神経障害、腎症、及び創傷治癒の遅延、組織虚血、糖尿病性足病変、動脈硬化症、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害、及び血管再狭窄;糖尿病関連疾患、例えば、インスリン抵抗性(グルコース恒常性の障害)、高血糖、高インスリン血症、脂肪酸又はグリセロールの血中レベルの上昇、肥満、脂質異常症、高脂血症、例えば、高トリグリセリド血症、メタボリック症候群(X症候群)、アテローム性動脈硬化症、及び高血圧;並びに高密度リポタンパク質レベルの増加が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
胃腸疾患及び障害として、便秘(慢性便秘、機能性便秘、慢性特発性便秘(CIC)、断続的/散発性便秘、真性糖尿病に続発する便秘、脳卒中に続発する便秘、慢性腎臓病に続発する便秘、多発性硬化症に続発する便秘、パーキンソン病に続発する便秘、全身性硬化症に続発する便秘、薬物性便秘、便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)、混合型過敏性腸症候群(IBS-M)、小児機能性便秘、及びオピオイド誘発性便秘が含まれる);クローン病;一次胆汁酸吸収不良;過敏性腸症候群(IBS);炎症性腸疾患(IBD);回腸の炎症;並びに逆流症及びその合併症、例えば、バレット食道、胆汁逆流食道炎、及び胆汁逆流胃炎が挙げられる。便秘の治療及び予防については、WO 2004/089350(これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)にも開示されている。
【0078】
肝疾患は、本明細書で定義される場合、膵臓、門脈、肝実質、肝内胆管系、肝外胆管系、及び胆嚢等の、肝臓及びそれに関係する器官における任意の疾患である。幾つかの実施形態では、肝疾患は、胆汁酸依存性肝疾患である。幾つかの実施形態では、肝疾患は、血清中及び/又は肝臓内の胆汁酸レベルの上昇を伴う。幾つかの実施形態では、肝疾患は胆汁うっ滞性肝疾患である。肝疾患及び障害として、肝臓の遺伝性代謝障害;胆汁酸合成の先天性代謝異常;先天性胆管走行異常;胆道閉鎖;葛西手術後の胆道閉鎖;肝臓移植後の胆道閉鎖;新生児肝炎;新生児胆汁うっ滞;遺伝形式の胆汁うっ滞;脳腱黄色腫症;BA合成の二次的欠陥;ツェルウェガー症候群;嚢胞性線維症に関連する肝疾患;α1アンチトリプシン欠損症;アラジール症候群(ALGS);バイラー症候群;胆汁酸(BA)合成の一次的欠陥;進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)、例えば、PFIC-1、PFIC-2、PFIC-3、及び非特定PFIC、胆汁分流後のPFIC、並びに肝臓移植後のPFIC;良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)、例えば、BRIC1、BRIC2、及び非特定BRIC、胆汁分流後のBRIC、並びに肝臓移植後のBRIC;自己免疫性肝炎;原発性胆汁性肝硬変(PBC);肝線維症;非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD);非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);門脈圧亢進症;胆汁うっ滞;ダウン症候群の胆汁うっ滞;薬物性胆汁うっ滞;妊娠の肝内胆汁うっ滞(妊娠中の黄疸);肝内胆汁うっ滞;肝外胆汁うっ滞;経静脈栄養に関連する胆汁うっ滞(PNAC);低リン脂質に関連する胆汁うっ滞;リンパ浮腫胆汁うっ滞症候群1(LSC1);原発性硬化性胆管炎(PSC);免疫グロブリンG4に関連する胆管炎;原発性胆汁性胆管炎;胆石症(胆石);胆道結石症(biliary lithiasis);総胆管結石症;胆石性膵炎;カロリー病;胆管の悪性腫瘍;胆樹の閉塞を引き起こす悪性腫瘍;胆管狭窄;AIDS胆管症;虚血性胆管症;胆汁うっ滞又は黄疸によるそう痒;膵臓炎;進行性胆汁うっ滞に至る慢性自己免疫性肝疾患;肝脂肪変性;アルコール性肝炎;急性脂肪肝;妊娠の脂肪肝;薬物性肝炎;鉄過剰症;先天性胆汁酸代謝異常症1型(BAS1型);薬物性肝障害(DILI);肝線維症;先天性肝線維症;肝硬変;ランゲルハンス細胞組織球症(LCH);新生児魚鱗癬硬化性胆管炎(NISCH);骨髄性プロトポルフィリン症(EPP);特発性成人胆管減少(IAD);突発性新生児肝炎(INH);非症候性肝内胆管減少症(NS PILBD);NAIC (North American Indian childhood cirrhosis);肝サルコイドーシス;アミロイドーシス;壊死性腸炎;血清中胆汁酸が引き起こす毒性、例えば、異常な血清中胆汁酸プロファイルの状況での心律動障害(例えば、心房細動)、肝硬変に関連する心筋症(「コレカルディア(cholecardia)」)、及び胆汁うっ滞性肝疾患に関連する骨格筋消耗;ウイルス性肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、及びE型肝炎が含まれる);肝細胞癌(肝細胞腫);胆管癌;胆汁酸に関係する胃腸がん;並びに肝臓、胆道、及び膵臓の腫瘍及び新生物によって引き起こされる胆汁うっ滞が挙げられるが、これらに限定されない。肝疾患の治療及び予防については、WO 2012/064266(これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)にも開示されている。
【0079】
オデビキシバットの結晶変態1によって治療又は予防し得る他の疾患として、過吸収症候群(無βリポタンパク血症、家族性低βリポタンパク血症(FHBL)、カイロミクロン停滞病(CRD)、及びシトステロール血症が含まれる);ビタミン過剰症及び大理石骨病;高血圧;糸球体過剰濾過;並びに腎不全のそう痒が挙げられる。
【0080】
胆道閉鎖は、大胆管の部分的若しくは全体的な閉塞を(又は非存在さえ)伴う、稀な小児肝疾患である。この閉塞又は非存在は、肝臓を損傷する胆汁酸の蓄積に至る胆汁うっ滞を引き起こす。幾つかの実施形態では、胆汁酸の蓄積は、肝外胆管系で生じる。幾つかの実施形態では、胆汁酸の蓄積は、肝内胆管系で生じる。現在の標準治療は、閉塞した胆管を除去し、小腸の一部を直接肝臓につなぐ外科手術である、葛西手術である。現在のところ、この障害に対する承認された薬物療法は存在しない。
【0081】
胆道閉鎖の治療を必要とする対象における胆道閉鎖を治療するための方法が本明細書に提供され、該方法は、治療的有効量のオデビキシバットの結晶変態Iを投与することを含む。幾つかの実施形態では、対象は、葛西手術を受けた後で、オデビキシバットの結晶変態Iを投与される。幾つかの実施形態では、対象は、葛西手術を受ける前に、オデビキシバットの結晶変態Iを投与される。幾つかの実施形態では、胆道閉鎖の治療によって、対象における血清中胆汁酸のレベルが減少する。幾つかの実施形態では、血清中胆汁酸のレベルは、例えば、ELISA酵素アッセイ、又はDaneseら、PLoS One. 2017、第12(6)巻: e0179200(これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)に記載されるような総胆汁酸測定アッセイによって決定される。幾つかの実施形態では、血清中胆汁酸のレベルは、オデビキシバットの結晶変態Iの投与前の血清中胆汁酸のレベルの、例えば、10%~40%、20%~50%、30%~60%、40%~70%、50%~80%、又は90%超減少し得る。幾つかの実施形態では、胆道閉鎖の治療は、そう痒の治療を含む。
【0082】
PFICは、世界中の出生児50,000~100,000人に一人が罹患し、進行性の、命を脅かす肝疾患を引き起こすと推定される、稀な遺伝障害である
【0083】
PFICの一つの徴候はそう痒であり、それによって生活の質が著しく低下することが多い。ある場合には、PFICは、肝硬変及び肝不全に至る。現在の療法には、部分的胆汁外瘻術(PEFD)及び肝臓移植が含まれるが、これらの選択肢は、術後合併症の実質的なリスクだけなく、心理学的及び社会的問題も抱える可能性がある。
【0084】
1型、2型、及び3型として知られる3つの別々のPFICサブタイプに相関する、3つの代替的な遺伝子欠損が特定されている。
・ PFIC 1型は、「バイラー病」と呼ばれることもあり、胆管内の細胞膜中のリン脂質として知られる脂肪の適正な均衡を維持するのを助けるタンパク質をコードする、ATP8B1遺伝子の変異に起因する胆汁分泌の障害によって引き起こされる。これらのリン脂質の不均衡は、胆汁うっ滞及び肝臓内の胆汁酸の上昇と関連している。PFIC 1型に罹患した対象は、通常、生後1か月で胆汁うっ滞を発症し、外科的治療がなければ、生後10年が過ぎる前に肝硬変及び末期肝疾患に進行する。
・ PFIC 2型は、「バイラー症候群」と呼ばれることもあり、胆汁酸を肝臓外に移動させる胆汁酸塩排出ポンプとして知られるタンパク質をコードする、ABCB11遺伝子の変異に起因する胆汁酸塩分泌の障害によって引き起こされる。PFIC 2型を有する対象は、生後数年以内に肝不全を発症することが多く、肝細胞癌として知られる、ある種の肝臓がんを発症するリスクが高い。
・ PFIC 3型は、典型的には、小児期の最初の数年に進行性胆汁うっ滞と共に現れ、細胞膜を横切ってリン脂質を移動させる輸送体をコードするABCB4遺伝子の変異によって引き起こされる。
【0085】
加えて、TJP2遺伝子、NR1H4遺伝子、又はMyo5b遺伝子変異が、PFICの原因として提示されている。加えて、PFICを有する対象には、ATP8B1、ABCB11、ABCB4、TJP2、NR1H4、又はMyo5b遺伝子のいずれにも変異を有していない者もいる。これらの場合、この状態の原因は不明である。
【0086】
ATP8B1遺伝子又は得られるタンパク質の例示的な変異を、ヒト野生型ATP8B1タンパク質(例えば、配列番号1)又は遺伝子(例えば、配列番号2)に基づいて番号を付け、Table 1(表1)及びTable 2(表2)に列挙する。ABCB11遺伝子又は得られるタンパク質の例示的な変異を、ヒト野生型ABCB11タンパク質(例えば、配列番号3)又は遺伝子(例えば、配列番号4)に基づいて番号を付け、Table 3(表3)及びTable 4(表4)に列挙する。
【0087】
当業者であれば理解できるように、配列番号1又は3における特定のアミノ酸位置に対応する参照タンパク質配列におけるアミノ酸位置は、参照タンパク質配列を配列番号1又は3と(例えば、ClustalW2等のソフトウェアプログラムを使用して)整列させることによって決定することができる。これらの残基に対する変更(本明細書では「変異」と呼ぶ)は、配列内の又は配列に隣接する単一又は複数のアミノ酸置換、挿入、及び配列内の又は配列に隣接する欠失を含み得る。当業者であれば理解できるように、配列番号2又は4における特定のヌクレオチド位置に対応する参照遺伝子配列におけるヌクレオチド位置は、参照遺伝子配列を配列番号2又は4と(例えば、ClustalW2等のソフトウェアプログラムを使用して)整列させることによって決定することができる。これらの残基に対する変更(本明細書では「変異」と呼ぶ)は、配列内の又は配列に隣接する単一又は複数のヌクレオチド置換、挿入、及び配列内の又は配列に隣接する欠失を含み得る。Kooistraら、「KLIFS: A structural kinase-ligand interaction database」、Nucleic Acids Res. 2016、第44巻、番号D1、D365-D371頁(これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)も参照されたい。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
Table 1(表1)及びTable 2(表2)に関する参考文献
1
Folmer et al., Hepatology. 2009, vol. 50(5), p. 1597-1605.
2
Hsu et al., Hepatol Res. 2009, vol. 39(6), p. 625-631.
3
Alvarez et al., Hum Mol Genet. 2004, vol. 13(20), p. 2451-2460.
4
Davit-Spraul et al., Hepatology 2010, vol. 51(5), p. 1645-1655.
5
Vitale et al., J Gastroenterol. 2018, vol. 53(8), p. 945-958.
6
Klomp et al., Hepatology 2004, vol. 40(1), p. 27-38.
7
Zarenezhad et al., Hepatitis Monthly: 2017, vol. 17(2); e43500.
8
Dixon et al., Scientific Reports 2017, vol. 7, 11823.
9
Painter et al., Eur J Hum Genet. 2005, vol. 13(4), p. 435-439.
10
Deng et al., World J Gastroenterol. 2012, vol. 18(44), p. 6504-6509.
11
Giovannoni et al., PLoS One. 2015, vol. 10(12): e0145021.
12
Li et al., Hepatology International 2017, vol. 11, No. 1, Supp. Supplement 1, pp. S180. Abstract Number: OP284.
13
Togawa et al., Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition 2018, vol. 67, Supp. Supplement 1, pp. S363. Abstract Number: 615.
14
Miloh et al., Gastroenterology 2006, vol. 130, No. 4, Suppl. 2, pp. A759-A760. Meeting Info.: Digestive Disease Week Meeting/107th Annual Meeting of the American-Gastroenterological-Association. Los Angeles, CA, USA. May 19.
15
Droege et al., Zeitschrift fur Gastroenterologie 2015, vol. 53, No. 12. Abstract Number: A3-27. Meeting Info: 32. Jahrestagung der Deutschen Arbeitsgemeinschaft zum Studium der Leber. Dusseldorf, Germany. 22 Jan 2016-23 Jan 2016
16
Mizuochi et al., Clin Chim Acta. 2012, vol. 413(15-16), p. 1301-1304.
17
Liu et al., Hepatology International 2009, vol. 3, No. 1, p. 184-185. Abstract Number: PE405. Meeting Info: 19th Conference of the Asian Pacific Association for the Study of the Liver. Hong Kong, China. 13 Feb 2009-16 Feb 2009
18
McKay et al., Version 2. F1000Res. 2013; 2: 32. DOI: 10.12688/f1000research.2-32.v2
19
Hasegawa et al., Orphanet J Rare Dis. 2014, vol. 9:89.
20
Stone et al., J Biol Chem. 2012, vol. 287(49), p. 41139-51.
21
Kang et al., J Pathol Transl Med. 2019 May 16. doi: 10.4132/jptm.2019.05.03. [Epub ahead of print]
22
Sharma et al., BMC Gastroenterol. 2018, vol. 18(1), p. 107.
23
Uegaki et al., Intern Med. 2008, vol. 47(7), p. 599-602.
24
Goldschmidt et al., Hepatol Res. 2016, vol. 46(4), p. 306-311.
25
Liu et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2010, vol. 50(2), p. 179-183.
26
Jung et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2007, vol. 44(4), p. 453-458.
27
Bounford. University of Birmingham. Dissertation Abstracts International, (2016) Vol. 75, No. 1C. Order No.: AAI10588329. ProQuest Dissertations & Theses.
28
Stolz et al., Aliment Pharmacol Ther. 2019, vol. 49(9), p. 1195-1204.
29
Ivashkin et al., Hepatology International 2016, vol. 10, No. 1, Supp. SUPPL. 1, pp. S461. Abstract Number: LBO-38. Meeting Info: 25th Annual Conference of the Asian Pacific Association for the Study of the Liver, APASL 2016. Tokyo, Japan. 20 Feb 2016-24 Feb 2016
30
Blackmore et al., J Clin Exp Hepatol. 2013, vol. 3(2), p. 159-161.
31
Matte et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2010, vol. 51(4), p. 488-493.
32
Squires et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2017, vol. 64(3), p. 425-430.
33
Hayshi et al., EBioMedicine. 2018, vol. 27, p. 187-199.
34
Nagasaka et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2007, vol. 45(1), p. 96-105.
35
Wang et al., PLoS One. 2016; vol. 11(4): e0153114.
36
Narchi et al., Saudi J Gastroenterol. 2017, vol. 23(5), p. 303-305.
37
Alashkar et al., Blood 2015, vol. 126, No. 23. Meeting Info.: 57th Annual Meeting of the American-Society-of-Hematology. Orlando, FL, USA. December 05 -08, 2015. Amer Soc Hematol.
38
Ferreira et al., Pediatric Transplantation 2013, vol. 17, Supp. SUPPL. 1, pp. 99. Abstract Number: 239. Meeting Info: IPTA 7th Congress on Pediatric Transplantation. Warsaw, Poland. 13 Jul 2013-16 Jul 2013.
39
Pauli-Magnus et al., J Hepatol. 2005, vol. 43(2), p. 342-357.
40
Jericho et al., Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition 2015, vol. 60(3), p. 368-374.
41
van der Woerd et al., PLoS One. 2013, vol. 8(11): e80553.
42
Copeland et al., J Gastroenterol Hepatol. 2013, vol. 28(3), p. 560-564.
43
Droege et al., J Hepatol. 2017, vol. 67(6), p. 1253-1264.
44
Chen et al., Journal of Pediatrics 2002, vol. 140(1), p. 119-124.
45
Jirsa et al., Hepatol Res. 2004, vol. 30(1), p. 1-3.
46
van der Woerd et al., Hepatology 2015, vol. 61(4), p. 1382-1391.
【0102】
幾つかの実施形態では、ATP8B1における変異は、L127P、G308V、T456M、D554N、F529del、I661T、E665X、R930X、R952X、R1014X、及びG1040Rから選択される。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
Table 3(表3)及びTable 4(表4)に関する参考文献
1
Noe et al., J Hepatol. 2005, vol. 43(3), p. 536-543.
2
Lam et al., Am J Physiol Cell Physiol. 2007, vol. 293(5), p. C1709-16.
3
Stindt et al., Liver Int. 2013, vol. 33(10), p. 1527-1735.
4
Gao et al., Shandong Yiyao 2012, vol. 52(10), p. 14-16.
5
Strautnieks et al., Gastroenterology. 2008, vol. 134(4), p. 1203-1214.
6
Kagawa et al., Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2008, vol. 294(1), p. G58-67.
7
Byrne et al., Hepatology. 2009, vol. 49(2), p. 553-567.
8
Chen et al., J Pediatr. 2008, vol. 153(6), p. 825-832.
9
Davit-Spraul et al., Hepatology 2010, vol. 51(5), p. 1645-1655.
10
Droege et al., Sci Rep. 2016, vol. 6: 24827.
11
Lang et al., Pharmacogenet Genomics. 2007, vol. 17(1), p. 47-60.
12
Ellinger et al., World J Gastroenterol. 2017, vol. 23(29), p. :5295-5303.
13
Vitale et al., J Gastroenterol. 2018, vol. 53(8), p. 945-958.
14
Knisely et al., Hepatology. 2006, vol. 44(2), p. 478-86.
15
Ellis et al., Hepatology. 2018, vol. 67(4), p. 1531-1545.
16
Lam et al., J Hepatol. 2006, vol. 44(1), p. 240-242.
17
Varma et al., Hepatology 2015, vol. 62(1), p. 198-206.
18
Treepongkaruna et al., World J Gastroenterol. 2009, vol. 15(34), p. 4339-4342.
19
Zarenezhad et al., Hepatitis Monthly: 2017, vol. 17(2); e43500.
20
Hayashi et al., Hepatol Res. 2016, vol. 46(2), p. 192-200.
21
Guorui et al., Linchuang Erke Zazhi 2013, vol. 31(10), 905-909.
22
van Mil et al., Gastroenterology. 2004, vol. 127(2), p. 379-384.
23
Anzivino et al., Dig Liver Dis. 2013, vol. 45(3), p. 226-232.
24
Park et al., World J Gastroenterol. 2016, vol. 22(20), p. 4901-4907.
25
Imagawa et al., J Hum Genet. 2018, vol. 63(5), p. 569-577.
26
Giovannoni et al., PLoS One. 2015, vol. 10(12): e0145021.
27
Hu et al., Mol Med Rep. 2014, vol. 10(3), p. 1264-1274.
28
Lang et al,. Drug Metab Dispos. 2006, vol. 34(9), p. 1582-1599.
29
Masahata et al., Transplant Proc. 2016, vol. 48(9), p. 3156-3162.
30
Holz et al., Hepatol Commun. 2018, vol. 2(2), p. 152-154.
31
Li et al., Hepatology International 2017, vol. 11, No. 1, Supp. Supplement 1, pp. S180. Abstract Number: OP284.
32
Francalanci et al., Laboratory Investigation 2011, vol. 91, Supp. SUPPL. 1, pp. 360A. Abstract Number: 1526.
33
Francalanci et al., Digestive and Liver Disease 2010, vol. 42, Supp. SUPPL. 1, pp. S16. Abstract Number: T.N.5.
34
Shah et al., J Pediatr Genet. 2017, vol. 6(2), p. 126-127.
35
Gao et al., Hepatitis Monthly 2017, vol. 17(10), e55087/1-e55087/6.
36
Evason et al., Am J Surg Pathol. 2011, vol. 35(5), p. 687-696.
37
Davit-Spraul et al., Mol Genet Metab. 2014, vol. 113(3), p. 225-229.
38
Maggiore et al., J Hepatol. 2010, vol. 53(5), p. 981-6.
39
McKay et al., Version 2. F1000Res. 2013; 2: 32. DOI: 10.12688/f1000research.2-32.v2
40
Liu et al., Pediatr Int. 2013, vol. 55(2), p. 138-144.
41
Waisbourd-Zinman et al., Ann Hepatol. 2017, vol. 16(3), p. 465-468.
42
Griffin, et al., Canadian Journal of Gastroenterology and Hepatology 2016, vol. 2016. Abstract Number: A200. Meeting Info: 2016 Canadian Digestive Diseases Week, CDDW 2016. Montreal, QC, United States. 26 Feb 2016-29 Feb 2016
43
Qiu et al., Hepatology 2017, vol. 65(5), p. 1655-1669.
44
Imagawa et al., Sci Rep. 2017, 7:41806.
45
Kang et al., J Pathol Transl Med. 2019 May 16. doi: 10.4132/jptm.2019.05.03. [Epub ahead of print]
46
Takahashi et al., Eur J Gastroenterol Hepatol. 2007, vol. 19(11), p. 942-6.
47
Shimizu et al., Am J Transplant. 2011, vol. 11(2), p. 394-398.
48
Krawczyk et al., Ann Hepatol. 2012, vol. 11(5), p. 710-744.
49
Sharma et al., BMC Gastroenterol. 2018, vol. 18(1), p. 107.
50
Sattler et al., Journal of Hepatology 2017, vol. 66, No. 1, Suppl. S, pp. S177. Meeting Info.: International Liver Congress / 52nd Annual Meeting of the European-Association-for-the-Study-of-the-Liver. Amsterdam, NETHERLANDS. April 19 -23, 2017. European Assoc Study Liver.
51
Jung et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2007, vol. 44(4), p. 453-458.
52
Sciveres. Digestive and Liver Disease 2010, vol. 42, Supp. SUPPL. 5, pp. S329. Abstract Number: CO18. Meeting Info: 17th National Congress SIGENP. Pescara, Italy. 07 Oct 2010-09 Oct 2010
53
Sohn et al., Pediatr Gastroenterol Hepatol Nutr. 2019, vol. 22(2), p. 201-206.
54
Ho et al., Pharmacogenet Genomics. 2010, vol. 20(1), p. 45-57.
55
Wang et al., Hepatol Res. 2018, vol. 48(7), p. 574-584.
56
Shaprio et al., J Hum Genet. 2010, vol. 55(5), p. 308-313.
57
Bounford. University of Birmingham. Dissertation Abstracts International, (2016) Vol. 75, No. 1C. Order No.: AAI10588329. ProQuest Dissertations & Theses.
58
Stolz et al., Aliment Pharmacol Ther. 2019, vol. 49(9), p. 1195-1204.
59
Jankowska et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2014, vol. 58(1), p. 92-95.
60
Kim. Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition 2016, vol. 62, Supp. SUPPL. 1, pp. 620. Abstract Number: H-P-045. Meeting Info: 49th Annual Meeting of the European Society for Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition, ESPGHAN 2016. Athens, Greece. 25 May 2016-28 May 2016.
61
Pauli-Magnus et al., Hepatology 2003, vol. 38, No. 4 Suppl. 1, pp. 518A. print. Meeting Info.: 54th Annual Meeting of the American Association for the Study of Liver Diseases. Boston, MA, USA. October 24-28, 2003. American Association for the Study of Liver Diseases.
62
Li et al., Hepatology International 2017, vol. 11, No. 1, Supp. Supplement 1, pp. S362. Abstract Number: PP0347. Meeting Info: 26th Annual Conference of the Asian Pacific Association for the Study of the Liver, APASL 2017. Shanghai, China. 15 Feb 2017-19 Feb 2017.
63
Rumbo et al., Transplantation 2018, vol. 102, No. 7, Supp. Supplement 1, pp. S848. Abstract Number: P.752. Meeting Info: 27th International Congress of The Transplantation Society, TTS 2018. Madrid, Spain. 30 Jun 2018-05 Jul 2018.
64
Lee et al., Pediatr Gastroenterol Hepatol Nutr. 2017, vol. 20(2), p. 114-123.
65
Sherrif et al., Liver international: official journal of the International Association for the Study of the Liver 2013, vol. 33, No. 8, pp. 1266-1270.
66
Blackmore et al., J Clin Exp Hepatol. 2013, vol. 3(2), p. 159-161.
67
Matte et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2010, vol. 51(4), p. 488-493.
68
Lin et al., Zhongguo Dang Dai Er Ke Za Zhi. 2018, vol. 20(9), p. 758-764.
69
Harmanci et al., Experimental and Clinical Transplantation 2015, vol. 13, Supp. SUPPL. 2, pp. 76. Abstract Number: P62. Meeting Info: 1st Congress of the Turkic World Transplantation Society. Astana, Kazakhstan. 20 May 2015-22 May 2015.
70
Herbst et al., Mol Cell Probes. 2015, vol. 29(5), p. 291-298.
71
Moghadamrad et al., Hepatology. 2013, vol. 57(6), p. 2539-2541.
72
Holz et al., Zeitschrift fur Gastroenterologie 2016, vol. 54, No. 8. Abstract Number: KV275. Meeting Info: Viszeralmedizin 2016, 71. Jahrestagung der Deutschen Gesellschaft fur Gastroenterologie, Verdauungs- und Stoffwechselkrankheiten mit Sektion Endoskopie - 10. Herbsttagung der Deutschen Gesellschaft fur Allgemein- und Viszeralchirurgie. Hamburg, Germany. 21 Sep 2016-24 Sep 2016.
73
Wang et al., PLoS One. 2016; vol. 11(4): e0153114.
74
Hao et al., International Journal of Clinical and Experimental Pathology 2017, vol. 10(3), p. 3480-3487.
75
Arnell et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2010, vol. 51(4), p. 494-499.
76
Sharma et al., Indian Journal of Gastroenterology 2017, vol. 36, No. 1, Supp. Supplement 1, pp. A99. Abstract Number: M-20. Meeting Info: 58th Annual Conference of the Indian Society of Gastroenterology, ISGCON 2017. Bhubaneswar, India. 14 Dec 2017-17 Dec 2017.
77
Beausejour et al., Can J Gastroenterol. 2011, vol. 25(6), p. 311-314.
78
Imagawa et al., Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition 2016, vol. 63, Supp. Supplement 2, pp. S51. Abstract Number: 166. Meeting Info: World Congress of Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition 2016. Montreal, QC, Canada. 05 Oct 2016-08 Oct 2016.
79
Peng et al., Zhonghua er ke za zhi (Chinese journal of pediatrics) 2018, vol. 56, No. 6, pp. 440-444.
80
Tibesar et al., Case Rep Pediatr. 2014, vol. 2014: 185923.
81
Ng et al., Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition 2018, vol. 66, Supp. Supplement 2, pp. 860. Abstract Number: H-P-127. Meeting Info: 51st Annual Meeting European Society for Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition, ESPGHAN 2018. Geneva, Switzerland. 09 May 2018-12 May 2018.
82
Wong et al., Clin Chem. 2008, vol. 54(7), p. 1141-1148.
83
Pauli-Magnus et al., J Hepatol. 2005, vol. 43(2), p. 342-357.
84
Jericho et al., Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition. 60, vol. 3, p. 368-374.
85
Scheimann et al., Gastroenterology 2007, vol. 132, No. 4, Suppl. 2, pp. A452. Meeting Info.: Digestive Disease Week Meeting/108th Annual Meeting of the American-Gastroenterological-Association. Washington, DC, USA. May 19 -24, 2007. Amer Gastroenterol Assoc; Amer Assoc Study Liver Dis; Amer Soc Gastrointestinal Endoscopy; Soc Surg Alimentary Tract.
86
Jaquotot-Haerranz et al., Rev Esp Enferm Dig. 2013, vol. 105(1), p. 52-54.
87
Khosla et al., American Journal of Gastroenterology 2015, vol. 110, No. Suppl. 1, pp. S397. Meeting Info.: 80th Annual Scientific Meeting of the American-College-of-Gastroenterology. Honolulu, HI, USA. October 16 -21, 2015.
88
Droege et al., J Hepatol. 2017, vol. 67(6), p. 1253-1264.
89
Liu et al., Liver International 2010, vol. 30(6), p. 809-815.
90
Chen et al., Journal of Pediatrics 2002, vol. 140(1), p. 119-124.
91
U.S. Patent No. 9,295,677
【0126】
幾つかの実施形態では、ABCB11における変異は、A167T、G238V、V284L、E297G、R470Q、R470X、D482G、R487H、A570T、N591S、A865V、G982R、R1153C、及びR1268Qから選択される。
【0127】
対象におけるPFIC(例えば、PFIC-1及びPFIC-2)を治療する方法が提供され、該方法は、対象から得られた試料についてアッセイを行って、対象がPFICに関連する変異(例えば、ATP8B1、ABCB11、ABCB4、TJP2、NR1H4、又はMyo5b変異)を有しているかどうか決定すること、及び治療的有効量の式(I)の化合物又は医薬として許容されるその塩を、PFICに関連する変異を有していると決定された対象に投与すること(例えば、特異的に又は選択的に投与すること)を含む。幾つかの実施形態では、変異は、ATP8B1又はABCB11変異である。例えば、Table 1~4(表1~4)のいずれか一つに示すような変異である。幾つかの実施形態では、ATP8B1における変異は、L127P、G308V、T456M、D554N、F529del、I661T、E665X、R930X、R952X、R1014X、及びG1040Rから選択される。幾つかの実施形態では、ABCB11における変異は、A167T、G238V、V284L、E297G、R470Q、R470X、D482G、R487H、A570T、N591S、A865V、G982R、R1153C、及びR1268Qから選択される。
【0128】
PFICの治療を必要とする対象におけるPFIC(例えば、PFIC-1及びPFIC-2)を治療するための方法がまた提供され、該方法は、(a)対象におけるPFICに関連する変異(例えば、ATP8B1、ABCB11、ABCB4、TJP2、NR1H4、又はMyo5b変異)を検出すること;及び(b)対象に治療的有効量のオデビキシバットの結晶変態Iを投与することを含む。幾つかの実施形態では、PFICを治療するための方法は、治療的有効量の式(I)の化合物又は医薬として許容されるその塩を、PFICに関連する変異(例えば、ATP8B1、ABCB11、ABCB4、TJP2、NR1H4、又はMyo5b変異)を有する対象に投与することを含み得る。幾つかの実施形態では、変異は、ATP8B1又はABCB11変異である。例えば、Table 1~4(表1~4)のいずれか一つに示すような変異である。幾つかの実施形態では、ATP8B1における変異は、L127P、G308V、T456M、D554N、F529del、I661T、E665X、R930X、R952X、R1014X、及びG1040Rから選択される。幾つかの実施形態では、ABCB11における変異は、A167T、G238V、V284L、E297G、R470Q、R470X、D482G、R487H、A570T、N591S、A865V、G982R、R1153C、及びR1268Qから選択される。
【0129】
幾つかの実施形態では、対象は、次世代シーケンシング(NGS)を含めた、当業者に認められる検査の使用を通して、対象又は対象からの生検標本におけるPFICに関連する変異を有すると決定される。幾つかの実施形態では、対象は、対象若しくは対象からの生検標本におけるPFICに関連する変異を識別するための、規制機関に承認された、例えば、FDAに承認された検査若しくはアッセイを使用して、又は本明細書に記載するアッセイの非限定的な例のいずれかを行うことによって、PFICに関連する変異を有すると決定される。PFICを診断する更なる方法は、Gunaydin, M.ら、Hepat Med. 2018、第10巻、95~104頁(参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)に記載されている。
【0130】
幾つかの実施形態では、PFIC(例えば、PFIC-1又はPFIC-2)の治療によって、対象における血清中胆汁酸のレベルが減少する。幾つかの実施形態では、血清中胆汁酸のレベルは、例えば、ELISA酵素アッセイによって、又はDaneseら、PLoS One. 2017、第12(6)巻: e0179200(これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)に記載されるような総胆汁酸を測定するためのアッセイによって決定される。幾つかの実施形態では、血清中胆汁酸のレベルは、オデビキシバットの結晶変態Iの投与前の血清中胆汁酸のレベルの、例えば、10%~40%、20%~50%、30%~60%、40%~70%、50%~80%、又は90%超減少し得る。幾つかの実施形態では、PFICの治療は、そう痒の治療を含む。
【0131】
よって、一実施形態では、本発明は、上に列挙する通りの疾患又は障害の治療又は予防に使用するための、本明細書に記載するオデビキシバットの結晶変態1に関する。
【0132】
別の実施形態では、本発明は、上に列挙する通りの疾患又は障害を治療又は予防するための医薬の製造における、本明細書に記載するオデビキシバットの結晶変態1の使用に関する。
【0133】
更に別の実施形態では、本発明は、温血動物における上に列挙する通りの疾患又は障害を治療及び予防する方法であって、そのような治療及び/又は予防法を必要とする温血動物に治療有効量の本明細書に記載するオデビキシバットの結晶変態1を投与することを含む方法に関する。
【0134】
本発明の別の態様は、治療的有効量の本明細書に記載するオデビキシバットの結晶変態1を医薬として許容される希釈剤又は担体と併せて含む医薬組成物に関する。
【0135】
該医薬組成物は、IBAT阻害剤;腸内分泌ペプチド又はその強化剤;ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤;ビグアニジン;インクレチン模倣剤;チアゾリジノン;PPARアゴニスト;HMG Co-A還元酵素阻害剤;胆汁酸結合剤;TGR5受容体モジュレータ;プロストンクラスの化合物のメンバー;グアニル酸シクラーゼCアゴニスト;5-HT4セロトニンアゴニスト;又はこれらの活性物質のいずれか1つの医薬として許容される塩から選択される活性物質等の、少なくとも1つの他の活性物質を更に含んでもよい。そのような組み合わせの例は、WO2012/064268にも記載されている。
【0136】
オデビキシバットの結晶変態1は、約0.01~1.0mg/kg、例えば約0.01~0.5mg/kg、又は例えば約0.01~0.2mg/kgの範囲内の単位用量で温血動物に投与することができ、これは治療有効用量を提供することができる。錠剤又はカプセル剤等の単位剤形は、約0.1~20mg、例えば約0.1~10mg、又は例えば約0.2~5mg、又は例えば約0.2~1.0mgの活性成分を含有することができる。日用量は、単回用量として、又は1つ、2つ、3つ、若しくはそれ以上の単位用量に分割して投与することができる。経口投与されるオデビキシバットの日用量は、好ましくは約0.1~50mg以内、より好ましくは約0.1~20mg以内、例えば約0.2~10mg以内、又は例えば約0.2~5.0mg以内である。
【0137】
オデビキシバットの医薬製剤は、治療的有効量のオデビキシバットの結晶変態1と、1つ又は複数の医薬として許容される賦形剤とを含んでもよい。賦形剤として、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤、及び潤滑剤を挙げることができる。一般に、医薬組成物は、従来の賦形剤を使用して、従来の方式で調製することができる。
【0138】
幾つかの実施形態では、該医薬製剤は、低用量のオデビキシバットの結晶変態1を含有する多粒子製剤である。そのような製剤は、体重に基づく投薬を可能にし、小児患者に投与するのに特に適している可能性がある。幾つかの実施形態では、該医薬製剤は、小児製剤である。
【0139】
幾つかの実施形態では、該粒子は十分に小さくて、それらを食品上に振りかけ、容易に飲み込むことができる。幾つかの実施形態では、該粒子は、ざらざらした感覚を引き起こさずに飲み込むことができる。幾つかの実施形態では、該粒子は、患者に粒子を噛もうとする気を抱かせない。
【0140】
幾つかの実施形態では、各々の粒子は、コアと、コアを取り囲むコーティング層とを含む。各々の粒子のコアは、ペレット、顆粒、ミニタブレット、ビーズ、微小粒子、又は微小球であってもよい。医薬品有効成分は、コア中に存在しても、コーティング層中に存在してもよい。幾つかの実施形態では、各々の粒子のコーティング層は医薬品有効成分を含むが、各々の粒子のコアは医薬品有効成分を含まない。
【0141】
コアは、口腔内分散性で、糖(例えば、スクロース)若しくは可溶性ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)等の可溶性成分を含んでもよく、又は非口腔内分散性で、不溶性ポリマー(例えば、微結晶性セルロース)等の不溶性成分を含んでもよい。幾つかの実施形態では、コアは、微結晶性セルロース球である。
【0142】
コーティング層は、セルロース系ポリマー、多糖系ポリマー、N-ビニルピロリドン系ポリマー、アクリレート、アクリルアミド、又はそれらのコポリマー等の皮膜形成ポリマーを更に含むことができる。適切な皮膜形成ポリマーの例として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メタクリル酸コポリマー、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、キトサン、シェラック、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;又はヒプロメロース)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、並びにそれらの組み合わせ、例えば、メチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物(メトローズ)が挙げられる。幾つかの実施形態では、コーティング層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)からなる群から選択される皮膜形成ポリマーを含む。
【0143】
コーティング層は、任意選択により、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、トリアセチン、又はクエン酸トリエチル)、粘着防止剤(例えば、タルク、又はステアリン酸マグネシウム)、又は着色料(例えば、二酸化チタン、酸化鉄、リボフラビン、又はウコン)等の1種又は複数の追加成分を含んでもよい。
【0144】
治療的又は予防的処置に必要とされる投与量は、投与経路、疾患の重症度、患者の年齢及び体重、並びに特定の患者に適した個々のレジメン及び投与量レベルを決定するときに主治医によって通常考慮される他の要因に依存することとなる。
【0145】
定義
「結晶変態」という用語は、有機化合物の結晶性固相を指す。結晶変態は、溶媒和物又は非溶媒和物のいずれであってもよい。
【0146】
「溶媒和物」という用語は、有機化合物の結晶性固相であって、その結晶構造に組み込まれた溶媒(すなわち、溶媒分子)を有するものを指す。「水和物」は、溶媒が水である溶媒和物である。
【0147】
「セスキ水和物」という用語は、1モルの有機化合物当たり結晶に結合した水を約1.5モル含有する水和物(すなわち、1.5水和物)を指す。本明細書で使用される場合、セスキ水和物は、結晶中に1モルのオデビキシバットに結合した約1.2~約1.8、より好ましくは約1.3~約1.7、より好ましくは約1.4~約1.6、更により好ましくは約1.45~約1.55モルの水を含む。本明細書で算出される水の量は、結晶の表面に吸着された水を除外する。
【0148】
「混合溶媒和物」という用語は、有機化合物の結晶性固相であって、その結晶構造に組み込まれた2種以上の異なる溶媒分子を有するものを指す。少なくとも2種の溶媒分子のうちの1種は、水であってもよい。
【0149】
「等構造溶媒和物」という用語は、有機化合物の結晶性固相であって、結晶性固相が、結晶構造の歪みを有することなく異なる溶媒を収容することができるものを指す。
【0150】
「スラリー」という用語は、過剰な固体を添加すると、それによって固体と飽和溶液との混合物が形成する、飽和溶液を指す。
【0151】
本明細書で使用される場合、「空隙容量」という用語は、結晶構造中のチャンネル、層、又は他の多かれ少なかれ単離された空隙を指す。
【0152】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」、及び「治療すること」という用語は、本明細書に記載する通りの疾患、又は障害、又はそれらの1つ若しくは複数の症状の後退、緩和、それらの発症の遅延、又はそれらの進行の阻害を指す。幾つかの実施形態では、治療は、1つ又は複数の症状が発症した後に施されてもよい。他の実施形態では、治療は、症状の非存在下で施されてもよい。例えば、治療は、罹患しやすい個体に(例えば、症状の病歴を考慮して、及び/又は遺伝的若しくは他の罹患しやすい要因を考慮して)、症状の発症前に施されてもよい。治療は、症状が解消した後でも、例えば、その再発を予防又は遅延させるために継続されてもよい。
【0153】
本明細書で使用される場合、「医薬として許容される」という用語は、ヒトの医薬用途に適し、一般に安全で無毒であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない、化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指す。
【0154】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、本明細書では、値又はパラメータであって、その値又はパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(及び記載する)値又はパラメータを指す。例えば、「約20」に言及する記載は、「20」の記載を含む。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。一般に言えば、「約」という用語は、その変数が示す値、その変数が示す値の実験誤差内のすべての値(例えば、平均の95%信頼区間内)、又はその変数が示す値の10パーセント以内の、どちらでも大きい方を指す。
【0155】
オデビキシバットの結晶性試料の結晶化度は、例えば、実験の部に開示する方法のような、X線粉末回折(XRPD)法又は示差走査熱量測定(DSC)法によって測定されてもよい。本明細書において結晶性化合物に言及するとき、好ましくは、DSC法によって測定したときの結晶化度は、約70%超、例えば約80%超、特に約90%超、より特に約95%超である。幾つかの実施形態では、DSC法によって測定したときの結晶化度は、約98%超である。幾つかの実施形態では、DSC法によって測定したときの結晶化度は、約99%超である。結晶化度(%)は、結晶性である総試料質量の質量パーセントを指す。
【0156】
好ましくは、本発明による結晶変態は、化合物の他の結晶変態を実質的に含まない。好ましくは、記載するオデビキシバットの結晶変態は、例えば、約20質量%、約15質量%、約10質量%、約5質量%、約3質量%未満、又は特に約1質量%未満のオデビキシバットの他の結晶変態を含む。よって、好ましくは、記載するオデビキシバットの結晶変態の固相純度は、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約97%超、又は特に約99%超である。
【0157】
これから以下の実施例によって本発明を説明していくが、これらは、いかなる点においても本発明を限定するものではない。本明細書に述べるすべての引用文献及び参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
【0158】
略語
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOH エタノール
MeOH メタノール
RH 相対湿度
2-PrOH 2-プロパノール
【0159】
実験方法
X線粉末回折(XRPD)分析
分析は、CuロングファインフォーカスX線管及びPIXcel検出器を備えたPANalytical X'Pert Pro回折計を用いて22℃で行った。自動発散及び散乱防止スリットを、0.02radのSollerスリット及びNiフィルターと一緒に使用した。乾燥試料を、切り出したシリコンのZero Background Holder(ZBH)上に塗抹し、2~40°(2シータ)の間で、17分の分析時間で分析した。すべてのスラリー試料を熱処理した多孔質アルミナフィルター基板上に滴下し、それらが乾くにつれて2回分析し、最初に1分16秒の走査(2~30°(2シータ))、次いで7分の走査(2~30°(2シータ))を行った。最後の17分の走査は、試料が数時間乾燥したときに行った。
【0160】
試料のランダム性を増大させるために、試料を分析中に回転させた。以下の実験設定を使用した:
管の張力及び電流:40kV、50mA
波長アルファ1(CuKα1):1.5406Å
波長アルファ2(CuKα2):1.5444Å
波長アルファ1とアルファ2の平均(CuKα):1.5418Å
【0161】
測定条件(使用する装置、試料調製物、又は機械等)に応じて、1つ又は複数の測定誤差を有するX線粉末回折パターンが得られる可能性があることが当技術分野で知られている。特に、XRPDパターンにおける強度は測定条件及び試料調製物に応じて揺らぐ可能性があることが一般に知られている。例えば、XRPDの当業者であれば、ピークの相対強度が、試験中の試料の配向によって、また使用する機器のタイプ及び設定に応じて変動し得ることを認識するであろう。当業者であれば、反射の位置が、回折計内に置かれた試料の正確な高さ及び回折計の零較正によっても影響を受ける可能性があることも認識するであろう。試料の表面の平面性も小さな影響を及ぼすことがある。よって、当業者であれば、本明細書に提示する回折パターンが絶対的なものとして解釈されるべきでないこと、及び本明細書に開示するものと実質的に同一な粉末回折パターンをもたらす結晶形はいずれも本開示の範囲内に含まれることを理解するであろう(更なる情報については、R. Jenkins及びR.L. Snyder、「Introduction to X-ray powder diffractometry」、John Wiley & Sons、1996を参照されたい).
【0162】
熱重量分析(TGA)
分析は、Julabo社FP40冷却器を備えたMettler TGA/SDTA 851eで行った。1~10mgの試料を計量して100μLのAlカップに入れ、分析中に乾燥窒素ガスでフラッシュした。2つの異なる方法を使用した。すなわち、「標準走査」では、試料を25℃から200℃まで10℃/分の走査速度で走査し、「念入り走査」では、試料を25℃で30分間保持し、次いで25℃から100℃まで10℃/分の走査速度で走査した。
【0163】
動的蒸気吸脱着測定(DVS)
DVS測定は、ProUmid社(以前の「Projekt Messtechnik」社)(August-Nagel-Str. 23、89079 Ulm(ドイツ))製のSPS11-100n 「Sorptions Prufsystem」で行った。約20mgの試料を使用した。1時間当たり5%の湿度変化率を使用した。試料を微量天秤上のアルミニウム又は白金ホルダー上に置き、0%RHで平衡化した後で、予め定義した以下の湿度プログラムを開始した:
(1)0%RHで5時間
(2)0→95%RH(5%/時);95%RHで5時間
(3)95→0%RH(5%/時);0%RHで5時間
(4)0→95%RH(5%/時);95%RHで5時間
(5)95→0%RH(5%/時);0%RHで5時間
【0164】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
分析は、Agilent社1260 Infinity脱気装置を備えた、Agilent社Series 1100で行った。カラム:Waters社XSelcet CHS C18(150×3mm、3.5μm);移動相A:水中0.1%ギ酸、移動相B:アセトニトリル中0.1%ギ酸;勾配45%~90%B;流量0.425mL/分;取得時間35分;実行時間42分;波長:283nm;カラム温度20℃。Chromeleon Version 6.8ソフトウェアを使用した。
【0165】
示差走査熱量測定(DSC)
実験は、TA Instruments社Q2000 Differential Scanning Calorimeterを使用して行った。使用したDCSるつぼは、蓋にピンホール(直径≧0.2mm)を有するTZeroアルミニウムパンであった。測定を通して50mL/分の一定流量での乾燥窒素パージをDSCセル内で維持した。
【実施例】
【0166】
(実施例1)
結晶変態1の調製
無水アルコール(100.42kg)及び粗オデビキシバット(18.16kg)を250LのGLRに窒素雰囲気下で撹拌しながら装入した。精製水(12.71kg)を添加し、反応物を25±5℃で15分間窒素雰囲気下で撹拌した。撹拌を25±5℃で3~60分間、透明な溶液が形成されるまで継続した。溶液を、5.0μのSSカートリッジフィルター、続いて0.2μのPPカートリッジフィルターを通してろ過し、次いで清浄な反応器に移した。精製水(63.56kg)を25±5℃で2~3時間にわたってゆっくり添加し、溶液にオデビキシバットの結晶変態1を種晶添加した。溶液を25±5℃で12時間撹拌した。この時間の間に、溶液は濁りを生じた。析出した固体を、遠心分離機を通してろ過し、材料を30分間遠心脱水した。材料を、その後Nutscheフィルター中で12時間真空乾燥させた。次いで材料を、真空棚段乾燥器中、25±5℃、真空下(550mmHg)で10時間、次いで30±5℃、真空下(550mmHg)で16時間乾燥させた。材料をオフホワイトの結晶性固体として単離した。単離した結晶性材料を粉砕し、LDPEの袋に保存した。
【0167】
過水和した試料をXRPDで分析した。その回折図を
図2に示す。別の試料を真空中50℃で乾燥させ、その後XRPDで分析した。乾燥した試料の回折図を
図1に示す。
【0168】
試料の乾燥についての回折図を
図3及び
図4に、それぞれ5~13°及び18~25°の2θ範囲で示す(下に過水和した試料、及び上に乾燥した試料)。
【0169】
(実施例2)
エタノール及び水からの結晶変態2Aの調製
105.9mgのオデビキシバットを計量して1mLのChromacol容器に入れた。磁気撹拌子及び1.0mLのエタノール:水の70:30%v/v混合物を添加し、容器をクリンプキャップで閉じた。次いで、得られたスラリーを25℃で1週間撹拌したままにした。
【0170】
湿った試料をXRPDで分析した。その回折図を
図6に示す。試料を乾燥させると、それは結晶変態1に転移した。
【0171】
(実施例3)
アセトン及び水からの結晶変態2Aの調製
27.0mgのオデビキシバットを計量して1mLのChromacol容器に入れた。磁気撹拌子及び0.5mLのアセトン:水の50:50%v/v混合物を添加し、容器をクリンプキャップで閉じた。次いで、得られたスラリーを3℃で2週間撹拌したままにした。
【0172】
湿った試料をXRPDで分析した。その回折図を
図7に示す。試料を乾燥させると、それは結晶変態1に転移した。
【0173】
(実施例4)
2-プロパノール及び水からの結晶変態2Aの調製
27.4mgのオデビキシバットを計量して1mLのChromacol容器に入れた。磁気撹拌子及び0.5mLの2-プロパノール:水の50:50%v/v混合物を添加し、容器をクリンプキャップで閉じた。次いで、得られたスラリーを3℃で2週間撹拌したままにした。
【0174】
湿った試料をXRPDで分析した。その回折図を
図8に示す。試料を乾燥させると、それは結晶変態1に転移した。
【0175】
(実施例5)
1,4-ジオキサン及び水からの結晶変態2Aの調製
31.6mgのオデビキシバットを計量して1mLのChromacol容器に入れた。磁気撹拌子及び0.5mLの1,4-ジオキサン:水の50:50%v/v混合物を添加し、容器をクリンプキャップで閉じた。次いで、得られたスラリーを3℃で2週間撹拌したままにした。
【0176】
湿った試料をXRPDで分析した。その回折図を
図9に示す。試料を乾燥させると、それは結晶変態1に転移した。
【0177】
(実施例6)
メタノールからの結晶変態2Bの調製
103.9mgのオデビキシバットを計量して1mLのChromacol容器に入れた。磁気撹拌子及び0.9mLのメタノールを添加し、容器をクリンプキャップで閉じた。次いで、得られたスラリーを22℃で1週間撹拌したままにした。
【0178】
湿った試料をXRPDで分析した。その回折図を
図9に示す。試料を乾燥させると、それは結晶変態1に転移した。
【0179】
(実施例7)
アセトニトリル及び水からの結晶変態2Bの調製
20.2mgのオデビキシバットを1.5mLのアセトニトリルに溶解させた。この撹拌溶液に、2.5mLの水を貧溶媒として添加した。20~30分以内にスラリーが析出した。
【0180】
湿った試料をXRPDで分析した。その回折図を
図10に示す。試料を乾燥させると、それは結晶変態1に転移した。
【0181】
(実施例8)
DMSO及び水からの結晶変態2Cの調製
29.8mgのオデビキシバットを計量して1mLのChromacol容器に入れた。磁気撹拌子及び0.5mLのDMSO:水の50:50%v/v混合物を添加し、容器をクリンプキャップで閉じた。次いで、得られたスラリーを3℃で2週間撹拌したままにした。
【0182】
湿った試料をXRPDで分析した。その回折図を
図12に示す。試料を乾燥させると、それは結晶変態1に転移した。
【0183】
(実施例9)
結晶変態1及び2の水及び溶媒含有率の分析
変態1の結晶のカール-フィッシャー分析から、3.4%w/wの含水率が示された。同じ材料の熱重量分析(TGA)から、3.5%の総質量損失が示された(
図13を参照されたい)。これらの同様の知見から、結晶変態1が、1モルのオデビキシバット当たり1.5モルの水を含有し、1.5水和物に相当することが示される。
【0184】
結晶変態2中の水及び溶媒含有率を、3日間平衡化したオデビキシバットのエタノール:水(60:40%v/v)中スラリーから調製した試料を使用することによって分析した。2形は、XRPDに従って形成した。スラリー試料をスラリーから多孔質板に取り、次いでエタノール:水(60:40%v/v)を有するデシケータ中に保存し、少なくとも一晩平衡化した。板を取り出し、空気中で一定時間(5~30分)乾燥させ、次いでXRPDで高速走査(1分16秒)で分析して結晶形を検証した。幾つかの試料は結晶変態2を含有しており、依然として非常に湿っていたが、結晶変態1は、もっと乾いた試料に既に出現し始めていた。結晶変態2の乾燥した試料のカール-フィッシャー分析から、4%w/wより若干多い含水率が示された。結晶変態2の非常に湿った試料の熱重量分析から、これらの試料が最初に大量の質量を失ったことが示された。乾燥速度の変化がその後観察されたが、これはおそらく変態2から変態1への転移の開始を示すものである。幾つかの実験を行った後、変態2から変態1への転移に関する質量損失はおよそ12%w/wであると決定することができた。乾燥変態1はセスキ水和物であるために(
図13を参照されたい)、結晶変態2から結晶変態1への転移に関するおよそ12%(w/w)の総質量損失は、2モルのエタノール及び0.5モルの水の損失に相当すると思われる。
【0185】
別の実験において、結晶変態1の試料をデシケータ内に保持し、エタノールと水との60:40(%v/v)混合物の気相に室温で4日間暴露した。試料の熱重量分析から、約18.7%の質量損失が示された(
図14を参照されたい)。質量損失は、実験の開始時に直ちに始まる。1H-NMRによる試料の更なる検査から、エタノール含有率は約2.7当量に相当し、含水率は約1.9当量に相当することが示唆された。
【0186】
(実施例10)
結晶変態1の動的蒸気吸脱着測定による分析
結晶変態1の吸水は、動的蒸気吸脱着測定(DVS)を使用して測定した。
図15に示す通りに、測定から、含水率が環境湿度に可逆的に依存し、最大吸収が95%RHで約5.0%(w/w)であることが明示される。
【0187】
試料を0%RHで乾燥させた後に相対湿度を増加させると、大半の水分を約25%RHまでに取り戻した。これは、約3.5%(w/w)の含水率に相当する。湿度を95%RHまで増加させると、追加的な1.5%(w/w)の水を吸収した。吸着/脱着プロセスは、最小限のヒステリシスを示す。XRPD分析から、水和物構造が20%RHでほぼ完全に元に戻り、30%RHで完全に元に戻ることが示されている。したがって、結晶変態1は約3.5%(w/w)の水を必要とすると思われ、これはセスキ水和物に相当する。より高い相対湿度で更に吸水しても、これ以上構造は変化しない。結晶変態1は、したがって、30~95%RHの範囲内で相対湿度を上げると追加的な1.5%(w/w)の水を吸水し得る、若干吸湿性のセスキ水和物であると思われる。
【0188】
(実施例11)
安定性試験
非晶質オデビキシバットの試料(純度約91%)及びオデビキシバットの結晶変態1の試料(純度>99%;結晶化度100%)を密閉容器内に空気下80℃で保存した。試料中のオデビキシバットの量は、実験の開始時にHPLCによって決定し、1、2、及び4週後に再び決定した。その結果を下のTable(表5)に示す。4週間の保存後に、非晶質試料は0.3%の分解を示したが、それに対して結晶性試料の純度は変化しなかった。
【0189】
【0190】
(実施例12)
示差走査熱量測定による結晶分画の決定
この方法は、部分的に結晶性の試料におけるオデビキシバット原薬の結晶分画を定量化する。定量化は、部分的に結晶性の試料がオデビキシバットの結晶性水和物と非晶相との二成分混合物であるという仮定に基づいている。結晶分画は、無水形の融解エンタルピーに基づいて定量化される。この無水形は、水和物を昇温で乾燥させることによって自発的且つ再現可能に形成する、脱水した水和物である。
【0191】
5~6mgの結晶性又は部分的に結晶性のオデビキシバットの試料を正確に計量してDSCるつぼに入れ、次いでそれを、適切なプレスを使用して穴のあいた蓋で閉じた。DSCるつぼの総質量(パン+蓋+試料)を記録し、DSC試験の後でるつぼの総質量を再び決定した。DSC試験中の質量損失は、5%より多くてはならない。
【0192】
DSC試験は以下の3つのサイクルからなる:
サイクル1: 5℃/分の走査速度で20℃から120℃への温度の増加;
サイクル2: 10℃/分の走査速度で120℃から80℃への温度の減少;及び
サイクル3: 10℃/分の走査速度で80℃から200℃への温度の増加。
【0193】
第1の走査サイクルは試料を乾燥させ、それによって水和物形を脱水した水和物(無水形)に変換する。第2の走査サイクルでは、試料を冷却して、後続する昇温での信号積分のための安定なベースラインを得る。試料が無水形の融解を経て加熱される第3の走査サイクルで、融解エンタルピーを決定する。
【0194】
融解に起因する吸熱事象は、140~165℃の温度範囲内で出現する。ピークは、TA Universal AnalysisソフトウェアのSig Tangent積分機能を使用して、S字との接線であるベースライン上を積分しなければならない。積分は、実際のベースラインに応じて、130℃~140℃の間の温度で開始し、165℃~175℃の間の温度で終了するべきである。非晶質部分のガラス転移は、実際の非晶質分画に応じて120~130℃の温度範囲に出現し得る(例として
図16を参照されたい)。不規則なベースラインによって積分ができない場合は、試料の乾燥が不完全であったかどうか評価するべきである。
【0195】
融解エンタルピーの評価は、DSC試験後のDSCるつぼ(パン+蓋+試料)の総質量を試験前のるつぼの総質量から引くことによって得られる、試料の乾燥質量を使用して行われる。初期質量と乾燥質量の差を初期質量で割った、DSC走査中の質量損失(%)は、5%より多くてはならない。さもなければ、試料の結晶含有率を算出することができない。質量パーセントで表される結晶分画は、融解エンタルピー(ΔHsample)から次式に基づいて算出されることになる。その値は整数で与えられるものとする。
【0196】
【0197】
(実施例13)
結晶変態1の結晶化度に及ぼす乾燥の効果
これらの実験では、結晶変態2は、結晶変態1をエタノール/水の6:4混合物中でスラリー化した後で得た。得られた湿った材料を、その後デシケータ内で2か月間エタノール/水(6:4)の蒸気下で保存した。
【0198】
次いで、結晶変態1の結晶化度に及ぼす乾燥の影響を見るために、結晶変態2の試料を様々な乾燥技法を使用して乾燥させた。乾燥した試料は、XRPDを使用して分析した(試料は周囲空気雰囲気中で調製した)。その結果を以下のTable(表6)に示す。この結果から、結晶変態1が、結晶変態2を真空下又は窒素流下で乾燥させることによって得られる脱水形を再水和させることによって得られることが示唆される。結晶変態2を周囲条件で保存すると、エタノール-水の交換が非常に低いように思われる。
【0199】
【0200】
(実施例14)
結晶変態2の結晶化度に及ぼす溶媒の効果
結晶変態1を、エタノールと水との30:70(%v/v)混合物中(試料A)又はエタノールと水との70:30(%v/v)混合物中(試料B)に室温で懸濁させた。一晩撹拌した後、ろ過を行い、回収した湿った試料をXRPD(透過)にかけた。両方の試料のXRPDパターンは本質的に結晶変態2に相当したが、おそらく2つの試料のエタノール含有率の相違に起因する幾つかのわずかなピークシフトが2つの試料間に観察された。
【0201】
次いで両方の試料を室温での空気乾燥に供し、XRPDによって再試験した。両方の場合で結晶変態1が得られたが、XRPDパターンにおけるピーク分解度に基づくと、エタノールと水との70:30(%v/v)混合物から得られた試料の方がかなり結晶性が高いように思われる。
【0202】
DSC測定を、空気乾燥させた試料について行った。30%のエタノールを含有する混合物から得られた試料Aは、70%のエタノールを含有する混合物Bから得られた試料より結晶性が低いことが見出された。試料Aの融解のエンタルピーは25.7J/gであることが見出され、これは95%の結晶化度に相当する。試料Bについては28.9J/gのエンタルピーが見出され、これは100%超の結晶化度に相当する。
【配列表】