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特許7504038コイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】コイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/06 20060101AFI20240614BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240614BHJP
【FI】
H01Q7/06
H02J50/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021013316
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116898
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】松島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】千代 憲隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓也
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/175659(WO,A1)
【文献】特開2017-099239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/06
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルパターンと、
前記第1コイルパターンを軸方向から覆う磁性体と、を備え、
いずれも前記軸方向と直交するよう前記第1コイルパターンの中心を通り、且つ、互いに直交する第1仮想線と第2仮想線を定義した場合、
前記第1コイルパターンの中心から前記磁性体の外周端までの前記第1仮想線に沿った一方向における第1距離は、前記第1コイルパターンの中心から前記第1コイルパターンの外周端までの前記第1仮想線に沿った前記一方向における第2距離よりも大きく、且つ、前記第1コイルパターンの中心から前記磁性体の外周端までの前記第1仮想線に沿った前記一方向とは反対側の逆方向における第3距離よりも大きく、
前記第1コイルパターンの中心から前記磁性体の外周端までの前記第2仮想線に沿った一方向における第4距離は、前記第1コイルパターンの中心から前記第1コイルパターンの内周端までの前記第2仮想線に沿った前記一方向における第5距離よりも小さい、コイル部品。
【請求項2】
前記第1コイルパターンの中心から前記磁性体の外周端までの前記第2仮想線に沿った前記一方向とは反対側の逆方向における第6距離は、前記第1コイルパターンの中心から前記第1コイルパターンの内周端までの前記第2仮想線に沿った前記逆方向における第7距離よりも小さい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1距離と前記第2距離の差は、前記第4距離と前記第5距離の差よりも大きい、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1距離と前記第2距離の差は、前記第1コイルパターンの前記第1仮想線に沿った外形サイズよりも小さい、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第2仮想線よりも前記第1仮想線の前記一方向側における前記第1コイルパターンの開口面積は、前記第2仮想線よりも前記第1仮想線の前記逆方向側における前記第1コイルパターンの開口面積よりも大きい、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1コイルパターンは、前記第2仮想線よりも前記第1仮想線の前記一方向側に位置する第1及び第2コーナー部と、前記第2仮想線よりも前記第1仮想線の前記逆方向側に位置する第3及び第4コーナー部を有し、
前記第1及び第2コーナー部の曲率半径は、前記第3及び第4コーナー部の曲率半径よりも小さい、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1コイルパターンの開口領域に配置され、前記第1コイルパターンと同じ軸方向を有する第2コイルパターンをさらに備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
基材をさらに備え、
前記第1及び第2コイルパターンは、前記基材の少なくとも一方の表面に設けられている、請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のコイル部品と、
前記第1コイルパターンに接続される通信回路と、
前記第2コイルパターンに接続される送電回路と、を備えるワイヤレス電力伝送デバイス。
【請求項10】
金属部材をさらに備え、
前記磁性体は、前記金属部材と前記第1及び第2コイルパターンとの間に配置される、請求項9に記載のワイヤレス電力伝送デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどの携帯端末を載置するための端末ホルダーは、携帯端末と通信するための無線通信アンテナを備えていることがある。ここで、汎用の端末ホルダーの場合、形状やサイズが異なる種々の携帯端末が載置されることから、携帯端末と正しく通信するためには、通信可能エリアを十分に確保する必要がある。例えば、特許文献1には、近距離無線通信(NFC)用のコイルパターンと、ワイヤレス電力伝送用のコイルパターンを備えるアンテナ装置において、NFC用のコイルパターンを複数設けることによって通信可能エリアを拡大させた例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2019/220818号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、NFC用のコイルパターンを複数設けると、構造が複雑になるだけでなく、全体のサイズが大型化するという問題があった。
【0005】
したがって、本開示は、簡単な構造で広い通信可能エリアを得ることができるコイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様によるコイル部品は、第1コイルパターンと、第1コイルパターンを軸方向から覆う磁性体とを備え、いずれも軸方向と直交するよう第1コイルパターンの中心を通り、且つ、互いに直交する第1仮想線と第2仮想線を定義した場合、第1コイルパターンの中心から磁性体の外周端までの第1仮想線に沿った一方向における第1距離は、第1コイルパターンの中心から第1コイルパターンの外周端までの第1仮想線に沿った一方向における第2距離よりも大きく、且つ、第1コイルパターンの中心から磁性体の外周端までの第1仮想線に沿った一方向とは反対側の逆方向における第3距離よりも大きく、第1コイルパターンの中心から磁性体の外周端までの第2仮想線に沿った一方向における第4距離は、第1コイルパターンの中心から第1コイルパターンの内周端までの第2仮想線に沿った一方向における第5距離よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡単な構造で広い通信可能エリアを得ることができるコイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態によるコイル部品を内蔵する端末ホルダー1の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、端末ホルダー1の載置面2にスマートフォン10又は20を載置した状態を示す模式図であり、スマートフォン10,20の略中央部にNFC用のアンテナコイルが搭載されている例を示している。
図3図3は、端末ホルダー1の載置面2にスマートフォン10又は20を載置した状態を示す模式図であり、スマートフォン10,20のy方向における略端部にNFC用のアンテナコイルが搭載されている例を示している。
図4図4は、台形A1と台形A2の位置関係を示す模式図である。
図5図5は、一実施形態によるコイル部品100の構造を説明するための略平面図である。
図6図6(a)は図5に示すA-A線に沿った略断面図であり、図6(b)は図5に示すB-B線に沿った略断面図である。
図7図7は、第1コイルパターンCP1と磁性体7の位置関係をより詳細に説明するための模式図である。
図8図8は、コイル部品100を用いたワイヤレス電力伝送デバイス60のブロック図である。
図9図9は、変形例によるコイル部品100aの構造を説明するための略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態によるコイル部品を内蔵する端末ホルダー1の外観を示す略斜視図である。
【0011】
図1に示す端末ホルダー1は、スマートフォンなどの携帯端末を載置する載置面2と、載置面2上の携帯端末をy方向に位置決めする下部ストッパー3と、載置面2上の携帯端末のx方向における位置を制限する左側ストッパー4及び右側ストッパー5とを備えている。載置面2はxy平面を有している。載置面2は傾斜しており、載置面2上に携帯端末が載置されると、重力によって携帯端末の下部が下部ストッパー3に押し当てられ、これにより携帯端末がy方向に位置決めされる。携帯端末のx方向における位置は、左側ストッパー4と右側ストッパー5の間の任意の位置となる。
【0012】
載置面2のz方向における下部には、後述する近距離無線通信(NFC)用のコイルパターンとワイヤレス電力伝送用のコイルパターンが配置されている。これにより、スマートフォンなどの携帯端末を端末ホルダー1に載置すると、端末ホルダー1と携帯端末の間で近距離無線通信を行うことができるとともに、ワイヤレス電力伝送によって携帯端末を充電することができる。本開示によるコイル部品を内蔵する装置としては、図1に示す端末ホルダー1に限らず、自動車の車内に設けられるセンターコンソールなど、携帯端末が載置される装置であれば特に限定されない。
【0013】
図2及び図3は、端末ホルダー1の載置面2にスマートフォン10又は20を載置した状態を示す模式図であり、図2はスマートフォン10,20の略中央部にNFC用のアンテナコイルが搭載されている例を示し、図3はスマートフォン10,20のy方向における略端部にNFC用のアンテナコイルが搭載されている例を示している。
【0014】
図2及び図3に示すように、スマートフォン10はサイズが比較的小型であり、スマートフォン20はサイズが比較的大型である。図2及び図3には、小型のスマートフォン10が左側ストッパー4と接するよう最も左側に配置された状態、並びに、大型のスマートフォン20が右側ストッパー5と接するよう最も右側に配置された状態が模式的に示されている。小型のスマートフォン10のx方向における位置は、X1の範囲において変動しうる。大型のスマートフォン20のx方向における位置は、X2の範囲において変動しうる。これに対し、スマートフォン10,20のy方向における位置は、重力により、下部ストッパー3によって位置決めされる。
【0015】
ここで、スマートフォン10のサイズが端末ホルダー1に載置されるスマートフォンの最小サイズであると仮定し、スマートフォン20のサイズが端末ホルダー1に載置されるスマートフォンの最大サイズであると仮定すると、略中央部にNFC用のアンテナコイルが搭載されたスマートフォン10,20においては、NFC通信エリア11,21の中心位置が図2に示す台形A1の範囲内となり、略端部にNFC用のアンテナコイルが搭載されたスマートフォン10,20においては、NFC通信エリア12,22の中心位置が図3に示す台形A2の範囲内となる。台形A1,A2は、下辺の長さがいずれもX1であり、上辺の長さがいずれもX2である。
【0016】
このため、端末ホルダー1に載置されるスマートフォンのサイズ及びNFC用のアンテナコイルの搭載位置によって、図4に示すように、端末ホルダー1に求められる通信可能エリアが2箇所に分離する。このような2箇所のエリアのいずれにおいても通信可能とする方法としては、NFC用のコイルパターンによって台形A1,A2の両方を囲む方法や、台形A1,A2をそれぞれ囲むようNFC用のコイルパターンを2つ設ける方法が考えられる。しかしながら、前者の方法ではコイルパターンが大型化するという問題が生じ、後者の方法ではコイルパターンが複雑化するという問題が生じる。これに対し、以下に説明する本実施形態によるコイル部品は、コイルパターンを大型化又は複雑化することなく、2箇所のエリアのいずれにおいても通信可能である。
【0017】
図5は、一実施形態によるコイル部品100の構造を説明するための略平面図であり、図6(a)は図5に示すA-A線に沿った略断面図、図6(b)は図5に示すB-B線に沿った略断面図である。
【0018】
図5及び図6に示すように、本実施形態によるコイル部品100は、PETフィルムなどからなる基材30と、基材30の表面31,32に設けられた第1コイルパターンCP1及び第2コイルパターンCP2と、磁性体7とを備えている。磁性体7の裏面側には、端末ホルダー1の筐体や回路基板などからなる金属部材8が存在する。つまり、磁性体7は、第1コイルパターンCP1及び第2コイルパターンCP2と、金属部材8の間に配置されている。通常、コイルパターンの近傍に金属部材8が存在するとアンテナ効率が低下するが、両者間に磁性体7が配置されていることから、磁性体7が磁路として機能し、アンテナ効率の低下が抑えられる。第1コイルパターンCP1及び第2コイルパターンCP2の上面は、端末ホルダー1の筐体や保護フィルムなどからなる絶縁性部材6で覆われている。絶縁性部材6の表面は、図1に示した端末ホルダー1の載置面2を構成する。
【0019】
第1コイルパターンCP1はNFC用のアンテナコイルであり、第2コイルパターンCP2はワイヤレス電力伝送用の送電コイルである。第1コイルパターンCP1及び第2コイルパターンCP2は、それぞれ開口を有する。第2コイルパターンCP2は、第1コイルパターンCP1の開口領域に配置されている。第1コイルパターンCP1及び第2コイルパターンCP2の軸方向はいずれもz方向である。第1コイルパターンCP1のコイル軸と第2コイルパターンCP2のコイル軸は、一致していても構わないし、x方向又はy方向における位置が互いに異なっていても構わない。このように、第2コイルパターンCP2を第1コイルパターンCP1の開口領域に配置していることから、第1コイルパターンCP1及び第2コイルパターンCP2の両方を基材30の表面に形成することができ、部品点数が削減される。また、第1コイルパターンCP1と第2コイルパターンCP2は同時に形成することができるため、製造プロセスも簡素化される。
【0020】
第1コイルパターンCP1は、基材30の表面31に形成された導体パターン41と、基材30の表面32に形成された導体パターン42と、基材30を貫通して設けられ、導体パターン41,42を接続するビア導体43によって構成されている。図5及び図6に示す例では、第1コイルパターンCP1のターン数が約2ターンであるが、第1コイルパターンCP1のターン数については特に限定されない。第1コイルパターンCP1のターン数が1ターン未満である場合、基材30の表面31に形成されたパターン41だけで第1コイルパターンCP1を構成することが可能である。第2コイルパターンCP2はワイヤレス電力伝送用の送電コイルであり、大きなインダクタンスが必要であることから、基材30の表面31,32の両方に形成され、そのターン数は第1コイルパターンCP1のターン数よりも多い。
【0021】
ワイヤレス電力伝送用の第2コイルパターンCP2は、全体が磁性体7によってz方向から覆われている。これに対し、NFC用の第1コイルパターンCP1は、開口領域の大部分が磁性体7とz方向に重なるものの、一部の区間が磁性体7と重なりを有していない。具体的には、第1コイルパターンCP1のx方向における開口幅Dxは、磁性体7のx方向における外形サイズWxよりも大きく、これにより、第1コイルパターンCP1のうち、x方向の両側に位置しy方向に延在する区間51,52は、磁性体7に対してz方向の重なりを有していない。また、磁性体7のy方向における外形サイズWyは、第1コイルパターンCP1のy方向における外形サイズDyよりも大きく、これにより、第1コイルパターンCP1のうち、y方向の両側に位置し略x方向に延在する区間50,53は、磁性体7に対してz方向に重なっている。但し、後述するように、区間53については磁性体7と重なっていなくても構わない。
【0022】
図7は、第1コイルパターンCP1と磁性体7の位置関係をより詳細に説明するための模式図である。
【0023】
図7には、第1コイルパターンCP1の中心40を通る第1仮想線S1と第2仮想線S2が示されている。第1仮想線S1はy方向に延在し、第2仮想線S2はx方向に延在する。したがって、第1仮想線S1(y方向)、第2仮想線S2(x方向)及びコイル軸(z方向)は、互いに直交する。
【0024】
ここで、第1コイルパターンCP1の中心40から磁性体7の外周端までの第1仮想線S1に沿った一方向(+y方向:12時方向)における長さを第1距離L1とし、第1コイルパターンCP1の中心40から第1コイルパターンCP1の外周端までの第1仮想線S1に沿った一方向(+y方向:12時方向)における長さを第2距離L2とした場合、L1>L2を満たしている。このため、第1コイルパターンCP1のうち、+y方向(12時方向)に位置しx方向に延在する区間50は磁性体7と重なる。第1距離L1と第2距離L2の差(L1-L2)、つまり、第1コイルパターンCP1に対する磁性体7の+y方向(12時方向)における突出量は、図4に示した台形A2のy方向における位置によって設計される。つまり、磁性体7の+y方向(12時方向)における突出部分7aは、少なくとも一部が台形A2と重なるよう設計される。一方、図4に示した台形A1は、全体が第1コイルパターンCP1の開口領域と重なるよう設計される。
【0025】
これにより、台形A1に対応する通信可能エリアについては、第1コイルパターンCP1の開口領域と重なることから十分な通信特性を得ることができるとともに、台形A2に対応する通信可能エリアについては、少なくとも一部が第1コイルパターンCP1の開口領域とは重ならないものの、磁性体7の+y方向(12時方向)における突出部分7aと重なることによって十分な通信特性を得ることができる。これは、磁性体7の突出部分7aによって磁束が第1コイルパターンCP1を超えて+y方向(12時方向)に広がるためである。但し、磁性体7の突出部分7aが大きすぎると、台形A2における磁束密度が低下することから、第1距離L1と第2距離L2の差(L1-L2)を第1コイルパターンCP1のy方向における外形サイズ、つまり、第1仮想線S1に沿った外形サイズ(=L2+L8)よりも小さくすることが好ましい。
【0026】
さらに、第1コイルパターンCP1の中心40から磁性体7の外周端までの第1仮想線S1に沿った逆方向(-y方向:6時方向)における長さを第3距離L3とした場合、L1>L3を満たしている。これにより、磁束の-y方向(6時方向)における広がりが抑えられることから、その分、+y方向(12時方向)への磁束の広がりが拡大する。ここで、第1コイルパターンCP1の中心40から第1コイルパターンCP1の外周端までの第1仮想線S1に沿った逆方向(-y方向:6時方向)における長さを第8距離L8とした場合、L3とL8の関係は任意である。つまり、磁性体7は、第1コイルパターンCP1の区間53に対して-y方向(6時方向)に突出していても構わないし、突出していなくても構わない。但し、第8距離L8に対して第3距離L3が大きすぎると+y方向(12時方向)への磁束の広がりが低減して台形A2に対応する通信可能エリアが狭くなり、第8距離L8に対して第3距離L3が小さすぎると台形A1に対応する通信可能エリアが狭くなることから、L3≒L8に設計することが好ましい。
【0027】
また、第1コイルパターンCP1の中心40から磁性体7の外周端までの第2仮想線S2に沿った一方向(+x方向:3時方向)における長さを第4距離L4とし、第1コイルパターンCP1の中心40から第1コイルパターンCP1の内周端までの第2仮想線S2に沿った一方向(+x方向:3時方向)における長さを第5距離L5とした場合、L4<L5を満たしている。同様に、第1コイルパターンCP1の中心40から磁性体7の外周端までの第2仮想線S2に沿った逆方向(-x方向:9時方向)における長さを第6距離L6とし、第1コイルパターンCP1の中心40から第1コイルパターンCP1の内周端までの第2仮想線S2に沿った逆方向(-x方向:9時方向)における長さを第7距離L7とした場合、L6<L7を満たしている。これにより、第1コイルパターンCP1のうち、x方向の両側に位置しy方向に延在する区間51,52は、磁性体7と重ならないことから、±x方向における磁束の広がりが大幅に抑えられる。その結果、+y方向(12時方向)への磁束の広がりがさらに拡大する。
【0028】
本実施形態においては、L4<L5とL6<L7の両方を満たしているが、少なくとも一方が満たされていれば、+y方向(12時方向)への磁束の広がりを拡大することができる。しかしながら、+y方向(12時方向)への磁束の広がりを十分に拡大するためには、図7に示すように、L4<L5とL6<L7の両方を満たすことが好ましい。ここで、第1距離L1と第2距離L2の差(L1-L2)は、第4距離L4と第5距離L5の差(L5-L4)、或いは、第6距離L6と第7距離L7の差(L7-L6)よりも大きいことが好ましい。これにより、台形A1に対応する通信可能エリアを確保しつつ、+y方向(12時方向)に磁束を十分に広げることが可能となる。
【0029】
また、第1コイルパターンCP1は、区間50の一端と区間51の一端を繋ぐ第1コーナー部C1と、区間50の他端と区間52の一端を繋ぐ第2コーナー部C2と、区間51の他端と区間53の一端を繋ぐ第3コーナー部C3と、区間52の他端と区間53の他端を繋ぐ第4コーナー部C4とを有する。第1コーナー部C1及び第2コーナー部C2は、第2仮想線S2よりも+y方向(12時方向)側に位置する。第3コーナー部C3及び第4コーナー部C4は、第2仮想線S2よりも-y方向(6時方向)側に位置する。第1コーナー部C1及び第2コーナー部C2の曲率半径は、第3コーナー部C3及び第4コーナー部C4の曲率半径よりも小さい。このため、第1コイルパターンCP1は、第2仮想線S2よりも+y方向(12時方向)側に位置する上側においては矩形に近い形状であり、第2仮想線S2よりも-y方向(6時方向)側に位置する下側においては円形に近い形状である。これにより、第2仮想線S2よりも+y方向(12時方向)側における第1コイルパターンCP1の開口面積は、第2仮想線S2よりも-y方向(6時方向)側における第1コイルパターンCP1の開口面積よりも大きくなり、+y方向(12時方向)への磁束の広がりが効率よく拡大する。
【0030】
本実施形態においては、第1コイルパターンCP1と磁性体7が上記の位置関係を有していることから、第1コイルパターンCP1と鎖交する磁束の多くが+y方向(12時方向)に広がる。その結果、第1コイルパターンCP1を大型化することなく、端末ホルダー1に載置された種々のサイズを有するスマートフォンとの通信が可能となる。
【0031】
図8は、本実施形態によるコイル部品100を用いたワイヤレス電力伝送デバイス60のブロック図である。
【0032】
図8に示すワイヤレス電力伝送デバイス60は、第1コイルパターンCP1及び第2コイルパターンCP2を有するコイル部品100と、第1コイルパターンCP1に接続された通信回路61と、第2コイルパターンCP2に接続された送電回路62とを備えている。通信回路61及び送電回路62は、制御回路63に接続されている。これにより、通信ライン64を介して送受信されるデータは、NFC用の第1コイルパターンCP1を介してスマートフォン10,20と通信することができるとともに、電源65によって供給される電力は、ワイヤレス電力伝送用の第2コイルパターンCP2を介してスマートフォン10,20にワイヤレスで送電することができる。
【0033】
このように、本実施形態によれば、NFCによる通信とワイヤレス電力伝送による充電が可能な端末ホルダー1に適したコイル部品100を提供することが可能となる。
【0034】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0035】
例えば、図5及び図7に示す例では、第1コイルパターンCP1の形状が上側においては矩形に近く、下側においては円形に近い形状であるが、本発明においてこの点は必須でなく、図9に示す変形例によるコイル部品100aのように、第1コイルパターンCP1が第2のコイルパターンCP2の外周に沿った形状であっても構わない。これによれば、製品を小型化することが可能となる。
【0036】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0037】
本開示の一実施態様によるコイル部品は、第1コイルパターンと、第1コイルパターンを軸方向から覆う磁性体と、を備え、いずれも軸方向と直交するよう第1コイルパターンの中心を通り、且つ、互いに直交する第1仮想線と第2仮想線を定義した場合、第1コイルパターンの中心から磁性体の外周端までの第1仮想線に沿った一方向における第1距離は、第1コイルパターンの中心から第1コイルパターンの外周端までの第1仮想線に沿った一方向における第2距離よりも大きく、且つ、第1コイルパターンの中心から磁性体の外周端までの第1仮想線に沿った一方向とは反対側の逆方向における第3距離よりも大きく、第1コイルパターンの中心から磁性体の外周端までの第2仮想線に沿った一方向における第4距離は、第1コイルパターンの中心から第1コイルパターンの内周端までの第2仮想線に沿った前記一方向における第5距離よりも小さい。
【0038】
係るコイル部品においては、簡単な構造で広い通信可能エリアを得ることができる。
【0039】
また、第1コイルパターンの中心から磁性体の外周端までの第2仮想線に沿った一方向とは反対側の逆方向における第6距離は、第1コイルパターンの中心から第1コイルパターンの内周端までの第2仮想線に沿った逆方向における第7距離よりも小さくてもよい。これによれば、略中央部にNFC用のアンテナコイルが搭載されたスマートフォンに対応する通信可能エリアを確保しつつ、第1仮想線に沿った一方向側に磁束を十分に広げることが可能となる。
【0040】
また、第1距離と第2距離の差は、第4距離と第5距離の差よりも大きくてもよい。これによれば、略中央部にNFC用のアンテナコイルが搭載されたスマートフォンに対応する通信可能エリアを確保しつつ、第1仮想線に沿った一方向側に磁束を十分に広げることが可能となる。
【0041】
また、第1距離と第2距離の差は、第1コイルパターンの第1仮想線に沿った外形サイズよりも小さくてもよい。これによれば、略端部にNFC用のアンテナコイルが搭載されたスマートフォンに対して十分な通信特性を得ることができる。
【0042】
また、第2仮想線よりも第1仮想線の一方向側における第1コイルパターンの開口面積は、第2仮想線よりも第1仮想線の逆方向側における第1コイルパターンの開口面積よりも大きくてもよい。これによれば、第1仮想線に沿った一方向側への磁束の広がりが効率よく拡大する。
【0043】
また、第1コイルパターンは、第2仮想線よりも第1仮想線の一方向側に位置する第1及び第2コーナー部と、第2仮想線よりも第1仮想線の逆方向側に位置する第3コーナー部を有し、第1及び第2コーナー部の曲率半径は、第3コーナー部の曲率半径よりも小さくてもよい。これによれば、第1仮想線に沿った一方向側への磁束の広がりが効率よく拡大する。
【0044】
また、コイル部品は、第1コイルパターンの開口領域に配置され、第1コイルパターンと同じ軸方向を有する第2コイルパターンをさらに備えていてもよい。この場合、コイル部品は基材をさらに備え、記第1及び第2コイルパターンは、基材の少なくとも一方の表面に設けられていてもよい。これによれば、第1コイルパターン及び第2コイルパターンの両方を基材の表面に形成することができ、部品点数が削減される。また、第1コイルパターンと第2コイルパターンは同時に形成することができるため、製造プロセスも簡素化される。
【0045】
また、本開示の一実施態様によるワイヤレス電力伝送デバイスは、上記コイル部品と、第1コイルパターンに接続される通信回路と、第2コイルパターンに接続される送電回路と、を備える。
【0046】
係るワイヤレス電力伝送デバイスにおいては、簡単な構造で広い通信可能エリアを得ることができる。
【0047】
また、ワイヤレス電力伝送デバイスは金属部材をさらに備え、磁性体は、金属部材と第1及び第2コイルパターンとの間に配置されていてもよい。これによれば、金属部材と第1及び第2コイルパターンの間に磁性体が配置されていることから、アンテナ効率の低下が抑えられる。
【符号の説明】
【0048】
1 端末ホルダー
3 下部ストッパー
4 左側ストッパー
5 右側ストッパー
6 絶縁性部材
7 磁性体
7a 突出部分
8 金属部材
10,20 スマートフォン
11,12,21,22 NFC通信エリア
30 基材
31,32 基材の表面
40 第1コイルパターンの中心
41,42 導体パターン
43 ビア導体
50~53 区間
60 ワイヤレス電力伝送デバイス
61 通信回路
62 送電回路
63 制御回路
64 通信ライン
65 電源
100,100a コイル部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9