(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
H01L21/68 T
(21)【出願番号】P 2021022532
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 統
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047541(WO,A1)
【文献】特開2017-195340(JP,A)
【文献】実開昭51-151862(JP,U)
【文献】特開平08-226431(JP,A)
【文献】特開2012-233532(JP,A)
【文献】実開昭61-164813(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/30
F16B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する容器本体に、基板方向にパージガスを噴射する拡散ユニットを内蔵した基板収納容器であって、
拡散ユニットから容器本体を貫通して外部に露出する取付固定部材に取り付けられる係止部材と、この係止部材を包囲するカバー部材とを含み、係止部材に、位置決め用の凹部と凸部をそれぞれ形成し、カバー部材に、係止部材の凹部に嵌まる位置決め凸部を形成するとともに、係止部材の凸部に嵌まる位置決め凹部を形成したことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体を正面が開口したフロントオープンボックスに構成してその内部後方には拡散ユニットを立て設け、この拡散ユニットの上部に、容器本体の周壁を貫通する取付固定部材を取り付けた請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
係止部材を拡散ユニットの取付固定部材に嵌め入れられる略C字形に形成してその両端部間の隙間を凹部とし、係止部材の外周面に凸部を形成した請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
カバー部材を樹脂含有の材料により係止部材に嵌め合わせ可能なエンドレスに形成し、このカバー部材の内周面に、位置決め凸部と位置決め凹部を間隔をおいて形成した請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項5】
カバー部材の内周面に、係止部材の外周縁部に斜面を接触させる複数の干渉爪を形成した請求項4記載の基板収納容器。
【請求項6】
カバー部材の内周面に、係止部材の外周面に接触する複数の隙間区画突部を形成した請求項4又は5記載の基板収納容器。
【請求項7】
カバー部材の外周面を、カバー部材の表面方向から容器本体の周壁に対向する裏面方向に向かうにしたがい広がるよう傾斜させた請求項4、5、又は6記載の基板収納容器。
【請求項8】
カバー部材の表裏面を異ならせ、カバー部材の表面に、誤嵌合防止突部を形成した請求項4ないし7のいずれかに記載の基板収納容器。
【請求項9】
カバー部材の裏面に、容器本体の周壁に接触する複数の隙間区画片を所定の間隔をおいて形成した請求項8記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体工場で半導体ウェーハの搬送や保管に使用されるFOUP等の基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における基板収納容器は、複数枚の半導体ウェーハを整列収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、半導体工場でFOUP(Front Opening Unify Pod)として利用される(特許文献1、2参照)。
容器本体は、フロントオープンボックスに成形されてその両側壁の内面上下方向に半導体ウェーハを水平に支持する一対の支持片が複数対対設され、内部後方の両側には、整列収納された半導体ウェーハ方向にパージガスを噴射するチャンバー方式の拡散ユニットが配設されており、この複数の拡散ユニットがパージガスを噴射することにより、半導体ウェーハの表面酸化や汚染、配線の腐食が防止される。
【0003】
各拡散ユニットは、中空縦長の略柱形に形成され、周壁の上下方向に窒素ガス等のパージガスをフィルタを介して拡散噴射する複数の噴射口が並べて穿孔されており、容器本体の底板後部両側の給気バルブに接続されて起立する。この拡散ユニットの上部には
図11や
図12に示すように、容器本体1の背面壁2を貫通するユニットクリップ3が装着され、このユニットクリップ3の容器本体1外に露出する露出部分7にCリング10Aが嵌入されることにより、拡散ユニットの上部が固定して位置決めされる。
【0004】
このような拡散ユニットの噴射口からパージガスが噴射されると、パージガスは、隣接する2枚の半導体ウェーハの間、半導体ウェーハの表面、半導体ウェーハの周縁部後方に衝突して上下に分流する等して容器本体1の正面方向に流出し、容器本体1内の空気が容器本体1の底板前部の排気バルブから外部にパージされ、置換される。
【0005】
上記構成において、基板収納容器の容器本体1を製造する場合には、容器本体1の一対の給気バルブに拡散ユニットの下部をそれぞれ嵌着し、各拡散ユニットの上部にユニットクリップ3を装着してその先端部側を容器本体1の背面壁上部に挿通し、ユニットクリップ3の容器本体1外に露出した先端部の露出部分7にCリング10Aを嵌入して拡散ユニットを位置決め固定すれば、拡散ユニット内蔵の容器本体1を製造することができる。製造された容器本体1は、棚板等に複数個が順次搭載され、蓋体と組み合わされて包装用の段ボール箱に収納され、出荷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2018/047541号公報
【文献】特開2018‐198332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、ユニットクリップ3の容器本体1外に露出した露出部分7にCリング10Aが嵌入されるので、拡散ユニットの上部のがたつきを防止し、拡散ユニットを適切に位置決め固定することができる。ユニットクリップ3やCリング10Aは、拡散ユニットを位置決め固定するという重要な役割を果たす関係上、高品質かつ安全に形成されるが、例えば外部から衝撃が作用する(
図12の矢印参照)等、好ましくない事態が生じても、脱落や損傷することのないよう形成されれば、機能の拡大や品質のさらなる向上が期待できる。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、拡散ユニットを適切に固定する固定部材の機能拡大や品質のさらなる向上を図ることのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体に、基板方向にパージガスを噴射する拡散ユニットを内蔵したものであって、
拡散ユニットから容器本体を貫通して外部に露出する取付固定部材に取り付けられる係止部材と、この係止部材を包囲するカバー部材とを含み、係止部材に、位置決め用の凹部と凸部をそれぞれ形成し、カバー部材に、係止部材の凹部に嵌まる位置決め凸部を形成するとともに、係止部材の凸部に嵌まる位置決め凹部を形成したことを特徴としている。
【0010】
なお、容器本体を正面が開口したフロントオープンボックスに構成してその内部後方には拡散ユニットを立て設け、この拡散ユニットの上部に、容器本体の周壁を貫通する取付固定部材を取り付けることができる。
また、係止部材を拡散ユニットの取付固定部材に嵌め入れられる略C字形に形成してその両端部間の隙間を凹部とし、係止部材の外周面に凸部を形成することができる。
また、カバー部材を樹脂含有の材料により係止部材に嵌め合わせ可能なエンドレスに形成し、このカバー部材の内周面に、位置決め凸部と位置決め凹部を間隔をおいて形成することもできる。
【0011】
また、カバー部材の内周面に、係止部材の外周縁部に斜面を接触させる複数の干渉爪を形成することが可能である。
また、カバー部材の内周面に、係止部材の外周面に接触する複数の隙間区画突部を形成することが可能である。
また、カバー部材の外周面を、カバー部材の表面方向から容器本体の周壁に対向する裏面方向に向かうにしたがい広がるよう傾斜させることも可能である。
【0012】
また、カバー部材の表裏面を異ならせ、カバー部材の表面に、誤嵌合防止突部を形成することが好ましい。
さらに、カバー部材の裏面に、容器本体の周壁に接触する複数の隙間区画片を所定の間隔をおいて形成することが好ましい。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも必要枚数の半導体ウェーハやダミーウェーハ等が含まれる。また、容器本体には、少なくとも工程内用のFOUP(Front Opening Unify Pod)や輸送用のFOSB(Front Opening Shipping Box)等が含まれる。この容器本体の周壁には、天井、背面壁、側壁、又はこれらの境界部が含まれる。拡散ユニットは、単数でも良いし、複数でも良い。
【0014】
取付固定部材は、板バネ形、紙片形、棒形、又はこれらの組み合わせでも良い。また、係止部材の略C字形には、C字形やおおよそ類似の形が含まれる。この係止部材は、凹部が上方に位置し、凸部が下方に位置することが好ましい。また、カバー部材は、係止部材とは異なる有彩色や無彩色に形成することができる。このカバー部材の外周面と誤嵌合防止突部の周面は、略面一に整合することが好ましいが、整合していなくても良い。
【0015】
本発明によれば、カバー部材が係止部材を包囲して外部環境から保護するので、例えカバー部材に外部から衝撃が作用しても、カバー部材が変形して衝撃を緩和し、固定用の取付固定部材や係止部材が変形したり、損傷したり、取付固定部材から係止部材が脱落するのを防ぐことができる。また、係止部材の凹部にカバー部材の位置決め凸部を嵌め、係止部材の凸部にカバー部材の位置決め凹部を嵌めた場合、係止部材にカバー部材を適正に位置合わせしながら嵌め合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、拡散ユニットから容器本体を貫通して外部に露出する取付固定部材に取り付けられる係止部材と、この係止部材を包囲するカバー部材とを含み、係止部材に、位置決め用の凹部と凸部をそれぞれ形成し、カバー部材に、係止部材の凹部に嵌まる位置決め凸部を形成するとともに、係止部材の凸部に嵌まる位置決め凹部を形成するので、拡散ユニットを適切に固定する固定部材の機能拡大や品質のさらなる向上を図ることができるという効果がある。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、拡散ユニットの上部に取付固定部材を装着して容器本体の周壁に挿通し、取付固定部材の容器本体外に露出した露出部分に係止部材を嵌め入れ、この係止部材とカバー部材とを嵌め合わせ、係止部材の凹部にカバー部材の位置決め凸部を嵌めるとともに、係止部材の凸部にカバー部材の位置決め凹部を嵌め入れれば、容器本体の内部後方に拡散ユニットの上部を固定してがたつきや振動等を防止することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、係止部材の両端部間の隙間を利用すれば、拡散ユニットの取付固定部材に係止部材を簡単に嵌め入れることができる。また、係止部材の両端部間の隙間をそのまま凹部として利用するので、係止部材の外周面に凹部を形成する手間を省くことができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、カバー部材がエンドレスの単品なので、複数の部品によりカバー部材を組み立てる必要がない。また、位置決め凸部と位置決め凹部を利用すれば、係止部材の外側にカバー部材を嵌め合わせ、外部環境に係止部材が直接接触して破損するのを防止することができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、複数の干渉爪の斜面に係止部材の外周縁部が接触してがたつくことなく支持されるので、例え外部環境にカバー部材が接触して外部から衝撃が作用しても、取付固定部材や係止部材に加わる衝撃を緩和することができ、取付固定部材や係止部材の損傷を防いで品質の維持を図ることが可能になる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、カバー部材の全内周面と係止部材の全外周面が接触するのではなく、複数の隙間区画突部と係止部材の外周面が部分的に接触し、複数の隙間区画突部と係止部材との接触面積が縮小するので、例え外部から衝撃が作用しても、取付固定部材や係止部材に衝撃がそのまま作用するのを抑制することが可能となり、取付固定部材や係止部材の損傷防止が期待できる。また、カバー部材と係止部材の間に流体流通用の隙間を区画することができるので、例えば容器本体を洗浄等した場合、カバー部材と係止部材の間に液体等が残存することが少ない。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、カバー部材の外周面が平坦ではなく、傾斜しているので、例えカバー部材に外部から衝撃が作用しても、衝撃エネルギーを分散させて逸らすことができ、カバー部材から係止部材に作用する衝撃の軽減が期待できる。
請求項8記載の発明によれば、例えばカバー部材の表面を容器本体の周壁方向に誤って向けた場合、容器本体の周壁に誤嵌合防止突部が接触し、カバー部材の姿勢が不安定化して係止部材との嵌め合わせや位置決めが困難になる。したがって、誤嵌合防止突部により、カバー部材の適正な向きを把握することができ、係止部材にカバー部材を適切に嵌め合わせて組立不良を排除することができる。
【0023】
請求項9記載の発明によれば、容器本体の周壁にカバー部材の全裏面が接触するのではなく、カバー部材の複数の隙間区画片が部分的に接触するので、容器本体の周壁とカバー部材の間に流体流通用の隙間を形成することが可能となる。したがって、例え容器本体を洗浄する場合にも、容器本体の周壁とカバー部材の間に洗浄液が残存することが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるCリングとカバーを模式的に示す斜視説明図である。
【
図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるCリングとカバーを模式的に示す説明図である。
【
図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体の背面壁とカバー間の隙間を模式的に示す側面説明図である。
【
図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるカバーの表面を模式的に示す平面説明図である。
【
図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるカバーの裏面を模式的に示す裏面説明図である。
【
図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるカバーの表面側を模式的に示す斜視説明図である。
【
図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるカバーの裏面側を模式的に示す斜視説明図である。
【
図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるカバーの外周面と誤嵌合防止突部の関係を模式的に示す要部説明図である。
【
図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるユニットクリップ、Cリング、及びカバーを模式的に示す断面説明図である。
【
図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体の背面壁とカバーの誤嵌合防止突部の関係を模式的に示す説明図である。
【
図11】従来における基板収納容器のユニットクリップの露出部分にCリングが嵌入された状態を模式的に示す説明図である。
【
図12】従来における基板収納容器のCリングに衝撃が作用した状態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図10に示すように、基板である複数枚の半導体ウェーハを収納する容器本体1の内部後方に、パージガスを噴射する複数の拡散ユニットを内蔵したFOUPであり、各拡散ユニットから容器本体1を貫通して外部に露出するユニットクリップ3に嵌入される固定用のCリング10と、このCリング10を包囲して保護するエンドレスのカバー20とを備え、Cリング10に、位置決め用の凹部11と凸部12をそれぞれ形成し、カバー20に、Cリング10の凹部11に嵌合する位置決め位置決め凸部25を形成するとともに、Cリング10の凸部12に嵌合する位置決め凹部26を形成することにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0026】
半導体ウェーハは、図示しないが、例えばφ300mmの薄く脆い高品質のシリコンウェーハからなり、表面に回路パターンが形成されており、容器本体1の内部上下方向に複数枚(25枚)が一列に整列収納され、水平に支持される。
【0027】
容器本体1は、所定の樹脂を含有した成形材料により正面が開口したフロントオープンボックスに成形され、内部の両側、換言すれば、両側壁の内面に、半導体ウェーハを水平に支持する左右一対の支持片が対設されるとともに、この左右一対の支持片が上下方向に所定の間隔をおいて配列されており、各支持片が前後方向に伸長形成されて半導体ウェーハの周縁部側方を支持するよう機能する。この容器本体1の成形材料中の樹脂としては、例えばポリカーボネート(PC)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂、シクロオレフィンコポリマー(COC)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0028】
容器本体1の成形材料には、上記樹脂の他、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤が必要に応じて添加される。また、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が添加されたり、剛性を向上させるガラス繊維等も選択的に添加される。
【0029】
容器本体1は、開口した正面に蓋体が枠形のシールガスケットを介し着脱自在に嵌合され、周壁である背面壁2の中央部には、必要に応じ、収納された半導体ウェーハ視認用の縦長の観察窓が正面略矩形に選択的にインサート成形される。また、容器本体1の底板の後部両側には、容器本体1の外部から拡散ユニットにパージガスを導く給気バルブがそれぞれ装着され、底板の前部両側には、容器本体1の内部から外部に空気を排気する排気バルブがそれぞれ装着される。容器本体1の底板には、底板下面の大部分に対向するボトムプレートが着脱自在に螺着される。
【0030】
複数の拡散ユニットは、容器本体1の内部後方の両側にそれぞれ立設され、各拡散ユニットが整列収納された半導体ウェーハ方向にパージガスを拡散させながら噴射することにより、半導体ウェーハの表面酸化や汚染、配線の腐食を有効に防止する。各拡散ユニットは、容器本体1の背面側に位置する縦長で略トレイ形の裏面プレートと、この裏面プレートの開口した正面に嵌合される縦長で略トレイ形の表面プレートとを備え、容器本体1の給気バルブにオフセット状態で着脱自在に接続されて起立する。
【0031】
拡散ユニットの裏面プレートと表面プレートとの間には、ろ過用のフィルタが内蔵され、表面プレートが断面略へ字形に屈曲形成されており、この表面プレートのXY方向には、半導体ウェーハ方向に対向する複数の噴射口が並べて穿孔されるとともに、各噴射口が横長の溝に形成される。また、拡散ユニットの上端部には
図1ないし
図3、
図9に示すように、容器本体1の背面壁上部を貫通するユニットクリップ3が装着され、このユニットクリップ3の容器本体1外に露出する露出部分7にCリング10が外部から着脱自在に嵌入されて抜け止め機能を発揮することにより、拡散ユニットの上部が固定してがたつくことなく位置決めされる。
【0032】
ユニットクリップ3は、耐衝撃性や強度に優れるポリカーボネート樹脂等により成形される。このユニットクリップ3は、
図9に部分的に示すように、例えば拡散ユニットの上端面に装着される略へ字形の屈曲部と、この屈曲部の端に一体形成されて容器本体1の背面壁上部をOリング4を介し貫通する円柱形の軸部5とを備え、この軸部5の容器本体1外に露出する先端6がCリング10の脱落防止のため略茸形に膨出形成されており、この軸部5の先端6がカバー20の表面から露出する。
【0033】
Cリング10は、
図1や
図2、
図9に示すように、例えば所定の樹脂を含有した材料によりユニットクリップ3の露出部分7を拡開自在に挟持する略C字形に湾曲形成され、表面が外部に視認可能に露出するとともに、裏面が容器本体1の背面壁上部に対向する。このCリング10の材料中の樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリカーボネート樹脂や耐熱性、機械的強度等に優れる高機能のポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等があげられる。
【0034】
Cリング10は、例えば肉厚4mm程度に形成され、両端部間の隙間が上方である容器本体1の天井方向に指向し、この隙間がカバー20位置決め用の凹部11に区画形成される。また、Cリング10の外周面には、下方である容器本体1の底板方向に指向するカバー20位置決め用の凸部12が半径外方向に突出形成され、この凸部12と凹部11とが180°離れて位置する。凸部12は、Cリング10が成形される場合、例えば製品部分であるCリング10とランナーを繋ぐサイドゲートが利用され、ユニットクリップ3の露出部分7に嵌入される際、必要に応じて回転操作用に利用される。
【0035】
カバー20は、
図1ないし
図10に示すように、例えば所定の樹脂含有の材料によりCリング10に外側から着脱自在に嵌合される中空の平面略卵形あるいは略カム形の板に形成されており、表面が視認可能に露出するとともに、裏面が容器本体1の背面壁上部に対向し、先細りの狭小部21が下方に指向する。このカバー20の材料中の樹脂としては、特に限定されるものではないが、Cリング10同様、耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂の他、滑り性等に資するポリアセタール(POM)樹脂等が該当する。カバー20は、例えば肉厚4.6mm程度に形成され、Cリング10に対する位置等を明瞭に識別する観点から、例えばCリング10が黒色の場合、Cリング10とは異なる色彩、具体的には青色、赤色、黄色等の色彩に選択的に成形される。
【0036】
カバー20の内周面周方向には、Cリング10の外周縁部に斜面23を接触させて支持する複数の干渉爪22が所定の間隔をおいて配列形成され、各干渉爪22がカバー20の中心部方向に向かうにしたがい徐々に細くなる断面略多角形の先細りに形成されており、この干渉爪22がCリング10のがたつき等を防止するよう機能する。干渉爪22は、先細りの断面略三角形や断面略台形等に形成されて高い強度を有するが、Cリング10との接触を簡単、かつ容易にする観点から、弾性が必要に応じて付与される。
【0037】
カバー20の内周面周方向には、Cリング10の外周面に接触する複数の隙間区画突部24が所定の間隔をおいて配列形成され、各隙間区画突部24がカバー20の表裏方向に伸びる略円柱形に一体形成される。このような複数の隙間区画突部24は、Cリング10とカバー20との間に洗浄液の除去や緩衝作用に資する隙間Cを0.5mm程度確保するよう機能する。
【0038】
カバー20の内周面上部には、Cリング10の凹部11に嵌合して位置ずれを防止する位置決め凸部25が半径内方向に突出形成され、カバー20の内周面下部には、Cリング10の凸部12に嵌合して位置ずれを防止する位置決め凹部26が凹み形成されており、これら位置決め凸部25と位置決め凹部26とが180°の間隔をおいて対向する。
【0039】
カバー20の外周面27は、カバー20の表面方向から容器本体1の背面壁2に対向する裏面方向に向かうにしたがい徐々に広がるようテーパ形に傾斜形成される。このカバー20の外周面27の傾斜角度θは、外部から加わる衝撃を逸らす観点から、35°以上60°以下、好ましくは38°以上56°以下、より好ましくは38°以上40°以下、さらに好ましくは38°前後が良い(
図3参照)。
【0040】
カバー20の表裏面は、相互に異なる模様や形に形成され、表面の位置決め凸部25近傍と位置決め凹部26近傍両側のうち、少なくとも位置決め凸部25近傍には、カバー20の誤った嵌合を防止する略角錐台形の誤嵌合防止突部28が1.8mm程度突出形成されており、この誤嵌合防止突部28の外周面が傾斜してカバー20の外周面27と揃えて略面一に整合される。誤嵌合防止突部28の数は、
図4ないし
図7に示すように、1個、2個、3個等、必要に応じて増減される。
【0041】
さらに、カバー20の裏面には、複数の干渉爪22や位置決め凸部25と一体の複数の隙間区画片29が所定の間隔をおいて配列形成され、各隙間区画片29が平面視で台形等の多角形に形成される。このような複数の隙間区画片29は、容器本体1の背面壁上部外面に接触することにより、容器本体1の背面壁上部とカバー20の裏面との間に洗浄液除去用の隙間Cを0.5mm程度確保するよう機能する。
【0042】
上記構成において、基板収納容器の容器本体1を製造する場合には、先ず、容器本体1の一対の給気バルブに拡散ユニットの下部をそれぞれオフセットして接続し、各拡散ユニットの上端部にユニットクリップ3の屈曲部を装着して軸部5側を容器本体1の背面壁上部に挿通し、軸部5にカバー20を嵌通して位置決め凸部25を上方に位置させるとともに、誤嵌合防止突部28を反背面壁方向に視認可能に露出させ、軸部5の容器本体1外に露出した露出部分7に止め輪であるCリング10を外部横方向から嵌入する。この際、Cリング10の凹部11は、外部環境にカバー20が接触してCリング10やカバー20が変形したり、損傷するのを未然に防止する観点から、上方に位置することが好ましい。
【0043】
こうしてユニットクリップ3の露出部分7にCリング10を嵌入したら、Cリング10とカバー20とを圧入して嵌合し、Cリング10の凹部11にカバー20の位置決め凸部25を嵌入するとともに、Cリング10の凸部12にカバー20の位置決め凹部26を嵌入して位置合わせし、カバー20の複数の隙間区画片29を容器本体1の背面壁上部に接触させれば、拡散ユニット内蔵の容器本体1を製造することができる。
【0044】
この際、複数の干渉爪22のガイド機能を有する斜面23にCリング10の外周縁部が線接触して安定した姿勢に支持されるので、Cリング10のがたつきを有効に防止したり、外部からのCリング10に対する衝撃を緩和することができる。また、Cリング10の凹部11にカバー20の位置決め凸部25を嵌入し、Cリング10の凸部12にカバー20の位置決め凹部26を嵌入しなければ、Cリング10にカバー20を適切に圧入して嵌合することができないので、カバー20の嵌合作業の確実化が大いに期待できる。
【0045】
また、誤嵌合防止突部28が単一でカバー20の表面を容器本体1の背面壁上部に誤って向けた場合、容器本体1の背面壁上部に誤嵌合防止突部28が接触し、カバー20が傾斜して姿勢が悪化し、カバー20の複数の干渉爪22にCリング10を線接触させることができなくなり、Cリング10とカバー20の適正な嵌合が不可能になる(
図10参照)。したがって、誤嵌合防止突部28の位置や向きにより、カバー20の表裏面を間違えた誤嵌合を有効に防止することができ、組立作業の円滑化、迅速化、容易化等が大いに期待できる。
【0046】
製造された容器本体1は、棚板やパレット等に複数個が上向きに順次搭載され、蓋体と組み合わされて包装用の段ボール箱に収納され、出荷される。そして、半導体ウェーハを半導体製造の所定の工程のミニエンバイロメントから別の工程のミニエンバイロメントヘ搬送する場合、又は半導体製造装置に半導体ウェーハを出し入れする場合に使用され、定期的に洗浄液を貯えた洗浄槽で洗浄される。
【0047】
上記構成によれば、Cリング10に保護用のカバー20を嵌合してこれらを凹凸嵌合し、Cリング10の変形やカバー20の回転を防止するので、Cリング10やカバー20の脱落を防止し、ユニットクリップ3等の損傷を防いで機能の拡大や品質のさらなる向上を図ることができる。具体的には、カバー20がCリング10を変形不能に包囲して保護するので、例えCリング10が外れる方向(上方向)から下方向に衝撃が加わっても、カバー20が変形して衝撃を緩和し、ユニットクリップ3の露出部分7からCリング10が拡開して外れることがない。Cリング10が外れるのを防止することができるので、容器本体1の洗浄時に容器本体1の内部から拡散ユニットが外れて脱落することもない。
【0048】
また、Cリング10の凹部11にカバー20の位置決め凸部25が嵌入して位置ずれを規制するので、Cリング10からのカバー20の脱落を確実に防止することができる。また、カバー20の複数の干渉爪22にCリング10の外周縁部が面接触するのではなく、線接触して支持されるので、例え半導体工場の製造設備等にカバー20が接触して外部から衝撃が加わっても、ユニットクリップ3やCリング10に加わる衝撃を緩和することができ、これらユニットクリップ3やCリング10の損傷を有効に防止して高品質を維持することができる。また、干渉爪22が断面略多角形なので、干渉爪22の強度増大が期待できる。
【0049】
また、カバー20の全内周面にCリング10の全外周面が接触するのではなく、複数の隙間区画突部24にCリング10の外周面が部分的に接触するので、Cリング10とカバー20の間に液体流通用や緩衝用の隙間Cを区画することが可能となる。したがって、容器本体1の洗浄後にCリング10とカバー20の間に洗浄液の水滴が残存することがない。また、複数の隙間区画突部24とCリング10の部分的な接触により、接触面積が縮小するので、例え外部から衝撃が加わっても、ユニットクリップ3やCリング10に大きな衝撃がそのまま作用するのを抑制することが可能となる。したがって、ユニットクリップ3やCリング10の破損を有効に防止することが可能となる。
【0050】
また、カバー20の外周面27や誤嵌合防止突部28の外周面が傾斜しているので、例え半導体工場の製造設備等にカバー20が直接接触して外部から衝撃が垂直に加わっても、傾斜面により衝撃エネルギーを分散させて逸らすことができ、Cリング10に加わる衝撃の低減が大いに期待できる(
図8の矢印参照)。さらに、容器本体1の背面壁上部にカバー20の全裏面が面接触するのではなく、容器本体1の背面壁上部にカバー20の隙間区画片29が部分的に接触するので、容器本体1の背面壁2とカバー20の間に液体流通用の隙間Cを区画することができる。したがって、容器本体1の背面壁2とカバー20の間から洗浄液を流出させて水滴等が残存するのを防ぐことができる。
【0051】
なお、上記実施形態の容器本体1の背面壁2の中央部には、必要に応じ、不透明の観察窓を選択的にインサート成形しても良い。また、上記実施形態では容器本体1内の後方両側に、チャンバー方式の一対の拡散ユニットをそれぞれ内蔵したが、何らこれに限定されるものではなく、容器本体1の内部後方に、単一の拡散ユニットを内蔵しても良い。また、ユニットクリップ3、Cリング10、及びカバー20は、組立不良を防止する観点から、相互に異なる色彩に形成しても良い。また、拡散ユニットの上端部に、容器本体1の天井又は側壁上部を貫通するユニットクリップ3を装着しても良い。
【0052】
また、Cリング10の凸部12と凹部11を30°、45°、60°、90°離して位置させても良い。この場合、カバー20の位置決め凸部25と位置決め凹部26を30°、45°、60°、90°離して位置させることが好ましい。また、上記実施形態におけるカバー20の隙間区画片29を省略し、Cリング10の裏面周方向に、容器本体1の背面壁上部外面に接触する複数の隙間区画片を間隔をおいて形成し、この複数の隙間区画片により、容器本体1の背面壁上部とCリング10の裏面との間に洗浄液除去用の隙間を確保することができる。また、カバー20は、射出成形法等の各種成形法や切削法等により形成することができる。カバー20は、中空の平面略トラック形や多角形等に形成することができる。
【0053】
また、カバー20にCリング10とは異なる青色、赤色、黄色等の色彩を塗装することが可能である。カバー20の表裏面に、それぞれ異なる色彩を塗布することも可能である。また、カバー20の干渉爪22や隙間区画突部24の数、位置は、必要に応じ、増減変更することが可能である。また、誤嵌合防止突部28は、カバー20表面の位置決め凸部25付近、位置決め凹部26付近、又は位置決め凸部25及び位置決め凹部26の付近に選択的に必要数突出形成することが可能である。さらに、カバー20の裏面には、カバー20の表裏面の識別等に資する複数の溝を並べて切り欠いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る基板収納容器は、半導体製造装置等の分野で使用される。
【符号の説明】
【0055】
1 容器本体
2 背面壁(周壁)
3 ユニットクリップ(取付固定部材)
5 軸部
7 露出部分
10 Cリング(係止部材)
11 凹部
12 凸部
20 カバー(カバー部材)
22 干渉爪
23 斜面
24 隙間区画突部
25 位置決め凸部
26 位置決め凹部
27 外周面
28 誤嵌合防止突部
29 隙間区画片
C 隙間