(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】流体循環式加熱システム
(51)【国際特許分類】
F24D 3/00 20220101AFI20240614BHJP
F24D 3/18 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
F24D3/00 M
F24D3/18
(21)【出願番号】P 2021024505
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】弓削 力也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智久
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-207914(JP,A)
【文献】特開平02-068449(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00916901(EP,A1)
【文献】特開2006-003078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 1/00-19/10
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体を循環させる第1循環回路と、
該第1循環回路で循環する第1流体を加熱する加熱装置と、
該第1循環回路で循環する第1流体からの放熱を行い得るように該第1循環回路に接続された第1放熱装置と、
第2流体を循環させる第2循環回路と、
該第2循環回路で循環する第2流体からの放熱を行い得るように該第2循環回路に接続されており、前記第1放熱装置よりも要求熱量が低い第2放熱装置と、
前記第1循環回路で循環する第1流体から前記第2循環回路で循環する第2流体への熱交換を行い得るように該第1循環回路及び該第2循環回路に接続された熱交換器と、
前記第1循環回路で循環する第1流体と前記第2循環回路で循環する第2流体とのうちの少なくとも一方の流体を前記熱交換器をバイパスさせて流し得るように該第1循環回路及び該第2循環回路の少なくとも一方に備えられたバイパス路と、
該バイパス路が備えられた前記第1循環回路及び前記第2循環回路の少なくとも一方の循環回路において、該バイパス路を通る第1流体又は第2流体の流量であるバイパス側流量と該バイパス路と並列に前記熱交換器を通る第1流体又は第2流体の流量である熱交換器側流量との比率を変化させ得るように備えられたバイパス比調整弁と、
前記第1循環回路で循環する第1流体を前記加熱装置により加熱しながら、前記第1放熱装置及び前記第2放熱装置のそれぞれの放熱運転を並行して実行するとき、前記第1循環回路及び前記第2循環回路の少なくとも一方の循環回路において、前記第2放熱装置のみの放熱運転の実行時よりも前記熱交換器側流量を減少させるように前記バイパス比調整弁を作動させる制御装置とを備えることを特徴とする流体循環式加熱システム。
【請求項2】
請求項1記載の流体循環式加熱システムにおいて、
前記第2循環回路で循環する第2流体の温度を検出する温度センサを備えており、前記制御装置は、前記温度センサにより検出される第2流体の温度が前記第2放熱装置の放熱運転用の所定の目標温度になるように前記比率を制御するように前記バイパス比調整弁を作動させることを特徴とする流体循環式加熱システム。
【請求項3】
請求項2記載の流体循環式加熱システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1循環回路で循環する第1流体を前記加熱装置により加熱しながら、前記第1放熱装置及び前記第2放熱装置のそれぞれの放熱運転を並行して実行するとき、前記制御装置は、前記第2放熱装置の放熱運転の開始時の前記比率を、前記第2放熱装置の放熱運転用の目標温度に応じて決定した初期値にするように前記バイパス比調整弁を作動させ、その後、前記温度センサにより検出される第2流体の温度が前記第2放熱装置の放熱運転用の所定の目標温度になるように前記比率を制御するように前記バイパス比調整弁を作動させるように構成されていることを特徴とする流体循環式加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水暖房システム等の流体循環式加熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体循環式加熱システムとしては、例えば、ヒートポンプ等の加熱装置により熱交換器を介して加熱した温水等の流体(熱媒体)を複数の循環回路で循環させながら、各循環回路に接続された暖房装置等の放熱装置で放熱する暖房システムが従来より知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
そして、上記特許文献1には、要求熱量(放熱運転で要求される流体温度)が異なる複数の放熱装置を作動させる場合に、該複数の放熱装置が各々接続された循環回路の流体を最も要求熱量が高い放熱装置に適合させた熱量で加熱し、要求熱量が低い放熱装置が接続された循環回路での流体の流量を低下させることで、該放熱装置での放熱量を減少させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に見られる技術では、要求熱量が低い放熱装置には、必要以上に高温の流体が供給されることになるため、該放熱装置の構成要素が、高温の流体による過加熱によって損傷を受ける虞がある。また、要求熱量が低い放熱装置が接続された循環回路の流量を低下させるように該循環回路のポンプを作動させるため、該循環回路が比較的圧損の大きい流路である場合には、該循環回路での流体の循環が実質的に停止してしまう虞がある。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、要求熱量が高い第1放熱装置が接続された第1循環回路で循環する第1流体を加熱しながら第1放熱装置の放熱運転を行うことと、要求熱量が低い第2放熱装置が接続された第2循環回路で循環する第2流体を第1流体からの伝熱によって加熱しながら第2放熱装置の放熱運転を行うこととを並行して行う場合に、第2放熱装置に供給される第2流体が必要以上に高温に加熱されるのを適切に防止することができる流体循環式加熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流体循環式加熱システムは、上記の目的を達成するために、
第1流体を循環させる第1循環回路と、
該第1循環回路で循環する第1流体を加熱する加熱装置と、
該第1循環回路で循環する第1流体からの放熱を行い得るように該第1循環回路に接続された第1放熱装置と、
第2流体を循環させる第2循環回路と、
該第2循環回路で循環する第2流体からの放熱を行い得るように該第2循環回路に接続されており、前記第1放熱装置よりも要求熱量が低い第2放熱装置と、
前記第1循環回路で循環する第1流体から前記第2循環回路で循環する第2流体への熱交換を行い得るように該第1循環回路及び該第2循環回路に接続された熱交換器と、
前記第1循環回路で循環する第1流体と前記第2循環回路で循環する第2流体とのうちの少なくとも一方の流体を前記熱交換器をバイパスさせて流し得るように該第1循環回路及び該第2循環回路の少なくとも一方に備えられたバイパス路と、
該バイパス路が備えられた前記第1循環回路及び前記第2循環回路の少なくとも一方の循環回路において、該バイパス路を通る第1流体又は第2流体の流量であるバイパス側流量と該バイパス路と並列に前記熱交換器を通る第1流体又は第2流体の流量である熱交換器側流量との比率を変化させ得るように備えられたバイパス比調整弁と、
前記第1循環回路で循環する第1流体を前記加熱装置により加熱しながら、前記第1放熱装置及び前記第2放熱装置のそれぞれの放熱運転を並行して実行するとき、前記第1循環回路及び前記第2循環回路の少なくとも一方の循環回路において、前記第2放熱装置のみの放熱運転の実行時よりも前記熱交換器側流量を減少させるように前記バイパス比調整弁を作動させる制御装置とを備えることを特徴とする(第1発明)。
【0008】
かかる第1発明によれば、第1循環回路で循環する第1流体を前記加熱装置により加熱しながら、第1放熱装置及び第2放熱装置のそれぞれの放熱運転を並行して実行するとき、上記の如くバイパス比調整弁を作動させるので、第1放熱装置及び第2放熱装置のそれぞれの放熱運転を並行して実行するときには、第1循環回路で循環する第1流体から第2循環回路で循環する第2流体への伝熱量(熱交換器での伝熱量)を、第2放熱装置のみの放熱運転時よりも小さくすることができる。
【0009】
この結果、第1放熱装置に供給する第1流体を、第1放熱装置の要求熱量に対応する比較的高温の温度に加熱装置により加熱した状態であっても、第2循環回路で循環しながら第2放熱装置に供給される第2流体が、第1流体からの伝熱によって、過剰に高温の温度に加熱されてしまうのが防止される。
【0010】
従って、第1発明によれば、要求熱量が高い第1放熱装置が接続された第1循環回路で第1流体を循環させながら、該第1流体を加熱することと、要求熱量が低い第2放熱装置が接続された第2循環回路で第2流体を循環させながら第1流体から第2流体への伝熱を行うこととを並行して行う場合に、第2放熱装置に供給される第2流体が必要以上に高温に加熱されるのを適切に防止することができる。
【0011】
上記第1発明では、前記第2循環回路で循環する第2流体の温度を検出する温度センサを備えており、前記制御装置は、前記温度センサにより検出される第2流体の温度が前記第2放熱装置の放熱運転用の所定の目標温度になるように前記比率を制御するように前記バイパス比調整弁を作動させることが好ましい(第2発明)。
【0012】
これによれば、第2放熱装置の放熱運転に適した温度に加熱した第2流体を第2放熱装置に供給することができ、該第2放熱装置の放熱運転を適切に行うことができる。
【0013】
上記第2発明では、前記制御装置は、前記第1循環回路で循環する第1流体を前記加熱装置により加熱しながら、前記第1放熱装置及び前記第2放熱装置のそれぞれの放熱運転を並行して実行するとき、前記制御装置は、前記第2放熱装置の放熱運転の開始時の前記比率を、前記第2放熱装置の放熱運転用の目標温度に応じて決定した初期値にするように前記バイパス比調整弁を作動させ、その後、前記温度センサにより検出される第2流体の温度が前記第2放熱装置の放熱運転用の所定の目標温度になるように前記比率を制御するように前記バイパス比調整弁を作動させるように構成されていることが好ましい(第3発明)。
【0014】
これによれば、第2放熱装置の放熱運転の開始時の前記比率を、前記第2放熱装置の放熱運転用の目標温度に応じて決定した初期値にするように前記バイパス比調整弁を作動させるので、第2流体の温度を、第2放熱装置の放熱運転用の所定の目標温度に素早く近づけるようにバイパス比調整弁を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の流体循環式加熱システムとしての暖房システムの全体構成を示す図。
【
図2】実施形態の暖房システムの制御に関する構成を示すブロック図。
【
図3】
図2に示す制御装置が実行する処理を示すフローチャート。
【
図4】
図3のSTEP7で用いるバイパス比の第1の決定処理を示すフローチャート。
【
図5】
図3のSTEP7で用いるバイパス比の第2の決定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を
図1~
図5を参照して以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態の流体循環式加熱システム1は、高温暖房装置2及び低温暖房装置3と、浴槽BT内の湯水(以降、浴槽水という)の追い焚き用加熱装置4とを放熱装置として備える暖房システムである。この場合、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4は、本発明における第1放熱装置に相当し、低温暖房装置3は、本発明における第2放熱装置に相当する。以降、流体循環式加熱システム1を暖房システム1という。
【0017】
暖房システム1は、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4のそれぞれで放熱させ得る第1流体を循環させる第1循環回路5と、低温暖房装置3で放熱させ得る第2流体を循環させる第2循環回路6と、第1循環回路5で循環する第1流体を加熱する加熱運転を行い得る加熱装置(熱源)としての燃焼式加熱装置70が搭載された熱源ユニット7と、第2循環回路6で循環する第2流体を加熱する加熱運転を行い得る加熱装置(熱源)としてのヒートポンプ80が搭載されたヒートポンプユニット8と、第1流体と第2流体との間の熱交換(伝熱)を行う熱交換器90が搭載された熱交換器ユニット9とを備える。
【0018】
この場合、第1循環回路5及び第2循環回路6は、互いに独立した循環回路である。また、第1流体及び第2流体としては、例えば水(暖房用水)、不凍液等の流体(熱媒体)が使用される。なお、燃焼式加熱装置70は、本発明における加熱装置に相当する。
【0019】
高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4は、それぞれの放熱運転時の要求熱量(詳しくは、第1流体を熱媒体として高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4のそれぞれに供給される熱量の要求値)が比較的高い放熱装置である。具体的には、高温暖房装置2としては、例えば、第1流体から浴室内の空気又は浴室に導入される外気への放熱によって浴室の暖房又は乾燥を行う浴室暖房装置等を例示し得る。
【0020】
また、追い焚き用加熱装置4としては、例えば、浴槽BTに接続された後述の追い焚き用回路41で循環する浴槽水に第1流体から伝熱する(第1流体から浴槽水への熱交換を行う)ことで該浴槽水を加熱する熱交換器(液液式の熱交換器)を例示し得る。これらの高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4の放熱運転時の要求熱量に相当する第1流体の要求温度(高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4のそれぞれに供給する第1流体の要求温度)は、比較的高温の温度(例えば80℃)である。
【0021】
低温暖房装置3は、その放熱運転時の要求熱量(詳しくは、第2流体を熱媒体として低温暖房装置3に供給される熱量の要求値)が、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4よりも低い放熱装置である。具体的には、低温暖房装置3としては、例えば、第2流体から屋内空間への放熱よって該屋内空間の暖房を行うファンコンベクター、パネルヒータ、床暖房装置等を例示し得る。該低温暖房装置3の放熱運転時の要求熱量に相当する第2流体の要求温度(低温暖房装置3に供給する第2流体の要求温度)は、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4に対する第1流体の要求温度よりも低い温度(例えば40℃~70℃)である。
【0022】
熱源ユニット7に搭載された燃焼式加熱装置70は、公知の構成のものであり、図示を省略する燃料供給装置から供給される燃料ガス(又は灯油等の液体燃料)を燃焼させるバーナ71と、該バーナ71が収容された燃焼室を形成する燃焼筐72と、バーナ71に燃焼用空気を供給し得るように燃焼筐72に取付けられた電動式の燃焼ファン73(送風機)と、バーナ71の燃焼熱により加熱されるように燃焼筐72に搭載された熱交換器74とを備える。燃焼筐72には、その内部で生成される燃焼排ガスを熱源ユニット7の外部に排出するために排気路72aが接続されている。
【0023】
熱交換器74は、第1流体を流す流路74aを有しており、バーナ71の燃焼運転により与えられる燃焼熱を流路74aを流れる第1流体に伝熱することにより該第1流体を加熱するように構成されている。この場合、バーナ71の燃焼運転の制御(点火、消火、燃焼量の調整)は、図示しない点火装置及び燃料供給装置の作動制御と燃焼ファン73の作動制御とを通じて行われる。
【0024】
第1循環回路5は、第1流体を流動させる動力源である電動式の第1ポンプ50を有する。そして、第1循環回路5は、本実施形態では、第1ポンプ50から吐出される第1流体を、燃焼式加熱装置70の熱交換器74と高温暖房装置2とを順に経由させた後、該高温暖房装置2から第1ポンプ50に還流させる流路と、燃焼式加熱装置70の熱交換器74と追い焚き用加熱装置4とを順に経由させた後、該追い焚き用加熱装置4から第1ポンプ50に還流させる流路と、燃焼式加熱装置70の熱交換器74を経由させた後、該熱交換器74から高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4を経由させることなく(高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4をバイパスさせて)、第1ポンプ50に還流させる流路と、燃焼式加熱装置70の熱交換器74を経由させることなく、熱交換器ユニット9の熱交換器90を経由させた後、該熱交換器90から第1ポンプ50に還流させる流路とを備えるように構成されている。
【0025】
具体的には、第1循環回路5は、第1ポンプ50の吐出ポートから燃焼式加熱装置70の熱交換器74の流路74aの流入口に至るように配設された第1流路51と、該熱交換器74の流路74aの流出口から高温暖房装置2に備えられた第1流体用の流路(図示省略)の流入口に至るように配設された第2流路52と、高温暖房装置2の第1流体用の流路の流出口から第1ポンプ50の吸入ポートに至るように配設された第3流路53と、第2流路52の途中部から分岐され、その分岐箇所から追い焚き用加熱装置4に備えられた第1流体用の流路4aの流入口に至るように配設された第4流路54と、追い焚き用加熱装置4の流路4aの流出口から第3流路53の途中部に合流するように配設された第5流路55と、第2流路52の途中部から分岐され、その分岐箇所から第3流路53の途中部に合流するように配設された第6流路56と、第1流路51の途中部から分岐され、その分岐箇所から熱交換器ユニット9の熱交換器90に備えられた第1流体用の流路90aの流入口に至るように接続された第7流路57と、該熱交換器90の流路90aの流出口から第3流路53の途中部に合流するように配設された第8流路58とを備える。
【0026】
そして、第1循環回路5のいずれかの流路、例えば第8流路58には、第1循環回路5で加熱により膨張する第1流体の一部を収容可能な膨張タンク59が接続されている。なお、本実施形態では、第1ポンプ50及び追い焚き用加熱装置4は、燃焼式加熱装置70と共に、熱源ユニット7に搭載されている。
【0027】
第1循環回路5は、上記の如く第1ポンプ50と第1~第8流路51~58とを備えている。従って、第1流体を、第1ポンプ50から燃焼式加熱装置70の熱交換器74と高温暖房装置2とを順に経由させた後に第1ポンプ50に還流させる流路は、第1流路51と、熱交換器74の流路74aと、第2流路52と、高温暖房装置2の流路(図示省略)と、第3流路53とを備える流路として構成されている。
【0028】
ここで、高温暖房装置2は、その流路を開閉可能な熱動弁、電磁弁等の開閉弁(図示省略)を備えている。従って、高温暖房装置2を経由する流路は、該開閉弁を開弁制御した状態で開通する流路である。なお、
図1では、1つの高温暖房装置2だけを図示しているが、複数の高温暖房装置が、第2流路52と第3流路53との間に並列に接続されていてもよい。
【0029】
また、第1流体を、第1ポンプ50から燃焼式加熱装置70の熱交換器74と追い焚き用加熱装置4とを順に経由させた後に第1ポンプ50に還流させる流路は、第1流路51と、熱交換器74の流路74aと、第2流路52のうち、第4流路54の分岐箇所よりも上流側の流路と、第4流路54と、追い焚き用加熱装置4の第1流体用の流路4aと、第5流路55と、第3流路53のうち、第5流路55の合流箇所よりも下流側の流路とを備える流路として構成されている。
【0030】
ここで、追い焚き用加熱装置4の第1流体用の流路4aの上流側の第4流路54と下流側の第5流路55とのうちの一方の流路、例えば、第4流路54には、それを開閉可能な熱動弁、電磁弁等の開閉弁40が介装されている。従って、追い焚き用加熱装置4を経由する流路は、該開閉弁40を開弁制御した状態で開通する流路である。
【0031】
また、第1流体を、第1ポンプ50から燃焼式加熱装置70の熱交換器74を経由させた後、該熱交換器74から高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4を経由させずに第1ポンプ50に還流させる流路は、第1流路51と、熱交換器74の流路74aと、第2流路52のうち、第6流路56の分岐箇所よりも上流側の流路と、第6流路56と、第3流路53のうち、第6流路56の合流箇所よりも下流側の流路とを備える流路として構成されている。なお、例えば、第6流路56には、これを流れる第1流体の流量を制御可能な流量制御弁が備えられていてもよい。
【0032】
また、第1流体を、第1ポンプ50から燃焼式加熱装置70の熱交換器74を経由させずに、熱交換器ユニット9の熱交換器90を経由させた後、該熱交換器90から第1ポンプ50に還流させる流路は、第1流路51のうち、第7流路57の分岐箇所よりも上流側の流路と、第7流路57と、熱交換器90の第1流体用の流路90aと、第8流路58と、第3流路53のうち、第8流路58の合流箇所よりも下流側の流路とを備える流路として構成されている。
【0033】
ここで、熱交換器ユニット9には、熱交換器90の第1流体用の流路90aの上流側の第7流路57と、下流側の第8流路58とのうちの一方の流路、例えば、第8流路58を開閉可能な熱動弁、電磁弁等の開閉弁91が搭載されている。従って、熱交換器ユニット9の熱交換器90の第1流体用の流路90aを経由する流路は、該開閉弁91を開弁制御した状態で開通する流路である。
【0034】
液液式の熱交換器として構成された前記追い焚き用加熱装置4は、第1流体用の流路4aと共に、浴槽水用の流路4bを備えており、流路4aを流れる第1流体から流路4bを流れる浴槽水への伝熱を行い得るように構成されている。そして、追い焚き用加熱装置4の浴槽水用の流路4bは、追い焚き用回路41の流路を介して浴槽BTに接続されている。
【0035】
該追い焚き用回路41は、追い焚き用加熱装置4と浴槽BTとの間で浴槽水を循環させるために、追い焚き用加熱装置4の浴槽水用の流路4bの流入口及び流出口のそれぞれを浴槽BTの側壁部に備えられた接続部Baに各々接続する流路42,43と、浴槽水を流動させる動力源として流路42,43の一方、例えば流路42に介装された電動式のポンプ44(以降、浴槽用ポンプ44という)とを備えている。
【0036】
この場合、流路42,43のそれぞれは、接続部Baを介して浴槽BT内に開通している。従って、浴槽用ポンプ44を作動させることで、浴槽水が、浴槽BTと追い焚き用加熱装置4の流路4bとの間で流路42,43を通って循環するようになっている。このとき、追い焚き用加熱装置4の第1流体用の流路4aに加熱された第1流体を流すことで、追い焚き用加熱装置4において、流路4aを流れる第1流体から流路4bを流れる浴槽水への伝熱が行われ、ひいては、該浴槽水が加熱される。
【0037】
なお、追い焚き用回路41の流路42,43のいずれかの流路、例えば、浴槽用ポンプ44の上流側の流路42には、浴槽BTへの湯はり又は足し湯用の給湯用水が図示しない給湯装置から供給される流路45が接続されている。
【0038】
また、第1循環回路5には、第1流体の温度を検出するための温度センサ101,102が組付けられている。温度センサ101は、燃焼式加熱装置70の熱交換器74で加熱された第1流体の温度(熱交換器74から出湯する第1流体の温度)を検出するためのセンサであり、第2流路52に組付けられている。
【0039】
また、温度センサ102は、第1ポンプ50から熱交換器ユニット9の熱交換器90に供給される第1流体の温度を検出するためのセンサであり、第1流路51に組付けられている。なお、
図1では、温度センサ102は、第1流路51のうち、第7流路57の分岐箇所よりも下流側の流路に組付けられているが、該分岐箇所よりも上流側の第1流路51、あるいは、第7流路57に組付けられていてもよい。
【0040】
補足すると、本実施形態では、燃焼式加熱装置70は、バーナ71の燃焼運転時に、第1流体を顕熱により熱交換器74を介して加熱するように構成されている。ただし、該第1流体を顕熱だけでなく、さらに潜熱により加熱し得るように構成されていてもよい。例えば、第3流路53の途中で、第1ポンプ50に還流する第1流体を、バーナ71の燃焼運転時に得られる潜熱により加熱するように燃焼式加熱装置70を構成してもよい。
【0041】
ヒートポンプユニット8は、公知の構成のヒートポンプ80を備えている。該ヒートポンプ80は、凝縮器81と、図示しない圧縮機、蒸発器、及び膨張機構を含む冷媒回路82とを備えており、屋外の外気から冷媒に吸収した熱を凝縮器81で放熱し得るように構成されている。この場合、凝縮器81は、冷媒回路82から流入する冷媒を流す流路(図示省略)に加えて、第2流体を流す流路(図示省略)を備えており、それぞれの流路を流れる冷媒と第2流体との熱交換(冷媒から第2流体への伝熱)を行うことで、該第2流体を加熱することができるように構成されている。
【0042】
第2循環回路6は、第2流体を流動させる動力源としての電動式の第2ポンプ60を有すると共に、ヒートポンプ80の凝縮器81から流出する第2流体を、熱交換器ユニット9の熱交換器90と低温暖房装置3とを順に経由させた後に凝縮器81に還流させる流路と、ヒートポンプ80の凝縮器81から流出する第2流体を、熱交換器ユニット9の熱交換器90を経由させることなく(熱交換器90をバイパスさせて)、低温暖房装置3を経由させた後に凝縮器81に還流させる流路とを備えるように構成されている。
【0043】
具体的には、第2循環回路6は、ヒートポンプ80の凝縮器81の第2流体用の流路(図示省略)の流出口から、熱交換器ユニット9の熱交換器90の第2流体用の流路90bの流入口に至るように配設された第11流路61と、熱交換器90の第2流体用の流路90bの流出口から、低温暖房装置3に備えられた第2流体用の流路(図示省略)の流入口に至るように配設された第12流路62と、低温暖房装置3の第2流体用の流路の流出口から、ヒートポンプ80の凝縮器81の第2流体用の流路の流入口に至るように配設された第13流路63と、第11流路61の途中部から分岐され、熱交換器90を経由せずに(熱交換器90をバイパスして)、第12流路62の途中部に合流するように配設されたバイパス路64と、熱交換器90の流路90bを通る第2流体の流量とバイパス路64を通る第2流体の流量との比率を調整するためのバイパス比調整弁65とを備える。
【0044】
そして、第11~第13流路61~63のいずれかの流路、例えば、第11流路61とバイパス路64との接続部よりも上流側の第11流路61に第2ポンプ60が介装されている。また、第2循環回路6のいずれかの流路、例えば第13流路63には、第2循環回路6で加熱により膨張する第2流体の一部を収容可能な膨張タンク66が接続されている。なお、本実施形態では、第2ポンプ60は、ヒートポンプユニット8に搭載され、バイパス比調整弁65は、熱交換器ユニット9に搭載されている。
【0045】
上記バイパス比調整弁65は、本実施形態では、第11流路61とバイパス路64との接続部に介装された分配弁であり、第11流路61の上流側から流入する第2流体を熱交換器90とバイパス路64とに分配可能であると共に、その分配割合(熱交換器90に分配する第2流体の流量と、バイパス路64に分配する第2流体の流量との比率)を可変的に調整することが可能である。かかるバイパス比調整弁65(分配弁)は、例えば、電動式の三方弁等により構成される。
【0046】
第2循環回路6は、上記の如く第2ポンプ60、第11~第13流路61~63、バイパス路64及びバイパス比調整弁65を備えている。従って、第2流体を、ヒートポンプ80の凝縮器81から、熱交換器ユニット9の熱交換器90と、低温暖房装置3とを順に経由させた後に凝縮器81に還流させる流路は、第11流路61と、熱交換器90の流路90bと、第12流路62と、低温暖房装置3の流路(図示省略)と、第13流路63とを備える流路として構成されている。
【0047】
また、第2流体を、ヒートポンプ80の凝縮器81から、熱交換器ユニット9の熱交換器90をバイパスさせて、低温暖房装置3を経由させた後に凝縮器81に還流させる流路は、バイパス比調整弁65よりも上流側の第11流路61と、バイパス路64と、第12流路62のうち、バイパス路64との接続部よりも下流側の流路と、低温暖房装置3の流路(図示省略)と、第13流路63とを備える流路として構成されている。
【0048】
そして、熱交換器90の流路90bを通る第2流体の流量と、バイパス路64を通る第2流体の流量との比率は、バイパス比調整弁65の作動制御を通じて可変的に調整可能である。
【0049】
なお、低温暖房装置3は、その流路(第2流体用の流路)を開閉可能な図示しない熱動弁、電磁弁等の開閉弁(図示省略)を備えている。従って、低温暖房装置3を経由する流路は、該開閉弁を開弁制御した状態で開通する流路である。また、
図1では、1つの低温暖房装置3だけを図示しているが、複数の低温暖房装置が、第12流路62と第13流路63との間に並列に接続されていてもよい。
【0050】
また、第2循環回路6には、第2流体の温度を検出するための温度センサ103,104が組付けられている。温度センサ103は、ヒートポンプ80の凝縮器81で加熱された第2流体の温度を検出するためのセンサであり、例えば第11流路61に組付けられている。また、温度センサ104は、低温暖房装置3に供給される第2流体の温度を検出するためのセンサであり、第12流路62とバイパス路64との接続箇所よりも下流側で第12流路62に組付けられている。
【0051】
補足すると、上記第2循環回路6では、熱交換器90の流路90bを経由する第2流体の流量と、バイパス路64を経由する第2流体の流量との比率を可変的に調整するためのバイパス比調整弁65として分配弁を備えたが、当該比率を調整するためのバイパス比調整弁は分配弁に限られない。
【0052】
例えば、バイパス路64を第11流路61に直接的に連通させると共に、第12流路62とバイパス路64との接続部に、バイパス路64と上流側の第12流路62とから流入する第2流体を混合させて下流側の第12流路62に流出可能であり、且つ、その混合割合を調整可能な混合弁をバイパス比調整弁として介装し、該混合弁の作動制御を通じて、上記比率を可変的に調整し得るようにしてもよい。
【0053】
あるいは、バイパス路64を第11流路61に直接的に連通させると共に、第11流路61のうち、バイパス路64との接続部よりも下流側の流路(又は第12流路62のうち、バイパス路64との接続部よりも上流側の流路)と、バイパス路64との両方又は一方の流路に流量制御弁を介装し、該流量制御弁の作動制御を通じて、上記比率を可変的に調整し得るようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態の暖房システム1では、熱源ユニット7、ヒートポンプユニット8及び熱交換器ユニット9をそれぞれ各別のユニットとして備えたが、これらの2つ以上を単一のユニットとして構成してもよい。例えば熱交換器ユニット9は、熱源ユニット7又はヒートポンプユニット8に組み込まれていてもよい。また、例えば熱源ユニット7は、給湯装置、あるいは、浴槽BTに対する湯はり装置としての機能を含むように構成されていてもよい。
【0055】
次に、
図2を参照して、暖房システム1は、さらに、該暖房システム1の運転制御を行う制御装置110と、暖房システム1の運転操作をユーザが行うためのリモコン120とを備えている。該制御装置110は、例えば、図示しないマイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路、通信回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。
【0056】
例えば、制御装置110は、高温暖房装置2、低温暖房装置3、熱源ユニット7、ヒートポンプユニット8、及び熱交換器ユニット9に各々搭載され、且つ相互に通信を行いつつ協働して暖房システム1の運転制御を実行可能な複数の電子回路ユニットの集合体として構成され得る。この場合、いずれかの電子回路ユニットが暖房システム1の全体の作動を統括する上位の制御装置、他の電子回路ユニットが、高温暖房装置2、低温暖房装置3、熱源ユニット7、ヒートポンプユニット8、及び熱交換器ユニット9のそれぞれの局所的な作動制御を行う制御装置として機能するように電子回路ユニットの集合体が構成されていてもよい。
【0057】
上記制御装置110には、暖房システム1に備えられた前記温度センサ101~104等の複数のセンサのそれぞれのセンシング信号(検出信号)が入力される。また、制御装置110は、リモコン120と有線又は無線による通信を行うことが可能である。その通信により、制御装置110は、高温暖房装置2及び低温暖房装置3の運転、並びに、浴槽水の追い焚き等に関する指令情報をリモコン120から受信したり、該リモコン120に様々な報知情報を送信して出力させることが可能である。なお、暖房システム1は、1つのリモコン120に限らず、複数のリモコンを備えていてもよい。
【0058】
そして、制御装置110は、実装されたハードウェア構成とプログラム(ソフトウェア構成)とにより実現される機能によって、高温暖房装置2、低温暖房装置3、熱源ユニット7、ヒートポンプユニット8及び熱交換器ユニット9のそれぞれの制御対象要素の作動制御を行う。この場合、高温暖房装置2の制御対象要素には、該高温暖房装置2の流路(第1流体を流す流路)を開閉する図示しない開閉弁が含まれる。また、低温暖房装置3の制御対象要素には、該低温暖房装置3の流路(第2流体を流す流路)を開閉する図示しない開閉弁が含まれる。
【0059】
また、熱源ユニット7の制御対象要素には、バーナ71、第1ポンプ50、開閉弁40、及び浴槽用ポンプ44が含まれる。また、ヒートポンプユニット8の制御対象要素には、第2ポンプ60、及び冷媒回路82の圧縮機(図示省略)が含まれる。また、熱交換器ユニット9の制御対象要素には、開閉弁91及びバイパス比調整弁65が含まれる。
【0060】
次に、本実施形態の暖房システム1の作動に関して説明する。まず、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4のそれぞれが放熱運転を行うときの作動を説明する。高温暖房装置2の放熱運転時(暖房運転時又は乾燥運転時)には、制御装置110は、高温暖房装置2の流路を開閉する開閉弁(図示省略)を開弁制御した状態で、第1ポンプ50を作動させると共に、燃焼式加熱装置70のバーナ71の燃焼運転を行わせる。
【0061】
これにより、第1流体が燃焼式加熱装置70の熱交換器74及び高温暖房装置2を経由するように循環しつつ、熱交換器74で加熱される。そして、熱交換器74で加熱された第1流体が高温暖房装置2に供給されて放熱することで、該高温暖房装置2が設置された空間の暖房(又は乾燥)が行われる。
【0062】
この場合、制御装置110は、温度センサ101により検出される第1流体の温度(燃焼式加熱装置70の熱交換器74から流出する第1流体の温度)が高温暖房装置2用の所定の目標温度(例えば80℃)に一致もしくはほぼ一致する温度に保たれるようにバーナ71の燃焼運転時の燃焼量を制御する。
【0063】
また、本実施形態では、制御装置110は、バーナ71の燃焼運転を連続的に行わせるモード(以降、連続燃焼モードという)と、バーナ71の燃焼運転を間欠的に行わせるモード(バーナ71の燃焼運転と該燃焼運転の停止とを交互に繰り返すモード。以降、間欠燃焼モードという)とのいずれかのモード(形態)でバーナ71の運転制御を実行する。
【0064】
例えば、高温暖房装置2の負荷(高温暖房装置2での第1流体の放熱量)が比較的大きいと推定される状況(例えば熱交換器74から流出する第1流体の温度と、熱交換器74に流入する第1流体の温度との温度差の絶対値が所定の閾値よりも大きくなる状況等)では、制御装置110は、連続燃焼モードでバーナ71の運転制御を行う。また、高温暖房装置2の負荷が比較的小さいと推定される状況(例えば熱交換器74から流出する第1流体の温度と、熱交換器74に流入する第1流体の温度との温度差の絶対値が所定の閾値よりも小さくなる状況等)では、制御装置110は、間欠燃焼モードでバーナ71の運転制御を行う。
なお、高温暖房装置2が、例えば浴室暖房装置である場合、制御装置110は、高温暖房装置2の図示しない送風機の制御や、風向の制御等も実行する。
【0065】
また、追い焚き用加熱装置4の放熱運転時(浴槽水の追い焚き運転時)には、制御装置110は、追い焚き用加熱装置4の第1流体用の流路4aに接続された流路(本実施形態では第4流路54)を開閉する開閉弁40を開弁制御した状態で、第1ポンプ50を作動させると共に、燃焼式加熱装置70のバーナ71の燃焼運転を行わせる。さらに、制御装置110は、浴槽用ポンプ44を作動させることで、浴槽水を浴槽BTと追い焚き用加熱装置4の流路4bとの間で循環させる。
【0066】
これにより、第1流体が燃焼式加熱装置70の熱交換器74及び追い焚き用加熱装置4の流路4aを経由するように循環しつつ、熱交換器74で加熱される。そして、追い焚き用加熱装置4で流路4aを流れる第1流体から流路4bを流れる浴槽水への伝熱(放熱)が行われる。その結果、浴槽水が加熱される(浴槽水の追い焚き運転が行われる)。
【0067】
この場合、制御装置110は、高温暖房装置2の放熱運転時と同様に、温度センサ101により検出される第1流体の温度が追い焚き用加熱装置4用の所定の目標温度(例えば80℃)に一致もしくはほぼ一致する温度に保たれるようにバーナ71の燃焼運転時の燃焼量を制御する。また、制御装置110は、高温暖房装置2の放熱運転時と同様に、連続燃焼モードと間欠燃焼モードとのいずれかのモードでバーナ71の運転制御を実行する。例えば、高温暖房装置2の放熱運転時と同様に、制御装置110は、追い焚き用加熱装置4の負荷の大小に応じて、連続燃焼モード又は間欠燃焼モードでバーナ71の運転制御を行う。
【0068】
上記した高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4のそれぞれの放熱運転時の第1流体の循環及び加熱に関する作動は、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4の両方の放熱運転を並行して行う場合、あるいは、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4の一方又は両方の放熱運転と、低温暖房装置3の放熱運転とを並行して行う場合でも同様である。
【0069】
次に、低温暖房装置3が放熱運転を行うときの作動を
図3~
図5のフローチャートを参照しつつ、説明する。なお、以降の説明では、ヒートポンプ80の凝縮器81から流出する第2流体の流量(=熱交換器90及びバイパス路64の全体に供給される第2流体の流量)に対する、バイパス路64の第2流体の流量の比率をバイパス比と定義する。また、以降の説明では、バイパス比調整弁65を単に、バイパス弁65と称する。
【0070】
制御装置110は、低温暖房装置3の放熱運転(暖房運転)に関して、
図3のフローチャートの処理を実行する。STEP1では、制御装置110は、低温暖房装置3の暖房運転(放熱運転)の実行要求が有るか否かを判断する処理をその判断結果が肯定的になるまで逐次繰り返す。この場合、例えば、ユーザによるリモコン120の操作によって、低温暖房装置3の暖房運転(放熱運転)の実行が指示された場合、あるいは、低温暖房装置3の予約運転もしくはタイマー運転により指定された運転開始時刻になったときに、STEP1の判断結果が肯定的になる。
【0071】
STEP1の判断結果が肯定的になると、制御装置110は、次に、STEP2において、低温暖房装置3の暖房運転を開始させ、併せて、STEP3において、バイパス弁65を熱交換器全開位置に制御する。該熱交換器全開位置は、熱交換器90の第2流体用の流路90bをバイパス弁65の上流側の第11流路61に対して全開させ、バイパス路64を、第11流路61に対して閉弁する動作位置である。換言すれば、熱交換器全開位置は、ヒートポンプ80の凝縮器81から流出する第2流体の全量を、熱交換器90の第2流体用の流路90bを経由させると共に、バイパス路64を通る第2流体の流量をゼロにする動作位置(前記バイパス比をゼロにする動作位置)である。
【0072】
ここで、本実施形態の暖房システム1では、低温暖房装置3の暖房運転時の動作モード(動作形態)には、その暖房運転時の熱源として燃焼式加熱装置70だけを使用する第1モードと、該熱源としてヒートポンプ80だけを使用する第2モードと、該熱源として燃焼式加熱装置70及びヒートポンプ80の両方を使用する第3モードとがある。そして、制御装置110は、第1~第3モードのいずれか動作モードで、低温暖房装置3の暖房運転を行わせる。
【0073】
この場合、第1~第3モードのいずれの動作モードで低温暖房装置3の暖房運転を行わせるかは、燃焼式加熱装置70のエネルギー源としての燃料の利用コスト、ヒートポンプ80のエネルギー源としての電力の利用コスト、ユーザの希望、低温暖房装置3の負荷等の様々な条件を反映させて決定され得る。
【0074】
例えば、制御装置110は、燃料の利用コストよりも電力の利用コストが低い時間帯では、低温暖房装置3の暖房運転を第2モードで実行することを優先し、低温暖房装置3の負荷が大きい場合等に補助的に、第3モードでの暖房運転を実行させる。また、制御装置110は、例えば、燃料の利用コストよりも電力の利用コストが高い時間帯では、低温暖房装置3の暖房運転を第1モードで実行することを優先し、低温暖房装置3の負荷が大きい場合等に補助的に、第3モードでの暖房運転を実行させる。あるいは、制御装置110は、例えば、第1~第3モードのうち、ユーザがリモコン120で指定したモードでの低温暖房装置3の暖房運転を優先的に実行させる。このように、第1~第3モードのいずれかの動作モードで低温暖房装置3の暖房運転を行わせるかは、様々な条件に応じて決定され得る。
【0075】
そして、制御装置110は、STEP2において、第1モードで低温暖房装置3の暖房運転を開始させる場合には、低温暖房装置3の流路を開閉する開閉弁(図示省略)と、熱交換器ユニット9の開閉弁91とを開弁制御した状態で、第1ポンプ50及び第2ポンプ60を作動させると共に、燃焼式加熱装置70のバーナ71の燃焼運転を行わせ、さらにSTEP3において、バイパス弁65を熱交換器全開位置に動作させる。
【0076】
これにより、第1循環回路5では、第1流体が、熱交換器ユニット9の熱交換器90を経由せずに、燃焼式加熱装置70の熱交換器74及び第6流路56を経由するルートと、燃焼式加熱装置70の熱交換器74及び第6流路56を経由せずに、熱交換器ユニット9の熱交換器90を経由するルートとで循環する。
【0077】
この場合、燃焼式加熱装置70の熱交換器74で加熱された第1流体が、第6流路56を経由した後、熱交換器ユニット9の熱交換器90から第3流路53を流れる第1流体と合流し、その後に第1ポンプ50を通って吐出されるので、熱交換器ユニット9の熱交換器90の流路90aに、加熱された第1流体が第7流路57を通って供給されることになる。
【0078】
また、第2循環回路6では、熱交換器ユニット9の熱交換器90の流路90bと低温暖房装置3の流路(図示しない)とヒートポンプ80の凝縮器81の第2流体用の流路(図示省略)とを経由して第2流体が循環する。このとき、熱交換器90において、流路90bを流れる第2流体が、流路90aを流れる第1流体からの伝熱によって加熱され、その加熱された第2流体が低温暖房装置3に供給されて放熱することで、該低温暖房装置3が設置された空間の暖房が行われる。
【0079】
この場合、制御装置110は、第2循環回路6の温度センサ104により検出される第2流体の温度(以降、第2循環回路6のシステム出湯温度という)を、ユーザがリモコン120で設定した目標温度(低温暖房装置3が設置された屋内空間の目標温度)に応じて規定される暖房設定流体温度(低温暖房装置3に供給する第2流体の目標温度)に一致もしくはほぼ一致させ得るように、熱交換器ユニット9の熱交換器90に供給する第1流体の目標温度を決定し、その目標温度と、温度センサ102で検出される第1流体の温度の検出値との偏差をゼロに近づけるようにバーナ71の燃焼量を制御する。この場合、低温暖房装置3に供給する第2流体の目標温度としての上記暖房設定流体温度は、例えば40~70℃の範囲内の温度である。
【0080】
なお、第1モードで低温暖房装置3の暖房運転を開始させる場合に、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4の一方又は両方での放熱運転が既に行われている場合もある。その場合には、制御装置110は、バーナ71の燃焼運転の制御に関しては、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4での放熱運転時の前記した制御を継続する。
【0081】
補足すると、第1流体の目標温度と温度センサ102で検出される第1流体の温度の検出値との偏差をゼロに近づけるようバーナ71の燃焼量を制御する代わりに、温度センサ104で検出される第2流体の温度(システム出湯温度の検出値)を直接フィードバックして、該システム出湯温度の検出値と暖房設定流体温度との偏差をゼロに近づけるようにバーナ71の燃焼量を制御してもよい。
【0082】
また、STEP2において、第2モードで低温暖房装置3の暖房運転を開始させる場合には、低温暖房装置3の流路を開閉する開閉弁(図示省略)を開弁制御した状態で、第2ポンプ60を作動させると共に、ヒートポンプ80の運転(冷媒回路82の圧縮機の作動等)を行わせ、さらにSTEP3において、バイパス弁65を前記熱交換器全開位置(前記バイパス比をゼロにする動作位置)に制御する。なお、この場合、熱交換器ユニット9の開閉弁91は閉弁制御される。
【0083】
これにより、第2循環回路6において、熱交換器ユニット9の熱交換器90の流路90bと低温暖房装置3の流路とヒートポンプ80の凝縮器81の第2流体用の流路(図示省略)とを経由して第2流体が循環しつつ、ヒートポンプ80の運転が行われる。このとき、ヒートポンプ80の凝縮器81において、加熱された冷媒から第2流体への伝熱によって該第2流体が加熱され、この加熱された第2流体が低温暖房装置3に供給されて放熱することで、低温暖房装置3が設置された空間の暖房が行われる。この場合、制御装置110は、第2循環回路6の温度センサ104で検出されるシステム出湯温度を、前記暖房設定流体温度に一致もしくはほぼ一致させ得るようにヒートポンプ80の出力を制御する。
【0084】
なお、STEP2において、第3モードで低温暖房装置3の暖房運転を開始させる場合には、制御装置110は、上記した第1モードで制御処理と第2モードでの制御処理とを合わせた制御処理を実行する。
【0085】
以上の如く、STEP2、3の処理により、第1~第3モードのいずれかのモードでの暖房運転が開始された後、制御装置110は、次にSTEP4において、低温暖房装置3の暖房運転の実行要求が有るか否かをSTEP1と同様に判断する。このSTEP4の判断結果が否定的である場合には、制御装置110は、STEP9において、低温暖房装置3の暖房運転を停止させる。
【0086】
この場合、制御装置110は、低温暖房装置3の流路を開閉する開閉弁(図示省略)と熱交換器ユニット9の開閉弁91とを閉弁制御すると共に第2ポンプ60の作動を停止させる。また、STEP4の判断処理が否定的になる直前に、高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4の運転停止状態で第1モード又は第3モードでの暖房運転が行われていた場合には、制御装置110は、燃焼式加熱装置70のバーナ71の燃焼運転と第1ポンプ50の作動とを停止させる。また、STEP4の判断処理が否定的になる直前に、第2モード又は第3モードでの暖房運転が行われていた場合には、制御装置110は、ヒートポンプ80の運転を停止させる。
【0087】
STEP4の判断結果が肯定的である場合には、制御装置110は、次にSTEP5において、高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4の放熱運転の実行中であるか否かを判断する。このSTEP5の判断結果が否定的である場合(高温暖房装置2及び追い焚き用加熱装置4の両方の運転停止中である場合)には、制御装置110はSTEP3からの処理を逐次繰り返す。これにより、低温暖房装置3の暖房運転(第1~第3モードのいずれかのモードでの暖房運転)が続行される。また、バイパス弁65は、熱交換器全開位置に維持される。なお、低温暖房装置3の暖房運転の動作モードは、適宜、変更され得る。
【0088】
STEP5の判断結果が肯定的である場合(高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4の放熱運転の実行中である場合)には、制御装置110は、さらにSTEP6において、低温暖房装置3の暖房運転時の熱源は、燃焼式加熱装置70だけであるか否か(換言すれば、第1モードでの暖房運転中であるか否か)を判断する。そして、STEP6の判断結果が肯定的である場合(低温暖房装置3の暖房運転時の熱源が燃焼式加熱装置70だけである場合)には、制御装置110は、STEP7において、バイパス弁65を温調モードで制御し、さらにSTEP4からの処理を継続する。
【0089】
ここで、高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4の放熱運転の実行中は、燃焼式加熱装置70の熱交換器74から流出する第1流体は、低温暖房装置3の暖房運転時の第2流体の暖房設定流体温度(例えば40~70℃)よりも高い温度(例えば80℃)になるように加熱される。このため、バイパス弁65を熱交換器全開位置に動作させた状態では、第2循環回路6で循環する第2流体が必要以上に高温(暖房設定流体温度よりも高温)に加熱されてしまいやすい。
【0090】
そこで、STEP7では、制御装置110は、バイパス比をバイパス弁65を介して可変的に制御することで、第2流体のシステム出湯温度(温度センサ104で検出される温度)を、暖房設定流体温度に一致もしくはほぼ一致させるように第2流体の温調制御を行う。この制御が、STEP7での温調モードの制御である。この温調モードの制御では、制御装置110は、温度センサ104で検出されるシステム出湯温度の平均値を算出し、その平均値に応じてバイパス比を変化させるようにバイパス弁65を制御する。その制御の詳細は後述する。
【0091】
STEP6の判断結果が否定的である場合、すなわち、高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4の放熱運転と並行して、前記第2モード又は第3モードでの低温暖房装置3の暖房運転を実行していた場合には、制御装置110は、STEP8において、バイパス弁65をバイパス路全開位置に制御すると共に、熱交換器ユニット9の開閉弁91を閉弁制御し、さらにSTEP4からの処理を継続する。
【0092】
該バイパス路全開位置は、熱交換器90の第2流体用の流路90bをバイパス弁65の上流側の第11流路61に対して閉弁し、バイパス路64を、第11流路61に対して全開させる動作位置である。換言すれば、バイパス路全開位置は、第2ポンプ60から吐出される第2流体の全量(第2循環回路6で循環する第2流体の全量)を、バイパス路64を経由させると共に、熱交換器90の流路90bを通る第2流体の流量をゼロにする動作位置(前記バイパス比を1にする動作位置)である。
【0093】
STEP8では、上記のようにバイパス弁65がバイパス路全開位置に制御されると共に、熱交換器ユニット9の開閉弁91が閉弁制御されるので、第2流体は、熱交換器90の流路90bを経由することなく、バイパス路64を経由して循環する。このため、第1流流体と第2流体との間での熱交換が行われない状態になる。そして、この状況では、制御装置110は、第2モードの場合と同様に、温度センサ104で検出されるシステム出湯温度を暖房設定流体温度に一致もしくはほぼ一致させるように、ヒートポンプ80の出力を制御する。
【0094】
次に、STEP7におけるバイパス弁65の制御処理(温調モードでの制御処理)を
図4及び
図5を参照して説明する。温調モードでのバイパス弁65の制御処理は、前記STEP5及び6の判断結果が肯定的である場合に実行される制御処理、すなわち、高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4の放熱運転と、第1モードでの低温暖房装置3の放熱運転(燃焼式加熱装置70だけを熱源とする低温暖房装置3の放熱運転)とが並行して行われる状況で実行される制御処理である。
【0095】
この制御処理の開始時には、制御装置110は、まず、バイパス比を暖房設定流体温度に応じて決定した初期値(<1)にするようにバイパス弁65を制御する。この場合、バイパス比の初期値は、暖房設定流体温度が高いほど、小さいバイパス比(ゼロに近いバイパス比)に決定される。すなわち、バイパス比の初期値は、暖房設定流体温度が高いほど、バイパス路64を通る第2流体の流量を小さくすると共に、熱交換器90の流路90bを通る第2流体の流量を大きくするように決定される。
【0096】
続いて、制御装置110は、
図4のフローチャートに示す制御処理と、
図5のフローチャートに示す制御処理とを並行して実行し、それぞれの制御処理により、システム出湯温度の平均値の算出とバイパス比の更新とを各別に行う。そして、制御装置110は、バーナ71の燃焼運転のモードが、前記間欠燃焼モードである場合には、
図4のフローチャートの制御処理で決定されたバイパス比を実現するようにバイパス弁65を制御する。また、制御装置110は、バーナ71の燃焼運転のモードが、前記連続燃焼モードである場合には、
図5のフローチャートの制御処理で決定されたバイパス比を実現するようにバイパス弁65を制御する。
【0097】
バーナ71の燃焼運転のモードが間欠燃焼モードである場合のバイパス比の決定を行う制御処理である
図4のフローチャートの制御処理は次のように実行される。すなわち、制御装置110は、STEP11において、バーナ71の運転状態が、燃焼運転状態(燃焼中の状態)であり、且つ、バイパス弁65の制御モードが温調モードであるか否かを判断し、この判断結果が肯定的になるまで、STEP11の判断処理を繰り返す。
【0098】
STEP11の判断結果が肯定的になった場合には、制御装置110は、STEP12において、システム出湯温度の平均値をゼロに初期化し、さらに、経過時間Taの計時値をゼロに初期化した上で、該経過時間Taの計時を開始する。
【0099】
次いで、STEP13において、制御装置110は、経過時間Taの計時値が所定時間T1(例えば30分)に達したか否かを判断する。このSTEP13の判断結果が否定的である場合には、制御装置110は、次にSTEP16において、バーナ71の運転状態が非燃焼状態(バーナ71の燃焼運転の休止状態)から、燃焼状態に変化したか否かを判断する。
【0100】
ここで、間欠燃焼モードでは、バーナ71の燃焼運転とその休止とが交互に繰り返されるので、STEP16では、バーナ71の燃焼運転が継続している場合、あるいは、バーナ71の燃焼運転が休止した後、その休止状態が継続している場合には、STEP16の判断結果が否定的になる。この場合には、制御装置110は、STEP19において、バイパス弁65の制御モードが温調モードであるか否かを判断する。そして、STEP19の判断結果が否定的である場合、すなわち、
図3のSTEP5又は6の判断結果が否定的になることによって、バイパス弁65の制御モードが温調モードでなくなった場合には、制御装置110は、STEP11からの処理を再び実行する。
【0101】
また、STEP19の判断結果が肯定的である場合(温調モードが継続している場合)には、制御装置110は、STEP20において、現時点が、システム出湯温度の平均値の算出タイミングであるか否かを判断する。ここで、本実施形態では、STEP12で経過時間Taの計時を開始してから、所定の時間間隔毎のタイミング(例えば5秒間隔毎のタイミング)が、システム出湯温度の平均値の算出タイミングである。
【0102】
そして、当該算出タイミングである場合(STEP20の判断結果が肯定的である場合)には、制御装置110は、STEP21において、システム出湯温度の平均値を算出した後、STEP13からの処理を繰り返す。また、STEP20の判断結果が否定的である場合には、制御装置110は、STEP21の処理を実行することなく、STEP13からの処理を繰り返す。
【0103】
上記STEP21では、制御装置110は、STEP20の判断結果が肯定的になる毎に、温度センサ104を介してシステム出湯温度の検出値を取得すると共に、その検出値を積算(累積加算)し、その積算値を、システム出湯温度の検出値を取得個数(経過時間Taの計時の開始時からの取得個数)で除算することにより、システム出湯温度の平均値を算出する。
【0104】
STEP16において、バーナ71の燃焼運転が休止された後に、再開された場合には、STEP16の判断結果が肯定的になる。この場合には、制御装置110は、STEP17において、バイパス比の増減もしくは維持を判定するための判定用システム出湯温度として、現時点で算出済のシステム出湯温度の平均値を設定し、該判定用システム出湯温度に応じて新たなバイパス比を決定する(バイパス比を更新する)。
【0105】
具体的には、判定用システム出湯温度と、暖房設定流体温度との比較に応じて次式(1a)~(1c)により決定する。
判定用システム出湯温度<暖房設定流体温度である場合
バイパス比=初期値+(I(n-1)-dI1) ……(1a)
判定用システム出湯温度≧暖房設定流体温度+dT(3℃)である場合
バイパス比=初期値+(I(n-1)+dI2) ……(1b)
暖房設定流体温度≦判定用システム出湯温度<暖房設定流体温度+dT(3℃)である場合
バイパス比=初期値+I(n-1)(:現状維持) ……(1c)
【0106】
ここで、I(n-1)は、更新前のバイパス比の、前記した初期値からの変化量であり、温調モードの開始時にはゼロである。また、dI1は、バイパス比の所定の減少量、dI2は、バイパス比の所定の増加量である。
【0107】
従って、STEP17では、判定用システム出湯温度が暖房設定流体温度よりも低い場合には、バイパス比は、バイパス路64を通る第2流体の流量を減少させるべく(熱交換器90の流路90bを通る第2流体の流量を増加させるべく)、現在値よりも所定の減少量dI1だけ減少させたバイパス比に更新される。
【0108】
また、判定用システム出湯温度が暖房設定流体温度よりも所定温度dT以上(例えば3℃以上)高い場合には、バイパス比は、バイパス路64を通る第2流体の流量を増加させるべく(熱交換器90の流路90bを通る第2流体の流量を減少させるべく)、現在値よりも所定の減少量dI2だけ増加させたバイパス比に更新される。
【0109】
また、判定用システム出湯温度が暖房設定流体温度以上の温度であり、且つ、暖房設定流体温度+dT(3℃)よりも低い温度である場合には、バイパス比は、現状に維持される。そして、制御装置110は、更新後のバイパス比を実現するようにバイパス弁65を制御する。
【0110】
上記のようにSTEP17でバイパス比を更新した後、制御装置110は、次に、STEP18において、システム出湯温度の平均値をゼロに初期化し、さらに、経過時間Taの計時値をゼロに初期化した上で、該経過時間Taの計時を開始する。そして、制御装置110は、STEP13からの処理を再開する。
【0111】
STEP13の判断結果が肯定的である場合(経過時間Taが所定時間T1(30分)に達した場合)には、制御装置110はSTEP14において、バーナ71の現在の運転状態が非燃焼状態(燃焼運転の休止状態)であるか否かを判断する。
【0112】
ここで、経過時間Taが所定時間T1(30分)に達しても、バーナ71の燃焼運転が継続している場合にSTEP14の判断結果が否定的になる。この場合には、制御装置110は、STEP11からの処理を再開する。たたし、この場合、バーナ71の燃焼運転の休止後、該燃焼運転が再開するまでは、STEP11の判断結果は、否定的に維持され、システム出湯温度の平均値の算出と、バイパス比の更新は中止される。
【0113】
また、経過時間Taが所定時間T1(30分)に達する前に、バーナ71の燃焼運転が休止されたものの、経過時間Taが所定時間T1(30分)に達する前にバーナ71の燃焼運転が再開されなかった場合には、STEP14の判断結果が肯定的になる。この場合には、制御装置110は、STEP15において、前記STEP17と同じ処理を実行し、現時点のシステム出湯温度の平均値を判定用システム出湯温度として設定すると共に、該判定用システム出湯温度に応じてバイパス比を更新する。
【0114】
そして、制御装置110は、更新後のバイパス比を実現するようにバイパス弁65を制御する。さらに、制御装置110は、STEP11からの処理を再開する。このため、この場合には、バーナ71の燃焼運転が再開するまで、システム出湯温度の平均値の算出と、バイパス比の更新は中止される。
【0115】
上記の如く
図4のフローチャートの制御処理では、経過時間Taが所定時間T1(30分)に達する前に、バーナ71の燃焼運転の休止と、燃焼運転の再開とが行われる状況で、バーナ71の燃焼運転の再開の都度(バーナ71の燃焼運転のオン・オフの1周期毎に)、判定用システム出湯温度として、現時点のシステム出湯温度の平均値(バーナ71の前回の燃焼運転の開始時から今回の燃焼運転の開始時までの期間(バーナ71の燃焼運転のオン・オフの1周期の期間)での平均値)が設定されると共に、該判定用システム出湯温度に応じて、バイパス比が更新される。そして、その更新後のバイパス比を実現するようにバイパス弁65が制御される。
【0116】
これにより、間欠燃焼モードでのバーナ71の燃焼運転が行われているときに、バイパス比の過剰な変化を抑制しつつ、システム出湯温度の平均値(判定用システム出湯温度)が暖房設定流体温度の近辺に維持されるように、バイパス比を制御することができる。
【0117】
バーナ71の燃焼運転のモードが連続燃焼モードである場合のバイパス比の決定を行う制御処理である
図5のフローチャートの制御処理は次のように実行される。すなわち、制御装置110は、STEP31において、バーナ71の運転状態が、燃焼運転状態(燃焼中の状態)であり、且つ、バイパス弁65の制御モードが温調モードであるか否かを判断し、この判断結果が肯定的になるまで、STEP31の判断処理を繰り返す。
【0118】
STEP31の判断結果が肯定的になった場合には、制御装置110は、STEP32において、システム出湯温度の平均値をゼロに初期化し、さらに、経過時間Tbの計時値をゼロに初期化した上で、該経過時間Tbの計時を開始する。
【0119】
次いで、STEP33において、制御装置110は、経過時間Tbの計時値が所定時間T2(例えば15分)に達したか否かを判断する。このSTEP33の判断結果が否定的である場合には、制御装置110は、次にSTEP36において、バーナ71の運転状態が燃焼運転状態であるか否かを判断し、この判断結果が否定的である場合(バーナ71の運転状態が非燃焼状態になった場合)には、STEP31からの処理を再開する。
【0120】
また、STEP36の判断結果が肯定的である場合には、制御装置110は、次にSTEP37において、バイパス弁65の制御モードが温調モードであるか否かを判断する。そして、STEP37の判断結果が否定的である場合、すなわち、
図3のSTEP5又は6の判断結果が否定的になることによって、バイパス弁65の制御モードが温調モードでなくなった場合には、制御装置110は、STEP31からの処理を再び実行する。
【0121】
また、STEP37の判断結果が肯定的である場合(温調モードが継続している場合)には、制御装置110は、STEP38において、現時点が、システム出湯温度の平均値の算出タイミングであるか否かを判断する。ここで、本実施形態では、STEP32で経過時間Tbの計時を開始してから、所定の時間間隔毎のタイミング(例えば10秒間隔毎のタイミング)が、システム出湯温度の平均値の算出タイミングである。
【0122】
そして、当該算出タイミングである場合(STEP38の判断結果が肯定的である場合)には、制御装置110は、STEP39において、システム出湯温度の平均値を算出した後、STEP33からの処理を繰り返す。また、STEP38の判断結果が否定的である場合には、制御装置110は、STEP39の処理を実行することなく、STEP33からの処理を繰り返す。
【0123】
上記STEP39では、制御装置110は、STEP38の判断結果が肯定的になる毎に、温度センサ104を介してシステム出湯温度の検出値を取得すると共に、その検出値を積算(累積加算)し、その積算値を、システム出湯温度の検出値を取得個数(経過時間Tbの計時の開始時からの取得個数)で除算することにより、システム出湯温度の平均値を算出する。
【0124】
STEP33で、バーナ71の燃焼運転が継続したまま、経過時間Tbが所定時間T2(15分)に達すると、STEP33の判断結果が肯定的になる。このとき、制御装置110は、STEP34において、前記判定用システム出湯温度として、現時点で算出済のシステム出湯温度の平均値を設定し、該判定用システム出湯温度に応じて新たなバイパス比を決定する(バイパス比を更新する)。この場合、バイパス比の更新は、
図4のSTEP17と同じ処理により行われる。そして、制御装置110は、更新後のバイパス比を実現するようにバイパス弁65を制御する。
【0125】
次いで、制御装置110は、STEP35において、システム出湯温度の平均値をゼロに初期化し、さらに、経過時間Tbの計時値をゼロに初期化した上で、該経過時間Tbの計時を開始する。そして、制御装置110は、STEP33からの処理を再開する。
【0126】
上記の如く
図5のフローチャートの制御処理では、連続燃焼モードでのバーナ71の燃焼運転中に、経過時間Tbが所定時間T2(15分)に達する都度(所定時間T2の期間毎に)、判定用システム出湯温度として、現時点のシステム出湯温度の平均値(現時点から所定時間T2前までの期間での平均値)が設定されると共に、該判定用システム出湯温度に応じて、バイパス比が更新される。そして、その更新後のバイパス比を実現するようにバイパス弁65が制御される。
【0127】
これにより、連続燃焼モードでのバーナ71の燃焼運転が行われているときに、バイパス比の過剰な変化を抑制しつつ、平均的なシステム出湯温度が暖房設定流体温度の近辺に維持されるように、バイパス比を制御することができる。
【0128】
以上説明した本実施形態の暖房システム1では、高温暖房装置2、追い焚き用加熱装置4及び低温暖房装置3のうちの低温暖房装置3だけの放熱運転時には、第1~第3モードのいずれの動作モードでも、前記STEP3~5の処理が繰り返されることで、バイパス弁65は、熱交換器全開位置に継続的に制御される(ひいては、バイパス比が継続的にゼロに制御される)。
【0129】
このため、特に、燃焼式加熱装置70だけを熱源として使用する第1モードでは、バーナ71の燃焼運転により加熱されながら第1循環回路5で循環する第1流体から、第2循環回路6で循環する第2流体への伝熱を熱交換器90で最大限に行って、該第2流量を効率よく加熱することができる。また、このとき、バーナ71の燃焼量の制御によって、第2流体のシステム出湯温度を暖房設定流体温度(例えば40~70℃の温度)に制御することができる。
【0130】
一方、高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4の放熱運転と、第1モードでの低温暖房装置3の放熱運転(燃焼式加熱装置70だけを熱源として使用する低温暖房装置3の放熱運転)とが並行して行われる状況では、バーナ71の燃焼量は、高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4に供給する第1流体の温度が暖房設定流体温度よりも高い要求温度(例えば80℃)になるように制御されるものの、バイパス弁65が温調モードで制御される。このため、第2循環回路6のバイパス比は結果的にゼロよりも大きいバイパス比に制御され、バイパス比がゼロである場合よりも、熱交換器90の流路90bを通る第2流体の流量が小さくなると共に、バイパス路64を通る第2流体の流量が大きくなる。
【0131】
これにより、高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4に供給する第1流体の温度が、暖房設定流体温度よりも高い要求温度になるようにバーナ71の燃焼量が制御された状態であっても、低温暖房装置3に供給される第2流体を過剰に高温に加熱してしまうような事態を生じることを防止できる。
【0132】
また、温調モードでのバイパス比は、低温暖房装置3に供給される第2流体の温度であるシステム出湯温度の平均値(判定用システム出湯温度)に応じて可変的に制御されるので、システム出湯温度が平均的に暖房設定流体温度の近辺に保たれるように第2流体の温調制御を行うことができる。従って、低温暖房装置3の放熱運転を適切に行うことができる。
【0133】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に他の実施形態をいくつか例示する。前記実施形態の暖房システム1(流体循環式加熱システム)では、第2循環回路6に接続された熱源(加熱装置)として、ヒートポンプ80を備えたが、例えば、当該熱源を省略してもよい。あるいは、ヒートポンプ80以外の種類の熱源(燃焼式熱源、電熱式熱源)を第2循環回路6に接続してもよい。なお、第2循環回路6にヒートポンプ80等の熱源を接続しない場合には、例えば
図3のSTEP6、8の処理を省略した制御処理によって、低温暖房装置3の放熱運転を行わせることができる。
【0134】
また、前記実施形態では、第1循環回路5に接続された熱源は、燃焼式加熱装置70であるが、該燃焼式加熱装置70代わりに、ヒートポンプ、電熱式熱源等、他の種類の熱源が接続されていてもよい。さらに、第1循環回路5に複数の熱源が接続されていてもよい。
【0135】
また、前記実施形態では、第2循環回路6に、熱交換器90の流路90bをバイパスするバイパス路64とバイパス比を調整するためのバイパス弁65(バイパス比調整弁)とを備えた。ただし、これらのバイパス路64及びバイパス弁65の代わりに、熱交換器90の第1流体用の流路90aをバイパスするバイパス路を第1循環回路5に備えると共に、該バイパス路を通る第1流体の流量と熱交換器90の流路90aを通る第1流体の流量との比率(以降、第1循環回路側バイパス比という)を調整可能なバイパス比調整弁を第1循環回路5に備えてもよい。
【0136】
そして、燃焼式加熱装置70(第1循環回路5に接続された加熱装置)を熱源として、低温暖房装置3の放熱運転を行う場合に、高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4の放熱運転を並行して行わない状況では、例えば第1循環回路5の上記バイパス路を通る第1流体の流量をゼロにするように上記バイパス比調整弁を制御し、高温暖房装置2又は追い焚き用加熱装置4の放熱運転を並行して行う状況では、第2循環回路6のシステム出湯温度(低温暖房装置3に供給される第2流体の温度)を暖房設定流体温度の近辺の温度に保つように、第1循環回路側バイパス比をバイパス比調整弁を用いて可変的に制御するようにしてもよい。このようにした場合でも、前記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0137】
さらに、上記のように、第1循環回路5にバイパス路とバイパス比調整弁とを備えることに加えて、第2循環回路6に前記実施形態と同様にバイパス路64及びバイパス比調整弁65を備え、第1循環回路5のバイパス比調整弁を上記の如く制御することと併せて、第2循環回路6のバイパス比調整弁65を前記実施形態と同様に制御することを実行するようにしてもよい。このようにした場合でも、前記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0138】
また、本発明における第1放熱装置及び第2放熱装置は、前記した暖房システム1に関して例示したものに限らず、第1流体や第2流体から、任意の液体等の物体に放熱を行って、該物体を加熱する放熱装置であってもよい。
【符号の説明】
【0139】
1…暖房システム(流体循環式加熱システム)、2…高温暖房装置(第1放熱装置)、3…低温暖房装置(第2放熱装置)、4…追い焚き用加熱装置(第1放熱装置)、5…第1循環回路、6…第2循環回路、64…バイパス路、65…バイパス比調整弁、70…燃焼式加熱装置(加熱装置)、90…熱交換器、110…制御装置、104…温度センサ。