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  • 特許-シャントレギュレータ 図1
  • 特許-シャントレギュレータ 図2
  • 特許-シャントレギュレータ 図3
  • 特許-シャントレギュレータ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】シャントレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/613 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
G05F1/613 310
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021050898
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022148990
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 勉
(72)【発明者】
【氏名】澤井 英幸
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-117650(JP,A)
【文献】米国特許第7969127(US,B1)
【文献】特開2002-023870(JP,A)
【文献】特開2017-062688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/613
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外付け抵抗を介して電源端子に接続される出力端子と、
前記出力端子と接地端子の間に直列に接続され分圧回路を構成する複数の抵抗と、
前記出力端子と前記接地端子の間に接続された出力トランジスタと、
第一の基準電圧を出力する第一の基準電圧回路と第一のエラーアンプとを備え、前記分圧回路の第一の出力端子の電圧に基づいて前記出力トランジスタを制御する第一の駆動回路と、
前記分圧回路の第二の出力端子の電圧に基づいて前記出力トランジスタを制御する第二の駆動回路と、
前記第一の基準電圧に基づいて前記第一の駆動回路と前記第二の駆動回路の動作を切り替える起動制御回路と、
を備え、
前記第二の駆動回路は、前記第一の駆動回路よりも起動時間が短いことを特徴とするシャントレギュレータ。
【請求項2】
前記第二の駆動回路は、第二の基準電圧を出力する第二の基準電圧回路と第二のエラーアンプとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のシャントレギュレータ。
【請求項3】
前記第二の駆動回路は、一方の端子が前記出力端子に接続された定電流回路と、
ドレインが前記定電流回路の他方の端子に接続され、ゲートが前記分圧回路の第二の出力端子に接続され、ソースが前記接地端子に接続されたMOSトランジスタと、
入力端子が前記定電流回路の他方の端子に接続され、制御端子が前記起動制御回路の制御端子に接続され、出力電圧で前記出力トランジスタを制御する反転増幅回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシャントレギュレータ。
【請求項4】
前記起動制御回路は、
一方の端子が前記出力端子に接続された定電流回路と、
ドレインが前記定電流回路の他方の端子に接続され、ゲートが前記第一の基準電圧回路に接続され、ソースが前記接地端子に接続されたMOSトランジスタと、
を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシャントレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャントレギュレータに関し、詳しくは低電圧での安定動作に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のシャントレギュレータを示す回路図である。
図4のシャントレギュレータは、基準電圧回路101と、エラーアンプ102と、NMOSトランジスタ103と、分圧抵抗R1、R2を備えている。
【0003】
シャントレギュレータは、電源電圧Vinが入力されると、外付け抵抗110に電流が流れることによって発生した出力電圧Voutで負荷111を駆動する。抵抗値Rの外付け抵抗110に流れる電流をIr、負荷111に流れる電流をIo、シャントレギュレータICに流れる電流をIcとすると、出力電圧Voutは以下の式で表される。
Vout=Vin-Ir/R=Vin-(Io+Ic)/R
【0004】
シャントレギュレータは、NMOSトランジスタ103が電流Icを調整して所望の出力電圧Voutを得る。即ち、シャントレギュレータは、常に負荷111への電流IoとシャントレギュレータICに電流Icが流れるため消費電流は多いが、電源電圧Vinが外付け抵抗110を介して入力されるため、電源電圧Vinに制約がなく変動にも影響されない。更に、シャントレギュレータは、出力電圧Voutの精度は良いという特徴がある(例えば、特許文献1参照)。
従って、シャントレギュレータは、出力電流Ioは少なくても良いが出力電圧Voutの精度が要求される用途に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8085006号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のシャントレギュレータは、回路の動作電圧は出力電圧Voutに基づいているため、出力電圧Voutが低くなった場合などは基準電圧回路101が出力する基準電圧も低くなる。従って、出力電圧Voutが所望の電圧になるまでの時間が長くなる、という課題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みて為され、出力電圧Voutが低い状態から所望の電圧になるまでの時間を短くすることが出来るシャントレギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のシャントレギュレータは、外付け抵抗を介して電源端子に接続される出力端子と、前記出力端子と接地端子の間に直列に接続され分圧回路を構成する複数の抵抗と、前記出力端子と接地端子の間に接続された出力トランジスタと、第一の基準電圧を出力する第一の基準電圧回路とエラーアンプとを備え、前記分圧回路の第一の出力端子の電圧に基づいて前記出力トランジスタを制御する第一の駆動回路と、前記分圧回路の第二の出力端子の電圧に基づいて前記出力トランジスタを制御する第二の駆動回路と、前記第一の基準電圧に基づいて前記第一の駆動回路と前記第二の駆動回路の動作を切り替える起動制御回路と、を備え、前記第二の駆動回路は前記第一の駆動回路よりも起動時間が短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシャントレギュレータによれば、出力トランジスタを制御する第一の駆動回路と第二の駆動回路、及び第一の駆動回路と第二の駆動回路の動作を切り替える起動制御回路を備えたので、出力電圧Voutが低い状態から所望の電圧になるまでの時間を短くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のシャントレギュレータを示すブロック図である。
図2】本実施形態の起動制御回路の一例を示す回路図である。
図3】本実施形態の第二の駆動回路の他の例を示す回路図である。
図4】従来のシャントレギュレータを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のシャントレギュレータについて、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態のシャントレギュレータ100を示すブロック図である。
図1のシャントレギュレータ100は、第一の基準電圧回路11と、第一のエラーアンプ12と、分圧回路を構成する抵抗13、14及び15と、NMOSトランジスタ16と、第二の基準電圧回路21と、第二のエラーアンプ22と、起動制御回路30とを備えている。第一の基準電圧回路11と第一のエラーアンプ12は、第一の駆動回路10を構成している。第二の基準電圧回路21と第二のエラーアンプ22は、第二の駆動回路20を構成している。
【0013】
抵抗13、14及び15は、出力端子と接地端子の間に直列に接続されている。エラーアンプ12は、反転入力端子-に基準電圧回路11の出力端子が接続され、非反転入力端子+に分圧回路の第一の出力端子FB1(抵抗13と抵抗14の接続点)が接続され、出力端子がNMOSトランジスタ16のゲートに接続されている。エラーアンプ22は、反転入力端子-に基準電圧回路21の出力端子が接続され、非反転入力端子+に分圧回路の第二の出力端子FB2(抵抗14と抵抗15の接続点)が接続され、出力端子がNMOSトランジスタ16のゲートに接続されている。起動制御回路30は、入力端子に基準電圧回路11の出力端子が接続され、第一の出力端子S1がエラーアンプ12の制御端子に接続され、第二の出力端子S2がエラーアンプ22の制御端子に接続されている。
【0014】
第一の駆動回路10は通常状態で動作するため、高精度や安定して動作することが求められる。従って、例えば、第一の基準電圧回路11にローパスフィルタが設けられるなど、回路の起動時間は比較的長い。ここで、第二の駆動回路20は、シャントレギュレータが起動するときや出力電圧Voutが低下したときに動作するため、第一の駆動回路10と比較して、精度や安定性は重視されず回路の起動時間は比較的短い。また、第二の基準電圧回路21の最低動作電圧は、第一の基準電圧回路11の最低動作電圧よりも低く設定される。更に、第二の駆動回路20による出力電圧Voutは、少なくとも第一の基準電圧回路11の最低動作電圧よりも高く設定される。
【0015】
図2は、本実施形態の起動制御回路30の一例を示す回路図である。
起動制御回路30は、NMOSトランジスタ31と、定電流回路32と、反転回路33を備えている。起動制御回路30は、MOSトランジスタ31のドレイン電流と定電流回路32の電流の比較で制御信号を出力する。
【0016】
NMOSトランジスタ31は、ソースが接地端子に接続され、ゲートが起動制御回路30の入力端子に接続され、ドレインが第二の出力端子S2に接続されている。定電流回路32は、一方の端子がシャントレギュレータの出力端子に接続され、他方の端子が第二の出力端子S2に接続されている。反転回路33は、入力端子が第二の出力端子S2に接続され、出力端子が第一の出力端子S1に接続されている。
【0017】
上述のように構成されたシャントレギュレータ100は、以下のように動作する。
電源電圧Vinが入力されると、抵抗110に電流が流れて出力端子に出力電圧Voutを出力する。出力電圧Voutは、出力端子に接続された負荷111の容量やシャントレギュレータ100の内部容量などに電荷が充電され、基準電圧回路11の最低動作電圧以下の電圧から徐々に上昇する。この時、基準電圧回路11は、所定の基準電圧Vref1よりも低い電圧を出力し、出力電圧Voutの上昇に伴い徐々に上昇する。起動制御回路30のNMOSトランジスタ31は、基準電圧Vref1が入力されるゲートの電圧の上昇に伴い、ドレイン電流が徐々に増加する。
【0018】
NMOSトランジスタ31のドレイン電流が定電流回路32の電流より少ないとき、起動制御回路30は第二の出力端子S2にHiレベル、第一の出力端子S1にLoレベルの制御信号を出力する。即ち、起動時など出力電圧Voutが低く基準電圧Vref1が低い時、Hiレベルの制御信号によって第二の駆動回路20は動作し、Loレベルの制御信号によって第一の駆動回路10は停止している。
【0019】
ここで、第一の駆動回路10及び第二の駆動回路20は、例えば、エラーアンプの動作電流のオンオフによって、または出力端子に設けられたスイッチのオンオフによって、動作が制御される。そして、停止している駆動回路の出力はハイインピーダンスになるように設計される。
【0020】
NMOSトランジスタ16のゲート電圧は、起動時間が比較的短い第二の駆動回路20の出力電圧V2で制御される。そして、出力電圧Voutは、第二の駆動回路20によって基準電圧回路11の最低動作電圧以上まで早く上昇することが出来る。
【0021】
基準電圧回路11が所定の基準電圧Vref1を出力すると、NMOSトランジスタ31のドレイン電流が定電流回路32の電流より多くなり、起動制御回路30は第二の出力端子S2にLoレベル、第一の出力端子S1にHiレベルの制御信号を出力する。即ち、Hiレベルの制御信号によって第一の駆動回路10が動作し、Loレベルの制御信号によって第二の駆動回路20は停止する。従って、シャントレギュレータ100は、第一の駆動回路10が動作することによって、出力電圧Voutが安定して精度の高い通常動作へ移行する。ここで、第一の出力端子S1と第二の出力端子S2の信号が反転するNMOSトランジスタ31のゲート電圧は、基準電圧Vref1が所定の電圧よりも低く、且つ基準電圧回路11が十分安定して動作しているとみなせる電圧である。
【0022】
以上説明したように、本実施形態のシャントレギュレータ100は、第一の駆動回路10と比較して精度や安定性は劣るものの回路の起動時間が比較的短い第二の駆動回路20と、第一の駆動回路10と第二の駆動回路20を切り替える起動制御回路30を備えたので、電源起動時など出力電圧Voutが低いときに早く安定して精度の高い通常動作へ移行することが出来る。
【0023】
図3は、本実施形態の第二の駆動回路20の他の例を示す回路図である。
第二の駆動回路20は、NMOSトランジスタ23と、定電流回路24と、反転増幅回路25を備えている。反転増幅回路25は、例えば、ソース接地増幅回路である。
【0024】
NMOSトランジスタ23は、ソースが接地端子に接続され、ゲートが分圧回路の第二の出力端子FB2に接続され、ドレインが反転増幅回路25の入力端子に接続されている。定電流回路24は、一方の端子がシャントレギュレータの出力端子に接続され、他方の端子が反転増幅回路25の入力端子に接続されている。反転増幅回路25は、制御端子が第二の出力端子S2に接続され、出力端子が第二の駆動回路20の出力端子に接続されている。
【0025】
図3の第二の駆動回路20は、NMOSトランジスタ23のドレイン電流が定電流回路24の電流と等しくなるようにゲートに入力される分圧回路の第二の出力端子FB2の電圧が制御される。こ時の分圧回路の第二の出力端子FB2の電圧が図1の基準電圧Vref2と等しくなるように、定電流回路24の電流やNMOSトランジスタ23のサイズが調整される。
【0026】
図3の第二の駆動回路20は、図1と同様に動作電流のオンオフや出力端子に設けられたスイッチのオンオフなどによって動作が制御される。そして、停止している時の出力はハイインピーダンスになるように設計される。
【0027】
図3の第二の駆動回路20は、図1の第二の駆動回路20と比較するとエラーアンプ22や基準電圧回路21を備えないが、第一の駆動回路10と比較して精度や安定性は劣るものの回路の起動時間が比較的短いという機能を満足しているのため、図1の第二の駆動回路20と同様の効果を奏することが出来る。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、図2に示した起動制御回路30は、基準電圧回路11の基準電圧Vref1に基づいて制御信号S1及びS2を出力出来れば良いため、機能を満足すればこの回路に限定されない。また例えば、第一の駆動回路10及び第二の駆動回路20は、制御信号S1及びS2がHiレベルで動作しLoレベルで停止すると説明したが、論理は自由に設計することが可能である。例えば、起動制御回路30から出力される制御信号が入れ替わっても良いし、同じ信号であっても良い。起動制御回路30の制御信号が同じ信号の場合は、反転回路33は無くても良い。
【符号の説明】
【0029】
11、21 基準電圧回路
12、22 エラーアンプ
13、14、15 抵抗
16 NMOSトランジスタ
10 第一の駆動回路
20 第二の駆動回路
30 起動制御回路
23、31 NMOSトランジスタ
24、32 定電流回路
25 反転増幅回路
33 反転回路
100 シャントレギュレータ
図1
図2
図3
図4