(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】配管系点検計画システム、および移動式足場設置検討システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240614BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G06Q10/20
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2021073978
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福原 良純
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 通明
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014958(JP,A)
【文献】特開2015-125523(JP,A)
【文献】特開2010-281159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機システムにより構成され、プラントを構成する配管系の点検計画を実施する配管系点検計画システムであって、
プラントの配管仕様、点検項目、及び点検計画の情報を含む保全情報と、プラントを構成する配管系の位置情報と、点検のための足場の情報から、足場の点検スペース内にある今後に点検を行うべき構成部品の情報を求める前処理部と、
1足場当たりの点検箇所数が所定の点検箇所数以上となるように足場寸法を調整する点検個所最適化処理部とを備え、
前記保全情報を見直しした足場保全情報を得ることを特徴とする配管系点検計画システム。
【請求項2】
請求項1に記載の配管系点検計画システムであって、
前記点検計画の単位期間内における足場総数が単位期間ごとに平準化するように足場計画を変更し、前記足場保全情報を見直す点検計画平準化確認処理部を備えることを特徴とする配管系点検計画システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配管系点検計画システムであって、
前記点検個所最適化処理部は、足場寸法を調整するにあたり、移動式昇降型足場の採用を含めて検討することを特徴とする配管系点検計画システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配管系点検計画システムであって、
前記点検個所最適化処理部は、足場モデルに設定された任意の点検スペース内にある当初予定外の点検箇所の抽出、あるいは計画されていない点検箇所の抽出を行い、抽出された個々の足場モデルで実施できる点検箇所数と、任意に設定された点検実施箇所数との比較を行ない、点検箇所数が満たない場合は、他の足場モデルの点検スペースをもつモデルが適用可能か干渉チェックを行い、任意に設定された箇所数を満足するまで繰り返し実施することを特徴とする配管系点検計画システム。
【請求項5】
請求項3に記載の配管系点検計画システムであって、
各点検箇所に対して、前記移動式昇降型足場の搬入時のスペース、昇降時のスペース、点検時のスペースについて、3次元CAD上の干渉物の抽出を行い、干渉物量やその種類によって足場の型式を決定することを特徴とする配管系点検計画システム。
【請求項6】
請求項2に記載の配管系点検計画システムであって、
前記点検計画平準化確認処理部は、前記保全情報に含まれる劣化事象ごとの点検時期の前倒し点検可能回数、後ろ倒し点検可能回数、新規抽出可否をもとに、足場モデル単位での任意に設定された各点検回の点検物量の偏差に収まっているかを確認し、収まっていない場合、各点検回で計画されている足場モデル単位での前倒し処理、後ろ倒し処理を行い、任意に設定された偏差値を満足するまで同処理を繰り返し実施する配管系点検計画システム。
【請求項7】
請求項2に記載の配管系点検計画システムであって、
前記点検計画平準化確認処理部で求めた情報を基に、配管系における将来の点検計画書を作成することを特徴とする配管系点検計画システム。
【請求項8】
計算機システムにより構成され、プラントを構成する配管系の点検計画を実施するときに移動式昇降型足場を用いる移動式足場設置検討システムであって、
プラントの配管仕様、点検項目、及び点検計画の情報を含む保全情報と、プラントを構成する配管系の位置情報と、点検のための常設型足場の情報から、常設型足場の点検スペース内にある今後に点検を行うべき構成部品の情報を求める前処理部と、
1足場当たりの点検箇所数が所定の点検箇所数以上となるように移動式昇降型足場の採用を含めて足場寸法を調整することを特徴とする移動式足場設置検討システム。
【請求項9】
請求項8に記載の移動式足場設置検討システムであって、
各点検箇所に対して、前記移動式昇降型足場の搬入時のスペース、昇降時のスペース、
点検時のスペースについて、3次元CAD上の干渉物の抽出を行い、干渉物量やその種類によって足場の型式を決定することを特徴とする移動式足場設置検討システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子力発電プラントや化学プラント等に代表される、プラントを構成する配管および配管支持構造物、機器の保全管理するための支援システムに係り、特に配管系への保全点検のための足場の最適計画を実施するための配管系点検計画システム、および移動式足場設置検討システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントや化学プラント等に代表される配管および配管支持構造物、それらに接続される機器等(以下、単に配管系という)を有する施設において、配管系の保全点検を実施する際に、特に高所箇所においては、足場を組み立てて点検を実施している。
【0003】
本技術分野の背景技術として、特許文献1では、「演算部と記憶部と表示部と入力部を備えた計算機システムにより構成され、プラントを構成する複数の配管についての点検を実施するに当たり、設置する足場の情報を得るための配管保全支援システムであって、前記記憶部は、配管ごとに点検項目と点検計画を記憶している保全情報格納部と、前記配管ごとに3次元位置情報を記憶している3次元情報格納部と、配管の点検の際の足場のモデルの情報を格納している足場モデル格納部と、足場情報格納部を備え、前記演算部は、前記保全情報格納部から点検予定の配管を抽出して3次元情報格納部からその配管の3次元位置情報を得、足場モデル格納部の足場のモデルの情報と配管の3次元位置情報を前記表示装置に3次基に重ね合せ表示し、点検を行う上での干渉チェック結果の情報を前記足場情報格納部に反映させることを特徴とする配管保全支援システム。(中略)点検対象の配管が近接位置に存在する場合に、1つの足場モデルにより点検が可能であることを確認して、足場総数に反映させることを特徴とする配管保全支援システム。(中略)足場情報格納部から足場総数の情報を得ることを特徴とする配管保全支援システム。」としている。
【0004】
また特許文献2によれば、「原子力プラント内に複数設置されている配管機器について、過去の点検履歴および点検周期に基づき、これら配管機器に予め規定された最長点検周期期間内に予定される定期点検の各回ごとに前記配管機器の略全数を割り振ってグループ化した上で、当該各グループに属する配管機器の開放点検の際に排出されるブロー水量の合計値をそれぞれ算出し、得られた合計値を平準化するように前記各グループ間で1つまたは複数の配管機器をそれぞれの点検周期を超えない範囲で入れ替えて各グループにおける定期点検対象機器を確定するようにしたことを特徴とする原子力プラント配管機器の定期点検計画立案方法。さらに前記各グループに属する配管機器の開放点検に要する作業量の合計値をそれぞれ算出し、当該合計値を前記ブロー水量の合計値とともに平準化するように前記各グループ間で1つまたは複数の点検対象候補機器をそれぞれの点検周期を超えない範囲で入れ替えて各グループの定期点検対象機器を確定するようにした定期点検計画立案方法。」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-125523号公報
【文献】特開2010-164316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献によれば、これらにおいて解決を意図した課題について解決案が提示されている。例えば特許文献1は、3次元位置情報を有する点検が必要な配管に対して、足場モデルを使用することで、近接位置に存在する他の点検箇所を抽出し、かつ、その点検回における足場総数を算出する点では優れているが、その反面において各点検回における算出された足場総数の全体的な平準化という点においては不十分である。
【0007】
また上述した特許文献2によれば、資機材物量から作業量を平準化させ定期点検対象機器を確定する点においては優れているが、点検箇所の3次元位置情報を基にしたそれら各点検回における合理的な各足場計画を実施するという点では不十分である。
【0008】
これに対し、近年ではさらに以下の各点をも考慮する必要がある。例えば、プラントにおける配管及び配管支持構造物、それらに接続される機器等に対して運転経過とともに様々な劣化事象が起こる事が知られているが、1プラント当りの配管系の数は膨大である。
【0009】
このことから、その予防保全業務において、定期検査期間ごとに点検項目を整理し、点検計画の適正化、計画的な点検の実施を目的として、プラントの全ての配管系の溶接点、部品点に対する、環境条件、仕様、想定される劣化事象、検査の重要度、今までの点検実績、そこから想定される点検予定日時などの情報を纏めたデータベースを構築し、それらを中心に、配管図面、系統図面などの物理情報と施設構成情報をリンクさせた保全プログラムシステムを開発してきた。
【0010】
加えて、それらの情報を配管系の3次元位置情報と組み合わせることで、視覚的に点検箇所を確認するだけでなく、高所にある配管系の点検時においては、足場モデルを設定することで点検前に事前に足場計画を可能としている。
【0011】
更には、3次元位置情報(主に3次元CAD)に当初計画年における点検箇所に設定された足場モデルで設定された点検スペース内にある当初計画年ではない他の点検箇所を抽出することで1つの足場における点検箇所の増加を図ることで足場計画の最適化、並びに、点検箇所の抽出の漏れを防ぐこと可能であり、かつ、各点検回での必要な足場総数の事前把握が可能である。
【0012】
しかしながら、これらの仕組みに対して、各点検回での足場総数に偏りが生じる可能性があり、それら各点検回の足場総数の平準化手法が求められている。その課題に対して、各点検回における足場総数が平準化された計画が可能な仕組み作りが必要となっている。
【0013】
また一方で、特許文献1における足場モデルは、点検箇所の主に下方に設置される組み立てが必要な常設型の足場での計画としており、その足場組立計画は現場を確認して初めて必要足場部材数、組み立て工数を判断する必要があり、その常設型足場組み立て計画に時間を有するという課題と、常設型足場設置に際しては安全対策等の様々な処置が必要となり、足場完成までに時間を有するという課題がある。
【0014】
その課題に対して、移動式昇降型足場の適用が考えられるが、その移動式昇降型足場の適用に当たり、点検箇所まで移動させる際の干渉物の有無による設置判断、並びに、足場昇降時の干渉物の有無から事前に適用判断が可能な仕組み作りが求められている。
【0015】
以上のことから本発明においては、点検個所の最適化、点検計画の平準化、移動式足場の採用といった観点でさらに工夫された配管系点検計画システムおよび、移動式足場設置検討システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上のことから本発明においては、「計算機システムにより構成され、プラントを構成する配管系の点検計画を実施する配管系点検計画システムであって、プラントの配管仕様、点検項目、及び点検計画の情報を含む保全情報と、プラントを構成する配管系の位置情報と、点検のための足場の情報から、足場の点検スペース内にある今後に点検を行うべき構成部品の情報を求める前処理部と、1足場当たりの点検箇所数が所定の点検箇所数以上となるように足場寸法を調整する点検個所最適化処理部とを備え、保全情報を見直しした足場保全情報を得ることを特徴とする配管系点検計画システム」としたものである。
【0017】
また本発明においては、「計算機システムにより構成され、プラントを構成する配管系の点検計画を実施するときに移動式昇降型足場を用いる移動式足場設置検討システムであって、プラントの配管仕様、点検項目、及び点検計画の情報を含む保全情報と、プラントを構成する配管系の位置情報と、点検のための常設型足場の情報から、常設型足場の点検スペース内にある今後に点検を行うべき構成部品の情報を求める前処理部と、1足場当たりの点検箇所数が所定の点検箇所数以上となるように移動式昇降型足場の採用を含めて足場寸法を調整することを特徴とする移動式足場設置検討システム」としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、点検個所の最適化、点検計画の平準化、移動式足場の採用といった観点でさらに工夫された配管系点検計画システムおよび、移動式足場設置検討システムを提供することができる。
【0019】
より具体的に述べると、本発明の実施例によれば、保全情報および点検箇所の3次元位置情報、3次元CAD上での足場モデルにより、当初計画外の点検箇所の自動抽出および点検回毎の足場総数の算出だけでなく、配管系点検の際の各点検回における各劣化事象に対応する点検箇所の点検回の前倒しあるいは後ろ倒し、新規抽出を自動で実施することにより、従来の点検箇所の抜け漏れ防止の仕組みに加え、効率的な足場計画が可能となるだけでなく、各点検回の足場総数の自動平準化計画が可能となる。従来は、各劣化事象での点検計画を行っていたため、ある点検回で設置した足場を、次回点検時にも同様の箇所に設置するといった非効率的な足場設置を行っていたが、本発明の実施例により、1回の点検で1つの足場を使用した複数の劣化事象に対する点検が可能となる。
【0020】
また、常設型足場あるいは、移動式昇降型足場の適用判断が点検前に事前に自動で把握することが可能となることで、点検時の足場設置計画の時間を削除することができ、効率的な点検計画を図れる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例に係る配管系点検計画システムの全体構成例を示す図。
【
図2】保全情報格納部DB1のデータ構成例を示す図。
【
図4】点検箇所最適化処理部の点検箇所最適化処理S104の詳細構成を示す図。
【
図6】点検計画平準化処理段階ST3の点検計画平準化確認処理部S106の詳細構成を示す図。
【
図7】見直し後保全情報格納部DB9の構成例を示す図。
【
図8】点検計画平準化処理段階ST3の点検計画書作成処理部S114の詳細構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
図1に本発明の実施例に係る配管系点検計画システムの全体構成例を示している。本発明の実施例に係る配管系点検計画システムは、一般的な計算機システムにより構成することが可能である。この図において記号DBを付したDB1~DB10は各種のデータベースであり、記号Sを付したS101~S114は計算機の演算部にて実行される各種の処理機能、あるいは処理ステップである。なお本発明では、CADの3次元情報を取り扱うので、計算機システムはCADシステムに連携されて構成されていてもよく、またCADシステム自体で構成することも可能である。また
図1には表示装置や入出力装置、ルート等の情報記録部を図示していないが、これらは当然に備えられており、演算結果を3次元表示しあるいはユーザ入力に応じて記憶部の記憶内容が影響を受け、画面が操作されるものである。
【0024】
図1のシステムは、大別すると3種の小システムにより構成されている。これらは足場保全情報一次格納部DB4を形成するまでのいわば前処理段階ST1である。2つ目は、足場保全情報二次格納部DB6を形成するまでの点検個所最適化処理段階ST2である。3つ目は、最終的に作成した点検計画書を点検計画情報格納DB10に格納するまでの点検計画平準化処理段階ST3である。なお以降の説明においては、前処理段階ST1について実施例1として説明し、点検個所最適化処理段階ST2について実施例2,3として説明し、点検計画平準化処理段階ST3について実施例4、5として説明するものとする。
【0025】
最初に前処理段階ST1について説明する。ここでの処理では、保全情報格納部DB1、3次元情報格納部DB2、常設型足場モデル格納部DB3の各データベースDBの情報を参照して、最終的に足場保全情報一次格納部DB4を形成する。
【0026】
図1の保全情報格納部DB1には、プラントにおける配管系の保全情報が格納されている。
図2は、保全情報格納部DB1のデータ構成例を示している。このデータ構成例では、縦軸に点検個所が列挙され、横軸に各点検個所の保全情報が項目ごとに列挙されている。
【0027】
ここで言う横軸の保全情報の項目とは、大別すると、配管系の構成部品ごとの配管仕様D1,点検項目D2、点検実績D3,並びに点検実績D4である。このうち配管仕様としては、部品番号D11,溶接点番号D12、配管番号D13,圧力D14,温度D15などを列挙し、この点検個所の点検項目D2としては劣化事象D21、点検項目D22、点検方法D23、各劣化事象に対する点検実施時期の前倒し点検可能回数D24、後ろ倒し点検可能回数D25、並びに点検計画を実施していない構成部品に対する点検抽出可否D26などを列挙する。
【0028】
点検実績D3としては、過去年度(n-1年)における実績D31と件名D32、本年度(n年)における実績D33と件名D34を記述している。この例では部品番号10について過去年度に実施し、部品番号8の一部について本年度に点検を実施したことが記録されている。
【0029】
点検計画D4としては、将来年度D41,D42(n+1年とn+2年)における予定D41a、D41b,件名D42a、D42b,足場モデルD42c、D42c、などを記述している。この例では部品番号9と8の一部について翌年度に実施し、翌翌年度に部品番号102とS01について点検を実施する予定であることが記録されている。
【0030】
図1の3次元情報格納部DB2には、配管系の3次元情報(CAD情報)が格納されている。すなわち、各配管系構成部品の位置座標や、構成部品間の距離、勾配、配管仕様である。
【0031】
図1の常設型足場モデル格納部DB3には、配管系の高所点検に必要ないくつかの足場寸法および点検スペースを有する3次元モデル情報が格納されている。ここで常設型足場とは、一般的な一定間隔に緊結部を備えた鋼管を支柱とし、手すりや筋交、足場板等を有するものである。常設型足場モデルの一例を
図3に示しているように、一般的な常設型足場モデルは横幅1000mm、縦幅2000mm、高さ1000mmを1単位として交換を支柱として配置し、この領域の床部分に足場を組むことで、点検スペースを確保する。
【0032】
上記した保全情報格納部DB1、3次元情報格納部DB2、常設型足場モデル格納部DB3の各データベースDBの情報を用いる前処理段階ST1の処理では、最初に3次元CAD-保全情報マッピング処理部S101が、保全情報格納部DB1と3次元情報格納部DB2に格納された情報を用いて、3次元CAD上にこれら配管系の構成部品ごとに保全情報の紐づけ処理を行い、かつ、3次元CAD上でそれらの保全情報をハイライト処理し、3次元CAD上で場所と保全情報を同時に視認可能とする。それらの処理は表示装置に表される。
【0033】
次に足場モデル表示処理部S102において、保全情報格納部DB1にある幾つかの点検回でのマッピングされた点検箇所部において、常設型足場モデル格納部DB3にある足場モデルを3次元CAD上に表示させる。これにより3次元CAD上では配管系の構成部品と保全情報のハイライト部と、足場モデル部が表示される。
【0034】
このとき足場モデルは点検スペース寸法を有していることを考慮する。このため点検スペース内点検箇所抽出部S103では、この配置された全ての足場モデルの点検スペース内にある当該点検回にて実施する配管系の点検対象部品以外の異なる点検回にて点検を計画している点検対象部品あるいは、保全情報格納部DB1にて点検計画が未作成の構成部品を抽出し、足場保全情報一次格納部DB4に、それら足場情報を含む保全情報を格納する。ここでの保全情報とは抽出された配管系の構成部品の位置情報および、点検計画年度、固有の足場番号、点検項目等を示す。なお、当該点検回と異なる点検回にて点検を計画している点検対象部品あるいは、保全情報格納部DB1にて点検計画が未作成の構成部品とは、今後に点検を行うべき構成部品というということができる。
【0035】
ちなみに
図2を参照すると、異なる点検回にて点検を計画している点検対象部品とは翌年計画の部品番号9及び8の一部、翌翌年に計画の部品番号102とS01であり、点検計画が未作成の構成部品とは7,6,101などである。
【実施例2】
【0036】
次に足場保全情報二次格納部DB6を形成するまでの点検個所最適化処理段階ST2について説明する。点検個所最適化処理段階ST2は、点検箇所最適化処理部S104と足場型式判断処理部S105を主たる処理機能としているが、実施例2ではこのうち点検箇所最適化処理S104について、
図4を参照して説明する。
【0037】
点検箇所最適化処理S104の詳細を示す
図4によれば、最初に点検箇所抽出処理部S107が足場保全情報格納部DB4を参照して、各点検回の構成部品に対する点検項目を抽出し、点検対象箇所数判断処理部S108において、あらかじめ1足場当たりの想定されうる理想の点検箇所数が設定された各々の足場単位で、それら理想の点検箇所数を満たすか否かを判断する。なお、理想の点検箇所数は任意の値を設定可能とする。
【0038】
ここで、1足場当たりの点検箇所数が多いということは、構築する足場が少なくてすむことを意味しており、1足場当たりの点検箇所数が少ないということは、構築する足場が多くなることを意味している。プラントの点検を行う場合に足場の構築に要する費用が無視できないことから、足場計画においては1足場当たりの点検箇所数が少ないように設計されることが望ましい。
【0039】
点検対象箇所数判断処理部S108の判断結果として点検箇所数を満たさない場合は、足場(点検)スペース変更可否判断処理部S109にて、点検スペース寸法を拡大した足場モデルの選択が可能か判断し、選択が可能である場合は、足場寸法変更処理部S111にて足場モデル情報を更新して更新情報を足場保全情報一次格納場所DB4格納し、再度、点検箇所抽出処理部S107での抽出処理を経て、点検対象箇所数判断処理にて、理想の点検箇所数を満たすかを判断する。
【0040】
なお、足場(点検)スペース変更可否判断処理部S109においては、点検スペースを拡大させたモデルを用いた場合、3次元CAD上での干渉が無い等の判断を行い、干渉が無い場合は、足場寸法変更処理部S111において点検スペースを拡大させたモデルにて変更処理を行う。
【0041】
これらの処理を繰り返し、全ての足場モデル情報において、点検スペース内の点検箇所数が基準値以上、あるいは、点検スペースの変更が不可である場合、これら変更点を含め点検計画時期変更処理部S110にて足場保全情報一次格納部DB4に情報が格納される。
【実施例3】
【0042】
実施例3では点検個所最適化処理段階ST2のうち足場型式判断処理S105について、説明する。足場型式判断処理S105では、移動式昇降型足場の採用について検討する。実施例3は、移動式足場設置検討システムとしての構成を示したものである。
【0043】
移動式昇降型足場とは、プラントの機器搬入口から点検箇所下方の床部まで車輪等にて移動可能な構造を有し、点検箇所の直下においては、点検作業足場面を高所にある点検箇所近傍まで油圧や機械動作を用いて昇降できる足場である。移動式昇降型足場モデル格納部DB5には、移動式昇降型足場のモデルを保有しており、移動式昇降型足場モデルはプラントの機器搬入口から点検箇所まで折りたたんだ状態で移動する状態での寸法および、足場面の昇降範囲の寸法、並びに点検スペース寸法情報を有する。
【0044】
移動式昇降型足場モデルの一例が
図5に示されており、このモデルは例えば
図5左側の高層用足場部分と右側の低層用足場部分で構成され、高層用足場部分は昇降スペース足場、点検スペースにより構成され、低層用足場部分は移動スペースとして利用される。
【0045】
これらの情報を基に
図1における足場型式判断処理部S105では、移動式昇降型足場モデルDB5の適用可否を判断する。ここでは、移動式昇降型足場モデルにおける折りたたまれた状態での移動スペースと、プラントの機器搬入口から点検箇所までの3次元CAD上でのルートスペースとを比較し、干渉物の個数と種類を抽出する。
【0046】
加えて、3次元CAD上で点検箇所下方床面において、移動式昇降型足場モデルの昇降スペース内に干渉物の個数と種類を抽出する。これら抽出される干渉物の種類および個数は、あらかじめ任意の理想とする干渉物個数との比較判断を行い、それらが理想とする干渉物個数未満であれば、移動式昇降型足場の情報を、それらが理想とする干渉物個数以上であれば、常設型足場モデルの情報を足場保全情報二次格納部DB6に記憶する。
【0047】
なお、理想とする干渉物個数は任意の値を設定可能とし、また、これら干渉物があらかじめ設定された回避不可能な重要機器等であるかを判断し、それと干渉する場合は、干渉物の個数に関わらず常設型足場モデルとする判断を行う。
【実施例4】
【0048】
次に最終的に作成した点検計画書を点検計画情報格納DB10に格納するまでの点検計画平準化処理段階ST3について説明する。点検計画平準化処理段階ST3は、点検計画平準化確認処理部S106と点検計画書作成処理部S114を主たる処理機能としているが、実施例4ではこのうち点検計画平準化確認処理部S106について
図6、
図7を参照して説明する。
【0049】
図6の処理では、足場総数偏差確認処理部S112において、足場保全情報二次格納部DB6に格納された情報を基に、各点検回における足場総数から、それらの平均足場総数を算出し、あらかじめ設定した任意の偏差数内に各点検回の足場総数が収まっているかを判断する。ここで各回の足場総数が任意の偏差数内に収まっているということは、各点検回の時に、足場を組むことに要する金額が均等になっていることを意味している。これにより年度ごとの点検予算が、特定年度に集中してしまうことを阻止できる。なお点検予算の管理における管理期間は、半年単位、年単位など適宜のものがあるので、一般的には点検計画の単位期間における費用のばらつきを平準化することになる。
【0050】
その判断の中で、とある偏差数を超える点検回における全ての足場モデルにおいて、あらかじめ設定した劣化事象毎の各点検における任意の前倒し点検回数あるいは、任意の後ろ倒し点検回数を基に、足場計画変更処理部S113にて足場モデル毎に前倒し可能な点検を有する足場モデルは前倒し、あるいは、後ろ倒し可能な点検を有する足場モデルは後ろ倒し処理を行い、それら情報を足場保全情報二次格納部DB6に格納する。なお、前倒し点検回数あるいは、後ろ倒し点検回数について、
図2に例示した保全情報格納部DB1を参照する。
【0051】
次に、足場総数偏差確認処理部S112にて再度偏差数内に収まっているかを確認し、これら偏差数内に収まるまで繰り返し処理を行う。全ての点検回の足場総数が、平均足場数からの任意の偏差数内に収まっていることが確認できた場合、足場モデル格納DB7、足場総数格納部DB8、見直し後保全情報格納部DB9にそれぞれの情報を格納する。
【0052】
図7は、見直し後保全情報格納部DB9の構成例を示している。この縦横の項目は
図2の保全情報格納部DB1と同じである。この例では、見直し後情報として翌年点検計画欄D41について部品番号7の2件が翌翌年からの前倒し処理の形で追加されている。また翌翌年点検計画欄D42について部品番号101の2件が翌年からの後ろ倒し処理の形で追加され、さらに部品番号6の2件が新規計画の形で追加されている。このうち、部品番号6の新規計画による2件が
図4の点検個所最適化処理により採用されたものであり、部品番号101の2件が
図6の点検計画平準化確認処理により採用されたものである。
【実施例5】
【0053】
実施例5では点検計画平準化処理段階ST3のうち点検計画書作成処理部S114について
図8を参照して説明する。
【0054】
点検計画書作成処理部S114では、足場総数偏差確認処理部S112にて求めた、足場モデル格納部DB7、足場総数格納部DB8、見直し後保全情報格納部DB9を基に、各点検回における足場数および、それら個々の足場モデルの点検箇所数、点検方法を纏め、配管系における点検計画書を作成し、点検計画情報格納部DB10に格納する。その点検計画書の一例を
図8に示す。
【0055】
図8の点検計画書のまとめ事例によれば、点検年度ごとの点検内容が、番号、配管番号D13,部品名D14、部品番号D11、劣化事象D21、点検項目D22、点検方法D23、足場番号、エリア、件名、備考の各項目について示されている。なお配管番号D13,部品名D14、部品番号D11、劣化事象D21、点検項目D22、点検方法D23の各項目は、当初入力された保全情報格納部DB1に記述の情報であり、これに対し足場番号、エリア、件名、備考の各項目は、点検個所最適化処理段階ST2および点検計画平準化処理段階ST3の処理による新規追加情報である。
【符号の説明】
【0056】
DB1:保全情報格納部
DB2:3次元情報格納部
DB3:常設型足場モデル格納部
DB4:足場保全情報一次格納部
DB5:移動式昇降型足場モデル格納部
DB6:足場保全情報二次格納部
DB7:足場モデル格納部
DB8:足場総数格納部
DB9:見直し後保全情報格納部
DB10:点検計画情報格納部
S101:3次元CAD-保全情報マッピング処理部
S102:足場モデル表示処理部
S103:点検スペース内点検箇所抽出部
S104:点検箇所最適化処理部
S105:足場型式判断処理部
S106:点検計画平準化確認処理部
S107:点検箇所抽出処理部
S108:点検対象箇所数判断処理部
S109:足場(点検)スペース変更可否判断処理部
S110:点検計画時期変更処理部
S111:足場寸法変更処理部
S112:足場総数偏差確認処理部
S113:足場計画変更処理部
S114:点検計画書作成処理部