(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池、及び、リチウムイオン電池の劣化判定方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240614BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240614BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240614BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240614BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20240614BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240614BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M10/48 P
H01M10/48 Z
H01M4/66 A
H01M10/42 P
H01M50/184 Z
H01M10/48 A
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2021128965
(22)【出願日】2021-08-05
(62)【分割の表示】P 2020049421の分割
【原出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019053159
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019163176
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】東 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】那須 浩太郎
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-335352(JP,A)
【文献】特開2007-242593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0216867(US,A1)
【文献】特開2017-224451(JP,A)
【文献】特開平10-106531(JP,A)
【文献】特開2018-125213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 - 10/48
H01M 4/66
H01M 10/052
H01M 50/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体、正極活物質層
、負極活物質層及び負極集電体
を有する単電池を
備えたリチウムイオン電池であって、
前記正極集電体及び前記負極集電体の間に配置され、前記正極活物質層
、及び前記負極活物質層を封止する枠部材を有し、
前記枠部材
が配置される領域内には、単電池内の状態を検出する電子部品が配置されていることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項2】
前記電子部品は、単電池内の所定部位における温度、電圧、電流又はアコースティックエミッションを測定するセンサである請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記単電池の外周に設けられた枠部材内の複数箇所に電子部品がそれぞれ配置されており、
単電池内の異なる部位における状態を個別に検出する請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記電子部品は前記負極集電体及び前記正極集電体と電気的に接続されており、リチウムイオン電池からの電力供給を受ける請求項1~3のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記負極集電体及び前記正極集電体は樹脂集電体であり、前記負極集電体及び前記正極集電体が前記電子部品に直接結合して電気的に接続されている請求項4に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記枠部材には電子部品を配置するための貫通穴が設けられており、前記貫通穴に前記電子部品が配置されていて、前記枠部材の厚さと前記電子部品の高さが略同一である請求項1~5のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記枠部材内に配線基板が設けられており、前記電子部品は前記配線基板に実装されている請求項1~5のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記配線基板には前記電子部品に供給する電流及び/又は電圧を制御するための他の電子部品が実装されている請求項7に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記電子部品は、単電池内の状態を示す信号を単電池の外部に無線出力する請求項1~8のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
前記単電池が複数積層された積層電池であり、
前記積層電池を構成する前記単電池ごとの状態を前記枠部材内に配置された前記電子部品により個別に検出する請求項1~9のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項11】
前記単電池が複数積層された積層電池が複数組み合わせられた電池モジュールであり、
前記電池モジュールを構成する前記積層電池ごとの状態を前記枠部材内に配置された前記電子部品により個別に検出する請求項1~9のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項12】
前記枠部材内に配置された前記電子部品により単電池内の状態の検出を行う、行わないの切り替えをするスイッチを有し、
外部からの信号が与えられた場合に前記スイッチを切り替えて単電池内の状態の検出を行う請求項1~11のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のリチウムイオン電池を用いたリチウムイオン電池の劣化判定方法であり、
前記枠部材内に配置された前記電子部品は、充電時の電位推移を計測するためのセンサであり、
上記センサにより充電時の電位推移と所要時間をモニタリングし、通常状態よりも短時間で電位上昇が生じた場合にそのセンサにより計測された単電池内の部位において劣化が生じていると判定することを特徴とするリチウムイオン電池の劣化判定方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載のリチウムイオン電池を用いたリチウムイオン電池の劣化判定方法であり、
前記単電池の外周に設けられた枠部材内の複数箇所に電子部品がそれぞれ配置されており、
前記電子部品は電位を測定するセンサであり、
単電池内の異なる部位における電位ばらつきを検出し、電位ばらつきが所定値を超えた場合に当該単電池において劣化が生じていると判定することを特徴とするリチウムイオン電池の劣化判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池、及び、リチウムイオン電池の劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(二次)電池は、高容量で小型軽量な二次電池として、近年様々な用途に多用されている。
リチウムイオン電池として、特許文献1には、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体が順に積層されてなり、電解液を含む単電池を有するリチウムイオン電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン電池はその使用過程において局所的に不具合が発生してその機能が急激に低下することがある。
そのような場合に、リチウムイオン電池のどの部分に不具合が生じているのかを調べることは容易ではないため、不具合が生じた電池を再利用することはせずに電池そのものを交換することが多く行われていた。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、リチウムイオン電池内の状態を調べることができ、不具合が生じている箇所を特定するために適した構成を有しているリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体が順に積層されてなる単電池を有するリチウムイオン電池であって、上記正極集電体及び上記負極集電体の間に配置され、上記正極活物質層、上記セパレータ、及び上記負極活物質層を封止する枠部材を有し、上記枠部材内には、単電池内の状態を検出する電子部品が配置されていることを特徴とするリチウムイオン電池;上記リチウムイオン電池を用いたリチウムイオン電池の劣化判定方法であり、上記枠部材内に配置された上記電子部品は、充電時の電位推移を計測するためのセンサであり、上記センサにより充電時の電位推移と所要時間をモニタリングし、通常状態よりも短時間で電位上昇が生じた場合にそのセンサにより計測された単電池内の部位において劣化が生じていると判定することを特徴とするリチウムイオン電池の劣化判定方法;上記リチウムイオン電池を用いたリチウムイオン電池の劣化判定方法であり、上記単電池の外周に設けられた枠部材内の複数箇所に電子部品がそれぞれ配置されており、上記電子部品は電位を測定するセンサであり、単電池内の異なる部位における電位ばらつきを検出し、電位ばらつきが所定値を超えた場合に当該単電池において劣化が生じていると判定することを特徴とするリチウムイオン電池の劣化判定方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、単電池が有する枠部材内に電子部品を配置することにより、単電池内の状態を検出することができ、その結果、リチウムイオン電池内で不具合が生じている箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、単電池としてのリチウムイオン電池の構成の例を模式的に示す、一部切り欠き斜視図である。
【
図2】
図2は、枠部材内に電子部品が配置されている様子を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、単電池としてのリチウムイオン電池の構成の別の一例を模式的に示す、一部切り欠き斜視図である。
【
図4】
図4は、枠部材内に発光素子が埋め込まれて配置されている様子を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すリチウムイオン電池において負極集電体を除いた状態を上面から模式的に示した上面図である。
【
図6】
図6は、枠部材に配線基板を設けたリチウムイオン電池において負極集電体を除いた状態を上面から模式的に示した上面図である。
【
図7】
図7は、積層電池の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、積層電池を構成する単電池の枠部材内に発光素子が埋め込まれて配置されている様子の一例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、積層電池を構成する単電池の枠部材内に発光素子が埋め込まれて配置されている様子の別の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0010】
本発明のリチウムイオン電池は、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体が順に積層されてなる単電池を有するリチウムイオン電池であって、上記正極集電体及び上記負極集電体の間に配置され、上記正極活物質層、上記セパレータ、及び上記負極活物質層を封止する枠部材を有し、上記枠部材内には、単電池内の状態を検出する電子部品が配置されていることを特徴とする。
【0011】
図1は、単電池としてのリチウムイオン電池の構成の例を模式的に示す、一部切り欠き斜視図である。
図1には、枠部材に電子部品が配置されていない部位を切り欠いて示している。
【0012】
図1に示す、リチウムイオン電池である単電池1は、略矩形平板状の正極集電体7の表面に正極活物質層5が形成された正極2と、同様に略矩形平板状の負極集電体9の表面に負極活物質層6が形成された負極3とが、同様に略平板状のセパレータ4を介して積層されて構成され、全体として略矩形平板状に形成されている。この正極と負極とがリチウムイオン電池の正極及び負極として機能する。
【0013】
単電池1は、正極集電体7及び負極集電体9の間に配置され、正極活物質層5、セパレータ4及び負極活物質層6を封止する枠部材8を有する。
図1に示す単電池1では、枠部材8は、環状の枠部材であり、正極集電体7及び負極集電体9の間にセパレータ4の周縁部を固定している。
図1には、枠部材8内に電子部品10が配置されている様子を、単電池の一部を透過させて示している。
【0014】
正極集電体7及び負極集電体9は、枠部材8により所定間隔をもって対向するように位置決めされているとともに、セパレータ4と正極活物質層5及び負極活物質層6も枠部材8により所定間隔をもって対向するように位置決めされている。
【0015】
正極集電体7とセパレータ4との間の間隔、及び、負極集電体9とセパレータ4との間の間隔はリチウムイオン電池の容量に応じて調整され、これら正極集電体7、負極集電体9及びセパレータ4の位置関係は必要な間隔が得られるように定められている。
【0016】
本発明のリチウムイオン電池では、単電池内の状態を検出する電子部品が枠部材内に配置されている。
従来のリチウムイオン電池では枠部材内に電子部品は配置されておらず、電子部品を配置する場所は単電池の外部しか考えられていなかった。
それに対し、本発明のリチウムイオン電池では枠部材内に電子部品を配置することによって単電池内の状態を検出することができる。枠部材内に電子部品を配置することで電子部品を配置するためのスペースを単電池外に設ける必要がなく、リチウムイオン電池全体の省スペース化を図ることができる。
また、単電池内に電子部品が配置されることで単電池に近い位置での状態を検出することができるので、単電池内に不良部位が生じた場合に不良が生じた場所を特定する精度が向上する。
【0017】
以下に、枠部材内に配置される電子部品について説明する。
図2は、枠部材内に電子部品が配置されている様子を模式的に示す断面図である。
図2は、
図1のA-A線断面図にも相当する。
【0018】
図2には枠部材8内に電子部品10が配置されていることを示している。
枠部材8を構成する材料としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0019】
電子部品10は、単電池内の状態を検出するための電子部品である。
例えば、単電池内の所定部位における温度、電圧、電流又はアコースティックエミッションを測定するセンサであることが好ましい。
また、単電池内の状態を示す信号を単電池の外部に無線出力することができる電子部品であることが好ましい。
電子部品がセンサであると単電池内の状態を検出することができ、無線出力することができる電子部品であると、検出した状態を示す信号を無線出力して電池外部で測定結果を受信することができ、単電池を解体することなく単電池内の状態を知ることができる。
【0020】
単電池内の温度、電圧又は電流を測定することで、単電池内の一部でショート等の不具合が生じた場合に引き起こされる局所的な温度上昇、電流値の上昇、電圧の低下等を検出することができる。
また、アコースティックエミッションを測定することで電池内に破損や変形が生じているかを検出することができる。
【0021】
電子部品としては、受動素子、能動素子を使用することができる。
これらの素子としては、コンデンサ、インダクタ、抵抗、トランジスタ、ダイオード、IC、LSI等の任意の素子を使用することができる。
また、無線出力することができる電子部品である場合、アンテナ、フィルタ、増幅器、発振器等の部品であってもよく、これらの部品がモジュール化された無線通信モジュールであってもよく、センサー一体型モジュールであってもよい。
【0022】
また、枠部材内に配置された電子部品により単電池内の状態の検出を行う、行わないの切り替えをするスイッチを有し、外部からの信号が与えられた場合にスイッチを切り替えて単電池内の状態の検出を行うようになっていてもよい。
外部からの信号が与えられた場合のみ単電池内の状態の検出を行うようにしておくことによって、電子部品による電力消費を抑えることができる。
また、上記構成の場合、電子部品は外部からの信号を受信するためのアンテナ素子を備えていることが好ましい。
外部からの信号としては、単電池内の状態の検出を行うように指令する信号、単電池内の状態の検出を止めるように指令する信号等が挙げられる。
【0023】
電子部品は負極集電体及び正極集電体と電気的に接続されており、リチウムイオン電池からの電力供給を受けることができるようになっていることが好ましい。
電子部品が負極集電体及び正極集電体と電気的に接続されていると、リチウムイオン電池からの電力供給を受けて作動することができる。電子部品を作動させるための電源及び配線を設ける必要が無いため簡便な構成とすることができる。
【0024】
また、電子部品が負極集電体及び正極集電体と電気的に接続される場合、負極集電体及び正極集電体は樹脂集電体であり、負極集電体及び正極集電体が電子部品に直接結合して電気的に接続されていることが好ましい。
樹脂集電体を使用する場合、樹脂集電体と電子部品の電極を接触させ、樹脂集電体を加熱して樹脂を軟化させることにより、樹脂集電体と電子部品を直接結合させることができる。すなわち、樹脂集電体を使用することによって半田等の他の接合材を集電体と電子部品の間に介することなく電気的な接続を行うことができる。
【0025】
図2では、枠部材8内に設けられた電子部品10の外部電極が正極集電体7及び負極集電体9と接触していることを示している。すなわち、電子部品10と正極集電体7及び負極集電体9は電気的に接続されている。
【0026】
また、枠部材には電子部品を配置するための貫通穴が設けられており、貫通穴に電子部品が配置されていて、枠部材の厚さと電子部品の高さが略同一であることが好ましい。
貫通穴に電子部品を配置するようにすると枠部材内に電子部品を配置するのが容易であり、枠部材の厚さと電子部品の高さを略同一にすることにより、電子部品を正極集電体及び負極集電体と接触させ、電子部品と正極集電体及び負極集電体を電気的に接続させることができる。
図2では、枠部材8には貫通穴18が設けられていて、貫通穴18に電子部品10が配置されている状態を示している。また、枠部材の厚さと電子部品の高さは略同一になっている。
【0027】
また、枠部材内に配置される電子部品は、光信号を出力する発光素子であってもよい。
発光素子を枠部材内に配置する場合、発光素子からの光が単電池の外に向くように、発光素子が枠部材の側面に露出する形で枠部材内に埋め込まれていることが好ましい。
このような形態であると、単電池内の状態を示す信号を光信号の形で単電池の外部に無線出力することができる。
【0028】
図3は、単電池としてのリチウムイオン電池の構成の別の一例を模式的に示す、一部切り欠き斜視図である。
図4は、枠部材内に発光素子が埋め込まれて配置されている様子を模式的に示す断面図である。
図3のB-B線断面図にも相当する。
【0029】
図3及び
図4に示す単電池31においては、発光素子30が枠部材8の側面に露出する形で枠部材8内に埋め込まれている。
発光素子30は、単電池31から取得した電気信号を光信号に変換する。
例えば、単電池31における正極集電体7と負極集電体9の間の電圧を測定し、電圧に対応する光信号パターンで発光することによって、単電池の電圧を検出して光信号の形で単電池の外部に無線出力することができる。電圧を測定し、電圧に対応する光信号パターンで発光素子を発光させるために、発光基板が設けられていてもよい。
発光基板には、発光素子30の他に、正極集電体と負極集電体の間の電圧を測定する電圧測定端子と、電圧測定端子により測定された電圧に応じて発光素子30を所定の光信号パターンで発光させる制御を行う制御素子が設けられていることが好ましい。
【0030】
発光基板には負極集電体及び正極集電体と電気的に接続されており、発光素子及び制御素子が単電池からの電力供給を受けることができるようになっていることが好ましい。
【0031】
ここで、発光基板の制御素子に短絡が生じた場合に、発光素子に電流が常に流れた状態となってしまい発光素子が光ったままになることがあり得る。光ったままの発光素子があると他の発光素子からの信号が一切判別できなくなるため問題がある。
このような場合を想定して、制御素子に短絡等の故障が生じた場合に異常な信号の発信を抑制する目的で電流を遮断する素子(ヒューズ)が設けられていてもよい。
【0032】
ヒューズの抵抗が高く、かつ発光素子の発光電圧が高いと、正常時であっても発光素子を光らせることができない。そのため、ヒューズと発光素子の仕様をそれぞれ調整することによって、通常の状態では発光素子を適切に発光させることができるようにし、かつ、異常状態では発光素子への電流を遮断して異常な信号の発信を抑制するようにする。
【0033】
電圧に応じた光信号パターンの例としては、電圧測定端子により測定された電圧が高いほどパルス間隔を狭くして発光のON/OFが切り替わるパターンや、単位時間当たりの発光時間が長くなるパターン等が挙げられる。
【0034】
また、光信号パターンは、ソフトウェアでのデコードが可能なように設計されていることが好ましい。具体的には、下記式(1)で定められるpにつき、pが1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.75以上であることが特に好ましい。
p=log10{周期/(最長パルスの発信開始~発信終了までのパルス長さ×単電池の積層数)} (1)
【0035】
また、発光素子から発光する光の色が2色以上用いられていてもよい。この場合、異なる色を発する(異なる波長の光を発する)発光素子を2種類以上用いる。
発光素子から発光する光の色を2色以上とする場合、受光素子も発光素子の色の数に対応して2種類以上設ける必要がある。
【0036】
発光素子から発光する光の色を2色以上とすることで、特定の信号の分離を容易にすることができる。特定の信号とは、電池に異常(異常高温、異常高電圧)があった際に出力される信号を意味する。
例えば、単電池の電圧を測定する通常の信号を出力する光の色と、電池に異常(異常高温、異常高電圧)があった際に出力する光の色を異なる色とすることで、信号が混信せず、重要な情報(異常状態であるという情報)を正確に送受信できる。
【0037】
光の色を2色以上とする、とは、送受信する2種類以上の光の波長が分離していることを意味する。
例えば波長A、波長Bである2色を通信に使う場合、波長A(B)の発光に使う発光素子が波長B(A)の光を一定以上の強度で出さないようにすればよい。
具体的には、波長Aの発光に使う発光素子の波長Bでの強度が、波長Aの強度の1/nである、といった指標を使用して、2種類以上の光の波長が分離していることを定めることができる。上記nの値は2種類以上の光の波長や発光素子、受光素子の仕様により任意に定めることができる。
【0038】
上記には、単電池の電圧を測定し、電圧に対応する光信号パターンを出力する例について説明したが、単電池の特性として電圧以外の特性を測定してもよい。例えば、単電池の温度を測定して温度に対応する光信号パターンを出力するようにしてもよい。
【0039】
単電池の外部に出力された光信号パターンは、単電池の外部に設けられ、単電池とは絶縁状態にある受光素子(図示しない)により受信される。受光素子により光信号を電気信号に逆変換することで単電池内の状態を示す電気信号を得ることができる(フォトカプラと同様の機構)。
発光素子としては発光ダイオード等、受光素子としてはフォトトランジスタ等が挙げられる。
発光素子と受光素子が無線状態であり、電気的に絶縁されているため安全性の観点から好ましい。例えば、単電池内回路又は単電池外回路のどちらかで異常電圧が発生した場合(スイッチON/OFFなどに伴うパルス的な高電圧など)、その電圧がもう片方に伝わると、対の回路が破損する恐れがある。電気的に絶縁状態であるとこれらの破損を回避できるため好ましい。
【0040】
本発明のリチウムイオン電池では、単電池の外周に設けられた枠部材内の複数箇所に電子部品がそれぞれ配置されており、単電池内の異なる部位における状態を個別に検出することができるようになっていることが好ましい。
図5は、
図1に示すリチウムイオン電池において負極集電体を除いた状態を上面から模式的に示した上面図である。
図5には、枠部材8の内部の6カ所に電子部品10が設けられていることを示している。
この6カ所に設けられた電子部品10のそれぞれにつき、単電池内の状態を示す指標を個別に検出させ、ある特定の電子部品から得られた指標のみに異常値が見られたときに、その電子部品の近傍で不良が発生したことを推定することができる。
すなわち、単電池内の不良発生の原因特定を容易にすることができる。
単電池の枠部材内に設ける電子部品の数は特に限定されるものではなく、単電池の大きさや枠部材の大きさ、電子部品の大きさ等を考慮して任意に設定することができる。
また、枠部材内の複数箇所に電子部品を設ける場合に、電子部品の種類はすべて同じであってもよく、異なる電子部品の組合せであってもよい。
【0041】
本発明のリチウムイオン電池において、単電池の上面視した面積は、
図5において枠部材8の内側の面積、すなわち負極活物質層及び正極活物質層の主面の面積として定める。この面積が単電池の有効面積といえ、この面積が広いほど電池容量が大きい電池であるといえる。
単電池の上面視した面積が広くなると、単電池内部での特性のばらつきが生じやすくなるので、単電池の外周に設けられた枠部材内の複数箇所に電子部品をそれぞれ配置して単電池内の状態を示す指標を個別に検出させることが特に有効となる。
例えば、単電池の上面視した面積は600cm
2以上であることが好ましい。
また、単電池の上面視した面積と電子部品を配置する数の関係として、単電池の上面視した面積100cm
2あたりに1~2個の電子部品を配置することが好ましい。
【0042】
本発明のリチウムイオン電池では、枠部材内に配線基板が設けられており、電子部品は配線基板に実装されていることが好ましい。
また、配線基板には電子部品に供給する電流及び/又は電圧を制御するための他の電子部品が実装されていることも好ましい。
枠部材に配線基板を設け、電子部品を配線基板に実装することにより、複数の機能を組み合わせて様々な測定や制御を行うことができる。
また、電子部品の仕様ごとに好ましい電流及び/又は電圧が異なるが、リチウムイオン電池から直接供給される電流及び/又は電圧が電子部品の仕様に適合しない場合がある。そのような場合に電子部品に供給する電流及び/又は電圧を制御するための他の電子部品を配線基板に実装して設けることにより、様々な電子部品を使用することができる。
【0043】
図6は、枠部材に配線基板を設けたリチウムイオン電池において負極集電体を除いた状態を上面から模式的に示した上面図である。
図6に示す単電池11では、枠部材8に配線基板21が設けられており、電子部品20は配線基板21に実装されている。
図6には電子部品20としてはアンプ、IC等を想定した電子部品を描いており、電流及び/又は電圧を制御するための他の電子部品22としてはチップ抵抗を想定した電子部品を描いている。
実際に配線基板21に実装する電子部品の種類としてはこれらに限定されるものではない。また、複数の電子部品を組み合わせたモジュールを枠部材に設ける場合も、モジュールに配線基板が含まれる場合は、枠部材に配線基板を設ける場合の一態様に含まれる。
【0044】
以下に、単電池を構成する各構成要素の好ましい態様について説明する。
正極活物質層には正極活物質が含まれる。
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn2O4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMaM’bM’’cO2(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0045】
正極活物質は、導電助剤及び被覆用樹脂で被覆された被覆正極活物質であることが好ましい。
正極活物質の周囲が被覆用樹脂で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。
【0046】
導電助剤としては、金属系導電助剤[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、炭素系導電助剤[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物として用いられてもよい。
なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、炭素系導電助剤及びこれらの混合物であり、さらに好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及び炭素系導電助剤であり、特に好ましくは炭素系導電助剤である。
またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料[好ましくは、上記した導電助剤のうち金属のもの]をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0047】
導電助剤の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電助剤として実用化されている形態であってもよい。
【0048】
被覆用樹脂と導電助剤の比率は特に限定されるものではないが、電池の内部抵抗等の観点から、重量比率で被覆用樹脂(樹脂固形分重量):導電助剤が1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。
【0049】
被覆用樹脂としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0050】
また、正極活物質層は、被覆正極活物質に含まれる導電助剤以外にも導電助剤を含んでもよい。
導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0051】
正極活物質層は、正極活物質を含み、正極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。
ここで、非結着体とは、正極活物質同士が、互いに結合していないことを意味し、結合とは不可逆的に正極活物質同士が固定されていることを意味する。
【0052】
正極活物質層には、粘着性樹脂が含まれていてもよい。
粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。
なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着材として用いられる溶液乾燥型の電極バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。
従って、溶液乾燥型の電極バインダー(結着材)と粘着性樹脂とは異なる材料である。
【0053】
正極活物質層の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0054】
負極活物質層には負極活物質が含まれる。
負極活物質としては、公知のリチウムイオン電池用負極活物質が使用でき、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
【0055】
また、負極活物質は、上述した被覆正極活物質と同様の導電助剤及び被覆用樹脂で被覆された被覆負極活物質であってもよい。
導電助剤及び被覆用樹脂としては、上述した被覆正極活物質と同様の導電助剤及び被覆用樹脂を好適に用いることができる。
【0056】
また、負極活物質層は、被覆負極活物質に含まれる導電助剤以外にも導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0057】
負極活物質層は、正極活物質層と同様に、負極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。また、正極活物質層と同様に、粘着性樹脂が含まれていてもよい。
【0058】
負極活物質層の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0059】
正極集電体及び負極集電体(以下まとめて単に集電体ともいう)を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等が挙げられる。
これらの材料のうち、軽量化、耐食性、高導電性の観点から、正極集電体としてはアルミニウムであることが好ましく、負極集電体としては銅であることが好ましい。
【0060】
また、集電体は、導電性高分子材料からなる樹脂集電体であることが好ましい。
集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。
集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
【0061】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、導電性高分子や、樹脂に必要に応じて導電剤を添加したものを用いることができる。
導電性高分子材料を構成する導電剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0062】
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0063】
セパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。
【0064】
正極活物質層及び負極活物質層には電解液が含まれる。
電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液を使用することができる。
【0065】
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiN(FSO2)2、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2及びLiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはイミド系電解質[LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2及びLiN(C2F5SO2)2等]及びLiPF6である。
【0066】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0067】
電解液の電解質濃度は、1~5mol/Lであることが好ましく、1.5~4mol/Lであることがより好ましく、2~3mol/Lであることがさらに好ましい。
電解液の電解質濃度が1mol/L未満であると、電池の充分な入出力特性が得られないことがあり、5mol/Lを超えると、電解質が析出してしまうことがある。
なお、電解液の電解質濃度は、リチウムイオン電池用電極又はリチウムイオン電池を構成する電解液を、溶媒などを用いずに抽出して、その濃度を測定することで確認することができる。
【0068】
本発明のリチウムイオン電池は、単電池が複数積層された積層電池であり、積層電池を構成する単電池ごとの状態を枠部材内に配置された前記電子部品により個別に検出するようになっているものであってもよい。
【0069】
図7は、積層電池の一例を模式的に示す断面図である。
図7には、
図1に示す単電池1が4つ積層された積層電池101を示している。
積層電池101では、隣り合う単電池1の負極集電体9の上面と正極集電体7の下面が隣接するように直列に積層されている。この積層電池101は容器120に収納されている。
【0070】
容器120の下面には正極引出部107が設けられ、容器120の上面には負極引出部109が設けられる。
正極引出部107は最下部の単電池1の正極集電体7と電気的に接続されており、負極引出部109は最上部の単電池1の負極集電体9と電気的に接続されている。
【0071】
単電池1の枠部材8にはそれぞれ電子部品10が配置されている。
図7では、断面図において電子部品10が左右交互に並んでいる形態のものを示しているが、各単電池における電子部品の配置位置は積層電池を構成する他の単電池と同じ位置であってもよく異なっていてもよい。
【0072】
各単電池の枠部材内には電子部品が配置されているので各単電池内の状態を個別に検出することができる。そのため、積層電池の使用時に不良が発生した場合に、どの単電池に不具合が生じているのかを特定することができる。そして、不具合が生じている単電池のみを交換すれば積層電池の大部分を活かしたまま、不良が発生した積層電池を再利用することができる。
【0073】
積層電池においても、単電池の枠部材内に配置される電子部品は、光信号を出力する発光素子であってもよい。
単電池の枠部材に配置される電子部品が発光素子である場合の例は、
図3及び
図4を参照して説明した通りとすることができる。
【0074】
また、積層電池を構成する各単電池の枠部材内に発光素子が配置される場合には、積層電池の側面に、発光素子からの光信号が導入される光導波路を設けることが好ましい。
そして、積層電池及び光導波路を収容する容器を設けて、光導波路の一端がその外に出るようにして、容器の外に出た光導波路の一端から導出される光信号を受光部で受光するようにしてもよい。
【0075】
図8は、積層電池を構成する単電池の枠部材内に発光素子が埋め込まれて配置されている様子の一例を模式的に示す断面図である。
図8に示す積層電池102を構成する単電池31においては、発光素子30が枠部材8の側面に露出する形で枠部材8内に埋め込まれている。
積層電池102の側面に、発光素子30からの光信号が導入される光導波路130が設けられている。光導波路130には各単電池31の各発光素子30からの光信号が導入される。
積層電池102と光導波路130は容器120に収容されている。但し、光導波路130の一端は容器120の外に出るようになっていて、その一端から導出される光信号が受光素子141で受光されるようになっている。
【0076】
受光素子141では光信号を電気信号に逆変換することで積層電池に含まれる単電池内の状態を示す電気信号を得ることができる。
【0077】
図9は、積層電池を構成する単電池の枠部材内に発光素子が埋め込まれて配置されている様子の別の一例を模式的に示す断面図である。
図9に示す積層電池103を構成する単電池31においても、発光素子30が枠部材8の側面に露出する形で枠部材8内に埋め込まれている。
積層電池103の側面には、発光素子30毎に受光素子142が設けられている。
各受光素子142では信号を電気信号に逆変換することで積層電池に含まれる単電池内の状態を示す電気信号を得る。
積層電池103と受光素子142は容器120に収容されている。但し、受光素子142と接続された配線143の一端は容器120の外に出るようになっていて、配線143によって容器120の外に電気信号が出力されるようになっている。
【0078】
図8及び
図9を参照して説明したこれらの積層電池の場合でも、単電池の枠部材内に配置される電子部品が光信号を出力する発光素子であると、発光素子と受光素子が無線状態となる。発光素子と受光素子は電気的に絶縁されているため安全性の観点から好ましい。
【0079】
本発明のリチウムイオン電池は、単電池が複数積層された積層電池が複数組み合わせられた電池モジュールであり、電池モジュールを構成する積層電池ごとの状態を枠部材内に配置された電子部品により個別に検出するようになっているものであってもよい。
【0080】
リチウムイオン電池が、積層電池が複数組み合わせられた電池モジュールである場合も、単電池の枠部材内には電子部品が配置されているので各単電池内の状態を個別に検出することができる。そのため、電池モジュールの使用時に不良が発生した場合に、どの積層電池のどの単電池に不具合が生じているのかを特定することができる。そして、不具合が生じている単電池のみを交換すれば電池モジュールの大部分を活かしたまま、不良が発生した電池モジュールを再利用することができる。
【0081】
図8に示す積層電池102における受光素子141の先、及び、
図9に示す積層電池103における配線143の先に送信される信号は、積層電池の外側にあるハードウエア装置によって処理される。当該ハードウエア装置はバッテリーマネジメントシステム(BMS)の一部として機能するものであり、ハードウエア装置と積層電池は分離可能となっている。
一般的にハードウエア装置はその耐久年数が10年程度に設定されているが、積層電池は使用の方法によってはさらに長期間にわたって使用することができる。そのため、積層電池とハードウエア装置が分離可能であると、ハードウエア装置の耐久年数が経過した際に、積層電池を分解せずにハードウエア装置だけを交換して積層電池を引き続き使用することができる。このようにすることによってバッテリーマネジメントシステム全体の長寿命化を図ることができる。
【0082】
次に、本発明のリチウムイオン電池の使用方法の一例である、本発明のリチウムイオン電池の劣化判定方法につき説明する。
本発明のリチウムイオン電池を用いた本発明のリチウムイオン電池の劣化判定方法では、枠部材内に配置された電子部品は、充電時の電位推移を計測するためのセンサであり、センサにより充電時の電位推移と所要時間をモニタリングし、通常状態よりも短時間で電位上昇が生じた場合にそのセンサにより計測された単電池内の部位において劣化が生じていると判定する。
【0083】
本発明のリチウムイオン電池において枠部材内に配置された電子部品が充電時の電位推移を計測するためのセンサであると、単電池内の所定部位における充電時の電位推移と所要時間をモニタリングすることができる。
充電時においては電流を一定にするので、電位上昇の速度が速ければ単電池の容量が小さくなっている、すなわち単電池が劣化していることを意味する。
【0084】
とくに、本発明のリチウムイオン電池が積層電池である場合には、枠部材内に配置された電子部品により単電池ごとに充電時の電位推移をモニタリングして、電位上昇の速度が速い単電池が特定された場合に、その単電池が特に劣化の進んでいる状態であることを特定することができる。
また、本発明のリチウムイオン電池が電池モジュールである場合も、枠部材内に配置された電子部品により単電池ごと又は積層電池ごとに充電時の電位推移をモニタリングして、電位上昇の速度が速い単電池又は積層電池が特定された場合に、その単電池又は積層電池が特に劣化の進んでいる状態であることを特定することができる。
【0085】
例えば、通常状態において電位上昇が生じる時間を100%とした際に、電位上昇が生じる時間が70%以下となった際に、単電池が劣化しているものと判断できる。
【0086】
次に、本発明のリチウムイオン電池の使用方法の別の一例である、本発明のリチウムイオン電池の劣化判定方法につき説明する。
本発明のリチウムイオン電池を用いた本発明のリチウムイオン電池の劣化判定方法では、単電池の外周に設けられた枠部材内の複数箇所に電子部品がそれぞれ配置されており、電子部品は電位を測定するセンサであり、単電池内の異なる部位における電位ばらつきを検出し、電位ばらつきが所定値を超えた場合に当該単電池において劣化が生じていると判定する。
【0087】
本発明のリチウムイオン電池において、単電池の外周に設けられた枠部材内の複数箇所に電子部品がそれぞれ配置されており、電子部品が電位を測定するセンサであると、単電池内の異なる部位における電位ばらつきを検出することができる。
劣化していない電池においては1つの単電池内の電位は単電池のどこで測定しても同じになるが、単電池内の各センサから検出された電位がばらついている場合、その単電池には劣化が生じていると考えられる。
そのため、1つの単電池の枠部材内に電位を測定するセンサを複数箇所設けておき、単電池内の電位を個別に検出させることによって、劣化した単電池を特定することができる。
【0088】
例えば、1つの単電池内の複数箇所で測定した電位のばらつきにつき、電圧測定値の平均値から±0.2V以上離れた測定点が生じた際に、単電池が劣化しているものと判断する。
【0089】
また、本発明のリチウムイオン電池が積層電池である場合には、枠部材内に配置された電子部品により単電池ごとに電位をモニタリングして、単電池ごとの電位のばらつきを検出して、単電池間で電位のばらつきが生じている場合に、他の単電池よりも電位が異なっている単電池が特に劣化の進んでいる状態であることを特定することができる。
また、本発明のリチウムイオン電池が電池モジュールである場合も、枠部材内に配置された電子部品により単電池ごと又は積層電池ごとに充電時の電位推移をモニタリングして、単電池間又は積層電池間で電位のばらつきが生じている場合に、他の単電池又は積層電池よりも電位が異なっている単電池又は積層電池が特に劣化の進んでいる状態であることを特定することができる。
【0090】
なお、本発明において枠部材内に電子部品を配置する構成は、上記に示した、枠部材内に電子部品が埋め込まれて配置される構成に限定されない。例えば、枠部材の外周面に形成された切欠部(凹部)に電子部品を収容する構成としても良く、枠部材が配置される領域(正極集電体と負極集電体との間の周縁部の領域)内に電子部品が配置されていれば他の様々な構成に変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のリチウムイオン電池は、単電池が有する枠部材内に電子部品を配置することにより、単電池内の状態を検出することができ、その結果、リチウムイオン電池内で不具合が生じている箇所を特定することができる。
また、本発明のリチウムイオン電池を積層電池又は電池モジュールに用いた場合、不具合が生じている単電池のみを交換すれば、積層電池又は電池モジュールの大部分を活かしたまま、不良が発生した積層電池又は電池モジュールを再利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1、11、31 単電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 正極活物質層
6 負極活物質層
7 正極集電体
8 枠部材
9 負極集電体
10、20 電子部品
18 貫通穴
21 配線基板
22 他の電子部品
30 発光素子
101、102、103 積層電池
107 正極引出部
109 負極引出部
120 容器
130 光導波路
141、142 受光素子
143 配線