(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】膜形成方法および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240614BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 578
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2021198701
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2020212772
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】河田 功
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-41938(JP,A)
【文献】特表2011-505270(JP,A)
【文献】特開2012-992(JP,A)
【文献】特表2012-507140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物からなる膜を形成する膜形成方法であって、
基材と前記基材の上に配置された下地層とを有する基板の前記下地層の上に前記硬化性組成物を配置する配置工程と、
前記配置工程の後に前記硬化性組成物とモールドとを接触させる接触工程と、
前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、を含み、
前記接触工程において、前記下地層と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、
前記下地層に対する前記気体の溶解度係数が0.5kg/m
3・atm以上10kg/m
3・atm以下である、
ことを特徴とする膜形成方法。
【請求項2】
硬化性組成物からなる膜を形成する膜形成方法であって、
基材と前記基材の上に配置された下地層とを有する基板の前記下地層の上に前記硬化性組成物を配置する配置工程と、
前記配置工程の後に前記硬化性組成物とモールドとを接触させる接触工程と、
前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、を含み、
前記接触工程において、前記下地層と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、
前記下地層に対する前記気体の溶解度係数をS[kg/m
3・atm]、前記下地層における前記気体の拡散係数をD[m
2/s]としたときに、S・Dが0.5×10
-10
以上10×10
-10以下である、
ことを特徴とする膜形成方法。
【請求項3】
前記硬化性組成物に対する前記気体の溶解度係数は、10kg/m
3・atm以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の膜形成方法。
【請求項4】
前記下地層は、5nm以上である、
ことを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項5】
前記気体は、モル比率で25%以上の二酸化炭素を含む、
ことを特徴とする請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項6】
前記モールドは、パターンを有し、前記接触工程、前記硬化工程および前記分離工程を経て、前記パターンが転写された前記膜が形成される、
ことを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項7】
前記モールドは、平坦面を有し、前記接触工程、前記硬化工程および前記分離工程を経て、前記平坦面にならった面を有する前記膜が形成される、
ことを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項8】
有機材料で構成された表面を有するモールドを使って、硬化性組成物からなる膜を形成する膜形成方法であって、
基板の上に前記硬化性組成物を配置する配置工程と、
前記配置工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドの前記表面とを接触させる接触工程と、
前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、を含み、
前記接触工程において、前記基板と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、
前記モールドの前記表面を構成する前記有機材料に対する前記気体の溶解度係数が0.5kg/m
3・atm以上10kg/m
3・atm以下である、
ことを特徴とする膜形成方法。
【請求項9】
前記硬化性組成物に対する前記気体の溶解度係数は、10kg/m
3・atm以下である、
ことを特徴とする請求項
8に記載の膜形成方法。
【請求項10】
有機材料で構成された表面を有するモールドを使って、硬化性組成物からなる膜を形成する膜形成方法であって、
基板の上に前記硬化性組成物を配置する配置工程と、
前記配置工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドの前記表面とを接触させる接触工程と、
前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、を含み、
前記接触工程において、前記基板と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、
前記有機材料に対する前記気体の溶解度係数をS[kg/m
3・atm]、前記有機材料における前記気体の拡散係数をD[m
2/s]としたときに、S・Dが0.5×10
-10以上10×10
-10以下である、
ことを特徴とする膜形成方法。
【請求項11】
Sは、0.5kg/m
3・atm以上10kg/m
3・atm以下である、
ことを特徴とする請求項
10に記載の膜形成方法。
【請求項12】
前記気体は、モル比率で25%以上の二酸化炭素を含む、
ことを特徴とする請求項
10又は11に記載の膜形成方法。
【請求項13】
前記モールドは、平坦面を有し、前記接触工程、前記硬化工程および前記分離工程を経て、前記平坦面にならった面を有する前記膜が形成される、
ことを特徴とする請求項
9乃至12のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項14】
前記モールドは、パターンを有し、前記接触工程、前記硬化工程および前記分離工程を経て、前記パターンが転写された前記膜が形成される、
ことを特徴とする請求項
9乃至12のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項15】
請求項1乃至
14のいずれか1項に記載の膜形成方法によって基板の上に膜を形成する工程と、
前記膜が形成された前記基板を処理して物品を得る工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【請求項16】
基材と前記基材の上に配置された下地層とを有する基板の前記下地層の上に硬化性組成物を配置し、前記硬化性組成物とモールドとを接触させた後に前記硬化性組成物を硬化させ、硬化後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離し、硬化性組成物からなる膜を形成する装置であって、
前記硬化性組成物と前記モールドとを接触させる際に、前記下地層と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、前記下地層に対する前記気体の溶解度係数が0.5kg/m
3
・atm以上10kg/m
3
・atm以下である、ことを特徴とする装置。
【請求項17】
前記下地層に対する前記気体の溶解度係数をS[kg/m
3
・atm]、前記下地層における前記気体の拡散係数をD[m
2
/s]としたときに、S・Dが0.5×10
-10
以上10×10
-10
以下である、ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
基板の上に硬化性組成物を配置し、前記硬化性組成物と有機材料で構成された表面を有するモールドの前記表面とを接触させた後に前記硬化性組成物を硬化させ、硬化後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離し、硬化性組成物からなる膜を形成する装置であって、
前記硬化性組成物と前記モールドとを接触させる際に、前記基板と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、
前記モールドの前記表面を構成する前記有機材料に対する前記気体の溶解度係数が0.5kg/m
3
・atm以上10kg/m
3
・atm以下である、ことを特徴とする装置。
【請求項19】
前記有機材料に対する前記気体の溶解度係数をS[kg/m
3
・atm]、前記有機材料における前記気体の拡散係数をD[m
2
/s]としたときに、S・Dが0.5×10
-10
以上10×10
-10
以下である、ことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
硬化性組成物からなる膜を形成する膜形成方法であって、
基材と前記基材の上に配置された下地層とを有する基板の前記下地層の上に前記硬化性組成物を配置する配置工程と、
前記配置工程の後に前記硬化性組成物とモールドとを接触させる接触工程と、
前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、を含み、
前記接触工程において、前記下地層と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、
前記気体は、モル比率で25%以上の二酸化炭素を含み、
前記下地層は、膜厚が5nm以上のカーボン材料を含む膜である、
ことを特徴とする膜形成方法。
【請求項21】
有機材料で構成された表面を有するモールドを使って、硬化性組成物からなる膜を形成する膜形成方法であって、
基板の上に前記硬化性組成物を配置する配置工程と、
前記配置工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドの前記表面とを接触させる接触工程と、
前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、を含み、
前記接触工程において、前記基板と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、
前記気体は、モル比率で25%以上の二酸化炭素を含み、
前記有機材料で構成された表面は、膜厚が5nm以上のカーボン材料を含む膜の表面である、
ことを特徴とする膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成方法および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMS等においては、微細化の要求が高まっており、微細加工技術として、光ナノインプリント技術が注目されている。光ナノインプリント技術では、表面に微細な凹凸パターンが形成されたモールド(型)を硬化性組成物が塗布された基板(ウエハ)に押しつけた状態で硬化性組成物を硬化させる。これにより、モールドの凹凸パターンを硬化性組成物の硬化膜に転写し、パターンを基板上に形成する。光ナノインプリント技術によれば、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。
【0003】
ここで、光ナノインプリント技術を利用したパターン形成方法の一例を説明する。まず、基板の上のパターン形成領域に液状の硬化性組成物が離散的に滴下される。パターン形成領域に滴下された硬化性組成物の液滴は、基板の上で広がる。この現象は、プレスプレッドと呼ばれうる。次に、基板の上の硬化性組成物に対して、パターンを有するモールド(型)が押し当てられる。これにより、硬化性組成物の液滴が毛細管現象により基板とモールドとの間隙の全域へ、基板と平行方向に拡がる。この現象は、スプレッドと呼ばれうる。硬化性組成物はまた、モールドのパターンを構成する凹部に毛細管現象により充填される。この充填現象は、フィリングと呼ばれうる。スプレッドとフィリングが完了するまでの時間は、充填時間と呼ばれうる。硬化性組成物の充填が完了した後、硬化性組成物に対して光が照射され硬化性組成物が硬化される。その後、硬化した硬化性組成物からモールドが引き離される。これらの工程を実施することにより、モールドのパターンが基板の上の硬化性組成物に転写されて、硬化性組成物のパターンが形成される。
【0004】
微細なパターンを高いアスペクト比で高精度にパターニングするために、多層硬化性組成物プロセスや反転プロセスなどの手法が用いられうる。これらの手法では、硬化性組成物とは別の、エッチング耐性が高い層(高エッチング耐性層)に対して硬化性組成物パターンを一旦転写してから、高エッチング耐性層をエッチングマスクとして目的とする下地層が加工されうる。高エッチング耐性層の材料としては、有機系材料あるいはシリコン系材料が用いられうる。有機系材料としては、カーボンを主成分とするSOC(スピンオンカーボン)が用いられることがある(特許文献1)。
【0005】
ナノインプリントでのパターン形成でも同様に、高エッチング耐性層が用いられる場合がある。特許文献2には、ナノインプリントでの反転プロセスが開示されており、高エッチング耐性層としてSOCが用いられている。また、SOC上へのナノインプリントプロセスは、SOC上にナノインプリント用の密着層材料を塗布しその上にインプリントが行われうる(特許文献3)。
【0006】
また、半導体デバイス製造のためのフォトリソグラフィ工程においては、基板を平坦化することも必要とされる。例えば、近年注目されているフォトリソグラフィ技術である極端紫外線露光技術(EUV)においては、微細化に伴って投影像が結像される焦点深度が浅くなるため、硬化性組成物が塗布される基板表面の凹凸は4nm以下に抑える必要がある。また、別のフォトリソグラフィ技術であるナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術においても、充填性や線幅精度向上のために、EUVと同程度の平坦性が要求される(非特許文献1)。平坦化技術として、凹凸を有する基板上に凹凸に対応させた分量の液状硬化性組成物の液滴を離散的に滴下し、平坦表面を有するモールドを押し付けた状態で硬化性組成物を硬化させ、平坦な表面を得る技術が知られている(特許文献4、5)。
【0007】
上記のパターン形成技術及び平坦化技術においては、生産性向上のために高スループットが要求されるが、各工程で最も長時間を要するのはスプレッドおよびフィリングである。SOCを用いる光ナノインプリント技術において、ヘリウムまたは空気を雰囲気ガスとして用いることで、充填速度が向上することが知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5065058号公報
【文献】特開2016-162862号公報
【文献】特許第5827180号公報
【文献】特開2019-140394号公報
【文献】US2020/0286740
【文献】特表2009-503139号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】N.Shiraishi/Int. J. Microgravity Sci.No.31 Supplement 2014 (S5-S12)
【文献】Proc. SPIE 11324-11 (2020)
【文献】岡崎進『コンピュータシミュレーションの基礎』化学同人(2000)
【文献】B. H. Besler, K. M. Merz Jr., and P. A. Kollman, J. Comp. Chem. 11, 431 (1990).
【文献】U. C. Singh and P. A. Kollman, J. Comp. Chem. 5, 129 (1984).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本件の発明者らは、硬化性組成物に接触している層を薄くした場合、ヘリウム雰囲気あるいは空気雰囲気において充填速度が遅くなるという課題を見出した。そこで、本発明は、硬化性組成物に接触している層を薄くした場合にも速やかに充填が完了するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの側面は、硬化性組成物からなる膜を形成する膜形成方法に係り、前記膜形成方法は、基材と前記基材の上に配置された下地層とを有する基板の前記下地層の上に前記硬化性組成物を配置する配置工程と、前記配置工程の後に前記硬化性組成物とモールドとを接触させる接触工程と、前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、を含み、前記接触工程において、前記下地層と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、前記下地層に対する前記気体の溶解度係数が0.5kg/m3・atm以上10kg/m3・atm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化性組成物に接触している層を薄くした場合にも充填速度の低下を抑えるために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る膜形成方法を示す模式断面図。
【
図2】第1実施形態に係る膜形成方法において硬化性組成物(A1)を省略した場合を示す模式断面図。
【
図3】第2実施形態に係る膜形成方法を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
≪第1実施形態≫
[硬化性組成物]
本実施形態に係る硬化性組成物(A1)及び(A2)は、少なくとも重合性化合物である成分(a)を有する組成物である。本実施形態に係る硬化性組成物はさらに、光重合開始剤である成分(b)、非重合性化合物(c)、溶剤である成分(d)を含有してもよい。
【0015】
本発明では、硬化性組成物(A1)は省略してもよい。
【0016】
また、本明細書において硬化膜とは、基板上で硬化性組成物を重合させて硬化させた膜を意味する。なお、硬化膜の形状は特に限定されず、表面にパターン形状を有していてもよい。
【0017】
<成分(a):重合性化合物>
成分(a)は重合性化合物である。ここで、本明細書において重合性化合物とは、光重合開始剤(成分(b))から発生した重合因子(ラジカル等)と反応し、連鎖反応(重合反応)によって高分子化合物からなる膜を形成する化合物である。
【0018】
このような重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物が挙げられる。成分(a)である重合性化合物は、一種類の重合性化合物のみから構成されていてもよく、複数種類の重合性化合物で構成されていてもよい。
【0019】
ラジカル重合性化合物としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物、すなわち、(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。したがって、本実施形態に係る硬化性組成物は、成分(a)として(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましく、成分(a)の主成分が(メタ)アクリル化合物であることがより好ましく、(メタ)アクリル化合物であることが最も好ましい。なお、ここで記載する成分(a)の主成分が(メタ)アクリル化合物であるとは、成分(a)の90質量%以上が(メタ)アクリル化合物であることを示す。
【0020】
ラジカル重合性化合物が、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する複数種類の化合物で構成される場合には、単官能(メタ)アクリルモノマーと多官能(メタ)アクリルモノマーを含むことが好ましい。これは、単官能(メタ)アクリルモノマーと多官能(メタ)アクリルモノマーを組み合わせることで、機械的強度が強い硬化膜が得られるからである。
【0021】
アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
上記単官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、アロニックス(登録商標)M101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO-1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、LA、IBXA、2-MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO-A、EC-A、DMP-A、THF-A、HOP-A、HOA-MPE、HOA-MPL、PO-A、P-200A、NP-4EA、NP-8EA、エポキシエステルM-600A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標) TC110S、R-564、R-128H(以上、日本化薬製)、NKエステルAMP-10G、AMP-20G(以上、新中村化学工業製)、FA-511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE-2、PHE-4、BR-31、BR-31M、BR-32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
また、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
上記多官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、ユピマー(登録商標)UV SA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート#195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート4EG-A、9EG-A、NP-A、DCP-A、BP-4EA、BP-4PA、TMP-A、PE-3A、PE-4A、DPE-6A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標) PET-30、TMPTA、R-604、DPHA、DPCA-20、-30、-60、-120、HX-620、D-310、D-330(以上、日本化薬製)、アロニックス(登録商標)M208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシ(登録商標)VR-77、VR-60、VR-90(以上、昭和高分子製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
なお、上述した化合物群において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリロイル基を意味する。EOは、エチレンオキサイドを示し、EO変性化合物Aとは、化合物Aの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基がエチレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。また、POは、プロピレンオキサイドを示し、PO変性化合物Bとは、化合物Bの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基がプロピレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。
<成分(b):光重合開始剤>
成分(b)は、光重合開始剤である。本明細書において光重合開始剤は、所定の波長の光を感知して上記重合因子(ラジカル)を発生させる化合物である。具体的には、光重合開始剤は、光(赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線等、放射線)によりラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル発生剤)である。成分(b)は、一種類の光重合開始剤で構成されていてもよく、複数種類の光重合開始剤で構成されていてもよい。
【0026】
ラジカル発生剤としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-又はp-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の置換基を有してもよい2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン等のα―アミノ芳香族ケトン誘導体;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-t-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナンタラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン等のN-フェニルグリシン誘導体;アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド誘導体;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル誘導体;キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
上記ラジカル発生剤の市販品として、Irgacure 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI-1700、-1750、-1850、CG24-61、Darocur 1116、1173、Lucirin(登録商標) TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
これらの中でも、成分(b)は、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤であることが好ましい。なお、上記の例のうち、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド化合物である。
【0029】
本実施形態において、硬化性組成物(A1)は実質的に光反応性を有さないことが好ましい。このために、成分(b)の硬化性組成物(A1)における配合割合は、成分(a)、成分(b)、後述する成分(c)の合計、すなわち溶剤成分(d)を除く全成分の合計質量に対して、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下である。成分(b)の配合割合を0.1質量%未満とすることにより、硬化性組成物(A1)は実質的に光反応性を有さない。このため、漏れ光による光硬化が生じず、隣接ショットにおいても短い充填時間でも未充填欠陥が少ないパターンが得られるのである。当該ショットにおける硬化性組成物(A1)の硬化反応については、後述する。
【0030】
成分(b)の硬化性組成物(A2)における配合割合は、成分(a)、成分(b)、後述する成分(c)の合計、すなわち溶剤成分(d)を除く全成分の合計質量に対して、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上20質量%以下である。成分(b)の配合割合を0.1質量%以上とすることにより、組成物の硬化速度が速くなり、反応効率を良くすることができ、50質量%以下とすることにより、得られる硬化膜をある程度の機械的強度を有する硬化膜とすることができる。
<成分(c):非重合性化合物>
本実施形態に係る硬化性組成物(A1)及び(A2)は、前述した、成分(a)、成分(b)の他に、種々の目的に応じ、本実施形態の効果を損なわない範囲で、更に成分(c)として非重合性化合物を含有することができる。このような成分(c)としては、(メタ)アクリロイル基などの重合性官能基を有さず、かつ、所定の波長の光を感知して上記重合因子(ラジカル)を発生させる能力を有さない化合物が挙げられる。例えば、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、酸化防止剤、ポリマー成分、その他添加剤等が挙げられる。成分(c)として前記化合物を複数種類含有してもよい。
【0031】
増感剤は、重合反応促進や反応転化率の向上を目的として、適宜添加される化合物である。増感剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0032】
増感剤として、例えば、増感色素等が挙げられる。増感色素は、特定の波長の光を吸収することにより励起され、成分(b)である光重合開始剤と相互作用する化合物である。
なお、ここで記載する相互作用とは、励起状態の増感色素から成分(b)である光重合開始剤へのエネルギー移動や電子移動等である。増感色素の具体例としては、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、キサントン誘導体、クマリン誘導体、フェノチアジン誘導体、カンファキノン誘導体、アクリジン系色素、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
水素供与体は、成分(b)である光重合開始剤から発生した開始ラジカルや、重合生長末端のラジカルと反応し、より反応性が高いラジカルを発生する化合物である。成分(b)である光重合開始剤が光ラジカル発生剤である場合に添加することが好ましい。
【0034】
このような水素供与体の具体例としては、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’-ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエタノールアミン、N-フェニルグリシンなどのアミン化合物、2-メルカプト-N-フェニルベンゾイミダゾール、メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプト化合物、等が挙げられるが、これらに限定されない。水素供与体は、一種類を単独で用いてもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。また、水素供与体は、増感剤としての機能を有してもよい。
【0035】
モールドと硬化性組成物との間の界面結合力の低減、すなわち後述する離型工程における離型力の低減を目的として、硬化性組成物に内添型離型剤を添加することができる。本明細書において内添型とは、硬化性組成物の配置工程の前に予め硬化性組成物に添加されていることを意味する。内添型離型剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤等の界面活性剤等を使用できる。ただし、本実施形態においては後述のように、フッ素系界面活性剤には添加量に制限がある。なお、本実施形態において内添型離型剤は、重合性を有さないものとする。内添型離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0036】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物、パーフルオロポリエーテルのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物等が含まれる。なお、フッ素系界面活性剤は、分子構造の一部(例えば、末端基)に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、チオール基等を有してもよい。例えばペンタデカエチレングリコールモノ1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルエーテル等が挙げられる。
【0037】
フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、メガファック(登録商標)F-444、TF-2066、TF-2067、TF-2068、略称DEO-15(以上、DIC製)、フロラードFC-430、FC-431(以上、住友スリーエム製)、サーフロン(登録商標)S-382(AGC製)、EFTOP EF-122A、122B、122C、EF-121、EF-126、EF-127、MF-100(以上、トーケムプロダクツ製)、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(以上、OMNOVA Solutions製)、ユニダイン(登録商標)DS-401、DS-403、DS-451(以上、ダイキン工業製)、フタージェント(登録商標)250、251、222F、208G(以上、ネオス製)等が挙げられる。
【0038】
また、内添型離型剤は、炭化水素系界面活性剤でもよい。炭化水素系界面活性剤としては、炭素数1~50のアルキルアルコールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物やポリアルキレンオキサイド等が含まれる。
【0039】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物としては、メチルアルコールエチレンオキサイド付加物、デシルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物、セチルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。なお、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物の末端基は、単純にアルキルアルコールにポリアルキレンオキサイドを付加して製造できるヒドロキシル基に限定されない。このヒドロキシル基が他の置換基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ピリジル基、チオール基、シラノール基等の極性官能基やアルキル基、アルコキシ基等の疎水性官能基に置換されていてもよい。
【0040】
ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらのモノまたはジメチルエーテル、モノまたはジオクチルエーテル、モノまたはジノニルエーテル、モノまたはジデシルエーテル、モノアジピン酸エステル、モノオレイン酸エステル、モノステアリン酸エステル、モノコハク酸エステル等が挙げられる。
【0041】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、青木油脂工業製のポリオキシエチレンメチルエーテル(メチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON MP-400、MP-550、MP-1000)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンデシルエーテル(デシルアルコールエチレンオキサイド付加物)(FINESURF D-1303、D-1305、D-1307、D-1310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON EL-1505)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンセチルエーテル(セチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON CH-305、CH-310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンステアリルエーテル(ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON SR-705、SR-707、SR-715、SR-720、SR-730、SR-750)、青木油脂工業製のランダム重合型ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(BLAUNON SA-50/50 1000R、SA-30/70 2000R)、BASF製のポリオキシエチレンメチルエーテル(Pluriol(登録商標)A760E)、花王製のポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲンシリーズ)等が挙げられる。また、ポリアルキレンオキサイドは市販品を使用してもよく、例えばBASF製のエチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合物(Pluronic PE6400)等が挙げられる。
【0042】
フッ素系界面活性剤は優れた離型力低減効果を示すため、内添型離型剤として有効である。フッ素系界面活性剤を除いた成分(c)の硬化性組成物における配合割合は、成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計、すなわち溶剤を除く全成分の合計質量に対して、0質量%以上50質量%以下が好ましい。また、より好ましくは、0.1質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。フッ素系界面活性剤を除いた成分(c)の配合割合を50質量%以下とすることにより、得られる硬化膜をある程度の機械的強度を有する硬化膜とすることができる。
<成分(d):溶剤>
本実施形態に係る硬化性組成物は、成分(d)として溶剤を含有していてもよい。成分(d)としては、成分(a)、成分(b)、成分(c)が溶解する溶剤であれば、特に限定はされない。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80℃以上200℃以下の溶剤である。さらに好ましくは、エステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれかを少なくとも1つ有する溶剤である。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチルから選ばれる単独、あるいはこれらの混合溶剤である。
【0043】
本実施形態に係る硬化性組成物(A1)は、成分(d)を含有することが好ましい。後述するように、基板上への硬化性組成物(A1)の塗布方法としてスピンコート法が好ましいためである。
<硬化性組成物の配合時の温度>
本実施形態の硬化性組成物(A1)及び(A2)を調製する際には、少なくとも成分(a)、成分(b)を所定の温度条件下で混合・溶解させる。具体的には、0℃以上100℃以下の範囲で行う。成分(c)、成分(d)を含有する場合も同様である。
<硬化性組成物の粘度>
本実施形態に係る硬化性組成物(A1)及び(A2)は液体であることが好ましい。なぜならば、後述する型接触工程において、硬化性組成物(A1)及び/または(A2)のスプレッド及びフィルが速やかに完了する、つまり充填時間が短いからである。
【0044】
本実施形態に係る硬化性組成物(A1)の溶剤(成分(d))を除く成分の混合物の25℃での粘度は、1mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましい。また、より好ましくは、1mPa・s以上500mPa・s以下であり、さらに好ましくは、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0045】
本実施形態に係る硬化性組成物(A2)の溶剤(成分(d))を除く成分の混合物の25℃での粘度は、1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましい。また、より好ましくは、1mPa・s以上50mPa・s以下であり、さらに好ましくは、1mPa・s以上12mPa・s以下である。
【0046】
硬化性組成物(A1)の粘度を1000mPa・s以下、または硬化性組成物(A2)の粘度を100mPa・s以下とすることにより、硬化性組成物(A1)及び(A2)をモールドに接触する際に、スプレッド及びフィルが速やかに完了する。つまり、本実施形態に係る硬化性組成物を用いることで、光ナノインプリント法を高いスループットで実施することができる。また、充填不良によるパターン欠陥が生じにくい。また、粘度を1mPa・s以上とすることにより、硬化性組成物(A1)及び(A2)を基板上に塗布する際に塗りムラが生じにくくなる。さらに、硬化性組成物(A1)及び(A2)をモールドに接触する際に、モールドの端部から硬化性組成物(A1)及び(A2)が流出しにくくなる。
<硬化性組成物の表面張力>
本実施形態に係る硬化性組成物(A1)及び(A2)の表面張力は、溶剤(成分(d))を除く成分の組成物について23℃での表面張力が、5mN/m以上70mN/m以下であることが好ましい。また、より好ましくは、7mN/m以上50mN/m以下であり、さらに好ましくは、10mN/m以上40mN/m以下である。ここで、表面張力が高いほど、例えば5mN/m以上であると、毛細管力が強く働くため、硬化性組成物(A1)及び/または(A2)をモールドに接触させた際に、充填(スプレッド及びフィル)が短時間で完了する。また、表面張力を70mN/m以下とすることにより、硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜が表面平滑性を有する硬化膜となる。
【0047】
本実施形態においては、溶剤(成分(d))を除く硬化性組成物(A1)の表面張力が、溶剤(成分(d))を除く硬化性組成物(A2)の表面張力より高いことが好ましい。
型接触工程前に、後述するマランゴニ効果により硬化性組成物(A2)のプレスプレッドが加速され(液滴が広範囲に広がり)、後述する型接触工程中のスプレッドに要する時間が短縮され、結果として充填時間が短縮されるためである。マランゴニ効果とは液体の表面張力の局所的な差に起因した自由表面移動の現象である。表面張力、つまり表面エネルギーの差を駆動力として、表面張力の低い液体が、より広い表面を覆うような拡散が生じる。つまり、基板全面に表面張力の高い硬化性組成物(A1)を塗布しておき、表面張力の低い硬化性組成物(A2)を滴下すれば、硬化性組成物(A2)のプレスプレッドが加速されるのである。
<硬化性組成物の接触角>
本実施形態に係る硬化性組成物(A1)及び(A2)の接触角は、溶剤(成分(d))を除く成分の組成物について、基板表面及びモールド表面の双方に対して0°以上90°以下であることが好ましく、0°以上10°以下であることが特に好ましい。接触角が90°より大きいと、モールドパターンの内部や基板-モールドの間隙において毛細管力が負の方向(モールドと硬化性組成物間の接触界面を収縮させる方向)に働き、充填しない可能性がある。接触角が低いほど毛細管力が強く働くため、充填速度が速い。
<硬化性組成物に混入している不純物>
本実施形態に係る硬化性組成物(A1)及び(A2)は、できる限り不純物を含まないことが好ましい。ここで記載する不純物とは、前述した成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)以外のものを意味する。したがって、本実施形態に係る硬化性組成物は、精製工程を経て得られたものであることが好ましい。このような精製工程としては、フィルタを用いた濾過等が好ましい。
【0048】
フィルタを用いた濾過を行う際には、具体的には、前述した成分(a)、成分(b)および成分(c)を混合した後、例えば、孔径0.001μm以上5.0μm以下のフィルタで濾過することが好ましい。フィルタを用いた濾過を行う際には、多段階で行ったり、多数回繰り返したりすることがさらに好ましい。また、濾過した液を再度濾過してもよい。孔径の異なるフィルタを複数用いて濾過してもよい。濾過に使用するフィルタとしては、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、フッ素樹脂製、ナイロン樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。このような精製工程を経ることで、硬化性組成物に混入したパーティクル等の不純物を取り除くことができる。これにより、パーティクル等の不純物によって、硬化性組成物を硬化した後に得られる硬化膜に不用意に凹凸が生じてパターンの欠陥が発生することを防止することができる。
【0049】
なお、本実施形態に係る硬化性組成物を、半導体集積回路を製造するために使用する場合、製品の動作を阻害しないようにするため、硬化性組成物中に金属原子を含有する不純物(金属不純物)が混入することを極力避けることが好ましい。このような場合、硬化性組成物に含まれる金属不純物の濃度としては、10ppm以下が好ましく、100ppb以下にすることがさらに好ましい。
[基板(基材)]
本明細書では、下地層が配置される部材は、基板または基材として説明される。下地層が配置される部材と、該対象の上に配置された下地層とを含む構造体も基板として説明されることがあり、その場合、紛らわしさを避けるために、下地層が配置される部材は、基材として理解されるとよい。
【0050】
下地層を配置する対象である基材としての基板は、被加工基板であり、通常、シリコンウエハが用いられる。基材としての基板は表面に被加工層を有してもよい。該基板は被加工層の下にさらに他の層が形成されていてもよい。また、該基板として石英基板を用いれば、石英インプリントモールドのレプリカ(モールドレプリカ)を作製することができる。ただし、該基板はシリコンウエハや石英基板に限定されるものではない。該基板は、アルミニウム、チタン-タングステン合金、アルミニウム-ケイ素合金、アルミニウム-銅-ケイ素合金、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の半導体デバイス用基板として知られているものの中からも任意に選択することができる。なお、使用される基板あるいは被加工層の表面は、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜等の表面処理によって硬化性組成物(A1)及び(A2)との密着性を向上されていてもよい。表面処理として成膜される前記有機薄膜の具体例としては例えば、特許文献6に記載される密着層を用いることができる。
[下地層]
下地層としては容易に加工でき、かつ、下地層の下地となる基板(基材)あるいは他の層を加工するエッチングプロセスに対する耐性を有する層でありうる。下地層は、ナノインプリントプロセスを実施する基板の最表層に形成されてもよく、例えば、SOC(スピンオンカーボン)、ダイヤモンドライクカーボン及びグラファイトなどのカーボン材料を下地層の材料として用いることができる。高エッチング耐性材料としては、カーボンを主成分とするSOCが用いられうる。ナノインプリントでのパターン形成でも同様に、SOCを高エッチング耐性材料として用いることができる。本実施形態では、SOC層上にてナノインプリントプロセスを実施することが好ましい。
【0051】
下地層材料として好ましく用いられるSOCは、主剤(成分(P))、有機溶剤(成分(Q))を含有しうる。当該下地層材料は、酸発生剤(成分(R))及び/または架橋剤(成分(S))を含有していてもよく、本実施形態の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
<成分(P):主剤>
成分(P)は、主剤である。成分(P)は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などの芳香族環を有し、好ましくは式量が300~5,000、特に好ましくは式量が500~2,500の化合物である。分子量が300以上であることは、良好な成膜性を得るために有利であり、また、硬化時の昇華物増加による製造装置の汚染を抑制することができる。分子量が5,000以下であることは、良好な埋め込み/平坦化特性を得るために有利である。
【0052】
成分(P)は、分岐状又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基、ヘテロ芳香族基を含んでいてもよく、エーテル基、水酸基、エステル基、カルボニル基、アミノ基、ハロゲン基、スルフィド基、カルボキシル基、スルホ基、アミド基、イミド基、シアノ基、アルデヒド基、イミノ基、ウレア基、カーバメート基、カーボネート基、ニトロ基、スルホニル基を含んでもよい。
【0053】
成分(P)の具体例としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラックなどのノボラック系化合物、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシビニルナフタレンなどの置換ポリスチレン化合物、などが挙げられる。成分(P)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
<成分(Q):溶剤>
成分(Q)は溶剤である。成分(Q)は、成分(P)及び必要に応じて含有する任意成分を溶解又は分散することができれば特に限定されない。成分(Q)としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒等が挙げられる。成分(Q)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、iso-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒などが挙げられる。
【0055】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等が挙げられる。
【0056】
エーテル系溶媒としては、例えばエチルエーテル、iso-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、2-n-ブトキシエタノール、2-n-ヘキソキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-(2-エチルブトキシ)エタノール、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、1-n-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0057】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミルγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸iso-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
含窒素系溶媒としては、例えばN-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒が好ましく、成膜性に優れる観点から、グリコール構造を有するエーテル系溶媒及びエステル系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテルがさらに好ましく、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
<成分(R):酸発生剤>
本実施形態に係る下地層材料は、成分(R)として酸発生剤を含有していてもよい。成分(R)は、熱や光の作用により酸を発生し、成分(P)の後述する架橋剤(成分(S))による架橋反応を促進する成分である。当該硬化性組成物下地層形成用組成物が成分(R)を含有することで成分(P)の架橋反応が促進され、形成される膜の硬度をより高めることができる。成分(R)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。成分(R)としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物等が挙げられる。
【0059】
上記オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0060】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0061】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0062】
アンモニウム塩としては、例えばトリエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリエチルアンモニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート等が挙げられる。
【0063】
N-スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ノナフルオロ-n-ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド等が挙げられる。
これらの中で、成分(R)としては、オニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩及びアンモニウム塩がより好ましく、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート及びトリエチルアンモニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネートがさらに好ましい。
【0064】
当該下地層材料が成分(R)を含有する場合、成分(R)の含有量の下限としては、成分(P)100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、3質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、15質量部が好ましく、12質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。成分(R)の含有量を上記範囲とすることで、成分(P)の架橋反応をより効果的に促進させることができる。
<成分(S):架橋剤>
本実施形態に係る下地層材料は、成分(S)として架橋剤を含有していてもよい。成分(S)は、熱や酸の作用により、当該下地層材料中の成分(P)に含まれる化合物同士の架橋結合を形成するか、又は自らが架橋構造を形成する成分である。当該下地層材料が成分(S)を含有することで、形成される下地層の硬度を高めることができる。成分(S)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
成分(S)としては、例えば多官能(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物等が挙げられる。
【0066】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
上記エポキシ化合物としては、例えばノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0068】
上記ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物としては、例えば2-ヒドロキシメチル-4,6-ジメチルフェノール、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン、3,5-ジヒドロキシメチル-4-メトキシトルエン[2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール]等が挙げられる。
【0069】
上記アルコキシアルキル基含有フェノール化合物としては、例えばメトキシメチル基含有フェノール化合物、エトキシメチル基含有フェノール化合物等が挙げられる。
【0070】
上記アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体などの(ポリ)メチロール化メラミン、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体などの(ポリ)メチロール化グリコールウリル、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体などの(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、これのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体などの(ポリ)メチロール化ウレア、等の一分子内に複数個の活性メチロール基を有する含窒素化合物であって、そのメチロール基の水酸基の水素原子の少なくとも一つが、メチル基やブチル基等のアルキル基によって置換された化合物等が挙げられる。なお、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物は、複数の置換化合物を混合した混合物でもよく、一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含むものであってもよい。
【0071】
当該下地層材料が成分(S)を含有する場合、成分(S)の含有量の下限としては、成分(P)100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、3質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましく、20質量部が特に好ましい。成分(S)の含有量を上記範囲とすることで、成分(P)の架橋反応をより効果的に起こさせることができる。
【0072】
その他の任意成分として、例えば界面活性剤等が挙げられる。
当該下地層材料は、界面活性剤を含有することで塗工性を向上させることができ、その結果、形成される下地層膜の塗工面均一性が向上し、かつ塗工斑の発生を抑制することができる。界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
当該下地層材料が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量の下限としては、(P)主剤100質量部に対して、0.01質量部が好ましく、0.05質量部がより好ましく、0.1質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、10質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。界面活性剤の含有量を上記範囲とすることで、当該下地層材料の塗工性をより向上させることができる。
【0074】
また、下地層材料は、市販されている下地層材料であってもよい。例えば、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜形成用組成物ODL-50、ODL-69、ODL-102、ODL-180、ODL-301、JSR製 NFC-1400、 HM8005等のスピンオンカーボン膜形成用組成物が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下地層は、それぞれ一種類の組成物で構成されていても良く、複数種類の組成物で構成されていても良い。
【0075】
本実施形態に係る基板上には、下地層としてマスク材料が塗布されうる。現在の半導体の微細化プロセスでは、加工パターン(フィーチャ)の微細化と共に硬化性組成物の薄膜化が進んでいる。また、加工パターンのアスペクト比が増大するとマイクロローディング効果と呼ばれるエッチング速度が低下する現象が発生する。そのため、エッチング時間が長くなり、硬化性組成物マスクが耐えられなくなる場合がある。微細パターンを高いアスペクト比で高精度にパターニングするために、多層硬化性組成物プロセスや反転プロセスなどの手法が用いられうる。これらの手法では、硬化性組成物とは別のエッチング耐性が高い層(高エッチング耐性層)に対して硬化性組成物パターンを一旦転写してから、高エッチング耐性層をエッチングマスクとして目的とする下地層を加工する。
【0076】
ベーク後の下地層中の水素を除く総原子数に対する炭素原子数の割合が80%以上あると、硬化性組成物(A1)及び(A2)が光の照射によって硬化した後、基板と硬化性組成物が強固に密着しうる。下地層中の炭素原子数の割合は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは80~95%である。
【0077】
下地層の前駆体組成物は、カーボン系の材料、例えばナフタレン系化合物と溶剤との混合物とすることができ、スピンコート法によって基板に塗布されうる。通常は、下地層の前駆体組成物は、ベーク後に0.1nm~1000nmの厚さになるように塗布されうる。基板表面を均一な平坦度にするのに十分な量の組成物を塗布することが好ましい。塗布後に基板をベークすることで溶剤成分が揮発し、さらに、炭化が進んで炭素原子数の割合が80%以上のカーボン膜となりうる。ベーク条件は使用される組成物の種類に応じて適宜調整されるが、一般的には約200℃~約350℃で約30秒~90秒間ベークすることが好ましく、約220℃~約300℃で約45秒~60秒間ベークすることが特に好ましい。
【0078】
下地層に対する雰囲気ガスの拡散係数および溶解度係数の要件については後述する。
[パターン形成方法]
次に、第1実施形態に係るパターン形成方法について、
図1の模式断面図を用いて説明する。本実施形態によって形成する硬化膜は、1nm以上10mm以下のサイズのパターンを有する膜であることが好ましく、10nm以上100μm以下のサイズのパターンを有する膜であることがより好ましい。なお、一般に、光を利用してナノサイズ(1nm以上100nm以下)のパターン(凹凸構造)を有する膜を作製するパターン形成技術は、光ナノインプリント法と呼ばれている。本実施形態に係る膜形成方法は、光ナノインプリント法を利用しうるが、硬化性組成物は、他のエネルギー(例えば、熱、電磁波)によって硬化されてもよい。本実施形態の膜形成方法は、パターンを有する膜を形成する方法(パターン形成方法)として実施されてもよいし、パターンを有しない膜(例えば、平坦化膜)を形成する方法として実施されてもよい。まず、本実施形態の膜形成方法がパターンを有する膜を形成する方法に適用された例を説明する。膜形成方法は、例えば、下地層を形成する形成工程と、下地層の上に硬化性生物を配置する配置工程と、硬化性組成物とモールドとを接触させる接触工程と、硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、硬化性組成物とモールドとを分離する分離工程とを含みうる。配置工程は、形成工程の後に実施され、接触工程は、配置工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、分離工程は、硬化工程の後に実施される。
<形成工程[1]>
形成工程では、
図1の[1]に模式的に示されるように、基板(基材)101の表面(基板101が被加工層を有する場合は被加工層の表面)の上に下地層102を形成する。
ここで、基板(基材)101とその基板101の上に配置された下地層102とを有する構造体を基板と呼ぶこともできる。下地層102は、例えば、下地層102の材料を基板101の上に積層あるいは塗布し、該材料が塗布された基板101に対してベーク工程を行うことによって形成さうる。下地層102を形成する方法としては、例えば、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等を挙げることができる。これらの方法の中で、スピンコート法が特に好ましい。スピンコート法を用いて下地層102を形成する場合、必要に応じてベーク工程を実施し、溶剤成分を揮発させてもよい。ベーク条件は、例えば、約200℃~約350℃で約30秒~約90秒間にわたって実施されうる。ベーク条件は、使用される組成物の種類に応じて適宜調整される。
【0079】
下地層102の平均膜厚は、用途に応じて決定されうるが、例えば、0.1nm以上10,000nm以下であり、好ましくは1nm以上250nm以下であり、特に好ましくは5nm以上50nm以下である。
【0080】
また、下地層102としてSOCの上にさらに0.1nm以上250nm以下の膜厚のスピン・オン・グラス(SOG)膜または酸化シリコン膜を積層した多層膜を使用してもよい。
<配置工程[2-1]、[2-2]>
配置工程では、
図1の[2-1]及び[2-2]に模式的に示されるように、基板(基材)101の上の下地層102の上に硬化性組成物が配置されうる。配置工程は、例えば、硬化性組成物(A1)103を下地層102の上に配置する第一の配置工程と、硬化性組成物(A1)103の上に、硬化性組成物(A2)104の液滴を離散的に滴下する第二の配置工程とを含みうる。硬化性組成物(A1)及びその配置工程は省略してもよい。
【0081】
下地層102の表面は、配置工程に先立ち、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜、等の表面処理によって硬化性組成物(A1)および/または硬化性組成物(A2)との密着性が向上されていてもよい。(第一の配置工程[2-1])
第一の配置工程では、
図1の[2-1]に模式的に示されるように、硬化性組成物(A1)103が下地層102の上に配置されうる。例えば、硬化性組成物(A1)103が下地層102の上に積層あるいは塗布され、これにより塗布膜が形成される。本実施形態において、硬化性組成物(A1)103を配置する方法としては、例えば、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等を用いることができる。これらの方法の中で、スピンコート法が特に好ましい。
スピンコート法を用いて硬化性組成物(A1)103を配置する場合、必要に応じてベーク工程を実施し、溶剤成分(d)を揮発させてもよい。
【0082】
硬化性組成物(A1)103の平均膜厚は、用途に応じて決定されうるが、例えば、0.1nm以上10,000nm以下であり、好ましくは1nm以上20nm以下であり、特に好ましくは1nm以上10nm以下である。硬化性組成物(A1)及びその配置工程は省略してもよい。硬化性組成物(A1)及びその配置工程を省略した場合の模式断面図を
図2に示す。
【0083】
(第二の配置工程[2-2])
第二の配置工程では、
図1の[2-2]に模式的に示されるように、硬化性組成物(A1)103の上に、硬化性組成物(A2)104の液滴が離散的に滴下されうる。配置方法としては、インクジェット法が特に好ましい。硬化性組成物(A2)104の液滴は、基板101のうちモールド106のパターンを構成する凹部が密に存在する領域に対向する領域の上には密に、基板101のうち該凹部が疎に存在する領域に対向する領域の上には疎に配置されることが好ましい。これにより、後述する残膜109は、モールド106のパターンの疎密によらずに均一な厚さに制御されうる。
【0084】
第二の配置工程で配置された硬化性組成物(A2)104の液滴は、硬化性組成物(A1)103が配置されている場合、前述のように、表面エネルギー(表面張力)の差を駆動力とするマランゴニ効果により、矢印105で示されるように、液滴が速やかに拡がる(プレスプレッド)。硬化性組成物(A1)が実質的に光反応性を有さない場合、硬化性組成物(A1)及び硬化性組成物(A2)の混合の結果、硬化性組成物(A2)の成分(b)である光重合開始剤が硬化性組成物(A1)にも移行し、これによって硬化性組成物(A1)が感光性を獲得しうる。
<接触工程[3]>
接触工程では、
図1の[3]に模式的に示されるように、硬化性組成物とモールド106とが接触させられる。接触工程は、硬化性組成物とモールド106とが接触していない状態から両者が接触した状態に変更する工程と、両者が接触した状態を維持する工程とを含む。一例において、硬化性組成物(A1)及び硬化性組成物(A2)が混合してなる液体に対して、転写すべきパターンを有するモールド106が接触させられうる。これにより、モールド106が表面に有する微細パターンの凹部に硬化性組成物(A1)及び硬化性組成物(A2)が部分的に混合してなる液体が充填(フィル)されて、該液体は、モールドの微細パターンに充填(フィル)された液膜となる。
【0085】
モールド106としては、次の硬化工程が光照射工程を含む場合、これを考慮して光透過性の材料で構成されたモールドが用いられうる。モールド106を構成する材料の材質としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が好ましい。ただし、モールド106を構成する材料として光透明性樹脂が使用される場合は、硬化性組成物に含まれる成分に溶解しない樹脂が選択されうる。石英は熱膨張係数が小さくパターン歪みが小さいことから、モールド106を構成する材料は、石英であることが特に好ましい。
【0086】
モールド106がその表面に有する微細パターンは、例えば、4nm以上200nm以下の高さを有しうる。パターンの高さが低いほど、分離工程において、モールド106を硬化性組成物の硬化膜から引き剥がす力、すなわち離型力が低くてよく、また、硬化性組成物のパターンが分離工程によって引き千切られてモールド106側に残存する離型欠陥数が少なくなる。モールドを引き剥がす際の衝撃によって硬化性組成物のパターンが弾性変形し、隣接するパターン要素同士が接触し、癒着あるいは破損が発生する場合がある。
しかし、パターン要素の幅に対してパターン要素の高さが2倍程度以下(アスペクト比2以下)であることが、それらの不具合を回避するために有利である。一方、パターン要素の高さが低過ぎると、基板101の加工精度が低くなりうる。
【0087】
モールド106には、硬化性組成物(A1)及び(A2)からのモールド106の表面との剥離性を向上させるために、接触工程の実施前に表面処理を行ってもよい。表面処理の方法としては、モールド106の表面に離型剤を塗布して離型剤層を形成する方法が挙げられる。ここで、モールド106の表面に塗布する離型剤としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤等が挙げられる。例えば、ダイキン工業(株)製のオプツール(登録商標)DSX等の市販の塗布型離型剤も好適に用いることができる。なお、離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、フッ素系および炭化水素系の離型剤が特に好ましい。
【0088】
接触工程において、モールド106を硬化性組成物(A1)及び(A2)に接触させる際に、硬化性組成物(A1)及び(A2)に加える圧力は特に限定はされない。該圧力は、例えば、0MPa以上100MPa以下とされうる。また、該圧力は、0MPa以上50MPa以下であることが好ましく、0MPa以上30MPa以下であることがより好ましく、0MPa以上20MPa以下であることがさらに好ましい。
【0089】
第二の配置工程([2-2])において硬化性組成物(A2)104の液滴のプレスプレッドが進行していると、接触工程における硬化性組成物(A2)104のスプレッドは速やかに完了しうる。接触工程において硬化性組成物(A1)及び(A2)のスプレッド及びフィルが速やかに完了すると、モールド106を硬化性組成物(A1)及び(A2)に接触した状態を維持する時間(これを接触工程時間という)を短く設定できる。そして、接触工程時間を短くすることは、パターンの形成(膜の形成)に要する時間を短縮し、これは生産性の向上をもたらす。接触工程時間は0.1秒以上3秒以下であることが好ましく、0.1秒以上1秒以下であることが特に好ましい。接触工程時間が0.1秒より短いと、スプレッド及びフィルが不十分となり、未充填欠陥と呼ばれる欠陥が多発する傾向がある。
【0090】
接触工程は、例えば、下地層102とモールド106との間の空間に気体(以下、ギャップ内気体)が存在し、下地層102に対するギャップ内気体の溶解度係数が0.5kg/m3・atm以上10kg/m3・atm以下である条件で行われうる。ここで、該溶解度係数が10kg/m3・atmよりも大きいと、ギャップ内気体が多く溶解するため、下地層102のドライエッチング耐性および/または機械強度などが低くなる可能性がある。該溶解度係数が0.5kg/m3・atmより小さいと、本発明が目的とする効果が十分に得られない。また、下層層102に対するギャップ内気体の溶解度係数をS[kg/m3・atm]、下地層102におけるギャップ内気体の拡散係数をD[m2/s]としたとき、SとDの積(S・D)が0.5×10-10以上10×10-10以下であることが好ましい。ここで、S・Dが10×10-10よりも大きいと、ギャップ内気体が多く溶解するため、下地層102のドライエッチング耐性および/または機械強度などが低くなる可能性がある。S・Dが0.5×10-10よりも小さいと、本発明が目的とする効果が十分に得られない。さらに、硬化性組成物中に1重量%以上のギャップ内気体が溶解すると、硬化膜のドライエッチング耐性および/または機械強度などが低くなるため、1気圧における硬化性組成物へのギャップ内気体の溶解度が10kg/m3以下であることが好ましい。
【0091】
ギャップ内気体の具体例としては、例えば、二酸化炭素、メタン、各種フロンガス等、あるいは、これらのうち2以上の気体の混合気体が挙げられる。二酸化炭素、メタン、各種フロンガス等、あるいは、これらのうち2以上の気体の混合気体は、例えば、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴンなどの、溶解度係数が高くない気体と混合して用いることもできる。混合気体を用いる場合、該混合気体の拡散係数および溶解度係数は、各気体のモル比率にしたがった加重平均値として算出できる。接触工程は、例えば、0.0001気圧以上10気圧以下の圧力下で行われうる。
<硬化工程[4]>
硬化工程では、
図1の[4]に示すように、硬化性組成物に硬化用エネルギーとしての光を照射することによって硬化性組成物を硬化させることによって硬化膜を形成する。硬化工程では、例えば、硬化性組成物(A1)103及び硬化性組成物(A2)104が部分的に混合してなる層に対してモールド106を介して光が照射されうる。より詳細には、モールド106の微細パターンに充填された硬化性組成物(A1)及び/または(A2)に対してモールド106を介して光が照射されうる。これにより、モールド106の微細パターンに充填された硬化性組成物(A1)及び/または(A2)が硬化してパターンを有する硬化膜108となる。
【0092】
ここで、照射する光107は、硬化性組成物(A1)及び(A2)の感度波長に応じて選択されうる。具体的には、光107は、150nm以上400nm以下の波長の紫外光、X線、または、電子線等から適宜選択されうる。これらの中でも、光107は、紫外光であることが特に好ましい。これは、硬化助剤(光重合開始剤)として市販されているものは、紫外光に感度を有する化合物が多いからである。ここで、紫外光を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2エキシマレーザ等が挙げられるが、超高圧水銀灯が特に好ましい。また使用する光源の数は1つでもよいし又は複数であってもよい。また、光の照射は、モールドの微細パターンに充填された硬化性組成物(A1)及び/または(A2)の全域に対して行ってもよく、一部の領域にのみ限定して行ってもよい。また、光の照射は、基板の全領域に対して断続的に複数回にわたって行ってもよいし、全領域に対して連続的に行ってもよい。さらに、第一の照射過程で第1の領域に対して光を照射し、第二の照射過程で該第1の領域とは異なる第2の領域に対して光を照射してもよい。
【0093】
硬化工程においては、前述のように漏れ光、つまり当該ショット領域外への光の拡散が、モールド及び装置のコストの制約によって生じうる。本実施形態においては、硬化性組成物(A1)が、実質的に光反応性を有さない場合、硬化性組成物(A1)は単独では光照射によって硬化しない。このため、当該ショット領域から発生した漏れ光によって隣接ショット領域上の硬化性組成物(A1)が硬化することはない。このため、隣接ショット領域においてもその全域で短い充填時間で未充填欠陥が少ないパターンを形成することができるのである。一方で、当該ショット領域においては、前述のように硬化性組成物(A1)及び硬化性組成物(A2)の混合の結果、硬化性組成物(A2)の光開始剤(b2)成分が硬化性組成物(A1)にも移行する。その結果、硬化性組成物(A1)が感光性を得るため、硬化性組成物(A1)及び(A2)はいずれも、照射される光によって硬化してパターンを有する硬化膜108となる。
<分離工程[5]>
分離工程では、
図1の[5]に模式的に示されるように、硬化膜108とモールド106とが引き離される。例えば、パターンを有する硬化膜108とモールド106とを引き離し、モールド106の微細パターンを反転させたパターンを有する硬化膜108が自立した状態で得られる。ここで、パターンを有する硬化膜108の凹部にも硬化膜が残存する。この膜は、残膜109と呼ばれうる。
【0094】
接触工程[3]においてギャップ内気体として凝縮性気体が使用された場合、分離工程で硬化膜108とモールド106とが引き離される際に、硬化膜108とモールド106との界面の圧力が低下することに伴って凝縮性気体が気化しうる。これにより、硬化膜108とモールド106とを引き離すために必要な力が低減されうる。
【0095】
パターンを有する硬化膜108とモールド106とを引き離す方法としては、引き離す際にパターンを有する硬化膜108の一部が物理的に破損しなければよく、各種条件等も特に限定されない。例えば、基板101を固定してモールド106を基板101から遠ざかるように移動させてもよい。もしくは、モールド106を固定して基板101をモールド106から遠ざかるように移動させてもよい。あるいは、これらの両方を正反対の方向へ引っ張って剥離してもよい。
【0096】
以上の工程[2-1]~工程[5]、好ましくは工程[1]~工程[5]をこの順で有する一連の工程(製造プロセス)によって、所望の凹凸パターン形状(モールド106の凹凸形状に因むパターン形状)を、所望の位置に有する硬化膜を得ることができる。
【0097】
本実施形態の膜形成方法あるいはパターン形形成方法では、工程[2-1]で基板表面の大部分に硬化性組成物(A1)を一括して積層し、工程[2-2]~工程[5]からなる繰り返し単位(ショット)を、同一基板上で繰り返して複数回行うことができる。また、工程[2-1]~工程[5]を同一基板上で繰り返して複数回行ってもよい。工程[2-1]~工程[5]又は工程[2-2]~工程[5]からなる繰り返し単位(ショット)を複数回繰り返し、基板の所望の位置に複数の所望のパターンを有する硬化膜108を得ることができる。
【0098】
以下、本実施形態の膜形成方法がパターンを有しない膜(例えば、平坦化膜)を形成する方法に適用された例を説明する。膜形成方法は、例えば、下地層を形成する形成工程と、下地層の上に硬化性組成物を配置する配置工程と、硬化性組成物とモールドとを接触させる接触工程と、硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、硬化性組成物とモールドとを分離する分離工程とを含みうる。ここで、モールドとしては、平坦面を有するモールドが使用され、接触工程、硬化工程および分離工程を経て、該平坦面にならった面を有する硬化膜が形成されうる。配置工程は、形成工程の後に実施され、接触工程は、配置工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、分離工程は、硬化工程の後に実施される。
≪回路基板、電子部品及び光学機器の製造方法≫
第1実施形態に従って形成されたパターンを有する硬化膜108をマスクとして、エッチングなどの加工手法を用いて、基板101(基板101が被加工層を有する場合は被加工層)を加工することができる。また、パターンを有する硬化膜108の上にさらに被加工層を成膜した後に、エッチングなどの加工法を用いてパターン転写を行っても良い。このようにして、パターンを有する硬化膜108を用いて回路構造等の微細構造を基板101上に形成することができる。これにより、半導体デバイス等のデバイスを製造することができる。また、そのようなデバイスを含む装置、例えば、ディスプレイ、カメラ、医療装置などの電子機器を形成することもできる。デバイスの例としては、例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D-RDRAM、NANDフラッシュ等が挙げられる。
【0099】
第1実施形態に従って形成されたパターンを有する硬化膜108を回折格子や偏光板などの光学部材(光学部材の一部材として用いる場合を含む)として利用する光学部品を得ることもできる。このような場合、少なくとも、基板101と、この基板101の上のパターンを有する硬化膜108と、を有する光学部品とすることができる。
【0100】
また、第1実施形態に従って形成されたパターンを有しない膜(例えば、平坦化膜)の上でナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術や極端紫外線露光技術(EUV)などの既知のフォトリソグラフィ工程を実施することで、半導体デバイス等のデバイスを製造することができる。
≪第2実施形態≫
第2実施形態の膜形成方法は、パターンを有しない膜(例えば、平坦化膜)を形成する方法として実施されてもよいし、パターンを有する膜を形成する方法(パターン形成方法)として実施されてもよい。まず、第3実施形態の膜形成方法がパターンを有しない膜を形成する方法に適用された例を説明する。膜形成方法は、例えば、下地層を形成する形成工程と、下地層の上に硬化性生物を配置する配置工程と、硬化性組成物とモールドとを接触させる接触工程と、硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、硬化性組成物とモールドとを分離する分離工程とを含みうる。配置工程は、形成工程の後に実施され、接触工程は、配置工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、分離工程は、硬化工程の後に実施される。接触工程では、
図3に模式的に示されるように、硬化性組成物との接触面として平坦面を有するモールド18が使用される。
【0101】
モールド18は、硬化性組成物と接触する表面(接触面)を有し、該表面は、有機材料で構成されうる。モールド18は、基材220と、基材220を被覆する保護層210とを有しうる。モールド18の基材220は、例えば、ガラス系材料、シリコン、尖晶石、溶融石英、合成石英、シリコン、有機ポリマー、シロキサン・ポリマー、フルオロカーボンポリマー、金属、硬化したサファイヤ、他の類似材料、または、それらの2以上の材料の組み合わせで構成されうる。ガラス系材料は、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリ・バリウム・ケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、合成石英、または、溶融石英等を含むことができる。例えば、モールド18の基材220が有機ポリマー、シロキサン・ポリマー、フルオロカーボンポリマーなどの有機材料で構成され、厚さが2μm以上である場合、保護層210はなくてもよい。
【0102】
保護層210は、多層構造を有してもよい。また、モールド18の表面を構成する保護層210は、有機材料で構成されうる。保護層210の最表面は、フッ素樹脂であることが好ましい。保護層210は、例えば、炭化水素ポリマーあるいはフッ素系樹脂で構成されうる。炭化水素ポリマーとしては、例えば、ポリトリメチルシリル・プロピン(PTMSP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル樹脂、ポリカーボネート・ポリマー、ポリイミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレンを使用することができる。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、アモルファス・フルオロポリマーを使用することができる。アモルファス・フルオロポリマーとしては、パーフルオロジオキソールテトラフルオロエチレン共重合体を含むことができる。またアモルファス・フルオロポリマーとしては、-(CXY-CF2-)a-(-Z-)b-を含む化学構造を含むことができる、ここで、XおよびYは、F、ClまたはHであってよい。そして、Zは、少なくとも一つのC-O-C結合を含んでいる4員環、5員環、6員環のフルオロカーボン・環構造体であってよい。あるいは、アモルファス・フルオロポリマーとしては、以下を含むことができる。例えば、ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソール(PDD)(例えば式1に示す)の共重合体を含むことができる。また、アモルファス・フルオロポリマーとしては、-(CF2-Z-CF2-)を含む化学構造を含むことができる、ここで、XおよびYは、F、ClまたはHであってよい。そして、式2に示されるように、Zは、少なくとも一つのC-O-C結合を含んでいる4員環、5員環、6員環のフルオロカーボン・環構造体であってよい。市販されているフッ素系樹脂としては、例えばテフロン(デュポン社)、Cytop(AGC社)などが挙げられる。
【0103】
モールド18の表面の凹凸の高低差は、4nm以下とすることが好ましい。モールド18を硬化性生物に接触させる接触工程の後に、硬化工程[4]および分離工程[5]が実施され、モールド18の平坦面にならった面を有する硬化膜が形成されうる。
【0104】
接触工程は、例えば、基板200とモールド18との間の空間に気体(以下、ギャップ内気体)が存在し、モールド18の表面を構成する有機材料または保護層210に対するギャップ内気体の溶解度係数が0.5kg/m3・atm以上10kg/m3・atm以下である条件で行われうる。ここで、10kg/m3・atmよりも大きいと、保護層210の膨張によって保護層210が基材220から剥離する可能性がある。また、モールド18の表面を構成する有機材料または保護層210に対するギャップ内気体の溶解度係数をS[kg/m3・atm]、モールド18の表面を構成する有機材料または保護層210におけるギャップ内気体の拡散係数をD[m2/s]としたとき、SとDの積(S・D)が0.5×10-10以上10×10-10以下であることが好ましい。ここで、S・Dが10×10-10よりも大きいと、保護層220の膨張によって保護層210が基材220から剥離する可能性がある。さらに、硬化性組成物中に1重量%以上のギャップ内気体が溶解すると、硬化膜のドライエッチング耐性および/または機械強度などが低くなるため、1気圧における硬化性組成物へのギャップ内ガスの溶解度が10kg/m3以下であることが好ましい。
【0105】
ギャップ内気体の具体例としては、例えば、二酸化炭素、メタン、各種フロンガス等、あるいは、これらのうち2以上の気体の混合気体が挙げられる。二酸化炭素、メタン、各種フロンガス等、あるいは、これらのうち2以上の気体の混合気体は、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴンなどの、溶解度係数が高くない気体と混合して用いることもできる。混合ガスを用いる場合、該混合気体の拡散係数および溶解度係数は、各気体のモル比率にしたがった加重平均値として算出できる。接触工程は、例えば、0.0001気圧以上10気圧以下の圧力下で行われうる。
【0106】
【0107】
【0108】
上記の膜形成方法によって得られた平坦な硬化膜の上でナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術や極端紫外線露光技術(EUV)などの既知のフォトリソグラフィ工程を行うことができる。また、スピン・オン・グラス(SOG)膜および/または酸化シリコン層を積層し、その上に硬化性組成物を塗布してフォトリソグラフィ工程を行うことができる。これにより、半導体デバイス等のデバイスを製造することができる。また、そのようなデバイスを含む装置、例えば、ディスプレイ、カメラ、医療装置などの電子機器を形成することもできる。デバイスの例としては、例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D-RDRAM、NANDフラッシュ等が挙げられる。
【0109】
以下、第2実施形態の膜形成方法がパターンを有する膜を形成する方法(パターン形成方法)に適用された例を説明する。膜形成方法は、例えば、下地層を形成する形成工程と、下地層の上に硬化性生物を配置する配置工程と、硬化性組成物とモールドとを接触させる接触工程と、硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、硬化性組成物とモールドとを分離する分離工程とを含みうる。ここで、モールドは、パターンを有し、接触工程、硬化工程および分離工程を経て、該パターンが転写された膜が形成されうる。配置工程は、形成工程の後に実施され、接触工程は、配置工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、分離工程は、硬化工程の後に実施される。
【実施例】
【0110】
以下、上記の実施形態を補足するために、より具体的な実施例を説明する。
<パターン形成における充填時間計算>
下地層の上に正方配列で滴下された液状硬化性組成物(A2)の液滴にモールドが接触してから、隣接する液滴同士が衝突して気泡を形成したのちに、生じた気泡が硬化性組成物(A2)やモールドや下地層へ溶解して完全に消失するまでの時間を、以下のように理論計算した。この時間が充填時間である。
【0111】
充填時間は、Dynamic Spread時間とStatic Spread時間の合計である。Dynamic Spread時間とは、モールドが硬化性組成物に接触してから、隣接する液滴同士が接触してモールド、基板、液滴の三相の界面に気体(ギャップ内気体)を閉じ込めて気泡を形成するまでの時間である。Static Spread時間とは、形成された前記気泡が硬化性組成物(A2)、モールドおよび下地層へ溶解して完全に消失するまでの時間である。
【0112】
Dynamic Spread時間については、円柱状の硬化性組成物(A2)の液滴に対する潤滑方程式とモールドの運動方程式を連成することにより計算した。潤滑方程式を採用した理由は、塗布される液滴の間隔は100μm程度、液滴分布の高さは数nm-数μm程度のオーダーであり、高アスペクトとなっているため、高さ方向の圧力変化が無視できるからである。また、レイノルズ数は十分小さいとみなせるので、非圧縮性流体として取り扱った。上記の連成方程式には解析解があり、Dynamic Spread時間TDSは、
【0113】
【0114】
となる。ここで、Vは1個の液滴の体積、Rは液滴の間隔の半分、R0は硬化性組成物(A2)の液滴の円柱の半径、μは硬化性組成物(A2)の粘度、σは表面張力、θuは硬化性組成物(A2)とモールドとの接触角、θdは硬化性組成物と下地層との接触角である。
【0115】
次に、Static Spreadに要する時間T
SSの計算方法を示す。
図4に示したように、硬化性組成物(A2)の液滴同士が衝突した瞬間は、白抜きで示した気泡は、同一体積となるような半径r
gの円柱で近似され、計算領域についても同一体積となる半径r
cの円柱で近似される。こうして作られた初期条件のもと、理想気体の状態方程式、気体質量の方程式、気体のモールドへの拡散方程式、気体の下地層への拡散方程式、気体の硬化性組成物(A2)への拡散方程式、硬化性組成物(A2)の質量保存を表す方程式、硬化性組成物領域の潤滑方程式、モールドの運動方程式、を連成することで気泡体積、圧力p
g、モールドの高さhの時間発展方程式が得られる。理想気体の方程式は、以下で与えられる。
【0116】
【0117】
ここで、pgは気体の圧力、ρgは気体の密度、Rは気体定数、Tは温度である。気体質量の方程式は、以下で与えられる。
【0118】
【0119】
ここで、Mgは気体の質量である。
【0120】
モールドあるいは下地層への気体の拡散に関する拡散方程式は、以下で与えられる。
【0121】
【0122】
ここで、Cgはモールドの気体濃度、Dgはモールドあるいは下地層へ気体の拡散係数である。境界条件は、モールドあるいは下地層と気泡とが接触している面においてのみヘンリーの法則に従った溶解が生じるとし、硬化性組成物(A2)と接触する面からは物質の交換は起きないとした。
【0123】
硬化性組成物(A2)への気体の拡散に関する拡散方程式は、モールドあるいは下地層への気体の拡散に関する拡散方程式と同じである。ただし、境界条件は、硬化性組成物(A2)と気泡とが接触している面においてのみヘンリーの法則に従った溶解が生じるとし、モールドと接触する面や計算領域の円柱側面からは物質の交換は起きないとした。硬化性組成物(A2)の質量保存を表す方程式は、以下で与えられる。
【0124】
【0125】
ここで、ρIは硬化性組成物(A2)の密度、Vdは硬化性組成物(A2)の液滴の体積、Mrは硬化性組成物(A2)の総質量である。硬化性組成物(A2)の領域の潤滑方程式は以下で与えられる。
【0126】
【0127】
ここで、μは前述のように硬化性組成物(A2)の粘度である。モールドの運動方程式は以下で与えられる。
【0128】
【0129】
目標膜厚をRLTとして、硬化性組成物(A2)の厚さhが、
【0130】
【0131】
となることをStatic Spread計算における終了条件とした。
【0132】
なお、下地層がなく硬化性組成物(A2)の液滴が直接にシリコン基板の上に配置するときは、下地層における溶解度および拡散係数を0として計算した。
<平坦化における充填時間計算>
平坦化の場合は、モールドの表面を構成する有機材料または保護層をパターン形成の充填時間計算における下地層と同じ役割をするものと考えて計算した。
<硬化性組成物中のガスの拡散係数の計算>
本実施例では、硬化性組成物(A2)を構成する500個の分子に対して10個の気体分子が含まれる分子集合体に対して、分子動力学計算を用いることで、硬化性組成物中のガスの拡散係数を計算した。本実施例では、GROMACS-2016.4(Copyright (c) 2001-2017, The GROMACS development team at Uppsala University, Stockholm University and the Royal Institute of Technology, Sweden.)を用いて分子動力学計算した。分子動力学計算方法については、非特許文献3に記載されている。
【0133】
分子動力学計算における平衡状態のサンプリングは、周期境界条件を課した単位格子内に、対象分子を配置して、各分子に含まれる原子間に働く力を各時間に対して計算し、時間発展に対する全原子の軌跡を計算することで得た。
【0134】
分子動力学計算を行うためには、力場パラメータという原子同士の相互作用を定義するためのパラメータを事前に設定する必要があるが、設定方法については後述する。分子動力学計算は、圧縮過程、緩和過程、平衡化過程、Production Run、の3段階から構成され、圧縮過程は適切な分子集合体を形成するために行われ、平衡化過程では計算系を熱力学的な平衡状態に導くために行われ、Production Runは平衡状態のサンプリングが行われる。圧縮過程に用いる計算条件は、シミュレーション時間40ps、温度700K、圧縮率設定値0.000045、気圧設定値10000atmであり、Berendsen法を用いる定温定圧シミュレーションである。平衡化過程に用いる計算条件は、シミュレーション時間5ns 、温度300K、圧縮率設定値0.000045、気圧設定値1atmであり、Berendsen法を用いる定温定圧シミュレーションである。Production Runに用いる計算条件は、シミュレーション時間20ns、温度300K、圧縮率設定値0.000045、気圧設定値1atmであり、Berendsen法を用いた定温定圧シミュレーションである。
【0135】
拡散係数は前述のProduction Runによって得られる分子の運動の履歴よりガス分子の平均二乗変位から計算した。
【0136】
力場パラメータは静電的な力場パラメータと非静電的な力場パラメータの二種類から構成される。静電的な力場パラメータについては、量子化学計算の一手法であるコーン・シャム法(交換相関汎関数はB3LYP)、基底関数6-31g*)で計算された静電ポテンシャルに対してMERZ-Singh-Killmansスキームに基づく点を用いて、電荷フィッティングを行うことで得られる、各原子への割り当て電荷を用いた。本実施例では、量子化学計算については具体的には、Gaussian社製Gaussian09(Gaussian09,RevisionC.01,M.J.Frisch,G.W.Trucks,H.B.Schlegel,G.E.Scuseria,M.A.Robb,J.R.Cheeseman,G.Scalmani,V.Barone,B.Mennucci,G.A.Petersson,H.Nakatsuji,M.Caricato,X.Li,H.P.Hratchian,A.F.Izmaylov,J.Bloino,G.Zheng,J.L.Sonnenberg,M.Hada,M.Ehara,K.Toyota,R.Fukuda,J.Hasegawa,M.Ishida,T.Nakajima,Y.Honda,O.Kitao,H.Nakai,T.Vreven,J.A.Montgomery,Jr.,J.E.Peralta,F.Ogliaro,M.Bearpark,J.J.Heyd,E.Brothers,K.N.Kudin,V.N.Staroverov,T.Keith,R.Kobayashi,J.Normand,K.Raghavachari,A.Rendell,J.C.Burant,S.S.Iyengar,J.Tomasi,M.Cossi,N.Rega,J.M.Millam,M.Klene,J.E.Knox,J.B.Cross,V.Bakken,C.Adamo,J.Jaramillo,R.Gomperts,R.E.Stratmann,O.Yazyev,A.J.Austin,R.Cammi,C.Pomelli,J.W.Ochterski,R.L.Martin,K.Morokuma,V.G.Zakrzewski,G.A.Voth,P.Salvador,J.J.Dannenberg,S.Dapprich,A.D.Daniels,O.Farkas,J.B.Foresman,J.V.Ortiz,J.Cioslowski,and D.J.Fox,Gaussian,Inc.,Wallingford CT,2010.)を用いて計算した。Merz-Singh-Killmansスキームについては非特許文献4、5に記載されている。
非静電的な力場パラメータとしては有機分子一般に用いられる、general Amber force field(GAFF、ガフ)を用いた。
<パターン形成方法における充填時間の実験による測定方法>
イソボルニルアクリレート(共栄社化学製、商品名:IB-XA)9.0重量部、ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業製、商品名:V#160)38重量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製、商品名:NP-A)47重量部、Lucirin TPO(BASF製)3重量部からなる硬化性組成物(A2-1)を調整した。
【0137】
シリコン基板上あるはい200nm厚の下地層が塗布されたシリコン基板上の26×33mmの範囲に一辺140μmの正方配列で硬化性組成物(A2-1)の3.25pLの液滴を均一に滴下し、石英製ブランクモールド(以下、モールドという)を接触させた。
下地層材料としては信越化学工業株式会社製ODL-301を用いた。
【0138】
拡大倍率5倍の光学顕微鏡でモールド越しに硬化性組成物(A2-1)の液滴の拡がり挙動、つまりモールド・基板・硬化性組成物(A2-1)の三相界面に閉じ込められた気泡の縮小・消失挙動を観察し、消失するまでの時間を測定し、硬化性組成物とモールドとが接触してから気泡が消失するまでの時間を充填時間として計測した。
【0139】
ヘリウム雰囲気(ギャップ内気体=ヘリウム)では、下地層膜厚がゼロnmの場合は2.7秒、200nm厚の場合は0.7秒であった。空気雰囲気(ギャップ内気体=空気)では、下地層膜厚がゼロnmの場合は24秒を経過しても気泡は消失せず、200nm厚の場合は0.6秒であった。二酸化炭素雰囲気(ギャップ内気体=二酸化炭素)では下地層膜厚がゼロの場合、充填時間がヘリウム雰囲気と比べて2.67倍であった。
<パターン形成方法で用いた硬化性組成物の液物性>
充填時間の理論計算をするために、硬化性組成物(A2-1)の粘度、表面張力、基板に対する接触角、モールドに対する接触角を測定した結果、表1のようになった。
【0140】
【0141】
<平坦化方法で用いた硬化性組成物の液物性>
本実施例においては、表2に記すような粘度、表面張力、および基板、モールドの表面を構成する有機材料または保護層に対する接触角を有するモデル硬化性組成物(A2-2)に対して各種計算を行った。
【0142】
【0143】
<パターン形成に関する充填時間の理論計算例>
充填時間の理論計算に必要な硬化性組成物(A2)、下地層およびモールド中のガス(ヘリウム、窒素、酸素、二酸化炭素)の拡散係数、溶解度係数をまとめると表3のようになる。
【0144】
【0145】
表2に記載の物性値の根拠を以下で説明する。
【0146】
シリコン基板に対するヘリウム、窒素、酸素、二酸化炭素の溶解度係数と拡散係数はいずれもゼロとした。これはシリコン結晶中を気体がほとんど透過しないという既知の事実に基づいている。
【0147】
モールドにおけるヘリウム拡散係数と、モールドに対するヘリウムの溶解度係数は、既知の値を用いた。
【0148】
二酸化炭素、窒素および酸素については、モールドに対する溶解度係数およびモールドにおける拡散係数はいずれもゼロとした。これは、モールドを二酸化炭素、窒素および酸素がヘリウムと比較するとほとんど透過しないという既知の事実に基づいている。
【0149】
硬化性組成物(A2)に対するヘリウム、窒素、酸素、二酸化炭素の溶解度係数および硬化性組成物におけるヘリウム、窒素、酸素、二酸化炭素については、硬化性組成物(A2-1)の成分の一つであるイソボルニルアクリレートの拡散係数として、前述の分子動力学計算を用いて求めた。
【0150】
硬化性組成物(A2)に対するヘリウムの溶解度係数は、後述の表4の比較例1のように、下地層がないときの充填時間の計算値が、下地層がないときの充填時間の実測値と一致するような値を採用した
硬化性組成物(A2)に対する窒素及び酸素の溶解度係数は、後述の表4の比較例2のように、下地層がないときの充填時間の計算値が、下地層がないときの充填時間実測値と一致する値を採用した。
【0151】
硬化性組成物(A2)に対する二酸化炭素の溶解度係数は、後述の表4の比較例3のように、下地層がないときの充填時間の計算値が、下地層がないときの充填時間の実測値と一致する値を用いた。
【0152】
下地層に対するヘリウムの溶解度係数および下地層におけるヘリウムの拡散係数は、後述の表5の比較例4のように、下地層が200nmのときの充填時間の計算値が、下地層が200nmのときの充填時間の実測値と一致する値を採用した。
【0153】
下地層における窒素、酸素および二酸化炭素の拡散係数については、ガス分子の下地層における拡散係数がガス分子の分子量に反比例するものと仮定し、ヘリウムとの質量比より算出した。
【0154】
下地層における窒素および窒素の溶解度係数については、後述の表5の比較例5のように、下地層が200nmのときの充填時間の計算値が、下地層が200nmのときの充填時間の実測値と一致する値を採用した。
【0155】
下地層に対する二酸化炭素の溶解度係数については、下地層に対する二酸化炭素の溶解度係数と下地層に対する窒素の溶解度係数との比が、硬化性組成物(A2)に対する二酸化炭素の溶解度係数と硬化性組成物(A2)に対する窒素の溶解度係数との比と一致すると仮定することにより求めた値を用いた。
【0156】
混合ガスの拡散係数および溶解度係数は、各ガスのモル比率にしたがった加重平均値を用いた。
【0157】
[比較例1、比較例2、比較例3]
下地層がないパターン形成方法において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、窒素、二酸化炭素としたときの充填時間の計算を、表1、表3に記載の各種係数を入力して行った。硬化性組成物の液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。充填時間の計算結果と実測値を表4に示す。
【0158】
【0159】
[比較例4、比較例5、実施例1]
下地層の厚さを200nmとしたときのパターン形成において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、窒素、二酸化炭素としたときの充填時間の計算を、表1、表2に記載の各種係数を入力して行った。硬化性組成物(A2-1)の液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。充填時間の計算結果と実測値を表5に示す。
【0160】
【0161】
二酸化炭素雰囲気において、充填時間が短いことが理論計算により確認された。
【0162】
[比較例6、比較例7、実施例2]
下地層の厚さを50nmとしたときのパターン形成において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、窒素、二酸化炭素としたときの充填時間の計算を、表1、表3に記載の各種係数を入力して行った。硬化性組成物(A2-1)の液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。充填時間の計算結果を表6に示す。
【0163】
【0164】
二酸化炭素雰囲気において、充填時間が短いことが理論計算により確認された。
[比較例8、比較例9、実施例3]
下地層の厚さを40nmとしたときのパターン形成において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、窒素、二酸化炭素としたときの充填時間の計算を、表1、表3に記載の各種係数を入力して行った。硬化性組成物(A2-1)の液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。充填時間の計算結果を表7に示す。
【0165】
【0166】
二酸化炭素雰囲気において、充填時間が短いことが理論計算により確認された。
[比較例10、比較例11、実施例4]
下地層の厚さを30nmとしたときのパターン形成において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、窒素、二酸化炭素としたときの充填時間の計算を、表1、表3に記載の各種係数を入力して行った。硬化性組成物(A2-1)の液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。充填時間の計算結果を表8に示す。
【0167】
【0168】
二酸化炭素雰囲気において、充填時間が短いことが理論計算により確認された。
[比較例12、比較例13、実施例5]
下地層の厚さを20nmとしたときのパターン形成において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、窒素、二酸化炭素としたときの充填時間の計算を、表1、表3に記載の各種係数を入力して行った。硬化性組成物(A2-1)の液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。充填時間の計算結果を表9に示す。
【0169】
【0170】
二酸化炭素雰囲気において、充填時間が短いことが理論計算により確認された。
[比較例14、比較例15、実施例6]
下地層の厚さを10nmとしたときのパターン形成において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、窒素、二酸化炭素としたときの充填時間の計算を、表1、表3に記載の各種係数を入力して行った。硬化性組成物(A2-1)の液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。充填時間の計算結果を表10に示す。
【0171】
【0172】
二酸化炭素雰囲気において、充填時間が短いことが理論計算により確認された。
[比較例16、実施例7]
下地層の厚さを5nmとしたときのパターン形成において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、二酸化炭素としたときの充填時間の計算を、表1、表3に記載の各種係数を入力して行った。硬化性組成物(A2-1)の液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。充填時間の計算結果を表11に示す。
【0173】
【0174】
二酸化炭素雰囲気において、充填時間が短いことが理論計算により確認された。
【0175】
[比較例17、実施例8、実施例9、実施例10]
下地層の厚さを50nmとしたときのパターン形成において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)を窒素と二酸化炭素の混合ガスとしたときの充填時間の計算を行った。液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。
モールド厚を1mmとした。充填時間の計算結果および混合ガスの物性値を表12に示す。
【0176】
【0177】
窒素と二酸化炭素との混合ガスを雰囲気ガスとした場合には、二酸化炭素のモル比率が25%以上の時に充填時間が1sよりも短くなることが理論計算により確認された。
【0178】
[比較例18、比較例19、実施例11、実施例12、実施例13、実施例14]
下地層の厚さを50nmとしたときのパターン形成において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)を酸素と二酸化炭素の混合ガスとしたときの充填時間の計算を行った。液滴の体積を3.5pl、充填後の膜厚を28nm、開始時の液滴の直径を100μmと設定した。
モールド厚を1mmとした。充填時間計算結果および混合ガスの物性値を表13に示す。
【0179】
【0180】
酸素と二酸化炭素の混合ガス雰囲気下においては、二酸化炭素のモル比率が25%以上の時に充填時間が1sよりも短くなることが理論計算により確認された。
【0181】
<平坦化に関する充填時間理論計算の例>
モールドの保護層を厚さ2000nmのCytop(AGC製)とする平坦化方法における充填時間を以下のように計算した。
【0182】
充填時間の理論計算に必要な、モールド表面の有機材料または保護層、硬化性組成物(A2-2)、およびシリコン基板中におけるガス(ヘリウム、窒素、二酸化炭素)の拡散係数、シリコン基板に対するガスの溶解度係数をまとめると表14のようになる。
【0183】
【0184】
表14に記載の物性値の根拠を以下に説明する。
【0185】
モールド表面の有機材料または保護層に対する溶解度係数、およびモールド表面の有機材料または保護層における拡散係数については、既知の値を用いた。
【0186】
硬化性組成物(A2-2)に対する溶解度係数および硬化性組成物における拡散係数については、表3と同様にイソボルニルアクリレートの値を用いた。
【0187】
シリコン基板に対する溶解度係数およびシリコン基板における拡散係数については、表3と同様にゼロとした。
【0188】
[比較例20、比較例21、実施例15]
モールド表面の有機材料または保護層の厚さを2000nmとしたときの平坦化において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、窒素、二酸化炭素としたときの充填時間の計算を、表2、表14に記載の各種係数を入力して行った。硬化性組成物(A2-2)の液滴の体積を1pl、充填後の膜厚を60nm、開始時の液滴の直径を100μmとした。充填時間の計算値を表15に示す。
【0189】
【0190】
二酸化炭素雰囲気(ギャップ内気体=二酸化炭素)において、充填時間が窒素よりも短く、ヘリウムと同程度であることが理論計算により確認された。また、一般に二酸化炭素ガスの方がヘリウムガスよりも安価であるため、充填時間がヘリウムと同等であれば、スループットを損なうことなく雰囲気ガスのコストを削減できる。
[比較例22、実施例16]
本実施形態のパターン形成方法における充填時間を以下のような実験により測定した。硬化性組成物(A2-3)として、富士フイルム株式会社製のFNIS-031Aを用いた。下地層材料としては信越化学工業株式会社製のODL-301を用いた。下地層として200nm厚のODL-301が塗布されたシリコン基板上の26×33mmの範囲に硬化性組成物(A2-3)の0.6pLの液滴を、平均液膜厚32nmとなるように均一な密度で滴下し、二酸化炭素またはヘリウムを雰囲気ガスとし、石英製ブランクモールドを接触させた。接触後、所定の待機時間を経過後にモールド越しに紫外光を照射して硬化性組成物(A2-3)を硬化させ、モールドを分離することで硬化性組成物(A2-3)の硬化膜を得た。硬化膜中の残存気泡由来の欠損部分の数を計数した。欠損部分密度が10個/cm2未満となる待機時間を充填時間と定義した。
【0191】
いずれの雰囲気ガスでも待機時間が長いほど欠損部分密度が小さくなった。充填時間は、二酸化炭素では0.7秒未満だった(実施例16)のに対し、ヘリウムでは0.9秒を要した(比較例22)。
【0192】
以下、上記の膜形成方法あるいはパターン形成方法を利用して物品を製造する物品製造方法を説明する。上記の膜形成方法あるいはパターン形成方法によって形成される硬化膜、あるいは硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。光学素子としては、マイクロレンズ、導光体、導波路、反射防止膜、回折格子、偏光素子、カラーフィルタ、発光素子、ディスプレイ、太陽電池等が挙げられる。MEMSとしては、DMD、マイクロ流路、電気機械変換素子等が挙げられる。記録素子としては、CD、DVDのような光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、磁気ヘッド等が挙げられる。センサとしては、磁気センサ、光センサ、ジャイロセンサ等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0193】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0194】
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。
図5(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0195】
図5(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図5(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0196】
図5(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0197】
図5(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図5(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0198】
次に、他の物品製造方法について説明する。
図6(a)に示すように、石英ガラス等の基板1yを用意し、続いて、インクジェット法等により、基板1yの表面にインプリント材3yを付与する。必要に応じて、基板1yの表面に金属や金属化合物等の別の材料の層を設けても良い。
【0199】
図6(b)に示すように、インプリント用の型4yを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3yに向け、対向させる。
図6(c)に示すように、インプリント材3yが付与された基板1yと型4yとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3yは型4yと基板1yとの隙間に充填される。この状態で光を型4yを透して照射すると、インプリント材3は硬化する。
【0200】
図6(d)に示すように、インプリント材3yを硬化させた後、型4yと基板1yを引き離すと、基板1y上にインプリント材3yの硬化物のパターンが形成される。こうして硬化物のパターンを構成部材として有する物品が得られる。なお、
図6(d)の状態で硬化物のパターンをマスクとして、基板1yをエッチング加工すれば、型4yに対して凹部と凸部が反転した物品、例えば、インプリント用の型を得ることもできる。 次に、上記の平坦面を有する膜を形成する膜形成方法を利用して物品を製造する物品製造方法を説明する。以下、物品製造方法は、上記の膜形成方法に従って基板の上に膜を形成する膜形成工程と、該膜が形成された該基板を処理する処理工程とを含み、それらの工程を経た該基板から物品を製造する。該処理工程は、例えば、該膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程と、該フォトレジスト膜に露光装置を用いて潜像を形成する工程と、該潜像を現像しフォトレジストパターンを形成する工程とを含みうる。該処理工程は、該フォトレジストパターンを使用して基板1を処理(例えば、エッチング、イオン注入)する工程を更に含みうる。
【0201】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。