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特許7504077置換ベンズアミドおよび治療法におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】置換ベンズアミドおよび治療法におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20240614BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240614BHJP
   C07C 237/42 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61K31/167
A61P1/04
A61P17/06
A61P19/02
A61P29/00
C07C237/42 CSP
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021506290
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019071904
(87)【国際公開番号】W WO2020035555
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】18189195.3
(32)【優先日】2018-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521046918
【氏名又は名称】ファルマシル・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ビェルク,アンデルス
(72)【発明者】
【氏名】ヘドルンド,グンナル
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-517439(JP,A)
【文献】国際公開第2005/025498(WO,A1)
【文献】Molecular Immunology,2001年,Vol.38,pp.267-277
【文献】British Journal of Cancer,1999年,VOl.81, No.6,pp.981-988
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性腸疾患の治療のための、式(I)
【化1】
[式中、Rは、C1~C6アルキルおよびC3~C6シクロアルキルから選択され、
は、HおよびC1~C3アルキルから選択され、
、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、フルオロ、クロロ、および、ブロモから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されており、
は、水素およびC1~C3アルキルから選択され、および
およびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択される]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成
【請求項2】
、R、RおよびRが、独立に、水素、C1~C2アルキル、C1~C2アルコキシ、C1~C2アルキルチオ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびトリフルオロメチルから選択され、
が、水素およびC1~C3アルキルから選択され、
およびRが、独立に、C1~C6アルキルから選択される
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
が、C1~C3アルキルから選択され、
、R、R、RおよびRが各々水素であり、
およびRが、独立に、C1~C4アルキルから選択される
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
化合物が、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロパノイルアミノ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、および
4-イソブチリルアミノ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド
から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
化合物が、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
化合物が、4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
化合物が、4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
化合物が、4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
炎症性腸疾患が、クローン病である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、および
それらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
から選択される、化合物。
【請求項12】
請求項11に記載の化合物および任意選択で薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病的炎症に起因する疾患の治療に有用な化合物に関する。より詳細には、本発明は、4-アルカノイルアミノベンズアミド誘導体、および治療法における、特に、病的炎症に起因する疾患の治療のためのその使用に関する。さらに、本発明は、このような化合物を含む医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願を通して、様々な(非特許)刊行物が、第一著者および刊行年により言及される。これらの刊行物の完全な引用は、特許請求の範囲の直前の参考文献の項に提示される。本明細書で言及されるこれらの文書および刊行物の開示は、本発明に関連する最先端技術をより完全に記載するために、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0003】
病的炎症に起因する疾患は、様々な抗炎症剤、例えば、コルチコステロイド、免疫調節剤、免疫抑制剤および腫瘍壊死因子(TNF)インヒビターにより治療され得る。TNFは、様々な炎症性、自己免疫性および免疫介在性障害、例えば、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)および乾癬に関与し、これは、このような疾患の治療におけるTNFインヒビター(抗TNF薬)の使用の基礎を形成する。しかし、リンパ腫および皮膚癌のリスクの増加、結核および真菌感染症を含む重症感染症のリスクの増加、ならびに注射部位反応を含む、抗TNF薬に関連するいくつかの重大な副作用がある。
【0004】
抗TNF薬で治療した患者がすべて、このような治療法に応答するわけではない。例えば、現在の生物学的抗TNF薬で治療したIBD患者では、患者のおよそ20%~35%のみが完全な寛解を達成する(Sandborn、2016)。さらに、完全な寛解を経験しないか、経時的に応答を失うか、または抗TNF療法に全く応答しない患者は、第2の抗TNF薬で治療した場合も応答率の実質的な低下を示す(Sands、2014)。さらに、抗TNF薬は、IBD患者の症状改善に関する作用を迅速に開始し得るが、この改善と粘膜炎の減少との間には中程度の相関しか存在しない。症状の迅速な制御は、循環TNFの直接的な中和による可能性が高いが、他の作用機構が、全炎症負荷を減少させ、粘膜治癒を誘導するのに必要とされる(Hindryckx、2018)。
【0005】
病的炎症に起因する多くの疾患は、慢性的性質のものであるか、または少なくとも長期治療を必要とし得る。このような場合、治療に起因する何らかの深刻な副作用をできる限り低減しようとすることが最も重要である。例えば、4-アミノベンズアミド誘導体、例えば、プロカインアミド(CAS No.614-39-1)およびデクロプラミド(CAS No.891-60-1)は、IBDの治療のための潜在的な治療剤として示唆されたが(Kim、2016;Ivanenkov、2011)、この化学クラスの化合物に関連する周知の神経および心血管副作用は、長期治療における潜在的な臨床的利益を上回り得る(Harrington、1983;Harron、1990)。
【0006】
クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)から主になるIBDは、生涯にわたって治療を必要とする、消化管の慢性で、しばしば進行性の状態である。状態の自然史は、疾患活動性の再発による中断を挟んで繰り返される寛解期の自然史である。CDおよびUCは、多くの類似性を有する疾患であり、多くの重複する疫学的特性、臨床特性および治療特性を共有するが、局在およびこれらの管理方法についてはしばしば異なる。
【0007】
UCは、結腸および直腸の最も内側の層が炎症を起こす疾患である。組織学的に、UCは、急性炎症と慢性炎症の両方の存在を特徴とする。炎症は、しばしば腸を空にする。潰瘍が形成され、次いでこれは出血し、膿および粘液を産生する。UCの特徴的な症状は、便意逼迫を伴う血性下痢である。他の症状としては、痙攣性の腹痛、食欲喪失、疲労、体重減少および発熱が挙げられる。UCの診断は、症状と、内視鏡所見と、組織診断との組合せに基づくものである。病態は、遺伝的素因、調節不全免疫応答および環境因子を含む多因子性である。
【0008】
CDは典型的には、腹痛、下痢および体重減少を呈する。該疾患は、ほとんどの場合、徐々に始まり、消化管のごく一部に影響を与え得るが、疾患は、経時的に広範囲に進行する可能性を有する。CDは炎症を引き起こし得、炎症は、腸壁を貫通して、瘻孔または膿瘍を引き起こす。最も一般的には、CDは、小腸および大腸の開始部分に影響を与える。しかし、該疾患は、口から肛門までの消化管のあらゆる部分に影響を与え得る。
【0009】
疾患の程度に応じて、UC患者は、1)直腸のみが関与する潰瘍性直腸炎、2)結腸直腸の遠位部から脾彎曲部までが関与する左側UC、および3)結腸の近位部から脾彎曲部までが関与する広範囲UC(全大腸炎を含む)を有すると分類され得る。症状は、炎症の程度および範囲に応じて異なり得る。患者は、疾患の重症度の1つまたは複数の尺度に従って軽度、中程度または重度の疾患活動性を有すると分類される。人は、15~35歳でUCと診断されることがより多く、より低い第2のピークは55~65歳である。診断時の中位年齢は30歳である。症例の15%において、UCが小児期に診断され、就学年齢まで存在する場合がある。伝統的に、CDとUCの両方の最も高い出現率は、北米およびヨーロッパの先進国で見出される。有病率は、100,000人あたり70~500症例と推定され、男女等しく罹患する。CDおよびUCは、医療制度および社会に対する費用のかなりの部分を占める。
【0010】
UCは、早期発症および治療法の欠如により患者の生活の質にかなりの影響を与える。現在の薬物療法は中程度に有効であり、有害作用が問題である。したがって、新しい治療戦略を確立することにより臨床管理を改善することが急務である。治療目標は、寛解の誘導および維持、ならびに合併症の予防である。症状および徴候が全くないか、またはこれらが非常に軽微である粘膜治癒患者は寛解期にあるとみなされる。炎症の制御の欠如は、症状が制御されていても、早期再発の高いリスクを伴う不良な長期予後、ならびに/または結腸切除および結腸直腸癌のリスクの増加を含む不良な長期予後と相関するため、炎症過程に対する影響は必須である。UCの腸外徴候としては、原発性硬化性胆管炎、ならびに関節、皮膚および眼の徴候が挙げられる。
【0011】
歴史的に、UC薬は、症状に基づく治療のため、すなわち、疾患の自然経過を著しく変化させずに、症状改善の誘導および維持、またはよくても臨床的寛解および合併症の予防のために主として開発された。ここ数十年、UC患者とCD患者の両方の治療目標は、臨床的応答だけに重点を置くことから、粘膜病変の治癒に関連する良好な予後を達成する必要性へと大きく進化した。粘膜治癒(MH)は、UCにおいて持続的な寛解を達成する重要なステップとなり(Froslie 2007;Peyrin-Biroulet 2015)、最近では、規制当局は、治療が疾患の徴候および症状の改善だけでなく、内視鏡的疾患活動性の改善、および理想的には腸粘膜の治癒を示すことを求めている(EMA2016)。臨床業務におけるこれらの勧告の実施は、疾患経過を変化させ、患者の生活の質を回復する可能性を有する。
【0012】
現在の薬物療法は中程度に有効であり、有害作用が問題である。治療勧告は、疾患の位置、疾患の重症度および疾患の合併症に依存する。例えば、軽度から中程度のUCの一次治療は、5-アミノサリチル酸(5-ASA)剤、すなわち、メサラジン、スルファサラジン、オルサラジンおよびバルサラジドである。スルファサラジン(SASP)は親5-ASA剤である。5-ASA療法に失敗したUC患者のおよそ50%に対して、二次治療は、コルチコステロイドおよび/または免疫調節剤(チオプリン)である。SASPは、軽度から中程度の活動性のCDの治療に、小さな利益を付与する(Lim、2016)。
【0013】
生物学的薬物、例えば、抗TNF薬は、一般に、従来の治療に失敗した患者の治療に適応される。このような薬物の弱点および欠点は本明細書で上に考察された。
現在IBDの治療法はなく、治療目標は症状を低減すること、寛解を達成し維持すること、ならびに合併症をできる限り回避することである。したがって、薬物療法は、疾患の様々な症状に対抗するための抗炎症、免疫調節、免疫抑制、抗下痢などであり得る。
【0014】
いくつかの4-アルカノイルアミノベンズアミドは、特定の使用の指示ありまたはなしで以前に記載された。
したがって、米国特許出願公開第2011/0027179号は、4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-メトキシベンズアミド、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-メトキシ-4-(プロパノイルアミノ)ベンズアミド、N-[2-[ジ(プロパン-2-イル)アミノ]エチル]-2-エトキシ-4-(プロパノイルアミノ)ベンズアミド、N-[2-ジ(ジエチルアミノ)エチル]-2-エトキシ-4-(プロパノイルアミノ)ベンズアミド、4-プロピオニルアミノ-2-メトキシ-N-(2-モルホリン-4-イル-エチル)-ベンズアミド、4-プロピオニルアミノ-N-(2-ジイソプロピルアミノ-エチル)-2-エトキシ-ベンズアミド、4-プロピオニルアミノ-N-(2-ジブチルアミノ-エチル)-2-エトキシ-ベンズアミド、4-プロピオニルアミノ-2-メトキシ-N-(2-ピペリジン-1-イル-エチル)-ベンズアミドおよび4-プロピオニルアミノ-2-メトキシ-N-(2-ピロリジン-1-イル-エチル)ベンズアミドを開示する。しかし、米国特許出願公開第2011/0027179号は、放射性ハロゲン化ベンズアミド誘導体、ならびに腫瘍診断および腫瘍療法におけるこれらの使用を対象とし、これは、開示された化合物がおそらく合成中間体として用いられることを意味する。
【0015】
米国特許第3,177,252号は、嘔吐および行動障害の治療のための、4-アルカノイルアミノベンズアミドを含む、一般式の化合物を開示するが、4-アルカノイルアミノベンズアミドの特定の例は一切挙げていない。
【0016】
WO2014/064229は、免疫源により誘発される保護免疫を増強するための4-アルカノイルアミノベンズアミドの使用を開示する。4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、4-アセトアミド-5-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-メトキシベンズアミドおよび4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドが挙げられる。
【0017】
WO2005/025498は、いくつかの4-アルカノイルアミノベンズアミドが、局所送達されると、細胞(好酸球)アポトーシスを引き起こすことを示し、この作用に基づき、好酸球浸潤に関連する急性または慢性気道炎症の治療のためのこのような化合物の使用を開示する。4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドおよびN-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(ペンタノイルアミノ)ベンズアミドが挙げられる。
【0018】
WO99/63987は、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド(N-アセチルデクロプラミド)を開示し、腫瘍または癌細胞を阻害または死滅させるため、および炎症性障害を治療する方法において潜在的に有用であるとしてこれらを使用する。
【0019】
アセカイニド(4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド;CAS No.32795-44-1)は、心臓不整脈の治療または予防に用いられてきた。
【0020】
化合物4-アセチルアミノ-N-(2-モルホリン-4-イル-エチル)ベンズアミドおよびN-(2-モルホリン-4-イルエチル)-4-(ペンタノイルアミノ)ベンズアミドは市販されているが、特定の使用は示唆されていなかった。
【0021】
本明細書で上に記載されるように、炎症性疾患に罹患している一部の患者は、抗TNF-α治療に応答しないか、またはこのような治療への応答が不十分であり、このような患者には、他の治療様式が提供されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の主目的は、疾患経過を変化させることを最終目的として、IBDの新しい治療方法を提供することである。本発明者らは、現在のものよりさらに有効なIBDの治療は、1つの転写因子(TF)、例えば、NFkBだけに影響を与えるのではなく、2つ以上のTFに同時に影響を与える薬物を必要とし得ることを想定する。コンビナトリアル制御は、2つ以上の異なるTF間の機能的相乗作用または協同的相互作用に関与し得る、非常に特異的な生物学的応答の開始を促進するのに必要とされる、様々なTFを誘導する、複数のシグナル伝達経路の統合を介して遺伝子発現を厳密に制御できる強力な機構である。任意の理論に拘束されることは望まないが、本発明者らは、式(I)の化合物が、IBDの症状を低減するのに非常に有効であることを見出し、このように優れた有効性が、哺乳動物の細胞における化合物の複数の効果、すなわちNFkBおよびNFATの阻害、ならびにAP-1活性の増強に基づくものであり得ることを想定する。このように組み合わせられた活性は、粘膜炎症レベルを同定するための信頼のおける症状スコアである、直腸出血の停止により観察されるように、驚くほど高い粘膜治癒と共に、例えば、腸粘膜で得られた非常に有利な効果の根拠となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
したがって、第1の態様は、病的炎症に起因する疾患の治療における使用のための、式(I)
【0024】
【化1】
【0025】
[式中、Rは、C1~C6アルキルおよびC3~C6シクロアルキルから選択され、
は、HおよびC1~C3アルキルから選択され、
、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、フルオロ、クロロ、ブロモ、フェニルおよびベンジルから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されており、
は、水素およびC1~C3アルキルから選択され、
およびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択されるか、または
およびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、式(II)
【0026】
【化2】
【0027】
の部分を形成し、
rは、0または1であり、
10は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
Qは、CHR11、NR11およびOから選択され、
11は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
12およびR13は、独立に、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、
QがCHR11である場合、pは1、2または3であり、
QがNR11およびOから選択される場合、pは2または3である]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、但し、疾患が、好酸球浸潤に関連する急性または慢性気道炎症ではないことを条件とする、化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0028】
さらなる態様は、式(I)
【0029】
【化3】
【0030】
[式中、Rは、C1~C6アルキルおよびC3~C6シクロアルキルから選択され、
は、HおよびC1~C3アルキルから選択され、
、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、フルオロ、クロロ、ブロモ、フェニルおよびベンジルから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されており、
は、水素およびC1~C3アルキルから選択され、
およびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択されるか、または
およびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、式(II)
【0031】
【化4】
【0032】
の部分を形成し、
rは、0または1であり、
10は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
Qは、CHR11、NR11およびOから選択され、
11は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
12およびR13は、独立に、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、
QがCHR11である場合、pは1、2または3であり、
Qが、NR11およびOから選択される場合、pは2または3である]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、但し、化合物は、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(プロパノイルアミノ)ベンズアミド、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-メトキシベンズアミド、
4-アセトアミド-5-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-メトキシベンズアミド、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-メトキシ-4-(プロパノイルアミノ)ベンズアミド、
N-[2-[ジ(プロパン-2-イル)アミノ]エチル]-2-エトキシ-4-(プロパノイルアミノ)ベンズアミド、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-エトキシ-4-(プロパノイルアミノ)ベンズアミド、
4-[アセチル(メチル)アミノ]-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-(ブタノイルアミノ)-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(ペンタノイルアミノ)ベンズアミド、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-メトキシ-4-(4-メチルペンタノイルアミノ)ベンズアミド、
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロピオニルアミノ-2-メトキシ-N-(2-モルホリン-4-イル-エチル)-ベンズアミド、
4-アセチルアミノ-N-(2-モルホリン-4-イル-エチル)ベンズアミド、
N-(2-モルホリン-4-イルエチル)-4-(ペンタノイルアミノ)ベンズアミド、
4-プロピオニルアミノ-N-(2-ジイソプロピルアミノ-エチル)-2-エトキシ-ベンズアミド、
4-プロピオニルアミノ-N-(2-ジブチルアミノ-エチル)-2-エトキシ-ベンズアミド、
4-プロピオニルアミノ-2-メトキシ-N-(2-ピペリジン-1-イル-エチル)-ベンズアミド、および
4-プロピオニルアミノ-2-メトキシ-N-(2-ピロリジン-1-イル-エチル)ベンズアミドから選択されないことを条件とする、化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0033】
さらなる態様は、治療法における使用のための、式(I)
【0034】
【化5】
【0035】
[式中、Rは、C1~C6アルキルおよびC3~C6シクロアルキルから選択され、
は、HおよびC1~C3アルキルから選択され、
、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、フルオロ、クロロ、ブロモ、フェニルおよびベンジルから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されており、
は、水素およびC1~C3アルキルから選択され、
およびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択されるか、または
およびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、式(II)
【0036】
【化6】
【0037】
の部分を形成し、
rは、0または1であり、
10は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
Qは、CHR11、NR11およびOから選択され、
11は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
12およびR13は、独立に、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、
QがCHR11である場合、pは1、2または3であり、
QがNR11およびOから選択される場合、pは2または3である]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、但し、化合物は、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-アセトアミド-5-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-メトキシベンズアミド、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(ペンタノイルアミノ)ベンズアミド、および
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド
から選択されないことを条件とする、化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0038】
いくつかの実施形態において、本明細書で上に定義される式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および任意選択で薬学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤であって、但し、化合物が、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-アセトアミド-5-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-2-メトキシベンズアミド、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(ペンタノイルアミノ)ベンズアミド、および
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド
から選択されないことを条件とする、医薬製剤が提供される。
【0039】
1つの有利な態様は、従来の抗TNF-α治療(TNF-αアンタゴニストを使用)が有用でない哺乳動物における、病的炎症に起因する疾患の治療における使用のための、例えば、従来の抗TNF-α治療が失敗したか、または禁忌である患者の治療における使用のための本明細書で定義される式(I)の化合物であって、但し、疾患が好酸球浸潤に関連する急性または慢性気道炎症ではないことを条件とする、化合物である。
【0040】
いくつかの実施形態において、病的炎症に起因する疾患は、IBD、乾癬およびRAから選択される疾患である。いくつかの実施形態において、病的炎症に起因する疾患は、IBDまたはRAである。いくつかの実施形態において、病的炎症に起因する疾患は、IBDである。
【0041】
いくつかの実施形態において、本明細書で上に定義される式(I)の化合物は、IBDの少なくとも1つの症状、例えば、下痢、直腸出血、体重減少、粘膜潰瘍、腸陰窩の破壊および腸粘膜への白血球浸潤から選択される少なくとも1つの症状の治療における使用のために提供される。
【0042】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、例えば、IBDに関連する粘膜潰瘍の治療における使用のために提供される。
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、例えば、IBDにおける腸粘膜の難治性病変の治療における使用のために提供される。
【0043】
一つのさらなる態様は、本明細書で定義される式(I)の化合物と、さらなる治療活性成分と、任意選択で薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物である。このような組成物は、病的炎症、例えば、IBDまたはRAに起因する疾患の治療に特に有用である。
【0044】
一つのさらなる態様は、本明細書で上に定義される式(I)の化合物と、(ii)さらなる治療活性成分との組合せを含むキットオブパーツであって、成分(i)および(ii)が各々、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤と混合して製剤化される、キットオブパーツである。このようなキットオブパーツは、病的炎症、例えば、IBDまたはRAの治療に特に有用である。
【0045】
さらにさらなる態様は、抗TNF-α治療が有用でない哺乳動物における、病的炎症に起因する疾患の治療のための薬剤の製造における、本明細書で上に定義される式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の使用であって、但し、疾患が、好酸球浸潤に関連する急性または慢性気道炎症ではないことを条件とする、使用である。
【0046】
さらなる態様は、抗TNF-α治療が有用でない哺乳動物における、病的炎症に起因する疾患の治療の方法であって、治療有効量の式(I)の化合物を哺乳動物に投与するステップを含み、但し、疾患が、好酸球浸潤に関連する急性または慢性気道炎症ではないことを条件とする、方法である。
【0047】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および実施例を参照することにより理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0048】
定義
本明細書で使用し、かつ別段の記載がない限り、および別段文脈から明らかでない限り、以下の用語は各々、以下に示される定義を有するものとする。
【0049】
用語「Cnアルキル」は、n個の炭素原子を鎖中に含有する直鎖または分岐鎖の飽和ヒドロカルビルラジカル、すなわち、式C2n+1の部分を指す。
用語「Cn~Cmアルキル」は、nとmの両方が整数であり、mがnより大きい、n~m個の範囲の数の炭素原子を鎖中に含有する直鎖または分岐鎖のアルキルラジカルを指す。
【0050】
用語「Cnシクロアルキル」は、式C2n-1の環状ヒドロカルビルラジカルを指す。
用語「Cn~Cmシクロアルキル」は、nとmの両方が整数であり、mがnより大きい、n~m個の範囲の数の炭素原子を環中に含有する環状ヒドロカルビルラジカルを指す。
【0051】
用語「Cn~Cmアルコキシ」は、式
【0052】
【化7】
【0053】
(式中、RはCn~Cmアルキルである)
の部分を指す。例えば、メトキシは、C1アルコキシである。
用語「Cn~Cmアルキルチオ」は、式
【0054】
【化8】
【0055】
(式中、RはCn~Cmアルキルである)
の部分を指す。例えば、メチルチオは、C1アルキルチオである。
用語「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはI、好ましくはF、ClまたはBrを指す。
【0056】
用語「ヒドロキシ」は、
【0057】
【化9】
【0058】
の部分を指す。
用語「フェニル」は、式
【0059】
【化10】
【0060】
のラジカルを指す。
用語「ベンジル」は、式
【0061】
【化11】
【0062】
のラジカルを指す。
別段の指定がない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する「AABZ」は、本明細書に記載される式(I)の化合物を意味する。さらに、別段の指定がない限り、または文脈から明らかでない限り、該用語はまた、その薬学的に許容される塩または溶媒和物(水和物を含む)を含む。
【0063】
本明細書で使用する「約」は、数値または範囲の文脈において、列挙または特許請求される数値または範囲の±20%を意味する。
本明細書で使用する表現「好酸球浸潤に関連する急性または慢性気道炎症」は、WO2005/025498に開示されるような疾患、例えば、肺炎症を指す。
【0064】
本明細書で使用する「投与」、「投与する」などは、病的状態を軽減または治癒するための、医薬、薬物または治療薬の、対象(例えば、哺乳動物対象、好ましくはヒト)への付与、分配または適用を意味する。経口投与は、インスタント化合物を対象に投与する一つの方法である。
【0065】
本明細書で使用する、ミリグラムで測定される化合物(例えば、AABZ)の「量」または「用量」は、調製物の形態にかかわらず、調製物中に存在する化合物のミリグラムを指す。「5.0mgの化合物の用量」は、調製物の形態にかかわらず、調製物中の化合物の量が5.0mgであることを意味する。したがって、塩の形態、例えば、塩酸塩の形態の場合、5.0mgの用量の遊離塩基化合物を得るのに必要な塩形態の重量は、付加的な酸の存在により5.0mgを上回る。
【0066】
本明細書で使用する「抗TNF-α治療」は、通常、治療のため、例えば、炎症性障害の治療のためにTNF-α活性および/またはTNF-α産生を低下させることを目的とした治療を指す。
【0067】
本明細書で使用する「AP-1」は、アクチベータータンパク質-1を意味する。
本明細書で使用する「組合せ」は、同時または別々(例えば、逐次または併用)投与のいずれかによる治療法における使用のための化合物の集合体を意味する。同時投与は、2つの活性成分(例えば、AABZとさらなる治療活性剤)の混合物(真の混合物、懸濁液、エマルジョンまたは他の物理的組合せのいずれか)の投与を指す。この場合、組合せは、AABZとさらなる剤との混合物であってもよく、またはAABZおよびさらなる剤が、別々の容器で提供され、投与直前に組み合わせられてもよい。別々の投与は、逐次(すなわち、連続)または併用(すなわち、同時に起こる)であり得る。
【0068】
別々の投与は、AABZおよびさらなる治療活性剤を別々の製剤として併用または逐次投与することを指すが、AABZおよびさらなる治療活性剤のいずれか1つの単独での活性と比べて、少なくとも相加的である活性が観察される、同時または十分に近接した時点での投与である。
【0069】
本明細書で使用する「CD」はクローン病を意味する。
本明細書で使用する「Cpd A」は、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド(N-アセチルデクロプラミド)塩酸塩を意味する。
【0070】
本明細書で使用する「病的炎症に起因する疾患」は、炎症性腸疾患、リウマチ性疾患、自己免疫疾患、さらに炎症が主要な役割を果たすような疾患、例えば、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症および卒中を指す。より詳細には、本明細書で使用する「病的炎症に起因する疾患」は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身性ループスエリテマトーデス、強直性脊椎炎、乾癬、多発性硬化症およびI型糖尿病からなる群から選択される疾患および障害、ならびに特に、潰瘍性大腸炎、クローン病および関節リウマチからなる群から選択される疾患を指す。
【0071】
本明細書で使用する「DSS」は、デキストラン硫酸ナトリウムを意味する。
本明細書で使用する「有効」は、治療活性剤、例えば、AABZの量を指す場合、本発明の方式で使用したとき、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激またはアレルギー応答)を伴わず、妥当な利益/リスク比に相応する、所望される治療応答を得るのに十分な量を指す。
【0072】
本明細書で使用する「賦形剤」は、長期安定化、固形製剤に嵩を与えるため、担体および/または希釈剤として作用するため、例えば、吸収を促進するか、粘度を低下させるか、または溶解度を高めることにより最終剤形中の活性成分に対して治療強化を付与するためなどの目的のために含まれる、医薬品の活性成分と一緒に製剤化される物質を指す。賦形剤はまた、粉末流動性を促進するか、または非付着性を提供することにより、製造過程において有用であり得る。賦形剤の例としては、接着防止剤、結合剤、コーティング剤、着色剤、崩壊剤、香味料、流動促進剤、潤滑剤、保存料、吸着剤、甘味料およびビヒクル(担体)がある。
【0073】
本明細書で使用する「IkB」はカッパBのインヒビターを意味する。
本明細書で使用する「炎症性腸疾患」または「IBD」は、炎症および/または潰瘍に関連する腸疾患を指し、例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む。
【0074】
本明細書で使用する、対象における疾患の進行または疾患の合併症の「阻害」は、対象における疾患の進行および/または疾患の合併症の予防または低減を意味する。
本明細書で使用する「MH」は粘膜治癒を意味する。
【0075】
本明細書で使用する「粘膜治癒」は、例えば、腸粘膜の粘膜潰瘍の減少を指す。治癒は、完全または部分的であり得、永久である場合も、または例えば、数週間、数ヶ月間もしくは数年間にわたって持続するなど、そうでない場合もある。粘膜治癒は、下痢、直腸出血および疼痛などの症状の減少により観察され得る。粘膜治癒はまた、内視鏡検査(大腸内視鏡検査)により確認できる。
【0076】
本明細書で使用する「NFAT」は、活性化T細胞の核内因子を意味する。
本明細書で使用する「NFkB」は、核内因子カッパBを意味する。
本明細書で使用する「患者」または「対象」は、動物およびヒトから選択される哺乳動物患者または対象を指す。
【0077】
本明細書で使用する「薬学的に許容される」は、ヒトおよび/または動物による使用に好適であり、一般に、通常の使用で安全および非毒性である、すなわち、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激およびアレルギー応答)を伴わず、妥当な利益/リスク比に相応するものを指す。
【0078】
本明細書で使用する「SASP」は、スルファサラジンを意味する。
本明細書で使用する「その塩」は、化合物の酸または塩基塩を製造することにより修飾されたインスタント化合物の塩である。この点で、用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の比較的非毒性、無機および有機の酸または塩基付加塩を指す。例えば、このような塩を調製する1つの手段は、本発明の化合物を無機酸で処理することによるものである。
【0079】
本明細書で使用する「溶媒和物」は、化合物(例えば、式(I)の化合物)と1つまたは複数の溶媒分子との、例えば、水素結合による物理的会合を意味する。「溶媒和物」は、溶液相と単離可能な溶媒和物の両方を包含する。例示的な溶媒和物としては、水和物、エタノール溶媒和物、メタノール溶媒和物およびイソプロパノール溶媒和物が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒和の方法は、一般に当業者に公知である。
【0080】
本明細書で使用する「病的炎症に起因する疾患に罹患している対象」は、このような疾患を有すると臨床的に診断された対象を意味する。
本明細書で使用する、病的炎症に起因する疾患に関連する「症状」は、疾患に関連する任意の臨床的または実験的徴候を含み、対象が、感知または観察できるものに限定されない。
【0081】
本明細書で使用する「TF」は、DNAからメッセンジャーRNAへの遺伝情報の転写速度を制御するタンパク質である転写因子を意味する。
本明細書で使用する「TNF」は、腫瘍壊死因子を意味する。
【0082】
本明細書で使用する「TNF-α」は、腫瘍壊死因子アルファを意味する。
本明細書で使用する「治療する」は、例えば、疾患もしくは障害、例えば、IBDの阻害、退行もしくは停滞を誘導すること、あるいは疾患もしくは障害の症状を軽減すること、減少させること、抑制すること、阻害すること、その重症度を低下させること、または排除もしくは実質的に排除すること、または改善することを包含する。
【0083】
本明細書で使用する「UC」は、潰瘍性大腸炎を意味する。
式(I)の化合物
本明細書で定義される式(I)の化合物において、Rは、C1~C6アルキルおよびC3~C6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、C1~C5アルキルおよびC3~C5シクロアルキル、例えば、C1~C4アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから、またはC1~C3アルキルおよびC3シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、C1~C6アルキルから、例えば、C1~C5アルキルから、またはC1~C4アルキルから、またはC1~C3アルキルから、またはC1~C2アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、シクロブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、neo-ペンチルおよびシクロペンチルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ペンチルおよびneo-ペンチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチルおよびシクロブチルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチルおよびtert-ブチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ペンチルおよびneo-ペンチルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチルおよびtert-ブチルから、またはメチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、例えば、メチル、エチル、およびiso-プロピルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態において、Rは、メチルである。いくつかの実施形態において、Rは、エチルである。いくつかの実施形態において、Rは、iso-プロピルである。
【0084】
部分は、水素およびC1~C3アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、例えば、水素、メチルおよびエチルから、または水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素である。
【0085】
、R、RおよびR部分は、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、フルオロ、クロロ、ブロモ、フェニルおよびベンジルから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、およびフルオロ、クロロ、ブロモから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、およびフルオロ、クロロ、ブロモから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。さらに他の実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキルおよびフルオロ、クロロ、ブロモから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。さらに他の実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルコキシ、およびフルオロ、クロロ、ブロモから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。さらに他の実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、およびフルオロ、クロロ、ブロモから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。さらにさらなる実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、およびフルオロ、クロロ、ブロモから選択される。
【0086】
、R、RおよびRのいずれか1つが、C1~C3アルキルから選択される場合、これは、例えば、メチルおよびエチルから選択され得、特に、これはメチルであり得る。
【0087】
、R、RおよびRのいずれか1つが、C1~C3アルコキシから選択される場合、これは、例えば、メトキシおよびエトキシから選択され得、特に、これはメトキシであり得る。いくつかの実施形態において、RおよびRは、C1~C3アルコキシではない。
【0088】
、R、RおよびRのいずれか1つが、C1~C3アルキルチオから選択される場合、これは、例えば、メチルチオおよびエチルチオから選択され得、特に、これはメチルチオであり得る。
【0089】
、R、RおよびRのいずれか1つが、フルオロ、クロロおよびブロモから選択されるハロゲンである場合、前記ハロゲンは、クロロおよびブロモから選択され、特に、これはクロロである。いくつかのさらなる実施形態において、R、R、RおよびRのいずれか1つが、フルオロ、クロロおよびブロモから選択されるハロゲンである場合、前記ハロゲンはさらに、フルオロおよびクロロから選択される。
【0090】
いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチルチオ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、フェニルおよびベンジルから、例えば、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチルチオ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびトリフルオロメチルから、または、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびトリフルオロメチルから、例えば、水素、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびトリフルオロメチルから、または水素、メチル、メトキシ、クロロおよびトリフルオロメチルから、または水素、メチル、メトキシおよびクロロから、または、水素、メトキシおよびクロロから、または水素、メチルおよびクロロから、例えば、水素およびクロロから選択される。
【0091】
上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つは水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの2つは水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの3つは水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRは各々水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、水素とは異なる。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの1つは、水素とは異なり、他の3つは水素であり、例えば、R、R、RおよびRのうちの1つ(例えば、R)は、ハロゲン、例えば、クロロであり、他の3つは水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、Rは水素とは異なり、R、RおよびRは各々水素である。いくつかの実施形態において、Rは水素とは異なり、R、RおよびRは各々水素である。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRのうちの1つ(例えば、R)は、フルオロ、クロロまたはブロモ、特にクロロであり、他の3つは水素である。いくつかの実施形態において、Rは水素またはハロゲン、例えば、水素またはクロロであり、R、RおよびRは水素である。いくつかの実施形態において、RおよびRは水素であり、例えば、RおよびRは水素であり、RおよびRのうちの少なくとも1つは水素とは異なり、例えば、RとRの両方が、水素とは異なる。いくつかの実施形態において、RおよびRは水素であり、例えば、RおよびRは水素であり、RおよびRのうちの少なくとも1つは水素とは異なり、例えば、RとRの両方が、水素とは異なる。いくつかの実施形態において、RおよびRは水素であり、例えば、RおよびRは水素であり、RおよびRのうちの少なくとも1つは水素とは異なり、例えば、RとRの両方が、水素とは異なる。上記実施形態のいくつかにおいて、RおよびRは、メトキシまたはエトキシではない。
【0092】
部分は、水素およびC1~C3アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素、メチル、エチル、プロピルおよびiso-プロピルから、例えば、水素、メチル、エチルおよびプロピルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素、メチルおよびエチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素である。
【0093】
およびR部分は、独立に、C1~C6アルキルから選択されるか、またはRおよびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義される式(II)の部分を形成する。いくつかの実施形態において、RおよびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択される。RおよびRがC1~C6アルキルから選択される場合、RおよびRは、例えば、C1~C5アルキルから、またはC1~C4アルキルから、またはC1~C3アルキルから、例えば、メチルおよびエチルから選択され得る。いくつかの実施形態において、RおよびRがC1~C6アルキルから選択される場合、RとRの両方がエチルである。
【0094】
いくつかの実施形態において、RおよびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義される式(II)の部分を形成し、この場合、式(I)の化合物は、式(Ia)
【0095】
【化12】
【0096】
(式中、R~R、R10、Q、pおよびrは、本明細書で定義される通りである)
で表され得る。
式(II)の部分において、rは0または1である。いくつかの実施形態において、rは0である。いくつかの実施形態において、rは1である。
【0097】
10部分は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R10は、メチル、エチルおよびシクロプロピルから選択され、前記メチル、エチルおよびシクロプロピルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R10は、ヒドロキシ、ハロゲンおよびシアノで、例えば、ハロゲン、例えば、フルオロで任意選択で置換されているC1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R10は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキル、例えば、メチル、エチルおよびシクロプロピル、特にメチルから選択される。
【0098】
Q部分は、CHR11、NR11およびOから選択される。いくつかの実施形態において、Qは、CHR11およびNR11から選択される。いくつかの実施形態において、Qは、CHR11およびOから選択される。いくつかの実施形態において、Qは、CHR11である。いくつかの他の実施形態において、Qは、NR11およびOから選択される。
【0099】
11部分は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R11は、水素、メチル、エチルおよびシクロプロピルから選択され、前記メチル、エチルおよびシクロプロピルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R11は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲンまたはシアノ、例えば、ハロゲン、例えば、フルオロで任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R11は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから、例えば、水素、メチル、エチルおよびシクロプロピル、または水素、メチルおよびエチルから、特に、水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、R11は、水素である。いくつかの他の実施形態において、R11は、本明細書で上に定義される通りであるが、水素とは異なる。
【0100】
11が、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で置換されているC1~C3アルキルまたはC3~C4シクロアルキルである場合、このような置換基の数は、1つまたは複数、例えば、1~3または1~2または1であり得る。
【0101】
12部分は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R12は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、例えば、水素、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、または水素、メチルおよびエチルから、例えば、水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、R12は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R12は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、またはメチルおよびエチルから選択され、例えば、R12は、メチルである。いくつかの他の実施形態において、R12は、水素である。
【0102】
13部分は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R13は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、例えば、水素、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、または水素、メチルおよびエチルから、例えば、水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、R13は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R13は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、またはメチルおよびエチルから選択され、例えば、R13は、メチルである。いくつかの他の実施形態において、R13は、水素である。
【0103】
式(II)の部分において、QがCHR11である場合、pは1、2または3であり、QがNR11およびOから選択される場合、pは2または3である。いくつかの実施形態において、pは2または3である。いくつかの実施形態において、pは2である。いくつかの実施形態において、QはCHR11であり、pは1または2である。いくつかの実施形態において、QはCHR11であり、pは2である。いくつかの他の実施形態において、QはCHR11であり、pは1である。
【0104】
いくつかの実施形態において、Rは、C1~C6アルキルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RおよびRは独立に、C1~C6アルキルから選択されるか、またはRおよびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義される式(II)の部分を形成し、R10はC1~C3アルキルであり、QはCHR11であり、R11は水素およびC1~C3アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、C1~C6アルキルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RおよびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、R、RおよびRは、独立に、C1~C3アルキルから選択される。
【0105】
いくつかのさらなる実施形態において、Rは、C1~C3アルキルであり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、独立に、C1~C3アルキルから選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。いくつかのさらなる実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、R、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。
【0106】
いくつかの実施形態において、Rは、水素およびメチルから選択され、R、R、RおよびRは独立に水素およびクロロから選択され、Rは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。
【0107】
いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、Rは、水素またはメチルであり、Rは、クロロまたは水素であり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、Rは、水素またはメチルであり、Rは、クロロまたは水素であり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、エチルである。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、Rは、水素であり、Rは、クロロまたは水素であり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、Rは、水素であり、Rは、クロロであり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書で定義される使用のための式(I)の化合物は、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロパノイルアミノ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、および
4-イソブチリルアミノ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド
から選択される。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書で定義される使用のための式(I)の化合物は、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、および
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
から選択される。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書で定義される使用のための式(I)の化合物は、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、および
4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド
から選択される。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書で定義される使用のための式(I)の化合物は、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである。
【0112】
いくつかのさらなる実施形態において、治療法における使用のための式(I)の化合物は、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(プロパノイルアミノ)ベンズアミド、
4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、および
4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド
から選択される。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される式(I)の化合物は、
4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、および
4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド
から選択される。
【0114】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである。いくつかの実施形態において、AABZは、式(I)の化合物の塩酸塩、例えば、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩である。
【0115】
本明細書で言及されるいくつかの化合物の構造式を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
薬学的に許容される塩
AABZは、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩として提供され得る。酸または塩基付加塩の調製において、好ましくは、好適な治療上許容される塩を形成するこのような酸または塩基が用いられる。このような酸の例としては、ハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、脂肪族、脂環式、芳香族または複素乾式のカルボン酸またはスルホン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、エンボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ハロゲンベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸がある。塩基付加塩としては、無機塩基、例えば、アンモニウムまたはアルカリもしくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩など、ならびに有機塩基、例えば、アルコキシド、アルキルアミド、アルキルおよびアリールアミンから誘導されるものなどが挙げられる。本発明の塩の調製に有用な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、塩酸塩として提供される。
【0118】
本明細書で使用する塩製剤に関する当該教示、およびその調製方法は、例えば、米国特許第3,177,252号に記載されており、このような教示は、参照により本出願に組み込まれる。
【0119】
薬学的に許容される溶媒和物
任意の薬学的に許容される溶媒和物は、本発明に従って可能であると想定される。例示的な溶媒和物としては、水和物、エタノール溶媒和物、メタノール溶媒和物およびイソプロパノール溶媒和物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、溶媒和物は水和物である。
【0120】
式(I)の化合物の調製方法
式(I)の化合物は、米国特許出願公開第2011/0027179号およびWO2005/025498の一般的な手順に従って当業者によって調製され得る。
【0121】
例えば、式(I)の化合物は、以下の反応スキーム
【0122】
【化13】
【0123】
により表される2つの連続的な求核置換反応を含む方法により調製され得る。
上記の反応スキームにおいて、Rが、例えば、C1~C3アルキルである化合物1を、Lが好適な脱離基、例えば、Clである化合物2と反応させて、化合物3を得る。その後、化合物3を、反応のための触媒として塩化アンモニウムの存在下で第2のアミン4と反応させて、本明細書で定義される式(I)の化合物を得る。式(I)の化合物は、任意選択で、好適な薬学的に許容される塩または溶媒和物、例えば、ハロゲン化水素塩に変換され得る。
【0124】
式(I)の化合物の使用
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物(以下、本明細書でAABZと総称する)は、病的炎症に起因する疾患の治療に有用であるが、但し、疾患は、好酸球浸潤に関連する急性または慢性気道炎症ではないことを条件とする、。
【0125】
いくつかの実施形態において、病的炎症に起因する疾患は、本明細書で定義される通りであるが、気道炎症ではない。
いくつかの実施形態において、病的炎症に起因する疾患は、IBD、乾癬およびRAから選択される。
【0126】
いくつかの実施形態において、疾患は、炎症性疾患、例えば、IBDである。いくつかの実施形態において、疾患はRAである。いくつかの実施形態において、IBDはUCである。いくつかの実施形態において、IBDはCDである。いくつかの実施形態において、疾患はIBDまたはRAである。いくつかの実施形態において、疾患はUC、CDまたはRAである。いくつかの実施形態において、疾患はUCまたはCDである。
【0127】
非常に有利には、AABZは、例えば、患者が、抗TNF-α治療に対して十分な応答を示さないため、またはいくつかの他の理由によりこのような治療が禁忌であるため、抗TNF-α治療が有用とみなされない患者における、病的炎症に起因する疾患の治療に用いられ得る。したがって、いくつかの実施形態において、AABZは、抗TNF-α治療が失敗したか、または禁忌である患者の治療における使用のために提供される。例えば、患者は、IBDに罹患している患者であり得、この患者に対して抗TNF-α治療(すなわち、TNF-αアンタゴニストを用いる治療)は、IBDの症状の十分な軽減をもたらさないか、またはこの患者は、いくつかの他の理由により、このような方式で治療できない。
【0128】
症状は、炎症の重症度に応じて異なり、軽度から重度の範囲であり得る。CDとUCの両方に共通する徴候および症状としては、下痢、発熱および疲労、腹痛および痙攣、便中の血液ならびに食欲減退が挙げられる。RAの症状としては、関節痛、関節圧痛、関節膨張、関節発赤および関節硬直が挙げられる。
【0129】
1つの特に有利な実施形態は、抗TNF-α治療が失敗したか、または禁忌である、IBD、例えば、UCまたはCDに罹患している患者の治療における使用のためのAABZである。さらに有利な態様は、粘膜潰瘍、例えば、腸粘膜潰瘍、例えば、IBDに関連する腸粘膜潰瘍の治療における使用のためのAABZである。
【0130】
AABZの有利な特徴は、有害な運動障害、例えば、短期間の錐体外路障害および遅発性ジスキネジアの発生のリスクを実質的に低減する、ドーパミンD2受容体に対するその低い親和性に関係がある。したがって、一態様は、ドーパミンD2受容体遮断による悪影響なしに、慢性疾患の長期治療に使用できるAABZである。
【0131】
いくつかの実施形態において、AABZは、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、特に塩酸塩である。
いくつかの実施形態において、AABZは、経口投与により投与される。いくつかの実施形態において、AABZは、好ましくは固体単位製剤で投与され、これはより好ましくは錠剤である。
【0132】
いくつかの実施形態において、AABZは、毎日投与される。
いくつかの実施形態において、投与されるAABZの量は、1日0.1~25mg/kg(対象の体重1kgあたりの薬物のmg)である(任意の重量値は、非塩、非溶媒和形態に基づく)。他の実施形態において、AABZの投与量は、1日0.3~10mg/kgである。
【0133】
いくつかの実施形態において、投与されるAABZの量は、5.0~2000mg/日または10~1000mg/日である。
いくつかの実施形態において、AABZは、1日1回投与される。他の実施形態において、AABZは、1日2回投与される。他の実施形態において、AABZは、1日3回投与される。さらに他の実施形態において、AABZは、1日4回投与される。
【0134】
いくつかの実施形態において、AABZの投与は、少なくとも2週間継続する。他の実施形態において、AABZの投与は3ヶ月以上継続する。さらに他の実施形態において、AABZの投与は、12ヶ月以上継続する。
【0135】
治療される対象
本発明に従って治療される対象は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物(動物)を含む哺乳動物である。非ヒト哺乳動物の例としては、霊長類、家畜動物、例えば、農場動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど、ならびに愛玩動物、例えば、イヌおよびネコなどがある。好ましい実施形態において、対象はヒトである。いくつかの他の実施形態において、対象は、非ヒト哺乳動物、例えば、イヌまたはウマである。
【0136】
医薬組成物
一態様は、ある量のAABZ、および任意選択で(しかし好ましくは)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、例えば、担体を含む医薬組成物である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、病的炎症に起因する疾患、例えば、IBD、乾癬またはRAに罹患している対象の治療における使用のためのものである。
【0137】
AABZは、意図される投与形態に関して、かつ従来の薬務と一致するように好適に選択される、好適な医薬希釈剤、増量剤もしくは担体、または任意の他の薬学的に許容される賦形剤と混合して投与され得る。好ましい投与量単位は、経口投与に好適な形態である。AABZは、単独で投与できるが、一般に薬学的に許容される担体と混合され、錠剤またはカプセル、リポソームの形態で、または凝集粉として投与される。好適な固体担体の例としては、ラクトース、スクロース、ゼラチンおよび寒天が挙げられる。カプセルまたは錠剤は容易に製剤化され得、嚥下または咀嚼しやすいものであり得る。他の固体形態としては、顆粒および原末が挙げられる。
【0138】
錠剤は、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、流動誘導剤および融解剤を含有し得る。例えば、錠剤またはカプセルの投与量単位形態での経口投与のために、AABZは、経口で非毒性の薬学的に許容される不活性な担体、例えば、ラクトース、ゼラチン、寒天、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、微結晶セルロースなどと組み合わせられ得る。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコースもしくはβ-ラクトース、コーンスターチ、天然および合成ガム、例えば、アカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウム、ポビドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形で用いられる潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
製剤(例えば、錠剤またはカプセル)の用量単位中のAABZの量は、例えば、5~500mgであり得る(任意の量は、非塩の形態および非溶媒和形態の式(I)の化合物に基づく)。いくつかの実施形態において、AABZの量は、10~100mgである。他の実施形態において、AABZの量は、5~25mgである。一実施形態において、組成物中のAABZの量は、500mgである。他の実施形態において、AABZの量は、25mgである。他の実施形態において、AABZの量は、100mgである。他の実施形態において、AABZの量は、10mgである。他の実施形態において、AABZの量は、10mg未満である。
【0140】
いくつかの実施形態において、AABZの総量は、製剤の0.1~95重量%、例えば、0.5~50重量%、または1~20重量%であり、残りは、例えば、担体および任意の他の賦形剤を含む。
【0141】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩を含む。
【0142】
AABZとさらなる治療活性成分とを組み合わせた使用
本明細書の一態様は、TNF-α阻害が有用でない哺乳動物における病的炎症に起因する疾患の治療における、少なくとも1つのさらなる治療活性成分と組み合わせた使用のための、本明細書で定義される式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物(AABZ)であって、但し、疾患が、好酸球浸潤に関連する急性または慢性気道炎症ではないことを条件とする、化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0143】
いくつかの実施形態において、治療は、ある量のAABZ、およびさらなる治療活性成分を対象(哺乳動物患者、例えば、ヒト患者)に投与するステップを含み、該量は一緒に接種された場合、対象を治療するのに有効である。いくつかの実施形態において、AABZとさらなる治療活性成分との総量は、対象を治療するために一緒に投与された場合、同じ総量でいずれかの成分が単独で投与された場合に得られる効果の単純和より良好な全体的効果、すなわち、相乗効果をもたらす。
【0144】
さらなる治療活性成分は、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、コルチコステロイド、細胞毒性薬、免疫抑制薬および抗体から選択され得る。
いくつかの実施形態において、治療は、IBD(例えば、UCまたはCD)または例えば、RAに罹患している対象の治療において、アドオン療法として、またはさらなる治療活性成分と組み合わせてAABZを対象(哺乳動物患者、例えば、ヒト患者)に投与するステップを含む。好ましくは、治療は、軽度から中程度、重度までの疾患活動性を有する患者における臨床的寛解の誘導および維持をもたらす。いくつかの実施形態において、治療は寛解期の患者を対象とし、疾患の再発を予防する。
【0145】
いくつかの実施形態において、さらなる治療活性成分は、経口投与により投与される。さらに他の実施形態において、さらなる治療活性成分は、直腸投与により投与される。
いくつかの実施形態において、さらなる治療活性成分は、1日1回投与される。他の実施形態において、さらなる治療活性成分は、1日2回投与される。他の実施形態において、さらなる治療活性成分は、1日3回投与される。さらに他の実施形態において、さらなる治療活性成分は、1日4回投与される。
【0146】
AABZの量およびさらなる治療活性成分の量は、一緒に摂取された場合、好ましくは対象のIBDまたはRAの症状を軽減するのに有効である。
いくつかの実施形態において、さらなる治療活性成分の投与は、実質的にAABZの投与に先行する。すなわち、対象は、AABZの投与による治療法を開始する前に、さらなる治療活性成分の投与による治療法を受ける。
【0147】
いくつかの実施形態において、対象は、AABZの投与による治療法を開始する前に、さらなる治療活性成分の投与による治療法を少なくとも6ヶ月間受ける。いくつかの実施形態において、対象は、AABZの投与による治療法を開始する前に、さらなる治療活性成分の投与による治療法を少なくとも12ヶ月間受ける。いくつかの実施形態において、対象は、AABZの投与による治療法を開始する前に、さらなる治療活性成分の投与による治療法を少なくとも24ヶ月間受ける。
【0148】
いくつかの実施形態において、AABZおよびさらなる治療活性成分の投与は、少なくとも2週間継続する。他の実施形態において、AABZおよびさらなる治療活性成分の投与は、3ヶ月以上継続する。さらに他の実施形態において、AABZおよびさらなる治療活性成分の投与は、12ヶ月以上継続する。
【0149】
いくつかの実施形態において、AABZおよびさらなる治療活性成分は、1:100~100:1、1:50~50:1、1:20~20:1、1:10~10:1、1:5~5:1または1:2~2:1の範囲、例えば、約1:1のAABZ対さらなる治療活性成分のモル比で、互いに組み合わせて(同時または別々および併用または逐次)投与される。
【0150】
いくつかの実施形態において、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、およびさらなる治療活性成分は、互いに組み合わせて投与される。
【0151】
さらなる態様は、本明細書で言及される疾患、例えば、IBDまたはRAに罹患している対象の治療における、アドオン療法としてのまたはさらなる治療活性成分と組み合わせた使用のためのAABZである。
【0152】
一態様は、AABZとさらなる治療活性成分との組合せを含むキットオブパーツであり、成分AABZおよびさらなる治療活性成分は各々、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤、例えば、担体と混合して製剤化される。
【0153】
いくつかの実施形態において、a)ある量のAABZおよび薬学的に許容される担体を含む第1の医薬組成物、b)ある量のさらなる治療活性成分および薬学的に許容される担体を含む第2の医薬組成物、ならびにc)第1の医薬組成物と第2の医薬組成物との一緒の使用について、例えば、IBDまたは自己免疫疾患、例えば、RAの治療における使用についての説明書を含む、キットオブパーツが提供される。
【0154】
一態様は、ある量のAABZ、ある量のさらなる治療活性成分、および任意選択で少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、例えば、担体を含む医薬組成物である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、IBDまたは自己免疫障害、例えば、RAに罹患している対象の治療における使用のためのものである。
【0155】
一般に、好適な医薬組成物は、AABZの医薬製剤に関連する本明細書で上に記載されるものであるが、組成物は、AABZに加えて、さらなる治療活性成分も含有する。
いくつかの実施形態において、医薬組成物中のAABZ対さらなる治療活性成分のモル比は、1:100~100:1、1:50~50:1、1:20~20:1、1:10~10:1、1:5~5:1または1:2~2:1の範囲であり、例えば、これは約1:1であり得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、AABZおよびさらなる治療活性成分の総量は、製剤の0.1~95重量%、例えば、0.5~50重量%、または1~20重量%であり、残りは、例えば、担体および任意の他の賦形剤を含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書に開示されるAABZ、例えば、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、ならびにさらなる治療活性成分、および任意選択で薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0158】
本発明の経口剤形を製剤化するために用いられ得る、技術、薬学的に許容される担体および賦形剤の具体例は、例えば、EP1720531B1に記載される。本発明において有用な剤形を製造するための一般的な技術および組成は、以下の参考文献に記載される:Modern Pharmaceutics、9および10章(Banker & Rhodes編、1979);Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(Liebermanら、1981);Ansel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms第2版(1976);Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版(Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985)(および改訂版);Advances in Pharmaceutical Sciences(David Ganderton、Trevor Jones編、1992);Advances in Pharmaceutical Sciences第7巻(David Ganderton、Trevor Jones、James McGinity編、1995);Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms (Drugs and the Pharmaceutical Sciences、 シリーズ36(James McGinity編、1989);Pharmaceutical Particulate Carriers:Therapeutic Applications:Drugs and the Pharmaceutical Sciences第61巻(Alain Rolland編、1993);Drug Delivery to the Gastrointestinal Tract(Ellis Horwood Books in the Biological Sciences. Series in Pharmaceutical Technology;J.G. Hardy、S.S. Davis、Clive G.Wilson編);Modern Pharmaceutics Drugs and the Pharmaceutical Sciences第40巻(Gilbert S. Banker、Christopher T. Rhodes編)。これらの参考文献は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0159】
以下の実施例は、その範囲を制限することなく、本発明を例示することが意図される。
【実施例
【0160】
中間体1
エチル-4-アセトアミド-3-クロロベンゾエート
エチル-4-アミノ-3-クロロベンゾエート(2.0g、10mmol)および1.4gのトリエチルアミンを20mLのジクロロメタンに溶解した。5mLのジクロロメタン中0.9gの塩化アセチルを0℃で滴下で添加した。反応混合物を室温に到達させ、3時間撹拌し、水で洗浄し、乾燥した。溶媒を蒸発させて、2.0gの表題生成物を得た。
【0161】
実施例1
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩
1.5gのエチル-4-アセトアミド-3-クロロベンゾエート(1.5g、6.2mmol)を、触媒量の塩化アンモニウムと共に、15mLのN,N-ジエチルエチレンジアミンに溶解した。反応混合物を3時間還流した。ジクロロメタンを添加し、水で4回洗浄して、過剰なジアミンを除去した。溶媒の乾燥および蒸発により、表題化合物の遊離塩基を得た。残渣をエタノール-エーテルに溶解し、エタノールHClで酸性化した。沈殿した固体を回収し、表題化合物(1.1g、3.1mmol、収率50%)を得た。
1H NMR (DMSO-d6): δ1,23 (t, 6H), 2,15 (s, 3H), 3,17-3,23 (6H), 3,65 (q, 2H), 7,88 (d, 1H), 7,94 (s, 1H), 8,06 (s, 1H), 9,05 (t, 1H), 9,68 (s, 1H), 10,42 (s, 1H).
実施例2
4-プロパノイルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩
4-アミノ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩(0.5g、1.6mmol)、ピリジン(5.0mL)および無水プロピオン酸(5.0mL)を50℃で2.5時間撹拌した。次いで、揮発物を、ロータリーエバポレーターを用いて除去した。水(5mL)を添加し、蒸発させた。残渣を水から凍結乾燥し、表題化合物(0.6g、収率100%、HPLC純度98%)を得た。
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 8.07 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.01 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.83 (dd, J = 8.6, 2.0 Hz, 1H), 3.76 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.39 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.34 (q, J = 7.3 Hz, 4H), 2.52 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.36 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.23 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
実施例3
4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩
化合物4-イソブチリルアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩を、無水プロピオン酸の代わりに、無水イソ酪酸の使用により、本質的に同じ方式で得た。HPLCによる純度99%。
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 8.01 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 8.00 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.83 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1H), 3.76 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.39 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.34 (q, J = 7.3 Hz, 4H), 2.80 (七重線, J = 6.8 Hz, 1H), 1.36 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.24 (d, J = 6.9 Hz, 6H).
実施例4
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩
4-アミノ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩(2.5g、9.1mmol)の懸濁液を、20mLの無水ピリジン中で撹拌した。懸濁液に、10mLの無水酢酸を添加した。反応は、わずかに発熱性であった。1時間後、沈殿物を濾過除去し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥して、表題化合物(2.83g、9.0mmol、収率99%)を得た。NMRによる純度98%。
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 7.84 (d, 2H), 7.68 (d, 2H), 3.74 (t, 2H), 3.37 (t, 2H), 3.35 - 3.29 (m, 4H), 2.14 (s, 3H), 1.35 (t, 6H).
生物学的アッセイ
UCは、病変結腸への炎症細胞、例えば、マクロファージの浸潤を特徴とする、炎症性疾患である。マクロファージは、炎症誘発性メディエーター、例えば、TNF-αを放出することにより、炎症応答の開始および伝播において重要な役割を果たす。リポポリサッカリド(LPS)は、炎症応答の強力なイニシエーターである。LPS刺激中、NF-kBシグナル伝達が活性化されて、免疫および炎症に関わる様々な遺伝子転写を調節し、炎症誘発性サイトカイン、例えば、TNF-αを産生する。AABZで処置したRAW264.7マクロファージにおけるLPS-誘導性TNF-α産生の抑制を、TNF-αの産生の評価により調査した。
【0162】
デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎とトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発性大腸炎の両方が、粘膜炎症の十分に確立された動物モデルであり、これらはIBD病原体の研究および新しい治療法の前臨床研究において20年超にわたって用いられてきた。DSS誘発性大腸炎モデルは、大腸炎の他の動物モデルと比較した場合、いくつかの利点を有し(Perse 2012)、したがって、治療の効果の分析のために選択された。
【0163】
実施例5
AABZで処置したマクロファージにおけるLPS-誘導性TNF-α産生の抑制
RAW264.7マクロファージラインを、5%FBSを補充したDMEM中37℃、5%CO2加湿空気環境下で維持した。RAW264.7細胞を、1×105/mlの密度および200μl/ウェルの体積で96ウェルプレートに播種した。細胞を、10%FBSを補充した培地中で24時間インキュベートし、次いでLPS(1μg/ml)の添加前に、指示された濃度の試験物質ありまたはなしで2時間プレインキュベートした。その後、上清を様々な時点で採取し、培養培地中の炎症誘発性サイトカインTNF-αの産生を、製造業者のプロトコルに従って市販の酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)キットを用いて決定した。
【0164】
RAW264.7マウスマクロファージ細胞におけるLPS-誘導性TNF産生に対する1mMの本発明のいくつかのAABZの効果を表2に示す。
【0165】
【表2】
【0166】
様々な濃度(0.3、1.0および3.0mM)の化合物は、LPS処置対照群と比較して、TNFの発現レベルを有意に低下させたことが観察された。これらの結果は、病的炎症に起因する疾患の治療のための、本明細書に開示される化合物の有用性を支持する。
【0167】
実施例6
マウスにおけるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性炎症性腸疾患におけるAABZの有効性の評価
1週間の順化期間後、生後6~8週の雌Balb/cマウスを用いて実験を行った。体重18~25gのマウスをTaconic(Denmark)から購入し、温度および光が制御された施設内で維持し、標準的なげっ歯類用飼料および水を自由に摂取させた。処置開始の5日前に、マウスを各群に無作為化し、1ケージあたり5~6匹の動物を収容した。順化期間後、飲料水を介して5%DSS溶液(TdB Consultary AB、SwedenからのDSS;MW約40000)を5日間(0日目~5日目)投与して、急性大腸炎を誘発させ、下痢、直腸出血、体重減少、粘膜潰瘍、陰窩の破壊および白血球浸潤を特徴とする再現性のある大腸炎を引き起こした。DSS摂取量を毎日評価した。最初に、SASP(Sigma-Aldrich、Swedenから)を、必要な最終濃度より高い濃度で、0.2M水酸化ナトリウム(NaOH)に溶解した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加して所望の濃度にし、pHをNaOHまたは塩酸で7.5~8.0に調整した。SASPは、このpHで完全に溶解した状態を保った。Cpd AをPBSに溶解して、所望の濃度にした。動物群はすべて、5%DSS水溶液を全試験期間自由に摂取した。処置は、0日目から5日目に、経管栄養により経口(SASP)または腹腔内(Cpd A)のいずれかで、および5ml/kgの投与量で、およそ8時間間隔で1日2回行った。対照群(DSSのみ)は水(0.2ml)を1日2回経口で摂取した。
【0168】
実験で記録されたパラメーターは、便硬度(0、正常;2、軟便;4、水様下痢)、便中の血液の出現(0、正常;2、潜血+;4、肉眼的出血)、および体重減少(0、なし;1、1~5%;2、5~10%;3、10~20%;4、>20%)であった。これらの3つのパラメーターのスコアを要約することにより、疾患活動性指数(DAI)を計算した。また、結腸の長さおよびミエロペルオキシダーゼ(MPO)の結腸含有量を記録した。データを、分散分析(ANOVA)により統計的に評価した。最小二乗平均(LS平均)およびLS平均の標準誤差(SE)を計算した。
【0169】
【表3】
【0170】
【表4】
【0171】
5%DSSの5日間の投与は、下痢、糞便中の血液および体重減少を伴う重度の急性大腸炎を引き起こした。下痢および糞便中の血液は、3日目から出現し、これらの症状は、5日目の試験終了まで悪化した。最適な用量(40mg/kg/1日2回)のSASPによる経口処置は、大腸炎のこれらの徴候を改善した(表3)。3日目以降、下痢および糞便中の血液の改善が見られた。3日目、下痢の頻度(便硬度スコア2および4)は、対照群において22%およびSASP群において8%となった。5日目、対応する数字は各々98%および71%であった。Cpd A100mg/kg/1日2回処置とSASP 40mg/kg/1日2回処置との比較では、Cpd A処置動物における大腸炎パラメーターの優れた改善が見られた。疾患活動性指数(DAI)スコアは、Cpd A処置およびSASP処置では各々75%および36%に有意に低下し(表3)、Cpd A処置対SASP処置で60%に有意に低下した(p<0.016)。Cpd A 100mg/kg/1日2回群において糞便中の血液スコアの急激な低下が見られた[(対照群0.1±0.5対2.4±0.1、p<0.0001)および(SASP群0.1±0.5対1.4±0.2、p<0.024)](表4)。
【0172】
実施例7
コラーゲン誘発性関節炎におけるAABZの有効性の評価
2週間の順化期間後、生後9週の雄DBA/1マウスを用いて実験を行った。マウスをB&M(Denmark)から購入し、温度および光が制御された施設内で維持し、標準的なげっ歯類用飼料および水を自由に摂取させた。順化期間後、マウス(1処置群あたり10匹)を、エンフルランで麻酔し、0.1M酢酸中のフロイント完全アジュバントH37Ra(Difco)および2mg/mLのウシII型コラーゲン(Elastin Products、Owensville、MO)からなる100mLの1:1エマルジョンで尾の付け根に皮内免疫化した。免疫後14日目に、マウスにはCpd Aを含有する飲料水を自由摂取で与え、実験終了(49日目)まで処置を毎日継続した。1週間に2回の水の更新時、飲料用ボトルを秤量し、Cpd A摂取量をモニタリングした。対照群は水を自由に摂取した。関節炎の臨床徴候について、マウスを、免疫化から49日目まで1週間に3回モニタリングした。スコアリングシステム(関節炎スコア)を以下のように使用した:0=関節炎なし:1=指節間関節、中足指節間関節または手根間/橈骨手根関節のいずれか1ヶ所における関節炎(紅斑または膨張);2=上記関節の2ヶ所における関節炎;3=上記関節の3ヶ所における関節炎;4=上記関節の3ヶ所における関節炎、およびマウスが足で支えられない。マウスごとに4つの測定値を合計し、群平均を計算した。スコア>12のマウスを屠殺した。スコアリングプロトコルにおいて、前回観測値代入(LOCF)法を使用した。平均発症日を、感染したマウスにおける発症の平均日数として定義した。平均関節炎臨床スコアを、14日目から実験終了までの実験群の平均スコアとして定義した。
【0173】
マンホイットニーの順位和検定を用いて、統計学的有意性を決定した。Cpd Aによる処置は、統計的に有意な疾患発症遅延および疾患重症度の改善をもたらした。200mg/kg/日の投与量のCpd Aを摂取したマウスにおいて、疾患の平均発症は、対照群と比較して5.8日遅延し(p=0.02)、関節炎の重症度スコアは1.6低下した(p=0.05)。
【0174】
実施例8
受容体親和性
線条体ドーパミンD2に対する親和性を有する薬物化合物は、有害な副作用、例えば、短期間の錐体外路障害および遅発性ジスキネジアを引き起こす可能性があることは周知である。このような有害作用は、例えば、メトクロプラミドで観察され、これは、特に慢性疾患の長期治療に対するその有用性を低減する。Cpd Aおよび2つの先行技術の化合物であるメトクロプラミドおよびデクロプラミドのドーパミンD2受容体に対するインビトロ親和性を、放射性リガンドとして125I-スピペロンを用いるインビトロ放射性リガンド結合技術を用いて調査した(Gundlach、1984)。表5に示すように、Cpd Aは、ドーパミンD2サブタイプ受容体に対して非常に低い親和性を示す。
【0175】
【表5】
【0176】
参考文献
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