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特許7504078安定なジェットからの単分散粒子に誘発される液滴の形成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】安定なジェットからの単分散粒子に誘発される液滴の形成
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240614BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240614BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240614BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B01J19/00 321
C12M1/34 D
C12Q1/04
G01N37/00 101
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021507554
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019046632
(87)【国際公開番号】W WO2020037113
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】62/719,569
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】アベート,アダム アール.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,イアン
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0223314(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0128940(US,A1)
【文献】特表2018-505671(JP,A)
【文献】特表2010-531730(JP,A)
【文献】特表2010-535644(JP,A)
【文献】特表2018-538527(JP,A)
【文献】特表2016-533164(JP,A)
【文献】特表2018-508198(JP,A)
【文献】PAN, Dawei et al.,Coating of solid particles with liquid layer by microfluidics,Colloids and Surfaces A,2018年05月29日,Vol.553,pp.652-659
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00 - 12/02
B01J 14/00 - 19/32
C12M 1/00 - 3/10
C12Q 1/00 - 3/00
G01N 35/00 - 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単分散液滴を生成するための方法であって、
第1の流体と混和性であり、複数の細胞を含む第3の流体を前記第1の流体中へ流動させること、
マイクロ流体デバイスのチャネル内で、前記第1の流体を安定噴射条件下で、前記第1の流体と非混和性の第2の流体中へ流動させて前記第2の流体中に前記第1の流体のジェットを提供すること、及び、
複数の粒子を前記第1の流体のジェット中へ導入して、前記第1の流体のジェットの分割、および前記第2の流体中の前記第1の流体の複数の単分散液滴における前記複数の粒子及び細胞のカプセル化を誘発すること、を含み、
前記複数の粒子が剛性粒子又はヒドロゲル粒子を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の粒子が、無秩序構成で前記第1の流体のジェットの中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の粒子が、秩序化構成で前記第1の流体の前記ジェット中へ導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の粒子が、充填構成で前記第1の流体の前記ジェット中へ導入される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の粒子が、慣性秩序化を介して秩序化される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の粒子が、アガロース、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド(PAA)、又はこれらの組み合わせを含む複数のヒドロゲル粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の単分散液滴の各液滴が、1個の粒子を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の流体が、水相流体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の流体の粘度および前記第2の流体の粘度が、相互に100倍以内である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の流体の粘度および前記第2の流体の粘度が、相互に50倍以内である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の流体の粘度および前記第2の流体の粘度が、相互に10倍以内である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の流体の粘度および前記第2の流体の粘度が、相互に5倍以内である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の流体が油を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記油が、フルオロカーボン油、炭化水素油、またはこれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記油が、フルオロカーボン油を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の流体または前記第3の流体が、重合可能な成分を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記単分散液滴を、前記重合可能な成分を重合するのに十分な条件に曝露することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の流体が、1以上の試薬を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ジェットの分割の前に、1以上の液滴をジェットと合流させることを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記1以上の液滴が、1以上の細胞を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の粒子が、15,000個/秒以上の速度でカプセル化される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の粒子が、20,000個/秒以上の速度でカプセル化される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記単分散液滴を選別することを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記選別することが、サイズベースの選別、誘電偏移、選択的凝集、蛍光活性化細胞選別(FACS)、電気泳動、音響分離、磁気活性化細胞選別(MACS)、流量制御、または単分散液滴を選択的に偏移するために使用される他の刺激によって実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の粒子が、無秩序構成で前記第1の流体のジェット中へ導入され、単分散粒子含有液滴の集団を含む多分散エマルションをもたらし、前記方法が、前記単分散粒子含有液滴を選別して、それらを多分散エマルション中の他の液滴から分離することを含む、請求項1、2および5から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記単分散粒子含有液滴が、サイズに基づいて分離される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第1の流体がポリマーを含み、選別することが、前記単分散粒子含有液滴を濾過して、それらを前記多分散エマルション中の他の液滴から分離することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第2の流体が、濾過の前に除去される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の粒子が、ガラス、シリカ、金属、またはこれらの組み合わせを含む複数の剛性粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月17日に出願された米国仮特許出願第62/719,569号の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって付与された助成金番号R21AI116218の下で政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
序論
ビーズなどの粒子は、オリゴヌクレオチド、タンパク質、抗体の化学的および酵素的カップリングを可能にする有用な機械的および化学的特性を生成または購入できるため、商業的および学術的な液滴ワークフローで広く使用されている。液滴マイクロ流体は、この概念を利用して、例えば、油中液滴内の粒子および標的を対合(ペアリング)することによって、単一分子または単一細胞の分析を行うことができる。しかし、対合は通常、スループットを制限した滴下方式で動作するデバイスで実現されている。かかるワークフローは、キャピラリ数(Ca)に依存する滴下から噴射への遷移によって制御されるスループットの上限となる。本開示は、上記の問題に対処し、関連する利点を提供するものである。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載される方法およびシステムは、粒子を使用して安定ジェットの分解を誘発することによって単分散液滴を生成するための改善されたアプローチを提供する。単分散液滴は、複数の粒子を使用してジェットの分解を誘発することによって効果的に得ることができ、これには、例えば、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることと、複数の粒子を第1の流体のジェット中へ導入することで、第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の単分散液滴の複数の粒子のカプセル化を誘発することと、が含まれ得る。
【0005】
したがって、一部の実施形態では、本開示は、単分散液滴を生成するための方法であって、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることと、複数の粒子を第1の流体のジェット中へ導入することで、第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の単分散液滴の複数の粒子のカプセル化を誘発することと、を含む方法を提供する。
【0006】
一部の実施形態では、複数の粒子は、秩序化構成において第1の流体のジェット中へ導入され、ジェットの秩序化分解および単分散粒子含有液滴を含む単分散エマルションの生成を誘発する。他の実施形態では、複数の粒子は、無秩序構成において第1の流体のジェット中へ導入され、ジェットの無秩序な分解を誘発し、単分散粒子含有液滴の集団を含有する多分散エマルションの生成を誘発し、その後、さらなる適用のために分離することができる。
【0007】
本開示はまた、単分散液滴を生成するためのシステムであって、第1のチャネル、第2のチャネル、第3のチャネル、および第4のチャネルを含む、マイクロ流体デバイスを含み、第1の流体が、第1、第2、第3、および第4のチャネルの接合部を通って、第1のチャネルから第2のチャネル中へ流動し、安定噴射条件下で第2の流体中へ流動し、第2の流体中へ第1の流体のジェットを提供し、第1の流体が、第2の流体と非混和性であり、第2の流体が、第3および第4のチャネルを介して接合部中へ導入され、複数の粒子が、第1の流体のジェット中へ導入され、それによって、第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の単分散液滴の複数の粒子のカプセル化を誘発する、システムを提供する。
【0008】
本開示はまた、試薬を粒子含有液滴と合流させるための方法であって、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性であり、1つ以上の試薬を含む、流動させることと、複数の粒子含有液滴を第1の流体のジェット中へ合流させることで、第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の合流した単分散粒子含有液滴内の複数の粒子のカプセル化を誘発することと、を含む、方法を提供する。
【0009】
開示される方法およびシステムは、高周波液滴の生成が所望されるアプリケーション、粒子コーティングアプリケーション、高スループット細胞分析アプリケーション、および試薬合流ステップを利用するワークフローを含む、様々なアプリケーションおよび液滴ワークフローのために利用され得る。
【0010】
一部の実施形態では、オンチップ核酸増幅領域および検出領域を含むマイクロ流体システムは、本明細書に記載されるように調製された単分散液滴の処理/インキュベーションおよび分析に関連して使用され得る。一部の実施形態では、核酸増幅領域は、サーマルサイクラーを含んでもよい。一部の実施形態では、システムは、検出領域を含み、検出領域は、核酸増幅領域からの反応産物の有無を検出し、核酸増幅領域に流体接続され得る。一部の実施形態では、システムは、単分散液滴に第1の試薬を添加するための手段、および/または加熱素子を含む。一部の実施形態では、システムは、核酸増幅領域に流体接続された選別領域または組み合わせ検出/選別領域を含む。一部の実施形態では、代替的に、または「オンチップ」選別領域に加えて、単分散液滴の選別は、「オフチップ」で発生し得る。
【0011】
本発明は、添付の図面と併せて読む場合、以下の詳細な説明から最も理解することができる。図面には、以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態による、粒子誘発を使用した滴下方式および噴射フロー方式における液滴生成を示す概略図を提供する。図1Aは、粒子を含まない滴下方式における液滴形成を示す。図1Bは、粒子を含まない高いキャピラリ数(Ca)での安定ジェット形成を示す。図1Cは、分散相の分解を誘発するように限界希釈された、非充填粒子、例えば剛性粒子を使用した液滴形成を示す。図1Dは、追加の共流動なしで分解を誘発するために、充填粒子、例えば、充填弾性粒子を使用した液滴形成を示す。図1Eは、共流動分散相の分解を誘発するために、充填粒子、例えば充填弾性粒子を使用した液滴形成を示す。
図2】ビーズ誘発を使用した滴下方式および噴射フロー方式における液滴生成を示す図1A~1Eの概略図の実施形態を示す。図2Aは、ビーズを含まない滴下方式における液滴形成を示す。図2Bは、ビーズを含まない高いキャピラリ数(Ca)での安定ジェット形成を示す。図2Cは、分散相の分解を誘発する限定希釈での、非充填ビーズ、例えば剛性ビーズを使用した液滴形成を示す。図2Dは、追加の共流動なしで分解を誘発するために、充填ビーズ、例えば、充填弾性ビーズを使用した液滴形成を示す。図2Eは、共流動分散相の分解を誘発するために、充填ビーズ、例えば、充填弾性ビーズを使用した液滴形成を示す。
図3図2A~2Eに示されるワークフローの実施形態を示しており、安定ジェットの分解は、非充填剛性粒子を使用して示される。図3Aは、安定ジェット形成および粒子誘導ジェット分解を示すデバイス動作の映像からのフレームを示す。図3Bは、液滴サイズおよび粒子含有液滴の存在を測定するために使用される実験セットアップを示す概略図である。図3Cは、液滴形成の液滴サイトメトリ分析を示す。図3Dは、液滴サイズのヒストグラムを示す。
図4】本開示の実施形態による、水性共流動を有する噴射方式における粒子依存液滴形成の概略図および画像を提供する。図4Aは、流体入口および流体出口を有するデバイスを示す概略図である。図4Bは、粒子がある場合および粒子が無い場合の滴下方式および噴射方式におけるデバイス動作を示す。図4Cは、滴下方式および噴射方式におけるデバイス動作の映像からのフレームを示す。
図5】本開示の実施形態による、水性共流動を有しない噴射方式における粒子依存液滴形成のグラフおよび画像を提供する。図5Aは、単一粒子および多粒子含有液滴の顕微鏡画像を示し、図5Bは、Caおよび流量比の関数としての単一粒子液滴から多粒子液滴への遷移の相図を示す。
図6】23kHzでの粒子と細胞の対合を示す。図6Aは、本開示の実施形態によるマイクロ流体デバイスの動作、および出口における結果として生じる液滴を示す。液滴生成周波数が図6Bで計算される。図6Cは、FAM染色粒子およびカルセインレッド細胞の蛍光顕微鏡を示す。図6Dは、液滴サイトメータを使用した、数百万個の粒子含有液滴および数十万個の粒子細胞対合の高スループット分析を示す。
図7】ビーズ誘発を使用した高速ビーズコーティングを示す画像を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載される方法は、単分散液滴を生成するための改善されたアプローチを提供する。単分散液滴は、複数の粒子を使用してジェットの分解を誘発することによって効果的に得ることができ、これには、例えば、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることと、複数の粒子を第1の流体のジェット中へ導入することで、第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の単分散液滴の複数の粒子のカプセル化を誘発することと、が含まれ得る。
【0014】
開示される方法は、粒子の標的、例えば細胞、核酸等への対合を容易にし、次いで、例えば、核酸増幅技術、例えばRT-PCR、PCR、および/またはMDAで検出されたそれらの配列に基づいて、検出、定量化、および/または選別することができる。
【0015】
本発明をさらに説明する前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されず、それ自体は勿論、変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語が単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、制限することが意図されないことも理解されたい。なぜなら、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるからである。
【0016】
値の範囲が提供される場合、文脈が別段明示しない限り、各介在値は、その範囲の上限および下限と、その記載された範囲内の任意の他の記載値または介在値との間に、下限の単位の10分の1まで包含されることが理解されよう。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の特異的に除外された制限に従って、本発明内に包含されてもよい。記載された範囲が制限のうちの一方または両方を含む場合、それらの含まれる制限の一方または両方を除く範囲もまた、本発明に含まれる。
【0017】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、ここでは、いくつかの潜在的かつ例示的な方法および材料を説明する。本明細書で言及される任意のおよび全ての刊行物は、刊行物が引用される方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本開示は、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先されることを理解されたい。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「a droplet(液滴)」への参照は、複数のかかる液滴を含み、「the particle(粒子)」への参照は、当業者に既知の1つ以上の粒子およびその等価物などを含む。
【0019】
特許請求の範囲は、任意であり得る要素を除外するために起草され得ることにさらに留意されたい。したがって、本明細書は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連して、「専ら」、「のみ」などの排他的用語を使用すること、または「否定的な」制限を使用することの先行的な根拠として機能することが意図される。
【0020】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前に専らそれらの開示のために提供されている。さらに、提供される刊行日は、実際の発行日とは異なる場合があり、独自に確認する必要があり得る。
【0021】
本開示を読むと当業者には明らかであろうように、本明細書に記載および例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他の一部の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、またはこれらと組み合わされ得る別個の構成要素および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序、または論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。例えば、本明細書には、単分散液滴の生成に関連して本明細書に記載される方法に関連して実行され得る、様々な追加の方法および用途が記載されている。この点において、本明細書に番号1~98の本開示の非限定的な態様のいずれかが、かかる方法および用途の1つ以上のステップで適宜修正されてもよく、かつ/または、かかる方法および用途が、本明細書に番号1~98の本開示の非限定的な態様の1つ以上に従って調製された単分散液滴を利用してもよいことが考えられる。かかる方法および用途には、本明細書の以下の表題のセクション、すなわち、方法、粒子、単分散液滴およびその生成、二重エマルション、安定噴射条件、単分散液滴の生成に関与する流体、界面活性剤、単分散液滴への試薬添加、係留部分、単分散液滴中の反応、PCR産物の検出、単分散液滴中の細胞(例えば、腫瘍細胞)の検出、単分散液滴中の核酸検出、多重置換増幅、PCR、二重PCR、デジタルPCR、RNA配列決定(RNAseq)、核酸の長さの測定、単分散液滴中の配列分析のためのマイクロ流体濃縮(MESA)、単分散液滴中のPCR活性化細胞選別(PACS)、生細胞PCR活性化細胞選別(PACS)、質量分析活性化細胞選別(MS-ACS)、コロニーの成長および溶解、多重化、デジタル酵素結合型免疫吸着アッセイ(ELISA)、デジタルオリゴ結合型免疫吸着アッセイ(dOLISA)、選別、好適な対象および/または試料、酵素結合プローブによるタンパク質またはDNAの検出、癌の検出、ならびにシステムに記載されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
方法
上記に要約したように、本開示は、例えば、様々な液滴ベースのワークフローを容易にするために、単分散液滴を生成するための改善された方法を提供する。開示される方法は、マイクロ流体デバイスを使用して、様々な対象の標的、例えば、細胞、核酸等への粒子の対合を容易にし、かつ任意選択でその後の分析を容易にする。特に、開示される方法は、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることと、複数の粒子を第1の流体のジェット中へ導入することで、第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の単分散液滴の複数の粒子のカプセル化を誘発することと、を含む。例示的な実施形態を図1D、1E、2D、2E、4Aおよび4Bに示す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「液滴(drop)」および「液滴(droplet)」という用語は、第1の流体と非混和性である第2の流体(例えば、油)によって境界付けられた、少なくとも第1の流体、例えば、水相(例えば、水)を含有する微小な、概して球形のマイクロ区画を指すために互換的に使用される。液滴はまた、2つの水相が利用される水性二相系(ATPS)において形成され得る。液滴は、概して、直径または最大寸法が約0.1~約1000μmの範囲であり、細胞、DNA、酵素、および他の成分をカプセル化するために使用され得る。一部の実施形態では、液滴の直径または最大寸法は、(包括的に)約1.0μm~1000μm、例えば、(包括的に)約1.0μm~約750μm、約1.0μm~約500μm、約1.0μm~約250μm、約1.0μm~約200μm、約1.0μm~約150μm、約1.0μm~約100μm、約1.0μm~約10μm、または約1.0μm~約5μmである。一部の実施形態では、液滴は、約10μm~約200μm、例えば、約10μm~約150μm、約10μm~約125μm、または約10μm~約100μmの直径または最大寸法を有する。
【0024】
液滴自体は、サイズ、組成、内容物などを含めて変化し得る。単分散液滴は、概して、約0.001~約10,000ピコリットル以上、例えば、約0.001ピコリットル~約0.01ピコリットル、約0.01ピコリットル~約0.1ピコリットル、約0.1ピコリットル~約1ピコリットル、約1ピコリットル~約10ピコリットル、約10ピコリットル~約100ピコリットル、約100ピコリットル~約1000ピコリットル、または約1000ピコリットル~約10,000ピコリットル以上の内部体積を有し得る。さらに、液滴は、界面活性剤および/または粒子によって安定化されてもよく、または安定化されなくてもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「生体試料」という用語は、様々な供給源から得られる様々な試料種を包含し、その試料種には、生体材料が含有される。例えば、この用語は、哺乳類対象、例えば、ヒト対象から得られた生体試料、および食物、水、または他の環境源などから得られた生体試料を含む。この定義は、生物学的起源の血液および他の液体試料、ならびに生検標本または組織培養物またはそれに由来する細胞およびその子孫などの固体組織試料を包含する。この定義はまた、試薬での処理、可溶化、またはポリヌクレオチドなどの特定の成分の濃縮など、調達後に任意の方法で操作された試料も含む。「生体試料」という用語は、臨床試料を包含し、培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、細胞、血清、血漿、生体流体、および組織試料も含む。「生体試料」には、細胞、例えば、細菌細胞または真核細胞、血液、脳脊髄液、精液、唾液などの生体流体、胆汁、骨髄、皮膚(例えば、皮膚生検)、および個体から得られた抗体が含まれる。
【0026】
本明細書でより完全に記載されるように、様々な態様では、主題の方法を使用して、かかる生体試料から様々な成分を検出してもよい。対象の成分としては、細胞(例えば、循環細胞および/または循環腫瘍細胞)、ウイルス、ポリヌクレオチド(例えば、DNAおよび/またはRNA)、ポリペプチド(例えば、ペプチドおよび/またはタンパク質)、ならびに生体試料中に存在し得る多くの他の成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドモノマーの直鎖ポリマーを指し、互換的に使用され得る。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは、様々な構造構成、例えば、一本鎖、二本鎖、またはこれらの組み合わせのいずれかを有することができ、ならびにより高次の分子内もしくは分子間二次/三次構造、例えば、ヘアピン、ループ、三本鎖領域等を有することができる。ポリヌクレオチドは、通常、「オリゴヌクレオチド」と称される場合、典型的には、いくつかのモノマー単位、例えば、5~40から、数千のモノマー単位までのサイズである。別段明示しない限り、または文脈から明らかではない限り、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが「ATGCCTG」などの一連の文字(大文字または小文字)によって表される場合、ヌクレオチドは左から右へ5’→3’の順序であり、「A」はデオキシアデノシンを表し、「C」はデオキシシチジンを表し、「G」はデオキシグアノシンを表し、「T」はチミジンを表し、「I」はデオキシイノシンを表し、「U」はウリジンを表すことが理解される。特に断りのない限り、用語および原子番号付け規則は、Strachan and Read,Human Molecular Genetics 2(Wiley-Liss,New York,1999)に開示されているものに従う。
【0028】
本明細書で互換的に使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。NHは、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を指す。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離カルボキシル基を指す。標準ポリペプチド命名法に従って、J.Biol.Chem.,243(1969),3552-3559が使用される。
【0029】
本明細書に記載のとおり、「次世代配列決定」という用語は、一般に、標準的なDNA配列決定(例えば、サンガー配列決定)を上回る進歩を指す。標準的なDNA配列決定は、実践者がDNA配列中のヌクレオチドの正確な順序を決定することを可能にするが、次世代配列決定はまた、並列配列決定を提供し、その間、DNAの数百万の塩基対断片を一斉に配列決定することができる。標準的なDNA配列決定は、概して、DNAテンプレート分子を増幅するために、一本鎖DNAテンプレート分子、DNAプライマー、およびDNAポリメラーゼを必要とする。次世代配列決定は、高スループット配列決定を容易にし、これにより、標準DNA配列決定と比較して、ゲノム全体を非常に短い期間で配列決定することが可能になる。次世代配列決定はまた、病理学的状態の診断のための疾患の原因となる変異の同定を容易にし得る。次世代配列決定はまた、遺伝子配列の事前の知識を必要とせずに、単一の分析において試料のトランスクリプトーム全体に関する情報を提供してもよい。
【0030】
任意の好適な非特異的核酸増幅方法および試薬、例えば、MDA方法および試薬は、かかる方法および試薬が、方法の任意の追加の、例えば、後続の増幅ステップおよびまたは試薬、例えば、PCR増幅ステップおよび試薬と互換性があることを条件として、開示される方法と関連して利用されてもよい。Taq DNAポリメラーゼと組み合わせて使用され得る好適なMDAポリメラーゼの例は、Bstポリメラーゼである。Bstポリメラーゼは、より広い温度範囲にわたって効率的であり、Taq DNAポリメラーゼと同様の緩衝条件下で活性であるため、Bstポリメラーゼは、phi29ポリメラーゼなどの他のMDAポリメラーゼよりも利点を有し得る。
【0031】
主題の方法を実践する際に、定量PCR(qPCR)およびデジタル液滴PCRなどの幅広い異なるPCRベースのアッセイが用いられ得る。かかるアッセイで使用されるプライマーの数および性質は、実施されるアッセイの種類、生体試料の性質、および/または他の因子に少なくとも部分的に基づいて変化し得る。ある特定の態様において、単分散液滴、例えば、単分散単一エマルション液滴、多重エマルション液滴、または巨大ユニラメラーベシクルGUVに添加され得るプライマーの数は、1~100以上であってもよく、かつ/または約1~100以上の異なる遺伝子(例えば、癌遺伝子)を検出するプライマーを含んでもよい。かかるプライマーに加えて、あるいはその代替として、1つ以上のプローブ(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ)を主題の方法の実践に使用してもよい。
【0032】
ある特定の態様では、循環腫瘍細胞(CTC)などの正常細胞または腫瘍細胞を含む、細胞のカウントおよび/または遺伝子型決定のための方法が提供される。かかる方法の特徴は、マイクロ流体を使用することである。
【0033】
単分散液滴の生成後、かかる液滴は、細胞、ウイルス、ならびに核酸、例えばDNAおよびRNAなどのその成分などの標的の液滴ベースの分析に関連して、本明細書に記載される、または他の方法で当該技術分野で既知の様々な好適なワークフロー、技術および/もしくは反応のいずれかに供され得る。本明細書に記載の方法に従って調製された単分散液滴と関連して使用され得るさらなる液滴ベースの分析方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる以下の刊行物、米国特許出願公開第2015/0232942号、米国特許出願公開第2017/0121756号、米国特許出願公開第2017/0022538号、米国特許出願公開第2017/0009274号、米国特許出願第15/753,132号に見出され得る。
【0034】
本明細書に記載される特定の方法の特徴は、特定のオリゴヌクレオチドおよび/または遺伝子、例えば、細胞内に存在する癌遺伝子(複数可)の存在を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアッセイの使用である。対象のPCRベースのアッセイの例としては、定量的PCR(qPCR)、定量的蛍光PCR(QF-PCR)、多重蛍光PCR(MF-PCR)、デジタル液滴PCR(ddPCR)、単一細胞PCR、PCR-RFLP/リアルタイム-PCR-RFLP、ホットスタートPCR、入れ子式PCR、その場ポロニーPCR、その場ローリングサークル増幅(RCA)、ブリッジPCR、ピコタイターPCR、エマルションPCR、および逆転写酵素PCR(RT-PCR)が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅、自己染色配列複製、標的ポリヌクレオチド配列の選択的増幅、コンセンサス配列プライミングポリメラーゼ連鎖反応(CP-PCR)、任意にプライミングされたポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、変性オリゴヌクレオチドプライミングPCR(DOP-PCR)、および核酸ベース配列増幅(NABSA)が挙げられる。
【0035】
PCRベースのアッセイを使用して、特定の遺伝子(複数可)、例えば、特定の癌遺伝子(複数可)の存在を検出することができる。かかるアッセイでは、対象の各遺伝子に特異的な1つ以上のプライマーを、各細胞のゲノムと反応させる。これらのプライマーは、特定の遺伝子に特異的な配列を有するため、それらが細胞のゲノムに相補的であるときにのみハイブリダイゼーションし、PCRを開始する。対象の遺伝子が存在し、プライマーが一致する場合、遺伝子の多くのコピーが生成される。特定の遺伝子が存在するかどうかを判定するために、PCR産物は、単分散液滴の液体をプローブするアッセイによって、例えば、SybrGreenまたは臭化エチジウムのようなインターカレート色素で溶液を染色することにより、PCR産物を粒子、例えばビーズ(例えば、磁気ビーズまたは蛍光ビーズ、例えば、ルミネックスビーズ)などの固体基質にハイブリダイゼーションすることによって、またはFRETのような分子間反応によってそれらを検出することによって検出され得る。これらの色素、ビーズ等はそれぞれ、「検出成分」の例であり、「検出成分」は、本明細書で広く一般的に使用され、核酸増幅産物、例えばPCR産物の有無を検出するために使用される任意の成分を指す用語である。
【0036】
ここで、これらの基本的なアプローチのいくつかの変形例、ならびに開示される方法およびシステムの構成要素について、以下でより詳細に概説する。
【0037】
粒子
本明細書で使用される場合、「(複数の)粒子」および「(単一の)粒子」という用語は、開示される方法の文脈において、安定ジェットの分解を誘発して、構造を含有する液滴を形成できる構造を指すために互換的に使用される。本明細書の任意の好適な実施形態では、粒子はビーズであってもよい。粒子は、多孔質または非多孔質であってもよい。本明細書の任意の好適な実施形態では、粒子は、追加の成分および/または試薬、例えば、本明細書に記載されるように単分散液滴に放出可能であり得る追加の成分および/または試薬を含有し得るマイクロ区画を含み得る。本明細書の任意の好適な実施形態では、粒子は、ポリマー、例えば、ヒドロゲルを含み得る。本明細書の他の好適な実施形態では、粒子は、剛性粒子を含んでもよい。一部の実施形態では、例えば、第1の流体が水性流体である本明細書に記載の実施形態では、ポリマーは親水性ポリマーである。一部の実施形態では、例えば、第1の流体が非水性流体、例えば、油である本明細書に記載の実施形態では、ポリマーは、親油性ポリマーである。第1の流体が水相流体である他の実施形態では、ポリマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)ポリマーである。本明細書の任意の好適な実施形態では、粒子は、細胞、例えば、哺乳類細胞、酵母細胞、または細菌細胞であってもよい。粒子は概して、直径または最大寸法で約0.1~約1000μmの範囲である。一部の実施形態では、粒子の直径または最大寸法は、(包括的に)約1.0μm~1000μm、例えば(包括的に)1.0μm~750μm、1.0μm~500μm、1.0μm~250μm、1.0μm~200μm、1.0μm~150μm、1.0μm~100μm、1.0μm~10μm、または1.0μm~5μmである。一部の実施形態では、粒子は、約10μm~約200μm、例えば、約10μm~約150μm、約10μm~約125μm、または約10μm~約100μmの直径または最大寸法を有する。例示的な実施形態では、複数の単分散液滴の各液滴は、1つの粒子を含み、かつ1つ以下の粒子を含む。
【0038】
本明細書に記載される方法を実践する際、粒子の組成および性質は変化し得る。例えば、ある特定の態様では、粒子は、ゲルマトリックスのミクロンスケール球体であるマイクロゲル粒子であってもよい。一部の実施形態では、マイクロゲルは、アルギン酸塩またはアガロースを含む、水に可溶性の親水性ポリマーから構成される。他の実施形態では、マイクロゲルは、親油性マイクロゲルから構成される。
【0039】
他の態様では、粒子は、ヒドロゲルを含み得る。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、天然由来の材料、合成由来の材料、およびこれらの組み合わせから選択される。ヒドロゲルの例としては、コラーゲン、ヒアルロナン、キトサン、フィブリン、ゼラチン、アルギン酸塩、アガロース、硫酸コンドロイチン、酢酸セルロース、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド/ポリ(アクリル酸)(PAA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリN-イソプロピルクリルアミド(NIPAM)、およびポリ無水物、ポリ(フマル酸プロピレン)(PPF)、ポリ(メタクリレートメチル)、ポリプロピレン、ポリエチレン、任意の他の3D架橋ポリマー、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
いくつかの態様では、粒子は剛性粒子であり得る。ある特定の実施形態では、剛性粒子は、天然由来の材料、合成由来の材料、およびこれらの組み合わせから作製され得る。一部の実施形態では、剛性粒子の材料は、ガラス、シリカ、金属、およびこれらの組み合わせを含む。
【0041】
他の態様では、粒子は、弾性粒子であり得る。ある特定の実施形態では、弾性粒子は、天然由来の材料、合成由来の材料、およびこれらの組み合わせから作製され得る。材料の例としては、コラーゲン、ヒアルロナン、キトサン、フィブリン、ゼラチン、アルギン酸塩、アガロース、硫酸コンドロイチン、酢酸セルロース、ポリアクリルアミド、PEG、PVA、PAA、HEMA、NIPAM、およびポリ無水物、PPF、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、任意の他の3D架橋ポリマー、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される粒子は、球形または任意の他の好適な形状であり得る。
【0042】
それらの所望の最終使用に応じて、粒子は、例えば、均一なヒドロゲル、ポリマーシェル、または金属コーティングでコーティングされてもよく、それらは、材料、例えば、磁気結晶、特異的結合パートナー、例えば、抗体、アビジンもしくはストレプトアビジン等、またはこれらの表面に結合した、もしくは細孔内もしくは表面に堆積した触媒を有してもよく、あるいはこれらは、例えば、発泡剤を使用して拡張されてもよい。例えば、本開示によるマイクロ流体デバイスは、単分散液滴のサイズが均一であり、残りのエマルションのサイズが変化し得るように操作されてもよい。これにより、コーティングされた粒子が、例えば、濾過または遠心分離によって流体から除去されることを可能にする。一部の実施形態では、粒子は、重合または硬化され得る溶液と共流動される。かかる実施形態では、粒子は、安定ジェットの分解を誘発し、粒子上に均一なコーティングを作成する。
【0043】
一部の実施形態では、コーティングされた粒子は、充填構成、ならびに液滴ワークフローにおけるその後のカプセル化の増加、例えば、少なくとも3倍の増加、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍の増加を可能にする。一部の実施形態では、粒子は、粒子の生化学官能化のための試薬、および分析物、例えば、試薬または細胞との粒子のハイスループット対合を含んでもよい。例えば、細胞は、バーコードおよび/または核酸合成試薬で官能化された粒子と対合されてもよい。
【0044】
一部の実施形態では、粒子は、本明細書に記載されるように、秩序化構成または無秩序構成においてジェット中へ導入され得る。本明細書で使用される場合、秩序化の程度は、粒子がフローパスに垂直な平面を横切る時間によって分類され得る。隣接粒子の時間差は分布に従っており、この分布の広がりが秩序化の程度を定義する。例えば、分布が広がれば広がるほど、粒子は無秩序になる。ランダムに入ってくる完全に無秩序な粒子は、ポアソン分布に従う。ほぼ完璧に秩序化された粒子は、対称的な分布に従う。本明細書で使用される場合、粒子は、小さな変動係数、例えば、20%未満、10%未満、または5%未満によって定義される分布を有する場合、「秩序化」される。本明細書で使用される場合、粒子は、大きな変動係数、例えば、20%超、30%超、50%超によって定義される分布を有する場合、「無秩序」である。無秩序な粒子は、多分散液滴の集団内に粒子含有液滴の単分散集団を生成し得る。
【0045】
粒子が弾性である一部の実施形態では、かかる粒子は、密接に充填され得る(Abate et al.,2009)。密接充填され得る粒子の一例は、ヒドロゲル系粒子である。他の実施形態では、粒子は、慣性秩序化に基づいて秩序化され得る(Edd et al.,2008、Hur et al.,2010)。ある特定の態様において、マイクロ流体デバイスに入るときに、本明細書に記載される方法を使用して、秩序化構成にある粒子を用いて単分散液滴を生成することで、それぞれ単一の粒子を含有する単分散液滴がもたらされる。
【0046】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法の文脈において、粒子は、複数の粒子の粒子の断面積の定義された割合内、例えば、複数の粒子の粒子の断面積の1%以内、2%以内、3%以内、4%以内、5%以内、6%以内、7%以内、8%以内、9%以内、または10%以内の断面積を有するチャネルから導入されてもよい。他の実施形態では、複数の粒子の粒子は、チャネル幅または高さの1%未満の直径または最大寸法を有し得る。ある特定の態様において、粒子は、複数の粒子の粒子の10%以内の断面積を有するチャネルから導入されてもよい。一部の実施形態では、複数の粒子は、非充填構成において第1の流体のジェット中へ導入される。他の実施形態では、複数の粒子は、充填構成において第1の流体のジェット中へ導入される。
【0047】
一部の実施形態では、粒子は、平均体積を有しており、本明細書に記載される方法は、平均体積を減少させるために粒子を収縮させることを含む。収縮は、外部刺激、例えば、熱の適用時に生じ得る。例えば、粒子は流体中へカプセル化されてもよく、続いて熱を加えて粒子のサイズを縮小させてもよい。単分散液滴は、液滴体積が一定であるため収縮しないが、液滴内の粒子は、液滴の表面から離れて収縮する。
【0048】
本明細書の任意の好適な実施形態では、粒子は、細胞、遺伝子、バーコード、薬物分子、治療剤、粒子、生体活性剤、骨生成剤、骨伝導剤、骨誘導剤、抗炎症剤、成長因子、フィブロイン由来ポリペプチド粒子、核酸合成試薬、核酸検出試薬、、DNA分子、RNA分子、ゲノムDNA分子、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを、その内部に、もしくはその上に、またはそれに関連して含むことができる。単分散液滴内の複数の試薬の組み合わせを伴う実施形態では、粒子は、複数の区画を含有してもよい。粒子を使用して、所望の化合物、例えば、酵素反応のための基質を放出するように誘発することができる試薬と対合させることができる。例えば、刺激(熱など)の適用時に破裂するように誘発された粒子は、単分散液滴内にカプセル化され得る。刺激は、粒子が非混和性担体相流体中へカプセル化された後に反応を開始する。
【0049】
ビーズなどの粒子は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0232942号に記載される方法を使用して、マイクロ流体制御下で生成され得る。マイクロ流体デバイスは、サイズが極めて均一である液滴から構成されるエマルションを形成することができる。粒子生成プロセスは、油および水などの2つの不混和性流体を接合部にポンプすることによって達成されてもよい。接合形状、流体特性(粘度、界面張力など)、および流量は、生成された粒子の特性に影響を与えるが、比較的広範囲の特性については、T字接合部および流量集束のような方法を使用して、制御された均一なサイズの粒子を生成することができる。粒子サイズを変化させるために、非混和性液体の流量を変化させることができる。これは、ある特定の範囲の特性にわたるT字接合部および流量集束方法の場合、粒子サイズは、総流量および2つの流体流量の比率に依存するためである。マイクロ流体法を用いて粒子を生成するために、2つの流体は通常、2つの入口リザーバ(例えば、シリンジ、圧力チューブ)に充填され、次いで必要に応じて(例えば、シリンジポンプ、圧力レギュレータ、重力などを使用して)加圧されて所望の流速を生成する。これにより、所望の流量でデバイスを通して流体がポンプされる、所望のサイズおよび速度の液滴を生成する。
【0050】
一部の実施形態では、粒子は、並列液滴生成技術を使用して生成することができる。これには、シリアル分割および分配プレートを含まれるが、これらに限定されない。対象の並列液滴生成技術としては、さらに、Abate and Weitz,Lab Chip 2011,Jun 7;11(11):1911-5、およびHuang et al.,RSC Advances 2017,7,14932-14938に記載された技術が挙げられ、それらの各々の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
一部の実施形態では、ゲル化機構(ゲルマトリックスの重合または架橋を含むが、これらに限定されない)を誘発することによって、粒子を固化させる。例えば、ポリアクリルアミドゲルは、アクリルアミドおよびビスアクリルアミドの共重合によって形成される。反応物は、フリーラジカル生成系によって開始されるビニル添加重合である。ある特定の態様では、アガロースヒドロゲルは、ゲル化温度を下回るヒドロゲルを冷却することによってゲル化される。
【0052】
一部の実施形態では、粒子は、流体から除去され、乾燥され、一定期間安定した形態で保管され得る。乾燥アプローチの例としては、加熱、真空下での乾燥、凍結乾燥、および超臨界乾燥が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、乾燥粒子は、流体と組み合わされ得るが、依然として、独立した、しばしば球形のゲル粒子として形状および構造を保持する。一部の実施形態では、乾燥粒子は、適切な流体と組み合わされ、流体の一部が粒子によって吸収されるようになる。一部の実施形態では、粒子の多孔率は、複数の標的のうちの少なくとも1つが、適切な流体と組み合わされるときに粒子に吸収されることを可能にするように変化し得る。粒子内で所望の吸収が実行されることを可能にする任意の簡便な流体が使用されてもよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、粒子に適用される「吸収する」、「膨張する」、および「拡張する」という用語は、流体が物質を透過するプロセス、または物質が流体を組み込むプロセスを指すために互換的に使用され得る。一部の実施形態では、吸収されている物質は、その形状および構造の少なくとも一部分を保持し得る。一部の実施形態では、吸収されている物質は、溶液を形成するために流体に組み込まれ得る。
【0054】
単分散液滴およびその生成
本明細書で使用される場合、液滴に適用される「単分散」という用語は、本明細書に記載の安定ジェットの粒子誘発分解によって生成される粒子含有液滴の直径または最大寸法の変動を指す。一般に、単分散液滴は、それらが生成される粒子と比較してより大きな直径または最大寸法の変動を有することができるが、一方で、本明細書に記載される様々な方法においても機能する。単分散液滴は、概して、直径または最大寸法で約0.1~約1000μmの範囲であり、直径または最大寸法の変動は、10未満の係数を有し得、例えば、直径または最大寸法で、5未満の係数、4未満の係数、3未満の係数、2未満の係数、1.5未満の係数、1.4未満の係数、1.3未満の係数、1.2未満の係数、1.1未満の係数、1.05未満の係数、または1.01未満の係数を有し得る。一部の実施形態では、単分散液滴は、少なくとも50%以上、例えば60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の単分散液滴が、直径または最大寸法で10倍未満、例えば5倍未満、4倍未満、3倍未満、2倍未満、1.5倍未満、1.4倍未満、1.3倍未満、1.2倍未満、1.1倍未満、1.05倍未満、または1.01倍未満の係数で変化するように、直径または最大寸法の変動を有する。一部の実施形態では、単分散液滴の直径は、(包括的に)約1.0μm~1000μm、例えば、(包括的に)約1.0μm~約750μm、約1.0μm~約500μm、約1.0μm~約250μm、約1.0μm~約200μm、約1.0μm~約150μm、約1.0μm~約100μm、約1.0μm~約10μm、または約1.0μm~約5μmである。一部の実施形態では、単分散液滴の内部体積は、約0.01pL以下、約0.1pL以下、1pL以下、約5pL以下、10pL以下、100pL以下、または1000pL以下であり得る。一部の実施形態では、単分散液滴の内部体積は、約1fL以下、約10fL以下、または100fL以下であり得る。一部の実施形態では、単分散液滴の内部体積は、ピコリットルとフェムトリットルとの間の範囲(例えば、約0.001pL~約1000pL)の液体体積を包含し得る。一部の実施形態では、単分散液滴の内部体積は、ナノリットルレベル(例えば、厳密にはピコリットル、厳密にはフェムトリットル、またはこれらの組み合わせ)を厳密に下回って伸長する。
【0055】
本明細書に記載される方法を実践する際、単分散液滴の組成および性質は変化し得る。例えば、ある特定の態様では、界面活性剤を使用して液滴を安定化することができる。したがって、液滴は、界面活性剤安定化エマルション、例えば、界面活性剤安定化単一エマルションまたは界面活性剤安定化二重エマルションを含み得る。液滴中で所望の反応が実行されることを可能にする任意の簡便な界面活性剤を使用してもよい。他の態様では、単分散液滴は、界面活性剤または粒子、例えば、安定剤または有機溶媒によって安定化されていない。
【0056】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、類似の条件を有する多くの並列反応チャンバの作成を可能にする。一部の実施形態では、均一なサイズの小さな区画が作成される。例えば、一部の実施形態では、複数の粒子は、本明細書に記載されるように、秩序化構成において第1の流体のジェット中へ導入され、その結果、単分散粒子含有液滴で構成された単分散エマルションが得られる。他の実施形態では、複数の粒子は、本明細書に記載の無秩序構成において第1の流体のジェット中へ導入され、その結果、粒子を含有しない単分散粒子含有液滴の集団および多分散液滴の集団を含む多分散エマルションが得られる。次に、単分散粒子含有液滴を選別して、それらを多分散エマルション中の他の液滴から分離してもよい。バルク集団が多分散しているにもかかわらず、ビーズを含有する反応は、体積(したがって、試薬および産物)に関して依然として実質的に均一である。
【0057】
一部の実施形態では、得られたエマルションは、多分散エマルションに存在する単分散液滴の集団を含む。ある特定の態様において、本明細書に記載の方法を使用して単分散液滴を生成することは、他の方法を使用して生成され得る非粒子含有サテライト液滴の数を減少させる。本明細書で使用される場合、液滴に適用される「サテライト」という用語は、単分散液滴のものよりも直径が小さい液滴の集団を指し、これは、単分散液滴の周囲に分散され、粒子誘発後に生成される。一部の実施形態では、サテライト液滴の数は、少なくとも2倍以上、例えば、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍以上の係数で減少する。
【0058】
本明細書に記載の液滴は、エマルションとして、例えば、非混和相担体流体(例えば、フルオロカーボン油または炭化水素油)中に分散した水相流体として調製されてもよく、逆もまた同様であってもよい。
【0059】
単分散化された単一エマルションは、本明細書に記載される方法を使用して、マイクロ流体デバイスを使用して生成され得る。安定ジェットの粒子誘発分解を使用して単分散エマルションを産生することで、サイズが極めて均一な液滴を含むエマルションを提供することができる。液滴生成プロセスは、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることと、複数の粒子を第1の流体のジェット中へ導入することで、第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の単分散液滴の複数の粒子のカプセル化を誘発することと、によって達成することができる。液滴サイズを変化させるために、安定噴射条件、共流動量、および/または粒子サイズを変化させてもよい。アガロースゲル系粒子の場合、粒子は、外部刺激(例えば、熱)を使用して液化して、液体単分散エマルションを生成することができる。
【0060】
1つの粒子を含有し、かつ1つ以下の粒子を含有する、開示される方法に従って調製された単分散液滴の割合は、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上であり得る。例えば、1つの粒子を含有し、かつ1つ以下の粒子を含有する単分散液滴の割合は、約70%~約100%、例えば、約75%~約100%、約80%~約100%、約85%~約100%、約90%~約100%、または約95%~約100%であってもよい。さらなる例として、1つの粒子を有し、かつ1つ以下の粒子を有する単分散液滴の割合は、約70%~約95%、例えば、約75%~約90%、または約80%~約85%であってもよい。第2の流体中の単分散液滴内にカプセル化される粒子の割合は、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、または約90%以上であってもよい。例えば、第2の流体中の単分散液滴内にカプセル化される粒子の割合は、約70%~約100%、例えば、約75%~約100%、約80%~約100%、約85%~約100%、約90%~約100%、または約95%~約100%であってもよい。さらなる例として、第2の流体中の単分散液滴内にカプセル化される粒子の割合は、約70%~約95%、例えば、約75%~約90%、または約80%~約85%であってもよい。
【0061】
一部の実施形態では、開示される方法に従って生成された単分散液滴は、既知の方法を使用して二重エマルションまたは多重エマルションを生成するための基礎を提供し得る。二重エマルションは、液滴内に含有される液滴、例えば、水相担体流体(例えば、水中油中水)中の非混和相シェルによって囲まれた水相流体、または非混和相担体流体(例えば、油中水中油)中の水相シェルによって囲まれた非混和相流体を含む。特に有用な種類の二重エマルションは、わずかに大きな油滴内にカプセル化された水性液滴を含み、それ自体は担体水相流体中に分散している。二重エマルションは、構造の内側の「コア」を使用して、溶解した溶質または生体物質などの活性化合物を提供し、周囲のオイルシェルによって外部環境から保護できる点で貴重である。粒子を使用して二重エマルションを生成する利点は、二重エマルションの寸法(内側および外側の液滴サイズ)を広い範囲にわたって制御することができ、液滴を高い均一性で形成することができるという点で、単一エマルションの生成の利点と同様である。本明細書で考察されるように、好適な実施形態では、粒子は、単分散液滴内に溶解および/または溶融され得る。したがって、一部の実施形態では、多重エマルション、例えば、二重エマルションは、もはや無傷の粒子を含有しないがそれらの元のサイズを保持する単分散液滴から調製され得る。このようにして、かかる単分散液滴は、多重エマルション、例えば、二重エマルションの調製のためのテンプレートとして機能し得る。
【0062】
本明細書に記載の方法は、複数の粒子を第3の流体と組み合わせることを含み得、第3の流体は、複数の標的、例えば、試薬、核酸または細胞などを含む。例えば、HOが例示的な第3の流体である図1Eを参照されたい。一部の実施形態では、複数の粒子を第3の流体と組み合わせることは、第3の流体、ならびにその中に含有される標的および/または試薬の一部を粒子に吸収させることを含む。一部の実施形態では、複数の粒子を第3の流体と組み合わせることは、第1の流体を第2の流体中へ流動させる前に、第3の流体を第1の流体中へ流動させることを含み、第3の流体は、第1の流体と混和性である。ある特定の態様において、本明細書に記載の方法は、複数の粒子を第1の流体と組み合わせることを含んでよく、第1の流体は、複数の標的、例えば、試薬、核酸または細胞等を含む。
【0063】
複数の粒子を第1の流体の安定ジェット中へ導入することによって、複数の粒子は、第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の単分散液滴内の複数の粒子のカプセル化を誘発する。
【0064】
一部の実施形態では、標的分子は、細胞である。かかる実施形態では、単分散液滴は、1液滴当たり1つ以上の細胞を含有し得る。代替的に、単分散液滴は、1液滴当たり2つ以上の細胞を含有しないか、または実質的に全ての単分散液滴は、1液滴当たり2つ以上の細胞を含有しない(例えば、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の単分散液滴は、1液滴当たり2つ以上の細胞を含有しない)。一部の実施形態では、安定ジェットの粒子誘発分解後、得られるエマルション中のいくつかの液滴は、複数の粒子および/または標的のいずれも含有しない。
【0065】
粒子のうちの1つを含有しない液滴は、好適な分離技術、例えば、濾過または遠心分離などのサイズベースの分離技術によって単分散エマルションから除去することができる。粒子のうちの1つを含有しない液滴は、粒子のうちの1つを含有する液滴よりも直径が小さくても大きくてもよい。粒子を含有する単分散液滴は、粒子のうちの1つを含有しない液滴と比較して濃縮することができる。濾過により、例えば、実質的なサイズ差が生じてもよく、これは、図7に概して示されるような実施形態で利用され得る。この場合、粒子は、液滴を含有する比較的小さいポリマーで提供され、液滴を含有する空の(粒子の)ポリマーは、比較的大きい。濾過は、例えば、コーティングがポリアクリルアミドまたはアガロースのようなヒドロゲルである場合、油がエマルションから除去された後にも利用され得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、「濃縮された(enriched)」および「濃縮(enrichment)」という用語は、互換的に使用され得、元のエマルションにおける比率と比較して、エマルション中の非標的エンティティ(例えば、粒子を含有しない単分散液滴)に対する標的エンティティ(例えば、粒子を含有しない液滴)の比率を増加させるプロセスを指す。本明細書に開示される方法を使用して、粒子のうちの1つを含有しない液滴に対して、粒子を含有する単分散液滴を濃縮してもよく、例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍以上であってもよい。
【0067】
二重エマルション
二重エマルションは、概して、エマルション内のエマルション、すなわち、第2の非混和相の液体液滴内に含有される液体液滴を指す。これらは、界面活性剤によって安定化することができるが、重要なことに、中間相「シェル」には、任意の界面活性剤に加えて、液体相が含まれる。シェルの体積が減少すると、二重エマルションは、液滴内の液滴というより、コア流体が界面活性剤分子の薄い膜にカプセル化された小胞様構造に似ている。二重エマルションを使用して、それらが脱湿性遷移を受けることを可能にすることによって、かかる「小胞」を形成することができる。当該脱湿性遷移では、中間液相流体はシェルから除去されるが、界面活性剤層は維持され、それを取り囲む界面活性剤分子の薄い層を有する水性コア、ならびに元来それに接着するシェルであった小さな油滴を含む小胞が生成される。
【0068】
二重エマルションが脱湿する傾向は、異なる溶液および界面活性剤の特性、特に互いに対する異なる相の界面張力に依存する。フッ素化油、PEG-Krytox(登録商標)界面活性剤、Jeffamine(登録商標)(ポリエーテルアミン)-Krytox(登録商標)界面活性剤、およびプラロン酸を含む水性製剤は、担体相に添加されると、二重エマルションおよび小胞を形成できると考えられ、これらは両方とも95℃を超えるまで熱安定性である。Krytox(登録商標)流体は、機能的末端基と組み合わせたヘキサフルオロプロピレンオキシドに基づくフッ素化合成油である。Tween(登録商標)20(ポリソルベート20)およびSpan(登録商標)80(モノオレイン酸ソルビタン)等の他の界面活性剤は、PEG、アルギン酸塩、グリセロール等の増粘剤と共に、または増粘剤なしで利用されて、二重エマルションからのGUV形成を誘導することができる。二重エマルションの追加の開示およびその生成方法は、米国特許出願公開第2017/0022538号に提供されている。
【0069】
安定噴射条件
非混和性流体がマイクロ流体チャネル内で一緒に流動すると、液滴が形成され得る。
【0070】
本明細書に記載の方法は、粒子の導入を介して安定ジェットの分解を誘発することによって、単分散液滴を効果的に生成することができるという観察に、少なくとも部分的に基づいている。したがって、本開示の方法は、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることを含む。
【0071】
「滴下」は、図1Aおよび図2Aに示すように、2つの非混和性流体、例えば、本明細書に記載の第1および第2の流体の接合部の下流のチャネルの領域で液滴が周期的に挟み込まれる状態を指す。この領域は、本明細書では「ノズル」と称されてもよい。「噴射」とは、内相の薄い流れ(例えば、第1の水性流体)がノズルを超えて延びる状態を指す。この薄型ジェットは、一般的にノズルよりも大きいか小さいかを問わず、液滴に分解される。中程度から低いレイノルズ数における滴下から噴射への遷移が研究されており、これは、主にウェーバー数(We)とキャピラリ数(Ca)という2つの無次元数によって決定される(Utada et al.,2007)。ウェーバー数は、慣性力と表面張力の比である。キャピラリ数は、粘性力と表面張力の比である。Utada(2007)は、この遷移が起こる条件をまとめた相図を提供している。噴射は、高いCaまたはWeの場合に、またはCaとWeの組み合わせが高い場合に発生する(Utada 2007)。特定のCaおよびWeを超えると、ジェットはもはや自発的に液滴に分解されることはない。これは、本明細書では「安定噴射方式」と称される。この方式において、粒子は、単分散液滴形成を効果的に誘発するために使用され得る。この安定噴射方式は、We>1またはCa>0.1であると期待される。本明細書で使用される場合、「安定ジェット」、「安定噴射方式」、「安定噴射条件」等の用語は、マイクロ流体デバイス内の噴射条件(およびかかる条件下で生成されるジェット)を指す。ここで、例えば、ジェットへの1つ以上の粒子の導入によって提供されるように、2つの相は、擾乱が適用されることなく液滴に分解されることはない。かかる条件が、例えば、We>1またはCa>0.1に存在してもよい。安定噴射方式の実施形態を図1B~1Eに示す。「安定ジェット」、「安定噴射方式」、「安定噴射条件」などの用語によって特徴付けられる条件はまた、粒子がなくてもノズル内のジェットの先端に液滴が形成される「不安定噴射条件」と対比され得る。
【0072】
当業者は、特定のマイクロ流体パラメータが、本明細書に記載される安定噴射条件に到達するように変化し得ることを理解するであろう。例えば、動的粘度(η)、速度(υ)、界面張力(γ)、慣性力、湿潤性、および未擾乱ジェットの閉じ込めの程度のうちの1つ以上が変化して、We>1またはCa>0.1を達成してもよい。
【0073】
限定されないが、典型的なパラメータ範囲は、ウェーバー数1以上、Ca=10-3~10-2;ウェーバー数1以上、Ca=10-2~10-1;およびウェーバー数1以上、Ca=10-1~1;ウェーバー数1以下、Ca>10-1となる。
【0074】
ジェットを生成するために使用されるマイクロ流体デバイスとしては、米国特許出願公開第2009/0209039号に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されず、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
一部の実施形態では、噴射方式において、複数の粒子は、1Hz~100kHzの速度、例えば、約5,000/秒以上、例えば、約10,000/秒以上、約15,000/秒以上、約20,000/秒以上、または約25,000/秒以上の速度でカプセル化される。ある特定の実施形態では、複数の粒子は、約10,000/秒以上の速度でカプセル化される。一部の実施形態では、噴射方式下では、複数の粒子がカプセル化される速度は、滴下方式における液滴形成と比較して、少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍または15倍増加する。
【0076】
単分散液滴の生成に関与する流体
本明細書で考察されるように、開示される方法は、概して、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることと、複数の粒子を第1の流体のジェット中へ導入することで、第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の単分散液滴の複数の粒子のカプセル化を誘発することと、を含む。一部の実施形態では、本方法は、第1の流体を第2の流体中へ流動させる前に、第3の流体を第1の流体中へ流動させるさらなるステップを含み、第3の流体は、第1の流体と混和性である。第1の流体は、概して、第2の流体と非混和性であるように選択され、粒子を構成する材料と共通の親水性/疎水性を共有する。第3の流体は、概して、第2の流体と非混和性であるように選択され、第1の流体と混和性または非混和性であってもよい。したがって、一部の実施形態では、第1の流体は、水相流体であり、第2の流体は、非水相、例えば、フルオロカーボン油、炭化水素油、またはこれらの組み合わせなどの第1の流体と非混和性である流体であり、第3の流体は、水相流体である。代替的に、一部の実施形態では、第1の流体は、非水相、例えば、フルオロカーボン油、炭化水素油、またはこれらの組み合わせであり、第2の流体は、第1の流体、例えば、水相流体と非混和性である流体であり、第3の流体は、フルオロカーボン油、炭化水素油、またはこれらの組み合わせである。
【0077】
上記で考察したように、本開示の方法は、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることを含む。第1の流体が水相流体であり、第2の流体が非水相流体である(またはその逆である)実施形態が本明細書に記載されているが、安定ジェット、第1の流体および第2の流体が非混和性の水系相である水性二相系(ATPS)を使用して生成され得ることに留意されたい。
【0078】
本明細書に記載の安定噴射条件の提供に関連して、様々な流体の流量を適切に調整することができる。例えば、好適な流速は、約20μL/時間~約40mL/時間、例えば、約50μL/時間~約20mL/時間、約100μL/時間~約10mL/時間、または約500μL/時間~約5mL/時間の範囲であり得る。非限定的な例示的な実施形態では、第1の流体の流量は、約1000μl/時間以上、例えば、約1500μl/時間以上、約2000μl/時間以上、約2500μl/時間以上、約3000μl/時間以上、約3500μl/時間以上、または約4000μl/時間以上であり得る。ある特定の態様において、第1の流体の流量は、約2000μl/時間である。第2の流体の流量は、約2000μl/時間以上、例えば、約2000μl/時間以上、約2500μl/時間以上、約3000μl/時間以上、約3500μl/時間以上、約4000μl/時間以上、約4500μl/時間以上であってよい。ある特定の態様において、第2の流体の流量は、約4000μl/時間である。第3の流体の流量は、約1000μl/時間以上、例えば、約1500μl/時間以上、約2000μl/時間以上、約2500μl/時間以上、約3000μl/時間以上、約3500μl/時間以上、または約4000μl/時間以上であり得る。ある特定の態様において、第1の流体の流量は、約2000μl/時間である。
【0079】
一部の実施形態では、第1の流体、第2の流体、および/または第3の流体の粘度は、値の変動が最小であり、例えば、値が100未満、50未満、10未満、5未満、4未満、3未満、2未満、1.01未満の係数を有する。
【0080】
非水相は、水と非混和性である連続相を形成する担体流体として機能してもよい。また非水相は、分散相であってもよい。非水相は、少なくとも1つの油を含む油相と称され得るが、水と非混和性である任意の液体(または液化可能な)化合物または液体化合物の混合物を含み得る。油には、合成のもの、または天然由来のものが存在し得る。油は、炭素および/またはシリコンを含んでもよく、水素および/またはフッ素を含んでいなくてもよい。油は、親油性または疎脂性であり得る。言い換えると、油は、一般に、有機溶媒と混和性または非混和性であり得る。例示的な油は、とりわけ、シリコーン油、鉱物油、フルオロカーボン油、植物油、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0081】
例示的な実施形態では、油は、フッ素化油、例えば、フルオロカーボン油であり、これは、ペルフルオロ化有機溶媒であってもよい。好適なフルオロカーボン油の例としては、COF15(HFE-7500)、C2148(FC-40)、およびペルフルオロメチルデカリン(PFMD)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本明細書で考察されるように、一部の実施形態では、第1または第3の流体は、複数の標的(例えば、ゲノムDNA分子、RNA分子、および/またはRT-PCT、PCR、および/または等温増幅試薬を含む核酸増幅試薬などの核酸合成試薬などのDNA分子)を含有してもよい。
【0083】
一部の実施形態では、ゲル化剤は、1つ以上の流体(例えば、本明細書に記載の第3の流体)に添加されて、液滴の外層を、例えば、提供されるコーティングされた粒子に固化させ得る。
【0084】
界面活性剤
ある特定の態様において、界面活性剤は、第1の流体、第2の流体、および/または第3の流体に含まれてもよい。したがって、液滴、例えば、粒子含有液滴は、界面活性剤安定化エマルション、例えば、界面活性剤安定化単一エマルションまたは界面活性剤安定化二重エマルションを含んでもよく、界面活性剤は、第1の流体、第2の流体、および/または第3の流体に可溶性である。オクチルフェノールエトキシレート(Triton X-100)、ポリエチレングリコール(PEG)、(Tween20)、および/またはオクチルフェノキシポリエトキシエタノール(IGEPAL)を含むがこれらに限定されない、液滴内で所望の反応が行われることを可能にする任意の簡便な界面活性剤を使用してもよい。他の態様では、液滴は、界面活性剤によって安定化されない。
【0085】
使用される界面活性剤は、エマルションに使用される油相および水相(または他の好適な非混和相、例えば、任意の好適な疎水相および親水相)などのいくつかの因子に依存する。例えば、フルオロカーボン油中で水性液滴を使用する場合、界面活性剤は、親水性ブロック(PEG-PPO)および疎水性フッ素化ブロック(Krytox(登録商標)FSH)を有してもよい。しかしながら、例えば、油が炭化水素油に切り替えられた場合、代替として、界面活性剤ABIL EM90のように、疎水性炭化水素ブロックを有するような界面活性剤を選択してもよい。
【0086】
イオン界面活性剤を含む他の界面活性剤も想定され得る。液滴を安定させるために、他の添加剤も油中に含めることができ、これには、35℃を超える温度で液滴の安定性を増加させるポリマーが含まれる。
【0087】
いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、熱安定性エマルションの調製は、標準的なPCR反応に関連するような、耐高温性の膜または二重エマルション界面を形成できる界面活性剤を使用することに依存するとの提案がなされている。これを達成する1つの方法は、液滴の界面でまたは膜構成内で組み立てられる場合に、界面活性剤を界面から除去する(または膜を破壊する)ために必要なエネルギーが、kT(式中、k=ボルツマン定数であり、Tは温度である)によって提供され得るエネルギーよりも高いように、比較的高い分子量を有する界面活性剤を使用することであり得る。
【0088】
熱安定性エマルションを提供するために利用され得る例示的な界面活性剤は、PEG-PFPE(ポリエチレングリコール-ペルフルオロポリエーテル)ブロックコポリマー、例えばPEG-Krytox(登録商標)を含む「生体適合性」界面活性剤(例えば、Holtze et al.,“Biocompatible surfactants for water-in-fluorocarbon emulsions,”Lab Chip,2008,8,1632-1639(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、ならびに油相中のイオン性Krytox(登録商標)および水相中のJeffamine(登録商標)(ポリエーテルアミン)を含む界面活性剤(例えば、DeJournette et al.,“Creating Biocompatible Oil-Water Interfaces without Synthesis:Direct Interactions between Primary Amines and Carboxylated Perfluorocarbon Surfactants”,Anal.Chem.2013,85(21):10556-10564(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)である。追加のおよび/または代替の界面活性剤は、それらが安定した界面を形成することを条件として使用されてもよい。したがって、多くの好適な界面活性剤は、高分子量を有するブロックコポリマー界面活性剤(PEG-Krytox(登録商標)など)である。これらの例には、フッ素化分子および溶媒が含まれるが、非フッ素化分子も利用され得る可能性が高い。
【0089】
したがって、一部の実施形態では、本開示は、熱安定性エマルションを提供する。これらのエマルションは、PCR、RT-PCR、タンパク質-タンパク質相互作用研究などの生物学的反応の実施における使用に好適である。
【0090】
単分散液滴への試薬添加
液滴は、いくつかの化学的および生物学的用途、例えば、化学合成、動態学研究、生物学的内容物のスクリーニング、および生物医学的診断のための独立したマイクロリアクタとして使用することができる。主題の方法を実践する際に、1つ以上のステップ(例えば、約2、約3、約4、または約5以上のステップ)で、いくつかの試薬を液滴に添加する必要があり得る。液滴に試薬を添加する手段は、例えば、液滴のエマルション化段階に応じて、いくつかの方法で変化してもよく、例えば、異なるアプローチが二重エマルション液滴などの多重エマルション液滴に対して単分散単一エマルション液滴への試薬添加に適用可能であってもよい。対象のアプローチとしては、Ahn,et al.,Appl.Phys.Lett.88,264105(2006)、Priest,et al.,Appl.Phys.Lett.89,134101(2006)、Abate,et al.,PNAS,November 9,2010 vol.107 no.45 19163-19166、およびSong,et al.,Anal.Chem.,2006,78(14),pp4839-4849により記載されたものが含まれるが、これらに限定されず、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、試薬は、例えば、マイクロ流体デバイスまたはシステムを使用せずに、例えば、第1の流体の成分として、本明細書に記載されるエマルション化プロセス中に液滴に添加されてもよい。他の実施形態では、マイクロ流体技術、デバイス、および/またはシステムは、本明細書に別途記載されるように一度調製された単分散液滴を添加および/または修正するために利用されてもよい。
【0091】
例えば、本明細書に記載されるように、試薬は、例えば、ジェットの分解の前に、液滴を試薬(複数可)を含有する第2の液滴と合流させることを含む方法によって、単分散単一エマルション液滴に添加されてもよい。第2の液滴に含有される試薬(複数可)は、本明細書に記載されるものを具体的に含む任意の簡便な手段によって添加されてもよい。この液滴は、第1の液滴と合流されて、第1の液滴および第2の液滴の両方の内容物を含む液滴が作成されてもよい。一部の実施形態では、第1の液滴は、第2の液滴よりも実質的に大きく、第2の液滴を上回る数である。一部の実施形態では、1つ以上の液滴は、1つ以上の細胞を含む。
【0092】
一部の実施形態では、2つの液滴の合流は、化学反応(複数可)の開始を誘発する。液滴が互いに接触し、表面張力および潤滑によって引き起こされる安定化力を克服することが、合流のための実用的な前提条件である。ある特定の態様では、界面活性剤を使用して、凝集に対して液滴を安定化することができる。したがって、液滴は、界面活性剤安定化エマルション、例えば、界面活性剤安定化単一エマルションを含み得る。液滴中で所望の反応が実行されることを可能にする任意の簡便な界面活性剤を使用してもよい。
【0093】
一部の実施形態では、粒子誘発安定ジェット分解を使用して、試薬を粒子含有液滴と合流させることができる。かかる粒子含有液滴は、安定ジェットと結合され得、これは、誘発されると、ジェット試薬および単一粒子を含有するより大きな液滴に分解される。したがって、例えば、本開示は、単分散液滴を生成するための方法であって、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることと、ジェットの分解の前に、1つ以上の液滴をジェットと合流させることと、を含む方法を提供する。ジェットと合流される液滴は、標的および/または試薬、例えば、細胞、核酸増幅試薬などを含んでもよい。一部の実施形態では、液滴は、ジェット形成の上流または下流のいずれかで、第1の流体と合流され得る。
【0094】
一部の実施形態では、粒子誘発安定ジェットの分解を使用して、試薬を液滴と合流させることができる。したがって、例えば、本開示は、単分散液滴を生成するための方法であって、マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、第2の流体中に第1の流体のジェットを提供することであって、ジェットが、複数の粒子を含み、第1の流体が、第2の流体と非混和性である、流動させることと、ジェットの粒子誘導分解の前に、1つ以上の液滴をジェットと合流させることと、を含む方法を提供する。ジェットと合流される液滴は、標的および/または試薬、例えば、細胞、核酸増幅試薬などを含んでもよい。一部の実施形態では、液滴は、ジェット形成の上流または下流のいずれかで、第1の流体と合流され得る。
【0095】
1つ以上の試薬はまた、あるいはその代替として、液滴凝集、電気凝集、合流デバイスの使用、および/またはピコインジェクションなどの技術を使用して、本明細書に記載される単分散単一エマルション液滴に添加されてもよい。液滴凝集において、標的液滴は、標的液滴に添加される試薬(複数可)を含有する液滴と共に流動してもよい。2つの液滴は、互いに接触するが、他の液滴には接触しないように流動してもよい。その後、これらの液滴は、電極または電界を印加する他の手段を通過してもよく、電界により、それらが一緒中へ合流されるように液滴を不安定にすることができる。
【0096】
ピコインジェクションでは、標的液滴は、添加される試薬(複数可)を含有するチャネルを通って流動することができ、ここで試薬(複数可)は高圧にある。しかしながら、電界がない場合、界面活性剤の存在により、液滴をコーティングする界面活性剤が流体(複数可)の侵入妨げる可能性があるため、液滴は注入されずに通過する。ただし、液滴がインジェクタを通過する際に電界が印加されると、試薬(複数可)を含有する流体が液滴に注入される。液滴に添加される試薬の量は、例えば、注入圧力および流動液滴の速度を調整すること、電界のオンおよびオフを切り替えることなど、いくつかの異なるパラメータによって制御されてもよい。いくつかの態様では、合流のために液滴が注入されてもよい。かかる液滴は、接触により帯電した安定ジェットと合流され得るが、安定ジェットを分解しない。次いで、粒子は、合流した安定ジェットの分解を引き起こし、新しい単分散液滴を生成する。
【0097】
他の態様では、1つ以上の試薬はまた、あるいはその代替として、2つの液滴を一緒中へ合流させることによって、または液体を液滴に注入することに依存しない方法によって、本明細書に記載される単分散単一エマルション液滴に添加することができる。むしろ、1つ以上の試薬は、試薬を非常に小さな液滴の流れにエマルション化し、これらの微小液滴を標的液滴と合流させるステップを伴う方法によって、液滴に添加することができる。かかる方法は、本明細書では、「複数の液滴の凝集を介した試薬添加」と称される。これらの方法は、標的液滴と比較して添加される液滴のサイズが小さいため、小さい液滴は標的液滴よりも速く流動し、標的液滴の後ろで収集されるという事実を利用するものである。次いで、当該収集体は、例えば、電界を印加することによって合流され得る。このアプローチを使用して、あるいはその代替として、異なる流体の微小液滴のいくつかの共流動ストリームを使用することによって、複数の試薬を液滴に添加することができる。微小液滴と標的液滴との効果的な合流を可能にするためには、微小液滴を標的液滴を含有するチャネルよりも小さくし、また、電界を印加する電極から標的液滴を注入するチャネル間の距離を十分に長くして、微小液滴が標的液滴に「追従する」時間を与えることが重要である。このチャネルが短すぎると、全ての微小液滴が標的液滴と合流されるわけではなく、所望の量未満の試薬が添加される場合がある。これは、電界の大きさを増加させることによってある程度補償され得るが、これは、より離れた液滴が合流することを可能にする傾向がある。同じマイクロ流体デバイス上で微小液滴を行うことに加えて、それらはまた、代わりに、別のマイクロ流体液滴作製装置を使用してオフラインで、または均質化してから、それらを標的液滴を含有するデバイスに注入することもできる。
【0098】
したがって、ある特定の態様において、試薬は、試薬を液滴の流れにエマルション化することであって、液滴が、標的液滴(例えば、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴)のサイズよりも小さい、エマルション化させることと、液滴を標的液滴と一緒に流動させることと、液滴を標的液滴と合流させることと、を含む方法によって、本明細書に記載のように調製された液滴に添加される。液滴の流れに含有される液滴の直径は、標的液滴の直径の約75%以下の範囲で変化し得る。例えば、流動液滴の直径は、標的液滴の直径の約75%以下、標的液滴の直径の約50%以下、標的液滴の直径の約25%以下、標的液滴の直径の約15%以下、標的液滴の直径の約10%以下、標的液滴の直径の約5%以下、または標的液滴の直径の約2%以下の範囲である。ある特定の態様において、複数の流動液滴、例えば2個以上の液滴、3個以上の液滴、4個以上の液滴、または5個以上の液滴が標的液滴と合流され得る。かかる合流は、任意の簡便な手段によって達成することができ、これには、限定されないが、電界を印加することが含まれ、ここで、電界は、流動液滴を標的液滴と合流させるのに有効である。
【0099】
上記の方法の変形例として、流体は、噴射していてもよい。すなわち、流動液滴に添加される流体をエマルション化するのではなく、この流体の長いジェットを形成し、標的液滴に沿って流動させることができる。次に、これらの2つの流体は、例えば、電界を印加することによって合流され得る。その結果、液滴がある膨らみを持つジェットが発生し、レイリープラトーの不安定性により、合流前には標的液滴と略同じ大きさの液滴に自発的に分解され得る。いくつかの変異形が企図される。例えば、噴射を容易にするために、ゲル化剤および/または界面活性剤などの1つ以上の薬剤をジェット流体に添加してもよい。さらに、その開示が参照により本明細書に組み込まれるUtada,et al.,Phys.Rev.Lett.99,094502(2007)のように、連続流体の粘度を調整して、噴射を可能にすることもでき、
【0100】
他の態様では、溶液中の溶解電解質を利用することによって、注入流体自体を電極として使用する方法を使用して、1つ以上の試薬を添加することができる。
【0101】
別の態様では、試薬は、試薬が添加される液滴(すなわち、「標的液滴」)を添加される試薬(「標的試薬」)を含有する液滴内にカプセル化することによって、より早い時期に形成された液滴に添加される。ある特定の実施形態において、かかる方法は、まず、標的液滴を好適な疎水相、例えば油のシェルにカプセル化して、二重エマルションを形成することによって実行される。次いで、二重エマルションを、標的試薬を含有する液滴によってカプセル化して、三重エマルションを形成する。標的液滴を標的試薬を含有する液滴と組み合わせるために、次いで、電界を印加すること、液滴界面を不安定にする化学物質を添加すること、収縮部および他のマイクロ流体幾何学形状を通って三重エマルションを流動させること、剪断もしくは超音波を印加すること、温度を増加もしくは低下させること、または磁界によって引っ張られると二重エマルション界面を破裂する可能性がある磁性粒子を液滴内にカプセル化することを含むがこれらに限定されない、任意の好適な方法を使用して、二重エマルションを開裂させる。
【0102】
液滴に試薬を添加する上記の方法の態様は、米国特許出願公開第2015/0232942号により詳細に記載されており、その開示は、参照により、その全体が、全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0103】
液滴に試薬を添加する上記の方法は、単分散単一エマルション液滴に試薬を添加するのに好適であり得るが、上記の方法のうちの1つ以上は、二重エマルション液滴などの多重エマルション液滴に試薬を直接添加するのに好適ではない場合がある。例えば、かかる方法により多重エマルション液滴の構造が分解される場合がある。しかしながら、上記の方法は、その後カプセル化されて多重エマルション液滴を形成する、単分散単一エマルション液滴に試薬を添加する際に使用できる可能性がある。したがって、多重エマルション液滴に試薬を添加する追加の方法が以下に記載される。例えば、一部の実施形態では、試薬(核酸増幅産物を検出可能に標識するように設計された検出可能な標識、および/または核酸合成産物を産生するように設計された核酸合成試薬など)は、試薬を混和相担体流体、例えば、第3の流体に添加することによって、多重エマルション液滴に添加されてもよい。ここで、試薬は、混和相担体流体から、多重エマルション液滴の非混和性シェル、例えば、第2の流体を通って、多重エマルション液滴の第1の混和相流体、例えば、第1の流体に拡散する。
【0104】
一部の実施形態では、多重エマルション液滴は、第2の多重エマルション液滴であり、核酸合成試薬を第2の多重エマルション液滴に添加する方法は、第1の多重エマルション液滴内に核酸、例えば標的核酸をカプセル化することと、第2の多重エマルション液滴内に合成試薬および第1の多重エマルション液滴をカプセル化することと、第1の多重エマルション液滴を破裂させ、それによって核酸を合成試薬と接触させることと、を含む。
【0105】
一部の実施形態では、多重エマルション液滴は、第2の多重エマルション液滴であり、核酸合成試薬を第2の多重エマルション液滴に添加する方法は、第1の多重エマルション液滴内に核酸合成試薬をカプセル化することと、第2の多重エマルション液滴内に核酸、例えば、標的核酸、および第1の多重エマルション液滴をカプセル化することと、第1の多重エマルション液滴を破裂させ、それによって核酸を合成試薬と接触させることと、を含む。
【0106】
一部の実施形態では、多重エマルション液滴は、第1の多重エマルション液滴であり、好適な方法は、試薬を含む第2の多重エマルション液滴内に第1の多重エマルション液滴をカプセル化し、第2の多重エマルション液滴内で第1の多重エマルション液滴を破裂させて試薬を第1の多重エマルション液滴の内容物と接触させることによって、試薬を第1の多重エマルション液滴に添加することを含む。
【0107】
一部の実施形態では、多重エマルション液滴は、第2の多重エマルション液滴であり、好適な方法は、第2の多重エマルション液滴内に試薬を含む第1の多重エマルション液滴をカプセル化し、第2の多重エマルション液滴内で第1の多重エマルション液滴を破裂させて試薬を第2の多重エマルション液滴の内容物と接触させることによって、試薬を第2の多重エマルション液滴に添加することを含む。
【0108】
係留部分(Tethering Moieties)
一部の実施形態では、標的、例えば、核酸標的分子、核酸合成試薬、および/または核酸検出試薬は、粒子上または粒子内に配置された1つ以上の係留部分を介して粒子に結合される。係留部分は、係留される標的と相互作用し得る。例えば、係留部分は、粒子上または粒子内に結合される特異的な配列を有するオリゴヌクレオチドであってもよい。特定のオリゴヌクレオチドは、例えば、塩基対および架橋を介して、流体中の標的にハイブリダイゼーションすることができる。
【0109】
一部の実施形態では、特定の標的は、サイズが大きすぎて、標的を捕捉するための官能基を含有する粒子を通過することができない場合がある。かかる場合、係留部分は、粒子にカプセル化される官能性粒子であり得る。例えば、標的が粒子を通して拡散すると、標的は官能性粒子と接触し、捕捉される機会を提供する。粒子が混和性担体流体中に吸収されたとしても、粒子内または粒子上に捕捉された粒子に係留されるため、標的は係留されたままである。
【0110】
単分散液滴中の反応
本明細書に開示される方法は、概して、分光法、化学技術、生物学的技術、配列決定等の様々な検出方法を使用して、多数の区画化反応の実行、ならびにそれらの反応のその後の読み取りおよび選別を容易にする。反応には、生体分子なしで行われる有機反応もしくは無機反応、または酵素反応、例えばPCRなどの生体分子および/または細胞を伴う反応が含まれ得る。また、細胞材料または細胞ベースの抽出物を伴う反応であってもよく、これには、生体細胞を使用することなく、DNA、RNA、およびタンパク質を発現することができる転写および翻訳抽出物が含まれる。これは、例えば、活性について経路をスクリーニングすることを含む、合成生物学的用途に使用され得る。
【0111】
例えば、1つ以上のタンパク質によって実装された経路は、1つ以上の経路タンパク質を発現し得る細胞を含まない抽出物を有する単分散単一エマルション液滴または多重エマルション(例えば、二重エマルション)液滴内にカプセル化された核酸によってコードされ得る。アッセイ成分も含めることができ、これにより、経路の試験が可能となる。経路活性およびアッセイの測定値に基づいて、リアクタを選別して、特に望ましい経路をカプセル化した単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を回収することができる。選別後、それらを分析、増幅などして、スクリーンを実行するか、代替的に、指向性進化法を実行して強化された経路配列を生成するかのいずれかで、プロセスを継続することができる。
【0112】
単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中の反応は、バイアスが少ない配列決定ライブラリの生成を含む核酸操作などの用途に使用され得、または分子を特定の特徴と組み合わせるためにも使用され得る。例えば、特定の遺伝子配列または核酸合成および/または増幅産物を発現する細胞は、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化され、次いで、本明細書に記載の方法に供して、配列を単離、増幅、および連結し、分析または追加の用途で使用し得る単一分子を生成することができる。例えば、細胞がヒト抗体生成細胞を含む場合、細胞の重鎖および軽鎖に対応する遺伝子を一緒に連結して、単一の分子を作成でき、これは、重鎖および軽鎖対合を検出するために、またはscFvもしくはFabなどの抗体様分子を生成するために分析することができる。
【0113】
PCR産物の検出
主題の方法を実施する際、核酸合成および/または増幅産物(例えば、等温核酸増幅産物またはPCR産物)を検出する方法は、様々であり得る。例えば、単に集団に存在する特定の細胞型、例えば腫瘍細胞の数をカウントすることを目的とする場合、これは、SybrGreen、または任意の他の染色剤および/またはインターカレート染色剤が各単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加される単純なバイナリーアッセイを使用することによって達成することができ、その結果、特徴的な遺伝子、例えば癌遺伝子が存在し、PCR産物が産生される場合、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が蛍光を発する。蛍光の変化は、蛍光偏光に起因し得る。成分の検出には、インターカレート染色剤(例えば、SybrGreen)を使用することを含み得る。
【0114】
当該技術分野において既知の蛍光色素を使用することを含む、様々な異なる検出成分を、主題の方法を実践する上で使用することができる。蛍光色素は、典型的には、フルオレセインおよびその誘導体、ロダミンおよびその誘導体、シアニンおよびその誘導体、クマリンおよびその誘導体、カスケードブルーおよびその誘導体、ルシファーイエローおよびその誘導体、BODIPYおよびその誘導体等のファミリーに分類されてもよい。例示的なフルオロフォアとしては、インドカルボシアニン(C3)、インドジカルボシアニン(C5)、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Texas Red、Pacific Blue、Oregon Green488、Alexa fluor-355、Alexa Fluor488、Alexa Fluor532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor-555、Alexa Fluor568、Alexa Fluor594、Alexa Fluor647、Alexa Fluor660、Alexa Fluor680、JOE、Lissamine、Rhodamine Green、BODIPY、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、カルボキシフルオレセイン(FAM)、フィコエリトリン、ロダミン、ジクロロダミン(dRhodamine)、カルボキシテトラメチルロダミン(TAMRA)、カルボキシ-X-ロダミン(ROX)、LIZ、VIC、NED、PET、SYBR、PicoGreen、RiboGreenなどが挙げられる。フルオロフォアおよびこれらの使用の説明は、とりわけ、R.Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Products,9th ed.(2002),Molecular Probes,Eugene,Oreg.、M.Schena,Microarray Analysis(2003),John Wiley&Sons,Hoboken,N.J.、Synthetic Medicinal Chemistry 2003/2004 Catalog,Berry and Associates,Ann Arbor,Mich.、G.Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press(1996)、およびGlen Research 2002 Catalog,Sterling,VA.に記載されている。
【0115】
他の態様では、特に、存在する核酸をさらに特徴づけること、例えば、癌遺伝子をさらに特徴付けることを目標とする場合、追加の試験が必要とされ得る。例えば、多重アッセイの場合、これは、遺伝子(複数可)のうちのどれが単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に増幅されるかに関連する光学出力を有することによって達成され得る。代替のアプローチは、例えば、インターカレート染色剤と共にバイナリ出力を使用して、どの単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が任意の癌遺伝子を有するかを決定することである。次いで、これらを選別してこれらの液滴を回収し、それらをより詳細に分析して、それらが含有する癌遺伝子を決定することができる。かかる液滴に存在する癌遺伝子を決定するために、マイクロ流体技術または非マイクロ流体技術が使用され得る。非マイクロ流体技術を使用して、癌遺伝子を含有すると特定された液滴をウェルプレート上のウェルに入れ、それをより大きな体積に希釈し、多重PCR反応中に生成された全てのPCR産物を放出することができる。次いで、このウェルからの試料を他のウェルに移し、それらの各々に、癌遺伝子のうちの1つのためのプライマーを添加することができる。次いで、これらのウェルは、温度サイクルされて、PCRが開始され、この時点で、インターカレート染色剤が添加されて、一致する癌遺伝子およびプライマーを有するウェルを発光させる。
【0116】
したがって、主題の方法を実践する際に、当該成分は、例えば、蛍光の変化に基づいて検出され得る。ある特定の態様において、蛍光の変化は、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)に起因する。このアプローチにおいて、5’プライマーがクエンチャー色素を有し、3’プライマーが蛍光色素を有する特別なプライマーのセットを使用してもよい。これらの色素は、端部または中間体のいずれかで、プライマー上の任意の場所に配置することができる。プライマーが相補的であるため、それらは溶液中に二本鎖として存在する。それらは互いに近接しているため、蛍光色素の発光がクエンチャー色素によって消光され、溶液が暗く見える。PCR後、これらのプライマーは長いPCR産物に組み込まれるため、互いに遠く離れることになる。これにより、蛍光色素が発光し、溶液が蛍光になる。したがって、蛍光色素の波長で液滴の強度を測定して、特定の癌遺伝子が存在するかどうかを検出することができる。異なる癌遺伝子が存在するかどうかを検出するために、これは、異なるプライマーについて異なる着色色素で行われる。これにより、細胞内に存在する癌遺伝子のプライマーに対応する全ての波長で液滴が蛍光になる。
【0117】
単分散液滴中の細胞(例えば、腫瘍細胞)の検出
主題の方法の態様は、生体試料中の1つ以上の細胞または細胞のサブセット(例えば、腫瘍細胞)の存在を検出することを含む。かかる方法は、例えば、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中に細胞をカプセル化および/または結合するステップと、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中の細胞の溶解をもたらすのに十分な条件に供するステップと、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を、核酸増幅に対する阻害効果を有する1つ以上の材料を非活性化または除去するのに十分な条件に供するステップと、核酸合成試薬、例えば、核酸増幅試薬を、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中中へ導入するステップと、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を、存在する場合に標的核酸の合成、例えば、増幅をもたらすのに十分な核酸合成条件、例えば、核酸増幅条件に供するステップと、存在する場合に、標的核酸の合成、例えば、増幅から生じる増幅または合成産物を検出するステップと、を含み得る。
【0118】
任意の簡便な手段を使用して、生体試料(例えば、全血)を対象から回収してもよい。生体試料は、例えば、遠心分離、濾過などの処理ステップを使用して、細胞以外の成分を除去するように処理されてもよい。所望の場合、細胞は、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化する前に、1つ以上の抗体および/またはプローブで染色されてもよい。
【0119】
1つ以上の溶解剤はまた、細胞(複数可)を破裂させ得る条件下で、細胞を含有する単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加し、それによってそれらのゲノムを放出してもよい。溶解剤は、細胞を単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化した後に添加してもよい。プロテイナーゼKまたは細胞毒素などの任意の簡便な溶解剤を用いてもよい。特定の実施形態では、細胞は、Triton X-100および/またはプロテイナーゼKなどの洗浄剤を含有する溶解バッファーと共に、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に共カプセル化され得る。細胞(複数可)を破裂させ得る特定の条件は、使用される特定の溶解剤に応じて変化する。例えば、プロテイナーゼKが溶解剤として組み込まれている場合、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を約37~60℃に約20分間加熱して細胞を溶解し、プロテイナーゼKが細胞タンパク質を消化することが可能となり得る。その後、それらを約95℃に約5~10分間加熱してプロテイナーゼKを非活性化してもよい。
【0120】
ある特定の態様において、細胞溶解はまた、あるいはその代替として、溶解剤の添加を伴わない技術に依存し得る。例えば、溶解は、細胞の穿刺、剪断、研磨などをもたらすために様々な幾何学的特徴を使用し得る機械的技術によって達成され得る。音響技術などの他の種類の機械的破壊も使用され得る。さらに、熱エネルギーを使用して細胞を溶解することもできる。細胞溶解をもたらす任意の簡便な手段が、本明細書に記載される方法において用いられてもよい。
【0121】
プライマーは、検出される遺伝子および/または遺伝子マーカー、例えば、癌遺伝子のそれぞれについて、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中へ導入することができる。したがって、ある特定の態様では、様々な遺伝子および/または遺伝子マーカー、例えば、全ての癌遺伝子のプライマーは、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中に同時に存在し得、それにより、多重アッセイが提供される。液滴は、標的細胞、例えば、癌細胞を含有する液滴がPCRを受けるように温度循環されてもよい。代替的または加えて、MDAまたは他の等温核酸増幅法、例えば、ループ媒介等温核酸増幅(LAMP)、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、およびニッキング酵素増幅反応(NEAR)が利用され得る。ゲノム中に存在する癌遺伝子および/または遺伝子マーカーに対応するプライマーのみが、増幅を誘導し、これらの癌遺伝子および/または遺伝子マーカーの多くのコピーを液滴中に作成する。これらの増幅産物の存在を検出することは、FRETを使用すること、インターカレート色素で染色すること、またはこれらを粒子に付着させることなど、様々な方法によって達成することができる。液滴を光学的にプローブして、増幅産物を検出することができる。一部の実施形態では、液滴を光学的にプローブすることは、初期集団に存在する腫瘍細胞の数をカウントすること、および/または各腫瘍細胞に存在する癌遺伝子の同定を可能にすることを含み得る。
【0122】
主題の方法を使用して、生体試料が対象となる特定の細胞、例えば、腫瘍細胞を含有するかどうかを判定することができる。ある特定の態様では、主題の方法は、生体試料中に存在する対象となる細胞、例えば腫瘍細胞の数を定量化することを含み得る。生体試料中に存在する対象となる細胞、例えば腫瘍細胞の数を定量化することは、増幅産物が検出された液滴の数に少なくとも部分的に基づいてもよい。例えば、液滴は、大部分の液滴がゼロまたは1つの細胞を含有することが予想される条件下で生成されてもよい。本明細書にさらに完全に記載される技術を使用して、細胞を含有しないこれらの液滴を除去してもよい。上述のPCRステップを実施した後、増幅産物の含有が検出された液滴の総数をカウントして、生体試料中の対象となる細胞、例えば、腫瘍細胞の数を定量化してもよい。ある特定の態様において、本方法はまた、対象となる細胞、例えば、腫瘍細胞である生体試料由来の細胞の画分または割合を決定するために、液滴の総数をカウントすることを含んでもよい。
【0123】
一部の実施形態では、本明細書に記載の単分散液滴から調製される多重エマルション液滴に合成試薬を導入することは、合成試薬を第3の流体中中へ導入することを含み、合成試薬は、第3の流体から、非混和性であるシェルを通って、多重エマルション液滴の第1の流体中に拡散する。
【0124】
対象となる細胞および/または細胞材料は、本明細書でより詳細に説明されるように、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を選別し、例えば、化学的、電気的手段または機械的手段を通じて、液滴破裂を介してそれらの内容物を回収することによって回収されてもよい。種々の好適な選別技術および関連デバイスを利用して、本明細書に記載のものを含む増幅産物および/または合成産物を含有する単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を選別および分離してもよい。
【0125】
単分散液滴中の核酸検出
本明細書で考察されるように、開示される方法により、様々な生体試料からの対象となる核酸、例えば、DNAまたはRNAの検出における使用が見出される。かかる方法は、例えば、核酸および合成試薬を単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化するステップと、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を核酸の増幅をもたらすのに十分な増幅条件に供するステップと、核酸の増幅から生じる増幅産物を検出するステップと、を含んでもよい。増幅条件は、MDA条件および/もしくはPCR条件、例えば、RT-PCR条件、ならびに/または追加の等温核酸増幅条件、例えば、ループ媒介等温核酸増幅(LAMP)、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、およびニッキング酵素増幅反応(NEAR)であってもよい。
【0126】
対象となる核酸は、本明細書でより詳細に説明されるように、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を選別し、例えば、化学的、電気的手段または機械的手段を通じて、液滴破裂を介してそれらの内容物を回収することによって回収されてもよい。種々の好適な選別技術および関連デバイスを利用して、本明細書に記載のものを含む増幅産物を含有する単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を選別および分離してもよい。一態様では、標的核酸配列を濃縮するための方法が提供されており、当該方法は、核酸を含む試料を複数の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化することと、MDA試薬およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試薬、ならびに複数の好適なプライマーを単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴にそれぞれ導入することと、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を、MDA増幅に十分な条件下およびPCR増幅に十分な条件下でそれぞれインキュベートして、MDA増幅産物およびPCR増幅産物を産生することであって、好適なPCRプライマーは、それぞれが標的核酸配列を組み込んだ1つ以上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションする1つ以上のプライマーを含んでよく、PCR増幅産物は標的核酸配列全体を含まない、インキュベートすることと、検出成分をインキュベートの前後のいずれかに単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中へ導入することと、検出成分の検出によってPCR増幅産物の有無を検出することであって、検出成分の検出がPCR増幅産物および標的核酸配列の存在を示す、検出することと、検出成分の検出に基づいて単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を選別することであって、選別は、PCR増幅産物および標的核酸配列を含む単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が存在する場合、PCR増幅産物および標的核酸配列を含まない単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴から分離する、選別することと、選別された単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴由来の核酸配列をプールして、存在する場合には、濃縮された標的核酸配列プールを提供することと、を含む。これらのステップのうちの1つ以上は、マイクロ流体制御下で実行され得る。
【0127】
上記の方法は、例えば、PCR検出可能な部分配列の存在に基づいて、異種系からのDNA分子の濃縮を可能にする。DNA分子は、短い(例えば、数百の塩基)分子であり得、または長い(例えば、メガ塩基またはより長い塩基)分子であり得る。試料は、標的分子がデジタル的に液滴中で検出されるように、単分散液滴内にカプセル化され得る(すなわち、各液滴は、0または1個の標的分子を含有する)。次に、単分散液滴を、例えば蛍光に基づいて選別して標的分子を回収してもよい。この方法は、例えば、メガ塩基の長さの順に、DNA断片の異種試料中で、大きなゲノム領域を濃縮するために使用することができる。
【0128】
上記の方法により、配列決定のためにDNAを増幅するためにPCRを行う必要なく、十分な量のDNAを回収することが可能となる。無増幅DNA試料調製物は、例えば、PCRが対象となる配列もしくはエピジェネティック因子を保存しないか、または必要な長さ(例えば、長距離PCRの実用的限界である約10kbを超える)の配列を回収することができない場合に、貴重である。
【0129】
上記の方法の別の用途は、エピジェネティック配列決定のためのDNAを濃縮することである。DNA上のエピジェネティックマークは、PCRによって保存されないため、それらを配列決定するには、宿主核酸からの増幅されていないDNAが必要である。上記の方法では、PCRを行う必要なく配列決定するために十分な量のDNAを得ることができる。これにより、エピジェネティックマークを保持することができる。
【0130】
上記の方法は、標的核酸の長さが長距離PCRの実用的限界を超えている場合、例えば、核酸が約10kbを超えている場合、かつ/またはDNA上にエピジェネティックマークを保持することが望ましい場合に、特定の有用性を有する。一部の実施形態では、濃縮される標的核酸は、長さが約100kb超、例えば、長さが約1メガ塩基超である。一部の実施形態では、濃縮される標的核酸の長さは、約10kb~約100kb、約100kb~約500kb、または約500kb~約1メガ塩基である。
【0131】
増幅および/または精製後、エマルションは、将来の分析のために化学的手段および浸透圧手段の両方を使用して分解され得る。例えば、等しい体積の1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-オクタノールを精製試料に添加し、ピペッティングまたはボルテキシングのいずれかを通して混合することができる。次いで、得られた混合物を平衡化させ、水層をさらなる分析のために溶出させることができる。同様に、大量の過剰な精製水を選別後の試料に添加し、混合し、室温で数時間インキュベートすることができる。次いで、結果として生じる混合物を、対象となる精製試料について直接分析することができる。
【0132】
多重置換増幅
上記に要約したように、本発明の方法を実践する際に、MDAを使用して、核酸、例えば、ゲノムDNAを、例えば、次世代配列決定を介して、下流分析のための概して偏りのない非特異的な方法で増幅することができる。
【0133】
本明細書に記載される方法の例示的な実施形態は、単分散液滴(例えば、単分散単一エマルション液滴または複数の単分散エマルション液滴)に、生体試料から得られた核酸テンプレート分子をカプセル化することと、MDA試薬および複数のMDAプライマーを単分散液滴中へ導入することと、MDA増幅産物の産生に有効な条件下で単分散液滴をインキュベートすることと、を含み、インキュベートすることは、核酸テンプレート分子からMDA増幅産物を産生するのに有効である。一部の実施形態では、当該カプセル化ステップおよび導入ステップは、例えば、核酸テンプレート分子がMDA試薬および複数のMDAプライマーと混合され、例えば、マイクロ流体デバイスのフロー集束素子を使用してエマルション化される単一ステップとして生じる。
【0134】
本明細書に記載されるMDAベースのアッセイの条件は、1つ以上の方法で変化し得る。例えば、単分散液滴に添加され得る(またはその中にカプセル化され得る)MDAプライマーの数は、変化してもよい。「プライマー」という用語は、1つ以上のプライマーを指し、精製制限消化物のように天然に存在するか、または合成的に産生されるかにかかわらず、オリゴヌクレオチドを指すものであり、これは、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下で配置された場合、相補鎖に沿った合成の開始点として機能することができる。かかる条件には、4つの異なるデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート、および好適なDNAポリメラーゼ(例えば、Φ29 DNAポリメラーゼまたはBst DNAポリメラーゼ)などの重合誘導剤を、好適なバッファー中(「バッファー」には、補因子であるか、またはpH、イオン強度などに影響を与える置換基が含まれる)で、好適な温度で存在させることが含まれる。プライマーは、増幅における最大効率のために一本鎖であることが好ましい。MDAの文脈では、ランダム六量体プライマーが定期的に利用される。
【0135】
本明細書で使用される核酸配列の相補体は、一方の配列の5’末端が他方の配列の3’末端と対合されるように核酸配列と整列される場合、「反平行会合」にあるオリゴヌクレオチドを指す。相補性は完璧である必要はなく、安定した二本鎖は、不一致の塩基対または不一致の塩基を含有してもよい。核酸技術の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチド中のシトシンおよびグアニン塩基の濃度パーセント、イオン強度、およびミスマッチ塩基対の発生率を含むいくつかの変数を考慮して、経験的に二本鎖安定性を決定することができる。
【0136】
単分散液滴に添加され得る(またはその中にカプセル化され得る)MDAプライマーの数は、約1~約500個以上、例えば、約2~100個のプライマー、約2~10個のプライマー、約10~20個のプライマー、約20~30個のプライマー、約30~40個のプライマー、約40~50個のプライマー、約50~60個のプライマー、約60~70個のプライマー、約70~80個のプライマー、約80~90個のプライマー、約90~100個のプライマー、約100~150個のプライマー、約150~200個のプライマー、約200~250個のプライマー、約250~300個のプライマー、約300~350個のプライマー、約350~400個のプライマー、約400~450個のプライマー、約450~500個のプライマー、または約500個以上の範囲であり得る。
【0137】
かかるプライマーおよび/または試薬は、1つのステップで、または2つ以上のステップで単分散液滴に添加されてもよい。例えば、プライマーは、2つ以上のステップ、3つ以上のステップ、4つ以上のステップ、または5つ以上のステップで添加されてもよい。溶解剤が利用される場合、プライマーが1つのステップで添加されるか、または2つ以上のステップで添加されるかにかかわらず、溶解剤の添加後、溶解剤の添加前、または溶解剤の添加と同時に添加されてもよい。溶解剤の添加の前または後に添加される場合、MDAプライマーは、溶解剤の添加とは別個のステップで添加されてもよい。
【0138】
プライマーが単分散液滴に添加されると、単分散液滴は、MDAに十分な条件下でインキュベートされ得る。単分散液滴は、プライマー(複数可)を添加するために使用されたものと同じマイクロ流体デバイス上でインキュベートされてもよく、別個のデバイス上でインキュベートされてもよい。ある特定の実施形態では、MDA増幅に十分な条件下で単分散液滴をインキュベートすることは、細胞溶解に使用される同じマイクロ流体デバイス上で実行される。単分散液滴をインキュベートすることは、様々な形態をとってもよく、例えば、単分散液滴は、一定温度、例えば、30℃、例えば、約8~約16時間インキュベートされてもよい。代替的に、25℃で5分間、続いて42℃で25分間のサイクルを利用してもよい。
【0139】
MDA増幅産物を産生するための本明細書に記載の方法は、特定のプローブの使用を必要としないが、本発明の方法は、単分散液滴に1つ以上のプローブを導入することも含んでもよい。核酸に関して本明細書で使用される場合、「プローブ」という用語は、一般に、標的領域内の配列とプローブ内の少なくとも1つの配列の相補性に起因して、標的核酸内の配列と二本鎖構造を形成する標識オリゴヌクレオチドを指す。プローブは、好ましくは、MDA反応をプライミングするために使用される配列(複数可)に相補的な配列を含有しない。添加されるプローブの数は、約1~500個、例えば、約1~10個のプローブ、約10~20個のプローブ、約20~30個のプローブ、約30~40個のプローブ、約40~50個のプローブ、約50~60個のプローブ、約60~70個のプローブ、約70~80個のプローブ、約80~90個のプローブ、約90~100個のプローブ、約100~150個のプローブ、約150~200個のプローブ、約200~250個のプローブ、約250~300個のプローブ、約300~350個のプローブ、約350~400個のプローブ、約400~450個のプローブ、約450~500個のプローブ、または約500個以上であり得る。プローブ(複数可)は、1つ以上のプライマー(複数可)の添加の前、添加に続いて、またはそれ以降に単分散液滴中へ導入されてもよい。
【0140】
ある特定の実施形態では、MDAに基づくアッセイを使用して、細胞内に存在する特定のRNA転写産物の存在を検出するか、または1つ以上のRNAウイルスのゲノムを配列決定することができる。かかる実施形態では、MDA試薬は、本明細書に記載の方法のいずれかを使用して単分散液滴に添加され得る。MDA試薬の添加(またはカプセル化)の前または後に、単分散液滴は、本明細書に記載されるように、逆転写を可能にする条件の後にMDAを可能にする条件下でインキュベートしてもよい。単分散液滴は、MDA試薬を添加するために使用されたものと同じマイクロ流体デバイス上でインキュベートされてもよく、または別個のデバイス上でインキュベートされてもよい。ある特定の実施形態では、MDAを可能にする条件下で単分散液滴をインキュベートすることは、1つ以上の細胞をカプセル化および/または溶解するために使用される同じマイクロ流体デバイス上で実行される。
【0141】
ある特定の実施形態では、MDA用の単分散液滴に添加された試薬は、MDA増幅産物を検出することが可能な蛍光DNAプローブをさらに含む。SYBR Green、TaqMan(登録商標)、Molecular Beacons、およびScorpionプローブを含むが、これらに限定されない、任意の好適な蛍光DNAプローブを使用することができる。ある特定の実施形態では、単分散液滴に添加された試薬は、2つ以上のDNAプローブ、例えば、2つの蛍光DNAプローブ、3つの蛍光DNAプローブ、または4つの蛍光DNAプローブを含む。複数の蛍光DNAプローブの使用は、単一反応におけるMDA増幅産物の同時測定を可能にする。
【0142】
PCR
上記に要約したように、本発明の方法を実践する際に、PCRベースのアッセイを使用して、細胞または核酸の異種試料中に存在する特定の対象となる核酸、例えば、対象の遺伝子および/または遺伝子マーカー、例えば、癌遺伝子(複数可)の存在を検出してもよい。かかるPCRに基づくアッセイは、前または後のMDA増幅ステップとして、同じ単分散液滴、例えば単分散単一エマルション液滴または多重エマルション単分散液滴において実行されてもよい。他の実施形態では、PCR反応は、単分散液滴中で独立して行われてもよい。かかるPCRベースのアッセイの条件は、1つ以上の方法で変化し得る。
【0143】
例えば、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加され得るPCRプライマーの数は、変化してもよい。「プライマー」という用語は、2つ以上のプライマーを指してもよく、精製制限消化物のように天然に存在するか、または合成的に産生されるかにかかわらず、オリゴヌクレオチドを指すものであり、これは、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下で配置された場合、相補鎖に沿った合成の開始点として機能することができる。かかる条件には、好適なバッファー中(「バッファー」には、補因子であるか、またはpH、イオン強度などに影響を与える置換基が含まれる)、および好適な温度での、4つの異なるデオキシリボヌクレオシド三リン酸塩およびDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素などの重合誘導剤の存在が含まれる。プライマーは、増幅における最大効率のために一本鎖であることが好ましい。
【0144】
本明細書で使用される核酸配列の相補体は、一方の配列の5’末端が他方の配列の3’末端と対合されるように核酸配列と整列される場合、「反平行会合」にあるオリゴヌクレオチドを指す。相補性は完璧である必要はなく、安定した二本鎖は、不一致の塩基対または不一致の塩基を含有してもよい。核酸技術の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチド中のシトシンおよびグアニン塩基の濃度パーセント、イオン強度、およびミスマッチ塩基対の発生率を含むいくつかの変数を考慮して、経験的に二本鎖安定性を決定することができる。
【0145】
単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加され得るPCRプライマーの数は、約1~約500個以上、例えば、約2~100個のプライマー、約2~10個のプライマー、約10~20個のプライマー、約20~30個のプライマー、約30~40個のプライマー、約40~50個のプライマー、約50~60個のプライマー、約60~70個のプライマー、約70~80個のプライマー、約80~90個のプライマー、約90~100個のプライマー、約100~150個のプライマー、約150~200個のプライマー、約200~250個のプライマー、約250~300個のプライマー、約300~350個のプライマー、約350~400個のプライマー、約400~450個のプライマー、約450~500個のプライマー、または約500個以上の範囲であり得る。
【0146】
これらのプライマーは、対象となる1つ以上の遺伝子、例えば、癌遺伝子のプライマーを含有してもよい。添加される対象の遺伝子のプライマーの数は、約1~500、例えば、約1~10個のプライマー、約10~20個のプライマー、約20~30個のプライマー、約30~40個のプライマー、約40~50個のプライマー、約50~60個のプライマー、約60~70個のプライマー、約70~80個のプライマー、約80~90個のプライマー、約90~100個のプライマー、約100~150個のプライマー、約150~200個のプライマー、約200~250個のプライマー、約250~300個のプライマー、約300~350個のプライマー、約350~400個のプライマー、約400~450個のプライマー、約450~500個のプライマー、または約500個以上であり得る。対象の遺伝子および癌遺伝子としては、BAX、BCL2L1、CASP8、CDK4、ELK1、ETS1、HGF、JAK2、JUNB、JUND、KIT、KITLG、MCL1、MET、MOS、MYB、NFKBIA、EGFR、Myc、EpCAM、NRAS、PIK3CA、PML、PRKCA、RAF1、RARA、REL、ROS1、RUNX1、SRC、STAT3、CD45、サイトケラチン、CEA、CD133、HER2、CD44、CD49f、CD146、MUC1/2、およびZHX2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
かかるプライマーおよび/または試薬は、1つのステップで、または2つ以上のステップで、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加されてもよい。例えば、プライマーは、2つ以上のステップ、3つ以上のステップ、4つ以上のステップ、または5つ以上のステップで添加されてもよい。プライマーが1つのステップで添加されるか、または2つ以上のステップで添加されるかにかかわらず、溶解剤の添加後、溶解剤の添加前、または溶解剤の添加と同時に添加されてもよい。溶解剤の添加の前または後に添加される場合、PCRプライマーは、溶解剤の添加とは別個のステップで添加されてもよい。
【0148】
プライマーが単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加されると、単分散エマルション液滴または多重エマルション単分散液滴は、PCRを可能にする条件下でインキュベートすることができる。単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、プライマー(複数可)を添加するために使用されたものと同じマイクロ流体デバイス上でインキュベートされてもよく、別個のデバイス上でインキュベートされてもよい。ある特定の実施形態では、PCR増幅を可能にする条件下で単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴をインキュベートすることは、細胞をカプセル化および溶解するために使用される同じマイクロ流体デバイス上で実行される。単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴をインキュベートすることは、様々な形態をとり得る。ある特定の態様では、PCR混合物を含有する単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、PCRに有効な条件下で単分散液滴をインキュベートするチャネルを通って流動されてもよい。一部の実施形態では、PCR反応は、マイクロ流体デバイスおよび/またはシステムを使用することなく実行される。単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴をチャネルを通して流動させることは、PCRに有効な温度で維持される様々な温度ゾーンにわたって蛇行するチャネルを含んでもよい。かかるチャネルは、例えば、2つ以上の温度ゾーンにわたってサイクルしてもよく、少なくとも1つのゾーンは約65℃に維持され、少なくとも1つのゾーンは約95℃に維持される。代替的に、86℃、60℃、20℃のゾーンを利用してもよい。単分散単一エマルション液滴または多重エマルションがかかるゾーンを移動すると、PCRに必要に応じて、それらの温度サイクルが進む。正確なゾーン数、および各ゾーンのそれぞれの温度は、所望のPCR増幅を達成するために当業者によって容易に決定され得る。
【0149】
他の実施形態では、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴をインキュベートすることは、メガ液滴アレイの使用を伴い得る。かかるデバイスでは、チャネル(例えば、PDMSチャネル)にインデントされた数百、数千、または数百万のトラップのアレイが熱システムの上に配置される。チャネルが加圧され、それによってガスが流出するのを防ぐことができる。マイクロ流体チャネルの高さは、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴の直径より小さく、これにより単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が平坦化されたパンケーキ形状となる。単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が非占有の窪みの上を流動するとき、それはより低く、よりエネルギー的に有利な曲率半径を採用し、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を完全にトラップ内に引き込む力をもたらす。単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を最密に充填して流動させることによって、アレイ上の全てのトラップが確実に占有される。デバイス全体は、ヒータを使用して熱循環されてもよい。
【0150】
ある特定の態様では、ヒータは、ペルチエプレート、ヒートシンク、および制御コンピュータを含む。ペルチエプレートは、印加された電流を制御することによって、チップを室温以上または以下に加熱または冷却することを可能にする。再現可能な温度を確実に制御するために、コンピュータは、統合された温度プローブを使用してアレイの温度を監視してもよく、必要に応じて印加された電流を加熱および冷却するように調整してもよい。金属(例えば、銅)プレートにより、冷却サイクル中の熱の均一な適用および過剰な熱の放散が可能となり、約1分未満で約95℃~約60℃の冷却を可能にする。
【0151】
本発明の方法はまた、1つ以上のプローブを単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中へ導入することを含み得る。核酸に関して本明細書で使用される場合、「プローブ」という用語は、標的領域内の配列とプローブ内の少なくとも1つの配列の相補性に起因して、標的核酸内の配列と二本鎖構造を形成する標識オリゴヌクレオチドを指す。一部の実施形態では、プローブは、ポリメラーゼ連鎖反応をプライミングするために使用される配列(複数可)に相補的な配列を含有しない。添加されるプローブの数は、約1~500個、例えば、約1~10個のプローブ、約10~20個のプローブ、約20~30個のプローブ、約30~40個のプローブ、約40~50個のプローブ、約50~60個のプローブ、約60~70個のプローブ、約70~80個のプローブ、約80~90個のプローブ、約90~100個のプローブ、約100~150個のプローブ、約150~200個のプローブ、約200~250個のプローブ、約250~300個のプローブ、約300~350個のプローブ、約350~400個のプローブ、約400~450個のプローブ、約450~500個のプローブ、または約500個以上であり得る。プローブ(複数可)は、1つ以上のプライマー(複数可)の添加の前、後、または後に、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中へ導入されてもよい。対象のプローブとしては、(例えば、Holland,P.M.;Abramson,R.D.;Watson,R.;Gelfand,D.H.(1991),”Detection of specific polymerase chain reaction product by utilizing the 5’----3’exonuclease activity of Thermus aquaticus DNA polymerase”,PNAS,88(16):7276-7280).に記載される)TaqMan(登録商標)プローブが含まれるが、これに限定されない。
【0152】
ある特定の実施形態では、RT-PCRに基づくアッセイを使用して、細胞内に存在する特定の対象転写産物、例えば、癌遺伝子(複数可)の存在を検出することができる。かかる実施形態では、本明細書に記載のPCRを行うために使用される試薬(まとめて「RT-PCR試薬」と称する)に加えて、逆転写酵素およびcDNA合成に必要な任意の他の試薬を単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加する。RT-PCR試薬は、本明細書に記載される好適な方法のいずれかを使用して、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加される。RT-PCR用の試薬が単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加されると、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、逆転写を可能にする条件下でインキュベートされ、続いて、本明細書に記載されるようにPCRを可能にする条件下でインキュベートされ得る。単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、RT-PCR試薬を添加するために使用されたものと同じマイクロ流体デバイス上でインキュベートされてもよく、または別個のデバイス上でインキュベートされてもよい。ある特定の実施形態では、RT-PCRを可能にする条件下で単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴をインキュベートすることは、細胞をカプセル化および溶解するために使用される同じマイクロ流体デバイス上で実行される。
【0153】
ある特定の実施形態では、RT-PCRまたはPCR用の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加された試薬は、RT-PCRまたはPCR産物を検出することが可能な蛍光DNAプローブをさらに含む。SYBR Green、TaqMan(登録商標)、Molecular Beacons、およびScorpionプローブを含むが、これらに限定されない、任意の好適な蛍光DNAプローブを使用することができる。ある特定の実施形態では、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に添加される試薬は、2つ以上のDNAプローブ、例えば、2つの蛍光DNAプローブ、3つの蛍光DNAプローブ、または4つの蛍光DNAプローブを含む。複数の蛍光DNAプローブの使用により、単一反応におけるRT-PCRまたはPCR産物の同時測定が可能となる。
【0154】
二重PCR
稀少な転写産物を増幅するために、本明細書に記載されるように、単分散単一エマルション液滴、第1のステップRT-PCRまたはPCR反応を受けた多重エマルション液滴を、第2のステップPCR反応にさらに供することができる。一部の実施形態では、第1のステップRT-PCRまたはPCR反応を受けた第1の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)、DNAプローブ(例えば、蛍光DNAプローブ)およびプライマーを含むがこれらに限定されない、追加のPCR試薬を含有する第2の単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化され、続いて、第1の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が破裂する。ある特定の実施形態では、追加のPCR試薬を含有する第2の単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、第1のステップRT-PCRまたはPCR反応を受けた単分散液滴よりも大きい。例えば、第2のステップPCRを阻害し得る細胞成分の希釈を可能にするので、これは有益であり得る。第2のステップPCR反応は、第1のステップ反応を行うために使用される同じマイクロ流体デバイス上で行われてもよく、異なるマイクロ流体デバイス上で行われてもよく、あるいはマイクロ流体デバイスを使用せずに行われてもよい。
【0155】
一部の実施形態では、第2のステップPCR反応で使用されるプライマーは、第1のステップRT-PCRまたはPCR反応で使用されるのと同じプライマーである。他の実施形態では、第2のステップPCR反応で使用されるプライマーは、第1のステップ反応で使用されるプライマーとは異なる。
【0156】
デジタルPCR
本明細書に記載される方法は、例えば、デジタルPCRを使用して核酸を定量化するために使用することができる。デジタルPCRでは、試料が液滴中で単離されると、多くの液滴は、ゼロまたは1つの標的分子のいずれかをカプセル化するように、溶液由来の標的核酸を希釈するが、それらのモデル化が可能であれば、より高い充填率を使用することができることが多い。標的核酸の増幅に十分な試薬も液滴に含まれ、液滴は増幅に好適な条件に供される。一部の実施形態では、試料は、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション単分散液滴(例えば、二重エマルション)中で区画化され、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション単分散液滴(例えば、二重エマルション)は、増幅条件に供される。標的を含有する液滴は増幅を受け、そうでない液滴は増幅を受けないため、核酸増幅産物をもたらさない。検出成分が含まれる場合、標的を含む単一エマルションまたは多重エマルションは、検出可能なシグナルで満たされ得、例えば、イメージングまたはフロードロポメトリによってそれらを特定することを可能にする。かかるデジタルPCRを実行するために二重エマルションを使用する強力な利点は、二重エマルションが、分画した試料と混和性である水性担体相に懸濁され得、これにより、市販のフローサイトメータおよび蛍光活性化細胞選別機(FACS)を使用して容易に検出および/または選別され得ることである。これにより、選別が容易ではない他の方法では不可能な試料から標的エンティティを濃縮させることができる。
【0157】
一部の実施形態では、多くの場合、開示される方法を使用して、蛍光性であり、増幅を受け、これにより少なくとも単一の標的核酸を含有する単一エマルションまたは多重エマルションの画分をカウントすることによって、溶液中の核酸を定量化することができる(なお、偽の増幅が確率的な理由、または例えば、増幅反応の特異性を妨げる粉塵または他の汚染物質のカプセル化のために生じ得る)。TaqMan(登録商標)プローブ、分子ビーコン、SYBR、および他の種類の検出成分も含まれ得、標的内の異なる核酸配列の増幅を同時に検出するための複数の光学スペクトルの使用を可能にするか、または複数の標的が同じ単分散単一エマルション液滴もしくは多重エマルション単分散液滴(例えば、二重エマルション)にカプセル化されているため、場合によっては有利であり得る。
【0158】
他のPCR分析方法と同様に、dPCRは、異なる蛍光色素で標識されたプローブを使用して多重化することができる。dPCRは液滴中の分子に作用するため、異なる配列の物理的会合のような一般的な方法では不可能な独自の測定が可能となる。これは、ウイルス多様性の特徴付け、微生物ゲノムの相決定、癌ゲノムのハプロタイピング、mRNAスプライス形態の測定、および溶液中の標的分子の長さ分布の特徴付けを含む、ゲノム生物学における様々な重要な用途において貴重である。
【0159】
RNA配列決定(RNAseq)
本明細書に開示される方法は、単一細胞カプセル化およびRNAseqに使用され得る。RNAseqは、次世代配列決定(NGS)技術によって可能になる大規模な並列配列決定を利用して、組織試料中のRNA転写産物の列挙にアプローチする別の方法である。具体的には、RNAseqは、遺伝子融合事象、新規転写産物、およびRNA編集を含む、遺伝子発現変化、代替スプライシング事象、対立遺伝子特異的遺伝子発現、およびキメラ転写産物等の現象を研究するために使用され得る。相補的DNA(cDNA)は、単分散エマルション、ならびに単一細胞遺伝子発現プロファイル分析のデータを収集するために実施されるNGSの標準的なインビトロ転写およびライブラリ調製により回収され得る。
【0160】
核酸の長さの測定
本明細書に記載される方法は、溶液中の核酸の長さ分布を測定するために使用することができる。これは、標的核酸にそれらの長さに沿って既知の距離の異なる領域でアニールするプローブ配列を設計することによって達成され得る。次いで、プローブを標的核酸と混合し、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中で区画化することができる。各単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、例えば、既知の距離だけ離れた標的上の2つの異なる領域の存在をシグナル伝達する2つのプライマーおよびプローブセットを含有してもよい。これは、異なる対合が標的の異なる距離および異なる領域をプローブするように、プローブの異なる組み合わせについて繰り返すことができる。必要に応じて、試料を増幅、分析、および選別に供することができる。分析により、いくつかの単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、1つのプローブのみで増幅を受けるが、他のものには、例えば、他方のプローブのみで増幅を受けるものがあることがわかる。これは、これらの単一エマルション液滴または多重エマルション液滴において、一方の種類は、一方のプローブのみの領域を含有し、他方の種類は、他方のプローブの領域を含有することを示唆している。この集団において、両方のプローブで増幅を受ける単一エマルション液滴または多重エマルション液滴も存在し得、その中の標的核酸が両方の領域を含有することを示している。この同じ懸濁液には、(勿論、増幅を受けないために、おそらく標的領域を含有しないものに加えて)3つの種類の液滴の各々の測定可能な分画を含む多数の単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が含まれる。このデータは、溶液中の核酸の長さを推測するために使用され得る。
【0161】
例えば、溶液中の核酸が全体の分子として略無傷である場合、増幅を受ける液滴の大部分よりも、プローブおよびプライマーセットの両方で増幅を示し、これにより、混合シグナルを示す。対照的に、核酸標的が高度に断片化されている場合、検出事象の大部分は、一方または他方のプローブとなり、両方のプローブは稀少な例のみとなる。プローブ間の距離が既知であり得るため、これにより、溶液中の分子の長さおよび断片化を推定することができる。このプロセスは、異なる領域を標的とするか、かつ/またはこれらの間に異なる距離を有する異なるプローブセットで繰り返して、標的核酸の断片化をより完全に特徴付けることができる。
【0162】
単分散液滴中の配列分析のためのマイクロ流体濃縮(MESA)
本明細書に記載される方法は、標的核酸の配列分析のためのマイクロ流体濃縮(MESA)を実行するために使用され得る。これは、本方法を使用して、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に標的核酸をカプセル化し、それらの液滴において増幅を行い、液滴が標的配列を含有するときに蛍光シグナルをもたらすことによって達成される。次いで、これらの液滴を選別し、それによって、選別されたプール内の核酸を濃縮することができる。必要に応じて、反応は、複数の異なる部分配列を含有する分子間を区別するために多重化されてもよい。増幅を使用して、選別前、同時、または選別後のいずれかの選別された核酸を増幅し、配列決定を可能にすることもできる。
【0163】
このアプローチの重要な利点は、液滴中で増幅される領域が単に「検出領域」として使用され得ることであり、アンプリコンは、配列決定に供される分子を含む必要はないことである。代替として、それらは、標的分子が液滴中に存在するときにシグナルを送り、それにより、下流分析のために全分子を回収することができる。これは、非常に大きくて効率的に増幅できない核酸でも、下流分析のために回収されることを可能にするため、強力である。例えば、まだ発見されていない微生物の中に、重要な生物学的経路、例えばシグナル伝達カスケードの一部であると考えられる遺伝子が存在すると想定する。その目的は、この経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子を回収して、これらが配列決定および研究され得るようにすることである。これは、既存の濃縮方法を使用して容易に達成することはできない。なぜなら、未知の微生物は、特異的に培養可能ではない可能性があり、加えて、経路は、大部分が未知の配列であり、ハイブリダイゼーションプローブを使用して精製することはできないからである(小さすぎるために経路全体を引き出すことができない個々の遺伝子を除き、プローブがハイブリダイゼーションするための配列は未知である)。しかしながら、これは、本明細書に記載されるようなMESA方法を使用して達成することができる。
【0164】
一部の実施形態では、標的由来の核酸は、経路全体をカプセル化するのに十分な大きさに断片化されてもよく、例えば、数十または数百キロ塩基、またはさらにはメガ塩基もしくはより長い断片などに断片化されてもよい。経路が断片内に存在する場合は、既知の遺伝子を含有し得る。断片化された核酸は、その多くが標的を含有しないが、本明細書に記載の技術に供され、単分散単一エマルション液滴をもたらす。これは、多くが経路を含有しないため、増幅を示さないが、一方で、経路を含有しない稀少な液滴は、増幅を受ける。次いで、陽性液滴は、例えば、蛍光的に明るいFACS選別二重エマルションによって回収され得る。次いで、これらは、必要に応じて、特異的増幅および非特異的増幅、デジタルまたは定量的PCRによる定量、ならびにDNA配列決定などのさらなる操作に供され得る。他の濃縮ストラテジと比較したMESAの強力な利点は、ゲノム全体のサイズまでの非常に大きな核酸を、わずか数百の塩基対の短い既知の配列に基づいて検出および回収することを可能にすることである。他の濃縮方法では、かかる限られた量の配列に関する情報を使用して、かかる大きな核酸配列を異種プールから濃縮する能力を有するものは皆無である。
【0165】
本方法は、個々のゲノムのDNA配列を特定するためにも使用され得る。この実施形態では、標的由来の核酸を断片化し、対象のDNA配列に特異的なPCR試薬およびプライマーを用いて単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化することができる。増幅後、陽性の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、FACSまたはMACSを使用して、ウェルプレートアレイなどの個々の区画に選別することができる。次いで、個々の区画を、特異的増幅または非特異的増幅のいずれかなどの、さらなる操作に供することができる。次いで、結果として生じるアンプリコンは、次世代配列決定技術のためのライブラリを作製するために使用され得、またはサンガー配列決定において直接使用される材料として使用され得る。この技術は、例えば、個々の患者において見出されるHIVなどのレトロウイルス集団における遺伝的相違を特定するように設計された方法において有用であろう。
【0166】
上記で考察されるように、本明細書に記載される方法は、デジタルPCR、および関連する配列決定分析のためのマイクロ流体濃縮(MESA)のために使用され得る。一部の実施形態では、核酸、ウイルス、細胞、粒子などを含む試料は、本明細書に記載されるように、単一エマルションまたは多重エマルションに分画される。液滴をPCRチューブなどのリザーバに収集し、サーマルサイクリングなどの増幅に好適な条件下でインキュベートする。MDA、MALBAC、LAMPなどの等温法も使用され得る。蛍光レポーターは、標的核酸を含有する液滴と、標的核酸を含有しない液滴との間の蛍光の差を誘導するために、液滴に含まれるか、または担体相に添加され得る。
【0167】
例えば、Sybr greenを、それが単一エマルションまたは多重エマルションに分画されるように、担体相に添加することができる。Sybrは、二本鎖DNAの存在下ではるかに多くの蛍光になるため、増幅を受ける液滴は、増幅を受けない液滴よりも蛍光的に明るくなる。試料中の標的分子の数を定量化するために、液滴をフローサイトメトリ分析、または蛍光活性化細胞選別(FACS)に供することができる。
【0168】
液滴がフローサイトメータを通って流動するにつれて、それらのサイズおよび蛍光に関する情報を記録することができる。標的分子が限界希釈で充填される場合、一部の液滴は標的分子を含有していることにより蛍光として検出され、他の液滴は標的分子を含有しないことにより薄暗いものとして検出される。明るい液滴から薄暗い液滴の画分は、ポアソン分布に従って使用して、元の試料中の標的分子の開始濃度を推定することができる。FACSを使用して蛍光に基づいて液滴を選別することによって、標的分子を含有する二重エマルションを回収し、また、二重エマルションを分解することによって、標的分子を回収することが可能である。これは、核酸の大規模な異種集団をスクリーニングするために使用して、標的配列を選択的に回収することができる。
【0169】
単分散液滴中のPCR活性化細胞選別(PACS)
MESA技術は、溶液からの裸の核酸の濃縮を可能にするが、同様のアプローチは、細胞、ウイルス、胞子、粒子などのエンティティ内に含有される核酸に適用することができ、そのプロセスは略同じである。例えば、標的核酸を含むエンティティは、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化され、上述のように、標的核酸を増幅するのに十分な条件に供され得る。次いで、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を増幅に基づいて選別して、標的を有するエンティティを回収することができる。
【0170】
この技術を生物学的エンティティ、特に細胞などの膜または保護シェルを有するものに適用する際の重要な考慮事項は、特定の検出が行われるために核酸が増幅試薬にアクセス可能でなければならず、これには特殊な手順を必要とし得ることである。例えば、当該エンティティは、プロテアーゼ、リゾチーム、洗浄剤、強塩基などの核酸を放出する薬剤と共に、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化することができる。それらはまた、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化され、次いで溶解剤を含有する溶液に浸漬することができ、溶解剤は、単分散の単一エマルション液滴や多重エマルション液滴のシェルを介して分画して、溶解を誘導することができる。それらはまた、例えば、溶解剤に浸漬され得るゲル粒子にカプセル化されてもよい。次いで、エンティティの核酸を含有するこれらのゲル粒子は、増幅手順を介した検出のために、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化することができる。ゲルは、例えば、核酸を捕捉しながらゲルを通して試薬を拡散させることができるように孔径を十分に大きくし、もしくはアガロースを使用した場合のように、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴の加熱時に溶融することができるようにするなど、溶解反応または増幅反応を阻害しないように選択することができる。ゲルはまた、必要に応じて官能化され、ゲルから漏出し、検出不可能であり得るRNA分子などの所望の細胞化合物を付着させることもできる。標的核酸への合成試薬のアクセスを可能にするために実装され得るさらに別の手順は、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化された細胞、ウイルス、粒子等を電流を使用して溶解させることである。これは、例えば、電流が流れるチャネルを通って細胞を流動させることによって達成することができ、これにより、例えば、細胞膜内に細孔を作成し、細胞溶解を促進することができる。
【0171】
生細胞PCR活性化細胞選別(PACS)
本明細書に記載されるように、細胞へのエマルションPCRの適用および選別には、生物の溶解、ならびに多くの場合、死滅が含まれている。しかしながら、アプローチを修正し、本明細書に記載の方法を使用することによって、生きた無傷の細胞を回収することも可能である。これは、例えば、細胞内容物が、細胞の生存率を維持しながら、カプセル化された単分散単一エマルション液滴または多重エマルション単分散液滴に漏出するような条件下で、生細胞を単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化することによって達成され得る。これは、例えば、電流も流れるチャネルを通って細胞を流動させることによって可能であり、これにより、細胞膜内の細孔形成を誘導し、細胞溶解物が漏出することを可能にし得る。細胞がこのチャネルから通過すると、その膜は再び密閉され得るが、一方で、漏出した溶解物は細胞の周囲に依然として存在する。層流条件の場合、これは、細胞の周囲の溶解物が細胞と共に流動し、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴などの同じ区画にカプセル化されるように実施することができる。細胞核酸の増幅または他の細胞成分の検出に好適な試薬も、細胞の周りの溶解物が液滴中にあるときに試薬と相互作用することができるように含めることができる。蛍光シグナルが産生され、標的細胞を含有する液滴を選別によって回収することを可能にし、細胞の生回収を可能にするように、反応を設計することができる。これは、他の反応および分析を実行できるように細胞寿命を維持しながら、分子およびRNAなどの配列バイオマーカーに基づいて細胞間を区別する能力であるPACSの利点を提供するため、技術を極めて有効に活用したものである。
【0172】
質量分析活性化細胞選別(MS-ACS)
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴(例えば、二重エマルション)中の反応を区画化し、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内の反応産物を検出し、それらの産物に基づいて特定のエンティティを回収するように液滴を選別し、適切な分析を実行する能力に依存している。細胞およびウイルスなどの異なるエンティティを区別するために、酵素アッセイ、例えばPCRなどの多くの種類のアッセイを実行することができる。しかしながら、場合によっては、酵素技術は、対象の分析物を検出することができない可能性がある。これらの例では、分光法などの他の方法を実装することができる。質量分析は、感度が高く、一般的であるため、非常に強力な検出方法である。しかしながら、質量分析の限界として、それが破壊的な技術であり、分析する試料を破壊する可能性がある。目標が情報の回収のみである場合、これは許容可能であり得るが、場合によっては、通常、質量分析器によって破壊されるシステムから材料を追加で回収することが望ましい。
【0173】
本明細書に記載される方法を使用すれば、質量分析を用いて、試料の回収を依然として可能にしながら試料を分析することができる。例えば、目的は、経路に関与するタンパク質を発現する細胞を特定することであると想定する。細胞は、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴(例えば、二重エマルション)に充填し、培養することができ、その結果、各単分散単一エマルション液滴もしくは多重エマルション液滴に多くの細胞が存在し、かつ/またはこれらが単分散単一エマルション液滴もしくは多重エマルション液滴を充填する経路、例えば、分子、化合物などの産物を産生することが可能になる。次いで、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴の一部分を分割するデバイスに流動させて、破壊質量分析に供され得る細胞または細胞分泌から材料のいくつかを捕捉することができる。次いで、他の部分を選別することができる。質量分析器は、サンプリングされた部分の化合物を分析するために使用され得、この情報は、液滴の関連部分を選別する方法を決定するために使用され得る。この方法を使用することで、細胞全体または細胞溶解物の回収を可能にしながら、細胞を特異的に選別するために非常に感度の高い一般的な質量分析を使用することが可能である。
【0174】
コロニーの成長および溶解
単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴(例えば二重エマルション)に細胞をカプセル化する能力は、細胞およびウイルスなどの生物を培養する点で貴重である。例えば、細胞が単一の共有体積で成長した場合、細胞間の競合により、ある特定の細胞が集団を支配し、その結果、それらがいくつかの培養時間後に細胞の大部分を含む場合がある。単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中の細胞を区画化し、それらを培養することによって、当該競合を制御および/または軽減することができる。さらに、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴の透過性により、特定の分子が通過することができる一方で、他の分子が通過しないように設定することができる。これにより、例えば、増殖に重要なシグナル伝達分子または他の分子が、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴シェルを自由に通過することにより、培養条件をより良好に制御することが可能になる。
【0175】
多重化
主題の方法のある特定の実施形態では、複数のバイオマーカーを検出して、特定の細胞について分析することができる。検出されるバイオマーカーは、細胞のゲノムまたはこれらの組み合わせにおける1つ以上のタンパク質、転写産物、および/または遺伝子シグネチャを含んでもよいが、これらに限定されない。標準的な蛍光ベースの検出では、同時に調べることができるバイオマーカーの数は、各単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内で独立して可視化することができる蛍光色素の数に制限され得る。ある特定の実施形態では、特定の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内で個別に検出され得るバイオマーカーの数を増加させることができる。例えば、これは、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴の異なる部分への色素の分離によって達成されてもよい。特定の実施形態では、色素およびプローブ(例えば、核酸または抗体プローブ)とコンジュゲートされた粒子(例えば、LUMINEX(登録商標)粒子)は、分析されるバイオマーカーの数を増加させるために、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化されてもよい。別の実施形態では、蛍光偏光を使用して、単一の細胞についての異なるバイオマーカーについてより多くの検出可能なシグナルを達成してもよい。例えば、蛍光色素は、様々なプローブに取り付けられてもよく、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、異なる偏光条件下で可視化されてもよい。このようにして、同じ着色色素を利用して、単一の細胞の異なるプローブ標的のシグナルを提供することができる。固定細胞および/または透過細胞の使用はまた、(以下でより詳細に考察されるように)多重化のレベルの増加を可能にする。例えば、標識抗体を使用して、細胞成分に局在化されたタンパク質標的を標的化してもよく、一方、標識PCRおよび/またはRT-PCR産物は、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内に遊離する。これにより、同じ色の色素を抗体およびRT-PCRによって産生されるアンプリコンに使用することが可能になる。
【0176】
デジタル酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
一部の実施形態では、開示される方法およびデバイスを使用して、デジタルELISA手順を使用して、試料中のエピトープを定量化することができる。一部の実施形態では、例えば、平面基質表面または粒子表面などの固体基質に結合したエピトープは、酵素触媒で標識された親和性試薬でさらに結合することができる。試料を洗浄して、非結合親和性試薬および酵素を除去することができる。次いで、標識されたエピトープまたはその一部は、様々な様式で溶液中に放出され得る。容易にするために、酵素触媒は、化学的に、または例えば熱もしくは光の印加で分解され得る結合を通じて、親和性試薬に結合することができる。代替的に、親和性試薬とエピトープとの間の相互作用を破壊することができ、またはエピトープと基質との間の相互作用を破壊することができる。粒子に結合が生じた場合、粒子は洗浄ステップ後に溶液中に懸濁され、それによって酵素触媒を懸濁させることができる。次いで、懸濁した酵素触媒は、酵素触媒が蛍光産物に変換することができる基質などの酵素触媒を検出するのに十分な試薬を用いて、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴(例えば二重エマルション)にカプセル化することができる。次いで、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、触媒に適した条件下でインキュベートすることができ、触媒が存在するときに多量の反応産物を含有し、存在しない場合に少量の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴をもたらす。次いで、蛍光単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴の数を、薄暗い単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴と比較して定量化し、試料中に存在する触媒分子の数を測定することができる。この情報は、次いで、元の試料中のエピトープの濃度を推測するために使用され得る。
【0177】
本明細書に記載の多重化方法を使用して、結合後に試料を洗浄する必要なく、これを達成することもできる。例えば、同じ標的を検出する2つの抗体を試料中へ導入することができ、それぞれが異なる触媒で標識される。次いで、試料は、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴(例えば、二重エマルション)にカプセル化され得る。標的が存在する場合、それは、多くの場合、典型的な「サンドイッチ型」ELISAで生じるように、両方の抗体によって結合されるはずであるが、この場合、分子は、基質に結合されるのではなく、溶液中で自由に拡散する。結果として、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が得られ、これらは、時には抗体のうちの1つのみを含有するか、または両方の抗体を含有し、これは、液滴中の触媒反応の存在を監視することによって検出することができる。大部分の液滴が空であるように希釈液が適切に制御される場合、両方の触媒産物の存在を液滴中に存在する標的に割り当てることが可能であり、一方で、触媒産物のうちの1つのみの存在は、非結合抗体に対応する可能性が高い。二重陽性液滴の画分を定量化することにより、洗浄手順を実行することなく、溶液中の標的の画分を推定することが可能である。
【0178】
デジタルオリゴ結合免疫吸着アッセイ(dOLISA)
本明細書に記載される方法は、RNA分子の高感度検出および絶対定量化のために使用することができる。対象のアッセイアプローチとしては、Chang,et al.,J.Immuno.Methods.378(1-2),102-15(2012)によって記載されたものも含まれるが、これらに限定されず、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、極めて低い濃度の分析物に適用されるものであり、結合特性は、典型的なイムノアッセイまたはELISAプラットフォームから逸脱する場合がある。理論分析により、一連の実験パラメータから期待できるパフォーマン指標(検出感度、アッセイ速度など)が明確になる。
【0179】
本方法は、粒子表面にコンジュゲートされた抗体へ標的タンパク質分子を結合することを含む。平衡状態における結合タンパク質の量(捕捉効率)は、解離定数Kによって決定され、捕捉効率のために上限を設定している。結合反応は、オンレートおよびオフレート(konおよびkoff)によって制御される動的プロセスであり、システムの時間依存的進化は、動態を記述する微分方程式を数値的に解くことによってシミュレートすることができる。いかなる理論にも束縛される意図はなく、結合動態は主にkon値に依存し、K値による影響はごくわずかである。結合のためにより高濃度の抗体を提供することができれば、遅い動態を救うことができる。
【0180】
一部の実施形態では、konレートは、所望の検出効率を達成するために必要なインキュベーション期間を規定している。dOLISAの場合、二次抗体は、DNAオリゴとコンジュゲートされる。三元複合体(Ab-Ligand-oligoAb)を、0.1~1000万個の液滴、例えば、単分散単一エマルション液滴(体積でそれぞれ5~50pL)にカプセル化し、これにより、1液滴当たり単一のDNA分子が存在し、蛍光生成試薬の存在下で液滴PCR増幅を行って、蛍光液滴がカウントされる。
【0181】
選別(ソーティング)
本明細書に記載の方法を実践する際に、単分散液滴の選別を含む、1つ以上の選別ステップを用いることができる。例えば、複数の粒子が無秩序構成において第1の流体のジェット中へ導入され、単分散粒子含有液滴の集団を含む多分散エマルションをもたらす開示される方法の文脈において、本方法は、例えば、非粒子含有液滴に対する単分散粒子含有液滴のサイズ差に基づいて、単分散粒子含有液滴を選別して、多分散エマルション中の他の液滴から分離するステップを含み得る。
【0182】
対象の選別アプローチとしては、必ずしも限定されないが、膜バルブ、分岐チャネル、弾性表面波、選択的凝集、誘電偏移、流量制御、および/または単分散液滴を選択的に偏移させるために使用される他の刺激の使用を伴うアプローチが挙げられる。対象の分類アプローチには、Agresti,et al.,PNAS vol.107,no9,4004-4009に記載されるものが含まれ、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。集団は、所望の特性を有するか否かのメンバーの混合物を含有する集団が所望の特性を有しないメンバーを除去することによって濃縮され、それによって所望の特性を有する濃縮集団を産生することができるという点で、選別によって濃縮され得る。一部の実施形態では、選別は、サイズベースの選別、誘電偏移、選択的凝集、蛍光活性化細胞選別(FACS)、電気泳動、音響分離、磁気活性化細胞選別(MACS)、流量制御、または単分散液滴を選択的に偏移するために使用される他の刺激によって実行される。
【0183】
選別は、本明細書に記載されるステップのいずれかの前または後に好適に適用することができる。さらに、2つ以上の選別ステップを液滴、例えば、単分散液滴、例えば、約2つ以上の選別ステップ、約3つ以上、約4つ以上、または約5つ以上などに適用してもよい。複数の選別ステップが適用されると、ステップは、1つ以上の方法(例えば、異なる特性に基づいた選別、異なる技術を使用した選別など)で実質的に同一であっても異なってもよい。
【0184】
本明細書に記載されるように調製された単分散液滴を含む液滴は、1つ以上の特性に基づいて選別することができる。対象の特性としては、サイズ、粘度、質量、浮力、表面張力、導電性、電荷、磁力、蛍光、および/または1つ以上の成分の有無が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の態様において、選別は、単分散液滴中の細胞の有無に少なくとも部分的に基づいてもよい。ある特定の態様において、選別は、増幅もしくは合成産物等の核酸増幅産物の有無の検出に少なくとも部分的に基づいてもよく、例えば、蛍光増幅産物の検出によって示されるように、または増幅産物の表面抗原の検出によって示されるように基づいてもよい。
【0185】
単分散液滴選別は、例えば、細胞が存在しない単分散液滴を除去するために使用されてもよい。カプセル化は、細胞が存在しない単分散液滴の大部分を含む、1つ以上の単分散液滴をもたらし得る。かかる空の単分散液滴がシステム内に残された場合、それらは、他の単分散液滴として処理され、その間、試薬および時間は無駄となる。最高の速度および効率を達成するために、これらの空の単分散液滴は、単分散液滴選別によって除去され得る。
【0186】
対象となるパッシブソーターには、流体力学的ソーターが含まれる。流体力学的ソーターは、大小の単分散液滴がマイクロ流体チャネルを通って移動する様々な方法に基づいて、単分散液滴をサイズに応じて異なるチャネルに選別する。また、バルクソーターも対象であり、その単純な例として、重力場において異なる質量の単分散液滴を含有するチューブがある。チューブを遠心分離、撹拌、および/または振動させることにより、浮力を有する軽い単分散液滴が、自発的に容器の上部に移動する。磁気特性を有する単分散液滴は、同様のプロセスで選別することができるが、磁場を容器に印加することにより、磁気特性を有する単分散液滴は、それらの特性の大きさに従って自発的に移動する。主題の方法で使用されるパッシブソーターは、それらの流量特性に基づいて大量の単分散液滴を同時に選別する、比較的大きなチャネルも含み得る。
【0187】
ピコインジェクションを使用して、単分散液滴の電気特性を変更することもできる。これは、例えば、イオンを添加することによって単分散液滴の導電性を変更するために使用でき、次いで、これは、例えば、誘電泳動を使用してそれらを選別するために使用できる。代替的に、ピコインジェクションを使用して単分散液滴を充電することもできる。これは、注入後に単分散液滴が充電されるように、充電された単分散液滴に流体を注入することによって達成することができる。これにより、一部が充電され、他は充電されない単分散液滴の集合が生成される。充電された単分散液滴は、それらを電界領域に流動させることによって抽出され、これにより、それらの充電量に基づいてそれらを偏移させることができる。ピコインジェクションを変調して異なる量の液体を注入することによって、または電圧を変調して固定された注入体積に対して異なる電荷を注入することによって、単分散液滴上の最終電荷を調整して、異なる電荷を有する単分散液滴を生成することができる。次いで、これらを電界領域内の異なる量によって偏移させて、それらを異なる容器に選別することが可能になる。
【0188】
フローサイトメトリ(FC)は、本明細書に記載の方法のうちのいずれかにおいて、オンチップ単分散液滴選別の代替として利用することができる。かかる方法は、方法の実施において利用され得るデバイスと共に、Lim and Abate,Lab Chip,2013,13,4563-4572に記載されており、その開示は、参照により、その全体が、全ての目的のために本明細書に組み込まれる。簡潔に述べると、単分散液滴は、例えば、本明細書に記載の分割およびピコインジェクションのような技術を使用して形成および操作されて、単一のエマルションをもたらし得る。次いで、これらの単一のエマルションを、例えば、本明細書に記載されるような、またはLim and Abate,Lab Chip,2013,13,4563-4572に記載されるような1つ以上のデバイスを使用して二重エマルション化して、本明細書に記載されるような多重エマルション液滴を提供してもよい。次いで、二重エマルションは、FC、例えばFACSを介して分析されてもよい。
【0189】
本明細書に記載される方法を使用して生成される液滴、例えば、単分散単一エマルション液滴または二重エマルション液滴は、例えば、PCRなどの酵素を伴う反応を含む様々なカプセル化された化学反応および生物学的反応を行うために使用することができる。多くの場合、反応の結果、検出対象の産物が得られてもよい。加えて、異なるレベルの産物の、または複数の産物の組み合わせを有する単分散単一エマルション液滴もしくは多重エマルション液滴を回収することが対象となり得る。これは、本発明を様々な様式で使用して達成することができる。例えば、異なる単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が異なるレベルに反応して、異なる最終産物濃度を有するように、反応を、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴リアクタに分割することができる。次いで、光学または蛍光イメージング、フローサイトメトリ、ラマン分光法、質量分析法などの分光技術を使用して、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を調べることができる。これらの方法、またはこれらの組み合わせを使用して、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中の異なる化合物の濃度を決定することができる。これらの方法は、例えば、二重エマルションの場合、マイクロ流体ベースの選別またはフローサイトメトリを使用して、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を選別するための機構と組み合わせることができる。陽性および陰性に選別された単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴の内容物を分析して、これらの選別されたプールの異なる特性を特定することができる。
【0190】
加えて、場合によっては、個々の陽性に選別された液滴を、さらなる研究のために、例えば、各陽性に選別された液滴の追加の詳細な個別分析を可能にするために、単離されたウェルに充填することが望ましい場合がある。非限定的な例として、本明細書に記載される方法およびデバイスは、特定の核酸配列を含有するウイルスを調査するために使用することができる。異種集団由来のウイルスは、例えば、標的核酸の溶解および増幅に十分な試薬を用いて、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴(例えば、二重エマルション)に充填することができる。次いで、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を、例えば、二重エマルションのフローサイトメトリで分析および選別して、標的核酸の増幅を受けた全ての液滴を検出し、回収することができる。これらの液滴は、例えば、単一の正のプールに選別することも、ウェルプレートアレイ上のウェルに個別に選別することもできる。それらは、アレイ上の各ウェルが陽性事象の所望の組み合わせを有するように、必要に応じて、特定のグループに充填されてもよい。これらは全て同じであってもよく、異なる増幅標的を示してもよい。次いで、選別された液滴は、例えば、質量分析または次世代配列決定などの追加の分析に供され得る。
【0191】
プールされた分析の場合、陽性容器に充填された全ての細胞由来の核酸が一緒に混合され、全体として分析される。しかしながら、各ウェルの内容物は、単一の液滴をウェルに充填することによって、例えば、プールおよび配列決定の前に各ウェル中の核酸をバーコード化することによって個別に分析され得る。これにより、例えば、標的種の単一ウイルスゲノムの溶解により、標的種を検出するだけでなく、個々のゲノムを回収して、同じ種の異なるメンバー間の比較を得ることができる。かかる分析は、メタゲノミクスなどの様々な用途に、またはウイルス多様性の研究に有用である。
【0192】
本発明の一部の実施形態では、例えば、選別された標的核酸上の追加の分析を可能にするために、検出に使用される増幅に加えて、標的分子を増幅することが望ましい。例えば、いくつかの用途では、標的は、配列決定に望ましい核酸を含むが、標的によって提供される核酸の量は、配列決定を可能にするには小さすぎる場合がある。これらの例では、特定のPCRおよび/または非特異的多重置換増幅などの増幅手順を、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴の選別の前または後に適用することができる。例えば、ポリオまたはHIVなどの比較的小さな線形ゲノムを有するウイルスの場合、選別の前または後にPCRを実行して、選別後に各ゲノムの十分なコピーを提供し、配列決定分析を可能にすることができる。例えば、個々のゲノムを液滴内にカプセル化し、ゲノムの全体または一部分の増幅に供してもよい。この反応と同時に、またはその後に、追加の増幅を実施して、この情報に基づいて選別された単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴、ならびに単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴におけるゲノムを特定することができる。次に、より容易に、標的核酸の多数のコピーを含有するこれらの選別された単一エマルションまたは多重エマルションを後続の分析に供してもよい。
【0193】
代替的に、個々のゲノムは、例えば、各陽性単分散単一エマルション液滴または多重エマルション単分散液滴が、全長標的核酸のただ1つのコピーおよび多数の小さな検出領域アンプリコンのみを含有するように、カプセル化され、検出増幅に供され得る。これらのアンプリコンに基づいて、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴をプールとして回収することができ、陽性選別事象ごとに標的ゲノムの全長コピーを1つ提供する。配列決定ライブラリを調製するために、次いで、これらの陽性ゲノムは、特異的で、所望の領域に隣接するプライマーを有するPCRを使用して増幅するか、あるいは代替的に、多重置換増幅(MDA)または多重アニーリングおよびループベース増幅サイクル(MALBAC)などのゲノム全体を増幅する非特異的方法を使用して増幅され得る。加えて、陽性単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴がプールされていない場合、例えば、陽性単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴がウェルプレートアレイに選別され、次いで、特異的で、所望の領域に隣接するプライマーを有するPCRを使用して増幅に供される場合、得られた個々のアンプリコンは、サンガー配列決定のための材料として直接使用することができる。
【0194】
開示の方法およびデバイスの強力な利点は、多数の独立した、単離された反応を実行し、次いで様々な分光技術を適用して、反応産物を検出し、所望の反応を受けた特定のリアクタを回収するために選別する能力にある。開示される方法の性能において生じ得る課題は、場合によっては、さらなる分析に望ましい陽性事象が非常に稀少である可能性があることである。例えば、開示される方法が、所望のウイルスが非常に低いレベルで存在する大規模な多様なウイルスプール内の特定のウイルスを検出するために使用される場合、特定のウイルスを回収するために、多数の個々のウイルスを分析する必要があり得る。そして、複数の例の種を回収することが望ましい場合、さらに多くの総ウイルスを分析する必要があり得る。開示される方法で実行および選別されることができる反応の数は有限であるため、標的が稀少すぎて確実に検出できない場合がある。
【0195】
特定の例では、本明細書に記載される方法を階層選別プロセスで使用して、極めて稀少な事象を回復することができ、各選別ラウンドにより、濃縮係数が提供される。試料に対して選別を繰り返し行うことによって、標的について試料を濃縮することができ、その結果、濃縮全体が全ての個々の濃縮の乗算積となる。例えば、本明細書に記載されるようなシステムは、最大でも100万個の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を生成、分析、および選別することができると想定する。理想的な条件下では、これは、例えば、10億分の1に存在する事象が、システムの単純な使用法では検出されない可能性が高いことを意味する。しかしながら、階層選別を実行し、各選別ラウンドで標的を濃縮させることによって、かかる稀少な事象を回復することができる。
【0196】
例えば、第1のラウンドでは、試験のための100億個のエンティティを、100万個の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中で単離して、各液滴に約10,000個のエンティティを含有させることができる。標的エンティティが10億分の1に存在する場合、かかる試料において、標的を含有したことにより陽性である、最大で10個の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が存在する。これらは選別され、それぞれが10,000個のエンティティを提供する。結果として、所望の10個が混在する合計100,000個のエンティティが生成される。場合によっては、この濃縮で十分であり得るが、純度100%までさらに濃縮することが望ましい場合もある。この場合、階層化選別アプローチを使用して、100,000個のエンティティを100万個の液滴に充填できる。例えば、10個の液滴のうち1個の液滴に1個のエンティティが含有され、ポアソン分布に従って充填することができる。この例では、標的に対して陽性であると判定された液滴の大部分は、その標的エンティティのみを含有するが、ポアソン充填のランダムな性質により、偶発的に陽性と共カプセル化された陰性の非標的エンティティも含有するものもある。
【0197】
100万個の液滴が分析され選別されると、10個が再び標的エンティティを含有すると決定され、選別によって回収され、標的に対して略完全に純粋である高度に濃縮された集団が提供される。さらに濃縮させるために、追加の選別ラウンドを行うことができる。階層選別の能力は、この場合、最終的な濃縮が個々の濃縮の乗算積となることである。例えば、方法が1ラウンドで最大10^3を濃縮することができる場合、同じ試料で2回選別を行うことによって、最終的な濃縮は10^3x10^3=10^6になり、別のラウンドにより、例えば10^9の最終的な濃縮が提供される。加えて、濃縮は、各ラウンドで同様であってもよく、またはユーザの希望に応じて異なってもよい。例えば、少数の関係を有する第1のラウンドを使用して、例えば10^3の濃縮を提供し、次いで、より集中的なラウンドを使用して、10^6の濃縮を実行することができ、再び10^9の最終的な濃縮を得ることができる。これらの値は、特定のアプリケーションに最適化するために必要に応じて調整することができるが、階層選別法は、一般に、限られた濃縮能力であっても、巨大な集団から極めて稀少な事象を濃縮することができるという非常に強力な利点を提供するものである。
【0198】
開示される方法を使用してPCR活性化選別で濃縮する場合、各濃縮が成功し、溶液中の標的濃度が増加するように特別な配慮が必要となる場合がある。例えば、大きな集団において非常に希少なウイルスを検出することを目的とする場合、第1のラウンドでは、増幅プライマーをウイルスゲノム内の特定の配列に対して生成することができる。これらは、選別チャンバに収集されるその領域の多くのコピーを生成する。この同じ領域が追加の選別ラウンドで使用される場合、前のラウンドの産物アンプリコンが検出および選別され、大量の陽性事象が発生し、大規模な濃縮を達成するための本方法の能力が損なわれることになる。この場合、後のラウンドにおけるプライマーは、前のラウンドからの増幅産物を検出しないように修飾することができる。これは、例えば、入れ子式PCRアプローチを使用することが含むいくつかの方法で達成することができ、当該アプローチでは、例えば、後のラウンドのプライマーが初期ラウンドで使用される領域を超えて増幅し、初期ラウンドからの産物は後期ラウンドで増幅されない。代替的に、同じ遺伝子または異なる遺伝子の異なる部分など、完全に異なる領域を後続のラウンドで標的化することができる。これらの方法の組み合わせを使用して、高度に濃縮された試料を達成することもできる。
【0199】
好適な対象および/または試料
主題の方法は、様々な異なる対象から採取された生体試料に適用することができる。多くの実施形態では、対象は、「哺乳類」または「哺乳動物」であり、これらの用語は、肉食動物(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯類(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、ならびに霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む、哺乳類に属する生物を説明するために広く使用される。多くの実施形態では、対象はヒトである。主題の方法は、性別を問わず、任意の発達段階(すなわち、新生児、乳幼児、少年、思春期、成人)のヒト対象に適用され得、ある特定の実施形態において、ヒト対象は、少年、思春期、または成人である。本発明はヒト対象に適用され得るが、主題の方法が、鳥、マウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜、およびウマ等の他の動物対象(すなわち、「非ヒト対象」において)にも実施され得、これらに限定されないことを理解されたい。したがって、本明細書に記載されるような評価を必要とする任意の対象が好適であることを理解されたい。
【0200】
さらに、好適な対象には、癌などの病態を診断された対象および診断されていない対象が含まれる。好適な対象には、1つ以上の癌の臨床症状を表示している対象、および表示していない対象が含まれる。ある特定の態様において、対象は、家族歴、化学的および/または環境曝露、遺伝的変異(複数可)(例えば、BRCA1および/またはBRCA2変異)、ホルモン、感染性薬剤、放射線曝露、ライフスタイル(例えば、食事および/または喫煙)、1つ以上の他の疾患状態の存在などの1つ以上の要因に起因して、癌を発症するリスクがあり得る対象であってもよい。
【0201】
上でより完全に説明したように、様々な異なる種類の生物学的試料を、かかる対象から得ることができる。ある特定の実施形態では、全血が対象から抽出される。所望される場合、遠心分離、分画、精製などにより、主題の方法を実践する前に全血を治療してもよい。対象から抽出される全血試料の体積は、100mL以下、例えば、約100mL以下、約50mL以下、約30mL以下、約15mL以下、約10mL以下、約5mL以下、または約1mL以下であってもよい。
【0202】
本明細書に記載される主題の方法およびデバイスは、固定細胞および生細胞の両方と互換性がある。ある特定の実施形態では、主題の方法およびデバイスは生細胞で実践される。他の実施形態では、主題の方法およびデバイスは、固定細胞で実践される。細胞試料を固定することにより、試料を洗浄して、下流分析を妨げる可能性のある小分子および脂質を抽出することが可能になる。さらに、細胞を固定し、透過させることにより、細胞を、表面タンパク質ならびに細胞内タンパク質のための抗体で染色することができる。本明細書に記載される核酸増幅方法と組み合わせると、抗体が細胞試料に局在化される一方で、核酸増幅産物が単分散単一エマルション液滴または多重エマルション単分散液滴内に遊離されるため、かかる染色を使用して、高レベルの多重化を達成することができる。かかる構成により、抗体および核酸増幅によって産生されるアンプリコンに同じ色の色素を使用することが可能となる。ホルムアルデヒド、メタノール、および/またはアセトンを使用した固定を含むが、これらに限定されない、任意の好適な方法を使用して、細胞を固定することができる。
【0203】
酵素結合プローブによるタンパク質またはDNAの検出
本明細書に記載される方法およびデバイスは、異種溶液中のエンティティを検出および選別するための様々な方法で使用することができる。これまでに記載された一部の実施形態は、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴(例えば、二重エマルション)中で実施される核酸増幅を使用してこれを達成するが、他の方法もまた、本明細書に記載されるように有効である。開示される方法およびデバイスが核酸を検出するために使用される場合、これは、例えば、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に個々の核酸エンティティをカプセル化し、次いで、それらを標的核酸に特異的なプライマーで増幅に供し、標的アンプリコンを検出し、次いで増幅に基づいて選別することによって、達成することができる。ただし、標的への親和性試薬の結合などの他の手段を使用して、他の検出可能なシグナルを生成することができる。例えば、標的が核酸である場合、標的に特異的なプローブを合成することができ、これは、存在する場合に、標的にハイブリダイゼーションすることができる。これらのプローブは、色素、または場合によっては、触媒(酵素ベースまたは非酵素ベースの触媒など)で標識されてもよい。標的は、それらのプローブによって結合し、未結合のプローブを除去するために精製に供され得、残りの材料は、本明細書に記載される方法を使用して液滴内にカプセル化することができる。
【0204】
触媒結合プローブの場合、触媒用の基質もまた、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に含めることができる。この場合、標的を含有する単分散単一エマルションまたは多重エマルションは、プローブと結合し、これにより、触媒を含み、基質の触媒化および産物の生成をもたらす。これは、例えば、蛍光性であってもよい。これにより、経時的に、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴が蛍光産物で充填される。対照的に、空であるか、または非標的分子を含有する単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、触媒を含有せず、産物の生成をもたらさず、したがって、検出可能なシグナルをもたらすことはない。かかるアプローチの結果として、単分散型単一エマルション液滴または多重エマルション液滴の大集合が得られ、その一部は蛍光性であり、その他は薄暗く、カプセル化された蛍光性単分散型単一エマルション液滴または多重エマルション液滴を選別することによって標的の回収が可能となる。この手順は、生体分子、ウイルス、細胞などの他の種類の標的にも適用することができ、これらは、抗体などの親和性試薬と結合することができる。この場合、親和性試薬は、例えば、触媒と結合され、当該手順は、核酸プローブによって結合される核酸標的について上述のように行われる。
【0205】
これらの実施例の両方では、洗浄を実装して非結合触媒を除去することができ、当該非結合触媒は、そうでなければ、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴内にカプセル化され、偽陽性をもたらす。しかしながら、非結合触媒を除去するための洗浄が望ましくない場合、または可能でない場合、代替のアプローチとして多重アッセイを使用することがあり、これにより、例えば、2つのシグナルの局在化を使用して陽性事象が特定される。例えば、目標が溶液中の核酸標的を検出することである場合、標的上の2つの異なる配列のプローブを合成することができ、それぞれが、例えば、蛍光産物をもたらす反応を行う異なる触媒と結合する。一実施形態では、異なる触媒のための蛍光産物は、異なる色であってもよい。例えば、一方が緑色蛍光産物をもたらし、他方が赤色蛍光産物をもたらしてもよい。プローブは、通常通り標的に結合することができる。この場合、溶液中に大部分の非結合プローブが存在するが、多くの場合、第1の種類の触媒に対応するプローブは、それらが両方とも同じ標的核酸に結合していない限り、異なる触媒で第2のプローブに物理的に結合されない。
【0206】
溶液は、ハイブリダイゼーションを高濃度で実行するために必要に応じて希釈することもできる。次いで、任意の所与の液滴当量の溶液が1つのプローブまたは両方の結合プローブを有する標的のみを含有するように、濃度を減少させることができる。次いで、この溶液を触媒用の基質と共にカプセル化し、インキュベートし、検出し、選別することができる。この実施形態では、大部分の単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、赤色または緑色の触媒のみを含有するが、他のものは、赤色および緑色の両方を含有し、これは、標的に結合した触媒である。これにより、洗浄を必要とせずに、両方の波長で蛍光を発する液滴を検出することによって、標的核酸を含有する液滴を、単に触媒を含有する液滴と区別することが可能になる。
【0207】
この場合も、両方の触媒の非結合プローブが偶然同じ液滴に共カプセル化されたときに偽陽性が生じ得るが、これは、十分に溶液を希釈して、この事象が標的の存在よりも実質的に希少であることを確実にすることによって、緩和することができる。その結果、特定された二重陽性単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴は、多くの場合、標的の存在と関連付けられ得る。同様の技術は、異なる種類の親和性試薬、例えば、再び異なる反応性の触媒と結合することができる抗体などを使用して、細胞またはタンパク質のような他の種類の標的に適用することができる。
【0208】
癌の検出
本明細書に記載される方法は、癌を検出するための方法も含む。かかる方法は、対象に由来する生体試料から得られた単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴オリゴヌクレオチドにカプセル化することであって、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドが、単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴に存在する、カプセル化することと、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試薬、検出成分、および複数のPCRプライマーを単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴中へ導入することと、PCR増幅がPCR増幅産物を産生することを可能にする条件下で単分散単一エマルション液滴または多重エマルション液滴をインキュベートすることであって、複数のPCRプライマーが、それぞれ1つ以上の癌遺伝子にハイブリダイゼーションする1つ以上のプライマーを含む、インキュベートすることと、検出成分の検出によってPCR増幅産物の有無を検出することと、を含んでよく、検出成分の検出は、PCR増幅産物の存在を示す。
【0209】
1つ以上の癌遺伝子に対応する1つ以上のPCR増幅産物の検出は、対象が癌を有することを示し得る。液滴に添加される特異的癌遺伝子は、変化し得る。ある特定の態様において、癌遺伝子(複数可)は、特定の種類の癌、例えば、乳癌、結腸癌などに特異的であり得る。
【0210】
さらに、主題の方法を実践する際に、成分が検出される生体試料は変化し得、検出が求められる特定の種類の癌に少なくとも部分的に基づき得る。例えば、乳房組織は、対象が乳癌を有するかどうかなどを決定することが所望される場合、特定の例では、生物学的試料として使用されてもよい。癌の検出方法を実践する際に、本明細書に記載の一般的なステップに対する任意の変形例、例えば、添加され得るプライマーの数、試薬が添加される様式、好適な対象などが作製されてもよい。上記の方法はまた、多重エマルション液滴の代わりに単一エマルション液滴を使用して実行されてもよい。
【0211】
システム
上記に概説したように、本開示は、単分散液滴を生成するためのシステムを提供し、当該システムは、第1のチャネル、第2のチャネル、第3のチャネル、および第4のチャネルを含む、マイクロ流体デバイスを含み、第1の流体は、第1、第2、第3、および第4のチャネルの接合部を通って、第1のチャネルから第2のチャネル中へ流動し、安定噴射条件下で第2の流体中へ流動し、第2の流体中へ第1の流体のジェットを提供し、第1の流体は、第2の流体と非混和性であり、第2の流体は、第3および第4のチャネルを介して接合部中へ導入され、複数の粒子は、第1の流体のジェット中へ導入され、それによって第1の流体のジェットの分解、および第2の流体中の第1の流体の複数の単分散液滴の複数の粒子のカプセル化を誘発する。いくつかの実施形態では、第1のチャネルは、複数の粒子の粒子の10%以内の断面積を有する。一部の実施形態では、第2のチャネルの断面積は、第1のチャネルの断面積よりも大きい。いくつかの他の実施形態では、本明細書に記載のマイクロ流体デバイスは、第1、第2、第3、および第4のチャネルの接合部の上流にある第1のチャネルとの接合部を形成する第5のチャネルおよび第6のチャネルをさらに含む。かかる実施形態では、第3の流体は、第1の流体を第2の流体中へ流動させる前に、第5および第6のチャネルから第1の流体中へ流動され得、第3の流体は、第1の流体と混和性である。例示的な実施形態を図1D、1E、2D、2E、4Aおよび4Bに示す。
【0212】
一部の実施形態では、複数の粒子は、非充填構成において第1の流体のジェット中へ導入される。他の実施形態では、複数の粒子は、充填構成において第1の流体のジェット中へ導入される。ある特定の態様において、複数の粒子は、剛性粒子を含む。他の態様では、複数の粒子は、ヒドロゲルを含む。いくつかの他の態様では、複数の粒子は、弾性粒子を含む。
【0213】
本明細書に記載の例示的なシステムでは、複数の粒子は、約1Hz~約100kHzの速度、例えば、約10,000/秒以上、約15,000/秒以上、または約20,000/秒以上の速度でカプセル化される。1つ以上の選別ステップも用いることもできる。
【0214】
マイクロ流体デバイスを調製するための材料および方法
本明細書に記載されるマイクロ流体デバイスの調製に使用され得る方法および材料が提供される。
【0215】
基板:マイクロ流体システムで使用される基板は、流体輸送に必要な要素が提供される支持体である。基本構造は、一体型、積層型、または別様で分割されていてもよい。一般に、基板は、流体流のための導管として機能する1つ以上のマイクロチャネルを含む。それらはまた、流量制御を支援するための入力ポート、出力ポート、および/または機能を含んでもよい。
【0216】
ある特定の実施形態では、基板の選択は、デバイスの用途および設計に依存し得る。基板材料は、一般に、様々な動作条件との適合性を考慮して選択される。所与の材料のための微細加工プロセスにおける制限は、好適な基板を選択する際に考慮すべき事項でもある。有用な基板材料としては、例えば、ガラス、ポリマー、シリコン、金属、およびセラミックが挙げられる。
【0217】
ポリマーは、費用対効果と大量生産の両方に適しているため、マイクロ流体デバイスの標準材料である。ポリマーは、その成形挙動に従って、熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、およびデュロプラスチックポリマーの3つのカテゴリに分類することができる。熱可塑性ポリマーは、ガラス転移温度以上で成形することができ、ガラス転移温度以下に冷却した後もこれらの形状を保持する。エラストマーポリマーは、外力の印加により伸長させることができるが、外力が除去されると元の状態に戻る。エラストマーは、その分解温度に達する前には溶融しない。デュロプラスチックポリマーは、温度が分解温度に達する前に若干軟化するため、最終的な形状に鋳造する必要がある。
【0218】
本開示の装置で使用され得るポリマーとしては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンテザー(PPE)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、およびポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。
【0219】
基板材料として使用され得るガラスは、特定の動作条件下で特定の利点を有する。ガラスは、多くの液体および気体に対して化学的に不活性であるため、プラスチックを溶解しやすい特定の溶媒を使用する用途に特に適切である。加えて、その透明特性により、ガラスは光学的検出または紫外線検出に特に有用である。
【0220】
表面処理およびコーティング:表面修飾は、マイクロ流体デバイスの機能的機構(例えば、流動制御)を制御するために有用であり得る。例えば、流体種をチャネル壁に吸着させないようにすることが有用であり得る。
【0221】
特に、ポリマーデバイスは疎水性である傾向があるため、チャネルの充填は困難である場合がある。ポリマー表面の疎水性はまた、電気浸透圧流量(EOF)を制御することを困難にする。ポリマー表面をコーティングするための1つの技術は、チャネル表面へのポリ電解質多層(PEM)の適用である。PEMは、多層が静電結合を形成することを可能にする正と負の高分子電解質の交互の溶液でチャネルを連続的に充填することを含む。当該層は、典型的には、チャネル表面に結合しないが、長期保管後であってもチャネルを完全に覆うことができる。ポリマー表面上に親水性層を適用するための別の技術には、ポリマーのチャネルの表面へのUV移植が含まれる。最初の移植部位であるラジカルは、デバイスをモノマー溶液に同時に曝露しながら、表面を紫外線照射に曝露することによって、表面に作成される。モノマーは、反応して、反応部位で共有結合したポリマーを形成する。
【0222】
ガラスチャネルは、一般に高いレベルの表面電荷を有する。一部の状況では、ポリジメチルシロキサン(PDMS)および/または界面活性剤コーティングをガラスチャネルに適用することが有利であり得る。表面吸着を遅らせるために用いられ得る他のポリマーとしては、ポリアクリルアミド、グリコール基、ポリシロキサン、グリセログリシドキシプロピル、ポリ(エチレングリコール)およびヒドロキシエチル化ポリ(エチレンイミン)が挙げられる。さらに、電気浸透圧デバイスについては、コーティングベアリングを有することが有利であり、これは、デバイスの内部の条件(例えば、pH)を操作することによって調節可能な大きさの電荷を有する。コーティングは正または負のいずれかに帯電され得るため、フローの方向は、コーティングに基づいて選択され得る。
【0223】
特殊なコーティングを適用して、チャネル表面上の特定の種を固定化することもできる。このプロセスは、「表面の官能化」として当業者に既知である。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の表面は、様々な官能基または標的の結合を容易にするためにアミンでコーティングされてもよい。代替的に、PMMAの表面は、酸素プラズマ処理プロセスを通して親水性にされてもよい。
【0224】
製造の方法:微細加工プロセスは、基板で使用される材料の種類および所望の生産量に応じて異なる。少量生産またはプロトタイプの場合、製造技術には、LIGA、パウダーブラスト、レーザアブレーション、機械加工、放電加工、フォトフォーミングなどが含まれる。マイクロ流体デバイスの大量生産のための技術には、リソグラフィまたはマスターベースの複製プロセスのいずれかが使用されてもよい。シリコン/ガラスから基板を製造するリソグラフィプロセスには、半導体デバイスの製造で一般的に使用されるウェットエッチング技術とドライエッチング技術の両方が含まれる。通常、プラスチック基板の大量生産には、射出成形およびホットエンボス加工が使用される。
【0225】
ガラス、シリコンおよびその他の「硬質」材料(リソグラフィ、エッチング、堆積):リソグラフィ、エッチング、および堆積技術の組み合わせを使用して、ガラス、シリコン、および他の「硬質」材料からマイクロカナルおよびマイクロキャビティを作製することができる。上記技術に基づく技術は、0.1~500マイクロメートルのスケールのデバイスの製造に一般的に適用される。
【0226】
現在の半導体加工プロセスに基づく微細加工技術は、一般に、クリーンルームで実施されている。クリーンルームの品質は、サイズが4μm未満の粒子数(立方インチ)で分類される。MEMS微細加工の典型的なクリーンルームクラスは1000~10000である。
【0227】
ある特定の実施形態では、フォトリソグラフィが微細加工に使用され得る。フォトリソグラフィでは、基板上に堆積されたフォトレジストが光学マスクを通じて光源に露光される。従来のフォトレジスト法では、最大10~40μmの構造高さが可能である。より高い構造が必要な場合、最大1mmの高さをもたらすSU-8またはポリイミドなどのより厚いフォトレジストを使用することができる。
【0228】
マスク上のパターンをフォトレジスト被覆基板に転写した後、次いで、湿式プロセスまたは乾式プロセスのいずれかを使用して基板をエッチングする。湿式エッチングでは、マスクで保護されていない領域である基板は、液体相で化学的な衝突に供される。エッチングプロセスで使用される液体試薬は、エッチングが等方性であるか異方性であるかに依存する。等方性エッチングでは、一般に、ガラスまたはシリコン中の球状空洞などの三次元構造を形成するために、酸が使用される。異方性エッチングは、高塩基性溶媒を使用して、ウェルおよびカナル等の平坦な表面を形成する。シリコン上の湿式異方性エッチングにより、斜めチャネルプロファイルが作成される。
【0229】
乾式エッチングは、気体相またはプラズマ相のいずれかのイオンによって基板に衝突させることを含む。乾式エッチング技術は、矩形のチャネル断面および任意のチャネル経路を作成するために使用することができる。物理エッチング、化学エッチング、物理化学エッチング(例えば、RIE)、および阻害剤を用いた物理化学エッチングを含む、様々な種類のドライエッチングが用いられてもよい。物理エッチングでは、電界を通して加速されたイオンを使用して基板の表面に衝突させ、構造を「エッチング」する。化学エッチングは、電界を使用して、化学種を基板の表面に移動させ得る。次いで、化学種は、基板表面と反応して、空隙および揮発性種を生成する。
【0230】
ある特定の実施形態では、堆積は微細加工で使用される。堆積技術は、金属、絶縁体、半導体、ポリマー、タンパク質、および他の有機物質の層を作成するために使用され得る。多くの蒸着技術は、物理蒸着(PVD)と化学蒸着(CVD)の2つの主要なカテゴリの1つに分類される。PVDへの1つのアプローチでは、基板ターゲットは、保持ガス(これは、例えば、蒸発によって生成され得る)と接触する。ガス中の特定の種がターゲットの表面に吸着し、堆積物を構成する層を形成する。マイクロエレクトロニクス加工業界で一般的に使用される別のアプローチでは、堆積される材料を含有するターゲットは、アルゴンイオンビームまたは他の適切にエネルギー源を使用してスパッタリングされる。スパッタリングされた材料は次いで、マイクロ流体デバイスの表面上に堆積される。CVDにおいて、ターゲットと接触する種は表面と反応し、物体に化学的に結合した成分を形成する。他の堆積技術としては、スピンコーティング、プラズマスプレー、プラズマ重合、ディップコーティング、鋳造、およびラングミュア-ブロジェット膜堆積が挙げられる。プラズマ噴霧では、直径100μmまでの粒子を含有する微粉体がキャリアガスに懸濁される。粒子を含有する混合物をプラズマジェットを通して加速し、加熱する。溶融粒子が基板上に飛散し、凍結して、濃密なコーティングを形成する。プラズマ重合は、有機蒸気を含有するプラズマからポリマーフィルム(例えばPMMA)を生成する。
【0231】
マイクロチャネル、マイクロキャビティおよび他の特徴がガラスまたはシリコン基板内にエッチングされると、エッチングされた特徴は通常、封止されて、マイクロ流体デバイスの「水密性」が確保される。封止する場合、互いに接触する全ての表面に接着剤を塗布することができる。封止プロセスは、ガラス-シリコン、ガラス-ガラス、またはシリコン-シリコン間の接合に開発されたような融合技術が用いられ得る。
【0232】
陽極接合は、ガラスをシリコンに接合するために使用され得る。ガラスとシリコンとの間に電圧が印加され、系の温度が上昇して、表面の封止を誘導する。電界および高温は、ガラス中のナトリウムイオンのガラス-シリコン界面への移動を誘導する。ガラス-シリコン界面内のナトリウムイオンは、シリコン表面と高度に反応し、表面間に固体化学結合を形成する。使用されるガラスの種類は、理想的にはシリコン(例えば、Pyrex Corning7740)に近い熱膨張係数を有する必要がある。
【0233】
融合接合は、ガラスまたはシリコン封止に使用され得る。基板は、まず、高い接触力を印加することによって、一緒に強制的に整列される。接触させると、原子間力(主にファンデルワールス力)が基板を一緒に保持するため、それらを炉に入れて高温でアニールさせることができる。材料に応じて、使用される温度は約600~1100℃の範囲である。
【0234】
ポリマー/プラスチック:本開示の実施形態に従って、プラスチック基板を微細加工するために、いくつかの技術を用いることができる。当該技術には、レーザアブレーション、ステレオオリソグラフィ、酸素プラズマエッチング、粒子ジェットアブレーション、および微小電気浸食が含まれる。これらの技術のいくつかは、他の材料(ガラス、シリコン、セラミックなど)の成形にも使用され得る。
【0235】
マイクロ流体デバイスの複数のコピーを生成するために、複製技術が用いられる。かかる技術には、最初に、複製されるパターンを含有するマスターまたは金型インサートを製造することが含まれる。次いで、マスターを使用して、ポリマー複製プロセスを通じてポリマー基板を量産する。
【0236】
複製プロセスでは、金型に含有されるマスターパターンをポリマー構造上に複製する。ある特定の実施形態では、ポリマーおよび硬化剤混合物が高温下で金型に注がれる。混合物を冷却した後、ポリマーは、金型のパターンを含有し、次いで、金型から取り出される。代替的に、プラスチックは、金型インサートを含有する構造に注入することができる。マイクロ射出では、液体状態に加熱されたプラスチックが金型に射出される。分離冷却後、プラスチックは金型の形状を保持する。
【0237】
シリコン系有機ポリマーであるPDMS(ポリジメチルシロキサン)を成形プロセスに用いて、マイクロ流体構造を形成することができる。その弾性特性のため、PDMSは、約5~500μmのマイクロチャネルによく適している。マイクロ流体目的に特に好適であるPDMSの特定の特性:
1)光学的に透明なので、フローの可視化を可能にする。
2)適切な量の網状化剤と混合した場合のPDMSは、マイクロ流体接続を「水密性」に保つことを容易にするエラストマー特性を有する。
3)膜を使用したバルブとポンプは、その弾性のためにPDMSで作製することができる。
4)未処理のPDMSは疎水性であり、酸素プラズマによる表面の酸化後、または強塩基中に浸漬した後に一時的に親水性になり、酸化されたPDMSは、それらの表面自体が酸素プラズマに曝露される限り、それ自体がガラス、シリコン、またはポリエチレンに付着する。
5)PDMSはガスに透過性がある。気泡が材料から強制的に除去されるため、カナル内に気泡がある場合でも、チャネルに液体を充填することが容易である。ただし、非極性有機溶剤にも透過性がある。
【0238】
マイクロ射出は、幅広いマイクロ流体設計で使用されるプラスチック基板を形成するために使用され得る。このプロセスでは、液体プラスチック材料は、まず、プラスチックのガラス転移温度よりも高い温度で、真空および圧力下で金型に注入される。次いで、プラスチックをガラス転移温度未満で冷却する。金型を取り外した後、得られたプラスチック構造は、金型のパターンのネガとなる。
【0239】
さらに別の複製技術として、ポリマー基板とマスターがポリマーのガラス転移温度Tg(PMMAまたはPCの場合は100~180℃前後)を超えて加熱されるホットエンボス加工がある。次いで、エンボス加工マスターは、事前に設定された圧縮力で基板に押し付けられる。その後、システムをTg未満で冷却し、次いで、金型および基板を分離する。
【0240】
典型的には、特に微細構造が高いアスペクト比および垂直壁を含有する場合、ポリマーは、金型ツールから分離される際に最も高い物理的な力を受ける。ポリマー微細構造の損傷を避けるために、基板および金型ツールの材料特性を考慮してもよい。これらの特性には、側壁の粗さ、側壁の角度、エンボス加工マスターと基板との間の化学界面、および温度係数が含まれる。エンボス加工ツールの側壁粗さが大きいと、分離プロセス中に粗さがツールと構造との間の摩擦力に寄与するため、ポリマー微細構造を損傷する可能性がある。摩擦力がポリマーの局所引張強度よりも大きい場合、微細構造は破壊される場合がある。ツールと基板との間の摩擦は、垂直壁を有する微細構造において重要であり得る。マスターと基板との間の化学界面も問題となる場合がある。エンボス加工プロセスは、システムを高温にさらすため、化学結合は、マスター基板の界面内で形成され得る。これらの界面結合は、分離プロセスを妨げる可能性がある。ツールと基板の熱膨張係数の差により、追加の摩擦力が生じる可能性がある。
【0241】
上記の複製プロセスを通じたプラスチック構造の複製に使用されるパターンを含有する金型、エンボスマスター、および他のマスターを形成するために、様々な技術を使用することができる。かかる技術の例としては、(以下に記載の)LIGA、アブレーション技術、および様々な他の機械加工技術が挙げられる。同様の技術は、少量のマスク、試作品、およびマイクロ流体構造を作成するためにも使用され得る。金型ツールに使用される材料には、金属、金属合金、シリコンおよびその他の硬質材料が含まれる。
【0242】
レーザアブレーションは、基板上に直接、またはマスクの使用によって、微細構造を形成するために用いられ得る。この技術には、通常、赤外線と紫外線との間に波長を持つ精密誘導レーザが使用される。レーザアブレーションは、ガラスおよび金属基板、ならびにポリマー基板上で実行され得る。レーザアブレーションは、固定されたレーザビームに対して基板表面を移動させること、または固定された基板に対してビームを移動させることのいずれかを通して実行され得る。様々なマイクロウェル、カナル、および高アスペクト構造が、レーザアブレーションによって作製され得る。
【0243】
ステンレス鋼などの特定の材料を微細加工して、非常に耐久性のある金型インサートを作製し、10μmの範囲までの構造を形成することができる。微細加工のための様々な他の微細加工技術が存在し、これは、μ-電気放電加工(μ-EDM)、μミル加工、集束イオンビームフライス加工を含む。μ-EDMは、導電性材料における3次元構造の加工を可能にする。μ-EDMでは、電極(正極ツール)とワーク(負極)との間で発生する高周波放電によって材料を除去する。ワークとツールの両方が誘電性流体に浸されている。この技術は比較的粗い表面を生成するが、材料と幾何学的形状の観点から、可撓性をもたらす。
【0244】
例えば、ニッケル合金から複製金型ツール/マスターを作製するために、電気メッキを用いてもよい。本プロセスは、フォトレジストを使用して電気メッキの構造を定義するフォトリソグラフィステップから始まる。電気メッキされる領域には、レジストは存在しない。アスペクト比が高く、粗さの要件が低い構造の場合、LIGAを使用して電気メッキフォームを作成できる。LIGAは、Lithographic(リソグラフィ)、Galvanoformung(電気メッキ)、Abformung(成形)のドイツ語の頭文字語である。LIGAに対する1つの手法において、厚いPMMA層がシンクロトロン源からのX線に曝露される。LIGAによって作成された表面は、低粗さ(約10nm RMS)を有し、結果として生じるニッケルツールは、多くのポリマーに対して良好な表面化学を有している。
【0245】
ガラスおよびシリコンデバイスと同様に、高分子マイクロ流体デバイスは、それらが機能する前に密閉する必要がある。マイクロ流体デバイスの接合プロセスにおける一般的な問題として、チャネルのブロック、およびチャネルの物理パラメータの変更が挙げられる。積層は、プラスチックマイクロ流体デバイスを封止するために使用される方法の1つである。1つの積層プロセスでは、溶融接着剤層(典型的には5~10μm)でコーティングされたPET箔(約30μm)を加熱ローラーで微細構造上に転がす。このプロセスを通して、蓋箔がチャネルプレート上に封止される。一部の研究グループは、界面での重合による結合を報告しており、これにより、構造が加熱され、チャネルを密閉するために反対側に力が加えられる。しかし、過度の力が加えられると、微細構造が損傷する可能性がある。プラスチックおよびプラスチックガラス界面には、可逆接合技術と不可逆接合技術の両方が存在する。可逆的な封止の1つの方法には、まず、PDMS基板およびガラスプレート(またはPDMSの第2の部分)をメタノールで完全にすすぎ、乾燥する前に表面を互いに接触させることが含まれる。次いで、微細構造を65℃のオーブンで10分間乾燥させる。このプロセスにはクリーンルームは必要ない。不可逆的な封止は、最初にピースをメタノールで完全にすすぎ、次に窒素流で別々に乾燥させることによって達成される。次いで、2つのピースを空気プラズマクリーナーに入れ、高出力で約45秒間酸化させる。次いで、基板を互いに接触させ、不可逆的な封止を自発的に形成する。
【0246】
他の利用可能な技術には、レーザ溶接および超音波溶接が含まれる。レーザ溶接では、ポリマーはレーザ発生熱を通じて一緒に結合される。いくつかの用途で用いられ得る別の接合技術として、超音波溶接がある。
【0247】
本開示の非限定的な態様の例
上述の本主題の態様(実施形態を含む)は、単独で、または1つ以上の他の態様または実施形態と組み合わせて有益であり得る。先の説明を限定することなく、番号1~100の本開示の特定の非限定的な態様を以下に提供する。本開示を読むと当業者には明らかであろうように、個々に番号付けされた態様の各々は、前述の態様のいずれかまたは個々に番号付けされた態様に続く態様のいずれかと使用または組み合わせられ得る。これは、態様の全てのかかる組み合わせのサポートを提供することを意図しており、以下に明示的に提供される態様の組み合わせに限定されない。
1.単分散液滴を生成するための方法であって、
マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、前記第2の流体中に前記第1の流体のジェットを提供することであって、前記第1の流体が、前記第2の流体と非混和性である、流動させることと、
複数の粒子を前記第1の流体の前記ジェット中へ導入することで、前記第1の流体の前記ジェットの分解、および前記第2の流体中の前記第1の流体の複数の単分散液滴の前記複数の粒子のカプセル化を誘発することと、を含む、方法。
2.前記複数の粒子が、無秩序構成において前記第1の流体の前記ジェット中へ導入される、態様1に記載の方法。
3.前記複数の粒子が、剛性粒子を含む、態様1または2に記載の方法。
4.前記複数の粒子が、秩序化構成において前記第1の流体の前記ジェット中へ導入される、態様1または3に記載の方法。
5.前記複数の粒子が、充填構成において前記第1の流体の前記ジェット中へ導入される、態様4に記載の方法。
6.複数の粒子が、弾性粒子を含む、態様1、2、4、および5のいずれか一項に記載の方法。
7.前記複数の粒子が、慣性秩序化を介して秩序化される、態様4~6のいずれか一項に記載の方法。
8.複数の粒子が、ヒドロゲルを含む、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.前記ヒドロゲルが、アガロース、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド(PAA)、およびこれらの組み合わせから選択される、態様8に記載の方法。
10.複数の単分散液滴の各液滴が、1つの粒子を含み、かつ1つ以下の粒子を含む、態様1~9のいずれか一項に記載の方法。
11.前記第1の流体が、水相流体を含む、態様1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.前記第1の流体の粘度および前記第2の流体の粘度が、互いに100倍以内である、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。
13.前記第1の流体の前記粘度および前記第2の流体の前記粘度が、互いに50倍以内である、態様12に記載の方法。
14.前記第1の流体の前記粘度および前記第2の流体の前記粘度が、互いに10倍以内である、態様13に記載の方法。
15.前記第1の流体の前記粘度および前記第2の流体の前記粘度が、互いに5倍以内である、態様14に記載の方法。
16.前記第2の流体が、油を含む、態様1~15のいずれか一項に記載の方法。
17.前記油が、フルオロカーボン油、炭化水素油、またはこれらの組み合わせを含む、態様16に記載の方法。
18.前記油が、フルオロカーボン油を含む、態様17に記載の方法。
19.前記第1の流体を前記第2の流体中へ流動させる前に、第3の流体を前記第1の流体中へ流動させることを含み、前記第3の流体が、前記第1の流体と混和性である、態様1~18のいずれか一項に記載の方法。
20.前記第1の流体または前記第3の流体が、重合可能な成分を含む、態様1~19のいずれか一項に記載の方法。
21.前記単分散液滴を、前記重合可能な成分を重合するのに十分な条件に曝露することを含む、態様20に記載の方法。
22.前記第3の流体が、複数の細胞を含む、態様19~21のいずれか一項に記載の方法。
23.前記第3の流体が、1つ以上の試薬を含む、態様19~22のいずれか一項に記載の方法。
24.前記ジェットの分解の前に、1つ以上の液滴を前記ジェットと合流させることを含む、態様1~23のいずれか一項に記載の方法。
25.前記1つ以上の液滴が、1つ以上の細胞を含む、態様24に記載の方法。
26.前記複数の粒子が、1Hz~100kHzの速度でカプセル化される、態様1~23のいずれか一項に記載の方法。
27.前記複数の粒子が、>15,000/秒の速度でカプセル化される、態様26に記載の方法。
28.前記複数の粒子が、>20,000/秒の速度でカプセル化される、態様27に記載の方法。
29.前記単分散液滴を選別することを含む、態様1~28のいずれか一項に記載の方法。
30.前記選別することが、サイズベースの選別、誘電偏移、選択的凝集、蛍光活性化細胞選別(FACS)、電気泳動、音響分離、磁気活性化細胞選別(MACS)、流量制御、または単分散液滴を選択的に偏移するために使用される他の刺激によって実行される、態様29に記載の方法。
31.前記粒子が、細胞である、態様1~30のいずれか一項に記載の方法。
32.前記粒子が、ビーズである、態様1~30のいずれか一項に記載の方法。
33.前記複数の粒子が、無秩序構成において前記第1の流体の前記ジェット中へ導入され、単分散粒子含有液滴の集団を含む多分散エマルションをもたらし、前記方法が、前記単分散粒子含有液滴を選別して、それらを前記多分散エマルション中の他の液滴から分離することを含む、態様1~3および6~32のいずれか一項に記載の方法。
34.前記単分散粒子含有液滴が、サイズに基づいて分離される、態様33に記載の方法。
35.前記第1の流体が、ポリマーを含み、前記選別することが、前記単分散粒子含有液滴を濾過して、それらを前記多分散エマルション中の他の液滴から分離することを含む、態様34に記載の方法。
36.前記第2の流体が、濾過の前に除去される、態様35に記載の方法。
37.単分散液滴を生成するためのシステムであって、
第1のチャネル、第2のチャネル、第3のチャネル、および第4のチャネルを含む、マイクロ流体デバイスを含み、
第1の流体が、前記第1、第2、第3、および第4のチャネルの接合部を通って、前記第1のチャネルから前記第2のチャネル中へ流動し、安定噴射条件下で第2の流体中へ流動し、前記第2の流体中へ前記第1の流体のジェットを提供し、
前記第1の流体が、前記第2の流体と非混和性であり、
前記第2の流体が、前記第3および第4のチャネルを介して前記接合部中へ導入され、
複数の粒子が、前記第1の流体の前記ジェット中へ導入され、それによって、前記第1の流体の前記ジェットの分解、および前記第2の流体中の前記第1の流体の複数の単分散液滴の前記複数の粒子のカプセル化を誘発する、システム。
38.前記複数の粒子が、無秩序構成において前記第1の流体の前記ジェット中へ導入される、態様37に記載のシステム。
39.前記複数の粒子が、剛性粒子を含む、態様37または38に記載のシステム。
40.前記複数の粒子が、秩序化構成において前記第1の流体の前記ジェット中へ導入される、態様37または39に記載のシステム。
41.前記複数の粒子が、充填構成において前記第1の流体の前記ジェット中へ導入される、態様40に記載のシステム。
42.前記複数の粒子が、弾性粒子を含む、態様37、38、40、および41のいずれか一項に記載のシステム。
43.前記複数の粒子が、慣性秩序化を介して秩序化される、態様40~42のいずれか一項に記載のシステム。
44.前記複数の粒子が、ヒドロゲルを含む、態様37のいずれか一項に記載のシステム。
45.前記ヒドロゲルが、アガロース、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド(PAA)、およびこれらの組み合わせから選択される、態様44に記載のシステム。
46.前記複数の単分散液滴の各液滴が、1つの粒子を含み、かつ1つ以下の粒子を含む、態様37~45のいずれか一項に記載のシステム。
47.前記第1のチャネルが、前記複数の粒子の粒子の10%以内の断面積を有する、態様37~46のいずれか一項に記載のシステム。
48.前記第2のチャネルの前記断面積が、前記第1のチャネルの断面積よりも大きい、態様37~46のいずれか一項に記載のシステム。
49.前記第1の流体が、水相流体を含む、態様37~48のいずれか一項に記載のシステム。
50.前記第1の流体の粘度および前記第2の流体の粘度が、互いに100倍以内である、態様34~49のいずれか一項に記載のシステム。
51.前記第1の流体の前記粘度および前記第2の流体の前記粘度が、互いに50倍以内である、態様50に記載のシステム。
52.前記第1の流体の前記粘度および前記第2の流体の前記粘度が互いに10倍以内である、態様51に記載のシステム。
53.前記第1の流体の前記粘度および前記第2の流体の前記粘度が互いに5倍以内である、態様52に記載のシステム。
54.前記第2の流体が、油を含む、態様37~49のいずれか一項に記載のシステム。
55.前記油が、フルオロカーボン油、炭化水素油、またはこれらの組み合わせを含む、態様54に記載のシステム。
56.前記油が、フルオロカーボン油を含む、態様55に記載のシステム。
57.前記マイクロ流体デバイスが、前記第1、第2、第3、および第4のチャネルの前記接合部の上流にある前記第1のチャネルとの接合部を形成する第5のチャネルおよび第6のチャネルを含む、態様37~56のいずれか一項に記載のシステム。
58.第3の流体が、前記第1の流体を前記第2の流体中へ流動させる前に、前記第5および第6のチャネルから前記第1の流体中へ流動され、前記第3の流体が、前記第1の流体と混和性である、態様57に記載のシステム。
59.前記第1の流体または前記第3の流体が、重合可能な成分を含む、態様34~58のいずれか一項に記載のシステム。
60.前記重合性成分が、重合されている、態様59に記載のシステム。
61.前記第3の流体が、複数の細胞を含む、態様57に記載のシステム。
62.前記第3の流体が、1つ以上の試薬を含む、態様56または57に記載のシステム。
63.1つ以上の液滴が、前記ジェットの分解の前に前記ジェットと合流される、態様37~62のいずれか一項に記載のシステム。
64.前記1つ以上の液滴が、1つ以上の細胞を含む、態様63に記載のシステム。
65.前記複数の粒子が、1Hz~100kHzの速度でカプセル化される、態様37~64のいずれか一項に記載のシステム。
66.前記複数の粒子が、>15,000/秒の速度でカプセル化される、態様65に記載のシステム。
67.前記複数の粒子が、>20,000/秒の速度でカプセル化される、態様66に記載のシステム。
68.前記単分散液滴が選別されている、態様37~67のいずれか一項に記載のシステム。
69.前記選別することが、サイズベースの選別、誘電偏移、選択的凝集、蛍光活性化細胞選別(FACS)、電気泳動、音響分離、磁気活性化細胞選別(MACS)、流量制御、または単分散液滴を選択的に偏移するために使用される他の刺激によって実行される、態様68に記載のシステム。
70.前記粒子が、細胞である、態様34~69のいずれか一項に記載のシステム。
71.前記粒子が、ビーズである、態様34~69のいずれか一項に記載のシステム。
72.前記複数の粒子が、無秩序構成において前記第1の流体の前記ジェット中へ導入され、単分散粒子含有液滴の集団を含む多分散エマルションをもたらし、前記方法が、前記単分散粒子含有液滴を選別して、それらを前記多分散エマルション中の他の液滴から分離することを含む、態様34~39および44~71のいずれか一項に記載のシステム。
73.前記単分散粒子含有液滴が、サイズに基づいて分離される、態様72に記載のシステム。
74.試薬を粒子含有液滴と合流させるための方法であって、
マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、前記第2の流体中に前記第1の流体のジェットを提供することであって、前記第1の流体が、前記第2の流体と非混和性であり、1つ以上の試薬を含む、流動させることと、
複数の粒子含有液滴を前記第1の流体の前記ジェット中へ合流させることで、前記第1の流体の前記ジェットの分解、および前記第2の流体中の前記第1の流体の複数の合流した単分散粒子含有液滴内の前記複数の粒子のカプセル化を誘発することと、を含む、方法。
75.試薬を液滴と合流させるための方法であって、
マイクロ流体デバイスのチャネル内で、第1の流体を安定噴射条件下で第2の流体中へ流動させて、前記第2の流体中に前記第1の流体のジェットを提供することであって、前記第1の流体が、複数の粒子を含み、前記第1の流体が、前記第2の流体と非混和性であり、1つ以上の試薬を含む、流動させることと、
複数の液滴をジェット形成の上流または下流のいずれかで前記第1の流体中へ合流させることであって、前記複数の粒子が、前記第1の流体の前記ジェットの分解、および前記第2の流体中の前記第1の流体の複数の単分散粒子含有液滴内の前記複数の粒子のカプセル化を誘発することと、を含む、方法。
76.前記複数の粒子含有液滴が、剛性粒子を含む、態様74に記載の方法。
77.前記複数の粒子含有液滴が、弾性粒子を含む、態様74に記載の方法。
78.前記複数の粒子含有液滴が、ヒドロゲルを含む、態様74~76のいずれか一項に記載の方法。
79.前記ヒドロゲルが、アガロース、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド(PAA)、およびこれらの組み合わせから選択される、態様77に記載の方法。
80.前記複数の合流した単分散粒子含有液滴の各液滴が、1つの粒子を含み、かつ1つ以下の粒子を含む、態様74~78のいずれか一項に記載の方法。
81.前記第1の流体が、水相流体を含む、態様74および75~80のいずれか一項に記載の方法。
82.前記第1の流体の粘度および前記第2の流体の粘度が、互いに100倍以内である、態様74および75~81のいずれか一項に記載の方法。
83.前記第1の流体の前記粘度および前記第2の流体の前記粘度が、互いに50倍以内である、態様82に記載の方法。
84.前記第1の流体の前記粘度および前記第2の流体の前記粘度が、互いに10倍以内である、態様83に記載の方法。
85.前記第1の流体の前記粘度および前記第2の流体の前記粘度が、互いに5倍以内である、態様84に記載の方法。
86.前記第2の流体が、油を含む、態様74~85のいずれか一項に記載の方法。
87.前記油が、フルオロカーボン油、炭化水素油、またはこれらの組み合わせを含む、態様86に記載の方法。
88.前記油が、フルオロカーボン油を含む、態様87に記載の方法。
89.前記第1の流体を前記第2の流体中へ流動させる前に、第3の流体を前記第1の流体中へ流動させることを含み、前記第3の流体が、前記第1の流体と混和性である、態様74~87のいずれか一項に記載の方法。
90.前記第1の流体または前記第3の流体が、重合可能な成分を含む、態様74~89のいずれか一項に記載の方法。
91.前記合流した単分散粒子含有液滴を、前記重合可能な成分を重合するのに十分な条件に曝露することを含む、態様90に記載の方法。
92.前記第3の流体が、複数の細胞を含む、態様89~91のいずれか一項に記載の方法。
93.前記第3の流体が、1つ以上の試薬を含む、態様89~92のいずれか一項に記載の方法。
94.前記複数の合流した単分散粒子含有液滴が、1Hz~100kHzの速度で形成される、態様74~93のいずれか一項に記載の方法。
95.前記複数の合流した単分散粒子含有液滴が、>15,000/秒の速度で形成される、態様94に記載の方法。
96.前記複数の合流した単分散粒子含有液滴が、>20,000/秒の速度で形成される、態様94に記載の方法。
97.前記単分散液滴を選別することを含む、態様74~96のいずれか一項に記載の方法。
98.前記選別することが、サイズベースの選別、誘電偏移、選択的凝集、蛍光活性化細胞選別(FACS)、電気泳動、音響分離、磁気活性化細胞選別(MACS)、流量制御、または単分散液滴を選択的に偏移するために使用される他の刺激によって実行される、態様97に記載の方法。
99.前記粒子が、細胞である、態様74~98のいずれか一項に記載の方法。
100.前記粒子が、ビーズである、態様74~98のいずれか一項に記載の方法。
【実施例
【0248】
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製および使用方法の完全な開示および説明を提供するために提示されるものであり、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われる全てまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度等)に対する正確性を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差および偏差が考慮されるべきである。別様に示されない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧または略大気圧である。標準的な略語、例えば、bp(塩基対(複数可))、kb(キロ塩基(複数可))、pl(ピコリットル(複数可))、またはsec(秒(複数可))、min(分(複数可))、hもしくはhr(時間(複数可))、aa(アミノ酸(複数可))、kb(キロ塩基(複数可))、bp(塩基対(複数可))、nt(ヌクレオチド(複数可))、i.m.(筋肉内(で))、i.p.(腹腔内(で))、s.c.(皮下(で))などが使用されてもよい。
【0249】
材料および方法
以下の材料および方法は、別段明記しない限り、概して、本明細書に記載の実施例に提示される結果に適用される。
【0250】
装置の製造
SU-8 2025フォトレジスト(MicroChem,Westborough,MA,USA)を用いて、標準的なフォトリソグラフィ技術を使用して、3インチシリコンウェハ上でマスター構造を作製した。硬化剤およびPDMSプレポリマー(Momentive,Waterford,NY,USA;RTV 615)を1:10で混合し、真空チャンバ中で脱気し、ペトリ皿中でマスター金型上に注ぎ、気泡が存在しないまでさらに脱気し、65℃で4時間脱気した。PDMSレプリカをマスターから除去し、0.75mmの生検パンチ(Ted Pella,Inc.,Redding,CA,USA;Harris Uni-Core 0.75)でパンチし、プラズマボンダー(Technics Plasma etcher)を使用してガラススライド(75×50×1.0mm、12-550C、Fisher Scientific)に結合させ、150℃で10分間配置して結合を強化した。デバイスを5分間の接触時間でアクアペルで処理し、空気でパージし、それらを疎水性にした。デバイスを少なくとも30分間ベークして、残りのアクアペルを蒸発させた。
【0251】
剛性ビーズカプセル化
ヒドロキシル化メタクリルポリマー(Toyopearl HW-65S,Tosoh Bioscience)から作製された剛性20~40μmのビーズを使用して、制限希釈での単分散ビーズ含有液滴の形成を実証した。ビーズを68% OptiPrep密度勾配培地(Sigma-Aldrich)に懸濁し、2%アガロース(超低ゲル化温度アガロース、IX-A型、Sigma-Aldrich)と1×PBS中で共流動させた。Macosko et al.に以前に記載されているものと同一のデバイスを、100μmの高さで製造した。流速は、ビーズ含有溶液で2000μl/時間、アガロースで2000μl/時間、および2%イオン性クリトックスで40,000μl/時間であり、DeJournette et al.に以前に記載されたように調製された。
【0252】
液滴サイトメトリ
カスタムマイクロ流体サイトメータは、Mazutis et al.に依然に記載されるように設計された。このシステムは、3つのレーザ(473nm、532nm、638nm)を備えた。EVA green(1個)で染色されたToyopearl HW-65Sビーズを473nmレーザで検出した(図3A~3D)。Cy5とコンジュゲートされたBSAを使用して、638nmレーザで液滴サイズを測定した(図3A~3D)。カルセインレッドオレンジを使用して、532nmレーザで細胞を検出した(図6A~6D)。FAMを含有するアクリル化プライマーを液滴ポリアクリルアミド形成中に重合させ、473nmレーザで検出した(図6A~6D)。液滴蛍光を、ピーク強度を液滴サイズで割った積分として計算した。液滴長を、液滴がレーザ励起ウィンドウに費やす時間(ミリ秒)として測定した。結果をエクスポートし、FlowJoで分析した。
【0253】
ハイドロゲル合成
ビーズ充填実験のための弾性ヒドロゲルを、Yan et al.のように気泡誘発デバイスを使用してマイクロ流体的に作製した。8%のアクリルアミドと架橋剤(40%のアクリルアミド/ビス溶液、19:1、Biorad)、200mMのトリス(pH8.3)、および0.3%の過硫酸アンモニウムを水に含有する溶液を分散相として使用した。連続相は、1%N,N,N’,N’-テトラメチレンジアミン(ThermoFisher)を有する2%イオン性クリトックスから構成された。固化を室温で1時間行った。
【0254】
充填ビーズカプセル化
使用の前に、固化したポリアクリルアミドビーズを、70μmの細胞ストレーナー(Corning Falcon細胞ストレーナー)を使用して濾過して、大きなビーズを除去し、デバイスの目詰まりを防止した。カスタム3D印刷シリンジアダプタを使用して、ビーズを4700rpmで10分間遠心分離(Sorvall ST40R)することによってシリンジ内に充填した。上清を除去し、ビーズをマイクロ流体デバイス上に注入した。いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、高速圧縮ビーズが、滴下条件下よりも高いレベルのビーズ擾乱および破裂をもたらすとの提案がなされている。これは、PE/2チューブ(Scientific Commodities)の代わりにPE/5チューブを使用して改善された。滴下方式において、流量は、0.1%Tweenを有する1xPBSでは200μl/時間、充填されたポリアクリルアミドビーズでは200μl/時間、および油では600μl/時間であった。噴射方式において、流量は、0.1%Tweenを有する1xPBSでは4000μl/時間、充填されたポリアクリルアミドビーズでは4000μl/時間、および油では6000μl/時間であった。共流動せずに充填ビーズカプセル化するために、様々なビーズおよび油の流量を使用した。キャピラリ数は、55μm×55μmの正方形チャネル断面を想定して、連続相流量、連続相の粘度(HFE-7500、1.24×10-3kg m-1-1)および界面張力(4mN m-1)を用いて計算した。
【0255】
細胞ビーズ対合
1×PBS中のカルセイン(25μMのカルセインレッドオレンジ、AM、C34851、ThermoFisher)を用いて細胞を染色し、氷上で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し(HBS、カルシウムなし、マグネシウムなし、14170112、ThermoFisher)、HBS中の18%OptiPrep密度勾配培地(Sigma-Aldrich)に再懸濁した。ポリアクリルアミドビーズを、FAM標識3’末端を含有する10μMの酸化オリゴヌクレオチド(IDT)と重合させた。流量は、45μmのビーズでは4000μl/時間、溶解バッファーでは4000μl/時間(0.1%LiDS、1mM EDTA、20mM TRIS 8.3、500mM LiCl)、および油では8000μl/時間(EvaGreen#1864005のBiorad Droplet Generation Oil)であった。単分散ビーズ誘発液滴を生成する条件を素早く見つけるために、ビーズの不在下でジェットを形成した。後で再注入および検出するために、液滴を10mLシリンジに回収した。液滴生成速度を計算するために、流動液滴について蛍光強度のタイムトレースデータを収集し、高速フーリエ変換(fft)関数を使用してMatlabで分析した。パワースペクトルは、fftの絶対値を試料数で割った2乗として計算した。
【0256】
実施例1:ビーズ誘発を使用した滴下方式および噴射フロー方式における液滴生成
結果
疎水性マイクロ流体チャネル内で水および油を共流動し、キャピラリ数(Ca)に依存する様式で油中液滴を生成した。かかる装置により、異なる方式で液滴を形成した。擾乱がない場合、ジェットは安定したままであり、メインチャネルに液滴は形成されなかった(図2B)。ビーズの導入により、内部擾乱が生じ、これは、ジェット分解および液滴形成を誘発した(図2C~2E)。低いCaでは、準静的閉塞および圧搾機構を通じて液滴が形成され、中程度のCaでは、液滴相に対する連続相の剪断が重要となった(図2A)。特に、図2Aは、ビーズを含まない滴下方式における液滴形成を示す。より高いCaでは、分散相は、分解することなく安定ジェットとして流動した。具体的には、図2Bは、ビーズを含まない高いキャピラリ数での安定ジェット形成を示す。細胞、粒子、またはビーズをジェット中へ導入した場合、それらはレイリープラトー不安定性を播種し、それを液滴に分解することができる(図2C)。しかしながら、これらの別個のエンティティは液滴相中にランダムに分散したため、分解は不規則であり、多分散エマルションが得られた。特に、図2Cは、分散相の分解を誘発するために限界希釈時に非充填剛性ビーズを使用した液滴形成を示す。単分散エマルションを生成するために、均一に周期的な擾乱をジェットに適用しており、これは、気泡を導入することによって達成され得る。この概念は、気泡のように規則的な周期で流動する充填弾性ビーズに拡張され、これにより、ジェットを単一のビーズを含有する単分散液滴に分解した(図2D)。具体的には、図2Dは、追加の共流動なしで分解を誘発するために充填ビーズを使用する液滴形成を示す。追加の水溶液は、誘発方式における液滴体積を独立して調整するために側方チャネルを介して導入され得る(図2E)。特に、図2Eは、共流動分散相の分解を誘発するために充填ビーズを使用した液滴形成を示す。
【0257】
実施例2:多分散エマルション中の単分散ビーズ含有液滴の形成
結果
目詰まりにより充填できなかった硬質ビーズについては、試料を希釈し、10滴中1滴未満のビーズの含有が得られた。希釈細胞と対合すると、100滴中1滴未満がビーズ細胞対合を含有した。全ての空の液滴を生成する必要があるため、これは、プロセスを無駄にし、全体的なスループットを制限する。ビーズ誘発装置は、噴射条件下で駆動し、スループットを10倍増加させた。これを実証するために、2%アガロースおよび硬質ビーズを含有する1xPBS(Toyopearl HW-65S)を共流動すことによって安定ジェットを形成した。このジェットは、擾乱されていないが、チャネル内で分解しなかった(図3A)。剛性ビーズは、ジェット内の流れを分解し、油-水界面を擾乱させ、ジェットを分解するレイリープラトー不安定性を播種する(図3A)。特に、図3Aは、安定ジェット形成およびビーズ誘導ジェット分解を示すデバイス動作の映像からのフレームを示す。同様の状態のジェットについては、分解プロセスは再現可能であり、粒子よりも実質的に大きい液滴を生じ、これは、均一であった。得られたエマルションは、大規模な多分散空滴、および第2の集団の小単分散ビーズ含有液滴から構成された。
【0258】
ビーズ誘発液滴の効率および均一性を特徴付けるために、レーザ誘導蛍光を使用して、数千のビーズカプセル化事象に関する統計を蓄積した。Eva Greenで染色し、FAMチャネル上で見えるヒドロキシル化メタクリルポリマービーズ(Toyopearl HW-65S)を、BSAコンジュゲートCY5を含有する水溶液と共流動した。液滴は、色素を励起するためにレーザを通して移動した(図3B)。特に、図3Bは、液滴サイズおよびビーズ含有液滴の存在を測定するために使用される実験セットアップの略図表現を示す。液滴サイズは、液滴が励起ウィンドウに費やす時間(t-t)として計算した。発光された光は一連のフィルタを通過し、光増倍管を使用して収集した。蛍光強度のタイムトレースを収集し、ピークの存在によって液滴を検出し、各チャネルについて平均ピーク蛍光を決定した。これにより、どの液滴がビーズを含有したかを判定することができた(図3C)。液滴形成の液滴サイトメトリ分析により、空の液滴および液滴含有ビーズを特定した。レーザを通って流動する液滴に費やされた時間は、その長さに比例するため、ビーズ誘発中に液滴サイズの分布を測定することができる。図3Dの液滴サイズのヒストグラムに示されるように、ビーズ含有液滴はタイトなサイズ分布を示し、ジェットのランダムな非誘発分解から生じる液滴よりも小さかった。青色は、図3Cで特定されたビーズ含有液滴を表した。赤色は、図3Cで特定された非ビーズ含有液滴を表した。図3Dの結果は、全エマルションが多分散である一方で、ビーズを含有する液滴の単分散集団が生成されたことを実証した。これらの液滴は、濾過または流量分画によって回収される可能性がある。
【0259】
ジェット誘発の追加の利点は、ノズルよりも小さいため、通常の滴下方式で生産できるよりも小さい液滴サイズを作り出すことである。これにより、チャネルが目詰まりやすい剛性ビーズを使用する場合に特に重要なデバイスの目詰まりが防止された。任意の特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、多分散エマルション内で単分散ビーズ含有液滴を生成することは、ビーズを伴う生化学反応が試薬および産物に関して均一であることを意味するとの提案がなされている。したがって、単一デバイスのワークフローの場合、ビーズ誘発による液滴形成は、少なくとも速度が上昇するという追加の利点で、滴下方式で動作するのと同等であった。
【0260】
実施例3:充填弾性ビーズの高スループットカプセル化
結果
ビーズ含有液滴の単分散エマルションを生成するために、Abate et al.に記載されるように弾性ビーズを充填した。これにより、ビーズを一定間隔で注入することができ、ビーズ間の不均一な間隔を防止し、これにより空の滴がもたらされる。滴下方式における充填ビーズ充填中に、ビーズの存在とは無関係に液滴生成が生じた(図4B)。単一のビーズ1滴当たりの充填は、ビーズ注入を液滴形成と同期させるために流量を調整することによって達成された(図4B)。結果として、弾性微粒子の充填は、ビーズベースのワークフローのスループットを制約する滴下方式で動作する能力によって制限された。ビーズ充填とジェット誘発を組み合わせることで、定期的なビーズ注入を利用して、定期的なジェット分解と単分散液滴形成を誘発した。
【0261】
図4Aの流体入口および流体出口を有するデバイス概略図に示されるように、追加の水溶液を共流動することにより、試薬の添加および液滴サイズの独立した制御が可能になった。いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではなく、試薬のバルク添加が実験的に実行可能ではなかった場合、共流動が重要であり得るとの提案がなされている。例えば、細胞および溶解バッファー、酵素およびこれらの基質、ならびに化学反応の成分は、液滴の外側での混合を防止するために、チップ上で共流動され得る。図4Bは、ビーズの有無にかかわらず、滴下方式および噴射方式におけるデバイス動作を示す。ビーズの不在下で、水性共流動体は、マイクロ流体チャネル内で分解されない安定ジェットを形成した。ビーズ誘導液滴形成が導入される(図4B)。高速映像フレームにより、流体ジェットの伸長およびその後のビーズ依存液滴形成が捕捉された(図4C、下部)。この方式における操作により、典型的な滴下方式と同様の充填率およびサイズ均一性のビーズ含有液滴が生成された(図4C)。特に、図4Cは、滴下(上部)方式および噴射(下部)方式におけるデバイス動作の映像からのフレームを示している。結果として生じるエマルションは、時間経過画像の右側に示される。
【0262】
ビーズがヒドロゲルである場合、試薬を細孔中に浸漬でき、水性共流動は必要なかった。この場合、共流動なしでもビーズ誘発が発生したが、充填が過剰な水相を除去し、ジェット形態がないため、視覚化が困難であった。分散相は、間質流体を有するビーズで完全に作製した。このシナリオでは、充填ビーズは液滴形成を誘発し、流量は典型的な水性噴射方式に十分に増加させることができる。分散水相が滴下から噴射に遷移した時点を、密集した充填ビーズが単一のコア液滴からマルチコア液滴に遷移した時点と比較した。図5Aは、単一ビーズおよびマルチビーズ含有液滴の顕微鏡画像を示す。非ビーズ液滴生成と比較して、より高いキャピラリ数および高い分散相流速(6000μl/時間)でビーズ誘発が効率的に動作した(図5B)。特に、図5Bは、キャピラリ数および流量比の関数として、単一ビーズ液滴からマルチビーズ液滴への遷移の相図を示す。デバイスの画像は、特定の領域での動作を示している。
【0263】
実施例4:1kHz超のビーズ細胞対合
結果
滴下方式で動作する場合、数百万個のビーズ含有液滴の産生は遅いものとなる。ビーズ誘発液滴形成の有用性は、エマルション品質の低減を最小限に抑えながらスループットの増加を可能にすることである。かかる理論は、45μmのポリアクリルアミドビーズを単分散液滴に高速でカプセル化することによって実証された。液滴作製装置を、それぞれ4000μl/時間の2つの水性ストリーム、および約23kHzの予測カプセル化周波数に対応する8000μl/時間の油で起動した(図6A)。特に、図6Aは、デバイス動作と、出口内の結果として生じる液滴とを示す。液滴作製周波数を測定するために、流動液滴の蛍光時間トレースデータを記録し(図6B、挿入図)、パワースペクトルの強度を計算した(図6B)。このスペクトルのピークは、流量に基づく液滴作製周波数の推定値と一致し、滴下方式での実行と比較してスループットが1桁増加することを示している。ビーズ誘発により、20kHzを超える単分散液滴が生成され、ビーズ含有液滴の迅速な生成が可能となる。
【0264】
ビーズと細胞を高速で対合した。細胞を希釈して、20滴当たり1個の細胞を達成し、これらの細胞を23kHzでビーズと対合し、1kHz対合を容易に達成した。これにより、100,000個の細胞を数分で単一のビーズ、または数時間で1000万個の細胞と対合することが可能になった。細胞をカルセインレッドで染色し、それぞれFAMチャネルおよびHEXチャネル上で検出することができるように、ビーズを蛍光オリゴヌクレオチドで重合させた(図6C)。図6Cは、FAM染色ビーズおよびカルセインレッド細胞の蛍光顕微鏡像を示しており、ビーズ充填および細胞ビード対合が実証されている。溶解バッファーとチップ上で混合すると、細胞はカルセインレッド色素を放出し、液滴全体が蛍光になった。顕微鏡法を使用した液滴蛍光の分析は、液滴当たり1個のビーズの正確な充填、ならびにビーズとの細胞対合を実証した(図6C)。このアプローチのスループットを正確に測定するために、数百万個のビーズ含有液滴および数十万個のビーズ細胞対合を液滴サイトメータを使用して分析した。分析した350万個の液滴では、99.8%が蛍光ビーズを含有し、3.1%がビーズ細胞対合を含有しており、これは、使用した細胞濃度に基づいて予測される5%の細胞充填に近い。これらの結果は、ビーズ誘発カプセル化および対合が、数百万個の細胞を処理することができる速度および精度で機能したことを実証する。
【0265】
本明細書に記載される方法は、10個のヒトT細胞をポリアクリルアミドビーズと対合する機構を、滴下方式で動作する方法の10倍速く提供した。かかる方法は、ビーズベースの液滴ワークフローのスループットを改善し、大きな集団の分析および稀少な事象の検出を可能にした。
【0266】
実施例5:高速ビーズコーティング
結果
多くの場合、ビーズをヒドロゲルでコーティングすることが重要であり、これにより、後続のビーズ充填、ゲノムの捕捉などが可能となる。アガロースでコーティングされた粒子を、大きなアガロース液滴の集団内で生成した(図7)。ビーズ誘発を使用して、ビーズを均一なシェルで容易にコーティングした。剛性ビーズをヒドロゲルでコーティングし、サイズ別に分離した。非ビーズ含有液滴は大きく(または小さくすることができる)、これをサイズに基づいて濾過した(図7)。
【0267】
本発明は、その特定の実施形態に関して記載されてきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ得、同等物が置換され得ることを当業者は理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、単一のプロセスステップ、または複数のプロセスステップを本発明の目的、趣旨、および範囲に適合させるために、多くの修正を行うことができる。かかる修正は全て、本明細書に添付される特許請求の範囲内であることが意図される。
【0268】
参考文献
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図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7