(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】眼用インプラント、インサータ・デバイス、及び眼用インプラントの挿入方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A61F9/007 160
(21)【出願番号】P 2021510745
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 US2019048926
(87)【国際公開番号】W WO2020047330
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518224358
【氏名又は名称】ニュー ワールド メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリク、ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】トラン、ジョーイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、パトリック エス.
(72)【発明者】
【氏名】ポーティアス、エリック
(72)【発明者】
【氏名】デービス、ダニエル アール.
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ、ネイサン アール.
(72)【発明者】
【氏名】スラバー、ニコ ジェイ.
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/111528(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/210561(WO,A2)
【文献】特表2013-523213(JP,A)
【文献】特表2007-501066(JP,A)
【文献】特表2009-523540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0116626(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0096514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端を有するチューブと、
前記チューブの近位側に配設された本体と、
前記チューブの前記遠位端に配設され、目の前眼房からの流入流体を受け入れるように構成された、入口ポートと、
前記入口ポートに結合され、少なくとも部分的に前記チューブを通って延在する入口流体経路と、
少なくとも部分的に前記本体を通って延在し、前記入口流体経路から分岐する、複数の出口流体経路と、
前記本体に配設され、前記複数の出口流体経路に結合された、複数の出口ポートと、を備え
る眼内排水デバイスであって、前記
眼内排水デバイスが遠位区画と近位区画とを備え、
前記入口流体経路が、前記遠位区画を通って延在する入口管腔であり、
前記複数の出口流体経路が、前記近位区画を通って延在する複数の出口管腔であり、
前記遠位区画の近位端が、前記入口管腔に結合された第1のポートを備え、
前記近位区画の遠位端が、前記複数の出口管腔に結合された複数の第2のポートを備え、
前記近位区画の前記遠位端が、前記遠位区画の前記近位端と接合され、
(i)前記複数の第2のポートが前記近位区画の前記遠位端において窪み、並びに/或いは(ii)前記第1のポートが前記遠位区画の前記近位端において窪んで、前記第1のポートと前記複数の第2のポートとの間に分配チャンバを形成する、眼内排水デバイス。
【請求項2】
前記本体が前記チューブに対して拡張される、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【請求項3】
前記本体の外表面が、前記入口流体経路に実質的に平行な方向で長手方向に延在する複数の微細溝を含み、前記チューブの外表面が、前記入口流体経路に実質的に垂直な方向で円周方向に延在する複数の微細溝を含む、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【請求項4】
前記チューブが、前記チューブを前記目の埋め込み部位で保定するように構成された保定機構を備える、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【請求項5】
前記保定機構が、前記本体に向かって角度を付けた1つ又は複数の返しを備える、請求項4に記載の眼内排水デバイス。
【請求項6】
前記保定機構が複数の隆起を含む、請求項4に記載の眼内排水デバイス。
【請求項7】
前記保定機構が、遠位端を有するオリフィス取付部を含み、前記遠位端は、該遠位端が目の前眼房に挿入されたときに保定を容易にするように、径方向外側に広がった部分を含む、請求項4に記載の眼内排水デバイス。
【請求項8】
前記チューブが、前記本体と前記チューブの前記遠位端との間に配設されたネック領域を備え、前記ネック領域が、前記本体及び前記チューブの前記遠位端よりも狭い、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【請求項9】
前記チューブ及び前記本体が可撓性の生体適合性材料で作られる、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【請求項10】
前記チューブ及び前記本体が、シリコーン、親水性アクリル、又は疎水性アクリルのうち少なくとも1つで作られる、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【請求項11】
前記入口流体経路が、前記チューブの内部を通って延在する入口管腔であり、前記複数の出口流体経路が、前記本体の内部を通って延在する複数の出口管腔である、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【請求項12】
前記本体が複数の接続された多角形を備え、前記複数の出口流体経路が、前記接続された多角形の間の介在空間である、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【請求項13】
目に埋め込みされたとき、前記出口ポートの1つ又は複数が、前記目のテノン嚢下空間に流体が流れ込むことができるように構成され、前記出口ポートの他の1つ又は複数が、前記目の結膜下空間に流体が流れ込むことができるように構成された、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【請求項14】
前記本体の外表面が、生分解性材料が前記複数の出口ポートを閉塞するようにして、前記生分解性材料でコーティングされる、請求項1に記載の眼内排水デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
眼房水は、一般的に、従来の流出経路(線維柱帯網及びシュレム管)並びに従来以外の流出経路(ブドウ膜強膜)を介して、目の前眼房から排水する。しかしながら、状況によっては、眼房水の排水が低減することで眼内圧(IOP)が増加する場合があり、それによって視神経にダメージを与える恐れがある。したがって、特に緑内障患者にとって、前眼房からの眼房水の排水を増加させることができるのが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
主題の技術の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれると共に本明細書の一部を構成する添付図面は、主題の技術の態様を例示し、説明と併せて主題の技術の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】本開示のいくつかの実施例による眼内埋め込みシステムを示す概略図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施例による、患者の目の中にあるイン・サイチュの眼内排水デバイスを示す断面図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す上面図である。
【
図5】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す上面図である。
【
図6】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図7】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す上面図である。
【
図8A】本開示のいくつかの実施例による、二部分構成及び眼内排水デバイスを作成する方法を示す図である。
【
図8B】本開示のいくつかの実施例による、二部分構成及び眼内排水デバイスを作成する方法を示す図である。
【
図9A】本開示のいくつかの実施例による、眼内排水デバイスを作成する方法を示す図である。
【
図9B】本開示のいくつかの実施例による、眼内排水デバイスを作成する方法を示す図である。
【
図9C】本開示のいくつかの実施例による、眼内排水デバイスを作成する方法を示す図である。
【
図10A】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す断面図である。
【
図10B】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す上面図である。
【
図11】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す断面図である。
【
図12】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図13】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図14】本開示のいくつかの実施例による、患者の目の中にあるイン・サイチュの眼内排水デバイスを示す断面図である。
【
図15】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイス内に配設された眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図16】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図17】本開示のいくつかの実施例による、曲線プロファイルの眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図18】本開示のいくつかの実施例による、直線プロファイルの眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図18A】追加の保定部材を有する
図18の眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図20】インサータ・デバイスの針の中に配設された
図18の眼内排水デバイスを示す正面図である。
【
図21】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイスを示す三次元図である。
【
図23】インサータ・デバイスの針の中に配設された
図21の眼内排水デバイスを示す正面図である。
【
図24A】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図24B】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図24C】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図24D】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図24E】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図25A】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図25B】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図25C】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図25D】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図25E】本開示のいくつかの実施例による、インサータ・デバイスを使用した埋め込み処置を示す断面図である。
【
図26】本開示のいくつかの実施例によるインサータ・デバイスを示す上面図である。
【
図27A】本開示のいくつかの実施例による、手術のある段階におけるインサータ・デバイスを示す切欠図である。
【
図27B】本開示のいくつかの実施例による、手術のある段階におけるインサータ・デバイスを示す切欠図である。
【
図27C】本開示のいくつかの実施例による、手術のある段階におけるインサータ・デバイスを示す切欠図である。
【
図27D】本開示のいくつかの実施例による、手術のある段階におけるインサータ・デバイスを示す切欠図である。
【
図28A】本開示のいくつかの実施例による、手術のある段階におけるインサータ・デバイスを示す側面図である。
【
図28B】本開示のいくつかの実施例による、手術のある段階におけるインサータ・デバイスを示す側面図である。
【
図28C】本開示のいくつかの実施例による、手術のある段階におけるインサータ・デバイスを示す側面図である。
【
図28D】本開示のいくつかの実施例による、手術のある段階におけるインサータ・デバイスを示す側面図である。
【
図29A】本開示のいくつかの実施例による、埋め込み処置中のインサータ・デバイスを示す概略図である。
【
図29B】本開示のいくつかの実施例による、埋め込み処置中のインサータ・デバイスを示す概略図である。
【
図29C】本開示のいくつかの実施例による、埋め込み処置中のインサータ・デバイスを示す概略図である。
【
図30A】本開示のいくつかの実施例によるインサータ・デバイスを示す三次元図である。
【
図30C】把持部材を有する
図30Aのインサータ・デバイスを示す部分平面図である。
【
図31A】本開示のいくつかの実施例によるインサータ・デバイスを示す三次元図である。
【
図32】本開示のいくつかの実施例によるインサータ・デバイスを示す三次元図である。
【
図33】本開示のいくつかの実施例によるインサータ・デバイスを示す三次元図である。
【
図34A】本開示のいくつかの実施例による眼内排水デバイス・アセンブリを示す三次元図である。
【
図34C】
図34Aの眼内排水デバイス・アセンブリの排水デバイスを示す三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の詳細な説明では、主題の技術の理解を提供するため、具体的な詳細について説明する。しかしながら、これらの具体的な詳細のいくつかを有さずに主題の技術が実施されてもよいことが、当業者には明白となるであろう。他の例では、良く知られている構造及び技術は、主題の技術の妨げとならないよう、詳細には示されていない。
【0005】
眼内埋め込みシステム
いくつかの実施例によれば、例えば
図1に示されるように、インサータ・デバイス250を使用して、眼内排水デバイス100を患者の目101に埋め込みすることができる。
【0006】
図1に示されるように、例えば、インサータ・デバイス250などの医療用又は外科用器具は、外科医の手又は他のオペレータによって把持されるように構成されたハンドル254と、ハンドル254上に配設され、インサータ・デバイス250内の内部メカニズムを作動させて、眼内排水デバイス100をインサータ・デバイス250の遠位端から解放するように構成されたアクチュエータ252と、を含んでもよい。インサータ・デバイス250の遠位端は、目101の組織を穿刺するように、並びに/或いは解放前の排水デバイス100を収容するように構成されてもよい、針253を含むことができる。
【0007】
アクチュエータ252は、オペレータがアクチュエータを操作し排水デバイス100を解放できるようにする、任意の適切なメカニズムとして実現することができる。アクチュエータ252としては、例えば、押しボタン、スライダ、ツイスト・スリーブ、接触感知式電子ボタン、及び/又はインサータ・デバイス250内の内部メカニズムを作動させるのにオペレータが操作することができる、他の任意の適切な構成要素を挙げることができる。アクチュエータ252によって作動させると、内部メカニズムは、排水デバイス100を意図される標的部位(例えば、患者の目101の中の眼内部位)の適所に残すように、排水デバイス100を針253から遠位方向に押し出すことによって、並びに/或いは針253又は別のスリーブを排水デバイス100の周りで近位方向に後退させることによって、排水デバイス100を解放するように構成することができる。
【0008】
いくつかの実施例によれば、例えば
図1に示されるように、眼内排水デバイス100などの眼内デバイスは、本体102とチューブ106とを含んでもよい。チューブ106は管腔を有してもよく、
図1に示されるように、チューブ106は、本体102に結合されるように構成された近位端を有することができる。チューブ106は、例えば、一個片として本体102と一体的に形成することができ、又はチューブ106は、本体102に挿入されるか若しくは別の方法で(例えば、本体102の遠位端で)取り付けられて本体102に流体結合する、別部品として製造することができる。チューブ106の遠位端は、患者の内腔(例えば、目101の前眼房)に挿入して、内腔に流体結合させることができる。チューブ106は、流入フローの流路(例えば、チューブ106の遠位端に入る流路)を有する入力チューブとして実現されてもよい。本明細書では、排水デバイス100がチューブ106及び本体102の両方を含む実例について記載しているが、排水デバイス100がチューブ106のみ又は本体102のみを含む、他の実施例が想到される。
【0009】
いくつかの実施例によれば、本体102及び/又はチューブ106などの排水デバイス100の構成要素は、可撓性であってもよく、シリコーン及び/又は親水性若しくは疎水性アクリルなど、生体適合性の可撓性材料から作られてもよい。それに加えて又はその代わりに、様々な他の材料のいずれかが適切であり得ることが想到される。更に、本明細書では、本体102及びチューブ106が可撓性であり、可撓性の生体適合性材料から作られる実例が記載されるが、剛性材料による他の実現例が想到される。
【0010】
いくつかの実施例によれば、チューブ106及び/又は本体102は、低眼圧(過度な房水の排出によって起こり得る眼合併症の可能性を増加させる、低い眼内圧)のリスクを低減させる特徴を含むことができる。例えば、チューブ106及び/又は本体102は、弁、流量制限管腔、及び/又は低眼圧のリスクを低減する他のメカニズムを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施例によれば、例えば
図2に示されるように、排水デバイス100は、例えば、緑内障又は他の症状の治療のためにIOPを低減させることができる房水シャント(aqueous shunt)をもたらすため、患者の目101の強膜113と結膜114との間に外科的に埋め込みされてもよい。いくつかの実施例によれば、排水デバイス100は、インサータ・デバイス250を使用して、また眼外手技(ab externo procedure)を使用して、目101の前眼房115に埋め込みされてもよい。例えば、埋め込みの間、針253が強膜113を通して挿入されて、強膜路(scleral tract)を形成してもよく、針253の遠位先端が、強膜113を通して前眼房115に挿入されてもよい。次に、針を後退させるか又は別の形で排水デバイス100を解放し、埋め込みされた排水デバイス100の部分を強膜路内に残すように、アクチュエータ252が操作されてもよい。インサータ・デバイス250が除去された後、埋め込みされたチューブ106の一部分は、強膜路を通って延在し、前眼房115を結膜ポケット又はテノン嚢下ポケットに接続してもよい。排水デバイス100は、眼房水又は他の流体がデバイス100を通って(例えば、矢印111によって示されるような流体フロー方向に)流れ、1つ又は複数の出口ポートから外に出て、(例えば、強膜上静脈系を介して)周囲組織に吸収されるように、埋め込みされてもよい。他の実施例では、デバイスは、透明角膜切開を通して前眼房にアクセスし、針を適切な四分円へと前進させ、強膜岬付近の角度を穿刺し、導入器(例えば、インサータ・デバイス250)をテノン嚢下空間内へと前進させてから、導入器を後退させ、排水デバイスを適所に残して、流体を前眼房からテノン嚢下空間へと排水することを伴う、眼内アプローチによって埋め込みされてもよい。同様のアプローチが、眼内又は眼外アプローチから、排水デバイスを上脈絡膜腔に入れるか、或いは1つの眼区画を別の眼区画に接続する、又は1つの眼区画を、経結膜、経角膜縁(translimbal)、若しくは経角膜流出経路を含む外眼空間(extraocular space)に接続するのに使用されてもよい。
【0012】
図2は、本体102が患者の目の強膜113と結膜114との間に配設されるようにして、患者の目101の中にイン・サイチュで配設された、眼内排水デバイス100の断面図を概略的に示している。強膜113と結膜114との間の領域は、排水デバイスの本体部分102を保定する結膜ポケットを形成することができる。いくつかの実施例によれば、本体102は、強膜113と結膜114との間のテノン嚢下空間に埋め込みされてもよい。図示されるように、チューブ106は、目の前眼房115(角膜117、レンズ118、及び虹彩119によって部分的に境界が定められる)内の眼房水が、(矢印111によって示されるように)チューブ106の管腔に流れ込むことができるように、強膜113を通って延在してもよい。
図2に示されるように、デバイス100を通って流れた流体は、デバイス100の上及び/又は周りに、患者の皮膚に吸収され得る小疱121を形成することがある。このように、緑内障の症状と関連付けられた前眼房115内の過剰な流体圧力が緩和されてもよい。
【0013】
排水デバイス
いくつかの実施例によれば、例えば
図3に示されるように、排水デバイス100は、入口ポート125と複数の出口ポート127とを有することができる。入口ポート125は、目の前眼房からの流入眼房水など、流入流体を受け入れるように構成することができ、出口ポート127は、小疱又は他の患者組織への流出眼房水など、流出流体を放出するように構成することができる。入口ポート125は、例えば、チューブ106の遠位端に配設することができ、前眼房に接触して眼房水を受け入れるように構成することができる。
【0014】
排水デバイス100は、管腔又は他の流体経路(
図3には図示なし)がデバイス100を通って延在し、入口ポート125を様々な出口ポート127に流体接続することができる、マニホルドとして実現することができる。ポート及び管腔は、入口ポート125が、複数の出口管腔、又は複数の余剰の出口ポート127で終端する他の出口流体経路へと分岐する入口管腔に接続するように、構成することができる。管腔はそれぞれ、少なくとも部分的に排水デバイス100の内部を通って延在する、実質的に管状の流体経路を提供してもよい。複数の出口ポート及び流体経路を使用することで、例えば、出口ポート127のうちいずれか1つ又は複数が(例えば、患者組織によって)阻害された場合に、流体の様々な出口点を提供することができる。また、複数の出口ポートを使用することで、流体がテノン嚢下空間並びに結膜下空間に同時に流れ込むことを可能にしてもよい。例えば、出口ポート127は、目に埋め込みされたとき、出口ポート127の1つ若しくは複数がテノン嚢下空間に接触するか又は別の形で流体が流れ込むことができるように、また出口ポート127のうち他の1つ若しくは複数が結膜下空間に接触するか又は別の形で流体が流れ込むことができるように、構成されてもよい。いくつかの実施例によれば、入口管腔は、入口管腔が主に流量を制限してIOPを調整することができるように、複数の出口管腔及び出口ポート127に達する前に流体フローを送り込むための単一の流入チャネルを提供してもよい。しかしながら、様々な実施例では、出口管腔のサイズ及び数は排水デバイスの圧力低下も規定することがある。いくつかの実施例によれば、例えば、入口管腔は、出口管腔の1つ、いくつか、又は全てよりも小さい直径を有して、入口管腔が流体フローを主に制限することができるようにしてもよい。しかしながら、入口及び出口管腔が、流体が排水デバイス100を通って流れることができるようにする任意の適切な形で、同じであるか又は互いに異なることができる任意の適切な直径を有する、他の実現例が想到される。
【0015】
いくつかの実施例によれば、入口管腔を、出口ポートに接続された出口管腔の1つ、いくつか、又は全てに対して横断方向で配向することができる。例えば、出口管腔の1つ、いくつか、又は全てが、流体フローの方向を参照して、入力管腔の方向に対して約90°(垂直)~45°の範囲内で配向されてもよい。かかる45°の配置の一例は、後述する
図9A~9Cにも示されている。配向の例について記載しているが、管腔又は流体経路に対して他の角度及び配向が使用されてもよい、他の実現例が想到される。
【0016】
いくつかの実施例によれば、本体102の外表面を、ポリビニル・アルコール又はポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)など、生分解性材料でコーティングすることができる。生分解性材料は、初期術後治癒期間の間に、穴を初期に閉塞し、流体フローがデバイスを通るのを防ぐように、出口ポート127の全てなど、本体のポートを被覆するようにコーティングされてもよい。時間に伴い、コーティングが劣化して、ポート及び他の外表面の特徴を露出させ、初期術後期間が経過した後に、流体経路を開いて排水デバイス100を通って流体が排水されることがある。いくつかの実施例では、PLGA又は他の生分解性コーティングは、ステロイド若しくはラパマイシンなど、抗線維化又は抗炎症分子を含んでもよい。いくつかの実施例では、デバイスの1つ又は複数の管腔は親水性材料でコーティングされて、流体伝達を促進する。他の実施例では、管腔及び/又はデバイス全体がヘパリン又は他の材料でコーティングされて、イン・サイチュでのデバイス内又はデバイス上の血栓形成を減少させる。
【0017】
排水デバイス100が複数の出口を含む実例について記載しているが、1つのみの出口ポート又は1つのみの管腔が含まれる、他の実現例が想到される。
【0018】
いくつかの実施例によれば、例えば
図3に示されるように、本体102をチューブ106の近位側に配設し、チューブ106に対してサイズを拡張させることができる。したがって、チューブ106は、本体領域102よりも全体的に幅が狭く本体102の遠位側に配設される、デバイス100のネック領域を提供することができる。いくつかの実施例によれば、入口ポート125は、少なくとも部分的にデバイス100の遠位部分にあるネック領域を通って延在する、入口管腔に結合されてもよい。それに加えて又はその代わりに、複数の出口ポート127は、複数の出口管腔、又はそれぞれ入口管腔から分岐し、デバイスの近位部分において少なくとも部分的に本体102を通って延在する、他の出口流体経路に結合されてもよい。埋め込みの際、本体102を、例えば、結膜ポケット内で保定し、強膜の外表面及び/又は結膜の内表面などの周囲組織に隣接させることができる。
【0019】
いくつかの実施例によれば、例えば
図3に示されるように、短軸及び長軸を規定するプレート状構造を備えた本体102を実現することができ、それらの軸は両方とも、入口ポート125における流入流体フローの方向によって規定される、排水デバイス100の長手方向軸を横断してもよい。長軸の方向での本体102のサイズを短軸の方向での本体102のサイズよりも大きくして、プレート状構造をもたらしてもよく、それによって結膜ポケット内での小疱形成が促進されることがある。埋め込みの際、本体102は、長軸が強膜の表面に対して横断方向に延在し、短軸が強膜表面に対して法線方向に延在するように、ポケットに入れてもよい。しかしながら、本体102がプレート状構造を有さない、他の実現例が想到される。例えば、本体102は、チューブ106に対して拡張させることができる、外径又は外周がチューブ106の外径又は外周よりも大きい、他の任意の適切な形状又はサイズを有することができる。
【0020】
いくつかの実施例によれば、本体102の外表面は、上面136と、上面の反対側の下面(
図3には図示なし)とを含むことができる。側壁面137が上面と下面との間に配設されてもよい。いくつかの実施例によれば、下面は、例えば、凹状形状が強膜表面の凸状形状に適合するように、凹状にされ、強膜表面に面することができる。上面136は、例えば、凸状表面が結膜表面の凹状内部形状に適合するように、凸状にされ、結膜に面することができる。上面及び/又は下面が平坦にされるか、或いは他の輪郭の幾何学形状を有することができる、他の実現例が想到される。
【0021】
いくつかの実施例によれば、例えば
図3に示されるように、出口ポート127は、本体102の側壁面137及び近位端に沿って分配することができる。出口ポートが本体102の側壁及び/又は遠位端に沿って分配される実例について記載しているが、出口ポート127を、全体として、上面136、下面、側壁面137、及び/又はデバイス100の近位端にある近位面のうちいずれか1つ若しくは複数に配設することができる、他の実現例が想到される。いくつかの実施例によれば、出口ポート127を、デバイス100の外表面上の複数の位置にわたって分配して、出口ポート127の全てを阻害する局所化された閉塞の可能性を低減することができる。
【0022】
いくつかの実施例によれば、例えば
図3に示されるように、外表面は、微細溝141、微細溝142、及び/又は微細溝143などの溝を含むことができる。
図3に示されるように、微細溝141は、本体102に配設され、外側上面136及び/又は下面に沿って延在することができる。微細溝142は、本体102に配設され、側壁面137に沿って延在することができる。
図3に示される微細溝142など、微細溝のいくつか又は全ては、例えば、出口ポート127の間の領域で延在することができる。
図3に示されるように、微細溝141及び/又は微細溝142は、流入流体フローの方向と実質的に同じであってもよい長手方向で、互いに実質的に平行に延在することができる。微細溝パターン141及び/又は142は、例えば、埋め込み後の時間に伴って、目の治癒反応を助け、並びに/或いはデバイスの機能を改善してもよい。例えば、いくつかの実施例では、微細溝141及び142などの溝を含む表面パターニングを使用して、埋め込みされたデバイスに対する細胞若しくは細菌付着を強化、即ち防止することができる。それに加えて又はその代わりに、微細溝パターンは、細胞を組織化してインプラントに沿って制御された位置合わせにするのを助けるために提供されてもよい。図示される実例では、例示目的のため、数本のみの微細溝が示されている。しかしながら、様々な実現例では、例えば、上面136、下面、側壁面137、及び/又は他のいずれか所望の表面などの表面を実質的に被覆するため、1つ、2つ、3つ、4つ、数十、数百、又は数千の微細溝が形成されてもよい。
【0023】
図3に示されるように、微細溝143は、ネック領域に含まれ、本体領域102の微細溝141及び/又は微細溝142の遠位側に配設されてもよい。微細溝143は、微細溝141及び/又は微細溝142に対して実質的に垂直に延在してもよい。例えば、微細溝143は、流体フローの方向に実質的に垂直な方向で、チューブ106の周りで円周方向に延在してもよく、微細溝141及び/又は142は、流体フローの方向に実質的に平行に、本体102に沿って長手方向に延在してもよい。いくつかの実施例によれば、垂直方向の微細溝143は、眼内部位に埋め込みする際に、デバイスの保定を容易にし、デバイスの転位を最小限に抑える、保定機構として実現されてもよい。いくつかの実施例では、垂直方向の微細溝143は、微細溝141及び/又は142よりも比較的大きくてもよい。例えば、各微細溝又は微細溝パターンは、等間隔の列で形成されてもよい。各微細溝は、幅、深さ、及び隣接する微細溝からの間隔を有してもよい。いくつかの実施例によれば、微細溝141及び/又は142はそれぞれ、約10~40ミクロンの範囲の、幅、深さ、及び/又は隣接する微細溝からの間隔を有してもよい(例えば、1つの実現例では、それぞれ約25ミクロンに等しい)。対照的に、微細溝143はそれぞれ、微細溝141及び/又は142よりも約1~2桁大きい範囲など、約40ミクロンよりも大きい幅、深さ、及び間隔を有してもよい(例えば、1つの実現例では、約635ミクロンに等しい)。特定の寸法に関する実例について記載しているが、寸法がこれらの範囲外である他の実現例が想到されることが、理解されるべきである。いくつかの実施例によれば、微細溝パターンは、排水デバイス100の表面のレーザー・パターニングによって、又は表面パターンを作成する他の任意の適切な方法によって形成されてもよい。
【0024】
いくつかの実施例によれば、例えば
図4~7に示されるように、排水デバイスのチューブ106などの排水デバイス100は、円周方向の微細溝143の代わりに、又はそれらに加えて、1つ若しくは複数の保定機構を含んでもよい。保定機構は、例えば、排水デバイス100を埋め込み部位で保定するのを容易にし、並びに/或いは縫合糸を必要とせずに排水デバイス100の転位を最小限に抑えてもよい。
【0025】
いくつかの実施例によれば、例えば
図4に示されるように、1つ又は複数の保定フィン144が、排水デバイス100のチューブ領域106に含まれてもよい。
図4に示されるように、保定フィン144は、本体102の近位端に向かって角度を付けた返しとして実現されてもよい。近位方向の配向は、患者組織内又は組織間に遠位方向で挿入するのを容易にしてもよい。それに加えて又はその代わりに、近位方向に角度を付けた配向は、埋め込み後に排水デバイス100を前眼房から除去することができる形で、埋め込みされたデバイスが近位方向に転位する傾向を低減するのに役立つことができる。
【0026】
いくつかの実施例によれば、例えば
図5に示されるように、チューブ106の遠位端は、デバイス100の保定を容易にするオリフィス取付部145を含んでもよい。オリフィス取付部145の遠位端は、遠位端が目の前眼房に挿入されたときに保定を容易にするように、径方向外側に広がった部分を含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施例によれば、例えば
図6に示されるように、本体102は、砂時計形状などの輪郭プロファイルを含んでもよい。砂時計形状は、ネック領域を含んでもよく、ネック領域の対向端部におけるデバイス100の部分は、外側に拡張されるか、又は比較的狭いネック部分と比較して増加した直径を有する。例えば、本体102がネック領域よりも大きいサイズを有してもよいだけでなく、ネック領域の反対側にあるチューブ106の遠位先端も、ネックよりも大きいサイズを有し、ネックに対して拡張されてもよい。いくつかの実施例によれば、例えば
図6に示されるように、チューブ106の拡張された遠位先端は、ネックの反対側にある本体102の最大部分よりも(例えば、直径又は断面積が)小さくてもよい。
【0028】
いくつかの実施例によれば、例えば
図7に示されるように、チューブ106は、埋め込みされた本体の保定を容易にする保定用の隆起146を含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施例によれば、例えば
図8A~8Bに示されるように、非常に小さいマニホルド構造であってもよい眼内排水デバイス100の製造は、二部分構造を使用して遂行することができる。
図8A及び8Bに示されるように、排水デバイス100は、遠位区画161と近位区画162とを含むことができる。遠位区画161は、例えば、チューブ106に相当することができ、近位区画162は、例えば、本体102に相当することができる。遠位区画161の近位端は、近位区画162の遠位端と接合することができる。遠位区画161は、遠位区画の近位端で露出した内部ポート166に流体結合される、入口管腔165を含むことができる。近位区画162は、近位区画162の遠位端で露出した複数の内部ポート169に流体結合される、複数の出口管腔168を含むことができる。
図8A及び8Bに示されるように、例えば、複数の内部ポート169を近位区画162の遠位端に対して窪ませて、遠位区画161及び近位区画162が互いに接合されたとき、入口管腔165と複数の出口管腔168との間に分配チャンバ170を形成できるようにすることができる。他の実現例では、内部ポート166を遠位区画161の近位端に対して窪ませてもよく、又は内部ポート166及び複数の内部ポート169の両方をそれぞれの端部に対して窪ませて、互いに接合されたときに分配チャンバ170を形成するようにしてもよい。
【0030】
いくつかの実施例によれば、例えば
図9A~9Cに示されるように、排水デバイス100、又は本体102などの排水デバイス100の構成要素は、複数管腔又はマニホルド構造を形成するように、可溶性コア172(例えば、水溶性材料で作られたコア)を使用して製造することができる。例えば、
図9Aに示されるように、可溶性コア172は、最終構成における所望の入口管腔に相当することができる第1の延在部材173と、最終構成における所望の複数の分岐した出口管腔に相当することができる、第1の延在部材から分岐する複数の第2の延在部材174とを有するパターンに形成することができる。第2の延在部材は、例えば、第1の延在部材に対して45~90°の角度(
図9Aでは45°)で配向されるか、又は他の任意の所望のマニホルド幾何学形状であってもよい。
図9Bに示されるように、例えば、本体102又は排水デバイス100全体に相当することができる部分131を、可溶性コア172の上に成型することができる。成型部分131は、コア172を溶解するのに使用されるのと同じ溶媒に対して可溶性ではない、任意の適切な材料であってもよい。例えば、コア172は水溶性材料であってもよく、成型部分131は非水溶性材料で作られてもよい。
図9Cに示されるように、例えば、可溶性コア172を溶媒(例えば、水)で溶解して残し、そのコアを、最初のコア172のパターンに相当する入口管腔165及び複数の出口管腔168を含むマニホルド構造と置き換えてもよい。
【0031】
いくつかの実施例によれば、例えば
図10Aに示されるように、複数管腔構造は、複数の小さいチューブ175を横に並べて互いに結合することによって形成されてもよい。横並びの幾何学形状は、例えば、排水デバイス100の本体102におけるプレート状の幾何学形状を形成するのも容易にしてもよく、その場合、チューブ175をプレート状本体の長軸に沿って横に並べて配置することができる。
【0032】
いくつかの実施例によれば、例えば
図10Bに示されるように、本体領域102などの排水デバイス100は、複数の多角形132を含むことができる。多角形132は、例えば、多角形132の間の介在空間に複数の出口管腔168(例えば、流体経路)を形成するため、規則的な間隔で直列に配置することができる。この実例では、流体経路は必ずしも、構造を通って延在する管腔又は管状経路の形態でなくてもよい。
【0033】
排水デバイス100の構造の様々な実例について記載しているが、他の方法を使用して排水デバイス100を製造できることが想到される。
【0034】
いくつかの実施例によれば、例えば
図11に示されるように、排水デバイス100は、流体を搬送する経路となる管腔176を有するチューブ106を含んでもよい。管腔176の中にスポンジ基質が配設されて、流量制限を容易にしてもよい。本明細書に記載するような複数管腔構造の代わりに、又はそれに加えて、スポンジ基質を有するチューブ106が使用されてもよい。
【0035】
いくつかの実施例によれば、例えば
図12に示されるように、排水デバイス100は、保定機構となる円周方向の波形を提供することができる、コイルを備えた端部を有するチューブ106を含んでもよい。それに加えて又はその代わりに、コイルは、チューブ106がインサータ・デバイス250内(例えば、針253内)に収容されたときは直線のままであるが、インサータ・デバイス250から排出された(例えば、針253から排出された)ときに曲がって曲率に適合することができるように、強膜の曲率と適合するように構成された、所定の曲率を有する形状記憶材料で構成されてもよい。
【0036】
いくつかの実施例によれば、例えば
図13に示されるように、チューブ106は円形の断面形状を有してもよい。それに加えて又はその代わりに、チューブ106は、D字形、楕円形など、様々な他の断面形状のいずれかを有してもよい。
【0037】
いくつかの実施例によれば、例えば
図13に示されるように、チューブ106は、第1の保定部材180、及び第1の保定部材180の近位側に配設することができる第2の保定部材181など、複数組の保定機構を含んでもよい。
図13に示されるように、例えば、第1の保定部材180は、チューブ106の外表面から径方向外側に突出する、1つ又は複数のフィンを含むことができる。フィンは、その近位側に、埋め込み処置中及び/又は埋め込み後、患者組織及び/又はデバイス構成要素に当接して、チューブ106の近位方向の後方移動を妨げるように構成することができる、停止面183を含むことができる。それに加えて又はその代わりに、フィンの遠位側は、埋め込みの間、患者組織に接して摺動し、並びに/或いは患者組織の開口部を拡張して、患者組織を通してチューブ106又はチューブ106の遠位端を展開するのを容易にすることができる、傾斜面184を含むことができる。
図13に示されるように、例えば、傾斜面184は、チューブ106の外表面に対して鈍角を形成することができる。それに加えて又はその代わりに、停止面183は、(例えば、チューブ106の外表面に対して垂直又は鋭角を形成するように)90°以下の角度を有することができる。
図13は、第1の保定部材180がチューブ106の対向面に配設された一対の別個のフィンを含む、実例を示している。しかしながら、1つ若しくは複数のフィンが任意の適切な数(例えば、1つのフィン、2つのフィン、3つのフィン、5つのフィン、10個のフィンなど)含まれる、又はフィンがチューブの周りで円周方向に延在するように連続的に作られてもよい、他の実現例が想到される。停止面183及び傾斜面184が実質的に平坦である実例について記載しているが、これらの表面のうち任意の1つ又は複数が曲線状である、並びに/或いは他の幾何学形状を有することができる、他の実現例が想到される。更に、特定の角度及び範囲について記載しているが、これらの表面がこれら特定の角度又は範囲以外の角度を形成してもよい、他の実現例が想到される。
【0038】
いくつかの実施例によれば、例えば
図13に示されるように、第1の保定部材180の近位側に配設された第2の保定部材181は、円周方向に延在する隆起など、摩擦増強機構を含むことができる。
【0039】
図14は、患者の目101に埋め込みされたときの、
図13に示される実現例による排水デバイス100がイン・サイチュで示されている、目101の断面図である。
図14に示されるように、例えば、排水デバイス100のチューブの遠位端は、患者の目101の前眼房115内に配設される。排水デバイス100のチューブは、第1の保定部材180(例えば、フィン)を前眼房115内に配設することができるように、強膜路186を通して配設することができる。第1の保定部材の停止面183などの近位側は、チューブ106が前眼房115に対する流体結合を維持するように、チューブの近位方向移動又は転位を妨げるため、線維柱帯187などの患者組織に隣接して当接させることができる。第1の保定部材180の傾斜面184などの遠位側は、チューブが患者組織の開口部を通って摺動できるようにしてもよい。
【0040】
図14に示されるように、例えば、第2の保定部材181を、前眼房115の外側に配設し、強膜113の強膜組織に隣接させて保定することができる。第2の保定部材181は、例えば、第2の保定部材181と強膜表面との間の摩擦を増強することによって、保定を容易にしてもよい。
図14に示されるように、排水デバイス100が埋め込みされると、第2の保定部材を強膜路186内で保定することができる。それに加えて又はその代わりに、第2の保定部材は、結膜114と強膜113との間の結膜ポケット内の強膜組織など、他の組織に隣接させて保定することができる。
【0041】
いくつかの実施例によれば、例えば
図15に示されるように、それに加えて又はその代わりに、保定フィンなどの第1の保定部材180が、埋め込み処置中に排水デバイス100を展開する間、チューブ106の保定を容易にすることができる。例えば、停止面183は、針253が遠位方向に動く間、排水デバイスが針内に収容されたままであることができるように、インサータ・デバイス250の針253の遠位側に当接することができる。針の遠位方向の動きは、強膜113を通して前眼房115内へと針253を前進させるにつれて、強膜路186を形成するのに使用することもできる。排水デバイス100は、例えば、第1の保定部材180の近位面が患者組織に当接してチューブ106を適所で保持した状態で、針253を後退させることによって、インサータ・デバイス250から排出させることができる。埋め込み処置の間、フィンは、針253の遠位先端に含まれるそれぞれのスロット201内に配設することができる。スロット201は、チューブ106を針253の遠位端から突出させることなく、第1の保定部材180が針253の遠位側に当接することを可能にしてもよい。しかしながら、スロット201が省略される、他の実現例が想到される。
【0042】
いくつかの実施例によれば、例えば
図16に示されるように、チューブ106は、複数管腔本体を必要とすることなく、排水デバイスを提供してもよい。かかる実施例では、チューブ106は、例えば、結膜ポケット内へと排水する、近位端で終端する単一管腔を備えたシャントを提供してもよい。いくつかの実施例によれば、例えば
図16に示されるように、近位端は、結膜を強膜から分離するのを助けることができる、プレート189を含むことができる。それに加えて又はその代わりに、プレート189は小疱を維持するのを助けてもよい。プレート189は、例えば、
図16に示されるようなシリコーンのリングによって実現されてもよい。プレート189は、例えば、チューブの片側に配設され、流体フローが中に含まれる内部管腔を有さない、実質的に中実又はモノリシックの構造であってもよい。或いは、プレート189が省略される、他の実現例が想到される。
【0043】
いくつかの実施例によれば、排水デバイス100aが提供される。例えば
図17に示されるように、排水デバイス100aは、本体102aとチューブ106aとを含む曲線プロファイルを有してもよい。曲率は、例えば、直径2.54mmの曲率など、目の輪郭に合うように構成されてもよい。チューブ106aのパターン化範囲105aは、複数の保定部材181aを含んでもよい。例えば、パターン化範囲105aは、排水デバイス100aが目101への挿入後に前方若しくは後方に移動するのを防ぐか又は妨げるように、排水デバイス100aを目101の強膜113内で保定するように構成された、大きい垂直方向パターンであってもよい。複数の出口ポート127aが、組み合わされた本体102a及びチューブ106aに配設される。例えば、
図17に示されるように、1つの出口ポート127aがチューブ106aの前端に配設されてもよく、3つの出口ポート127aが本体102aの各側に配設されてもよい。入口ポート125aは本体102aの内部を通して配設される。上述したように、本体102aの出口ポート127aは、
図17に示されるように、入口ポート125aに垂直に、又はある角度(例えば、45°)で配設されてもよく、チューブ106aの前端の出口ポート127aは、入口ポート125aと一直線であってもよい。本体102aは、本体102a内に配設された出口ポート127aを保護するように構成された、1つ又は複数のスロット150a(例えば、堀)を含んでもよい。例えば、出口ポート127aのいくつかは、組織が成長して場合によっては個々の出口ポート127aを閉塞するにつれて、スロット150aがスロット又は堀150aに沿った排水路となるように、スロット150a内に配設されてもよい。
【0044】
いくつかの実施例によれば、排水デバイス100bが提供される。例えば
図18~20に示されるように、排水デバイス100bは、本体102bとチューブ106bとを含む。チューブ106bのパターン化範囲105bは、複数の保定部材180b及び181bを含んでもよい。例えば、保定部材180bは、ある角度で外側に突出する径方向フィンであってもよく、保定部材181bは、垂直方向で外側に延在するリブであってもよい。リブ181bの数及びサイズは特定の特性に合わせて提供されてもよい。例えば、数が少なくサイズが大きいリブ181bは、製造を簡単又は効率的にすると共に、パターン化範囲105b(例えば、保定機構)の一体性を増大させることができる。保定部材180b及び181bは、外側に延在して、本体102bの外側プロファイル(例えば、幅、直径)に合うように構成されてもよい。パターン化範囲105bは、排水デバイス100bが目101への挿入後に前方若しくは後方に移動するのを防ぐか又は妨げるように、排水デバイス100bを目101の強膜113内で保定するように構成されてもよい。例えば、保定部材180bは、経路内又は目101の前眼房115の直ぐ内側に収まるように構成されてもよい。保定部材181bは、排水デバイス100bの長手方向軸に沿って圧縮可能であってもよい。例えば、保定部材181bは、針253内に配設された状態で圧縮されることによって、排水デバイス100bの長さを短縮してもよく、針253を挿入し後退させた後、拡張するか又は跳ね返って非圧縮状態に戻ってもよい。
【0045】
図18Aに示されるように、可動保定部材185が、保定部材181bの始まり及び/又は終わりに隣接して、本体102b及び/又はチューブ106b上に配設されてもよい。可動保定部材185は、対応する本体102b若しくはチューブ106bと一体の可撓性アーム、又は対応する本体102b若しくはチューブ106bに結合された別個の構成要素であってもよい。可動保定部材185は、排水デバイス100bが挿入デバイス内に配設された状態で、内側に押し潰されて(例えば、本体102b又はチューブ106bを締め付けて)もよく、可動保定部材185は、排水デバイス100bを強膜113内で更に保定するために、目101に挿入した後に跳ね返って開いて(例えば、穿開を横切る強膜厚さのどちらかの側で跳ね返って開いて)もよい。
【0046】
図18に示されるように、1つの出口ポート127bがチューブ106bの前端に配設されてもよく、3つの出口ポート127bが本体102bの各側に配設されてもよい。入口ポート125bは、本体102bの内部を通して配設される。上述したように、本体102bの出口ポート127bは、
図18に示されるように、入口ポート125bに垂直に、又はある角度(例えば、45°)で配設されてもよく、チューブ106bの前端の出口ポート127bは、入口ポート125bと一直線であってもよい。
【0047】
図20に示されるように、排水デバイス100bは、インサータ・デバイス250の針253内に嵌合するように構成される。保定部材180b及び181bは本体102bの外側プロファイルを超えないようにサイズ及び形状が決められるので、針253のサイズは、本体102bのプロファイルに基づいて選択されてもよい。排水デバイス100bは、
図18及び19に示される直線プロファイルで、又は
図17に示される曲線プロファイルで構成されてもよい。
【0048】
いくつかの実施例によれば、排水デバイス100cが提供される。例えば
図21~23に示されるように、排水デバイス100cは、本体102cとチューブ106cとを含む。チューブ106cのパターン化範囲105cは、複数の保定部材181cを含んでもよい。例えば、保定部材181cは、本体102cの外側プロファイル(例えば、幅、直径)を超えて外側に延在する、ツイスト状のねじであってもよい。パターン化範囲105cは、排水デバイス100cが目101への挿入後に前方若しくは後方に移動するのを防ぐか又は妨げるように、排水デバイス100cを目101の強膜113内で保定するように構成されてもよい。例えば、保定部材181cは、目101の組織を伸展させ、それによって排水デバイス100cを強膜路内に効率的に格納し封止するように構成されてもよい。
【0049】
図21に示されるように、1つの出口ポート127cがチューブ106cの前端に配設されてもよく、3つの出口ポート127cが本体102cの各側に配設されてもよい。入口ポート125cは、
図22に示されるように、本体102cの内部を通して配設される。上述したように、本体102cの出口ポート127cは、入口ポート125cに垂直に、又はある角度(例えば、45°)で配設されてもよく、チューブ106cの前端の出口ポート127cは、入口ポート125cと一直線であってもよい。
【0050】
図22に示されるように、排水デバイス100cは、インサータ・デバイス250の針253内に嵌合するように構成される。保定部材181cは本体102cの外側プロファイルを超えるようにサイズ及び形状が決められるので、針253のサイズは、保定部材181cのプロファイルに基づいて選択されてもよい。排水デバイス100cは、
図21及び22に示される直線プロファイルで、又は
図17に示される曲線プロファイルで構成されてもよい。
【0051】
排水デバイス100、100a、100b、100cはいずれも、本体102、102a、102b、102c若しくはチューブ106、106a、106b、106c上に配設されるか又はそれらと一体的に形成された、配向機構を含んでもよい。配向機構は、排水デバイス100、100a、100b、100cの一端又は他端(例えば、上若しくは下、近位側若しくは遠位側)を示すことによって、排水デバイス100、100a、100b、100cが目101に挿入された後の配向を視覚的に指示する、視覚インジケータ(例えば、色、テクスチャ、パターン)であることができる。
【0052】
埋め込み処置
上述したように、インサータ・デバイス250などの導入器具を使用して、眼内排水デバイス100を眼外又は眼内から目の様々な位置に埋め込みすることができる、様々な実現例が想到される。
【0053】
いくつかの実施例によれば、例えば
図24A~24E及び
図25A~25Eに示されるように、埋め込み方法は、インサータ・デバイス250の針253が結膜切開202を通して、また強膜113を通して挿入されて、強膜113に穿刺経路186を形成する、眼外アプローチを用いることができる(穿刺経路186は、本明細書では、「強膜路」と呼ばれる場合もある)。針253が強膜路186を形成した後、針253の遠位先端が前眼房115に入って、眼房水を前眼房115から排水するための穿開を形成することができる。流出経路は、針253が前眼房115に近付く間に形成されたのと同じ強膜路186を通って延在してもよい。1つの針253のみが示されているが、1つ又は複数のアクチュエータによって個別に操作可能であってもよい、1つ若しくは複数の針又はスリーブをインサータ・デバイス250に含めることができる、実現例が想到される。
【0054】
排水デバイス100は、埋め込み後、排水デバイス100の遠位端が、目101に針253を入れたのと同じ側で前眼房115内に残るように、最初は針253内で保持し、針253を後退させることによって解放することができる。埋め込み後、排水デバイス100の近位端は、結膜114と強膜113との間のテノン嚢下空間に、より具体的にはテノン嚢199と強膜113との間に残ることができる。遠位端と近位端との間の排水デバイス100の中間部分は、強膜路186内に残って、眼房水を、排水デバイス100の遠位端にある入口ポートから排水デバイス100の近位端にある1つ又は複数の出口ポートへと運ぶことができる。いくつかの実施例によれば、眼外埋め込み方法を容易にするため、排水デバイス100を、最初は、入口ポートを含む排水デバイス100の遠位端が針の遠位先端にある針253の解放ポートに面し、排水デバイス100の近位端が、針253の解放ポートから離れる方向に面し、インサータ・デバイス250のハンドル254に向かって面するような配向で、針253内で保持することができる。いくつかの実施例では、インサータ・デバイス250は、注入された排水デバイス100を別個の組織面(テノン嚢及び強膜など)間に埋め込みする前に、流体(眼粘弾剤など)又は気体(空気、SF6、若しくはC3F6など)を、別個の組織面に送達するように構成される。
【0055】
図24A~24Eは、テノン嚢下空間、又は排水デバイス100の部分が中で保持される他の保定空間よりも縁198の近くに作られる、結膜切開202を伴う埋め込み処置の一例を示している。例えば
図24A~24Eに示されるように、埋め込み処置は、最初に切開202を通して針253を挿入し、次に本体102など、デバイス100の近位部分を操作して、異なる角度から同じ切開202を通してテノン嚢下空間に入れることを含むことができる。
【0056】
図24Aに示されるように、針253を挿入する前に、切開202を結膜114に形成することができる。切開202は、例えば、目101の縁198から約3ミリメートル(mm)離して作成することができるが、他の位置がこの切開に適していることがあることが想到される。
図24Aに示されるように、切開202は、メス、又はインサータ・デバイス250とは別個であってもよい他の適切な外科用器具など、刃203を使用して作成することができる。しかしながら、インサータ・デバイス250自体が最初の切開202を作るのに使用される、他の実現例が想到される。切開202は、結膜114を通して、また目101のテノン嚢199を通して作成することができる。テノン嚢199は、
図24Aでは別個の層として示されているが、テノン嚢199は、縁198に近い領域では結膜114と一体になる場合があることが注目される。切開202によって、刃203、又はテノン嚢199を上強膜(強膜113の最外層)から切断する他の任意の適切なツールを使用して、結膜114と強膜113との間にポケットが形成されるか又は開かれてもよい。更に後述するように、ポケットは、本体102などの排水デバイス100の一部分が、後で挿入され保定される空間を提供してもよい。
【0057】
図24Bに示されるように、インサータ・デバイス250の針253を切開202に挿入することができる。針253は、強膜113を通して遠位方向に前進させて強膜路186を形成し、更に前進させて、針253の遠位先端が、線維柱帯187、又は前眼房115を封止する他の眼組織を通して、前眼房115に入るようにすることができる。針253は、例えば、外科医又はユーザがハンドルを移動させて、針253を含むインサータ・デバイス250全体を遠位方向に前進させることによって、並びに/或いはアクチュエータを操作して、針253をハンドル254に対して遠位方向に前進させることによって、遠位方向に前進させることができる。
【0058】
図24Cに示されるように、針253を後退させて、チューブ106の遠位端など、排水デバイス100の遠位部分が前眼房115内に配設された状態で、眼内排水デバイス100を適所に残すことができる。
図24Cに示されるように、針253を後退させることで、チューブ106の中間又は近位部分などの排水デバイス100の一部分も、針253の遠位方向移動によって先に形成された強膜路186内で適所に残すことができる。針253は、例えば、アクチュエータ252(
図24A~24Eには図示なし)を操作して、ハンドル内にあって針253に結合された内部メカニズムを作動させることによって、後退させることができる。
図24Cは、排水デバイス100の一部分が露出し、排水デバイス100の残りの部分がまだ針253内に保持された状態の、部分的に後退させた針253を示している。
【0059】
図24Dに示されるように、針253を後退させて強膜113から出し、強膜路186から出した後、本体102の全て又は一部分など、排水デバイス100の一部分を、結膜114と強膜113との間のポケットに挿入することができる。排水デバイス100は、例えば、同じインサータ・デバイス250又は別個の器具であることができるツール205を使用して、排水デバイス100を更に操作することによって、ポケットに挿入されてもよい。排水デバイス100は、この段階では、穿刺経路186を形成する間、針253によって使用されたアプローチ角度に対して異なる角度で、枢動させるか又は別の形でポケットにアプローチすることによって操作されてもよい。いくつかの実施例によれば、上述した保定機構など、排水デバイス100の保定機構は、排水デバイス100を目101の組織に縫合する必要なしに、排水デバイス100が適所に残ることができるようにしてもよい。
【0060】
いくつかの実施例によれば、排水デバイス100は可撓性であり、針内に圧縮状態で収容することができる。例えば、排水デバイス100は、針253の内表面に対して押し潰されるか、折り畳まれるか、又は別の形で圧縮されて、排水デバイス100が、患者の目101の眼内部位内へと解放される前は、より小さい形状因子を有することができるようにされてもよい。針253を後退させ、排水デバイス100を解放する際、排水デバイスの圧縮部分に対して加えられている圧縮が解放されて、排水デバイス100の圧縮が解かれ、眼内部位内(例えば、ポケット内)で自己拡張して、1つ又は複数の寸法が針253の直径よりも大きい(例えば、直径が大きいか、若しくは本体102の長軸に沿った寸法が大きい)非圧縮状態になることが可能にされてもよい。しかしながら、可撓性の排水デバイス100が圧縮される実例について記載しているが、排水デバイス100が、針253によって保持されるときに圧縮されない、並びに/或いは針253から解放されたときに拡張しない、他の実現例が想到される。
【0061】
図24Eは、ポケット内に挿入した後の排水デバイス100を示している。
図24Eに示されるように、本体102又は本体102の部分はテノン嚢下空間内で保持されてもよく、チューブ106又はチューブ106の部分は前眼房115内で保持されてもよい。排水デバイス100は、排水デバイス100の1つ又は複数の入口ポート(
図24Eには図示なし)が前眼房115に接触し、排水デバイス100の1つ又は複数の出口ポート(
図24Eには図示なし)が、結膜114と強膜113との間の空間に接触するようにして、保定することができる。
【0062】
図25A~25Eは、埋め込みされた排水デバイスの部分が中で保持される結膜と強膜との間の空間よりも縁198から離れて作成された、切開202を通して針253を挿入することを含む、埋め込み処置の一例を示している。例えば
図25A~25Eに示されるように、埋め込み処置は、最初に切開202を通して針253を挿入し、次に、針を後退させ続けることによって、排水デバイスをテノン嚢下空間に残すためにインサータ・デバイス250を実質的に枢動させる必要なく、本体102など、排水デバイス100の近位部分をテノン嚢下空間内に残すことを含むことができる。
【0063】
例えば
図25Aに示されるように、結膜切開202は、例えば、目101の縁198から約3ミリメートル(mm)よりも離して作成することができるが、他の位置がこの切開に適していることがあることが想到される。
図25Aに示されるように、切開202は、結膜114を通してインサータ・デバイス250の針253を挿入することによって作成される、針切開であることができる。切開202は、結膜114を通して、また目101のテノン嚢199を通して作成することができる。結膜114と強膜113との間のポケットは、この段階で、切開202を通して、(切開202よりも縁198に近い)切開上方の空間内に形成されてもよく、又はこの段階でポケットを開く必要なしに処置を進めてもよい。
【0064】
図25Bに示されるように、針253を、強膜113を通して遠位方向に前進させて、強膜路186を形成し、線維柱帯187、又は前眼房115を封止する他の眼組織を通して、前眼房115内へと更に前進させることができる。
【0065】
図25Cに示されるように、針253を後退させて、チューブ106の遠位端など、排水デバイス100の遠位部分が前眼房115内に配設された状態で、眼内排水デバイス100を適所に残すことができる。
図25Cに示されるように、針253を後退させることで、チューブ106の中間又は近位部分などの排水デバイス100の一部分も、針253の遠位方向移動によって先に形成された強膜路186内で適所に残すことができる。
図25Cは、排水デバイス100の一部分が露出し、排水デバイス100の残りの部分がまだ針253内に保持された状態の、部分的に後退させた針253を示している。
【0066】
図25Dに示されるように、針253を後退させて強膜113から出し、強膜路186から出した後、針を後退させ続けて、本体102の全て又は一部分など、排水デバイス100の一部分を、結膜114と強膜113との間の保定空間内で適所に残すことができる。このように、最初の切開を、排水デバイスの保定空間の下方にあるもの、又はそれよりも縁198から離れているものと見なすことができる。これは、例えば、排水デバイス100を保定ポケット内に固定するのに、異なるアプローチ角から排水デバイス100を別個に枢動又は操作する必要性を回避してもよい。それに加えて又はその代わりに、これは、排水デバイス100を上方からポケット内に固定する別個の操作を含む実現例よりも、侵襲性が低い処置を提供してもよい。上述した保定機構など、排水デバイス100の保定機構は、排水デバイス100を目101の組織に縫合する必要なしに、排水デバイス100が適所に残ることができるようにしてもよい。
【0067】
図25Eは、針の後退後に空間内で保定されている排水デバイス100を示している。
図25Eに示されるように、本体102又は本体102の部分はテノン嚢下空間内で保持されてもよく、チューブ106又はチューブ106の部分は前眼房115内で保持されてもよい。排水デバイス100は、排水デバイス100の1つ又は複数の入口ポート(
図25Eには図示なし)が前眼房115に接触し、排水デバイス100の1つ又は複数の出口ポート(
図25Eには図示なし)が、結膜114と強膜113との間の空間に接触するようにして、保定することができる。
【0068】
インサータ・デバイス
いくつかの実施例によれば、例えば
図26に示されるように、インサータ・デバイス250のアクチュエータ252は、例えば、鉛筆の持ち方を使用してハンドル254を保持したときに、外科医の親指又は人差し指を使用して操作することができる、ハンドル254の側面に配設されたトリガ・ボタンを含むことができる。それに加えて又はその代わりに、インサータ・デバイス250は、排水デバイス100を解放することができる針253を収容したインサータ・デバイス250の遠位端とは反対側の、インサータ・デバイス250の近位端に配設された指ループ211を含むことができる。指ループ211は、例えば、ユーザが引っ張ってハンドル内の真空チャンバに真空を作り出すことができる、人間工学的機構を提供することができる。真空チャンバは、アクチュエータ252を押し下げると、針253を後退させる真空力を適用するように構成することができる。本明細書に記載される真空は必ずしも完全な真空ではなくてもよく、一般に、空気が除去されて圧力差を作り出すことによって真空力を適用させる、任意の適切な空隙を含むことができることが理解されるべきである。
【0069】
図27A~27Dは、様々な例示の動作段階における、
図19に示される実現例によるインサータ・デバイス250の切欠図である。例えば
図27A~27Dに示されるように、インサータ・デバイス250は、ハンドル254と、ハンドル254の遠位端に配設された針253とを含むことができる。前側プランジャ215は、針253に結合し、ハンドル254内に配設させることができる。前側プランジャ215は、例えば、針253が前側プランジャ215と共に移動するように、針253に直接又は間接的に固定して取り付けることができる。前側プランジャ215は、真空チャンバ219内に作られた真空によって近位方向力を前側プランジャ215に適用することができ、それによって針253を前側プランジャ215と共に後退させることができるように、前側真空チャンバ219の遠位側に配設することができる。
【0070】
図27A~27Dはまた、インサータ・デバイス250内に真空を作り出し、真空に基づいて針253を後退させるのを容易にするために含めることができる、他の構成要素を示している。例えば、後側プランジャ213を、前側プランジャ215の近位側に配設し、後側プランジャ213が前後に並進することができるように、チャネル221内に往復運動可能に配設することができる。後側プランジャ213は、例えば
図27A~27Dに示されるように、前側プランジャ215よりも小さくすることができる。チャージ区画233は、ハンドル254の近位端に配設され、ハンドル254に対して近位方向に後退可能であることができる。チャージ区画233の後退は、後側真空チャンバ218を拡張させて真空を中に作り出すように構成することができる。後側真空チャンバ218内の真空を、後側プランジャ213の近位方向力に適用して、後側プランジャをチャネル221内で近位方向に移動させ、それによって次に前側真空チャンバ219内に真空を作り出すことができる。例えばダックビル弁などの弁229を、後側真空チャンバ218に結合して、チャージ区画233を遠位方向に移動して後側真空チャンバ218に接触させたときに、圧力を解放できるようにすることができる。指ループ211は、チャージ区画233に配設するか又は別の形で結合して、指ループを引っ張ることによってチャージ区画233を後退させるのを容易にすることができる。前側真空チャンバ219及び後側真空チャンバ218はそれぞれ、封止されたチャンバ(例えば、Oリング若しくは他の封止部材で封止される)であってもよい。
【0071】
図27Aは、デバイス250がユーザに送達される際の初期段階に相当することができる、パッケージ化段階中のインサータ・デバイス250を示している。この段階では、インサータ・デバイス250内は真空ではなくてもよく、したがって前側真空チャンバ219内は真空ではない。針253(例えば、金属スリーブ)及び前側プランジャ215は、前方位置又は遠位位置にあることができる。眼内排水デバイス(
図27Aには図示なし)は、針253内で保持することができる。アクチュエータ252は、この段階では係止位置で支持されているトリガ・ボタンとして実現することができる。後側プランジャ213は、この段階では、前方の遠位位置に配設することができる。
【0072】
図27Bは、デバイス内に真空を作り出すのに使用することができる、チャージ段階中のインサータ・デバイス250を示している。チャージ段階中、ユーザは、チャージ区画233を(例えば、指ループ211を引っ張ることによって)ハンドル254に対して後退させることができ、それによって後側真空チャンバ218を拡張させて、前側及び後側真空チャンバそれぞれに真空を作り出すことができる。特に、後側真空チャンバ218内に作られた真空は、近位方向真空力を後側プランジャ213に加えてもよく、それによって後側プランジャ213がチャネル221内で近位方向に並進することで、前側真空チャンバ219内に真空を作ることができる。前側真空チャンバ219内の真空は、近位方向真空力を前側プランジャ215に適用することができるが、前側プランジャ215は、トリガ・ボタン・アクチュエータ252又はトリガ・ボタン・アクチュエータに結合されたメカニズムによって適所で保持されるので、遠位位置に残ることができる。
【0073】
図27Cは、作動段階中のインサータ・デバイス250を示している。この段階で、ユーザは、チャージ区画233をハンドル254に対して遠位方向に押すことができる。これにより、弁229を通して正圧を解放することができる。それに加えて又はその代わりに、チャージ区画233の遠位方向移動によって、トリガ・ボタン・アクチュエータ252に結合された安全装置を解放して、トリガ・ボタンを押すのを可能にすることができる。前側プランジャ215及び針253は、この段階では、アクチュエータ252によって前方の遠位位置で保持されたままであることができる。
【0074】
図27Dは、後退段階中のインサータ・デバイス250を示している。後退段階中、トリガ・ボタン・アクチュエータ252をユーザが押し下げて、前側プランジャ215を解放して前側プランジャ215がハンドル254に対して近位方向に並進できるようにし、針253と共に後退させて眼内排水デバイス100が露出するようにすることができる。特に、真空チャンバ219内の真空は、近位方向真空力を前側プランジャ215に適用することができる。近位方向真空力は、トリガ・ボタンが上位置にあって前側プランジャ215及び針253を適所で保持しているとき、トリガ・ボタンによって反作用させることができる。トリガ・ボタンを押すことで、この反作用力を除去して、ボタンが押されるとプランジャ215及び針253が近位方向移動できるようにすることができる。
【0075】
いくつかの実施例によれば、例えば
図28A~28Dに示されるように、インサータ・デバイス250は、針253に結合された摺動可能及び押圧可能なボタンとして実現される、アクチュエータ252を含むことができる。針253は、ボタンをハンドル254に対して摺動させると、並進可能であることができ、ボタンを押すことで、眼内排水デバイス100を針253から解放することができる。様々な実現例では、摺動可能及び押圧可能なボタンは、針253を、遠位方向(展開)、近位方向(後退)、又は遠位方向及び近位方向の両方に並進させるように動作可能であることができる。
【0076】
図28A~28Dは、様々な動作段階における、摺動可能及び押圧可能なボタンを有して実現されたインサータ・デバイス250を示している。
図28Aは、摺動可能及び押圧可能なボタン・アクチュエータ252が上方の近位位置にあり、針253も、眼内排水デバイス(
図28Aには図示なし)を中に保持した状態で近位位置にある、初期段階中のインサータ・デバイス250を示している。
図28Bは、展開段階中のインサータ・デバイス250を示している。アクチュエータ252は、上方位置に残って排水デバイスを針253内で保持し、アクチュエータは、ユーザによって遠位方向に並進させられて、(例えば、針253を前眼房又は他の眼区画に挿入するのを容易にするため)針253を遠位方向に展開する。
図28Cは、係合段階中のインサータ・デバイス250を示している。この段階で、ボタン・アクチュエータ252が押されて、排水デバイス100が針から解放される。例として、ボタンを押すことで、テンショナ及び/又は組織グリップを係合することができる。
図28Dは、後退段階中のインサータ・デバイス250を示している。この段階で、ユーザは、摺動可能なボタン・アクチュエータ252を近位方向に並進させて、針253を排水デバイス100の周りから後退させることができる。アクチュエータ252を、押下げ位置にある状態で近位方向に並進させて、排水デバイス100を埋め込み部位で解放するのを容易にすることができる。
【0077】
いくつかの実施例によれば、例えば
図29A~29Cに示されるように、インサータ・デバイス250は2アーム・マニピュレータを含むことができる。2アーム・マニピュレータは、排水デバイス100の部分を、単一の切開202を通して目の異なる区画に挿入することができるように、1つ又は複数のアクチュエータ(
図29A~29Cには図示なし)によって操作可能であることができる。例えば、2アーム・マニピュレータは、第1のアーム207が、排水デバイス100の遠位端を前眼房に挿入するのを容易にし、第2のアーム208が、排水デバイス100の近位端を、テノン嚢下空間など、結膜と強膜との間の空間に異なる角度から挿入するのを容易にする、
図24A~24Dに示したのと類似の埋め込み処置を容易にしてもよい。
【0078】
図29A~29Cは、様々な動作段階における、2アーム・マニピュレータを有して実現されたインサータ・デバイス250を示している。例えば
図29Aに示されるように、2アーム・インサータ・デバイス250は、眼外アプローチを容易にするため、結膜の切開など、目101の単一の切開202に挿入することができる。
図29Bに示されるように、第1のアーム207は、遠位部分など、排水デバイス100の一部分を係合し、切開を通して排水デバイス100を操作して、排水デバイス100のその部分を前眼房に入れることができる。いくつかの実施例では、アクチュエータ(
図29Bには図示なし)を、第1のアーム207を操作し、排水デバイス100の部分を前眼房に入れるように動作させることができ、並びに/或いは、排水デバイス100の部分が所望の位置にあるときにそれを解放するように動作させることができる。
図29Cに示されるように、第2のアーム208は、排水デバイス100の近位部分など、別の部分と係合させることができる。ユーザは、インサータ・デバイス250を枢動させて、同じ切開202を通して異なる角度から、テノン嚢下空間又は他の空間に近付くことができる。いくつかの実施例では、第1のアーム207を操作するアクチュエータと同じ又は別個のものであることができる、アクチュエータ(
図29Cには図示なし)は、第2のアーム208を操作し、排水デバイスの他の部分をテノン嚢下空間に入れるように動作させることができ、並びに/或いは、排水デバイス100の他の部分が所望の位置にあるときにそれを解放するように動作させることができる。1つ又は複数のアクチュエータは、第1のアーム及び第2のアームを独立して動作させるように構成することができる。
図29Cの矢印は、強膜若しくは結膜表面に対して実質的に横断方向又は接線方向であることができる、第2のアーム208の前進方向を示している。
【0079】
図30A及び30Bは、インサータ・デバイス250aの斜視図及び切欠図である。例えば
図30A及び30Bに示されるように、インサータ・デバイス250aは、ハンドル254aと、ハンドル254aのノーズ257a(例えば、遠位端)上に又はそこから配設された針253とを含むことができる。ラック・ピニオン・メカニズム215aは、針253に結合させ、ハンドル254a内に配設することができる。ラック・ピニオン・メカニズム215aは、例えば、針253がラック・ピニオン・メカニズム215aと共に移動するように、針253に直接又は間接的に固定して取り付けることができる。ラック・ピニオン・メカニズム215aは、針253に結合された歯付きラック216aを含み、ギヤ217aに結合されるか又はそれによって係合されるように構成することもできる。ハンドル254aに配設されたアクチュエータ252a(例えば、摺動可能なボタン)は、ギヤ217aに結合するか又はそれによって係合することができる。アクチュエータ252aが前方に(例えば、針253に向かって)押されると、アクチュエータ歯255aは、ギヤ217aを係合し、ギヤを第1の方向(例えば、反時計方向)に回転させることができる。したがって、ギヤ217aは、近位方向力をラック・ピニオン・メカニズム215aに適用することができ、それによって次に、針253をラック・ピニオン・メカニズム215aと共に後退させることができる。アクチュエータ252aはまた、ギヤ217aが回転するのを防ぐギヤ係止部材259aを含んでもよく、それによって、針253を目101に挿入する間、針253が後退するのを防ぐことができる。
【0080】
動作中、排水デバイス100、100a、100b、100cが強膜113内で適切に位置付けられているときなど、ユーザ(例えば、眼科外科医、ロボット・アーム)は、ハンドル254aを把持し、インサータ・デバイス250aを押して針253を目101の中の適切な位置へと移動させることによって、針253を目101に挿入することができる。例えば、針253は、ノーズ257aが目101の表面に達するか又は突き当たるまで目101に押し込まれて、それによって自然な停止部として作用し、針253を後退させる間、目101を適所で保ってもよい。
図30Cに示されるように、ノーズ257aは、インサータ・デバイス250aを目101に対して更に安定させる、把持部材267(例えば、パターン、材料、突出部)を含んでもよい。例えば、把持部材267は、
図30Cに示されるような歯又はリブとして構成されてもよい。次に、前方方向力をアクチュエータ252aに働かせて、アクチュエータ252aを前方に移動させ、それによってギヤ係止部材259aをギヤ217aから係脱し、ラック・ピニオン・メカニズム215aを係合し、針253を後退させることができる。針253を後退させることで、排水デバイス100、100a、100b、100cが強膜113内に位置付けられて残り、その後、インサータ・デバイス250aを引き戻して、針253を目101から除去することができる。ノーズ257aは、凸状プロファイル(例えば、
図30Cに示されるような円錐形状)、直線プロファイル(例えば、円筒形状)、凹状プロファイル(例えば、漏斗形状)など、特定の形状を有する外側プロファイルを有してもよい。ノーズ257aの最遠位面は、
図30Cに示されるような線状、凸状、又は凹状であってもよい。例えば、凹状プロファイル及び/又は凹状の最遠位面は、ノーズ257aを目101の表面に適合させるか、又はそれに同調させてもよい。
【0081】
図31A及び31Bは、インサータ・デバイス250bの斜視図及び切欠図である。例えば
図31A及び31Bに示されるように、インサータ・デバイス250bは、ハンドル254bと、ハンドル254bのノーズ257b(例えば、遠位端)上に又はそこから配設された針253とを含むことができる。シャトル・メカニズム215bは、針253に結合され、ハンドル254b内に配設することができる。シャトル・メカニズム215bは、例えば、針253がシャトル・メカニズム215bと共に移動するように、針253に直接又は間接的に固定して取り付けることができる。シャトル・メカニズム215bは、ハンドル254bの傾斜機構258bに移動可能に結合されるか又はそれと係合される、ローラ216bを含むことができる。ハンドル254bは、
図31Aに示されるように、二枚貝構成で配設されるハンドル254bの可動区画であることができる、ハンドル・アクチュエータ252bを含むことができる。ハンドル・アクチュエータ252bが互いに向かって移動させられる(例えば、押し潰される)につれて、ローラ216bは、ハンドル254bの傾斜機構258bに沿って後方に(例えば、ノーズ257bから離れるように)移動する。したがって、ローラ216bの移動によって、近位方向力をシャトル・メカニズム215bに適用することができ、それによって次に、針253をシャトル・メカニズム215bと共に後退させることができる。ばね259bは、ハンドル254b内に配設され、シャトル・メカニズム215bを、またしたがって前方位置にある針253を付勢するように構成することができ、それによって、針253を目101に挿入する間、針253が後退するのを防ぐか又は妨げることができる。
【0082】
ハンドル・アクチュエータ252bは、少なくとも部分的に、使用中(例えば、針253を目101から後退させるとき)、インサータ・デバイス250bを始動させ、インサータ・デバイス250bの制御を改善するのに必要な押し潰す動きを円滑にするために、ハンドル・アクチュエータ252bをハンドル254bから離して外側に付勢するように構成された、付勢材料(例えば、抵抗性及び/又は高剛性材料)で形成されてもよい。
図31Cに示されるように、インサータ・デバイス250bは、ハンドル・アクチュエータ252bをハンドル254bから離して外側に付勢するように構成された、付勢部材260b(例えば、ばね)を含んでもよい。付勢部材260bは、板ばね、圧縮ばね、圧縮可能材料など、任意のタイプの付勢アセンブリであってもよい。外側に付勢する力は、付勢材料及び付勢部材260bの組み合わせによってもたらされてもよい。
【0083】
動作中、排水デバイス100、100a、100b、100cが強膜113内で適切に位置付けられているときなど、ユーザ(例えば、眼科外科医、ロボット・アーム)は、ハンドル254aを把持し、インサータ・デバイス250bを押して針253を目101の中の適切な位置へと移動させることによって、針253を目101に挿入することができる。例えば、針253は、ノーズ257bが目101の表面に達するか又は突き当たるまで目101に押し込まれて、それによって自然な停止部として作用し、針253を後退させる間、目101を適所で保ってもよい。ノーズ257aと同様に、ノーズ257bは、インサータ・デバイス250bを目101に対して更に安定させる、把持部材267(例えば、パターン、材料、突出部)を含んでもよい。また、ノーズ257aと同様に、ノーズ257bは、凸状プロファイル(例えば、
図31Bに示されるような円錐形状)、直線プロファイル(例えば、円筒形状)、凹状プロファイル(例えば、漏斗形状)など、特定の形状を有する外側プロファイルを有してもよい。ノーズ257bの最遠位面は、
図31Bに示されるような線状、凸状、又は凹状であってもよい。例えば、凹状プロファイル及び/又は凹状の最遠位面は、ノーズ257bを目101の表面に適合させるか、又はそれに同調させてもよい。押し潰す力は次に、ハンドル・アクチュエータ252bに働いてシャトル・メカニズム215bを係合し、ばね259bの付勢力を克服することによって、傾斜機構258bに沿ってローラ216bを移動させ、シャトル・メカニズム215b及び針253を後退させることができる。針253を後退させることで、排水デバイス100、100a、100b、100cが強膜113内に位置付けられて残り、その後、インサータ・デバイス250bを引き戻して、針253を目101から除去することができる。ハンドル・アクチュエータ252bを押し潰す力は(例えば、ハンドル254b及び針253の長手方向軸に垂直な)横方向なので、針253を後退させる間、排水デバイス100、100a、100b、100cの変位及び望ましくない移動を最小限に抑えることができる。
【0084】
図15、32、及び33は、インサータ・デバイス250において実現することができる、針253の様々な実例を示している。
【0085】
いくつかの実施例によれば、例えば
図15に示されるように、針253は、近位方向に延在することができ、眼内排水デバイス100の1つ又は複数の対応するフィン180を受け入れるように構成することができる、1つ又は複数のスロット201を有して実現することができる。フィンは、埋め込み処置中に排水デバイス100を展開する間のチューブ106の保定など、排水デバイス100の保定を容易にすることができる。例えば、各フィン180の近位側の停止面183は、針253が遠位方向に動く間、排水デバイスが針内に収容されたままであることができるように、インサータ・デバイス250の針253の遠位側に当接することができる。各フィン180の遠位側の傾斜面184は、針253を遠位方向に動かす間、目の組織を通して挿入するのを容易にしてもよい。排水デバイス100は、例えば、針253を後退させる間、第1の保定部材180の近位面が患者組織に当接してチューブ106を目の中の適所で保持した状態で、針253を後退させることによって、インサータ・デバイス250から排出させることができる。埋め込み処置中、フィン180を、針253の遠位先端に含まれるそれぞれのスロット201内に配設することができ、それによって、チューブ106を針253の遠位端から突出させることなく、第1の保定部材180を針253の遠位側に当接させるのを可能にしてもよい。しかしながら、スロット201が省略される、他の実現例が想到される。
【0086】
いくつかの実施例によれば、例えば
図15に示されるように、針253は斜角付き遠位先端を含むことができ、斜角付き先端は、排水デバイス100の解放ポートとなる開口部を有する。
【0087】
いくつかの実施例によれば、例えば
図32に示されるように、針253は、(例えば、
図32に示されるような弾丸形状の、又は他の任意の適切な形状の)ソリッドノーズ遠位先端を有して実現することができる。排水デバイスの解放ポート241は、針253の側面でソリッドノーズ先端の近位側に配設されてもよい。ソリッドノーズは、例えば、挿入中に針253に組織が詰まるのを回避する助けとなり得る。
【0088】
いくつかの実施例によれば、例えば
図33に示されるように、針253は、針253の挿入深さを示すため、針253に沿って軸方向に延在する軸方向マーキング・パターンを含むことができる。例えば、マーキング・パターンは、一連の1ミリメートルの目盛り、又は軸方向で変化し、針253の挿入深さを示す、他の任意の適切な視覚的マーキングを含むことができる。別の実例として、針253は、針の先端から特定の距離(例えば、3mm)に配設された少なくとも1つの測定マーカーを含んでもよい。
【0089】
図34A及び34Bに示されるように、眼内排水デバイス・アセンブリ199は、排水デバイス100、100a、100b、100cに接続されたプレート190を含むことができる。プレート190は、プレート部材191とチューブ192とを含むことができる。アダプタ195は、排水デバイス100、100a、100b、100cをチューブ192に差し込むインターフェースを提供することができる。アダプタ195は、排水デバイス本体102、102a、102b、102cの端部に一体的に形成されるか、又は端部に結合され、チューブ192と封止係合されるか結合されるように、サイズ及び形状を決めることができる。例えば、アダプタ195は、排水デバイス100、100a、100b、100cとプレート190及び/又はチューブ192との間を適切に封止するため、アダプタ195の外表面とチューブ192の内表面との係合を最大限にする、平滑な外表面(例えば、パターニングがない)を有してもよい。アダプタ195は、例えば2mmなど、任意の所望の長さであってもよい。
図34Cに示されるように、アダプタ195は、排水デバイス本体102、102a、102b、102cに対して段階的に小さくなるサイズ(例えば、小さくなる直径)を有することによって、排水デバイス本体102、102a、102b、102cとアダプタ195との間に肩部193を提供してもよい。肩部193は、チューブ192への排水デバイス100、100a、100b、100cの過挿入を防ぐための停止部を提供することができる。
【0090】
上述の説明は、本明細書に記載される様々な構成を当業者が実施するのを可能にするために提供するものである。主題の技術を、様々な図面及び構成を参照して特に記載してきたが、これらは例示目的のものであり、主題の技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきでないことが、理解されるべきである。
【0091】
主題の技術を実現する他の多くの方法があり得る。本明細書に記載される様々な機能及び要素は、主題の技術の範囲を逸脱することなく、提示されているものとは異なるものとして区別されてもよい。これらの構成に対する様々な修正は、当業者には容易に明白となるものであり、本明細書で定義される一般原理が他の構成に適用されてもよい。したがって、当業者によって、主題の技術の範囲を逸脱することなく、主題の技術に対して多数の変更及び修正が行われてもよい。
【0092】
開示されるプロセスにおけるステップの特定の順序又は階層は、例示的なアプローチの一例であることが理解される。設計上の好みに基づいて、プロセスにおけるステップの特定の順序又は階層は再配置されてもよいことが理解される。ステップのいくつかが同時に実施されてもよい。付随する任意の方法クレームは、様々なステップの要素を見本の順序で提示するものであり、提示される特定の順序又は階層に限定されることを意味しない。
【0093】
「態様」などの語句は、かかる態様が主題の技術に必須であること、又はかかる態様が主題の技術の構成全てに当てはまることを示唆するものではない。態様に関する開示は、全ての構成、又は1つ若しくは複数の構成に当てはまり得る。態様は、本開示の1つ又は複数の実例を提供してもよい。「態様」などの語句は1つ又は複数の態様を指すことがあり、その逆もまた真である。「実施例」などの語句は、かかる実施例が主題の技術に必須であること、又はかかる実施例が主題の技術の構成全てに当てはまることを示唆するものではない。実施例に関する開示は、全ての構成、又は1つ若しくは複数の構成に当てはまり得る。実施例は、本開示の1つ又は複数の実例を提供してもよい。「実施例」などの語句は1つ又は複数の実施例を指すことがあり、その逆もまた真である。「構成」などの語句は、かかる構成が主題の技術に必須であること、又はかかる構成が主題の技術の構成全てに当てはまることを示唆するものではない。構成に関する開示は、全ての構成、又は1つ若しくは複数の構成に当てはまり得る。構成は、本開示の1つ又は複数の実例を提供してもよい。「構成」などの語句は1つ又は複数の構成を指すことがあり、その逆もまた真である。
【0094】
本明細書で使用するとき、一連の項目の前に置かれる「少なくとも1つの」という語句は、それらの項目のいずれかを分離する「及び」又は「又は」という用語と共に、リストの各部材(即ち、各項目)ではなく全体としてのリストを修正する。「少なくとも1つの」という語句は、列挙された各項目の少なくとも1つを選択することを必要とせず、それよりもむしろ、その語句によって、項目のいずれか1つのうち少なくとも1つ、及び/又は項目の任意の組み合わせのうち少なくとも1つ、及び/又は項目それぞれの少なくとも1つを含むことを意味することを可能にする。例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」、又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という語句はそれぞれ、Aのみ、Bのみ、若しくはCのみ、A、B、及びCの任意の組み合わせ、並びに/或いはA、B、及びCそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0095】
本開示で使用されるような、「上」、「下」、「前」、「後」などの用語は、通常の重力基準系ではなく任意の基準系を参照して理解されるべきである。したがって、上面、下面、前面、及び後面は、重力基準系において上方、下方、対角方向、又は水平方向に延在してもよい。
【0096】
更に、「含む」、「有する」などの用語が本明細書又は特許請求の範囲において使用される範囲において、かかる用語は、「備える」という用語が特許請求の範囲で移行語として用いられたときに解釈されるのと同様に、包括的であるものとする。
【0097】
「例示の」という語は、本明細書では、「実例、事例、又は例示としての役割を果たす」ことを意味するのに使用される。「例示」として本明細書に記載される任意の実施例は、他の実施例よりも好ましいか又は有利であるものと必ずしも解釈されない。
【0098】
単数の要素についての言及は、具体的な提示がない限り、「ただ1つのみ」ではなく「1つ又は複数」を意味するものとする。男性代名詞(例えば、彼)は、女性及び中性(例えば、彼女及びその)を含み、その逆もまた真である。「いくつか」という用語は1つ又は複数を指す。下線付き及び/又はイタリック体の見出し及び小見出しは、便宜上使用されるのみであり、主題の技術を限定するものではなく、主題の技術についての説明の解釈と併せて参照されるものではない。当業者に現在知られているか又は今後知られる、本開示を通して記載される様々な構成の要素についての全ての構造上及び機能上の等価物は、参照によって本明細書に明確に組み込まれ、主題の技術によって包含されるものとする。更に、本明細書の開示はいずれも、かかる開示が上述の明細書に明示的に記述されているか否かにかかわらず、公衆に提供されるものとする。
【0099】
主題の技術の特定の態様及び実施例について記載してきたが、これらは単なる例として提示されているものであり、主題の技術の範囲を限定することは意図されない。事実上、本明細書に記載する新規な方法及びシステムは、その趣旨から逸脱することなく他の様々な形態で具体化されてもよい。添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物は、主題の技術の範囲及び趣旨内にあるものとして、かかる形態又は修正を包含するものとする。