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特許7504094ヘッドアップディスプレイシステムのための、逆方向湾曲を有する非球面ミラー、及びその成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイシステムのための、逆方向湾曲を有する非球面ミラー、及びその成形方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/10 20060101AFI20240614BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240614BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G02B5/10 A
G02B5/10 C
B60K35/23
G02B27/01
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021528989
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2019016609
(87)【国際公開番号】W WO2020111828
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】62/772,788
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンファ
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】河原 正
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174033(WO,A1)
【文献】特開平6-256031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 5/20
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(3D)ミラーであって、
前記3Dミラーは:
第1の大面、前記第1の大面の反対側の第2の大面、及び前記第1の大面と前記第2の大面とを接続する小面を備える、ガラス基板と;
前記ガラス基板の前記第1の大面の少なくとも一部分上に配置される、反射層と
を備え、
前記第1の大面は、非球面湾曲、及び前記ガラス基板の逆方向カーブ領域に配置された逆方向湾曲を備え、
前記逆方向カーブ領域において、前記第1の大面は、前記非球面湾曲の変曲点で互いに結合する第1及び第2のカーブに沿って延びており、
前記第2の大面は表面欠陥を備え、
前記表面欠陥は、前記第2の大面の縁部から2mm以内に配置された、約1μm未満の深さを有する、溝型の真空孔の痕跡である、3Dミラー。
【請求項2】
前記第1の大面は:
前記逆方向カーブ領域において、約3nm以下の表面粗度Ra;
前記逆方向カーブ領域において、約30nm以下、又は20nm以下の最大(PV)表面粗度
のうちの一方又は両方を有する、請求項1に記載の3Dミラー。
【請求項3】
前記ガラス基板は、前記逆方向カーブ領域とは異なる非逆方向カーブ領域を備える、請求項1又は2に記載の3Dミラー。
【請求項4】
前記非逆方向カーブ領域における前記第1の大面の表面粗度Raに対する、前記逆方向カーブ領域における前記第1の大面の表面粗度Raの比は、約3.0未満であること;
前記非逆方向カーブ領域における前記第1の大面の最大PV表面粗度に対する、前記逆方向カーブ領域における前記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比は、約3.0未満であること;
前記非逆方向カーブ領域における前記第2の大面の表面粗度Raに対する、前記逆方向カーブ領域における前記第2の大面の表面粗度Raの比は、約1.5以下であること;及び
前記非逆方向カーブ領域における前記第2の大面の最大PV表面粗度に対する、前記逆方向カーブ領域における前記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比は、約2.0以下であること
のうちの1つを更に満たす、請求項3に記載の3Dミラー。
【請求項5】
前記非逆方向カーブ領域は逆方向湾曲を全く有しない、請求項4に記載の3Dミラー。
【請求項6】
前記逆方向カーブ領域全体にわたる前記第1の大面又は前記第2の大面の輪郭偏差は約50μm未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の3Dミラー。
【請求項7】
前記第1の大面又は前記第2の大面は、前記第1の大面又は前記第2の大面の縁部に、面取り部を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の3Dミラー。
【請求項8】
前記ガラス基板は:約200mm~約400mmの長さ及び約100mm~約250mmの幅;約250mm~約350mmの長さ、及び約100mm~約200mmの幅;約300mm~約350mmの長さ、及び約150mm~約200mmの幅;又は約290mm~約295mmの長さ、及び約130mm~約135mmの幅と、前記第1の大面と前記第2の大面との間の距離として定義される厚さであって、前記厚さは約0.5mm~約3.0mmである、厚さとを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の3Dミラー。
【請求項9】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムであって、
前記HUDシステムは:
画像を生成するよう構成されたピクチャ生成ユニット;及び
請求項1~8のいずれか1項に記載の3Dミラー
を備え、
前記3Dミラーは、前記HUDシステムのユーザが視認可能な視聴領域に向かって、前記画像を反射させるよう構成される、HUDシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月29日出願の米国仮特許出願第62/772,788号に対する優先権の利益を主張するものであり、その内容は依拠され、参照によりその全体が本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(Head‐Up Display:HUD)システムは、視覚情報を透明な表面に投影し、これによりユーザは、主要なビューから視線をそらすことなくこの情報を見ることができる。HUDシステムは輸送の分野において配備が増加しており、これは、自動車、航空機、船舶、及び他の車両での使用を含む。例えばHUDシステムを車両において使用でき、これにより該車両の操縦者又はドライバーは、前方視線を維持したまま、ディスプレイスクリーンへと視線を下げる、又はそらすことなく、車両の操縦に関連する情報を見ることができる。よってHUDシステムは、車両の操縦者が安全な操縦視点から視線をそらす必要を最小限に抑えることにより、安全性を改善すると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、HUDシステムには、投影された画像の光学的品質が低いという問題があることが多く、これは投影された画像にとって望ましくない審美的品質をもたらす場合がある。光学的品質が低いと、HUDシステムの安全性が低下する場合さえある。というのは、投影された画像がぼやけている、又は不鮮明であることにより、ユーザにとって、投影された情報の読み取り又は理解が比較的困難になる可能性があり、これにより、ユーザが情報を処理する時間が増大し、該情報に基づくユーザの反応時間が遅れ、ユーザの注意がより散漫になるためである。HUDシステムは典型的には、ミラーを用いて画像を反射して、透明な表面に投影しており、光学的品質の低下は、HUDシステムで使用されるミラーの不備に起因する場合がある。例えば、ミラーの表面又は形状精度の不備は、光学性能を低下させる場合がある。これらの不備は、ミラーの成形及び/若しくは曲げの間に生じる、ミラーの湾曲の形状の不正確さ、並びに/又はミラー若しくはミラー基板の縁部の切断、成形、及び/又は研磨に由来する表面及び/若しくは縁部の不備を含む。
【0004】
更に、光学的透明度を維持しながらより大きな画像を生成できるHUDシステムに対する需要が高まっている。このようなシステムは、拡張現実(AR)HUDシステムと呼ばれる場合もある。というのは、生成される画像は、ユーザの視点から見た場合に、ユーザの広い視野の上に重ねるのに十分な大きさとなり、ユーザが視認する環境の複数の側面に重なって、これらと相互作用できるためである。このような、現実世界の環境への画像の重ね合わせは、「拡張現実(augmented reality)」と呼ばれる。例えば、AR HUD画像は、関心対象である点を、ユーザがそれに近づくにつれて強調でき、又は接近する道路若しくは車線上に走行方向を重ねることができ、又は道路標識を強調できる。AR HUDは、ユーザが見ているものにオーバレイされた、又はユーザが見ているものと相互作用している情報を表示できるため、投影画像が大きいと有益である。しかしながら、大きなAR HUD画像の投影に必要なサイズで適切な品質のミラー又は光学部品を製造するのが困難であるため、画像が大きいほどその生成は困難になり得る。
【0005】
よって、改善された光学品質を有するHUDシステム、特にHUDシステム用の改良されたミラーに対する需要が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態では、
請求対象の主題の更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、またその一部は、「発明を実施するための形態」から、又は以下の「発明を実施するための形態」、特許請求の範囲、及び添付の図面を含む本明細書に記載された請求対象の主題を実践することによって、当業者には理解されるだろう。
【0007】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」は、本開示の実施形態を提示しており、請求対象の主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、本開示の更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は様々な実施形態を図示し、本記載と合わせて、請求対象の主題の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【0008】
例示を目的として、現在好ましいとされている形態が図面に図示されているが、本明細書で開示及び説明される実施形態は、図示されている構成及び手段そのものに限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のいくつかの実施形態による、車両内のHUDシステムの概略図
図2】いくつかの実施形態による、図1のHUDシステムの使用時の自動車のドライバー視点の絵
図3】いくつかの実施形態による、HUDシステムのための非球面ミラーの斜視図
図4】1つ以上の実施形態による、逆方向湾曲を有する非球面ミラーの斜視図
図5】1つ以上の実施形態による、逆方向湾曲を有する図4の非球面ミラーの断面図
図6】従来の真空孔設計による、逆方向湾曲を有する真空鋳型に形状一致させられるミラー基板の断面図
図7】本開示のいくつかの実施形態による、2次元基板を3次元基板に成形するための真空ベースの成形面の平面図
図8A】ある実施形態による、逆方向カーブを有する3Dミラー試料の斜視図
図8B】逆方向カーブを有しない3Dミラーの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
HUDシステムは、HUDユーザの安全及び利便性を改善する様々な情報を提供するために使用できる。例えば輸送においては、車両のゲージ又はナビゲーションといった車両の操縦に関連する情報を、ドライバーの前方の領域に投影できる。このような情報としては、車両速度、燃料レベル、気候制御設定、娯楽に関する設定、ターン・バイ・ターン方式のナビゲーションインジケータ、到着予定時刻、及び速度、交通状況又は危険な条件に関する警告を挙げることができる。情報は、テキスト、シンボル、写真、ビデオ、アニメーション、及び1つ以上の色として提示できる。これらのHUDシステムは、車両が更にコネクテッドカー化され、インテリジェントになるにつれて、その使用頻度及び用途が増大すると考えられる。例えば、車両が、LiDAR及び光学センサ等のセンサを介して、並びに無線通信を介して、その環境をより良好に認識するようになるにつれて、特にAR HUDシステムへの要望が高まることが予測される。
【0011】
図1に示されているように、HUDシステム100を、例えばドライバーDが操縦する自動車であってよい車両V内に設ける。HUDシステム100は車両自体に組み込むことができ、例えば図1に示されているように、全体又は一部分が車両Vのダッシュボード110に組み込まれる。HUDシステム100はピクチャ生成ユニット(picture generating unit:PGU)102を含み、これは、PGU102からの信号に基づいて画像を生成するよう構成されたディスプレイ103に接続される。上記画像はその後、何らかの方法で、ディスプレイ103からユーザが視認可能な領域、例えばフロントガラス108又は他の何らかの表面のある領域へと配向される。図1では、上記画像は平面ミラー104によって、湾曲ミラー106へと反射される。画像は湾曲ミラー106からフロントガラス108に向かって、そしてフロントガラス108の投影領域112上へと投影される。HUDシステム100は、投影領域112が車両Vの走行中にドライバーDの通常の視線内にある、又は車両Vの操縦中に観るのに適した所定の領域に対したものとなるように、構成できる。例えば投影領域112は、ドライバーの視点から見たときに投影画像が道路に重なるように、位置決めできる。このシナリオの例が図2の図に示されており、ここでは、破線は視認できない投影領域112を画定しており、この中において画像がフロントガラス108上に投影される。
【0012】
ディスプレイとしては、ブラウン管(cathode ray tube:CRT)ディスプレイ、発光ダイオード(light‐emitting diode:LED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)組立体、レーザ投影システム、導波管ディスプレイ、又は当業者に公知の他のタイプのディスプレイを挙げることができる。PGUは、ディスプレイによって得られる画像を生成又は加工するためのコンピュータ又はプロセッサを含んでよい。光学部品は、例えばレンズ、ビームスプリッタ、ミラー、及びコンバイナのうちのいくつかの組み合わせを含んでよく、構成部品及びHUDシステムの設計は、図1に示されている例に限定されない。HUDシステムの構成部品の組み合わせは、コリメートされた光を生成するように構成できる。コリメートされた光を、ユーザの視野内にある表面又はコンバイナに投影することにより、ユーザは、投影画像と通常の視野とを同時に見ることができる。例えば車両用途では、コンバイナはフロントガラスとすることができる。あるいはコンバイナは、車両に組み込まれた別個の構成部品、又はドライバー若しくは乗客がコンバイナの透明な表面上の投影画像を見ることができるような車両内の位置に設置できる、携帯型構成部品とすることができる。
【0013】
図1及び2では、投影領域112はフロントガラス108上にあるが、投影領域を、フロントガラスから離れ、フロントガラスとドライバーとの間に位置決めされる、コンバイナ上に配置することもできる。例えばこのようなコンバイナは、車両Vのダッシュボード110に組み込むことができ、又はダッシュボード110の上に位置決めされる携帯型若しくは分離型構成部品とすることができる。当業者であれば、HUDシステムの構成部品の基本的な配置を理解することになるため、本開示の実施形態は、いずれの1つ以上のHUDシステム、又はHUDシステムの光学部品の1つ以上の特定の配置に限定されない。
【0014】
本開示は主に、HUDシステムで使用される湾曲若しくは3次元ミラー、又は3次元HUDミラーの形成に使用されるミラー基板、及びこれらの形成及び成形方法を対象とする。HUDシステム中の3次元(3D)ミラー、例えば図1の湾曲ミラー106は、従来はプラスチック材料製であったいくつかのタイプのミラー基板からなる本開示の実施形態は主にガラス又はガラスセラミック材料製のミラー基板を対象とするが、いくつかの実施形態の態様は、他の様々な材料のミラー基板に関連する。3Dミラーは、基板の凹面上に反射性コーティングを有してよい。湾曲基板は、球面、非球面、フレネル形状、及び/又は回折形状であってよい。好ましい一実施形態では、反射面又はコーティングは、凹状の非球面表面上に設けられる。非球面表面は、複数の曲率半径を有する。例えば、4面非球面ミラーの場合、非球面表面は、4つの縁部それぞれに沿って異なる曲率半径を有してよい。
【0015】
よって図3に示すように、ミラー300は、第1の縁部に沿った曲率半径R、第2の縁部に沿った曲率半径R、第3の縁部に沿った曲率半径R、及び第4の縁部に沿った曲率半径Rを有する非球面形状の反射面308を有する。面308は非球面形状であるため、R≠R≠R≠Rである。図3はまた、湾曲面308の縁部及び中央上の異なる複数の点が、2次元平面に対して、様々な量a~eだけ変位されている様子を示す。この平面は、図示されている3次元形状へと成形される前の2次元ミラー基板を表す基準平面であってよい。いくつかの実施形態では、a≠b≠c≠dであるHUDミラーが提供される。
【0016】
しかしながら、HUDシステムで使用される湾曲ミラー及びこれらのミラーの成形方法は、得られる形状精度、並びにミラーの表面及び縁部品質に関して、改善できる。例えば、画像が湾曲ミラーによって反射される際の画像品質の劣化を防止するために、ミラーが高いレベルの形状精度及び表面粗度を有している必要がある。本開示の実施形態では、50μm未満の形状精度及び3nm未満の表面粗度(Ra)が達成される。HUDシステムのためのミラーの光学的歪みは、ミラーの製造中又は成形中にミラーに導入される場合がある表面の不備及び縁部の不備に起因し得る。AR HUDシステムで使用するためのミラーの成形時、このミラーが比較的大きく、また湾曲が複雑であるため、上述のような不備の発生が増加する。特に本明細書に記載の実施形態は、逆方向湾曲を有する複雑な非球面湾曲を有する、大型の3Dミラーに関する。
【0017】
図4は非球面ミラー400の一例を示し、これは、反射性である第1の主面408を有し、また領域410に逆方向湾曲を有する。ミラー400のこのような湾曲は、図4の線5’‐5’に沿ったミラー400の断面図を示す図5において、より明瞭に確認できる。ミラー400は、第2の主面409の反対側の第1の主面408を有し、厚さtが第1の主面408と第2の主面409とを隔てている。領域410は、逆方向湾曲が存在する領域を強調している。逆方向カーブは、複合カーブの一種である。複合カーブは、交点において共通接線を有する2つ以上の弧からなる。逆方向カーブでは、2つの弧又はカーブが交点において1つの共通接線を共有し、従って湾曲の方向が、隣接するカーブの交点において変化する。逆方向カーブは、「S字型(s‐shaped)」カーブと呼ばれる場合もある。例えば図5では、第1のカーブは、湾曲の軸Cに関する第1の曲率半径Rによって画定され、第2のカーブは、湾曲の軸Cに関する第2の曲率半径Rによって画定される。上記第1及び第2のカーブは、変曲点412で交差し、この点においてこれらのカーブは出会い、ミラーの湾曲が方向を変化させる。なお、図5は正確な縮尺で描画されておらず、逆方向カーブの基本構造を例示するために使用される。本開示の1つ以上の実施形態では、ミラーは、図5に示されているように、接合して1つの逆方向カーブを形成する、2つの曲率半径を有する2つのカーブからなってよく、又は隣接するカーブによる1つ以上の逆方向カーブを含む、2つ以上の曲率半径の多数のカーブを備えてよい。
【0018】
上述のように、逆方向湾曲を有する大型の複雑に湾曲した非球面ミラーを成形するのは困難である。このようなミラーの形成の困難さの一部を例示するために、これより、3Dミラーの従来の成形方法について記載する。3D形状ミラー又はミラー基板を成形するための最も一般的な方法のうちの2つは、即ちプレス成形法及び真空成形法である。しかしながら、プレス成形法及び真空成形法はいずれも欠点を有し得る。プレス成形法では、上側金型及び下側金型を用いて、物理的な力によってガラス基板等の基板をプレスする。例えば、2Dガラスプリフォームを上側金型と下側金型との間に配置した状態で、上側金型を下側金型の中へとプレスしてよく、ガラスプリフォームは、これらの金型のうちの一方又は両方の表面の形状に従って成形される。その結果、成形済みのガラス基板の凹面及び凸面の両方に金型の押し跡が残る場合があり、これは研磨を必要とする。更に、上側及び下側金型の輪郭の狂いにより、上側及び下側金型の輪郭を正確に一致させることが困難である場合があり、従って成形済みのガラス基板に関して正確な形状を達成することが困難となる場合がある。例えば、非球面ミラーの輪郭に関する仕様は、±25μm未満であり得るが、機械加工後の金型の輪郭の狂いは通常30~50μmである。
【0019】
真空成形法では、単一の金型(例えば下側金型)を使用でき、真空孔が金型の表面に成形される。平坦な又は2次元(2D)ガラスシートを金型の表面に置き、真空孔を介して真空圧を供給することにより、ガラスを金型の湾曲又は3次元(3D)表面に形状一致させる。多くの場合、成形面全体にわたって、孔を有するセラミック材料から真空面が形成される。しかしながら、成形済みのガラス基板の表面上に真空孔の跡が形成されるのを回避することは困難である。これらの真空孔の跡、即ち製造アーティファクトは、基板又は完成品のミラーの光学性能を損なう可能性がある。更に、典型的な真空成形法は、プレス法に比べて高い成形温度を必要とする場合がある。成形温度が高いと、表面品質に影響する恐れがあり、波打ち、くぼみ、及び押し跡といった欠陥が形成される恐れがある。
【0020】
しかしながら、逆方向湾曲を有するHUDミラーを3D成形する際、逆方向湾曲の領域に不備が形成される可能性が高い。これを例示するために、図6は、真空成形面515上に配置されたガラスミラー基板500を示し、上記真空成形面515は、成形面515全体にわたって、一連の真空孔517を有する。成形面515は、逆方向湾曲領域510に逆方向カーブ519を有する。真空を真空孔517に印加することによって、第2の主面509を成形面515に対して形状一致させる。しかしながら、この形状一致プロセス中、ガラスミラー基板500の他の領域が成形面515に対してまだ形状一致させられていない間に、ガラスミラー基板500を成形面515に向かって牽引する際に、逆方向湾曲領域510内にあるミラー基板500の部分508がまず成形面515に接触する。従って、所望の製品形状を達成するためには、これらの残りの領域も成形面515に接触するまで、ガラスミラー基板500に真空圧を継続的に印加する必要があり、よって、逆方向湾曲領域510内のガラスミラー基板500の部分508は、長時間にわたって、過剰な圧力によって成形面515に接触する。これにより、特に逆方向湾曲領域510において、ガラスミラー基板500の表面の劣化が発生する。
【0021】
更に、少なくとも残りの未成形の部分において、3D成形中にガラスミラー基板500の温度を上昇させることなく、第2の主面509を成形面515に対して正確に形状一致させるために必要な湾曲を得るのは、困難である。このような成形温度の上昇は、逆方向湾曲領域510におけるミラー基板500の表面品質の劣化を激化させる。従って従来の方法では、逆方向カーブ設計のガラスミラー表面に必要な品質レベルを満たすのは極めて困難である。これらの理由により、逆方向湾曲を有する、複雑に湾曲した非球面ミラーの作成(ここでミラー基板はガラス系材料製である)について、他に成功者は存在しないと考えられる。
【0022】
他方、本開示の1つ以上の実施形態では、逆方向湾曲を有する3D非球面ミラーは、優れた表面品質、及びその結果としての画像品質を有する。(反射面の反対側の)第2の大面は、ミラーの有効領域に真空成形の跡又はアーティファクトを有しない。いくつかの実施形態によると、これは、真空鋳型の成形面全体にわたって形成された真空孔を用いないことによって達成される。よって、ガラスミラー基板の逆方向湾曲領域が、鋳型表面に接触することになる第1の領域である場合であっても、ガラスの表面の過剰な真空圧による損傷は防止される。本開示の特定の実施形態では、以下で更に説明されるように、成形面の縁部に溝型の真空孔を含む鋳型が使用される。溝型の真空孔は、表面及び画像品質に損害を与えることなく、ガラスミラー基板を鋳型表面に対して形状一致させることができる。また、真空鋳型の成形面の表面品質は、従来の方法のものより優れているため、逆方向湾曲領域が比較的高圧で長時間接触する場合であっても、粗度は他の領域に比べて大きく劣化しない。
【0023】
逆方向湾曲領域の最初の接触によって、逆方向湾曲領域内の第2の主面の表面粗度は、逆方向カーブが存在しない場合よりもわずかに大きくなり得るが、概して許容範囲内であり、逆方向カーブに関して従来達成可能だったものより優れている。例えば、1つ以上の実施形態では、第2の大面の表面粗度Raは約100nm未満であり、最大(PV)粗度は約1μm未満である。しかしながら、第2の主面におけるこのレベルの比較的わずかな劣化は、ミラーに必要な第1の主面上の所望の表面粗度を達成するには十分である。
【0024】
更に、従来の成形方法は、3D成形プロセス(プレス成形又は真空成形湾曲形成プロセス)においてオーバーサイズ2次元基板を使用する。本明細書中で使用される場合、「オーバーサイズ(oversized)」は、2D基板材料の長さ及び/又は幅が、完成品の3D HUDミラーに必要なものより大きいことを意味する。オーバーサイズ基板の使用により、完成品の3Dミラーの成形のために、後で上記オーバーサイズ基板をより小さなサイズに切断することが必要になる。よって、オーバーサイズ2D基板を3次元形状に成形するステップS2の後、得られたオーバーサイズ湾曲基板材料を、所定の経路に沿って切断し、所望のサイズの3Dミラー基板と、廃棄可能な多少の廃ガラスとを得る。更に切断後、成形、面取り部加工、及び/又は研磨を含む追加の表面及び縁部処理を実施してよい。切断後縁部処理は、切断自体によって形成された欠陥を修復する若しくは最小限に抑えるため、又は切断済みの縁部を所望のプロファイルの形状(例えば主面の面取り加工された縁部若しくは面取り加工された隅)に成形するために、必要となり得る。
【0025】
しかしながら、オーバーサイズ基板を3Dミラーのサイズに切断するのは極めて困難である。というのは、切断を行うときにはオーバーサイズ基板が既に3D形状に成形されているためである。よって、3D表面の切断の困難さを理由として、完成品の製品に関して望ましい正確な形状及び寸法への切断は困難になり得る。これにより、完成品の製品の製品寸法には、比較的大きなばらつきが発生する。更に、非球面ミラーの3D形状を理由として、縁部は、標準的なホイール研磨法を用いて容易には研磨又は面取り加工できず、その代わり、複雑で時間及びコストがかかる、コンピュータ数値制御(computer numerical control :CNC)面取り加工に頼らなければならない。また、面取り加工を3D湾曲縁部に沿って実施するため、一定の面取り部品質を維持することも困難である。ミラーの隅の仕上げも同じ理由で困難である。例えば、審美的目的、又は耐久性及び取り扱いやすさの改善のために、(平面図で見た場合の)3Dミラーの隅の形状を、丸みを帯びた隅の形状に成形することが望ましい場合がある。しかしながら、3D基板の隅の仕上げが困難であるため、通常は代わりに直線状に切断された隅又は面取り部が適用される。
【0026】
従って、本開示の1つ以上の実施形態によると、面取り加工、研磨、及び/又は縁部成形は、2Dミラープリフォームに対して行われる。本明細書中で使用される場合、「プリフォーム(preform)」は、3D成形(例えば真空成形)前の略2次元のミラー基板を指し、このプリフォームは、3D成形後の3Dミラーにとって望ましいサイズをもたらすことになるサイズへと、事前切断又は成形されている。よって、プリフォームが2D状態である間に、プリフォームの縁部を、容易かつ効率的に面取り加工、研磨、又は成形できる。これらの縁部仕上げステップの後で、真空成形をミラープリフォームに対して実施できる。その結果、ミラー基板が3D状態となった後、縁部仕上げ(面取り加工、研磨、又は成形)は必要ない。更に、2Dプリフォームの長さ及び幅は、基板を3D基板に成形する際の基板のある程度の収縮を考慮してサイズ設定してよい。
【0027】
よって、オーバーサイズガラス基板を用いた成形は:成形後にガラスを切断する追加のステップを必要とし;成形後にトリミングされるガラス又は廃棄されるガラスにより、ガラスの利用率が低くなり;切断後に、困難であり比較的非効率的である縁部研磨及び/又は面取り加工を必要とし;また、最終的な完成製品が、プリフォームベースの成形で形成されるものと同一のサイズとなり得る場合であっても、比較的大型の設備を必要とする。一方、本開示の実施形態のミラープリフォームを用いた3D成形では、真空成形後にミラー基板を切断する必要はなく、廃棄されるガラス又はカレットガラスの生成が削減される。更に、プリフォームベースの成形は、より簡単なプロセスとすることができ、コスト効率がより高いものとすることができ、また特に表面縁部品質、粗度、及び寸法安定性に関して優れた品質を有する3Dミラーを製造できる。
【0028】
上述のように、本開示の実施形態によると、2Dプリフォームから成形された、結果として得られる3Dミラーの寸法は、極めて高精度であり、ばらつきが小さい。1つ以上の実施形態では、3Dミラーの湾曲の複雑さ又は製品サイズに関係なく、±0.1mmの寸法公差が可能である。例えば、長さ寸法及び幅寸法の両方に関するばらつきが0.05mm未満の、大型のミラー基板が製造され、基板の長さはおよそ291mmであり、幅はおよそ130.5mmであった。1つ以上の実施形態では、輪郭PV又は輪郭の偏差に関して測定される形状精度は、約250mm未満の水平寸法を有するHUDミラー基板に関して50μm以下であり、約350mm未満の水平寸法を有するHUDミラー基板に関して約100μm以下である。このように、2Dプリフォームの縁部品質を維持しながら、大型のHUDミラーについてさえ、寸法の一貫性を実現できる。例えば、本開示の実施形態は、約200mm以上、約250mm以上、約300mm以上、又は約350mm以上の長さを有するHUDミラー基板を含む。HUDミラー基板の幅は、約100mm以上、約150mm以上、又は約200mm以上であってよい。いくつかの特定の実施形態では、HUDミラー基板は、約350mm以上の長さ、及び約200mm以上の幅を有することができる。
【0029】
いくつかの実施形態によると、基板縁部の非対称な面取り加工により、成形性が改善され、ミラーの縁部によって反射された歪みを有する画像の視認性が改善される。縁部歪みの場合、ディスプレイ画像の反射の角度は、面取り加工された表面の傾斜によって変化し、これにより、歪んだ画像をユーザが見るのを防止できる。これにより、知覚される縁部歪みを有しない投影画像を得ることができる。縁部の成形性は、面取り部が大きいために縁部領域が薄くなり、縁部領域がより成形しやすくなることによって改善されると考えられる。例えば、同一の真空圧を使用する場合、非対称でない縁部に比べて、非対称な縁部に関して、コンピュータ支援設計(computer‐aided design:CAD)モデルに対する縁部の輪郭の狂いは減少し、輪郭の精度が上昇する。このような輪郭の精度の改善により、画像の歪みが減少する。更に、非対称な面取り加工により、望ましくない又は危険な光がガラス縁部に入り、HUDシステムのユーザの眼に向かって配向されることを防止できる。このような望ましくない光としては、例えば太陽光を挙げることができ、これはドライバーの注意をそらしたり、ドライバーの視力を妨げたりする恐れがある。しかしながら、いくつかの実施形態では対称な面取り部が好ましい場合がある。
【0030】
上述のように、本開示の実施形態は、真空成形法を用いて湾曲又は3Dミラー基板を成形するステップを含む。一態様では、真空成形法は、図7に示すような金型700を使用する。金型700は、3Dミラー又はミラー基板の所望の形状に成形された成形面702を有する。金型700は任意にハウジング706を含むことができ、これは成形面702の外周を取り囲み、ミラープリフォームが成形のために配置される空間を少なくとも部分的に取り囲んで画定する。ミラー基板(図示せず)を成形面702に対して形状一致させるために、1つ以上の真空孔を通して真空圧を供給する。しかしながら上述のように、成形面702全体に分布する真空孔は、基板が真空孔に接触した場所である不備の形態の、製造アーティファクトを残す場合がある。よって金型700は、ミラー基板の有効領域に接触する領域には真空孔を含まない。その代わり、金型700は成形面702の外周に溝型の真空孔704を有する。溝型の真空孔704の位置により、溝型の真空孔704に起因するいずれの不備又はアーティファクトは、HUDシステムのユーザには明らかでなくなる。というのは、これらの不備はミラーの有効領域内に位置しないか、又は少なくともちょうど縁部には位置しないためである。いくつかの実施形態によると、溝型の真空孔704は、プリフォームを成形面702上に配置した場合に、2Dミラープリフォームの縁部の内側約2.0mm以下に位置決めされることになる。本明細書中で使用される場合、「有効領域(effective area)」は、ミラー又はミラー基板の、投影されてユーザに視聴されることになる画像を反射する部分であり、ミラー又はミラー基板の面取り加工された縁部領域内に位置する。
【実施例
【0031】
図8は、本開示の1つ以上の実施形態による、逆方向カーブを有する非球面ミラー基板800の一例を示す。Ra及びPVの粗度の測定値を、非球面ミラー基板800の第1の主面808及び第2の主面(図示せず)上の3点(#1、#2、及び#3)で得たが、ここで点#3は、逆方向湾曲の領域810内に位置していた。第2の主面は図示されていないが、第2の主面上の測定された点は、第1の主面808上に示されている点に対応する(すなわち点#1~#3に対向する)。これらの測定値を、逆方向カーブを有しない3D非球面ミラー900の第1の主面908上での同様の測定値と共に、以下の表1に提示する。表1の最終行の比は、点#3での所与の測定値を点#1での測定値で除算したもの、又は点#3での測定値を点#2での測定値で除算したものの、最大値である(例えば比=max[#3/#1又は#3/#2])。表1の測定値の単位はナノメートルである。
【0032】
【表1】
【0033】
表1のデータは、逆方向カーブを有するミラー800上の様々な点の間で、粗度値Ra及びPV(又はRmax)を比較したもの、並びに逆方向カーブミラー800と非逆方向カーブミラー900との間で、これらの値を比較したものである。逆方向カーブミラー800の場合、上述のように、逆向きの湾曲の成形が困難であるため、Ra値及びPV値は全体として増大する傾向がある。しかしながら、本明細書で開示される実施形態の利点により、粗度値は領域#1~#3の全ての領域において、製品に必要な粗度仕様レベルを満たす。更に逆方向カーブミラー800の場合、逆方向カーブ領域810と(点#1及び#2の両方における)他の領域との間のRa値及びPV値の差の比は、非逆方向カーブミラー900におけるこのような比とそれほど異ならない。また、これらの試料の形状精度は、全領域にわたって50μm未満であると測定される。従ってこれらの結果は、逆方向湾曲を有する比較的複雑に湾曲したガラス系非球面ミラーを、逆方向カーブを有しない従来の非球面ミラーに匹敵する品質で実現できることを実証している。
【0034】
1つ以上の実施形態によると、非逆方向カーブ領域における第1の大面の表面粗度Raに対する、逆方向カーブ領域における第1の大面の表面粗度Raの比は、約3.0未満、約2.9未満、約2.8未満、約2.7未満、約2.6未満、約2.5未満、約2.4未満、約2.3以下、約2.2以下、約2.1以下、又は約2.0以下である。いくつかの実施形態では、非逆方向カーブ領域における第2の大面の表面粗度Raに対する、逆方向カーブ領域における第2の大面の表面粗度Raの比は、約1.5以下、約1.4以下、約1.3以下、約1.2以下、約1.1以下、又は約1.08以下、又は約1.0である。
【0035】
同様に、非逆方向カーブ領域における第1の大面の表面粗度PVに対する、逆方向カーブ領域における第1の大面の表面粗度PVの比は、約3.0未満、約2.9未満、約2.8未満、約2.7未満、約2.6未満、約2.5未満、約2.4未満、約2.3以下、約2.2以下、約2.1以下、又は約2.0以下である。いくつかの実施形態では、非逆方向カーブ領域における第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、逆方向カーブ領域における第2の大面のPV表面粗度の比は、約2.0以下、約1.9以下、約1.8以下、約1.7以下、約1.6以下、約1.5以下、約1.4以下、約1.3以下、約1.2以下、約1.1以下、又は約1.0である。
【0036】
1つ以上の実施形態によると、3D HUDミラーの第1の大面の少なくとも一部分は、反射面である。上記反射面は、第1の大面に適用されたコーティング又は他の層を含み、また、例えば1つ以上の金属酸化物、セラミック酸化物、又は金属‐セラミック合金を含むことができる。特定の実施形態では、反射性コーティングはアルミニウム又は銀製である。反射面は、スパッタリング、蒸着(例えばCVD、PVD)、めっき、又は反射面をコーティング又は供給する他の当業者に公知の方法によって、形成できる。反射面は、基板を湾曲又は非球面形状へと成形した後で、3D成形済み基板上に生成される。しかしながら、実施形態はこの順序に限定されず、3Dミラーを、反射面を有する2Dプリフォームから成形することも考えることができる。特に、完成品の3Dミラーに逆方向カーブが存在する場合であっても、反射面を有する2Dミラープリフォームから、第1の大面上の反射面を劣化させることなく、3Dミラーを形成できる。更に本開示の実施形態は、低温3D成形が可能であり、これにより、ガラスプリフォームを湾曲させる間、反射面の保存を補助できる。
【0037】
複雑な湾曲及び大きなサイズが達成可能であるにもかかわらず、形状精度、並びに表面及び/又は縁部の品質若しくは粗度を、所望のレベルに維持できる。1つ以上の実施形態のある態様として、上記ミラー基板は、上記凹面において、100μm未満、又は50μm未満の輪郭最大(PV)形状精度を有する。上記ミラー基板は、上記凹面において、10mmあたり1μm未満の算術平均うねりWaを有する。実施形態の更なる態様として、上記凸面は、30nm未満の表面粗度Ra、及び1μm未満の最大(PV)粗度を有する。上記凸面は、20nm未満の表面粗度Ra、及び300nm未満の最大(PV)粗度を有してよい。上記凸面は更に、上記凸面の縁部から2mm以内に、溝型の真空孔の痕跡を含んでよい。上記溝型の真空孔の痕跡は、いくつかの実施形態によると、1μm未満の深さを有することができる。更に上記凸面は、上記溝型の真空孔の痕跡以外のいかなる真空孔の痕跡も有しない。1つ以上の実施形態の更なる態様として、上記凹面は、2nm未満、又は1nm未満の粗度Ra、及び20nm未満、15nm未満、又は12nm未満の最大(PV)粗度を有する。
【0038】
1つ以上の実施形態では、上記ミラー基板は、上記第1の大面と上記第2の大面との間の距離として定義される厚さを有し、上記厚さは、約3.0mm以下であるか、約0.5mm~約3.0mmであるか、約0.5mm~約1.0mmであるか、又は約1.0mm~約3.0mmである。上記ミラー基板に使用される上記ガラス又はガラスセラミック材料は、ソーダライムガラス、アルミノシリケート、ボロアルミノシリケート、又はアルカリアルミノシリケートガラスを含んでよい。更に、上記ガラス又はガラスセラミック材料は、強化ガラス材料とすることができ、例えば化学強化できる。
【0039】
1つ以上の実施形態によると、上述のHUDミラー基板と、上記ミラー基板の第1の大面上に配置された反射層とを含む、3次元HUDミラーが提供される。
【0040】
更なる実施形態では、3次元ミラーの成形方法が提供される。上記方法は、第1の大面、上記第1の大面の反対側の第2の大面、及び上記第1の大面と上記第2の大面とを接続する小面を有する、ミラープリフォームを提供するステップを含む。上記ミラープリフォームはガラス又はガラスセラミック材料を含み、上記プリフォームの上記第1の大面及び上記第2の大面は2次元である。上記方法は更に:湾曲支持面を有する成形装置上に、上記第2の大面が上記湾曲支持面に対面するように、上記ミラープリフォームを配置するステップ;及び上記ミラープリフォームを上記湾曲支持面に形状一致させることにより、上記第2の大面に対応する凸面と、上記第1の大面に対応する凹面であって、上記凹面は第1の曲率半径を有する、凹面とを有する、湾曲ミラー基板を形成するステップを含む。形状一致させる上記ステップの後、上記凹面は、3nm未満の粗度Ra、及び30nm未満の最大(PV)粗度を有する。
【0041】
上記方法の1つ以上の実施形態のある態様として、上記湾曲ミラー基板は、形状一致させる上記ステップの間又は後には切断、成形、面取り加工、又は研磨されない、縁部を有する。上記小面は、上記湾曲ミラー基板の断面縁部プロファイルと同一の断面縁部プロファイルを有する。上記ミラープリフォームの縁部プロファイルは、上記小面の第1の大面側、及び上記小面の第2の大面側のうちの少なくとも一方に、面取り部を含むことができ、上記面取り部はC面取り部又はR面取り部とすることができる。C面取り部の場合、上記C面取り部の長さは0.1mm以上、又は0.3mm以上である。R面取り部の場合、上記R面取り部の長さは0.5mm以上である。
【0042】
いくつかの実施形態の更なる態様では、形状一致させる上記ステップの後の上記小面の表面粗度は、形状一致させる上記ステップの前の上記小面の表面粗度の2%以内である。形状一致させる上記ステップの後の上記小面の表面粗度は、形状一致させる上記ステップの前の上記小面の表面粗度と同一であってよい。上記ミラープリフォームは、平面図で見た場合、丸みを帯びた隅を有する。上記丸みを帯びた隅は、上記ミラー基板の上記丸みを帯びた隅と同一であってよく、形状一致させる上記ステップの間又は後には成形又は研磨されない。1つ以上の実施形態では、上記方法は、上記2次元ミラープリフォームの上記小面を加工して、上記湾曲ミラー基板の所定の縁部プロファイルを達成するステップを含み、上記加工は、切断、面取り加工、及び研磨のうちの少なくとも1つを含む。
【0043】
いくつかの実施形態のある態様として、上記湾曲ミラー基板は:約200mm~約400mmの長さ、及び約100mm~約250mmの幅;約250mm~約350mmの長さ、及び約100mm~約200mmの幅;約300mm~約350mmの長さ、及び約150mm~約200mmの幅;又は約290mm~約295mmの長さ、及び約130mm~約135mmの幅を有する。上記ミラー基板は、上記凹面において、100μm未満、又は50μm未満の輪郭最大(PV)形状精度を有する。上記ミラー基板は更に、上記凹面において、10mmあたり1μm未満の算術平均うねりWaを有することができる。更に上記湾曲ミラー基板は、上記凹面において、30nm未満の最大粗度深さRmaxを有してよい。上記凸面は:30nm未満の表面粗度Ra、及び1μm未満の最大(PV)粗度;又は20nm未満の表面粗度Ra、及び300nm未満の最大(PV)粗度を有する。
【0044】
1つ以上の実施形態のある例では、約350mmの長さ及び約200mmの幅を有する試料HUDミラーを製造した。このサイズは、AR HUD構成に好適な大型HUDミラーと一致している。HUDミラーは、上の段落に記載の公差内の、寸法公差、形状精度、及び表面品質を有していた。具体的には、HUDミラーは、OGP(米国ニューヨーク州ロチェスター)から入手可能なSmartScope ZIP(登録商標)等の市販の計測機器で測定した場合に、±0.1mmの寸法公差を有していた。形状精度は、OGPから入手可能なCobra(商標)3Dスキャナ等の市販の3Dスキャナで測定した場合に、輪郭PVに関して50μmであると測定された。表面品質の測定値は:市販のスタイラスプロファイラで測定した場合に、10mmあたり1μm未満の算術平均うねりWa;並びにZygo光学計測システムで測定した場合に3nm未満の算術平均表面粗度Ra及び30nm未満の粗度Rmaxを含んでいた。
【0045】
いくつかの実施形態のある態様では、上記湾曲支持面は溝型の真空孔を備える。特に、上記ミラープリフォームを上記成形装置上に配置したとき、上記溝型の真空孔は上記大面の縁部の2mm以内である。形状一致させる上記ステップの後、上記凸面は、上記縁部全体に沿って、上記凸面の縁部から2mm以内に、溝型の真空孔の痕跡を有する。上記溝型の真空孔の痕跡は、1μm未満の深さを有してよい。上記凸面は、上記溝型の真空孔の痕跡以外のいかなる真空孔の痕跡も有しない。1つ以上の実施形態の更なる態様として、上記凹面は、2nm未満、又は1nm未満の粗度Ra、及び20nm未満、15nm未満、又は12nm未満の最大(PV)粗度を有する。1つ以上の実施形態では、上記ミラープリフォームは、上記第1の大面と上記第2の大面との間の距離として定義される厚さを有し、上記厚さは、約3.0mm以下であるか、約0.5mm~約3.0mmであるか、約0.5mm~約1.0mmであるか、又は約1.0mm~約3.0mmである。
【0046】
上記方法の1つ以上の実施形態の更なる態様として、形状一致させる上記ステップは、上記ミラープリフォームのガラス転移温度未満の温度で実施される。上記ミラープリフォーム又は上記湾曲ミラー基板の温度は、上記形状一致させる上記ステップの間又は後に、上記ミラープリフォームのガラス転移温度を超えて上昇しない。上記ガラス又はガラスセラミック材料は、ソーダライムガラス、アルミノシリケート、ボロアルミノシリケート、又はアルカリアルミノシリケートガラスを含んでよい。上記ガラス又はガラスセラミック材料は強化ガラス材料であってよく、強化は化学強化によって実施できる。
【0047】
1つ以上の実施形態では、3次元ミラーの成形方法が提供され、上記方法は:本明細書に記載の実施形態による3次元ミラー基板を成形するステップ;及び第1の大面上に反射層を配置するステップを含む。
【0048】
本開示の1つ以上の実施形態によると、3Dミラー基板を形成するために本明細書に記載のガラス系プリフォームを用いる、HUDシステムのためのミラーが提供される。上記ミラーは、上記3Dミラー基板の第1の大面上に反射層を含む。上記3Dミラー基板は、上記第1の大面が凹形状を有し、第2の大面が凸形状を有するような、第1の曲率半径を有し、この第1の曲率半径は、第1の湾曲の軸に関して測定される。上記3Dミラー基板は、上記第1の湾曲の軸とは異なる第2の湾曲の軸に関して測定された第2の曲率半径を有し、上記第1の湾曲の軸は上記第2の湾曲の軸に対して垂直である。いくつかの実施形態では、上記第1の大面は非球面形状を有する。
【0049】
別の実施形態では、3次元(3D)ミラーの成形方法が提供され、上記方法は:第1の大面、上記第1の大面の反対側の第2の大面、及び上記第1の大面と上記第2の大面とを接続する小面を含む、2次元(2D)ミラープリフォームを提供するステップであって、上記第2の面取り部は上記第1の面取り部と異なるサイズ又は形状を有する、ステップを含む。上記2Dミラープリフォームは、逆方向カーブを備えた湾曲支持面を有する成形装置上に配置され、上記第2の大面は上記湾曲支持面に対面する。上記2Dミラープリフォームを上記湾曲支持面に形状一致させることにより、第1の方向の第1の曲率半径、及び上記第1の方向とは反対の第2の方向の第2の曲率半径を有する、湾曲又は3Dミラー基板が形成される。
【0050】
1つ以上の実施形態では、上記2Dミラープリフォームを湾曲支持面に形状一致させる上記ステップは、上記プリフォームのガラス転移温度未満の温度で実施される。上記ミラー基板の温度は、形状一致させる上記ステップの間又は後には、ガラス系基板材料のガラス転移温度を超えて上昇させなくてよい。
【0051】
HUDシステムの実施形態の複数の態様では、ディスプレイユニットは、LCD、LED、OLED、若しくはμLEDディスプレイパネルを備え、プロジェクタを含むことができる。
【0052】
ガラス系基板は:3.0mm以下;約0.5mm~約3.0mm;約0.5mm~約1.0mm;約1.0mm~約3.0mm;又は約2.0mmの厚さを有する。
【0053】
いくつかの実施形態のある態様として、上記第1の大面の面取り加工は、投影画像の縁部歪みを低減するよう構成される。上記第1の大面の上記面取り加工は、ユーザに向かって反射される望ましくない光の量を低減するよう構成できる。投影面は、車両のフロントガラス、又は車両の内装に設置されるように構成されたコンバイナとすることができ、また上記HUDシステムは、ARスタイルのHUDシステムとして動作するよう構成される。
【0054】
反射性である上記第1の大面は、上記ガラス系基板上に反射性コーティングを備え、この反射性コーティングは、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、又は金属‐セラミック合金を含み、またアルミニウム又は銀を含むことができる。上記ディスプレイユニットは、LCD、LED、OLED、若しくはμLEDディスプレイパネル、及び/又はプロジェクタを含むことができる。上記HUDシステムは更に、投影画像を上記HUDシステムのユーザが視聴するための投影面を含むことができ、上記ディスプレイユニットは画像を生成するよう構成され、上記ミラーは上記画像を反射して、上記投影面上に上記投影画像を形成するよう構成される。上記投影面は、上記ミラーの形状と略同一の形状を有し、上記投影面は、フロントガラス又はコンバイナであり、また上記投影面は、非球面形状を有することができる。
【0055】
上記ガラス系基板は:3.0mm以下;約0.5mm~約3.0mm;約0.5mm~約1.0mm;約1.0mm~約3.0mm;又は約2.0mmの厚さを有する。
【0056】
基板材料
HUDシステムのミラーのための好適なガラス基板は、非強化ガラスシートであっても、強化ガラスシートであってもよい。(強化されているかいないかにかかわらず)ガラスシートとしては、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロアルミノシリケートガラス、又はアルカリアルミノシリケートガラスが挙げられる。任意に、ガラスシートは熱強化されていてよい。
【0057】
好適なガラス基板は、イオン交換プロセスによって化学強化されていてよい。このプロセスでは、典型的には所定の期間にわたってガラスシートを溶融塩浴中に浸漬することにより、ガラスシートの表面又は表面付近のイオンを、塩浴中のより大きな金属イオンに交換する。一実施形態では、溶融塩浴の温度は約430℃であり、所定の期間は約8時間である。ガラスに上述のようなより大きなイオンを取り込むことにより、表面付近領域に圧縮応力が生成されることで、シートが強化される。対応する引張応力がガラスの中央領域に誘発されることで、上記圧縮応力との平衡が取られる。
【0058】
ガラス基板の形成に好適な例示的なイオン交換性ガラスは、ソーダライムガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、又はアルカリアルミノボロシリケートガラスであるが、他のガラス組成物も考えられる。本明細書中で使用される場合、「イオン交換性(ion exchangeable)」は、ガラスが、そのガラスの表面又は表面付近に位置するカチオンを、それよりサイズが大きな又は小さな同価のカチオンで交換できるものであることを意味している。ある例示的なガラス組成物は、SiO、B、及びNaOを含み、ここで(SiO+B)≧66モル%であり、NaO≧9モル%である。ある実施形態では、ガラスシートは、少なくとも6重量%の酸化アルミニウムを含む。更なる実施形態では、ガラスシートは、1つ以上のアルカリ土類酸化物を、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5重量%となるように含む。いくつかの実施形態では、好適なガラス組成物は更に、KO、MgO、及びCaOのうちの少なくとも1つを含む。ある特定の実施形態では、ガラスは:61~75モル%のSiO;7~15モル%のAl;0~12モル%のB;9~21モル%のNaO;0~4モル%のKO;0~7モル%のMgO;及び0~3モル%のCaOを含むことができる。
【0059】
ガラス基板の形成に好適な、更なる例示的なガラス組成物は:60~70モル%のSiO;6~14モル%のAl;0~15モル%のB;0~15モル%のLiO;0~20モル%のNaO;0~10モル%のKO;0~8モル%のMgO;0~10モル%のCaO;0~5モル%のZrO;0~1モル%のSnO;0~1モル%のCeO;50ppm未満のAs;及び50ppm未満のSbを含み、ここで12モル%≦(LiO+NaO+KO)≦20モル%であり、0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0060】
また更なる例示的なガラス組成物は:63.5~66.5モル%のSiO;8~12モル%のAl;0~3モル%のB;0~5モル%のLiO;8~18モル%のNaO;0~5モル%のKO;1~7モル%のMgO;0~2.5モル%のCaO;0~3モル%のZrO;0.05~0.25モル%のSnO;0.05~0.5モル%のCeO;50ppm未満のAs;及び50ppm未満のSbを含み、ここで14モル%≦(LiO+NaO+KO)≦18モル%であり、2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0061】
ある特定の実施形態では、アルカリアルミノシリケートガラスは、アルミナ、少なくとも1つのアルカリ金属、及びいくつかの実施形態では50モル%超のSiO、他の実施形態では少なくとも58モル%のSiO、及び更に他の実施形態では少なくとも60モル%のSiOを含み、ここで、比:
【0062】
【数1】
【0063】
であり、この比において、成分はモル%で表されており、「改質剤(modifiers)」はアルカリ金属酸化物である。このガラスは、特定の実施形態において:58~72モル%のSiO;9~17モル%のAl;2~12モル%のB;8~16モル%のNaO;及び0~4モル%のKOを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなり、ここで比:
【0064】
【数2】
【0065】
である。
【0066】
別の実施形態では、アルカリアルミノシリケートガラスは:61~75モル%のSiO;7~15モル%のAl;0~12モル%のB;9~21モル%のNaO;0~4モル%のKO;0~7モル%のMgO;及び0~3モル%のCaOを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0067】
更に別の実施形態では、アルカリアルミノシリケートガラス基板は:60~70モル%のSiO;6~14モル%のAl;0~15モル%のB;0~15モル%のLiO;0~20モル%のNaO;0~10モル%のKO;0~8モル%のMgO;0~10モル%のCaO;0~5モル%のZrO;0~1モル%のSnO;0~1モル%のCeO;50ppm未満のAs;及び50ppm未満のSbを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなり、ここで12モル%≦LiO+NaO+KO≦20モル%であり、0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。
【0068】
更に別の実施形態では、アルカリアルミノシリケートガラスは:64~68モル%のSiO;12~16モル%のNaO;8~12モル%のAl;0~3モル%のB;2~5モル%のKO;4~6モル%のMgO;及び0~5モル%のCaOを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなり、ここで66モル%≦SiO+B+CaO≦69モル%;NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10モル%;5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%;(NaO+B)-Al≦2モル%;2モル%≦NaO-Al≦6モル%;及び4モル%≦(NaO+KO)-Al≦10モル%である。
【0069】
いくつかの実施形態では、化学強化及び非化学強化ガラスは、0~2モル%の、NaSO、NaCl、NaF、NaBr、KSO、KCl、KF、KBr、及びSnOを含む群から選択された少なくとも1つの清澄剤と共に、バッチ化できる。
【0070】
ある例示的な実施形態では、化学強化ガラス中のナトリウムイオンを、溶融塩浴由来のカリウムイオンで置換できるが、ルビジウム又はセシウム等の、原子半径が比較的大きな他のアルカリ金属イオンで、ガラス中の比較的小さなアルカリ金属イオンを置換することもできる。特定の実施形態によると、ガラス中の比較的小さなアルカリ金属イオンを、Agイオンで置換できる。同様に、限定するものではないが硫酸塩、ハロゲン化物といった他のアルカリ金属塩を、イオン交換プロセスで使用してよい。
【0071】
比較的小さなイオンを、ガラスネットワークを弛緩させることができる温度未満の温度で、比較的大きなイオンで置換することにより、ガラスの表面にわたるイオンの分布を生成し、これが応力プロファイルをもたらす。入ってくるイオンの体積が大きいことにより、表面に圧縮応力(CS)が生成され、ガラスの中央に張力(中央張力、又はCT)が生成される。圧縮応力は、以下の関係式:
【0072】
【数3】
【0073】
によって中央張力と関連付けられ、ここでtはガラスシートの合計厚さであり、DOLは交換の深さであり、これは層深さとも呼ばれる。
【0074】
様々な実施形態によると、イオン交換済みガラスを含むガラス基板は、低い重量、高い耐衝撃性、及び改善された音響減衰を含む、一連の望ましい特性を有することができる。一実施形態では、化学強化ガラスシートは:少なくとも300MPa、例えば少なくとも400、450、500、550、600、650、700、750、若しくは800MPaの圧縮応力;少なくとも約20μm(例えば少なくとも約20、25、30、35、40、45、若しくは50μm)の層深さ;及び/又は40MPa超(例えば40、45、若しくは50MPa超)かつ100MPa未満(例えば100、95、90、85、80、75、70、65、60、若しくは55MPa未満)の中央張力を有することができる。
【0075】
好適なガラス基板は、熱強化プロセス又はアニーリングプロセスによって熱強化してよい。熱強化ガラスシートの厚さは、約2mm未満、又は約1mm未満であってよい。
【0076】
例示的なガラスシート成形方法としては、フュージョンドロープロセス及びスロットドロープロセスが挙げられ、これらはそれぞれ、ダウンドロープロセス、及びフローロプロセスの例である。これらの方法は、強化ガラスシート及び非強化ガラスシートの両方を形成するために使用できる。フュージョンドロープロセスは、溶融したガラス原材料を受け入れるためのチャネルを有するドロータンクを使用する。チャネルは、チャネルの両側に、チャネルの長さに沿って、上部が開放された堰を有する。チャネルに溶融材料が満たされると、溶融ガラスが堰を越えてあふれる。溶融ガラスは重力によって、ドロータンクの外側表面を流れ落ちる。これらの外側表面は下側へ向かって内向きに延在し、これにより、これらはドロータンクの下方において、縁部で接合される。流れるガラスの2つの表面は、この縁部において接合されて融合し、単一の流れるシートを形成する。フュージョンドロー法は、チャネル上を流れる2つのガラスフィルムが一体に融合することにより、得られるガラスシートのいずれの外側表面も、装置のいずれの部分に接触しないという利点を提供する。よって、フュージョンドロー加工されたガラスシートの表面特性は、このような接触に影響されない。
【0077】
スロットドロー法はフュージョンドロー法とは別個のものである。ここでは、溶融された原材料ガラスがドロータンクに供給される。ドロータンクの底部は開放スロットを有し、これは、該スロットの長さだけ延在するノズルを有する。溶融ガラスはスロット/ノズルを通って流れ、連続したシートとして下向きに、アニーリング領域内へとドロー加工される。スロットドロープロセスは、2つのシートを一体に融合するのではなく、単一のシートのみを、スロットを通してドロー加工するため、フュージョンドロープロセスよりも薄いシートを提供できる。
【0078】
ダウンドロープロセスは、比較的無傷の表面を有する均一な厚さのガラスシートを形成する。ガラス表面の強度は、表面の傷の量及びサイズによって制御されるため、接触が最小限であった無傷の表面は、比較的高い初期強度を有する。この高い強度のガラスを化学強化すると、得られる強度は、ラッピング及び研磨を施された表面の強度より高くなり得る。ダウンドロー加工されるガラスは約2mm未満の厚さまでドロー加工してよい。更に、ダウンドロー加工されたガラスは極めて平坦かつ平滑な表面を有し、これは、コストのかかる研削及び研磨を行うことなく、その最終的な用途に使用できる。
【0079】
フロートガラス法では、典型的にはスズである溶融金属のベッド上に溶融ガラスを浮かせながら流すことによって、平滑な表面及び均一な厚さを特徴とし得るガラスのシートが作製される。ある例示的なプロセスでは、溶融スズベッドの表面上に供給された溶融ガラスは、浮動するリボンを形成する。このガラスリボンがスズベッドに沿って流れると、固体ガラスシートをスズからローラ上に持ち上げることができるようになるまで、温度が徐々に低下する。ベッドを離れた後、ガラスシートを更に冷却し、アニーリングして、内部応力を低減できる。
【0080】
上のいくつかの段落に記載されているように、例示的なガラス基板は、化学強化ガラス、例えばGorilla(登録商標)ガラスのガラスシートを含むことができる。このガラスシートは、熱処理、イオン交換、及び/又はアニーリングを経ていてよい。積層構造では、強化ガラスシートを内層としてよく、外層を、従来のソーダライムガラス、アニーリングされたガラス等といった非強化ガラスシートとしてよい。積層構造は、外側ガラス層と内側ガラス層との間に介在するポリマー中間層も含むことができる。強化ガラスシートは、1.0mm以下の厚さを有することができ、また約250MPa~約350MPaの残留表面CSレベル、及び60マイクロメートル超のDOLを有する。別の実施形態では、強化ガラスシートのCSレベルは、好ましくは約300MPaである。ガラスシートの例示的な厚さは、約0.3mm~約1.5mm、0.5mm~1.5mm~2.0mm以上である。
【0081】
ある好ましい実施形態では、薄い化学強化ガラスシートは、約250MPa~900MPaの表面応力を有してよく、厚さは約0.3mm~約1.0mmとすることができる。この強化ガラスシートが積層構造に含まれる実施形態では、外層は、厚さ約1.5mm~約3.0mm以上のアニーリング済み(非化学強化)ガラスとすることができる。当然のことながら、外層及び内層の厚さは、積層構造毎に異なり得る。例示的な積層構造の別の好ましい実施形態は、0.7mmの化学強化ガラスの内層と、厚さ約0.76mmのポリビニルブチラール層と、2.1mmのアニーリング済みガラスの外層とを含んでよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態の例示的なガラス基板を、ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを有する車両(自動車、船舶等)に採用できる。いくつかの実施形態によるフュージョン成形されたガラスの透明性は、フロートプロセスによって形成されたガラスよりも優れたものとすることができ、これにより、情報をより読み取りやすく、また注意をそらすことのないものとすることができるため、より良好な運転体験を提供でき、また安全性を改善できる。非限定的なHUDシステムは、投影ユニット、コンバイナ、及びビデオ生成コンピュータを含むことができる。例示的なHUDの投影ユニットとしては、限定するものではないが、凸レンズ又は凹面鏡と、その焦点にあるディスプレイ(光導波路、走査レーザ、LED、CRT、ビデオ画像等)とを有する、光コリメータが挙げられる。投影ユニットを採用することにより、所望の画像を生成できる。いくつかの実施形態では、HUDシステムは、投影ユニットからの投影画像を再配向することによって、視野及び投影画像を変化させる又は変更する、コンバイナ又はビームスプリッタも含むことができる。いくつかのコンバイナは、その上に投影された単色光を反射しながら他の波長の光を通過させる、特別なコーティングを含むことができる。更なる実施形態では、コンバイナは、投影ユニットからの画像を再結像させるために、湾曲させることもできる。いずれの例示的なHUDシステムは、投影ユニットと、適用可能な車両システム(そこからデータを受信、操作、モニタリング、及び/又は表示できる)との間のインタフェースを提供するための、処理システムも含むことができる。いくつかの処理システムは、投影ユニットによって表示される画像及び記号を生成するためにも利用できる。
【0083】
このような例示的なHUDシステムを使用して、HUDシステムからの画像をガラス系ミラー基板の内向きの表面に投影することによって、情報(例えば数字、画像、方向、言語表現、又はその他)の表示を生成できる。続いてミラーはこの画像を、ドライバーの視野内となるように再配向できる。
【0084】
よって、いくつかの実施形態による例示的なガラス基板は、ミラー用の薄く無傷の表面を提供できる。いくつかの実施形態では、フュージョンドロー加工されたGorillaガラスをガラス基板として使用できる。このようなガラスは、フロートプロセスを用いて製造された従来のガラス(例えばソーダライムガラス)において典型的な、いずれのフロート線を含まない。
【0085】
本開示の実施形態によるHUDは、本明細書に記載の例示的なガラス基板を利用する、自動車両、船舶、合成視覚システム、及び/又はマスクディスプレイ(例えばゴーグル、マスク、ヘルメット等の、ヘッドマウントディスプレイ)において採用できる。このようなHUDシステムは、重要な情報(速度、燃料、温度、方向指示信号、ナビゲーション、警告メッセージ等)を、ガラス積層構造を通してドライバーの前に投影できる。
【0086】
いくつかの実施形態によると、本明細書に記載のHUDシステムは、曲率半径、屈折率、及び入射角に関して、公称HUDシステムパラメータ(例えば曲率半径R=8301mm、ソースまでの距離:R=1000mm、屈折率n=1.52、及び入射角θ=62.08°)を使用できる。
【0087】
出願人は、本明細書で開示されているガラス基板及び積層構造が、優れた耐久性、耐衝撃性、靭性、及び耐引っかき性を有することを示した。当業者には公知であるように、ガラスシート又は積層体の強度及び機械的衝撃性能は、ガラスの、表面欠陥及び内部欠陥の両方を含む欠陥によって制限される。ガラスシート又は積層体が衝突を受けると、衝突点は圧縮される一方で、衝突点の周りのリング又は「フープ(hoop)」、及び衝突を受けたシートの反対側の面が張力を受ける。典型的には、破損の始点は、最高張力の点又はその付近における、通常はガラス表面上にある傷である。これは、上記反対側の面に発生し得るが、リング内にも発生できる。衝突イベント中にガラスの傷が張力を受けると、傷が伝播しやすくなり、ガラスは典型的には破壊されることになる。よって、圧縮応力の強さ及び深さ(層深さ)が大きいことが好ましい。
【0088】
強化により、本明細書で開示されている強化ガラスシートの一方又は両方の表面は、圧縮下にある。ガラスの表面付近領域に圧縮応力が組み込まれることにより、割れの伝播、及びガラスシートの破損を阻止できる。傷が伝播して破損が発生するためには、傷の先端において、衝突に起因する引張応力が、表面圧縮応力を超えなければならない。実施形態では、強化ガラスシートの高い圧縮応力及び大きな層深さにより、非化学強化ガラスの場合よりも薄いガラスの使用が可能となる。
【0089】
本開示の態様(1)によると、3次元(3D)ミラーが提供される。上記3Dミラーは:第1の大面、上記第1の大面の反対側の第2の大面、及び上記第1の大面と上記第2の大面とを接続する小面を備える、ガラス基板と;上記ガラス基板の上記第1の大面の少なくとも一部分上に配置される、反射層とを備え、上記第1の大面は、非球面湾曲、及び上記ガラス基板の逆方向カーブ領域に配置された逆方向湾曲を備える。
【0090】
本開示の態様(2)によると、上記第1の大面が上記逆方向カーブ領域において、約3nm以下の表面粗度(Ra)を有する、態様(1)に記載の3Dミラーが提供される。
【0091】
本開示の態様(3)によると、上記第1の大面が上記逆方向カーブ領域において、約30nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)又は(2)に記載の3Dミラーが提供される。
【0092】
本開示の態様(4)によると、上記第1の大面が上記逆方向カーブ領域において、約20nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)~(3)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0093】
本開示の態様(5)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約100nm以下の表面粗度(Ra)を有する、態様(1)~(4)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0094】
本開示の態様(6)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約90nm以下の表面粗度(Ra)を有する、態様(1)~(5)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0095】
本開示の態様(7)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約80nm以下の表面粗度(Ra)を有する、態様(1)~(6)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0096】
本開示の態様(8)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約70nm以下の表面粗度(Ra)を有する、態様(1)~(7)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0097】
本開示の態様(9)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約60nm以下の表面粗度(Ra)を有する、態様(1)~(8)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0098】
本開示の態様(10)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約50nm以下の表面粗度(Ra)を有する、態様(1)~(9)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0099】
本開示の態様(11)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約40nm以下の表面粗度(Ra)を有する、態様(1)~(10)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0100】
本開示の態様(12)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約1μm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)~(11)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0101】
本開示の態様(13)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約900nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)~(12)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0102】
本開示の態様(14)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約800nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)~(13)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0103】
本開示の態様(15)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約700nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)~(14)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0104】
本開示の態様(16)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約600nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)~(15)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0105】
本開示の態様(17)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約500nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)~(16)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0106】
本開示の態様(18)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約400nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)~(17)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0107】
本開示の態様(19)によると、上記第2の大面が上記逆方向カーブ領域において、約300nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、態様(1)~(18)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0108】
本開示の態様(20)によると、上記ガラス基板が、上記逆方向カーブ領域とは異なる非逆方向カーブ領域を備える、態様(1)~(19)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0109】
本開示の態様(21)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約3.0未満である、態様(20)に記載の3Dミラーが提供される。
【0110】
本開示の態様(22)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.9未満である、態様(20)又は(21)に記載の3Dミラーが提供される。
【0111】
本開示の態様(23)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.8未満である、態様(20)~(22)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0112】
本開示の態様(24)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.7未満である、態様(20)~(23)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0113】
本開示の態様(25)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.6未満である、態様(20)~(24)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0114】
本開示の態様(26)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.5未満である、態様(20)~(25)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0115】
本開示の態様(27)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.4未満である、態様(20)~(26)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0116】
本開示の態様(28)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.3以下である、態様(20)~(27)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0117】
本開示の態様(29)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.2以下である、態様(20)~(28)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0118】
本開示の態様(30)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.1以下である、態様(20)~(29)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0119】
本開示の態様(31)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度(Ra)の比が、約2.0以下である、態様(20)~(30)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0120】
本開示の態様(32)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約3.0未満である、態様(20)~(31)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0121】
本開示の態様(33)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2,9未満である、態様(20)~(32)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0122】
本開示の態様(34)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.8未満である、態様(20)~(33)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0123】
本開示の態様(35)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.7未満である、態様(20)~(34)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0124】
本開示の態様(36)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.6未満である、態様(20)~(35)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0125】
本開示の態様(37)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.5未満である、態様(20)~(36)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0126】
本開示の態様(38)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.4未満である、態様(20)~(37)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0127】
本開示の態様(39)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.3以下である、態様(20)~(38)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0128】
本開示の態様(40)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.2以下である、態様(20)~(39)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0129】
本開示の態様(41)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.1以下である、態様(20)~(40)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0130】
本開示の態様(42)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.0以下である、態様(20)~(41)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0131】
本開示の態様(43)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)の比が、約1.5以下である、態様(20)~(42)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0132】
本開示の態様(44)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)の比が、約1.5以下である、態様(20)~(42)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0133】
本開示の態様(45)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)の比が、約1.5以下である、態様(20)~(42)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0134】
本開示の態様(46)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)の比が、約1.5以下である、態様(20)~(42)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0135】
本開示の態様(47)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)の比が、約1.5以下である、態様(20)~(42)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0136】
本開示の態様(48)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)の比が、約1.5以下である、態様(20)~(42)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0137】
本開示の態様(49)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度(Ra)の比が、約1.5以下である、態様(20)~(42)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0138】
本開示の態様(50)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約2.0以下である、態様(20)~(49)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0139】
本開示の態様(51)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.9以下である、態様(20)~(50)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0140】
本開示の態様(52)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.8以下である、態様(20)~(51)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0141】
本開示の態様(53)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.7以下である、態様(20)~(52)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0142】
本開示の態様(54)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.6以下である、態様(20)~(53)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0143】
本開示の態様(55)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.5以下である、態様(20)~(54)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0144】
本開示の態様(56)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.4以下である、態様(20)~(55)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0145】
本開示の態様(57)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.3以下である、態様(20)~(56)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0146】
本開示の態様(58)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.2以下である、態様(20)~(57)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0147】
本開示の態様(59)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.1以下である、態様(20)~(58)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0148】
本開示の態様(60)によると、上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比が、約1.0以下である、態様(20)~(59)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0149】
本開示の態様(61)によると、上記非逆方向カーブ領域が逆方向湾曲を全く有しない、態様(20)~(60)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0150】
本開示の態様(62)によると、上記第2の大面が、上記3Dミラーを湾曲させるために使用される真空成形プロセスに由来する表面欠陥を備える、態様(1)~(61)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0151】
本開示の態様(63)によると、上記表面欠陥が、溝型の真空孔の痕跡である、態様(62)に記載の3Dミラーが提供される。
【0152】
本開示の態様(64)によると、上記溝型の真空孔の痕跡が、上記第2の大面の縁部から2mm以内に配置される、態様(63)に記載の3Dミラーが提供される。
【0153】
本開示の態様(65)によると、上記溝型の真空孔の痕跡が、約1μm未満の深さを有する、態様(63)又は(64)に記載の3Dミラーが提供される。
【0154】
本開示の態様(66)によると、上記表面欠陥が、上記真空成形プロセスに由来する唯一の欠陥であり、上記第2の大面の中央領域内には真空成形による欠陥が配置されない、態様(62)~(65)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0155】
本開示の態様(67)によると、上記逆方向カーブ領域全体にわたる上記第1の大面又は上記第2の大面の輪郭偏差が約50μm未満である、態様(1)~(66)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0156】
本開示の態様(68)によると、上記第1の大面又は上記第2の大面が、上記第1の大面又は上記第2の大面の縁部に、面取り部を備える、態様(1)~(67)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0157】
本開示の態様(69)によると、上記ミラー基板が、約200mm~約400mmの長さ及び約100mm~約250mmの幅を有する、態様(1)~(68)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0158】
本開示の態様(70)によると、上記ミラー基板が、約250mm~約350mmの長さ及び約100mm~約200mmの幅を有する、態様(1)~(69)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0159】
本開示の態様(71)によると、上記ミラー基板が、約300mm~約350mmの長さ及び約150mm~約200mmの幅を有する、態様(1)~(70)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0160】
本開示の態様(72)によると、上記ミラー基板が、約290mm~約295mmの長さ及び約130mm~約135mmの幅を有する、態様(1)~(71)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0161】
本開示の態様(73)によると、上記ミラー基板が、上記第1の大面と上記第2の大面との間の距離として定義される厚さを有し、上記厚さは約3.0mm以下である、態様(1)~(72)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0162】
本開示の態様(74)によると、上記ミラー基板が、上記第1の大面と上記第2の大面との間の距離として定義される厚さを有し、上記厚さは約0.5mm~約3.0mmである、態様(1)~(73)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0163】
本開示の態様(75)によると、上記ミラー基板が、上記第1の大面と上記第2の大面との間の距離として定義される厚さを有し、上記厚さは約約0.5mm~約1.0mmである、態様(1)~(74)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0164】
本開示の態様(76)によると、上記ミラー基板が、上記第1の大面と上記第2の大面との間の距離として定義される厚さを有し、上記厚さは約1.0mm~約3.0mmである、態様(1)~(75)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0165】
本開示の態様(77)によると、上記ガラス基板がソーダライムガラス、アルミノシリケート、ボロアルミノシリケート、又はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、態様(1)~(76)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0166】
本開示の態様(78)によると、上記ガラス基板が化学強化ガラス材料である、態様(1)~(77)のいずれかに記載の3Dミラーが提供される。
【0167】
本開示の態様(79)によると、ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムが提供される。上記HUDシステムは:画像を生成するよう構成されたピクチャ生成ユニット;及び態様(1)~(78)のいずれかに記載の3Dミラーを備え、上記3Dミラーは、上記HUDシステムのユーザが視認可能な視聴領域に向かって、上記画像を反射させるよう構成される。
【0168】
本開示の態様(80)によると、態様(79)に記載のHUDシステムを備える、自動車両が提供される。
【0169】
本開示の態様(81)によると、上記HUDシステムが、上記視聴領域を、上記自動車両のフロントガラス上に又は上記自動車両の内部に配置されたコンバイナ上に、配置するよう構成される、態様(80)に記載の自動車両が提供される。
【0170】
以下の本開示の説明は、本開示の実施可能な教示、及び本開示の現在分かっている最良の実施形態として提供される。本開示の有益な結果を依然として得られる状態で、本明細書に記載の実施形態に対して多くの変更を実施できることは、当業者には認識されるだろう。また、本開示の望ましい利益の一部は、本開示の特徴のうちのいくつかを選択し、他の特徴を利用しなくても得ることができることも明らかであろう。従って、本開示の多数の修正形態及び適合形態が可能であり、特定の状況ではそれらが望ましい場合さえあり得、またそれらが本開示の一部であることは、当業者には認識されるだろう。よって以上の説明は、本開示の原理の限定ではなく、本開示の原理の例示として提供される。
【0171】
本明細書に記載の例示的実施形態に対して、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正が可能であることは、当業者には理解されるだろう。よって本説明は、与えられている実施例への限定を意図したものではなく、また限定として解釈してはならず、添付の請求項及びその均等物によって提供される保護の範囲が付与されるものとする。更に、本開示の特徴のうちのいくつかを、それに対応して他の特徴を使用することなく、使用できる。従って以上の例示的又は説明的実施形態の説明は、本開示の原理の限定ではなく、本開示の原理を説明することを目的として提供され、それに対する修正及びその並び替えを含むことができる。
【0172】
以上の記載では、同様の参照記号は、図面において示す複数の図を通して、同様の又は対応する部分を指す。特段明記されていない限り、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「外向き(outward)」、「内向き(inward)」等の用語は、利便性のための単語であり、限定的な用語として解釈してはならないことも理解される。更に、ある群が、複数の要素の少なくとも1つの群及びその組み合わせを含むものとして記載されている場合は常に、上記群は、列記されている要素のうちのいずれの個数のもの(個別に又は互いに組み合わせて)を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなることが理解される。
【0173】
同様に、ある群が、複数の要素の少なくとも1つの群及びその組み合わせからなるものとして記載されている場合は常に、上記群は、列記されている要素のうちのいずれの個数のもの(個別に又は互いに組み合わせて)からなってよいことが理解される。特段明記されていない限り、値の範囲が記載されている場合、これは上記範囲の上限及び下限を含む。本明細書中で使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」、並びにこれに対応する定冠詞「the」は、特段明記されていない限り、「少なくとも1つの(at least one)」又は「1つ以上の(one or more)」を意味する。
【0174】
本説明は多くの詳細を含み得るが、これらは本開示の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ特定の実施形態に固有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。別個の複数の実施形態に関連してこれまでに説明した特定の複数の特徴は、ある単一の実施形態において組み合わせて実装してもよい。反対に、ある単一の実施形態に関連して説明されている様々な複数の特徴を、複数の実施形態に別個に又はいずれの適切な部分的組み合わせにおいて実装してもよい。更に、上では複数の特徴が特定の組み合わせで説明され、更には初めにはこれらの組み合わせ自体が請求されているものの、場合によっては請求されている組み合わせからの1つ又は複数の特徴をこの組み合わせから実行してよく、請求されている組み合わせは部分的組み合わせ又は部分的組み合わせの変形も対象とし得る。
【0175】
同様に、図面においては複数の操作が特定の順序で示されているものの、これは、所望の結果を達成するために、これらの操作を図示した特定の順序若しくはある順序で実施すること、又は全ての図示した操作を実施することが要求されるものと解釈されるべきではない。特定の状況において、マルチタスク動作及び並列処理が有利となり得る。
【0176】
本開示では、範囲は「約(about)」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値まで、として表現できる。このような範囲が表現されている場合、例は、上記ある特定の値から及び/又は上記別の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約(about)」を用いて値を近似値として表現している場合、特定の値が別の態様を形成するものと理解されることになる。更に、各範囲の終端は、他の終端との相関においても他の終端とは独立しても重要であることが理解されるだろう。
【0177】
また、本開示の詳細な記載は、本開示の構成要素が特定の様式で機能するよう「構成(configured)」又は「適合(adapted)」されていることを意味するものであることにも留意されたい。これに関して、上記詳細な説明が使用目的の詳述ではなく構造に関する詳述である場合、上述のような構成要素は、特定の特性を具現化するよう、又は特定の様式で機能するよう、「構成」又は「適合」されている。より具体的には、構成要素が「構成」又は「適合」されている様式に関する本開示での言及は、構成要素の既存の物理的条件を示しており、それ自体が構成要素の構造的特徴の厳密な詳述として理解されるべきものである。
【0178】
図示した様々な構成及び実施形態によって示されているように、ヘッドアップディスプレイ用の様々なガラス系構造について説明した。
【0179】
本開示の好ましい実施形態について説明したが、説明した実施形態は単なる例示であること、並びに本発明の範囲は、当業者が本開示を熟読した場合に当然発生することになる均等物、多数の変形例及び修正例の全範囲が与えられた場合に、添付の請求項によってのみ定義されることになることを理解するべきである。
【0180】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0181】
実施形態1
3次元(3D)ミラーであって、
上記3Dミラーは:
第1の大面、上記第1の大面の反対側の第2の大面、及び上記第1の大面と上記第2の大面とを接続する小面を備える、ガラス基板と;
上記ガラス基板の上記第1の大面の少なくとも一部分上に配置される、反射層と
を備え、
上記第1の大面は、非球面湾曲、及び上記ガラス基板の逆方向カーブ領域に配置された逆方向湾曲を備える、3Dミラー。
【0182】
実施形態2
上記第1の大面は上記逆方向カーブ領域において、約3nm以下の表面粗度Raを有する、実施形態1に記載の3Dミラー。
【0183】
実施形態3
上記第1の大面は上記逆方向カーブ領域において、約30nm以下、又は20nm以下の最大(PV)表面粗度を有する、実施形態1又は2に記載の3Dミラー。
【0184】
実施形態4
上記第2の大面は上記逆方向カーブ領域において、約100nm以下、約90nm以下、約80nm以下、約70nm以下、約60nm以下、約50nm以下、又は約40nm以下の表面粗度Raを有する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0185】
実施形態5
上記第2の大面は上記逆方向カーブ領域において、約1μm以下、約900μm以下、約800μm以下、約700μm以下、約600μm以下、約500μm以下、約400μm以下、又は約300μm以下の最大(PV)表面粗度を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0186】
実施形態6
上記ガラス基板は、上記逆方向カーブ領域とは異なる非逆方向カーブ領域を備える、実施形態1~5のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0187】
実施形態7
上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度Raに対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の表面粗度Raの比は、約3.0未満、約2.9未満、約2.8未満、約2.7未満、約2.6未満、約2.5未満、約2.4未満、約2.3以下、約2.2以下、約2.1以下、又は約2.0以下である、実施形態6に記載の3Dミラー。
【0188】
実施形態8
上記非逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大PV表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第1の大面の最大(PV)表面粗度の比は、約3.0未満、約2.9未満、約2.8未満、約2.7未満、約2.6未満、約2.5未満、約2.4未満、約2.3以下、約2.2以下、約2.1以下、又は約2.0以下である、実施形態6又は7に記載の3Dミラー。
【0189】
実施形態9
上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度Raに対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の表面粗度Raの比は、約1.5以下、約1.4以下、約1.3以下、約1.2以下、約1.1以下、若しくは約1.08以下、又は約1.0約である、実施形態6~8のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0190】
実施形態10
上記非逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大PV表面粗度に対する、上記逆方向カーブ領域における上記第2の大面の最大(PV)表面粗度の比は、約2.0以下、約1.9以下、約1.8以下、約1.7以下、約1.6以下、約1.5以下、約1.4以下、約1.3以下、約1.2以下、約1.1以下、又は約1.0である、実施形態6~9のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0191】
実施形態11
上記非逆方向カーブ領域は逆方向湾曲を全く有しない、実施形態6~10のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0192】
実施形態12
上記第2の大面は、上記3Dミラーを湾曲させるために使用される真空成形プロセスに由来する表面欠陥を備える、実施形態1~11のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0193】
実施形態13
上記表面欠陥は、溝型の真空孔の痕跡である、実施形態12に記載の3Dミラー。
【0194】
実施形態14
上記溝型の真空孔の痕跡は、上記第2の大面の縁部から2mm以内に配置される、実施形態13に記載の3Dミラー。
【0195】
実施形態15
上記溝型の真空孔の痕跡は、約1μm未満の深さを有する、実施形態13又は14に記載の3Dミラー。
【0196】
実施形態16
上記表面欠陥は、上記真空成形プロセスに由来する唯一の欠陥であり、上記第2の大面の中央領域内には真空成形による欠陥が配置されない、実施形態12~15のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0197】
実施形態17
上記逆方向カーブ領域全体にわたる上記第1の大面又は上記第2の大面の輪郭偏差は約50μm未満である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0198】
実施形態18
上記第1の大面又は上記第2の大面は、上記第1の大面又は上記第2の大面の縁部に、面取り部を備える、実施形態1~17のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0199】
実施形態19
上記ミラー基板は:約200mm~約400mmの長さ及び約100mm~約250mmの幅;約250mm~約350mmの長さ、及び約100mm~約200mmの幅;約300mm~約350mmの長さ、及び約150mm~約200mmの幅;又は約290mm~約295mmの長さ、及び約130mm~約135mmの幅を有する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0200】
実施形態20
上記ミラー基板は、上記第1の大面と上記第2の大面との間の距離として定義される厚さを有し、上記厚さは約3.0mm以下であるか、約0.5mm~約3.0mmであるか、約0.5mm~約1.0mmであるか、又は約1.0mm~約3.0mmである、実施形態1~19のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0201】
実施形態21
上記ガラス基板はソーダライムガラス、アルミノシリケート、ボロアルミノシリケート、又はアルカリアルミノシリケートガラスを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0202】
実施形態22
上記ガラス基板が化学強化ガラス材料である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の3Dミラー。
【0203】
実施形態23
ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムであって、
上記HUDシステムは:
画像を生成するよう構成されたピクチャ生成ユニット;及び
実施形態1~22のいずれか1つに記載の3Dミラー
を備え、
上記3Dミラーは、上記HUDシステムのユーザが視認可能な視聴領域に向かって、上記画像を反射させるよう構成される、HUDシステム。
【0204】
実施形態24
実施形態23に記載のHUDシステムを備える、自動車両。
【0205】
実施形態25
上記HUDシステムは、上記視聴領域を、上記自動車両のフロントガラス上に又は上記自動車両の内部に配置されたコンバイナ上に、配置するよう構成される、実施形態24に記載の自動車両。
【符号の説明】
【0206】
100 HUDシステム
102 ピクチャ生成ユニット(PGU)
103 ディスプレイ
104 平面ミラー
106 湾曲ミラー
108 フロントガラス
110 ダッシュボード
112 投影領域
300 ミラー
308 反射面
400 非球面ミラー
408、808、908 第1の主面
409、509 第2の主面
410 領域
412 偏向点
500 ガラスミラー基板
508 部分
510 逆方向湾曲領域
515、702 成形面
517 真空孔
519 逆方向カーブ
700 金型
704 溝型の真空孔
706 ハウジング
800 非球面ミラー基板
810 逆方向湾曲の領域
900 3D非球面ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B