(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】CDK4/6阻害剤に耐性の癌を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/137 20060101AFI20240614BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240614BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P35/00
A61P35/04
A61P15/00
A61P5/00
(21)【出願番号】P 2021531818
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 US2019065005
(87)【国際公開番号】W WO2020118213
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-05
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517378016
【氏名又は名称】ラジウス ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ヒティシャ
(72)【発明者】
【氏名】ビハニ,ティール
(72)【発明者】
【氏名】アールト,ハイク
(72)【発明者】
【氏名】タオ,ニアンジュン
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/129419(WO,A1)
【文献】特表2018-518529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において
パルボシクリブ耐性
、アベマシクリブ耐性またはリボシクリブ耐性のエストロゲン受容体α陽性癌を阻害および分解する方法に使用するための、エラセストラントまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物であって、該方法が、被験体に、エラセストラントまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の治療有効量を投与する工程を含む、医薬組成物。
【請求項2】
該エストロゲン受容体α陽性癌がパルボシクリブに耐性であるかまたはそれに対して進行する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
該エストロゲン受容体α陽性癌がリボシクリブに耐性であるかまたはそれに対して進行する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
該エストロゲン受容体α陽性癌がアベマシクリブに耐性であるかまたはそれに対して進行する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
該エストロゲン受容体α陽性癌が、D538G、Y537X
1、L536X
2、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Qおよびそれらの組合せ(式中:X
1はS、NまたはCであり;X
2はRまたはQである)からなる群より選択される1つ以上の変異を含む、請求項1~
4いずれか記載の医薬組成物。
【請求項6】
変異がY537Sである、請求項
5記載の医薬組成物。
【請求項7】
変異がD538Gである、請求項
5記載の医薬組成物。
【請求項8】
該エストロゲン受容体α陽性癌が、さらに、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される薬物に対して耐性であるかまたはそれらに対して進行する、請求項1~
7いずれか記載の医薬組成物。
【請求項9】
該エストロゲン受容体α陽性癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌、乳癌脳転移および下垂体癌からなる群より選択される請求項1~
8いずれか記載の医薬組成物。
【請求項10】
該エストロゲン受容体α陽性癌が進行したまたは転移性の乳癌である、請求項1~
9いずれか記載の医薬組成物。
【請求項11】
該エストロゲン受容体α陽性癌が乳癌である、請求項1~
9いずれか記載の医薬組成物。
【請求項12】
被験体が閉経後の女性である、請求項1~
11いずれか記載の医薬組成物。
【請求項13】
被験体が閉経前の女性である、請求項1~
11いずれか記載の医薬組成物。
【請求項14】
被験体が、選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)および/またはアロマターゼ阻害剤(AI)を用いた以前の治療後に再発または進行した閉経後の女性である、請求項1~
11いずれか記載の医薬組成物。
【請求項15】
エラセストラントが、約200mg/日~約500mg/日の用量で被験体に投与される、請求項1~
14いずれか記載の医薬組成物。
【請求項16】
エラセストラントが、約200mg/日、約300mg/日、約400mg/日または約500mg/日の用量で被験体に投与される、請求項1~
15いずれか記載の医薬組成物。
【請求項17】
エラセストラントが、被験体について最大許容用量である用量で被験体に投与される、請求項1~
14いずれか記載の医薬組成物。
【請求項18】
該方法が、ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2およびVHLから選択される1つ以上の遺伝子の増加した発現を測定することにより、治療に対して被験体を同定する工程をさらに含む、請求項1~
17いずれか記載の医薬組成物。
【請求項19】
1つ以上の遺伝子が、AKT1、AKT2、BRAF、CDK4、CDK6、PIK3CA、PIK3R1およびMTORから選択される、請求項
18記載の医薬組成物。
【請求項20】
投与後の腫瘍中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度 対 血漿中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度の比(T/P)が少なくとも約15である、請求項1~
19いずれか記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての他所参照
本願は、2018年12月6日に出願された米国仮特許出願第62/776,323号の35 U.S.C. § 119(e)下の優先権を主張する。前述の出願の全内容は、図面を含み、その全体において参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、CDK4/6阻害剤に耐性のESR1変異を有する癌モデルにおいてエラセストラント(elacestrant)を使用して抗腫瘍活性を提供する方法を提供する。本開示はまた、CDK4/6阻害剤耐性に寄与し得るESR1変異を有するエストロゲン陽性(ER+)癌を治療する方法に関し、ここで癌は、エラセストラントを使用して治療される。
【背景技術】
【0003】
背景
乳癌は、3つの受容体:エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)およびヒト上皮成長因子受容体2(Her2)の発現に基づいて3つのサブタイプに分けられる。多くの乳癌患者においてERの過剰発現が見られる。ER陽性(ER+)乳癌は、全ての乳癌の3分の2を構成する。乳癌以外では、エストロゲンおよびERは、例えば卵巣癌、結腸癌、前立腺癌および子宮内膜癌に関連する。
【0004】
ERは、エストロゲンにより活性化され得、核内に移行してDNAに結合し得、それにより種々の遺伝子の活性を制御する。例えば、Marino et al., "Estrogen Signaling Multiple Pathways to Impact Gene Transcription," Curr. Genomics 7(8): 497-508 (2006);およびHeldring et al., "Estrogen Receptors: How Do They Signal and What Are Their Targets," Physiol. Rev. 87(3): 905-931 (2007)参照。
【0005】
エストロゲン産生を阻害する薬剤、例えばアロマターゼ阻害剤(AI、例えばレトロゾール、アナストロゾールおよびエキセメスタン)またはER活性を直接遮断する薬剤、例えば選択的エストロゲン受容体調節因子(selective estrogen receptor modulator)(SERM、例えばタモキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、イドキシフェン(idoxifene)、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、アルゾキシフェン、ミプロキシフェン(miproxifene)、レボルメロキシフェン(levormeloxifene)およびEM-652 (SCH 57068))および選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD、例えばフルベストラント、TAS-108 (SR16234)、ZK191703、RU58668、GDC-0810 (ARN-810)、GW5638/DPC974、SRN-927、ICI182780およびAZD9496)は、以前に使用されているかまたはER陽性乳癌の治療において開発されている。
【0006】
SERMおよびAIは、しばしばER陽性乳癌のための第1ラインアジュバント全身療法として使用される。AIは、体内でアンドロゲンをエストロゲンに換えるアロマターゼの活性を遮断することにより、末梢組織においてエストロゲンの産生を抑制する。しかしながら、AIは、卵巣がエストロゲンを産生することを停止できない。したがって、AIは、主に閉経後の女性を治療するために使用される。さらに、AIは、より少ない重度の副作用を伴って、SERM タモキシフェンよりも有効であるので、AIは、卵巣機能が抑制された閉経前の女性を治療するためにも使用され得る。例えば、Francis et al., "Adjuvant Ovarian Suppression in Premenopausal Breast Cancer," the N. Engl. J. Med., 372:436-446 (2015)参照。
【0007】
内分泌療法に対する耐性は、エストロゲン受容体陽性(ER+)乳癌を有する患者の管理における困難な局面である。最近の研究により、獲得された耐性が、エストロゲン受容体1(ESR1)遺伝子における変異の出現を通してアロマターゼ阻害剤を用いた治療の後に発生し得ることが示されている。新たな(de novo)および獲得された耐性に関連する別の機構は、並行する成長因子シグナル伝達経路の適合性の上方制御、ならびにサイクリンD1の発現ならびにサイクリン依存的キナーゼ4(CDK4)およびCDK6(CDK4/6)の活性化を促進するものを含むこれらの経路の間のクロストークである。これらの薬剤を用いた初期治療は効果的であり得るが、一方で多くの患者は最終的に薬物耐性乳癌を再発する。ERに影響する変異は、この耐性の発生についての1つの潜在的な機構として出現している。例えば、Robinson et al., "Activating ESR1 mutations in hormone-resistant metastatic breast cancer," Nat Genet. 45:1446-51 (2013)参照。ERのリガンド結合ドメイン(LBD)における変異は、少なくとも1ラインの内分泌治療を受けた患者由来の転移性ER陽性乳癌試料の20~40%で見られる。Jeselsohn, et al., "ESR1 mutations-a mechanism for acquired endocrine resistance in breast cancer," Nat. Rev. Clin. Oncol., 12:573-83 (2015)。
【0008】
そのため、現在の内分泌療法に関連する難題のいくつかを克服するためおよびCDK4/6耐性の発生と闘うためのより永続性がありかつ有効なER標的化療法についての必要性が残る。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
一局面において、開示は、被験体に、エラセストラントまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の治療有効量を投与する工程を含む、被験体において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌を阻害および分解する(degrade)方法に関する。
【0010】
本発明のこの局面の態様は、以下の任意の特徴の1つ以上を含み得る。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌は、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブまたはそれらの組合せに耐性である。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌はパルボシクリブに耐性である。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌はリボシクリブに耐性である。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌はアベマシクリブに耐性である。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌は、D538G、Y537X1、L536X2、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Qおよびそれらの組合せ(ここで:X1はS、NまたはCであり;X2はRまたはQである)からなる群より選択される1つ以上の変異を含む。いくつかの態様において、変異はY537Sである。いくつかの態様において、変異はD538Gである。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌は、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される薬物に耐性である。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌は、乳癌、子宮癌、卵巣癌および下垂体癌からなる群より選択される。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌は、進行したまたは転移性の乳癌である。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌は乳癌である。いくつかの態様において、被験体は閉経後の女性である。いくつかの態様において、被験体は閉経前の女性である。いくつかの態様において、被験体は、選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)および/またはアロマターゼ阻害剤(AI)を用いた以前の治療後に再発または進行した閉経後の女性である。いくつかの態様において、エラセストラントは、約200mg/日~約500mg/日の用量で被験体に投与される。いくつかの態様において、エラセストラントは、約200mg/日、約300mg/日、約400mg/日または約500mg/日の用量で被験体に投与される。いくつかの態様において、エラセストラントは、被験体に対する最大許容用量である用量で被験体に投与される。いくつかの態様において、該方法はさらに、ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2およびVHLから選択される1つ以上の遺伝子の増加した発現を測定することにより、治療について被験体を同定する工程を含む。いくつかの態様において、1つ以上の遺伝子は、AKT1、AKT2、BRAF、CDK4、CDK6、PIK3CA、PIK3R1およびMTORから選択される。いくつかの態様において、投与後の腫瘍中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度 対 血漿中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度の比(T/P)は、少なくとも約15である。
【0011】
別の局面において、本開示は、野生型エストロゲン受容体αおよび/または変異体エストロゲン受容体αを有する被験体においてCDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌を治療する方法に関し、該方法は、被験体にエラセストラントまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の治療有効量を投与する工程を含み、ここで変異体エストロゲン受容体αは、D538G、Y537X1、L536X2、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Qおよびそれらの組合せ(ここで:X1はS、NまたはCであり;X2はRまたはQである)からなる群より選択される1つ以上の変異を含む。
【0012】
本発明のこの局面の態様は、以下の任意の特徴の1つ以上を含み得る。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌は、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブまたはそれらの組合せに耐性である。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌はパルボシクリブに耐性である。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌はリボシクリブに耐性である。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌はアベマシクリブに耐性である。いくつかの態様において、癌は、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される薬物に耐性である。いくつかの態様において、抗エストロゲンは、タモキシフェン、トレミフェンおよびフルベストラントからなる群より選択され、アロマターゼ阻害剤は、エキセメスタン、レトロゾールおよびアナストロゾールからなる群より選択される。いくつかの態様において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌は乳癌、子宮癌、卵巣癌および下垂体癌からなる群より選択される。いくつかの態様において、癌は、進行したまたは転移性の乳癌である。いくつかの態様において、癌は乳癌である。いくつかの態様において、被験体は閉経後の女性である。いくつかの態様において、被験体は閉経前の女性である。いくつかの態様において、被験体は、SERMおよび/またはAIを用いた以前の治療後に再発または進行した閉経後の女性である。いくつかの態様において、被験体は、D538G、Y537S、Y537N、Y537C、E380Q、S463P、L536R、L536Q、P535H、V392IおよびV534Eからなる群より選択される少なくとも1つの変異体エストロゲン受容体αを発現する。いくつかの態様において、変異はY537Sを含む。いくつかの態様において、変異はD538Gを含む。いくつかの態様において、該方法はさらに、ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2およびVHLから選択される1つ以上の遺伝子の増加した発現を測定することにより、治療について被験体を同定する工程を含む。いくつかの態様において、1つ以上の遺伝子はAKT1、AKT2、BRAF、CDK4、CDK6、PIK3CA、PIK3R1およびMTORから選択される。いくつかの態様において、エラセストラントは、約200~約500mg/日の用量で被験体に投与される。いくつかの態様において、エラセストラントは、約200mg、約300mg、約400mgまたは約500mgの用量で被験体に投与される。いくつかの態様において、エラセストラントは、約300mg/日の用量で被験体に投与される。いくつかの態様において、投与後の腫瘍中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度 対 血漿中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度の比(T/P)は少なくとも約15である。
【0013】
そうではないと定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明における使用のための方法および材料が本明細書に記載され;当該技術分野で公知の他の適切な方法および材料も使用され得る。材料、方法および例は、例示のみのものであり、限定を意図しない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリーおよび他の参考文献は、それらの全体において参照により援用される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配的である。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な説明
以下の図面は、例示として提供され、特許請求される発明の範囲を限定することを意図しない。
【
図1-1】
図1A. ESR1:野生型LTED細胞株におけるパルボシクリブに対する耐性の生成を、パルボシクリブ感受性(palbo
S)およびパルボシクリブ耐性(palbo
R)細胞株についてプロットする。
図1B. Log[パルボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、palbo
Sおよびpalbo
R ESR1:野生型細胞株についてプロットする。
図1C. 対照およびパルボシクリブ(500nM)での処置後についてのpalbo
Sおよびpalbo
R ESR1:野生型細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
【
図1-2】
図1D. ESR1:野生型遺伝子を有するLTED、LTED+palbo、LTED-palbo
RおよびLTED-palbo
R+palboモデルを示すウエスタンブロット。
【
図2-1】
図2A. ESR1:D538G LTED細胞株におけるパルボシクリブに対する耐性の生成を、パルボシクリブ感受性(palbo
S)およびパルボシクリブ耐性(palbo
R)細胞株についてプロットする。
図2B. Log[パルボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、palbo
Sおよびpalbo
R ESR1:D538G細胞株についてプロットする。
図2C. 対照およびパルボシクリブ(500nM)での処置後についてのpalbo
Sおよびpalbo
R ESR1:D538G細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
【
図2-2】
図2D. ESR1:D538G変異を有するLTED、LTED+palbo、LTED-palbo
RおよびLTED-palbo
R+palboモデルを示すウエスタンブロット。
【
図3-1】
図3A. ESR1:Y537S LTED細胞株におけるパルボシクリブに対する耐性の生成を、パルボシクリブ感受性(palbo
S)およびパルボシクリブ耐性(palbo
R)細胞株についてプロットする。
図3B. Log[パルボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、palbo
Sおよびpalbo
R ESR1:Y537S細胞株についてプロットする。
図3C. 対照およびパルボシクリブ(500nM)での処置後についてのpalbo
Sおよびpalbo
R ESR1:Y537S細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
【
図3-2】
図3D. ESR1:Y537S変異を有するLTED、LTED+palbo、LTED-palbo
RおよびLTED-palbo
R+palboモデルを示すウエスタンブロット。
【
図4-1】
図4A. ESR1:野生型LTED細胞株におけるリボシクリブに対する耐性の生成を、リボシクリブ感受性(ribo
S)およびリボシクリブ耐性(ribo
R)細胞株についてプロットする。
図4B. ESR1:野生型LTED細胞株におけるアベマシクリブに対する耐性の生成を、アベマシクリブ感受性(abema
S)およびアベマシクリブ耐性(abema
R)細胞株についてプロットする。
図4C. Log[リボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、ribo
Sおよびribo
R ESR1:野生型細胞株についてプロットする。
【
図4-2】
図4D. 対照およびリボシクリブ(500nM)での処置後についてのribo
Sおよびribo
R ESR1:野生型細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
図4E. Log[アベマシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、abema
Sおよびabema
R ESR1:野生型細胞株についてプロットする。
【
図4-3】
図4F.対照およびアベマシクリブ(500nM)での処置後についてのabema
Sおよびabema
R ESR1:野生型細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
【
図5-1】
図5A. ESR1:D538G LTED細胞株におけるリボシクリブに対する耐性の生成を、リボシクリブ感受性(ribo
S)およびリボシクリブ耐性(ribo
R)細胞株についてプロットする。
図5B. ESR1:D538G LTED細胞株におけるアベマシクリブに対する耐性の生成を、アベマシクリブ感受性(abema
S)およびアベマシクリブ耐性(abema
R)細胞株についてプロットする。
図5C. Log[リボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、ribo
Sおよびribo
R ESR1:D538G細胞株についてプロットする。
【
図5-2】
図5D. 対照およびリボシクリブ(500nM)での処置後についてのribo
Sおよびribo
R ESR1:D538G細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
図5E. Log[アベマシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、abema
Sおよびabema
R ESR1:D538G細胞株についてプロットする。
【
図5-3】
図5F. 対照およびアベマシクリブ(500nM)での処置後についてのabema
Sおよびabema
R ESR1:D538G細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
【
図6-1】
図6A. ESR1:Y537S LTED細胞株におけるリボシクリブに対する耐性の生成を、リボシクリブ感受性(ribo
S)およびリボシクリブ耐性(ribo
R)細胞株についてプロットする。
図6B. ESR1:Y537S LTED細胞株におけるアベマシクリブに対する耐性の生成を、アベマシクリブ感受性(abema
S)およびアベマシクリブ耐性(abema
R)細胞株についてプロットする。
図6C. Log[リボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、ribo
Sおよびribo
R ESR1:Y537S細胞株についてプロットする。
【
図6-2】
図6D. 対照およびリボシクリブ(500nM)での処置後についてのribo
Sおよびribo
R ESR1: Y537S細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
図6E. Log[アベマシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、abema
Sおよびabema
R ESR1:Y537S細胞株についてプロットする。
【
図6-3】
図6F. 対照およびアベマシクリブ(500nM)での処置後についてのabema
Sおよびabema
R ESR1:Y537S細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
【
図7-1】
図7A. EC
50(nM)値を示し、パーセント成長阻害を、Log[エラセストラント(nM)]に関して、ESR1:野生型CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:野生型パルボシクリブ
R、ESR1:野生型リボシクリブ
RおよびESR1:野生型アベマシクリブ
R細胞株についてプロットする。
図7B. EC
50(nM)値を示し、パーセント成長阻害を、Log[エラセストラント(nM)]に関して、ESR1:D538G CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:D538Gパルボシクリブ
R、ESR1:D538Gリボシクリブ
RおよびESR1:D538Gアベマシクリブ
R細胞株についてプロットする。
【
図7-2】
図7C. EC
50(nM)値を示し、パーセント成長阻害を、Log[エラセストラント(nM)]に関して、ESR1:Y537S CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:Y537Sパルボシクリブ
R、ESR1:Y537Sリボシクリブ
RおよびESR1:Y537Sアベマシクリブ
R細胞株についてプロットする。
【
図8】
図8A. 上の行のコロニー形成アッセイ写真により、対照ESR1:野生型CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:野生型パルボシクリブ
R、ESR1:野生型リボシクリブ
RおよびESR1:野生型アベマシクリブ
R細胞株についての成長を視覚化し、下の行の写真により、エラセストラント(300nM)で処置した後の対照ESR1:野生型CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:野生型パルボシクリブ
R、ESR1:野生型リボシクリブ
RおよびESR1:野生型アベマシクリブ
R細胞株についての細胞成長を視覚化する。
図8B. 上の行のコロニー形成アッセイ写真により、対照ESR1:D538G CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:D538Gパルボシクリブ
R、ESR1:D538Gリボシクリブ
RおよびESR1:D538Gアベマシクリブ
R細胞株についての成長を視覚化し、下の行の写真により、エラセストラント(300nM)で処置した後の対照ESR1:D538G CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:D538Gパルボシクリブ
R、ESR1:D538Gリボシクリブ
RおよびESR1:D538Gアベマシクリブ
R細胞株についての細胞成長を視覚化する。
図8C. 上の行のコロニー形成アッセイ写真により、対照ESR1:Y537S CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:Y537Sパルボシクリブ
R、ESR1:Y537Aリボシクリブ
RおよびESR1:Y537Sアベマシクリブ
R細胞株についての成長を視覚化し、下の行の写真により、エラセストラント(300nM)で処置した後の対照ESR1:Y537S CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:Y537Sパルボシクリブ
R、ESR1:Y537Sリボシクリブ
RおよびESR1:Y537Sアベマシクリブ
R細胞株についての細胞成長を視覚化する。
【
図9-1】
図9A. ESR1:D538G変異を有するWHIM43-HI PDX異種移植片を移植した無胸腺ヌードマウスにおける経時的な平均腫瘍体積を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)で処置した。
図9B. ERα/ビンキュリン(対照に対して標準化)を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)を用いたESR1:D538G変異を有するWHIM43-HI PDX異種移植片モデルの処置についてプロットすることにより、ERαタンパク質レベルの定量化を決定した。
図9C. E2F1/ビンキュリン(対照に対して標準化)を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)を用いたESR1:D538G変異を有するWHIM43-HI PDX異種移植片モデルの処置についてプロットすることにより、E2F1タンパク質レベルの定量化を決定した。
図9D. CCNE1/ビンキュリン(対照に対して標準化)を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)を用いたESR1:D538G変異を有するWHIM43-HI PDX異種移植片モデルの処置についてプロットすることにより、CCNE1タンパク質レベルの定量化を決定した。
【
図9-2】
図9E. 倍率変化(fold change)(対照に対して標準化)を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)を用いてESR1:D538G変異を有するWHIM43-HI PDX異種移植片モデルの処置についてプロットすることにより、PgR mRNAレベルを決定した。
図9F. ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)で処置した、ESR1:D538G変異を有するWHIM43-HI PDX異種移植片モデルを示すウエスタンブロットを示す。
【
図10】
図10A. PgR mRNAレベル(対照に対して標準化)を、palbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることによりESR1:野生型変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるプロゲステロン受容体(PgR)の定量化を決定した。
図10B. TFF1 mRNAレベル(対照に対して標準化)を、palbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:野生型変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるトレフォイルファクター1(TFF1)の定量化を決定した。
図10C. GREB1 mRNAレベル(対照に対して標準化)をpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:野生型変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるエストロゲンにより制御される成長(growth regulated by estrogen)(GREB1)の定量化を決定した。
【
図11】
図11A. PgR mRNAレベル(対照に対して標準化)をpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:D538G変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるプロゲステロン受容体(PgR)の定量化を決定した。
図11B. TFF1 mRNAレベル(対照に対して標準化)をpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:D538G変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるトレフォイルファクター1(TFF1)の定量化を決定した。
図11C. GREB1 mRNAレベル(対照に対して標準化)をpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:D538G変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるエストロゲンにより制御される成長(GREB1)の定量化を決定した。
【
図12】
図12A. PgR mRNAレベル(対照に対して標準化)をpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:Y537S変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるプロゲステロン受容体(PgR)の定量化を決定した。
図12B. TFF1 mRNAレベル(対照に対して標準化)をpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:Y537S変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるトレフォイルファクター1(TFF1)の定量化を決定した。
図12C. GREB1 mRNAレベル(対照に対して標準化)をpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:Y537S変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるエストロゲンにより制御される成長(GREB1)の定量化を決定した。
【
図13】
図13. ST941-HI PDX異種移植片モデル(処置ナイーブ)の腫瘍体積を処置の日についてプロットし、ここで該モデルは、ビヒクルまたはフルベストラントとパルボシクリブの組合せ(フルベストラント3mg/用量データは別の試験由来である)で処置した。次いで、フルベストラントおよびパルボシクリブアーム由来の腫瘍を別の試験(ST941-HIパルボシクリブ処置;第1継代)に再度移植し、その後ビヒクル、フルベストラント(3mg/用量)、パルボシクリブ(25mg/kg)およびエラセストラント(30mg/kg)で処置して、エラセストラントは、フルベストラントとパルボシクリブの組合せで以前に処置したPDXモデルにおける腫瘍成長の阻害になお有効であることを示した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本明細書で使用する場合、エラセストラントまたは「RAD1901」は、経口的に生物学的利用可能な選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)であり、以下の化学構造:
【化1】
(その塩、溶媒和物(例えば水和物)およびプロドラッグを含む)を有する。前臨床データは、エラセストラントが、野生型および変異体ESR1の両方を有するER+乳癌のモデルにおける腫瘍成長の阻害に有効であることを示している。本明細書に記載されるいくつかの態様において、エラセストラントは、以下の化学構造:
【化2】
を有するビス塩酸(・2HCl)塩として投与される。
【0017】
閉経後の女性において、ER+癌、例えば乳癌についての現在の標準治療(standard of care)は、1)エストロゲンの合成を阻害すること(アロマターゼ阻害剤(AI));2)ERに直接結合して、SERM(例えばタモキシフェン)を使用してその活性を調節すること;および/または3)ERに直接結合して、SERD(例えばフルベストラント)を使用して受容体分解を引き起こすことによりER経路を阻害することを含む。閉経前の女性において、現在の標準治療はさらに、卵巣摘出または黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストによる卵巣抑制を含む。サイクリン依存型キナーゼ4/6(CDK4/6)阻害剤の内分泌薬剤への添加は、いくつかの場合、進行なしの生存(Progression Free Survival) (PFS)を大まかに2倍にすることが示されており、ここでこれらの種類の結果は、第1ライン転移性設定におけるいずれかのAIと組み合わせたまたは第2ライン転移性設定におけるフルベストラントと組み合わせた特定のCDK4/6阻害剤の承認および使用をもたらした。ESR1が変異してAIおよび/またはCDK4/6阻害剤に対して耐性になる傾向を示すデータは、野生型ESR1および全てのESR1変異に対して効力を有する新規の向上された経口的に生物学的利用可能な内分泌療法のための必要性を強調する。
【0018】
サイクリン依存型キナーゼ4/6(CDK4/6)阻害剤の内分泌薬剤への添加は、進行なしの生存(PFS)を大まかに2倍にし、これは、第1ラインの転移性設定におけるいずれかのAIと組み合わせたまたは第1もしくは第2ライン転移性設定のいずれかにおけるフルベストラントと組み合わせた特定のCDK4/6阻害剤の承認および使用をもたらした。本明細書に記載される方法において、エラセストラントは、以前の処置歴またはESR1変異状態にかかわらず、CDK4/6阻害剤耐性癌細胞株において用量依存的な長期間の成長阻害を誘導することが示される。エラセストラント(30mg/kg)はまた、パルボシクリブ(>100日)により以前に処置されたおよび/または新たにパルボシクリブに対して耐性になったPDXモデルにおいてインビボで腫瘍成長阻害を示した。また、エラセストラントは、限定されないがRbの損失、サイクリンE1の過剰発現、E2F1の過剰発現、サイクリンD1の過剰発現およびCDK6の過剰発現などのCDK4/6阻害剤耐性のいくつかの分子マーカーを示したいくつかのCDK4/6阻害剤耐性モデルにおいて、インビトロおよびインビボで成長阻害活性を示した。
【0019】
エラセストラント(30mg/kg)は、WHIM43-HI PDXモデル(パルボシクリブ耐性/Rbヌル)においてERを分解すること、E2F1発現を低減することおよびサイクリンE1発現を低減することが示された。CDK4/6阻害剤耐性の特徴は、これらの耐性細胞株ERにおいて、ERシグナル伝達および重要なことにER由来増殖が維持されたことを示した。そのため、種々の型のESR1変異を有するCDK4/6阻害剤耐性癌についての処置としてのエラセストラントの有効な使用を示す本明細書における試験は、有望な発見である。
【0020】
定義
本明細書で使用する場合、そうではないと示されない限り、以下の定義が適用される。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「RAD1901」および「エラセストラント」は、同じ化合物をいい、交換可能に使用される。
【0022】
ERα陽性腫瘍の「成長の阻害(inhibiting growth)」は、本明細書で使用する場合、腫瘍成長の速度を遅延することまたは腫瘍成長を完全に停止することをいい得る。
【0023】
ERα陽性腫瘍の「腫瘍退縮」または「退縮」は、本明細書で使用する場合、腫瘍の最大サイズの低減をいい得る。ある態様において、本明細書に記載される組合せまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の投与は、ベースライン(すなわち治療の開始前のサイズ)に対する腫瘍サイズの低下、またはさらに腫瘍の根絶もしくは部分的根絶を生じ得る。したがって、ある態様において、本明細書に提供される腫瘍退縮の方法は、代替的にベースラインに対して腫瘍サイズを低減する方法として特徴付けられ得る。
【0024】
「腫瘍」は、本明細書で使用する場合、悪性腫瘍であり、「癌」と交換可能に使用される。
【0025】
「エストロゲン受容体アルファ」または「ERα」は、本明細書で使用する場合、遺伝子ESR1によりコードされる野生型ERαアミノ酸配列を含むか、それからなるかまたは本質的にそれからなるポリペプチドをいう。
【0026】
「エストロゲン受容体αに対して陽性」、「ERα陽性」、「ER+」または「ERα+」である腫瘍は、本明細書で使用する場合、1つ以上の細胞がERαの少なくとも1つのアイソフォームを発現する腫瘍をいう。
【0027】
治療方法
いくつかの態様において、本開示は、被験体に、エラセストラントまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の治療有効量を投与する工程を含む、被験体においてCDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌を阻害および分解する方法に関する。
【0028】
他の態様において、本開示は、野生型エストロゲン受容体αおよび/または変異体エストロゲン受容体αを有する被験体において、CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌を治療する方法に関し、該方法は、被験体に、エラセストラントまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の治療有効量を投与する工程を含み、ここで変異体エストロゲン受容体αは、D538G、Y537X1、L536X2、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Qおよびそれらの組合せ(ここで:X1はS、NまたはCであり:X2はRまたはQである)からなる群より選択される1つ以上の変異を含む。
【0029】
エラセストラントの投与
エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、被験体に投与される場合、1つ以上の癌または腫瘍に対して治療効果を有する。腫瘍成長阻害または退縮は、特定の組織もしくは臓器内の単一の腫瘍もしくは腫瘍の組に局在化され得るか、または全身性であり得る(すなわち全ての組織または臓器において腫瘍に影響を及ぼす)。
【0030】
エラセストラントは、エストロゲン受容体ベータ(ERβ)に対してERαに優先的に結合することが知られているので、そうではないと特定されない限り、エストロゲン受容体、エストロゲン受容体アルファ、ERα、ERおよび野生型ERαは、本明細書において交換可能に使用される。ある態様において、ER+細胞はERαを過剰発現する。ある態様において、患者は、ERβの1つ以上の形態を発現する腫瘍内に1つ以上の細胞を有する。ある態様において、ERα陽性腫瘍および/または癌は、乳癌、子宮癌、卵巣癌または下垂体癌に関連する。これらの態様のあるものにおいて、患者は、乳房、子宮、卵巣または下垂体の組織に位置する腫瘍を有する。患者が乳房に位置する腫瘍を有するこれらの態様において、腫瘍は、HER2について陽性であってもなくてもよい管腔(luminal)乳癌に関連し得、HER2+腫瘍について、腫瘍は、HER2を高または低発現し得る。他の態様において、患者は、別の組織または臓器(例えば骨、筋肉、脳)に位置する腫瘍を有するが、それにもかかわらず乳癌、子宮癌、卵巣癌または下垂体癌(例えば乳癌、子宮癌、卵巣癌または下垂体癌の移動または転移に由来する腫瘍)に関連する。したがって、本明細書に提供される腫瘍成長阻害または腫瘍退縮方法のある態様において、標的化される腫瘍は転移性の腫瘍であるか、および/または腫瘍は、他の臓器(例えば骨および/または筋肉)においてERの過剰発現を有する。ある態様において、標的化される腫瘍は、脳腫瘍および/または癌である。ある態様において、標的化される腫瘍は、別のSERD(例えばフルベストラント、TAS-108 (SR16234)、ZK191703、RU58668、GDC-0810 (ARN-810)、GW5638/DPC974、SRN-927およびAZD9496)、Her2阻害剤(例えばトラスツズマブ、ラパチニブ、アド(ado)-トラスツズマブエムタンシンおよび/またはペルツズマブ)、化学療法(例えばアブラキサン、アドリアマイシン、カルボプラチン、シトキサン(cytoxan)、ダウノルビシン、ドキシル、エレンス(ellence)、フルオロウラシル、ジェムザール、ヘラベン(helaven)、ルクゼンプラ(lxempra)、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン(micoxantrone)、ナベルビン(navelbine)、タキソール、タキソテール、チオテパ、ビンクリスチンおよびゼローダ)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、エキセメスタンおよびレトロゾール)、選択的エストロゲン受容体調節因子(例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン(lasofoxifene)および/またはトレミフェン)、脈管形成阻害剤(例えばベバシズマブ)および/またはリツキシマブを用いた治療よりもエラセストラントの治療に対してより感受性であり得る。
【0031】
エラセストラントが野生型ERαを発現する腫瘍において腫瘍成長を阻害する能力を示すことに加えて、エラセストラントは、ERαの変異型、つまりY537S ERαを発現する腫瘍の成長を阻害する能力を示す。ERα変異の例のコンピューターモデリング評価により、これらの変異、例えばY537X変異体(ここでXはS、NまたはCである)を有するERα、D538G変異体を有するERαおよびS463P変異体を有するERαからなる群より選択される1つ以上の変異体を有するERαは、LBDに影響するかまたはエラセストラント結合を特異的に妨げることは予測されなかったことが示された。これらの結果に基づいて、癌を有する被験体に、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の治療有効量を投与することにより、癌を有する被験体において、リガンド結合ドメイン(LBD)内に、Y537X1(ここでX1はS、NまたはCである)、D538G、L536X2(ここでX2はRまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Qからなる群より選択される1つ以上の変異体を有するERα、特にY537S ERαについて陽性である腫瘍の成長を阻害または腫瘍の退縮を生じるための方法が本明細書に提供される。「変異体ERα」は、本明細書で使用する場合、1つ以上の置換または欠失を含むERα、およびERαのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは少なくとも99.5%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それらからなるかまたは本質的にそれらからなるそれらのバリアントをいう。
【0032】
動物異種移植片モデルにおいて乳癌腫瘍成長を阻害することに加えて、エラセストラントは、腫瘍細胞内に有意な蓄積を示し、血液脳関門を通過し得る。血液脳関門を通過する能力は、エラセストラント投与が脳転移異種移植片モデルにおいて生存を有意に延長することを示すことにより確認された。したがって、本明細書に提供される腫瘍成長阻害または腫瘍退縮方法のある態様において、標的化されるERα陽性腫瘍は、脳または中枢神経系内の他の場所に位置する。これらの態様のあるものにおいて、ERα陽性腫瘍は、脳癌に主に関連する。他の態様において、ERα陽性腫瘍は、別の型の癌、例えば乳癌、子宮癌、卵巣癌もしくは下垂体癌に主に関連する転移性の腫瘍、または別の組織もしくは臓器から移動した腫瘍である。これらの態様のあるものにおいて、腫瘍は、脳転移、例えば乳癌脳転移(BCBM)である。本明細書に開示される方法のある態様において、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、標的腫瘍内の1つ以上の細胞内に蓄積する。
【0033】
本明細書に開示される方法のある態様において、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、好ましくは、約15以上、約18以上、約19以上、約20以上、約25以上、約28以上、約30以上、約33以上、約35以上または約40以上のT/P(腫瘍内エラセストラント濃度/血漿内エラセストラント濃度)比で腫瘍内に蓄積する
【0034】
用量
本明細書で開示される方法における使用のためのエラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の組合せの治療有効量は、特定の時間間隔にわたり投与される場合に1つ以上の治療基準(benchmark)(例えば腫瘍成長の遅延または停止、腫瘍退縮を生じること、症状の休止等)の達成を生じる量である。本明細書に開示される方法における使用のための組合せは、被験体に1回または複数回投与され得る。化合物が複数回投与されるこれらの態様において、化合物は、一定の間隔、例えば毎日、1日おき、毎週または毎月で投与され得る。代替的に、化合物は、不規則な間隔で、例えば症状、患者の健康状態等に基づいて必要に応じてベースで投与され得る。組合せの治療有効量は、1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも10日または少なくとも15日の間、毎日(q.d.)で投与され得る。任意に、癌の状態または腫瘍の退縮は、治療の間またはその後に、被験体のFES-PETスキャンによりモニタリングされる。被験体に投与される組み合わせの用量は、検出される癌の状態または腫瘍の退縮に応じて増加または減少され得る。
【0035】
理想的には、治療有効量は、50%以上の治療された被験体が、悪心またはさらなる薬物投与を妨げる他の毒性反応を経験する最大許容用量を超えない。治療有効量は、症状の多様性および程度、被験体の性別、年齢、体重または一般的な健康状態、投与形式および塩または溶媒和物の種類、薬物に対する感受性の変度(variation)、疾患の特定の種類等の種々の要因に応じて、被験体に対して変化し得る。
【0036】
本明細書に開示される方法における使用のためのエラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の治療有効量の例としては、限定されることなく、耐性のER由来腫瘍または癌を有する被験体について約150~約1,500mg、約200~約1,500mg、約250~約1,500mgまたは約300~約1,500mgの用量で毎日;野生型ER由来の腫瘍および/または癌ならびに耐性の腫瘍および/または癌の両方を有する被験体について約150~約1,500mg、約200~約1,000mgまたは約250~約1,000mgまたは約300~約1,000mgの用量で毎日;ならびに主に野生型ER由来の腫瘍および/または癌を有する被験体について約300~約500mg、約300~約550mg、約300~約600mg、約250~約500mg、約250~約550mg、約250~約600mg、約200~約500mg、約200~約550mg、約200~約600mg、約150~約500mg、約150~約550mgまたは約150~約600mg 毎日の用量が挙げられる。ある態様において、成人被験体に対して一般的な本明細書に開示される方法における使用のための式Iの化合物(例えばエラセストラント)またはその塩もしくは溶媒和物の用量は、約200mg、400mg、30mg~2,000mg、100mg~1,500mgまたは150mg~1,500mg経口、毎日であり得る。この日用量は、単一投与または複数の投与により達成され得る。
【0037】
耐性の株および変異体受容体(1つまたは複数)を発現する例を含む乳癌の治療におけるエラセストラントの投与は、1日当たり100mg~1,000mgの範囲である。例えば、エラセストラントは、1日当たり100、200、300、400、500、600、700、800、900または1,000mgで投与され得る。特に、1日当たり200mg、400mg、500mg、600mg、800mgおよび1,000mgが注目される。驚くべきことに、PO投与後のヒトにおけるエラセストラントの長い半減期は、この選択肢を特に現実的にする。したがって、薬物は、200mg 1日2回(bid)(毎日合計400mg)、250mg 1日2回(毎日合計500mg)、300mg 1日2回(毎日合計600mg)、400mg 1日2回(毎日800mg)または500mg 1日2回(毎日合計1,000mg)として投与され得る。いくつかの態様において、投与は経口である。
【0038】
本明細書に開示される方法のある態様において、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、好ましくは約15以上、約18以上、約19以上、約20以上、約25以上、約28以上、約30以上、約33以上、約35以上または約40以上のT/P(腫瘍中エラセストラント濃度/血漿中エラセストラント濃度)比で腫瘍内に蓄積する。
【0039】
エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、1回または複数回、被験体に投与され得る。化合物が複数回投与されるこれらの態様において、化合物は、一定の間隔、例えば毎日、1日おき、毎週または毎月で投与され得る。代替的に、化合物は、不規則な間隔で、例えば症状、患者の健康状態等に基づいて必要に応じてベースで投与され得る。
【0040】
製剤化
いくつかの態様において、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、単一製剤の一部として投与される。例えば、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、経口投与のための単一の丸薬または注射のための単一の用量で製剤化される。ある態様において、単一製剤中の化合物の投与は、患者コンプライアンスを向上させる。
【0041】
いくつかの態様において、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩を含む製剤はさらに、1つ以上の医薬賦形剤、担体、アジュバントおよび/または保存剤を含み得る。
【0042】
本明細書に開示される方法における使用のためのエラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、それぞれの単位が、任意に適切な医薬担体と共に所望の治療効果を生じるように計算される所定量の活性材料を含む、治療を受けている被験体に対する単位用量として適切な物理的に別個の単位を意味する単位剤型に製剤化され得る。単位剤型は、単一の日用量または複数の日用量(例えば毎日で約1~4回以上)の1つのためのものであり得る。複数の日用量を使用する場合、単位剤型は、それぞれの用量について同じであり得るかまたは異なり得る。ある態様において、化合物は制御放出のために製剤化され得る。
【0043】
本明細書に開示される方法における使用のためのエラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩および塩または溶媒和物は、任意の利用可能な従来方法に従って調製され得る。好ましい剤型の例としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射可能物質、軟膏、眼軟膏、点眼剤、点鼻剤、点耳剤(ear drop)、パップ剤、ローション剤等が挙げられる。製剤化において、例えば希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤および必要な場合は安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の一般的に使用される添加剤が使用され得る。また、製剤化は、従来方法に従って、医薬製剤の原料として一般的に使用される組成物を合わせることによってもなされる。これらの組成物の例としては、例えば、(1)ダイズ油、牛脂および合成グリセリドなどの油;(2)流動パラフィン、スクアランおよび固形パラフィンなどの炭化水素;(3)ミリスチン酸オクチルドデシルおよびミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油;(4)セトステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールなどの高級アルコール;(5)シリコン樹脂;(6)シリコン油;(7)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、固形ポリオキシエチレンヒマシ油およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどの界面活性剤;(8)ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびメチルセルロースなどの水溶性巨大分子;(9)エタノールおよびイソプロパノールなどの低級アルコール;(10)グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびソルビトールなどの多価アルコール;(11)グルコースおよびショ糖などの糖;(12)無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(alminum magnesium silicicate)およびケイ酸アルミニウムなどの無機粉末;ならびに(13)精製水等が挙げられる。上記製剤化における使用のための添加剤としては、例えば1)希釈剤としてラクトース、トウモロコシデンプン、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、結晶セルロース(crystalline cellulose)および二酸化ケイ素;2)結合剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガカント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール-ポリオキシエチレンブロックコポリマー、メグルミン、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン等;3)崩壊剤としてデンプン、寒天、ゼラチン粉末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース/カルシウム等;4)滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、濃縮(condensed)植物油等;5)着色剤としては添加が薬学的に許容され得る任意の着色剤が適切である;6)矯味矯臭剤としてココアパウダー、メントール、芳香剤(aromatizer)、ペパーミント油、シナモン粉末;および7)アスコルビン酸またはアルファトフェノール(tophenol)など、その添加が薬学的に許容される酸化防止剤が挙げられ得る。
【0044】
本明細書に開示される方法における使用のためのエラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、本明細書に記載される活性化合物および生理学的に許容され得る担体(薬学的に許容され得る担体または溶液または希釈剤とも称される)の任意の1つ以上として医薬組成物に製剤化され得る。かかる担体および溶液は、本発明の方法において使用される化合物の薬学的に許容され得る塩および溶媒和物、ならびにかかる化合物、化合物の薬学的に許容され得る塩および化合物の薬学的に許容され得る溶媒和物の2つ以上を含む混合物を含む。かかる組成物は、参照により本明細書に援用されるRemington's Pharmaceutical Sciences, 17版, ed. Alfonso R. Gennaro, Mack Publishing Company, Eaton, Pa. (1985)に記載されるものなどの許容され得る薬学的手順に従って調製される。
【0045】
用語「薬学的に許容され得る担体」は、それが投与される患者においてアレルギー反応または他の都合の悪い効果を生じず、製剤中の他の成分と適合性である担体をいう。薬学的に許容され得る担体としては、例えば意図する投与形態に関して適切に選択され、従来の薬学的実務と矛盾しない薬学的な希釈剤、賦形剤または担体が挙げられる。例えば、固形の担体/希釈剤としては、限定されないがゴム、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例えばラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース性材料(例えば微結晶セルロース(microcrystalline cellulose))、アクリレート(例えばポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルクまたはそれらの混合物が挙げられる。薬学的に許容され得る担体はさらに、治療剤の貯蔵寿命または効力を高める湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤などの微量の補助物質を含み得る。
【0046】
遊離形態のエラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、従来の方法により塩に変換され得る。本明細書で使用される用語「塩」は、塩が、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と共に形成され、薬理学的に許容され得る限りは限定されず;塩の好ましい例としては、ハロゲン化水素塩(例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ショウノウスルホン酸塩等)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)、第四級アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)等が挙げられる。また、塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩等は、本発明による化合物の「薬理学的に許容され得る塩」として好ましい。
【0047】
エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の異性体(例えば幾何異性体、光学異性体、ロータマー、互変異性体等)は、例えば再結晶化、ジアステレオマー塩法(diastereomeric salt method)などの光学分割、酵素分画法(enzyme fractionation method)、種々のクロマトグラフィー(例えば薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガラスクロマトグラフィー(glass chromatography)等)を含む一般的な分離手段を使用して、単一の異性体に精製され得る。本明細書において、用語「単一の異性体」は、100%の純度を有する異性体だけでなく、従来の精製操作を通じても存在する標的以外の異性体を含む異性体も含む。エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩および/またはフルベストラントについて、結晶多形が時々存在し、その全ての結晶多形は本発明に含まれる。結晶多形は時々単一であり、時々混合物であり、その両方が本発明に含まれる。
【0048】
ある態様において、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩はプロドラッグの形態であり得、その活性形態を達成するためにいくつかの変化(例えば酸化または加水分解)を受けなければならないことを意味する。代替的に、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、親プロドラッグの、その活性形態への変化により作製される化合物であり得る。
【0049】
投与経路
エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の投与経路としては、限定されないが、局所投与、経口投与、皮内投与、筋内投与、腹腔内投与、静脈内投与、嚢内注入、皮下投与、経皮投与および経粘膜投与が挙げられる。
いくつかの態様において、投与経路は経口である。
【0050】
遺伝子プロファイリング
ある態様において、本明細書に提供される腫瘍成長阻害または腫瘍退縮の方法はさらに、被験体を遺伝子プロファイリングする工程を含み、プロファイリングされる遺伝子は、ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2およびVHLからなる群より選択される1つ以上の遺伝子である。他の態様において、プロファイリングされる遺伝子は、AKT1、AKT2、BRAF、CDK4、CDK6、PIK3CA、PIK3R1およびMTORからなる群より選択される1つ以上の遺伝子である。
【0051】
いくつかの態様において、本発明は、乳癌患者のサブ集団を治療する方法を提供し、ここで該サブ集団は上述の遺伝子の1つ以上の増加した発現を有し、該方法は、本開示に記載される投与態様によるエラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の有効用量により該サブ集団を治療する。
【0052】
用量調整
エラセストラントが腫瘍成長を阻害する能力を確立することに加えて、エラセストラントは、子宮および下垂体においてエストラジオールのERへの結合を阻害する。これらの実験において、子宮および下垂体組織においてERに結合するエストラジオールは、FES-PET画像化により評価された。エラセストラントを用いた治療の後、ER結合の観察されたレベルは、バックグラウンドレベル以下であった。これらの結果により、ER活性に対するエラセストラントのアンタゴニスト効果は、リアルタイムスキャニングを用いて評価され得ることが確立される。これらの結果に基づいて、1つ以上の標的組織においてエストラジオール-ER結合を測定することにより、本明細書に開示される組合せ療法における治療エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の効力をモニタリングするための方法が本明細書に提供され、ここで結合の減少または消失は効力を示す。
【0053】
エストラジオール-ER結合に基づいて、本明細書に開示される組合せ療法におけるエラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の用量を調整する方法がさらに提供される。これらの方法のある態様において、結合は、化合物の第1の用量の1以上の投与後のいくつかの点で測定される。エストラジオール-ER結合が影響を受けないかまたは所定の閾値未満の低下(例えば5%未満、10%未満、20%未満、30%未満または50%未満のベースラインに対する結合の低下)を示す場合、第1の用量は低すぎるとみなされる。ある態様において、これらの方法は、化合物の増加した第2の用量を投与するさらなる工程を含む。これらの工程は反復され得、用量は、エストラジオール-ER結合の所望の低減が達成されるまで繰り返して増加される。ある態様において、これらの工程は、本明細書に提供される腫瘍成長を阻害する方法に組み込まれ得る。これらの方法において、エストラジオール-ER結合は、腫瘍成長阻害の代用、または成長阻害を評価する補助的な手段として機能し得る。他の態様において、これらの方法は、例えば癌細胞増殖の阻害などの腫瘍成長の阻害以外の目的のために、エラセストラントまたはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の投与と組み合わせて使用され得る。
【0054】
ある態様において、組合せ療法においてエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)の用量を調整するための本明細書に提供される方法は:
(1)エラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)の第1の用量(例えば約350~約500または約200~約600mg/日)を3、4、5、6または7日間投与する工程;
(2)エストラジオール-ER結合活性を検出する工程;ここで:
(i)ER結合活性が検出可能でないかもしくは所定の閾値レベル未満である場合、第1の用量を投与することを継続する(すなわち用量レベルを維持する)か;または
(ii)ER結合活性が検出可能であるかもしくは所定の閾値レベルより高い場合、第1の用量よりも高い第2の用量(例えば第1の用量+約50~約200mg)を3、4、5、6もしくは7日間投与し、次いで工程(3)に進む;
(3)エストラジオール-ER結合活性を検出する工程;ここで
(i)ER結合活性が検出可能でないかもしくは所定の閾値レベル未満である場合、第2の用量を投与することを継続する(すなわち用量レベルを維持する)か;または
(ii)ER結合活性が検出可能であるかもしくは所定の閾値レベルよりも高い場合、第2の用量よりも高い第3の用量(例えば第2の用量+約50~約200mg)を3、4、5、6もしくは7日間投与し、次いで工程(4)に進む;
(4)ER結合活性が検出されなくなるまで、上述の工程を、第4の用量、第5の用量等を通して反復する工程
を含む。
【0055】
ある態様において、本発明は、ER感受性もしくはER耐性の癌を検出および/またはそれらに投与するためのPET画像化の使用を含む。
【0056】
以下の実施例は、特許請求される発明をより良く説明するために提供され、本発明の範囲を限定するようには解釈されない。特定の材料が言及される程度まで、実施例は単に例示の目的であり、本発明を限定することを意図しない。当業者は、発明的能力の練習なくおよび本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物を開発し得る。本発明の範囲内に依然として維持したまま本明細書に記載される手順において多くの変形がなされ得ることが理解される。かかる変形が本発明の範囲内に含まれることが本発明者の意図である。
【実施例】
【0057】
実施例
材料および方法
試験化合物
以下の実施例において使用されるエラセストラントは、例えばIRIX Pharmaceuticals, Inc. (Florence, SC)により製造された(6R)-6-(2-(N-(4-(2-(エチルアミノ)エチル)ベンジル)-N-エチルアミノ)-4-メトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オール二塩酸塩であった。エラセストラントは、乾燥粉末として貯蔵され、脱イオン水中0.5%(w/v)メチルセルロースにおける均一な懸濁液としての使用のために製剤化され、動物モデルに対して経口投与された。タモキシフェン、ラロキシフェンおよびエストラジオール(E2)はSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から入手し、皮下注射により投与した。フルベストラントは、Tocris Biosciences (Minneapolis, MN)から入手し、皮下注射により投与した。他の実験室試薬は、そうではないと記されない限り、Sigma-Aldrichから購入した。
【0058】
CDK4/6阻害剤耐性の作製
インビトロ
HCC1428-LTED-CDK4/6R細胞、MCF7-Y537S-CDK4/6RおよびMCF7-D538G-CDK4/6Rは、HCC1428-LTED細胞を、増加濃度の適切なCDK4/6iに暴露して作製し、これらの細胞の現行の維持は、PalboRおよびRiboR細胞についてそれぞれ500nMのパルボシクリブおよびリボシクリブであり、ならびにAbemaR細胞について250nMのアベマシクリブであった。
【0059】
インビボ
ST941-HI患者由来異種移植片断片を無胸腺ヌードマウスに移植した。腫瘍は、Vernierカリパスで2回/週で測定し;体積は、式:(L*W2)*0.5を使用して計算した。腫瘍を、ビヒクル、フルベストラント(3mg/用量/週)+パルボシクリブ(25mg/kg毎日)およびRAD1901(30mg/kg毎日)で処置した。フルベストラント(3mg/用量/週)+パルボシクリブ(25mg/kg毎日)の存在下で成長する腫瘍を>1500mm3まで成長させ、次いで採取して、継代(P1)とみなされるマウスの新規のコホートに再度移植した。
【0060】
PDXモデル
腫瘍を、断片として無胸腺ヌードマウスに継代した(Nu (NCR)-Foxn1nu)。WHIM43患者由来異種移植片断片を、エストラジオールの追加(Horizon)なしで卵巣摘出マウスに移植した。全てのマウスは、明暗周期(人工の光の12~14時間概日周期)ならびに室温および湿度の制御下、滅菌して、ほこりを含まない寝床用コーンパイプ(bedding cob)を有し、滅菌した食餌および水に自由にありつける個々に換気したケージ内の病原菌非含有ハウジング中に収容した。腫瘍は、Vernierカリパスで2回/週で測定し;体積は、式:(L*W2)*0.52を使用して計算した。エラセストラントおよびパルボシクリブは試験の継続期間中毎日経口投与した。フルベストラントは1回/週で皮下投与した。
【0061】
定量的リアルタイムPCR(RT-qPCR)
インビボ異種移植片モデル
試験の終わりに、腫瘍をcryoPREPTM Impactor (Covaris)で粉砕し、RNeasy miniキット(Qiagen)により全RNAを抽出した。Taqman Fast Virus 1工程マスターミックスおよびTaqManTMプローブ(Applied Biosystems)を使用してqPCRを行った。Ct値を分析して、2-ΔΔCT法を使用して、GAPDHを内部対照として、PgR(プロゲステロン受容体)mRNAの発現の相対変化を評価した。
【0062】
インビトロ異種移植片モデル
処置の終了時に、細胞を1工程Cells-to-Ctキット由来の溶解バッファで溶解し、溶解物を、製造業者の指示書に従って処置した。1工程マスターミックスおよびTaqManTMプローブ(Applied Biosystems)を使用してqPCRを行った。Ct値を分析して、2-ΔΔCT法を使用して、GAPDHを内部対照として、PgR(プロゲステロン受容体)mRNA、tff1(トレフォイルファクター1)mRNAおよびGREB1(エストロゲンにより制御される成長)mRNAの発現の相対変化を評価した。
【0063】
増殖アッセイ
細胞を、5000細胞/ウェルの密度で平板培養して、翌日にそれぞれの処置で処置した。薬物有りのインキュベーションの7日後に生存能力を測定し、データを100%としての対照値に対して標準化した。データを、7日目の対照に対して%成長阻害としてグラフにする。
【0064】
コロニー形成アッセイ
細胞を1000~10000細胞/ウェルの密で平板培養して、細胞株に応じて2~5週間成長させた。処置は三重で行い;培地および化合物は毎週交換した。処置の終了時に、細胞をパラホルムアルデヒドで固定して、視覚化のためにクリスタルバイオレットで染色した。
【0065】
ウエスタンブロット分析
細胞または腫瘍を投与後に採取して、標準的な実務および以下:ERa、PR、E2F1、CCNE1、CCNE2、CCND1、Rb、pRb、CDK2、CDK4、CDK6(Cell Signaling Technologies, Cat#13258;#3153;#3742、#4129、#4132、#2978、#9309、#8516、#2546、#12790、#13331)、p107、p130 (Abcam: ab168458、ab6545)およびビンキュリン:Sigma-Aldrich, #v9131の抗体を使用して、タンパク質発現を分析した。タンパク質発現は、AzureSpotソフトウェアを使用して定量化し、ビンキュリン発現に対して標準化した。感受性および耐性の株に対するパルボシクリブの示差的な効果は、両方の株を500nMパルボシクリブ(palbocicilib)で24時間処置して、それらの相対的な対照と比較することにより試験した。インビボにおけるエラセストラント、フルベストラントおよびパルボシクリブの効果は、最後の投与の4時間後に収集した腫瘍を試験の終了時に試験した。
【0066】
実施例
図1A~1Dを参照すると、野生型および変異体ESR1バックグラウンドにおけるパルボシクリブ耐性モデルの生成および特徴付けが示される。
図1Aにおいて、生成されたESR1:野生型LTED細胞株についてのパルボシクリブに対する耐性を、パルボシクリブ感受性(palbo
S)およびパルボシクリブ耐性(palbo
R)細胞株についてプロットする。
図1Bにおいて、Log[パルボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)をpalbo
Sおよびpalbo
R ESR1:野生型細胞株についてプロットする。
図1Cにおいて、対照およびパルボシクリブ(500nM)での処置後について、palbo
Sおよびpalbo
R ESR1:野生型細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
図1Dにおいて、ESR1:野生型遺伝子を有するLTED、LTED+palbo、LTED-palbo
RおよびLTED-palbo
R+palboモデルについてのウエスタンブロットを示す。
【0067】
図2A~2Dを参照すると、野生型および変異体ESR1バックグラウンドにおけるパルボシクリブ耐性モデルの生成および特徴付けが示される。
図2Aにおいて、生成されたESR1:D538G LTED細胞株についてのパルボシクリブに対する耐性を、パルボシクリブ感受性(palbo
S)およびパルボシクリブ耐性(palbo
R)細胞株についてプロットする。
図2Bにおいて、Log[パルボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、palbo
Sおよびpalbo
R ESR1:D538G細胞株についてプロットする。
図2Cにおいて、対照およびパルボシクリブ(500nM)での処置後についてのpalbo
Sおよびpalbo
R ESR1:D538G細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
図2Dにおいて、ESR1:D538G変異を有するLTED、LTED+palbo、LTED-palbo
RおよびLTED-palbo
R+palboモデルについてのウエスタンブロットを示す。
【0068】
図3A~3Dを参照すると、野生型および変異体ESR1バックグラウンドにおけるパルボシクリブ耐性モデルの生成および特徴付けが示される。
図3Aにおいて、生成されたESR1:Y537S LTED細胞株についてのパルボシクリブに対する耐性を、パルボシクリブ感受性(palbo
S)およびパルボシクリブ耐性(palbo
R)細胞株についてプロットする。
図3Bにおいて、Log[パルボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、palbo
Sおよびpalbo
R ESR1:Y537S細胞株についてプロットする。
図3Cにおいて、対照およびパルボシクリブ(500nM)での処置後についてのpalbo
Sおよびpalbo
R ESR1:Y537S細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
図3Dにおいて、ESR1:Y537S変異を有するLTED、LTED+palbo、LTED-palbo
RおよびLTED-palbo
R+palboモデルについてのウエスタンブロットを示す。
【0069】
ここで
図4A~4Fを参照すると、野生型および変異体ESR1バックグラウンドにおけるリボシクリブ-およびアベマシクリブ耐性モデルの生成および特徴付けが示される。
図4Aにおいて、生成されたESR1:野生型LTED細胞株についてのリボシクリブに対する耐性を、リボシクリブ感受性(ribo
S)およびリボシクリブ耐性(ribo
R)細胞株についてプロットする。
図4Bにおいて、生成されたESR1:野生型LTED細胞株についてのアベマシクリブに対する耐性を、アベマシクリブ感受性(abema
S)およびアベマシクリブ耐性(abema
R)細胞株についてプロットする。
図4Cにおいて、Log[リボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、ribo
Sおよびribo
R ESR1:野生型細胞株についてプロットする。
図4Dにおいて、対照およびリボシクリブ(500nM)での処置後についてのribo
Sおよびribo
R ESR1:野生型細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
図4Eにおいて、Log[アベマシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、abema
Sおよびabema
R ESR1:野生型細胞株についてプロットする。
図4Fにおいて、対照およびアベマシクリブ(500nM)での処置後についてのabema
Sおよびabema
R ESR1:野生型細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
【0070】
ここで
図5A~5Fを参照すると、野生型および変異体ESR1バックグラウンドにおけるリボシクリブ-およびアベマシクリブ耐性モデルの生成および特徴付けが示される。
図5Aにおいて、生成されたESR1:D538G LTED細胞株についてのリボシクリブに対する耐性を、リボシクリブ感受性(ribo
S)およびリボシクリブ耐性(ribo
R)細胞株についてプロットする。
図5Bにおいて、生成されたESR1:D538G LTED細胞株についてのアベマシクリブに対する耐性を、アベマシクリブ感受性(abema
S)およびアベマシクリブ耐性(abema
R)細胞株についてプロットする。
図5Cにおいて、Log[リボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、ribo
Sおよびribo
R ESR1:D538G細胞株についてプロットする。
図5Dにおいて、対照およびリボシクリブ(500nM)での処置後についてのribo
Sおよびribo
R ESR1:D538G細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
図5Eにおいて、Log[アベマシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、abema
Sおよびabema
R ESR1:D538G細胞株についてプロットする。
図5Fにおいて、対照およびアベマシクリブ(500nM)での処置後についてのabema
Sおよびabema
R ESR1:D538G細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
【0071】
ここで
図6A~6Fを参照すると、野生型および変異体ESR1バックグラウンドにおけるリボシクリブ-およびアベマシクリブ耐性モデルの生成および特徴付けが示される。
図6Aにおいて、生成されたESR1:Y537S LTED細胞株についてのリボシクリブに対する耐性を、リボシクリブ感受性(ribo
S)およびリボシクリブ耐性(ribo
R)細胞株についてプロットする。
図6Bにおいて、生成されたESR1:Y537S LTED細胞株についてのアベマシクリブに対する耐性を、アベマシクリブ感受性(abema
S)およびアベマシクリブ耐性(abema
R)細胞株についてプロットする。
図6Cにおいて、Log[リボシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、ribo
Sおよびribo
R ESR1:Y537S細胞株についてプロットする。
図6Dにおいて、対照およびリボシクリブ(500nM)での処置後についてのribo
Sおよびribo
R ESR1: Y537S細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
図6Eにおいて、Log[アベマシクリブ(μM)]に関するパーセント成長阻害(100%として対照に対して標準化)を、abema
Sおよびabema
R ESR1:Y537S細胞株についてプロットする。
図6Fにおいて、対照およびアベマシクリブ(500nM)での処置後についてのabema
Sおよびabema
R ESR1:Y537S細胞株のコロニー形成アッセイ写真を示す。
【0072】
ここで
図7A~7Cを参照すると、エラセストラントは、以前の処置歴またはESR1状態にかかわらず、用量依存的な腫瘍成長の阻害および腫瘍退縮を示した。
図7Aにおいて、EC
50(nM)値を示し、Log[エラセストラント(nM)]に関するパーセント成長阻害を、ESR1:野生型CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:野生型パルボシクリブ
R、ESR1:野生型リボシクリブ
RおよびESR1:野生型アベマシクリブ
R細胞株についてプロットする。
図7Bにおいて、EC
50(nM)値を示し、Log[エラセストラント(nM)]に関するパーセント成長阻害を、ESR1:D538G CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:D538Gパルボシクリブ
R、ESR1:D538Gリボシクリブ
RおよびESR1:D538Gアベマシクリブ
R細胞株についてプロットする。
図7Cにおいて、EC
50(nM)値を示し、Log[エラセストラント(nM)]に関するパーセント成長阻害を、ESR1:Y537S CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:Y537Sパルボシクリブ
R、ESR1:Y537Sリボシクリブ
RおよびESR1:Y537Sアベマシクリブ
R細胞株についてプロットする。
【0073】
図8A~8Cを参照すると、エラセストラントは、CDK4/6阻害剤耐性細胞株において、長期の成長阻害を示した。
図8Aにおいて、上の行のコロニー形成アッセイ写真により、対照ESR1:野生型CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:野生型パルボシクリブ
R、ESR1:野生型リボシクリブ
RおよびESR1:野生型アベマシクリブ
R細胞株についての成長が視覚化され、下の行の写真により、エラセストラント(300nM)で処置した後の対照ESR1:野生型CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:野生型パルボシクリブ
R、ESR1:野生型リボシクリブ
RおよびESR1:野生型アベマシクリブ
R細胞株についての細胞成長が視覚化される。
図8Bにおいて、上の行のコロニー形成アッセイ写真により、対照ESR1:D538G CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:D538G パルボシクリブ
R、ESR1:D538Gリボシクリブ
RおよびESR1:D538Gアベマシクリブ
R細胞株についての成長が視覚化され、下の行の写真により、エラセストラント(300nM)で処置した後の対照ESR1:D538G CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:D538Gパルボシクリブ
R、ESR1:D538Gリボシクリブ
RおよびESR1:D538Gアベマシクリブ
R細胞株についての細胞成長が視覚化される。
図8Cにおいて、上の行のコロニー形成アッセイ写真により、対照ESR1:Y537S CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:Y537Sパルボシクリブ
R、ESR1:Y537Aリボシクリブ
RおよびESR1:Y537Sアベマシクリブ
R細胞株についての成長が視覚化され、下の行の写真により、エラセストラント(300nM)で処置した後の対照ESR1:Y537S CDK4/6阻害剤感受性、ESR1:Y537Sパルボシクリブ
R、ESR1:Y537Sリボシクリブ
RおよびESR1:Y537Sアベマシクリブ
R細胞株についての細胞成長が視覚化される。
【0074】
ここで
図9A~9Fを参照すると、エラセストラントは、パルボシクリブに対して非感受性のPDXモデルの阻害された成長を示した。
図9Aにおいて、ESR1:D538G変異を有するWHIM43 PDX異種移植片を移植した無胸腺ヌードマウスにおける経時的な平均腫瘍体積を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)で処置した。
図9Bにおいて、ERα/ビンキュリン(対照に対して標準化)を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)を用いたESR1:D538G変異を有するWHIM43 PDX異種移植片モデルの処置についてプロットすることにより、ERαタンパク質レベルの定量化を決定した。
図9Cにおいて、E2F1/ビンキュリン(対照に対して標準化)を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)を用いたESR1:D538G変異を有するWHIM43 PDX異種移植片モデルの処置についてプロットすることにより、E2F1タンパク質レベルの定量化を決定した。
図9Dにおいて、PgR mRNAレベル(対照に対して標準化)を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)を用いたESR1:D538G変異を有するWHIM43 PDX異種移植片モデルの処置についてプロットすることにより、CCNE1タンパク質(またはサイクリンE1)レベルの定量化を決定した。
図9Eにおいて、PgR mRNAレベル(対照に対して標準化)を、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)を用いたESR1:D538G変異を有するWHIM43 PDX異種移植片モデルの処置についてプロットすることにより、PgR mRNAレベルを決定した。
図9Fにおいて、ビヒクル対照、パルボシクリブ、フルベストラント(3mg/用量)およびエラセストラント(30および60mg/kg)を用いて処置したESR1:D538G変異を有するWHIM43 PDX異種移植片モデルを示すウエスタンブロットを示す。
【0075】
ここで
図10A~10Cを参照すると、エラセストラントは、CDK4/6阻害剤耐性モデルにおいてERシグナル伝達を阻害することが示される。
図10Aにおいて、PgR mRNAレベル(対照に対して標準化)を、対照またはエラセストラント(100nMおよび1000nM)を用いたpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:野生型変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるプロゲステロン受容体(PgR)の定量化を決定した。
図10Bにおいて、TFF1 mRNAレベル(対照に対して標準化)を、対照またはエラセストラント(100nMおよび1000nM)を用いたpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:野生型変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるトレフォイルファクター1(TFF1)の定量化を決定した。
図10Cにおいて、GREB1 mRNAレベル(対照に対して標準化)を、対照またはエラセストラント(100nMおよび1000nM)を用いたpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:野生型変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるエストロゲンにより制御される成長(GREB1)の定量化を決定した。
【0076】
ここで
図11A~11Cを参照すると、エラセストラントは、CDK4/6阻害剤耐性モデルにおけるERシグナル伝達を阻害することが示される。
図11Aにおいて、PgR mRNAレベル(対照に対して標準化)を、対照またはエラセストラント(100nMおよび1000nM)を用いたpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:D538G変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるプロゲステロン受容体(PgR)の定量化を決定した。
図11Bにおいて、TFF1 mRNAレベル(対照に対して標準化)を、対照またはエラセストラント(100nMおよび1000nM)を用いたpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:D538G変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるトレフォイルファクター1(TFF1)の定量化を決定した。
図11Cにおいて、GREB1 mRNAレベル(対照に対して標準化)を、対照またはエラセストラント(100nMおよび1000nM)を用いたpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:D538G変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるエストロゲンにより制御される成長(GREB1)の定量化を決定した。
【0077】
ここで
図12A~12Cを参照すると、エラセストラントは、CDK4/6阻害剤耐性モデルにおいてERシグナル伝達を阻害することが示される。
図12Aにおいて、PgR mRNAレベル(対照に対して標準化)を、対照またはエラセストラント(100nMおよび1000nM)を用いたpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:Y537S変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるプロゲステロン受容体(PgR)の定量化を決定した。
図11Bにおいて、TFF1 mRNAレベル(対照に対して標準化)を、対照またはエラセストラント(100nMおよび1000nM)を用いたpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:Y537S変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるトレフォイルファクター1(TFF1)の定量化を決定した。
図11Cにおいて、GREB1 mRNAレベル(対照に対して標準化)を、対照またはエラセストラント(100nMおよび1000nM)を用いたpalbo
Sおよびpalbo
R細胞株の処置についてプロットすることにより、ESR1:Y537S変異を有する腫瘍細胞モデルにおけるエストロゲンにより制御される成長(GREB1)の定量化を決定した。
【0078】
ここで
図13を参照すると、エラセストラントは、フルベストラントとパルボシクリブの組合せで以前に処置したPDXモデルの腫瘍成長を阻害することが示される。
図13において、ST941-HI PDX異種移植片モデル(処置ナイーブ)の腫瘍体積を、処置の日についてプロットし、ここで該モデルは、ビヒクルまたはフルベストラントとパルボシクリブの組合せにより処置された(フルベストラント3mg/用量データは別の試験由来である)。次いで、フルベストラントおよびパルボシクリブアーム由来の腫瘍を、別の試験(ST941-HIパルボシクリブ処置;第1継代)に再度埋め込み、その後、ビヒクル、フルベストラント(3mg/用量)、パルボシクリブ(25mg/kg)およびエラセストラント(30mg/kg)で処置し、エラセストラントが、フルベストラントとパルボシクリブの組合せで以前に処置されたPDXモデルにおいて腫瘍成長の阻害に依然として有効であることが示された。
【0079】
他の態様
本開示で言及される全ての刊行物および特許は、それぞれ個々の刊行物および特許出願が、具体的かつ個々に参照により援用されることが示される場合と同程度に、参照により本明細書に援用される。参照により援用される特許または刊行物のいずれかにおける用語の意味が、本開示において使用される用語の意味と矛盾するようなことがあれば、本開示における用語の意味が支配的であることが意図される。さらに、前述の議論は、単に本発明の例示的な態様を開示および記載するものである。当業者は、かかる議論から、ならびに添付の図面および特許請求の範囲から、以下の特許請求の範囲において規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更、改変および変形が本発明においてなされ得ることを容易に理解しよう。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
項1
被験体に、エラセストラントまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の治療有効量を投与する工程を含む、被験体においてCDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌を阻害および分解する方法。
項2
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブまたはそれらの組合せに耐性である、項1記載の方法。
項3
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌がパルボシクリブに耐性である、項1記載の方法。
項4
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌がリボシクリブに耐性である、項1記載の方法。
項5
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌がアベマシクリブに耐性である、項1記載の方法。
項6
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が、D538G、Y537X
1
、L536X
2
、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Qおよびそれらの組合せ(式中:X
1
はS、NまたはCであり;X
2
はRまたはQである)からなる群より選択される1つ以上の変異を含む、項1~5いずれか記載の方法。
項7
変異がY537Sである、項6記載の方法。
項8
変異がD538Gである、項6記載の方法。
項9
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される薬物に対してさらに耐性である、項1~8いずれか記載の方法。
項10
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌および下垂体癌からなる群より選択される項1~9いずれか記載の方法。
項11
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が進行したまたは転移性の乳癌である、項1~10いずれか記載の方法。
項12
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が乳癌である、項1~10いずれか記載の方法。
項13
被験体が閉経後の女性である、項1~12いずれか記載の方法。
項14
被験体が閉経前の女性である、項1~12いずれか記載の方法。
項15
被験体が、選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)および/またはアロマターゼ阻害剤(AI)を用いた以前の治療後に再発または進行した閉経後の女性である、項1~12いずれか記載の方法。
項16
エラセストラントが、約200mg/日~約500mg/日の用量で被験体に投与される、項1~15いずれか記載の方法。
項17
エラセストラントが、約200mg/日、約300mg/日、約400mg/日または約500mg/日の用量で被験体に投与される、項1~16いずれか記載の方法。
項18
エラセストラントが、被験体について最大許容用量である用量で被験体に投与される、項1~15いずれか記載の方法。
項19
ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2およびVHLから選択される1つ以上の遺伝子の増加した発現を測定することにより、治療に対して被験体を同定する工程をさらに含む、項1~18いずれか記載の方法。
項20
1つ以上の遺伝子が、AKT1、AKT2、BRAF、CDK4、CDK6、PIK3CA、PIK3R1およびMTORから選択される、項19記載の方法。
項21
投与後の腫瘍中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度 対 血漿中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度の比(T/P)が少なくとも約15である、項1~20いずれか記載の方法。
項22
エラセストラントまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の治療有効量を被験体に投与する工程
を含む、野生型エストロゲン受容体αおよび/または変異体エストロゲン受容体αを有する被験体においてCDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌を治療する方法であって、
変異体エストロゲン受容体αが、D538G、Y537X
1
、L536X
2
、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Qおよびそれらの組合せ(式中:X
1
はS、NまたはCであり;X
2
はRまたはQである)からなる群より選択される1つ以上の変異を含む、方法。
項23
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブまたはそれらの組合せに耐性である、項22記載の方法。
項24
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌がパルボシクリブに耐性である、項22記載の方法。
項25
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌がリボシクリブに耐性である、項22記載の方法。
項26
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌がアベマシクリブに耐性である、項22記載の方法。
項27
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される薬物にさらに耐性である、項22~26いずれか記載の方法。
項28
抗エストロゲンがタモキシフェン、トレミフェンおよびフルベストラントからなる群より選択され、アロマターゼ阻害剤がエキセメスタン、レトロゾールおよびアナストロゾールからなる群より選択される、項27記載の方法。
項29
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌および下垂体癌からなる群より選択される、項22~28いずれか記載の方法。
項30
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が進行したまたは転移性の乳癌である、項22~29いずれか記載の方法。
項31
CDK4/6阻害剤耐性エストロゲン受容体α陽性癌が乳癌である、項22~29いずれか記載の方法。
項32
被験体が閉経後の女性である、項22~31いずれか記載の方法。
項33
被験体が閉経前の女性である、項22~31いずれか記載の方法。
項34
被験体が、SERMおよび/またはAIを用いた以前の治療後に再発または進行した閉経後の女性である、項22~31いずれか記載の方法。
項35
該被験体が、D538G、Y537S、Y537N、Y537C、E380Q、S463P、L536R、L536Q、P535H、V392IおよびV534Eからなる群より選択される少なくとも1つの変異体エストロゲン受容体αを発現する、項22~34いずれか記載の方法。
項36
変異がY537Sを含む、項35記載の方法。
項37
変異がD538Gを含む、項35記載の方法。
項38
ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2およびVHLから選択される1つ以上の遺伝子の増加した発現を測定することにより、治療に対して被験体を同定する工程をさらに含む、項22~37いずれか記載の方法。
項39
1つ以上の遺伝子がAKT1、AKT2、BRAF、CDK4、CDK6、PIK3CA、PIK3R1およびMTORから選択される、項38記載の方法。
項40
エラセストラントが、約200~約500mg/日の用量で被験体に投与される、項22~39いずれか記載の方法。
項41
エラセストラントが、約200mg、約300mg、約400mgまたは約500mgの用量で被験体に投与される、項22~40いずれか記載の方法。
項42
投与後の腫瘍中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度 対 血漿中のエラセストラントまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度の比(T/P)が少なくとも約15である、項22~41いずれか記載の方法。