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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】痙縮のための投与計算器
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20240614BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20240614BHJP
   G06Q 50/22 20240101ALI20240614BHJP
   G16Y 10/60 20200101ALI20240614BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20240614BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240614BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20240614BHJP
【FI】
G16H20/10
G16H10/00
G06Q50/22
G16Y10/60
G16Y20/40
G16Y40/20
G16Y40/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021552517
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 GB2019053321
(87)【国際公開番号】W WO2020109761
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】62/917,220
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニョール,レオノール
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-184301(JP,A)
【文献】特表2017-500962(JP,A)
【文献】国際公開第2017/162870(WO,A1)
【文献】特表2010-533342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0238866(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
G16Y 10/60
G16Y 20/40
G16Y 40/20
G16Y 40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の障害を治療する際に用いる医薬品の推奨投与量の決定に使用するためのモバイル・コンピューティング・アプリケーションであって、ユーザが情報を入力し、前記対象者に対する総投与量が決定され、
前記ユーザが入力する前記情報が、前記対象者、投与する前記医薬品、及び/又は投与の位置に関連し、
投与が複数の位置で行われ、前記ユーザが第1の位置への所望の投与量を入力し、第2の位置への推奨投与量が、総投与量が所定の範囲を超えないように、前記第1の位置への所望の投与量に基づいて決定され、
前記ユーザが入力する前記情報が、前記医薬品の投与に使用する容器を含み、かかる情報に基づいて、前記医薬品の投与に必要なかかる容器の数が決定される、アプリケーション。
【請求項2】
対象者の障害を治療する際に用いる医薬品の推奨投与量の決定に使用するためのモバイル・コンピューティング・アプリケーションであって、ユーザが情報を入力し、前記対象者に対する総投与量が決定され、
前記ユーザが入力する前記情報が、前記対象者、投与する前記医薬品、及び/又は投与の位置に関連し、
投与が複数の位置で行われ、前記ユーザが第1の位置への所望の投与量を入力し、第2の位置への推奨投与量が、総投与量が所定の範囲を超えないように、前記第1の位置への所望の投与量に基づいて決定され、
前記ユーザが入力する前記情報が、前記医薬品の希釈を含み、かかる情報に基づいて、投与用の前記医薬品製剤の総量が決定される、アプリケーション。
【請求項3】
投与が複数の位置で行われ、各位置の投与量が決定される、請求項1又は2のいずれか一項に記載のアプリケーション。
【請求項4】
前記医薬品が神経毒である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアプリケーション。
【請求項5】
前記障害が痙縮である、請求項1~4のいずれか一項に記載のアプリケーション。
【請求項6】
前記障害が上肢痙縮又は下肢痙縮であり、前記医薬品がボツリヌス神経毒Aである、請求項1~5のいずれか一項に記載のアプリケーション。
【請求項7】
前記推奨投与量に関する情報に、第三者がリモートでアクセス可能である、請求項1~6のいずれか一項に記載のアプリケーション。
【請求項8】
コンピュータにより実施される、対象者の障害を治療する際に用いる医薬品の投与量を決定する方法であって、ユーザが情報を入力し、前記コンピュータが総投与量を決定し、
前記ユーザが入力する前記情報が、前記対象者、投与する前記医薬品、及び/又は投与の位置に関連し、
投与が複数の位置で行われ、前記ユーザが第1の位置への所望の投与量を入力し、第2の位置への推奨投与量が、総投与量が所定の範囲を超えないように、前記第1の位置への所望の投与量に基づいて決定され、
前記医薬品の投与に使用される容器が選択され、前記医薬品の投与に必要なかかる容器の数が決定される、方法。
【請求項9】
コンピュータにより実施される、対象者の障害を治療する際に用いる医薬品の投与量を決定する方法であって、ユーザが情報を入力し、前記コンピュータが総投与量を決定し、
前記ユーザが入力する前記情報が、前記対象者、投与する前記医薬品、及び/又は投与の位置に関連し、
投与が複数の位置で行われ、前記ユーザが第1の位置への所望の投与量を入力し、第2の位置への推奨投与量が、総投与量が所定の範囲を超えないように、前記第1の位置への所望の投与量に基づいて決定され、
前記医薬品の希釈が選択され、かかる選択に基づいて、投与用の前記医薬品製剤の総量が決定される、方法。
【請求項10】
投与が複数の位置で行われ、各位置の投与量が決定される、請求項8又は9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬品が神経毒である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記障害が痙縮である、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記障害が上肢痙縮又は下肢痙縮であり、前記医薬品がボツリヌス神経毒Aである、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の障害を治療する際に用いる医薬品の投与量の決定に使用するためのモバイル・コンピューティング・アプリケーション(「アプリ」)に関する。本発明はまた、コンピュータにより実施される、かかる投与量を決定する方法に関する。本発明は更に、治療を必要とする対象者の障害を治療する方法に関し、この方法は、コンピュータにより実施される、上記対象者に対する医薬品の投与量を決定する方法を使用することと、かかる投与量をその対象者に投与することと、を含む。
【背景技術】
【0002】
対象者の特定の障害に対する治療が、様々な薬効のある物質(以下、「医薬品」)を用いて施され得ることは、当技術分野において十分に理解されている。かかる医薬品は、医薬品、栄養補助食品、家庭薬、植物性の生薬などを含む。
【0003】
かかる医薬品は、例えば、経口摂取、局所適用、吸入、注射、及び経皮投与など、様々な既知の手段のいずれかによって投与され得る。
【0004】
かかる事例ごとに、治療を対象者に施すために、医薬品の特定の投与量及び/又は投与計画が必要になるのが典型的である。しかしながら、同じ医薬品であっても、対象者の詳細事項、障害の詳細事項、所望の投与の位置などの変動要素に基づいて、推奨投与量は変化し得る。
【0005】
したがって、医薬品の推奨投与量及び/又は投与計画の決定を可能にする投与計算器アプリ及びコンピュータにより実施される方法の必要性が存在する。また、かかるアプリ及び/又はかかる方法を使用して決定された投与量を投与する治療において、かかる治療を必要とする対象者に投与を行う治療方法の必要性も存在する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1-16】図1~16は、対象者に対するDYSPORT(登録商標)の推奨投与量の決定に使用するための投与計算器アプリに関連する本発明の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の明確な理解にとって有意義な態様を説明するために、本明細書で提供する図及び説明は場合により簡略化し、それと同時に、本発明と同様の典型的なデバイス、システム、及び方法で見られ得るそれ以外の態様は、分かりやすくするために省いている。したがって、本発明を実施するには、その他の要素及び/又は動作が望ましく且つ/又は必要であり得ることを、当業者は認識し得よう。しかし、かかる要素及び動作は当技術分野で周知であることと、それらがあっても本開示の理解を深める手助けにならないことから、簡潔にするために、かかる要素及び動作の説明は本明細書で提供しないことがある。しかしながらそれにもかかわらず、当業者には周知であろう、ここに記載の態様に対する全てのかかる要素、変形形態、及び修正形態を、本開示は含むと見なされたい。
【0008】
全体を通して各実施形態は、本開示が十分詳細に行われ、且つここで開示する実施形態の範囲を当業者に対して完全な形で伝えるように提供される。本開示の実施形態の十分な理解を可能にするために、特定の構成要素、デバイス、及び方法の実施例など、多数の特定の詳細がここに記載されている。それにもかかわらず、ここに開示している特定の詳細が必ずしも使用されるとは限らないこと、各実施形態が様々な形態で具体化され得ることは当業者には明らかであろう。したがって、これらの実施形態を、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではない。上記で言及したように、いくつかの実施形態では、周知のプロセス、周知のデバイス構造、及び周知の技術について詳細に説明していないことがある。
【0009】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。例えば、本明細書で使用する場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「上記(the)」は、文脈で別段の明確な指示がない限り、複数形も含むことを意図し得る。用語「備える」、「含む」及び「有する」は包括的であり、したがって、記載の特徴、個別のもの、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するが、1つ又は複数の他の機能、個別のもの、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。好ましい又は必要な実行順序と具体的に特定しない限り、必ずしも説明又は図示した特定の順序で、本明細書に記載のステップ、プロセス、及び動作を、それぞれ実行する必要があると解釈すべきではない。ここで開示する態様の代わりに又はそれらと併用して、追加又は代替のステップを使用し得ることも理解されたい。
【0010】
更に、本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層及び/又はセクションの説明に、第1、第2、第3などの用語を使用し得るが、これらの用語によって、そういった要素、構成要素、領域、層及び/又はセクションを限定すべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層又はセクションを、別の要素、構成要素、領域、層又はセクションと区別するためだけに使用され得る。本明細書で使用する場合の「第1」、「第2」などの用語、及び他の数値用語は、文脈で明確に指示がない限り、配列又は順序を意味するものではない。したがって、以下に記載の第1の要素、構成要素、領域、層又はセクションは、各実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層又はセクションと呼ぶことができる。
【0011】
本発明は、対象者の障害を治療する際に用いる医薬品の投与量及び/又は投与計画の決定に使用するためのモバイル・コンピューティング・アプリケーション(「アプリ」)に関する。上記アプリはモバイルデバイスで使用され得る。
【0012】
本明細書で使用する限り、モバイルデバイスは、本明細書に記載の1つ又は複数の機能の実行に際しての非一時的なコンピュータ・コードの実行に適した処理能力を提供する。モバイルデバイスは、1つ又は複数のネットワーク上で動作することができ、これらのネットワークは、セルラーネットワーク、Wi-Fi(登録商標)ネットワーク、ブルートゥース(登録商標)、メッシュネットワーク、赤外線などを含むがこれらに限定されない。
【0013】
本明細書で開示するアプリを提供するモバイルデバイスの、かかるネットワーク機能により、このアプリを含んだモバイルデバイスは、1つ又は複数のバックエンド・プロセッサ・システムに、通信で接続され得る。これらの1つ又は複数のバックエンド・プロセッサは、非限定的な例として、上記モバイルデバイス上の1つ又は複数のアプリとリモートで通信するネットワーク接続されたサーバを含むことができ、これらのバックエンドサーバは、処理作業を上記モバイルデバイスと共有し得る。例えば、こういったバックエンドサーバにより、上記モバイルデバイスが、処理能力に関してリモートネットワークサーバを大幅に利用する「シン・クライアント」として機能したり、或いは、本明細書に記載の機能の処理能力/実行の大部分を提供する「シック・クライアント」として機能したりすることが可能になり得る。
【0014】
上記アプリケーションは、投与する医薬品に関する情報を、ユーザが入力することを可能にするインターフェースを提供し得る。
【0015】
治療する障害を、ユーザが入力することを可能にするインターフェースも、提供され得る。
【0016】
例えば対象者の年齢、性別、体重、障害など、対象者の特性に関する情報を、ユーザが入力することを可能にするインターフェースが、更に提供され得る。
【0017】
例えば非経口、経皮、経口など、実施する投与のタイプを、ユーザが入力することを可能にするインターフェースも提供され得る。投与が様々な投与頻度及び/又は様々な投与計画で行われ得る場合は、投与頻度及び/又は投与計画を、ユーザが選択することが可能となり得る。投与が随意により複数の部位で行われ得る場合は、投与が行われる部位の数(例えば、片側注入又は両側注入)を、ユーザが入力することがやはり可能となり得る。
【0018】
投与が特定の部位で行われ得る場合、医薬品を投与すべき1つ又は複数の部位を、ユーザが入力することが可能となり得る(例えば、図10Bを参照)。
【0019】
こういった、医薬品、対象者の特性、投与の種類、及び/又は投与の位置に関するユーザの入力に基づいて、投与量又は投与計画が決定される。かかる決定は、対象者の特性、投与の種類、及び/又は投与の位置を考慮して推奨される、選択された医薬品について当技術分野で周知の投与量又は投与計画に基づき得る。この決定は、当技術分野で周知のアルゴリズムなどの手段によって実現され得る。このとき、この決定された投与量又は投与計画が画面に表示され得る。
【0020】
投与が2箇所以上の部位で行われ得る、且つ、推奨の総投与量が提供される、いくつかの特定の場合では、1つ又は複数の部位に対して所望の投与量又は投与計画を、ユーザが入力することが可能となり得る。
【0021】
かかる特定の実施形態では、1つ又は複数の部位に対する所望の投与量又は投与計画に基づいて、残りの部位に対する所望の投与量又は投与計画の、調整されうる範囲を決めるパラメータが、制限され得る。例えば、両側投与の総投与量が特定の量を下回らなければならず、第1の部位の特定の投与量がすでに選択されている場合、第2の部位の投与量は、2つの投与量の合計が総投与量の範囲内に収まるように制限され得る。かかる実施形態では、例えば、第2の部位について、ユーザによる、総投与量が推奨範囲を超えてしまう投与量の選択が防止され得る。例えば、ある位置における所望の投与量を指定するために、画面に、ユーザが調整できる(例えば、スライドすることによって)各目盛りが表示され得る。第1の目盛りでユーザが入力を行うと、第2の目盛りを調整できる範囲を決めるパラメータが、制限され得る。
【0022】
その代わりに、又はそれに加えて、選択した投与量が推奨範囲を下回っている又は超過していること、或いは選択した投与量によって総投与量がかかる範囲を超えてしまうことを、ユーザに通知する警告が、上記画面に表示され得る。
【0023】
別の特定の実施形態では、1つ又は複数の部位に対する所望の投与量又は投与計画に基づいて、残りの部位に対する推奨投与量又は投与計画が決定され得る。ある位置における所望の投与量を指定するために、画面に、ユーザが調整できる各目盛りが表示される実施例では、1つ又は複数のかかる目盛りでユーザが入力を行うと、残りの目盛りが自動的に調整されて、第2の位置での所望の投与量が示され得る。
【0024】
また、投与量の各パラメータは、監督する医師又は機関などによって事前設定され得ることも企図されている。
【0025】
また、例えばバイアルのサイズなど、医薬品を供給する容器のタイプを、ユーザが入力することを可能にするインターフェースが提供され得る。対象者に対する総投与量に基づいて、対象者への医薬品の投与に使用するための容器の数が決定される。例えば、対象者に対する総投与量が250単位であり、ユーザが100単位のバイアルを望ましい容器として選択した場合、100単位のバイアルを3本使用すべきと決定される。
【0026】
上記アプリは更に、医薬品の望ましい濃度又は希釈を、ユーザが入力することを可能にするインターフェースを提供し得る。このユーザの入力に基づいて、総注入量が決定され得る。
【0027】
例えばシリンジなど、使用する投与デバイスのタイプを、ユーザが入力することを可能にするインターフェースが提供され得る。この入力に基づいて、上記アプリは、シリンジに医薬品を入れた状態の外観を表示し得る(例えば図15を参照)。
【0028】
上記アプリによって表示される情報の全て又は一部を、ユーザが文書で受け取ることが可能となり得る。この文書は、例えばPDFなどであり得る。上記文書はまた、印刷されるか、又は例えば電子メールなどで転送され得る。
【0029】
本発明は、上述のインターフェース及び表示画面の全て又は一部が、同じ画面に表示され得ること、それぞれが異なる画面に表示され得ること、又は画面上のポップアップ表示に表示され得ること、を企図している。
【0030】
上記インターフェース及び/又は表示画面が2つ以上の画面に表示される実施形態では、ユーザは、例えば特定の方向にスワイプする、又はボタンをタップするなど、当技術分野で周知の手段によって、画面間を移動し得る。この代替形態では、上記アプリは、第1の画面のインターフェースに必要な入力が完了すると、その第1の画面から別の画面に自動的に進み得る。
【0031】
ユーザによる情報の入力は、当技術分野で周知の任意の手段によって行われ得る。例えば、ユーザは、かかる情報を、直接入力する(例えば、必要な入力を打ち込む)、画面に表示されるボタンをタップする(例えば、図6Aを参照)、選択ウィジェットを使用して選択する(例えば、図7B及び8Bを参照)、又はチェックボックスをタップする(例えば、図10A~Bを参照)ことによって、入力し得る。
【0032】
いくつかの特定の実施形態では、入力し得るものは、例えば使用する医薬品、患者の年齢、患者の体重など事前に提供された情報に基づいて、制限され得る。例えば、対象者が小児患者である場合、入力し得る年齢は18歳未満に限られる。
【0033】
いくつかの特定の実施形態では、かかる制限は、どの入力が適切であるかの指標としても機能し得る。例えば、小児患者用の選択ウィジェットは、10kgから66kgまでの選択可能な体重のみを含み得る。それによって、上記アプリは、投与量計算を目的とする場合、66kgより重い子供は成人患者としてみなすべきであることを示し得る。
【0034】
上記アプリはまた、例えば、警告、投与情報、法的情報、利用規約、プライバシーポリシーなどの情報を表示し得る。いくつかの特定の実施形態では、ユーザは、これらの情報を読んだこと、及び/又は表示された規約に同意したことを承認することを求められ得る。かかる承認は、上述の様々な入力手段によって行われ得る。
【0035】
表示画面の開く/閉じる、及び/又は表示画面のズームイン/ズームアウトを、ユーザが行うことが可能となり得る。そういったことは、当技術分野で周知の手段によって実現され得る。
【0036】
本発明は、上記アプリが典型的なアプリ機能の一部を可能にすることを企図している。例えば、上記アプリは、タップすると使用者をウェブページ又は画面表示へと進めるリンクを表示し得る。更に、直前の画面に戻る、保存する、ダウンロードする、印刷する、又はその他の機能を行うといった性能と、タップする、ピンチする、又はその他の方法でズームイン及びズームアウト機構にアクセスする機能が、提供され得る。
【0037】
尚、ここで開示する各実施形態に関して述べると、上記アプリを上述のようなシック又はシンクライアントとして使用することにより、このアプリのユーザは、匿名化された膨大な量の投与/利用情報にアクセスすることが可能になり得る。したがって、これらの実施形態によって、投与計算を大幅に改善し得る、投与に関する相互通信が提供され得る。
【0038】
上記対象者は、医薬品の投与によって障害の治療を受ける任意の人であり得る。例えば、上記対象者は、障害を抱えている患者であり得る。
【0039】
上記ユーザは、上記対象者の医師などの医療従事者、又は対象者自身を含む任意の個人であり得る。上記ユーザはまた、医療従事者でも治療対象者でもない個人でもよく、むしろ研究目的又は単純な好奇心のために医薬品の推奨投与量を決定したい個人であり得る。
【0040】
上記アプリは、医療従事者のみなど特定のユーザのみ、及び/又は特定の国のユーザのみが、使用するためのものであり得る。したがって、上記アプリのダウンロードに警告が場合により伴い、並びに/或いは上記アプリのダウンロード及び/又は使用には、資格情報の入力が必要になり得る。
【0041】
当然ながら、上記アプリの特定部分は、対象者にも利用可能になり得ることは理解されよう。したがって、本発明はまた、対象者がそういった部分にアクセスすることを可能にする、ここで開示するアプリの「患者向け」バージョンを企図している。
【0042】
一実施形態では、決定された投与量及び投与計画に、例えば医療従事者などの第三者がアクセスし得る。
【0043】
本発明はまた、コンピュータにより実施される、対象者の障害を治療する際に用いる医薬品の投与量を決定する方法に関する。この方法は、上記対象者、投与する上記医薬品、及び/又はかかる投与の位置に関連する情報を入力する1つ又は複数のステップを含む。かかる情報に基づいて、総投与量が決定される。
【0044】
一実施形態では、上記投与は複数の位置で行われ得る。かかる実施形態では、各位置での投与量が決定され得る。或いは、上記方法は、各位置に投与される投与量が選択されるステップを更に含み得る。選択され得るものについては、そのパラメータが、事前に提供された情報に基づいて、制限され得る。
【0045】
上記方法はまた、容器のタイプ(例えば、バイアル)及び/又は医薬品の希釈が選択されるステップを更に含み得る。かかる情報に基づいて、各投与で使用するための容器の数及び投与用医薬品製剤の総量が決定され得る。
【0046】
更に、上記方法は、投与方法及び/又は投与デバイス(例えば、シリンジ、経皮パッチなど)が選択されるステップを含み得る。かかる情報に基づいて、例えば必要な量の調製物が充填されたシリンジなどの、投与形態を表示するイラストが生成され得る。
【0047】
本発明は更に、治療を必要とする対象者の障害を治療する方法に関し、この方法は、上述のような、コンピュータにより実施される、上記対象者に対する医薬品の投与量を決定する方法を使用することと、かかる投与量をその対象者に投与することと、を含む。
【0048】
上記治療方法の各実施形態では、上記コンピュータにより実施される、医薬品の投与量を決定する方法は、上述のようなモバイル・コンピューティング・アプリケーションによって実施され得る。
【0049】
上記コンピュータにより実施される方法、及び/又はかかる方法を実施するモバイル・コンピューティング・アプリケーションは、薬剤の投与量を決定する目的で、第1の当事者によって使用され得る。その後、その第1の当事者又は第2の当事者のいずれかによって投与が行われ得る。投与は、対象者自身によっても行われ得る。
【0050】
本発明の各実施形態において治療される障害は、医薬品を使用して治療可能又は改善されることが知られている任意の障害であり得る。例えば、上記障害は、痙縮などの運動障害であり得る。いくつかの特定の実施形態では、上記障害は、成人における上肢痙縮及び/又は下肢痙縮、或いは小児対象者における下肢痙縮である。
【0051】
投与量又は投与計画の決定が行われる医薬品、及び/又は対象者に投与する医薬品は、対象者の障害を治療又は改善することが分かっている任意の医薬品であり得る。例えば、上記医薬品は、医薬品、栄養補助食品、家庭薬、又は植物性の生薬であり得る。いくつかの特定の実施形態では、上記医薬品は、ボツリヌス神経毒などの神経毒である。特定の実施形態では、上記医薬品は、DYSPORT(登録商標)などのボツリヌス神経毒Aである。
【0052】
上記医薬品の投与は、対象者に医薬品を投与することで知られている任意の手段によって行われ得る。例えば、投与は、経口、局所、吸入、非経口、頬側、経皮、筋肉内、皮下、静脈内、皮内などであり得る。
【0053】
本発明の特定の実施形態では、上記医薬品は、例えばボツリヌストキシンA(BoNT/A)などのボツリヌス神経毒である。BoNT/Aは、Ipsen社から入手可能である(DYSPORT(登録商標)、Ipsen Limited、Slough、UK)。上記治療される障害は、成人の上肢痙縮及び/又は下肢痙縮と、小児の下肢痙縮を含む。
【0054】
痙縮患者に対するDYSPORT(登録商標)の投与量の決定に使用するためのモバイル・コンピューティング・アプリの一実施形態では、ユーザが入力する情報は、対象者の年齢及び体重、投与が片側か両側か、どの筋肉に投与するかを含む。この実施形態では、上記アプリは、総投与量を決定でき、ユーザによる筋肉ごとの投与量の選択を可能にし得る。上記アプリはまた、DYSPORT(登録商標)の投与に使用するバイアルと、使用する希釈の、ユーザによる選択を可能にし得る。かかる情報に基づいて、上記アプリは投与用の総量を決定する。上記アプリはまた、かかる投与に使用するシリンジの、ユーザによる選択を可能にし得る。
【0055】
本発明の実施形態が、図1~16及び以下の実施例によって示されている。これらの図及び以下の実施例は単なる例示であり、本発明を説明するために使用されていると理解されたい。これらが本発明の範囲を限定するように作用することはない。
【実施例
【0056】
対象者に対するDYSPORT(登録商標)の投与量の決定に使用するための投与計算器アプリが提供される。
【0057】
上記アプリは、図1Aに示されている起動画面を提供する。ユーザが確認ボタンをタップして上記アプリの使用条件に同意すると、ユーザは図1Bに示されているようなルール/ガイドライン画面に進み得る。ユーザは、この画面の一番下にあるボタンをタップする前に、全てのルール及びガイドラインをスクロールする必要がある。
【0058】
上記ボタンをタップすると、ユーザはランディング画面(図2)に移動し、治療する障害、この場合は成人の上肢痙縮及び/又は下肢痙縮か小児の下肢痙縮かを、選択することが可能となる。
【0059】
ランディング画面はまた、タップすると「利用規約」を含んだ画面表示(図3B)が開くリンク(図3A)も含む。この画面表示は右上に、タップするとその画面表示が閉じてランディング画面に戻るアイコンを含む。
【0060】
また、タップすると「処方情報」を含んだ画面表示(図4B)が開くリンク(図4A)も提供される。この画面表示は、ユーザがズームイン及びズームアウトできるPDFである。この画面の右上隅にアイコンが表示される(同上)。それをタップすると、上記PDFに対する処理の選択肢がユーザに表示される。この選択肢は、PDFの印刷又は電子メールによるPDFの送信を含む。この画面表示の左上隅には戻るボタンがあり、それをタップすると、上述のランディング画面に戻る。
【0061】
同様に、タップすると安全性に関する情報を含んだ画面表示(図5B)を開くリンク(図5A)も提供される。この画面表示の右上隅に、タップするとその画面表示が閉じて直前のランディング画面に戻るアイコンがある。
【0062】
プライバシーポリシーも同様に、ランディング画面のリンクからアクセス可能である。
【0063】
ユーザは、ランディング画面のボタンをタップすることで、治療する障害を選択し得る(図6A)。かかる選択を行うと、「ステップ1」画面(図6B)に移動する。この実施例では、選択された障害は小児の下肢痙縮である。
【0064】
この画面には、対象者の年齢及び体重を入力するためのボタンが表示される。ユーザが対象者の年齢のボタン(図7A)をタップすると、ウィジェットが表示される(図7B)。ユーザはそのウィジェットを使用して対象者の年齢を選択し得る。同様に、ユーザが対象者の体重のボタン(図8A)をタップすると、ウィジェットが表示され(図8B)、ユーザはそのウィジェットを使用して対象者の体重を選択し得る。
【0065】
この画面はまた、タップするとDYSPORT(登録商標)の注入に関する情報を含んだ画面表示(図9B)が開くアイコン(図9A)も含む。
【0066】
この画面は更に、片側投与か両側投与かのいずれかを指定するために患者がタップし得るボタン(図10A)も含む。
【0067】
事前に入力した情報に基づいて、上記アプリは対象者の最大投与量を提示し、それが「ステップ1」画面に表示される(同上)。
【0068】
「ステップ1」画面の一番下にボタンがあり、それをタップすると、「ステップ2」画面(図10B)に進む。
【0069】
この実施例では、ユーザは「ステップ1」画面で両側投与を選択している。したがって、「ステップ2」画面は、DYSPORT(登録商標)を投与する腓腹筋(左又は右)を選択するためのボタンとヒラメ筋(左又は右)を選択するためのボタンを含んでいる。ユーザは、該当するボタンをタップして該当する筋肉を選択する。この画面の一番下にボタンがあり、それを押すと「ステップ3」画面(図11)に進む。
【0070】
「ステップ3」画面には、総投与量が、直前の入力に基づいて決定され表示される(同上)。
【0071】
この画面はまた、ユーザが各位置で所望の投与量を指定するために使用できる2つのスライド式の目盛りを提供する(同上)。ユーザが、FDAの推奨投与量を超える投与量を指定するような目盛りの調整をすることは、できなくなっている。
【0072】
ただし、ユーザは、FDA推奨の最小投与量よりも少ない投与量を選択することはできる。かかる投与量は患者に害を及ぼさないかもしれないが、かかる投与量を選択すると、選択した投与量がFDA推奨投与量範囲を下回っていることを警告する画面表示(図12)がトリガされる。この画面表示は、ユーザが「ステップ3」画面に戻って選択した投与量を調整し直すか、選択した投与量を維持するかを、二者択一的に指定するために押すことができる2つのボタンを含む(同上)。どちらのボタンをタップしても、「ステップ3」画面に戻る。
【0073】
「ステップ3」画面の一番下にボタン(図11)があり、タップすると「ステップ4」画面に進む。
【0074】
「ステップ4」画面は、DYSPORT(登録商標)の投与時に使用するバイアルのサイズ(300単位又は500単位)を、ユーザが選択することを可能にするボタンを含む(図13A)。選択したサイズに基づいて、かかるバイアルの使用数が決定され、その画面に表示される(図13B)。
【0075】
当該画面の一番下にボタンがあり、それを押すとその画面が変化し、所望の希釈量を選択するためのボタンが表示される(図14)。ここで総注入量が決定され、画面上に表示される。その後、ユーザはその画面の一番下にあるボタン(同上)をもう一度押すことができる。このボタンをタップすると、「ステップ5」画面(図15)に進む。
【0076】
「ステップ5」画面は、DYSPORT(登録商標)を投与するシリンジのタイプをユーザがタップして指定し得るボタン(同上)を含む。かかるボタンをタップすると、適切な量のDYSPORT(登録商標)製剤が充填されたシリンジの外観を示す画像(同上)が画面に表示される。
【0077】
当該画面の一番下に、タップすると入力した情報、選択した選択肢、及び実行された投与量決定(「シミュレーション」)をまとめたPDF(図16)が生成されるボタンがある。このPDFは、印刷されるか又は例えば電子メールなどで転送され得る。
【0078】
また、当該画面の一番下に、タップすると「ステップ1」画面に戻り、異なるパラメータを入力することによって投与計算を再スタートする(つまり、新しいシミュレーションを開始する)ことが可能になるボタン(図15)がある。
【符号の説明】
【0079】
【表A】
【表B】
【表C】
【表D】
【表E】
【表F】
【表G】
【表H】
【表I】
【表J】
【表K】
図1
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