(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】シャフト間のばらつきを抑えるインサートを有するゴルフクラブシャフト
(51)【国際特許分類】
A63B 53/10 20150101AFI20240614BHJP
A63B 53/06 20150101ALI20240614BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240614BHJP
【FI】
A63B53/10 Z
A63B53/06 A
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2021552711
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2020020088
(87)【国際公開番号】W WO2020180600
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500045213
【氏名又は名称】トゥルー テンパー スポーツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーキング,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー,マイケル パーカー
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-064168(JP,U)
【文献】特開2012-110498(JP,A)
【文献】特開平09-085842(JP,A)
【文献】特開昭63-102779(JP,A)
【文献】国際公開第2016/191589(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0342845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さを有するゴルフシャフトの質量を決定する工程と、
前記ゴルフシャフトの重心を決定する工程と、
前記ゴルフシャフトの質量と、前記長さを有する複数のゴルフシャフトの目標質量とに基づいて、前記ゴルフシャフトに挿入するインサートの1つ以上の特性を決定する工程と、
前記ゴルフシャフトの前記重心と、前記長さを有する複数のゴルフシャフトの目標重心とに基づいて、ゴルフグリップが取り付けられる前記ゴルフシャフトの第1の端とゴルフクラブヘッドが取り付けられる前記ゴルフシャフトの第2の端との間の前記インサートの位置を決定する工程と、
前記ゴルフシャフトの内部において前記決定された位置に、前記決定された1つ以上の特性を有するインサートを挿入する工程であって、それにより前記インサートと前記ゴルフシャフトの前記内部との間に締まりばめの状態を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記インサートは、前記決定された1つ以上の特性を有する中空の管である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中空の管は、単位長さ当たりの質量が均一であり、前記1つ以上の特性は、前記中空の管の長さを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の特性を決定する工程は、(a)前記長さを有する複数のゴルフシャフトの前記目標質量から、(b)前記ゴルフシャフトの前記質量を引いた値に基づいて、前記中空の管の前記長さを決定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(a)前記長さを有する複数のゴルフシャフトの前記目標質量から、(b)前記ゴルフシャフトの前記質量を引いた値に基づいて、前記インサートの目標質量を決定する工程と、
前記インサートの前記目標質量に基づいて、前記長さの前記中空の管を、前記長さよりも長い前記中空の管の供給源から切断する工程と、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
(a)前記長さを有する複数のゴルフシャフトの前記目標質量から、(b)前記ゴルフシャフトの前記質量を引いた値に基づいて、前記インサートの目標質量を決定する工程と、
前記インサートの前記目標質量に基づいて、異なる長さのあらかじめ切断された複数のインサートのうちの1つを選択する工程と、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記中空の管はポリマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記中空の管は、ポリカーボネート、プラスチックおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記中空の管の外径は、約7/16インチ~約1/2インチである請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ゴルフシャフトの前記第1の端から前記ゴルフシャフトの前記第2の端に向かって前記長さの約2/3の位置において、前記中空の管の外径が前記ゴルフシャフトの内径よりも大きい、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記インサートを挿入する工程は、直線状の挿入棒を用いて前記インサートを挿入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記インサートを挿入する工程は、前記ゴルフシャフトを静止させた状態で、少なくとも約200ポンドの力を前記インサートに加えることにより、直線状の挿入棒を用いて前記インサートを挿入することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゴルフシャフトの前記質量を決定する工程は、秤を用いて前記ゴルフシャフトの前記質量を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ゴルフシャフトの前記重心を決定する工程は、前記ゴルフシャフトの前記長さと前記ゴルフシャフトの前記質量とに基づいて、前記ゴルフシャフトの前記重心を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記重心を決定する工程は、重心モジュールによって、ゴルフシャフトの長さとゴルフシャフトの質量を重心に紐付ける方程式およびルックアップテーブルのうちの一方を使用して、前記重心を決定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ゴルフシャフトの前記内部の前記決定された位置で前記インサートを接着することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記接着することは、所定の期間、所定の温度で、炉を用いて、前記ゴルフシャフトおよび前記インサートを加熱することを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本願は、2019年03月05日に出願された米国特許仮出願第62/814,011号の優先権の利益を主張するものである。上記で言及した出願の開示内容全体を、本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、ゴルフクラブシャフトに関し、特に、インサートを有するゴルフクラブシャフトと、ゴルフクラブシャフトの製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0003】
ここで提供する背景についての説明は、本開示の内容を大まかに示すことを目的としたものである。この背景技術に記載した範囲において現行の発明者の業績、ならびに、そうでなければ出願時における先行技術としては適さないかもしれない説明の態様については、明示的にも黙示的にも、これを本開示に対する先行技術として認めるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な異なるタイプのゴルフクラブ用に、様々な長さのゴルフシャフトが製造されている。ゴルフシャフトには、スチール製のゴルフシャフトもあれば、グラファイト製のゴルフシャフトもある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある特徴において、ある長さを有するゴルフシャフトの質量を決定する工程と、前記ゴルフシャフトの重心を決定する工程と、前記ゴルフシャフトの質量と、前記長さを有する複数のゴルフシャフトの目標質量とに基づいて、前記ゴルフシャフトに挿入するインサートの1つ以上の特性を決定する工程と、前記ゴルフシャフトの前記重心と、前記長さを有する複数のゴルフシャフトの目標重心とに基づいて、ゴルフグリップが取り付けられる前記ゴルフシャフトの第1の端とゴルフクラブヘッドが取り付けられる前記ゴルフシャフトの第2の端との間の前記インサートの位置を決定する工程と、前記ゴルフシャフトの内部において前記決定された位置に、前記決定された1つ以上の特性を有するインサートを挿入する工程であって、それにより前記インサートと前記ゴルフシャフトの前記内部との間に締まりばめの状態を形成する、前記工程と、を含む、方法。
【0006】
更なる特徴において、前記インサートは、前記決定された1つ以上の特性を有する中空の管である。
【0007】
更なる特徴において、前記中空の管は、単位長さ当たりの質量が均一であり、前記1つ以上の特性は、前記中空の管の長さを含む。
【0008】
更なる特徴において、前記1つ以上の特性を決定する工程は、(a)前記長さを有する複数のゴルフシャフトの前記目標質量から、(b)前記ゴルフシャフトの前記質量を引いた値に基づいて、前記中空の管の前記長さを決定することを含む。
【0009】
更なる特徴において、(a)前記長さを有する複数のゴルフシャフトの前記目標質量から、(b)前記ゴルフシャフトの前記質量を引いた値に基づいて、前記インサートの目標質量を決定する工程と、前記インサートの前記目標質量に基づいて、前記長さの前記中空の管を、前記長さよりも長い前記中空の管の供給源から切断する工程と、をさらに含む。
【0010】
更なる特徴において、(a)前記長さを有する複数のゴルフシャフトの前記目標質量から、(b)前記ゴルフシャフトの前記質量を引いた値に基づいて、前記インサートの目標質量を決定する工程と、前記インサートの前記目標質量に基づいて、異なる長さのあらかじめ切断された複数のインサートのうちの1つを選択する工程と、をさらに含む。
【0011】
更なる特徴において、前記中空の管はポリマーを含む。
【0012】
更なる特徴において、前記中空の管は、ポリカーボネート、プラスチックおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
更なる特徴において、前記中空の管の外径は、約7/16インチ~約1/2インチである。
【0014】
更なる特徴において、前記ゴルフシャフトの前記第1の端から前記ゴルフシャフトの前記第2の端に向かって前記長さの約2/3の位置において、前記中空の管の外径が前記ゴルフシャフトの内径よりも大きい。
【0015】
更なる特徴において、前記インサートを挿入する工程は、直線状の挿入棒を用いて前記インサートを挿入することを含む。
【0016】
更なる特徴において、前記インサートを挿入する工程は、前記ゴルフシャフトを静止させた状態で、少なくとも約200ポンドの力を前記インサートに加えることにより、直線状の挿入棒を用いて前記インサートを挿入することを含む。
【0017】
更なる特徴において、前記ゴルフシャフトの前記質量を決定する工程は、秤を用いて前記ゴルフシャフトの前記質量を測定することを含む。
【0018】
更なる特徴において、前記ゴルフシャフトの前記重心を決定する工程は、前記ゴルフシャフトの前記長さと前記ゴルフシャフトの前記質量とに基づいて、前記ゴルフシャフトの前記重心を決定することを含む。
【0019】
更なる特徴において、前記重心を決定する工程は、重心モジュールによって、ゴルフシャフトの長さとゴルフシャフトの質量を重心に紐付ける方程式およびルックアップテーブルのうちの一方を使用して、前記重心を決定することを含む。
【0020】
更なる特徴において、前記方法は、前記ゴルフシャフトの前記内部の前記決定された位置で前記インサートを接着することをさらに含む。
【0021】
更なる特徴において、前記接着することは、所定の期間、所定の温度で、炉を用いて、前記ゴルフシャフトおよび前記インサートを加熱することを含む。
【0022】
ある特徴において、外面と、中空の内部と、を含み、グリップの取付用の第1の端からゴルフクラブヘッドの取付用の第2の端まで直径が小さくなる管状部材と、前記管状部材の前記中空内の、前記第1の端と前記第2の端との間の長さ方向のある位置において、締まりばめの状態にあるインサートと、を含み、前記位置は、前記ゴルフシャフトの目標重心に基づいて選択され、前記インサートの質量は、前記ゴルフシャフトの目標質量から前記インサートのない前記ゴルフシャフトの質量を引いた値に基づいて選択される、ゴルフシャフト。
【0023】
ある特徴において、前記ゴルフシャフトと、前記第1の端部に取り付けられたゴルフグリップと、前記第2の端部に取り付けられたゴルフクラブヘッドと、を含む、ゴルフクラブ。
【0024】
ある特徴において、の前記ゴルフクラブと、複数の追加のゴルフクラブと、を含む、一組のゴルフクラブ。
【0025】
本開示を適用可能なさらに別の領域が、詳細な説明、特許請求の範囲および図面から明らかになるであろう。詳細な説明と具体例については、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0026】
本開示は、詳細な説明および添付の図面から、 より十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、ゴルフシャフト加重システムを例示した図を含む。
【
図2】
図2は、ゴルフシャフトにインサートを挿入する前の、ゴルフクラブシャフトとインサートとを例示した図を含む。
【
図3】
図3は、ゴルフシャフトの内部に固定されたインサートを例示した図である。
【
図4】
図4は、ゴルフシャフトとゴルフシャフト内のインサートとを例示した図を含む。
【
図5】
図5は、ゴルフシャフトの目標質量およびゴルフシャフトの目標重心を達成するためにゴルフシャフトを加重する例示的な方法を含む。
【0028】
図面では、類似および同一の少なくとも一方である要素を識別するために、参照符号を繰り返して用いることがある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
異なるタイプのゴルフクラブ用に、様々な長さのゴルフシャフトが製造されている。完成品としてのゴルフシャフトは、目標重量および目標重心を含む目標性能仕様を備える。目標重心とは、ゴルフシャフトの重心について、ゴルフシャフトの太い方の端(グリップが取り付けられる場所)とゴルフシャフトの細い方の端(ゴルフクラブヘッドが取り付けられる場所)との間にある目標位置である。完成品としてのゴルフクラブは、ゴルフクラブヘッド、ゴルフクラブシャフト、グリップなどの複数の部品から組み立てられる。各々の構成要素には重量と重心の公差があるため、完成品としてのゴルフクラブの重量および重心の少なくとも一方が目標とは異なるものになり得る。
【0030】
あらゆる構成要素の重量と重心に製造上のばらつきがなくなると、完成品としてのゴルフクラブは、ばらつきが最小限であるか全くなくなり、どのクラブも同一の一貫した性能を有することになる。クラブごとのばらつきは、一貫性のないゴルフショット性能につながる可能性がある。
【0031】
本願は、(長さが同一である)各々のゴルフクラブシャフトの目標重量と目標重心がほぼ同一になるように大きさと位置が決められたウェイトインサートを有するゴルフクラブシャフトに関するものである。これによって、ゴルフクラブシャフトに起因するクラブごとのばらつきが減る。
【0032】
図1は、ゴルフシャフト加重システムを例示した図を含む。秤100によってゴルフシャフト104の質量を測定する。ゴルフシャフト104は、グラファイト製のゴルフクラブシャフト、スチール製のゴルフクラブシャフト、スチールとグラファイトのハイブリッドゴルフクラブシャフトであってもよいし、他のタイプのゴルフクラブシャフトであってもよい。ゴルフシャフト104には、1つ以上の先細りになる部分が含まれていてもよい。
【0033】
インサートを付加する前、ゴルフシャフト104の質量は、ゴルフシャフト104およびゴルフシャフト104と同一の長さの他のゴルフシャフトの目標質量よりも小さい。所定の長さのゴルフシャフトの各々は、その長さのゴルフシャフトの目標質量よりも質量が小さくなるように製造される。
【0034】
ゴルフシャフト104の重心については、重心モジュール108によって測定または決定される。重心モジュール108は、例えば長さと質量とを重心に紐付ける方程式およびルックアップテーブルのうちの一方などを使用して、例えばゴルフシャフト104の長さと質量とに基づいて、重心を決定してもよい。また、本ゴルフシャフトや他のゴルフシャフトは、目標重心を有する。
【0035】
ゴルフシャフト104の質量とゴルフシャフト104の目標質量とに基づいて、ゴルフシャフト104の内部に挿入されるインサートの目標質量が、インサートモジュール112によって決定される。例えば、インサートモジュール112は、インサートの目標質量を、目標質量からゴルフシャフト104の質量を引いたものに設定してもよい。
【0036】
また、インサートモジュール112は、目標質量のインサート114を出力する。例えば、インサート114は、単位長さ当たりの質量が均一な一定長の中空のポリマー管であってもよい。ポリマーの例としては、ポリカーボネート、プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。ポリマー管は、直径と円形の断面が均一なものであってもよい。インサートモジュール112は、中空のポリマー管のロールと、切断装置とを含んでもよく、中空のポリマー管を目標重量に対応する長さに切断して、インサート114を作成してもよい。あるいは、長さの異なる複数の中空のポリマー管をあらかじめ切断しておいてもよく、インサートモジュール112によって、複数の長さのうち質量がインサート114に対する目標質量に最も近いものを1本選択してもよい。中空のポリマー管は、例えば、外径が7/16インチ(1.11125センチメートル)、外径が1/2インチ(1.27センチメートル)、外径が約7/16インチと約1/2インチの間であってもよく、別の適切な外径であってもよい。中空のポリマー管は、外径が、その長さのゴルフシャフトの太い方の端から細い方の端までの2/3の位置の内径よりも大きくてもよい。その内径よりも管の外径のほうが大きいと、ゴルフシャフトへの挿入時に中空のポリマー管が変形する場合があるが、それでもゴルフシャフトは塞がれてはいない。(中実/非中空インサートを用いる場合に生じ得る)ゴルフシャフトが塞がれることによって、ゴルフクラブヘッドおよびグリップの少なくとも一方をゴルフシャフトに固定するのが困難で最適ではなくなる場合がある。
【0037】
位置決定モジュール116は、インサートの質量とゴルフシャフト104の重心とに基づいて、ゴルフシャフト104内のインサートの目標位置を決定する。位置決定モジュール116は、インサートの質量と重心を目標位置に紐付けるルックアップテーブルおよび方程式のうちの一方を使用して、ゴルフシャフト内のインサートの目標位置を決定する。位置決定モジュール116は、目標位置を決定し、ゴルフシャフト104の重心を目標の重心に向けて調整する、または目標の重心に調整する。目標位置とは、ゴルフシャフト104の長さ(軸方向)に沿ったある位置をいう。
【0038】
挿入モジュール120が、ゴルフシャフト104用のインサート114を受け取り、ゴルフシャフト104の内部のそのインサートに対して決定された目標位置に、インサート114を挿入する。インサート114の挿入により、インサート114とゴルフシャフト104とが締まりばめの状態になる。目標質量のインサート114がゴルフシャフト104内の目標位置に配置されることにより、ゴルフシャフト104は、ゴルフシャフト104(およびその長さの他のゴルフシャフト)の目標質量と、ゴルフシャフト104(およびその長さの他のゴルフシャフト)の目標重心とをほぼ有する。インサートは、各ゴルフシャフトが、その長さの目標質量および目標重心をほぼ有するように、各ゴルフシャフトに付加される。
【0039】
様々な実施形態において、インサート装置124は、スケール100、重心モジュール108、位置決定モジュール116、インサートモジュール112および挿入モジュール120を含む自動化された装置であってもよい。様々な実施形態において、1つまたは複数のモジュールの機能は、ユーザを介して実行されてもよい。
【0040】
ひとたびインサート114がゴルフシャフト104に挿入されると、ゴルフシャフト104は、1期間以上の所定の期間、1処理以上の熱処理がほどこされる。例えば、所定の期間、インサート114の融点温度以下の所定の温度に(例えば、炉で)ゴルフシャフト104を加熱されてもより。様々な実施形態において、所定の温度は、インサートの融点温度より高くてもよい。そのような実施形態では、所定の期間は、インサート114の外側のスキン部分の溶融を可能にしつつ、インサート114のそれ以外の部分の溶融を防止することができるだけの低温に設定されてもよい。ゴルフシャフト104およびインサート114を加熱することで、インサート114がゴルフシャフト104の内面に接着され、ゴルフシャフト104からインサート114を除去するのに必要な力が大きくなる。
【0041】
図2は、ゴルフシャフト104にインサート114を挿入する前の、ゴルフクラブシャフトとインサート114とを例示した図を含む。挿入モジュール120は、挿入棒204を介してインサート114をゴルフシャフト104に挿入することができる。挿入棒204は、ゴルフシャフト104とほぼ同軸に直線的に移動され、ゴルフシャフト104の中空の内部に入り、ゴルフシャフト104の内部の目標位置にインサート114を押し込むことができる。例えば、挿入棒204は、ゴルフシャフト104が静止している間にインサート114に少なくとも約200ポンド(約889ニュートン)の力を加え、インサート114を挿入することができる。しかしながら、インサート114に加わる力は、200ポンドより大きくても小さくてもよい。挿入モジュール120は、挿入棒204をゴルフシャフト104の中に直線的に動かすリニアアクチュエータを、含んでもよい。
【0042】
図3は、ゴルフシャフト104の内部に固定されたインサート114を例示した図である。
【0043】
図4は、ゴルフシャフト404とゴルフシャフト404内のインサート408とを例示した図を含む。
図4の例では、ゴルフシャフト404の質量は、ゴルフシャフト404の目標質量よりも2グラム少なかった。したがって、インサート408は、2グラムの質量を有している。インサート408の挿入後のゴルフシャフト404の質量は、ゴルフシャフト404の目標質量とほぼ等しい。
【0044】
(インサート408を含む)ゴルフシャフト404の重心が、ゴルフシャフト404の目標重心にほぼ位置するように、インサート408をゴルフシャフト404内のある位置に挿入した。例えば、(インサート408を含まない)ゴルフシャフト404の重心が、ゴルフシャフト404の目標重心よりもゴルフシャフト404の太い方の端側にあった場合、インサート408は、ゴルフシャフト404の目標重心よりもゴルフシャフト404の細い方の端側に配置されることになる。これによって、(インサート408を有する)ゴルフシャフト404の重心は、目標重心に向けてまたは目標重心に調整される。また、(インサート408を含まない)ゴルフシャフト404の重心が、ゴルフシャフト404の目標重心よりもゴルフシャフト404の細い方の端側にあった場合、インサート408は、ゴルフシャフト404の目標重心よりもゴルフシャフト404の太い方の端側に配置されることになる。これによって、(インサート408を有する)ゴルフシャフト404の重心が、目標重心に向けてまたは目標重心に調整される。
【0045】
図5は、ゴルフシャフトの目標質量およびゴルフシャフトの目標重心を達成するためにゴルフシャフトを加重する例示的な方法を含む。この方法は、秤100によりゴルフシャフトの質量を測定し、重心モジュール108によりゴルフシャフトの重心を決定する504から始まる。ゴルフシャフトは、目標質量および目標重心を有する。
【0046】
508において、インサートモジュール112は、ゴルフシャフトの質量をゴルフシャフトの目標質量に調整するためのインサートの目標質量を決定する。例えば、インサートモジュール112は、インサートの目標質量を、ゴルフシャフトの目標質量からゴルフシャフトの質量を引いたものに等しくなるように設定することができる。また、512において、インサートモジュール112は、インサートの目標質量を有するインサートを出力する。例えば、インサートモジュール112は、ある長さのインサート材料を切断して目標質量を有するようにしてもよく、あるいは、質量の異なる複数のインサートのうち、質量が目標質量に最も近い1本を選択してもよい。
【0047】
516において、位置決定モジュール116は、ゴルフシャフトの重心とゴルフシャフトの目標重心とに基づいて、インサートの目標位置を決定する。例えば、ゴルフシャフトの重心が、ゴルフシャフトの目標重心よりもゴルフシャフトの細い方の端に近い場合、位置決定モジュール116は、インサートの目標位置をゴルフシャフトの太い方の端寄りに設定することができる。ゴルフシャフトの重心が、ゴルフシャフトの目標重心よりもゴルフシャフトの太い方の端に近い場合、位置決定モジュール116は、インサートの目標位置をゴルフシャフトの細い方の端寄りに設定することができる。ゴルフシャフトの重心がゴルフシャフトの目標重心にある場合、位置決定モジュール116は、インサートの目標位置をゴルフシャフトの目標重心に設定することができる。
【0048】
520において、挿入モジュール120は、(インサート目標質量を有する)インサートをゴルフシャフト内のインサートの目標位置に挿入し、インサートとゴルフシャフトの内面とを締まりばめ状態にする。その後、(インサートを有する)ゴルフシャフトは、ほぼゴルフシャフトの目標重心を持ち、ほぼゴルフシャフトの目標質量になる。524では、(インサートを含む)ゴルフシャフトを(例えば、炉で)加熱して、インサートをゴルフシャフトの内面に接着する。様々な実施形態において、インサートをゴルフシャフトの内面に接着するために、インサートの外面に接着剤を使用してもよい。そのような実施形態では、接着剤の予測質量に基づいてインサートの目標質量を減らしてもよい。
【0049】
以上、ゴルフシャフトにインサートを挿入する例を示したが、上記は、他のタイプのスポーツ用品のシャフトの管状部材にインサートを挿入する場合にも、適用可能である。例えば、上記は、ホッケーのスティックやラクロスのスティックなどの筒状部材にインサートを挿入する場合にも適用可能である。また、上記は、(ゴルフシャフトの)丸い管状部材の例を示したが、長方形(正方形を含む)、五角形、六角形、七角形、八角形などの他の形状の管状部材にも適用可能である。
【0050】
上記の説明は、本質的に例示的なものにすぎず、どのような形であっても、本開示、その応用または用途を制限することを意図するものではない。本開示の広い教示内容を、様々な形態で実施することができる。したがって、本開示には特定の例が含まれるとはいえ、本開示の真の範囲はそのように限定されるべきではない。なぜなら、図面、明細書および以下の特許請求の範囲を検討すれば、他の改変例も明らかになるためである。ある方法の1以上の工程が、本開示の原理を変更することなく、異なる順序で(または同時に)実行されてもよいことが理解されるべきである。さらに、各実施形態を、特定の特徴を有するものとして上述したが、本開示のいずれかの実施形態に関して記載されたそれらの特徴のいずれか1つ以上を、他の実施形態のいずれかの特徴に実装できる、および、それらの特徴と組み合わせることができる、の少なくとも一方である。たとえその組み合わせが明示的に記載されていない場合も、同様である。言い換えれば、記載された実施形態は相互に排他的ではなく、1つ以上の実施形態を入れ替えても、本開示の範囲内にとどまる。本明細書で使用する場合、「ほぼ」「約」とは、表記の値の±10%を意味し得る。
【0051】
要素間(例えば、モジュール間、回路素子間、半導体層間など)の空間的および機能的関係は、「接続され(connected)」、「かみ合い(engaged)」、「結合され(coupled)」、「隣接して(adjacent)」、「隣り合って(next to)」、「の上に(on top of)」、「上に(above)」、「下に(below)」および「配置されて(disposed)」を含む様々な用語を用いて記述される。「直接(direct)」であることが明記されていない限り、第1の要素と第2の要素の関係が上記開示に記載されている場合、その関係は、第1の要素と第2の要素との間に他の介在要素が存在しない直接的な関係であり得るが、第1の要素と第2の要素との間に1つ以上の介在要素が(空間的にまたは機能的に)存在する間接的な関係であってもよい。本明細書で使用する場合、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」という言い回しは、包含的論理和を用いた論理的「AまたはBまたはC」を意味すると解されるべきであり、「Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、Cのうちの少なくとも1つ」を意味するとは解されるべきではない。
【0052】
図中、矢印の方向は、矢印の先端で示されるように、一般に図の着目される情報(データや命令など)の流れを示している。例えば、要素Aと要素Bが様々な情報を交換するが、要素Aから要素Bに送信される情報が図に関連する場合、矢印は要素Aから要素Bを指すことがある。この一方向の矢印は、要素Bから要素Aに他の情報が送信されないことを意味するものではない。さらに、要素Aから要素Bに送信される情報について、要素Bはその情報の要求、または受信確認を要素Aに送信してもよい。
【0053】
本願では、以下の定義を含めて、「モジュール」という用語または「制御装置」という用語を、「回路」という用語に置き換えてもよい。「モジュール」という用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル、アナログまたはアナログ/デジタル混在の離散回路、デジタル、アナログまたはアナログ/デジタル混在の集積回路、組合せ論理回路、FPGA(Field Programmable Gate Array)、コードを実行するプロセッサ回路(共有、専用またはグループ)、プロセッサ回路によって実行されるコードを格納するメモリ回路(共有、専用またはグループ)、記載された機能を提供する他の適切なハードウェアコンポーネントあるいは、システムオンチップなど、上記のいくつかまたはすべての組み合わせをいうものであってもよいし、これらの一部であってもよく、これらを含んでもよい。
【0054】
モジュールには、1つ以上のインターフェース回路が含まれていてもよい。いくつかの例では、インターフェース回路には、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)またはそれらの組み合わせに接続される、有線または無線のインターフェースが含まれていてもよい。本開示の所与のモジュールの機能を、インターフェース回路を介して接続されている複数のモジュールに分散させてもよい。例えば、複数のモジュールで負荷分散を可能にしてもよい。さらに別の例では、クライアントモジュールの代わりに、サーバー(リモート、またはクラウドとも呼ばれる)モジュールでいくつかの機能を達成してもよい。
【0055】
コードという用語は、上記で用いたように、ソフトウェア、ファームウェアおよびマイクロコードのうち少なくとも一つを含む場合があり、プログラム、ルーチン、関数、クラス、データ構造、およびオブジェクトのうち少なくとも一つをいう場合がある。共有プロセッサ回路という用語は,複数のモジュールからの一部またはすべてのコードを実行する単一のプロセッサ回路を包含する。グループプロセッサ回路という用語は、追加のプロセッサ回路との組み合わせで、1つ以上のモジュールから一部または全部のコードを実行するプロセッサ回路を包含する。複数のプロセッサ回路とは、互いに別個の複数のダイ上の複数のプロセッサ回路、単一のダイ上の複数のプロセッサ回路、単一のプロセッサ回路の複数のコア、単一のプロセッサ回路の複数のスレッドまたはこれらの組み合わせを包含する。共有メモリ回路という用語は、複数のモジュールからのコードの一部または全部を格納する単一のメモリ回路を包含する。グループメモリ回路という用語は、追加のメモリとの組み合わせで、1つ以上のモジュールからの一部またはすべてのコードを格納するメモリ回路を包含する。
【0056】
メモリ回路という用語は、コンピュータ可読媒体という用語のサブセットである。本明細書で使用する場合、コンピュータ可読媒体という用語は、(搬送波などの)媒体を伝搬する一時的な電気信号または電磁信号を包含しない。したがって、コンピュータ可読媒体という用語は、有形かつ非一時的なものとみなすことができる。非一時的かつ有形のコンピュータ可読媒体の非限定的な例としては、不揮発性メモリ回路(フラッシュメモリ回路、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ回路、マスクリードオンリーメモリ回路など)、揮発性メモリ回路(スタティックランダムアクセスメモリ回路、ダイナミックランダムアクセスメモリ回路など)、磁気記憶媒体(アナログまたはデジタル磁気テープ、ハードディスクドライブなど)、光記憶媒体(CD、DVD、ブルーレイディスクなど)が挙げられる。
【0057】
本願で説明した装置および方法は、コンピュータプログラムに具現化された1つ以上の特定の機能を実行するように汎用コンピュータを構成することによって作成された、専用コンピュータによって、部分的または完全に実現することができる。上述した機能ブロック、フローチャートコンポーネント、およびその他の要素は、ソフトウェア仕様として機能し、熟練した技術者またはプログラマーのルーチンワークによってコンピュータプログラムに変換することができる。
【0058】
コンピュータプログラムは、少なくとも1つの非一時的かつ有形のコンピュータ可読媒体に格納される、プロセッサで実行可能な命令を含む。また、コンピュータプログラムは、格納されたデータを含むか、格納されたデータに依存するものであってもよい。コンピュータプログラムは、専用コンピュータのハードウェアと相互作用するBIOS(Basic Input/Output System)、専用コンピュータの特定のデバイスと相互作用するデバイスドライバ、1つ以上のオペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、バックグラウンドサービス、バックグラウンドアプリケーションなどを包含してもよい。
【0059】
コンピュータプログラムは、(i)HTML(hypertext markup language)、XML(extensible markup language)またはJSON(JavaScript Object Notation)などの解析される記述言語、(ii)アセンブリコード、(iii)コンパイラによってソースコードから生成されるオブジェクトコード、(iv)インタプリタによる実行用のソースコード、(v)ジャストインタイムコンパイラによるコンパイルおよび実行用のソースコードなどを含んでもよい。単なる例として、ソースコードは、C、C++、C#、オブジェクティブシー、スウィフト、ハスケル、Go、SQL、R、リスプ、Java(登録商標)、フォートラン、パール、パスカル、カール、OCaml、Javascript(登録商標)、HTML5(エイチティーエムエルファイブ)、Ada、ASP(Active Server Pages)、PHP(PHP:Hypertext Preprocessor)、スカラ、アイフェル、スモールトーク、アーラン、ルビー、Flash(登録商標)、Visual Basic(登録商標)、ルア、MATLAB(登録商標)、SIMULINK(登録商標)、Python(登録商標)などの言語のシンタックスを用いて記述されていてもよい。