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特許7504148グラジエント共重合体、その製造方法およびその応用
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  • 特許-グラジエント共重合体、その製造方法およびその応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】グラジエント共重合体、その製造方法およびその応用
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
C08F220/18
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022063540
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2018568254の分割
【原出願日】2017-06-27
(65)【公開番号】P2022088651
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】201610490600.X
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張耀
(72)【発明者】
【氏名】段慶華
(72)【発明者】
【氏名】魏克成
(72)【発明者】
【氏名】劉依農
(72)【発明者】
【氏名】孫洪偉
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-237135(JP,A)
【文献】特開平07-048421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n種類のポリマー成分を含むか、前記n種類のポリマー成分からなるグラジエント共重合体であって、
前記n種類のポリマー成分は、それぞれ独立に、
(i)式(I)で示される単量体のラジカル付加重合体および/またはその混合物を表すか、あるいは、
(ii)式(I-1)で示される1種類以上の構造単位を含むか、または当該1種類以上の構造単位からなるものであり、
記号nは、閉区間[5,20000]内の整数を表し、
【化1】

式(I)または式(I-1)中、
基は、を表し、
基は、HまたはC1~4の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し、
記号aは、を表し、
基は、 ~C 24 の直鎖または分枝アルキル基を表し、
第i種類目のポリマー成分について、核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均をXとすると(記号iは1~nの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立し、
<X<…<Xn-1<X (II)
からXに亘って漸増し
は、閉区間[6.5,12.5]内の任意の数値を表し、
は、閉区間[13.8,19.5]内の任意の数値を表し、
前記n種類のポリマー成分の総重量に占める、第i種類目のポリマー成分の重量の百分率をY とすると(記号iは1~nの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立し、
<Y <…<Y >…>Y n-1 >Y (III)
式(III)中、
記号jは、閉区間[2(n+1)/5,3(n+1)/5]内の整数を表し、
+Y +…+Y +…+Y n-1 +Y =100%であり、
からY に亘って漸増し、
からY に亘って漸減し、
は、20%~75%であり、
またはY は、0.01%~20%であり、
およびX が以下の関係式を満たし、
【数1】

式(IV)中、
記号μは、開区間(12.5,14.2)内の任意の数値を表し、
記号σは、開区間(0.5,2)内の任意の数値を表す、
グラジエント共重合体。
【請求項2】
(i)前記グラジエント共重合体の核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均は、5~20であるか、あるいは、
(ii)前記n種類のポリマー成分または前記グラジエント共重合体の、数平均分子量Mnは、それぞれ独立に、1万~100万であるか、あるいは、
(iii)前記n種類のポリマー成分または前記グラジエント共重合体の、分子量分布Mw/Mnは、それぞれ独立に、1.8~3.5である
請求項に記載のグラジエント共重合体。
【請求項3】
前記式(I)で示される単量体は、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1つ以上である、
請求項1または2に記載のグラジエント共重合体。
【請求項4】
基は、C10~C18の直鎖または分枝アルキル基であり、
前記式(I-1)で示される1種類以上の構造単位の、前記n種類のポリマー成分の各々を構成する構造単位の全量に対して占める割合(モル比)は、40%~95%である、
請求項1~の何れか1項に記載のグラジエント共重合体。
【請求項5】
重合反応系内に2種類の単量体を投入して、当該2種類の単量体の付加共重合反応を行うステップを含む、グラジエント共重合体の製造方法であって、
前記2種類の単量体は、それぞれ独立に、式(I)で示される化合物および/またはその混合物を表し、
【化2】

式(I)中、
基は、を表し、
基は、HまたはC1~4の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し、
記号aは、を表し、
基は、 10 ~C 18 の直鎖または分枝アルキル基を表し、
(i)前記2種類の単量体が前記重合反応系内に投入される開始時刻をtとし、(ii)終了時刻をtとし、(iii)前記2種類の単量体の単量体投入時間をtとし(t=t-t)、且つ、(iv)前記単量体投入時間をm等分すると(記号mは、閉区間[5,20000]内の整数を表す)
任意の単量体投入時刻t(記号xは0~mの任意の整数を表す)において前記重合反応系内に投入される、前記2種類の単量体の間の相対比率は、当該2種類の単量体の当該相対比率にて構成されている混合物の、核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均Xが以下の関係式を満たすような相対比率であり、
<X<…<Xm-1<X (V)
からXに亘って漸増し、
は、閉区間[6.5,12.5]内の任意の数値を表し、
は、閉区間[13.8,19.5]内の任意の数値を表し、
前記式(I)で示される化合物の、単量体の全使用量に対して占める割合(モル比)は、40%~95%であり、
(i)前記単量体の投入終了時刻t において、前記単量体投入時間tの間に前記重合反応系内に投入される前記2種類の単量体の累計投入量の和をGとし、(ii)任意の単量体投入時刻t において、前記重合反応系内に投入される前記2種類の単量体の投入量の和をG とすると(記号xは0~mの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立し、
/G<G /G<…<G /G>…>G m-1 /G>G /G (VI)
式(VI)中、
記号jは、閉区間[2m/5,3m/5]内の整数を表し、
+G +…+G +…+G m-1 +G =Gであり、
(i)G /GからG /Gに亘って漸増するか、あるいは、
(ii)G /GからG /Gに亘って漸減し、
/GおよびX が、以下の関係式を満たし、
【数2】

式(VII)中、
記号μは、開区間(12.5,14.2)内の任意の数値を表し、
記号σは、開区間(0.5,2)内の任意の数値を表す、
製造方法。
【請求項6】
前記2種類の単量体は、
(i)C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC18直鎖アルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択されるか、あるいは、
(ii)C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択されるか、あるいは、
(iii)C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される2つである、
請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
率G/Gは、20%~75%であり、
率G/Gまたは比率G/Gは、0.01%~20%である、
請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記共重合反応の反応温度は、50℃~180℃であり、
前記共重合反応の反応時間は、1時間~24時間であり、
前記単量体投入時間tは、0.5時間~12時間である、
請求項5~7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
p種類のポリマー成分を混合するステップを含む、グラジエント共重合体の製造方法であって、
前記p種類のポリマー成分は、それぞれ独立に、
(i)式(I)で示される単量体の付加重合体および/またはその混合物を表すか、あるいは、
(ii)式(I-1)で示される1種類以上の構造単位を含むか、または当該1種類以上の構造単位からなるものであり、
記号pは、5~10000の整数であり、
【化3】

式(I)または式(I-1)中、
基は、を表し、
基は、HまたはC1~4の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し、
記号aは、を表し
基は、 ~C 24 の直鎖または分枝アルキル基を表し、
第i種類目のポリマー成分について、核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均をXとすると(記号iは1~pの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立し、
<X<…<Xp-1<X (VIII)
からXに亘って漸増し、
(i)X は、閉区間[6.5,12.5]内の任意の数値を表すか、あるいは、
(ii)X は、閉区間[13.8,19.5]内の任意の数値を表し、
前記p種類のポリマー成分の総重量に占める、第i種類目のポリマー成分の重量百分率をY とすると(記号iは1~pの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立し、
<Y <…<Y >…>Y p-1 >Y (X)
式(X)中、
記号jは、閉区間[2(p+1)/5,3(p+1)/5]内の整数を表し、
+Y +…+Y +…+Y p-1 +Y =100%であり、
からY に亘って漸増し、
からY に亘って漸減し、
およびX が以下の関係式を満たし、
【数3】

式(XI)中、
記号μは、開区間(12.5,14.2)内の任意の数値を表し、
記号σは、開区間(0.5,2)内の任意の数値を表す、
製造方法。
【請求項10】
基は、C10~C18の直鎖または分枝アルキル基であり、
前記式(I-1)で示される1種類以上の構造単位の、前記p種類のポリマー成分の各々を構成する全構造単位の量に対して占める割合(モル比)は、40%~95%である、
請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
記Yは、20%~75%であり
記YまたはYは、0.01%~20%である、
請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~の何れか1項に記載のグラジエント共重合体、または請求項5~11の何れか1項に記載の製造方法により製造されるグラジエント共重合体を含む、重合体組成物。
【請求項13】
請求項1~の何れか1項に記載のグラジエント共重合体、または請求項6~11の何れか1項に記載の製造方法により製造されるグラジエント共重合体を含む、潤滑油用流動点降下剤。
【請求項14】
請求項1~の何れか1項に記載のグラジエント共重合体、請求項6~11の何れか1項に記載の製造方法により製造されるグラジエント共重合体、請求項12に記載の重合体組成物、または請求項13に記載の潤滑油用流動点降下剤と、
潤滑油ベースオイルと、
を含む潤滑油組成物であって、
前記グラジエント共重合体を基準とすると、当該グラジエント共重合体が前記潤滑油ベースオイル中で占める含量(重量比)は、0.01重量%~2重量%である、潤滑油組成物。
【請求項15】
請求項1~の何れか1項に記載のグラジエント共重合体、または請求項6~11の何れか1項に記載の製造方法により製造されるグラジエント共重合体の、潤滑油用流動点降下剤としての使用。
【請求項16】
2種類の単量体を重合反応系内に投入して発生する付加共重合反応である共重合反応の制御方法であって、
前記2種類の単量体は、それぞれ独立に、式(I)で示される化合物および/またはその混合物を表し、
【化4】

式(I)中、
基は、を表し、
基は、HまたはC1~4の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し
記号aは、を表し
基は、 ~C 24 の直鎖または分枝アルキル基を表し、
(i)前記2種類の単量体が前記重合反応系内に投入される開始時刻をtとし、(ii)終了時刻をtとし、(iii)前記2種類の単量体の単量体投入時間をtとし(t=t-t)、且つ、(iv)前記単量体投入時間をm等分すると(記号mは、閉区間[5,20000]内の整数を表
前記制御方法は、
任意の単量体投入時刻t(記号xは0~mの任意の整数を表す)において前記重合反応系内に投入される、前記2種類の単量体の間の相対比率を、当該2種類の単量体の当該相対比率にて構成されている混合物の、核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均Xが以下の関係式を満たすように調節するステップを含み、
<X<…<Xm-1<X (V)
からXに亘って漸増し
は、閉区間[6.5,12.5]内の任意の数値を表し、
は、閉区間[13.8,19.5]内の任意の数値を表し、
前記単量体の投入終了時刻t において、前記単量体投入時間tの間に前記重合反応系内に投入される前記2種類の単量体の累計投入量の和をGとすると、
前記制御方法は、
前記単量体投入時刻t (記号xは0~mの任意の整数を表す)において前記重合反応系内に投入する前記2種類の単量体の投入量の和G を、比率G /Gが以下の関係式を満たすように調節するステップを更に含み、
/G<G /G<…<G /G>…>G m-1 /G>G /G (VI)
式(VI)中、
記号jは、閉区間[2m/5,3m/5]内の整数を表し、
+G +…+G +…+G m-1 +G =Gであり、
/GからG /Gに亘って漸増し、
/GからG /Gに亘って漸減し、
/GおよびX は以下の関係式を満たし、
【数4】

式(VII)中、
記号μは、開区間(12.5,14.2)内の任意の数値を表し、
記号σは、開区間(0.5,2)内の任意の数値を表す、
制御方法。
【請求項17】
基は、C10~C18の直鎖または分枝アルキル基であり、
前記式(I)で示される化合物の、全単量体の使用量に対して占める割合(モル比)は、40%~95%である、請求項16に記載の制御方法。
【請求項18】
率G/Gは、20%~75%であり、
率G/Gまたは比率G/Gは、0.01%~20%である、
請求項16または17に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の技術分野に関し、具体的にはグラジエント共重合体に関する。また、本発明はまた、前記グラジエント共重合体の製造方法および応用にも関する。
【背景技術】
【0002】
現在、省エネ技術、グリーン技術およびエンジン技術の進歩が、潤滑油の発展における主な駆動力となっている。その結果、ベースオイルの粘性、温度-粘性特性、低温下での性能等に対する、新たな需要が生まれている。ベースオイルとは、異なる構造のパラフィンからなる、非常に複雑な混合物であることが知られている。n-パラフィンおよび分枝度が比較的低いイソパラフィンは、良好な温度-粘性特性を有するが、低温条件下では結晶化して析出し、網状のワックス結晶を形成しやすい。そのため、ベースオイルの流動性は、温度の低下につれて徐々に低下してしまう。このような不利な状況を回避するために、潤滑油を調合するには、流動点降下剤を添加して、当該潤滑油の低温下性能を向上させる必要があることが多い。
【0003】
そのために、従来技術では、様々な種類の流動点降下剤が開発されている。
【0004】
CN106520261Aには、ポリ-α-オレフィン系流動点降下剤とフマル酸エステル系流動点降下剤とからなり、ポリ-α-オレフィン系流動点降下剤とフマル酸エステル系流動点降下剤との質量比が3:(1~5)である、潤滑油用流動点降下剤組成物が開示されている。
【0005】
潤滑油の発展に伴い、流動点降下剤に対しても、より高い性能、特性が要求されている。したがって、従来技術に対して更に優れた性能を有する、新規な流動点降下剤を開発する必要があった。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは鋭意に研究し、新規なグラジエント共重合体を見出したと共に、該グラジエント共重合体が、例えば流動点降下剤としての利用に特に適していることをも見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
具体的には、本発明は、少なくとも以下の幾つかの態様に関する。
【0008】
〔1〕
n種類のポリマー成分を含むか、前記n種類のポリマー成分からなるグラジエント共重合体であって、
前記n種類のポリマー成分は、それぞれ独立に、
(i)式(I)で示される単量体の付加重合体(特にラジカル付加重合体)および/またはその混合物を表すか、あるいは、
(ii)式(I-1)で示される1種類以上の構造単位を含むか、または当該1種類以上の構造単位から実質的になるものであり、
記号nは、閉区間[5,∞]内の整数を表し、好ましくは閉区間[8,∞]内の整数を表し、
第i種類目のポリマー成分について、核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均をXとすると(記号iは1~nの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立し、
<X<…<Xn-1<X (II)
好ましくはXからXに亘って漸増し、より好ましくはXからXに亘って線形に増加する、
グラジエント共重合体。
【0009】
〔2〕
重合反応系内に少なくとも2種類の単量体を投入して、当該少なくとも2種類の単量体の付加共重合反応(特にラジカル付加共重合反応)を行うステップを含む、グラジエント共重合体の製造方法であって、
前記少なくとも2種類の単量体は、それぞれ独立に、式(I)で示される化合物および/またはその混合物を表し、
(i)前記少なくとも2種類の単量体が前記重合反応系内に投入される開始時刻をtとし、(ii)終了時刻をtとし、(iii)前記少なくとも2種類の単量体の単量体投入時間をtとし(t=t-t)、且つ、(iv)前記単量体投入時間をm等分すると(記号mは、閉区間[5,∞]内の整数を表し、好ましくは閉区間[8,∞]内の整数を表す)、
任意の単量体投入時刻t(記号xは0~mの任意の整数を表す)において前記重合反応系内に投入される、前記少なくとも2種類の単量体の間の相対比率は、当該少なくとも2種類の単量体の当該相対比率にて構成されている混合物の、核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均Xが以下の関係式を満たすような相対比率であり、
<X<…<Xm-1<X (V)
好ましくはXからXに亘って漸増し、より好ましくはXからXに亘って線形に増加する、
製造方法。
【0010】
〔3〕
p種類のポリマー成分を混合するステップを含む、グラジエント共重合体の製造方法であって、
前記p種類のポリマー成分は、それぞれ独立に、
(i)式(I)で示される単量体の付加重合体(特にラジカル付加重合体)および/またはその混合物を表すか、あるいは、
(ii)式(I-1)で示される1種類以上の構造単位を含むか、または当該1種類以上の構造単位から実質的になるものであり、
記号pは、5~10000の整数であり、好ましくは8~5000の整数であり、または5~20の整数であり、
第i種類目のポリマー成分について、核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均をXとすると(記号iは1~pの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立し、
<X<…<Xp-1<X (VIII)
好ましくは、XからXに亘って漸増し、より好ましくはXからXに亘って線形に増加する、
製造方法。
【0011】
〔4〕
少なくとも2種類の単量体を重合反応系内に投入して発生する付加共重合反応(特にラジカル付加共重合反応)である共重合反応の制御方法であって、
前記少なくとも2種類の単量体は、それぞれ独立に、式(I)で示される化合物および/またはその混合物を表し、
(i)前記少なくとも2種類の単量体が前記重合反応系内に投入される開始時刻をtとし、(ii)終了時刻をtとし、(iii)前記少なくとも2種類の単量体の単量体投入時間をtとし(t=t-t)、且つ、(iv)前記単量体投入時間をm等分すると(記号mは、閉区間[5,∞]内の整数、好ましくは閉区間[8,∞]内の整数を表す)、
前記制御方法は、
任意の単量体投入時刻t(記号xは0~mの任意の整数を表す)において前記重合反応系内に投入される、前記少なくとも2種類の単量体の間の相対比率を、当該少なくとも2種類の単量体の当該相対比率にて構成されている混合物の、核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均Xが以下の関係式を満たすように調節するステップを含み、
<X<…<Xm-1<X (V)
好ましくはXからXに亘って漸増し、より好ましくはXからXに亘って線形に増加する、
制御方法。
【0012】
【化1】
【0013】
前記何れかの態様において、式(I)または式(I-1)中、
基は、Hまたは
【0014】
【化2】
【0015】
を表し、好ましくはHを表し、
基は、HまたはC1~4の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し、好ましくはHまたはメチル基を表し、
記号aは、0または1を表し、好ましくは1を表し、
R’基は、HまたはR基を表し、好ましくはR基を表し、
基は、C~C30の直鎖または分枝アルキル基を表し、好ましくはC~C24の直鎖または分枝アルキル基を表し、より好ましくはC~C20の直鎖アルキル基を表す。
【0016】
他の態様において、本発明は、前記グラジエント共重合体の様々な応用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るメタクリレート重合体の核磁気共鳴スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔技術的効果〕
一実施形態において、本発明のグラジエント共重合体によれば、潤滑油に対する優れた流動点降下効果を実現できる。
【0019】
一実施形態において、本発明のグラジエント共重合体は、流動点降下剤として使用した場合に、幅広いベースオイルに対して適用できる。
【0020】
一実施形態において、本発明のグラジエント共重合体によれば、上述した複数の技術的効果を同時に実現できる。
【0021】
〔具体的な実施形態〕
以下、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の保護範囲は、これら具体的な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲により確定されるものである。
【0022】
本明細書において言及される全ての出版物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、ここに参照により組み込まれる。
【0023】
別途定義しない限り、本発明または本明細書中に使用される全ての技術的用語および科学的用語は、当業者が一般に理解する意味を有する。定義が衝突する場合には、本明細書中の定義が優先する。
【0024】
本明細書において、「当業者の公知」、「従来技術」、またはそれらの類似的表現を用いて材料、物質、方法、ステップ、装置または部材等を修飾する場合、当該修飾された対象は、本願の出願の時点で既に本分野で通常に使用されているものを内包する。そして、これらに加えて、現在は常用されていないものの、将来的にその類似目的に適合すると本分野で公認されるであろうものも内包する。
【0025】
本発明に関して、用語「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を指す。
【0026】
本発明に関して、特段の説明がない限り、「少なくとも2種類」、「2つ以上」およびこれに類似する表現、または、単独で使用される用語「複数」およびこれに類似する表現は、通常、(i)2以上を表す(例えば2~15)か、または(ii)3~10を表す(例えば5~8)。
【0027】
本発明に関して、特段の説明がない限り、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって測定される。ここで、当該ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)の測定条件は下記のとおりである。
測定装置:1515型ゲル浸透クロマトグラフィ測定器(Waters, USA)
検出器:Waters2414示差屈折率検出器
標準物質用の溶媒:クロマトグラフィ用純正テトラヒドロフラン(Acros社製)
カラム:異なる孔径のシリカゲルカラム(Waters社から入手)を3本直列に接続
各カラム規格:
(1)Waters Styragel(登録商標)HR 0.5 THF;相対分子量測定範囲1~1000(7.8×300mm)
(2)Waters Styragel(登録商標)HR 1 THF;相対分子量測定範囲100~5000(7.8×300mm)
(3)Waters Styragel(登録商標)HR 3 THF;相対分子量測定範囲5000~600,000(7.8×300mm)
移動相:テトラヒドロフラン
移動相の流速:1.0mL/分
カラム温度:35℃
検出器温度:35℃
注入量:200μL
試料濃度:0.05mmol/L
重合体の標準物質:ポリブチルメタクリレート。
【0028】
最後に、別途明記のない限り、本明細書中に記載の百分率、部、比率等は、全て重量に準じる(但し、重量に準じると、当業者の通常の認識に反する場合は除く)。
【0029】
本明細書に関して、本明細書に記載されている任意の2つ以上の態様は、任意に組み合わせることが可能である。これによって成立する組み合わせの構成は、本明細書の当初の記載内容の一部を構成し、本発明の保護範囲の内に包含される。それゆえ、この組み合わせの構成は、新規な技術的解決手段には属さない。
【0030】
一態様によれば、本発明はグラジエント共重合体に関する。ここで、前記グラジエント共重合体は、n種類のポリマー成分を含んでもよいし、前記n種類のポリマー成分からなるものであってもよい。好ましくは、前記n種類のポリマー成分からなる。この観点において、前記グラジエント共重合体は、実際には、(i)前記n種類のポリマー成分の混合物を含む、分子間に勾配を有する共重合体であるか、または(ii)当該混合物それ自体である、分子間に勾配を有する共重合体である。
【0031】
本発明の一態様によれば、前記n種類のポリマー成分は、それぞれ独立に、式(I)で示される単量体の付加重合体(以下、重合体Aと称する)、特にラジカル付加重合体を表す。ここで、前記重合体Aは、前記式(I)で示される1種類の単量体のホモポリマーであり得るし、前記式(I)で示される2種類以上の単量体の共重合体でもあり得る。このような共重合体の具体例としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、または交互共重合体等が挙げられる。また、2種類以上の前記重合体Aの混合物を、前記ポリマー成分として位置づけてもよい。この観点から、「n種類のポリマー成分のうちの1種類以上」とは、2種類以上の前記重合体Aの混合物を意味し得る。
【0032】
本発明の前記の態様によれば、前記重合体Aまたは前記n種類のポリマー成分は、それぞれ独立に、(i)式(I-1)で示される1種類以上構造単位(以下、「特定構造単位」と略記する場合がある)を含むか、あるいは、(ii)前記特定構造単位の1種類以上から実質的になる。なお、前記式(I-1)で示される構造単位は、前記式(I)で示される単量体に由来していることは、明白である。ここで言う「実質的に」とは、モル比で、全量の85%以上を占めること、好ましくは90%以上を占めること、より好ましくは95%以上を占めることを意味する。これら重合体構造の残部は、前記特定構造単位以外の他の構造単位または末端基で有り得る。通常、残部は末端基であり、具体例としては開始剤の残基等である。
【0033】
【化3】
【0034】
本発明の一態様によれば、前記n種類のポリマー成分の数平均分子量Mnは、それぞれ独立に、1万~100万であり、好ましくは1万~50万であり、より好ましくは1万~10万である。
【0035】
本発明の一態様によれば、前記n種類のポリマー成分の分子量分布Mw/Mnは、それぞれ独立に、1.8~3.5であり、好ましくは1.9~3.3である。
【0036】
本発明の一態様によれば、前記グラジエント共重合体または前記重合体Aの数平均分子量Mnは、1万~100万であり、好ましくは1万~50万であり、より好ましくは1万~10万である。
【0037】
本発明の一態様によれば、前記グラジエント共重合体または前記重合体Aの分子量分布Mw/Mnは、1.8~3.5、好ましくは1.9~3.3である。
【0038】
【化4】
【0039】
本発明の一態様によれば、式(I)または式(I-1)中、R基は、Hまたは
【0040】
【化5】
【0041】
を表し、好ましくはHを表す。ここで、R’基は、HまたはR基を表し、好ましくはR基を表す。
【0042】
本発明の一態様によれば、式(I)または式(I-1)中、R基は、HまたはC1~4の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し、好ましくはHまたはメチル基を表す。
【0043】
本発明の一態様によれば、式(I)または式(I-1)中、記号aは、0または1を表し、好ましくは1を表す。
【0044】
本発明の一態様によれば、式(I)または式(I-1)中、R基は、C~C30の直鎖または分枝アルキル基を表し、好ましくはC~C24の直鎖または分枝アルキル基を表し、より好ましくはC~C20の直鎖アルキル基またはC~C24の直鎖アルキル基を表す。
【0045】
本発明の一態様によれば、好ましくは、前記重合体Aまたは前記n種類のポリマー成分のうちの1種類以上について、R基はC10~C18の直鎖または分枝アルキル基であり、前記特定構造単位が当該重合体の構造単位の全量に占める割合(モル比)は、通常40%~95%であり、好ましくは55%~95%である。
【0046】
本発明の一態様によれば、前記式(I)で示される単量体の具体例としては、フマル酸とC~C30の直鎖または分枝アルキルとのモノエステル、フマル酸とC~C30の直鎖または分枝アルキルとのジエステル、C~C30の直鎖または分枝α-オレフィン、および(メタ)アクリル酸とC~C30の直鎖または分枝アルキルとのエステル、が挙げられる。より具体的な例としては、フマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのモノエステル、フマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのジエステル、C~C20の直鎖または分枝α-オレフィン、および(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステル、が挙げられる。更に具体的な例としては、フマル酸とC~C24の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC~C24の直鎖アルキルとのジエステル、C~C20の直鎖α-オレフィン、および(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖アルキルとのエステル、が挙げられる。これら単量体は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本発明の一態様によれば、前記フマル酸とC~C24の直鎖もしくは分枝アルキルとのモノエステルの具体例として、フマル酸とCの直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC10の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC12の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC14の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC16の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC18の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC20の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC22の直鎖アルキルとのモノエステル、およびフマル酸とC24の直鎖アルキルとのモノエステル、が挙げられる。これらフマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのモノエステルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明の一態様によれば、前記フマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのジエステルの具体例として、フマル酸とCの直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC10の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC12の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC14の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC16の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC18の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC20の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC22の直鎖アルキルとのジエステル、およびフマル酸とC24の直鎖アルキルとのジエステル、が挙げられる。これらフマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのジエステルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明の一態様によれば、前記C~C20の直鎖または分枝α-オレフィンの具体例としては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセン、が挙げられる。これらC~C20の直鎖または分枝α-オレフィンは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明の一態様によれば、前記(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルの具体例として、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレート、が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明の一態様によれば、前記(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルの例として、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC18直鎖アルキル(メタ)アクリレートのうち、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。あるいは、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートのうち2つ以上を組み合わせて用いてもよい。あるいは、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。好ましくは、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。同じく好ましくは、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。同じく好ましくは、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明の一態様によれば、第i種類目のポリマー成分について、核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均(以下、単に「側鎖中の炭素数の平均」と略記する場合がある)をXとすると(記号iは1~nの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立する。なお、以下の関係式から分かるように、前記n種類のポリマー成分同士は、構造および/または組成上で相違している。このような相違は、少なくとも、側鎖中の炭素数の平均が異なっていることに現出する。
<X<…<Xn-1<X (II)。
【0053】
本発明に関して、用語「側鎖」とは、特別に、前記式(I)または式(I-1)中のR基を指す。
【0054】
本発明に関して、「核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均」または「側鎖中の炭素数の平均」という表現は、後述する核磁気共鳴分析法により得られる、目標物質のR基の平均炭素数を指す。
【0055】
本発明の一態様によれば、前記目標物質は、R基が異なる(特に、そのアルキル基の炭素数が異なる)複数種類の、前記式(I-1)で示される構造単位(または前記式(I)で示される単量体)を含み得る。異なる目標物質に関しては、その構造単位(または単量体)の相対比率もまた、異なり得る。したがって、全体としては、前記目標物質に含まれるR基の炭素数を、平均値で記述することが好適である。よって、前記側鎖中の炭素数の平均Xには、例えば、前記目標物質中の前記式(I-1)で示される構造単位(または前記式(I)で示される単量体)の種類の数だけでなく、当該異なる構造単位(または単量体)同士の間の相対比率も反映されている。
【0056】
[核磁気共鳴分析法]
測定装置:INOVA 500MHz核磁気共鳴分光計(Varian Company, USA製;固体用二重共鳴プローブ(5mm)を使用)。
【0057】
(測定条件)
測定温度:室温
スキャン回数:nt=1000
化学シフト較正:δテトラメチルシラン=0
デカップリング方法:dm=nny(逆ゲートつきデカップリング)
重水ロック。
【0058】
(分析手順)
試料をH-NMRでキャラクタライズして得た核磁気共鳴スペクトルを分析することで、当該試料の側鎖中の炭素数の平均Xを算出する。より詳細な分析手順および計算方法は、本明細書の実施例の記載内容を参照。
【0059】
本発明の一態様によれば、核磁気共鳴分析に供したときに、前記目標物質は、1種類の物質(純物質または均一な混合物を含む)であってもよい。例えば、前記目標物質は、1種類のポリマー成分、複数種類のポリマー成分の均一な混合物、1種類の単量体、複数種類の単量体の均一な混合物、1種類のグラジエント共重合体、または、複数種類のグラジエント共重合体の均一な混合物、であり得る。この場合、前記目標物質を直接に試料として、キャラクタライゼーションおよび分析を行うことができる。あるいは、その代わりに、前記目標物質は、独立して存在する複数種類の物質であってもよい。例えば、前記目標物質は、上述したように、互いに独立して存在する前記n種類のポリマー成分であって、予め混合されて1つの物質になっていなくてもよい。別の例としては、前記目標物質は、本明細書で後述するように、単量体投入時の特定の時点において重合反応系内に投入される、少なくとも2種類の単量体である。ここで、前記単量体投入時において、前記目標物質は、互いに独立して存在する(例えば前記重合反応系内に別々で投入される)状態の単量体であって、予め混合されて1つの物質になっていなくてもよい。したがって、前記目標物質が、独立して存在する複数種類の物質である場合には、前記核磁気共鳴分析に必要な試料を、下記の試料調製ステップによって調製してもよい。
【0060】
(試料調製ステップ)
前記独立して存在する複数種類の物質を所定の比率で混合し、均一な混合物とする。その後、前記混合物を試料として用いる。
【0061】
本発明の一態様によれば、前記試料調製ステップにおいて、所定の比率とは、前記独立して存在する複数種類の物質が互いに混合されている状態を想定したとき、当該混合物(想定混合物)の成分である各物質の相対比率を指す。具体例として、前記n種類のポリマー成分に関して、所定の比率とは、これらポリマー成分を含むグラジエント共重合体(またはこれらポリマー成分からなるグラジエント共重合体)に占める、当該ポリマー成分の相対比率を指す。あるいは、前記少なくとも2種類の単量体に関して、所定の比率とは、前記単量体投入時の期間において前記重合反応系内に投入される、前記少なくとも2種類の単量体の間の相対比率を指す。
【0062】
本発明の一態様によれば、前記グラジエント共重合体の側鎖中の炭素数の平均Xは、通常5~20であり、好ましくは11.5~17であり、より好ましくは11.5~16.2であり、更に好ましくは12.2~15.7であり、更に好ましくは12.2~15.5である。
【0063】
本発明の一態様によれば、前記n種類のポリマー成分の側鎖中の炭素数の平均Xは、通常5~20であり、好ましくは11.5~17であり、より好ましくは11.5~16.2であり、更に好ましくは12.2~15.7であり、更に好ましくは12.2~15.5である。
【0064】
本発明の一態様によれば、前記記号nは、閉区間[5,∞]内の整数を表し、好ましくは閉区間[8,∞]内の整数を表す。ここで、前記記号nは、下限が5または8の整数を表してもよいし、下限が10または20の整数を表してもよい。前記記号nで表される整数の上限としては、∞であってもよく、20000、10000、5000、1000、500、200、100または50であってもよい。
【0065】
本発明の一態様によれば、前記記号nで表される整数の値が大きいほど、前記グラジエント共重合体に含まれるポリマー成分の種類が多くなる。測定の便宜上、前記n種類のポリマー成分を含んでいる前記グラジエント共重合体の状態は、ゲル浸透クロマトグラフィ分離法で確認および識別してもよい(本明細書の後述する記載内容を参照)。この場合、前記ポリマー成分の種類数nは、前記ゲル浸透クロマトグラフィ分離法によって得られる溶出液または画分の数nに相当する。したがって、前記記号nで表される整数の値が大きいほど、前記グラジエント共重合体に含まれるポリマー成分の種類が多くなるとともに、前記ゲル浸透クロマトグラフィ分離法によって得られる溶出液または画分の数も多くなる。記号nで表される整数の値が十分に大きくなり、例えば、その上限値が∞に達したとする。これは、前記n種類のポリマー成分同士の構造および/または組成上の違い(特に、側鎖中の炭素数の平均Xの違い)が、連続的変化または滑らかな無段階変化と呼べる程度に達したことを意味する(もちろん、前記上限値が、数値上で実際に∞に達しているのではない)。同じくこのことは、前記ゲル浸透クロマトグラフィ分離法による溶出液または画分が、連続的分離または滑らかな無段階分離となることも意味する。例を挙げて説明すると、n=∞の場合、側鎖中の炭素数の平均の数値は、XからXに亘って、有限で離散的な増加系列を示さずに、連続的に増加する(特に、無段階増加または平滑増加)。
【0066】
本発明の一態様によれば、前記式(II)で示されるように、前記側鎖中の炭素数の平均Xの数値は、XからXに亘って逓増変化する(例えば、段階的な逓増変化または線形な逓増変化)。本発明において、前記逓増変化における任意の隣接する2つのX同士の間の逓増幅(段階幅とも称する)は特に限定されず、効果的な逓増に達していると当業者が認められる程度であればよい。また、前記逓増変化は、均等段階幅の逓増変化であってもよく、不均等段階幅の逓増変化であってもよく、特に限定されない。前記段階幅の例としては、通常、0.01~4.00の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.05~1.5の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0067】
本発明の一態様によれば、前記Xは、前記逓増変化全体における起点および最小値を表す。例えば、前記Xは、6.5~12.5の範囲内の任意の数値であってもよいし、7.8~12.0の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。また、前記Xは、前記逓増変化全体における終点および最大値を表す。例えば、前記Xは、13.8~19.5の範囲内の任意の数値であってもよいし、14.5~18.2の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0068】
本発明の一態様によれば、前記n種類のポリマー成分(または前記グラジエント共重合体)の総重量に占める、第i種類目のポリマー成分の重量百分率(以下、組成比と略記する場合がある)をYとすると(記号iは1~nの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立する。
<Y<…<Y>…>Yn-1>Y (III)。
【0069】
本発明の一態様によれば、前記式(III)中、記号jは、閉区間[(n+1)/4,3(n+1)/4]内の整数を表し、好ましくは閉区間[(n+1)/3,2(n+1)/3]内の整数を表し、より好ましくは閉区間[2(n+1)/5,3(n+1)/5]内の整数を表す。また、Y+Y+...+Y+...+Yn-1+Y=100%である。
【0070】
本発明の一態様によれば、前記式(III)で示されるように、前記組成比Yの数値は、YからYに亘って逓増変化する(例えば、段階的な逓増変化または線形な逓増変化)。本発明において、前記逓増変化における任意の隣接する2つのY同士の間の逓増幅(段階幅とも称する)は特に限定されず、効果的な逓増に達していると当業者が認められる程度であればよい。また、前記逓増変化は、均等段階幅の逓増変化であってもよく、不均等段階幅の逓増変化であってもよく、特に限定されない。前記段階幅の例としては、通常、0.05%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~5%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0071】
本発明の一態様によれば、前記Yは、前記逓増変化全体における起点および最小値を表す。例えば、前記Yは、0.01%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~10%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。また、前記Yは、前記逓増変化全体における終点および最大値を表す。例えば、前記Yは、20%~75%の範囲内の任意の数値であってもよいし、25%~65%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0072】
本発明の一態様によれば、前記式(III)で示されるように、前記組成比Yの数値は、YからYに亘って逓減変化する(例えば、段階的な逓減変化または線形な逓減変化)。本発明において、前記逓減変化における任意の隣接する2つのY同士の間の逓減幅(段階幅とも称する)は特に限定されず、効果的な逓減に達していると当業者が認められる程度であればよい。また、前記逓減変化は、均等段階幅の逓減変化であってもよく、不均等段階幅の逓減変化であってもよく、特に限定されない。前記段階幅の例としては、通常、0.05%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~5%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0073】
本発明の一態様によれば、前記Yは、本明細書で前述したように、前記逓減変化全体における起点および最大値を表す。例えば、前記Yは、20%~75%の範囲内の任意の数値であってもよいし、25%~65%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。また、前記Yは、前記逓減変化全体における終点および最小値を表す。例えば、前記Yは、0.01%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~10%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0074】
本発明の一態様によれば、前記Yおよび前記Yは、同じであってもよく、異なってもよく、特に限定されない。
【0075】
本発明の一態様によれば、前記式(III)で示されるように、前記組成比Yの数値の分布は、YからYに亘って両側が低く中央が高い状態を示し、ガウス分布にかなり類似している。したがって、本発明の一実施形態によれば、理想状態において、組成比Yの数値を縦軸に取り、側鎖中の炭素数の平均Xの数値を横軸に取ると、ポリマー成分のこれら2つのパラメータの関係間の関係の変化は、第1種類目のポリマー成分から第n種類目のポリマー成分にかけて、ガウス分布に一致するか、または実質的に一致する(例えば、式(IV)で示される分布)。ここで、「実質的に一致する」とは、両者の関係が前記式(IV)で示されるガウス分布から僅かに偏っているが、偏りの程度が当業者の許容範囲内にあることを指す。
【0076】
【数1】
【0077】
本発明の一態様によれば、前記式(IV)中、記号μは、開区間(12.5,14.2)内の任意の数値を表し、好ましくは開区間(12.6,13.8)内の任意の数値を表す。記号σは、開区間(0.5,2)内の任意の数値を表す。また、πは円周率であり、通常、3.141592654または3.14である。eは、ネイピア数であり、通常、2.718281828または2.72である。
【0078】
本発明の一態様によれば、前記グラジエント共重合体は、後述する1種類以上の製造方法を用いて製造してもよい。なお、明細書のコンパクト化を図るため、本明細書の以下の記載において、製造方法について詳細にまたは具体的に説明されていない内容については、本分野において既知の技術を参照されたい(例えば、反応器の種類、各添加剤の使用形態、原料の前処理、反応生成物の分離等に関する内容)。
【0079】
本発明の一態様によれば、前記製造方法は、重合反応系内に少なくとも2種類の単量体を投入して、当該少なくとも2種類の単量体の付加共重合反応を行うステップを含む。以下、該製造方法を製造方法Aと称する場合がある。
【0080】
本発明の一態様によれば、少なくとも2種類の単量体とは、少なくとも2種類の単量体化合物を指してもよいし、少なくとも2種類の単量体混合物(各混合物は、2種類以上の単量体化合物を含有する)を指してもよいし、これらの組み合わせを指してもよい。したがって、前記少なくとも2種類の単量体のうちの1種類以上は、単量体混合物として存在している場合がある。このような事情であるので、本発明に関して特段の説明がない限り、用語「単量体」の定義には、単量体化合物および単量体混合物が包含される。
【0081】
本発明の一態様によれば、前記少なくとも2種類の単量体(具体例としては、2種類の単量体)が、前記重合反応系内に投入される。単量体の投入方法の例としては、通常、前記2種類の単量体を前記重合反応系内に同時に投入する方法(すなわち、前記重合反応系内への前記2種類の単量体の投入が、同時に開始され、同時に停止される方法)が挙げられる。単量体の投入方法の更なる例としては、前記重合反応系内に、前記2種類の単量体を所定の比率で別々に投入してもよいし、2種類の単量体を所定の比率で混合した単量体混合物を投入してもよい(本発明に具体的な限定を与えるものではない)。ここで、前記投入は、通常は連続投入であるが、状況に応じて所定の時間間隔で段階的または断続的に投入してもよい。好ましくは、連続投入である。また、前記単量体の種類が2種類を超える場合には(例えば3種類以上の場合)、これら単量体を、2種類の単量体の場合に類似する投入方法で前記重合反応系内に投入してもよい。具体例を挙げて説明する。前記単量体の種類が2種類を超え、例えば単量体A、単量体Bおよび単量体Cの3種類であるとき、2種類の単量体の場合に類似する前記投入方法で、各単量体を投入してもよい。それ以外にも、以下のような投入方法がある。すなわち、単量体Aおよび単量体Bを前記重合反応系内に同時に投入し始め、その後特定の時点において、単量体Bの投入を停止すると共に単量体Cの投入を開始し、最後には投入単量体Aおよび単量体Cの投入を同時に停止する。もちろん、この3種類の単量体は、(i)3つの原料として別々で投入してもよいし、(ii)それらを混合した単量体混合物を1つの原料として投入してもよいし、(iii)何れか2種類を混合した単量体混合物を、残りの1種類の単量体と共に、2つの原料として別々で投入してもよい(本発明に具体的な限定を与えるものではない)。更に、前記単量体の種類が3種類を超える場合、これら単量体を、3種類の単量体の場合に類似する投入方法で前記重合反応系内に投入してもよく、当業者が想到可能な他の様々な単量体投入方法で投入してもよく、特に限定されない。具体例を挙げて説明すると、前記単量体の種類が、例えば単量体A、単量体B、単量体Cおよび単量体Dを含む4種類である場合、考えられる他の単量体投入方法としては、以下のものがある。すなわち、単量体Aおよび単量体Bを前記重合反応系内に同時に投入し始め、その後特定の時点において、単量体Aおよび単量体Bの投入を停止すると共に単量体Cおよび単量体Dの投入を開始し、最後には単量体Cおよび単量体Dの投入を同時に停止する。
【0082】
本発明の一態様によれば、前記付加共重合反応の実施を容易にするために、前記少なくとも2種類の単量体は、原料混合物の形態で前記重合反応系内に投入される場合がある。ここで、前記原料混合物は、通常、前記少なくとも2種類の単量体に加えて、付加共重合反応に際して用いられる1種類以上の添加剤を必要に応じて更に含んでもよい(溶媒、希釈剤、開始剤、分子量調整剤、重合触媒等)。これら添加剤の種類および使用量は、従来技術における当該基準を参考すればよく、本発明において特に限定されない。
【0083】
本発明の一態様によれば、前記重合反応系内にて、前記少なくとも2種類の単量体の炭素-炭素二重結合を利用した付加共重合反応(特に、ラジカル付加共重合反応)を行うことにより、グラジエント共重合体を得ることができる。当該グラジエント共重合体は、本明細書において前述した本発明の各態様に係るグラジエント共重合体を含んでもよい。
【0084】
本発明の一態様によれば、前記付加共重合反応の反応温度は、通常は50℃~180℃であり、好ましくは55℃~165℃であり、より好ましくは60℃~150℃である。
【0085】
本発明の一態様によれば、前記付加共重合反応の反応時間は、通常は1時間~24時間であり、好ましくは1.5時間~20時間である。
【0086】
本発明の一態様によれば、前記付加共重合反応は任意の方法で行ってよい(バルク重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等)。好ましくは、溶液重合法で行う。
【0087】
本発明の一態様によれば、単量体の転化率を向上させる目的で、単量体の投入完了後、前記付加共重合反応を0.5~2時間進行させる場合がある。あるいは、必要に応じて開始剤、重合触媒または希釈剤等を追加した後、前記重合反応系の温度を100~150℃まで昇温してから、反応を0.5~5時間進行させる場合がある。なお、このような反応方法は当業者にとって既知である。
【0088】
本発明の一態様によれば、前記開始剤としては、本分野で通常に使用される開始剤(特に、ラジカル重合開始剤)を用いてもよく、特に限定されない。前記開始剤の具体例としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤およびレドックス系開始剤が挙げられる。前記アゾ系開始剤の具体例としては、アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、アゾジカーボンアミド、アゾビスイソプロピルイミダゾリン塩酸塩、アゾイソブチルシアノカルボアミド、アゾビスシクロへキシルカルボニトリル、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソプロピルイミダゾリン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル、およびアゾビスイソへプタンニトリルが挙げられる。前記過酸化物系開始剤の具体例としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルベンゾイルペルオキシド、ペルオキシピバル酸t-ブチル、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ペルオキシ二炭酸ジイソプロピルが挙げられる。前記レドックス系開始剤の具体例としては、硫酸塩-亜硫酸塩、過硫酸塩-チオ尿素、過硫酸塩-有機塩、および、過硫酸塩-脂肪アミンが挙げられる。これら開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、本発明において、前記開始剤の使用量は特に限定されず、本分野で通常に用いられる既知の量を適用可能である。例えば、前記付加共重合反応の全体で用いる前記開始剤の合計使用量は、単量体の合計使用量を100重量部として、通常は0.01~2.5重量部であり、好ましくは0.05~2重量部であり、より好ましくは0.1~1.5重量部である。
【0089】
本発明の一態様によれば、前記希釈剤は、本分野で通常に使用される希釈剤(特に、希釈油)を用いてもよく、特に限定されない。前記希釈油の具体例としては、ディーゼル油、灯油、溶剤油、芳香族炭化水素系溶剤、白油、鉱物系ベースオイルまたは合成油が挙げられ、白油、鉱物系ベースオイルまたは合成油が好ましく、鉱物系ベースオイルがより好ましい。前記希釈油は、市販のものであってもよい(例えば、Ssangyong社から購入できる型番100Nであってもよい)。前記希釈油は、前記付加共重合反応の終了後に、前記グラジエント共重合体から分離してもよく、分離しなくてもよい。これら希釈油は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、本発明において、前記希釈油の使用量は特に限定されず、本分野で通常に用いられる既知の量を適用可能である。例えば、前記付加共重合反応の全体で用いる前記希釈油の合計使用量は、単量体の合計使用量を100重量部として、通常は10~150重量部であり、好ましくは50~100重量部であり、より好ましくは60~80重量部である。
【0090】
本発明の一態様によれば、前記分子量調整剤は、本分野で通常に使用される分子量調整剤を用いてもよく、特に限定されない。前記分子量調整剤の具体例としては、ドデシルメルカプタンまたは2-メルカプトエタノールが挙げられる。これら分子量調整剤は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、本発明において、前記分子量調整剤の使用量は特に限定されず、本分野で通常に用いられる既知の量を適用可能である。
【0091】
本発明の一態様によれば、前記重合触媒は、本分野で通常に使用される重合触媒を用いてもよく、特に限定されない。前記重合触媒の具体例としては、ラジカル重合触媒、特にチーグラー=ナッタ触媒が挙げられる。これら重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、本発明において、前記重合触媒の使用量は特に限定されず、本分野で通常に用いられる既知の量を適用可能である。
【0092】
本発明の一態様によれば、前記付加共重合反応は、通常、不活性雰囲気下で行われる。ここで言う不活性雰囲気とは、反応物および生成物と化学的に反応しない非活性な気体の雰囲気を指す。前記非活性ガスとしては、例えば、窒素ガスおよび不活性ガス等が挙げられる。前記不活性雰囲気を維持する方法としては、例えば、前記重合反応系内に前記不活性ガスを継続的に導入する方法が挙げられる。
【0093】
本発明の一態様によれば、前記少なくとも2種類の単量体は、それぞれ独立に、式(I)で示される化合物を表す。本明細書において前述したとおり、前記少なくとも2種類の単量体のうちの1種類以上は、単量体混合物として存在している場合がある。この場合、本発明の当該態様によれば、単量体混合物に含まれる2種類以上の単量体化合物は、それぞれ独立に、式(I)で示される化合物を表す。
【0094】
【化6】
【0095】
本発明の一態様によれば、式(I)中、R基は、Hまたは
【0096】
【化7】
【0097】
を表し、好ましくはHを表す。ここで、R’基は、HまたはR基を表し、好ましくはR基を表す。
【0098】
本発明の一態様によれば、式(I)中、R基は、HまたはC1~4の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し、好ましくはHまたはメチル基を表す。
【0099】
本発明の一態様によれば、式(I)中、記号aは、0または1を表し、好ましくは1を表す。
【0100】
本発明の一態様によれば、式(I)中、R基は、C~C30の直鎖または分枝アルキル基を表し、好ましくはC~C24の直鎖または分枝アルキル基を表し、より好ましくはC~C20の直鎖アルキル基またはC~C24の直鎖アルキル基を表す。
【0101】
本発明の一態様によれば、好ましくは、R基がC10~C18の直鎖もしくは分枝アルキル基であり、前記式(I)で示される化合物が全単量体の使用量(前記少なくとも2種類の単量体の合計使用量)に占める割合(モル比)は、通常は40%~95%であり、好ましくは55%~95%である。
【0102】
本発明の一態様によれば、前記式(I)で示される化合物の具体例としては、フマル酸とC~C30の直鎖または分枝アルキルとのモノエステル、フマル酸とC~C30の直鎖または分枝アルキルとのジエステル、C~C30の直鎖または分枝α-オレフィン、および(メタ)アクリル酸とC~C30の直鎖または分枝アルキルとのエステル、が挙げられる。より具体的な例としては、フマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのモノエステル、フマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのジエステル、C~C20の直鎖または分枝α-オレフィン、および(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステル、が挙げられる。更に具体的な例としては、フマル酸とC~C24の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC~C24の直鎖アルキルとのジエステル、C~C20の直鎖α-オレフィン、および(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖アルキルとのエステル、が挙げられる。これら単量体は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0103】
本発明の一態様によれば、前記フマル酸とC~C24の直鎖もしくは分枝アルキルとのモノエステルの具体例として、フマル酸とCの直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC10の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC12の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC14の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC16の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC18の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC20の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC22の直鎖アルキルとのモノエステル、およびフマル酸とC24の直鎖アルキルとのモノエステル、が挙げられる。これらフマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのモノエステルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0104】
本発明の一態様によれば、前記フマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのジエステルの具体例として、フマル酸とCの直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC10の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC12の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC14の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC16の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC18の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC20の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC22の直鎖アルキルとのジエステル、およびフマル酸とC24の直鎖アルキルとのジエステル、が挙げられる。これらフマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのジエステルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0105】
本発明の一態様によれば、前記C~C20の直鎖または分枝α-オレフィンの具体例としては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセン、が挙げられる。これらC~C20の直鎖または分枝α-オレフィンは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0106】
本発明の一態様によれば、前記(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルの具体例として、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレート、が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0107】
本発明の一態様によれば、前記(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルの例として、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC18直鎖アルキル(メタ)アクリレートのうち、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。あるいは、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートのうち2つ以上を組み合わせて用いてもよい。あるいは、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。好ましくは、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。同じく好ましくは、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。同じく好ましくは、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。
【0108】
本発明の一態様によれば、前記式(I)で示される化合物は、市販から入手してもよく、従来の様々な既知の方法で製造してもよい。例を挙げると、前記(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルは、(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルカノールとのエステル化反応により得てもよく、メチル(メタ)アクリレートとC~C20の直鎖または分枝アルカノールとのエステル交換反応により得てもよく、特に限定されない。
【0109】
本発明の一態様によれば、(i)前記少なくとも2種類の単量体が前記重合反応系内に投入される開始時刻をtとし、(ii)終了時刻をtとし、(iii)前記少なくとも2種類の単量体の単量体投入時間をtとする(t=t-t)。単量体の転化率を可能な限り向上させるためには、あるいは前記少なくとも2種類の単量体の投入方法を考慮すると、前記単量体投入時間は、通常、前記共重合反応の反応時間よりも短くする必要がある。例を挙げると、前記単量体投入時間は、通常は0.5時間~12時間であり、好ましくは1時間~10時間である。
【0110】
本発明の一態様によれば、前記単量体投入時間tをm等分し、且つ、任意の単量体投入時刻tにおける前記少なくとも2種類の単量体の側鎖中の炭素数の平均をXとすると、以下の関係式が成立する。換言すれば、任意の単量体投入時刻tにおいて前記重合反応系内に投入される前記少なくとも2種類の単量体の間の相対比率は、当該少なくとも2種類の単量体から当該相対比率で構成された(想定)混合物の核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均Xが、以下の関係式を満たすような相対比率である。ここで、記号xは0~mの任意の整数を表す。
<X<…<Xm-1<X (V)。
【0111】
本発明の一態様によれば、少なくとも2種類の単量体の側鎖中の炭素数の平均Xとは、本明細書において前述したとおり、前記少なくとも2種類の単量体から所定の比率で構成された(想定)混合物の側鎖中の炭素数の平均を指す。なお、所定の比率とは、任意の単量体投入時刻tにおいて前記重合反応系内に投入される前記少なくとも2種類の単量体の間の、相対比率を指す。
【0112】
本発明の一態様によれば、前記単量体投入時刻tにおいて前記重合反応系内に投入される前記少なくとも2種類の単量体の間の相対比率は、特に限定されない。前記想定混合物の側鎖中の炭素数の平均Xが、前記式(V)の関係を満たす限り、前記相対比率は、任意の数値であってよい。簡単な例を挙げて説明する。前記少なくとも2種類の単量体が、単量体Aおよび単量体Bであって、側鎖中の炭素数の平均は単量体Aの方が単量体Bよりも大きいと仮定する。このとき、前記2種類の単量体が前記重合反応系内に投入される開始時刻tから終了時刻tに亘って、前記式(V)の関係が満たされるように、前記単量体Bの投入量を維持しながら前記単量体Aの投入量を徐々に増やしてもよい。あるいは、前記単量体Aの投入量を維持しながら前記単量体Bの投入量を徐々に減らしてもよい。あるいは、前記単量体Bの投入量を前記単量体Aの投入量に対して相対的に減少させる方法で、両者の投入量を同時に変更してもよい。
【0113】
本発明の一態様によれば、手動制御またはコンピュータプログラムによる自動制御によって単量体Aおよび単量体Bの投入量を制御して、単量体Aの投入量と単量体Bの投入量との比率を連続的に変化させ、合計投入量を継続的に変化させてもよい。簡単な例を挙げて説明する。例えば、重合反応の開始時刻tから終了時刻tに亘って、前記単量体Bの投入量を維持しながら、m個の制御ポイントを設けて単量体Aの投入比率を断続的かつ規則的に手動で制御し続け、これによって、前記単量体Bの投入量が前記単量体Aの投入量に対して断続的かつ相対的に減少するようにしてもよい。あるいは、当業者が容易に開発・運用できる制御プログラムを設定して、単量体Aの投入比率を連続的に調節して、式(V)の関係が満たさせる。
【0114】
本発明の一態様によれば、前記記号mは、閉区間[5,∞]内の整数を表し、好ましくは閉区間[8,∞]内の整数を表す。ここで、前記記号mは整数を表し、当該整数の下限は5または8であってもよく、10または20であってもよい。また、前記記号mで表される整数の上限は、∞であってもよく、20000、10000、5000、1000、500、200、100または50であってもよい。
【0115】
本発明の一態様によれば、前記記号mで表される整数の値が大きいほど、隣接する2つの単量体投入時刻の変化がより連続的になり、また、当該隣接する2つの単量体投入時刻における側鎖中の炭素数の平均の変化もより連続的になる。前記記号mで表される整数の値が十分に大きくなり、例えばその上限値が∞に達すると、このことは、前記単量体投入時刻に沿って連続的に変化すること、すなわち、前記側鎖中の炭素数の平均が連続的に変化することまたは滑らかに無段階変化することを意味する(もちろん、前記上限値が数値上で実際に∞に達しているのではない)。例を挙げて説明すると、m=∞の場合、側鎖中の炭素数の平均の数値は、XからXに亘って、有限で離散的な増加系列を示さずに、連続的に増加する(特に、無段階増加または平滑増加)。
【0116】
本発明の一態様によれば、前記式(V)で示されるように、前記側鎖中の炭素数の平均Xの数値は、XからXに亘って逓増変化する(例えば、段階的な逓増変化または線形な逓増変化)。本発明において、前記逓増変化における任意の隣接する2つのX同士の間の逓増幅(段階幅とも称する)は特に限定されず、効果的な逓増に達していると当業者が認められる程度であればよい。また、前記逓増変化は、均等段階幅の逓増変化であってもよく、不均等段階幅の逓増変化であってもよく、特に限定されない。前記段階幅の例としては、通常、0.01~4.00の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.05~1.5の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0117】
本発明の一態様によれば、前記Xは、前記重合反応系内への前記少なくとも2種類の単量体の投入の開始時刻tにおける、当該少なくとも2種類の単量体の側鎖中の炭素数の平均を表している。また、前記Xは、前記逓増変化全体における起点および最小値を表し、例えば、6.5~12.5の範囲内の任意の数値であってもよいし、7.8~12.0の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。前記Xは、前記重合反応系内への前記少なくとも2種類の単量体の投入の終了時刻tにおける、当該少なくとも2種類の単量体の側鎖中の炭素数の平均を表している。また、前記Xは、前記逓増変化全体における終点および最大値を表し、例えば、13.8~19.5の範囲内の任意の数値であってもよいし、14.5~18.2の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0118】
本発明の一態様によれば、(i)前記単量体の投入終了時刻tにおいて、前記単量体投入時間tの間に前記重合反応系内に投入される前記少なくとも2種類の単量体の累計投入量の和をGとし、(ii)任意の単量体投入時刻tにおいて、前記重合反応系内に投入される前記少なくとも2種類の単量体の投入量の和をGとすると(記号xは0~mの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立する。なお、以下、比率G/Gを投入量比と略記する場合がある。
/G<G/G<…<G/G>…>Gm-1/G>G/G (VI)。
【0119】
本発明の一態様によれば、前記式(VI)中、記号jは、閉区間[m/4,3m/4]内の整数を表し、好ましくは閉区間[m/3,2m/3]内の整数を表し、より好ましくは閉区間[2m/5,3m/5]内の整数を表す。また、G+G+…+G+…+Gm-1+G=Gである。
【0120】
本発明の一態様によれば、任意の単量体投入時刻tにおいて前記重合反応系内に投入される前記少なくとも2種類の単量体を、q種類の単量体と表現する。なお、記号qは、前記製造方法Aに関わる単量体の種類数を表し、例えば、2~100の任意の整数であってもよいし、2~20の任意の整数であってもよいし、特に2~5の任意の整数であってもよい。ここで、各々の単量体が前記単量体投入時刻tにおいて前記重合反応系内に投入される単独投入量(絶対値)を、gとする(記号sは1~qの任意の整数を表す)。このとき、これら単独投入量の総和は、前記Gに等しい。また、これら単独投入量同士の間の比率は、前記単量体投入時刻tにおいて前記重合反応系内に投入される前記少なくとも2種類の単量体の間の相対比率に等しい。本明細書において前述したとおり、任意の単量体投入時刻tにおいて、前記想定混合物の側鎖中の炭素数の平均Xが、前記式(V)の関係を満たすことが要求される。なお、要求されるこの相対比率は、前記少なくとも2種類の単量体の単独投入量の相対値に基づくものである。本発明の前記態様によれば、前記少なくとも2種類の単量体の各々の単独投入量の絶対値は、特に限定されない。その総和が前記Gとなり、且つ、前記Gまたは前記G/Gが前記式(VI)の関係を満たせば十分である。簡単な例を挙げて説明する。前記少なくとも2種類の単量体が、単量体Aおよび単量体Bであって、側鎖中の炭素数の平均は単量体Aの方が単量体Bよりも大きいと仮定する。このとき、2種類の単量体が前記重合反応系内に投入される開始時刻tから時刻tに亘って、前記単独投入量が前記式(V)の関係および前記式(VI)の関係が同時に満たされるように、前記単量体Bの投入量を維持しながら、前記単量体Aの投入量を徐々に増やす。その後、前記時刻tから単量体の投入の終了時刻tに亘って、前記単量体Bの投入量を徐々に減らしながら、前記単量体Aの投入量を維持する。
【0121】
本発明の一態様によれば、前記式(VI)で示されるように、前記投入量比の数値は、G/GからG/Gに亘って逓増変化する(例えば、段階的な逓増変化または線形な逓増変化)。本発明において、前記逓増変化における任意の隣接する2つの数値同士の間の逓増幅(段階幅とも称する)は特に限定されず、効果的な逓増に達していると当業者が認められる程度であればよい。また、前記逓増変化は、均等段階幅の逓増変化であってもよく、不均等段階幅の逓増変化であってもよく、特に限定されない。前記段階幅の例としては、通常、0.05%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~5%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0122】
本発明の一態様によれば、前記投入量比G/Gは、前記重合反応系内への前記少なくとも2種類の単量体の投入の開始時刻tにおける当該少なくとも2種類の単量体の(瞬間)合計投入量の、前記単量体投入時間t全体に亘る前記少なくとも2種類の単量体の総投入量Gに対する割合を表す。また、前記投入量比G/Gは、前記逓増変化全体における起点および最小値を表し、例えば、0.01%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、または0.1%~10%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。前記投入量比G/Gは、前記単量体投入時刻tにおける前記少なくとも2種類の単量体の(瞬間)合計投入量の、前記総投入量Gに対する割合を表す。また、前記投入量比G/Gは、前記逓増変化全体における終点および最大値を表し、例えば、20%~75%の範囲内の任意の数値であってもよいし、または25%~65%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0123】
本発明の一態様によれば、前記式(VI)で示されるように、前記投入量比の数値は、G/GからG/Gに亘って逓減変化する(例えば、段階的な逓減変化または線形な逓減変化)。本発明において、前記逓減変化における任意の隣接する2つの数値同士の間の逓減幅(段階幅とも称する)は特に限定されず、効果的な逓減に達していると当業者が認められる程度であればよい。また、前記逓減変化は、均等段階幅の逓減変化であってもよく、不均等段階幅の逓減変化であってもよく、特に限定されない。前記段階幅の例としては、通常、0.05%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~5%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0124】
本発明の一態様によれば、前記投入量比G/Gは、前記単量体投入時刻tにおける前記少なくとも2種類の単量体の(瞬間)合計投入量の、前記総投入量Gに対する割合を表す。また、前記投入量比G/Gは、前記逓減変化全体における起点および最大値を表し、例えば、20%~75%の範囲内の任意の数値であってもよく、25%~65%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。前記投入量比G/Gは、前記重合反応系内への前記少なくとも2種類の単量体の投入の終了時刻tにおける当該少なくとも2種類の単量体の(瞬間)合計投入量の、前記総投入量Gに対する割合を表す。また、前記投入量比G/Gは、前記逓減変化全体における終点および最小値を表し、例えば、0.01%~20%の範囲内の任意の数値であってもよく、または0.1%~10%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0125】
本発明の一態様によれば、前記投入量比G/Gおよび前記投入量比G/Gは、同じであってもよく、異なってもよく、特に限定されない。
【0126】
本発明の一態様によれば、前記式(VI)で示されるように、前記投入量比の数値の分布は、G/GからG/Gに亘って両側が低く中央が高い状態を示し、ガウス分布にかなり類似している。したがって、本発明の一実施形態によれば、理想的状態において、前記投入量比の数値を縦軸に取り、側鎖中の炭素数の平均Xの数値を横軸に取ると、前記少なくとも2種類の単量体のこれら2つのパラメータの関係間の関係の変化は、前記重合反応系内への当該少なくとも2種類の単量体の投入開始時刻tから投入終了時刻tにかけて、ガウス分布に一致するか、または実質的に一致する(例えば、式(VII)で示される分布)。ここで、「実質的に一致する」とは、両者の関係が前記式(VII)で示されるガウス分布から僅かに偏っているが、偏りの程度が当業者の許容範囲内にあることを指す。
【0127】
【数2】
【0128】
本発明の一態様によれば、前記式(VII)中、記号xは、0~mの任意の整数を表す。記号μは、開区間(12.5,14.2)内の任意の数値を表し、好ましくは開区間(12.6,13.8)内の任意の数値を表す。記号σは、開区間(0.5,2)内の任意の数値を表す。また、πは円周率であり、通常、3.141592654または3.14である。eは、ネイピア数であり、通常、2.718281828または2.72である。
【0129】
一態様によれば、本発明は共重合反応の制御方法にも関する。該共重合反応は、少なくとも2種類の単量体を重合反応系に投入して発生する付加共重合反応(特に、ラジカル付加共重合反応)である。前記制御方法は、前記製造方法Aの実施を制御可能にする(あるいは、特別に前記製造方法Aの実施を制御する)ものである。それゆえ、以下に明確に記載されている内容を除き、前記制御方法に関するいかなる態様、特徴、範囲または情報等の内容は、前記製造方法Aの構成がそのまま適用可能である。よって、その詳細は省略する。
【0130】
本発明の一態様によれば、前記制御方法は、任意の単量体投入時刻tにおいて、前記重合反応系内に投入する前記少なくとも2種類の単量体の間の相対比率を調節して、当該少なくとも2種類の単量体から当該相対比率で構成された(想定)混合物の核磁気共鳴法に基づく側鎖中の炭素数の平均Xが、以下の関係式を満たすようにするステップを含む。ここで、記号xは0~mの任意の整数を表す。
<X<…<Xm-1<X (V)。
【0131】
本発明の一態様によれば、前記制御方法は、前記単量体投入時刻tにおいて前記重合反応系内に投入される前記少なくとも2種類の単量体の投入量の和Gを調節して、前記比率G/Gが以下の関係式を満たすようにするステップを更に含んでもよい。
/G<G/G<…<G/G>…>Gm-1/G>G/G (VI)。
【0132】
本発明の一態様によれば、前記の調節ステップまたは前記の制御方法は、本分野における任意の既知手法で実現してもよい。具体例としては、流量制御弁とPLC制御回路との組み合わせが挙げられるが、特に限定されない。
【0133】
本発明の一態様によれば、前記グラジエント共重合体の製造方法は、p種類のポリマー成分を混合するステップを含む。以下、該製造方法を製造方法Bと称する場合がある。
【0134】
本発明の一態様によれば、前記p種類のポリマー成分は予め製造されている。なお、前記p種類のポリマー成分は、本分野における任意の公知の方法で製造してもよく、本明細書において前述した製造方法Aで製造してもよく、市販から入手してもよく、特に限定されない。任意の従来公知の手法で前記p種類のポリマー成分を混合することにより、グラジエント共重合体を得ることができる。当該グラジエント共重合体は、本明細書において前述した本発明の各態様に係るグラジエント共重合体を含む。
【0135】
本発明の一態様によれば、前記p種類のポリマー成分は、それぞれ独立に、式(I)で示される単量体の付加重合体(以下、重合体Bと称する)、特にラジカル付加重合体を表す。ここで、前記重合体Bは、前記式(I)で示される1種類の単量体のホモポリマーであり得るし、前記式(I)で示される2種類以上の単量体の共重合体でもあり得る。このような共重合体の具体例としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、または交互共重合体等が挙げられる。また、2種類以上の当該重合体Bの混合物を、前記ポリマー成分として使用してもよい。この観点から、前記p種類のポリマー成分のうちの1種類以上とは、2種類以上の前記重合体Bの混合物であってもよい。
【0136】
本発明の前記の態様によれば、前記重合体Bまたは前記p種類のポリマー成分は、それぞれ独立に、(i)式(I-1)で示される1種類以上構造単位(以下、「特定構造単位」と略記する場合がある)を含むか、あるいは、(ii)前記特定構造単位の1種類以上から実質的になる。なお、前記式(I-1)で示される構造単位は、前記式(I)で示される単量体に由来していることは、明白である。ここで言う「実質的に」とは、モル比で、全量の85%以上を占めること、好ましくは90%以上を占めること、より好ましくは95%以上を占めることを意味する。これら重合体構造の残部は、前記特定構造単位以外の他の構造単位または末端基で有り得る。通常、残部は末端基であり、具体例としては開始剤の残基等である。
【0137】
【化8】
【0138】
本発明の一態様によれば、前記p種類のポリマー成分の数平均分子量Mnは、それぞれ独立に、1万~100万であり、好ましくは1万~50万であり、より好ましくは1万~10万である。
【0139】
本発明の一態様によれば、前記p種類のポリマー成分の分子量分布Mw/Mnは、それぞれ独立に、1.8~3.5であり、好ましくは1.9~3.3である。
【0140】
【化9】
【0141】
本発明の一態様によれば、式(I)または式(I-1)中、R基は、Hまたは
【0142】
【化10】
【0143】
を表し、好ましくはHを表す。ここで、R’基は、HまたはR基を表し、好ましくはR基を表す。
【0144】
本発明の一態様によれば、式(I)または式(I-1)中、R基は、HまたはC1~4の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し、好ましくはHまたはメチル基を表す。
【0145】
本発明の一態様によれば、式(I)または式(I-1)中、記号aは、0または1を表し、好ましくは1を表す。
【0146】
本発明の一態様によれば、式(I)または式(I-1)中、R基は、C~C30の直鎖または分枝アルキル基を表し、好ましくはC~C24の直鎖または分枝アルキル基を表し、より好ましくはC~C20の直鎖アルキル基またはC~C24の直鎖アルキル基を表す。
【0147】
本発明の一態様によれば、好ましくは、前記重合体Bまたは前記p種類のポリマー成分のうちの1種類以上について、R基はC10~C18の直鎖または分枝アルキル基であり、前記特定構造単位が当該重合体の構造単位の全量に占める割合(モル比)は、通常40%~95%であり、好ましくは55%~95%である。
【0148】
本発明の一態様によれば、前記式(I)で示される単量体の具体例としては、フマル酸とC~C30の直鎖または分枝アルキルとのモノエステル、フマル酸とC~C30の直鎖または分枝アルキルとのジエステル、C~C30の直鎖または分枝α-オレフィン、および(メタ)アクリル酸とC~C30の直鎖または分枝アルキルとのエステル、が挙げられる。より具体的な例としては、フマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのモノエステル、フマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのジエステル、C~C20の直鎖または分枝α-オレフィン、および(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステル、が挙げられる。更に具体的な例としては、フマル酸とC~C24の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC~C24の直鎖アルキルとのジエステル、C~C20の直鎖α-オレフィン、および(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖アルキルとのエステル、が挙げられる。これら単量体は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0149】
本発明の一態様によれば、前記フマル酸とC~C24の直鎖もしくは分枝アルキルとのモノエステルの具体例として、フマル酸とCの直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC10の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC12の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC14の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC16の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC18の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC20の直鎖アルキルとのモノエステル、フマル酸とC22の直鎖アルキルとのモノエステル、およびフマル酸とC24の直鎖アルキルとのモノエステル、が挙げられる。これらフマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのモノエステルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0150】
本発明の一態様によれば、前記フマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのジエステルの具体例として、フマル酸とCの直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC10の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC12の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC14の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC16の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC18の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC20の直鎖アルキルとのジエステル、フマル酸とC22の直鎖アルキルとのジエステル、およびフマル酸とC24の直鎖アルキルとのジエステル、が挙げられる。これらフマル酸とC~C24の直鎖または分枝アルキルとのジエステルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0151】
本発明の一態様によれば、前記C~C20の直鎖または分枝α-オレフィンの具体例としては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセン、が挙げられる。これらC~C20の直鎖または分枝α-オレフィンは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0152】
本発明の一態様によれば、前記(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルの具体例として、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレート、が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0153】
本発明の一態様によれば、前記(メタ)アクリル酸とC~C20の直鎖または分枝アルキルとのエステルの例として、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC18直鎖アルキル(メタ)アクリレートのうち、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。あるいは、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートのうち2つ以上を組み合わせて用いてもよい。あるいは、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。好ましくは、C12直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。同じく好ましくは、C10直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。同じく好ましくは、C直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C14直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C16直鎖アルキル(メタ)アクリレート、C18直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC20直鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。
【0154】
本発明の一態様によれば、第i種類目のポリマー成分について、側鎖中の炭素数の平均をXとすると(記号iは1~pの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立する。なお、以下の関係式から分かるように、前記p種類のポリマー成分同士は、構造および/または組成上で相違している。このような相違は、少なくとも、側鎖中の炭素数の平均が異なっていることに現出する。
<X<…<Xp-1<X (VIII)。
【0155】
本発明の一態様によれば、前記記号pは、5~10000の整数であり、好ましくは8~5000の整数または5~20の整数である。
【0156】
本発明の一態様によれば、前記式(VIII)で示されるように、前記側鎖中の炭素数の平均Xの数値は、XからXに亘って逓増変化する(例えば、段階的な逓増変化または線形な逓増変化)。本発明において、前記逓増変化における任意の隣接する2つのX同士の間の逓増幅(段階幅とも称する)は特に限定されず、効果的な逓増に達していると当業者が認められる程度であればよい。また、前記逓増変化は、均等段階幅の逓増変化であってもよく、不均等段階幅の逓増変化であってもよく、特に限定されない。前記段階幅の例としては、通常、0.01~4.00の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.05~1.5の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0157】
本発明の一態様によれば、前記Xは、前記逓増変化全体における起点および最小値を表す。例えば、前記Xは、6.5~12.5の範囲内の任意の数値であってもよいし、7.8~12.0の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。また、前記Xは、前記逓増変化全体における終点および最大値を表す。例えば、前記Xは、13.8~19.5の範囲内の任意の数値であってもよいし、14.5~18.2の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0158】
本発明の一態様によれば、前記p種類のポリマー成分の総重量に占める、第i種類目のポリマー成分の重量百分率(以下、組成比と略記する場合がある)をYとすると(記号iは1~pの任意の整数を表す)、以下の関係式が成立する。
<Y<…<Y>…>Yp-1>Y (X)。
【0159】
本発明の一態様によれば、前記式(X)中、記号jは、閉区間[(p+1)/4,3(p+1)/4]内の整数を表し、好ましくは閉区間[(p+1)/3,2(p+1)/3]内の整数を表し、より好ましくは閉区間[2(p+1)/5,3(p+1)/5]内の整数を表す。また、Y+Y+...+Y+...+Yp-1+Y=100%である。
【0160】
本発明の一態様によれば、前記式(X)で示されるように、前記組成比Yの数値は、YからYに亘って逓増変化する(例えば、段階的な逓増変化または線形な逓増変化)。本発明において、前記逓増変化における任意の隣接する2つのY同士の間の逓増幅(段階幅とも称する)は特に限定されず、効果的な逓増に達していると当業者が認められる程度であればよい。また、前記逓増変化は、均等段階幅の逓増変化であってもよく、不均等段階幅の逓増変化であってもよく、特に限定されない。前記段階幅の例としては、通常、0.05%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~5%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0161】
本発明の一態様によれば、前記Yは、前記逓増変化全体における起点および最小値を表す。例えば、前記Yは、0.01%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~10%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。また、前記Yは、前記逓増変化全体における終点および最大値を表す。例えば、前記Yは、20%~75%の範囲内の任意の数値であってもよいし、25%~65%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0162】
本発明の一態様によれば、前記式(X)で示されるように、前記組成比Yの数値は、YからYに亘って逓減変化する(例えば、段階的な逓減変化または線形な逓減変化)。本発明において、前記逓減変化における任意の隣接する2つのY同士の間の逓減幅(段階幅とも称する)は特に限定されず、効果的な逓減に達していると当業者が認められる程度であればよい。また、前記逓減変化は、均等段階幅の逓減変化であってもよく、不均等段階幅の逓減変化であってもよく、特に限定されない。前記段階幅の例としては、通常、0.05%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~5%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0163】
本発明の一態様によれば、前記Yは、本明細書で前述したように、前記逓減変化全体における起点および最大値を表す。例えば、前記Yは、20%~75%の範囲内の任意の数値であってもよいし、25%~65%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。また、前記Yは、前記逓減変化全体における終点および最小値を表す。例えば、前記Yは、0.01%~20%の範囲内の任意の数値であってもよいし、0.1%~10%の範囲内の任意の数値であってもよい。但し、本発明はこれに限定されない。
【0164】
本発明の一態様によれば、前記Yおよび前記Yは、同じであってもよく、異なってもよく、特に限定されない。
【0165】
本発明の一態様によれば、前記式(X)で示されるように、前記組成比Yの数値の分布は、YからYに亘って両側が低く中央が高い状態を示し、ガウス分布にかなり類似している。したがって、本発明の一実施形態によれば、理想状態において、組成比Yの数値を縦軸に取り、側鎖中の炭素数の平均Xの数値を横軸に取ると、ポリマー成分のこれら2つのパラメータの関係間の関係の変化は、第1種類目のポリマー成分から第p種類目のポリマー成分にかけて、ガウス分布に一致するか、または実質的に一致する(例えば、式(XI)で示される分布)。ここで、「実質的に一致する」とは、両者の関係が前記式(XI)で示されるガウス分布から僅かに偏っているが、偏りの程度が当業者の許容範囲内にあることを指す。
【0166】
【数3】
【0167】
本発明の一態様によれば、前記式(XI)中、記号μは、開区間(12.5,14.2)内の任意の数値を表し、好ましくは開区間(12.6,13.8)内の任意の数値を表す。記号σは、開区間(0.5,2)内の任意の数値を表す。また、πは円周率であり、通常、3.141592654または3.14である。eは、ネイピア数であり、通常、2.718281828または2.72である。
【0168】
一態様によれば、本発明は更に重合体組成物に関する。ここで、前記重合体組成物は、(i)本明細書において前述した本発明の各態様に係るグラジエント共重合体、または(ii)本明細書において前述した本発明の各態様に係る製造方法によって製造されるグラジエント共重合体、を含む。前記重合体組成物は、目的とする様々な用途、性能または性質等に応じて、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分の例としては、当業者が有用と見做しうる様々な成分が挙げられる(酸化防止剤、潤滑剤、溶剤、希釈剤、フィラー、前記グラジエント共重合体以外の別の重合体、顔料等)。前記その他の成分は、当業者が通常に選択することができる。前記別の重合体の例としては、ポリ(メタ)アクリレートのホモポリマーまたはコポリマー、α-オレフィンのホモポリマーまたはコポリマー、フマル酸エステルのホモポリマーまたはコポリマー、酢酸エチルのホモポリマーまたはコポリマー等が挙げられる。これらその他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0169】
本発明の一態様によれば、前記重合体組成物は、潤滑油用流動点降下剤であってもよい。ここで、前記潤滑油用流動点降下剤は、(i)本明細書において前述した本発明の各態様に係るグラジエント共重合体、または(ii)本明細書において前述した本発明の各態様に係る製造方法によって製造されるグラジエント共重合体、を含む。したがって、本発明はまた、(i)本明細書において前述した本発明の各態様に係るグラジエント共重合体の、潤滑油用流動点降下剤としての使用、または(ii)本明細書において前述した本発明の各態様に係る製造方法によって製造されるグラジエント共重合体の、潤滑油用流動点降下剤としての使用、にも関する。なお、特に強調すべき点として、前記グラジエント共重合体または前記潤滑油用流動点降下剤は、潤滑油の流動点降下効果に優れている。前記潤滑油用流動点降下剤は、目的とする様々な性能、性質等に応じて、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分の例としては、酸化防止剤、潤滑剤、溶剤、希釈剤、前記グラジエント共重合体以外の別の流動点降下剤等が挙げられ、当業者が通常に選択すればよい。これらその他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0170】
一態様によれば、本発明は更に潤滑油組成物に関する。ここで、前記潤滑油組成物は、(i)本明細書において前述した本発明の各態様に係るグラジエント共重合体、本明細書において前述した本発明の各態様に係る製造方法によって製造されるグラジエント共重合体、本明細書において前述した本発明の各態様に係る重合体組成物、または本明細書において前述した本発明の各態様に係る潤滑油用流動点降下剤と、(ii)潤滑油ベースオイルと、を含む。
【0171】
本発明の一態様によれば、前記グラジエント共重合体、前記重合体組成物または前記潤滑油用流動点降下剤の含量(重量比)は、前記グラジエント共重合体を基準に計算すると、前記潤滑油ベースオイル中に、通常は0.01重量%~2重量%であり、好ましくは0.05重量%~1.5重量%であり、より好ましくは0.1重量%~1重量%である。
【0172】
本発明の一態様によれば、前記潤滑油ベースオイルは、様々な物質に由来する潤滑油ベースオイルであってもよい。したがって、前記グラジエント共重合体を潤滑油用流動点硬化剤として用いると、幅広い潤滑油ベースオイルに対して応用できる。前記潤滑油ベースオイルとしては、例えば、API第Iグループの鉱物系ベースオイル、API第II/IIIグループの水素化ベースオイル、または、これらベースオイルを1種類以上含む潤滑油、が挙げられる。また、潤滑油ベースオイルは、前記API第Iグループまたは前記API第II/IIIグループのベースオイルに加え、その他のベースオイルを必要に応じて更に含んでもよい。その他のベースオイルの具体例としては、API第IVグループの合成油、API第Vグループの合成油、またはGTL合成ベースオイルが挙げられる。これら潤滑油ベースオイルは、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0173】
本発明の一態様によれば、前記潤滑油組成物は、更にその他の成分を含んでもよい。前記その他の成分としては、例えば、本分野において潤滑油組成物への添加が許容される様々な添加剤が挙げられる。具体例としては、フェノール系、アミン系または硫黄-リン系の酸化防止剤;カルボン酸塩系、スルホン酸塩系またはアルキル石炭酸塩系の清浄剤;スクシンイミド系の無灰分散剤;ポリエステル系、ポリオレフィン系またはアルキルナフタレン系の流動点降下剤;メタクリレート共重合体系、エチレンプロピレン共重合体系、ポリイソブチレン系または水素化スチレン-ブタジエン共重合体系の粘度指数向上剤;硫黄/リン系の摩擦調整剤;硫黄/リン含有系、ホウ酸含有系の極圧剤;シリコーン系、非シリコーン系の消泡剤等が挙げられる。これら添加剤の種類および使用量は当業者が周知しているため、その説明を省略する。また、これら添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【実施例
【0174】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0175】
以下の実施例および比較例において、各々の共重合体の含量、各々の希釈油の含量、および共重合体における各単量体の含量は、それぞれ、原料の投入量に基づいて算出される。
【0176】
本発明に関して(以下の実施例および比較例を含む)、各測定方法および計算方法は次のように行う。
【0177】
[1.ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分離法]
測定装置:1515型ゲル浸透クロマトグラフィ測定器(Waters, USA製)
検出器:Waters2414示差屈折率検出器
標準物質用の溶媒:クロマトグラフィ用純正テトラヒドロフラン(Acros製)
カラム:異なる孔径のシリカゲルカラム(Waters社から入手)を3本直列に接続
各カラム規格:
(1)Waters Styragel(登録商標)HR 0.5 THF;相対分子量測定範囲1~1000(7.8×300mm)
(2)Waters Styragel(登録商標)HR 1 THF;相対分子量測定範囲100~5000(7.8×300mm)
(3)Waters Styragel(登録商標)HR 3 THF;相対分子量測定範囲5000~600,000(7.8×300mm)。
【0178】
(測定条件)
移動相:テトラヒドロフラン
移動相の流速:1.0mL/分
カラム温度:35℃
検出器温度:35℃
注入量:200μL。
【0179】
(分離手順)
0.02~0.2gの試料を10mLのテトラヒドロフランに溶解し、均一に撹拌して、均一な溶液を得た。その後、前記溶液を前記測定装置にセットし、前記測定条件下でGPC分析した。ゲル浸透クロマトグラムにおけるピーク出現からピーク終了まで、溶出液を検出器の流出口からメスフラスコに収集した。溶出液は、ピークの累積出現時間をn等分して、n段階に分けて回収した。前記n段階の溶出液を、それぞれL、L、…、Lと表記した。前記の操作を10回繰り返した後、それぞれの操作で回収した溶出液を、段階別に一まとめにした。続いて、80℃で蒸留することにより、各段階の溶出液からテトラヒドロフランを除去し、n段階の画分を得た。それぞれの画分の重量を測定した。また、各々の段階の画分の、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnを測定した。さらに、全n段階の画分の総重量に対する、各々の段階の画分の重量百分率(すなわち組成比Y)を算出した。
【0180】
[2.核磁気共鳴分析法]
測定装置:INOVA 500MHz核磁気共鳴分光計(H-NMR;Varian Company, USA製;固体用二重共鳴プローブ(5mm)を使用)。
【0181】
(測定条件)
測定温度:室温
スキャン回数:nt=1000
化学シフト較正:δテトラメチルシラン=0
デカップリング方法:dm=nny(逆ゲートつきデカップリング)
重水ロック。
【0182】
(分析手順)
試料をH-NMRでキャラクタライズして得た核磁気共鳴スペクトルを分析することで、当該試料の側鎖中の炭素数の平均Xを算出する。
【0183】
以下、メタクリレート重合体、アクリレート重合体、フマル酸エステル重合体およびα-オレフィン重合体をそれぞれ例として挙げ、前記核磁気共鳴スペクトルの分析プロセスおよび前記側鎖中の炭素数の平均Xの算出方法を具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されない。他の重合体についても、下記の記載を参照して、同様に分析および算出することができる。
【0184】
単なる一例であるが、前記メタクリレート重合体または前記アクリレート重合体は、通常、以下に示す構造単位を含む。
【0185】
【化11】
【0186】
H-NMRスペクトル上の明瞭な相違に基づき、メタクリレート重合体の構造単位の水素原子は、図中のH、H、H、Hという4つの領域に概ね分けることができる。これらの領域には、式(1)で示される関係がある。Hにおける化学シフトがHに遮蔽され、且つHにおける化学シフトの積分が比較的困難であるため、H、HおよびHをまとめて計算を行ってもよい。したがって、式(1)を式(2)に変換し、更に式(3)を導出することができる。
【0187】
【数4】
【0188】
前記の式中、Xはメタクリレート重合体の側鎖中の炭素数の平均を表す。
【0189】
メタクリレート重合体の分析と同様に、アクリレート重合体の構造単位上の水素原子を、図中のH、H、Hという3つの領域に概ね分けることができる。そして、式(4)で示される側鎖中の炭素数の平均Xを算出することができる。
【0190】
【数5】
【0191】
単なる一例であるが、前記フマル酸エステル重合体は、通常、以下に示す構造単位を含む。
【0192】
【化12】
【0193】
メタクリレート重合体の分析と同様に、フマル酸エステル重合体に対しても、式(5)で示される側鎖中の炭素数の平均Xを算出することができる。
【0194】
【数6】
【0195】
単なる一例であるが、前記α-オレフィン重合体は、通常、以下に示す構造単位を含む。
【0196】
【化13】
【0197】
メタクリレート重合体の分析と同様に、α-オレフィン重合体に対しても、式(6)で示される側鎖中の炭素数の平均Xを算出することができる。
【0198】
【数7】
【0199】
具体例を挙げて説明する。あるメタクリレート重合体が、図1の核磁気共鳴スペクトルおよび積分データを示している場合、式(3)に則って計算することができ、当該メタクリレート重合体の側鎖中の炭素数の平均X=14.86である。
【0200】
以下の実施例および比較例における潤滑油ベースオイルA~Fの性質は、表Aのとおりである。
【0201】
【表1】
【0202】
〔実施例A〕
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に113kgの希釈油(Ssangyong社より購入;型番100N;以下同様)を投入し、83~91℃まで加熱した。(i)270kgの第1単量体(デシルメタクリレート/ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレートの混合物;C10=61%、C12=20%、C14=12%、C16=5%、C18=2%、X=11.1)と、(ii)1.35kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)1.08kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Aを、反応釜内に滴下した。これと同時に、(i)150kgの第2単量体(テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレート/エイコシルメタクリレートの混合物;C14=27重量%、C16=42%、C18=24%、C20=7重量%、X=16.0)と、(ii)0.75kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.6kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Bも、反応釜内に滴下した。滴下開始時には、混合物Aの滴下量(kg/時)と混合物Bの滴下量(kg/時)との比率A/Bを4:1とし、両者の和を20kg/時とした。続いて、滴下開始から3時間経過の時点におけるA/Bが5:3となり、両者の和が80kg/時となるように、A/Bを徐々に減少させると共に、両者の和を徐々に増加させた。次に、滴下開始から6時間経過の時点におけるA/Bが1:2となり、両者の和が15kg/時となるように、A/Bを徐々に減少させると共に、両者の和を徐々に減少させた。その後、滴下を終了させた。その後、反応釜を95℃にて1時間保持した。続いて、0.3kgの過酸化ベンゾイルおよび113kgの希釈油を投入し、103℃まで昇温して2時間保持した後、重合反応を終了させて、グラジエント共重合体J1を得た。ここで、前記重合反応の単量体転化率は99.1%であり、グラジエント共重合体J1の数平均分子量Mnは47,120であり、側鎖中の炭素数の平均Xは12.5であった。グラジエント共重合体J1を試料としてGPC分離を行い、5段階の画分を得た。この5段階の画分の各々について測定した結果を、表1に示す。
【0203】
【表2】
【0204】
〔実施例B〕
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に113kgの希釈油(Ssangyong社から購入;型番100N;以下同様)を投入し、83~91℃まで加熱した。(i)50kgの第1単量体(へキシルメタクリレート/オクチルメタクリレート/デシルメタクリレートの混合物;C=71%、C=21%、C10=8%、X=6.6)と、(ii)0.32kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.21kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Aを、反応釜内に滴下した。これと同時に、(i)370kgの第2単量体(ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレートの混合物;C12=55重量%、C14=17重量%、C16=28重量%、X=13.3)と、(ii)1.8kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)1.5kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Bも、反応釜内に滴下した。滴下開始時には、混合物Aの滴下量(kg/時)と混合物Bの滴下量(kg/時)との比率A/Bを7:1とし、両者の和を12kg/時とした。続いて、滴下開始から3時間経過の時点におけるA/Bが1:10となり、両者の和が150kg/時となるように、A/Bを徐々に減少させると共に、両者の和を徐々に増加させた。次に、滴下開始から6時間経過の時点におけるA/Bが1:20となり、両者の和が20kg/時となるように、A/Bを徐々に減少させると共に、両者の和を徐々に減少させた。その後、滴下を終了させた。その後、反応釜を95℃で1時間保持した。続いて、0.3kgの過酸化ベンゾイルおよび113kgの希釈油を投入し、103℃まで昇温して2時間保持した後、重合反応を終了させて、グラジエント共重合体J2を得た。ここで、前記重合反応の単量体転化率は98.3%であり、グラジエント共重合体J2の数平均分子量Mnは45,975であり、側鎖中の炭素数の平均Xは12.0であった。グラジエント共重合体J2を試料としてGPC分離を行い、8段階の画分を得た。この8段階の画分の各々について測定した結果を、表2に示す。
【0205】
【表3】
【0206】
〔比較例A〕
第1単量体と第2単量体とを均一に混合し、一定の速度で反応体系内に滴下した点を除いては、実施例Aの方法と同様の方法でグラジエント共重合体を調製した。具体的には、下記のとおりである。
【0207】
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に113kgの希釈油を投入し、83~91℃まで加熱した。(i)270kgの第1単量体(デシルメタクリレート/ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレートの混合物;C10=61%、C12=20%、C14=12%、C16=5%、C18=2%、X=11.1)と、(ii)150kgの第2単量体(テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレート/エイコシルメタクリレートの混合物;C14=27重量%、C16=42%、C18=24%、C20=7重量%、X=16.0)と、(iii)2.1kgの過酸化ベンゾイルと、(iv)1.68kgのドデシルメルカプタンと、の混合物を、70kg/時の一定速度で6時間かけて反応釜内に滴下した。滴下完了後、反応釜を95℃で1時間保持した。続いて、0.3kgの過酸化ベンゾイルおよび113kgの希釈油を投入し、103℃まで昇温して2時間保持した後、重合反応を終了させ、共重合体DJ1を得た。ここで、前記重合反応の単量体転化率は99.3%であり、共重合体DJ1の数平均分子量Mnは41,768であり、側鎖中の炭素数の平均Xは12.5であった。共重合体DJ1を試料としてGPC分離を行い、5段階の画分を得た。この5段階の画分の各々について測定した結果を、表3に示す。
【0208】
【表4】
【0209】
〔実施例C〕
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に113kgの希釈油(Ssangyong社から購入;型番100N;以下同様)を投入し、83~91℃まで加熱した。(i)150kgの第1単量体(デシルメタクリレート/ドデシルメタクリレートの混合物;C10=50%、C12=50%、X=10.9)と、(ii)0.75kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.7kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Aを、反応釜内に滴下した。最初の4時間は、第1単量体混合物の原料投入速度を、10kg/時の一定速度に維持した。これと同時に、(i)100kgの第2単量体(ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレートの混合物;C12=70重量%、C14=30%、X=12.5)と、(ii)0.6kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.55kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Bも、反応釜内に滴下した。滴下開始時には、混合物Aの滴下量(kg/時)と混合物Bの滴下量(kg/時)との比率A/Bを2:1とし、両者の和を15kg/時とした。続いて、滴下開始から4時間経過の時点におけるA/Bが1:3となり、両者の和が80kg/時となるように、Bを徐々に増加させると共に、両者の和を徐々に増加させた。滴下開始から4時間経過後、第2単量体の投入を終了させると共に、(i)170kgの第3単量体(テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレートの混合物;C14=64重量%、C16=25%、C18=11%、X=14.8)と、(ii)0.8kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.7kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Cを反応釜内に滴下した。このとき、混合物Aの滴下量(kg/時)と混合物Cの滴下量(kg/時)との比率A/Cを1:2とし、両者の和を100kg/時とした。続いて、更に5時間経過後の時点におけるA/Cが1:3となり、両者の和が10kg/時となるように、Aを徐々に減少させると共に、両者の和を徐々に減少させた。その後、滴下を終了させた。その後、反応釜を95℃で1時間保持した。続いて、0.5kgの過酸化ベンゾイルおよび113kgの希釈油を投入し、103℃まで昇温して2時間保持した後、重合反応を終了させ、グラジエント共重合体J3を得た。ここで、前記重合反応の単量体転化率は99.6%であり、グラジエント共重合体J3の数平均分子量Mnは52,120であり、側鎖中の炭素数の平均Xは11.8であった。グラジエント共重合体J3を試料としてGPC分離を行い、5段階の画分を得た。この5段階の画分の各々について測定した結果を、表4に示す。
【0210】
【表5】
【0211】
〔実施例D〕
異なる5種類の直鎖アルキルメタクリレート単量体混合物A~Eを調製した。各混合物の組成は、表5のとおりである。
【0212】
【表6】
【0213】
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に113kgの希釈油(Ssangyong社から購入;型番100N;以下同様)を投入し、92~100℃まで加熱した。滴下開始時には、混合物Aを10kg/時の一定速度で反応釜内に滴下すると共に、混合物Bを5kg/時の速度で滴下した。その後、混合物Bの原料投入速度を徐々に増加させ、2時間経過の時点において混合物Aおよび混合物Bの投入を終了させた。続いて、混合物Cおよび混合物Dを反応釜内に滴下した。このとき、混合物Cの滴下量(kg/時)と混合物Dの滴下量(kg/時)との比率C/Dを3:1とし、両者の和を60kg/時とした。続いて、滴下開始から5時間経過の時点におけるC/Dが1:1となり、両者の和が130kg/時となるように、Cを徐々に減少させ、混合物Dを徐々に増加させ、且つ両者の和を徐々に増加させた。滴下開始から5時間経過後、混合物Cの滴下を終了させると共に、混合物Eを反応釜内に滴下した。このとき、混合物Dの滴下量(kg/時)と混合物Eの滴下量(kg/時)との比率D/Eを10:1とし、両者の和を130kg/時とした。続いて、滴下開始から7時間経過の時点におけるD/Eが1:1となり、両者の和が13kg/時となるように、Dを徐々に減少させると共に、両者の和を徐々に減少させた。その後、滴下を終了させた。その後、反応釜を100℃で1時間保持した。続いて、0.3kgの過酸化ベンゾイルおよび113kgの希釈油を投入し、103℃まで昇温して2時間保持した後、重合反応を終了させ、グラジエント共重合体J4を得た。ここで、前記重合反応の単量体転化率は99.2%であり、グラジエント共重合体J4の数平均分子量Mnは39,120であり、側鎖中の炭素数の平均Xは12.14であった。グラジエント共重合体J4を試料としてGPC分離を行い、8段階の画分を得た。この8段階の画分の各々について測定した結果を、表6に示す。
【0214】
【表7】
【0215】
表7に規定されている添加量に従って、グラジエント共重合体J1~J4および共重合体DJ1を、それぞれベースオイルに投入した。各共重合体の量、ベースオイルの種類、および流動点降下の測定結果を表7に示す。
【0216】
【表8】
【0217】
実施例および比較例の結果を比較すると、本発明で得られるグラジエント共重合体は、複数種類の潤滑油ベースオイルのいずれに対しても、優れた流動点降下効果を示すことが分かる。また、本発明で得られるグラジエント共重合体は、添加量が極めて少ない場合であっても潤滑油ベースオイルの流動点を顕著に降下させる。このことは、本発明で得られるグラジエント共重合体が、顕著な流動点降下効果を有することを示している。
【0218】
〔実施例E〕
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に113kgの希釈油(Ssangyong社から購入;型番100N;以下同様)を投入し、83~91℃まで加熱した。(i)270kgの第1単量体(デシルメタクリレート/ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレート(C10=28%、C12=32%、C14=28%、C16=8%、C18=4%)、X=12.3)と、(ii)1.35kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)1.08kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Aを、50kg/時の一定の投入速度で3時間かけて反応釜内に滴下した。次に、合計投入時間が6時間に達する時点における流量が30kg/時となるように、滴下速度を線形に減少させた。これと同時に、(i)150kgの第2単量体(テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレート/エイコシルメタクリレート(C14=38%、C16=20%、C18=25%、C20=17%)、X=16.2)と、(ii)0.75kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.6kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Bを、10kg/時の開始速度で反応釜内に滴下し始めた。その後、合計投入時間が3時間に達する時点における流量が30kg/時となるように、混合物Bの投入量を線形に増加させた。その後、この流量を3時間維持した。混合物A、Bの滴下が共に完了した後、反応釜を95℃で1時間保持した。続いて、0.3kgの過酸化ベンゾイルおよび113kgの希釈油を投入し、103℃まで昇温して2時間保持した後、反応を終了させて、潤滑油用流動点降下剤J5を得た。なお、潤滑油用流動点降下剤J5の単量体転化率は99.1%であり、グラジエント共重合体J5の数平均分子量は40,120であり、側鎖中の炭素数の平均Xは13.5であった。グラジエント共重合体J5を試料としてGPC分離を行い、5段階の画分を得た。この5段階の画分の各々について測定した結果を、表8に示す。
【0219】
【表9】
【0220】
〔実施例F〕
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に113kgの希釈油を投入し、83~91℃まで加熱した。(i)171kgの第1単量体(オクチルメタクリレート/デシルメタクリレート/ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレート(C=12%、C10=15%、C12=48%、C14=25%)、X=11.5)と、(ii)0.9kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.7kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Aを、40kg/時の開始速度で反応釜内に投入し始めた。その後、合計投入時間が3時間に達する時点における流量が32kg/時となるように、流量を緩やかに線形に減少させた。次に、合計投入時間が6時間に達する時点における流量が10kg/時となるように、流量を速やかに線形に減少させた。これと同時に、(i)255kgの第2単量体(テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレート/エイコシルメタクリレート(C14=38%、C16=20%、C18=25%、C20=17%)、X=16.2)と、(ii)0.9kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.7kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Bを、20kg/時の開始速度で反応釜内に投入し始めた。合計投入時間が3時間に達する時点における流量が50kg/時となるように、Bの投入口にあるポンプの流量を線形に増加させた。その後、この流量を更に3時間維持した。混合物A、Bの投入が完了すると、反応釜を95℃で1時間保持した。続いて、0.3kgの過酸化ベンゾイルおよび113kgの希釈油を投入し、103℃まで昇温して2時間保持した後、反応を終了させ、潤滑油用流動点降下剤J6を得た。なお、潤滑油用流動点降下剤J6の単量体転化率は99.4%であり、数平均分子量は41,702であり、側鎖中の炭素数の平均Xは14.0であった。グラジエント共重合体J6を試料としてGPC分離を行い、5段階の画分を得た。この5段階の画分の各々について測定した結果を、表9に示す。
【0221】
【表10】
【0222】
〔実施例G〕
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に100kgの希釈油を投入し、83~91℃まで加熱した。(i)166kgの第1単量体(ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレート(C12=50%、C14=18重量%、C16=20重量%、C18=12重量%)、X=13.66)と、(ii)0.4kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.5kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Aを、48kg/時の速度で反応釜内に投入した。その後、合計投入時間が2時間に達する時点における流速が56kg/時となるように、流速を穏やかに増加させた。次に、合計投入時間が4時間に達する時点における流量が6kg/時となるように、流速を速やかに線形に減少させた。これと同時に、(i)303kgの第2単量体(デシルメタクリレート/ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレート/エイコシルメタクリレート(C10=12重量%、C12=27重量%、C14=19重量%、C16=18重量%、C18=14重量%、C20=10重量%)、X=14.06)と、(ii)0.75kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.9kgのドデシルメルカプタンと、の混合物を30kg/時の開始速度で反応釜内に滴下し始めた。合計投入時間が2時間に達する時点における流量が100kg/時となるように、Bの投入口にあるポンプの流量を線形に増加させた。その後、この流量を更に2時間維持した。混合物AおよびBの滴下が共に完了した後、反応釜を95℃で2時間保持した。続いて、0.2kgの過酸化ベンゾイルおよび142kgの希釈油を投入し、103℃まで昇温して2時間保持した後、反応を終了させて、潤滑油用流動点降下剤J7を得た。潤滑油用流動点降下剤J7の単量体転化率は98.9%であり、数平均分子量は43,196であり、側鎖中の炭素数の平均Xは13.9であった。グラジエント共重合体J7を試料としてGPC分離を行い、5段階の画分を得た。この5段階の画分の各々について測定した結果を、表10に示す。
【0223】
【表11】
【0224】
〔実施例H〕
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に100kgの希釈油を投入し、83~91℃まで加熱した。(i)255kgの第1単量体(ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレート(C12=50重量%、C14=18重量%、C16=20重量%、C18=12重量%)、ΣR1=13.66)と、(ii)1.2kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)1.0kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Aを、40kg/時の速度で反応釜内に投入した。その後、合計投入時間が3時間に達する時点における流速が50kg/時となるように、流速を緩やかに増加させた。次に、合計投入時間が6時間に達する時点における流量が30kg/時となるように、流速を速やかに線形に減少させた。これと同時に、(i)150kgの第2単量体(テトラデシルメタクリレート/ヘキサデシルメタクリレート/オクタデシルメタクリレート/エイコシルメタクリレート(C14=38重量%、C16=20重量%、C18=25重量%、C20=17重量%)、X=16.20)と、(ii)0.70kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)0.60kgのドデシルメルカプタンと、の混合物Bを、開始速度を10kg/時として反応釜内に投入し始めた。合計投入時間が3時間に達する時点における流量が30kg/時となるように、Bの投入口にあるポンプの流量を線形に増加させた。その後、この流量を更に3時間維持した。混合物AおよびBの投入が共に完了すると、反応釜を95℃で2時間保持した。続いて、0.2kgの過酸化ベンゾイルおよび66kgの希釈油を投入し、103℃まで昇温して2時間保持した後、反応を終了させ、潤滑油用流動点降下剤J8を得た。潤滑油用流動点降下剤J8の単量体転化率は99.7%であり、数平均分子量は42,637であり、側鎖中の炭素数の平均Xが14.5であった。グラジエント共重合体J8を試料としてGPC分離を行い、5段階の画分を得た。この5段階の画分の各々について測定した結果を、表10に示す。
【0225】
【表12】
【0226】
〔実施例I〕
窒素ガスによる保護下で、撹拌機構付き反応釜内に113kgの希釈油を投入して95℃まで加熱した。(i)420kgの単量体(へキシルメタクリレート/オクチルメタクリレート/デシルメタクリレート/ドデシルメタクリレート/テトラデシルメタクリレート;X=11.2)と、(ii)2.0kgの過酸化ベンゾイルと、(iii)1.68kgのドデシルメルカプタンと、を原料投入タンク内で混合した。その後、混合して得た単量体を、90kg/時の速度で5時間かけて反応釜内に投入した。滴下完了後、0.3kgの過酸化ベンゾイルおよび113kgの希釈油を投入し、110℃まで昇温して2時間保持した。その後、反応を終了させ、重合体M1を得た。前記重合反応の単量体転化率は98.1%であり、重合体M1の数平均分子量Mnは35,870であった。
【0227】
これと同様の方法で、重合体M2~M20を合成した。結果を表11に示す。
【0228】
【表13】
【0229】
表9に規定されている割合でこれらの重合体を混合し、実施例C-1~実施例C-7のグラジエント共重合体、および比較例C-1~比較例C-2の比較共重合体をそれぞれ製造した。また、潤滑油ベースオイルに対する、各共重合体による流動点降下効果を試験した。結果は表9に示す。
【0230】
【表14】
【0231】
表9の結果から分かるように、本発明で提供されるグラジエント共重合体は、異なる方法によって製造されたベースオイルのいずれに対しても、優れた流動点降下効果を示す。また、実施例C-1~実施例C-6と、実施例C-7との比較から分かるように、前記グラジエント共重合体における各ポリマー成分の調合比を好ましい範囲内に制御した場合、当該グラジエント共重合体は、より優れた流動点降下効果を有する。また、実施例C-2の結果と、比較例C-1~比較例C-2の結果との比較から分かるように、前記グラジエント共重合体のポリマー成分が本発明の関係を満たした場合、当該グラジエント共重合体は、より優れた流動点降下効果を有する。
【0232】
本発明の明細書中には、技術に関する具体的な詳細が多数開示されている。しかし、本発明の幾つかの実施形態は、これら具体的な詳細が無くとも実現可能であることが理解されるであろう。また、幾つかの実施形態では、本分野での既知の方法、構成および技術が詳細には記載されていないが、これは本発明の態様に対する当業者の理解を何ら妨げるものではない。
【0233】
これと同様に、本開示をコンパクトにし、開示された1または複数の態様の理解を助けるために、本開示で上述した例示的実施例の記載においては、種々の特徴を、同一の実施例、図、またはそれらに関する開示内容に割り当てることがある。しかし、このような開示内容は、「特許請求されている発明は、各請求項に明示されている特徴よりも多い数の特徴を含んでいなければならない」という意図の反映と解釈すべきではない。より正確に説明すると、特許請求の範囲に反映されているように、特許請求されている技術的解決手段の特徴は、明細書中に記載されている単独の実施例の全特徴よりも、少ない数であってもよい。このように、具体的な実施形態に追従する特許請求の範囲は、当該具体的な実施形態に内包されることが明白であると共に、各々の請求項自体も本発明における単独の実施例となり得る。
【0234】
また、本明細書において、「第1」および「第2」のような関連用語は、単に1つの実体または処理を、他の実体または処理から区別するために用いられている。これら実体または処理の同士の間に、実際に何らかの関係または順序が存在することは、必ずしも要求または示唆されていない。また、用語「含む」、「包含する」、またはその他の任意の変化形は、非排他的な意味合いの「包含」を概括することが意図されている。したがって、一連の要素を含むプロセス、方法、物品または設備は、当該要素を含むだけでなく、明示されていないその他の要素も含むか、あるいは、当該プロセス、方法、物品または設備に必要な固有要素も含む。また、用語「・・・を1つ含む」で限定された要素は、それ以上の限定が存在しない場合において、当該要素を含むプロセス、方法、物品または設備に、他の同要素も存在することを排除するものではない。
【0235】
以上の実施例は、単に本開示の実施例における技術的解決手段を説明するためのものであり、これを限定するものではない。前記の実施例を挙げつつ、本発明を詳細に説明した。本発明について、上述した各実施形態に記載された技術的解決手段を変更したり、その一部の技術的構成を均等物で置換したりすることが可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。このような変更または置換は、前記技術的解決手段の本質を、本開示の各実施例における技術的解決手段の趣旨および範囲から逸脱させるものではない。
図1