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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】X線チューブ
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/16 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
H01J35/16
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022069689
(22)【出願日】2022-04-20
(65)【公開番号】P2022171592
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0055725
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0023495
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】596180076
【氏名又は名称】韓國電子通信研究院
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】218,Gajeong-ro Yuseong-gu Daejeon 34129,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ユン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジュン-テ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジン-ウ
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0053771(US,A1)
【文献】特開2009-064710(JP,A)
【文献】特開2019-186089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と離隔し、前記第1電極の上部側に配置された第2電極と、
前記第2電極の下部に配置されるターゲットと、
前記第1電極上のエミッタと、
前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記エミッタと垂直に対応される位置に開口部を含む第3電極と、
前記第3電極上に提供され、前記第2電極を囲むスペーサー(Spacer)と、を含み、
前記スペーサーは、前記第3電極と隣接するように配置される第1部分及び前記第1部分の上部側に配置される第2部分を含み、
前記スペーサーは、セラミック絶縁体及び前記セラミック絶縁体内に分散された伝導性ドーパントを含み、
前記スペーサーの前記第1部分の伝導性ドーパントの濃度は、前記第2部分の伝導性ドーパントの濃度より大きく、
前記第3電極は、前記スペーサーの前記第1部分と接触するX線チューブ。
【請求項2】
前記第1乃至第3電極は、各々金属を含み、
前記第3電極は、前記第1電極と最も隣接するように配置される金属電極である請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項3】
前記スペーサーの前記第1部分及び前記第2部分の接点のレベルは、前記ターゲットの最下部のレベルより低い請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項4】
前記第2電極及び前記第3電極の間に介在される第4電極をさらに含み、
前記第4電極は、前記第2電極より前記第3電極に隣接するように配置される請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項5】
前記セラミック絶縁体は、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、及びイットリア(Y)の中でいずれか1つを含み、
前記伝導性ドーパントは、チタニア(TiO)を含む請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項6】
前記スペーサーの前記第1部分の体積抵抗率は、前記第2部分の体積抵抗率より小さい請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項7】
前記スペーサーの前記第1部分は、1012Ω・cm以下の比抵抗を有し、前記スペーサーの前記第2部分は、1012Ω・cm超過の比抵抗を有する請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項8】
前記スペーサーは、円筒形のチューブ形状を有し、
前記スペーサーの前記第1部分の外周面上に提供される金属膜をさらに含み、
前記金属膜は、接地電源と連結される請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項9】
前記金属膜は、前記スペーサーの前記第1部分と接触する請求項8に記載のX線チューブ。
【請求項10】
前記金属膜は、前記スペーサーの前記第1部分と電気的に連結される請求項8に記載のX線チューブ。
【請求項11】
前記セラミック絶縁体は、アルミナ(Al)を含み、前記伝導性ドーパントはチタニア(TiO)を含み、
前記スペーサーの前記第1部分の前記チタニア(TiO)の濃度は、2wt%以上であり、
前記スペーサーの前記第2部分の前記チタニア(TiO)の濃度は、0超過2wt%未満である請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項12】
第1電極と、
前記第1電極と離隔し、前記第1電極の上部側に配置された第2電極と、
前記第2電極に配置されるターゲットと、
前記第1電極上のエミッタと、
前記第1電極と前記第2電極との間に位置する第3電極であって、前記ターゲットと前記エミッタとの間の位置に開口部を含む、第3電極と、
前記第2電極を囲むスペーサー(Spacer)と、
前記スペーサー及び前記第3電極の間に介在される導電構造体と、を含み、
前記スペーサーは、前記導電構造体と隣接するように配置される第1部分及び前記第1部分の上部側に配置される第2部分を含み、
前記スペーサーは、セラミック絶縁体及び前記セラミック絶縁体内に分散された伝導性ドーパントを含み、
前記スペーサーの前記第1部分の伝導性ドーパントの濃度は、前記第2部分の伝導性ドーパントの濃度より大きく、
前記第3電極は、前記導電構造体と接触し、
前記導電構造体は、コバール(Kovar)合金を含むX線チューブ。
【請求項13】
前記導電構造体は、チューブ(tube)形状を有し、曲がった形状を有し、
前記導電構造体を貫通するウインドー(window)をさらに含む請求項12に記載のX線チューブ。
【請求項14】
カソード電極と、
前記カソード電極と垂直に離隔し、前記カソード電極の上部側に配置されたアノード電極と、
前記アノード電極の下部に配置されるターゲットと、
前記カソード電極上のエミッタと、
前記カソード電極上に提供され、前記アノード電極を囲むスペーサー(Spacer)と、を含み、
前記スペーサーは、セラミック絶縁体及び前記セラミック絶縁体内に分散された伝導性ドーパントを含み、前記スペーサーは、前記カソード電極と隣接するように配置される第1部分及び前記第1部分の上部側に配置される第2部分を含み、
前記スペーサーの前記第1部分の伝導性ドーパントの濃度は、前記第2部分の伝導性ドーパントの濃度より大きいX線チューブ。
【請求項15】
カソード電極と、
前記カソード電極と垂直に離隔し、前記カソード電極の上部側に配置されたアノード電極と、
前記アノード電極の下部に配置されるターゲットと、
前記カソード電極上のエミッタと、
前記カソード電極と前記アノード電極との間に位置し、前記エミッタと垂直に対応される位置に開口部を含むゲート電極と、
前記ゲート電極上に提供され、前記アノード電極を囲むスペーサー(Spacer)と、を含み、
前記スペーサーは、前記ゲート電極と隣接するように配置される第1部分及び前記第1部分の上部側に配置される第2部分を含み、
前記スペーサーの前記第1部分は、第1セラミック絶縁体を含み、前記第2部分は、第2セラミック絶縁体を含み、
前記第1セラミック絶縁体は、前記第2セラミック絶縁体と異なる金属酸化物を含み、前記第1セラミック絶縁体の比抵抗は、前記第2セラミック絶縁体の比抵抗より小さく、
前記スペーサーの前記第1部分及び前記第2部分の接点のレベルは、前記ターゲットの最下部のレベルより低いX線チューブ。
【請求項16】
前記第1セラミック絶縁体に分散される伝導性ドーパントをさらに含む請求項15に記載のX線チューブ。
【請求項17】
前記スペーサーの前記第1部分は、1012Ω・cm以下の比抵抗を有し、前記スペーサーの前記第2部分は、1012Ω・cm超過の比抵抗を有する請求項15に記載のX線チューブ。
【請求項18】
前記スペーサーは、円筒形のチューブ形状を有し、
前記スペーサーの前記第1部分の外周面上に提供される金属膜をさらに含み、
前記金属膜は、接地電源と連結される請求項15に記載のX線チューブ。
【請求項19】
カソード電極と、
前記カソード電極と離隔し、前記カソード電極の上部側に配置されたアノード電極と、
前記アノード電極に配置されるターゲットと、
前記カソード電極上のエミッタと、
前記カソード電極と前記アノード電極との間に位置するゲート電極であって、前記ターゲットと前記エミッタとの間の位置に開口部を含む、ゲート電極と、
前記アノード電極を囲むスペーサー(Spacer)と、
前記スペーサー及び前記ゲート電極の間に介在される導電構造体と、を含み、
前記スペーサーは、前記導電構造体と隣接するように配置される第1部分及び前記第1部分の上部側に配置される第2部分を含み、
前記スペーサーの前記第1部分は、第1セラミック絶縁体を含み、前記第2部分は、第2セラミック絶縁体を含み、
前記第1セラミック絶縁体は、前記第2セラミック絶縁体と異なる金属酸化物を含み、前記第1セラミック絶縁体の比抵抗は、前記第2セラミック絶縁体の比抵抗より小さく、
前記スペーサーの前記第1部分及び前記第2部分の接点のレベルは、前記ターゲットの最下部のレベルより高く、
前記導電構造体は、コバール(Kovar)合金を含み、
前記導電構造体は、接地電源と連結されるX線チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
X線チューブは真空容器の内部で電子を発生させ、電子を高電圧が印加されたアノード電極方向に加速させてアノード電極上の金属ターゲットに衝突させることによって、X線を発生させる。この時、アノード電極とカソード電極との間の電圧差が電子を加速する加速電圧として定義される。X線チューブの用度に応じて、数乃至数百kVの加速電圧で電子を加速する。アノード電極とカソード電極との間にはゲート電極等が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明で解決しようとする課題は高電圧でも安定的に駆動するX線チューブの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態によるX線チューブは第1電極、前記第1電極と離隔する第2電極、前記第2電極の下部に配置されるターゲット、前記第1電極上のエミッタ、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記エミッタと垂直に対応される位置に開口部を含む第3電極、及び前記第3電極上に提供され、前記第2電極を囲むスペーサー(Spacer)を含み、前記スペーサーは前記第3電極と隣接するように配置される第1部分及び前記第1部分上に配置される第2部分を含み、前記スペーサーはセラミック絶縁体及び前記セラミック絶縁体内に分散された伝導性ドーパントを含み、前記スペーサーの前記第1部分の伝導性ドーパントの濃度は前記第2部分の伝導性ドーパントの濃度より大きく、前記第3電極は前記スペーサーの前記第1部分と接触することができる。
【0005】
一部の実施形態によれば、前記第1乃至第3電極は各々金属を含み、前記第3電極は前記第1電極と最も隣接するように配置されることができる。
【0006】
一部の実施形態によれば、前記スペーサーの前記第1部分及び前記第2部分の接点のレベルは前記ターゲットの最下部のレベルより低いことができる。
【0007】
一部の実施形態によれば、前記第2電極及び前記第3電極の間に介在される第4電極をさらに含み、前記第4電極は前記第2電極より前記第3電極に隣接するように配置されることができる。
【0008】
一部の実施形態によれば、前記セラミック絶縁体はアルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、及びイットリア(Y)の中でいずれか1つを含み、前記伝導性ドーパントはチタニア(TiO)を含むことができる。
【0009】
一部の実施形態によれば、前記スペーサーの前記第1部分の体積抵抗率は前記第2部分の体積抵抗率より小さいことができる。
【0010】
一部の実施形態によれば、前記スペーサーの前記第1部分は1012Ω・cm以下の比抵抗を有し、前記スペーサーの前記第2部分は1012Ω・cm超過の比抵抗を有することができる。
【0011】
一部の実施形態によれば、前記スペーサーは円筒形のチューブ形状を有し、前記スペーサーの前記第1部分の外周面上に提供される金属膜をさらに含み、前記金属膜は接地電源と連結されることができる。
【0012】
一部の実施形態によれば、前記金属膜は前記スペーサーの前記第1部分と接触することができる。
【0013】
一部の実施形態によれば、前記金属膜は前記スペーサーの前記第1部分と電気的に連結されることができる。
【0014】
一部の実施形態によれば、前記セラミック絶縁体はアルミナ(Al)を含み、前記伝導性ドーパントはチタニア(TiO)を含み、前記スペーサーの前記第1部分の前記チタニア(TiO)の濃度は2wt%以上であり、前記スペーサーの前記第2部分の前記チタニア(TiO)の濃度は0超過2wt%未満であり得る。
【0015】
一部の実施形態によれば、前記スペーサー及び前記第3電極の間に介在される導電構造体をさらに含み、前記導電構造体はコバール(Kovar)合金を含むことができる。
【0016】
一部の実施形態によれば、前記導電構造体はチューブ(tube)形状を有し、曲がった形状を有し、前記導電構造体を貫通するウインドー(window)をさらに含むことができる。
【0017】
一部の実施形態によるX線チューブはカソード電極、前記カソード電極と垂直に離隔するアノード電極、前記アノード電極の下部に配置されるターゲット、前記カソード電極上のエミッタ、及び前記カソード電極上に提供され、前記アノード電極を囲むスペーサー(Spacer)を含み、前記スペーサーはセラミック絶縁体及び前記セラミック絶縁体内に分散された伝導性ドーパントを含み、前記スペーサーは前記カソード電極と隣接するように配置される第1部分及び前記第1部分上に配置される第2部分を含み、前記スペーサーの前記第1部分の伝導性ドーパントの濃度は前記第2部分の伝導性ドーパントの濃度より大きいことができる。
【0018】
一部の実施形態によるX線チューブはカソード電極、前記カソード電極と垂直に離隔するアノード電極、前記アノード電極の下部に配置されるターゲット、前記カソード電極上のエミッタ、前記カソード電極と前記アノード電極との間に位置し、前記エミッタと垂直に対応される位置に開口部を含むゲート電極、及び前記ゲート電極上に提供され、前記アノード電極を囲むスペーサー(Spacer)を含み、前記スペーサーは前記ゲート電極と隣接するように配置される第1部分及び前記第1部分上に配置される第2部分を含み、前記スペーサーの前記第1部分は第1セラミック絶縁体を含み、前記第2部分は第2セラミック絶縁体を含み、前記第1セラミック絶縁体は前記第2セラミック絶縁体と異なる金属酸化物を含み、前記第1セラミック絶縁体の比抵抗は前記第2セラミック絶縁体の比抵抗より小さく、前記スペーサーの前記第1部分及び前記第2部分の接点のレベルは前記ターゲットの最下部のレベルより低いことができる。
【0019】
一部の実施形態によれば、前記第1セラミック絶縁体に分散される伝導性ドーパントをさらに含むことができる。
【0020】
一部の実施形態によれば、前記スペーサーの前記第1部分は1012Ω・cm以下の比抵抗を有し、前記スペーサーの前記第2部分は1012Ω・cm超過の比抵抗を有することができる。
【0021】
一部の実施形態によれば、前記スペーサーは円筒形のチューブ形状を有し、前記スペーサーの前記第1部分の外周面上に提供される金属膜をさらに含み、前記金属膜は接地電源と連結されることができる。
【0022】
一部の実施形態によれば、前記スペーサー及び前記ゲート電極の間に介在される導電構造体をさらに含み、前記導電構造体はコバール(Kovar)合金を含み、前記導電構造体は接地電源と連結されることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の概念によるX線チューブは互いに異なる比抵抗を有する第1部分及び第2部分を含むスペーサーを含む。スペーサーの第1部分はカソード電極とアノード電極との間に介在される電極の中でアノード電極と最も隣接する電極と接触する。スペーサーの第1部分の比抵抗を第2部分の比抵抗より低く調節して、高電圧でもX線チューブが安定的に駆動が可能である。また、第1部分及び第2部分の接点位置がターゲットの最下部より低く位置することによって、X線チューブの信頼性が増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】X線チューブの構造を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の概念によるX線チューブの構造を示す断面図である。
図3】一部の実施形態によるX線チューブの構造を示す断面図である。
図4】一部の実施形態によるX線チューブの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の構成及び効果を十分に理解するために、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態を説明する。しかし、本発明は以下で開示される実施形態に限定されることではなく、様々な形態に具現されることができ、多様な変更を加えることができる。単なる、本実施形態の説明を通じて本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されているものである。添付された図面で構成要素は説明の便宜のためにそのサイズが実際より拡大して示したことであり、各構成要素の比率は誇張されるか、或いは縮小されることができる。
【0026】
また、本発明の実施形態で使用される用語は異なりに定義されない限り、該当技術分野で通常の知識を有する者に通常的に公知された意味として解釈されることができる。以下、添付した図面を参照して本発明の例示的な実施形態を説明することによって、本発明を詳細に説明する。
【0027】
図1はX線チューブの構造を概略的に示す断面図である。
【0028】
図1を参照すれば、X線チューブはカソード電極11、エミッタ12、アノード電極14、ターゲット15、ゲート電極13、第1スペーサーSP1、第2スペーサーSP2、及び真空キャップ16を含むことができる。本明細書で、カソード電極11は第1電極11とし、アノード電極14は第2電極14とし、ゲート電極13は第3電極13と称されることができる。
【0029】
カソード電極11及びアノード電極14は互いに対向するように位置し、第1方向D1に沿って離隔することができる。本明細書で第1方向D1はカソード電極11の上面と垂直になる方向を示す。又は第1方向D1はカソード電極11からアノード電極14に向かう方向を称する。
【0030】
カソード電極11、アノード電極14、及びゲート電極13は外部電源(図示せず)と電気的に連結されることができる。例えば、カソード電極11には正電圧又は負電圧が印加されるか、或いは接地電源と連結されることができる。アノード電極14及びゲート電極13にはカソード電極11より高い電位を有する電圧が印加されることができる。
【0031】
アノード電極14、カソード電極11、及びゲート電極13は伝導性物質を含むことができ、一例として伝導性物質は銅(Cu)、アルミニウム(Al)、及びモリブデン(Mo)等の金属物質を含むことができる。アノード電極14は一方向に回転する回転型アノード電極又は固定型アノード電極であり得る。
【0032】
ゲート電極13はエミッタ12及びアノード電極14の間に位置することができる。ゲート電極13はアノード電極14よりエミッタ12に隣接するように配置されることができる。ゲート電極13はカソード電極11の上部に位置し、エミッタ12と対応される位置に開口部OPを含むことができる。
【0033】
アノード電極14の下部にはターゲット15が提供されることができる。ターゲット15の下部面、即ち、カソード電極11と対向するターゲット15表面は傾けることができる。一部の実施形態によれば、ターゲット15はアノード電極14と同一な物質を含むことができる。この場合、ターゲット15は電子ビーム(E-Beam)が集束するアノード電極14の一部分に該当することができる。一部の実施形態によれば、ターゲット15はアノード電極14と異なる物質を含むことができる。
【0034】
例えば、ターゲット15はモリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、金(Au)の中で少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0035】
エミッタ12は金属フィラメント又は炭素ナノチューブ(carbon nanotube)を含むことができる。一例として、金属フィラメントは一般的に溶融点が高くて気化点が高いタングステン(W)のような材質で構成されることができる。カソード電極11から供給される電流によって高温に加熱される。フィラメントは高温状態で熱電子(Thermal electron)を放出するようになり、放出された熱電子はカソード電極11とアノード電極14の両極間の電位差によって加速される。他の一例として、エミッタ12は炭素ナノチューブで構成されたドットアレイ(Dot array)形状に配列されるか、或いは炭素ナノチューブがねじれて作られたヤーン(yarn)の形状を有することができる。
【0036】
エミッタ12が炭素ナノチューブのドットアレイ(Dot array)形状又は複数の炭素ナノチューブヤーンで構成される場合に、ゲート電極13は炭素ナノチューブのドットアレイ(又は、複数の炭素ナノチューブヤーン)に高電界を誘導するために複数の開口部OPを含むことができ、炭素ナノチューブのドットアレイ(又は、複数の炭素ナノチューブヤーン)から電子が放出されることができる。ゲート電極13はメッシュ形状又はグリッド形状を有することができる。
【0037】
エミッタ12から放出された電子ビーム(E-beam)は真空状態で発生及び加速されることができる。エミッタ12から放出された電子ビーム(E-beam)はゲート電極13の開口部OPを通過してターゲット15に集束されることができる。電子ビーム(E-beam)はターゲット15に衝突してX線(X-ray)を発生させる。X線(X-ray)は第2スペーサーSP2を貫通するウインドー(window)WWを通じて外部に照射されることができる。ウインドーWWはベリリウム(Be)、銅(Cu)等から成されたX線(X-ray)を概ね吸収しない物質を含むことができる。
【0038】
真空状態を形成するために、X線チューブは完全に密封された状態に製作されることができる。又は制作される方法に応じて、X線チューブは外部に連結された真空ポンプ(図示せず)を通じてその内部が真空状態になることができる。
【0039】
第1スペーサーSP1及び第2スペーサーSP2は各々円筒のチューブ(tube)形状を有することができる。第1スペーサーSP1はカソード電極11及びゲート電極13の間に介在されることができる。第2スペーサーSP2はゲート電極13及びアノード電極14の間に介在されることができる。
【0040】
第1スペーサーSP1及び第2スペーサーSP2は真空状態でも強固な材質を含むことができる。一例として、第1スペーサーSP1及び第2スペーサーSP2はセラミック絶縁体を含むことができる。第2スペーサーSP2に関することは図2で詳しく説明する。
【0041】
一部の実施形態によるX線チューブは少なくとも1つの集束電極(focusing electrode)をさらに含むことができる。集束電極はゲート電極13及びアノード電極14の間に位置することができる。集束電極はアノード電極14よりゲート電極13に隣接するように配置されることができる。集束電極はゲート電極13と類似な形状を有することができる。
【0042】
エミッタ12から放出された電子ビーム(E-beam)の一部の電子は正常軌道で逸脱して第2スペーサーSP2と衝突することができる。高電圧条件で、エミッタ12から放出された電子ビーム(E-beam)の他の電子が三重点(triple point、又はtriple junction)で放出されることができる。三重点は誘電常数(dielectric constant)が互いに異なる真空、金属、絶縁体が出会う地点に該当し、X線チューブではアノード電極14に印加される高電圧によってゲート電極13と第2スペーサーSP2の絶縁体が出会う点P1(集束電極がある場合は集束電極と2スペーサーの絶縁体が出会う点)で三重点問題が最も深刻である可能性がある。即ち、アノード電極14に印加される高電圧によって三重点P1に強い電界(electric field)が誘導され、これにしたがって三重点P1で望まない電子が放出されることができる。前記放出された電子は第2スペーサーSP2と衝突することができる。また、電子ビーム(E-beam)の一部電子はターゲット15と衝突し、散乱されて第2スペーサーSP2と衝突することができる。
【0043】
第2スペーサーSP2に電子が衝突することに応じて、2次電子が第2スペーサSP2から放出され、第2スペーサSP2は正電荷を帯びるように帯電されることができる。高電圧下で第2スペーサーSP2に帯電される場合、アーク(arc)発生危険があり、これはX線チューブの動作安定性、即ち信頼性が問題されることができる。
【0044】
図2は本発明の概念によるX線チューブの構造を示す断面図である。以下では説明することを除けば図1で説明したことと重複されるので、重複される説明は省略する。
【0045】
図2を参照すれば、第2スペーサーSP2は互いに連結される第1部分ILL及び第2部分ILHを含むことができる。第1部分ILL及び第2部分ILHは一体(one body)の第2スペーサーSP2をなすことができる。第2スペーサーSP2の第1部分ILL及び第2部分ILHはアノード電極14を囲むことができる。第1部分ILLは第2部分ILHよりゲート電極13に近く位置することができる。
【0046】
第1部分ILLは低-比抵抗絶縁体を含み、第2部分ILHは高-比抵抗絶縁体を含むことができる。本明細書で低-比抵抗絶縁体、及び高-比抵抗絶縁体は体積抵抗率(Volume resistivity)(又は比抵抗(resistivity))のサイズに応じて定義される。低-比抵抗絶縁体は1012Ω・cm以下の比抵抗を有する物質で、高-比抵抗絶縁体は1012Ω・cm超過の比抵抗を有する物質で定義されることができる。
【0047】
低-比抵抗絶縁体及び高-比抵抗絶縁体はセラミック絶縁体及び前記セラミック絶縁体内に分散された伝導性ドーパント(dopant)を含むことができる。一部の実施形態によれば、高-比抵抗絶縁体は伝導性ドーパントを概ね含まなくともよい。伝導性ドーパントは前記セラミック絶縁体内で均一に分布されることができる。
【0048】
セラミック絶縁体は、一例としてアルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、及びイットリア(Y)の中で少なくともいずれか1つを含むことができる。伝導性ドーパントはチタニウム酸化物(TixOy、x=1~3、y=1~3)を含むことができる。他の一例として、第2金属酸化物は酸化クロム(Cr)を含むことができる。一例として、セラミック絶縁体はアルミナ(Al)を含むことができ、伝導性ドーパントはチタニア(TiO)を含むことができる。低-比抵抗絶縁体内で伝導性ドーパントの量は2wt%以上であり得る。高-比抵抗絶縁体内で伝導性ドーパントの量は2wt%未満であり得る。
【0049】
第1部分ILL及び第2部分ILHが全てチタニウム酸化物(TixOy、x=1~3、y=1~3)を含む場合、第1部分ILL Ti、及び/又はTiOの濃度は第2領域内のTi、及び/又はTiOの濃度より大きいことができる。
【0050】
第2スペーサーSP2は添加剤及びその他の不純物をさらに含むことができる。第2スペーサーSP2の第1部分ILL及び第2部分ILH内で添加剤及びその他の不純物の種類及び量は実質的に同一であることができる。第2スペーサーSP2内で添加剤の量の総和は1wt%乃至4wt%である。第2スペーサーSP2内で不純物の量の総和は2wt%未満である。添加剤はシリコン酸化物(SiO)及び二酸化マンガン(MnO)のように、第2スペーサーSP2の剛性を増加させ、後述するブレイジング工程時の電極との接着力を増加させる物質を含むことができる。不純物は炭素及びその他の酸化物を含むことができる。
【0051】
一部の実施形態によれば、第2スペーサーの第1部分ILL及び第2部分ILHは各々互いに異なる種類のセラミック絶縁体を含むことができる。第1部分ILLが低い比抵抗を有する第1セラミック絶縁体を含み、第2部分ILHが前記第1セラミック絶縁体よりさらに高い比抵抗を有する第2セラミック絶縁体を含むことができる。第1セラミック絶縁体及び第2セラミック絶縁体は互いに異なる物質の金属酸化物を含むことができる。一部の実施形態によれば、第1部分ILLは伝導性ドーパントをさらに含むことができる。
【0052】
X線チューブ動作で最も問題がされる三重点P1は真空、最隣接電極(ex:ゲート電極)13、及び第2スペーサーSP2の第1部分ILLが互いに出会う点に該当する。第2スペーサーSP2の第1部分ILLは低-比抵抗絶縁体を含むことによって、前記三重点P1での電子発生が抑制されることができる。また、電子が第1部分ILLに散乱されても、2次電子が発生しないようにすることができる。これに反して、第2スペーサーSP2の第2部分ILHは電子が良く発生しなく、散乱された電子の衝突頻度が低い部分に該当する。第2スペーサーSP2の第2部分ILHは高-比抵抗絶縁体を含むことによって、高電圧状態でもX線チューブが絶縁状態を維持するようにすることができる。
【0053】
第1部分ILL及び第2部分ILHの接点の第1レベルLV1はターゲット15の最下部の第2レベルLV2より低いことができる。即ち、第1レベルLV1は第1部分ILLの最上部のレベルLV1と実質的に同一であることができる。第1部分ILLの最下部のレベルはエミッタ12の最上部のレベルより高いことができる。
【0054】
X線チューブは高電圧状態で絶縁性を維持するために、第2スペーサーSP2内で一定比率以上の第2部分ILHが要求される。本発明の実施形態と異なりに、第2レベルLV2が第1レベルLV1より低く構成される場合はターゲット15が第1部分ILL及び第2部分ILHの接点よりカソード電極11と隣接するようにアノード電極14が第1方向D1に沿って延長される場合に該当される。この場合、エミッタ12とターゲット15が隣接するように位置し、電子ビーム(E-Beam)とターゲット14の衝突から発生された散乱電子の中で一部がエミッタ12と衝突することができ、エミッタ12の損傷危険がある。本発明の概念によれば、ターゲット15は第1部分ILL及び第2部分ILHの接点より高く配置されて、ターゲット15で発生された散乱電子がエミッタ12と衝突することを防止することができ、X線チューブの信頼性が増加することができる。
【0055】
本発明の概念に係る第2スペーサーSP2は以下のような方法を通じて形成される。一例として、添加剤が含まれたアルミナ(Al)絶縁体の総量を基準にして、前記アルミナの一部分(第2スペーサーSP2の第1部分ILLに対応)に2wt%超過のチタニア(TiO)を添加し、残りの部分(第2スペーサーSP2の第2部分ILHに対応))に2wt%以下のチタニア(TiO)を添加して焼結することができる。水素気体雰囲気で高温の熱処理をすることによって、第2スペーサーSP2の第1部分ILL及び第2部分ILHを形成することができる。二酸化チタニウム(TiO)の少なくとも一部は水素気体雰囲気で還元されてTi及び/又はTiOを形成することができる。追加的にゲート電極13と接触する部分にメタライジング(Metallizing)工程が行われることができる。メタライジング工程を通じて真空状態で第2スペーサーSP2とゲート電極13との間の接着力が増加することができる(ブレイジング接合)。
【0056】
図3は一部の実施形態によるX線チューブの構造を示す断面図である。以下では説明することを除けば、図2で説明したことと重複されるので、重複される説明は省略する。
【0057】
図3を参照すれば、第2スペーサーSP2の第1部分ILLの外周面上に金属膜17が選択的に提供されることができる。金属膜17は第2スペーサーSP2の第1部分ILLと直接接触することができる。一部の実施形態によれば、金属膜17は追加的な連結手段を通じて第2スペーサーSP2の第1部分ILLと電気的に連結されることができる。金属膜17は第2スペーサーSP2の第2部分ILHの外周面上には提供されなくともよい。また、金属膜17は第2スペーサーSP2の内周面上には提供されなくともよい。
【0058】
金属膜17は一例として銅等の金属物質を含むことができる。金属膜17は第1部分ILL上に直接(directly)コーティングされた薄膜(thin film)(ex:厚さが1μm以下)であってもよく、バルク形状の金属厚膜(thick film)(ex:厚さが1μm超過)であってもよい。金属膜17は接地電源と連結されて第1部分ILLと衝突した電荷を除去することができる。
【0059】
図4は一部の実施形態によるX線チューブの構造を示す断面図である。以下では説明することを除けば、図3で説明したことと重複されるので、重複される説明は省略する。
【0060】
図4を参照すれば、一部の実施形態によるX線チューブは第2スペーサーSP2及びゲート電極13の間に提供される導電構造体MSを含むことができる。導電構造体MSは一例として、金属合金を含むことができる。金属合金は鉄、ニッケル、及びコバルトを含むコバール(kovar)又はスーパーコバール(Super Kovar)を含むことができる。
【0061】
導電構造体MSはチューブ形状を有し、曲がった形状を有することができる。一例として、導電構造体MSの一側面は“L”形状を有することができる。エミッタ12はターゲット15と水平に離隔されるように配置されることができ、ウインドーWWはターゲット15と垂直に離隔されるように配置されることができる。導電構造体MSの形状を調節してエミッタ12、ターゲット15、及びウインドーWWの位置及び配列を調節することができる。
【0062】
ウインドーWWはターゲット15と垂直に重畳する導電構造体MSの領域上に形成されることができる。具体的に、ウインドーWWは導電構造体MSを貫通して形成されることができる。導電構造体MSは接地電源と連結されることができる。
【0063】
導電構造体MSと第2スペーサーSP2が接触される三重点での電子発生を抑制することができ、散乱電子は接地電源と連結された導電構造体MS及び/又は金属膜17を通じて除去されることができる。
【0064】
一部の実施形態によれば、図2図4の第1スペーサーSP1も第2スペーサーSP2のように比抵抗が低い第1部分ILLと比抵抗が高い第2部分ILHを含むことができる。
【0065】
以上、添付された図面を参照して本発明の実施形態態を説明したが、本発明はその技術的思想や必須の特徴を変形しなくとも他の具体的な形態に実施されることもできる。したがって、以上で記述した実施形態にはすべての面で例示的なことであり、限定的ではないことと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0066】
11 カソード電極
12 エミッタ
14 アノード電極
15 ターゲット
13 ゲート電極
SP1 第1スペーサー
SP2 第2スペーサー

図1
図2
図3
図4