(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】手術技能レベルベース器具制御を備える遠隔操作手術システム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20240614BHJP
B25J 3/00 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J3/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022077991
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2019521119の分割
【原出願日】2017-11-10
【審査請求日】2022-05-25
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】リン,ヘンリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】アズィズィアン,マーディ
(72)【発明者】
【氏名】ディマイオ,サイモン ピー
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ブライアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャーク,アンソニー エム.
(72)【発明者】
【氏名】リウ,メイ コーメイ.
(72)【発明者】
【氏名】マクドウォール,イアン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ノーリン,ウィリアム シー.
(72)【発明者】
【氏名】トカルチャク,ブレント
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/028858(WO,A1)
【文献】特表2017-528211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0172908(US,A1)
【文献】特開2009-131374(JP,A)
【文献】特開平08-071072(JP,A)
【文献】国際公開第2016/053657(WO,A1)
【文献】特表2014-520279(JP,A)
【文献】特表2012-521568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 - 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のロボット手術器具と、
解剖学的組織の画像及び前記第1のロボット手術器具の画像を取り込むために手術部位に向かって配向可能な画像キャプチャデバイスと、
前記解剖学的組織の取込み画像及び前記第1のロボット手術器具の取込み画像をユーザに示すために前記画像キャプチャデバイスに連結されるユーザディスプレイと、
前記第1のロボット手術器具の動きを制御するユーザ入力命令を受信するように連結されるユーザ入力命令デバイスと、
前記ユーザ入力命令デバイスから前記ユーザ入力命令を受信するように連結され、前記ユーザ入力命令に応答して前記第1のロボット手術器具の動きを制御するように構成され、前記受信されるユーザ入力命令を提供する前記ユーザの前記第1のロボット手術器具を使用するときの手術技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対して前記第1のロボット手術器具の移動量をスケーリングするように構成される、移動コントローラと、を含む、
遠隔操作手術システム。
【請求項2】
前記移動コントローラは、前記受信されるユーザ入力命令を提供する前記ユーザの前記第1のロボット手術器具を使用するときの第1の手術技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量の第1の比だけ、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの前記移動量に対して前記第1のロボット手術器具の前記移動量をスケーリングするように構成され、
前記移動コントローラは、前記ユーザの第2の手術技能レベルに対応する前記第1のロボット手術器具を使用するときの前記ユーザの前記第2の手術技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量の第2の比だけ、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの前記移動量に対して前記第1のロボット手術器具の前記移動量をスケーリングするように構成され、
前記第1の比は、前記第2の比よりも小さい、
請求項1に記載の遠隔操作手術システム。
【請求項3】
前記第2の比だけスケーリングされる前記第1のロボット手術器具の前記移動量は、前記ユーザ入力命令デバイスで受信される前記ユーザ入力命令によって示される移動量と一致する、請求項2に記載の遠隔操作手術システム。
【請求項4】
前記第1の比だけスケーリングされる前記第1のロボット手術器具の前記移動量は、前記ユーザ入力命令デバイスで受信される前記ユーザ入力命令によって示される移動量よりも少ない、請求項2に記載の遠隔操作手術システム。
【請求項5】
前記移動コントローラは、前記第1のロボット手術器具を使用するときの前記ユーザの第1の技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量の第1の比だけ、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対して前記第1のロボット手術器具の移動量をスケーリングするように構成可能であり、
前記移動コントローラは、前記第1のロボット手術器具を使用するときの前記ユーザの第2の技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量の第2の比だけ、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対して前記第1のロボット手術器具の移動量をスケーリングするように構成可能であり、
前記移動コントローラは、前記第1のロボット手術器具を使用するときの前記ユーザの第3の技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量の第3の比だけ、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対して前記第1のロボット手術器具の移動量をスケーリングするように構成可能である、
請求項1に記載の遠隔操作手術システム。
【請求項6】
前記ユーザディスプレイは、前記ユーザ入力命令デバイスで受信される前記受信されるユーザ入力命令を提供する前記ユーザの第1の技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令に応答して第1のメッセージを表示するように構成され、
前記移動コントローラは、前記第1のロボット手術器具を使用するときの前記ユーザの第1の技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量の第1の比だけ、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対して前記第1のロボット手術器具の移動量を調節するように構成され、
前記ユーザディスプレイは、第2のロボット手術器具を使用するときの前記ユーザの第2の技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令に応答して第2のメッセージを表示するように構成可能であり、
前記移動コントローラは、前記第2のロボット手術器具を使用するときの前記ユーザの第2の技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量の第2の比だけ、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対して前記第2のロボット手術器具の移動量を調節するように構成可能である、
請求項1に記載の遠隔操作手術システム。
【請求項7】
複数のロボット手術器具のうちの少なくとも1つを選択的に取り付けるように構成されるロボット手術器具マニピュレータを更に含み、
前記複数のロボット手術器具は、少なくとも、前記第1のロボット手術器具と、第2のロボット手術器具とを含み、
前記移動コントローラは、前記ユーザ入力命令に応答して、前記ロボット手術器具マニピュレータに選択可能に取り付けられるときに、前記第1のロボット手術器具の動きを制御するように構成され、前記受信されるユーザ入力命令を提供する前記ユーザの前記第1のロボット手術器具を使用するときの手術技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量の第1の比だけ、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記第1のロボット手術器具の第1の移動量を調節するように構成され、
前記移動コントローラは、前記ユーザ入力命令に応答して、前記ロボット手術器具マニピュレータに選択可能に取り付けられるときに、前記第2のロボット手術器具の動きを制御するように構成され、前記受信されるユーザ入力命令を提供する前記ユーザの前記第2のロボット手術器具を使用するときの手術技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量の第2の比だけ、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記第2のロボット手術器具の第2の移動量を調節するように構成される、
請求項1に記載の遠隔操作手術システム。
【請求項8】
前記ユーザディスプレイは、前記ロボット手術器具マニピュレータに取り付けられる少なくとも1つのロボット手術器具を使用するときの前記ユーザの技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令に応答して複数のそれぞれのメッセージのうちの1つを表示するように構成される、請求項7に記載の遠隔操作手術システム。
【請求項9】
ロボット手術器具マニピュレータを含む遠隔操作手術システムの作動方法であって、
前記遠隔操作手術システムの
ユーザ入力命令デバイスが、前記ロボット手術器具マニピュレータに取り付けられるロボット手術器具の動きを制御するためにユーザからユーザ入力命令を受信することと、
ユーザ入力命令デバイスが前記ユーザ入力命令を受信することの間に、
前記遠隔操作手術システムのプロセッサが、前記ロボット手術器具マニピュレータに取り付けられるロボット手術器具を識別することと、
前記遠隔操作手術システムの移動コントローラが、
前記ユーザ入力命令デバイスから前記ユーザ入力命令を受信し、前記ユーザ入力命令に
応答して、
前記移動コントローラに格納される前記識別される手術器具の使用のときの前記ユーザの技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の移動量
の設定値を調節することと、を含む、
作動方法。
【請求項10】
前記プロセッサが、ユーザを識別することと、
前記プロセッサが、前記識別される手術器具の使用のときの前記識別されるユーザの技能の表示を受信することと、を更に含む、
請求項9に記載の作動方法。
【請求項11】
前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の前記移動量を調節することは、
前記識別される手術器具が第1の手術器具を含むこと及び前記ユーザが前記第1の手術器具の使用のときの第1の技能レベルを有することに応答して、前記プロセッサが、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の第1の移動量
の設定値を調節することと、
前記識別される手術器具が第2の手術器具を含むこと及び前記ユーザが前記第2の手術器具の使用のときの第2の技能レベルを有することに応答して、前記プロセッサが、前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対する前記ロボット手術器具の第2の移動量
の設定値を調節することと、を含む、
請求項9に記載の作動方法。
【請求項12】
前記プロセッサが、ユーザを識別することと、
前記プロセッサが、前記第1の手術器具の使用のときの前記識別されるユーザの前記第1の技能レベルの表示を受信することと、
前記プロセッサが、前記第2の手術器具の使用のときの前記識別されるユーザの前記第2の技能レベルの表示を受信することと、を更に含む、
請求項11に記載の作動方法。
【請求項13】
前記プロセッサが、ユーザを識別することと、
前記プロセッサが、前記第1の手術器具の使用のときの前記識別されるユーザの前記第1の技能レベルの表示を受信することと、
前記プロセッサが、前記第2の手術器具の使用のときの前記識別されるユーザの前記第2の技能レベルの表示を受信することと、を更に含み、
前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対して調整される前記第1の手術器具の前記第
1の移動量は、前記ユーザ入力命令によって示される移動量よりも少ない、
請求項11に記載の作動方法。
【請求項14】
前記ユーザ入力命令中の前記ユーザ入力命令デバイスの移動量に対して調整される前記第2の手術器具の前記第2の移動量は、前記ユーザ入力命令によって示される移動量と一致する、請求項13に記載の作動方法。
【請求項15】
前記調整される第2の移動量は、前記ユーザ入力命令によって示される移動量よりも少ない、請求項13に記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
この出願は、2016年11月11日に出願された米国出願第62/421,072号の優先権の利益を主張し、その全文を参照として本明細書に援用する。
【0002】
発明的な態様は、手術中に使用される医療デバイスと関連する。より具体的には、それらの態様は、外科医の技能レベルに従った手術器具の使用と関連する。
【背景技術】
【0003】
外科医は、典型的には、外科的処置を行う前に広範な学習を行う。従来、外科医は、写真又は図面のような一般的な解剖学的モデルの学習に限られていた。より最近では、様々な術前診断処置(例えば、X線、CT、MRIなど)が、患者特異的な解剖学的情報を利用可能にしている。
【0004】
幾つかの場合には、追加的な関連する解剖学的及び外科的処置情報を外科医に利用にすることが望ましい。1つの態様では、特定の患者に対して手術を計画している外科医に、その特定の患者に対して行われた以前の外科的処置の手術部位ビデオ記録を提供することが望ましい。他の態様では、外科医に、特定の患者に対して計画された外科的処置に類似する他の患者に対する外科的処置の1以上(1つ又はそれよりも多く)の外科的ビデオ記録を提供することが望ましい。1つの態様では、外科医が特定の外科的処置を行う前に、そのような情報を外科医に提供することが望ましい。また、別の態様では、この情報を術中に外科医に提供することが望ましいことがある。
【0005】
1つの態様では、様々な患者が受けた様々な処置の術中手術部位ビデオ記録を含むビデオデータベースを構成することが望ましい。1つの態様では、ビデオ記録が記録されているときに、医療デバイスを使用する外科医がビデオ記録をリアルタイムに強調(ハイライト)して注釈を付けることを可能にする入力を更に含むように、ビデオ記録可能な医療デバイスを構成することが望ましい。1つの態様では、ビデオデータベースの個々の記録を検索し、関連するビデオ記録を特定し、且つ特定の外科的処置のためにこの関連情報を外科医に提供するように、コンピュータベースのパターン一致アルゴリズム(pattern matching algorithm)を構成することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
以下の要約は、基本的な理解を提供するために、発明的な主題の特定の態様を提示する。この要約は、発明的な主題の広範な概観ではなく、鍵となる要素又は重要な要素を特定することを意図せず、或いは発明的な主題の範囲を限定することを意図しない。この要約は、発明的な主題の様々な態様及び実施形態に関連する情報を含むが、その唯一の目的は、以下のより詳細な記述の前文として、幾つかの態様及び実施形態を一般的な形態で提示することである。
【0007】
手術方法が、ロボット手術器具を含む遠隔操作手術システムと共に使用するために提供される。画像キャプチャデバイスが、解剖学的組織及びロボット手術器具の画像を取り込むために、手術部位に向かって配向可能である。ユーザディスプレイが、解剖学的組織及びロボット手術器具の取込み画像をユーザに示すために、画像キャプチャデバイスに連結される。ユーザ入力命令デバイスが、ユーザ入力命令を受信してロボット手術器具の動きを制御するために連結される。移動コントローラ回路が、入力命令デバイスからユーザ入力命令を受信するよう連結される。移動コントローラ回路は、ユーザ入力命に応答してロボット手術器具の動きを制御するように構成される。移動コントローラ回路は、ユーザ入力命令デバイスで受信されるユーザ入力命令によって示される移動速度から、受信されるユーザ入力命令を提供するユーザのロボット手術器具を使用するときの手術技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、ロボット手術器具の動作速度をスケーリング(増減)するように更に構成される。
【0008】
ロボット手術器具マニピュレータを含む遠隔操作手術システムを作動させる方法が提供される。ユーザ入力命令が、ロボット手術器具マニピュレータに取り付けられるロボット手術器具の動きを制御するために、ユーザから受信される。ユーザ入力命令を受信する間に、ロボット手術器具マニピュレータに取り付けられるロボット手術器具の識別決定が行われる。ロボット手術器具の移動速度が、ユーザ入力命令によって示される移動速度から、識別された手術器具の使用のときのユーザの技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、スケーリング(増減)される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】最小侵襲遠隔操作手術システムの平面図である。
【
図4】遠隔操作手術システムの概略的な例示である。
【
図9】手術計画ツールを使用する方法のフロー図である。
【
図10】幾つかの実施形態に従ったコンピュータ可読記憶デバイス中の格納アトラスを表す例示的な図である。
【
図11】幾つかの実施形態に従った、個々の手術から記録されたビデオ情報を対応する手術器具アクチュエータ状態情報及び外科医の眼球運動情報と関連付ける、記憶装置中のアトラス内に含められる第9の情報構造の例を表す例示的な図である。
【
図12A】幾つかの実施形態に従った、手術器具を3つの異なる例示的な動作状態において示す、例示的な手術器具及びアクチュエータアセンブリを示す、例示的な図である。
【
図12B】幾つかの実施形態に従った、手術器具を3つの異なる例示的な動作状態において示す、例示的な手術器具及びアクチュエータアセンブリを示す、例示的な図である。
【
図12C】幾つかの実施形態に従った、手術器具を3つの異なる例示的な動作状態において示す、例示的な手術器具及びアクチュエータアセンブリを示す、例示的な図である。
【
図13】例示的な外科医によって行われる例示的な外科的処置に対応するコンピュータ可読記憶デバイス1004中に格納されるアトラスの例示的な第9の情報構造を表す例示的な図である。
【
図14】幾つかの実施形態に従った外科医技能レベル情報に少なくとも部分的に基づく手術器具安全作動状態に従ったユーザ器具間移動の運動学的並進を測定する(scale)プロセッサの構成を表す例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この記述及び発明的な態様、実施形態、実施、又は適用を例示する添付の図面は、限定的なものと考えられてならない。請求項は、保護される発明を定める。この記述及び請求項の範囲から逸脱することなく、様々な機械的、組成的、構造的、電気的、及び動作的な変更が行われてよい。幾つかの場合には、本発明を不明瞭にしないために、周知の回路、構造、又は技法を詳細に示さず或いは記載しない。2以上(2つ又はそれよりも多く)の図中の同等の数字は、同一又は類似の要素を表す。
【0011】
1つの実施形態、実施、又は適用に関して詳細に記載する要素は、実用的である場合にはいつでも、それらが具体的に示されず或いは記載されない、他の実施形態、実施、又は適用に含められてよい。例えば、ある要素が1つの実施形態を参照して詳細に記載され、第2の実施形態を参照して記載されないならば、その要素は、それにも拘わらず、第2の実施形態に含まれるものとして主張されることがある。よって、以下の記載における不要な反復を避けるために、1つの実施形態、実施、又は適用に関連して示し且つ記載する1以上の要素は、特に他の記述がない限り、その1以上の要素が実施形態又は実施を非機能的にしない限り、或いはそれらの要素のうちの2以上が矛盾する機能を提供しない限り、他の実施形態、実施、又は態様に組み込まれてよい。
【0012】
本発明の態様は、Sunnyvale, CaliforniaのIntuitive Surgical, Inc.によって商業化されている、da Vinci(登録商標)Surgical System(特に、da Vinci(登録商標)XiTM HDTM Surgical Systemとして市販されている、Model IS4000 da Vinci(登録商標)XiTM HDTM Surgical System)を用いた実施に関して主に記載される。しかしながら、当業者は、本明細書に開示する発明的な態様が、ロボット的な実施形態及び実施、並びに、適用可能であるならば、非ロボット的な実施形態及び実施を含む、様々な方法において、具現され且つ実施されてよいことを理解するであろう。da Vinci(登録商標)Surgical System(例えば、Model IS4000 da Vinci(登録商標)XiTM Surgical System、Model IS3000 da Vinci(登録商標 Surgical System)に関する実施は、例示的であるに過ぎず、本明細書に開示する発明的な態様の範囲を限定するものとみなされてならない。
【0013】
様々な態様によれば、本開示は、外科的処置のパフォーマンスをビデオ記録するように構成された医療デバイスを含む手術計画ツールを記載する。ビデオ記録は、様々なメタデータ、例えば、医療者によって作成されたハイライトに埋め込まれることができる。加えて、ビデオ記録は、様々なメタデータ、例えば、ビデオの特定の主題を記述するテキスト注釈、ビデオ記録が対応する患者の識別、患者に関する履歴的又は医学的情報、及び同等情報でタグ付けされることができる。1つの態様において、タグ付けされるメタデータは、ビデオ記録中に埋め込まれる。
【0014】
更なる態様によれば、本開示は、外科的処置の間に少なくとも1つの外科的活動を行うために使用される手術器具を含む遠隔操作医療デバイスを記載する。外科的活動の異なる段階は、異なる手術技能レベルを必要とすることがある。幾つかの実施形態では、外科的活動における手術レベルは、少なくとも部分的に、外科的活動の外科医のパフォーマンスレベルと活動中の他の外科医のパフォーマンスレベルとの比較に基づいて決定されてよい。手術は、外科的処置の異なる部分の間に、異なる手術器具の使用を含むことがある。手術中に使用される各手術器具は、複数のアクチュエータ状態において作動可能な1以上の手術器具アクチュエータによって制御される。手術の異なる部分の間にどの手術器具が使用中であるかが追跡される。幾つかの実施形態では、使用中である手術器具を制御するアクチュエータのアクチュエータ状態が、外科的処置中に追跡される。幾つかの実施態様において、外科医の眼球運動は、手術中の外科医の注視の方向を決定するために、カメラを用いて追跡される。幾つかの実施形態では、コンピュータ可読記憶デバイス内の情報構造が、少なくとも1つの外科的活動を実行するための手術器具の使用に応答して、使用中の手術器具及び手術器具アクチュエータ状態を、外科医への提示のための外科的ガイダンス情報と関連付ける。幾つかの態様において、外科医に提示される外科的ガイダンス情報は、少なくとも部分的に、外科医の手術技能レベルに基づいて決定される。幾つかの実施形態では、コンピュータ可読記憶デバイス内の情報構造が、手術中の手術器具の使用又は少なくとも1つの外科的活動の遂行中のその特定のアクチュエータ状態を、手術器具アクチュエータを外科医の技能レベルと一致する(matches)アクチュエータ安全作動状態に移行させるための使用のための安全移行情報と関連付ける。幾つかの実施形態において、手術器具アクチュエータの安全作動状態は、少なくとも部分的に、外科医の技能レベルに基づいて決定される。
【0015】
遠隔操作手術システムでは、異なる器具が、外科的処置の異なる段階で使用されることがある。その上、同じ器具は、外科的処置の異なる段階で異なるアクチュエータ状態で使用されることがある。本明細書で使用するとき、アクチュエータ状態(actuator state)という用語は、外科医又は他の外科チームメンバーから受け取る入力命令に応答して、モータのようなアクチュエータによって決定されるような、手術器具の機械的配置(mechanical disposition)を指す。
【0016】
手術器具の使用又は特定のアクチュエータ状態を手術ガイダンス又はアクチュエータの安全状態情報と関連付けるビデオ記録及び情報構造は、ローカルに又はクラウドデータ格納サービス上に実装される電子医療記録データベース上にアーカイブされることができる。ビデオ記録は、関心のあるヘルスケアプロバイダに利用可能にさせられることができる。情報構造は、外科的ガイダンスを提供するために並びに外科的処置の実施中の少なくとも1つの外科的活動の実施中に外科的器具アクチュエータ状態を制御するために、遠隔操作医療デバイスとの使用のために利用可能にさせられることができる。
【0017】
ヘルスケアプロバイダは、上述のメタデータタグを使用して、関心のあるビデオ及び情報構造関係についての外科医の技能レベルに基づいて、医療デバイスデータベースを検索することができる。追加的に、1つの態様において、手術計画ツールは、コンピュータベースのパターン一致及び分析アルゴリズムを含む。1つの態様において、パターン一致アルゴリズムは、電子医療記録データベースに記録されるビデオを選別して(cuffs through)、医療者によって作成された関連メタデータタグとビデオ記録中の視覚的特徴との間の相関を識別する。手術計画ツールは、これらの相関を新たに直面する解剖学的構造に適用することにより、患者の解剖学的構造、好ましい外科的アプローチ、病状、潜在的な合併症などについての決定を行う際に処置を行う医療者を支援することができる。他の態様において、パターン一致アルゴリズムは、電子医療記録データベースに記憶されるビデオを選別して、ビデオ記録中の視覚的特徴と患者の健康記録情報との間の相関を識別して、外科医の技能レベル情報と相関する患者の解剖学的特徴を識別する。手術計画ツールは、解剖学的構造と外科医の技能レベル記録との間のこれらの相関を現在の患者の解剖学的構造及び健康記録に適用することにより、医療者が現在の患者に関係する外科的処置を計画及び実行するのを支援することができる。
【0018】
(最小侵襲遠隔操作手術システム)
ここで、幾つかの図を通じて同等の照番号が同等の部分を表す図面を参照すると、
図1は、手術台14に横たわっている患者12に対して最小侵襲診断又は外科的処置を実施するために典型的に使用される、最小侵襲遠隔操作手術システム10の平面図である。システムは、処置中の外科医18による使用のための外科医コンソール16を含む。1人以上(1人又はそれよりも多くの)の助手20も、処置に参加することがある。最小侵襲遠隔操作手術システム0は、患者側カート22及び電子機器カート24を更に含む。患者側カート22は、外科医18が外科医コンソール6内のユーザディスプレイを通じて手術部位を見る間に、患者12の身体にある最小侵襲性切開を通じて少なくとも1つの取り外し可能に連結される手術器具26を操作することができる。手術部位の画像は、立体視内視鏡28のような画像キャプチャデバイスによって得られることができ、立体視内視鏡28は、手術部位での患者解剖学的構造及び1以上の手術器具の画像を取り込むために、内視鏡28を方向付けるよう、患者側カート22によって操作されることができる。電子機器カート24上に配置されるコンピュータプロセッサを使用して、外科医コンソール16における立体視ディスプレイを通じた外科医18への後続の表示のために、手術部位の画像を処理することができる。一度に使用される手術器具26の数は、一般的に、他の要因の中でも、診断的処置又は外科的処置及び手術室内の空間制約に依存する。処置中に使用される手術器具26のうちの1以上を変更することが概ね必要ならば、助手20は、患者側カート22から手術器具26を取り外し、それを手術室内のトレイ30からの他の手術器具26と交換することができる。
【0019】
図2は、外科医コンソール16の斜視図である。外科医コンソール16は、外科医18に深さ知覚を可能にする手術部位の調整された立体視ビューを提示する左眼ディスプレイ32及び右眼ディスプレイ34を含む、ユーザディスプレイを含む。コンソール16は、ハンドグリップ36,38を含む1以上の手動制御入力を含む、入力命令デバイスを更に含む。(
図1に示す)患者側カート22での使用のために設置される1以上の手術器具が、外科医18による1以上の制御入力36,38の操作に応答して移動する。制御入力36,38は、(
図1に示す)それらの関連する手術器具26と同じ機械的自由度を提供して、外科医18にテレプレゼンス、又は外科医が器具26を直接的に制御しているという強い感覚を有するよう制御入力36,38が器具26と一体的であるという知覚を提供することができる。この目的を達成するために、制御入力36,38を通じて手術器具26からの位置、力、及び触覚の感覚を外科医の両手に伝えるよう、位置センサ、力センサ、及び触覚フィードバックセンサ(図示せず)を利用してよい。
【0020】
外科医が処置尾を直接的に監視し、必要に応じて物理的に存在し、電話又は他の通信媒体を介さずに直接的に患者側の助手に話すことができるよう、外科医のコンソール16は、通常、患者と同じ部屋に配置される。しかし、外科医は、別の部屋、全く異なる建物、又は遠隔外科処置を可能にする患者から離れた他の場所に位置することができる。
【0021】
図3は、電子機器カート4の斜視図である。電子機器カート24は、内視鏡28に連結されることができ、例えば、外科医コンソール16にいる外科医への或いはローカルに及び/又は遠隔に配置された他の適切なディスプレイ上への後続の表示のために、取り込んだ画像を処理するコンピュータプロセッサを含む。例えば、立体視内視鏡が使用されるならば、電子機器カート24上のコンピュータプロセッサが、取り込んだ画像を処理して、手術部位の調整された(coordinated)立体画像を、左眼及び右眼ディスプレイ32,34で外科医に提示することができる。そのような調整(coordination)は、対向する画像間のアライメント(整列)を含むことができ、立体視内視鏡の立体作動距離を調節する(adjust)ことを含むことができる。他の例として、画像処理は、光学収差のような画像キャプチャデバイスの画像誤差を補償するために、以前に決定されたカメラ較正パラメータの使用を含むことができる。任意的に、電子機器カート内の機器は、外科医コンソール又は患者側カートに一体化されてよく、或いはそれは手術室内の様々な他の場所に分散させられてよい。
【0022】
図4は、(
図1の最小侵襲遠隔操作手術システム100のような)遠隔操作手術システム50を概略的に例示している。(
図1中の外科医コンソール16のような)外科医コンソール52が、最小侵襲処置中に、(
図1中の患者側カート22のような)患者側カート54を制御するために外科医によって使用されることができる。患者側カート54は、立体視内視鏡のような撮像デバイスを用いて、手術部位の画像を取り込み、取り込んだ画像を(
図1中の電子機器カート24のような)電子機器カート56上に配置されるコンピュータプロセッサに出力することができる。コンピュータプロセッサは、典型的には、コンピュータプロセッサの不揮発性メモリデバイス中に格納されるコンピュータ可読コードを実行することを目的とする1以上のデータ処理ボードを含む。1つの態様において、コンピュータプロセッサは、任意の後続の表示の前に、取り込んだ画像を様々な方法で処理することができる。例えば、コンピュータプロセッサは、外科医コンソール52を介して結合された画像を外科医に表示するに前に、取り込んだ画像を仮想制御インターフェースでオーバーレイすることができる。
【0023】
追加的に又は代替的に、取り込んだ画像は、電子機器カート56の外側に配置されるコンピュータプロセッサによる画像処理を受けることができる。1つの態様において、遠隔操作手術システム50は、(破線によって示すような)任意的なコンピュータプロセッサ58を含み、それは電子機器カート56上に配置されるコンピュータプロセッサに類似する1以上の中央処理装置(CPUs)ユニットを含み、患者側カート54は、外科医コンソール52上で表示する前の画像処理のために、取り込んだ画像をコンピュータプロセッサ58に出力する。他の態様において、取り込んだ画像は、先ず、電子機器カート56上のコンピュータプロセッサによる画像処理を受け、次に、外科医コンソール52上で表示する前に、コンピュータプロセッサ58による追加的な画像処理を受ける。遠隔操作手術システム50は、破線によって示すように、任意的なディスプレイ60を含むことができる。ディスプレイ60は、電子機器カート56上に配置されたコンピュータプロセッサ及びコンピュータプロセッサ58と連結され、これらのコンピュータプロセッサによって処理された取込み画像は、外科医コンソール52のディスプレイ上に表示されることに加えて、ディスプレイ60上に表示されることができる。
【0024】
その上、制御入力36,38は、手術部位における1以上の手術器具の動きを制御するためにユーザ入力命令を受信するように連結される。プロセッサ58は、制御入力36,38からユーザ入力命令を受信するように連結される運動学的動作コントローラ回路として作用する。プロセッサ58は、制御入力36,38の物理的移動の形態のユーザ入力を、モータを制御する制御信号に変換して、患者側カート54内の移動コントローラに対する1以上の手術器具の対応する移動を制御して、内視鏡又は1以上の手術器具に対応する移動を付与する。ユーザの手の動きによって制御入力36,38に付与されるユーザ入力の動きを、手術器具に連結されるモータによって付与される対応する器具の動きに変換することは、運動学的な移動変換を含み、それは、典型的には、器具移動を引き起こすユーザ命令を付与するよう制御入力36又は38が移動させられる距離のごく一部分だけ、器具が移動させられることがあるような、距離のスケーリング(scaling)を含む。換言すれば、ユーザ空間内の制御入力36,38に付与されるユーザ入力移動は、手術部位での器具空間内のより小さなスケール(scale)の対応する移動に変換される。遠隔操作手術システムにおける運動学的移動変換の例は、米国特許第、424,885号に記載されている。
【0025】
図5は、本発明の実施形態に従った、最小侵襲遠隔操作手術システムの患者側カート500の斜視図である。患者側カート500は、1以上の支持アセンブリ510を含む。手術器具マニピュレータ512が、各支持アセンブリ510の端に取り付けられる。加えて、各支持アセンブリ510は、任意的に、手術のために患者を参照して取り付けられる手術器具マニピュレータ512を位置決めするために使用される、1以上の動力供給されないロック可能なセットアップジョイントを含むことができる。描写のように、患者側カート500は、フロア上に位置する。他の実施形態では、患者側カートの手術部分を、壁、天井、患者の身体522も支持する手術台526、又は他の手術室機器に取り付けることができる。更に、患者側カート500は、4つの手術器具マニピュレータ512を含むように示されているが、より多い又はより少ない手術器具マニピュレータ512が使用されてよい。
【0026】
機能的な最小侵襲遠隔操作手術システムは、一般的に、遠隔操作手術システムのユーザが患者の身体522の外側から手術部位を見ることを可能にするビジョンシステム部分を含む。ビジョンシステムは、典型的には、ビデオ画像を取り込むカメラ器具528と、取り込んだビデオ画像を表示する1以上のビデオディスプレイとを含む。幾つかの手術システム構成において、カメラ器具528は、カメラ装置528の遠位端からの画像を患者の身体522の外側の1以上の撮像センサ(例えば、CCD又はCMOSセンサ)に転送する光学系を含む。代替的に、(複数の)撮像センサをカメラ器具528の遠位端に位置付けることができ、1以上のビデオディスプレイ上での処理及び表示のために、(複数の)センサによって生成された信号をリード線に沿って或いは無線で送信することができる。ビデオディスプレイの一例は、Sunnyvale, CaliforniaのIntuitive Surgical, Inc.によって商業化された手術システム中の外科医コンソール上の立体視ディスプレイである。
【0027】
図5を参照すると、各手術器具マニピュレータ512の各々に取り付けられているのは、患者の身体522内の手術部位で作動する手術器具520である。各手術器具マニピュレータ512を、関連する手術器具が1以上の機械的自由度(例えば、全部で6つのデカルト自由度、5つ以下のデカルト自由度など)で動くことを可能にする様々な形態で提供することができる。典型的には、機械的又は制御的制約は、患者を基準にして静止したままである器具上の運動中心の周りでその関連する手術器具を動かすよう、各マニピュレータ512を制約し、この運動中心は、典型的には、器具が身体に入る位置に配置される。
【0028】
1つの態様において、手術器具520は、コンピュータ支援遠隔操作を通じて制御される。機能的な最小侵襲遠隔操作手術システムは、遠隔操作手術システムのユーザ(例えば、外科医又は他の医療者)から入力を受信する制御入力を含む。制御入力は、手術器具520が連結される1以上のモータのような、1以上のコンピュータ制御遠隔操作アクチュエータと通信する。このようにして、手術器具520は、制御入力の医療者の動きに応答して移動する。1つの態様では、1以上の制御入力が、
図2に示す外科医コンソール16のような外科医コンソールに含まれる。外科医は、外科医コンソール16の制御入力36を操作して、患者側カート500の遠隔操作アクチュエータを作動させることができる。遠隔操作アクチュエータによって生成される力は、ドライブトレーン機構を介して移転され、ドライブトレーン機構は、遠隔操作アクチュエータからの力を手術器具520に伝達する。
【0029】
図5を参照すると、1つの態様において、手術器具520及びカニューレ524は、マニピュレータ512に取り外し可能に連結され、手術器具520は、カニューレ524を通じて挿入される。マニピュレータ512の1以上の遠隔操作アクチュエータは、手術器具512を全体的に移動させる。マニピュレータ512は、器具キャリッジ530を更に含む。手術器具520は、器具キャリッジ530に取り外し可能に接続される。1つの態様において、器具キャリッジ530は、手術器具520が手術器具520上のエンドエフェクタの様々な動きに変換する多数のコントローラ動作を提供する、1以上の遠隔操作アクチュエータを内側に収容する。よって、器具キャリッジ530内の遠隔操作アクチュエータは、器具全体というよりもむしろ、手術器具520の1以上の構成要素(コンポーネント)のみを移動させる。器具の全体又は器具の構成要素のいずれかを制御するための入力は、外科医又は他の医療者によって制御入力に提供する入力(「マスタ」命令)が手術器具による対応する動作(「スレーブ」応答)に変換されるような入力である。
【0030】
代替的な実施形態において、器具キャリッジ530は、遠隔操作アクチュエータを収容しない。手術器具520のエンドエフェクタの様々な動きを可能にする遠隔操作アクチュエータは、器具キャリッジ530から離れた場所、例えば、患者側カート500上の他の場所に収容される。ケーブルベースの力伝達機構又は同等の機構は、遠隔に配置される遠隔操作アクチュエータの各アクチュエータの動きを器具キャリッジ530上に配置される対応する器具インタフェースアクチュエータ出力(instrument-interfacing actuator output)に移転するために使用される。幾つかの実施形態において、手術器具520は、長手(z軸)回転のような手術器具の第1の動きを制御する、第1のアクチュエータに機械的に連結される。手術器具520は、二次元(x、y)運動のような手術器具の第2の動きを制御する、第2のアクチュエータに機械的に連結される。手術器具520は、ジョーエンドエフェクタの開閉のような手術器具の第3の動きを制御する、第3のアクチュエータに機械的に連結される。
【0031】
図6は、細長いチューブ中心線軸611を有する細長いチューブ610によって連結された、遠位部分650及び近位制御機構640を含む、手術器具520の側面図である。手術器具520は、患者の身体内に挿入されるように構成され、外科的又は診断的処置を実施するために使用される。手術器具520の遠位部分650は、図示のような鉗子、針ドライバ、焼灼デバイス、切断ツール、撮像デバイス(例えば、内視鏡又は超音波プローブ)、又は同等物のような、様々なエンドエフェクタ654のうちのいずれかを提供することができる。手術エンドエフェクタ654は、開閉するジョー又は経路に沿って並進するナイフのような、機能的な機械的自由度を含むことができる。図示の実施形態において、エンドエフェクタ654は、エンドエフェクタが細長いチューブの中心線軸611に対して方向付けられることを可能にするリスト652(手首部)によって、細長いチューブ610に連結される。手術器具520は、恒久的であってよい或いは手術器具520を作動させるように構成された手術システムによって更新可能であってよい、(例えば、器具の内側にある半導体メモリ上に)格納された情報を含むこともできる。従って、手術システムは、手術器具520と手術システムの1以上の構成要素との間の一方向又は二方向の情報通信を提供することがある。
【0032】
図7は、手術器具マニピュレータ512の斜視図である。器具マニピュレータ512は、手術器具が装着されていない状態で示されている。器具マニピュレータ512は、手術器具(例えば、手術器具520)を取り外し可能に接続することができる器具キャリッジ530を含む。器具キャリッジ530は、複数の遠隔操作アクチュエータを収容する。各遠隔操作アクチュエータは、アクチュエータ出力705を含む。手術器具が器具マニピュレータ512上に装着されるとき、器具近位制御機構(例えば、
図6にある近位制御機構640)の1以上の器具入力(図示せず)は、対応するアクチュエータ出力705と機械的に連結される。1つの態様において、この機械的連結は直接的であり、アクチュエータ出力705は、対応する器具入力と直接的に接触する。他の態様において、この機械的連結は、器具マニピュレータ512と関連する手術器具との間に滅菌バリアを提供するように構成されたドレープの構成要素のような、中間インターフェースを通じて起こる。
【0033】
1つの態様において、対応する遠隔操作アクチュエータによる1以上の器具入力の動作は、手術器具の機械的自由度の動きをもたらす。例えば、1つの態様において、器具マニピュレータ512に装着される手術器具は、
図6に示す手術器具520である。
図6を参照すると、1つの態様において、対応する遠隔操作アクチュエータによる近位制御機構640の1以上の器具入力の動きは、細長いチューブ610(及び取り付けられたリスト652及びエンドエフェクタ654)を細長いチューブ中心線軸611の周りで近位制御機構640に対して回転させる。他の態様において、対応する遠隔操作アクチュエータによる1以上の器具入力の移動は、リスト652の移動をもたらし、エンドエフェクタ654を細長いチューブ中心線軸611に対して方向付ける。他の態様において、対応する遠隔操作アクチュエータによる1以上の器具入力の動きは、エンドエフェクタ654の1以上の可動要素(例えば、ジョー部材、ナイフ部材など)の動きをもたらす。従って、器具キャリッジ530の遠隔操作アクチュエータの動作によって、器具マニピュレータ512上に装着される手術器具の様々な機械的自由度を移動させることができる。
【0034】
(記録されたビデオに注釈を付けること)
図8は、例示的な手術計画ツール800の概略図を示している。1つの態様において、手術計画ツール800は、電子医療デバイス記録データベース830とデータ通信する遠隔操作手術システム850を含む。本明細書に示す遠隔操作手術システム850は、
図4に示す遠隔操作手術システム850に類似している。1つの態様では、電子医療記録データベース830は、特定の病院で治療を受けた患者の医療記録を含む。データベース830は、病院の現場(on-site)に配置されるサーバに実装させられることができる。データベース830中に含まれる医療記録エントリは、イントラネットネットワークを通じて病院のコンピュータからアクセスされることができる。代替的に、データベース830は、例えば、多数のクラウドデータ格納サービスのうちの1つを使用して、病院の現場外(off-site)に配置される遠隔サーバ上に実装させられることができる。この場合、データベース830の医療記録エントリは、クラウドサーバに格納され、インタネットアクセスを備えるコンピュータによってアクセスされることができる。
【0035】
1つの態様において、外科的処置は、遠隔操作手術システム850を用いて第1の患者に対して行われる。遠隔操作手術システム850と関連付けられる撮像デバイスが、手術部位の画像を取り込み、取り込んだ画像を外科医コンソール52のディスプレイ上にビデオのフレームとして表示する。1つの態様では、外科医コンソール52の医療者は、外科医コンソール52の入力デバイスを用いて、表示されるビデオに示される特定の患者の解剖学的構造をハイラ強調(ハイライト)し或いは注釈する。そのような入力デバイスの一例は、
図2に示す制御入力36である。表示されるビデオ上にオーバーレイされるグラフィックユーザインタフェースと共に作動するカーソルに連結される。グラフィックユーザインタフェースは、QWERTYキーボード、マウスのようなポインティングデバイス、及び対話型スクリーンディスプレイ、タッチスクリーンディスプレイ、又はデータ若しくはテキスト入力のための他の手段を含むことができる。従って、医療者は、表示される画像中の特定の関心組織を強調するか或いはテキスト注釈を入力することができる。
【0036】
1つの態様において、手術部位ビデオは、電子機器カート56上に位置するディスプレイ上に更に表示される。1つの態様において、電子機器カートのディスプレイは、電子機器カート上のディスプレイ上で見るために表示される画像上に示される患者解剖学的構造の特定の部分を強調し或いはそれらの部分に注釈を付けるために、医療者によって使用可能なタッチスクリーンユーザインタフェースである。ユーザは、タッチスクリーンユーザインタフェース上に表示される患者解剖学的構造の部分に触れることによって、表示される画像の部分を強調することができる。加えて、QWERTYキーボードを含むグラフィックインタフェースを表示される画像上にオーバーレイすることができる。ユーザは、QWERTYキーボードを使用して、テキスト注釈を入力することができる。
【0037】
1つの態様において、遠隔操作手術システム850と関連付けられる撮像デバイスによって取り込まれる手術部位ビデオは、リアルタイム又はほぼリアルタイムでユーザに表示されることに加えて、遠隔操作手術システム850によって記録され、データベース830に格納される。ユーザによって行われた記録されたビデオと関連付けられたハイライト及び/又は注釈も、データベース830上に格納されることができる。1つの態様において、ユーザによって作成されるハイライトは、それがデータベース830上に格納される前に、記録されたビデオと共に埋め込まれる。その後に、視認(viewing)のために、記録したビデオを検索することができる。1つの態様において、記録したビデオの視認者(viewer)は、ハイライトが表示されるか或いはビューから抑制されるかを選択することができる。同様に、記録されるビデオと関連付けられる注釈も、データベース830上に格納されることができる。1つの態様において、ユーザによって行われる注釈は、記録されたビデオにタグを付けるために使用され、記録されたビデオに含まれる主題を識別する手段として提供するために使用されることができる。例えば、1つの注釈は、ある病状の条件を記述してよい。この注釈は、記録されたビデオにタグを付けるために使用される。その後に、この病状に関する記録された処置を見ることを欲する人は、キーワードサーチを用いてビデオを探し出すことができる。
【0038】
(格納されたビデオの検索)
幾つかの場合には、医療者が所与の患者に対して行われた過去の外科的処置のビデオ記録を見ることができることが望ましい。1つの態様において、医学的状態を治療するために第1の外科的処置を以前に受けた患者は、引き続き、同一の医学的状態の再発を治療するために或いは第1の外科的処置の手術部位の近くに位置する解剖学的構造を治療するために第2の外科的処置を必要とする。1つの態様において、第1の外科的処置の手術部位事象は、手術部位ビデオ記録中に取り込まれ、ビデオ記録は、患者の電子医療記録の一部としてデータベース830中にアーカイブされた。患者に対して第2の外科的処置を行う前に、医療者は、データベース830のサーチを行って、患者のより以前の外科的処置のビデオ記録を探し出すことができる。
【0039】
幾つかの場合には、患者に対して外科的処置を行うことを計画している医療者が、患者に類似する特定の特徴を有する人に対して行われた類似の外科的処置のビデオ記録を見ることができることが望ましい。1つの態様において、外科的処置の手術部位ビデオ記録は、各ビデオ記録がデータベース830中にアーカイブされる前に、患者の年齢、性別、肥満度指数(ボディマスインデックス)、遺伝情報、患者が受けた処置の種類などのような、メタデータ情報でタグ付けされることができる。1つの態様において、ビデオ記録にタグ付けするために使用されるメタデータ情報は、患者のその時点で存在する医療記録から自動的に検索され、次に、ビデオ記録がデータベース830中にアーカイブされる前に、ビデオ記録にタグ付けするために使用される。従って、患者に対して医療処置を行う前に、医療者は、患者と共通の特定の特徴を共有する患者に対して行われた類似の処置のビデオ記録について、データベース830をサーチすることができる。例えば、医療者が、上昇した肥満度指数を有する65歳の男性患者に対して前立腺摘除術を行うために遠隔操作手術システム850を使用することを計画しているならば、医療者は、肥満度指数が同様に上昇した類似の年齢の他の男性に対して遠隔操作手術システム850を使用した行われた前立腺摘除術の手術部位ビデオ記録についてデータベース830をサーチすることができる。
【0040】
1つの態様において、外科的処置のビデオ記録は、データベース830によって(破線によって示すような)任意的なパーソナルコンピュータ820に伝えられ、外科的処置を行うことを計画する医療者による視認のために利用可能にされる。追加的に又は代替的に、より以前の外科的処置のビデオ記録は、データベース830によって遠隔操作手術システム850に伝えられ、術前又は術中の視認のために利用可能にされることができる。1つの態様において、ビデオ記録は、遠隔操作手術システム850によって、外科医コンソール52に配置されるディスプレイ上に表示される。他の態様において、第1の外科的処置のビデオ記録は、電子機器カート56上に配置されるディスプレイ上に表示される。
【0041】
(クラウドベースのビデオデータベース)
1つの態様において、データベース830は、クラウドデータ格納サービスを使用して遠隔サーバ上に実装され、複数のヘルスケアプロバイダによってアクセス可能である。
図8を参照すると、破線によって示すように、手術計画ツール800は、任意的に、(破線によって示すような)遠隔操作手術システム850と、(破線によって示すような)パーソナルコンピュータ840とを含む。1つの態様では、遠隔操作手術システム850及びパーソナルコンピュータ820が第1のヘルスケアプロバイダに配置され、遠隔操作手術システム850及びパーソナルコンピュータ840が第2のヘルスケアプロバイダに配置されることを除いて、遠隔操作手術システム850は、遠隔操作手術システム850と同様であり、パーソナルコンピュータ40は、パーソナルコンピュータ820と同様である。1つの態様では、第1の患者は、医学的状態の外科的治療を必要とし、第1のヘルスケアプロバイダで遠隔操作手術システム850を使用する外科的処置を受ける。外科的処置のビデオ記録は、データベース830上にアーカイブされる。その後に、第2の患者は、同じ医学的状態の外科的治療を必要とし、第2のヘルスケアプロバイダで遠隔操作手術システム850を使用する外科的治療を受けることを計画する。第2の患者に対して外科的処置を行う前に、医療者は、安全なインターネット接続を通じてデータベース830にアクセスし、類似の処置の手術部位ビデオ記録についてデータベース830をサーチする。1つの態様において、第2の患者を治療する医療者は、第1の患者の身元(identity)に関する知識を取得することなく、第1の患者の外科的処置のビデオ記録をデータベース830から検索することができる。このようにして、第1の患者のプライバシーは維持される。1つの態様において、第1の患者の外科的処置のビデオ記録は、第1の患者を治療した医療者によって行われたハイライト及び/又は注釈を含む。
【0042】
(コンピュータベースのパターン一致及び分析)
手術計画ツール800は、コンピュータ実行可能コードの形態で実装されるパターン一致及び分析アルゴリズムを含むことができる。1つの態様において、パターン一致及び分析アルゴリズムは、手術計画ツール800の不揮発性メモリデバイスに格納され、データベース830中にアーカイブされたビデオ記録を分析するように構成される。前述のように、データベース830中にアーカイブされたビデオ記録の各々は、特定のメタデータ情報でタグ付け及び/又は埋め込まれることができる。このメタデータ情報は、患者の年齢、性別、及び患者の健康又は病歴を記述する他の情報のような、患者情報を含むことができる。加えて、前述のように、メタデータ情報は、医療者によって作成されたハイライト又は注釈を含むことができる。1つの態様において、これらのハイライト及び注釈は、ビデオ記録に埋め込まれ、データベース830中にビデオと共にアーカイブされる。
【0043】
1つの態様において、パターン一致及び分析アルゴリズムは、データベース830中に格納された複数のビデオ記録間で共有される形状及び色のパターンを識別する画像分析コンポーネントを含む。次に、パターン一致及び分析アルゴリズムは、ビデオ記録のこのサブセットと関連付けられたタグ付きメタデータを精査して、いずれかの単語又は句がこのサブセット内のビデオと頻繁に関連付けられているか否かを決定する。パターン一致及び分析アルゴリズムによって行われるこれらの分析は、医療者が、患者の解剖学的構造、好ましい外科的アプローチ、病状、潜在的な合併症などについての決定を行うことを支援するために使用されることができる。
【0044】
(手術計画ツールを使用する方法)
図9は、手術計画ツールを使用する方法900を示している。1つの態様において、手術計画ツールは、
図8における手術計画ツール800に類似している。910で、医療デバイスが、医療患者を記述する事実又は特徴、例えば、患者が患っている医学的状態を受信する。医療デバイスは、遠隔操作手術システム(例えば、
図1の遠隔操作手術システム10又は
図4の遠隔操作手術システム50)上に位置するユーザインタフェースを介して、或いは、代替的に、
図2のパーソナルコンピュータ820に類似するパーソナルコンピュータを通じて、この事実又は状況を受信することができる。920で、医療デバイスは、910で受信した事実又は特徴を使用して、医療デバイスデータベースから手術デバイスの少なくとも1つの関連するビデオ記録を検索する。930で、医療デバイスは、ビデオ記録を使用して、手術計画情報を決定する。1つの態様において、手術計画情報は、記録された処置において使用された器具の種類を含む。940で、医療デバイスは、930で決定した手術計画情報をユーザに表示する。
【0045】
(手術技能レベルを使用して外科的処置を誘導する方法)
チャート1は、ロボットコンソール技能評価(ARCS)基準に従った遠隔操作手術中に有用な、手術器具技能の幾つかの例示的な別個のコアセットを特定している。
【0046】
【0047】
幾つかの態様において、カテゴリについての手術技能レベルは、初心者、中級者、経験者として評価される。外科医の技能レベルは、1つの技能カテゴリから次の技能カテゴリに変化することがある。技能評価尺度は、一般的に、外科的専門性に拘わらず、任意の多ポートロボット支援外科的処置に適用可能である。
【0048】
図10は、幾つかの実施形態に従ったコンピュータ可読記憶デバイス1004内の記憶アトラス(storage atlas)を表す例示的な図である。記憶アトラス1002は、以前に行った外科的処置のインスタンス(事例)を示す第1の情報構造1006を含む。以前に行った外科的処置中の遠隔操作手術器具作動状態を示す第2の情報構造1008。第3の情報構造1010が、外科的処置を、外科的処置中の外科的活動と関連付ける。第4の情報構造1012が、外科医を、外科医の手術技能レベルと関連付ける。第5の情報構造1014が、外科的処置を、手術器具作動状態と関連付ける。第6の情報構造1016が、異なる活動中の外科医技能レベルを、異なるメッセージと関連付ける。第7の情報構造1018が、異なる活動中の外科医技能レベルを、異なる手術器具安全作動状態と関連付ける。第9の情報構造1019が、個々の手術からの記録されたビデオ情報を、対応する手術器具アクチュエータ状態情報及び幾つかの実施形態に従った手術中の記録された外科医眼球運動及びと関連付ける。
【0049】
幾つかの実施形態において、様々な情報構造1004~1019中の情報は、外科医技能レベルと外科処置の結果/リスクとの間の相関を特定するために評価される。幾つかの実施態様において、様々な情報構造1004~1019中の情報は、外科的処置中の患者の安全上の懸念/リスクと外科的活動との間の相関を特定するために評価される。幾つかの実施態様において、遠隔操作される外科的処置は、手術活動中の患者の安全上の懸念/リスクと手術器具アクチュエータ状態との間の相関を外科医技能レベルの関数として特定するために評価される。幾つかの実施態様において、記憶アトラス1002は、外科的活動中の手術結果/リスクと手術器具アクチュエータ状態との間の相関を外科医技能レベルの関数として提供する、第10の情報構造1020を含む。これらの評価は、例えば、機械学習(ML)技法を含んでよい。
【0050】
記憶アトラス1002は、以前の患者に対する手術及び以前の手術を行った以前の外科医に関するデータを含む。幾つかの実施形態において、記憶アトラス1002は、以前の手術からの手術シーンのビデオ画像と、テキスト及びテレストレーションタグ1022(telestration tags)のような対応する注釈とを含む。幾つかの実施態様において、記憶アトラス1002は、以前の手術中の以前の外科医の手術活動の実施中の手術器具アクチュエータ状態の記録1024を含む。
【0051】
図11は、記憶デバイス1004中のアトラス1002内に含まれる第7の情報構造1018の一例を表す例示的な図であり、それは、幾つかの実施形態に従って、個々の手術からの記録されたビデオ情報を、対応する手術器具アクチュエータ状態情報と関連付ける。1つの態様では、患者解剖学的構造に対する外科的活動の発生時間の経時的な記録を提供し、手術器具アクチュエータ状態の発生時間の対応する経時的な記録を提供し、外科的処置中の外科医眼球動作の対応する経時的な記録を提供するために、手術中の患者解剖学的構造、手術中の手術器具アクチュエータ状態、及び手術中の外科医眼球動作のビデオ記録画像が、タイムスタンプされる(t1,t2...tn)。よって、外科的処置中に記録されるタイムスタンプは、ビデオ画像解剖学的構造を手術器具アクチュエータ状態及び外科医眼球動作と一時的に整列させるために使用される。
【0052】
手術中、ユーザは、ビデオ記録及び手術器具作動状態記録に、例えば、血管シーリング(vessel sealing)、縫合結節結び(suture knot-tying)又は鈍い組織切開(blunt tissue dissection)のような、対応する外科的活動を示す、メタデータで注釈を付けてよい。注釈は、例えば、ビデオ情報及び/又は手術器具作動状態情報にタグ付けされた注記(written notes)、ビデオ記録内の画像の着色又はハイライト(例えば、テレストレーション)の1以上又は組み合わせを含んでよい。注釈は、それらを対応するビデオ記録情報及び対応する記録された手術器具状態情報と一時的に整列させる使用のためにタイムスタンプされてよい。
【0053】
遠隔操作外科的処置中、神経血管束切開(神経温存)のような手術活動は、しばしば、それぞれがその独自のアクチュエータ状態を有する、プログラスパ(prograsper)及びロボットハサミのような複数の手術器具の使用を含む。よって、異なる手術活動は、しばしば、複数の手術器具技能の組み合わせを必要とする。例えば、連続縫合手術活動の実施は、しばしば、以下の手術技能、即ち、器具リスト操作、針把持、2つの器具間の針通過及び配向、組織把持、及び針駆動の組み合わせを必要とする。
【0054】
図12A~
図12Cは、例示的な手術器具1202とアクチュエータアセンブリ1203とを示す例示的な図であり、この図において、手術器具は、幾つかの実施形態に従った3つの異なる例示的な動作状態において示されている。例示的な器具1202は、開放状態と閉鎖状態との間で移行することができるジョーエンドエフェクタ204と、それらの間の部分的な開放状態/部分的な閉鎖状態の連続体とを含む。例示的な器具1202、異なる二次元(x、y)位置状態の間を移動することができる2自由度(2DOF)リスト1206も含む。例示のアクチュエータアセンブリ1203は、第1のアクチュエータ1208を含み、第1のアクチュエータ1208は、幾つかの実施形態において、ジョーエンドエフェクタ1204を作動させるために使用されるジョーモータ(JM)を含む。例示的なアクチュエータアセンブリ1203は、第2のアクチュエータ1210を含み、第2のアクチュエータ1210は、幾つかの実施形態において、リスト1206を作動させるために使用されるリストモータ(WM)を含む。手術中、手術器具1202は、外科的処置中の異なる活動に対応する複数の作動状態を通じて移行することがある。例えば、
図12Aに示すように、外科的処置は、第1のアクチュエータ1208(JM)がジョーエンドエフェクタ1204を完全開放状態に配置し、第2のアクチュエータ1210(WM)がリスト1206を第1の位置状態(x1,y1)に配置する、第1の外科的活動を含んでよい。例えば、
図12Bに示すように、外科的処置は、第1のアクチュエータ1208がジョーエンドエフェクタ1204を完全閉鎖状態に移行させ、第2のアクチュエータ1210がリスト1206を第2の位置状態(x2,y2)に移行させる、第2の外科的活動を含んでよい。例えば、
図12Cに示すように、外科的処置は、第1のアクチュエータ1208がジョーエンドエフェクタ1104を部分的な開放状態/部分的な閉鎖状態に配置し、第2のアクチュエータ1210がリスト1206を第3の位置状態(x3,y3)に移行させる、第3の外科的活動を含んでよい。
【0055】
幾つかの実施形態では、外科医の入力制御命令に応答する遠隔操作手術システムの性能は、外科的処置中にシステムを使用して行われる手術活動についての外科医の技能レベルに基づいてスケーリングされる(増減される)(scaled)。より具体的には、ユーザ空間内のユーザ入力命令デバイスでのユーザ入力に応答する器具空間内の手術器具の動きの速度は、少なくとも部分的に、ユーザ技能レベルに基づいてスケーリングされる。例えば、外科医技能レベルの記録は、大縫合切断針ドライバ手術器具を使用する針駆動手術活動のパフォーマンスにおいて初心者技能レベルを示すことがある。幾つかの実施形態によれば、針駆動手術活動の実施中、器具アクチュエータは、それぞれの組織に近いとき、大縫合切断針ドライバがユーザの意図に対して極めて意図的に(1:0.333スケーリング)自動的に移動する、第1のモード(初心者モード)で作動させられる。よって、プロセッサ58は、大縫合切断針ドライバ手術器具の初心者ユーザのために構成され、その場合、器具移動へのユーザ入力移動の変換は、器具移動を遅くするようにスケーリングされる。制御入力36,38で付与されるユーザ空間内の1単位の移動は、手術器具空間内の器具の0.333単位の移動に運動学的に変換される。代替的に、例えば、外科医技能レベルの記録は、大型針ドライバ手術器具を使用する針駆動手術活動のパフォーマンスにおいて中間技能レベルを示すことがある。幾つかの実施態様によれば、針駆動手術活動の実施中、器具アクチュエータは、第2のモード(中間モード)において作動し、その場合、大型針ドライバは、それぞれの組織に近いとき、ユーザの意図に対して意図的に1:0.5スケールで移動する。よって、プロセッサ58は、大型針ドライバ手術器具の中間技能レベルのユーザのために構成され、その場合、器具移動へのユーザ入力移動の変換は、器具移動を遅くするようにスケーリングされる。制御入力36,38で付与される使用空間内の1単位の移動は、手術器具空間内の器具の0.5単位の移動に運動学的に変換される。更に他の代替法として、例えば、外科医技能レベルの記録は、メガ針ドライバ手術器具を使用する針駆動手術活動のパフォーマンスにおいて経験豊富な技能レベルを示してよい。幾つかの実施形態によれば、針駆動手術活動の実施中、器具アクチュエータは、メガ針ドライバが、それぞれの組織に近いとき、ユーザの意図に対して同じ速さ、即ち、1:1スケールで移動する、第3のモード(熟練者モード)で作動させられる。よって、プロセッサ58は、メガ針ドライバ手術器具の熟練技能レベルのユーザのために構成され、その場合、器具移動へのユーザ入力移動の変換は、器具移動に一致するようにスケーリングされる。制御入力36,38で付与される使用空間内の1単位の移動は、手術器具空間内の器具の1.0単位の移動に運動学的に変換される。
【0056】
図13は、例示的な外科医によって行われる例示的な外科的処置に対応するコンピュータ可読記憶デバイス1004内に格納されるアトラス1002の例示的な第10の情報構造1020を表す例示的な図である。情報構造1020は、外科的処置中の外科的活動を外科医技能と関連付ける。情報構造1020は、外科医技能を外科医技能レベルと関連付ける。情報構造1020は、外科医活動を手術器具アクチュエータ状態と関連付ける。情報構造1020は、手術状態、手術技能、手術技能レベル、アクチュエータ状態タプル(actuator state tuples)を、手術アクチュエータ安全状態と関連付ける。
【0057】
情報構造1020の第1の列は、例示的な外科的処置中に行われる外科的活動のリストA1、A2及びA3を示している。情報構造1020の第2の列は、各活動中に必要とされる手術技能及び各技能についての手術を行う外科医の対応する技能レベルのリストを示している。具体的には、例において、活動A1は、手術技能S1、S3及びD5と関連付けられており、外科医は、全ての3つの手術技能S1、S2及びS5について熟練技能レベルLEを保有している。活動A2は、手術技能S1、S2及びS3と関連付けられており、外科医は、手術技能S1、S3及びS5について熟練技能レベルLEを保有しており、手術技能S2について初心者技能レベルLNを保有している。活動A3は、手術技能S1、S4及びS6と関連付けられており、外科医は、手術技能S1及びS6について熟練技能レベルLEを保有しており、手術技能S4について中間技能レベルLIを保有している。情報構造1020の第3の列は、手術活動の発生を示す手術器具作動状態を示している。例えば、手術器具アクチュエータ状態SIAA1は、手術状態A1の発生を示している。手術器具アクチュエータ状態SIAA2は、手術状態A2の発生を示している。手術器具アクチュエータ状態SIAA3は、手術状態A3の発生を示している。情報構造1020の第4の列は、外科的活動状態に基づいて外科的処置の異なる段階で手術チームに提示されるメッセージを示している。例えば、手術活動状態A1は、熟練技能レベルの外科医に向けられたメッセージMA1Eと関連付けられており、手術活動状態A2は、初心者技能レベルの外科医に向けられたメッセージMA2Nと関連付けられており、手術活動状態A3は、中間技能レベルの外科医に向けられたメッセージMA3Iと関連付けられている。
【0058】
情報構造1020の第5の列は、外科的処置の異なる手術活動中に使用される手術器具アクチュエータ安全状態を示している。例えば、手術活動A1は、器具アクチュエータ安全状態SAIA1Eと関連付けられており、それは外科医が手術活動A1について熟練技能レベルを有することを示している。手術活動A2は、器具アクチュエータ安全状態SIAA2Nと関連付けられており、それは外科医が手術活動A2について初心者技能レベルを有することを示している。手術活動A3は、器具アクチュエータ安全状態SIAA3Iと関連付けられており、それは外科医が手術活動A3について中間技能レベルを有することを示している。この例において、関連する器具アクチュエータ安全状態は、外科的活動に適用可能な最も低い対応する外科医技能レベルのレベルであることに留意のこと。例えば、活動A1について、外科医技能レベルは、全ての3つの技能S1、S3、S5についてレベルLE(熟練)であり、従って、器具アクチュエータ安全状態は、熟練レベルに対応するSAIA1Eである。活動A2について、外科医の最低技能レベルは、技能S2についてのレベルLN (初心者)であり、従って、器具アクチュエータ安全状態は、初心者レベルに対応するSAIA21Nである。活動A3について、外科医の最低技能レベルは、技能S4についてのレベルLI(中間)であり、従って、器具アクチュエータ安全状態は、中間レベルに対応するSAIA3Iである。
【0059】
図13の例示的な情報構造1020の第1の行を参照すると、例えば、外科的処置中、手術の活動A1は、組織切開を含んでよく、それは技能S1=器具リスト操作及び配向、技能S3=組織把持及び操作、並びに技能S5=切断を必要とする。メッセージMA1
Eは、「小さな滑らかな切断を行う」ことを示すことがある。手術器具安全作動状態A1
Eは、器具が1:1スケーリングに設定されることを含んでよい。
【0060】
図13の例示的な情報構造1020の第2の行を参照すると、例えば、外科的処置中、手術の活動A2は、組織縫合を含んでよく、それは技能S1、技能S2=針駆動、及び技能S3を必要とする。メッセージMA2
Nは、「不要な組織針穿刺を避けるために針の取扱いに注意すること」を示してよい。手術器具安全作動状態A2
Nは、器具が1:0.333スケーリングに設定されることを含んでよい。
【0061】
図13の例示的な情報構造1020の第3の行を参照すると、例えば、外科的処置中、手術の活動A3は、縫合糸の結節結びを含んでよく、それは、技能S1、技能S4=縫合糸取扱い、及び技能S6=結節結びを必要とする。メッセージMA3
1は、「縫合糸尾部の長さを注意深く管理すること」を示してよい。手術器具安全作動状態A3
1は、器具が1:0.5スケーリングに設定されることを含んでよい。
【0062】
図14は、幾つかの実施形態に従って少なくとも部分的に外科医技能レベル情報に基づいて手術器具安全作動状態に従ったユーザ対器具の移動の運動学的変換をスケーリングするプロセッサ58の設定(configuration)を表す例示的なフロー
図1402である。幾つかの実施形態では、プロセス1402を実行するようプロセッサ58の1以上のCPUを設定するために、コンピュータプログラムコードが使用される。ブロック1404において、外科医の識別(identification)が、電子機器カート56と関連付けられるコンピュータ処理システムへの入力で受信される。ブロック1406では、外科的処置の識別が、電子機器カート56と関連付けられるコンピュータ処理システムの入力で受信される。ブロック1408では、情報構造1010、1012、1014、1016及び1018中のアトラス1002内に含まれる情報が、識別された外科医及び識別された外科処置に関する
図13の第1の情報構造1020のインスタンスを生成するために使用される。
【0063】
識別された外科的処置の実行中、ブロック1410は、1以上の手術器具26の各々について、どの器具が手術器具マニピュレータ512に取り付けられるかを追跡し、外科的処置が情報構造1020の第1の列内で特定される活動に移行しているときに、第10の情報構造1020の生成されたインスタンスの第3の列内の手術器具アクチュエータ状態情報に基づいて決定する、手術器具アクチュエータの動作状態も追跡する。判定ブロック1412では、マニピュレータ512に取り付けられる器具26のうちの少なくとも1つで、現在の器具アクチュエータ状態が活動と関連付けられるアクチュエータ状態と一致するか否かについての決定が行われる。一致がないことに応答して、制御ループは、ブロック1410に戻り、追跡が継続する。一致に応答して、ブロック1414は、マニピュレータ512に取り付けられた器具26、現在の器具アクチュエータ状態、及び情報構造1020の第2の列に示された関連する外科医技能レベルのうちの少なくとも1つと関連付けられた、情報構造1020の第5の列内で特定される器具アクチュエータ安全状態への、手術器具アクチュエータの移行を使用する。ブロック1416は、現在の器具アクチュエータ状態と関連付けられた安全メッセージ及び関連する外科医技能レベルを手術チームに提示するように、表示装置32、34及び/又は60を構成する。幾つかの実施形態において、制御は、次に、ブロック1410に戻り、ブロック1410は、例えば、他の特定されるアクチュエータ状態移行情報に基づいて手術器具アクチュエータ状態を追跡し続ける。
【0064】
例示的な実施形態を示し且つ記載したが、広範な修正、変更及び置換が、前述の開示において想定され、幾つかの場合では、実施形態の幾つかの構成が、他の構成の対応する使用を伴わずに利用されてよい。例えば、幾つかの実施形態では、仮想手術システムは、第1の仮想ロボット手術器具を含む。システムは、仮想解剖学的組織及び第1の仮想ロボット手術器具の画像を生成する画像生成デバイスを含む。仮想解剖学的組織及び第1の仮想ロボット手術器具の生成画像をユーザに示すために、ユーザディスプレイが画像生成デバイスに連結される。ユーザ入力命令デバイスが、ユーザ入力命令を受信して第1の仮想ロボット手術器具の仮想の動きを制御するよう、連結される。仮想移動コントローラが入力命令デバイスからユーザ入力命令を受信するように連結され、ユーザ入力命令に応答して第1の仮想ロボット手術器具の仮想の動きを制御して、ユーザ入力命令デバイスで受信するユーザ入力命令によって示される移動の速度から、受信するユーザ入力命令を提供するユーザの第1の仮想ロボット手術器具を使用する際の手術技能レベルに少なくとも部分的に基づいて第1の仮想ロボット手術器具の仮想の移動速度をスケーリングする、ように構成される。
【0065】
その上、幾つかの実施形態では、仮想ロボット手術器具マニピュレータを含む仮想手術システムを作動させる方法が提供される。方法は、仮想ロボット手術器具マニピュレータに取り付けられる仮想ロボット手術器具の動きを制御するために、ユーザからユーザ入力命令を受信することを含む。方法は、ユーザ入力命令を受信する間に、仮想ロボット手術器具マニピュレータに取り付けられる仮想ロボット手術器具の識別を決定することを更に含む。方法は、ユーザ入力命令によって示される移動速度から、識別される仮想手術器具の使用時のユーザの技能レベルに少なくとも部分的に基づいて、仮想ロボット手術器具の移動速度をスケーリングすることも含む。当業者は、多くの変形、代替、及び修正を認識するであろう。よって、開示の範囲は、後続の請求項の範囲によってのみ限定されるべきであり、請求項は、本明細書に開示する実施形態の範囲と一致する方法において広く解釈されるのが適切である。