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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】血管グラフト
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20240614BHJP
   A61F 2/954 20130101ALI20240614BHJP
   A61F 2/856 20130101ALI20240614BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/954
A61F2/856
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022095726
(22)【出願日】2022-06-14
(62)【分割の表示】P 2019516423の分割
【原出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2022126727
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】1616722.3
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503116084
【氏名又は名称】バスクテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VASCUTEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー マクドナルド
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0257454(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0136431(US,A1)
【文献】国際公開第2013/137263(WO,A1)
【文献】特表2006-522615(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108409(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/082718(WO,A1)
【文献】特表2019-528946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00-2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管グラフトモジュール式アセンブリのための送達システムであって、
内腔に送るために管状分岐体(36)を小型化するためのシース(47)と、
前記管状分岐体(36)をドッキングブランチ(5)に接続するための回収カプセル(81)と、
該回収カプセル(81)内に圧縮嵌合する圧入回収ピン(57)と、
近位端および遠位端を有する回収ワイヤ(83)と、
近位部分と遠位部分とを有する少なくとも一つの管状分岐体(36)と、
体内プロテーゼデバイスとを備え、
前記回収カプセル(81)および前記圧入回収ピン(57)の一方が前記シース(47)に取り付けられ、前記回収カプセル(81)および前記圧入回収ピン(57)の他方が前記回収ワイヤ(83)の前記遠位端に取り付けられ、前記回収ワイヤ(83)の前記近位端が前記送達システムのユーザに利用可能であって当該回収ワイヤ(83)を引っ張ることで前記シース(47)を動かすことができ、
前記少なくとも一つの管状分岐体(36)が、近位ステント部分と、遠位ステント部分と、前記近位ステント部分と前記遠位ステント部分との間の管状分岐体可撓性部分と、前記管状分岐体可撓性部分から横方向に延びるアクセスブランチとを含み、
前記シースは、前記少なくとも一つの管状分岐体の少なくとも一部を閉じ込め、前記回収ワイヤを引っ張ることで当該管状分岐体から除去可能であり、
前記体内プロテーゼデバイスが、近位部分(11)と、遠位部分(13)と、前記近位部分と前記遠位部分とを連結する可撓性部分とを有する管状本体(3)を備え、当該体内プロテーゼデバイスが、前記管状本体から横方向に延びる、長さ調節可能な少なくとも1つの前記ドッキングブランチ(5)と、前記管状本体から横方向に延びる、少なくとも1つの管状体アクセスブランチとを備え、
記体内プロテーゼデバイスのドッキングブランチが、前記管状本体の前記近位ステント部分と接続可能であることにより血管グラフトモジュール式アセンブリを形成するようにするように構成され
前記管状分岐体が、前記回収ワイヤを引っ張ることにより前記ドッキングブランチに結合可能である、
送達システム。
【請求項2】
前記管状本体の前記近位部分(11)および前記遠位部分(13)の少なくとも1つがステント(15)を含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記管状本体の前記近位部分(11)および前記遠位部分(13)がそれぞれステント(15)を含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項4】
前記体内プロテーゼデバイスの管状本体が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)またはポリエステルを含み長さ方向に延伸可能な捲縮布を含む、請求項3に記載の送達システム。
【請求項5】
前記長さ調節可能なドッキングブランチ(5)が一連のセクションを含む長さを有し、各セクションが、ユーザによって握られ得るタブを有する、請求項1に記載の送達システム。
【請求項6】
前記長さ調節可能なドッキングブランチ(5)が一連のセクションを含む長さを有し、各セクションが、ユーザによって握られ得るループ(17)を有する、請求項1に記載の送達システム。
【請求項7】
タブまたは前記ループが、ユーザにより保持可能であって、生体適合性材料で作られている、請求項6に記載の送達システム。
【請求項8】
前記体内プロテーゼデバイスが前記管状本体(3)から延びている少なくとも1つの補助ブランチ(7)を更に有する、請求項1に記載の送達システム。
【請求項9】
前記体内プロテーゼデバイスが一体型の弁(115)を更に備える、請求項8に記載の送達システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの管状分岐体が複数の前記管状分岐体(36)をえ、前記体内プロテーゼデバイスの前記少なくとも1つのドッキングブランチが複数の前記ドッキングブランチをえ、当該複数の管状分岐体は、前記体内プロテーゼデバイスの前記複数のドッキングブランチ(5)と接続可能である、請求項1またはに記載の送達システム。
【請求項11】
前記体内プロテーゼデバイスが少なくとも4つの前記ドッキングブランチ(5)を有し、かつ前記血管グラフトモジュール式アセンブリが少なくとも4つの前記管状分岐体(37)を備える、請求項10に記載の送達システム。
【請求項12】
血管グラフトモジュール式アセンブリのための送達システムであって、
内腔に送るために管状分岐体(36)を小型化するためのシース(47)と、
回収カプセル(81)と、
該回収カプセル(81)内に圧縮により嵌合する圧入回収ピン(57)と、
近位端および遠位端を有する回収ワイヤ(83)と、を備え、
前記回収カプセル(81)および前記圧入回収ピン(57)の一方が前記シース(47)に取り付けられ、前記回収カプセル(81)および前記圧入回収ピン(57)の他方が前記回収ワイヤ(83)の前記遠位端に取り付けられ、前記回収カプセルは管状本体を通過するように構成され、前記回収ワイヤ(83)の前記近位端が前記送達システムのユーザに利用可能であり、
前記回収ワイヤを前記ユーザが引っ張ることで前記シースを動かす、
送達システム。
【請求項13】
前記圧入回収ピン(57)が前記シース(47)に取り付けられ、前記回収カプセル(81)が前記回収ワイヤ(83)に取り付けられている、請求項12に記載の送達システム。
【請求項14】
圧入回収ピンは、ボール形状、弾丸形状または矢尻形状のうちの1つの形状を有する頭部を有し、前記頭部は、弾性材料から作られ、前記回収カプセルへの圧入は、前記頭部が前記回収カプセルの対応する凹部に位置するときにおける該頭部の前記回収カプセルへの圧入のときの圧縮の程度と前記頭部の弾性的拡張を含む、請求項12に記載の送達システム。
【請求項15】
前記回収カプセル(81)の外壁が、ドッキングブランチ内に密閉密着嵌合を形成して、前記管状分岐体のステント部分の展開により前記管状分岐体が前記ドッキングブランチに結合する前の失血を減少させる、請求項12に記載の送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科的処置に関し、外科手術、特には血管の病理を処置するためのインター
ベンションを必要とする患者において、ハイブリッドエンドグラフトとして使用するプロ
テーゼデバイスを提供する。
【背景技術】
【0002】
血管系の一部は、経時的に変性欠陥を発症する可能性があり、そのような欠陥の1つに
は動脈瘤がある。動脈瘤は、血管壁における異常な隆起であり、血管壁の局所的な弱化を
もたらし、漏出、破裂および内部出血の可能性を増大させる。動脈瘤は、血管の自然な(
生来の)内腔を著しく拡張させて、自然な血流を損なわせる可能性がある。本開示は、動
脈瘤が発達する前に血管内腔の寸法を自然な血管内腔の寸法に復元して動脈瘤嚢を閉塞す
るために、欠陥のある血管内の動脈瘤嚢への挿入に適したエンドグラフトに関する。開示
するデバイスは、上行大動脈および下行大動脈ならびに分岐動脈(左鎖骨下動脈、左総頚
動脈、腕頭動脈、右総頚動脈)を含む大動脈弓の管腔内治療に適している。
【0003】
脈管構造の弱化した部分を治療するための従来の方法には、大動脈の患部の外科的置換
、またはより保守的な低侵襲性の血管内修復が含まれる。
【0004】
外科的インターベンションでは、欠陥の患部を切除してプロテーゼグラフト(補綴用移
植片)と交換することができる。この侵襲的アプローチは、通常、全身麻酔のもと心肺バ
イパス術で行われ、患者の胸部を開いて動脈瘤血管の代わりにプロテーゼデバイスを縫合
することができる。したがって、この方法では、熟練した外科医の時間と、入院中の患者
の長期の回復期間とが必要である。そのような交換に通常使用されるプロテーゼデバイス
は、典型的にはポリエステル生地から作られており、それは織られていても編まれていて
もよく、また、例えばゼラチンやコラーゲンなどのシーラントでシールされていてもよい
【0005】
血管内修復技術では、特注の送達システムを使用して患者の体内に配置される体内プロ
テーゼデバイスが使用されており、該送達システムは、管腔内送達のために体内プロテー
ゼデバイスをコンパクトに「梱包した」形態で送達するように設計されており、該体内プ
ロテーゼデバイスを送達し、位置決めし、そして最後に選択的に展開することを可能にす
る、取り外し可能な拘束手段を含む。体内プロテーゼデバイスを展開したら、送達システ
ムを除去して、外科的処置を完了させることができる。
【0006】
ハイブリッド処置は、従来のまたは修正された外科的処置と血管内インターベンション
処置とを組み合わせたものであり、外科的リスクの高い特定の患者に適している。例えば
、ハイブリッド処置の使用は、複雑な大動脈の病理を有するハイリスク外科手術患者にお
いて、開胸修復の代替法を提供することができる。大動脈の動脈瘤部分を排除し易い、血
管の体内プロテーゼデバイスは、米国特許第8740971(B2)号に開示されており
、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8740971(B2)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
患者のニーズに対処するのに適した外科的処置および体内プロテーゼデバイスを改善す
ることが引き続き必要とされているが、本明細書に記載される体内プロテーゼデバイスお
よび方法は、処置中の操作のための十分な範囲を有して、支障をきたす緊張のリスクが低
減された動脈吻合を作成できるようにする。
【0009】
さらに、本明細書に開示される体内プロテーゼデバイスおよび方法は、体内プロテーゼ
デバイス内への血流の弁機能を介した変位によって、体内プロテーゼデバイスから空気を
排出することができるため、以前よりも迅速に血液流動を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に開示されるハイブリッド体内プロテーゼデバイスを、既知の手順または本明
細書に開示されているように修正された手順で使用することにより、逆方向の血流による
大動脈弓の分岐動脈の迅速な灌流が可能になり、これによって、処置を完了するのに必要
な後続の工程を、その後、虚血または既知の処置に通常関連する関連問題のリスクを予測
可能に減少させて、許容可能なペースで行うことができる。したがって、処置を完了する
ための通常の時間的なプレッシャーはいくらか軽減される。重要なことに、本開示に記載
される処置は、患者の心臓を鼓動させたまま、すなわち患者を「心肺」装置でサポートす
ることなしに実行するように設計されており、したがって、この処置は、多数の利点のあ
る「オフポンプ」処置として分類される。それでも、本開示に記載される処置は、「オフ
ポンプ」処置に限定されず、患者が「心肺」装置でサポートされる「オンポンプ」処置に
おける時間節約のためにも有用に使用され得る。
【0011】
「大動脈弓の分岐動脈」という用語は、一般に、左鎖骨下動脈、左総頸動脈、右総頸動
脈および腕頭動脈を包含すると理解される。これらの動脈の体内プロテーゼデバイスへの
接続は、本明細書でより具体的に説明するように、新たに考案されたデバイスおよびその
修正を使用して以下の開示において提供される。
【0012】
概して、本開示は、天然の血管の悪化した部分または損傷した部分の代わりとして機能
し、当該天然の血管の悪化した部分または損傷した部分と通常連通している隣接する天然
の血管と流体連通するように構成された、ハイブリッド外科手術に有用な体内プロテーゼ
デバイスに関する。特定の実施形態において、体内プロテーゼデバイスは、脈管構造の大
動脈弓領域の一部を置換してもよく、大動脈弓の分岐血管と接続するための側方ブランチ
を有していてもよい。以下に、本明細書においてさらに詳細に説明する態様によれば、処
置において早期の灌流を可能にするデバイスが開示される。
【0013】
一態様によれば、体内プロテーゼデバイスは、近位部分と遠位部分とを含む長さを有し
、かつ近位部分と遠位部分との間に可撓性部分を有する管状本体を備え、また、該管状本
体から横方向に延びる少なくとも1つの長さ調節可能なドッキングブランチが設けられて
いる。実施形態において、体内プロテーゼデバイスは、少なくとも1つのアクセスブラン
チを有する。そのようなアクセスブランチは、管状本体上に配置されて、ドッキングブラ
ンチへのアクセスを可能にするように構成されていてもよい。そのようなアクセスブラン
チは、ドッキングブランチを通るモジュール式コンポーネントの送達に有用であり得る。
【0014】
実施形態では、管状本体の近位部分および遠位部分の少なくとも1つがステントを含む
【0015】
実施形態では、管状本体の近位部分および遠位部分がそれぞれステントを含む。
【0016】
長さ調節可能なドッキングブランチを提供することは、患者の脈管構造における解剖学
的なばらつきの頻繁な問題に対処する。
【0017】
実施形態において、長さ調節可能なドッキングブランチは、その調節可能な長さの少な
くとも一部にわたって捲縮布スリーブを含み、それによってドッキングブランチを長手方
向に伸ばすことができ、必要に応じて所望の方向に湾曲させることができる。
【0018】
実施形態では、捲縮布が延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)またはポリエ
ステルを含む。
【0019】
本開示で使用される「捲縮」という用語は、側面から見たときに概してジグザグの輪郭
または正弦曲線の輪郭を有する、円周方向の波形状または螺旋形状を有する布地の形状に
関し、外面がドッキングブランチの実質的な長さにわたって最大寸法から最小寸法まで繰
り返し波打っている形状に関する。そのような捲縮した外形は、長手方向にストレッチさ
せることによって、ドッキングブランチに追加の長さを得ることを可能にする。あるいは
、長手方向に圧縮させることによって、より短い長さを得ることを可能にする。
さらに、捲縮面は、ドッキングブランチの曲げにも対応し、生来の血管との接続に必要で
あり、また患者らの血管のばらつきを考慮するために必要であり得る、直線形状から湾曲
形状へのドッキングブランチの方向転換にも適応する。
【0020】
実施形態では、長さ調節可能なドッキングブランチが一連のセクションを含む長さを有
し、各セクションは、ドッキングブランチの長さを容易にトリミングするために掴むこと
ができるタブを有する。
【0021】
実施形態では、各セクションがタブの代わりに保持ループを有し、保持ループは、体液
の存在に起因する外科的処置の滑りやすい条件下でトリミングするために、ドッキングブ
ランチを握って保持する能力を向上させる。
【0022】
タブまたはループは、ポリエステル織物、ポリエチレンまたはePTFEなどの生体適
合性材料で作ることができる。
【0023】
実施形態において、体内プロテーゼデバイスは、管状本体から延びる少なくとも1つの
補助ブランチが設けられている。補助ブランチは、例えば、体内プロテーゼデバイスの灌
流、外科用器具の挿入および除去、あるいは他のデバイスのコンポーネントまたは送達シ
ステムのコンポーネントの送達または除去などの様々な作業に使用することができる。
【0024】
実施形態において、1つの補助ブランチまたは各補助ブランチは、空気除去、フラッシ
ングおよび灌流のうちの少なくとも1つを可能にするための一体型の弁を含み得る。
【0025】
他の態様によれば、血管グラフトは、モジュール式アセンブリとして提供され、該アセ
ンブリが、本明細書に開示される体内プロテーゼデバイスとともに使用するための少なく
とも1つの追加のコンポーネントを備え、該追加のコンポーネントが管状分岐体を備え、
該管状分岐体が、近位ステント部分と遠位ステント部分とを含む長さを有し、該近位ステ
ント部分と遠位ステント部分との間に可撓性部分を有し、かつ体内プロテーゼデバイスの
ドッキングブランチと接続して血管グラフトモジュール式アセンブリを形成するように構
成されている。
【0026】
管状分岐体は、システムコンポーネントまたはデバイスを送達するための、横方向に延
びるアクセスブランチを有していてもよい。
【0027】
管状本体の複数のドッキングブランチのそれぞれに取り付けるための、複数のそのよう
なモジュール式コンポーネントを設けることができる。
【0028】
複数のモジュール式コンポーネントを設けることは、予備成形されたワンピースのマル
チブランチ体内プロテーゼデバイスの使用に関する問題に対処する。したがって、外科医
は、より柔軟で用途の広い体内プロテーゼデバイスを利用することができる。
【0029】
体内プロテーゼデバイスは、管状本体と複数の管状分岐体とを含むモジュール式コンポ
ーネントのキットの形態から選択された、管状本体と複数の管状分岐体のモジュール式ア
センブリを備えることができ、複数の管状分岐体が、解剖学的なばらつきに備えて、同じ
または異なる寸法の管状分岐体を含むことができる。例えば、複数の管状分岐体は、異な
る長さを有していてもよい。任意に、管状分岐体は、先細長さ部分を有していてもよい。
【0030】
血管内治療は、バルーンの使用によって、あるいは圧縮弾性ステントの使用によって、
天然の血管内腔内で当該デバイスを拡張させるために、通常、体内プロテーゼデバイスを
コンパクトな形態で送達することを含むが、本発明のモジュール式アセンブリの実施形態
は、迅速な周方向の吻合を容易にするために、管状本体の近位部分および遠位部分、なら
びに1つのまたは各管状分岐体の近位部分および遠位部分にステント部分を有用に使用し
ている。この特徴は、ほとんどの場合、予測される処置において、ステント部分によって
接続された部品の接合部を完全に縫合する必要性を排除する。
【0031】
体内プロテーゼデバイスは、天然の血管の側壁を通して挿入した後に段階的な(順次の
)展開を可能にすることによって、管状本体と複数の管状分岐体とのモジュール式アセン
ブリとして処置上の利点を提供する。モジュール式部品のコンパクトな性質は、段階的な
展開手順の間に、小型の外形を提供する。これによって、実質的に連続的な血流の提供を
容易にして、虚血期間を短縮することができる。
【0032】
さらに、管状本体と複数の管状分岐体とのモジュール式アセンブリを使用することによ
って可能になる、段階的な(順次の)挿入および展開もまた、完全な開胸術を必要とせず
に外科手術を進め、患者を人工心肺装置に据える必要性を一般に回避することができる。
これにより、胸腔の大きな外科的開口部に関連して引き起こされる低体温症および心停止
の通常あり得るリスクも軽減され得る。
【0033】
開示されるモジュール式アセンブリは、外科手術中に失血を最小限に抑え、血液灌流を
維持することができる密封システムを提供する。
【0034】
モジュール式アセンブリは、天然の主血管および関連する分岐血管の構造を模倣し得る
【0035】
他の態様によれば、血管グラフトモジュール式アセンブリ用の送達システムは、内腔を
通して送達するために管状分岐体をコンパクトな形態に閉じ込めるためのシースと、回収
カプセルおよび該回収カプセル内に嵌合するように構成された圧入回収ピンと、近位端お
よび遠位端を有する回収ワイヤと、を備え、回収カプセルおよび圧入回収ピンの一方がシ
ースに取り付けられ、その他方が回収ワイヤの遠位端に取り付けられ、回収ワイヤの近位
端がシステムのユーザに利用可能である。
【0036】
一実施形態では、圧入回収ピンがシースに取り付けられ、回収カプセルが回収ワイヤに
取り付けられ得る。
【0037】
一実施形態では、圧入回収ピンは、回収カプセルの対応する凹部内に捕捉されることを
可能にする形状のヘッド部分を有する。その形状は、ボール形状、弾丸形状または矢尻形
状とすることができ、頭部は、回収カプセル内への圧入中に該頭部のある程度の圧縮を可
能にし、頭部が回収カプセルの対応する凹部内に位置するときに該頭部の弾性的拡張を可
能にする、弾性材料から作ることができる。
【0038】
回収カプセルは、管状分岐体のステント部分をドッキングブランチに配置することによ
って該管状分岐体を該ドッキングブランチに接続する前の失血を最小限に抑えるように、
ドッキングブランチ内で可動止血剤として機能するようにドッキングブランチ内に密閉密
着嵌合を形成するように構成された外壁を有する、回収カプセルアセンブリの一部とする
ことができる。
【0039】
管状本体と、該管状本体から横方向に延びる少なくとも1つのドッキングブランチと、
を有する体内プロテーゼデバイスのそのような実施形態の使用において、ユーザは、ステ
ント部分を有する管状分岐体をコンパクトな形態でシース内に提供し、圧入回収ピンを、
シースに取り付け、アクセスブランチまたは補助ブランチを介して管状本体に予め通され
た、取り付けられた回収ワイヤを有する回収カプセルと並置する。回収ピンを回収カプセ
ル内に圧入すると、次に、管状分岐体を体内プロテーゼデバイスの本体のドッキングブラ
ンチ内に挿入することが可能となり、回収ワイヤを引っ張ることによって、管状分岐体は
、体内プロテーゼの本体のドッキングブランチ内に最初に配置される。その後、アクセス
ブランチまたは補助ブランチを介してシースを除去することによって、管状分岐体のステ
ント部分を展開することができる。
【0040】
シースの除去方法は限定されず、その目的のために、プルストラップ、プルワイヤ、ま
たはプルコードを使用して除去を開始することができる。シースは、引き裂き可能な部分
、例えば、プルワイヤとの接触によって引き裂かれてシースを長手方向に分割することが
できる、長手方向軸引き裂き線を有することによって除去を容易にするように設計されて
いてもよい。あるいは、送達システムにスリッティングツールが組み込まれており、シー
スは、該スリッティングツールと接触しているときに適切に加えられた力の適用下で予測
可能かつ制御可能な方法で裂ける(引き裂かれる)ように設計されていてもよい。
【0041】
シースは、平滑なポリマー材料を含んでいてもよい。PTFEなどの重合ハイドロフル
オロカーボンが適している。あるいは、シースは、ポリエチレンテレフタレート(PET
)から形成されていてもよい。選択された材料は、生態適合性であるべきであり、天然の
血管または人工管腔を、粘着することなく容易に通過することができるものであるべきで
ある。シースは、表面処理されていてもよく、例えば、親水性を付与または増強するため
に、親水性コーティングが施されていてもよい。
【0042】
シースに適した高分子可撓性材料は、可撓性ポリマー、エラストマー、ならびにナイロ
ン、ポリウレタン、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、フッ素化エチレンプロピレン、ポリエ
ーテルブロックアミド(PEBA)、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、および
ポリブチレンテレフタレートなどのコポリマーから選択することができる。
【0043】
シースは、任意に、結合層および強化材を組み込んだ層状積層アセンブリもしくは層状
構造の使用によって強化された、多層押出物などの可撓性ポリマー材料の多層構造、また
は断続的に押し出された複合押出物および可変デュロメータ特性のアセンブリであり得る
【0044】
他の態様によれば、少なくとも取り外し可能な弁および送達シャフト上に送達可能な一
体型の弁を設けることによって、管状本体の補助ブランチまたはアクセスブランチ内に弁
および空気抜き機能が導入される。
【0045】
取り外し可能な弁は、送達シャフト上に取り付けられた枢動スロット付きハウジングの
C字型クランプ部分を含むことができ、C字型クランプ部分は、送達シャフト上に配置さ
れた生地管状体を締め付けるように構成されている。
【0046】
弁および空気抜き機能は、デバイスを取り外し可能なシース内にコンパクトな形態で取
り付けて拘束することができる送達シャフトの周りに構成されたスロット付きハウジング
を含むことができ、スロット付きハウジングは、送達シャフトおよび該送達シャフト上に
配置されたコンパクトな内部プロテーゼデバイスの周りに取り外し可能なC字型クランプ
弁部分を形成する。ハウジングは、シースの除去による内部プロテーゼデバイスの展開中
または展開後に、送達シャフトおよび内部プロテーゼデバイスの周りを握ることによって
C字型クランプ弁部分が取り外されることを可能にするように、送達シャフト上に枢動可
能に取り付けられ得る。ハウジングの枢着部は、C字型弁部分の位置に対して、送達シャ
フト上に遠位に配置され、かつ間隔をあけて配置されてもよい。ハウジングはまた、送達
シャフト上に配置された一体型の弁および通気孔を囲むことができ、この一体型の弁およ
び通気孔は、送達シャフトの除去後にデバイスのアクセスブランチ内に存在し、アクセス
ブランチが切断され、縫合されて閉鎖されると、その後の処置において除去される。一体
型の弁および通気孔は、処分されるべき切断されたアクセスブランチの生地とともに除去
することができる。
【0047】
ハウジングは、送達システムの操作および制御のためのユーザハンドルとして機能する
ように構成されていてもよい。
【0048】
ハンドルは、内部に送達シャフト上に送達可能な一体型の弁を送達目的のためにその中
に配置することができる内部チャンバを有していてもよい。
【0049】
開示された体内プロテーゼデバイスおよびその使用方法のさらなる詳細を、添付の例示
的な図面を参照して以下の説明に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】血管内ステント付きの近位部分および遠位部部分、ドッキングブランチ、アクセスブランチ、ならびに補助ブランチを有する、管状プロテーゼデバイスの側面図である。
図2】モジュール式コンポーネントとともに使用するための、関連する弁付きの回収システムを備えた送達システム内にコンパクトに詰め込まれた、管状プロテーゼデバイスの側面図である。
図3】管状プロテーゼデバイスとともに使用してモジュール式アセンブリを形成するのに適した、モジュール式管状分岐デバイスを示す図である。
図4】送達システム内にコンパクトに取り付けられたモジュール式管状分岐デバイスを導入するための、送達システムを示す図である。
図5】可撓性であり血管内端部を有する管状本体を含む、管状プロテーゼデバイスの血管内挿入のための巾着切開部を有する、脈管構造の一部(大動脈弓および関連する主な血管)を示す図である。
図6】可撓性であり、コンパクトなシース付きの血管内ステント端部と、長さ調節可能なドッキングブランチと、を有する管状本体を有し、シース付きの血管内ステント端部分が巾着切開部に挿入されている、管状プロテーゼデバイスを示す図である。
図7図6の管状プロテーゼデバイスにおいて、それぞれのシースを除去することによって血管内ステント端部分が展開されている状態を示す図である。
図8】モジュール式アセンブリを形成するために、図6および7の管状プロテーゼデバイスのドッキングブランチ内に管状分岐体を導入している状態を示す図である。
図9】天然の(生来の)血管および図6および7の管状プロテーゼデバイスのドッキングブランチ内に、管状分岐体を配置している状態を示す図である。
図10】モジュール式アセンブリをさらに構成するために、図6および7の管状プロテーゼデバイスの異なるドッキングブランチ内に、さらなる管状分岐体を導入して配置している状態を示す図である。
図11】外科的処置の完了前に、補助ブランチを切断し、管状プロテーゼデバイスが配置されている本来の大動脈血管を切開する前の、管状プロテーゼデバイスの展開されたモジュールアセンブリを示す図である。
図12】横方向に延びる1つの補助ブランチと2つのドッキングブランチとを有し、回収ワイヤおよび回収カプセルがそれらを通過して、管状本体と組み立てられる管状分岐体に関連付けられた圧入回収ピンと係合する、プロテーゼデバイスの管状本体を概略的に示す図である。
図13】回収ワイヤを管状分岐体に連結させることを可能にする、回収カプセルと回収ピンとの接続を概略的に示す図である。
図14】回収ワイヤを引っ張ることによる管状分岐体のドッキングブランチ内への導、および管状分岐体のステント部分の展開を概略的に示す図である。
図15】管状分岐体の展開されたステント部分からの、回収ワイヤ、回収カプセルおよび取り付けられた回収ピンの引き抜きを概略的に示す図である。
図16】回収カプセルと圧入割り矢尻ピンとの接続を、3つの連続した段階で概略的に示す図である。
図17】各ドッキングブランチのシボ面から外側の延びる一連の保持ループを有する、長さ調節可能なドッキングブランチを示す図である。
図18】ループ状のドッキングブランチの長さ方向の伸張能力を並べて示す図である。
図19】ループ状のドッキングブランチが最初に伸張され、一方のドッキングブランチが選択された長さ部分を切り取ることによって短縮され、ループ状のドッキングブランチが非伸張構成に戻される、一連のサイジングステップを示す図である。
図20】上下の図はそれぞれ、端面を有する枢動ハウジング(断面で示されている)を支承している送達シャフトの片側からの図と、枢動ハウジング(部分断面で示されている)を支承している送達シャフトの平面を示す図であり、両図とも明瞭化のためにデバイスは省略されている。
図21】上下の図はそれぞれ、図20の送達シャフトおよびハウジングを示す図であり、上側の図はさらに、送達シャフトを引き抜いた後にアクセス/補助ブランチに留まることができる、第1の枢動C字型クランプグリップ弁と、第2の一体型の弁と、通気孔の配置と、を示し;下側の図は、1つの肢部と、ファブリックスリーブで表される送達シャフト上のアクセスブランチと、一方側に延びる管状分岐デバイスの他の肢部と、を有する、管状分岐デバイスを示している。
図22】上下の図はそれぞれ、送達シャフト上のハウジングのインライン位置および旋回位置を示す図であり、ここでも説明のためにデバイスは省略されている。
図23】送達シャフトの一体型先端部に対して遠位に配置された枢着ハブの位置を明らかにするために、送達シャフトから分離されたC字型グリップ弁ハウジングの一実施形態を示す図である。
図24図23の実施形態を組み立てて片側から見た図である。
図25図23および24の実施形態を組み立てて上側から見た図である。
図26図23~25と同じ実施形態を示す図であり、C字型クランプグリップ弁を送達シャフトの周りから取り外すために、枢動ハウジングを枢動位置にした状態を示す図である。
図27図26と同じ実施形態を、送達シャフトの側面および遠位端から見た図であり、C字型クランプ弁の構成を示す図である。
図28】送達シャフト上にシース付きデバイスを有する送達システムを示す図である。
図29図28の送達システムの一方側からの図であり、解放前のシース付きデバイスを示す図である。
図30図28の送達システムの一方側らかの図であり、送達シャフトを取り外す前の被覆されていないデバイスを示す図である。
図31】送達システムのすべての部分をデバイスから取り外すことを可能にするために、送達シャフトから離れるように枢動してC字型クランプバルブの「C」グリップからデバイスの生地を解放する、C字型クランプ弁ハウジングを示す図である。
図32】開放された(展開構成の)デバイスからの、送達シャフトおよびハウジングの部分的な取り外しを示す図である。
図33】開放された(展開構成の)デバイスからの、送達シャフトおよびハウジングの完全な取り外しを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1を参照すると、体内プロテーゼデバイス1が示されている。体内プロテーゼデバイ
ス1は、近位部分11および遠位部分13を含む長さを有する管状本体3を備え、該管状
本体は、近位部分11と遠位部分13との間に可撓性部分を有し、該管状本体3から横方
向に延びる、長さ調整可能な少なくとも1つのドッキングブランチ5が設けられている。
【0052】
実施形態において、体内プロテーゼデバイス1は、少なくとも1つのアクセスブランチ
7を有する。そのようなアクセスブランチ7は、管状本体3上に配置されて、ドッキング
ブランチ5へのアクセスを可能にするように構成されていてもよい。そのようなアクセス
ブランチ7は、ドッキングブランチ5を通るモジュール式コンポーネントの送達に有用で
あり得る。
【0053】
実施形態において、管状本体の近位部分11および遠位部分13の少なくとも一方は、
ステント15を含む。
【0054】
実施形態において、長さ調整可能なドッキングブランチ5は、該ドッキングブランチ5
を長手方向に伸張させることができ、かつ必要に応じて所望の方向に湾曲させることがで
きる、捲縮布スリーブを含む。
【0055】
実施形態において、長さ調整可能なドッキングブランチ5は、一連のセクションを含む
長さを有し、各セクションは、ドッキングブランチ5の長さのトリミングを容易にするた
めに握られ得るタブを有する。しかしながら、図示例では、各セクションはタブの代わり
に保持ループ17を有し、該保持ループ17は、液体の存在による外科的処置の滑りやす
い条件下でトリミングするためにドッキングブランチ5を掴んで保持する能力を向上させ
る。タブまたはループ17は、ポリエステル繊維などの生態適合性材料で作成することが
できる。
【0056】
実施形態において、体内プロテーゼデバイス1は、管状本体3から延びる少なくとも1
つの補助ブランチ7が設けられている。補助ブランチ7は、例えば、体内プロテーゼデバ
イス1の灌流、外科用器具の挿入および除去、あるいは他のデバイスのコンポーネントま
たは送達システムのコンポーネントの送達もしくは除去などの様々な作業に使用すること
ができる。
【0057】
実施形態において、補助ブランチ7または補助ブランチ7のそれぞれは、空気の除去お
よびシステムのフラッシングを可能にするための一体型バルブを含むことができる。
【0058】
デバイス1はまた、管状本体3から延びる本体アクセスブランチ9が設けられている。
【0059】
図2を参照すると、体内プロテーゼデバイス1のための例示的な送達システム21が示
されている。システム21は、管状本体3の近位部分11および遠位部分13を送達シャ
フト上に閉じ込めるための管状本体シース23を含む。各シース23は、カプセルサポー
トホルダ29に取り付けられており、外科医が把持するためのスプリッタ25およびハン
ドル27を備えている。各送達シャフトは、内腔への挿入および通過を容易にするための
先端部24を有する。
【0060】
送達システム21はまた、モジュール式コンポーネント送達システムを含み、これは以
下により詳細に記載される。図2では、モジュール式コンポーネント送達システム31の
第1の部分が、アクセスブランチ7に取り付けられて、かつ分岐弁33を備えて描かれて
いる。
【0061】
図3を参照すると、本明細書に開示される体内プロテーゼデバイス1とともに使用する
ための、モジュール式コンポーネント35が示されている。コンポーネント35は、近位
ステント部分39と遠位ステント部分41とを含む長さを有する、管状分岐体36を備え
る。図1および3を参照すると、管状分岐体36は、近位ステント部分39と遠位ステン
ト部分41との間に可撓性部分を有し、体内プロテーゼデバイス1のドッキングブランチ
5と接続してモジュール式アセンブリを形成するように構成されている。
【0062】
管状分岐本36は、送達システムコンポーネントまたは体内プロテーゼデバイスのため
の、横方向に延びるアクセスブランチ37を有し得る。管状本体3の複数のドッキングブ
ランチ5にそれぞれ取り付けるために、複数のそのようなモジュール式コンポーネント3
5を設けることができる。
【0063】
体内プロテーゼデバイス1は、管状本体3と複数の管状分岐体とを含むモジュール式コ
ンポーネントのキットの形態から選択された、管状本体3と複数の管状分岐体のモジュー
ル式アセンブリを備えることができ、複数の管状分岐体は、解剖学的なばらつきに備えて
、同じまたは異なる寸法の管状分岐体を含むことができる。例えば、複数の管状分岐体は
異なる長さであり得る。任意に、管状分岐体は先細りになっていてもよい。
【0064】
図4を(およびプロテーゼデバイスの部品については図3を部分的に)参照すると、モ
ジュール式コンポーネント送達システム43の第2の部分が示されている。モジュール式
コンポーネント送達システムは、近位部分41および遠位部分39を有する管状分岐体を
、内腔を通して送達するためにコンパクトな形態で閉じ込めるためのシース47を含む。
回収ワイヤ(不図示)に取り付け可能な別個の回収カプセル(不図示)内に嵌合するよう
に構成された、圧入回収ピン57が、(シース付きの)コンパクトな管状ブランチ55か
ら突出して示されている。図示例において、モジュール式コンポーネント送達システムは
、モジュール式コンポーネント35の圧縮された管状分岐体36(図3)を閉じ込めるシ
ース47と、弁45と、を含むように示されている。例示的なシース47は、先端部49
が見える送達シャフト上の管状分岐体の近位部分を圧縮し、ハブ51は、シース47から
管状分岐体36を解放するためのシーススプリッタおよびシースプルハンドル53を含む
【0065】
シース47は、滑らかなポリマー材料を含み得る。PTFEなどの重合ヒドロフルオロ
カーボンもまた、シース47を形成するのに適している。あるいは、シース47は、ポリ
エチレンテレフタレート(PET)から形成されてもよい。選択される材料は、生態適合
性があり、天然の血管または人工管腔を粘着することなく容易に通過することができるも
のであるべきである。シース47は、例えば、親水性を付与または増強するために、親水
性コーティングを施すことによって表面処理されていてもよい。シース47に適した高分
子可撓性材料は、熱可塑性ポリマー、エラストマー、ならびにナイロン、ポリウレタン、
ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフル
オロエチレン(ePTFE)、フッ素化エチレンプロピレン、ポリエーテルブロックアミ
ド(PEBA)、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリブチレンテレフ
タレートなどのコポリマーから選択され得る。
【0066】
シース47は、任意に、結合層および強化材を組み込んだ層状積層アセンブリもしくは
層状構造の使用によって強化された、多層押出物などの可撓性ポリマー材料の多層構造、
または断続的に押し出された複合押出物および可変デュロメータ特性のアセンブリであり
得る。
【0067】
一実施形態において、圧入回収ピン57をシース47に取り付け、回収カプセルを回収
ワイヤに取り付けることができる。
【0068】
一実施形態において、圧入回収ピン57は、回収カプセル内の対応する凹部内に捕捉さ
れ得るようにする形状の頭部を有する。その形状は、ボール形状、弾丸形状または矢尻形
状であってもよく、頭部は、回収カプセル内への圧入中に該頭部のある程度の圧縮を可能
にし、頭部が回収カプセル内の対応する凹部内に位置するときに該頭部の弾性的拡張を可
能にする、弾性材料から作られ得る。
【0069】
図5~11を参照して、損傷した大動脈弓59を、体内プロテーゼデバイス1を使用し
て修復する方法の一例を説明する。第1および第2の、巾着縫合糸に囲われた切開部71
,73を、大動脈弓59の2つの位置に形成して、体内プロテーゼデバイス1の近位部分
とステント付き部分の両方を、大動脈弓59の上行大動脈部61および下行大動脈部63
に血管内挿入するのを容易にする。
【0070】
同様に、第3および第4の、巾着縫合糸に囲われた切開部75,77を、典型的には大
動脈弓59の頂部から延びる主要血管、例えば、左鎖骨下動脈(LSA)69、左総頸動
脈(LCCA)67、および右総頸動脈(RCCA)の側壁に形成する。図示例では、第
3の切開部75がLCCA67に形成されており、第4の切開部77がLSAに形成され
ている。
【0071】
第3の切開部75および第4の切開部77は、体内プロテーゼデバイス1と同様に送達
されるモジュール式コンポーネント25による、これらの血管への血管内接続を容易にす
る。これらのモジュール式コンポーネント35は、主要な血管を体内プロテーゼデバイス
1に接続して、血液供給が患者の脳領域および上肢に確実に維持されるようにする。
【0072】
圧縮された遠位部分および近位部分はそれぞれ、体内プロテーゼデバイス1の管状本体
シースの内側に保持され、巾着縫合糸に囲われたそれぞれの切開部71,73を通して挿
入される。
【0073】
圧縮状態にある間、遠位部分および近位部分は、大動脈弓59を通る血液灌流を維持す
ることができる。これは、オフポンプで行うことができ、シースと切開部との間の接合部
にわたって止血を維持することを必要とするが、これは、遠位部分および近位部分をシー
スから抜く前後の両方で、巾着縫合糸を横断して加えられる張力によって制御することが
できる。
【0074】
体内プロテーゼデバイス1の遠位部分および近位部分は、迅速に連続してアンシースさ
れるので、大動脈弓を通る血流を維持することができる。これにより、損傷した大動脈弓
嚢59は、体内プロテーゼデバイス1を介してバイパスされる。体内プロテーゼデバイス
1の中央部が大動脈弓59の外側にある一方で、近位部分および遠位部分は損傷した大動
脈弓59の内側にある。
【0075】
さらに、この段階での主要な分岐血管(LSA,LCCA,RCCA)には、もはや血
液灌流がない。虚血を防ぐために、これらの血液灌流は迅速に再開され、これは、モジュ
ール式分岐コンポーネント35a,35bを設けることによって促進される。
【0076】
巾着縫合糸およびモジュール式コンポーネント35aを、第3の切開部を通して挿入す
る。次に、巾着の張力を調整して、(シースの外側と切開部との間の失血を防ぐために)
止血を確実にする。
【0077】
次に、モジュール式コンポーネント35aの他の端部を、体内プロテーゼデバイス1の
ドッキングブランチ5内に挿入する。次いで、モジュールコンポーネント35の端部上の
回収カプセルシースを、体内プロテーゼデバイス1内の回収カプセル内にクリップ留めす
る。次いで、シースおよび回収カプセルを、補助ブランチ7を通して引き抜くことができ
る。このステップの直前に、分岐弁を通して空気および血液を排出することが意図されて
いる。
【0078】
シース82をモジュールコンポーネント35aから取り外して、該コンポーネントを完
全に展開し、該コンポーネントがドッキングブランチ7内で開くようにする。そにれより
、本体デバイス1が生来の血管、この例ではLSA69に本質的に接続されるので、血液
供給および灌流が再確立される。これは、虚血を最小限に抑えることを確実にするために
、迅速かつ効率的な実行が意図されている。
【0079】
ドッキングブランチ5には、モジュール式デバイス35bを接続するときにドッキング
ブランチを配置し、保持し、安定させるのを助けるために、保持ループ17が設けられて
いる。ドッキングブランチ5はまた、それらの機能を損なうことなく解剖学的なばらつき
に役立つようにトリミング可能である。
【0080】
図示例では、次に、第2のモジュール式コンポーネント35bを体内プロテーゼデバイ
ス1の別のドッキングブランチ5(1、2、3またはそれを超える数のドッキングブラン
チがあってもよいが、図10および11には2つだけが示されている)内に挿入し、上述
のモジュール式コンポーネント35aと同じ方法で、本体デバイス1を生来の血管に接続
するために使用する。
【0081】
モジュール式分岐送達システムは、デバイス1の補助ブランチ7を通してシースを引き
出し、処置の終わり頃に解体されてデバイス1から取り除かれる。次に、補助ブランチ7
は、デバイス1から切断される。
【0082】
デバイス1およびLCCAおよびLSAを通って血液が流れると、外科医は、損傷した
大動脈弓59の主管部を切除することができ、その際、本体デバイスは、生来の弓血管の
構内に配置されている。
【0083】
ここで、図12~16を参照して、分岐モジュール式コンポーネント送達システム31
がどのように使用されるのかを説明する。管状本体3から横方向に延びる少なくとも1つ
のドッキングブランチ5を有する管状本体3を有する、体内プロテーゼデバイス1のその
ような実施形態の使用において、ユーザは、シース47内にコンパクトな形態のステント
部分を有する管状分岐体36を提示し、圧入回収ピン57をシースに取り付け、アクセス
または補助ブランチ5を介して管状本体3を予め通過している回収ワイヤ83が取り付け
られた回収カプセル81と並置し、回収ピン57を回収カプセル81内に圧入すると、管
状分岐体36が体内プロテーゼデバイス1の本体3のドッキングブランチ5内に挿入可能
となり、回収ワイヤ83を引っ張ることによって、管状分岐体36を体内プロテーゼデバ
イスの本体のドッキングブランチ内に最初に位置決めし、その後、アクセスブランチまた
は補助ブランチを介してシース47を取り外すことによって、管状分岐体のステント部分
を展開する。
【0084】
シース47の取り外し方法は限定されず、その目的のために、プルストラップ、プルワ
イヤ、またはプルコードを使用して、取り外しを開始することができる。シース47は、
引き裂き可能な部品、例えば、プルワイヤとの接触によって引き裂かれてシースを長手方
向に分割することができる、長手方向軸引き裂き線を有することによって、取り外しを容
易にするように設計されていてもよい。あるいは、送達システムには、スリッティングツ
ールと接触しているときに適切に加えられた力が加えられている状態で、予測可能かつ制
御可能な方法で裂ける(引き裂く)ように設計された、スリッティングツールが組み込ま
れていてもよい。
【0085】
図12~16は、モジュール式分岐コンポーネント35を本体コンポーネント3に接続
する一連のステップを示すものであり、シーケンス全体にわたって、同じ参照番号は、先
に使用されたものと同じ部分を識別するために使用されている。
【0086】
図16を参照すると、回収カプセル81と回収ピン57との接続の、3つの連続した段
階が詳細に示されている。図示例では、回収ピン57の頭部の形状は矢尻形状であるよう
に示されている。接続プロセスの第1の段階では、頭部を回収カプセル81と位置合わせ
する。当該プロセスの第2の段階では、頭部を回収カプセル81内に圧入する。頭部が回
収カプセル81の内側に圧入されると、頭部は、回収カプセル81内に入ることを可能に
するためにある程度の圧縮を受け、次いで回収カプセル81の内側にそれを保持するため
にある程度の弾性膨張を受ける。
【0087】
図17を参照すると、体内プロテーゼデバイス1様の長さ調節可能なドッキングブラン
チ5の一例が示されている。各長さ調節可能なドッキングブランチは、管状本体3から横
方向に延び、ドッキングブランチ5をその長さに沿って伸ばすことができ、かつ必要な場
合に所望の方向に湾曲させることができる、捲縮布スリーブを含む。図示例において、長
さ調節可能なドッキングブランチ5は、一連のセクションを含む長さを有し、各セクショ
ンには、保持ループ17が設けられている。
【0088】
図18は、ドッキングブランチ5に伸張が適用されたときに、該ドッキングブランチ5
が長さ調節する能力を示す。
【0089】
図19に示すように、使用時に、外科医は、最初にドッキングブランチ5を伸張させて
それが長くなるようにし、次に切断ツールを用いてブランチ5を切断することによって当
該ブランチ5を所望の長さに短くする。その後、ドッキングブランチ5は非伸張の形態に
戻る。
【0090】
図20~33を参照すると、弁および空気抜き機能部99は、少なくとも取り外し可能
な弁113と、送達シャフト103上に送達可能な一体型の弁/通気孔115とを設ける
ことによって、主管本体3の補助またはアクセスブランチ7に導入される。弁および空気
抜き機能部99は、デバイス1が取り付けられ、取り外し可能なシース23内にコンパク
トな形態で拘束され得る送達シャフト103の周りに構成された、スロット付きハウジン
グ101を含むことができ、スロット付きハウジング101は、送達シャフト103と、
該送達シャフト103上に配置された小型の体内プロテーゼデバイス1と、の周りに取り
外し可能なC字型クランプ弁部105を形成する。シース23を取り外すことによる体内
プロテーゼデバイス1の展開中または展開後に、C字型クランプ弁部105が送達シャフ
ト103および体内プロテーゼデバイス1の周りを握って取り外されることを可能にする
ために、ハウジングは、送達シャフト103上に枢動可能に取り付けられ得る。ハウジン
グ101用の枢着部109は、C字型弁部分105の位置に対して、送達シャフト103
上に遠位方向に配置されかつ離間されていてもよい。ハウジング101は、送達シャフト
103上に配置された一体型の弁および通気孔を囲うチャンバを含むことができ、一体型
の弁/通気孔115は、送達シャフト103の取り外し後にデバイス1のアクセスブラン
チ内にあり、アクセスブランチを切断し、縫合し、閉鎖するときの処置において後に除去
され、一体型の弁115および通気孔は、処分されるべき切断されたアクセスブランチの
布地とともに取り外し可能である。
【0091】
ハウジング101は、送達システム21の操作および制御のためのユーザハンドルとし
て機能するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 体内プロテーゼデバイス
3 管状本体
5 ドッキングブランチ
7 補助ブランチ
9 本体アクセスブランチ
11 近位ステント部分
13 遠位ステント部分
15 ステント
17 保持ループ
21 送達システム
23 管状本体シース
24 送達システム先端部
25 スプリッタ
27 ハンドル
29 カプセルサポートホルダ
31 モジュール式ブランチ送達システムの第1の部分
33 第1の弁
35 モジュール式ブランチ
35a 第1のモジュール式ブランチ
35b 第2のモジュール式ブランチ
36 管状分岐体
37 アクセスブランチ
39 遠位ステント部分
41 近位ステント部分
43 モジュール式ブランチ送達システムの第2の部分
45 第2の弁
47 モジュール式グラフトシース
49 先端部
51 シーススプリッタ
53 ハンドル
55 圧縮された(被覆された)管状ブランチ
57 圧入回収ピン57
59 大動脈弓
61 上行大動脈部
63 下状大動脈部
65 腕頭動脈
67 左総頸動脈
69 左鎖骨下動脈
71 第1の切開部
73 第2の切開部
75 第3の切開部
77 第4の切開部
81 回収カプセル
83 回収ワイヤ
99 通気システム
101 スロット付きハウジング
103 送達シャフト
105 C字型クランプ弁部
107 横材
109 枢着部
113 取り外し可能な弁
115 一体型の弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33