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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】再生医療材料
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/10 20060101AFI20240614BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20240614BHJP
   A61L 27/36 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
A61L27/10
A61L27/56
A61L27/36
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022096918
(22)【出願日】2022-06-15
(65)【公開番号】P2023138227
(43)【公開日】2023-10-02
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】111109808
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】522241136
【氏名又は名称】巨晰光纖股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIWAN FIBER OPTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】4F., No. 36, Jinzhou St., Zhongshan Dist., Taipei City 10451, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】呂俊毅
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジェイ ロレッツ
(72)【発明者】
【氏名】曾效參
(72)【発明者】
【氏名】姜▲ユウ▼至
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0209484(US,A1)
【文献】特表2001-521429(JP,A)
【文献】特表2002-532158(JP,A)
【文献】特開昭57-003739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0209095(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的リンパ管新生の誘発のための再生医療材料であって、
生体用ガラス繊維を含んで構成された多孔微小管繊維構造を含み、
前記生体用ガラス繊維は、生体活性ガラスのガラス化学組成物を含み、生体活性ガラスのガラス化学組成は、ガラス化学組成を100wt%として、5~25wt%のNa2O、45~67wt%のSiO2、15~25wt%のCaO、2~6wt%P2O5を含み、
前記生体用ガラス繊維から一層または二層以上からなる微小管繊維構造が形成され、前記微小管繊維構造を複数組みあわせて前記多孔微小管繊維構造が構成され、
前記多孔微小管繊維構造を構成する前記微小管繊維は3~35μmの直径を有し、前記微小管繊維同士の間隔は2~35μmである、前記再生医療材料。
【請求項2】
幹細胞の方向性のある配置と増殖の誘導のための再生医療材料であって、
生体用ガラス繊維を含んで構成された繊維構造を含み、
前記生体用ガラス繊維は、生体活性ガラスのガラス化学組成物を含み、生体活性ガラスのガラス化学組成は、ガラス化学組成を100wt%として、5~25wt%のNa2O、45~67wt%のSiO2、15~25wt%のCaO、2~6wt%P2O5を含み、
前記生体用ガラス繊維から一層または二層以上からなる繊維構造が形成され、
前記繊維構造は3~25μmの直径を有する、前記再生医療材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の再生医療材料において、
前記生体用ガラス繊維は生体不活性ガラスのガラス化学組成物を含み、生体不活性ガラスのガラス化学組成が、ガラス化学組成を100wt%として、5A族の非毒性元素および3B、4Bおよび5B遷移金属を0.1~5wt%含む
ことを特徴とする再生医療材料。
【請求項4】
請求項1に記載の再生医療材料において、
当該再生医療材料がマクロファージ由来のリンパ管内皮細胞前駆細胞を活性化し、線維症を伴わない治療的リンパ管形成水ドレナージを介してリンパ管形成および心房細動を促進する
ことを特徴とする再生医療材料。
【請求項5】
請求項2に記載の再生医療材料において、
当該再生医療材料は歯髄幹細胞(DPSC)と共培養され、
歯髄幹細胞(DPSC)が当該再生医療材料の繊維の方向に向かって成長し、
その結果、歯髄幹細胞(DPSC)は当該再生医療材料の繊維上で成長し、臨床的に有用な期間で象牙質形成象牙芽細胞に統合される
ことを特徴とする再生医療材料。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の再生医療材料において、
生体活性ガラスのガラス化学組成がさらに1~8wt%のMgOおよび8~12.5wt%のK2Oを含む
ことを特徴とする再生医療材料。
【請求項7】
請求項3に記載の再生医療材料において、
前記生体用ガラス繊維は、生体活性ガラス、生体不活性ガラス、またはそれらの組み合わせからなる
ことを特徴とする再生医療材料。
【請求項8】
請求項1に記載の再生医療材料において、
多孔微小管繊維構造は、生体活性ガラス、生体不活性ガラス、またはそれらの組み合わせからなり、
円形または非円形の断面形状を有する
ことを特徴とする再生医療材料。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の再生医療材料において、
前記生体用ガラス繊維が、X線に対して不透明な生体不活性ガラス繊維を含む
ことを特徴とする再生医療材料。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の再生医療材料において、
ガラスの化学組成の変更または繊維部品の直径の変更のいずれかに基づき、ヒトまたは動物の生体において異なる再生材料の取り込み時間を有するようにする
ことを特徴とする再生医療材料。
【請求項11】
請求項1に記載の再生医療材料において、
非円形の断面形状を持つ多孔微小管繊維構造は3~125μmの断面径を有する
ことを特徴とする再生医療材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生医療材料用の生体用ガラス繊維およびそれらを適用した応用に関する。より具体的には、既知の生物学的に生体適合性のあるガラス繊維化学組成物から作製された生体用ガラス繊維構成の発明に関し、そのファイバー構成は、化学的に生体吸収可能、光透過性、があり、リンパ管形成材料の媒介となり、幹細胞の方向性のある配置と増殖を誘導することができる。さらに、生体用ガラス繊維は、幹細胞の再生、骨細胞の再生、神経血管の再生、または細胞担体としての機能を仲介する機能を有する。
【背景技術】
【0002】
再生医療は、老化、病い、または傷のために生じる体内の不健康な臓器や組織を修復または置換するための機能的で重要な臓器や組織の生産である。したがって、再生医療分野の発展により、体自身の修復メカニズムを刺激して、損傷した組織や臓器を操作(生成)し、以前は修復できなかった組織や臓器を治癒する可能性がある。
【0003】
1969年、ローレンスヘンチ博士は、動物、より具体的には人間の骨代替材料として使用するためのシンプルな4成分ガラスを開発しました。最終的に、ヘンチはこの基本的なガラスの化学組成に追加的成分を追加し、この材料ファミリーを応用、研究する研究者は「バイオグラス」(生体用ガラス)という名前を作り出しました。近年では、この材料は、「生体活性ガラス」(したがって、生物学的に適合性のあるガラス)として知られる材料のクラスに割り当てられている。
【0004】
近年、人間の組織や臓器は、患者の体内に移植するために研究所で採取されている。別の方法には、体内での薬物放出により患者の組織を刺激して直接再生することが含まれる。新しい再生医療技術は、骨、軟骨、皮膚、膀胱、尿管、腎臓、肝臓、神経科学において急速に発展している。再生材料を慎重に選択することが重要であり、それは、細胞は培養環境の物理化学的特性に非常に敏感であるためである。使用される材料の機械的特性と細孔構造は、考慮される必要があり、それは、移植後の組織の修復と成長に影響を与えるためである。再生材料は、脂肪細胞、軟骨細胞、神経細胞、骨芽細胞、または筋肉細胞に分化する可能性をもち、それは培養条件または特定の成長因子の添加に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この分野の先行技術を考慮して、本発明者らは、従来の運搬方法の欠陥を克服し、実際の再生材料化学の効能、有効性を改善する革新的な進歩を遂げた。本発明は、照明あるいは通信光ファイバー製造のために開発された技術を活用して、大幅に改善された再生医療材料を市場にもたらし、産業の発展を促進し、社会の健康を改善する新しいアプローチを提案する。
【0006】
本発明の主な目的は、再生医療材料およびそれらの応用のための生体用ガラス繊維および繊維構成を提供することにある。
本発明に記載の生体用ガラス繊維組成物のいずれかから作製された単一の裸繊維構成または組み合わせ構造の繊維構成は、細胞活性メカニズムを生成し、細胞に必要物を提供し、免疫系の統合を刺激する体内環境を提供することができる。
さらに、繊維の溶解および吸収が機能性を決定することから、本発明の生体用ガラス繊維は、正確な構造サイズおよび特有の配合比で製造され、溶解および吸収速度を調整する。
さらに、本発明の生体用ガラス繊維は、リンパ管新生を媒介し、幹細胞の方向性のある配置および増殖を誘導するために使用される医療材料である。
さらにまた、若干変更により、派生物は骨格あるいは神経管を形成する可能性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、ガラス化学組成物の既知の生体用ガラスファミリーを利用して、生物学的に活性なガラスまたは生物学的に不活性なガラスを含む繊維ベースの再生医療材料を製造する。
生物学的活性ガラスのガラスファミリー組成物は、ガラス化学組成物の100wt%に基づいて、5から25wt%のNaO、45から67wt%のSiO、15から25wt%のCaO、および2から6wt%のPを含む。
ここで、生体用ガラス繊維は、単一の裸の繊維構成および/またはハイブリッド(組み合わせ)構造の繊維構成を形成する。
【0008】
実施形態では、生体用ガラスのガラス化学組成は、さらに、1から8wt%のMgO、および、8から12.5wt%のKOを含む。
【0009】
実施形態では、生物学的に不活性なガラスのガラス化学組成は、ガラス化学組成の100wt%に基づいて、0.1から5wt%の5A族の非毒性元素および3B、4Bおよび5B族遷移金属を含む。
【0010】
通信および照明技術においてよく知られた繊維製造技術から適用された製造手段を生物学的ガラスに適用することにより、生体用ガラスは、単一の裸の繊維またはハイブリッド構造の繊維のいずれかになる。
これらの生体用ガラス繊維は、ソリッド(中実の)コアまたは(毛)細管チャネルになり得る。
さらに、個々の繊維を集めて組み合わせて、より複雑な繊維ベースの構造が形成され得る。
【0011】
実施形態では、単一の裸の繊維構成は、生体活性ガラスまたは生体不活性なガラスから構成される。
【0012】
実施形態において、混合(ハイブリッド、組み合わせ)繊維構造は、生体活性ガラスまたは生体不活性ガラスで作られた単一の裸の繊維構造に加えて、以下を含み得る。
(1)生体活性ガラスのコアと生体不活性ガラスの外側クラッドで作られた単一のクラッドファイバー、
(2)生体活性ガラスまたは生体不活性ガラスで作られた単一の裸繊維マイクロチューブ、
(3)生体活性ガラスまたは生体不活性ガラスで作られた複数の融合した内部微小管を備えた単一のハイブリッド繊維構造。
(4)融合していない束構造における生体活性ガラスまたは生体不活性ガラスで作られた単一裸繊維の束であって、その隙間空間に天然の生体用ガラス毛細管を有するもの。
天然、あるいは、天然の生体用ガラス毛細管というのは、人工的にガラスチューブ(ガラス管)を作ったということではなくて、例えば、ファイバーを束ねたときにできるファイバー同士の隙間が毛細管の働きになるということと解されたい。
(5)融合していない束構造における単一裸繊維微小管の束であって、その隙間空間に追加的の天然の生物学的微小管を有するもの。
(6)融合していない構造における単一コーティングされたファイバーの束であって、その隙間空間に生体不活性ガラスからなる追加的天然の微小管を含むもの。
【0013】
実施形態では、混合構造の繊維構成は、生体活性ガラスまたは生体不活性ガラスで作られた単一のキャピラリーチャネルファイバー構成(毛細管繊維構成)で構成される。
【0014】
実施形態では、混合繊維構造は混合ソリッド繊維構成を含み、ハイブリッドソリッド繊維構成は、生体活性ガラス、生体不活性ガラス、および/またはそれら2層以上の組み合わせ構成からなる。
【0015】
実施形態では、混合繊維構造はハイブリッドシングルキャピラリーチャネルファイバー構成(毛細管繊維構造の組み合わせ構造)を含み、ハイブリッドシングルキャピラリーチャネルファイバー構成(毛細管繊維構造の組み合わせ構造)は、生体活性ガラス、生体不活性ガラス、および/またはそれら2層以上の組み合わせ構成からなる。
【0016】
実施形態では、混合繊維構造は混合多孔マイクロチューブ繊維構造を含み、混合多孔マイクロチューブ(微小管)繊維構造は、生体活性ガラスまたは生体不活性ガラスから構成される。
【0017】
実施形態では、混合多孔微小管繊維構造は、生体活性ガラスまたは生体不活性ガラスの2つ以上の層から構成され、円形または非円形の断面形状を有する。
【0018】
実施形態では、単一の裸の繊維構造および混合繊維構造は、X線に対して不透明である生体不活性ガラス繊維を含む。
また、ガラス化学組成は、ある生体活性添加剤材料を含み、1つまたは複数の生体活性ガラス繊維にX線不透明を導入し、用途のタイプに応じて新しい構造を作成することができる。
また、ガラス化学組成は、ある生体不活性添加剤材料を含み、1つまたは複数の生体不活性ガラス繊維にX線不透明を導入し、用途のタイプに応じて新しい構造を作成することができる。
【0019】
実施形態では、ガラス化学組成の変更または繊維構成要素の直径サイズパラメータの変更により、単一の裸の繊維構造および混合繊維構造の、ヒトまたは動物の体内における、再生材料の異なる吸収時間をつくることができる。
【0020】
実施形態では、単一の裸の繊維構成は、3から25μmの間の直径を有する。
【0021】
実施形態では、ハイブリッドマルチキャピラリーチャネルファイバー構成(混合多孔微小管繊維構造)は、3から35μmの間の円形直径を有する。
【0022】
実施形態では、非円形の断面形状を有するハイブリッドマルチキャピラリーチャネルファイバー構成(混合多孔微小管繊維構造)は、3から125μmの間の開口を有する。
【0023】
本発明の主な目的は、再生医療材料デバイスのためにバイオエンジニアリングされた、上記のガラス化学組成物から形成された再生医療材料のための生体用ガラス繊維の応用技術を提供することであり、それは、
(1)治療的リンパ管新生の提供、
(2)幹細胞の方向性のある配置と増殖の誘導、
(3)幹細胞の再生の誘導
(4)骨細胞の再生の誘導、
(5)神経血管再生の誘導
(6)細胞担体としての作用、
を提供する。
【0024】
実施形態では、上記の生体用ガラス繊維の構成および用途は、マクロファージをリンパ管内皮前駆細胞として復活させ、治療的リンパ管新生を通じて、線維症を伴わずに房水の排出を促進する。
【0025】
実施形態において、生体用ガラス繊維は、歯髄幹細胞(DPSC)と共培養するように製造されることができ、DPSCを15から18時間以内に生体用ガラス繊維に向かって成長させ、22から25時間以内に生体用ガラス繊維上で成長させ、そして数日で歯状突起を形成する歯芽細胞を形成します。一般に、幹細胞は、自己複製および多系統分化能力を示す未分化細胞として定義される。象牙質形成歯芽細胞に加えて、DPSCは、骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、筋細胞、神経細胞および内皮細胞、メラノサイト、肝細胞、網膜幹細胞を含む中胚葉および非中胚葉組織細胞に分化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の単一の裸の繊維構成についての概略図である。
図2A図2Aは、本発明の混合構造の繊維構成についての概略図である。
図2B図2Bは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例1のSEM画像である。
図2C図2Cは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例2のSEM画像である。
図2D図2Dは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例3のSEM画像である。
図2E図2Eは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例4のSEM画像である。
図2F図2Fは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例5のSEM画像である。
図3A図3Aは、本発明の単一の毛細管チャネルファイバ構成についての例1の顕微鏡写真画像である。
図3B図3Bは、本発明の単一の毛細管チャネルファイバ構成についての例2の顕微鏡写真画像である。
図4A図4Aは、本発明の混合単一毛細管チャネルファイバ構成についての例1の顕微鏡写真画像である。
図4B図4Bは、本発明の混合単一毛細管チャネルファイバ構成についての例2の顕微鏡写真画像である。
図5A図5Aは、本発明の混合マルチキャピラリーチャネルファイバー構成(混合多孔微小管繊維構成)の先端についての例1の顕微鏡写真画像である。
図5B図5Bは、本発明の混合マルチキャピラリーチャネルファイバー構成(混合多孔微小管繊維構成)についての例2から12までの顕微鏡写真画像である。
図5C図5Cは、本発明の混合マルチキャピラリーチャネルファイバー構成(混合多孔微小管繊維構成)についての例3の顕微鏡写真画像である。
図6図6は、リンパ管新生を媒介する目的で再生医療材料で操作された、本発明の生体用ガラス繊維適用タイプに導入された細胞の組織病理学的検査の顕微鏡写真画像である。
図7図7は、皮下に組織に移植された再生医療材料で操作された、本発明の生体用ガラス繊維適用タイプに導入された細胞の組織病理学的検査の顕微鏡写真画像である。
図8図8は、本発明の生体ガラス繊維適用タイプで成長するヒト歯髄幹細胞(DPSC)の顕微鏡写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
続く段落において、上記図を完全に理解するために詳細な説明を提供する。よく知られている構造や装置も、理解を深めるために概略的に使用する。
(好ましい実施形態)
【0028】
「生物学的活性ガラス繊維(あるいは生体活性ガラス繊維)」("biological glass fiber")、「生物学的に不活性なガラス繊維(あるいは生体不活性ガラス繊維))」("biologically-inert glass fiber")、「混合生物学的ガラス繊維(混合生体用ガラス繊維)」("hybrid biological glass fiber")、「X線不透明性を有する生物学的活性ガラス繊維(生体活性ガラス繊維)」("biological glass fiber with X-ray opacity")、「X線不透明度のある生物学的不活性ガラス繊維(生体不活性ガラス繊維)」("bioinert glass fiber with X-ray opacity")などの「構成」および「用途」とともに本明細書で使用される「生物学的(あるいは生体や生体用)」という用語は、生物に適用できる生物学的材料を意味する。「適合性がある」という用語は、生物によって吸収され得る生物学的材料を意味する。「生体不活性」という用語は、生物によって吸収されることはできないが、生物に害を及ぼさない生物学的物質を意味する。
【0029】
實施例1
(実施例1)
【0030】
図1から図2Fを参照されたい。
図1は、本発明の単一の裸の繊維構成についての概略図である。
図2Aは、本発明の混合構造の繊維構成についての概略図である。
図2Bは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例1のSEM画像である。
図2Cは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例2のSEM画像である。
図2Dは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例3のSEM画像である。
図2Eは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例4のSEM画像である。
図2Fは、本発明の混合ソリッド繊維構成についての例5のSEM画像である。
【0031】
(好ましい第一実施形態)
【0032】
図1から2Fに示されるように、本発明は、ガラス化学組成物からなる生体活性ガラス(生物学的活性ガラス)または生体不活性ガラス(生物学的不活性ガラス)を含む再生医療材料用の生体用ガラス繊維を提供する。
本発明の生体用ガラスの好ましいガラス化学組成は、ガラス化学組成を100wt%として、21.5wt%のNaO、48.0wt%のSiO、24.5wt%のCaO、および6.0wt%のPである。
ここで、前記ガラス化学組成は生体用ガラス繊維を形成し、生体用ガラス繊維は、既知の技術を使用して、単一の裸の繊維構成またはハイブリッド構造の繊維構成に作られる。再生ガラス材料が生体組織と統合するのに必要とされる時間(再生化学吸収時間(以下、「吸収時間」)は、ガラスの化学組成に依存する。
【0033】
図1に示されるように、単一の裸の繊維構成1は、既知の溶融延伸およびマイクロファブリケーション技術(微細加工技術)によって形成される。また、図2Aに示されるように、複数の層を有するハイブリッド構造繊維構成2もまた溶融延伸およびマイクロファブリケーション技術によって形成される。ハイブリッド構造繊維構成2は、生物学的ガラス材料の2つ以上の層から構成することができ、ハイブリッド構造繊維構成2の各層の吸収時間は、用途タイプに合うように調整することができる。
【0034】
あるいは、図2Bから5Cに示されるように、ハイブリッドソリッド繊維構成(中空でなく中味がある中実の混合中実繊維構造)に複数の生物学的ガラス組成物が組み込まれる。生体用ガラス繊維の形状を変えることができ、各生体用ガラス繊維の吸収時間は、用途のタイプに合わせて変えられる。さらに、ハイブリッド繊維構造2は基本構成部材であり、アプリケーションの種類に応じて、組み合わされて融合されて、ハイブリッドソリッド繊維構造20、またはハイブリッドソリッド繊維構造20a、またはハイブリッド単孔微小管繊維構造21、または、ハイブリッド多孔質微小管繊維構造22を形成する。さらに、単一の裸の繊維構造1の直径は3から25μmの間であり、ハイブリッドソリッド繊維構造20およびハイブリッドソリッド繊維構造20aは3から35μmの間の直径を有し、ハイブリッド単孔微小管繊維構造21、ハイブリッド多孔質微小管繊維構造22は、それぞれ3から125μmの間の孔径を有する。
【0035】
再生医療材料用の生物学的ガラスのガラス化学組成は、以下に使用できる生物学的ガラス繊維(生体用ガラス繊維)を形成する。
すなわち、
治療的リンパ管新生の提供、
幹細胞の方向性のある配置と増殖の誘導、
幹細胞の再生の誘導、
骨細胞の再生の誘導、
神経血管再生の誘発、
または
セルキャリアとしての機能、に使用できる。
【0036】
本発明の再生医療用ガラス材料は、遅い代謝の前に小さな鋭い粒子に分解あるいは解離することに依存する従来の医療用ポリマー材料とは異なる。本発明の医療用ガラス材料は、水に砂糖が溶けるように迅速かつ完全に溶解する。また、本発明の再生医療材料は、人体に安全かつ効果的に吸収される。本発明によれば、体内に異物が残らず、他の方法にあるような生体組織コーティングのような望ましくない現象が発生しない。患者は、治療の結果として引き起こされる後遺症の不快感、病理学的合併症を経験せず、必要に応じて、元のインプラント部位を無期限に再治療できる。
【0037】
(第二実施形態)
【0038】
再生医療材料用の生物学的ガラス組成物は、重量パーセントで、6.5wt%のNaO、50wt%のSiO、20wt%のCaO、6wt%のP、6.5wt%のMgO、および11wt%のKOを含む。そして、生物学的ガラスの組成は、既知の溶融延伸あるいはマイクロファブリケーション技術により、単一の裸の繊維構成1またはハイブリッド構造のガラス繊維構成2に作られる。
【0039】
さらに、ハイブリッド繊維構造2は基本構成部材であり、アプリケーションの種類に応じて、組み合わされて融合されて、ハイブリッドソリッド繊維構造20、またはハイブリッドソリッド繊維構造20a、またはハイブリッド単孔微小管繊維構造21、または、ハイブリッド多孔質微小管繊維構造22を形成する。さらに、単一の裸の繊維構造1の直径は3から25μmの間であり、ハイブリッドソリッド繊維構造20およびハイブリッドソリッド繊維構造20aは3から35μmの間の直径を有し、ハイブリッド単孔微小管繊維構造21、ハイブリッド多孔質微小管繊維構造22は、それぞれ3から125μmの間の孔径を有する。
【0040】
再生医療材料用の生物学的ガラス(生体用ガラス)のガラス化学組成は、以下に使用できる生物学的ガラス繊維(生体用ガラス繊維)を形成する。
すなわち、
治療的リンパ管新生の提供、
幹細胞の方向性のある配置と増殖の誘導、
幹細胞の再生の誘導、
骨細胞の再生の誘導、
神経血管再生の誘発、
または
セルキャリアとしての機能、に使用できる。
【0041】
図2Bから2Fに示されるように、ハイブリッドソリッド繊維構成20は、少なくとも1つの生体活性(生物学的活性)ガラス繊維201、生体不活性(生物学的不活性)ガラス繊維202、X線不透明度を有する生物不活性ガラス繊維203、またはX線不透明性を有する生物学的活性ガラス繊維204を含む。生物学的ガラス繊維製造の既知の技術により、複数の生物学的ガラスは、異なる屈折率、軟化温度、および膨張係数を有するガラスに囲まれ、それにより、複数の生物学的ガラスの周囲の外表面が覆われ、融合され、ハイブリッドソリッド繊維構成20を形成する。ハイブリッドソリッド繊維構成20は、骨細胞の再生を誘発し、骨組織のオッセオインテグレーション(骨組織の統合)を誘発し、および、骨芽細胞の統合の誘発をすることができる。
【0042】
図2Bから2Fに示されるように、ハイブリッドソリッド繊維構成20の外層は、酸およびアルカリに耐性があって不溶性材料である生体不活性ガラス繊維202から構成される。バイオ不活性ガラス繊維202は、周期表の遷移元素グループからの微量元素および5族(5A族)からの非毒性元素を含む。遷移元素には、3B族のランタニド、および4B族と5B族の元素が含まれる。図2Bに示されるように、ハイブリッドソリッド繊維構造20の外層は、生体不活性ガラス繊維202から構成される。ハイブリッドソリッド繊維構造20の中心は、生体活性ガラス繊維201で構成されており、良好な光透過率を有する。そして、ハイブリッドソリッド繊維構造20の外層と中心との間に、X線不透過の生体不活性ガラス繊維203の層がある。
【0043】
図2Cでは、ハイブリッドソリッド繊維構造20内に3つの扇形の生物活性ガラス繊維201メンバーがあり、残りは、生物学的に不活性なX線不透明度添加剤を含む生体不活性ガラス繊維203であり、X線カメラで観察されうる。
図2Dでは、ハイブリッドソリッド繊維構成20に5つの生体活性ガラス繊維201が存在する。
図2Eでは、ハイブリッドソリッド繊維構造20内に7つの生体活性ガラス繊維201が存在する。
ハイブリッドソリッド繊維構造20は吸収されて溝を形成し、これはオッセオインテグレーション(インプラント骨組織間統合)に使用することができ、残りはX線不透過生体不活性ガラス繊維203であり、X線カメラで観察できる。
【0044】
図2Bから2Eに示されるように、ハイブリッドソリッド繊維構造20は、生体活性ガラス繊維201、生体不活性ガラス繊維202、およびX線不透過性生体不活性ガラス繊維203のすべてから構成され、それらの溶解時間は異なる。
図2Fに示すように、ハイブリッドソリッド繊維構造20aは、図2Eのハイブリッドソリッド繊維構造20と同じであるが、しかし、図2Fのハイブリッドソリッド繊維構造20aは、X線に対して不透明である生体活性ガラス繊維204を有する。
図2Fに示されるように、生体用バイオガラス繊維201aは、溶解速度が向上した化学成分から構成されており、約2~7日で生体に吸収され得る。
X線不透過性を有する生体活性ガラス繊維204は、約30日で生物に吸収され得る。生体活性ガラス繊維201は、約65日で生体に吸収される。
【0045】
生体活性ガラス繊維201は、治療的リンパ管新生を誘導する。X線不透明度を備えたハイブリッドソリッド繊維構造20の目的は、X線撮影を容易にし、生体に埋め込まれた生体活性ガラス繊維201の位置を特定することを容易にすることである。さらに、用途のタイプに応じて、図2B、2C、および2Dのハイブリッドソリッド繊維構造20はまた、異なる溶解速度を有するバイオガラス繊維から構成され得る。
【0046】
以下の表1から、他の条件(温度、pH、液体媒体、繊維径など)が同等の場合、SiO2(二酸化ケイ素)の含有量が多いほど溶解速度が遅くなり、再生材料の吸収時間が長くなることがわかる。
表1の生体物質の直径はすべて15μmである。
【0047】
表-1 基質ガラス化学組成溶解速度
【表1】
【0048】
図3Aから3Bを参照されたい。
図3Aは、本発明の正方形の形状のハイブリッドコア222を備えた単一の毛細管チャネルファイバ構成23についてのSEM画像である。
図3Bは、本発明の楕円形の形状のハイブリッドコア222を備えた単一毛細管チャネルファイバ構成23のSEM画像である。
【0049】
図4Aから4Bを参照されたい。
図4Aは、ハイブリッド単一毛細管チャネルファイバ構成21についての本発明のSEM画像である。
それは、本発明の広範なハイブリッド構造の適用性を示し、生体活性的および生体不活性的ガラス材料を連続層としてもつ多様なタイプの適用を示している。
図4Bは、2層ハイブリッド単一毛細管チャネルファイバ構成の本発明のSEM画像である。
【0050】
図5Aは、本発明のハイブリッドマルチキャピラリーチャネルファイバー構成の先端についての顕微鏡写真画像である。
【0051】
図5Bは、本発明のハイブリッドマルチキャピラリーチャネルファイバー構成の考えられる断面の例についてのSEM画像を含み、ハイブリッド構造の広範な適用性を示している。例のいずれも、薬物担体として使用することができ、化学薬品はチャネルで運ばれうる。治療において、患者が必要とする化学薬品がチャネルに配置され、ハイブリッドファイバーは人体または動物の体内に配置される。化学薬品が治療部位に到達すると、化学薬品は治療のために治療部位に放出される。さらに、キャピラリーホールの数、形状、およびサイズは、適用要件に応じて、薬物放出速度に対応するために簡単に変更されうる。さらに、示されるように、毛細管穴は、円または多角形であり得るが、本発明はそれに限定されない。
【0052】
図5Cは、本発明のハイブリッドマルチキャピラリーチャネルファイバー構成(ハイブリッド多孔質微小管繊維構造)の断面の例についてのSEM画像であり、ここで、一次外側クラッドとしてのハイブリッド多孔質微小管繊維構造22は、微小管繊維221からなる多重融合微小管を有する。
【0053】
リンパ管新生テスト
【0054】
実験動物
【0055】
実験には8週齢のニュージーランドホワイトラビットを使用し、体重は約2000~2500gである。すべての実験動物は、独立した空調された動物室に保管され、室温は22℃に維持され、相対湿度は45%に維持され、水と飼料は十分に供給される。実験の前に、実験動物は環境に適応するために少なくとも4週間の期間が与えられる。実験動物の繁殖環境、取り扱い、およびすべての実験手順は、米国国立衛生研究所(NIH)の実験動物の管理および使用に関するガイドに準拠している。
【0056】
ニュージーランドホワイトラビットの目の周りを剃り、ヨウ素と70%アルコールで消毒した。単繊維構造または混合繊維構造のインプラントを繊維束に組み込んだNo.26または27ゲージの針を刺し、強膜を通って前房に入れる。繊維束内の単繊維構造または混合繊維構造のインプラントの位置を維持し、26または27ゲージの針を抜いてから、繊維束インプラントを残して操作を完了する。図6を参照されたい。図6は、リンパ管新生を媒介する目的で特定の再生医療材料で操作された、本発明の再生医療材料のための生物活性ガラス繊維および新しいリンパ管の組織病理学的断面画像である。図6に示されるように、赤い矢印は瘻管に沿った新生リンパ管の位置を示している。生物学的ガラス繊維は、マクロファージをリンパ管内皮前駆細胞として復活させ、治療的リンパ管新生を通じて、線維症を伴わずにリンパ管新生および房水の排出を促進する。リンパ管ステントが眼に留置された後、リンパ管ステントは排出を開始し、3か月後に完全に吸収され、リンパ管新生免疫系がリンパ管を成長させる。7ヶ月後、リンパ管の構造が太い管から細い管まで変化があり、ドレナージ圧が自然にバランスする。リンパドレナージは7ヶ月後もスムーズであった。
【0057】
ニュージーランドホワイトラビットの背中を剃り、ヨウ素と70%アルコールで消毒した。ニュージーランドホワイトラビットの背中に小さな開口部を外科用ナイフで切り、生物学的適合性のあるグラスファイバーをニュージーランドホワイトラビットの皮下位置に移植した。
【0058】
以下の表2は、ニュージーランドホワイトラビットの皮下位置に移植されたハイブリッド構造のファイバー構成を示す。12週間後、直径とリンパ管が異なるハイブリッド構造の繊維構成の形成が観察された。
【0059】
【表2】
【0060】
次の表3は、ニュージーランドホワイトラビットの皮下に移植された混合多孔微小管線維構造の変化を示す。この混合多孔微小管線維構造と異なる穴間隔でのリンパ管新生の状況が12週間後に観察された。孔間隔(チャネル距離)は、2つの混合多孔微小管繊維構造の外側の間隔(距離)を指す。
【0061】
【表3】
【0062】
表2から3の結果から、12週間のウサギ皮下移植研究の組織病理学的報告が得られた。図7を参照すると、赤い円は混合多孔微小管繊維構造の断面を表す。適切な条件下での混合多孔微小管繊維構造は、生物活性ガラス繊維の繊維束は、マクロファージ由来のリンパ管内皮細胞前駆細胞を活性化する方法で治療的リンパ管形成治癒を促進し、皮下移植部位は、炎症、嚢胞、出血、壊死または変色の明らかな兆候を示さなかった。
【0063】
図8を参照されたい。図8は、本発明の生物学的に適合性のあるガラス繊維上で成長するヒト歯髄幹細胞のSEM画像である。
【0064】
図8に示されるように、生物学的に適合性のあるガラス繊維は方向性を有する。ヒト歯髄幹細胞(hDPSC)3が単一の裸の繊維構成またはハイブリッド構造繊維構成に入れられると、ヒト歯髄幹細胞3は生物活性ガラス繊維201に沿って成長する。ここで、図8の各写真の左下隅は、ヒトの歯髄幹細胞を成長させた時間である。生物活性ガラス繊維201がヒト歯髄幹細胞3と共培養する場合、16時間後、ヒト歯髄幹細胞3は、生物活性ガラス繊維201に徐々に向かう。さらに、ヒト歯髄幹細胞3は、18時間後、生物活性ガラス繊維201に徐々に向かう。22時間後、ヒト歯髄幹細胞3は、生物活性ガラス繊維201に対して成長する。24時間後、ヒト歯髄幹細胞3は、生物活性ガラス繊維201に対して成長する。状況は48時間後にさらに明白になり、多数のヒト歯髄幹細胞3が生物活性ガラス繊維201の近くで成長した。
【0065】
すでに開発されているか、将来開発される可能性のある、再生医療材料に適した他の生物学的ガラス化学組成物は前記再生医療材料を生物に導入する目的で上記の任意のタイプのファイバー構成に適用できる可能性がある。上記の各図の説明は、原理的な説明とその実際の適用を説明している。上に示した実施形態および添付の図面は例示的なものであり、網羅的であること、または本開示の範囲を限定することを意図するものではない。上記の示唆を勘案し、修正および変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 単一の裸繊維構造
2 ハイブリッドファイバー(混合繊維)構造
20 ハイブリッドソリッドファイバー(混合ソリッド繊維)構造
201 生物活性ガラスファイバー
202 生物不活性ガラスファイバー
203 X線不透過生物不活性ガラス繊維
204 X線不透過生物活性ガラス繊維
20a 混合ソリッドファイバー構造
21 ハイブリッド単孔微小管繊維構造
22 ハイブリッド多孔微小管繊維構造
221 微小管繊維
222 ハイブリッドコア
23 単孔微小管繊維構造
3 ヒト歯髄幹細胞
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8