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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】露光装置、露光方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240614BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G03F7/20 502
G03F7/20 521
H01L21/68 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022128386
(22)【出願日】2022-08-10
(65)【公開番号】P2024025164
(43)【公開日】2024-02-26
【審査請求日】2024-04-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 政樹
(72)【発明者】
【氏名】金石 守
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-142362(JP,A)
【文献】特開2012-142463(JP,A)
【文献】特開2011-18915(JP,A)
【文献】特開2022-24792(JP,A)
【文献】特開2001-126977(JP,A)
【文献】特開2004-260116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0169946(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112817180(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
の複数のショット領域を走査露光する露光装置であって、
前記基板を保持して駆動するステージと、
前記ショット領域を露光しない非露光区間での前記ステージの加速度を制御する第1加速度プロファイルと、前記ショット領域を露光する露光区間での前記ステージの加速度を制御する第2加速度プロファイルとを用いて前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
記第2加速度プロファイルは、正弦波の一部を含み
前記制御部は、前記複数のショット領域のそれぞれについて、前記正弦波の角速度と、前記第1加速度プロファイルが接続される前記正弦波の位相とのうち少なくとも一方が、前記ショット領域の大きさに関する情報に基づいて決定された前記第2加速度プロファイルを用いて前記ステージの駆動を制御する、ことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数のショット領域のそれぞれについて、前記露光区間における前記ステージの駆動距離が前記ショット領域の大きさに応じた距離となるように決定された、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを用いて前記ステージの駆動を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記露光区間での前記ステージの駆動時間が短縮されるように決定された、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを用いて前記ステージの駆動を制御する、ことを特徴とする請求項に記載の露光装置。
【請求項4】
前記第1加速度プロファイルと前記第2加速度プロファイルとを接続する前記正弦波の位相は、ゼロ又はπ以外の位相である、ことを特徴とする請求項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記複数のショット領域は、第1ショット領域と、前記第1ショット領域より小さい第2ショット領域と、を含み、
前記第1ショット領域の前記第2加速度プロファイルは半周期の前記正弦波を含み、前記第2ショット領域の前記第2加速度プロファイルは半周期未満の前記正弦波を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第1ショット領域は前記基板の内側に位置し、前記第2ショット領域は前記基板の周辺に位置し、
前記第2ショット領域の一部は前記基板の外側にある、ことを特徴とする請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
記正弦波の角速度は、前記ステージの固有振動数よりも低い周波数である、ことを特徴とする請求項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記ショット領域の大きさに関する情報は、前記ショット領域の走査方向における長さを示す情報を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ステージの速度に応じて露光量を変化させるよう制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項10】
前記複数のショット領域それぞれの所定位置は、同一の加速度で露光される、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項11】
の複数のショット領域を走査露光する露光装置であって、
前記基板を保持して駆動するステージと、
前記ショット領域を露光しない非露光区間での前記ステージの加速度を制御する第1加速度プロファイルと、前記ショット領域を露光する露光区間での前記ステージの加速度を制御する第2加速度プロファイルとを用いて前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記第2加速度プロファイルは、正弦波の一部を含み
前記複数のショット領域は、走査方向における長さが基準長さ以上の長さの第1ショット領域と、前記走査方向における長さが前記基準長さより短い第2ショット領域と、を含み、
記第2加速度プロファイルは、前記第2ショット領域を露光する際の前記ステージの前記走査方向における駆動距離が、前記第1ショット領域を露光する際の前記ステージの前記走査方向における駆動距離よりも短くなるように決定されている、ことを特徴とする露光装置。
【請求項12】
前記基準長さは、前記ショット領域の全領域が前記基板内に位置するショット領域の前記走査方向における長さである、ことを特徴とする請求項11に記載の露光装置。
【請求項13】
基板上の複数のショット領域を走査露光する露光装置であって、
前記基板を保持して駆動するステージと、
駆動プロファイルを用いて前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記駆動プロファイルは、前記ショット領域を露光しない非露光区間での前記ステージの加速度を制御する第1加速度プロファイルと、前記ショット領域を露光する露光区間での前記ステージの加速度を制御する第2加速度プロファイルと、を含み、
前記複数のショット領域のうち第1行に配列されたショット領域を露光した後に前記第1行とは異なる第2行に配列されたショット領域を露光するために前記ステージを駆動する改行区間に応じた前記第1加速度プロファイルは、第1正弦波の一部を含み、
前記制御部は、前記ステージの走査方向にける駆動距離が短くなるように、前記第1正弦波の角速度と、前記第1加速度プロファイルが接続される前記第2加速度プロファイルに含まれる第2正弦波の位相とのうち少なくとも一方が決定された前記駆動プロファイルを用いて前記ステージの駆動を制御する、ことを特徴とする露光装置。
【請求項14】
の複数のショット領域を走査露光する露光方法であって、
前記複数のショット領域を露光する際の前記基板を保持するステージの駆動の制御に用いる駆動プロファイルを決定する第1工程と、
前記駆動プロファイルに基づいて前記ステージを駆動しながら前記複数のショット領域を露光する第2工程と、を有し、
前記駆動プロファイルは、前記ショット領域を露光ない非露光区間での前記ステージの加速度を制御する第1加速度プロファイルと、前記ショット領域を露光する露光区間での前記ステージの加速度を制御する第2加速度プロファイルと、を含み
前記第2加速度プロファイルは、正弦波の一部を含み
前記第1工程では、前記複数のショット領域のそれぞれについて、前記ショット領域の大きさに関する情報に基づいて、前記正弦波の角速度と、前記第1加速度プロファイルが接続される前記正弦波の位相とのうち少なくとも一方を決定する、ことを特徴とする露光方法。
【請求項15】
請求項14に記載の露光方法を用いて基板を露光する工程と、
露光した前記基板を現像する工程と、
現像された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、露光方法及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子などのデバイスを製造するリソグラフィ工程では、原版(レチクル又はマスク)のパターンを、投影光学系を介して、基板に転写する露光装置が用いられている。このような露光装置として、原版と基板とを相対的に走査しながら基板を露光(走査露光)することで原版のパターンを基板に転写する、所謂、ステップ・アンド・スキャン方式を採用した走査型露光装置が知られている。
【0003】
走査型露光装置では、基板を等速で駆動しながら基板を走査露光することが一般的であるが、基板を加減速(加速又は減速)させて駆動しながら基板を走査露光することも提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、正弦波で構成される駆動(加速度)プロファイルに従って基板を保持するステージを加減速しながら基板を走査露光することで、ステージ(基板)の駆動時間を短縮し、生産性(スループット)を向上させるための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5406861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、基板のショットレイアウト(基板上のショット領域の配列)にかかわらず、ショット領域ごとに、駆動プロファイルを変更することはしていない。従来技術では、基板上の複数のショット領域に共通する駆動プロファイルとして、ショットサイズが最も大きいショット領域を走査露光するのに最適な駆動プロファイルが設定されている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、生産性を向上させるのに有利な露光装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての露光装置は、基の複数のショット領域を走査露光する露光装置であって、前記基板を保持して駆動するステージと、前記ショット領域を露光しない非露光区間での前記ステージの加速度を制御する第1加速度プロファイルと、前記ショット領域を露光する露光区間での前記ステージの加速度を制御する第2加速度プロファイルとを用いて前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、前記第2加速度プロファイルは、正弦波の一部を含み、前記制御部は、前記複数のショット領域のそれぞれについて、前記正弦波の角速度と、前記第1加速度プロファイルが接続される前記正弦波の位相とのうち少なくとも一方が、前記ショット領域の大きさに関する情報に基づいて決定された前記第2加速度プロファイルを用いて前記ステージの駆動を制御する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、生産性を向上させるのに有利な露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略図である。
図2】従来の駆動プロファイルで走査露光した場合における露光スリットの移動軌跡を示す図である。
図3図2に示す移動軌跡に対する基板ステージの駆動プロファイルの一例を示す図である。
図4】基板のショットレイアウトの一例を示す図である。
図5】露光スリットの移動軌跡を示す図である。
図6】基板ステージの駆動プロファイルの一例を示す図である。
図7】基板ステージの駆動プロファイルの一例を示す図である。
図8】露光スリットの移動軌跡を示す図である。
図9】基板ステージの駆動プロファイルの一例を示す図である。
図10図1に示す露光装置における露光処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一側面としての露光装置100の構成を示す概略図である。露光装置100は、半導体素子などのデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に用いられ、原版(レチクル又はマスク)を用いて基板にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置100は、原版と基板とを相対的に走査しながら基板を露光(走査露光)することで、原版のパターンを基板に転写するステップ・アンド・スキャン方式を採用した走査型露光装置(スキャナ)である。
【0013】
本明細書及び添付図面では、後述する投影光学系14の光軸に沿った方向をZ軸とし、Z軸に垂直な平面に平行な方向であり、互いに垂直な2つの方向をX軸、Y軸とするXYZ座標系で方向を示す。また、XYZ座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向及びZ方向とする。以下では、Z方向を高さ方向と称することがある。なお、本実施形態では、原版と基板とを相対的に走査する方向(走査方向)をY方向(+Y方向又は-Y方向)とする。
【0014】
露光装置100は、図1に示すように、照明光学系11と、原版12を保持する原版ステージ13と、投影光学系14と、基板15を保持する基板ステージ16と、を有する。また、露光装置100は、面位置計測部17と、第1計測部18と、第2計測部19と、制御部20と、原版検出部21と、基板検出部22と、を有する。
【0015】
制御部20は、例えば、CPUなどのプロセサやメモリなどを含むコンピュータ(情報処理装置)で構成され、記憶部に記憶されたプログラムに従って露光装置100の各部を統括的に制御する。制御部20は、本実施形態では、原版12と基板15とを相対的に走査しながら原版12のパターンを基板15に転写する処理、即ち、基板15の走査露光を制御する。
【0016】
照明光学系11は、マスキングブレードなどの遮光部材を含み、エキシマレーザなどの光源(不図示)から射出された光を、例えば、X方向に長手方向を有する帯状又は円弧状の光(スリット光)に整形し、かかる光で原版12の一部を照明する。
【0017】
原版12及び基板15は、それぞれ、原版ステージ13及び基板ステージ16に保持され、投影光学系14を介して、光学的に共役な位置(投影光学系14の物体面及び像面)に配置される。
【0018】
投影光学系14は、所定の投影倍率(例えば、1/2倍や1/4倍)を有し、原版12に形成されたパターンを基板15に投影する。原版12のパターンが投影された基板15の領域(即ち、スリット光が照射される領域)を、以下では、露光スリットと称する。
【0019】
原版ステージ13及び基板ステージ16は、投影光学系14の光軸(スリット光の光軸)と垂直な方向(例えば、Y方向)に駆動可能に構成されている。原版ステージ13と基板ステージ16とは、互いに同期しながら、投影光学系14の投影倍率に応じた速度比で相対的に駆動(走査)される。これにより、基板上で露光スリットを走査させて、原版12のパターンを基板15(のショット領域)に転写することができる。このような走査露光を、基板上の複数のショット領域のそれぞれに順次繰り返すことで、1つの基板15に対する露光処理が完了する。
【0020】
第1計測部18は、例えば、レーザ干渉計を含み、原版ステージ13の位置を計測する。第1計測部18に含まれるレーザ干渉計は、例えば、レーザ光を、原版ステージ13に設けられた反射板13aに照射し、反射板13aで反射されたレーザ光を検出することで、原版ステージ13における基準位置からの変位を計測する。第1計測部18は、原版ステージ13における基準位置からの変位に基づいて、原版ステージ13の現在の位置を取得することができる。
【0021】
第2計測部19は、例えば、レーザ干渉計を含み、基板ステージ16の位置を計測する。第2計測部19に含まれるレーザ干渉計は、例えば、レーザ光を、基板ステージ16に設けられた反射板16aに照射し、反射板16aで反射されたレーザ光を検出することで、基板ステージ16における基準位置からの変位を計測する。第2計測部19は、基板ステージ16における基準位置からの変位に基づいて、基板ステージ16の現在の位置を取得することができる。
【0022】
第1計測部18で取得された原版ステージ13の現在の位置、及び、第2計測部19で取得された基板ステージ16の現在の位置に基づいて、制御部20において、原版ステージ13及び基板ステージ16のXY方向に関する駆動が制御される。なお、本実施形態では、第1計測部18及び第2計測部19のそれぞれは、原版ステージ13の位置及び基板ステージ16の位置を計測するために、レーザ干渉計を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、エンコーダを用いてもよい。
【0023】
面位置計測部17は、例えば、基板15の表面に光を投光する投光部と、基板15の表面で反射された光を受光する受光部と、を含み、基板15の表面の高さ(Z方向の位置)を計測する。
【0024】
原版検出部21は、原版12に設けられたアライメントマークと、原版ステージ13に設けられたアライメントマークとを検出する。制御部20では、原版検出部21で検出されたアライメントマークの相対位置を算出することで、原版ステージ13に対する原版12の位置ずれ(位置ずれ量)を求める。原版12及び原版ステージ13のそれぞれに対して複数のアライメントマークをX方向に設けることで、原版ステージ13に対する原版12のXYθ方向の位置ずれを求めることが可能となる。
【0025】
基板検出部22は、基板上の複数のショット領域のうち、サンプルショット領域に設けられた複数のアライメントマークを検出する。制御部20では、基板検出部22の検出結果を計算処理することで、基板上の複数のショット領域の配列情報(ショットレイアウト)を求める。
【0026】
原版検出部21及び基板検出部22は、本実施形態では、投影光学系14を介さずに各マークを検出するオフアクシス系として構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、原版検出部21及び基板検出部22は、投影光学系14を介して各マークを検出するTTL(Through The Lens)系として構成されていてもよい。
【0027】
ここで、図2及び図3を参照して、基板15を加減速(加速又は減速)させて駆動しながら基板15を走査露光することを実現するための基板ステージ16の駆動プロファイルについて説明する。駆動プロファイルは、制御部20において、基板ステージ16の駆動の制御に用いられる。図2は、従来の駆動プロファイルに基づいて基板ステージ16を駆動した場合に基板15上を相対的に移動する露光スリットの移動軌跡を示す図である。図3は、図2に示す露光スリットの移動軌跡に対する基板ステージ16の駆動プロファイルの一例を示す図である。図3において、グラフGP1(上段のグラフ)は、Y方向における基板ステージ16の加速度の時系列変化を示す、基板ステージ16の加速度プロファイルである。また、図3において、グラフGP2(下段のグラフ)は、Y方向における基板ステージ16の速度の時系列変化を示す、基板ステージ16の速度プロファイルである。
【0028】
露光対象となるショット領域Nを走査露光する際には、非露光区間201において、基板ステージ16の速度を所望の速度まで加速させる。非露光区間201は、等加速区間と、1次以上の関数を用いて所望の加速度まで加速度を変化させる区間と、を含み、それぞれに対応する2つの駆動プロファイルの組み合わせで構成されている。非露光区間201では、露光区間202の開始加速度よりも高い加速度で基板ステージ16を加速させることで、基板ステージ16が所望の速度まで加速する時間を短くするという効果がある。
【0029】
露光区間202では、正弦波の一部、具体的には、正弦波の半周期(位相0からπ)の加速度プロファイルに基づいて基板ステージ16を駆動しながら、ショット領域Nを走査露光する。その後、露光区間202は、非露光区間203に接続される。従って、露光区間202での駆動プロファイルと、非露光区間203での駆動プロファイルとが接続される位相は、0又はπとなる。露光区間202での駆動プロファイル(正弦波の一部で構成される駆動プロファイル)の角速度ωsinは、位相π/露光区間202での基板ステージ16の駆動時間Tsinで算出される。駆動時間Tsinは、(ショット領域Nのショット画角Yd+露光スリットのスリットサイズYsilt)/露光区間202での基板ステージ16の平均速度Vaveで算出される。なお、露光区間202に基板ステージ16の整定時間(基板ステージ16の偏差が収束するまでの待機時間)を設けて、露光区間202の一部の区間でショット領域Nを走査露光してもよい。また、露光区間202の開始加速度を変更することで、走査露光中の基板ステージ16の速度変化率を任意に設定することができる。
【0030】
光源(不図示)から基板15に照射する光(露光光)の照射(積算)露光量は、常に一定にする必要がある。従って、基板ステージ16の速度変化に応じて露光量を変化させながらショット領域Nを走査露光する。例えば、基板ステージ16の速度が速い場合には、露光量を多く、基板ステージ16の速度が遅い場合には、露光量を少なくするように、露光量を制御する。
【0031】
非露光区間203では、非露光区間201と同様であるが符号を反転させた駆動プロファイルに基づいて基板ステージ16を減速させながら、次の露光対象であるショット領域N+1を走査露光するために、基板ステージ16をX方向にステップ駆動する。非露光区間204、露光区間205及び非露光区間206では、それぞれ、非露光区間203、露光区間202及び非露光区間201と同様であるが符号を反転させた駆動プロファイルに基づいて基板ステージ16を駆動する。これにより、図2に示すように、ショット領域Nと、ショット領域N+1とを連続的に走査露光することができる。
【0032】
従来技術では、基板15のショットレイアウトにかかわらず、基板上の複数のショット領域に共通する駆動プロファイルとして、ショットサイズ(露光面積)が最も大きいショット領域を走査露光するのに最適な駆動プロファイルが設定されている。ここで、ショットサイズが最も大きいショット領域とは、通常、基板15の周辺よりも内側に位置するフルフィールドのショット領域である。但し、基板上の複数のショット領域は、フルフィールドのショット領域だけではなく、基板15の周辺に位置する周辺ショット領域も含む。周辺ショット領域は、その一部が欠けたパーシャルフィールドのショット領域となるため、様々なショットサイズとなる。従って、基板上のショット領域ごとに最適な駆動プロファイルを決定(設定)することで、生産性(スループット)を更に向上させることができると考えられる。
【0033】
そこで、本実施形態では、以下の第1実施形態から第3実施形態で説明するように、基板上のショット領域ごとに最適な駆動プロファイルを決定することで、基板15を加減速しながら基板15を走査露光する場合における生産性の更なる向上を図る。
【0034】
<第1実施形態>
図4図5(a)、図5(b)及び図6を参照して、第1実施形態における、基板上のショット領域ごとに最適な駆動プロファイルを決定する手法について説明する。駆動プロファイルは、基板ステージ16の駆動を規定するプロファイルであって、例えば、基板ステージ16の速度、加速度及び位置などを制御する各種のプロファイルを含む。ここでは、駆動プロファイルとして、基板ステージ16の加減速を制御する加速度プロファイルを説明する。駆動プロファイルは、ショット領域を露光する露光区間を含まない非露光区間での第1駆動プロファイルと、露光区間での第2駆動プロファイルと、を接続することで構成される。第1駆動プロファイルは、非露光区間での基板ステージ16の加減速を制御する加速度プロファイル(第1加速度プロファイル)である。第2駆動プロファイルは、露光区間での基板ステージ16の加減速を制御する加速度プロファイル(第2加速度プロファイル)である。
【0035】
図4は、基板15のショットレイアウトの一例を示す図である。図4に示すように、基板15には、例えば、98個のショット領域が配列されている。ショット領域内に記載されている数字は、ショット番号を示し、各ショット領域は、ショット番号順(点線)に走査露光される。また、ショット領域内に記載されている矢印は、走査方向を示している。
【0036】
本実施形態では、ショット番号3のショット領域S3とショット番号4のショット領域S4とに着目する。ショット領域S3及びS4は、一部の領域が基板外となるパーシャルフィールドのショット領域(周辺ショット領域)であるため、フルフィールドのショット領域のように全域を走査露光する必要はない。従って、ショット領域S3及びS4では、図5(a)及び図5(b)に示すように、露光区間における基板ステージ16の駆動距離を、駆動距離Δdだけ短縮する余地がある。図5(a)は、ショット領域S3及びS4に着目し、従来の駆動プロファイル(全てのショット領域に共通する駆動プロファイル)に基づいて基板ステージ16を駆動した場合に基板15上を相対的に移動する露光スリットの移動軌跡を示す図である。図5(b)は、本実施形態において、ショット領域S3及びS4のサイズ(に関する情報)から決定される駆動プロファイルに基づいて基板ステージ16を駆動した場合に基板15上を相対的に移動する露光スリットの移動軌跡を示す図である。図6は、図5(a)及び図5(b)に示す移動軌跡に対する基板ステージ16の駆動プロファイルの一例を示す図である。図6において、グラフGP3(上段のグラフ)は、図5(a)に示す移動軌跡に対する駆動プロファイル(加速度プロファイル)を示し、グラフGP4(下段のグラフ)は、図5(b)に示す移動軌跡に対する駆動プロファイル(加速度プロファイル)を示している。
【0037】
従来の駆動プロファイル(グラフGP3)に基づいて基板ステージ16を駆動しながらショット領域S3及びS4を走査露光する場合を考える。この場合、露光区間202及び205での駆動プロファイルは、ショットサイズが最も大きいショット領域(フルフィールドのショット領域)を走査露光する際の駆動プロファイルと同じとなる。但し、ショット領域S3及びS4を走査露光する際には、駆動距離Δdで示す区間を走査露光するための基板ステージ16の駆動は不要であるため、基板ステージ16の駆動距離Δdを短縮することができる。
【0038】
そこで、本実施形態では、露光スリットが基板外となるタイミングで、正弦波の半周期(位相0からπ)で構成される露光区間202での第2駆動プロファイルと、非露光区間203での第1駆動プロファイルとを接続することで、駆動距離Δdを短縮する。換言すれば、露光区間での基板ステージ16の駆動時間が短縮されるように、第1駆動プロファイルと第2駆動プロファイルとを接続する位相を、ショット領域のサイズ(に関する情報)に応じて変更することで、駆動プロファイルを決定する。ここで、ショット領域のサイズに関する情報は、少なくとも、ショット領域の走査方向の長さを示す情報を含む。また、本実施形態では、露光区間での第2駆動プロファイルを正弦波の一部で構成する場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。例えば、露光区間での第2駆動プロファイルは、2次以上の関数などを含む曲線で構成されていてもよい。
【0039】
露光区間202での第2駆動プロファイルと、非露光区間203での第1駆動プロファイルとを接続する位相を変更すると、グラフGP4に示す駆動プロファイルが得られ、駆動距離Δdを短くすることができる。グラフGP4を参照するに、ショット領域S3の走査露光において、露光区間502での第2駆動プロファイルは、正弦波の半周期以下の位相(<π)で、非露光区間503での第1駆動プロファイルと接続されている。
【0040】
また、ショット領域S4の走査露光では、グラフGP3に示すように、非露光区間204での第1駆動プロファイルと、露光区間205での第2駆動プロファイルとを、ゼロの位相で接続するのではなく、位相>0で接続することで、駆動距離Δdを短縮する。ショット領域S4の走査露光において、非露光区間504での第1駆動プロファイルと露光区間505での第2駆動プロファイルとを位相>0で接続することで、グラフGP4に示す駆動プロファイルが得られる。
【0041】
本実施形態では、露光対象であるショット領域Nに対する駆動プロファイル(第1駆動プロファイルと第2駆動プロファイルとを接続する位相)は、制御部20において、ショット領域N-2の走査露光が終了するまでに決定される。また、基板15の走査露光を開始する前に、各ショット領域に対する駆動プロファイル(第1駆動プロファイルと第2駆動プロファイルとを接続する位相)を予め決定しておいてもよい。
【0042】
このように、本実施形態では、基板上のショット領域ごとに最適な駆動プロファイルを決定することで、走査露光に要する基板ステージ16の駆動距離(駆動時間)が短縮されるため、生産性を更に向上させることが可能となる。なお、基板上のショット領域ごとに、非露光区間での第1駆動プロファイルと露光区間での第2駆動プロファイルとを接続する位相を変更する手法は、各ショット領域内の同一箇所を同一の加速度で走査露光することができるという利点がある。例えば、各ショット領域の中心を走査露光する際の加速度をゼロとすることで、各種補正を施す際に有利となる。
【0043】
また、本実施形態では、パーシャルフィールドのショット領域を露光する際の基板ステージ16の走査方向の駆動距離を、フルフィールドのショット領域を露光する際の基板ステージ16の走査方向の駆動距離よりも短くしているとも言える。従って、このような基板ステージ16の駆動を実現する駆動プロファイルを外部装置などから取得し、かかる駆動プロファイルに基づいて基板ステージ16を駆動しながら基板15を露光する形態も本発明の一側面を構成する。ここで、パーシャルフィールドのショット領域は、ショット領域の走査方向の長さが予め定められた基準長さよりも短いショット領域であると考えることができる。また、基準長さとしては、例えば、フルフィールドのショット領域の走査方向の長さを設定すればよい。
【0044】
また、非露光区間での第1駆動プロファイルと露光区間での第2駆動プロファイルとをゼロ又はπ以外の位相で接続することで、加速度プロファイルの微分値が不連続となり、基板ステージ16の制御精度(偏差)が低下する可能性がある。このような場合には、基板ステージ16の整定時間を考慮して、非露光区間での第1駆動プロファイルと露光区間での第2駆動プロファイルとを接続する位相を決定すればよい。なお、加速度プロファイルの微分値の不連続点が小さくなる(滑らかになる)ように、非露光区間での第1駆動プロファイルを変更してもよい。
【0045】
<第2実施形態>
図5(a)、図5(b)及び図7を参照して、第2実施形態における、基板上のショット領域ごとに最適な駆動プロファイルを決定する手法について説明する。図7は、図5(a)及び図5(b)に示す移動軌跡に対する基板ステージ16の駆動プロファイルの一例を示す図である。図7において、グラフGP5(上段のグラフ)は、図5(a)に示す移動軌跡に対する駆動プロファイル(加速度プロファイル)を示し、グラフGP6(下段のグラフ)は、図5(b)に示す移動軌跡に対する駆動プロファイル(加速度プロファイル)を示している。
【0046】
本実施形態では、グラフGP5に示す駆動プロファイルに対して、露光区間202及び205での駆動プロファイル(正弦波の一部で構成される駆動プロファイル)の角速度ωsinを変更することで、グラフGP6に示す駆動プロファイルが得られる。グラフGPに示す駆動プロファイルでは、ショット領域S3及びS4のサイズ(に関する情報)に応じて、露光区間502及び505での駆動プロファイルの角速度ωa(>ωsin)が変更されている。露光区間502及び505での駆動プロファイル(正弦波の一部で構成される駆動プロファイル)の角速度ωaは、位相π/露光区間502及び505での基板ステージ16の駆動時間Taで算出される。駆動時間Taは、(ショット領域S3及びS4のショット画角Yd+露光スリットのスリットサイズYsilt-駆動距離Δd)/露光区間502及び505での基板ステージ16の平均速度Vaveで算出される。また、角速度ωaを決定する際には、基板ステージ16の固有振動数よりも低い周波数となるようにする。
【0047】
本実施形態では、露光対象であるショット領域Nに対する第2駆動プロファイル(を構成する正弦波の角速度)は、制御部20において、ショット領域N-2の走査露光が終了するまでに決定される。また、基板15の走査露光を開始する前に、各ショット領域に対する第2駆動プロファイル(を構成する正弦波の角速度)を予め決定しておいてもよい。
【0048】
露光対象となるショット領域のサイズに応じて第2駆動プロファイルを構成する正弦波の角速度を変更する手法は、第1駆動プロファイルと第2駆動プロファイルとをゼロ又はπの位相で接続することができるという利点がある。従って、加速度プロファイルの微分値が不連続にならず、安定したステージ制御を実現することができる。
【0049】
このように、本実施形態では、基板上のショット領域ごとに最適な駆動プロファイルを決定することで、走査露光に要する基板ステージ16の駆動距離(駆動時間)が短縮されるため、生産性を更に向上させることが可能となる。
【0050】
<第3実施形態>
図4図8(a)、図8(b)及び図9を参照して、第3実施形態における、基板上のショット領域ごとに最適な駆動プロファイルを決定する手法について説明する。
【0051】
図4を参照するに、本実施形態では、ショット番号84のショット領域S84とショット番号85のショット領域S85に着目する。ショット領域S84及びS85は、それぞれを走査露光する際に、非露光区間として改行区間を含む位置関係である。ここで、改行区間とは、基板上の複数のショット領域のうち、第1行に配列されたショット領域(S84)を露光した後に第1行とは異なる第2行に配列されたショット領域(S85)を露光するために基板ステージ16を駆動する区間である。また、ショット領域S85は、一部の領域が基板外となるパーシャルフィールドのショット領域(周辺ショット領域)であるため、基板ステージ16の駆動距離(時間)を短縮することができる余地がある。
【0052】
図8(a)は、従来の駆動プロファイルに基づいて基板ステージ16を駆動しながらショット領域S84及びS85を走査露光する場合における露光スリットの移動軌跡を示す図である。図8(b)は、本実施形態において、ショット領域S84及びS85のサイズから決定される駆動プロファイルに基づいて基板ステージ16を駆動しながらショット領域S84及びS85を走査露光する場合における露光スリットの移動軌跡を示す図である。図9は、図8(a)及び図8(b)に示す移動軌跡に対する基板ステージ16の駆動プロファイルの一例を示す図である。図9において、グラフGP7(上段のグラフ)は、図8(a)に示す移動軌跡に対する駆動プロファイル(加速度プロファイル)を示し、グラフGP8(下段のグラフ)は、図8(b)に示す移動軌跡に対する駆動プロファイル(加速度プロファイル)を示している。
【0053】
図9(グラフGP7及びGP8)を参照するに、非露光区間801及び露光区間802では、従来の駆動プロファイルに基づいて基板ステージ16を駆動する。非露光区間803は、1周期(位相0から2π)の正弦波で構成された改行区間と、1次以上の関数を用いて所望の加速度まで加速度を変化させる区間と、等加速間と、を含み、それぞれに対応する3つの駆動プロファイルの組み合わせで構成されている。
【0054】
次の露光対象であるショット領域S85(の基板外の領域)は、フルフィールドのショット領域のように全域を走査露光する必要がないため、基板ステージ16の駆動距離を、駆動距離Δdだけ短縮することができる。これに伴い、改行区間における基板ステージ16の駆動距離も駆動距離Δdだけ短縮することができる。
【0055】
改行区間を含む非露光区間813では、非露光区間803での駆動プロファイルの角速度ωbを角速度ωc(ωb<ωc)に変更することで、改行区間における基板ステージ16の駆動距離を短縮する。また、角速度ωcを決定する際には、基板ステージ16の固有振動数よりも低い周波数となるようにする。
【0056】
露光対象であるショット領域Nに対する改行区間での第1駆動プロファイル(を構成する正弦波の角速度)は、制御部20において、ショット領域N-2の走査露光が終了するまでに決定される。また、基板15の走査露光を開始する前に、各ショット領域に対する改行区間での第1駆動プロファイル(を構成する正弦波の角速度)を予め決定しておいてもよい。
【0057】
本実施形態では、改行区間での第1駆動プロファイルを構成する正弦波の角速度を変更しているが、角速度を変更せず、第1実施形態のように第1駆動プロファイルと第2駆動プロファイルとを接続する位相を変更してもよい。また、改行区間での第1駆動プロファイルを、正弦波ではなく、1次以上の関数及び等加速区間で構成し、改行区間の駆動距離に応じて、1次以上の関数及び等加速区間でのプロファイルを決定してもよい。
【0058】
ショット領域S85の走査露光では、第1実施形態と同様に、非露光区間804での第1駆動プロファイルと、露光区間805での第2駆動プロファイルとを、ゼロの位相で接続するのではなく、位相>0で接続することで、駆動距離Δdを短縮する。非露光区間804での第1駆動プロファイルと露光区間805での第2駆動プロファイルとを位相>0で接続することで、グラフGP8に示す駆動プロファイルが得られる。グラフGP8を参照するに、ショット領域S85の走査露光において、露光区間815での第2駆動プロファイルは、位相>0で、非露光区間814での第1駆動プロファイルと接続されている。
【0059】
本実施形態では、露光区間815での駆動プロファイル(正弦波の一部で構成される第2駆動プロファイル)に対して接続する位相を変更する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2実施形態と同様に、露光区間815での駆動プロファイルを構成する正弦波の角速度を変更してもよい。
【0060】
このように、本実施形態では、基板上のショット領域ごとに、非露光区間での第1駆動プロファイルと、露光区間での第2駆動プロファイルとを決定する。これにより、走査露光に要する基板ステージ16の駆動距離(駆動時間)が短縮されるため、生産性を更に向上させることが可能となる。
【0061】
<第4実施形態>
図10を参照して、露光装置100における動作、即ち、露光処理(露光方法)について説明する。かかる露光処理は、上述したように、制御部20が露光装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0062】
S102において、露光装置100に基板15を搬入する。具体的には、搬送ハンド(不図示)によって基板15を搬送し、かかる基板15を基板ステージ16に保持させる。
【0063】
S104において、グローバルアライメントのためのプリアライメント(事前計測及び補正)を行う。具体的には、グローバルアライメントで用いる高倍視野アライメント光学系(不図示)の計測範囲に基板上のアライメントマークが収まるように、低倍視野アライメント光学系(不図示)を用いて基板15の回転誤差などのずれ量を計測して補正する。
【0064】
S106において、グローバルチルトを行う。具体的には、面位置計測部17を用いて、基板上の複数の計測箇所の表面の高さ(表面位置)を計測する。そして、面位置計測部17によって計測された表面位置に基づいて、基板15の全体的な傾きを算出して補正する。
【0065】
S108において、走査露光でリアルタイムに基板15の表面位置を計測するための事前調整を行う。事前調整は、例えば、面位置計測部17の光源の光量調整や基板上のショット領域におけるパターン段差(パターンオフセット)の記憶などを含む。
【0066】
S110において、投影光学系14の調整を行う。具体的には、基板ステージ16に配置された光量センサ及び基準マーク(不図示)や原版ステージ13に配置された基準プレート(不図示)を用いて、投影光学系14の傾きや像面湾曲などを求める。例えば、基板ステージ16をX方向、Y方向及びZ方向に駆動したときの露光光の光量の変化を、基板ステージ16に配置された光量センサで計測する。そして、露光光の光量の変化に基づいて、基準プレートに対する基準マークのずれ量を求めて投影光学系14を調整する。
【0067】
S112において、グローバルアライメントを行う。具体的には、高倍視野アライメント光学系を用いて基板上のアライメントマークを検出し、基板15の全体のずれ量及び各ショット領域で共通なずれ量を求める。アライメントマークを高精度に検出するためには、アライメントマークのコントラストがベストコントラストとなる位置(ベストコントラスト位置)にアライメントマークが位置していなければならない。ベストコントラスト位置の計測には、面位置計測部17及びアライメント光学系を用いればよい。例えば、予め定められた高さ(Z方向の位置)に基板ステージ16を駆動し、アライメント光学系でコントラストを計測するとともに、面位置計測部17で基板15の表面位置を計測することを繰り返す。この際、基板ステージ16のZ方向の各位置に応じたコントラストの計測結果と基板15の表面位置の計測結果とを対応付けて保存する。そして、複数のコントラストの計測結果に基づいて、コントラストが最も高くなる基板ステージ16のZ方向の位置を求めてベストコントラスト位置とする。
【0068】
S114において、基板上の各ショット領域を走査露光する際の基板ステージ16の駆動プロファイルを決定する(第1工程)。駆動プロファイルは、上述したように、ショット領域を露光する露光区間を含まない非露光区間での第1駆動プロファイルと、露光区間での第2駆動プロファイルと、を接続することで構成される。具体的には、第1実施形態から第3実施形態で説明したように、基板15の複数のショット領域のそれぞれについて、ショット領域のサイズに関する情報に基づいて、駆動プロファイル(第1駆動プロファイル及び第2駆動プロファイル)を決定する。
【0069】
S116において、基板15の露光対象であるショット領域を走査露光する(第2工程)。具体的には、S114で決定した駆動プロファイルに基づいて基板ステージ16を駆動(加減速)しながら基板15のショット領域を走査露光する。この際、基板15のショット領域の表面位置を面位置計測部17でリアルタイムに計測しながら、基板ステージ16をフォーカス・レベリング駆動させることで、ベストフォーカス面での露光を実現することができる。
【0070】
S118において、基板15の全てのショット領域に対する走査露光が完了しているかどうかを判定する。基板15の全てのショット領域に対する走査露光が完了していない場合には、S114に移行して、S114及びS116を繰り返す。一方、基板15の全てのショット領域に対する走査露光が完了している場合には、S120に移行する。
【0071】
S120において、露光装置100から基板15を搬出する。具体的には、全てのショット領域が露光された基板15を、基板ステージ16から搬送ハンド(不図示)で受け取って露光装置100の外部に搬送する。
【0072】
本実施形態における露光処理によれば、基板15の各ショット領域の走査露光に要する基板ステージ16の駆動距離(駆動時間)を短縮して、生産性を向上させることができる。
【0073】
<第5実施形態>
本発明の実施形態における物品の製造方法は、例えば、フラットパネルディスプレイ、液晶表示素子、半導体素子、MEMSなどの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、上述した露光装置100(露光処理)を用いて感光剤が塗布された基板を露光する工程と、露光された感光剤を現像する工程とを含む。また、現像された感光剤のパターンをマスクとして基板に対してエッチング工程やイオン注入工程などを行い、基板上に回路パターンが形成される。これらの露光、現像、エッチングなどの工程を繰り返して、基板上に複数の層からなる回路パターンを形成する。後工程で、回路パターンが形成された基板に対してダイシング(加工)を行い、チップのマウンティング、ボンディング、検査工程を行う。また、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、レジスト剥離など)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0074】
本明細書の開示は、以下の露光装置、露光方法及び物品の製造方法を含む。
【0075】
(項目1)
原版と基板とを走査しながら前記基板の複数のショット領域を露光する露光装置であって、
前記基板を保持して駆動するステージと、
前記ステージの駆動を規定する駆動プロファイルに基づいて、前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記駆動プロファイルは、前記ショット領域を露光する露光区間を含まない非露光区間での前記ステージの加減速を制御する第1加速度プロファイルと、前記露光区間での前記ステージの加減速を制御する第2加速度プロファイルと、を接続することで構成され、
前記第2加速度プロファイルは、曲線で構成され、
前記制御部は、前記複数のショット領域のそれぞれについて、当該ショット領域のサイズに関する情報に基づいて、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを決定する、ことを特徴とする露光装置。
【0076】
(項目2)
前記第2加速度プロファイルは、正弦波の一部で構成されている、ことを特徴とする項目1に記載の露光装置。
【0077】
(項目3)
前記制御部は、前記複数のショット領域のそれぞれについて、前記露光区間での前記ステージの駆動距離が前記サイズに応じた距離となるように、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを決定する、ことを特徴とする項目1又は2に記載の露光装置。
【0078】
(項目4)
前記制御部は、前記露光区間での前記ステージの駆動時間が短縮されるように、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを決定する、ことを特徴とする項目1乃至3のうちいずれか1項目に記載の露光装置。
【0079】
(項目5)
前記制御部は、前記情報に応じて、前記第1加速度プロファイルと前記第2加速度プロファイルとを接続する前記正弦波の位相を変更することで、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを決定する、ことを特徴とする項目2乃至4のうちいずれか1項目に記載の露光装置。
【0080】
(項目6)
前記第1加速度プロファイルと前記第2加速度プロファイルとを接続する前記正弦波の位相は、ゼロ又はπ以外の位相である、ことを特徴とする項目5に記載の露光装置。
【0081】
(項目7)
前記制御部は、前記情報に応じて、前記正弦波の角速度を変更することで、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを決定する、ことを特徴とする項目2乃至4のうちいずれか1項目に記載の露光装置。
【0082】
(項目8)
前記制御部は、前記正弦波の角速度が前記ステージの固有振動数よりも低い周波数となるように、前記正弦波の角速度を変更する、ことを特徴とする項目7に記載の露光装置。
【0083】
(項目9)
前記制御部は、前記情報に応じて、前記第1加速度プロファイルと前記第2加速度プロファイルとを接続する前記正弦波の位相、及び、前記正弦波の角速度を変更することで、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを決定する、ことを特徴とする項目2乃至4のうちいずれか1項目に記載の露光装置。
【0084】
(項目10)
前記第1加速度プロファイルは、正弦波の一部で構成され、
前記制御部は、前記情報に応じて、前記第1加速度プロファイルにおける前記正弦波の角速度を変更することで、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを決定する、ことを特徴とする項目2乃至9のうちいずれか1項目に記載の露光装置。
【0085】
(項目11)
前記非露光区間は、前記複数のショット領域のうち、第1行に配列されたショット領域を露光した後に前記第1行とは異なる第2行に配列されたショット領域を露光するために前記ステージを駆動する改行区間である、ことを特徴とする項目10に記載の露光装置。
【0086】
(項目12)
前記情報は、前記ショット領域の走査方向の長さを示す情報を含む、ことを特徴とする項目1乃至11のうちいずれか1項目に記載の露光装置。
【0087】
(項目13)
原版と基板とを走査しながら前記基板の複数のショット領域を露光する露光装置であって、
前記基板を保持して駆動するステージと、
前記ステージの駆動を規定する駆動プロファイルに基づいて、前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記駆動プロファイルは、前記ショット領域を露光する露光区間を含まない非露光区間での前記ステージの加減速を制御する第1加速度プロファイルと、前記露光区間での前記ステージの加減速を制御する第2加速度プロファイルと、を接続することで構成され、
前記第2加速度プロファイルは、曲線で構成され、
前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルは、前記複数のショット領域のうち、前記ショット領域の走査方向の長さが予め定められた基準長さよりも短いショット領域を露光する際の前記ステージの前記走査方向の駆動距離が、前記ショット領域の走査方向の長さが前記基準長さとなるショット領域を露光する際の前記ステージの前記走査方向の駆動距離よりも短くなるように、設定されている、ことを特徴とする露光装置。
【0088】
(項目14)
原版と基板とを走査しながら前記基板の複数のショット領域を露光する露光方法であって、
前記複数のショット領域を露光する際の前記基板を保持するステージの駆動を規定する駆動プロファイルを決定する第1工程と、
前記駆動プロファイルに基づいて前記ステージを駆動しながら前記複数のショット領域を露光する第2工程と、を有し、
前記駆動プロファイルは、前記ショット領域を露光する露光区間を含まない非露光区間での前記ステージの加減速を制御する第1加速度プロファイルと、前記露光区間での前記ステージの加減速を制御する第2加速度プロファイルと、を接続することで構成され、
前記第2加速度プロファイルは、曲線で構成され、
前記第1工程では、前記複数のショット領域のそれぞれについて、当該ショット領域のサイズに関する情報に基づいて、前記第1加速度プロファイル及び前記第2加速度プロファイルを決定する、ことを特徴とする露光方法。
【0089】
(項目15)
項目14に記載の露光方法を用いて基板を露光する工程と、
露光した前記基板を現像する工程と、
現像された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【0090】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0091】
100:露光装置 12:原版 15:基板 16:基板ステージ 20:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10