(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】二次電池用負極材
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240614BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240614BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240614BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240614BHJP
C01B 33/113 20060101ALI20240614BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/36 A
H01M4/36 B
H01M4/36 C
H01M4/36 E
C01B33/113 A
C01B33/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022135358
(22)【出願日】2022-08-26
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0113935
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522341997
【氏名又は名称】ポスコ シリコン ソリューション カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジン ジ
(72)【発明者】
【氏名】チェ スン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジュン フン
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-529709(JP,A)
【文献】国際公開第2021/034109(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/156117(WO,A1)
【文献】特開2012-033317(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2020-0100252(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第108767241(CN,A)
【文献】特開2010-170943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36-4/58
C01B 33/113
C01B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子と、を含む粒子状であり、
粒子の圧縮強度が100MPa以上であり、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A
1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A
2)との比(A
1/A
2)が0.8~6である、二次電池用負極材。
【請求項2】
前記X線回折パターンにおいて、前記第1ピークの半値全幅(FWHM(L
1))と第2ピークのFWHM(L
2)との比(L
1/L
2)が6~15である、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項3】
前記第1ピークの最大強度(I
1)と第2ピークの最大強度(I
2)との強度比(I
1/I
2)が0.05~1.25である、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項4】
前記第1ピークは、非晶質シリコン酸化物に由来したものであり、前記第2ピークは、結晶質シリコンに由来したものである、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項5】
負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHMが、バルク単結晶シリコンのラマンピークのFWHMよりも大きい、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項6】
前記負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHMは、4~20cm
-1である、請求項5に記載の二次電池用負極材。
【請求項7】
シリコンのラマン信号に基づいて下記式1を満たす、請求項5に記載の二次電池用負極材。
(式1)
1<WN(Si)/WN(ref)
(式1中、WN(ref)は、バルク単結晶シリコンのラマンピークの中心波数であり、WN(Si)は、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。)
【請求項8】
シリコンのラマン信号に基づく二次元マッピング分析時、下記マッピング条件で、下記式2により規定される偏移の最大値と最小値との差が5cm
-1以下である、請求項7に記載の二次電池用負極材。
マッピング条件:励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、検出器露出時間(単位分析領域当たりの露出時間)1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーティング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=1cm
-1、マッピングサイズ=14μm×14μm
(式2)
偏移=WN
i(Si)-WN(ref)
(式2中、WN(ref)は、式1における規定と同様であり、WN
i(Si)は、マッピング分析時、単位分析領域である一ピクセルにおいて、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。)
【請求項9】
20mm×20mmの試験片において、ランダムな20個の互いに異なる位置におけるシリコンのラマン信号に基づく偏移の分析時、下記式2により規定される偏移の最大値と最小値との差が5cm
-1以下である、請求項8に記載の二次電池用負極材。
マッピング条件:励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、検出器露出時間(単位分析領域当たりの露出時間)1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーティング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=1cm
-1
(式2)
偏移=WN
i(Si)-WN(ref)
(式2中、WN(ref)は、式1における規定と同様であり、WN
i(Si)は、マッピング分析時、単位分析領域である一ピクセルにおいて、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。)
【請求項10】
20mm×20mmの試験片において、ランダムな20個の互いに異なる位置におけるシリコンナノ粒子の応力分析時、圧縮応力が80%以上である、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項11】
複数の負極材粒子を含み、下記式3による粒子間の組成均一性を有する、請求項1に記載の二次電池用負極材。
(式3)
1.3≦UF(D)
(式3中、UF(D)は、重量%組成を基準として、負極材粒子間の平均ドーピング元素組成をドーピング元素組成の標準偏差で割った値である。)
【請求項12】
前記シリコンナノ粒子の平均直径は、2~30nmである、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項13】
前記シリコンナノ粒子と前記マトリックスとの界面は整合界面である、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項14】
前記ドーピング元素は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、およびビスマス(Bi)から選択される1つ以上である、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項15】
平均直径が
5μm~30μmの粒子状である、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項16】
炭素を含有するコーティング層をさらに含む、請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項17】
請求項1に記載の二次電池用負極材を含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用負極材に関し、詳細には、向上した容量と初期効率およびサイクル特性を有する二次電池用負極材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品、電気/ハイブリッド車両、航空宇宙/ドローンなどの多様な産業分野において、高エネルギー密度および高電力密度の特性だけでなく、長期間使用可能な、すなわち、長寿命の二次電池に対する需要が増加し続けている。
【0003】
一般的に、充放電が可能な二次電池は正極、負極、電解物質、およびセパレータで構成され、そのうち負極に含まれて商業的に用いられる代表的な負極材はグラファイトであるが、グラファイトの理論的最大容量は372mAh/gにすぎない。
【0004】
そこで、高エネルギー密度の二次電池を実現するために、硫黄(最大容量1,675mAh/g)などのようなカルコゲン系、シリコン(最大容量4,200mAh/g)やシリコン酸化物(最大容量1,500mAh/g)などのようなシリコン系、遷移金属酸化物などを二次電池用負極材として使用しようとする研究が行われ続けており、種々の物質のうちシリコン系負極材が最も注目されている。
【0005】
しかしながら、粒子状シリコンを負極材として用いる場合、充放電サイクルが繰り返されるにつれ、シリコンの大きい体積変化による絶縁、粒子脱離、接触抵抗の増加などにより電池特性が急激に劣化し、100サイクル未満で既に電池としての機能を失うという問題があり、シリコン酸化物の場合、リチウムシリケートや酸化リチウムなどのような不可逆生成物によりリチウムが失われ、初期充放電効率が急激に減少するという問題がある。
【0006】
このようなシリコン系負極材の問題を解決するために、シリコンをワイヤなどの形態にナノ化し、それを炭素材と複合化する技術や、シリコン酸化物に異種金属をドーピングして複合酸化物相を形成するかまたはシリコン酸化物をプレリチウム化(pre-lithiation)させる技術などが提案されているが、依然として初期充放電効率やサイクル特性、高レート特性などが低下して商業化し難いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国公開特許第10-2020-0065514号
【文献】大韓民国公開特許第10-2015-0045336号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い電池容量を有し、向上した初期可逆効率および安定したサイクル特性を有するシリコン系二次電池用負極材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子と、を含む粒子状であり、粒子の圧縮強度(St)が100MPa以上であり、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6を満たす。
【0010】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの半値全幅(FWHM(L1))と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークのFWHM(L2)との比(L1/L2)が6~15であってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、第1ピークの最大強度(I1)と第2ピークの最大強度(I2)との強度比(I1/I2)が0.05~1.25であってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、前記第1ピークは、非晶質シリコン酸化物に由来したものであり、前記第2ピークは、結晶質シリコンに由来したものであってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、前記負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHMが、バルク単結晶シリコンのラマンピークのFWHMよりも大きくてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、前記負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHMは、4~20cm-1であってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、シリコンのラマン信号に基づいて下記式1を満たしてもよい。
【0016】
(式1)
1<WN(Si)/WN(ref)
【0017】
式1中、WN(ref)は、バルク単結晶シリコンのラマンピークの中心波数であり、WN(Si)は、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。
【0018】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、シリコンのラマン信号に基づく二次元マッピング分析時、下記マッピング条件で、下記式2により規定される偏移の最大値と最小値との差が5cm-1以下であってもよい。
【0019】
マッピング条件:励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、検出器露出時間(単位分析領域当たりの露出時間)1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーティング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=1cm-1、マッピングサイズ=14μm×14μm
【0020】
(式2)
偏移=WNi(Si)-WN(ref)
【0021】
式2中、WN(ref)は、式1における規定と同様であり、WNi(Si)は、マッピング分析時、単位分析領域である一ピクセルにおいて、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。
【0022】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、20mm×20mmの試験片において、ランダムな20個の互いに異なる位置におけるシリコンのラマン信号に基づく偏移の分析時、下記式2により規定される偏移の最大値と最小値との差が5cm-1以下であってもよい。
【0023】
マッピング条件:励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、検出器露出時間(単位分析領域当たりの露出時間)1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーティング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=1cm-1
【0024】
(式2)
偏移=WNi(Si)-WN(ref)
【0025】
式2中、WN(ref)は、式1における規定と同様であり、WNi(Si)は、マッピング分析時、単位分析領域である一ピクセルにおいて、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。
【0026】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、20mm×20mmの試験片において、ランダムな20個の互いに異なる位置におけるシリコンナノ粒子の応力分析時、圧縮応力が80%以上であってもよい。
【0027】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、複数の負極材粒子を含み、下記式3による粒子間の組成均一性を有してもよい。
【0028】
(式3)
1.3≦UF(D)
【0029】
式3中、UF(D)は、重量%組成を基準として、負極材粒子間の平均ドーピング元素組成をドーピング元素組成の標準偏差で割った値である。
【0030】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、前記シリコンナノ粒子の平均直径は、2~30nmであってもよい。
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、前記シリコンナノ粒子と前記マトリックスとの界面は整合界面であってもよい。
【0031】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、前記ドーピング元素は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、およびビスマス(Bi)から選択される1つ以上であってもよい。
【0032】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、前記負極材は、平均直径が100μmオーダー(order)~101μmオーダー(order)の粒子状であってもよい。
【0033】
本発明の一実施形態に係る二次電池用負極材において、前記負極材は、炭素を含有するコーティング層をさらに含んでもよい。
本発明は、上述した二次電池用負極材を含む二次電池を含む。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、マトリックスに分散含浸された残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子と、を含む粒子状であり、向上した機械的および電気化学的特性を有し、粒子の優れた圧縮強度特性に基づく負極材の構造的完全性が確保され、高い放電容量とともに、シリコン系負極材が備えられた二次電池の実際の商用化が可能なレベルの容量維持率を有するという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態により製造された負極材の断面においてMgのEDSラインプロファイルを示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態により製造された負極材のXRDパターンを示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態により製造された負極材のラマンスペクトルを測定して示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態により製造された負極材のシリコンのラマン信号に基づく二次元マッピング結果を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態により製造された負極材の強度および弾性係数を測定した結果を示した図である。
【
図6a】本発明の一実施形態により製造された負極材を含む負極が備えられたハーフセルの充放電サイクルによる充放電容量を示した図である。
【
図6b】本発明の一実施形態により製造された負極材を含む負極が備えられたハーフセルの充放電サイクルによる容量維持率を示した図である。
【
図7】本発明の一実施形態により製造された負極材を含む負極が備えられたハーフセルのdQ/dVグラフである。
【
図8】一実施形態により製造された負極材を観察した高配率の透過電子顕微鏡写真である。
【
図9】本発明の一実施形態により製造された負極材を含む負極において、リチウム化前の負極の断面およびその厚さと、リチウム化後の負極の断面およびその厚さを観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して、本発明の二次電池用負極材について詳しく説明する。以下に提示される図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達できるように例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されてもよく、以下に提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して示されてもよい。この際、用いられる技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本発明の要旨を不要に濁す恐れがある公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0037】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
本明細書および添付の特許請求の範囲において、第1、第2などの用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を他の構成要素と区別するために用いられる。
【0038】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、または構成要素が存在することを意味するものであって、特に限定しない限り、1つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0039】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、膜(層)、領域、構成要素などの部分が他の部分の上にまたは上部に存在するとする際、これは、他の部分と接して真上に存在する場合だけでなく、その間に、また他の膜(層)、また他の領域、また他の構成要素などが介在している場合も含む。
【0040】
本出願人は、シリコンとシリコン系酸化物が複合化されたシリコン系負極材において、負極材に含有されたシリコンの残留応力により負極材の機械的特性および電気化学的特性が著しく影響を受けることを見出した。このような知見に基づく研究を深めた結果、シリコン系酸化物ベースのマトリックスにシリコンがナノ粒子状に分散し、残留圧縮応力を有する際に、負極材の機械的物性および電気化学的物性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0041】
そこで、上述した知見に基づく本発明に係る負極材は、ナノ粒子状に分散し、残留圧縮応力を有するシリコンとマトリックスの結合により、従来のシリコン系負極材からは得られない機械的物性および電気化学的物性を示すことから、本発明は、本発明に係るシリコン系負極材が有する物性に基づく多様な態様を含む。
【0042】
本発明において、マトリックスは、ナノ粒子状シリコンが分散する固体状の媒質を意味し、負極材において、分散相であるシリコンナノ粒子に対して連続相(continuum)を形成する物質を意味し得る。本発明において、マトリックスは、負極材において、金属シリコン(Si)を除いた物質を意味し得る。
【0043】
本発明において、ナノ粒子は、通常、ナノ粒子と規定される大きさ(直径)である100ナノメートルオーダー(order)~102ナノメートルオーダーの粒子、実質的には500nm以下の直径、具体的には200nm以下の直径、より具体的には100nm以下の直径、さらに具体的には50nm以下の直径を有する粒子を意味し得る。
【0044】
本発明において、二次電池用負極材は、リチウム二次電池用負極材を含むが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明の負極材は、ナトリウム電池、アルミニウム電池、マグネシウム電池、カルシウム電池、亜鉛電池などの二次電池の活物質として活用することができ、スーパーキャパシタ、色素増感太陽電池、燃料電池など、従来のシリコン系物質が用いられる他のエネルギー貯蔵/生成装置にも活用することができる。
【0045】
本発明の一態様(I)に係る二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子と、を含む粒子状であり、粒子の圧縮強度(St)が100MPa以上であり、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6を満たす。
【0046】
粒子の圧縮強度Stは、周知のように、式
【数1】
により算出されてもよく、ここで、Pは、加えられた力であり、dは、粒子の粒径であり、Lは、力が加えられる方向と平行な方向への粒子の長さであり、微小圧縮試験機(一例として、MCT-W500-E、Shimadzu)を用いて測定されてもよい。この際、前述したLは、粒子の粒径であってもよく、圧縮強度は、式
【数2】
により算出可能であることはいうまでもない。
【0047】
具体的に、粒子状の二次電池用負極材の粒子の圧縮強度は、100MPa以上、105MPa以上、110MPa以上、115MPa以上、120MPa以上、125MPa以上、130MPa以上、135MPa以上、140MPa以上、145MPa以上、150MPa以上、155MPa以上、または160MPa以上であってもよく、実質的には250MPa以下、より実質的には200MPa以下であってもよい。
【0048】
本発明に係る二次電池用負極材は、前述したマトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子を含む粒子状であり、100MPa以上の優れた圧縮強度を示し、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6を満たすことで、向上した機械的物性および電気化学的特性を有し、特に、高い放電容量とともに、シリコン系負極材が備えられた二次電池の実際の商用化が可能なレベルの容量維持率を有するという長所を得ることができる。
【0049】
また、優れた粒子の圧縮強度を有する負極材は、従来の二次電池分野で既に確立された負極材スラリーの製造-集電体上にスラリーの塗布および乾燥-圧延(calendering)に至る電極製造工程中に粒子状負極材が物理的に損傷しないことを意味し、電極(負極)の気孔構造の損傷も防止され、設計のとおり、電解質との安定的かつ均質な接触が担保できることを意味する。このことから、本発明の二次電池用負極材は、構造的完全性が確保され、電池性能が安定的に実現できるという長所を得ることができる。
【0050】
詳細には、優れた粒子の圧縮強度を有する負極材の機械的物性は、ナノ粒子状シリコンが有する残留圧縮応力を含め、負極材に存在する残留応力により実現できる物性値である。この際、負極材に含まれるマトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子の残留応力は、引張応力、圧縮応力、または引張応力および圧縮応力が混在した形態で存在してもよいが、本発明に係る負極材に含まれ、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子の主な残留応力である圧縮応力が、前述したX線回折パターンにおいて、第1ピークの面積(A1)と第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6を満たす結晶学的特性により均一になることができる。
【0051】
さらに、前述した機械的強度は、シリコンナノ粒子とマトリックスとの整合界面により、残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子を囲むマトリックスに応力場が形成されることでさらに向上することができる。
【0052】
ここで、負極材の機械的物性値が実現されるナノ粒子状シリコンが有する残留圧縮応力は、バルク単結晶シリコンのラマンピークの中心波数を基準として、ナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数により決められてもよく、これは、後述するラマン特性においてより詳しく説明することにする。
【0053】
本発明に係る一実施形態として、第1ピークの面積(A1)と第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)は、0.8~8であってもよく、具体的には0.8~6であってもよく、より具体的には0.8~5.5であってもよい。この際、X線回折パターンにおいて、各ピークの面積は、各ピークが占める積分面積を意味する。ここで、積分面積とは、ノイズレベルが除去されたピークを、ガウス関数および/またはローレンツ関数を用いてピークフィッティング(fitting)を行った後の積分面積であってもよいが、前述した第1ピークおよび第2ピークの面積が同様の方法で導出されるものであれば、当業界で周知のXRDピークの面積導出方法は制限なく利用することができる。
【0054】
具体的な一例として、アプリケーションソフトウェアのうち1つであるオリジン(Origine)プログラムのピークアナライザ(peak analyzer)のツール機能を用いて分離しようとするピーク周辺のノイズレベルを除去し、ガウス関数を適用してピークを2つに分離した後、前述したXRDピークの面積を計算することができるが、本発明がこれに制限されるものではない。
【0055】
一具体例において、X線回折パターンにおいて、第1ピークの半値全幅(FWHM(L1))と第2ピークのFWHM(L2)との比(L1/L2)が1~20、具体的には3~18であってもよく、より具体的には6~15であってもよく、さらに具体的には6.5~13であってもよい。
【0056】
他の一具体例として、第1ピークの最大強度(I1)と第2ピークの最大強度(I2)との強度比(I1/I2)は、0.05~1.25であってもよく、具体的には0.05~1.05であってもよく、より具体的には0.08~0.75であってもよい。この際、第1ピークは、非晶質シリコン酸化物に由来したものであってもよく、第2ピークは、結晶質シリコンに由来したものであってもよい。非晶質シリコン酸化物を含む二次電池の負極材は、二次電池の充電時に体積膨張に対して緩衝作用をすることができるため、優れた容量維持率を有することができるという長所がある。
【0057】
本発明の他の一態様(II)に係る二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子と、を含み、ナノインデンテーション試験による強度(hardness)が4.0GPa以上であり、弾性係数(Young’s modulus)が40GPa以上であり、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6を満たしてもよい。
【0058】
以下、二次電池用負極材の機械的物性と関連し、特に温度を限定して提示しない限り、全ての物性は、常温(20~25℃)での物性である。
ここで、ナノインデンテーション試験は、ASTM E2546、ISO 14577-1 E、ISO 14577-2 E、ISO 14577-3 Eに準じて測定されてもよく、弾性係数Eは、周知のように、式
【数3】
により算出されてもよい。ここで、E
*は、圧子の弾性係数であり、νは、バーコビッチ圧子(Berkovich indenter)のポアソン比を0.3に仮定した。バーコビッチ圧子を用いたナノインデンテーション試験は、最大荷重50mN、荷重印加速度100mN/minの条件で行われてもよい。ナノインデンテーション試験により測定される強度と弾性係数は、少なくとも圧子による圧痕を基準として、圧痕間の離隔距離が少なくとも10μm以上であり、この際、5×5~25×25のマトリックス状でナノインデンテーション試験を行って得られた物性値を平均した値であってもよい。この際、ナノインデンテーション試験が行われる負極材サンプルは、板状のバルク負極材をマウンティングし、ポリッシング(polishing)して準備してもよい。
【0059】
具体的に、二次電池用負極材は、ナノインデンテーション試験による強度(圧入強度)が4.0GPa以上、4.5GPa以上、5.0GPa以上、5.5GPa以上、6.0GPa以上、6.5GPa以上、7.0GPa以上、7.5GPa以上、8.0GPa以上、8.5GPa以上、9.0GPa以上、9.5GPa以上、10.0GPa以上、10.2GPa以上、10.4GPa以上、10.6GPa以上、10.8GPa以上、11.0GPa以上、11.2GPa以上、11.4GPa以上、11.6GPa以上、11.8GPa以上、12.0GPa以上、12.2GPa以上、12.4GPa以上、12.6GPa以上、12.8GPa以上、または13.0GPa以上であってもよく、実質的には25.0GPa以下、より実質的には20.0GPa以下であってもよい。これとともに、二次電池用負極材は、ナノインデンテーション試験による弾性係数が40GPa以上、41GPa以上、42GPa以上、43GPa以上、44GPa以上、45GPa以上、50GPa以上、または55GPa以上であってもよく、実質的には250GPa以下、より実質的には200GPa以下であってもよい。
【0060】
前述したように、本発明に係る二次電池用負極材は、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子を含み、ナノインデンテーション試験により測定された4.0GPa以上の高い強度および40GPa以上の優れた弾性係数(Young’s modulus)を示し、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6を満たすことで、向上した機械的物性および電気化学的特性を有し、優れた放電容量とともに、シリコン系負極材が備えられた二次電池の実際の商用化が可能なレベルの容量維持率を有するという長所を得ることができる。
【0061】
また、高い強度を有し、優れた弾性を有する負極材は、前述した優れた粒子の圧縮強度特性とともに、従来の電極製造工程中、特に圧延工程中における粒子状負極材の物理的損傷の防止だけでなく、電極(負極)の気孔構造も安定的に維持することができるため、本発明の二次電池用負極材の構造的完全性がさらに向上することができる。
【0062】
本発明のまた他の一態様(III)に係る二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子と、を含み、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6であり、下記式1を満たしてもよい。
【0063】
(式1)
1<WN(Si)/WN(ref)
【0064】
式1中、WN(ref)は、バルク単結晶シリコンのラマンピークの中心波数であり、WN(Si)は、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。
【0065】
この際、式1において、バルク単結晶シリコンのラマンピークの中心波数に対する負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数の比は、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子に残留する応力(残留応力)の種類および残留応力の大きさを示すパラメータである。また、式1において、バルク単結晶シリコンという用語は、実質的にバルク単結晶シリコンの物性を示す大きさのシリコンを意味するものと解釈しなければならず、明確な比較基準を提示し、購入の容易性を担保するという面で、バルク単結晶シリコンは、sub mmオーダー(sub mm order)レベルの厚さ、具体的な一例として、0.4~0.7mmの厚さを有する単結晶シリコンウェハを意味し得る。
【0066】
具体的に、式1において、WN(Si)/WN(ref)が1を超過するとは、バルク単結晶シリコンに対して、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数がより長波数(ラマン散乱光の波長においてより短波長)に移動することを意味し、これは、ナノ粒子状シリコンが残留圧縮応力(residual compressive stress)を有することを意味する。
【0067】
前述したように、本発明に係る二次電池用負極材は、マトリックスに分散含浸され、残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子を含み、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6を満たすことで、均一な残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子により、向上した機械的物性および電気化学的特性を有し、特に、高い放電容量とともに、シリコン系負極材が備えられた二次電池の実際の商用化が可能なレベルの容量維持率を有するという長所を得ることができる。
【0068】
詳細には、本発明に係る負極材に含まれ、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子の主な残留応力である圧縮応力が、前述したX線回折パターンにおいて、第1ピークの面積(A1)と第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6を満たす結晶学的特性により均一になることができる。
【0069】
式1において、バルク単結晶シリコンおよびナノ粒子状シリコンそれぞれにおけるシリコンのラマンピークは、シリコンのラマンスペクトルにおいて500~540cm-1の領域、具体的には510~530cm-1の領域、より具体的には515~528cm-1の領域に位置するラマンピークを意味し得る。ピークの中心波数、すなわち、ピークの中心に該当する波数は、ピークにおいて最大強度値を有する波数を意味し得る。この際、上述したラマンシフト(Raman Shift)領域に2以上のラマンピークが存在する場合、強度の最も大きいピークが式1のシリコンのラマンピークに該当し、2以上のラマンピークが互いに重なって双峰型を示す場合、双峰のうち強度がより大きい峰において最大強度値を有する波数がピークの中心波数に該当することができる。
【0070】
一実施形態として、20mm×20mmの試験片(負極材)において、ランダムな20個の互いに異なる位置におけるシリコンナノ粒子の応力分析時、圧縮応力が80%以上、実質的には85%以上、より実質的には90%以上であってもよく、上限値が制限されるものではないが、実質的には99%以下であってもよい。
【0071】
マクロスケールの負極材が試験片の全般にわたって残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子を含むことで、著しく向上した機械的物性および電気化学的特性により、シリコン系負極材が備えられた二次電池の実際の商用化が可能である。
【0072】
また、WN(Si)とWN(ref)との差(WN(Si)-WN(ref))は、シリコンナノ粒子が有する残留圧縮応力の大きさを直接的に示すパラメータである。
【0073】
具体的に、WN(Si)とWN(ref)との差は、0.1cm-1以上、0.2cm-1以上、0.3cm-1以上、0.4cm-1以上、0.5cm-1以上、0.6cm-1以上、0.7cm-1以上、0.8cm-1以上、0.9cm-1以上、1.0cm-1以上、1.1cm-1以上、1.2cm-1以上、1.3cm-1以上、1.4cm-1以上、1.5cm-1以上、1.6cm-1以上、1.7cm-1以上、1.8cm-1以上、1.9cm-1以上、2.0cm-1以上、2.1cm-1以上、2.2cm-1以上、2.3cm-1以上、2.4cm-1以上、2.5cm-1以上、2.6cm-1以上、2.7cm-1以上、2.8cm-1以上、2.9cm-1以上、3.0cm-1以上、3.1cm-1以上、3.2cm-1以上、3.3cm-1以上、3.4cm-1以上、3.5cm-1以上、3.6cm-1以上、3.7cm-1以上、3.8cm-1以上、3.9cm-1以上、または4.0cm-1以上であってもよく、実質的には6.0cm-1以下、より実質的には5.5cm-1以下であってもよい。
【0074】
上述したバルク単結晶シリコンと負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数間の差とともに、またはこれとは独立に、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHMは、バルク単結晶シリコンのラマンピークのFWHMよりも大きくてもよい。バルク単結晶シリコンと比べてより大きいFWHM値は、負極材に含有されたシリコンが極微細な粒子状にマトリックスに分散含浸された構造によるものであり得る。具体的に、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHMは、4~20cm-1、6~20cm-1、6~18cm-1、6~16cm-1、8~20cm-1、8~18cm-1、8~16cm-1、10~20cm-1、10~18cm-1、または10~16cm-1であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0075】
これとともに、またはこれとは独立に、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンは、シリコンのラマンピークの中心波数を基準(0cm-1)として、ラマンスペクトル上の基準で、+20cm-1位置(波数)での強度(K1)と-20cm-1位置(波数)での強度(K2)が互いに有意に異なってもよく、-20cm-1位置(波数)での強度(K2)が+20cm-1位置(波数)での強度(K1)よりも大きくてもよい。この際、有意に異なるとは、K2/K1の比が1.20以上であることを意味し得る。このようなシリコンのラマンピークの非対称性(短波数方向に長いtail)も、残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子がマトリックスに分散含浸された構造によるものであり得る。
【0076】
これとともに、負極材をシリコンのラマン信号に基づいて二次元マッピング分析する際に、下記式2により規定される偏移の最大値と最小値との差が5cm-1以下であってもよい。
【0077】
(式2)
偏移=WNi(Si)-WN(ref)
【0078】
式2中、WN(ref)は、式1における規定と同様であり、WNi(Si)は、マッピング分析時、単位分析領域である一ピクセルにおいて、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。この際、式2において、偏移は、二次元マッピング分析により得られる二次元ラマンマップにおいて、シリコンのラマン信号が検出されたピクセルに限って、ピクセルそれぞれから式2による偏移が算出可能であり、最大値と最小値は、式2により算出された偏移のうち最小値と最大値を意味することはいうまでもない。
【0079】
シリコンのラマン信号に基づく負極材の二次元マッピング分析により得られるシリコンの二次元ラマンマップを基準として、式2によるバルク単結晶シリコンに対するシリコンのピークの中心波数移動値(偏移)の最大値と最小値との差は、負極材に分散含浸されたシリコンナノ粒子の残留圧縮応力均一性を示す指標である。二次元ラマンマップを基準として、偏移の最大値と最小値との差が5.0cm-1以下、4.5cm-1以下、4.0cm-1以下、3.5cm-1以下、3.0cm-1以下、2.5cm-1以下、または1.0cm-1以下を満たしてもよく、実質的には、最大値と最小値との差は0.1cm-1以上、より実質的には0.5cm-1以上を満たしてもよい。このような最大値と最小値との差は、負極材に含有された大半のシリコンナノ粒子、実質的に全てのシリコンナノ粒子が残留圧縮応力を有することを意味し、さらに、負極材に含有された大半のシリコンナノ粒子、実質的に全てのシリコンナノ粒子に残留する圧縮応力の大きさが実質的にほぼ同一であることを意味する。
【0080】
実験的に、負極材に含有されたシリコンのラマンスペクトルは、常温(20~25℃)、大気圧下、励起レーザ波長532nm、レーザパワー0.5mW、分光計の解像度(resolution)1cm-1、負極材1g、検出器露出時間15sの条件で測定されてもよい。
【0081】
実験的に、シリコンのラマン信号を用いた負極材の二次元ラマンマッピングは、励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、検出器露出時間(単位分析領域当たりの露出時間)1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーティング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=1cm-1、マッピングサイズ=14μm×14μmのマッピング条件で測定されてもよく、常温および大気圧下で測定されてもよい。
【0082】
一具体例として、20mm×20mmの試験片において、ランダムな20個の互いに異なる位置におけるシリコンのラマン信号に基づく偏移の分析時、前記式2により規定される偏移の最大値と最小値との差が5.0cm-1以下、4.5cm-1以下、4.0cm-1以下、3.5cm-1以下、3.0cm-1以下、2.5cm-1以下、または1.0cm-1以下を満たしてもよく、実質的には、最大値と最小値との差は0.1cm-1以上、より実質的には0.5cm-1以上を満たしてもよい。これは、マッピング領域だけでなく、試験片全体、すなわち、実質的に試験片全体に含まれる全てのシリコンナノ粒子に残留する圧縮応力の大きさが実質的にほぼ同一であることを意味する。
この際、前述した偏移分析に用いられたラマンスペクトルおよび二次元ラマンマッピングは、前述した条件と同様に測定されてもよい。
【0083】
本発明のさらに他の一態様(IV)に係る二次電池用負極材は、元素成分を基準として、シリコン(Si)、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素(D)、および酸素(O)を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子と、を含み、下記式3を満たす組成均一性を有し、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6であってもよい。
【0084】
(式3)
B/A≦0.65
【0085】
式3中、AとBは、負極材の中心を横切る断面を基準として、任意の100箇所で測定されたドーピング元素の含量(wt%)を平均した平均値(A)と標準偏差(B)である。具体的に、AとBは、負極材の断面の中心を横切るドーピング元素のラインプロファイル(line profile)において、任意の100箇所から算出されたドーピング元素の平均含量(wt%、A)と標準偏差(B)であってもよい。
【0086】
より具体的に、式3のB/Aは、0.65以下、0.60以下、0.55以下、0.50以下、0.40以下、または0.30以下を満たしてもよく、0.2以上であってもよい。
【0087】
式3において、B/Aは、ドーピング元素(D)を基準として負極材の組成均一性を示すパラメータであり、上述した範囲を満たすB/Aの優れた組成均一性により、負極材が均一な機械的、電気化学的物性を示すことができる。
【0088】
また、一実施形態において、複数の負極材粒子を含む負極材は、下記式4による粒子間の組成均一性を有してもよい。
【0089】
(式4)
1.3≦UF(D)
【0090】
式4中、UF(D)は、重量%組成を基準として、負極材粒子間の平均ドーピング元素組成をドーピング元素組成の標準偏差で割った値である。この際、複数の負極材粒子は、10~500個、実質的には50~300個、より実質的には100~200個であってもよい。
【0091】
具体的に、式4のUF(D)は、1.3以上、1.5以上、2以上、2.5以上、3以上、または5以上を満たしてもよく、実質的には8以下であってもよい。前述したUF(D)は、複数の負極材粒子を含む負極材における負極材粒子間の組成均一性を示すパラメータであり、式4のUF(D)が上述した範囲を満たすことで、複数の負極材粒子を含む負極材は、優れた組成均一性を有するため、複数の負極材粒子が含まれても負極材の均一な機械的物性および電気化学的物性を示すことができる。
【0092】
実験的に、ドーピング元素の含量やラインプロファイル分析は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)や透過電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡などに備えられたEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)などを用いて行われてもよいが、これに限定されるものではない。
【0093】
上述した組成均一性を満たす二次電池用負極材において、元素成分を基準として、マトリックスは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素(D)、シリコン(Si)、および酸素(O)を含有してもよく、化合物成分を基準として、マトリックスは、シリコン酸化物、およびドーピング元素とシリコンとの複合酸化物を含んでもよい。そこで、式3により規定されたドーピング元素の組成均一性は、複合酸化物の組成均一性に相応することができるが、必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0094】
本発明のさらに他の一態様(V)に係る二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子と、を含み、0.005Vまで充電時に体積変化が20%以内であり、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6であってもよい。
【0095】
この際、体積変化(%)は、負極材を含有する負極の体積変化であり、[リチウム化後の負極体積-リチウム化前の負極体積]/リチウム化前の負極体積×100と規定することができ、0.005Vまで充電時に20%以内、具体的に、19%以内、18%以内、17%以内、16%以内、または15%以内にすぎない体積変化は、従来のシリコン系負極材と比べて有意に小さい体積変化が発生することを意味し、従来のシリコン系負極材の主な問題が大きく解消されることを意味する。
【0096】
負極材の充電は、負極材を含有する負極とカウンター電極が金属リチウム箔であるハーフセルを用いた下記充放電サイクル条件による充放電テストによるものであってもよく、充放電サイクル、具体的に、最初の充放電サイクルにおいて0.005Vまで充電が行われてもよい。
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
【0097】
以下、特に限定して提示しない限り、上述したリチウム化時の体積変化を含む負極材の電気化学的特性(充放電特性、放電容量、dQ/dVグラフなど)は、負極材を含有する負極とカウンター電極が金属リチウム箔であるハーフセルの電気化学的特性であってもよく、化成工程(formation)が行われたハーフセルの電気化学的特性であってもよい。ハーフセルは、負極集電体、および集電体の少なくとも一面に位置し、本発明の一実施形態に係る負極材を含む負極活物質層を含む負極と、金属リチウム箔である対極と、負極と対極との間に介在したセパレータと、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートが1:1の体積比で混合された混合溶媒に1Mの濃度でLiPF6が溶解された電解質と、が備えられたセルであってもよく、ハーフセルの電気化学的特性は、常温で測定されてもよい。化成工程は、CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.5V、0.1C-rateの条件で充放電が行われる一次工程、およびCC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.1C-rateの条件で充放電が行われる二次工程を含んでもよいが、本発明がテスト電池(ハーフセル)の化成工程条件により限定されないことはいうまでもなく、従来の負極材の電気化学的物性をテストするために用いられる電池において通常行われる化成工程であればよい。
【0098】
本発明のさらに他の一態様(VI)に係る二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子と、を含み、カウンター電極が金属リチウム箔であるハーフセルを用いた下記充放電サイクル条件による充放電テストにより得られるdQ/dVグラフにおいて、Li3.75Si反応に該当するリチウム挿入ピークが存在し、最初の充放電サイクルでの放電容量が1200mAh/g以上であり、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6であってもよい。
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
【0099】
dQ/dVグラフは、最初の充放電サイクルでの電池容量(放電容量)Qをハーフセルの金属リチウム箔基準の負極の電位Vで微分した微分値dQ/dVと電位Vとの関係を示したグラフであってもよい。この際、dQ/dVグラフ上、Li3.75Si反応に該当するリチウム挿入ピークは、0.005V~0.100Vの電圧範囲、具体的には0.005V~0.050Vの電圧範囲、より具体的には0.005V~0.040Vの電圧範囲に位置するピークを意味し得る。
【0100】
すなわち、本発明のさらに他の一態様(VI)に係る二次電池用負極材は、リチウム挿入がLi3.5Siを超過してLi3.75Siまで行われることを意味する。Li3.75Siまでリチウム挿入が行われることで、負極材の容量が向上することができる。実質的な一例として、化成工程が行われたハーフセルのサイクル条件による充放電時、化成一次工程の放電容量(F1)は、1200mAh/g以上、1250mAh/g以上、1300mAh/g以上、1350mAh/g以上、1400mAh/g以上、または1500mAh/g以上であってもよく、実質的には2500mAh/g以下であってもよい。
【0101】
本発明のさらに他の一態様(VII)に係る二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子と、を含み、カウンター電極が金属リチウム箔であるハーフセルを用いた下記充放電サイクル条件による充放電テスト時に式4を満たし、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)が0.8~6であってもよい。
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
【0102】
(式5)
95%≦C50/C1×100
【0103】
式5中、C1は、最初の充放電サイクルでの負極材の放電容量(mAh/g)であり、C50は、50回目の充放電サイクルでの負極材の放電容量である。この際、最初の充放電サイクルでのC1は、化成工程が1回および/または2回行われた後に測定された負極材の放電容量であってもよい。
【0104】
具体的に、C50/C1×100は、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上であってもよい。このようなサイクル特性は、負極材におけるリチウムイオンの貯蔵と放出が実質的に完全に可逆的であることを意味し、50回に至る繰り返しの充放電過程で容量低下(負極材の劣化、負極活物質層中の負極材の電気的接触の低下、不可逆生成物の形成など)が実質的に発生しないことを意味し、極めて優れた容量維持率を有することを意味する。
【0105】
一具体例において、C50は、1150mAh/g以上、1200mAh/g以上、1250mAh/g以上、1300mAh/g以上、1350mAh/g以上、または1450mAh/g以上であってもよく、実質的には2450mAh/g以下であってもよい。
【0106】
本発明のさらに他の一態様(VIII)に係る二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸され、残留圧縮応力(residual compressive stress)を有するシリコンナノ粒子と、を含む。
【0107】
マトリックスに分散含浸されたナノ粒子状シリコンが有する残留圧縮応力、さらに、シリコンの残留圧縮応力と、シリコンナノ粒子とマトリックスとの間に形成された整合界面によりシリコンナノ粒子周囲のマトリックスに形成される応力場は、前述したラマンスペクトルに基づく負極材の一態様、機械的物性に基づく負極材の他の一態様、リチウム化時の電気化学的物性に基づく負極材のまた他の一態様として負極材の物性や測定可能なパラメータとして示されることができる。
【0108】
本発明において、負極材は、上述した態様(I~VIII)のうち1以上の態様、2以上の態様、3以上の態様、4以上の態様、5以上の態様、6以上の態様、7以上の態様、またはI~VIIIの全ての態様を満たしてもよい。
【0109】
以下、特に「本発明に係る一態様」に限定して記述しない限り、後述する内容は、本発明が提供する全ての態様それぞれに該当する。
一具体例において、負極材は、元素成分を基準として、シリコン、酸素、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素を含有してもよい。シリコンは、元素シリコン状態のシリコン成分および酸化物状態のシリコン成分を含んでもよく、酸化物状態のシリコン成分は、シリコン単独の酸化物状態、シリコンとドーピング元素との複合酸化物状態、またはこれらを全て含んでもよい。ドーピング元素は、酸化物状態のドーピング元素成分を含んでもよく、酸化物状態のドーピング元素は、ドーピング元素単独の酸化物状態、シリコンとドーピング元素との複合酸化物状態、またはこれらを全て含んでもよい。
【0110】
化合物成分を基準として、負極材は、シリコン酸化物、ドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有してもよく、これとともに元素シリコン(Si)を含有してもよい。シリコン酸化物はSiOx、xは0.1~2の実数を含んでもよく、複合酸化物はDlSimOn、Dはドーピング元素であり、lは1~6の実数、mは0.5~2の実数、nはDとSiそれぞれの酸化数とlおよびmに応じて電荷中性を満たす実数であってもよい。一例として、DがMgである場合、複合酸化物は、MgSiO3およびMg2SiO4から選択される1つ以上の酸化物などを含んでもよいが、本発明において、Dと複合酸化物が必ずしもMgおよびMg-Siの間の酸化物に限定されるものではない。
【0111】
微細構造を基準として、負極材は、シリコン酸化物;アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選択される1つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物;またはこれらの混合物;を含有するマトリックスと、シリコンナノ粒子と、を含む分散相を含有してもよい。分散相は、マトリックス中に均一に分散含浸されて位置してもよい。
【0112】
一具体例において、シリコンナノ粒子は、結晶質、非晶質、または結晶質と非晶質が混在する複合相であってもよく、実質的には結晶質であってもよい。
一具体例において、マトリックスは、結晶質、非晶質、または結晶質と非晶質が混在する複合相であってもよい。詳細には、マトリックスは、結晶質、または結晶質と非晶質が混在する複合相であってもよい。具体的に、マトリックスは、非晶質、結晶質、または非晶質と結晶質が混在するシリコン酸化物、および結晶質の複合酸化物を含んでもよい。
【0113】
シリコンナノ粒子とマトリックスとの界面は、整合(coherent)界面、不整合(incoherent)界面、部分整合(semi-coherent)界面を含んでもよく、実質的には整合界面または部分整合界面を含んでもよく、より実質的には整合界面を含んでもよい。周知のように、整合界面は、界面をなす2つの物質の格子が界面で格子連続性が維持される界面であり、部分整合界面は、部分的に格子の不一致部分が存在し、このような格子の不一致部分が電位などのような欠陥と見なされ得る界面である。そこで、シリコンナノ粒子とマトリックスとの整合または部分整合界面を有する負極材において、シリコンナノ粒子と接するマトリックス領域は結晶質であってもよく、具体的に、結晶質のシリコン酸化物、結晶質の複合酸化物、またはこれらの混合物であってもよい。実験的に、整合(coherent)界面、不整合(incoherent)界面、部分整合(semi-coherent)界面の界面構造は、高配率の走査型電子顕微鏡観察などにより判別することができ、これは、当業者にとって周知の事実である。
【0114】
一具体例において、シリコンナノ粒子の平均直径は、100ナノメートルオーダー~101ナノメートルオーダー、具体的に、1~50nm、2~40nm、2~35nm、2nm~30nm、2nm~20nm、または2nm~15nmであってもよいが、これに限定されるものではない。ただし、30nm以下レベルのシリコンナノ粒子は、全体的にマトリックスと整合界面を形成し、シリコンナノ粒子に残留する圧縮応力により、マトリックスのより広い領域に応力が形成されることで有利であり得る。実験的に、シリコンナノ粒子の平均直径は、透過電子顕微鏡観察イメージにより負極材中のシリコンナノ粒子の大きさを測定し、10個以上、20個以上、または30個以上のシリコンナノ粒子に対して測定された大きさを平均して算出されてもよい。
【0115】
一具体例において、ドーピング元素は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、およびビスマス(Bi)から選択される1つ以上であってもよい。そこで、複合酸化物は、シリコンと、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、およびビスマス(Bi)から選択される1つ以上の元素との酸化物であってもよい。複合酸化物と残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子とのシナジー効果により、負極材の機械的物性および電気化学的物性がさらに向上することができる。シリコンナノ粒子との整合界面の形成に有利になるように、ドーピング元素は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群、具体的に、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、およびバリウム(Ba)から選択される1つ以上の元素であってもよく、より有利には、アルカリ土類金属、具体的に、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、およびバリウム(Ba)から選択される1つ以上の元素であってもよい。最も有利には、容易な整合界面の形成および残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子とのシナジー効果の面で、ドーピング元素は、マグネシウムを含んでもよい。上述したように、ドーピング元素は、シリコンとの複合酸化物の形態および/またはドーピング元素の酸化物の形態で負極材に含まれてもよく、主に複合酸化物の形態で負極材に含まれてもよい。具体的に、マトリックスがシリコンとの複合酸化物の形態でドーピング元素を含有する場合、複合酸化物は、結晶質を含んでもよく、より実質的に、複合酸化物は、結晶質であってもよい。そこで、マトリックスは、結晶質の複合酸化物を含有してもよい。
【0116】
一具体例において、マトリックスに含有されたシリコン酸化物はSiOx、ここで、xは0.1~2の実数、より具体的には0.5~2の実数を満たしてもよく、互いに異なるxを有する第1シリコン酸化物および第2シリコン酸化物を含んでもよい。実質的な一例として、マトリックスに含有されるシリコン酸化物は、SiOx1(x1は1.8~2の実数)の第1シリコン酸化物、およびSiOx2(x2は0.8~1.2の実数)の第2シリコン酸化物を含んでもよい。マトリックスに含有されるシリコン酸化物は、結晶質、非晶質、結晶質と非晶質の複合相であってもよく、実質的には非晶質であってもよい。
【0117】
一具体例において、負極材は、ナノ粒子状シリコン15~50重量%、および残部のマトリックスを含有してもよい。
一具体例において、負極材のマトリックスは、シリコン酸化物および複合酸化物のいずれを含有してもよく、マトリックスは、シリコン酸化物100重量部を基準として複合酸化物の重量部をAとし、負極材において重量%を基準としてドーピング元素の濃度をBとする際に、A/Bが2~50、2~40、2~30、または2~20を満たしてもよい。
【0118】
一具体例において、負極材は、粒子状であってもよい。粒子状の負極材は、二次電池の用途において通常求められる粒子の大きさ、一例として、100μmオーダー(order)~101μmオーダー(order)の平均直径、具体的には5μm~30μmレベルの平均直径を有してもよいが、これに限定されるものではない。
【0119】
一具体例において、負極材は、炭素を含有するコーティング層、具体的に、負極材の表面にコーティングされた表面コーティング層をさらに含んでもよい。このような表面コーティング層により、負極材の電気的特性を向上させることができるので有利である。コーティング層の厚さは、2~30nmレベルであれば十分であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0120】
一具体例において、負極材は、残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子を含有し、電気化学的なリチウムとの合金(リチウム化、lithiation)時、シリコン1モル当たりにリチウム3.5(超過)~3.75モル、具体的には3.6~3.75モルの合金化比率を有してもよい。このような高い合金化比率は、高容量に非常に有利である。また、一具体例において、負極材は、高い初期充放電効率および容量維持率特性を有することができる。
【0121】
本発明は、上述した負極材を含有する負極を含む。負極は、二次電池、具体的に、リチウム二次電池の負極であってもよい。負極は、集電体と、集電体の少なくとも一面に位置し、上述した負極材を含有する負極活物質層と、を含んでもよく、負極活物質層は、必要に応じて、負極材と二次電池の負極に通常用いられるバインダーおよび導電材をさらに含んでもよい。
【0122】
本発明は、上述した負極を含む二次電池を含む。具体的に、本発明は、上述した負極を含むリチウム二次電池を含む。リチウム二次電池は、正極集電体、および正極集電体の少なくとも一面に位置する正極活物質層を含む正極と、上述した負極と、正極と負極との間に介在したセパレータと、リチウムイオンを伝導する電解質と、を含んでもよい。正極集電体、負極集電体、正極活物質層の正極活物質や組成、セパレータおよび電解質の溶媒や電解質塩または電解質塩の濃度などは、リチウム二次電池において通常採択される物質や組成であればよい。
【0123】
(実施例1)
Si、SiO2、MgO原料をそれぞれ6(Si):4.5(SiO2):1.5(MgO)のモル比で粉末混合器に投入した後、均質混合して混合原料を製造した後、モールドを用いて混合原料をペレット化した。
【0124】
前記ペレット化した混合原料を0.1torr以下の真空チャンバ内のルツボに26kg入れた後、1,400℃に加熱して気化させた後、400℃の捕集板で凝縮させ、マグネシウムドーピングシリコン酸化物を得た。
得られたマグネシウムドーピングシリコン酸化物を850℃で、Ar雰囲気で20時間熱処理し、バルク型二次電池用負極材を製造した。
【0125】
製造されたバルク型二次電池用負極材を平均粒径5μmに機械式粉砕して粒子状負極材を製造し、炭化水素ガスを活用して850℃のCVD工程により粒子状負極材に5重量%で炭素をコーティングし、炭素コーティングされた負極材粉末を製造した。
【0126】
(実施例2)
実施例1と同様に行うが、この際、それぞれの原料を6.5(Si):4.5(SiO2):0.5(MgO)のモル比で混合したことを除いては同様に行った。
【0127】
(実施例3)
実施例1と同様に行うが、この際、それぞれの原料を6.5(Si):4.5(SiO2)のモル比で混合したことを除いては同様に行った。
【0128】
(比較例1)
Si、SiO2、MgO原料をそれぞれ6(Si):4.5(SiO2):1.5(MgO)のモル比で粉末混合器に投入した後、均質混合して原料を製造した。
【0129】
前記原料を0.1torr以下の真空チャンバ内のルツボに26kg入れた後、1,400℃に加熱して気化させた後、400℃の捕集板で凝縮させ、マグネシウムドーピングシリコン酸化物を得た。得られたマグネシウムドーピングシリコン酸化物(バルク型二次電池用負極材)を平均粒径5μmに機械式粉砕して粒子状負極材を製造し、炭化水素ガスを活用して850℃のCVD工程により粒子状負極材に5重量%で炭素をコーティングし、炭素コーティングされた負極材粉末を製造した。
【0130】
(比較例2)
SiとSiO2の混合原料24kgをルツボAに、金属Mgの塊2kgをルツボBに入れ、ルツボAは1,500℃、ルツボBは900℃にそれぞれ加熱して気化させた後、900℃の捕集板で凝縮させ、マグネシウムドーピングシリコン酸化物を得た。
【0131】
得られたマグネシウムドーピングシリコン酸化物(バルク型二次電池用負極材)を平均粒径5μmに機械式粉砕して粒子状負極材を製造し、炭化水素ガスを活用して850℃のCVD工程により粒子状負極材に5重量%で炭素をコーティングし、炭素コーティングされた負極材粉末を製造した。
【0132】
(比較例3)
実施例1と同様に行うが、この際、Si原料のみを用い、2200℃で加熱したことを除いては同様に行った。
【0133】
(実験例1)ドーピング元素の含量偏差
粉砕前のマグネシウムドーピングシリコン酸化物(比較例2)や熱処理により得られたバルク型二次電池用負極材(実施例1)の中心を横切る断面を基準として、EDS(Electron Disperse Spectroscopy)により、断面の中心を横切るラインプロファイルにおいて、任意の100箇所を測定して算出したドーピング元素の平均含量(wt%)をA、含量の標準偏差をBと計算し、それを
図1に示した。組成分析の結果、実施例1で製造された負極材サンプルのB/Aは0.25であり、比較例2の場合、B/Aは0.69であった。
【0134】
追加的に、実施例1の負極材を粉砕した後、150個の負極材粒子をサンプリングした後、負極材粒子間に含まれるドーピング元素の組成均一性を分析した。この際、負極材粒子間の平均ドーピング元素組成(wt%)をドーピング元素組成の標準偏差で割った値であるUF(D)は6.2と確認された。
【0135】
(実験例2)X線回折(XRD)分析
粉砕後の負極材をX線回折(XRD、Rigaku D/MAX-2500/PC、40kV、15mA、4°min-1、Cu-Kα放射線、λ=0.15406nm)分析により構造を確認した。
【0136】
図2は、実施例1~実施例3および比較例3のXRDパターンを示した図であり、図面から分かるように、実施例1~実施例3および比較例3のいずれも約28°位置に結晶質シリコン111のピークが観察され、実施例1~実施例3の回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置するピークは、広い(broad)ピークを示したのに対し、比較例3の場合は、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置するピークが存在しないことを確認した。このことから、実施例1~実施例3は、非晶質のシリコン酸化物を含むことが分かり、比較例3は、非晶質のシリコン酸化物を含まず、このことから、非晶質のシリコン酸化物を含む実施例1~実施例3は、二次電池の充電時、体積膨張に対して緩衝作用をすることができるため、二次電池の容量維持率の面で有利であり得る。
【0137】
さらに、X線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの面積(A1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの面積(A2)との比(A1/A2)を比較すると、実施例1~実施例3は0.8~6の範囲と確認された。
【0138】
追加的に、X線回折パターンにおいて、回折角2θが10°~27.4°の範囲に位置する第1ピークの最大強度(I1)と28±0.5°の範囲に位置する第2ピークの最大強度(I2)との強度比(I1/I2)を比較すると、実施例1~実施例3は0.1~1.25の範囲と確認され、第1ピークのFWHM(L1)と第2ピークのFWHM(L2)との比(L1/L2)を比較分析した結果、実施例1~実施例3は6~12の範囲と確認された。
【0139】
(実験例3)ラマン分析
粉砕後の負極材のμ-Raman(装置名:XperRam C、Nanobase、韓国)分析として、シリコンのラマン信号に基づいて下記のような条件で行った。負極材粉末のラマン信号を
図3に示した。
図3に示したように、実施例1で製造された負極材のシリコンのラマン信号(ピーク中心)は523.6cm
-1であって、残留圧縮応力を有することが分かり、比較例で製造された負極材は、残留引張応力を有することが分かる。また、実施例1で製造されたシリコンのラマン信号のFWHMを測定した結果、FWHMが12cm
-1であって、単結晶シリコンのラマン信号(図面のC-Si(ref))のFWHMよりも大きいことを確認した。
分析条件:励起レーザ波長532nm、レーザパワー0.5mW、分光計の解像度(resolution)1cm
-1、粉末状負極材1g、検出器露出時間15s
【0140】
ラマン測定結果および下記式を用いてシリコンに残留する応力を計算し、粒子状負極材でのシリコンの残留応力とバルク状負極材でのシリコンの残留応力を表1に整理した。表1に比較例の結果とともに整理したように、実施例1で製造された負極材の場合、シリコンがバルク状では0.74GPaの残留圧縮応力を、粒子状では0.29GPaの残留圧縮応力を有することが分かり、比較例1の場合は非晶質相のSiが、比較例2の場合はSiが、圧縮応力ではなく引張応力を有することが分かる。
【0141】
【数4】
ここで、σは、残留応力であり、Δωは、単結晶シリコンのラマン信号(
図3のSi(ref)、520.4cm
-1)に対して測定されたサンプルのラマン信号の差(=測定されたシリコンのラマン信号波数-単結晶シリコンのラマン信号波数)であり、この際、Δωが、正の値である場合には圧縮応力を意味し、負の値である場合には引張応力を意味する。
【0142】
粉砕前のマグネシウムドーピングシリコン酸化物(比較例1)や熱処理により得られたバルク型二次電池用負極材(実施例1)のμ-Raman分析(装置名:XperRam C、Nanobase、韓国)として、シリコンのラマン信号に基づく二次元マッピング分析を下記のような条件で行い、マッピング結果を
図4に示した。実施例1で製造された負極材の場合、全てのピクセルにおいてシリコンのラマンピークが検出され、各ピクセル別の偏移=WN
i(Si)-WN(ref)を測定した結果、偏移の範囲が2.86(最小値)~4.58(最大値)であることを確認した。
【0143】
マッピング条件:励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、検出器露出時間(単位分析領域当たりの露出時間)1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーティング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=1cm-1、マッピングサイズ=14μm×14μm
【0144】
追加的に、20mm×20mm大きさの粉砕前の負極材において、ランダムに選択された20個の互いに異なる位置において、上記のような条件でシリコンのラマン信号に基づく偏移分析を行った結果、互いに異なる位置に測定される偏移の範囲が2.42(最小値)~4.86(最大値)であることを確認した。また、ランダムな20個の互いに異なる位置におけるシリコンナノ粒子の応力分析時、シリコンナノ粒子は、88~99%の範囲内で圧縮応力を有することを確認した。
【0145】
(実験例4)機械的物性
粒子強度の測定は、島津製作所社製の微小圧縮試験機MCT-Wを用いて圧縮強度を測定した。直径10μmの任意の粒子10個に対して粒子強度を測定し、その測定結果の平均値を表1に整理した。
【0146】
前記微小圧縮試験機は、粒子の垂直方向に力を加える単軸圧縮試験装置であり、100mNの荷重を3.8mN/secで一定に加圧して評価した。圧縮試験は、常温で、圧力以外のその他の条件は変化させずに行った。この際、粒子が破損する圧力が粒子強度と規定され、圧縮試験時に自動で測定する。破損する時点は、測定時に強度の傾き変化とともに前記微小圧縮試験機に内在している顕微鏡を介して肉眼でも確認可能である。
【0147】
追加的に、粉砕前のマグネシウムドーピングシリコン酸化物(比較例1)や熱処理により得られたバルク型二次電池用負極材(実施例1)の断面を対象として、ナノインデンテーション試験装置(Anton Paar、オーストリア)を活用して試験を行った。
【0148】
ナノインデンテーション試験(Indenter)の場合、ISO 14577-1 Eの測定基準に従い、測定条件は、バーコビッチ圧子(Berkovich indenter)を用いて、ポアソン比を0.3に仮定し、最大荷重50mN、荷重印加速度100mN/minで行った。この際、圧子による圧痕を基準として、圧痕間の離隔距離が少なくとも10μm以上であり、この際、5×5~25×25のマトリックス状で行い、これにより算出された強度および弾性係数を
図5に示した。
【0149】
図5に示したように、実施例1のナノインデンテーション試験による強度の平均値は4.41GPa、弾性係数の平均値は43.1GPaと確認されたのに対し、比較例1のナノインデンテーション試験による強度の平均値および弾性係数の平均値は、それぞれ2.76GPaおよび30.6GPaと確認され、ナノインデンテーション試験結果、比較例1と比べて、実施例1の強度は約1.6倍、弾性係数は1.4倍レベルであって、実施例1の機械的物性が著しく向上したことが分かる。
【0150】
(実験例5)電池の製造および電池性能の評価
最終的な負極材粉末を活物質として用いて、活物質:導電材(carbon black):CMC(Carboxymethyl cellulose):SBR(Styrene Butadiene Rubber)を重量比8:1:0.5:0.5で混合し、17μm厚さの銅箔に塗布した後、90℃で40分間乾燥した。乾燥後、直径14mmに打ち抜き、直径16mmの金属リチウムを対極として用い、直径18mmのセパレータを介在して電解液を充填し、CR2032コイン型ハーフセルを作製した。電解液は、EC(Ethylene carbonate)/DEC(Diethyl carbonate)を体積比1:1で混合した溶媒に1MのLiPF6を溶解させ、3wt%のFEC(fluoroethylene carbonate)を添加剤として用いた。化成工程は、製造された電池を0.1Cの定電流で0.005Vまで充電(lithiation)し、0.01Cに達するまで0.005Vの定電圧充電後、0.1Cの定電流で1.5Vまで放電(de-lithiation)した後(第1化成ステップ)、再び0.1Cの定電流で0.005Vまで充電(lithiation)し、0.01Cに達するまで0.005Vの定電圧充電後、0.1Cの定電流で1.0Vまで放電(de-lithiation)(第2化成ステップ)して行った。
【0151】
充放電サイクル条件:0.5Cの定電流で0.005Vまで充電(lithiation)し、0.05Cに達するまで0.005Vの定電圧充電後、0.5Cの定電流で1.0Vまで放電(de-lithiation)、
充放電サイクル回数:50回
【0152】
第1化成スタッフにおける放電容量を表1に容量で整理して示し、第1化成ステップにおける充放電に基づく初期効率、および化成工程以後のC50/C1×100による容量維持率も表1に整理して示し、第1化成ステップ、第2化成ステップ、および充放電サイクルによる充放電容量および容量維持率をそれぞれ
図6aおよび
図6bに示した。
【0153】
【0154】
図7は、最初の充放電サイクルでのdQ/dVグラフを示した図であり、
図7から分かるように、Li
3.75Si反応に該当するリチウム挿入ピークが存在することが分かる。これにより、実施例1で製造された負極材のリチウム化時、シリコン1モル当たりに3.75モルのリチウムの合金化比率でリチウム化(lithiation)が行われることが分かる。
【0155】
図8は、実施例1の高分解能の透過電子顕微鏡(HR-TEM)イメージを示した図である。
図8から結晶質シリコンナノ粒子の平均直径が約7.1nmであることを確認し、SADP(Selected Area Diffraction Pattern)分析結果、マトリックスが結晶質のマグネシウムシリケートを含有し、シリコンナノ粒子が結晶質のマグネシウムシリケートと整合界面をなすことを確認した。
【0156】
図面には示されていないが、粉砕およびカーボンコーティングされた負極材粉末の粒子の大きさ分布を測定した結果、負極材粉末粒子は、平均(D50)7.9μmの粒子の大きさを有することを確認した。
【0157】
図9は、リチウム化前の負極の断面およびその厚さを観察した走査型電子顕微鏡写真、および3回目の充放電サイクル(寿命評価ステップの最初の充放電サイクル)において0.005Vリチウム化後の負極の断面およびその厚さを観察した走査型電子顕微鏡写真である。リチウム化前後の厚さ変化により、体積膨脹率が約15.5%にすぎないことを確認した。
【0158】
以上、特定の事項と限定された実施例および図面により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0159】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。