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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】美容マスク
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240614BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20240614BHJP
   A61N 7/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
A61N7/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022195069
(22)【出願日】2022-12-06
(62)【分割の表示】P 2019552664の分割
【原出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2023016945
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2017217902
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岩男
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0033569(KR,A)
【文献】国際公開第2017/175936(WO,A1)
【文献】特許第4819434(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3082187(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61N 1/04
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頬骨筋及び咬筋の両方に対応する部位に電気の刺激を与える左右一対の刺激体であって、
それぞれの該刺激体は、
電流を制御する制御部と、電気を供給する給電部と、電極とを一体的に備えた電流発生器で構成され、
該電流発生器の該給電部から供給する電流は頬骨筋と咬筋に対してそれぞれ異なり、
該電気刺激が頬骨筋に対して与える電流は2Hzないし20Hzの周波数で印加され、
該電気刺激が咬筋に対して与える電流は20Hzないし100Hzの周波数で印加される
ことを特徴とする刺激体。
【請求項2】
前記給電部に充電池を有すると共に、前記刺激体に充電するための給電端子を備える一方、使用時にはコードレスで使用可能である、
請求項1に記載の刺激体。
【請求項3】
前記電気刺激が、前記周波数域で、時間により変化させる
請求項1又は2に記載の刺激体。
【請求項4】
前記刺激体が、
頬骨筋及び咬筋に刺激を与える頬骨筋刺激体及び咬筋刺激体を同時に備える構成であって、
前記制御部が該頬骨筋刺激体と該咬筋刺激体のそれぞれに異なる電流を給電する
請求項1又は2に記載の刺激体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の顔面に装着して刺激を与える美容マスクに関し、特に正しい位置に効果的な刺激を与えるための技術に係る。
【背景技術】
【0002】
使用者の頭部の様々な筋肉に電気刺激を与えるためのマスクが従来から知られている。
例えば、特許文献1には、顔面を覆うマスク本体部を備え、マスク本体部はシリコン製であり、目・鼻・口の位置には開口部を有し、マスク本体の内面には電極部を有する美容用のマスクが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、顔面を覆う伸縮性基材を備え、伸縮性基材はシリコン製であり、目・鼻・口の位置には孔を有し、電気刺激を印加するポイントに刺激電極部を有する技術が開示され、顔のリフトアップに有効であることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、顔面を覆う施術部材を備える美容装置が開示されている。施術部材は、シリコン製のカバー部や、頬の辺りに電極が形成された導電体、目・鼻・口の位置に開口部を有することが記載されている。
【0005】
特許文献4には、顔面を覆うマスク本体を備え、目・鼻・口の位置には開口を有し、マスク本体の内面に電極を有するトリートメント用マスクが開示されている。そして、マスク本体がシリコンゴム材で構成されていること、マスク本体が自重で変形することで皮膚上に均一に密着する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】再表WO2016-009463号公報
【文献】特開2017-108758号公報
【文献】特開2013-081606号公報
【文献】実登3082187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術によると、目・鼻・口の位置に開口部を有して、おおむね頬の辺りに電気刺激を与える電極を備えることは知られているが、個別の筋肉の位置や特性に対応させることは着想されていない。特に頬部の電極はいずれも大きすぎ、不適切な刺激を与えてしまう恐れもあった。
【0008】
さらに、装着時にマスクの弾性を利用して適切な引き締め効果を有するとは言えず、装着性と引き締め効果を合わせもつマスクが提供されていない。
また、個別の筋肉に最適な刺激の態様も十分な研究がなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は次のような美容マスクを提供する。
すなわち、第1の実施態様によれば、使用者の顔面に装着し、少なくとも頬を覆うことのできる美容マスクであって、使用者の頬骨筋又は咬筋の少なくともいずれかに対応する部位に電気又は超音波の刺激を与える一対の刺激体を備えたことを特徴とする。
【0010】
第2の実施態様によれば、上記の美容マスクにおいて、頬の位置に刺激体を装着するための刺激体装着部を備え、刺激体の少なくとも一部を着脱自在に構成することもできる。
【0011】
第3の実施態様によれば、上記の美容マスクにおいて、少なくとも鼻の凸形状に一致する鼻当て部を備えることもできる。
【0012】
第4の実施態様によれば、上記の美容マスクにおいて、顔面の左右側方に引張力を与えながら装着する左右装着体を備えてもよい。
【0013】
第5の実施態様によれば、上記の美容マスクにおいて、下顎骨下面から顔面の両側を通り頭頂方向に引張力を与えながら装着する上下装着体を備えてもよい。
【0014】
第6の実施態様によれば、上記の刺激体が、電気刺激を与える構成であって、その電気刺激が2Hzないし100Hzの周波数で印加すると好適である。
【0015】
第7の実施態様によれば、頬骨筋に印加する上記の電気刺激が2Hzないし20Hzの周波数で印加すると好適である。
【0016】
第8の実施態様によれば、咬筋に印加する上記の電気刺激が20Hzないし100Hzの周波数で印加すると好適である。
【0017】
第9の実施態様によれば、電気刺激を与える上記の刺激体が、電流を発生させる着脱自在な電流発生器と、マスク上に備えられた電極とから構成され、電流発生器には、電流を制御する制御部と、電気を供給する給電部と、美容マスクの電極に通電するマスク側電極とを備えると共に、美容マスクにおいて、肌面と当接する肌面側電極と、電流機器と通電する機器側電極とを備える美容マスクを提供することができる。
【0018】
第10の実施態様によれば、電気刺激を与える上記の刺激体が、頬骨筋及び咬筋に刺激を与える頬骨筋刺激体及び咬筋刺激体を同時に備える構成であって、上記の制御部が頬骨筋刺激体と咬筋刺激体のそれぞれに異なる電流を給電するようにしてもよい。
【0019】
第11の実施態様によれば、上記の美容マスクが樹脂材料によって一体成形される構成であって、部位に応じて材料の硬度を変化させる請求項1ないし9のいずれかに記載の美容マスク。
【0020】
第12の実施態様によれば、上記の美容マスクの顔面に対応する部位における硬度が、上記の左右装着体の硬度よりも相対的に高い材料で形成される構成でもよい。
【0021】
第13の実施態様によれば、上記の美容マスクの顔面に対応する部位における硬度が、上記の上下装着体の硬度よりも相対的に高い材料で形成される構成でもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記構成により次のような効果を奏する。
すなわち、着脱式にもすることのできる刺激体を適切な位置に美容マスクを装着することができるようにすると共に、使用者の頬骨筋に対応する部位に電気又は超音波の刺激を与える一対の頬骨筋刺激体によって美容効果の高い頬骨筋を対象としたトリートメントを行うことができる。特に頬骨筋に電気刺激を与えることで、頬のたるみやホウレイ線を持ち上げる筋肉を鍛える効果を有する。
【0023】
また、使用者の咬筋に対応する部位に電気又は超音波の刺激を与える一対の咬筋刺激体によって美容効果の高い咬筋を対象としたトリートメントを行うことができる。特に咬筋に電気刺激を与えて咬筋をもみほぐし、やわらげることにより、整ったすっきりとしたフェイスラインとなる効果を有する。
【0024】
本発明の左右装着体、上下装着体によれば、顎のラインや口元、フェイスラインを物理的に引き上げ、シャープなフェイスラインを形成することができる。特に、このようなフェイスラインの状態において、刺激を与えることで最適なトリートメントを行うことができる。
【0025】
美容マスクを一体成形し、部位に応じて材料の硬度を変化させることによって、顔面に装着しやすく、適度な引張力を与えてフェイスラインの改善に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るマスク本体の正面図。
図2】本発明に係るマスク本体の背面図。
図3】本発明に係る電流発生器の正面図。
図4】本発明に係る電流発生器の背面図。
図5】本発明に係る電流発生器の左側面図。
図6】本発明に係る美容マスクの正面図。
図7】本発明に係る美容マスクを使用状態を示す説明図。
図8】頬骨筋及び咬筋の位置と電極の関係を示す説明図。
図9】頬骨筋及び咬筋に与える電気刺激の例を示す説明図。
図10】本発明に係るマスク本体の形成方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
本発明の美容マスクは、使用者の顔面に装着する美容マスクであり、少なくとも頬を覆うように構成されている。位置合わせに便利なように、鼻の凸形状に一致する鼻当て部を備えることが好ましく、その他に口や目、耳の位置に孔部、開口部などを設けることもできる。例えばシリコンや天然ゴムなどの弾性材料から形成することが好ましい。特に、シリコンは医療用として多用されているように、皮膚に当てて使用することや、引き締め強さの観点からも最適である。
【0028】
鼻当て部、口や目、耳に対応する孔部、開口部等によって顔面で適切な位置を合わせた上で、使用者の頬骨筋に対応する部位に電気又は超音波の刺激を与える一対の頬骨筋刺激体、咬筋に対応する部位に電気又は超音波の刺激を与える一対の咬筋刺激体のどちらか、又は両方を備えることを特徴とする。
【0029】
頬骨筋や咬筋に刺激を与える一対の刺激体と、美容マスク上には頬の位置に刺激体を装着するための刺激体装着部を備え、刺激体の少なくとも一部は美容マスクから着脱自在に構成されている。
【0030】
以下の実施例では、刺激体には頬骨筋及び咬筋に電気刺激を与える電極を共に備えた刺激体を示しているが、態様は限定されない。刺激体の一部が着脱可能にした例を示しているが、必ずしも着脱式でなくてもよい。
また、頬骨筋刺激体や咬筋刺激体として電気刺激を与える構成で説明しているが、公知のように美容方法として超音波刺激を与えることもでき、本発明の刺激体として超音波を用いる構成でもよい。電気刺激と超音波刺激の療法を行う構成でもよい。
【0031】
図1図2はそれぞれ本発明に係るマスク本体(1)の正面図と背面図である。マスク本体(1)はシリコンで一体形成された弾性体であり、使用者の目から顎にかけての下半分を覆うマスク部(10)と、マスク部(10)の左右方向に延設される左右装着体である左右ベルト部(11)、マスク部(10)の下端と連結され開いた状態では左右方向に延設される上下装着体である上下ベルト部(12)とを形成している。
【0032】
マスク部(10)には、目を避けるように凹形状とした上縁部(13)、鼻の形状に合わせて立体的に突出させて形成された鼻当て部(14)、口が露出するように開口した口開口部(15)が形成される。
使用者は装着時に鼻当て部(14)及び口開口部(15)によって位置を合わせることで、所定の位置にマスク本体(1)が自然に装着される。
鼻当て部(14)は、鼻の鼻孔部分が露出されるように切り込みを入れて装着時には鼻の頂部が押し出されるように変形する構造でもよい。
【0033】
マスク本体(1)には電流発生器を装着するための刺激体装着部(16)を頬の位置に開口している。刺激体装着部(16)は必ずしも本実施例のように開口することに限定されず、マスク本体(1)の肌面側に係合するような係合部を設けたり、電極だけが露出するように複数の孔部を設けたり、溝部を形成したり、いかなる形状でもよい。
【0034】
マスク本体(1)を合わせたら、左右ベルト(11)を側頭部両側に回して後ろ側で面ファスナー(11a)(11b)を係着させることによりマスク部(10)を左右方向に緊張させる。これによって、顔面の特に頬部分に適度な圧迫を加えて引き締め効果を奏する。
【0035】
さらに、上下ベルト(12)はマスク部(10)から直角に下顎骨下面に屈曲させた上で、側頭部両側を通り頭頂方向に引張力を与えながら装着する。これも同様に面ファスナー(12a)(12b)を係着させる。
上下ベルト(12)が緊張することで上下ベルト(12)とその下のマスク部(10)が合わせて頬を上方向にリフトアップさせる効果を奏する。
左右ベルト(11)や上下ベルト(12)の係着には面ファスナーの他、フックやワンタッチバックル、磁石などを用いてもよい。
【0036】
本発明において、左右ベルト(11)、上下ベルト(12)は必ずしも備えていなくてもよく、マスク部(10)を別の方法、例えば別に用意するベルト等で顔面に固定してもよい。また、左右装着体の一例として図8に開示されるように耳に対応する開口を設けてこれを耳に引っ掛ける形状で固定してもよい。上下ベルトを設けず、左右ベルト(12)だけを備えてもよい。
【0037】
図3図4及び図5は、本発明に係る電流発生器(2)の正面図と背面図、左側面図である。電流発生器(2)は装着時に外側となる表面に電源ボタン(20)、調整ボタン(21)(22)を備えた略三角形状であり、一部に切り欠き部(23)を備えている。
一方、裏面には3つのマスク側電極(240(241)(242)を備えている。
【0038】
電流発生器(2)の形状は略三角形に限らず、円形、楕円形、矩形、六角形など何れの形でもよい。特に、装着方向が分かりやすいように対称でない形状とすることも好ましい。
【0039】
上述したように本実施例では刺激体として電気刺激を与える構成を示しており、電流発生器(2)の内部には、電流を制御する図示しない制御部を備え、給電部として切り欠き部(23)に設けた給電端子(25)から図示しない充電池に充電して給電することが可能である。本構成により、使用時に電源ケーブルや電池を必要とせず、良好かつ低コストな使用を実現している。もちろん外部から給電したり電池を使用する構成でも良い。
【0040】
図6は、本発明に係る美容マスクの正面図であり、マスク本体(1)と電流発生器(2)とを組み合わせた状態を示している。マスク本体(1)の刺激体装着部(16)には切り欠き部(23)に対応した凹凸が形成されており、電流発生器(2)の向きを規制する。
適切に装着された電流発生器(2)のマスク側電極(240)(241)(242)は、刺激体装着部(16)の内周に設けられた機器側電極(161a)(161b)(161c)と接して通電する。
【0041】
そして、機器側電極(160a)(161a)(162a)から導電体で一体形成された肌面側電極(160b)(161b)(162b)が肌面側、すなわちマスク本体(1)の裏面に露出する。この時、図2に示されるように、各電極(160)(161)(162)は三角の各頂点から放射状の矢印形となっている。
【0042】
図7は、本発明に係る美容マスクを使用状態を示す説明図であり、すでに説明したように左右ベルト(11)が後頭部で、上下ベルト(12)が頭頂部でそれぞれ係着されており、そのとき電流発生器(2)が頬部分にちょうど当たっていることが分かる。
【0043】
以上のように適切な位置合わせを行った上で、図8に示すように各電極(160)(161)(162)から頬骨筋と咬筋とにそれぞれ電流を印加する。
頬骨筋は、頬の弛みやホウレイ線を持ち上げる機能を有しており、大頬骨筋と小頬骨筋があるが、本実施例ではこの両方の部分に電流を印加して鍛える作用を及ぼす。加齢や筋力の低下によって口角が落ちたり、ホウレイ線や二重顎、フェイスラインのもたつきが生じているときに頬骨筋を鍛えることで改善することができる。
【0044】
咬筋は、噛む力をつかさどる筋肉であり、咀嚼や歯の食いしばりなどで疲労が溜まりやすい。また歯ぎしりなどによって咬筋を発達させてしまうと所謂エラが張った状態になり、フェイスラインを崩してしまう問題がある。同じように、電気刺激などで咬筋を鍛えてしまうと同様にフェイスラインが崩れ、美容の面で逆効果となる問題がある。
【0045】
(印加方法1)
本発明では、頬骨筋や咬筋に対して最適な刺激を与えることができるように、電極(160)(161)(162)を配置し、マスクによる適切な位置合わせの後に、電極間に制御された電流を印加する。
具体的には、頬骨筋の部位に相当する電極間(160)(161)には筋肉を鍛えるのに好適な周波数の電気刺激(30)を与える。図9に示すように本実施例では15Hzの低周波電流を印加する。
【0046】
また、咬筋の部位に相当する電極間(160)(162)には筋肉をほぐすのに好適な周波数の電気刺激(31)を与える。図9に示すように本実施例では33Hzの低周波電流を印加する。
そして、電流発生器(2)の制御部が、咬筋に対する電流と頬骨筋に対する電流を交互に印加し、10分間の施術とする制御を行う。
【0047】
発明者らは、頬骨筋や咬筋に対して刺激を与える部位を研究により見出し、本発明の範囲とする。すなわち、図8において頬骨筋の部位に対応する電極間(160)(161)の中心位置は顔面の中央から側面方向はL1=76mm±10mm、特に±5mmとし、マスク部(10)の下端、すなわち顎に対応する位置から上方向にはL2=90mm±10mm、特に±5mmとすることが好ましい。
【0048】
図8において頬骨筋の部位に対応する電極間(160)(162)の中心位置は顔面の中央から側面方向はL3=109mm±10mm、特に±5mmとし、マスク部(10)の下端、すなわち顎に対応する位置から上方向にはL4=63mm±10mm、特に±5mmとすることが好ましい。
【0049】
電極間(160)(161)や電極間(160)(162)の間隔は、60mm±15mmが好ましく、この間隔の間の頬骨筋又は咬筋に刺激が与えられる。
刺激体装着部(16)を備える構成においても、上記に対応する部位を開口させて上記範囲に刺激体を配置することができる。
【0050】
発明者らの実験によれば、このように制御された低周波電流を10分間頬骨筋部位に印加したことによりホウレイ線の大きさの相対値が、約12%減少することが示されている。検証は3人の被験者に対して行い、全員について改善傾向が見られた。測定にはアンテラ3D装置を用いた。
【0051】
(印加方法2)
電流の印加方法について、発明者らはさらに詳しい実験を行い、頬骨筋及び咬筋に対して最適な周波数を見出した。この実験結果を次に示す。
3人の被験者に対し、室温25度、湿度38%の環境で10分間、異なる周波数の周波数を印加し、しわの大きさとしわの深さの改善の有無を測定した。
まず頬骨筋についての測定結果が表1の通りである。
【0052】
【表1】
【0053】
以上の実験結果によると、頬骨筋に対して印加する周波数は2Hzないし20Hzの範囲、特に5Hzないし20Hzの範囲が効果的であることがわかった。
さらに、この周波数域で、時間により変化させることも好適である。例えば、10Hzで10秒間通電した後、2Hzで10秒間通電などを繰り返す制御を行うことで、負荷に慣れさせず、効果的に電気刺激を与えることができる。
【0054】
次に、咬筋についての測定結果が表2の通りである。
【表2】
【0055】
以上の実験結果によると、咬筋に対して印加する周波数は20Hzないし100Hzの範囲が効果的であることがわかった。
さらに、この周波数域で、時間により変化させることも好適である。例えば、20Hzで10秒間通電した後、100Hzで10秒間通電などを繰り返す制御を行うことで、負荷に慣れさせず、効果的に電気刺激を与えることができる。
【0056】
本発明に係る美容マスク(1)は上述の通りシリコンで形成されており、特にマスク部(10)、左右バンド(11)、上下バンド(12)を一体形成している。従来からシリコンを用いてマスクを形成することは知られていたが、本発明では特に各部位を異なる硬度の材料を用いることを提案する。
【0057】
図10には美容マスク(1)の形成方法を説明する図を示す。図10(A)において、美容マスク(1)を形成するための金型上に硬度の異なるシリコン材料(40)~(44)を配置し、上部金型と下部金型の直圧成形によって各材料を一体化しながら形成する。
このとき、シリコン材料(40)は左右バンド部(11)の両端側に置かれ、ゴム硬度20度の伸縮しやすい材料で形成する。また、上下バンド部(12)の両端側に用いられるシリコン材料(43)も同様である。
【0058】
顔面の側面部に対応する部位に用いるシリコン材料(41)と、顎の下面部に対応する部位に用いるシリコン材料(44)は硬度40度のやや硬い材料が使用される。当該部位は適度な弾力性により優しい感触を与える一方、伸縮の程度が大きいと肌との摩擦を生じやすくなるため、バンド部分に用いるシリコン材料(40)(43)よりも相対的に伸縮しにくい材料を採用している。
【0059】
さらに、マスク部(10)には、最も硬度の高い60度のシリコン材料(42)を用いる。当該部位は顔面に適度な引張力を与えると共に、刺激体装着部(16)が変形しにくく確実に電流発生器(2)を保持するために十分な強度を採用したものである。
【0060】
このように異なる硬度のシリコン材料(40)~(44)を用いて成形した結果、図10(B)のように部位によって異なる硬度(H1)~(H5)の美容マスク(1)が完成する。上記の材料に従えば硬度H1及びH4は20度、硬度H2及びH5は40度、硬度H4は60度である。
【0061】
上記の強度は任意に変更することができる。例えば、左右バンド部(11)と上下バンド部(12)を相対的に低い硬度、マスク部(10)を相対的に高い硬度とした構成でもよい。
このように、材料の硬度を変えることで、美容マスクの使用性の向上に寄与すると共に、製造が容易でコストの低減、及び一体感のある意匠による美観を実現することができる。
【0062】
本発明に係る美容マスクの具体的な使用方法を説明する。
使用者は洗顔後、化粧品やローション等で肌を整え、十分に保湿する。そして美容マスク(1)を顔に当て、頬がリフトアップするように左右バンド(11)及び上下バンド(12)を巻く。美容マスク(1)には予め充電した電流発生器(2)を装着しておき、電流発生器(2)の電流をオンにする。
調整ボタン(21)(22)を操作して、好みの強度、例えば6段階から調整する。上記10分間のトリートメントが行われた後、自動的に停止する。
【0063】
本発明によれば、肌に優しく、伸縮性の強いシリコン製の美容マスクにより顎のライン、口元、フェイスラインを物理的に引き上げ、シャープなフェイスラインを作ることができる。理想的なフェイスラインの状態で、本体より電流を出力し、自動的に表情筋を鍛えることができる。表情筋のトレーニングは難しく、従来、理想的な結果を得ることが困難であったが、本発明によればホウレイ線まわり、目元、顎周りに予め電極を配置しているため、理想的な筋肉だけを効率良く収縮させることができる。さらに電流の周波数を筋肉毎に制御しているので、心地良く、効果的に施術することができる。
【0064】
電流発生器は簡便に着脱することができるので、充電やマスク本体の水洗いなども容易に行える。また、煩わしいコードがないため、美容マスクを付けたまま室内を移動したり、家事を行うこともできる。
【0065】
本実施例の説明は以上の通りであるが、請求項記載の範囲で任意に変更可能である。
例えば、刺激体は分離可能ではなく、マスクと一体として構成されていてもよい。刺激体は頬骨筋刺激体又は咬筋刺激体のどちらか一方だけ備えられていてもよいし、更に他の筋肉、例えば口輪筋、眼輪筋を鍛える電極を備えていてもよい。
【0066】
印加する電流は低周波、中周波、高周波を問わないが、上述した通り、筋肉の性質に応じて制御部によりそれぞれ最適な電流とすることが必要である。例えば、低周波を印加すると不快に感じる前頭筋、皺眉筋、鼻筋などには電気刺激を与えない、あるいは不快に感じない周波数の電流を印加するように制御する。また、銀歯にしているときに電気刺激を与えると痛む笑筋も回避する。
【0067】
上記した従来の文献では、頬部分に広く電流を印加する構成が開示されているが、説明したように筋肉に応じて刺激の有無や、刺激の方法を変化させることが好ましい。本発明によれば、これが実現され、格段の美容効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 マスク本体
10 マスク部
11 左右バンド
12 上下バンド
13 上縁部
14 鼻当て部
15 口開口部
16 刺激体装着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10