(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】自転車用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
B62M 1/10 20100101AFI20240614BHJP
B62M 3/00 20060101ALI20240614BHJP
B62M 1/36 20130101ALI20240614BHJP
【FI】
B62M1/10 A
B62M3/00 E
B62M1/36
(21)【出願番号】P 2022196038
(22)【出願日】2022-12-08
【審査請求日】2023-06-16
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318010890
【氏名又は名称】籠田 憲雄
(73)【特許権者】
【識別番号】502369964
【氏名又は名称】百瀬 信吾
(73)【特許権者】
【識別番号】522478259
【氏名又は名称】赤穂 礼夫
(73)【特許権者】
【識別番号】594142458
【氏名又は名称】テクノドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】籠田 憲雄
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182416(JP,A)
【文献】特開2017-039336(JP,A)
【文献】特開平04-189694(JP,A)
【文献】特開2019-142261(JP,A)
【文献】特表平06-500287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 1/10
B62M 3/00
B62M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のフレームに回転可能に取り付けられたスプロケット歯車と、前記スプロケット歯車と同一の回転軸で回転可能であって、前記自転車の進行方向右側に配設された右側ペダルアームおよび前記自転車の進行方向左側に配設された左側ペダルアームと、前記自転車の車輪回転軸と共に前記フレームに回転可能に取り付けられた従動スプロケット歯車と、前記スプロケット歯車と前記従動スプロケット歯車との間で循環するよう掛け渡された循環体と、を具備する自転車用動力伝達装置において、
前記スプロケット歯車には、前記スプロケット歯車と共周りする右側回転体が取り付けられていると共に、前記回転軸には、前記スプロケット歯車と共周りする左側回転体が取り付けられていて、
前記右側回転体には、前記回転軸の径方向に延設された前記右側ペダルアームが前記右側回転体と独立して回転可能に取り付けられていると共に、前記右側ペダルアームの延設方向に沿って配設された右側付勢部材の第1端部が取り付けられていて、
前記右側ペダルアームには、前記右側付勢部材を固定する右側付勢部材固定部が取り付けられていて、
前記左側回転体には、前記回転軸の径方向に延設された前記左側ペダルアームが前記左側回転体と独立して回転可能に取り付けられていると共に、前記左側ペダルアームの延設方向に沿って配設された左側付勢部材の第1端部が取り付けられていて、
前記左側ペダルアームには、前記左側付勢部材を固定する左側付勢部材固定部が取り付けられていて、
前記右側付勢部材および前記左側付勢部材は棒部材であって、
長さ方向両端部分における径寸法が、その他の部分における径寸法よりも太く形成されていて、
前記右側ペダルアームから踏込力が入力されると、前記右側ペダルアームに取り付けられている前記右側付勢部材に曲げ変形による付勢力が蓄積され、前記右側ペダルアームが下死点領域に到達した際に、付勢力により前記スプロケット歯車の回転が促進され、
前記左側ペダルアームから踏込力が入力されると、前記左側ペダルアームに取り付けられている前記左側付勢部材に曲げ変形による付勢力が蓄積され、前記左側ペダルアームが下死点領域に到達した際に、付勢力により前記スプロケット歯車の回転が促進されることを特徴とする自転車用動力伝達装置。
【請求項2】
自転車のフレームに回転可能に取り付けられたスプロケット歯車と、前記スプロケット歯車と同一の回転軸で回転可能であって、前記自転車の進行方向右側に配設された右側ペダルアームおよび前記自転車の進行方向左側に配設された左側ペダルアームと、前記自転車の車輪回転軸と共に前記フレームに回転可能に取り付けられた従動スプロケット歯車と、前記スプロケット歯車と前記従動スプロケット歯車との間で循環するよう掛け渡された循環体と、を具備する自転車用動力伝達装置において、
前記スプロケット歯車には、前記スプロケット歯車と共周りする右側回転体が取り付けられていると共に、前記回転軸には、前記スプロケット歯車と共周りする左側回転体が取り付けられていて、
前記右側回転体には、前記回転軸の径方向に延設された前記右側ペダルアームが前記右側回転体と独立して回転可能に取り付けられていると共に、前記右側ペダルアームの延設方向に沿って配設された右側付勢部材の第1端部が取り付けられていて、
前記右側ペダルアームには、前記右側付勢部材を固定する右側付勢部材固定部が取り付けられていて、
前記左側回転体には、前記回転軸の径方向に延設された前記左側ペダルアームが前記左側回転体と独立して回転可能に取り付けられていると共に、前記左側ペダルアームの延設方向に沿って配設された左側付勢部材の第1端部が取り付けられていて、
前記左側ペダルアームには、前記左側付勢部材を固定する左側付勢部材固定部が取り付けられていて、
前記右側ペダルアームから踏込力が入力されると、前記右側ペダルアームに取り付けられている前記右側付勢部材に曲げ変形による付勢力が蓄積され、前記右側ペダルアームが下死点領域に到達した際に、付勢力により前記スプロケット歯車の回転が促進され、
前記左側ペダルアームから踏込力が入力されると、前記左側ペダルアームに取り付けられている前記左側付勢部材に曲げ変形による付勢力が蓄積され、前記左側ペダルアームが下死点領域に到達した際に、付勢力により前記スプロケット歯車の回転が促進され、
前記フレームと前記右側ペダルアームおよび前記左側ペダルアームの回転軸部分にはグリス充填空間形成体が取り付けられていて、
前記グリス充填空間形成体には、グリス充填空間の内部と外部空間とを連通するグリス充填用ニップルとグリス充填確認窓が設けられていることを特徴とする自転車用動力伝達装置。
【請求項3】
前記右側付勢部材は、前記右側回転体および前記右側ペダルアームに着脱可能であると共に、前記左側付勢部材は、前記左側回転体および前記左側ペダルアームに着脱可能であることを特徴とする請求項1
または2記載の自転車用動力伝達装置。
【請求項4】
前記右側付勢部材および前記左側付勢部材は棒部材であって、
長さ方向両端部分における径寸法が、その他の部分における径寸法よりも太いことを特徴とする請求項
2記載の自転車用動力伝達装置。
【請求項5】
前記右側回転体には、前記右側付勢部材の曲げ変形量を規制するための右側ストッパが配設されていると共に、前記左側回転体には、前記左側付勢部材の曲げ変形量を規制するための左側ストッパが配設されていることを特徴とする請求項1または2記載の自転車用動力伝達装置。
【請求項6】
前記右側回転体には、周方向の複数箇所に前記右側ストッパを取り付けるための右側ストッパ取付部が配設されていると共に、前記左側回転体には、周方向の複数箇所に前記左側ストッパを取り付けるための左側ストッパ取付部が配設されていることを特徴とする請求項5記載の自転車用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自転車用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機を搭載しない通常の自転車においては、推進力を得るためにペダルを漕ぐ必要がある。ペダルを踏み込む力を変えずに、ペダルを回転させることによって得られる推進力を大きくするための構成として、たとえば特許文献1(特開2003-312581号公報)に示すようなものが提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されている自転車は、巡航運転モードのときはペダルの回転半径が小さく、負荷がかかる運転モードに入ると、ペダルの踏み込み力に応じてペダルの半径が自動的に伸長し、大きな推進力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-312581号公報(請求項1、
図12等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている自転車によれば、ペダルを漕ぐ際に通常よりも大きい負荷がかかったときにペダルが取り付けられたペダルアームの長さが伸びることで、踏み込み力を変えずに大きな推進力を得ることができる点において好都合である。このように走行中の自転車においてペダルアームが伸びた状態でさらに推進力を大きくすべく、力を入れてペダルを漕ごうとすると、そのときの姿勢によっては自転車が傾き、ペダルやペダルアームが地面に接触してしまうおそれがあり、危険が伴うといった課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的とするところは、ペダルアームの長さを変えずペダルアームの回転を補助することにより推進力を増大させることを可能にした自転車用動力伝達装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、自転車のフレームに回転可能に取り付けられたスプロケット歯車と、前記スプロケット歯車と同一の回転軸で回転可能であって、前記自転車の進行方向右側に配設された右側ペダルアームおよび前記自転車の進行方向左側に配設された左側ペダルアームと、前記自転車の車輪回転軸と共に前記フレームに回転可能に取り付けられた従動スプロケット歯車と、前記スプロケット歯車と前記従動スプロケット歯車との間で循環するよう掛け渡された循環体と、を具備する自転車用動力伝達装置において、前記スプロケット歯車には、前記スプロケット歯車と共周りする右側回転体が取り付けられていると共に、前記回転軸には、前記スプロケット歯車と共周りする左側回転体が取り付けられていて、前記右側回転体には、前記回転軸の径方向に延設された前記右側ペダルアームが前記右側回転体と独立して回転可能に取り付けられていると共に、前記右側ペダルアームの延設方向に沿って配設された右側付勢部材の第1端部が取り付けられていて、前記右側ペダルアームには、前記右側付勢部材を固定する右側付勢部材固定部が取り付けられていて、前記左側回転体には、前記回転軸の径方向に延設された前記左側ペダルアームが前記左側回転体と独立して回転可能に取り付けられていると共に、前記左側ペダルアームの延設方向に沿って配設された左側付勢部材の第1端部が取り付けられていて、前記左側ペダルアームには、前記左側付勢部材を固定する左側付勢部材固定部が取り付けられていて、前記右側付勢部材および前記左側付勢部材は棒部材であって、長さ方向両端部分における径寸法が、その他の部分における径寸法よりも太く形成されていて、前記右側ペダルアームから踏込力が入力されると、前記右側ペダルアームに取り付けられている前記右側付勢部材に曲げ変形による付勢力が蓄積され、前記右側ペダルアームが下死点領域に到達した際に、付勢力により前記スプロケット歯車の回転が促進され、前記左側ペダルアームから踏込力が入力されると、前記左側ペダルアームに取り付けられている前記左側付勢部材に曲げ変形による付勢力が蓄積され、前記左側ペダルアームが下死点領域に到達した際に、付勢力により前記スプロケット歯車の回転が促進されることを特徴とする自転車用動力伝達装置である。
【0008】
これにより、右側ペダルアームおよび左側ペダルアームの長さを変えることなく、スプロケット歯車の回転を補助することにより自転車の推進力を増大させることが可能になる。このように走行中の右側および左側ペダルアームの長さが変わらないので、自転車を傾けた状態にしても右側および左側ペダルやペダルアームの地面との接触を防止することができ安全である。また、右側付勢部材および左側付勢部材の曲げ変形が生じ易くなると共に、荷重がかかる部分については十分な機械的強度を与えることができる。
【0009】
また、自転車のフレームに回転可能に取り付けられたスプロケット歯車と、前記スプロケット歯車と同一の回転軸で回転可能であって、前記自転車の進行方向右側に配設された右側ペダルアームおよび前記自転車の進行方向左側に配設された左側ペダルアームと、前記自転車の車輪回転軸と共に前記フレームに回転可能に取り付けられた従動スプロケット歯車と、前記スプロケット歯車と前記従動スプロケット歯車との間で循環するよう掛け渡された循環体と、を具備する自転車用動力伝達装置において、前記スプロケット歯車には、前記スプロケット歯車と共周りする右側回転体が取り付けられていると共に、前記回転軸には、前記スプロケット歯車と共周りする左側回転体が取り付けられていて、前記右側回転体には、前記回転軸の径方向に延設された前記右側ペダルアームが前記右側回転体と独立して回転可能に取り付けられていると共に、前記右側ペダルアームの延設方向に沿って配設された右側付勢部材の第1端部が取り付けられていて、前記右側ペダルアームには、前記右側付勢部材を固定する右側付勢部材固定部が取り付けられていて、前記左側回転体には、前記回転軸の径方向に延設された前記左側ペダルアームが前記左側回転体と独立して回転可能に取り付けられていると共に、前記左側ペダルアームの延設方向に沿って配設された左側付勢部材の第1端部が取り付けられていて、前記左側ペダルアームには、前記左側付勢部材を固定する左側付勢部材固定部が取り付けられていて、前記右側ペダルアームから踏込力が入力されると、前記右側ペダルアームに取り付けられている前記右側付勢部材に曲げ変形による付勢力が蓄積され、前記右側ペダルアームが下死点領域に到達した際に、付勢力により前記スプロケット歯車の回転が促進され、前記左側ペダルアームから踏込力が入力されると、前記左側ペダルアームに取り付けられている前記左側付勢部材に曲げ変形による付勢力が蓄積され、前記左側ペダルアームが下死点領域に到達した際に、付勢力により前記スプロケット歯車の回転が促進され、前記フレームと前記右側ペダルアームおよび前記左側ペダルアームの回転軸部分にはグリス充填空間形成体が取り付けられていて、前記グリス充填空間形成体には、グリス充填空間の内部と外部空間とを連通するグリス充填用ニップルとグリス充填確認窓が設けられていることを特徴とする自転車用動力伝達装置としての発明もある。
【0010】
これにより、右側ペダルアームおよび左側ペダルアームの長さを変えることなく、スプロケット歯車の回転を補助することにより自転車の推進力を増大させることが可能になる。このように走行中の右側および左側ペダルアームの長さが変わらないので、自転車を傾けた状態にしても右側および左側ペダルやペダルアームの地面との接触を防止することができ安全である。また、フレームと右側ペダルアームおよび左側ペダルアームとの回転軸部分を潤滑するグリスのメンテナンスが容易になる。
【0011】
また、前記右側付勢部材は、前記右側回転体および前記右側ペダルアームに着脱可能であると共に、前記左側付勢部材は、前記左側回転体および前記左側ペダルアームに着脱可能であることが好ましい。
【0012】
これにより、右側付勢部材や左側付勢部材が破損したとしても、交換が可能になる。また、右側付勢部材や左側付勢部材を適宜交換することにより、使用者の踏込力や好みに合わせて付勢力を調整することができる。
【0013】
また、前記右側付勢部材および前記左側付勢部材は棒部材であって、長さ方向両端部分における径寸法が、その他の部分における径寸法よりも太いことが好ましい。
【0014】
これにより、右側付勢部材および左側付勢部材の曲げ変形が生じ易くなると共に、荷重がかかる部分については十分な機械的強度を与えることができる。
【0015】
また、前記右側回転体には、前記右側付勢部材の曲げ変形量を規制するための右側ストッパが配設されていると共に、前記左側回転体には、前記左側付勢部材の曲げ変形量を規制するための左側ストッパが配設されていることが好ましく、さらに、前記右側回転体には、周方向の複数箇所に前記右側ストッパを取り付けるための右側ストッパ取付部が配設されていると共に、前記左側回転体には、周方向の複数箇所に前記左側ストッパを取り付けるための左側ストッパ取付部が配設されていることがより好ましい。
【0016】
これにより、右側付勢部材および左側付勢部材に対して過大な踏込力が入力されたとしても、右側付勢部材および左側付勢部材の破損を防ぐことができ、さらには右側付勢部材と左側付勢部材における許容曲げ変形量が調整され、右側付勢部材および左側付勢部材からの付勢力を適宜調節することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる自転車用動力伝達装置の構成を採用することにより、右側および左側ペダルアームの長さを変えることなく、右側および左側ペダルアームの回転を付勢部材による付勢力によって補助することで推進力を増大させることができる。走行中の右側および左側ペダルアームの長さが変わらない構成により、右側および左側ペダルアームに入力する踏込力を増大しようとして自転車を傾けた状態にしても、右側および左側ペダルアームに取り付けられているペダルの地面との接触を防止することができ安全である。そして右側付勢部材および左側付勢部材の曲げ変形が生じ易くなると共に、荷重がかかる部分については十分な機械的強度を与えることができる。または、フレームと右側ペダルアームおよび左側ペダルアームとの回転軸部分を潤滑するグリスのメンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態における自転車用動力伝達装置の概略構成を示す要部正面図である。
【
図2】
図1の右側ペダルアーム部分の斜視図である。
【
図3】
図1の右側ペダルアーム部分の平面図である。
【
図6】右側付勢部材および左側付勢部材の長さ方向における断面図である。
【
図7】スプロケット歯車に取り付けられたグリス充填空間形成体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかる自転車用動力伝達装置100の実施形態について説明する。
図1~
図5に示すように、本実施形態における自転車用動力伝達装置100は、スプロケット歯車10、ペダルアーム20、従動スプロケット歯車30、循環体としてのチェーン40およびペダルアーム20に付勢力を付与する付勢部材50を具備している。
【0023】
スプロケット歯車10は、自転車1のフレーム2を自転車1の進行方向に対して左右方向に挿通された図示しない回転軸に取り付けられ、回転軸を中心軸として回転可能になっている。本実施形態におけるスプロケット歯車10は、フレーム2の右側に取り付けられており、スプロケット歯車10の右側面(フレーム2における自転車1の進行方向に対して右側の面)には、右側回転体70が溶接等の公知の手法により固定されている。また、フレーム2の左側(フレーム2における自転車1の進行方向に対して左側)においては、回転軸に左側回転体80が溶接等の公知の手法により固定されている。このように右側回転体70と左側回転体80は、いずれもスプロケット歯車10と共に回転軸を回転の中心として回転可能になっている。
【0024】
本実施形態における右側回転体70および左側回転体80は、いずれもドーナツ板形状に形成されている。右側回転体70の側周面72には右側雌ねじ穴72Aが右側回転体70の径方向に沿って形成されており、左側回転体80の側周面82には左側雌ねじ穴82Aが左側回転体80の径方向に沿って形成されている。
【0025】
ペダルアーム20は、自転車1の進行方向右側の右側ペダルアーム22と自転車1の進行方向左側の左側ペダルアーム24を有し、それぞれの先端部にはペダル26が回転可能に取り付けられている。右側ペダルアーム22は右側回転体70(スプロケット歯車10の回転軸)の径方向に延設され、左側ペダルアーム24は左側回転体80(スプロケット歯車10の回転軸)の径方向に延設されている。右側ペダルアーム22および左側ペダルアーム24は、スプロケット歯車10の回転軸を回転の中心とした際に180°の位相となるように回転軸に取り付けられている。本実施形態における右側ペダルアーム22および左側ペダルアーム24は、スプロケット歯車10とは独立に回転する。
【0026】
図2~
図4に示すように、右側ペダルアーム22のペダル26の側の端部内側面には、付勢部材50の一部である右側付勢部材52を固定するための右側付勢部材固定部22Aが取り付けられている。これと同様に、
図5に示すように、左側ペダルアーム24のペダル26の側の端部内側面には、付勢部材50の一部である左側付勢部材54を固定するための左側付勢部材固定部24Aが取り付けられている。本実施形態における右側付勢部材固定部22Aは、貫通ねじ孔25Aを有するブロック体25Bに形成されている。右側付勢部材固定部22Aのブロック体25Bは、貫通ねじ孔25Aの中心軸線を右側ペダルアーム22の延設方向と平行にした状態で右側ペダルアーム22に溶接等の公知の手法によって固定されている。
【0027】
右側回転体70と右側付勢部材固定部22Aには、右側付勢部材52が取り付けられている。本実施形態における右側付勢部材52は、鋼鉄製の棒部材により形成されており、長さ方向両端部分における所要長さ範囲が雄ねじ部52Aに形成されている。すなわち、右側回転体70の右側雌ねじ穴72Aと右側付勢部材固定部22Aの貫通ねじ孔25Aには、右側付勢部材52の第1端部としての雄ねじ部52Aが螺着されている。したがって右側ペダルアーム22は、右側付勢部材52を介して右側回転体70およびスプロケット歯車10と共周り可能になっている。
【0028】
また、
図6に示すように、本実施形態における右側付勢部材52は、長さ方向両端部分の雄ねじ部52Aの内側端部から中央部分に向けた所要長さ範囲における外径寸法が徐々に細径になるテーパ部52Bに形成されている。また、テーパ部52Bどうしの間は、テーパ部52Bの細径側の外径寸法と同一外径寸法である細径部52Cに形成されている。このように右側付勢部材52の長さ方向両端部分における外径寸法がその他の部分における外径寸法よりも太くすることで、右側付勢部材52と右側回転体70および右側付勢部材固定部22Aとの固定を強固にすることができる。また、右側付勢部材52の曲げ剛性強度を低くすることができる。
【0029】
また、細径部52Cの径寸法を異ならせることによって同一材料であっても曲げ剛性強度を調整することができ、取り付け部分は同一構造にすることができるため、使用者の脚力(踏込力)に応じた右側付勢部材52を低コストで準備することができる。また、本実施形態における左側付勢部材54は、右側付勢部材52と同一形状をなしている。すなわち、左側付勢部材54は、雄ねじ部54A、テーパ部54B、細径部54Cを有している。
【0030】
左側回転体80と左側付勢部材固定部24Aは、右側回転体70と右側付勢部材固定部22Aと同じ構造に形成されている。すなわち、左側回転体80の左側雌ねじ穴82Aと左側付勢部材固定部24Aの貫通ねじ孔25Aには、左側付勢部材54の第1端部としての雄ねじ部54Aが螺着されている。したがって左側ペダルアーム24は、左側付勢部材54を介して左側回転体80と共周り可能になっている。すなわち右側ペダルアーム22と左側ペダルアーム24を回転軸の周りに回転させると、スプロケット歯車10を回転させることができる。
【0031】
また、本実施形態における右側回転体70には、右側ペダルアーム22の回転方向の前方側および後方側の位置に右側ペダルアーム22と所要間隔をあけた位置に右側ストッパ74が立設されている(
図7参照)。右側ストッパ74を配設することにより、自転車1の運転者が右側ペダルアーム22に踏込力を作用させて回転させる際における右側付勢部材52の曲げ変形量を規制することができ、右側付勢部材52の破損を防止することができる。右側ストッパ74は、右側回転体70の外側面に穿設された図示しないねじ穴(右側ストッパ取付部に相当)に螺着されている。右側ストッパ74を螺着させるねじ穴は、右側回転体70の外側面の周方向の複数箇所に配設しておけば、右側付勢部材52の曲げ変形量をコントロールすることができる。
【0032】
また、左側回転体80にも右側回転体70と同様に左側ペダルアーム24の回転方向の前方側および後方側の位置に左側ペダルアーム24と所要間隔をあけた位置に左側ストッパ84が左側ストッパ取付部としての図示しないねじ穴に立設されている(
図5参照)。なお、右側ストッパ74と左側ストッパ84は、右側ペダルアーム22および左側ペダルアーム24の回転方向における前方側および後方側の少なくとも一方の配設を省略することもできる。
【0033】
自転車1の後輪3の回転軸(自転車1の車輪回転軸に相当)は、従動スプロケット歯車30と共に自転車1のフレーム2に回転可能に取り付けられていて、スプロケット歯車10と従動スプロケット歯車30との間にはチェーン40が掛け渡されている。自転車1の運転者は、右側ペダルアーム22および左側ペダルアーム24のペダル26に足を載せ、ペダル26(右側ペダルアーム22または左側ペダルアーム24)に踏込力を入力して
図1中に示した矢印Aの向きに回転させることで、自転車1に駆動力を与える。このとき、下死点に向けて踏込力を作用させている右側ペダルアーム22または左側ペダルアーム24における右側付勢部材52または左側付勢部材54には、踏込力が付与されたことに伴う弾性変形が生じることになる。
【0034】
踏込力が作用していた右側ペダルアーム22または左側ペダルアーム24が下死点領域に到達すると、踏込力は鉛直方向のみに作用し、右側付勢部材52または左側付勢部材54を撓ませる方向に弾性変形させていた踏込力の成分が0になる。これにより右側付勢部材52または左側付勢部材54に蓄積されていた弾性変形による付勢力が解放されることになる。したがって、スプロケット歯車10は解放された付勢力によって回転方向前方側に押し出されることになり、スプロケット歯車10の回転方向に踏込力が作用しなくなる下死点においても自転車1に推進力を与えることができる。なお、本実施形態における下死点領域とは、右側ペダルアーム22および左側ペダルアーム24の回転方向における下死点位置とその直前所要回転角度範囲のことを指している。
【0035】
また、
図4、
図7および
図8に示すように、自転車用動力伝達装置100にフレーム2と右側ペダルアーム22および左側ペダルアーム24が回転軸に固定されている部分(回転軸部分に相当)にグリス充填空間形成体90を取り付けることもできる。本実施形態におけるグリス充填空間形成体90は、右側回転体70および左側回転体80の外側面に取り付けられる円筒部92と円筒部92の先端部に取り付けられる蓋部94を有している。右側回転体70および左側回転体80の外側面にそれぞれ取り付けられた円筒部92と蓋部94によってグリス充填空間が形成される。蓋部94には蓋部94を貫通する図示しない貫通孔に連通するグリス充填用ニップル94Aが設けられており、グリス充填空間の内部と外部空間とが連通している。また、円筒部92の側壁面にはグリス充填確認窓92Aが配設されている。本実施形態におけるグリス充填確認窓92Aは、円筒部92も側壁面の板厚方向に貫通する貫通孔により形成されている。
【0036】
自転車1の運転者は、必要に応じてグリス充填用ニップル94Aからグリス充填空間にグリスを簡単に充填することができる。グリス充填確認窓92Aからグリスを溢れさせることで、グリス充填空間に十分なグリスが充填されたことを確認することができる。
【0037】
以上に本発明にかかる自転車用動力伝達装置100について複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば本実施形態においては、右側付勢部材52および左側付勢部材54が、
図6に示すような形態を採用しているが、右側付勢部材52および左側付勢部材54は、
図6に示した形態に限定されるものではない。右側回転体70の側周面72に図示しない付勢部材差込部を立設し、付勢部材差込部の側壁面の外側から付勢部材差込部に挿入した右側付勢部材52を図示しない挟持部材により挟持する形態等公知の手法で着脱可能な形態に形成することもできる。また、上記右側回転体70と右側付勢部材52の固定形態を右側付勢部材固定部22Aと右側付勢部材52との固定形態に適用することもできる。これら形態を採用した場合、右側付勢部材52の長さ方向両端部への雄ねじ部52Aの配設は省略することができる。そして、以上の右側付勢部材52の固定形態は、左側付勢部材54および左側回転体80の固定形態と左側付勢部材固定部24Aおよび左側付勢部材54の固定形態に採用することができる。
【0038】
また、
図6に示す右側付勢部材52には長さ方向両端部の雄ねじ部52Aから所要長さ範囲に徐々に外形寸法が小径になるテーパ部52Bが形成された形態を示しているがこの形態に限定されるものではない。例えば、テーパ部52Bの配設を省略し、雄ねじ部52A以外の部分をすべて細径部52Cにした形態を採用することもできる。さらには、長さ方向における外径寸法は同一であって、長さ方向両端部の所要長さ範囲にのみ雄ねじ部52Aを形成した形態を採用することもできる。また、左側付勢部材54も同様の形態を採用することができる。
【0039】
また、右側付勢部材52および左側付勢部材54は鋼鉄製の棒状体に限定されるものではなく、鋼鉄製の板状体に形成することもできる。この場合、長さ方向両端部に貫通孔を配設しておくことが好ましい。これにより、貫通孔に進退可能な付勢部材係止体を用いることで、右側回転体70および右側付勢部材固定部22Aへの右側付勢部材52の固定や、左側回転体80および左側付勢部材固定部24Aへの左側付勢部材54の固定を容易に行うことができる。さらに、右側付勢部材52および左側付勢部材54は、右側ペダルアーム22および左側ペダルアーム24に作用する踏込力によって適宜弾性変形することが可能な弾性体であればよく、具体的な材質は特に限定されるものではない。
【0040】
さらには、以上に説明した実施形態と上記変形例における任意の構成どうしが適宜組み合わされた自転車用動力伝達装置100の形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0041】
1:自転車
2:フレーム
3:後輪
10:スプロケット歯車
20:ペダルアーム,
22:右側ペダルアーム,22A:右側付勢部材固定部,
24:左側ペダルアーム,24A:左側付勢部材固定部,
25A:貫通ねじ孔,25B:ブロック体,26:ペダル
30:従動スプロケット歯車
40:チェーン(循環体)
50:付勢部材,
52:右側付勢部材,
52A:雄ねじ部(第1端部),52B:テーパ部,52C:細径部,
54:左側付勢部材,
54A:雄ねじ部(第1端部),54B:テーパ部,54C:細径部,
70:右側回転体,
72:側周面,72A:右側雌ねじ穴,74:右側ストッパ,
80:左側回転体,
82:側周面,82A:左側雌ねじ穴,84:左側ストッパ
90:グリス充填空間形成体,
92:円筒部,92A:グリス充填確認窓,94:蓋部,94A:グリス充填用ニップル
100:自転車用動力伝達装置
【要約】 (修正有)
【課題】ペダルアームに取り付けた付勢部材の付勢力でスプロケット歯車の推進力が増大可能な自転車用動力伝達装置を提供すること。
【解決手段】スプロケット歯車10には、右側(左側)ペダルアーム22(24)の延設方向に沿って配設された付勢部材50の第1端部が取り付けられ、右側(左側)ペダルアーム22(24)には、付勢部材50を固定する右側(左側)付勢部材固定部が取り付けられ、右側(左側)ペダルアーム22(24)から踏込力が入力されると、踏込力が入力された右側(左側)ペダルアーム22(24)に取り付けられている付勢部材50に付勢力が蓄積され、踏込力が入力された右側(左側)ペダルアーム22(24)が下死点領域に到達した際に、付勢力によりスプロケット歯車10の回転が促進されることを特徴とする自転車用動力伝達装置100である。
【選択図】
図1