(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】局所的欠陥を有するガス分離用金属有機構造体
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20240614BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240614BHJP
C07F 3/02 20060101ALI20240614BHJP
C07C 65/105 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/30
C07F3/02 Z
C07C65/105
(21)【出願番号】P 2022502550
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 US2020036280
(87)【国際公開番号】W WO2021011111
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-05
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】アブニー,カーター ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー,ジョセフ エム
(72)【発明者】
【氏名】ウエストン,サイモン シー
(72)【発明者】
【氏名】イバシュコ,アナ シー
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0039015(US,A1)
【文献】Alexander C. Forse et al.,Revisiting anisotropic diffusion of carbon dioxide in the metal-organic framework Zn2(dobpdc),外国雑誌,The Journal of Physical Chemistry ,Vol.122 NO.27,2018,15344-15351(DOI:10.1021/acs.jpcc.8b02843)
【文献】William Morris et al.,Role of modulators in controlling the colloidal stability and polydispersity of the UiO-66 metal-organic framework,外国雑誌,ACS Applied Materials & Interfaces,Vol.9 No.39,2017,A-F(33413-33418)(DOI:10.1021/acsami.7b01040)
【文献】Sittichain Pramchu et al.,Tuning carbon dioxide capture capability with structual and compositional design in mmem-(Mg,Zn)(dobpdc) metal-organic framework : density functional theory investigation,外国雑誌,Greenhouse Gas Sci. Technol., Vol.8 No.3,2018,580-586(DOI:10.1002/ghg)
【文献】 Alexander C. Forse et al.,Unexpected diffusion anisotropy of carbon dioxide in the metal-organic framework Zn2(dobpdc),外国雑誌,Journal of the American Chemical Society,Vol.40 No.5,2018,1663-1673(DOI:10.1021/jacs.7b09453)
【文献】Pradip Pachfule et al.,Fabrication of carbon nanorods and graphene nanoribbons from a metal-organic framework,外国雑誌,Nature Chemistry,Vol.8 No.7,2016,718-724(DOI:10.1038/NCHEM.2515)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/22
B01J 20/30
C07F 3/02
C07C 65/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンカーによって架橋される1種以上の特異的金属元素の実験式又は化学式を有する金属有機構造体であって、複数のジサリチレートリンカー、複数のモジュレータ及び複数の局所的欠陥を含み、各局所的欠陥は前記モジュレータによって形成される金属有機構造体。
【請求項2】
一般式:M
1
xM
2
(2-x)(A)の金属有機構造体(式中、M
1及びM
2は各々独立して異なる金属カチオンであり、Aはジサリチレート有機リンカー及びモジュレータであり、並びに、xは0.0~2.0の値である)であって、局所的欠陥を含む、請求項1に記載の金属有機構造体。
【請求項3】
M
1及びM
2は共に、独立して、二価金属カチオンである、請求項2に記載の金属有機構造体。
【請求項4】
M
1及びM
2は、Ca
2+、Mg
2+、Fe
2+、Cr
2+、V
2+、Mn
2+、Co
2+、Ni
2+、Zn
2+、Cu
2+から独立して選択される、請求項2又は3に記載の金属有機構造体。
【請求項5】
ジサリチレートリンカーは:
【化1】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20は各々、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル及びハロゲンで置換されたメチルから独立して選択され;並びに
R’
17は、置換又は無置換のアリール、ビニル、アルキニル、置換又は無置換のヘテロアリール、ジビニルベンゼン及びジアセチルベンゼンからなる群から選択される)
からなる群から独立して選択される複数のリンカーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属有機構造体。
【請求項6】
前記モジュレータは、完全又は部分脱プロトン化β-ヒドロキシカルボン酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属有機構造体。
【請求項7】
前記β-ヒドロキシカルボン酸は、3-ヒドロキシプロピオン酸、サリチル酸、又は、その官能基化誘導体の1つ以上から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属有機構造体。
【請求項8】
前記金属有機構造体は、六角形のユニットセルにインデックス可能であるX線回折パターンをもたらす、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属有機構造体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の金属有機構造体、及び、アミンを含むリガンドを含む金属有機構造体系。
【請求項10】
前記リガンドはジアミンである、請求項9に記載の金属有機構造体系。
【請求項11】
前記ジアミンは環式ジアミンである、請求項
10に記載の金属有機構造体系。
【請求項12】
前記ジアミンは:
【化2】
(式中、Zは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム硫黄及びセレニウムから独立して選択され;並びに
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々、H、ハロゲン、メチル、ハロゲンで置換されたメチル及びヒドロキシルから独立して選択される)
から独立して選択される、請求項
10に記載の金属有機構造体系。
【請求項13】
前記
ジアミンは、ジメチルエチレン
ジアミン又は2-(アミノメチル)ピペリジ
ンの一方から選択される、請求項
10に記載の金属有機構造体系。
【請求項14】
前記リガンドはテトラアミンである、請求項9に記載の金属有機構造体系。
【請求項15】
前記テトラアミンは、3-4-3テトラアミン(スペルミン)又は2-2-2テトラアミンの一方から選択される、請求項14に記載の金属有機構造体系。
【請求項16】
前記リガンドは:
【化3】
から選択される、請求項9に記載の金属有機構造体系。
【請求項17】
請求項1~8に記載の金属有機構造体の合成方法であって:
1)特異的金属元素の1種以上の供給源及びジサリチレート有機リンカーを含む溶液と、モジュレータとを接触させるステップ、並びに
2)この混合物を加熱して、局所的欠陥を含む前記金属有機構造体を生成するステップ
を含む合成方法。
【請求項18】
前記金属元素は、Ca、Mg、Fe、Cr、V、Mn、Co、Ni、Zn、Cuから独立して選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶液は、元素金属、又は、対アニオンが、ニトレート、アセテート、カーボネート、オキシド、ヒドロキシド、フロリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、ホスフェート若しくはアセチルアセトネートを含む前記金属の塩を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか一項に記載の方法であって、局所的欠陥を含む前記金属有機構造体と、第2級リガンドとをガス又は液体媒体中に接触させるステップを含む、合成方法。
【請求項21】
前記第2級リガンドはアミン含有分子である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2級リガンドはジアミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第2級リガンドはトリアミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記第2級リガンドはテトラアミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~16のいずれか一項に記載の金属有機構造体系を含む粒子。
【請求項26】
請求項1~16のいずれか一項に記載の金属有機構造体系を含む吸着媒材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離に有用な金属有機構造体に関し、特に、構造体中へのガスの拡散と、ガス分離プロセスにおける速度及び効率を高める局所的欠陥を含む金属有機構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
CO2の排出をもたらす化石燃料の燃焼は、地球規模における気候変動に対する人為的な影響の大きな要因である。環境に対する影響に追加して、CO2排出に関連する税制上の罰則及び/又は奨励により、インフラストラクチャーの開発、エネルギー生成及び製造に対して重要な財政上の考慮が必要とされる。この問題の核心は、排出されるCO2の濃度が用途間で大きく異なり、多くの場合、無害な大気中のガスであるN2で希釈されていることである。とは言っても、排出されるCO2の量は大量である。それ故、CO2を容易、かつ、経済的に回収して使用又は保管が可能であり、次いで、吸着媒を再使用のために再生する技術を含む、幅広い用途への実装のために調整が可能である性能を有するガス流から希釈されたCO2を選択的に除去可能である技術が必要とされている。
【0003】
CO2の捕集に係るこれまでの解決法は主に液体アミン溶液に焦点を当てているが、これは再生が高価であり、CO2の吸着に伴って物理特性が変化することによる工学的な課題を生じさせ、及び、弱腐食性である。より近年に開発された技術は低水分量溶液を含み、これは、CO2捕集性能にわずかな向上を示すが、水性アミンよりも顕著に高価であると共に、物理特性の変化による工学的な課題がなお伴うものである。ポリマー及びゼオライトなどの固体相吸着媒もまた、CO2の捕集のために調査がなされている。前者は、典型的には、選択性が低いと共に能力に劣っており、一方で後者は水によって容易に不活性化されてしまい、CO2を除去する前に、実用的ではない排気の前処理が必要である。
【0004】
一定の金属有機構造体(「MOF」)は、特にCO2の捕集といった種々のガス分離において優れた性能を有する。これらの構造体の性能は主に、金属鎖が並ぶ六角形のチャネル(時に金属クラスタと呼ばれる)と、空の配位部位とを含む構造体の構造に起因している可能性がある。これらの六角形のチャネルは相互に独立しているが、しかしながら、チャネルに対して直角の方向におけるガスの拡散は妨げられている。その結果、一次元モデルでは、構造体へのガスの拡散が遅延されると共に、フィードに係る最大濃度勾配が低減される。この影響は、長軸に延伸するチャネルを有する長尺の棒状結晶を形成する傾向にあるMOF-274などの一定の金属-有機構造においては悪化してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、チャネルの形状及び開放された金属部位に対する接近容易性を保ちながら多次元的な流れで平行なチャネル間においてガスを拡散させる金属有機構造体に対する要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書においては、金属有機構造体中において金属イオンを架橋する有機リンカーと同一又は同等の金属配位部位を有する分子であるモジュレータを制御下に包含させることにより「局所的欠陥」又は開口部を有する金属有機構造体(混合金属有機構造体を含む)が提供されている。一態様において、本混合金属有機構造体はさらに、Schoedel,Li,Li,O’Keeffe,and Yaghi,Chem Rev.2016 116,12466-12535により記載されているとおり、Lidin-Andersson螺旋と記載される、金属鎖と定義される金属棒状構造を含む。一態様において、混合金属有機構造体は、金属棒状構造と平行に配向された六角形の孔を有する。従って、主題に係る金属有機構造体は、有機リンカーによって架橋される1種以上の特異的金属元素の実験式又は化学式を有すると共に、1種の金属鎖のみに結合するモジュレータによって生成される局所的欠陥(開口部)をさらに含む。
【0007】
具体的には、本金属有機構造体は複数の有機リンカーを含み、各リンカーは2つ以上の芳香族環を含み、各芳香族環はカルボキシレート官能基及びアルコール官能基を含む。このカルボキシレート官能基及びアルコール官能基は各芳香族環において互いに隣接する。加えて、各芳香族環は互いに最大の距離で位置されている。本金属有機構造体はまた、1種以上のモジュレータを含み、各モジュレータが、有機リンカーのものと同等の配位部位を含んで局所的欠陥を形成する。本金属有機構造体は特に、CO2を捕集するため、及び、そのアプリケーションのためのものである。局所的欠陥のために、分離プロセスにおいてガスの拡散が向上する。
【0008】
式:M1
xM2
(2-x)(A)を有する金属有機構造体がさらに提供されており、式中、M1及びM2は各々独立して異なる金属カチオンであり、Xは0~2.0の値であり、並びに、Aは、1種以上の有機リンカー及び少なくとも1種以上のモジュレータである。一態様において、Aは、原子組成で、70~99パーセントの有機リンカー及び1~30パーセントのモジュレータである。一態様において、M1及びM2は独立して、二価金属カチオンであることが可能である。
【0009】
一態様において、M1及びM2は、Ca2+、Mg2+、Fe2+、Cr2+、V2+、Mn2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+から独立して選択される。
【0010】
一態様において、Aは:
【化1】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20は各々、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル及びハロゲンで置換されたメチルから独立して選択され;並びに、R
17は、置換又は無置換のアリール、ビニル、アルキニル、置換又は無置換のヘテロアリール、ジビニルベンゼン及びジアセチルベンゼンからなる群から選択される。)
からなる群から独立して選択される複数のジサリチレート有機リンカーである。
【0011】
本明細書においては、金属有機構造体系がさらに提供されており、各金属有機構造体系は、局所的欠陥及びリガンドを有する本金属有機構造体を含み、ここで、リガンドはアミンを含む。一態様において、リガンドはジアミンである。一態様において、ジアミンは環式ジアミンである。一態様において、ジアミンは:
【化2】
(式中、Zは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム硫黄及びセレニウムから独立して選択され;並びに
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々、H、ハロゲン、メチル、ハロゲンで置換されたメチル及びヒドロキシルから独立して選択される)
から独立して選択される。
【0012】
一態様において、ジアミンリガンドは:ジメチルエチレンジアミン(mmen)又は2-(アミノメチル)ピペリジン(2-ampd)の一方から選択される。一態様において、リガンドはテトラアミンである。一態様において、テトラアミンは、3-4-3テトラアミン(スペルミン)又は2-2-2テトラアミンの一方から選択される。
【0013】
一態様において、金属有機構造体系は第2級リガンドをさらに含み、ここで、第2級リガンドはトリアミンである。一態様において、第2級リガンドは:
【化3】
から選択される。
【0014】
一態様において、モジュレータは、サリチル酸及び3-ヒドロキシプロピオン酸の群から独立して選択される。
【0015】
モジュレータとしては、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ペンタネート、ヘキサネート、ラクテート、オキサレート、シトレート、ピバレート、アミノ酸のカルボン酸アニオン等などのカルボン酸/カルボキシレート種;アコニット酸、アラニン二酢酸(ADA)、アルコイルエチレンジアミン三酢酸(例えば、ラウロイルエチレンジアミン三酢酸(LED3A))、アミントリ(メチレンホスホン酸)(ATMP)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、アスパラギン酸一酢酸、ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CDTA)、シトラコン酸、クエン酸、1,2-ジアミノプロパン四酢酸(DPTA-OH)、1,3-ジアミノ-2-プロパノール四酢酸(DTPA)、ジエタノールアミン、ジエタノールグリシン(DEG)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、ジグリコール酸、ジピコリン酸(DPA)、エタノールアミン二酢酸、エタノールジグリシン(EDG)、エチオニン、エチレンジアミン(EDA)、エチレンジアミンジグルタル酸(EDDG)、エチレンジアミンジ(ヒドロキシフェニル酢酸(EDDHA)、エチレンジアミンジプロピオン酸(EDDP)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、エチレンジアミン一コハク酸(EDMS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四プロピオン酸(EDTP)、エチレングリコールアミノエチルエステル四酢酸(EGTA)、没食子酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、グルタル酸、グリセリルイミノ二酢酸、グリシンアミド二コハク酸(GADS)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、2-ヒドロキシエチル二酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ヒドロキシエチル二ホスホン酸(HEDP)、2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、ヒドロキシイミノ二酢酸(HIDA)、2-ヒドロキシプロピレンジアミン二コハク酸(HPDDS)、イミノ二酢酸(IDA)、イミノ二コハク酸(IDS)、イタコン酸、ラウロイルエチレンジアミン三酢酸(LED3A)、リンゴ酸、マロン酸、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、メチルイミノ二酢酸(MIDA)、モノエタノールアミン、ニトリロ三酢酸(NTA)、ニトリロトリプロピオン酸(NPA)、N-ホスホノメチルグリシン(グリホサート)、プロピルジアミン四酢酸(PDTA)、サリチル酸、セリン二酢酸(SDA)、ソルビン酸、コハク酸、糖質、酒石酸、タルトロン酸、トリエタノールアミン、トリエチレンテトラアミン、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)などのキレート剤、及び、これらの組み合わせを挙げることができる。他の例示的なモジュレータは、参照により本明細書において援用される米国特許出願公開第2017/0081345号明細書の段落[0108]~[0112]において特定されている。
【0016】
また、特異的金属元素の1種以上の供給源、2種の金属鎖を架橋可能な有機リンカーを含む溶液と、一本の金属鎖のみに結合可能なモジュレータとを接触させるステップ、及び、この溶液を加熱して、モジュレータによって作られ、作成され、又は、そうでなければ形成された少なくとも1つの局所的欠陥を有する1つ以上の本金属有機構造体を生成するステップを含む金属有機構造体の合成方法が提供されている。一態様において、2種以上の特異的金属元素は、Ca、Mg、Fe、Cr、V、Mn、Co、Ni、Zn、Cuから独立して選択される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、5~25%サリチル酸を含有する配合されたMOF-274(金属有機構造体(「MOF」))に係る粉末X線回折(「PXRD」)パターンのグラフである。
【
図2A-2B】
図2A及び2Bは、25%サリチル酸を含有するMOF-274のSEM画像である。
【
図3A-3B】
図3A及び3Bは、10%サリチル酸を含有するMOF-274のSEM画像である。
【
図4A-4B】
図4A及び4Bは、5%サリチル酸を含有するMOF-274のSEM画像である。
【
図5】
図5は、5~25%サリチル酸を含有するMOF-274に係る熱重量分析(「TGA」)プロファイルである。
【
図6】
図6は、25%サリチル酸で合成されたMOF-274の
1H NMRのグラフである。
【
図7】
図7は、10%サリチル酸で合成されたMOF-274の
1H NMRのグラフである。
【
図8】
図8は、5%サリチル酸で合成されたMOF-274の
1H NMRのグラフである。
【
図9】
図9は、5~25%3-ヒドロキシプロピオン酸を含有するMOF-274サンプルに係るPXRDスペクトルのグラフである。
【
図10】
図10は、5~25%3-ヒドロキシプロピオン酸モジュレータを含有するMOF-274に係る
1H NMR積分の関数としてのパーセント積分値のグラフである。
【
図11】
図11は、5%3-ヒドロキシプロピオン酸で調製された、消化MOF-274の
1H NMRスペクトルのグラフである。
【
図12】
図12は、5%3-ヒドロキシプロピオン酸で調製された、消化MOF-274の
1H NMRスペクトルのグラフである。
【
図13】
図13は、5%3-ヒドロキシプロピオン酸で調製された、消化MOF-274の
1H NMRスペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書においては、金属鎖(時に、金属クラスタと称される)を含む金属有機構造体が提供されており、各金属鎖は、1種以上の特異的元素の金属イオン、1種以上の有機リンカー及び1種以上のモジュレータを含む。各有機リンカーは、金属有機構造体の少なくとも2種の金属鎖を架橋する1種以上の特異的元素の金属イオンに結合されている。反対に、各モジュレータは、1種の特異的金属鎖のみに結合して、金属有機構造体中に局所的欠陥を形成する。
【0019】
1つ以上の局所的欠陥及び1つ又は2つのリガンドを有する金属有機構造体を含む金属有機構造体系がさらに提供されている。一態様において、本金属有機構造体は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から独立して選択される1種以上の特異的元素を含む。一態様において、1種以上の特異的元素の各々は、Mg、Mn、Ni又はZnである。一態様において、金属有機構造体は、ジアミン、環式ジアミン、トリアミン及び/又はテトラアミンの群から選択されるリガンドを含む。一態様において、リガンドは有機ジアミンである。一態様において、リガンドはアミン2-(アミノメチル)ピペリジン(「2-ampd」)である。
【0020】
また、本明細書に記載の1種以上の金属有機構造体系を含む吸着媒材料が提供されている。局所的欠陥を有する本金属有機構造体にフィードを通過させるステップを含む、フィードから二酸化炭素を除去する方法がさらに提供されている。
【0021】
一態様において、本明細書においては、一般構造式I
M1×M2
(2-x)(A) I
の金属有機構造体が提供されており、式中、M1は金属又はその塩であり、及び、M2は金属又はその塩であり、しかし、M1はM2ではなく;Xは0.00~2.0の値であり;並びに、Aは1種以上の有機リンカー及び1種以上のモジュレータを含み、ここで、各モジュレータは局所的欠陥を作成する。
【0022】
一態様において、一般構造式Iの金属有機構造体は、金属M1、M2に配位する溶剤分子をさらに含んでいることが可能である。
【0023】
しかも、配位する溶剤分子を伴う一般構造式Iの金属有機構造体は、材料のチャネル及び孔中に混入溶剤を含有していることが可能である。
【0024】
一態様においては、一般構造式II
M1×M2
(2-x)(A)(B) II
の金属有機構造体系がさらに提供されており、式中、M1は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnから独立して選択され;M2は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnから独立して選択され、及び、M1はM2ではなく;Xは0.00~2.00の値であり;Aは、有機リンカー及び有機モジュレータであり;並びに、Bはリガンドであり、ここで、各モジュレータは局所的欠陥を形成するか、又は、そうでなければもたらす。
【0025】
しかも、一般構造式IIの金属有機構造体は、材料のチャネル及び孔中に混入溶剤を含有していることが可能である。
【0026】
本方法及びデバイスを開示及び説明する前に、本発明は、別段の規定がある場合を除きそれら自体がばらつく可能性がある特定の化合物、コンポーネント、組成物、反応体、反応条件、リガンド、触媒構造、メタロセン構造等に、別段の定めがある場合を除き限定されることはないことが理解されるべきである。本明細書において用いられる用語法は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定が意図されるものではないこともまた理解されるべきである。
【0027】
本開示の目的のために、以下の定義が適用される。
【0028】
本明細書において用いられるところ、本明細書において用いられる「a」及び「the」という用語は、複数形並びに単数形を包含すると理解される。
【0029】
本明細書において用いられるところ、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)及びケイ素(Si)、ホウ素(B)及びリン(P)を含む。
【0030】
「アリール」という用語は、別段の定めがある場合を除き、単環、又は、一緒に縮合しているか、若しくは、共有結合的に結合している複数の環であることが可能である多価不飽和、芳香族置換基を意味する。一態様において、置換基は1~11の環、又は、より具体的には、1~3の環を有する。「ヘテロアリール」という用語は、N、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有するアリール置換基(又は環)を指し、ここで、窒素及び硫黄原子は、任意選択により酸化されており、及び、窒素原子は任意選択により四級化されている。例示的なヘテロアリール基は、6員アジン、例えば、ピリジニル、ジアジニル及びトリアジニルである。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合していることが可能である。アリール及びヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル及び6-キノリルが挙げられる。上記のアリール及びヘテロアリール環系の各々に係る置換基は、以下に記載の許容可能な置換基の群から選択される。
【0031】
本明細書において用いられるところ、「アルキル」、「アリール」及び「ヘテロアリール」という用語は、任意選択により、記載の種の置換形態及び無置換形態の両方を含むことが可能である。アリール及びヘテロアリール基に係る置換基は、総称して「アリール基置換基」と称される。これらの置換基は、ゼロから芳香族環系における開放原子価の総数の範囲の数で、例えば炭素又はヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si又はB)を介してヘテロアリール又はヘテロアレーン原子核に結合する基から選択され、特に限定されないが、置換又は無置換のアルキル、置換又は無置換のアリール、置換又は無置換のヘテロアリール、置換又は無置換のヘテロシクロアルキル、--OR’、=O、=NR’、=N--OR’、--NR’R’’、--SR’、-ハロゲン、--SiR’R’’R’’’、--OC(O)R’、--C(O)R’、--CO.sub.2R’、--CONR’R’’、--OC(O)NR’R’’、--NR’’C(O)R’、--NR’--C(O)NR’’R’’’、--NR’’C(O).sub.2R’、--NR--C(NR’R’’R’’’).dbd.NR’’’’、--NR--C(NR’R’’)=NR’’’、--S(O)R’、--S(O)R’、--S(O)NR’R’’、--NRSOR’、--CN及び、--R’、--、 --CH(Ph)、フルオロ(C1~C4)アルコキシ及びフルオロ(C1~C4)アルキルが含まれる。上記に挙げた基の各々は、直接又はヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si又はB)を介してアリール又はヘテロアリール原子核に結合しており;ここで、R’、R’’、R’’’及びR’’’’は好ましくは、水素、置換又は無置換のアルキル、置換又は無置換のヘテロアルキル、置換又は無置換のアリール、及び、置換又は無置換のヘテロアリールから独立して選択される。本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、例えば、R基の各々は、各R’、R’’、R’’’及びR’’’’基が2つ以上存在する場合、これらの基と同様に独立して選択される。
【0032】
「アルキル」という用語は、単独で、又は、他の置換基の一部として、別段の定めがある場合を除き、直鎖若しくは分岐鎖若しくは環式炭化水素基、又は、これらの組み合わせを意味し、完全飽和、単価若しくは多価不飽和であり得、及び、指定されている数の炭素原子(すなわち、C1~C10は1~10個の炭素を意味する)を有するジ-、トリ-及び多価基であることが可能である。飽和炭化水素基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えばn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等の同族体及び異性体などの基が挙げられる。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合又は三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、これらに限定されないが、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-及び3-プロピニル、3-ブチニル、並びに、より高級の同族体及び異性体が挙げられる。「アルキル」という用語はまた、別段の定めがある場合を除き、任意選択により、「ヘテロアルキル」などの、以下に記載のより詳細に定義されているアルキルのこれらの誘導体を含むことが意味されている。
【0033】
「ヘテロアルキル」という用語は、単独で、又は、他の用語との組み合わせで、別段の定めがある場合を除き、記載の数の炭素原子と、O、N、Si及びSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子とから構成される安定な直鎖若しくは分岐鎖若しくは環式炭化水素基、又は、これらの組み合わせを意味し、ここで、窒素及び硫黄原子は、任意選択により酸化されていてもよく、及び、窒素ヘテロ原子は、任意選択により四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N及びS及びSiは、ヘテロアルキル基のいずれかの内部位置、又は、分子の残部にアルキル基が結合している位置に置かれ得る。例としては、これらに限定されないが、--CH2--CH2--O--CH3、--CH2--CH.2--NH--CH3、--CH2--CH2--N(CH3)--CH3、--CH2--S--CH2--CH3、--CH2--CH2、--S(O)--CH3、--CH2--CH2--S(O)2--CH3、--CH=CH--O--CH3、--Si(CH3)3、--CH2-CH=N--OCH3及び-CH=CH--N(CH3)--CH3が挙げられる。例えば、--CH2--NH--OCH3及び--CH2--O--Si(CH3)3などのように、2個以下のヘテロ原子が連続していてもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、単独で、又は、他の置換基の一部として、特に限定はされないが、--CH2--CH2--S--CH2--CH2--及び--CH2--S--CH2--CH2--NH--CH2--に例示されるヘテロアルキルから誘導される二価基を意味する。ヘテロアルキレン基関して、ヘテロ原子はまた、鎖末端の一方又は両方を占有していることが可能である(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ等)。さらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連接基に関して、連接基の配向は、連接基の式が記載されている方向によっては示唆されていない。例えば、式--CO2R’--は、--C(O)OR’及び--OC(O)R’の両方を表す。
【0034】
本明細書において用いられるところ、「リガンド」という用語は、ルイス塩基(電子供与体)として機能することが可能である1個以上の置換基を含有する分子を意味する。一態様において、リガンドは、酸素、リン又は硫黄であることが可能である。一態様において、リガンドは、アミン、又は、1~10個のアミン基を含有するアミンであることが可能である。
【0035】
「ハロ」、「ハロゲン」又は「ハライド」という用語は、単独で、又は、他の置換基の一部として、別段の定めがある場合を除き、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を意味する。
【0036】
符号「R」は、H、置換又は無置換のアルキル、置換又は無置換のヘテロアルキル、置換又は無置換のアリール、置換又は無置換のヘテロアリール、及び、置換又は無置換のヘテロシクロアルキル基から選択される置換基を表す一般的な略記である。
【0037】
本明細書において用いられるところ、「周期律表」という用語は、the Periodic Table of the Elements of the International Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC)(2015年12月)を意味する。
【0038】
本明細書において用いられるところ、「等温線」は、系の温度が一定に保持されている場合における濃度の関数としての吸着質の吸着を指す。一態様において、吸着質はCO2であり、及び、濃度はCO2圧力として計測可能である。本明細書に記載されているとおり、等温線は、多孔性材料により、見掛表面積を算出するために適用される種々の数学モデルを用いて得ることが可能である。S.Brunauer,P.H.Emmett,and E.Teller.J.Am.Chem.Soc.1938,60,309-319;K.Walton and R.Q.Snurr,J.Am.Chem.Soc.2007,129,8552-8556;I.Langmuir,J.Am.Chem.Soc.1916,38,2221。
【0039】
本明細書において用いられるところ、等温線における「段」という用語は、別名V型等温線として知られるS字状吸収プロファイルにより定義される。S.J.Gregg and K.S.W.Sing,Adsorption,Surface Area and Porosity,2nd Ed.Academic Press Inc.,New York,NY,1982,Ch V。この段は一般に、等温線における正の二次導関数、これに続く変曲点、及び、その後の等温線における負の二次導関数によって定義可能である。この段は、CO2が金属-アミン結合に挿入された場合、又は、或いは、動的構造体孔が開放された場合などの吸着媒結合部位が一定のガス分圧でのみアクセス可能となった場合に生じる。
【0040】
「塩」という用語は、本明細書に記載の化合物において見出される特定のリガンド又は置換基に応じて、酸又は塩基の中和により調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性形態を、十分な量の所望の塩基と、原液で、又は、好適な不活性溶剤中において接触させることにより塩基付加塩を得ることが可能である。塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩若しくはマグネシウム塩、又は、類似の塩が挙げられる。酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸又は亜リン酸等のような無機酸から誘導されるものが挙げられ、並びに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸等のような比較的無毒の有機酸から誘導される塩が挙げられる。一定の特定の本開示の化合物は、化合物の塩基又は酸付加塩のいずれかへの転換を許容する塩基性及び酸性官能基の両方を含有する。塩の水和物もまた包含される。
【0041】
「モジュレータ」という用語は、本明細書において用いられるところ、単一の金属鎖中の金属イオン又は金属イオンとキレート化又は配位が可能な官能基を含む有機化合物を指す。本モジュレータは、2種の別々の金属鎖中に含有される金属イオンを結合することはできない。従って、本金属有機構造体は、金属イオン及びモジュレータのみから組成されることはできない。
【0042】
好ましくは、モジュレータは、リンカーに含まれるものと同一の分子構造で配位原子を含有する。
【0043】
1つ以上キラル中心を有するいずれかの本明細書に記載の化合物において、絶対立体化学が明記されていない場合、各中心は、独立して、R-配置若しくはS-配置、又は、これらの混合物であり得ることが理解される。それ故、本明細書において提供されている化合物は、鏡像異性体的に純粋であるか、又は、立体異性混合物であり得る。加えて、E又はZと定義可能である幾何異性体がもたらされる1つ以上の二重結合を有するいずれかの本明細書に記載の化合物において、各二重結合は独立して、E若しくはZ又はこれらの混合物であり得ることが理解される。同様に、既述の化合物のいずれかにおいて、すべての互変異性形態もまた包含されることが意図されていることが理解される。
【0044】
加えて、本明細書において提供されている化合物はまた、このような化合物を構成する原子の1つ以上において、原子同位体を人為的な割合で含有していてもよい。例えば、この化合物は、例えば三重水素(3H)、ヨウ素-125(125I)又は炭素-14(14C)などの放射性同位元素で放射性標識化されていてもよい。本主題に係る化合物のすべての同位体変種は、放射性であるか否かに関わらず、本開示の範囲内に包含されることが意図されている。
【0045】
1種以上の特異的元素の複数の金属イオンと、複数の有機リンカーであって、各リンカーが1種以上の特異的元素の複数の金属イオンの少なくとも1種の金属イオンに結合している有機リンカーと、局所的欠陥を形成する1種以上のモジュレータとを含む金属有機構造体がさらに提供されている。特筆すべきは、2種以上の特異的元素の金属イオンを有する本金属有機構造体はまた、本明細書において、「混合金属有機構造体」と称されていることである。同様に、混合金属混合有機構造体系は、少なくとも1つの局所的欠陥及びリガンドを有する混合金属有機構造体を含む。
【0046】
一態様において、本明細書において提示されている金属有機構造体は一般式I:
M1×M2
(2-x)(A) I
を有し、式中、M1は金属であり、及び、M2は金属であるが、M1はM2ではなく;
Xは0.00~2.0の値であり;並びに
Aは、本明細書に記載の有機リンカー及びモジュレータである。
【0047】
一態様において、一般構造式Iの金属有機構造体は、金属M1、M2に配位する溶剤分子をさらに含んでいることが可能である。
【0048】
しかも、配位する溶剤分子を伴う一般構造式Iの金属有機構造体は、材料のチャネル及び孔中に混入溶剤を含有していることが可能である。
【0049】
一態様において、Xは0.00~2.0の値である。一態様において、Xは0.1~1の値である。一態様において、Xは、0.05、0.1、0.5及び1からなる群から選択される値である。さらに、X及び2-XはM1対M2の相対比を表す一方で、本明細書に記載の式I、式IA、式II又は式IIIにおいていずれかの特定の化学量論が示されているわけではないことが理解されるべきである。これに従い、式I、IA、II又はIIIの金属有機構造体は、M1対M2の特定の相対比には限定されない。Xが2.0の値を有する場合、金属有機構造体は1種の金属のみを含むと理解されるべきである。さらに、これらの金属は典型的には、イオン形態で提供され、及び、利用可能な原子価は選択される金属に応じて異なることとなると理解されるべきである。
【0050】
本明細書に記載の式I、IA、II及びIIIの金属は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnを含む、周期律表の第4周期、第IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IB及びIIB族、並びに、第3周期、第IIA族の元素の1つであることが可能である。さらに、混合金属有機構造体は、さらに2種の特異的元素、並びに、異なる組み合わせの金属を含み、理論的には、M1
xM2
y…Mn
z(A)(B)2|x+y+…+z=2、及び、M1≠M2≠…≠Mnと表される。
【0051】
一態様において、M1は、Mg、V、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnから選択され;並びに、M2は、Mg、V、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnから選択され、ただし、M1はM2ではない。一態様において、M1は、Mg、Mn、Ni及びZnからなる群から選択され;並びに、M2は、Mg、Mn、Ni及びZnからなる群から選択され;ただし、M1はM2ではない。一態様において、M1はMgであり、及び、M2はMnである。一態様において、M1はMgであり、及び、M2はNiである。一態様において、M1はZnであり、及び、M2はNiである。さらに、これらの金属は典型的には、イオン形態で提供され、及び、原子価は選択される金属に応じて異なることとなると理解されるべきである。さらに、金属は、塩として、又は、塩形態で提供可能である。
【0052】
加えて、金属は、Aを、リンカーH-Aのプロトン化形態とする一価金属であることが可能である。例えば、金属は、Na+又は第I族からの1種であることが可能である。また、金属は、2つ以上の二価カチオン(「二価金属」)又は三価カチオン(「三価金属」)の1つであることが可能である。一態様において、混合金属混合有機構造体は、+2以外の(すなわち、二価、三価、四価等を超える)酸化状態となることが可能である金属を含む。この構造体は、異なる酸化状態の混合物を含む金属を有することが可能である。例示的な混合物は、Fe(II)及びFe(III)、Cu(II)及びCu(I)及び/又はMn(II)及びMn(III)を含む。より具体的には、三価金属は、+3酸化状態を有する金属である。具体的にはFe及びMnといった混合金属有機構造体を形成するために用いられるいくつかの金属は、比較的温和な条件下で+2(二価)又は+3(三価)酸化状態とされることが可能である。Chem.Mater,2017,29,6181。同様に、Cu(II)は、温和な条件下でCu(I)を形成することが可能である。従って、金属のいずれかの酸化状態に対するいずれかの軽微な変更、及び/又は、金属の酸化状態の選択的な変更を用いて本混合金属有機構造体を改変することが可能である。さらに、異なる分子フラグメントC1、C2、…Cnのいずれかの組み合わせが存在し得る。最後に、上記の変種のすべてを組み合わせることが可能である(例えば、複数の原子価を有する複数の金属(2種以上の特異的金属)と、複数の荷電平衡をとる分子フラグメント)。
【0053】
好適な有機リンカー(また、本明細書において、「リンカー」と称される)は、金属有機構造体の構造及び金属有機構造体の金属ノードに結合する有機リンカーの部分に関する対称要素から決定可能である。化学的又は構造的に異なるが、金属を結合して金属鎖を形成する官能基をC2対称軸に関連付けることが可能であるリガンドは、同一の位相の金属有機構造体を形成する。一態様において、有機リンカーは、炭素3,3’にカルボン酸、及び、炭素4,4’にアルコールを有する、炭素1,1’で結合する2つのフェニル環により形成されていることが可能である。カルボン酸及びアルコール(例えば、以下に記載の「pc-H4DOBPDC」又は「pc-MOF-274」)の位置を交換しても、金属有機構造体の位相は変化しない。
【0054】
このようなリンカーの例としては:
【化4】
が挙げられ、ここで、Rはいずれかの分子フラグメントであるか、又は、不在であり、及び、リンカーは、炭素-炭素単結合による2つの芳香族環に対する直接結合を含む。
【0055】
好適な有機リンカーの例としては、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(DOBPDC);4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(DOTPDC);及び、ジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(p-カルボキシレート-DOBPDCはまた、PC-DOBPDCと称される)などのp-カルボキシレート(「pc-リンカー」)、並びに、以下の化合物:
【化5】
が挙げられる。
【0056】
一態様において、有機リンカーは、式:
【化6】
を有し、式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20は各々、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル及びハロゲンで置換されたメチルから独立して選択される。
【0057】
一態様において、有機リンカーは、式:
【化7】
を有し、式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は各々、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル及びハロゲンで置換されたメチルから独立して選択される。
【0058】
一態様において、有機リンカーは、式:
【化8】
を有し、式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は各々、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル又はハロゲンで置換されたメチルから独立して選択され、並びに、R
17は、置換又は無置換のアリール、ビニル、アルキニル、及び、置換又は無置換のヘテロアリールから選択される。
【0059】
一態様において、有機リンカーは、式:
【化9】
を有し、式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は各々、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル又はハロゲンで置換されたメチルから独立して選択される。式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は各々、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル又はハロゲンで置換されたメチルから独立して選択され、並びに、R
17は、置換又は無置換のアリール、ビニル、アルキニル、及び、置換又は無置換のヘテロアリールから選択される。
【0060】
一態様において、有機リンカーは、2つ(又は、それ以上)のフェニル環、又は、ビニル若しくはアルキニル基により結合された2つのフェニル環を有する分子などの複数の架橋アリール種を含む。
【0061】
一態様においては、構造式IA:
M1×M2
(2-x)(A) IA
(式中、M1は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu若しくはZnから独立して選択される金属、又は、その塩であり;
M2は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu若しくはZnから独立して選択される金属、又は、その塩であるが、M1はM2ではなく;
Xは0.0~2.0の値であり;並びに
Aは、本明細書に記載の有機リンカー及びモジュレータである)
の金属有機構造体が本明細書において提供されている。
【0062】
一態様において、一般構造式IAの金属有機構造体はまた、金属M1、M2に配位されている溶剤分子を含む。
【0063】
しかも、配位する溶剤分子を伴う一般構造式IAの金属有機構造体は、材料のチャネル及び孔中に混入溶剤を含有していることが可能である。
【0064】
上述のとおり、混合金属混合有機構造体は、2つ以上の多点(ポリトピック)有機リンカーによって結合される2種以上の特異的金属カチオン、金属クラスタ、又は、金属鎖から形成された多孔性結晶性材料である。しかしながら、本明細書に記載のとおり、混合金属混合有機構造体はまた、金属有機構造体とも称される。
【0065】
本明細書において用いられるところ、一般に、モジュレータは、金属鎖とキレート化又は配位可能であるが、2つの別々の金属鎖を架橋することはできない官能基を有するいずれかの化合物であることが可能である。例示的なモジュレータとしては、これらに限定されないが:カルボン酸塩;ホスホン酸塩;スルホン酸塩;チオール;ヒドロキシル;アミン;並びに、β-ヒドロキシ酸及びアミノポリカルボキシレートなどの複数の官能基から調製される錯体及び多座キレート化基が挙げられる。
【0066】
本金属有機構造体の合成中、及び、本明細書に記載のとおり、モジュレータは実質的に、金属有機構造体中における金属鎖を構成する金属に対する結合について、有機リンカーと競合する。しかしながら、金属イオンを架橋可能な有機リンカーとは異なり、本モジュレータは、単一の金属鎖にのみ配位可能である。金属鎖を架橋できないことで、金属有機構造体中に局所的欠陥が形成される。金属有機構造体の局所的欠陥は、孔径、間隙率、吸着部位等を含む種々の特性を変化させるか、又は、変更することが可能である。特に、金属有機構造体中に延在するチャネル構造を有する金属有機構造体に関しては、モジュレータの組み込みによる欠陥の導入は、チャネル間の間隙拡散の向上又は導入に用いられることが可能であり、これは、金属有機構造体のガス/流体浸透性及び間隙率を高める。
【0067】
一般に、プロトン化及び脱プロトン化モジュレータ、及び/又は、このようなモジュレータの塩を用いて、本金属有機構造体を合成し、及び、金属有機構造体中に局所的欠陥を形成するモジュレータを含む金属有機構造体を作成することが可能である。
【0068】
一態様において、モジュレータは、有機リンカーの結合部位に相当(模倣)及び/又は競合し、並びに、以下のリンカーの四角で囲った領域に示す一般分子構造を含むいずれかの分子であることが可能である。
【化10】
ここで、R
1、R
2及びR
3は各々独立して:不在、水素、ハロゲン、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和炭素基であることが可能であり、任意選択により置換されたC1~C20アルキル、任意選択により置換されたC1~C19ヘテロアルキル、任意選択により置換されたC1~C19アルケニル、任意選択により置換されたC1~C19ヘテロアルケニル、任意選択により置換されたC1~C19アルキニル、任意選択により置換されたC1~C19ヘテロアルキニル、任意選択により置換されたC1~C19シクロアルキル、任意選択により置換されたC1~C19シクロアルケニル、任意選択により置換アリール、任意選択により置換された複素環、任意選択により置換された混合環系を含む。一態様において、R
1、R
2及びR
3のいずれかの対が一緒に結合されて、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、アリール、二環、多環、及び、混合環系などの1つ以上の置換環を形成していることが可能である。これらの環系は、1つの環に3つ以上の炭素を含有する、5員又は6員環などの芳香族又は非芳香族環式構造を含むことが可能である。X
1、X
2及びX
3は各々独立して、炭素、ケイ素、窒素、酸素、リン又は硫黄であることが可能である。BGは一般に、金属有機構造体の金属と結合を形成することが可能であるいずれかのものである。より具体的には、硫黄、酸素又は窒素である。上記の図は単一の結合次数の結合のみを示しているが、官能性モジュレータは、いずれかの構成要素間に1を超える結合次数を有することが可能であることが想定される。
【0069】
他の態様においては、モジュレータは、式:
【化11】
のものであることが可能であり、ここで、R
1及びR
2は、水素;ハライド;直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和炭素基から独立して選択され、任意選択により置換されたC1~C20アルキル、任意選択により置換されたC1~C19ヘテロアルキル、任意選択により置換されたC1~C19アルケニル、任意選択により置換されたC1~C19ヘテロアルケニル、任意選択により置換されたC1~C19アルキニル、任意選択により置換されたC1~C19ヘテロアルキニル、任意選択により置換されたC1~C19シクロアルキル、任意選択により置換されたC1~C19シクロアルケニル、任意選択により、置換アリール、任意選択により置換された複素環、任意選択により置換された混合環系を含む。一態様において、R
1及びR
2は一緒に結合されて、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、アリール、二環、多環、及び、混合環系などの1つ以上の置換環を形成していることが可能である。これらの環系は、1つの環に3つ以上の炭素を含有する、5員又は6員環などの芳香族又は非芳香族環式構造を含むことが可能である。結合次数が上記式において例示されているが、1を超える結合次数が可能であり、及び、「モジュレータ」という用語の定義に明確に包含されていると推察される。
【0070】
例示的なモジュレータは、β-ヒドロキシ酸-タイプ官能基を有する有機化合物を含み、サリチル酸、3-フェニルサリチル酸、4-フェニルサリチル酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等などの芳香族及びポリ芳香族β-ヒドロキシ酸;並びに、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ3-メチル酪酸、カルニチン等などのC3~C18β-ヒドロキシ酸が含まれる。
【0071】
モジュレータとしては、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ペンタネート、ヘキサネート、ラクテート、オキサレート、シトレート、ピバレート、アミノ酸のカルボン酸アニオン等などのカルボン酸/カルボキシレート種;アコニット酸、アラニン二酢酸(ADA)、アルコイルエチレンジアミン三酢酸(例えば、ラウロイルエチレンジアミン三酢酸(LED3A))、アミントリ(メチレンホスホン酸)(ATMP)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、アスパラギン酸一酢酸、ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CDTA)、シトラコン酸、クエン酸、1,2-ジアミノプロパン四酢酸(DPTA-OH)、1,3-ジアミノ-2-プロパノール四酢酸(DTPA)、ジエタノールアミン、ジエタノールグリシン(DEG)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、ジグリコール酸、ジピコリン酸(DPA)、エタノールアミン二酢酸、エタノールジグリシン(EDG)、エチオニン、エチレンジアミン(EDA)、エチレンジアミンジグルタル酸(EDDG)、エチレンジアミンジ(ヒドロキシフェニル酢酸(EDDHA)、エチレンジアミンジプロピオン酸(EDDP)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、エチレンジアミン一コハク酸(EDMS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四プロピオン酸(EDTP)、エチレングリコールアミノエチルエステル四酢酸(EGTA)、没食子酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、グルタル酸、グリセリルイミノ二酢酸、グリシンアミド二コハク酸(GADS)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、2-ヒドロキシエチル二酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ヒドロキシエチル二ホスホン酸(HEDP)、2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、ヒドロキシイミノ二酢酸(HIDA)、2-ヒドロキシプロピレンジアミン二コハク酸(HPDDS)、イミノ二酢酸(IDA)、イミノ二コハク酸(IDS)、イタコン酸、ラウロイルエチレンジアミン三酢酸(LED3A)、リンゴ酸、マロン酸、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、メチルイミノ二酢酸(MIDA)、モノエタノールアミン、ニトリロ三酢酸(NTA)、ニトリロトリプロピオン酸(NPA)、N-ホスホノメチルグリシン(グリホサート)、プロピルジアミン四酢酸(PDTA)、サリチル酸、セリン二酢酸(SDA)、ソルビン酸、コハク酸、糖質、酒石酸、タルトロン酸、トリエタノールアミン、トリエチレンテトラアミン、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)などのキレート剤、及び、これらの組み合わせを挙げることができる。他の例示的なモジュレータは、参照により本明細書において援用される米国特許出願公開第2017/0081345号明細書の段落[0108]~[0112]において特定されている。
【0072】
さらに、本金属有機構造体は、段状の等温線をもたらす、本明細書において「リガンド」と称されるアミン分子が付加されていることが可能である。この段状の等温線は、CO2の金属-アミン配位結合への挿入でもたらされ、次いで、CO2の酸素に負の電荷が局在化される。ジアミン(2つのアミンを含有する分子)により、アミンが金属に結合可能とされ、及び、第2のアミンが金属有機構造体のチャネルに位置可能とされる。CO2の挿入で、第2のアミンがプロトンを受容し、これにより、正電荷となり、酸素における負の電荷が平衡化される。
【0073】
一態様において、金属有機構造体系(時に、「付加された金属有機構造体」又は「付加された混合金属有機構造体」と称される)は、式II
M1×M2
(2-x)(A)(B) II
により表され、式中、M1は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から独立して選択され;
M2は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から独立して選択され、並びに、M1はM2ではなく;
Xは0.00~2.0の値であり;
Aは、本明細書に記載のリンカー及びモジュレータであり;並びに
Bは、酸素、リン若しくは硫黄、又は、1~10アミン基を有するアミンなどの好適なルイス塩基(電子供与体)として機能可能である1つ以上の基を含有するリガンドである。
【0074】
しかも、配位する溶剤分子を伴う一般構造式IIの金属有機構造体は、材料のチャネル及び孔中に混入溶剤を含有していることが可能である。
【0075】
金属有機構造体系における使用に好適なリガンドは:1)CO2の結合に用いられる官能基、及び、2)金属の結合に用いられる官能基の(少なくとも)2つの官能基を有していることが可能である。金属に結合する第2の官能基もまた、アミンであることが可能である。アルコール、エーテル若しくはアルコキシドのような酸素含有基、カルベンのような炭素基、又は、アルケン若しくはアルキンのような不飽和結合、又は、硫黄原子などの他の官能基を用いることが可能である。
【0076】
同様に、トリアミンを、本明細書において提供されている金属構造体に付加されたリガンドとして用いることが可能である。しかしながら、トリアミンは、CO
2の協同的な挿入を効果的に促進しない場合がある。他方で、テトラアミン(4つのアミンを有する分子)は金属部位に結合する2つのアミンを有していることが可能であり、CO
2に対する結合部位をもたらすが、一方で、他の2つのアミンが、CO
2挿入時における電荷の平衡化に利用可能とされている。また、テトラアミンの挿入で、アミン分子の各々を金属有機構造体により強固に結合させることが可能となり(分子当り1つのアミンではなく、分子当り2つの金属に結合する2つアミン)、いくらかの安定性の向上がもたらされる。市販されているテトラアミン、並びに、いくつかの他の好適なアミンを以下に示す。
【化12】
【0077】
加えて、本金属有機構造体では、リガンドはアミンである必要はなく、酸素、リン又は硫黄などの種々の他の代替の原子を含むいずれかのルイス塩基(電子供与体)であることが可能である。
【0078】
一態様において、Bは:
【化13】
からなる群から選択されるリガンドであり、ここで、Zは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、硫黄又はセレニウムであり、並びに、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々、H、ハロゲン、メチル、ハロゲンで置換されたメチル及びヒドロキシルから独立して選択される。一態様において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は各々Hであり、並びに、Zは炭素である。
【0079】
一態様において、リガンドは2-(アミノメチル)-ピペリジン(2-ampd)である。
【0080】
本明細書において提供されているとおり、式Iは、M1
xM2
(2-x)(DOBPDC)(溶剤)2など、金属部位に配位する溶剤分子を含んでいることが可能である。以下に記載のプロトコルで合成されるとおり、例示的な溶剤は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。溶剤分子は減圧下での加熱により除去可能であり、これにより、「活性化」混合金属有機構造体が生成される。或いは、DMF(又は、水、メタノール等などの他の溶剤分子)は、混合金属有機構造体をアミンで処理することにより置き換えることが可能である。これは、「付加された」混合金属有機構造体又は混合金属混合有機構造体系と称され、及び、CO2に結合する材料である。例えば、混合金属混合有機構造体、アミン(「2-ampd」)は、例示的な式II、M1
xM2
(2-x)(DOBPDC)(2-ampd)2(M1
xM2
(2-x)-EMM-44と称される)をもたらすこととなる。
【0081】
それ故、式I、M1
xM2
(2-x)Aは、M1
xM2
(2-x)(DOBPDC)(DMF)2などの溶剤-結合混合金属有機構造体を含むことが可能であり、及び、不活性又は活性化であることが可能となる。他方で、式II、M1
xM2
(2-x)ABは、混合金属混合有機構造体系を指す。
【0082】
本明細書に記載されているとおり、金属有機構造体は、以上の多点(ポリトピック)有機リンカーによって結合される1種以上の特異的金属カチオン、金属クラスタ又は金属鎖から形成される多孔性結晶性材料である。
【0083】
従って、混合金属混合有機構造体(また、より一般には、本明細書において、「金属有機構造体」と称される)はまた、式III、M1
xM2
(2-x)(A1
aA2
bA3
c…An
(1-a-b-c-…))(III)により表されることが可能であり、式中、A1は多点有機リンカーであり、並びに、A2はA1とは異なる多点有機リンカーであり、並びに、A3はA1及びA2とは異なる多点有機リンカーであり;並びに、Anは、A1、A2…及びA(n-1)とは異なる多点有機リンカーである。
【0084】
一態様において、一般構造式IIIの金属有機構造体はまた、金属M1、M2に配位する溶剤分子を含む。
【0085】
しかも、配位する溶剤分子を伴う一般構造式IIIの金属有機構造体は、材料のチャネル及び孔中に混入溶剤を含有していることが可能である。
【0086】
一態様において、金属有機構造体系をもたらすリガンドは、リガンドを構造体系の1種以上の金属に配位させるために用いられる他の構造元素を含有していることが可能であり、特にこれらに限定されないが、以下の官能基:カルボキシレート、トリアゾレート、ピラゾレート、テトラゾレート、ピリジン、アミン、アルコキシド及び/又はスルフェート基が挙げられる。
【0087】
実施例において記載されているとおり、本金属有機構造体系は、以下のスキーム1に示されている2-ステッププロセスにおいて調製可能である。
【化14】
【0088】
ステップ1において、M1の好適な塩及びM2の好適な塩を、1種以上の有機リンカー及び/又は1種以上のモジュレータを適切な溶剤中に含有する混合物Aと組み合わせ、加熱して式Iにより一般に表される金属有機構造体系が得られる。一例として、マグネシウム塩を4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(H4DOBPDC)及びサリチル酸の混合物と組み合わせて、式Iの組成を有するMOF(式中、M1はマグネシウムであり、xは2であり、及び、Aは、MOF中に局所的欠陥を形成するリンカー、DOBPDC及びモジュレータ、サリチル酸の組み合わせである)が得られる。
【0089】
ステップ2において、金属有機構造体を好適な溶剤中においてリガンドと組み合わせる。一例として、金属有機構造体を2-(アミノメチル)ピペリジン(2-ampd)とトルエン中において組み合わせて、式IIの組成を有する金属有機構造体系(式中、M1はマグネシウムであり、xは2であり、Aは、DOBPDC及びサリチル酸であり、並びに、Bは2-ampdである)が得られる。
【0090】
一態様において、金属(又は、複数種の金属)と1種以上の有機リンカーとの反応により調製される金属有機構造体は、1種以上のモジュレータを伴う溶剤を介した交換により合成後に改変され得る。文献中において、Solvent Assisted Ligand Exchange(SALE)or Post-Synthetic Exchange(PSE)と称されているこの方法は、例えば、Karagiaridi,O.;Bury,W.;Mondloch,J.E.;Hupp,J.T.;Farha,O.K.,“Solvent-Assisted Linker Exchange:An Alternative to the De Novo Synthesis of Unattainable Metal-Organic Frameworks”,Angew.Chem.Int.Ed.2014,53,4530-4540)により考察されている。
【0091】
合成後の改変において、1種以上のモジュレータ(及び、場合により、追加の又は異なる有機リンカー)を含有する液体媒体を調製した金属有機構造体と接触させ、反応させて、有機リンカーの一部を後から添加したモジュレータと交換させる。一態様において、モジュレータ又は第2の有機リンカーの官能基は、第1の有機リンカーとは同一であっても異なっていてもよい。
【0092】
一態様において、局所的欠陥を含む本金属有機構造体には、15mol%以下、20mol%以下又は30mol%以下の金属有機構造体の原子組成による割合(mol%)で1種以上のモジュレータが組み込まれている。一態様において、金属有機構造体中の1種以上のモジュレータは、以下の約:0.1mol%;0.5mol%;1.5mol%;2mol%;2.5mol%;3.0mol%;3.5mol%;4.0mol%;4.5mol%;5mol%;5.5mol%;6.0mol%;6.5mol%;及び、7.0mol%の下限の一つによる金属有機構造体の原子組成(mol%)で存在する。一態様において、金属有機構造体中の1種以上のモジュレータは、以下の約:10mol%;12mol%;15mol%;18mol%;20mol%;22mol%;25mol%;28mol%;及び、30mol%の上限の一つによる金属有機構造体の原子組成(mol%)で存在する。
【0093】
一態様において、本金属有機構造体は、3-ヒドロキシプロピオン酸の誘導体を、約5mol%~約15mol%の金属有機構造体の原子組成による割合(mol%)で含む。構造体に付加されている誘導体は、特に限定されないが、3-ヒドロキシプロピオン酸の単一に-、又は、二重に-脱プロトン化された形態、又は、これらの組み合わせであることが可能であるが、本開示はこの特定の形態に限定はされない。
【0094】
一態様において、本金属有機構造体は、サリチル酸の誘導体を、約5mol%~約25mol%の金属有機構造体の原子組成による割合(mol%)で含む。構造体に付加されている誘導体は、特に限定されないが、サリチル酸の単一に-、又は、二重に-脱プロトン化された形態、又は、これらの組み合わせであることが可能であるが、本開示はこの特定の形態に限定はされない。
【0095】
また、本明細書においては、吸着材料が提供されている。本吸着材料は、局所的欠陥を含む本金属有機構造体を含む。金属有機構造体は、2種以上の金属及び複数の有機リンカー及び複数のモジュレータを含む。この吸着材料はさらに、複数のリガンドを含む。一態様において、複数のリガンドにおけるそれぞれのリガンドは、アミン、又は、酸素、リン若しくは硫黄などの他のルイス塩基(電子供与体)であって、2種以上の特異的元素及び金属有機構造体の金属イオンに付加されて、金属有機構造体系をもたらすものである。
【0096】
本金属有機構造体系は、従来の固体吸着媒と比してより少ない吸着媒質量及び体積でより優れた機能を発揮する多孔性の結晶性吸着媒の一分類を表す。本金属有機構造体系は、孔の表面に沿って配位的に不飽和の金属中心(開放された金属部位)を有する。金属カチオンは、ガス吸着媒を高度に分極するルイス酸として挙動し、及び、さらに、合成後官能化に適用可能である。十分に離れた開放された金属部位を有する金属有機構造体系において、ジアミンリガンド分子の1つのアミンがルイス塩基としての金属カチオンに結合可能であり、一方で、第2のアミンが、化学的に反応性の吸着部位として利用可能なままとされる。金属有機構造体系中の金属は、一組のリガンド、金属鎖又は金属クラスタ(一組のリガンドと相互作用する一つの群としての金属原子の集まり)により架橋された個別の金属原子であることが可能である。
【0097】
金属有機構造体系のリガンドのいくつか、又は、すべては、金属カチオンに配位されず、及び、可逆的な弱い化学結合をCO2と形成可能である官能基を含む。反応性の化学原子は、電子の孤立電子対を含有していることが可能であり、窒素、酸素、硫黄及びリンを含む。一態様において、これは塩基性アミンである。
【0098】
二酸化炭素適用
本明細書に記載されているとおり、2種以上の金属種のイオンを含有する金属有機構造体(「クラスター」又は「鎖」)は、ジアミンリガンド(「リガンド」)で後に官能基化(又は、付加)されて、金属有機構造体系がもたらされる。本金属有機構造体系は、種々の用途及び排出流におけるCO2の吸着媒又は吸着媒材料として有用である。本明細書に記載の新規金属有機構造体の各々は、必ずしも必須ではないが、2種以上の金属種を含有することが可能である。金属有機構造体は、複数の金属供給源から調製可能であり、及び、アミンなどの1種以上の有機リガンドにより付加されて、金属有機構造体系がもたらされる。金属有機構造体系は、V型等温線を表す。金属有機構造体に組み込まれる金属の比を変更することにより、等温線中の段の位置をCO2分圧の関数として変更することが可能である。
【0099】
例えば、一態様において、金属有機構造体は、後に、アミン2-ampdで官能基化されて、金属有機構造体系、EMM-44をもたらすことが可能である。この金属有機構造体系は、CO2に可逆的、かつ、選択的に結合可能であり、及び、繰り返しの使用のために、温和な加熱又は減圧への露出によって、再生可能である。
【0100】
米国特許第9,861,953号明細書に記載されているとおり、複合ガス分離用アルキルアミン官能基化金属有機構造体、金属有機構造体、MOF-274が教示されている。この構造体は、CO2捕集のために有利なV型等温線をもたらすことが可能な個別の金属前駆体から合成可能であるが、本明細書において提供されている金属有機構造体ではない。一般に、V型等温線を示す吸着媒材料は、同様の全体吸着能を有する吸着媒より高い作業性能を有するが、より一般的なI型等温線をも有する。他のこのような構造体は、J.Am.Chem.Soc,2012,134,7056-7065,Nature,2015,519,303-308,J.Am.Chem.Soc,2017,139,10526-10538,J.Am.Chem.Soc.2017,139,13541-13553、及び、Chem Sci,2018,9,160に記載されている。
【0101】
本吸着材料の使用方法は、二酸化炭素/窒素、二酸化炭素/水素、二酸化炭素/メタン、二酸化炭素/酸素、一酸化炭素/窒素、一酸化炭素/メタン、一酸化炭素/水素、硫化水素/メタン及び硫化水素/窒素などの複合ガス流からの個別のガスの単離を含む、多様なガス分離及び操作用途を含む。
【0102】
固体材料への物理吸着に係る主な有益性としては、水性アミンと比して必要とされる再生エネルギーが低いことがある。しかしながら、この有益性には、低い性能及び劣った選択性という犠牲が頻繁に伴う。本系は、固体材料への化学吸着によりCO2と結合可能な部位の組み込みを介して、2つのアプローチを橋渡しすることが可能である吸着媒(吸着媒材料)を提供する。これらの吸着材料では、水性溶剤の必要性が排除され得、また、従来のアミンスクラバーと比して再生費用が顕著に低く、それでもなお、低圧におけるCO2に対する並外れた選択性及び高い性能が保持され得る。
【0103】
一般に、金属有機構造体は、アルキルアミンの組み込みによりその後に官能基化される多孔性結晶性固形分である。同様に、本明細書において提供されている金属有機構造体は、アルキルアミンの組み込みによりその後に官能基化されて、芳香族アミンを超える高い塩基性を示し、及び、酸性ガスを吸着可能である多孔性結晶性固形分である。
【0104】
一態様において、金属有機構造体系は、低い温度及び圧力でガスを分離可能である。金属有機構造体系は、ガス流からの二酸化炭素及び水素及びメタンの燃焼前分離に、並びに、低い圧力及び濃度における燃焼後の煙道ガスからの二酸化炭素の分離に有用である。金属有機構造体は、多くの異なる分離に対する要求に対応可能である。
【0105】
より具体的には、本開示の態様においては、開示されている吸着材料に係る多数の技術的用途が存在する。このような用途の一つは、石炭煙道ガス又は天然ガス煙道ガスからの炭素捕集である。地球規模における気候変動をもたらす二酸化炭素(CO2)の大気中レベルの上昇のため、発電所などの点在する発生源からCO2の排出を低減するための新たな戦略が必要である。特に、石炭を燃料とする発電所は、世界的なCO2排出量の30~40%の原因となっている。本明細書において参照により援用されている、Quadrelli et al.,2007,“The energy-climate challenge:Recent trends in CO2 emissions from fuel combustion”,Energy Policy 35,pp.5938-5952を参照のこと。それ故、雰囲気圧及び40℃で、CO2(15~16%)、O2(3~4%)、H2O(5~7%)、N2(70~75%)及び微量の不純物(例えば、SO2、NOx)から構成されるガス流である、石炭煙道ガスから炭素を捕集するための新規吸着媒の開発に係る継続的な要求が未だ存在している。本明細書において参照により援用されている、Planas et al.,2013,“The Mechanism of Carbon Dioxide Adsorption in an Alkylamine-Functionalized Metal-organic Framework”,J.Am.Chem.Soc.135,pp.7402-7405を参照のこと。同様に、燃料源としての天然ガスの使用が増えていることにより、天然ガスにより稼働する発電所の煙道ガスからCO2を捕集可能な吸着媒に対する要求が必然的となっている。天然ガスの燃焼から生成される煙道ガスは、およそ4~10%CO2の低いCO2濃度を含むと共に、ガス流の残部は、H2O(飽和)、O2(4~12%)及びN2(残余)から構成される。特に、温度スイング吸着プロセスについては、吸着媒は、以下の特性を有するべきである:(a)再生エネルギー費用を最低限とするために、最低限の温度スイングでの高い作業性能;(b)石炭煙道ガスの他の構成要素に対する、CO2への高い選択性;(c)煙道ガス条件下でのCO2の90%捕集率;(d)高湿条件下での効果的な性能;及び、(d)高湿条件下での、吸着/脱吸着サイクルに対する長期にわたる安定性。
【0106】
他のこのような用途は、粗バイオガスからの炭素捕集である。有機物の分解によって生成されるCO2/CH4混合物であるバイオガスは、従来の化石燃料源を置き換える可能性を有する再生可能な燃料源である。粗バイオガス混合物からのCO2の除去は、この将来性のある燃料源をパイプライン品質のメタンに改善するためのもっとも困難な態様の一つである。従って、高い作業性能及び最低限の再生エネルギーでCO2をCO2/CH4混合物から選択的に除去するための吸着媒の使用は、エネルギー分野における用途のための天然ガスに代わるバイオガスの使用に係る費用を大きく削減させる可能性がある。
【0107】
本開示の組成物(吸着材料)は、富CO2ガス流からCO2の大部分をストリッピングするために使用可能であり、CO2に富む吸着材料は、温度スイング吸着法、圧力スイング吸着法、減圧スイング吸着法、濃度スイング吸着法、又は、これらの組み合わせを用いてCO2をストリッピングすることが可能である。温度スイング吸着法及び減圧スイング吸着法の例が、国際公開第2013/059527号パンフレット A1に開示されている。
【0108】
等量吸着熱の計算で、具体的には、一連の異なる温度にわたって行う吸着等温線の分析から判定される、吸着質と吸着媒との間における相互作用の強度の指標が得られる。J.Phys.Chem.B,1999,103,6539-6545;Langmuir,2013,29,10416-10422。示差走査熱量測定法は、パラメータ(温度又はCO2圧など)の変化に伴う、放出又は吸収されるエネルギーの量を計測するための技術である。
【0109】
以下の実施例において、局所的欠陥を有する金属有機構造体を調製し、及び、特徴付けをした。
【0110】
MOF-274系の特徴付け
粉末X線回折(PXRD)
金属有機構造体を十分な混合及び超音波処理によりメタノール中に懸濁させ、次いで、バックグラウンドがゼロのセルにドロップキャストした。45kV/40mA及び0.02の開口度で操作され、4~50 2-θのスペクトルを10分間得るX線発生器を備えるBruker D8 Endeavor機器で、粉末X線回折データを収集した。
図1に示されているとおり、代表的なMOF-274の粉末X線回折パターンを示す。サンプル1~5は同一の材料の異なるバッチであり、ここで、アミンは付加されておらず、及び、構造体は官能基化又は活性化されていない。
【0111】
欠陥の特徴付け
本明細書において提示されている金属有機構造体における局所的欠陥の存在は、Eur.J.Inorg.Chem.2016,2017-2024に記載されているとおり、欠陥材料のマジック角回転(MAS)核磁気共嗚(NMR)を介して、モジュレータの存在により特徴付けられる。実施例1に記載の消化材料の溶液-状態NMRはまた、モジュレータ/欠陥の存在を効果的に探査可能である。組成物における欠陥の探査に追加して、これらの欠陥が存在することの影響もまた、J.Am.Chem.Soc.2018,140,5,1663-1673において詳述されているパルス電解傾斜(PFG)NMRによって計測される、CO2の異方性拡散において観察可能である。
【0112】
熱重量分析(「TGA」)
TGA分析は、1気圧の乾燥した空気下における温度の関数としての材料の重量の応答を記録する。TGA曲線は、窒素流下においてTA Q500熱分析システムで記録した。
【0113】
走査型電子顕微鏡(「SEM」)
SEM画像により、バルク材料の形状、形態学、及び、材料多分散性の評価の状況が得られる。画像を、Hitachi SEMにて、2keV加速電圧で、上方の検出器を用いて収集した。
【実施例】
【0114】
実施例I
金属有機構造体の調製
サリチル酸を用いる局所的欠陥を有するMOF-274
33mLのメタノール及び27mLのDMFのスパージした溶液を含む容器に、2.328g(9.08mmol)のMg(NO3)2・6H2O及び2g(7.3mmol)のH4DOBPDCを仕込む。完全に溶解するまで溶液を撹拌し、次いで、この溶液15mLを、3つの23mLのTeflonライニングのオートクレーブの各々に移す。オートクレーブの各々に、78、31又は16mgのサリチル酸(それぞれ、0.25当量、0.1当量、0.05当量)を添加し、完全に溶解するまで撹拌する。反応器をシールし、120℃に96時間加熱する。
【0115】
実施例1で生成した金属有機構造体を、多様な技術で特徴付けして、
図1に、粉末X線回折(「PXRD」)による良好な結晶性を示した。MOF-247のサンプルをサリチル酸で処理したところ、25%濃度で処理したサンプルについて
図2A及び2Bに、10%濃度で処理したサンプルについて
図3A及び3Bに、並びに、5%濃度で処理したサンプルについて
図4A及び4Bにおいて示すとおり、ブロック状の棒状結晶性形態学ブロック状の棒状結晶性形態学が示された。また、サンプルを、
図5に示されている分解プロファイルに示されるとおり、TGAにより特徴付けした。
【0116】
モジュレータの組み込み、及び、局所的欠陥の確認を、DMSO中のMOF-274のサンプルを1~2滴のD
2O中のDClで消化し、次いで、1H NMRスペクトルを収集し、及び、組み込まれたモジュレータについて、金属有機構造体中のリガンドによるピークによってピーク面積積分値を正規化することで達成した。サリチル酸とH
4DOBPDCとの分子的な類似性により、1H NMRスペクトルは分解が困難であり、ここで、およそ7.89ppmで観察された特徴的な特性は、7.86ppmにおける有機リンカーによるピークと略重畳されていた。このデータを
図6~8に示し、ここで、挿入図は、7.89及び7.86ppmにおけるピークを示す。
【0117】
実施例2
金属有機構造体の調製
3-ヒドロキシプロピオン酸を用いる局所的欠陥を有するMOF-274
20mLの水、16mLのTHF及び15.5mLのアセトニトリルのスパージした溶液を含む容器に、269mg(1.05mmol)のMg(NO3)2・6H2O、115mg(0.42mmol)の4,4’-ジヒドロキシ-[1,1’-ビフェニル]-3,3’-ジカルボン酸(H4DOBPDC)及び971.25mg(4.2mmol)の3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸ナトリウム塩(Na MOPS)を仕込む。完全に溶解するまで溶液を撹拌し、次いで、6mLのアリコートを、10mLのTeflonライニングのオートクレーブに分取する。オートクレーブの各々に、2.3μL(0.05当量)~45.4μL(1当量)の30mol%3-ヒドロキシプロピオン酸溶液を添加し、それぞれ、3-ヒドロキシプロピオン酸の5%、10%及び25%の濃度(体積基準)を有するサンプルを得る。反応器をシールし、120℃で24時間加熱する。
【0118】
生成した金属有機構造体を、多様な技術で特徴付けし、
図9に、粉末X線回折(PXRD)による良好な結晶性を示した。
【0119】
モジュレータの組み込みの確認を、DMSO中のMOF-274のサンプルを1~2滴のD
2O中のDClで消化し、次いで、1H NMRスペクトルを収集し、及び、組み込まれたモジュレータについて、金属有機構造体中のリガンドによるピークによってピーク面積積分値を正規化することで達成した。3-ヒドロキシプロピオン酸-配合MOF-274について、固有ピークは3.48及び1.64ppmに存在しており、これらは、MOF-274構造体を構成する他の分子から明らかに特異的である。これにより、元の合成に包含されるモジュレータの割合の関数としての積分値が可能となる。結果は、表1及び
図10に示す。
1H NMRスペクトルは、
図11~13の濃度の各々について提供されている。
【0120】
【0121】
一定の機構は、一組の数値的上限及び一組の数値的下限を用いて記載されている。別段の定めがある場合を除き、いずれかの下限からいずれかの上限までの範囲が意図されていると評価されるべきである。一定の下限、上限及び範囲が、以下の請求項の1つ以上に記載されている。すべての数値が、当業者によって予期されるであろう実験上の誤差及び変動を考慮している。
【0122】
種々の用語が上記において定義されている。請求項において用いられている用語は上記において定義されていない範囲で、少なくとも1つの印刷された刊行物又は発行された特許において反映されるとおり、その用語が当業者に与えるもっとも広い定義とされるべきである。さらに、本出願において引用されているすべての特許、テスト手法及び他の書面は、このような開示が本出願と矛盾しない限りにおいて、及び、援用が許容されるすべての法域について、参照によりすべてが援用される。
【0123】
本開示に係る前述の記載は本方法論を例示すると共に説明する。また、本開示は例示的な方法を示すと共に説明するが、種々の他の組み合わせ、改変及び環境が採用され得、本方法は、上記の教示、及び/又は、関連技術に係る技能若しくは知識に対応する、本明細書において表記される概念の範囲内において変更又は改変が可能であることが理解されるべきである。