特許 7504202 インシュレータ、固定子、及び回転電機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-06-13

(45)【発行日】2024-06-21

(54)【発明の名称】インシュレータ、固定子、及び回転電機

(51)【国際特許分類】

   H02K 3/50 20060101AFI20240614BHJP

   H02K 3/04 20060101ALI20240614BHJP

   H02K 3/34 20060101ALI20240614BHJP

【ＦＩ】

H02K3/50 A

H02K3/04 J

H02K3/34 B

【請求項の数】 7

(21)【出願番号】P 2022521827

(86)(22)【出願日】2021-04-28

(86)【国際出願番号】 JP2021016944

(87)【国際公開番号】W WO2021230084

(87)【国際公開日】2021-11-18

【審査請求日】2022-12-16

(31)【優先権主張番号】P 2020085085

(32)【優先日】2020-05-14

(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP

(73)【特許権者】

【識別番号】513296958

【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001634

【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】荒木 貴志

(72)【発明者】

【氏名】望月 資康

(72)【発明者】

【氏名】松本 昌明

【審査官】服部 俊樹

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１５－１３３８０８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－０６８０２６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｈ０２Ｋ ３／４６

Ｈ０２Ｋ ３／５０

Ｈ０２Ｋ ３／０４

Ｈ０２Ｋ ３／３４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

環状の固定子コアを構成しかつ前記固定子コアの径方向であるコア径方向の内側に延びるティースを有する複数の分割コアの各々に装着されるインシュレータであって、
前記ティースに被着され、渡り線部を有するコイルが巻回される外周を有するティース被覆部と、
前記ティース被覆部の前記コア径方向の外側に形成された渡り線案内部と、
を備え、
前記渡り線案内部は、前記ティース被覆部から引き出された前記コイルの前記渡り線部、及び、前記ティース被覆部が装着された第１分割コアとは異なる第２分割コアから引き出されて前記渡り線案内部に導入される導入コイルの導入渡り線部を、前記固定子コアの周方向であるコア周方向に沿うように端子接続部に案内し、
前記渡り線案内部は、
複数の前記分割コアから引き出された互いに異なる相を有する前記コイルの前記渡り線部を相ごとに前記コア径方向に離間して前記コア周方向に案内可能な複数の案内壁と、
複数の前記案内壁の全てを前記コア径方向に貫通する引き出し溝と、
前記引き出し溝から前記コア周方向に離間した位置に配置され、複数の前記案内壁のうち前記コア径方向の最も内側に位置する内側案内壁を貫通しておらず、複数の前記案内壁のうち前記内側案内壁以外の案内壁を前記コア径方向に貫通し、前記引き出し溝から引き出された前記コイルの前記渡り線部を、複数の前記案内壁のうち互いに隣接する２つの案内壁の間に挿通させる引き回し通路と、
前記引き出し溝から引き出された前記コイルの前記渡り線部の向きを、前記引き回し通路に向くように変えて、前記渡り線部を支持する渡り線支持部と、
を備えている、
インシュレータ。

【請求項2】

前記コイルは、平角線によって構成される、
請求項１に記載のインシュレータ。

【請求項3】

前記引き出し溝は、複数の前記案内壁の各々の前記コア周方向の両端部から離間した内側位置に形成され、
前記引き回し通路は、複数の前記案内壁のうちの、前記引き出し溝から前記コア周方向における一端側に向かう方向に離間した位置と、前記引き出し溝から前記コア周方向における他端側に向かう方向に離間した位置に形成されている、
請求項１又は請求項２に記載のインシュレータ。

【請求項4】

前記渡り線案内部は、
前記引き出し溝から引き出された前記コイルの前記渡り線部の変位を規制する規制溝と、
前記第２分割コアから引き出されて複数の前記案内壁に案内される前記導入コイルの前記導入渡り線部を、前記規制溝に対して、前記固定子コアの軸方向であるコア軸方向に離間させる離間壁と、
を備えている、
請求項１から請求項３のいずれか一項に記載のインシュレータ。

【請求項5】

前記規制溝の底面は、前記引き回し通路に向かうように円弧状に湾曲している、
請求項４に記載のインシュレータ。

【請求項6】

請求項１から請求項５のいずれか一項に記載のインシュレータと、
前記インシュレータが装着される複数の前記分割コアと、
を備える、
固定子。

【請求項7】

請求項６に記載の固定子と、
前記固定子に対して回転自在に配置される回転子と、
を備える、
回転電機。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明の実施形態は、インシュレータ、固定子、及び回転電機に関する。

【背景技術】

【0002】

固定子と回転子とを備えた回転電機が知られている。固定子は、例えば、円環状の固定子コアと、固定子コアの内周面から径方向内側に向かって突出した複数のティースと、ティースに巻回されたコイルと、ティースに装着されティースとコイルとの間の絶縁を確保するためのインシュレータと、を備える。

【0003】

回転子は、例えば、固定子の径方向内側に回転自在に配置された略円柱状の回転子コアと、回転子コアに設けられたマグネットと、を備える。
このような構成のもと、コイルに電流を供給すると、各ティースに鎖交磁束が発生する。この鎖交磁束と回転子のマグネットとの間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、回転子が回転する。

【0004】

また、この種の回転電機として、コイルの巻回作業を容易にし、コイルの占積率を高めるために、固定子コアを複数の分割コアによって構成された回転電機が知られている。
この回転電機で用いられる分割コアは、固定子コアの円環形状部を形成する略円弧状のバックヨーク部と、バックヨーク部から径方向内側に突出するティースとを有している。分割コアには、絶縁材料から成るインシュレータが装着されている。インシュレータは、ティース被覆部と渡り線案内部とを備えている。ティース被覆部は、ティースに装着される。ティース被覆部の外周にはコイルが巻回される。渡り線案内部は、ティース被覆部から引き出されたコイルと、他の分割コアから引き出されたコイルとを端子接続部に案内する。渡り線案内部は、コアの径方向外側において、略円弧状に形成されている。渡り線案内部は、ティース被覆部と一体に形成されている。渡り線案内部には、複数の案内溝（複数の段）が形成されている。複数の案内溝の各々は、ティース被覆部から引き出されたコイルの渡り線部と、他の分割コアから引き出されたコイルの渡り線部とを、固定子コアの円周方向に沿って案内する。複数の案内溝は、相（例えば、Ｕ相、Ｖ相、Ｗ相）ごとにコアの径方向に離間している。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【文献】日本国特許第５６６６９７６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

しかし、上記従来の回転電機は、ティース被覆部からコア径方向の外側に引き出されたコイルの渡り線部が、渡り線案内部の対応する案内溝に沿うように単純に曲げられた構造を有する。このため、固定子を組立てる時に、各コイルの渡り線部を引き回しながら複数の分割コイルを組み付ける際に、インシュレータのティース被覆部の上からティースに巻回したコイルが緩み、コイルの巻き崩れが生じることが懸念される。

【0007】

本発明が解決しようとする課題は、固定子を組立てる時におけるコイルの巻き崩れを抑制することができるインシュレータ、固定子、及び回転電機を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0008】

実施形態のインシュレータは、ティース被覆部と、渡り線案内部とを持つ。前記渡り線案内部は、複数の案内壁と、引き出し溝と、引き回し通路と、渡り線支持部と、を備えている。複数の前記案内壁は、複数の前記分割コアから引き出された互いに異なる相を有する前記コイルの前記渡り線部を相ごとに前記コア径方向に離間して前記コア周方向に案内可能である。前記引き出し溝は、複数の前記案内壁の全てを前記コア径方向に貫通する。前記引き回し通路は、前記引き出し溝から前記コア周方向に離間した位置に配置され、複数の前記案内壁のうち前記コア径方向の最も内側に位置する内側案内壁を貫通しておらず、複数の前記案内壁のうち前記内側案内壁以外の案内壁を前記コア径方向に貫通し、前記引き出し溝から引き出された前記コイルの前記渡り線部を、複数の前記案内壁のうち互いに隣接する２つの案内壁の間に挿通させる。前記渡り線支持部は、前記引き出し溝から引き出された前記コイルの前記渡り線部の向きを、前記引き回し通路に向くように変えて、前記渡り線部を支持する。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】実施形態の回転電機を軸方向の一側から見た平面図。

【図2】実施形態の回転電機を軸方向の他側から見た平面図。

【図3】実施形態の回転電機から回転子を取り去った状態を示す図であって、図２のＩＩＩ－ＩＩＩ線に沿う断面図。

【図4】実施形態の巻線ブロックを一方向から見た斜視図。

【図5】実施形態の巻線ブロックを他方向から見た斜視図。

【図6】図３のＩＶ－ＩＶ線に沿う断面図。

【図7】実施形態の第１インシュレータを一方向から見た斜視図。

【図8】実施形態の第１インシュレータを他方向から見た斜視図。

【図9】実施形態の第２インシュレータを一方向から見た斜視図。

【図10】実施形態の第２インシュレータを図９のＸ矢視方向から見た斜視図。

【図11】実施形態の第２インシュレータと分割コアの一部とを径方向外側から見た平面図。

【図12】実施形態の第２インシュレータを示す断面図であって、図１１のＸＩＩ－ＸＩＩ線に沿う図。

【図13】実施形態の第２インシュレータを図１１のＸＩＩＩ矢視方向から見た平面図。

【図14】実施形態のインシュレータ（分割コア）にコイルを組み付けた巻線ブロックを軸方向から見た平面図。

【図15】実施形態の第２インシュレータを示す図であって、図１１のＸＩＩ－ＸＩＩ線に沿う断面図。

【図16】実施形態の固定子の結線図。

【図17】実施形態のＵ相の巻線ブロックにおけるコイルの結線状態を示す図。

【図18】実施形態のＶ相の巻線ブロックにおけるコイルの結線状態を示す図。

【図19】実施形態のＷ相の巻線ブロックにおけるコイルの結線状態を示す図。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、実施形態のインシュレータ、固定子、及び回転電機を、図面を参照して説明する。
図面においては、符号Ａｘは、軸方向を指す。符号Ｃｉは、周方向を指す。符号Ｒは、径方向を指す。

【0011】

図１は、回転電機１を軸方向の一側から見た平面図である。図２は、回転電機１を軸方向の他側から見た平面図である。また、図３は、回転電機１から回転子３を取り去った状態を示す図であって、回転電機１を示す図２のＩＩＩ－ＩＩＩ線に沿う断面図である。
回転電機１は、略円筒状の固定子２と、固定子２の径方向内側に配置され固定子２に対して回転自在に設けられた回転子３と、を備える。
以下の説明では、回転子３の回転軸線Ｃと平行な方向を軸方向と称し、回転子３の回転方向を周方向と称し、軸方向及び周方向に直交する回転子３の径方向を単に径方向と称する。
なお、後述する固定子コア７の軸方向であるコア軸方向は、回転子３の回転軸線Ｃが延びる方向と合致する。固定子コア７の周方向であるコア周方向は、回転子３の回転方向と合致する。固定子コア７の径方向であるコア径方向は、回転子３の径方向と合致する。

【0012】

回転子３は、回転軸線Ｃ回りに回転するシャフト４と、シャフト４に固定された回転子コア５と、を備える。回転子コア５の径方向中央には、回転子コア５を軸方向に貫通する貫通孔５ａが形成されている。この貫通孔５ａには、シャフト４が、例えば、圧入により固定されている。回転子コア５の外周部寄りの位置には、図示しない複数のマグネットが周方向に並んで取り付けられている。

【0013】

固定子２は、円筒状の固定子ケース６の内周面に嵌合して固定されている。固定子ケース６及び固定子２の軸方向は、回転軸線Ｃと一致している。固定子２は、固定子コア７と、絶縁性の固定子コア７と、コイル１０と、を備える。固定子コア７は、円筒状のコア本体部７Ａ（図１参照）と、コア本体部７Ａの内周面７ａに突設された複数（例えば、本実施形態では２４個）のティース８とを有する。インシュレータ９は、各ティース８の周囲を被覆するように固定子コア７に装着されている。コイル１０は、ティース８に装着されたインシュレータ９に集中巻き方式により巻回されている。

【0014】

ここで、固定子コア７には、周方向に分割可能な分割コア構造が採用されている。すなわち、固定子コア７は、複数の分割コア１１により構成されている。分割コア１１は、ティース８ごとに周方向に分割された部材である。複数の分割コア１１が環状に連結されることで、固定子コア７が構成されている。本実施形態では、分割コア１１の個数は、２４個となる。

【0015】

図４は、分割コア１１にインシュレータ９を介してコイル１０を巻回した巻線ブロック５１を示す斜視図である。図４は、巻線ブロック５１を一方向から見た図である。図５は、巻線ブロック５１を他方向から見た斜視図である。また、図６は、図３のＩＶ－ＩＶ線に沿う図であって、巻線ブロック５１を示す断面図である。
図４～図６に示すように、分割コア１１は、例えば、複数の金属板を積層することによって構成されている。分割コア１１は、軟磁性粉を加圧成形することによって形成されてもよい。分割コア１１は、周方向に延びるバックヨーク部１２と、バックヨーク部１２の周方向における中央から径方向内側に向かって突出するティース８と、を備える。
バックヨーク部１２は、分割コア１１を環状に連結したときに固定子コア７の環状の磁路を形成する箇所である。軸方向に直交する方向におけるバックヨーク部１２の断面形状は、円弧形状である。

【0016】

バックヨーク部１２の周方向の両端部には、連結部１３ａ，１３ｂが形成されている。互いに隣り合う２つのバックヨーク部１２は、連結部１３ａ，１３ｂにおいて連結される。具体的には、互いに隣り合う２つのバックヨーク部１２のうち一方のバックヨーク部（第１バックヨーク部）の連結部１３ａが他方のバックヨーク部（第２バックヨーク部）の連結部１３ｂに圧入されることで、２つのバックヨーク部１２が連結される。２つの連結部１３ａ，１３ｂのうち、一方の連結部１３ａ（第１連結部）は、凸形状に形成されている。２つの連結部１３ａ，１３ｂのうち、他方の連結部１３ｂ（第２連結部）は、連結部１３ａを受け入れ可能な凹形状に形成されている。

【0017】

ティース８は、径方向に沿って延びるティース本体１４と、鍔部１５と、を備える。ティース８は、固定子コア７の径方向であるコア径方向の内側に延びる。鍔部１５は、ティース本体１４の径方向内側の端部に位置する。鍔部１５は、ティース本体１４の先端部に一体に成形されている。鍔部１５は、周方向両側に沿って延びる。
これによって、ティース本体１４と鍔部１５とバックヨーク部１２（後述するバックヨーク部１２の内側面１２ａ）とに囲まれたスロット１６が形成されている。スロット１６には、複数の巻数でコイル１０（平角線）が巻回される。つまり、各分割コア１１のティース８の両側には、対を成すスロット１６が形成される。

【0018】

インシュレータ９は、第１インシュレータ１７と、第２インシュレータ１８とによって構成されている。第１インシュレータ１７及び第２インシュレータ１８は、ティース８の軸方向において互いに分離又は結合が可能である。
第１インシュレータ１７は、ティース８の軸方向（コア軸方向）における一方方向（例えば、ティース８の上方から下方に向かう方向）に沿って移動することで、ティース８に装着される。第１インシュレータ１７は、第２インシュレータ１８と係合する係合部を有する。
第２インシュレータ１８は、ティース８の軸方向（コア軸方向）における他方方向（例えば、ティース８の下方から上方に向かう方向）に沿って移動することで、ティース８に装着される。第２インシュレータ１８は、第１インシュレータ１７と係合する係合部を有する。
すなわち、インシュレータ９は、２つのインシュレータが軸方向に分割可能な分割構成を有する。
ティース８にインシュレータ９が装着された状態では、第１インシュレータ１７と第２インシュレータ１８とは隙間なく重なり合う。第１インシュレータ１７と第２インシュレータ１８との間からティース８が露出されることがない。
コイル１０は、ティース８に装着されたインシュレータ９に巻回される。コイル１０をティース８に巻回する工程においては、コイル１０が最初に第１インシュレータ１７に巻回される（巻き始め）。ティース８に対するコイル１０の巻回が終了した後、コイル１０の巻き終わり端は、第２インシュレータ１８から引き出される。

【0019】

図７は、第１インシュレータ１７を一方向から見た斜視図である。図８は、第１インシュレータ１７を他方向から見た斜視図である。
図６～図８に示すように、第１インシュレータ１７は、ティース８の軸方向（コア軸方向）における一端面（第１ティース端面）を覆う端面被覆部２１と、ティース８の周方向における両側面を覆う２つの側面被覆部２２，２３（第１側面被覆部２２、第２側面被覆部２３）と、各被覆部２１～２３の径方向における外側端に一体に成形されている外壁部２４（第１壁部）と、各被覆部２１～２３の径方向における内側端に一体に成形されている内壁部２５（第２壁部）と、を備えている。

【0020】

外壁部２４は、バックヨーク部１２の内側面１２ａ（図６参照）を被覆する。外壁部２４は、外壁突出部２７を有する。外壁突出部２７は、分割コア１１のバックヨーク部１２の軸方向の一端面（第１バックヨーク端面）から軸方向外側（軸方向の一端側）に突出する。外壁突出部２７の周方向における中央には、コイル導入スリット２８が形成されている。コイル導入スリット２８は、径方向及び周方向に交差するように、軸方向からみて斜めに延びて形成されている。コイル導入スリット２８は、外壁部２４の径方向外側から径方向内側へとコイル１０を導く。

【0021】

外壁突出部２７の外側面２７ａには、コイル押え壁２９が形成されている。コイル押え壁２９は、外壁部２４の径方向外側でコイル１０の中性点側の渡り線部１０ａ（図４，図５参照）を収納する。コイル押え壁２９は、底壁部２９ａと、側壁部２９ｂとを備える。底壁部２９ａは、外壁突出部２７の根元から径方向外側に向かって突出する。側壁部２９ｂは、底壁部２９ａの径方向における外側端から外壁突出部２７と平行に立ち上がる。底壁部２９ａと、側壁部２９ｂと、外壁突出部２７とにより、渡り線収納部３０が形成される。渡り線収納部３０は、コイル１０の中性点側の渡り線部１０ａを収納する。渡り線収納部３０を構成する外壁突出部２７の外側面２７ａの一部には、凹部３１が形成されている。凹部３１には、互いに異なる相の渡り線部同士の接合部が配置される。

【0022】

内壁部２５は、ティース８の鍔部１５の内側面１５ａ（径方向外側の面）を被覆する。内壁部２５は、ティース本体１４の軸方向における一端面から軸方向外側に突出する内壁突出部３２を有する。

【0023】

図９は、第２インシュレータ１８を径方向内側から見た斜視図である。図１０は、第２インシュレータ１８を図９のＸ矢視方向から見た斜視図である。
図３、図９、図１０に示すように、第２インシュレータ１８は、ティース８の軸方向（コア軸方向）の他端面（第２ティース端面）を覆う端面被覆部４１と、ティース８の周方向における両側面を覆う２つの側面被覆部４２，４３（第１側面被覆部４２、第２側面被覆部４３）と、各被覆部４１～４３の径方向における外側端に一体に成形されている外壁部４４と、各被覆部４１～４３の径方向における内側端に一体に成形されている内壁部４５と、を備えている。

【0024】

外壁部４４は、分割コア１１のバックヨーク部１２の内側面１２ａを被覆する。外壁部４４の軸方向の他端部（軸方向のうちの第１インシュレータ１７から第２インシュレータ１８に向かう方向における端部）には、渡り線案内ブロック５０（渡り線案内部）が形成されている。外壁部４４と渡り線案内ブロック５０とは、一体に形成されている。渡り線案内ブロック５０は、バックヨーク部１２の軸方向の他端面（第１バックヨーク端面）に対して軸方向外側（軸方向の他端側）に突出し、かつ、径方向外側に膨出する。渡り線案内ブロック５０は、軸方向から見て分割コア１１のバックヨーク部１２の形状に沿うように略円弧形状に形成されている。渡り線案内ブロック５０は、ティース被覆部３５のコア径方向の外側に形成されている。

【0025】

渡り線案内ブロック５０の周方向の略中央位置（両端部から離間した内側位置）には、径方向（コア径方向）の内側から外側に貫通する引き出し溝４８が形成されている。引き出し溝４８は、渡り線案内ブロック５０の軸方向の他端側の端面から軸方向の内側に向かって延びている。引き出し溝４８は、所定の深さを有する。引き出し溝４８の深さは、第２インシュレータ１８の設計に応じて設定される。ティース８に装着されたインシュレータ９に巻回されたコイル１０の終端部は、端子側の渡り線部１０ｂである。コイル１０の終端部は、引き出し溝４８から径方向外側に引き出される。渡り線案内ブロック５０は、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂを、いずれかの端子７０Ｕ，７０Ｖ，７０Ｗ（図２，図３参照）の引き出し位置（端子接続部）に案内する。端子７０Ｕ，７０Ｖ，７０Ｗの各々は、図２に示すように、規定の巻線ブロック５１の軸方向における端面から軸方向外側に突出している。
つまり、渡り線案内ブロック５０は、ティース被覆部３５から引き出されたコイル１０の渡り線部１０ｂ、及び、コイル１０が巻回されたティース被覆部３５が装着されたティース８を備える分割コア１１（第１分割コア）とは異なる分割コア（第２分割コア）から引き出されて渡り線案内ブロック５０に導入されるコイル１０（導入コイル）の渡り線部１０ｂ（導入渡り線部）を、固定子コア７の環状形状に略沿う円周上に配置される端子７０Ｕ，７０Ｖ，７０Ｗのいずれかの引き出し位置（端子接続部）に案内する。
換言すると、「コイル１０が巻回されたティース被覆部３５が装着されたティース８を備える分割コア１１（第１分割コア）とは異なる分割コア（第２分割コア）から引き出されて渡り線案内ブロック５０に導入されるコイル１０（導入コイル）の渡り線部１０ｂ（導入渡り線部）」は、第１分割コアの引き出し溝４８を通っていない導入渡り線部である。
渡り線案内ブロック５０は、案内溝５５を有する。案内溝５５は、ティース被覆部３５から引き出されたコイル１０の渡り線部１０ｂ、及び、コイル１０が巻回されたティース被覆部３５が装着されたティース８を備える分割コア１１（第１分割コア）とは異なる分割コア（第２分割コア）から引き出されて渡り線案内ブロック５０に導入されるコイル１０（導入コイル）の渡り線部１０ｂ（導入渡り線部）を、固定子コア７の周方向であるコア周方向に沿うように案内する。
ここで、「分割コア１１（第１分割コア）とは異なる分割コア（第２分割コア）」とは、図１及び図２に示す複数の分割コア１１における１つの分割コア１１（第１分割コア）とは異なる他の分割コアを意味する。
なお、各端子７０Ｕ，７０Ｖ，７０Ｗは、固定子２の周方向において離間して配置されている。
渡り線案内ブロック５０の詳細構造は、後述する。

【0026】

内壁部４５は、ティース８の鍔部１５の内側面１５ａ（径方向外側の面）を被覆する。内壁部４５の軸方向の他端部（軸方向のうちの第１インシュレータ１７から第２インシュレータ１８に向かう方向における端部）には、内壁突出部５２が形成されている。内壁部４５と内壁突出部５２とは、一体に形成されている。内壁突出部５２は、ティース本体１４の軸方向（コア軸方向）の他端面から軸方向外側（軸方向の他端側）に突出する。

【0027】

第１インシュレータ１７及び第２インシュレータ１８は、各被覆部２１～２３、及び、４１～４３をティース８のティース本体１４の外面に装着される。第１インシュレータ１７及び第２インシュレータ１８がティース本体１４の外面に装着された状態で、第１インシュレータ１７の係合部と第２インシュレータ１８の係合部とが互いに嵌合させる。例えば、第１インシュレータ１７の係合部が凸部を有し、第２インシュレータ１８の係合部が凹部を有する。凸部が凹部に嵌合することで、第１インシュレータ１７と第２インシュレータ１８とが結合される。これにより、ティース８のティース本体１４の外周面と、バックヨーク部１２の内側面１２ａと、鍔部１５の内側面１５ａとが隙間なくインシュレータ１７，１８によって覆われる。
なお、本実施形態では、第１インシュレータ１７の被覆部２１～２３と、第２インシュレータ１８の被覆部４１～４３とがインシュレータ９のティース被覆部３５を構成している。ティース８に装着されたインシュレータ９のティース被覆部３５の外周には、コイル１０が集中巻き方式により巻回される。

【0028】

続いて、第２インシュレータ１８の渡り線案内ブロック５０の詳細構造について説明する。
図１１は、第２インシュレータ１８と分割コア１１の一部とを径方向外側から見た平面図である。図１２は、第２インシュレータ１８を示す断面図であって、図１１のＸＩＩ－ＸＩＩ線に沿う図である。図１３は、第２インシュレータ１８を図１１のＸＩＩＩ矢視方向から見た平面図である。図１４は、分割コア１１（ティース８）にコイル１０を組み付けた巻線ブロック５１を軸方向の他端側から見た平面図である。なお、図１３には、案内される複数の渡り線部１０ｂの断面が示されている。

【0029】

渡り線案内ブロック５０は、前述のように軸方向から見て略円弧形状のブロックによって構成されている。渡り線案内ブロック５０には、前述の引き出し溝４８の他に、複数の案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄと、一対の引き回し通路５３Ａ，５３Ｂ（第１引き回し通路５３Ａ、第２引き回し通路５３Ｂ）と、渡り線支持部５４と、規制溝５７と、離間壁５８と、が形成されている。渡り線案内ブロック５０は、分割コア１１のバックヨーク部１２に隣接する基部５０ａを有する。基部５０ａは、外壁部４４から径方向外側に向けて突出するように設けられている。

【0030】

案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄは、軸方向から見て略円弧形状の４層の壁によって構成されている。案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄは、基部５０ａから、軸方向外側に向かって延出している。案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄは、分割コア１１の径方向の内側から外側にこの順に並んで配置されている。換言すると、案内壁５２Ａは第１案内壁に相当し、案内壁５２Ｂは第２案内壁に相当し、案内壁５２Ｃは第３案内壁に相当し、案内壁５２Ｄは第４案内壁に相当する。

【0031】

案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄのうち互いに隣接する２つ案内壁の間には、固定子コア７の円周方向に沿うように案内溝５５が形成されている。案内溝５５を形成する２つの案内壁は、第１溝形成壁及び第２溝形成壁に相当する。
案内壁５２Ａと案内壁５２Ｂとの間に案内溝５５が形成されているので、案内壁５２Ａは第１溝形成壁に相当し、案内壁５２Ｂは第２溝形成壁に相当する。
案内壁５２Ｂと案内壁５２Ｃとの間に案内溝５５が形成されているので、案内壁５２Ｂは第１溝形成壁に相当し、案内壁５２Ｃは第２溝形成壁に相当する。
案内壁５２Ｃと案内壁５２Ｄとの間に案内溝５５が形成されているので、案内壁５２Ｃは第１溝形成壁に相当し、案内壁５２Ｄは第２溝形成壁に相当する。
各案内溝５５においては、周方向（コア周方向）における案内溝５５の両端部、及び、軸方向（コア軸方向）における案内溝５５の一端部は、開放されている。案内溝５５が形成されている巻線ブロック５１（第１巻線ブロック）から引き出された渡り線部１０ｂ、及び、他の巻線ブロック５１（第２巻線ブロック）から引き出された渡り線部１０ｂは、周方向に沿って案内溝５５に挿通可能とされている。
なお、渡り線案内ブロック５０の周方向の略中央に形成される上述した引き出し溝４８は、四つの案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄの周方向の略中央を径方向に貫通している。

【0032】

以下の説明では、３相交流のＵ相、Ｖ相、Ｗ相の各々に対応するコイルを「Ｕ相のコイル」、「Ｖ相のコイル」、「Ｗ相のコイル」と称する場合がある。コイルは、渡り線部を有しており、Ｕ相、Ｖ相、Ｗ相のコイルに対応する渡り線部を「Ｕ相の渡り線部」、「Ｖ相の渡り線部」、「Ｗ相の渡り線部」と称する場合がある。
本実施形態では、最も径方向内側に位置する案内溝５５（以下、「下段の案内溝５５（Ｕ）」と称する場合がある）の内部にＵ相のコイル１０の渡り線部１０ｂが挿通される。下段の案内溝５５の径方向外側に隣接して位置される案内溝５５（以下、「中段の案内溝５５（Ｖ）」と称する場合がある）の内部にＶ相のコイル１０の渡り線部１０ｂが挿通される。また、最も径方向外側に位置する案内溝５５（以下、「上段の案内溝５５（Ｗ）」と称する場合がある）の内部にＷ相のコイル１０の渡り線部１０ｂが挿通される。各案内溝５５には、最大４本の渡り線部１０ｂが挿通される（図１３参照）。

【0033】

ここで、渡り線案内ブロック５０の三つ案内溝５５（Ｕ），５５（Ｖ），５５（Ｖ）は、いずれも、固定子コア７の環状中心（図１，図２に示す回転軸線Ｃと合致）に対応する中心を有するとともに一定の半径を有する円の円弧と合致しない形状を有する。具体的には、各案内溝５５は、仮想円の円弧よりも小さい曲率半径を有する円弧形状に形成されている。仮想円の中心は、固定子コア７の環状中心に対応する。仮想円の外周は、案内溝５５の周方向の両端部を通る。このため、複数の巻線ブロック５１が、図１，図２に示すように円形状に組み付けられると、複数のインシュレータ９の各相の案内溝５５は、連続した滑らかな円形状にはならず、小円弧が環状に連結された形状となる。したがって、複数の巻線ブロック５１の同相の案内溝５５に渡り線部１０ｂが掛け回されると、渡り線部１０ｂは、連結された小円弧部分に沿って波形状に変形する。この結果、案内溝５５内において渡り線部１０ｂの滑りが抑制された状態で、渡り線部１０ｂは、案内溝５５に係止される。

【0034】

また、渡り線案内ブロック５０のうちの、引き出し溝４８から周方向における一端側に向かう方向に離間した位置（図１１において引き出し溝４８の右側）には、引き回し通路５３Ａが形成されている。引き回し通路５３Ａは、最も径方向内側に位置する案内壁５２Ａ（内側案内壁）を貫通していない。引き回し通路５３Ａは、残余の案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂを径方向に貫通する。つまり、引き回し通路５３Ａは、案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂ，５２Ａのうち案内壁５２Ａ以外の案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂを前記コア径方向に貫通する。
同様に、渡り線案内ブロック５０のうちの、引き出し溝４８から周方向における他端側に向かう方向に離間した位置（図１１において引き出し溝４８の左側）には、引き回し通路５３Ｂが形成されている。引き回し通路５３Ｂは、最も径方向内側に位置する案内壁５２Ａ（内側案内壁）を貫通していない。引き回し通路５３Ｂは、残余の案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂを径方向に貫通する。つまり、引き回し通路５３Ｂは、案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂ，５２Ａのうち案内壁５２Ａ以外の案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂを前記コア径方向に貫通する。
各案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂには、渡り線案内ブロック５０の基部５０ａから端部に向かう軸方向に延びる切り欠きが形成されている。このように案内壁に形成された切り欠きによって、二つの引き回し通路５３Ａ，５３Ｂが形成されている。

【0035】

引き出し溝４８から径方向外側に引き出された渡り線部１０ｂをいずれかの案内溝５５を通して周方向の一方側に引き出すときに、第１引き回し通路５３Ａの内部で渡り線部１０ｂを引き回すことができる。
例えば、引き出し溝４８から径方向外側に引き出されたＵ相の渡り線部１０ｂを下段の案内溝５５（Ｕ）を通して周方向の一方側（時計回り方向）に引き出す場合がある。この場合においては、図５及び図１１～図１４に仮想線（２点鎖線）で示すように、渡り線部１０ｂを引き回し通路５３Ａ内で径方向内側と軸方向及び周方向に適宜屈曲させ、下段の案内溝５５（Ｕ）の周方向の一方側の領域に挿通させる。換言すると、時計回り方向における引き回し通路５３Ａの隣りに位置する下段の案内溝５５（Ｕ）に、渡り線部１０ｂを挿通させる。
また、Ｖ相の渡り線部１０ｂを、案内溝５５（Ｖ）を通して周方向の一方側に引き出すときには、上記と同様に、渡り線部１０ｂを引き回し通路５３Ａ内で屈曲させつつ案内溝５５（Ｖ）の周方向の一方側の領域に挿通させる。換言すると、時計回り方向における引き回し通路５３Ａの隣りに位置する案内溝５５（Ｖ）に、渡り線部１０ｂを挿通させる。
また、Ｗ相の渡り線部１０ｂを、案内溝５５（Ｗ）を通して周方向の一方側に引き出すときには、上記と同様に、渡り線部１０ｂを引き回し通路５３Ａ内で屈曲させつつ案内溝５５（Ｗ）の周方向の一方側の領域に挿通させる。換言すると、時計回り方向における引き回し通路５３Ａの隣りに位置する案内溝５５（Ｗ）に、渡り線部１０ｂを挿通させる。

【0036】

図１５は、図１２に対応する断面図である。図１５は、渡り線部１０ｂを下段の案内溝５５（Ｕ）の周方向の他方側の領域から外側に引き出す場合を示す。
引き出し溝４８から径方向外側に引き出された渡り線部１０ｂをいずれかの案内溝５５を通して周方向の他方側（上述した周方向の一方側とは反対の方向）に引き出すときに、第２引き回し通路５３Ｂの内部で渡り線部１０ｂを引き回すことができる。
例えば、引き出し溝４８から径方向外側に引き出されたＵ相の渡り線部１０ｂを下段の案内溝５５（Ｕ）を通して周方向の他方側（反時計回り方向）に引き出す場合がある。この場合においては、図１５に仮想線（２点鎖線）で示すように、渡り線部１０ｂを引き回し通路５３Ｂ内で径方向内側と軸方向及び周方向に適宜屈曲させ、下段の案内溝５５（Ｕ）の周方向の他方側の領域に挿通させる。換言すると、反時計回り方向における引き回し通路５３Ｂの隣りに位置する下段の案内溝５５（Ｕ）に、渡り線部１０ｂを挿通させる。
また、Ｖ相の渡り線部１０ｂを、案内溝５５（Ｖ）を通して周方向の他方側に引き出すときには、上記と同様に、渡り線部１０ｂを引き回し通路５３Ｂ内で屈曲させつつ案内溝５５（Ｖ）の周方向の他方側の領域に挿通させる。換言すると、反時計回り方向における引き回し通路５３Ｂの隣りに位置する案内溝５５（Ｖ）に、渡り線部１０ｂを挿通させる。
また、Ｗ相の渡り線部１０ｂを、案内溝５５（Ｗ）を通して周方向の他方側に引き出すときには、上記と同様に、渡り線部１０ｂを引き回し通路５３Ｂ内で屈曲させつつ案内溝５５（Ｗ）の周方向の他方側の領域に挿通させる。換言すると、反時計回り方向における引き回し通路５３Ｂの隣りに位置する案内溝５５（Ｗ）に、渡り線部１０ｂを挿通させる。

【0037】

渡り線案内ブロック５０のうちの、引き出し溝４８の基部５０ａの端部の周方向における両側位置には、２つの渡り線支持部５４（第１渡り線支持部、第２渡り線支持部）が形成されている。第１渡り線支持部は、時計回り方向における引き出し溝４８の隣りに位置する。第１渡り線支持部は、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂの向きを、引き回し通路５３Ａに向くように変えて、渡り線部１０ｂを支持する。第２渡り線支持部は、反時計回り方向における引き出し溝４８の隣りに位置する。第２渡り線支持部は、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂの向きを、引き回し通路５３Ｂに向くように変えて、渡り線部１０ｂを支持する。
２つの渡り線支持部５４は、引き出し溝４８と引き回し通路５３Ａとの間に挟まれた位置、及び、引き出し溝４８と引き回し通路５３Ｂとの間に挟まれた位置において、渡り線案内ブロック５０の基部５０ａに突設されたブロックである。

【0038】

また、各渡り線支持部５４の軸方向外側には、軸方向における厚みを有する離間壁５８が隣接して配置されている。二つの引き回し通路５３Ａ，５３Ｂによって分断された三枚の案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂの周方向における中央領域は、離間壁５８の軸方向における端面から軸方向外側に延びている。このため、各案内溝５５（Ｕ），５５（Ｖ），５５（Ｗ）に挿通されて周方向に案内された渡り線部１０ｂの変位が規制される。つまり、離間壁５８によって軸方向内側（後述する規制溝５７に近接する側）への渡り線部１０ｂの変位が規制される。離間壁５８は、各案内溝５５（Ｕ），５５（Ｖ），５５（Ｗ）に案内される渡り線部１０ｂを、規制溝５７に対して軸方向外側に離間させる。

【0039】

本実施形態の場合、引き出し溝４８の周方向における両側に渡り線支持部５４が位置している。渡り線支持部５４の径方向外側面は、隣接する離間壁５８や基部５０ａの径方向外側面に対して凹状に窪んでいる。渡り線支持部５４の径方向外側面は、隣接する離間壁５８の側面と基部５０ａの側面の間で周方向に延びる規制溝５７を構成している。規制溝５７には、引き出し溝４８から径方向外側に引き出されて、各引き回し通路５３Ａ，５３Ｂの方向に向きを変えた渡り線部１０ｂが挿入される。渡り線部１０ｂが規制溝５７に挿入されることによって、軸方向外側への渡り線部１０ｂの変位が規制される。

【0040】

渡り線支持部５４の径方向外側面によって構成される規制溝５７の底面は、周方向の外側の縁部が引き回し通路５３Ａ，５３Ｂに向かうように円弧状に湾曲している。換言すると、規制溝５７の底面は、引き回し通路５３Ａ，５３Ｂに向けて膨出する形状を有する。規制溝５７の底面の湾曲形状は、引き回し通路５３Ａ，５３Ｂの各々に向かう方向において、径方向の高さが低くなる形状とされている。なお、規制溝５７の底面の引き回し通路５３Ａ，５３に面する湾曲形状部は、図中に符号５７ａが付されている。また、規制溝５７の底面は、周方向の内側の縁部も引き出し溝４７に向かって円弧状に湾曲している。規制溝５７の底面の引き出し溝４７に面する湾曲形状部は、図中に符号５７ｂが付されている。

【0041】

ところで、上述のように構成され巻線ブロック５１においては、Ｕ相、Ｖ相、Ｗ相のコイル１０が、例えば、この順で円周方向に連続して配置されている。各巻線ブロック５１のインシュレータ９のティース被覆部３５から引き出されたコイル１０の巻き始め端と巻き終わり端が結線される。

【0042】

図１６は、本実施形態の固定子２の結線図である。
図１６に示すように、固定子２は、３相（Ｕ相、Ｖ相、Ｗ相）で構成され、コイル１０は、スター結線（Ｙ結線）されている。具体的には、第１インシュレータ１７のコイル導入スリット２８から引き出されたコイル１０の渡り線部１０ａは、中性点となり、中性点において三相のコイル１０が相互に結線されている。第２インシュレータ１８の引き出し溝４８から引き出されたコイル１０の渡り線部１０ｂは、同相のコイルが互いに結線される渡り線である。Ｕ相、Ｖ相、Ｗ相の渡り線部１０ｂは、端子７０Ｕ，７０Ｖ，７０Ｗの各々に接続されている。

【0043】

図１７は、複数の巻線ブロック５１を環状に組み付け、各巻線ブロック５１の渡り線部１０ｂを端子７０Ｕに接続したときのＵ相系の結線状態のみを示した図である。
図１８は、複数の巻線ブロック５１を環状に組み付け、各巻線ブロック５１の渡り線部１０ｂを端子７０Ｖに接続したときのＶ相系の結線状態のみを示した図である。
図１９は、複数の巻線ブロック５１を環状に組み付け、各巻線ブロック５１の渡り線部１０ｂを端子７０Ｗに接続したときのＷ相系の結線状態のみを示した図である。
例えば、図１７に示すＵ相系は、固定子２の円環形状に沿う円周上においては、端子７０Ｕに向かってから時計回り方向に配置された４つの巻線ブロック５１と、端子７０Ｕに向かってから反時計回り方向に配置された４つの巻線ブロック５１とを含む。換言すると、図１７の左側領域及び右側領域の各々に４つの巻線ブロック５１が配置されている。
図１７中にａ，ｂ，ｃ，ｄの記号が付された左側領域の巻線ブロック５１では、図１２に示すように渡り線案内ブロック５０の周方向の一端側から渡り線部１０ｂが引き出されている。また、図１７中にａ，ｂ，ｃ，ｄの記号が付された右側領域の巻線ブロック５１では、図１５に示すように渡り線案内ブロック５０の周方向の他端側から渡り線部１０ｂが引き出されている。

【0044】

図１７において、ｄの記号が付された渡り線案内ブロック５０から引き出された渡り線部１０ｂは、端子７０Ｕの引き出し位置（端子接続部）に向かって、周方向に並ぶｃ，ｂ，ａの記号が付された渡り線案内ブロック５０（案内溝５５（Ｕ））内を順に通る。渡り線部１０ｂは、ｃ，ｂ，ａの記号が付された渡り線案内ブロック５０（案内溝５５（Ｕ））によって周方向に案内される。
ｃの記号が付された渡り線案内ブロック５０から引き出された渡り線部１０ｂは、端子７０Ｕの引き出し位置（端子接続部）に向かって、周方向に並ぶｂ，ａの記号が付された渡り線案内ブロック５０（案内溝５５（Ｕ））内を順に通る。渡り線部１０ｂは、ｂ，ａの記号が付された渡り線案内ブロック５０（案内溝５５（Ｕ））によって周方向に案内される。
ｂの記号が付された渡り線案内ブロック５０から引き出された渡り線部１０ｂは、端子７０Ｕの引き出し位置（端子接続部）に向かって、周方向に並ぶａの記号が付された渡り線案内ブロック５０（案内溝５５（Ｕ））内を通る。渡り線部１０ｂは、ａの記号が付された渡り線案内ブロック５０（案内溝５５（Ｕ））によって周方向に案内される。
ａの記号が付された渡り線案内ブロック５０から引き出された渡り線部１０ｂは、端子７０Ｕの引き出し位置（端子接続部）に向かう。
図１８は、Ｖ相系の渡り線部１０ｂの引き回しを示す。図１９は、Ｗ相系の渡り線部１０ｂの引き回しを示す。Ｖ相系及びＷ相系については、詳細な説明を省略する。Ｖ相系及びＷ相系でもＵ相系と同様にして渡り線部１０ｂが引き回されている。

【0045】

以上の構成を有する回転電機１においては、端子７０Ｕ，７０Ｖ，７０Ｗを介してコイル１０に電力が供給されると、固定子２に鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束と回転子３の図示しないマグネットとの間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。その結果、回転子３が所定の方向に回転する。また、回転電機１は、回転子３が外力を受けて回転すると、回転子３の図示しないマグネットと固定子２のコイル１０との間に磁気的な吸引力や反発力が生じ、鎖交磁束が形成される。この結果、コイル１０に電力が発生し、その電力が端子７０Ｕ，７０Ｖ，７０Ｗに出力される。

【0046】

上述の実施形態では、インシュレータ９は、ティース被覆部３５と、渡り線案内ブロック５０（渡り線案内部）を備える。渡り線案内ブロック５０は、複数の案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄと、引き出し溝４８と、引き回し通路５３Ａ，５３Ｂと、渡り線支持部５４と、を備えている。複数の案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄは、複数の分割コア１１から引き出された複数相の渡り線部１０ｂを相ごとにコア径方向に離間してコア周方向に案内可能とされている。引き出し溝４８は、すべての案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄをコア径方向に貫通している。複数の案内溝５５の各々は、案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄのうち互いに隣接する２つの案内壁によって形成されている。引き回し通路５３Ａ，５３Ｂは、引き出し溝４８からコア周方向に離間した位置に配置されている。引き回し通路５３Ａ，５３Ｂは、渡り線案内ブロック５０においてコア径方向の最も内側に位置する案内壁５２Ａを除く、残余の案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂをコア径方向に貫通する。つまり、引き回し通路５３Ａ，５３Ｂは、案内壁５２Ａを貫通しない。引き回し通路５３Ａ，５３Ｂは、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂを、二つの案内壁の間の挿通させる、すなわち、複数の案内溝５５のうちの一つに挿通させる。渡り線支持部は、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂの向きを、引き回し通路５３Ａ，５３Ｂに向くように変えた状態で、渡り線部１０ｂを支持する。

【0047】

このため、本実施形態のインシュレータ９では、ティース被覆部３５から引き出された渡り線部１０ｂが、渡り線案内ブロック５０の引き出し溝４８からコア径方向外側に引き出され、渡り線部１０ｂをコア周方向に離間した引き回し通路５３Ａ，５３Ｂを通し、渡り線部１０ｂを任意の二つの案内壁の間（案内溝５５）に挿通させることができる。このとき、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂの向きは、引き回し通路５３Ａ，５３Ｂに向くように変更することができる。引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂを渡り線支持部５４によって支持することができる。したがって、本実施形態のインシュレータ９は、ティース被覆部３５に巻回されたコイル１０の巻き終わり端を、渡り線支持部５４によって係止することができる。この状態で、複数の案内溝５５のうちの一つにコイル１０の巻き終わり端を引き入れることができる。よって、本実施形態のインシュレータ９を複数の分割コア１１の各々に採用した場合には、複数の巻線ブロック５１をコイル１０に組み付ける際に、コイル１０の巻き崩れを抑制することができる。

【0048】

また、本実施形態のインシュレータ９では、Ｕ相、Ｖ相、Ｗ相のコイル１０の各々が平坦な面を有する平角線によって構成されている。このため、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂを渡り線支持部５４に平坦な面で接触させて、安定した拘束力でコイル１０を固定することができる。したがって、本構成を複数の分割コア１１の各々に採用した場合には、コイル１０の巻き崩れをより抑制することができる。

【0049】

また、本実施形態のインシュレータ９においては、渡り線案内ブロック５０の引き出し溝４８は、案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄのコア周方向の略中央位置に形成されている。引き回し通路５３Ａは、引き出し溝４８からコア周方向の一端側に向かう方向に離間した位置に形成されている。引き回し通路５３Ｂは、引き出し溝４８からコア周方向の他端側に向かう方向に離間した位置に形成されている。引き回し通路５３Ａは、案内溝５５（Ｕ）、案内溝５５（Ｖ）、案内溝５５（Ｗ）に連通している。引き回し通路５３Ｂは、引き回し通路５３Ａの反対側において、案内溝５５（Ｕ）、案内溝５５（Ｖ）、案内溝５５（Ｗ）に連通している。
このため、本実施形態のインシュレータ９では、案内壁５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄのコア周方向の略中央の引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂを、コア周方向の一端側の引き回し通路５３Ａと他端側の引き回し通路５３Ｂのいずれかに選択的に引き入れることができる。したがって、図１２及び図１５に示すように、一端側の引き回し通路５３Ａ及び案内溝５５を通して渡り線部１０ｂを引き出したインシュレータ９と、他端側の引き回し通路５３Ｂ及び案内溝５５を通して渡り線部１０ｂを引き出したインシュレータ９とを準備することができる。
図１２に示す複数のインシュレータ９と、図１５に示す複数のインシュレータ９を準備する。また、図１２に示す複数のインシュレータ９の数と図１５に示す複数のインシュレータ９の数とを同じとする。これにより、固定子コア７の周方向において、端子７０Ｕ，７０Ｖ，７０Ｗに向かう時計回り方向に図１２に示す複数のインシュレータ９を配置することができ、端子７０Ｕ，７０Ｖ，７０Ｗに向かう反時計回り方向に図１５に示す複数のインシュレータ９を配置することができる。これよって、本実施形態のインシュレータ９を巻線ブロック５１に採用した場合には、巻線ブロック５１から引き出される渡り線部１０ｂの長さを短くし、かつ、巻線ブロック５１に対するコイル１０の組み付け性を良好にすることができる。

【0050】

さらに、本実施形態のインシュレータ９の渡り線案内ブロック５０は、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂの変位を規制する規制溝５７と、案内溝５５内に位置する渡り線部１０ｂを規制溝５７に対してコア軸方向に離間させる離間壁５８と、を備えている。このため、引き出し溝４８から引き出されて引き回し通路５３Ａ，５３Ｂに引き入れられる渡り線部１０ｂの変位が規制溝５７によって規制された状態で、渡り線支持部５４によって渡り線部１０ｂを支持することができる。また、他の巻線ブロック５１（第２分割コアの巻線ブロック）から引き出されて案内溝５５に案内される渡り線部１０ｂ（導入渡り線部）と規制溝５７内に位置する渡り線部１０ｂとを、離間壁５８によって十分に離間させることができる。したがって、本実施形態のインシュレータ９を巻線ブロック５１に採用した場合には、引き出し溝４８から引き出されて引き回し通路５３Ａ，５３Ｂ内を引き回される渡り線部１０ｂと、案内溝５５内に位置する他の相の渡り線部１０ｂとが干渉するのを回避することができる。

【0051】

また、本実施形態のインシュレータ９では、規制溝５７の底面が引き回し通路５３Ａ，５３Ｂに向かうように円弧状に湾曲している。このため、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂを規制溝５７に沿わせて引き回し通路５３Ａ，５３Ｂに引き入れるときに、渡り線部１０ｂが規制溝５７の引き回し通路５３Ａ，５３Ｂに面する端部に接触することが抑制される。したがって、本構成を有するインシュレータ９に巻線ブロック５１を採用した場合には、渡り線部１０ｂの変位を規制溝５７によって規制しつつも、渡り線部１０ｂの傷付きや損傷を防止することができる。

【0052】

以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、渡り線案内ブロック５０に引き回し通路５３Ａ，５３Ｂが設けられている。引き回し通路５３Ａ，５３Ｂは、引き出し溝４８からコア周方向に離間した位置において、最もコア径方向内側に位置する案内壁５２Ａを除く、残余の案内壁５２Ｄ，５２Ｃ，５２Ｂをコア径方向に貫通する。引き回し通路５３Ａ，５３Ｂは、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂを二つの案内壁の間に挿通させる、すなわち、複数の案内溝５５のうちの一つに挿通させる構成とされている。また、渡り線案内ブロック５０の渡り線支持部５４は、引き出し溝４８から引き出された渡り線部１０ｂの向きを引き回し通路５３Ａ，５３Ｂに向くように変えて、渡り線部１０ｂを支持する。このため、複数の巻線ブロック５１にコイル１０を組み付ける際におけるコイル１０の巻き崩れを抑制することができる。

【0053】

本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

【符号の説明】

【0054】

１…回転電機、２…固定子、７…固定子コア、８…ティース、９…インシュレータ、１０…コイル（平角線）、１０ｂ…渡り線部、１１…分割コア１１、３５…ティース被覆部、４８…引き出し溝、５０…渡り線案内ブロック（渡り線案内部）、５１…巻線ブロック、５２Ａ，５２Ｂ，５２Ｃ，５２Ｄ…案内壁、５３Ａ，５３Ｂ…引き回し通路、５４…渡り線支持部、５７…規制溝、５８…離間壁

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】