(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】喫煙製品用水流交絡フィルタ材料
(51)【国際特許分類】
A24D 3/02 20060101AFI20240614BHJP
A24D 3/04 20060101ALI20240614BHJP
A24D 3/06 20060101ALI20240614BHJP
A24D 3/17 20200101ALI20240614BHJP
A24D 1/02 20060101ALI20240614BHJP
D04H 1/4258 20120101ALI20240614BHJP
D04H 1/26 20120101ALI20240614BHJP
D04H 1/492 20120101ALI20240614BHJP
【FI】
A24D3/02
A24D3/04
A24D3/06
A24D3/17
A24D1/02
D04H1/4258
D04H1/26
D04H1/492
(21)【出願番号】P 2022533485
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2019085125
(87)【国際公開番号】W WO2021115619
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】512252548
【氏名又は名称】デルフォルトグループ、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】DELFORTGROUP AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー、フォルガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、バッハマン
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/184925(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/112502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/02
A24D 3/04
A24D 3/06
A24D 3/17
A24D 1/02
D04H 1/4258
D04H 1/26
D04H 1/492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を含む喫煙具用フィルタ材料において、
前記不織布は、水流交絡され
た水流交絡不織布であり、
前記水流交絡不織布は、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも50%から最大で90%の木材パルプ繊維と、少なくとも10%から最大で50%の再生セルロース製繊維と、30%未満の非天然ポリマーと、を含み、木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを合わせた量が、前記水流交絡不織布の質量の少なくとも70%を占め、
前記水流交絡不織布は、少なくとも100kg/m
3から最大で300kg/m
3の密度、および少なくとも100μmから最大で1000μmの厚さを有し、前記厚さは、ISO534:2011に準拠して測定され、前記水流交絡不織布の前記密度は、ISO536:2012に準拠した坪量をISO534:2011に準拠した前記厚さで割ることにより求められる、
ことを特徴とするフィルタ材料。
【請求項2】
前記水流交絡不織布における木材パルプ繊維の割合が、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも60%から最大で80%、好適には少なくとも60%から最大で70%である、
請求項1に記載のフィルタ材料。
【請求項3】
麻、亜麻、黄麻、ラミー、アバカ、サイザルアサまたは綿製のパルプ繊維の含有量が、合計で前記水流交絡不織布の質量の最大で20%、好適には最大で10%、特に好適には最大で1%である、
請求項1~2の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項4】
前記水流交絡不織布における再生セルロースから作製された繊維の割合が、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも20%から最大で45%、好適には少なくとも30%から最大で40%である、
請求項1~3の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項5】
木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを合わせた量の合計は、前記水流交絡不織布の質量の少なくとも80%、好適には少なくとも90%、特に好適には少なくとも95%を占める、
請求項1~4の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項6】
前記水流交絡不織布は、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、10%未満の非天然ポリマー、好適には1%未満の非天然ポリマーを含む、
請求項1~5の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項7】
前記水流交絡不織布は、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも5%から30%未満、特に好適には25%未満、特に高度に好適には20%未満の酢酸セルロース製ステープル繊維を含む、
請求項1~6の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項8】
前記水流交絡不織布は、少なくとも25g/m
2から最大で150g/m
2、好適には少なくとも35g/m
2から最大で120g/m
2、特に好適には少なくとも40g/m
2から最大で100g/m
2のISO536:2012に準拠した坪量を有する、
請求項1~7の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項9】
前記水流交絡不織布のISO534:2011に準拠した前記厚さは、少なくとも120μmから最大で800μm、好適には少なくとも150μmから最大で750μmである、
請求項1~8の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項10】
前記水流交絡不織布は、10000cm
3/(cm
2・kPa・min)~60000cm
3/(cm
2・kPa・min)、好適には20000cm
3/(cm
2・kPa・min)~50000cm
3/(cm
2・kPa・min)、特に好適には35000cm
3/(cm
2・kPa・min)~45000cm
3/(cm
2・kPa・min)のISO2965:2019に準拠した透気度を有する、
請求項1~9の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項11】
前記水流交絡不織布は、少なくとも4J/m
2から最大で500J/m
2、好適には少なくとも5J/m
2から最大で450J/m
2のISO1924-2:2008に準拠した少なくとも一方向におけるエネルギー吸収量を有する、
請求項1~10の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項12】
前記フィルタ材料の質量の少なくとも90%、好適には少なくとも95%が、前記水流交絡不織布により形成されている、
請求項1~11の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項13】
フィルタ材料と包装材料とを備える喫煙具のセグメントであって、
前記フィルタ材料は、水流交絡不織布を含み、
前記水流交絡不織布は、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも50%から最大で90%の木材パルプ繊維と、少なくとも10%から最大で50%の再生セルロース製繊維と、30%未満の非天然ポリマーと、を含み、木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを合わせた量が、前記水流交絡不織布の質量の少なくとも70%を占める、
セグメント。
【請求項14】
前記フィルタ材料は、請求項2~7および12で定義された追加の特徴の1つまたは複数を有する、
請求項13に記載のセグメント。
【請求項15】
前記フィルタ材料は、クリンプされている、または折り畳まれている、
請求項13または14に記載のセグメント。
【請求項16】
セグメントの単位長さ当たりのISO6565:2015に準拠したセグメントの引き込み抵抗が、少なくとも1mmWG/mmから最大で12mmWG/mm、好適には少なくとも2mmWG/mmから最大で10mmWG/mmである、
請求項13~15の一項に記載のセグメント。
【請求項17】
前記包装材料を含まない前記セグメントの密度は、50kg/m
3~300kg/m
3、好適には60kg/m
3~250kg/m
3、特に好適には70kg/m
3~230kg/m
3である、
請求項13~16の一項に記載のセグメント。
【請求項18】
前記セグメントの前記包装材料は、少なくとも20g/m
2から最大で150g/m
2、好適には少なくとも30g/m
2から最大で130g/m
2のISO536:2012に準拠した坪量を有する、
請求項13~17の一項に記載のセグメント。
【請求項19】
エアロゾル形成材料を含むセグメントと、請求項13~18の一項に記載のセグメントと、を備える喫煙具において、
請求項13~18の一項に記載の前記セグメントは、好適には、前記喫煙具の前記セグメントであって、吸い口端部の隣に位置する前記セグメントを形成する、
喫煙具。
【請求項20】
前記喫煙具は、紙巻たばこであり、
前記エアロゾル形成材料は、タバコである、またはタバコを含む、
請求項19に記載の喫煙具。
【請求項21】
前記喫煙具は、その意図された使用中に、前記エアロゾル形成材料を加熱するのみで燃焼させない喫煙具である、
請求項19に記載の喫煙具。
【請求項22】
A-木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを含む水性懸濁液(1)を作製するステップと、
B-ステップAからの前記懸濁液(1)を走行ワイヤ(3)に塗布するステップと、
C-前記走行ワイヤ(3)を介して前記懸濁液(1)を脱水して繊維ウェブ(4)を形成するステップと、
D-ステップCからの前記繊維ウェブ(4)を支持ワイヤ(5)に移送するステップと、
E-前記繊維ウェブ(4)に向けた少なくとも1つの水ジェット(11)により前記繊維ウェブ(4)を水流交絡させて、水流交絡不織布を製造するステップと、
F-前記水流交絡不織布を乾燥させるステップと、
を備える水流交絡不織布の作製のためのプロセスにおいて、
木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを合わせた量が、ステップAの前記懸濁液中の固形物の質量の少なくとも70%を占め、
前記水流交絡不織布は、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも50%から最大で90%の木材パルプ繊維と、少なくとも10%から最大で50%の再生セルロース製繊維と、30%未満の非天然ポリマーと、を含み、
前記水流交絡不織布は、少なくとも100kg/m
3から最大で300kg/m
3の密度、および少なくとも100μmから最大で1000μmの厚さを有し、前記厚さは、ISO534:2011に準拠して測定され、前記水流交絡不織布の前記密度は、ISO536:2012に準拠した坪量をISO534:2011に準拠した前記厚さで割ることにより求められる、
プロセス。
【請求項23】
前記プロセスにより作製された前記水流交絡不織布は、請求項1~12の一項に記載のフィルタ材料での使用に適している、
請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記水流交絡不織布のISO534:2011に準拠した前記厚さは、少なくとも120μmから最大で800μm、好適には、少なくとも150μmから最大で750μmである、
請求項22または23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記水流交絡不織布は、少なくとも4J/m
2から最大で500J/m
2、好適には少なくとも5J/m
2から最大で450J/m
2のISO1924-2:2008に準拠した少なくとも一方向におけるエネルギー吸収量を有する、
請求項22~24の一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記水流交絡不織布における木材パルプ繊維の割合が、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも60%から最大で80%、好適には少なくとも60%から最大で70%である、
請求項22~25の一項に記載のプロセス。
【請求項27】
麻、亜麻、黄麻、ラミー、アバカ、サイザルアサまたは綿製のパルプ繊維の含有量が、合計で前記水流交絡不織布の質量の最大で20%、好適には最大で10%、特に好適には最大で1%である、
請求項22~26の一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記水流交絡不織布における再生セルロース製繊維の割合が、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも20%から最大で45%、好適には少なくとも30%から最大で40%である、
請求項22~27の一項に記載のプロセス。
【請求項29】
木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを合わせた量の合計は、前記水流交絡不織布の質量の少なくとも80%、好適には少なくとも90%、特に好適には少なくとも95%を占める、
請求項22~28の一項に記載のプロセス。
【請求項30】
ステップAの前記水性懸濁液(1)は、最大で3.0%、好適には最大で1.0%、特に好適には最大で0.2%、特に最大で0.05%の固形分を有する、
請求項22~29の一項に記載のプロセス。
【請求項31】
ステップBおよびステップCで使用される走行ウェブ(3)は、水平方向に対して前記繊維ウェブ(4)の走行方向(10)において、少なくとも3°から最大で40°の角度で、好適には少なくとも5°から最大で30°の角度で、特に好適には少なくとも15°から最大で25°の角度で上方に傾斜している、
請求項22~30の一項に記載のプロセス。
【請求項32】
少なくとも2つの水ジェット(11、12)が、ステップEにおける水流交絡を実施するために使用され、
少なくとも2つの前記水ジェット(11、12)は、前記繊維ウェブ(4)の異なる側面に向けられる、
請求項22~31の一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ材料およびこれから製造される喫煙具のセグメント、特に喫煙具を流れるエアロゾルをフィルタリング(濾過)するためのセグメントに関する。このセグメントは、生分解するとともに、添加物および加工助剤の含有量が少なく、従来技術において知られているセグメントよりも光学的に均質であり、安価に製造され得る。
【背景技術】
【0002】
喫煙具は、典型的には、互いに隣接して配設されたロッド形状の少なくとも2つのセグメントからなるロッド形状の物品である。1つのセグメントは、加熱時にエアロゾルを形成することが可能な材料を含み、少なくとも1つのさらなるセグメントは、エアロゾルの特性に影響を及ぼす役割を果たす。
【0003】
喫煙具は、紙巻たばこであり得る。紙巻たばこでは、第1セグメントがエアロゾル形成材料、特にタバコを含み、さらなるセグメントがフィルタとして設計されてエアロゾルをフィルタリングする役割を果たす。この点に関して、エアロゾルは、エアロゾル形成材料の燃焼により生成され、フィルタは、主としてエアロゾルをフィルタリングし、また紙巻たばこに所定の引き込み抵抗を提供する役割を果たす。
【0004】
ただし、喫煙具は、いわゆる加熱式たばこ製品であってもよい。加熱式たばこ製品では、エアロゾル形成材料を加熱するのみで燃焼させない。この態様において、エアロゾル中の有害物質の個数および量が低減される。このような喫煙具も、少なくとも2つ、しかし多くの場合にはそれより多い、特に4つのセグメントからなる。1つのセグメントが、典型的にはタバコ、再構成タバコ、または他の方法により加工されたタバコを含むエアロゾル形成材料を含んでいる。喫煙具のさらなる部分的に選択的なセグメントが、エアロゾルを移送してエアロゾルを冷却する、またはエアロゾルをフィルタリングする役割を果たす。
【0005】
セグメントは、大抵の場合、包装材料で包装されている。包装材料として紙が使用されることがほとんどである。
【0006】
明示的に記載されているか文脈から直接的に明瞭でない限り、以下で使用される用語「セグメント」とは、エアロゾル形成材料を含まずに、例えばエアロゾルを移送、冷却、またはフィルタリングする役割を果たす喫煙具のセグメントを意味すると理解されるべきである。従来技術から、このようなセグメントを、酢酸セルロースやポリラクチド等の非天然ポリマーから形成することが知られている。喫煙具の消費後、喫煙具は適切に処分されなければならない。しかしながら、多くの場合、消費者は消費した喫煙具を周囲環境に単に投棄し、情報や罰金によりこの行動を制限しようとする試みはほぼ成功していない。
【0007】
酢酸セルロースおよびポリラクチドは非常にゆっくりとしか生分解しないため、業界では喫煙具のセグメントを、より良好な生分解性を有する他の材料から製造することが注目されている。さらに、欧州連合では、喫煙具における非天然ポリマーの使用を大幅に低減する、または禁止する規制が議論されている。このため、この理由からも、喫煙具用の代替セグメントを利用可能とすることが注目されている。
【0008】
従来技術において、喫煙具用セグメント、特にフィルタセグメントを紙から製造することが知られている。このようなセグメントは、一般に容易に生分解するが、別の欠点を有している。例えば、紙製のフィルタセグメントは、高い濾過効率を有するため、乾燥したエアロゾルをもたらす。これにより、酢酸セルロースから製造された従来のフィルタセグメントを有するたばこと比較してエアロゾルの味が損なわれる。さらに、しかしながら、それらはフェノール類に対して酢酸セルロースよりも低い濾過効率を有することが多い。
【0009】
しかしながら、紙製のフィルタセグメントがこれまで広く使用されてこなかった本質的な理由は、その光学的外観にある。喫煙具の吸い口側端部において、吸い口側端部に位置するセグメントの切断面が見える。酢酸セルロース製の従来のセグメントでは、消費者は、個々の切断繊維がほとんど認識できない、均質な白色の表面に慣れている。しかしながら、紙製のセグメントは構造が荒いため、一見して消費者に品質の低さを印象付けてしまう。したがって、多くの場合、紙製のセグメントは、消費者に切断面が見えないように、複数のセグメントで構成されるフィルタにおける1つのセグメントとしてしか使用されない。そして、多くの場合、吸い口側端部に位置するセグメントは、依然として酢酸セルロースから構成されている。これらの光学的欠点を理由として、紙製セグメントの生分解性についての利点は十分に生かされていない。
【0010】
従来技術において、喫煙具用セグメントを不織布から製造することも知られている。例えば、EP 2 515 689において、不織布製のフィルタ材料が記載されている。しかしながら、このフィルタ材料は、ポリビニルアルコール、ポリラクチド、または他の非天然ポリマー製の繊維を主として含むため、生分解性に関する要件を十分に満たすことができない。さらに、ここに記載された不織布は薄過ぎるため、これから製造されたセグメントの切断面に光学的に許容される外観を得ることができない。
【0011】
また、従来技術において、喫煙具用フィルタ材料を、容易に生分解し得る繊維製の紙から製造することが知られている。このようなフィルタ材料は、US2015/0374030に記載されている。しかしながら、このフィルタ材料は、その大部分が麻、亜麻、アバカ、サイザルアサまたは綿からなるパルプ繊維から構成されている。これらの繊維は高価であるとともに、木材と比較して成長期間が短いため品質が大きく変動する。US2015/0374030の教示によれば、それらは、十分に多孔質な構造を提供すると同時に、十分に高い強度を提供することが必要である。木材パルプの使用は、緻密で圧縮した紙構造となるため推奨されない。実際には、木材パルプの含有量は、常に50重量%未満であるべきであり、工業的に実施される実施形態においては、5重量%未満である。また、利用される製造プロセスを理由として、このようなフィルタの光学的外観も、消費者に十分にアピールすることができない。
【0012】
したがって、生分解性があり、良好な光学的外観を有するとともに、工業的規模において安価かつ高品質に製造され得るセグメントを製造することができる入手可能なフィルタ材料が業界で注目されている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、以下の喫煙具用フィルタ材料を提供することである。フィルタ材料は、良好に生分解する。このフィルタ材料から、喫煙具用セグメントが製造され得る。その光学的外観は、従来のセグメント、特に酢酸セルロースから作製されるセグメントの光学的外観に十分匹敵する。また、フィルタ材料は、容易に入手可能で安価な原材料から製造され得る。したがって、喫煙具の味に対する不所望な影響は最小限にされるべきである。
【0014】
この目的は、請求項1に記載のフィルタ材料、請求項23に記載の喫煙具のセグメント、請求項32に記載のその製造プロセス、および請求項33に記載の喫煙具、ならびに請求項36に記載の水流交絡不織布の製造のためのプロセスにより達成される。有利な実施形態は、従属請求項に定義される。
【0015】
本発明者らは、この目的が特定の不織布により達成され得ることを見出した。特にこの目的は、不織布を含むフィルタ材料により達成され得る。フィルタ材料において、前記不織布は、水流交絡されており、前記水流交絡不織布は、それぞれ前記水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも50%から最大で100%の木材パルプ繊維と、少なくとも10%から最大で50%の再生セルロース製繊維と、30%未満の非天然ポリマーと、を含み、木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを合わせた量が、前記水流交絡不織布の質量の少なくとも70%を占め、前記水流交絡不織布は、少なくとも100kg/m3から最大で300kg/m3の密度、および少なくとも100μmから最大で1000μmの厚さを有する。ここで、すべての百分率(%)は、水流交絡不織布の質量に対するものである。
【0016】
「水流交絡」という用語は、第一に基礎となる製造プロセスを意味するが、水流交絡不織布とは、これを他の繊維ウェブまたは不織布から区別する特徴的な構造特性を有しており、水流交絡不織布は、発明者らの知る限りでは他の製造プロセスにより同一態様で達成し得ないことが考慮されなければならない。例えば、紙では強度が主として水素結合によるものであり、繊維が主に紙の平面に配置されているが、紙以外の場合、水流交絡不織布の強度は、繊維の交絡により達成されるため、かなりの割合の繊維が不織布の厚さ方向にも配向されている。
【0017】
従来技術の教示とは対照的に、本件発明者らは、木材パルプ繊維の割合が高いフィルタ材料を、不織布の構造を密にし過ぎたり圧縮し過ぎたりすることなく製造できることを見出した。本発明によれば、これは、木材パルプ繊維の他に再生セルロース製繊維を含む水流交絡不織布の使用により、本質的に達成される。
【0018】
本発明による水流交絡不織布の製造において、繊維が水透過性ワイヤ上に載置されるとともに、繊維に向けられた水ジェットにより交絡される。これにより、非常に低密度で大きな厚さを有する多孔質構造体が生成される。これは、フィルタ材料として特に良好に適している。特に、喫煙具のセグメントに適したこのようなフィルタ材料は、木材パルプ繊維の割合が高い状態で安価に製造できる。また、本発明によるフィルタ材料から製造された喫煙具用セグメントは、酢酸セルロース製のセグメントに十分匹敵する均質な断面を有する。さらに、紙とは対照的に、水流交絡不織布の製造に添加物や加工助剤を添加する必要はない。これは、このような添加物や加工助剤の、本発明によるフィルタ材料により製造された喫煙具の味に対しての不所望な影響が回避されるとともに、生分解性が損なわれないことを意味する。
【0019】
フィルタ材料から製造されたセグメントの引き込み抵抗および濾過効率を設定するとともに、水流交絡不織布の良好な引張強度を同様に設定するために、本発明によるフィルタ材料に含まれる水流交絡不織布は、木材パルプ繊維および再生セルロース製繊維を高い割合で含む。木材パルプ繊維および再生セルロース製繊維は、合わせて水流交絡不織布の質量の少なくとも70%を占める。
【0020】
木材パルプ繊維も再生セルロースも天然ポリマーからなるため、それらは良好な生分解性も有する。本発明によるフィルタ材料およびこれから製造される喫煙具用セグメントが良好な生分解性を有することを保証するため、非天然ポリマーの割合は、水流交絡不織布の質量の30%未満であるべきである。
【0021】
ここで、天然ポリマーとは、化学修飾(chemical modification)や組成変更を経ずに天然原料を直接の原料とするポリマー、または天然原料のこのようなポリマーと化学的に同一のポリマーである。特に、木材パルプ繊維は天然ポリマーからなり、再生セルロース製繊維も同様に天然ポリマーである。これに対し、酢酸セルロースやポリ乳酸については、化学修飾が施されているため、これらは天然ポリマーではない。また、原材料は自然界に存在するが、これらの原材料には、修飾が施されており、迅速な生分解性はもはや保証されない。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン等の鉱油を原料とするポリマーは、すべて非天然ポリマーである。
【0022】
本発明によるフィルタ材料に含まれる水流交絡不織布は、水流交絡不織布の質量の少なくとも50%から最大で90%の量の木材パルプ繊維を含む。好適には、木材パルプ繊維の割合は、それぞれ水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも60%から最大で80%、特に好適には少なくとも60%から最大で70%である。
【0023】
木材パルプ繊維とは、針葉樹または落葉樹を原料とするパルプ繊維である。木材パルプ繊維は、工業的に大量生産され、安定した品質を有するとともに安価である。好適には、木材パルプ繊維は、トウヒ、マツまたはモミ等の針葉樹を原料とする。なぜならば、これらの繊維は、その長さにより、水流交絡不織布に良好な強度をもたらすからである。好適には、本発明に適した木材パルプ繊維は、カバ、ブナまたはユーカリ等の落葉樹を原料とする。好適には、種々の原料製の木材パルプ繊維の混合体が使用され得る。針葉樹を原料とする木材パルプ繊維、ならびにマーセライズ加工された木材パルプ繊維が特に好適である。針葉樹を原料とする木材パルプ繊維は、強化パルプ繊維として知られ、特に高い強度を有する。マーセライズ加工された木材パルプ繊維は、特に大きな厚さおよび低い密度を持つ。
【0024】
麻、亜麻、黄麻、ラミー、アバカ、サイザルアサ、綿、またはエスパルト草等の他の植物製のパルプ繊維は、本発明の文脈において木材パルプ繊維とはみなされない。実際には、これらの繊維を用いても、多孔質性の紙構造および高い強度を得ることができる。しかしながら、これらの繊維は高価であるため常に工業的に容易に入手できるものではない。そして、これらの植物は成長期間が短いため、品質が一定しない。これらの繊維を本発明による水流交絡不織布に含ませることは可能であるが、その割合は、好適には水流交絡不織布の質量の最大で20%、特に好適には最大で10%、特に最大で1%とすべきである。
【0025】
木材パルプ繊維は、漂白されていても、漂白されていなくてもよい。漂白木材パルプ繊維は、それが有する白色により、本発明によるフィルタ材料から製造されたセグメントの光学的外観に関して利点を提供する一方、薄茶色ないし濃茶色を有する未漂白木材パルプ繊維は、漂白プロセスが不要であるため、より環境に優しい。漂白木材パルプ繊維および未漂白木材パルプ繊維の混合物も、本発明によるフィルタ材料の色をより良好に調整するために使用され得る。
【0026】
本発明によるフィルタ材料に含まれる水流交絡不織布は、水流交絡不織布の質量の少なくとも10%から最大で50%の量の再生セルロース製繊維を含む。好適には、再生セルロース製繊維の割合は、それぞれ水流交絡不織布の質量に対して、少なくとも20%から最大で45%、特に好適には少なくとも30%から最大で40%である。
【0027】
再生セルロースから作製された前記繊維は、好適には、ビスコース繊維、モダール繊維、リヨセル(登録商標)、テンセル(登録商標)、またはこれらの混合物である。これらの繊維は、良好な生分解性を有する。また、これらは、水流交絡不織布の強度、厚さ、または密度を最適化し、水流交絡不織布から製造される喫煙具用セグメントの濾過効率を調整するように使用され得る。
【0028】
木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを合わせた量の合計は、水流交絡不織布の質量の少なくとも70%、好適には少なくとも80%、特に好適には少なくとも90%を占めるべきである。特に高度に好適な実施形態において、本発明によるフィルタ材料は、水流交絡不織布の質量に対して、本質的に木材パルプ繊維および再生セルロース製繊維のみから、ただし少なくとも95%までの木材パルプ繊維および再生セルロース製繊維からなる水流交絡不織布を含む。この特に高度に好適な実施形態は、最良の生分解性を提供すると同時に、フィルタ材料により製造された喫煙具の味への影響がほとんどない。
【0029】
良好な生分解性を確保するため、水流交絡不織布は、30%未満の非天然ポリマーを含むべきである。好適には、水流交絡不織布は、10%未満の非天然ポリマー、特に好適には1%未満の非天然ポリマーを含む。百分率(%)は、水流交絡不織布の質量に対するものである。
【0030】
本発明によるフィルタ材料の好適な実施形態において、フィルタ材料の水流交絡不織布は、少なくとも5%から30%未満、特に好適には25%未満、特に高度に好適には20%未満の酢酸セルロース製ステープル繊維を含む。ここで、百分率(%)は、水流交絡不織布の質量に対するものである。
【0031】
不織布中の非天然ポリマーの質量が30%以下であることを条件として、例えば、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、脂肪酸、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、またはpH調整物質、特に有機または無機の酸または塩基等の添加物が、不織布の特定の特性を調節すべく添加され得る。当業者は、このような添加物の種類や量を経験により判断できる。
【0032】
水流交絡不織布の坪量は、好適には少なくとも25g/m2から最大で150g/m2、特に好適には少なくとも35g/m2から最大で120g/m2、特に高度に好適には少なくとも40g/m2から最大で100g/m2である。坪量は、水流交絡不織布の引張強度に影響を及ぼし、坪量が高いほど強度が高くなる。これらの値は、ISO536:2012に準拠して測定された坪量を指す。
【0033】
ISO534:2011に準拠して測定された水流交絡不織布の厚さは、少なくとも100μmから最大で1000μm、好適には少なくとも120μmから最大で800μm、特に好適には少なくとも150μmから最大で750μmである。厚さは、喫煙具のセグメント内に圧縮され得るフィルタ材料の量に影響を及ぼすため、セグメントの引き込み抵抗および濾過効率のみならず、フィルタ材料の加工性にも影響を及ぼす。なぜならば、フィルタ材料は、喫煙具用セグメントの製造のためにクリンプされる、または折り畳まれることが多いからである。このようなプロセスステップに関して、大きい厚さは不利であり、好適な範囲および特に好適な範囲にある厚さであれば、本発明によるフィルタ材料は、良好に喫煙具のセグメントに加工される。
【0034】
水流交絡不織布の密度は、ISO536:2012に準拠した坪量をISO534:2011に準拠した厚さで割ることにより計算される。このようにして求められた水流交絡不織布の密度は、少なくとも100kg/m3から最大で300kg/m3、好適には少なくとも120kg/m3から最大で250kg/m3、特に好適には少なくとも140kg/m3から最大で220kg/m3である。これらの値は、喫煙具のセグメントが当該水流交絡不織布を含む本発明によるフィルタ材料から製造される前の厚さを指す。水流交絡不織布の密度は、これから製造される喫煙具のセグメントの引き込み抵抗および濾過効率を決定するため、比較的狭い範囲にあるべきである。好適な範囲および特に好適な範囲により、引き込み抵抗と濾過効率とのさらに良好な組み合わせが得られる。
【0035】
ISO2965:2019に準拠して測定された水流交絡不織布の透気度は、好適には10000cm3/(cm2・kPa・min)~60000cm3/(cm2・kPa・min)、特に好適には20000cm3/(cm2・kPa・min)~50000cm3/(cm2・kPa・min)、特に高度に好適には35000cm3/(cm2・kPa・min)~45000cm3/(cm2・kPa・min)であり得る。透気度は、水流交絡不織布の多孔質構造を示すため、同様に濾過効率および引き込み抵抗に影響を及ぼす。
【0036】
水流交絡不織布の機械的特性は、本発明によるフィルタ材料を加工して喫煙具のセグメントを形成する際に重要である。水流交絡不織布の幅に対するISO1924-2:2008に準拠して測定された引張強度は、好適には少なくとも0.05kN/mから最大で5kN/m、特に好適には少なくとも0.07kN/mから最大で4kN/mである。
【0037】
水流交絡不織布の破断点伸びは、重要である。なぜならば、本発明によるフィルタ材料を加工して喫煙具のセグメントを形成する際に、フィルタ材料はしばしばクリンプされるため、特に高い破断点伸びが有利であるからである。ISO1924-2:2008に準拠して測定された水流交絡不織布の破断点伸びは、好適には少なくとも1%から最大で50%、特に好適には少なくとも3%から最大で40%である。
【0038】
また、水流交絡不織布は加工中に延伸され得るため、そのエネルギー吸収量が役割を果たす。ISO1924-2:2008に準拠して測定された水流交絡不織布のエネルギー吸収量は、好適には少なくとも4J/m2から最大で500J/m2、特に好適には少なくとも5J/m2から最大で450J/m2である。
【0039】
引張強度、破断点伸び、およびエネルギー吸収量は、水流交絡不織布から測定用サンプルが採取される方向に依存し得る。引張強度、破断点伸び、またはエネルギー吸収量が、少なくとも一方向において前記好適な範囲または特に好適な範囲にあれば、水流交絡不織布の記載された特徴は各々存在する。
【0040】
本発明によるフィルタ材料は、水流交絡不織布を含む。ただし、好適には、水流交絡不織布はフィルタ材料の大部分を占める。このため、好適には、フィルタ材料の質量の少なくとも90%が水流交絡不織布により形成され、特に好適には、フィルタ材料の質量の少なくとも95%が水流交絡不織布により形成される。
【0041】
水流交絡不織布の他に、本発明によるフィルタ材料は、例えば、フィルタ材料の加工性、または製造されたセグメントの特性、または喫煙具の味に影響を及ぼす他の成分をさらに含み得る。例えば、これには、フレーバーの担体、特にフレーバーを含浸させたフィラメント、またはフィルタ材料の剛性を向上させるための物質、または前記フィルタ材料から製造される前記フィルタの硬度を向上させる他の材料が含まれる。熱可塑性材料が一例である。
【0042】
本発明によるフィルタ材料の好適な実施形態において、フィルタ材料は、水流交絡不織布と、トリアセチン、プロピレングリコール、ソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびクエン酸トリエチル、またはこれらの混合物からなる群から選択される物質と、を含む。これらの物質は、濾過効率を酢酸セルロースのものにより良く匹敵させる助けとなり得る。
【0043】
フィルタ材料の質量の少なくとも90%が水流交絡不織布により形成されていれば、水流交絡不織布の上述の特徴の充足、例えば、木材パルプ繊維の含有量、再生セルロース製繊維の含有量、木材パルプ繊維および再生セルロース製繊維の量、非天然ポリマーの割合、他のパルプ繊維の含有量、厚さ、密度、坪量、通気度、引張強度、破断点伸び、およびエネルギー吸収量に関する特徴の充足は、フィルタ材料それ自体において確認することができ、水流交絡不織布をフィルタ材料から分離する必要はない。上述の範囲および特性は、水流交絡不織布から製造されたフィルタ材料にも適用される。
【0044】
本発明による喫煙具用セグメントは、本発明によるフィルタ材料から、当分野で知られているプロセスにより製造され得る。これらのプロセスは、例えば、フィルタ材料をクリンプする、または折り畳むステップと、クリンプされた、または折り畳まれたフィルタ材料から連続トウ(tow)を形成するステップと、連続トウを包装材料で包装するステップと、包装されたトウを所定長さの個々のロッドに切断するステップと、を備える。多くの場合、このようなロッドの長さは、次に本発明による喫煙具に使用されるべきセグメントの長さの整数倍である。したがって、ロッドは、喫煙具の製造の前またはその最中に、所望の長さのセグメントに切断される。
【0045】
本発明による喫煙具用セグメントは、本発明によるフィルタ材料と包装材料とを備える。
【0046】
本発明によるセグメントの好適な実施形態において、セグメントは、少なくとも3mmから最大で10mm、特に好適には少なくとも4mmから最大で9mm、特に高度に好適には少なくとも5mmから最大で8mmの直径を有する円筒形状を有する。これらの直径は、本発明によるセグメントを喫煙具に使用するのに有利である。
【0047】
本発明によるセグメントの有利な実施形態において、セグメントは、少なくとも4mmから最大で40mm、特に好適には少なくとも6mmから最大で35mm、特に高度に好適には少なくとも10mmから最大で28mmの長さを有する。
【0048】
セグメントの引き込み抵抗(draw resistance)は、とりわけ、喫煙者が喫煙具の消費中に喫煙具を介して所定の体積流を引き込むために適用する必要のある圧力差を決定するため、喫煙者による喫煙具の受容性に重大な影響を及ぼす。セグメントの引き込み抵抗は、ISO6565:2015に準拠して測定でき、mmウォーターゲージ(mmWG)で示される。セグメントの引き込み抵抗はセグメントの長さに非常に良好な近似で比例するため、引き込み抵抗の測定は、セグメントの長さにおいてのみ異なる複数のロッドにおいても実施され得る。このことから、セグメントの引き込み抵抗は容易に計算できる。
【0049】
セグメントの単位長さ当たりの引き込み抵抗は、好適には少なくとも1mmWG/mmから最大で12mmWG/mm、特に好適には少なくとも2mmWG/mmから最大で10mmWG/mmである。
【0050】
包装材料を含まないセグメント自体の密度は、好適には50kg/m3~300kg/m3、特に好適には60kg/m3~250kg/m3、特に高度に好適には70kg/m3~230kg/m3である。密度は、セグメントの引き込み抵抗、濾過効率、および硬度に実質的な影響を与える。包装材料は引き込み抵抗または濾過効率にほとんど影響を及ぼさないため、セグメントの密度は、包装材料を含まない状態で示される。セグメントの密度は、計算により求められる。この点に関して、まず、セグメントの体積が求められる。例えば、円筒形状のセグメントの場合、直径と長さから計算できる。包装材料が直径に及ぼす影響は無視できる。セグメントの質量は、セグメントが包装材に包装された状態で計量することにより求められる。包装材料の質量は、包装材料の面積、および包装材料の公称坪量または測定坪量から求められる。一例として、典型的な円筒形状のセグメントの場合、包装材料の面積は、セグメントの円周と、それ自体の包装材料との重なり、ならびにセグメントの長さから生じる。
【0051】
包装材料の質量は、包装材料を含むセグメントの質量から差し引かれる。また、その密度は、セグメントの体積で割ることにより計算される。詳細な数値例は、後述する。
【0052】
本発明によるセグメントの包装材料は、好適には、紙またはフィルムである。セグメントの良好な生分解性を損なわないように、特に好適な実施形態において、紙またはフィルムは、包装材料の質量に対して、10%未満の非天然ポリマーを含む。
【0053】
本発明によるセグメントの包装材料は、好適には少なくとも20g/m2から最大で150g/m2、特に好適には少なくとも30g/m2から最大で130g/m2の坪量を有する。好適な坪量または特に好適な坪量を有する包装材料は、これによって包装された本発明によるセグメントに特に有利な硬度を提供する。このため、喫煙者は、喫煙具に配置されたセグメントを意図せずに圧縮することがない。
【0054】
好適な実施形態において、本発明によるセグメントは、フレーバーを含む少なくとも1つのカプセルをさらに含む。多くの場合、カプセルは、ユーザが指の圧力によりこれを破砕して前記フレーバーを放出させ得るように設計される。これにより、喫煙者は、喫煙具の味を変更することができる。
【0055】
本発明による喫煙具は、本発明によるセグメントから、当分野で知られているプロセスを利用することにより製造され得る。
【0056】
本発明による喫煙具は、エアロゾル形成材料を含むセグメントと、本発明によるフィルタ材料と包装材料とを含むセグメントと、を備える。
【0057】
本発明によるセグメントの切断面は、酢酸セルロースから作製されるセグメントに光学的に非常に類似しているため、好適な実施形態において、喫煙具の吸い口端部の隣に位置するセグメントは、本発明によるセグメントである。
【0058】
好適な実施形態において、喫煙具は紙巻たばこであり、エアロゾル形成材料はタバコである。
【0059】
好適な実施形態において、喫煙具は、その意図された使用中に、エアロゾル形成材料を加熱するのみで燃焼させない喫煙具である。
【0060】
本発明によるフィルタ材料用の水流交絡不織布は、以下のステップAからFを備える本発明による以下のプロセスにより製造され得る。
【0061】
A-木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを含む水性懸濁液を作製するステップであって、木材パルプ繊維と再生セルロース製繊維とを合わせた量が、前記懸濁液中の固形物の質量の少なくとも70%を占めるステップ
B-ステップAからの前記懸濁液を走行ワイヤに塗布するステップ
C-前記走行ワイヤを介して前記懸濁液を脱水して繊維ウェブを形成するステップ
D-ステップCからの前記繊維ウェブを支持ワイヤに移送するステップ
E-前記繊維ウェブに向けた少なくとも1つの水ジェットにより前記繊維ウェブを水流交絡させて、水流交絡不織布を形成するステップ
F-前記水流交絡不織布を乾燥させるステップ。
【0062】
本プロセスにより製造された水流交絡不織布は、上述のフィルタ材料での使用に適している。このことは、これが、特に、フィルタ材料の構成要素として水流交絡不織布の文脈において記載されるとともに、フィルタ材料に対する請求項において定義されたすべての特徴を個別に、または組み合わせて有し得ることを意味する。
【0063】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップAの水性懸濁液は、最大で3.0%、特に好適には最大で1.0%、特に高度に好適には最大で0.2%、特に最大で0.05%の固形分を有する。懸濁液の特に低い固形分により、ステップCにおいて、さらに低い密度を有する繊維ウェブを形成することができる。
【0064】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップBおよびステップCで使用される前記走行ウェブは、水平方向に対して前記繊維ウェブの前記走行方向において、少なくとも3°から最大で40°の角度で、特に好適には少なくとも5°から最大で30°の角度で、特に高度に好適には少なくとも15°から最大で25°の角度で上方に傾斜している。
【0065】
好適な実施形態において、前記プロセスは、前記走行ウェブの両側面の間に圧力差を適用してステップCにおける前記懸濁液の脱水を支援するステップを備え、特に好適には、真空ボックスまたは適切な形状を有する回転羽根(vanes)が前記圧力差を発生させる。
【0066】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、複数の水ジェットが、ステップEにおける水流交絡を実施するために使用され、前記水ジェットは、前記繊維ウェブの前記走行方向に対して直交する少なくとも1つの列に配設される。
【0067】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップEにおける水流交絡は、前記繊維ウェブに向けた少なくとも2つの水ジェットにより実施され、特に好適には、少なくとも2つの前記水ジェットは、前記繊維ウェブの異なる側面に向けられる。
【0068】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップFにおける乾燥は、熱風との接触により、赤外線の照射により、またはマイクロウェーブの照射により少なくとも部分的に実施される。加熱した表面との直接的な接触による乾燥も可能であるが、これによると水流交絡不織布の厚さが減少し得るので、あまり好適ではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は、水流交絡不織布の製造のための本発明によるプロセスが実施され得る構成を示す。
【
図2】
図2は、本発明によるセグメントの断面を、酢酸セルロースから作製されたセグメント、および紙から作製されたセグメントと比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
フィルタ材料、喫煙具用セグメント、喫煙具、および水流交絡不織布の製造方法のいくつかの好適な実施形態を以下に説明する。
【0071】
本発明によるフィルタ材料に含まれる水流交絡不織布の製造について、
図1に示すプロセスを利用した。
【0072】
木材パルプ繊維と再生セルロース製の繊維とから作製された懸濁液1を、ヘッドボックス2から、水平方向に対して上方に傾斜した走行ワイヤ3に送り、そして真空ボックス9で脱水した。これにより、繊維ウェブ4がワイヤ上に形成された。この概略移動方向が矢印10で示されている。繊維ウェブ4をワイヤ3から取り外して、同様に走行する支持ワイヤ5に移送した。ここで、繊維ウェブ4の走行方向に対して直交するように複数列に亘って配設された水ジェット11を、装置6から繊維ウェブ4に向けた。この目的は、繊維同士を交絡させて繊維ウェブ4をまとめて不織布にすることである。さらなるステップにおいて、得られた不織布をさらに交絡させるように、水ジェット12をさらなるデバイス7により繊維ウェブ4の他方の側に向けた。その後、まだ濡れている不織布を、乾燥装置8を通して乾燥させた。
【0073】
水流交絡不織布を製造するために、木材パルプ繊維とリヨセル(登録商標)繊維との混合物を使用した。5つの異なる水流交絡不織布A~Eを製造した。それらの組成および特性を表1に示す。ここで、リヨセル(登録商標)繊維および木材パルプ繊維に関する百分率(%)は、水流交絡不織布の質量に対する繊維の量を示す。破断点伸びおよびエネルギー吸収量は、機械方向(MD)において、すなわち
図1において矢印10で示す方向において、およびこれに直交する繊維ウェブ4の平面内にある交差方向(CD)において、各々与えられる。
【0074】
【0075】
水流交絡不織布A~Eを、さらに成分を追加せずに本発明によるフィルタ材料A~Eとして使用した。
【0076】
本発明によるフィルタ材料Eから、密度の異なる3つのセグメントS1、S2およびS3を製造した。各フィルタ材料を、直径7.9mmの連続トウに形成し、78g/m
2の坪量を有する包装材料で包装した。この連続トウを、最初に108mmの長さのロッドに切断した。ISO6565:2015に準拠したロッドの平均質量とロッドの平均引き込み抵抗を求め、これらから包装材料を含まない場合の密度と単位長さ当たりの引き込み抵抗を計算した。次に、ロッドを22mmの長さを有する本発明によるセグメントに切断した。
図2は、セグメントS1、S2、およびS3のデータを示す。セグメントの密度の例示的な計算法を、セグメントS1を用いてより詳細に説明する。
【0077】
セグメントS1である108mm長さのロッドの測定質量は、0.743gであった。直径は、7.9mmであった。このことから、包装材料の厚さを無視すると、ロッドの体積は、π/4×7.92×108=5293mm3となる。幅27mm、長さ108mmで78g/m2の坪量を有する包装材料の質量は、78×0.027×0.108=0.227gであった。したがって、包装材料を含まないセグメントの密度は、(0.743-0.227)/5293=97.5kg/m3となる。
【0078】
【0079】
図2は、本発明によるセグメントS2の断面領域の写真、ならびに酢酸セルロース(CA)製および紙(PA)製の2つの比較セグメントの写真を示す。紙から作製されたセグメントについて、断面領域の荒い構造がはっきり視認されるのに対し、酢酸セルロースから作製されたセグメントは、非常にきめ細かい構造を呈している。本発明によるセグメントS2は、その光学的外観において、酢酸セルロース(CA)のものにかなり近く、したがって、紙(PA)から作成されたセグメントよりもはるかに許容される光学的印象をもたらす。
【0080】
本発明によるセグメントS1、S2およびS3の各々から、83mm長さの本発明による非通気型喫煙具R1、R2、およびR3を製造した。喫煙具は、タバコを含むセグメントとフィルタセグメントとを有する。フィルタセグメントは、本発明によるセグメントS1、S2およびS3により形成した。喫煙具R1、R2およびR3をISO3308に規定される方法に準拠して喫煙し、煙中のタール、ニコチン、および水の量を測定した。従来の酢酸セルロース製のフィルタにより形成された同じ喫煙具を、同一の方法に従って喫煙した。タール、ニコチンおよび水の量を比較すると、フィルタセグメントS1、S2およびS3は、その濾過効率に関して、酢酸セルロースから作製されたフィルタセグメントとよく合致していた。
【0081】
また、セグメントS1、S2およびS3の引き込み抵抗は、喫煙具として有利な範囲にあり、セグメントの組成が任意のものであっても、セグメントの密度によって容易に必要に応じることができる。
【0082】
セグメントS1、S2およびS3、ならびにこれらから製造された喫煙具R1、R2およびR3の生分解性は、使用される成分によるため、別途の試験は実施しなかった。
【0083】
これにより、水流交絡不織布を含む本発明によるフィルタ材料が、フィルタとしての機能において制限なく生分解性および光学的外観に関して、従来技術で知られるフィルタ材料に比較して有利でありながら、さらには容易に入手可能な原材料から工業的に安価に製造可能であることが分かる。