IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァレオ シーメンス イーオートモーティブ フランス エスアーエスの特許一覧

特許7504206充電器のための単相三相ハイブリッド型フィルタシステム
<>
  • 特許-充電器のための単相三相ハイブリッド型フィルタシステム 図1
  • 特許-充電器のための単相三相ハイブリッド型フィルタシステム 図2
  • 特許-充電器のための単相三相ハイブリッド型フィルタシステム 図3
  • 特許-充電器のための単相三相ハイブリッド型フィルタシステム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】充電器のための単相三相ハイブリッド型フィルタシステム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20240614BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H02M7/06 M
H02J7/00 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022537533
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2020085969
(87)【国際公開番号】W WO2021122452
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】1915354
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518100258
【氏名又は名称】ヴァレオ シーメンス イーオートモーティブ フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ノエル、フィオリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ラルビ、ベンダニ
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110233514(CN,A)
【文献】特開2007-300700(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105896693(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電力系統と、電気自動車またはハイブリッド自動車のバッテリと、の間に配置された充電器の機能を担うように特に構成された電気システムであって、
前記電気システムは、前記外部電力系統に対して接続された少なくとも1つの磁気セルであり、磁気コアと、前記磁気コアまわりに巻回された複数の巻線と、を含む少なくとも1つの磁気セルを含み、前記複数の巻線は、「中性」として記載される1つの中性線(N)と、「相」として記載される非中性のライン(A、B、C)であり、第1相(A)が、前記電気システムに対して供給している前記外部電力系統が単相ネットワークである場合に供給される相であるとともに、すべての相(A、B、C)が、前記電気システムに対して供給している前記外部電力系統が多相ネットワークである場合に供給されるものである、非中性のライン(A、B、C)と、を含めて、少なくとも3つのライン(A、B、C、N)を構成しており、
前記磁気セルは、ディファレンシャルモード電流のフィルタリングのために、前記各相(A、B、C)と前記中性線(N)との間に接続されたコンデンサX(CDM1、CDM2、CDM3)と、コモンモード電流のフィルタリングのために、前記各相(A、B、C)と前記電気システムの電気的グランドとの間に、および前記中性線(N)と前記電気的グランドとの間に、接続されたコンデンサY(CY)と、を有したフィルタリングセルを含み、前記電気的グランドは、前記電気システムのフレームによって特に構成されており、
前記電気システムは、前記ディファレンシャルモード電流および前記コモンモード電流のために前記フィルタリングセルの前記コンデンサX(CDM1、CDM2、CDM3)および前記コンデンサY(CY)よりも上流側に接続された、複数のスイッチからなるアレイを含み、前記スイッチアレイは、前記第1相(A)を除く各相(B、C)上で直列接続されたスイッチ(S2、S3)と、前記第1相(A)と他の各相(B、C)との間に接続されたスイッチと、を含み、
前記スイッチアレイは、
- 前記電気システムに対して供給している前記外部電力系統が単相ネットワークであり前記第1相(A)に対してのみ供給している単相動作モードでは、非電源相(B、C)上に直列接続された前記スイッチ(S2、S3)が開いており、かつ、前記第1相(A)と前記他の相(B、C)との間に接続された前記スイッチ(S1、S4)が閉じているように、構成されており、
- 前記電気システムに対して供給している前記外部電力系統が多相ネットワークでありすべての前記相(A、B、C)に対して供給している多相動作モードでは、直列接続された前記スイッチ(S2、S3)が閉じており、かつ、前記第1相(A)と前記他の相(B、C)との間に接続された前記スイッチ(S1、S4)が開いているように、構成されているものであり、
前記スイッチ(S1、S2、S3、S4)からなる前記アレイは、前記磁気セルの前記複数の巻線と、前記フィルタリングセルの前記コンデンサX(CDM3)と、の間に接続されている、電気システム。
【請求項2】
連続して直列に配置された少なくとも2つの磁気セルを含み、前記スイッチ(S1、S2、S3、S4)からなる前記アレイは、最後の磁気セル内に配置されており、すなわち前記外部電力系統から最も離間した磁気セル内に配置されており、他方、前記最後の磁気セルにおける前記フィルタリングセルの前記コンデンサXおよび前記コンデンサYのなおも上流側に配置されている、請求項1に記載の電気システム。
【請求項3】
前記ディファレンシャルモード電流フィルタリングセルは、また、各ライン上に、前記磁気セルの前記複数の巻線に対応した漏洩インダクタンス(LDM2)を含み、これにより、ディファレンシャルモード電流のための、LCタイプのフィルタが構成されている、請求項1または2に記載の電気システム。
【請求項4】
前記コモンモード電流フィルタリングセルは、また、各ライン上に、前記磁気セルの前記複数の巻線に対応したインダクタンス(LCM2)を含み、これにより、コモンモード電流のための、LCタイプのフィルタが構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項5】
前記電気システムの入力のところにおいて前記各相(A、B、C)と前記中性線(N)との間に接続され、前記電気システムの入力インピーダンスを減少させるように構成されたコンデンサX(CDM1)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項6】
前記スイッチ(S1、S2、S3、S4)からなる前記アレイは、前記ラインと同数のリレーから構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項7】
外部の三相電力系統から電気エネルギが適切に供給され得るよう、厳密に三相(A、B、C)を含み、すなわち、第1相(A)と、第2相(B)と、第3相(C)と、を含み、これにより、前記電気システムは、前記中性線(N)に加えて、前記第1相(A)を含めた3つの相(A、B、C)を含む、あるいは、合計で4つの導体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項8】
1つまたは複数の前記磁気セルの前記巻線は、前記第1相(A)および前記中性線(N)を介して48Aの電流を伝送するように構成されているとともに、前記第2相(B)上でおよび前記第3相(C)上で16Aの電流を伝送するように構成されている、請求項7に記載の電気システム。
【請求項9】
前記スイッチ(S1、S2、S3、S4)からなる前記アレイは、前記第1相(A)と前記第2相(B)との間に接続された第1スイッチ(S1)と、前記第2相(B)上において、前記磁気セルの入力のところで、あるいは、前記電気システムの入力から最も離間している前記磁気セルの入力のところで、直列接続された第2スイッチ(S2)と、前記第3相(C)上において、前記磁気セルの入力のところで、あるいは、前記電気システムの入力から最も離間している前記磁気セルの入力のところで、直列接続された第3スイッチ(S3)と、前記第1相(A)と前記第3相(C)との間に接続された第4スイッチ(S4)と、を含み、
- 単相動作モードでは、前記第1スイッチ(S1)および前記第4スイッチ(S4)は、閉じており、かつ、前記第2スイッチ(S2)および前記第3スイッチ(S2、S3は、開いており、
- 三相動作モードでは、前記第1スイッチ(S1)および前記第4スイッチ(S4)は、開いており、かつ、前記第2スイッチ(S2)および前記第3スイッチ(S2、S3)は、閉じている、請求項7または8に記載の電気システム。
【請求項10】
1つまたは複数の前記磁気セルは、磁気コアと、前記三相(A、B、C)および前記中性線(N)をそれぞれ構成する4つの巻線と、を含み、単相動作モードでは前記外部電力系統から電流を受領するように設計された前記第1相(A)を構成する前記巻線は、前記中性線(N)を構成する前記巻線に対して、径方向反対側に配置されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項11】
電気自動車またはハイブリッド自動車のための充電器を構成している、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気システムの分野に関し、特に車両のための充電器の分野に関し、より詳細には、そのような充電器のための、「ハイブリッド」型フィルタリングセルが設けられ、単相充電モードでも三相充電モードでも動作可能な、電気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
公知の多相電気システムでは、特に電気自動車またはハイブリッド自動車の充電器では、ディファレンシャルモード電流およびコモンモード電流のフィルタリングのために、各ラインに対して専用フィルタを使用することが、言い換えれば、各相導体および中性線に対して専用フィルタを使用することが、知られている。
【0003】
「ディファレンシャルモード電流」という用語は、具体的には、多相電気システムの相に対して伝達され中性線を介してループバックされる干渉に対応したリップル電流を定義する。
【0004】
「コモンモード電流」という用語は、具体的には、電気システムの断路器のスイッチングに関連した浮遊電流であって、当該電気システムの相と電気的グランドとの間を循環する、および、中性線と電気的グランドとの間を循環する、浮遊電流を定義する。
【0005】
ディファレンシャルモード電流およびコモンモード電流は、高周波擾乱に対応しており、特に100kHzを超える周波数での高周波擾乱に対応しており、電気システムによって伝送される電流に影響を与える。
【0006】
ディファレンシャルモード電流のフィルタリングのために、コンデンサXとして説明するコンデンサが、各相と中性線との間に接続することで、使用されるとともに、コモンモード電流のフィルタリングのために、コンデンサYとして説明するコンデンサが、各ラインとグランドとの間に接続されることで、言い換えれば、一般に、各ラインと当該多相電気設備のフレームとの間に接続されることで、使用される。
【0007】
従来技術によれば、ディファレンシャルモード電流およびコモンモード電流の減衰のために、ラインごとに、単相フィルタが使用される。
【0008】
しかしながら、これは、特に単相充電モードでは、フィルタリングの有効性に悪影響を与える様々な欠点を伴う。
【0009】
組み合わされたすべてのライン上の合計コンデンサンス値Yは、フレームに流れる漏洩電流の潜在的強度を支配し、この場合の漏洩電流は、低周波電流であり、言い換えれば、外部電力系統の周波数での電流であり、一般に、50Hzまたは60Hzでの電流である。この漏洩電流は、保護導体が遮断された場合には、フレームに対して接触した人の身体を通して流れる電流に対応する「タッチ電流」を誘発する。
【0010】
このタッチ電流は、制限されており、すなわち、安全上の理由から、このタッチ電流が最大許容しきい値を決して超えないことを保証し得るものでなければならず、これにより、実際には、最大合計コンデンサンス値Yが制限され、そのため、定義により、電気システムの各コンデンサYの定格が制限される。
【0011】
従来技術によれば、結果として、多相電気システムにおいて、少なくとも1つのコンデンサXと1つのコンデンサYとからなるフィルタが存在し、このフィルタは、その「専用」ラインに適合したものとされる。上述したように、合計コンデンサンス値Yは、タッチ電流の最大許容値に関連した安全上の理由から、制限されており、そのため、所与のラインに適した単相フィルタのコンデンサンスYがさらに減少し、これにより、対応するコモンモード電流を減衰させる能力に影響を与えてしまう。したがって、ラインの数が多くなるほど、各単相フィルタの有効性が小さくなり、これは、ライン全体に分布するコンデンサンスYの値が、各ライン上でそれぞれ減少するからである。
【0012】
従来技術によれば、この問題点に対する1つの解決策は、各ラインのインダクタンスの大きさを増加させることである。しかしながら、そのように寸法決めされた電気システムに対する空間的要件に関して、結果的に生じる欠点が存在する。
【0013】
従来技術によれば、ラインごとに1つの単相フィルタを設けて並列動作させることに関連した更なる欠点は、電気システム全体として要求される全体的フィルタリング性能を維持するためには、個々のフィルタに対してより厳しい性能マージンの順守を課さなければならないことに起因する。実際には、各ライン上で、単相動作では干渉が存在し、それが累積する。したがって、外部電力系統内への電流の再注入に関する制限は、単相モード動作と三相モード動作とで同じであり、そのため、単相動作では、三相動作と比較して、外部電力系統内へと再注入される電流が、3倍大きくなる。その結果、従来技術では、各単相フィルタに関して、言い換えれば、各ラインに関して、望ましい性能マージンは、10dBの程度である。
【0014】
上記の欠点を少なくとも部分的に相殺するために、提案された解決策は、設計的に多相とされ、単相動作または三相動作のいずれか(特に三相動作)に関してフィルタ動作の設定を可能とするように構成されるリレーを有した、ハイブリッド型フィルタ構造を含む。具体的には、言い換えれば、3つの単相フィルタを並列に動作させた電気システムに代えて、本発明は、三相フィルタを有した電気システムを提案する。
【0015】
本発明によれば、詳細に後述するように、スイッチのアレイは、単相供給または三相供給のいずれに関しても、特に三相供給に関して、最適なフィルタリング性能を可能とするように格別に構成されている。したがって、本発明は、電気自動車またはハイブリッド自動車の車載充電器を構成する電気システムに特に適しており、充電器は、単相または三相のいずれかの外部電力供給によって動作することができ、よって、電気自動車またはハイブリッド自動車の供給バッテリを充電することができる。
【発明の概要】
【0016】
より具体的には、本発明の目的は、外部電力系統と、電気自動車またはハイブリッド自動車のバッテリと、の間に配置された充電器の機能を担うように特に構成された電気システムであって、電気システムは、外部電力系統に対して接続された少なくとも1つの磁気セルであり、磁気コアと、磁気コアまわりに巻回された複数の巻線と、を含む少なくとも1つの磁気セルを含み、複数の巻線は、「中性」として記載される1つの中性線と、「相」として記載される非中性のラインであり、第1相が、電気システムに対して供給している外部電力系統が単相ネットワークである場合に供給される相であるとともに、すべての相が、電気システムに対して供給している外部電力系統が多相ネットワークである場合に供給されるものである、非中性のラインと、を含めて、少なくとも3つのラインを構成しており、磁気セルは、ディファレンシャルモード電流のフィルタリングのために、各相と中性線との間に接続されたコンデンサXと、コモンモード電流のフィルタリングのために、各相と電気システムの電気的グランドとの間に、および中性線と電気的グランドとの間に、接続されたコンデンサYと、を有したフィルタリングセルを含み、電気的グランドは、電気システムのフレームによって特に構成されている。電気システムは、ディファレンシャルモード電流およびコモンモード電流のためにフィルタリングセルのコンデンサXおよびコンデンサYよりも上流側に接続された、複数のスイッチからなるアレイを含み、スイッチアレイは、第1相を除く各相上で直列接続されたスイッチと、第1相と他の各相との間に接続されたスイッチと、を含み、スイッチアレイは、
- 電気システムに対して供給している外部電力系統が単相ネットワークであり第1相に対してのみ供給している単相動作モードでは、非電源相上に直列接続されたスイッチが開いており、かつ、第1相と他の相との間に接続されたスイッチが閉じているように、構成されており、
- 電気システムに対して供給している外部電力系統が多相ネットワークでありすべての相に対して供給している多相動作モードでは、直列接続されたスイッチが閉じており、かつ、第1相と他の相との間に接続されたスイッチが開いているように、構成されている。
【0017】
したがって、本発明による電気システムのすべての相は、電流出力を伝送し、すべてのコンデンサXおよびコンデンサYは、単相モードを含めて、ディファレンシャルモード電流およびコモンモード電流のフィルタリングに関与している。
【0018】
その結果、単相モードでの合計コンデンサンス値Yは、タッチ電流を支配する規格に対する準拠を維持しながらも、増大し、その結果、コンデンサYの個々の定格を、減少させることができる。
【0019】
コンデンサXが、スイッチアレイの下流側に配置されていることのために、すべてのコンデンサXは、リップル電流のフィルタリングに関与しており、これにより、コンデンサXの過熱というリスクを、低減することができる。
【0020】
本発明を使用すれば、インダクタンスの全体的な大きさを減少させることができる。
【0021】
一実施形態によれば、本発明による電気システムは、連続して直列に配置された少なくとも2つの磁気セルを含み、スイッチからなるアレイは、最後の磁気セル内に配置されており、すなわち外部電力系統から最も離間した磁気セル内に配置されており、他方、最後の磁気セルにおけるフィルタリングセルのコンデンサXおよびコンデンサYのなおも上流側に配置されている。
【0022】
一実施形態によれば、ディファレンシャルモード電流フィルタリングセルは、また、各ライン上に、磁気セルの複数の巻線に対応した漏洩インダクタンスを含み、これにより、ディファレンシャルモード電流のための、LCタイプのフィルタが構成されている。
【0023】
一実施形態によれば、コモンモード電流フィルタリングセルは、また、各ライン上に、磁気セルの複数の巻線に対応したインダクタンスを含み、これにより、コモンモード電流のための、LCタイプのフィルタが構成されている。
【0024】
一実施形態によれば、スイッチからなるアレイは、磁気セルの複数の巻線と、フィルタリングセルのコンデンサXと、の間に接続されている。
【0025】
特に、電気システムは、電気システムの入力のところにおいて各相と中性線との間に接続され、電気システムの入力インピーダンスを減少させるように構成されたコンデンサXを含む。
【0026】
一実施形態によれば、スイッチからなるアレイは、ラインと同数のリレーから構成されている。
【0027】
一実施形態によれば、本発明による電気システムは、外部の三相電力系統から電気エネルギが適切に供給され得るよう、厳密に三相を含み、すなわち、第1相と、第2相と、第3相と、を含み、これにより、電気システムは、中性線に加えて、第1相を含めた3つの相を含む、あるいは、合計で4つの導体を含む。
【0028】
一実施形態によれば、1つまたは複数の磁気セルの巻線は、第1相および中性線を介して48Aの電流を伝送するように構成されているとともに、第2相上でおよび第3相上で16Aの電流を伝送するように構成されている。
【0029】
一実施形態によれば、スイッチからなるアレイは、第1相と第2相との間に接続された第1スイッチと、第2相上において、磁気セルの入力のところで、あるいは、電気システムの入力から最も離間している磁気セルの入力のところで、直列接続された第2スイッチと、第3相上において、磁気セルの入力のところで、あるいは、電気システムの入力から最も離間している磁気セルの入力のところで、直列接続された第3スイッチと、第1相と第3相との間に接続された第4スイッチと、を含み、
- 単相動作モードでは、第1スイッチおよび第4スイッチは、閉じており、かつ、第2スイッチおよび第3スイッチは、開いており、
- 三相動作モードでは、第1スイッチおよび第4スイッチは、開いており、かつ、第2スイッチおよび第3スイッチは、閉じている。
【0030】
一実施形態によれば、1つまたは複数の磁気セルは、磁気コアと、三相および中性線をそれぞれ構成する4つの巻線と、を含み、単相動作モードでは外部電力系統から電流を受領するように設計された第1相を構成する巻線は、中性線を構成する巻線に対して、径方向反対側に配置されている。
【0031】
特に、本発明による電気システムは、電気自動車またはハイブリッド自動車のための充電器を構成している。
【0032】
本発明の理解は、例示のためだけに提供される以下の説明を参照することにより、また、非限定的な例示のために提供される添付図面を参照することにより、明瞭となり、添付図面においては、同一の参照符号が同様の構成要素に対して適用されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、従来技術による三相充電器の概略図を示している。
【0034】
図2図2は、三相動作モードでの、本発明による例示的な電気システムの概略図を示している。
【0035】
図3図3は、単相動作モードでの、本発明による例示的な電気システムの概略図を示している。
【0036】
図4図4は、本発明による例示的な電気システムにおけるフィルタリング性能に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面が、本発明の展開を可能とするために、本発明を詳細な態様で提示していること、また、図面が、当然のことながら、適用可能な場合には、本発明のより効果的な定義のために使用され得ることに、留意されたい。
【0038】
図1]は、電気システムを示しており、特に、三相モードまたは単相モードで動作可能な充電器を示している。言い換えれば、[図1]に示す充電器は、外部の単相または三相の電力系統から供給される電気エネルギを使用して、出力端子U+/U-で接続されたバッテリを、特に電気自動車またはハイブリッド自動車のバッテリを、充電することができる。
【0039】
単相モードでは、外部電源は、ラインL1のみに対して電流を供給する。ラインL2、L3の入力のところに接続されたリレーは、開いている。三相モードでは、3つのラインL1、L2、L3に対して、言い換えれば、図示された三相充電器の三相に対して、電気エネルギが供給される。電気システムは、また、中性線Nを含む。
【0040】
従来では、各相L1、L2、L3は、三相並列とされ、力率補正用コンバータ回路PFCの上流側に配置された予充電回路Pと、それに続き同様に並列接続された、限定するものではないが例えばLLCタイプの、3つのDC電圧コンバータ回路と、を含む。
【0041】
フィルタリング要素ACFが、各相L1、L2、L3に対して供給される交流電流の処理のために、入力のところに接続されており、フィルタリング要素DCFが、バッテリに対して供給される直流電流の処理のために、充電器の出力のところに接続されている。
【0042】
公知の態様では、コンバータ回路は、それぞれの磁気コアまわりに巻回された巻線の形態で構成され、半導体アセンブリによって変圧器を構成し、特にMOSFETsなどのスイッチアセンブリによって制御される変圧器を構成し、例えば、Hブリッジを形成するように接続することができる。
【0043】
図2および図3を参照すると、単相モードおよび三相モードで効果的に機能する「ハイブリッド」型フィルタリングソリューションが提案されている。コンデンサCDM1、CDM2、CDM3は、ディファレンシャルモード電流のフィルタリングに関与するのに適したコンデンサXであり、コンデンサCYは、コモンモード電流のフィルタリングに関与するのに適したコンデンサYである。
【0044】
コンデンサX CDM1、CDM2、CDM3は、各相A、B、Cと、中性線Nと、の間に接続されている。
【0045】
コンデンサY CYは、各相A、B、Cと、この場合には電気システムのフレームに対応する電気的グランドと、の間に、および、中性線Nと電気的グランドとの間に、接続されている。
【0046】
第1コンデンサX CDM1は、電気システムの入力のところに接続されており、電気システムの入力インピーダンスを制限することを可能とする。
【0047】
図2および図3に示す電気システムは、2つの磁気セルを含み、各磁気セルは、それぞれの磁気コアまわりに構造化されており、磁気コアまわりに、システムの4つの構成ラインに対応する、すなわち3つの相A、B、Cとおよび中性線とに対応する、巻線が巻回されている。これら3つの相A、B、Cおよびこの中性線Nは、電気システムの出力のところにおいて、各端子セルA、セルB、セルCに対しておよび中性線に対して接続されており、外部の電気デバイスが、特に電気自動車またはハイブリッド自動車のバッテリを充電するためのDC/DCコンバータが、接続され得る。
【0048】
磁気セルの機能は、コモンモードの擾乱およびディファレンシャルモードの擾乱をフィルタリングすることである。
【0049】
図2および図3に示す実施形態によれば、複数のスイッチからなるアレイが、第2磁気セルに設けられており、このスイッチアレイは、4つのリレーS1、S2、S3、S4から構成されている。第1相Aは、単相モードにおいて電気エネルギが供給される相に対応する。第1相Aには、直列接続されたスイッチアレイをなすリレーは、組み込まれていない。逆に、第1相Aは、各リレーS1、S4を介して、他の2つの相B、Cのそれぞれに対して接続されている。その上、他の2つの相B、Cのそれぞれは、対応する相B、Cによって供給される共振コンバータ回路の入力のところに直列接続された各リレーS2、S3を含む。
【0050】
図示の例では、電気システムは2つの磁気セルを含む。しかしながら、直列接続された、より多数の磁気セルが存在してもよい。すべての場合において、スイッチアレイは、好ましくは、最後のセル内に配置され、すなわち、電気システムのうち、入力から最も離れた磁気セル内に配置され、外部電力系統に対して接続される。実際には、回路の上流側に向けての、特に外部電力系統に向けての、電気的擾乱のあらゆる伝播を防止するために、連続した磁気セルどうしの間には、シールドが設けられていることが好ましい。
【0051】
スイッチS1、S2、S3、S4からなるアレイは、最後の磁気セルのフィルタリングセル内において、フィルタリングコンデンサXおよびYよりも上流側に、かつ、磁気コアおよび巻線よりも下流側に、配置されている。実際には、スイッチアレイが、コンデンサXおよびYの下流側に配置された場合には、導電経路どうしの間の結合を介して、ライン干渉が増加するという結果的なリスクが生じることとなり、あるいは高周波短絡が発生するという結果的なリスクが生じることさえあり、特に、例えば電気システムの出力のところに接続された電力コンバータから外部電力系統に向けて、擾乱が発生して伝達するというリスクが生じることとなる。
【0052】
スイッチアレイは、結果として、巻線が巻回された最後の磁気セルの磁気コア、言い換えれば最後の「自己誘導コイル」と、この最後の磁気セルに関連したフィルタリングセルのコンデンサXおよびYと、の間に配置されている。
【0053】
この実施形態によれば、各フィルタリングセルにおいて、すなわち各相において、コンデンサY CYは、磁気セルのインダクタンスLCM1、LCM2と一緒に、コモンモード電流をフィルタリングするためのLCタイプの回路を構成する。
【0054】
他方、コンデンサX CDM1、CDM2、CDM3は、磁気セルの漏洩インダクタンスLDM1、LDM2と一緒に、ディファレンシャルモード電流をフィルタリングするためのLCタイプの回路を構成する。磁気セルの漏洩インダクタンスと一緒に動作させることが好ましいけれども、これに代えて、各相A、B、C上に直列接続された特定のインダクタンスLDM1、LDM2を設けることもできる。
【0055】
したがって、所与のラインについて、フィルタリングセルは、実際には、自己誘導コイルと、このラインに対して接続されたコンデンサXおよびコンデンサYと、の組合せによって構成される。
【0056】
動作モード
【0057】
本発明による電気システムは、特に単相三相充電器の文脈で上述した本発明による電気システムは、単相動作モードと三相動作モードとを特徴とする。特に、単相三相充電器の形態での電気システムという例では、本発明による電気システムは、単相動作モードと三相動作モードとを特徴とする。そのアーキテクチャに基づき、特にスイッチアレイおよびその格別の配置に基づき、本発明による電気システムは、効果的なフィルタリングを可能とする、すなわち言い換えれば、ディファレンシャル漏洩電流とコモンモード電流の減衰を、寸法および空間的要件を減少させつつ、かつ安全性要件に準拠しつつ、可能とする。
【0058】
三相動作モードは、充電器の場合には、バッテリを充電するために、特に電気自動車またはハイブリッド自動車のバッテリを充電するために、外部の三相電力系統が3つの相A、B、Cに対して電流を供給するモードに対応し、さらに、充電器の磁気セルによって三相電流を変換することに対応する。例えば、各相A、B、Cは、その場合、約16Aの電流を流すこととなる。三相動作モードでは、実際には、各相内を流れる3つの電流の和がゼロであるため、中性線には、電流が流れない。
【0059】
本発明によれば、この文脈において、[図2]を参照すると、スイッチアレイにおけるリレーS2、S3は、閉じているため導電的である、すなわち、電流を導通する、あるいは、オン状態である。他のリレーS1、S4は、開いている。
【0060】
これにより、当然のことながら、各相のフィルタリングセルが、使用される。
【0061】
本発明は、単相動作モードにおいて、特に有利である。ここで、充電器の場合には、単相の外部電力系統は、この場合にもバッテリを充電するために、特に電気自動車またはハイブリッド自動車のバッテリを充電するために、さらに、充電器の磁気セルを使用して三相電流へと変換するために、第1相Aのみに対して電流を供給する。この例では、三相動作モードと比較して、第1相Aは、この場合、約48Aの電流を流すことになる。単相動作モードでは、外部電力系統から、他の相B、C(第1相とは別個)に対しては、電流が注入されることはない。
【0062】
本発明によれば、この文脈において、[図3]を参照すると、スイッチアレイにおけるリレーS1、S4は、閉じているため導電的である、すなわち、電流を導通する、あるいは、オン状態である。他のリレーS2、S3は、開いている。
【0063】
したがって、スイッチアレイは、例えば電気自動車またはハイブリッド自動車のバッテリを充電するために電力コンバータ変換器に対しての供給のために、電気システムの3つの出力端子セルA、セルB、セルC上に電流が分配されるように、制御される。同時に、電流は、3つの相A、B、Cのフィルタリングセルを通して流れる。よって、[図3]を参照すると、コモンモード電流の減衰のために、4つのコンデンサY CYが、最後の磁気セルにおいて使用されている。よって、単相動作におけるコモンモード電流のフィルタリングに関与するコンデンサYの数が、大幅に増加する。その結果、電気システムの合計コンデンサンス値Yの関数であるタッチ電流の順守が、同等のフィルタリング性能で、より容易に維持される。実際には、より多くのコンデンサYが使用されていることのために、従来技術で使用されていたものと比較して、より小さな定格のコンデンサYを選択することができ、優れたレベルではないにしても、同等のコモンモード電流の減衰レベルを達成することができる。
【0064】
単相動作モードにおいてさえ、すべてのコンデンサY CYは、したがって、タッチ電流が、所望のしきい値よりも充分に小さいままであるように、特に例えば2.5mAというしきい値よりも充分に小さいままであるように、中性線が切断される場合の漏洩電流の構成に関与する。
【0065】
同じことが、コンデンサXについても当てはまる。よって、なおも[図3]を参照すると、従来技術によるシステムと比較して、2つの追加的なコンデンサX CDM3が使用されており、第1相Aおよび中性線Nから分離されていて相B、C間に接続されたコンデンサX CDM3は、関与しないこととなる。よって、リップル電流を、より容易に減衰させることができる。
【0066】
本発明の更なる利点は、上述したように、自己誘導コイルが、言い換えれば、磁気セルを構成するために各磁気コアまわりに巻回された巻線が、コンデンサXおよびYと組み合わせて、LC回路をなす各構成によるフィルタリングの実行に関与していることに起因する。本発明を使用した場合の、コンデンサXおよびYの定格における結果的なフレキシブルさは、また、巻線サイズの減少を可能とし、よって、電気システムの空間的要件の減少を可能とする。
【0067】
よって、本発明により、スイッチアレイは、単相動作においては、タッチ電流の制限値の順守を維持しつつ、関与するコンデンサX、Yの数の増加を可能とするようにして、配置されており、より寸法的にコンパクトな電気システムを達成することができる。
【0068】
例えば、なおも電気自動車またはハイブリッド自動車の電気バッテリを充電するための単相三相充電器の文脈では、本発明では、2.5mA未満というタッチ電流を確保しつつ、従来技術による1ラインあたり4.1nFと比較して、1ラインあたり6.2nFという定格を有したコンデンサYを選択することができる。磁気セルの各巻線のインダクタンスは、従来技術による20mH以上という値と比較して、5mHに等しくてもよい。
【0069】
スイッチアレイが電気システムの入力から離間しているようにして、最後の磁気セルにおけるスイッチアレイが配置されていることにより、リレーS1、S2、S3、S4と、電気システムの入力端子と、の間の電磁結合現象を防止することができる。
【0070】
その上、[図4]を参照すると、減衰に対してのフィルタリング性能が、三相モードでは相A、B、Cあたりにつき3.5kWの電力が伝送され、単相モードでは11kWの電力が伝送されて第1相L1内へと注入される場合に、単相動作Mおよび三相動作Tにおける周波数fの関数として、示されている。理解されるように、単相モードでの性能は、約10dBの分だけ、向上している。
【0071】
自己誘導コイルの実施形態
【0072】
磁気セルの実施形態に関して、好ましい実施形態によれば、規定されることは、磁気コアまわりの巻線の配置において、第1相を構成することを意図した巻線が、中性線に対して、可能な限り離間していることが確保されることである。言い換えれば、環状設計の磁気コアでは、第1相に対応したコイル巻線と、中性線に対応したコイル巻線とは、互いに対向して配置される、言い換えれば、磁気コアの環状構造に関して径方向反対側に配置される。よって、単相動作モードでは、特にコンデンサYまたはコンデンサXを組み込んだLC回路の構成により、上述したように、フィルタリングの実行に関与する漏洩インダクタンスが最大化される。単相動作モードでの漏洩インダクタンスを最大化することにより、三相動作モードでのフィルタリング性能を損なうことなく、この動作モードでのフィルタリング性能の直接的な向上が達成される。
図1
図2
図3
図4