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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240614BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240614BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022549311
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 US2020018713
(87)【国際公開番号】W WO2021167596
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】522324255
【氏名又は名称】ピエルブルク ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PIERBURG GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヌオティオ,ミカ
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-114176(JP,A)
【文献】特開2001-308263(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125673(WO,A1)
【文献】特開2015-149842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積半導体パワートランジスタパッケージ(10)であって、
ローサイドパワースイッチ(130)の正の電源端子に直列に接続されたハイサイドパワースイッチ(110)の負の電源端子を備えるハーフブリッジ電気回路(100)であって、前記各パワースイッチ(110、130)は、電気的に並列に接続された複数の半導体パワートランジスタダイ(400a、400b)を備える前記ハーフブリッジ電気回路(100)と、
前記ローサイドパワースイッチ(130)を構成する少なくとも1つの前記半導体パワートランジスタダイ(400b)の正の電源端子パッドに焼結接合され、中間点端子(505d)が接合された銅クラッド層形状530)を有する第1基板(41)と、
前記第1基板(41)と平行な第2基板(44)であって、前記ハイサイドパワースイッチ(110)を構成する少なくとも1つの前記半導体パワートランジスタダイ(400a)の正の電源端子パッドに焼結接合され、正電圧外部端子(605d)が接合されクラッド層形状630)を有する前記第2基板(44)と、
前記第1基板(41)上で前記ローサイドパワースイッチ(130)を構成する少なくとも1つの半導体パワートランジスタダイ(400b)の負の電源端子パッドを、前記第2基板(44)の負電圧外部端子(605e)が接合された銅クラッド層形状640)に焼結接合させる複数の垂直スペーサ(425b)と、
前記第2基板上で前記ハイサイドパワースイッチ(110)を構成する少なくとも1つの前記半導体パワートランジスタダイ(400a)の負の電源端子パッドを、前記第1基板(41)の前記中間点端子が接合された銅クラッド層形状530)に焼結接合させる複数の垂直スペーサ(425a)と、
前記第2基板(44)の銅クラッド層形状(630)に接合され、前記第2基板(44)の銅クラッド層形状(640)に接合された負電圧外部端子であるパワーリードフレームピン(605e)と隣接する、正電圧外部端子であるパワーリードフレームピン(605d)と、
少なくとも、前記第1および第2基板(41、44)の間であって、前記第2基板(44)の前記正電圧外部端子であるパワーリードフレームピン(605d)及び前記負電圧外部端子であるパワーリードフレームピン(605e)と、前記第1基板(41)の前記正電圧外部端子であるパワーリードフレームピン(505d)と間に形成された空洞を封止する封止材(460)と、
を備え
前記第2基板(44)の前記正電圧外部端子であるパワーリードフレームピン(605d)及び前記負電圧外部端子であるパワーリードフレームピン(605e)のうち少なくとも1つは、前記第1基板(41)の銅クラッド層形状(530)に接合された前記中間点端子であるパワーリードフレームピン(505d)と平面視において少なくとも部分的に重なっている、集積半導体パワートランジスタパッケージ(10)。
【請求項2】
前記半導体パワートランジスタダイ(400a、400b)のそれぞれの負の電源端子パッド(220)とリードフレームピン(505b)の間に、ケルビンゲートリターン信号経路を形成する電気的な相互接続構造をさらに備える、請求項1に記載の集積半導体パワートランジスタパッケージ(10)。
【請求項3】
前記第1基板(41)のクラッド層形状(520)に接合された少なくとも1つのリードフレームピン(505a)と、
前記第2基板(44)のクラッド層形状(620)に接合された少なくとも1つのリードフレームピン(605a)と、
をさらに備える、請求項1または2に記載の集積半導体パワートランジスタパッケージ(10)。
【請求項4】
前記第1基板(41)の外側クラッド層(415a)に接合する少なくとも1つのヒートシンク(405a)と、
前記第2基板(44)の外側クラッド層(445a)に接合する少なくとも1つのヒートシンク(405b)と、
をさらに備える、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の集積半導体パワートランジスタパッケージ(10)。
【請求項5】
複数の電気抵抗体(810a~810d)と、
リードフレームピン(505a)と前記半導体パワートランジスタダイ(400a、400b)のそれぞれのゲート端子パッド(415e)の間に直列に接続された前記電気抵抗体(810a~810d)のうち少なくとも1つを含む電気経路を形成する相互接続構造と、
をさらに備える、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の集積半導体パワートランジスタパッケージ(10)。
【請求項6】
少なくとも一つのエネルギー吸収スナバダイ(820a,820b)と、
スナバダイ端子と、前記ハーフブリッジ電気回路(100)の正電圧外部端子および負電圧外部端子との間に電気的な接続を形成する相互接続構造と、
をさらに備える、請求項1から5のうちいずれか1項に記載の集積半導体パワートランジスタパッケージ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱抵抗の低減、ゲート制御信号の整合性の向上、材料コストの低減、および必要な製造プロセス工程の低減を実現する、両面冷却パッケージ構成における複数の半導体パワートランジスタの高電力密度なパッケージングに関する。
【背景技術】
【0002】
直流-交流電力変換回路、交流-直流電力変換回路、直流-直流電力変換回路には、ハーフブリッジ回路構成にパッケージされた半導体パワートランジスタが多く使用されている。このような電力変換回路に使用される半導体パワートランジスタは熱を放散する。放散された熱を効率よくパッケージの外に逃がすことは、半導体パワートランジスタのパッケージのサイズとコストを最小限に抑えつつ、その処理能力を最大限に引き出すために重要である。
【0003】
半導体パワートランジスタダイとパッケージのヒートシンクの間の材料層および材料ボンディング層の数を減らすことにより、半導体パワートランジスタダイとパッケージのヒートシンクとの間の熱抵抗を最小化することができる。また、材料層および材料ボンディング層の数を減らすことで、必要な製造工程数を最小限に抑えることができ、結果として、より低コストのパッケージを実現することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体パワートランジスタ技術の向上により、数ナノ秒以内に数十アンペア程度の非常に高速なスイッチング速度が得られるようになった。半導体パワートランジスタパッケージにおける寄生ソースインダクタンスは、高速スイッチングの過渡電流と併せて、制御ゲート信号に対抗する過渡的な電圧スパイクをもたらし、これが緩和されないと、スイッチング性能の著しい低下、場合によってはデバイスの故障が発生することがある。
【0005】
熱サイクルによる応力を受けると、半導体パワートランジスタダイと基板の間のはんだ接合は、パッケージの信頼性を低下させる。パッケージの全体的な信頼性を向上させるためには、熱サイクルへの耐久性を向上させた代替の接合方法を使用することが望ましい。
【0006】
また、半導体パワートランジスタのパッケージ内の浮遊インダクタンスや、外部回路への接続により、トランジスタの高速スイッチング時に過渡電圧が発生することがある。このような過渡電圧は、緩和されないと、半導体パワートランジスタの故障の原因となることがある。ゲート抵抗を増加させることでトランジスタのスイッチング速度を減少させ、過渡電圧を抑制することも可能ではあるが、この方法は、トランジスタのスイッチング速度の減少によりスイッチング損失が増加する点で望ましくない。
【0007】
さらに、複数の半導体パワートランジスタを並列接続すると、並列駆動されるトランジスタへのゲート信号が共振することがある。このような振動が緩和されないと、並列するトランジスタ間の動的な電流共有や接合部温度の変動が大きくなり、性能低下やデバイスの故障が発生することがある。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題のうち1つ以上を解決するための実施形態を提供することである。半導体パワートランジスタのパッケージおよび冷却の改善にかかる本発明の開示は、パワー半導体スイッチの、性能、電力密度、およびコストの面で最適な動作を可能にする実施形態について説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のある実施形態にかかる例示的なハーフブリッジ電気回路を示す図である。
図2】本発明のある実施形態にかかる半導体パワートランジスタダイの断面概略図である。
図3】本発明のある実施形態にかかる例示的な電気ゲート駆動回路構造を示す図である。
図4】本発明のある実施形態にかかる例示的な両面冷却パッケージ構造の断面図である。
図5】本発明のある実施形態にかかる第1基板サブアセンブリの例示的な構造を示す図である。
図6】本発明のある実施形態にかかる第2基板サブアセンブリの例示的な構造を示す図である。
図7】本発明のある実施形態にかかるパッケージ構造の例示的な側面断面図である。
図8】本発明のある実施形態にかかる第2基板サブアセンブリのさらなる例示的構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態およびその効果は、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解される。なお、図示された同様の要素には同じ参照番号を使用しており、図中の表示は、本発明の実施形態を例示する目的のためのものであって、本発明の保護範囲を限定する目的のためのものではない。
【0011】
本発明は、半導体パワートランジスタおよび装置のパッケージ、並びに、パッケージされたトランジスタと外側ヒートシンクの間の熱抵抗を最小限に抑えながら電力密度を最大化するために用いられる方法に関する。
【0012】
本発明は、上述した課題のうち1つ以上を解決するための実施形態を提供する。パッケージおよび冷却構造の向上についての本発明は、効率性、信頼性、より高い電力密度、より高い費用効果を有するパッケージされた半導体パワートランジスタを実現するための実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の2つのパワースイッチのハーフブリッジの電気的構成100を概略的に示している。ある実施形態では、2つのハーフブリッジパワースイッチ110、130は、それぞれ、1つまたは複数の並列接続された半導体パワートランジスタを備えることができる。ハイサイドパワースイッチ110において、トランジスタの正の電源端子は正電圧外部端子150に電気的に接続され、トランジスタの負の電源端子170は中点端子160に電気的に接続される。ローサイドパワースイッチ130において、トランジスタの正の電源端子は中点端子160に電気的に接続され、トランジスタの負の電源端子は負電圧外部端子170に電気的に接続される。パワースイッチ110、130を構成する半導体パワートランジスタは、それぞれ、ゲート制御信号部120、140を介して制御される。
【0014】
ある実施形態では、パッケージにおいて、ハイサイドおよびローサイドパワースイッチ110、130と並列に接続される複数の半導体ダイオードダイを備えたダイオード構造110a、130aがそれぞれ設けられる。
【0015】
図2は、本発明のある実施形態にかかる半導体パワートランジスタダイ200の例示的な内部構造の断面を概略的に示している。半導体パワートランジスタダイ200の概略図には、正の電源端子パッド210、負の電源端子パッド220、およびトランジスタゲート端子パッド230が示されている。ある実施形態では、半導体パワートランジスタは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタMOSFETまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT構造により構成される。MOSFETトランジスタ構造では、正および負の電源端子はそれぞれドレイン端子およびソース端子に対応する。IGBTトランジスタ構造では、正および負の電源端子はそれぞれコレクタ端子およびエミッタ端子に対応する。
【0016】
ある実施形態では、MOSFETまたはIGBTトランジスタ構造は、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、別のIII-V族半導体、または他の半導体材料から形成することができる。
【0017】
本発明のある実施形態は、直流(DC)-交流(AC)電力インバータ回路、AC-DC電力コンバータ回路、およびDC-DC電力コンバータ回路を実現するために用いられる。このような電力変換回路では、副生成物として熱が発生する。この熱の大部分は、パッケージ内の半導体パワートランジスタに起因して発生するものである。本発明のある実施形態によれば、パッケージの上面および底面の両方を介して熱を放散するための、より効率的でより均一な方法が提供される。
【0018】
図3は、本発明にかかる様々な半導体パワートランジスタの電気ゲート駆動回路の実施形態を概略的に示している。回路300aは、一般的なゲート駆動回路を模式的に示している。ゲート駆動電源電圧Vdd320aを有するゲートドライバ320は、半導体パワートランジスタ310の負の電源端子310bに電気的に直列接続された寄生インダクタンスLp330を介し、負電位350に電気的に接続されるリターン経路を有している。この寄生インダクタンス330は、パワー半導体パッケージ内の電気的相互接続構造だけでなく、パワー半導体パッケージの外部のゲート駆動回路320の寄生効果によるものである。ゲートドライバ320は、半導体パワートランジスタのゲート端子310cにゲート制御信号320bを課すことにより、半導体パワートランジスタ310を制御する。半導体パワートランジスタ310のゲート端子310cと負の電源端子310bとの間の電圧Vgn310dがデバイス固有の所定の電圧閾値を上回ると、半導体パワートランジスタ310はターンオン状態となる。同様に、Vgn310dがデバイス固有の所定の閾値を下回ると、半導体パワートランジスタはターンオフ状態となる。ゲート制御圧Vgn310dは、さらに、寄生インダクタンスLp330と、トランジスタのターンオン、ターンオフ過渡時の電流変化率(di/dt)に影響される。ゲート制御圧Vgn310dは、寄生インダクタンスVind330aにかかる電圧に対している。実効的なゲート制御圧Vgn310dは、以下の数1のように表すことができる。
【数1】
寄生インダクタンスLp330がゲート制御圧Vgn310dに及ぼす影響を緩和するために、ケルビンゲートリターン信号350を有する代替回路300bが、半導体パワートランジスタの負の電源端子に直接接続される。本発明のある例示的な実施形態では、ケルビンゲートリターン信号350を電気的に実現するパッケージ相互接続構造が設けられる。本発明の例示的な実施形態300cは、複数の並列接続された半導体パワートランジスタダイ200に対して共通のゲート制御信号320cを実現するための構造を実装している。回路300cは、3つの並列接続された半導体パワートランジスタダイ200を模式的に示したものである。本発明の別の実施形態300dには、パッケージ相互接続構造と、複数の並列接続された半導体パワートランジスタダイのそれぞれと電気的に直列接続された抵抗要素310eが含まれる。本発明が有利であるのは、このように並列接続された半導体パワートランジスタダイ200のゲート制御信号終端間の共振によって生じるゲート制御信号320c上のリップル電圧を、半導体パワートランジスタダイ200にそれぞれ直列に接続された抵抗素子310eにより減衰することができる点である。
【0019】
図4は、本発明のある実施形態による例示的なハーフブリッジ半導体パワートランジスタパッケージの内部構造の断面を概略的に示している。半導体パワートランジスタダイ400aの第1の例は、ハイサイドパワースイッチ110を実装している。半導体パワートランジスタダイ400bの第2の例は、ローサイドパワースイッチ130を実装している。パッケージ10は第1基板41を備え、第1基板41には、例示的な外側銅クラッド層415aと、例示的な内側銅クラッド層415c、415d、415eが設けられ、これらの外側および内側クラッド層は、基板コア材料415bによって電気的に隔離されている。さらに、パッケージ10は第2基板44を備え、第2基板44には、例示的な外側銅クラッド層445aと、例示的な内側銅クラッド層445c、445d、445e、445fが設けられ、これらの外側および内側クラッド層は、基板コア材料445bによって電気的に隔離されている。ある例示的な実施形態では、このような第1および第2基板41、44は、ダイレクトボンド銅(DBC)基板、活性金属ブレイズ(AMB)基板、または直接めっき銅(DPC)基板とすることができる。
【0020】
第2の例のローサイドパワートランジスタダイ400bの正の電源端子パッド210は、第1基板41のクラッド層415cに対して、ボンディング層450bを介して電気的かつ熱的に直接接合され、このようなクラッド層415cは、中間点端子160への電気的な接続を形成する。ローサイドパワートランジスタダイ400bの負の電源端子パッド220は、垂直スペーサ425bおよびボンディング層430b、420bを介してクラッド層445cに電気的および熱的に接合され、このようなクラッド層445cは、負の電圧外部端子170への電気的な接続を形成する。
【0021】
ハイサイドパワートランジスタダイ400aの正の電源端子パッド210は、第2基板のクラッド層445dに対して、ボンディング層450aを介して電気的かつ熱的に接合され、このようなクラッド層445dは、正電圧外部端子150への電気的な接続を形成する。ハイサイドパワートランジスタダイ400aの負の電源端子パッド220は、クラッド層415cに対して、垂直スペーサ425aおよびボンディング層430a、420aを介して電気的かつ熱的に接合され、このようなクラッド層415cは、中間点端子160への電気的な接続を形成する。
【0022】
ある実施形態では、ボンディング層420a、430a、450a、420b、430b、450bは焼結接合により実現される。焼結接合は、銀、銅、白金、パラジウム、または金の粒子、微粒子、またはナノ粒子を含むペーストまたはフィルムを使用して形成することができる。はんだ付け接合と比較して本開示の焼結接合が有利であるのでは、熱サイクル疲労が実質的に低減してボンディング層の耐久性が向上すると共に、熱抵抗が低減して冷却性能が向上する点にある。
【0023】
ある実施形態において、スペーサ425a、425bは、銅合金、Si充填AlMg合金、または所要の熱伝導性を有するその他の合金を含む電気的および熱伝導性のある金属合金から形成することができる。
【0024】
ある例示的な実施形態では、ワイヤボンディング構造により、トランジスタダイ400bのゲート端子パッド230とゲート制御信号320bの相互接続構造を構成するクラッド層415eとの間、および、トランジスタダイ400bの負の電源端子パッド220とケルビンゲートリターン信号の相互接続構造を構成する銅クラッド層415dとの間の電気的な接続が構成される。また、例示したワイヤボンディング構造により、ゲート端子パッド230およびトランジスタ400aの負の電源端子220と、ゲート制御320bおよびケルビンリターン信号の相互接続構造を形成する第2基板上のそれぞれの銅クラッド層445fおよび445eとが対応的に電気的に接続される。他の実施形態では、トランジスタ400a、400bの電源端子パッド220およびゲート端子パッド230は、リードフレームピンにワイヤ接合されてもよく、または、リードフレームピンは、ボンドワイヤなしでゲート230および電源端子パッド220に直接接合されてもよい。
【0025】
トランジスタ400aによって発生した熱は、ボンディング層450a、内側銅クラッド層445e、基板コア445b、外側銅クラッド層445a、ヒートシンクボンディング層410を通って部分的に伝播し、外側ヒートシンク405bを介して放出される。トランジスタ400aによって発生した熱は、さらに、ボンディング層430a、スペーサ425a、ボンディング層420a、内側銅クラッド層415c、基板コア415b、外側銅クラッド層415a、ヒートシンクボンディング層410aを通って部分的に伝播し、例示的な外側ヒートシンク405aを介して放出される。トランジスタダイ400aからヒートシンク405bまでの熱抵抗は、ダイ400aからヒートシンク405aまでの熱抵抗に比べて比例的に小さい。ダイ400aからヒートシンク405aまでの熱抵抗が比例的に高いのは、スペーサ425aおよびボンディング層420aによって熱抵抗が追加的に導入されているため、および、スペーサ425aの断面積がダイ400aの総面積よりも小さいためである。本発明の反転相補構造の結果として、ダイ400bでは、ダイ400bからヒートシンク405bへの熱抵抗よりも、ヒートシンク405aに対する熱抵抗が比例的に低い。この補完的な熱抵抗の関係により、熱流の集中が低くなり、両ヒートシンクの冷却性能が均一になるため、ダイ400a、400bの水平方向の間隔を近づけることができ、同じ熱性能で小型且つ低コストの両面冷却パッケージを実現することが可能となる。本発明が有利であるのは、トランジスタ400a、400bから外側ヒートシンク405a、405bの間の材料積層および材料ボンディング層の数を減らすことができる点にある。
【0026】
ある実施形態では、ヒートシンク405a、405bは空冷式とすることができる。他の実施形態では、ヒートシンク405a、405bは液体により冷却されてもよい。一部の実施形態では、ヒートシンク405a、405bは、平板、フィン付き板、マイクロチャネルを有する板、または他のマイクロ構造を有するものであってよい。他の実施形態では、ヒートシンク405a、405bは、銅合金、アルミ合金、またはその他の金属合金から構成されてもよい。
【0027】
ヒートシンクボンディング層410a、410bは、一部の実施形態においては、はんだ付けにより形成されてもよい。ある実施形態では、ボンディング層410a、410bは、銀、銅、プラチナ、パラジウム、または金粒子、微粒子または焼結形成されてもよい。他の実施形態では、ボンディング層410a、410bは、熱伝導性接着剤によって形成されてもよい。さらに他の実施形態では、ボンディング層410a、410bは、サーマルペーストおよびサーマルパッドを含む熱界面材料によって形成されてもよい。
【0028】
封止材460は、少なくとも、第1基板と第2基板との間に形成された空洞を封止している。本発明は、封止材460によって、機械的構造が支持され、水分および汚染物質の侵入から保護され、また半導体パワートランジスタおよびパッケージ内の相互接続構造の電気的絶縁性が得られる点で有利である。例示的な実施形態では、封止材460は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、または他のプラスチックなどのポリマーから構成することができる。
【0029】
図5は、例示的な第1基板サブアセンブリを備えた実施形態の上面図を示している。この実施形態では、並列接続された4つの半導体パワートランジスタダイ200を備えるローサイドパワースイッチ130が例示されている。
【0030】
例示的なゲート制御信号320cの相互接続構造には、銅クラッド層形状520に接合された銅リードフレームピン505aが設けられ、さらに銅リードフレームピン505aは、半導体パワートランジスタダイ200ごとに、ワイヤ560b、570b、580b、590bを介して、ゲート端子パッド230にそれぞれ別々に接合される。
【0031】
リターン信号360のための例示的なケルビンゲート相互接続構造には、銅クラッド層形状510に接合された銅リードフレームピン505bが設けられ、さらに銅リードフレームピン505bは、例示的な半導体パワートランジスタダイごとに、ワイヤ560a、570a、580a、590aを介して、負の電源端子パッド220nにそれぞれ別々に接合される。
【0032】
半導体パワートランジスタダイの負の電源端子220は、560c、570c、580c、590cとして概略的に示されている。
【0033】
例示的な半導体パワートランジスタダイの負の電源端子パッドに接合されたスペーサ425bの上面は、参照符号560d、570d、580d、590dによって示されている。
【0034】
中間点端子160の例示的な相互接続構造には、銅クラッド層形状530に接合されたパワーリードフレームピン505dが設けられ、さらにパワーリードフレームピン505dは、例示的な半導体パワートランジスタダイの正の電源端子パッドに接合されている。本発明の利点は、銅クラッド層530の連続した表面積が大きく、これによりインピーダンスが最小化されるため熱伝導損失が低減し、結果として、ハイサイドおよびローサイドパワースイッチ110、130のトランジスタダイ間の浮遊インダクタンスが最小化されてスイッチング性能が向上し、さらに、パッケージの構造剛性が向上する点にある。
【0035】
本開示の別の実施形態では、銅クラッディング層530に接合された銅リードフレームピン505cを設けることにより、外部の過電流検出回路を実装するための、中点端子160への外部電気検出接続が提供される。
【0036】
図6は、例示的な第2基板サブアセンブリを備えた実施形態の上面図を示している。この実施形態では、並列接続された4つのパワー半導体トランジスタダイ200を備えるハイサイドパワースイッチ110が例示されている。
【0037】
ゲート制御シグナル320cの例示的な相互接続構造には、銅クラッド層形状620に接合された銅リードフレームピン605aが設けられ、さらに銅リードフレームピン605aは、半導体パワートランジスタダイ200ごとに、ワイヤ660b、670b、680b、690bを介して、ゲート端子パッド230にそれぞれ別々に接合される。
【0038】
ケルビンゲートリターン信号360の例示的な相互接続構造には、銅クラッド層形状610に接合された銅リードフレームピン605bが設けられ、さらに銅リードフレームピン605bは、例示的な半導体パワートランジスタダイごとに、ワイヤ660a、670a、680a、690aを介して、負の電源端子パッド220にそれぞれ別々に接合される。
【0039】
半導体パワートランジスタの負電源端子は、660c、670c、680c、690cとして概略的に示されている。
【0040】
例示的な半導体パワートランジスタダイの負の電源端子パッドに接合されたスペーサ425aの上面は、参照符号660d、670d、680d、690dによって示されている。
【0041】
正電圧外部端子150の例示的な相互接続構造には、銅クラッド層形状630に接合されたパワーリードフレームピン605dが設けられる。負電圧外部端子170の例示的な相互接続構造には、銅クラッド層形状640に接合するパワーリードフレームピン605eが設けられ、さらにパワーリードフレームピン605eは、例示的な半導体パワートランジスタダイの正の電源端子に接合される。本発明による構造は、ハーフブリッジ電気回路構成100の正電圧外部端子150および負電圧外部端子170に対応する銅クラッド層630、640が平行に近接している点で有利である。このように並列に近接していることで、正電圧外部端子150および負電圧外部端子170にわたる寄生ループインダクタンスが抑制され、スイッチング過渡電圧のオーバーシュート振幅を低減することができる。
【0042】
例示的な実施形態において、銅クラッド層630に接合されたの銅リードフレームピン605cを設けることにより、外部の過電流検出回路を実装するための、正電圧外部端子への外部電気検出接続が提供される。
【0043】
本発明の効果は、パワーリードフレームピン505dを第1基板に接合し、他の2つのパワーリードフレームピン605d、605eを第2基板に接合することによって実現される。パワーリードフレームピンの幅および同じ平面内のパワーリードフレームピンの数が、パッケージの全体の幅を左右する。3つのパワーリードフレームを2つの平行な平面、すなわち基板当たり1つの平面に分離することによって、パッケージ全体の幅を縮小することができる。リードフレーム2つ分のコストは、銅リードフレームの材料コストの2倍であるのに対し、各基板の材料コストは、単位面積当たり、各銅製リードフレームの材料コストの30倍以上である。本発明のようにパッケージ幅を縮小することで、全体の電力密度が向上し、全体の材料コストが削減される。
【0044】
図7は、ハイサイドパワースイッチ110およびローサイドパワースイッチ130について、並列接続された4つのパワー半導体トランジスタダイを備えるパッケージの例示的な実施形態の2つの側面断面図を示している。
【0045】
ハイサイドパワースイッチ110を構成する半導体パワートランジスタダイ200、および、ローサイドパワースイッチ130を構成する半導体パワートランジスタダイ200の断面がそれぞれ図示されている
【0046】
例示的なパワーリードフレームピン505dは、第1基板上の銅クラッド層形状630に対し、ボンディング層712で接合される。例示的なパワーリードフレームピン605d、605eは、第2基板の銅クラッド層630、640にそれぞれボンディング層714、724で接合される。例示的な信号リードフレームピン505cは、ボンディング層715を介して、第2基板上で銅クラッド層形状530に接合される。信号リードフレームピン605cは、ボンディング層725を介して、第2基板上で銅クラッド層形状630に接合される。本発明のある例示的な実施形態では、リードフレームピンボンディング層712、714、715、724、725は、はんだ付けや超音波溶接によって形成することができる。また、他の実施形態では、銀、銅、白金、パラジウムや、金の粒子、微粒子、またはナノ粒子を含むペーストまたはフィルムを使用して焼結接合を形成してもよい。
【0047】
本発明のある実施形態では、パッケージおよびリードフレームピンは、封止材を超えて押出されたリードフレームピン505c、605c、露出するパワーリードフレームピンの平面711、713、723、および外側の銅クラッド層415a、445aを除き、封止材360によって封止されている。パワーリードフレームピンの表面711、713、723において露出する表面積が大きいため、外側バスバーへの低インピーダンス接続の形成が可能である点で有利である。例えば、パワーリードフレームピンの表面711、713、723へのバスバーの低インピーダンス接合は溶接接合である。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、そのような溶接接合は、超音波溶接、レーザ溶接、または電子ビーム溶接を使用して形成することができる。
【0048】
スペーサ425a、425bの高さは、i)第1基板41の内側銅クラッド層(415c、415d、415e)と第2基板42の内側銅クラッド層(445c、445d、445e、445f)との間、および、ii)第1基板505dのパワーリードフレームピンと第2基板605d、605eのパワーリードフレームピンとの間の、必要最小限の電気的クリアランスによって決定される。最小の電気的クリアランスは、特定の用途のための最大動作電圧と、封止材460の材料の耐電圧特性によって決まる。例えば、スペーサ425a、524bの高さは2.4mmであり、一般に、スペーサ425a、425bの高さは1.5mmから5.0mmの間である。
【0049】
図8は、例示的な第2の基板サブアセンブリを備える本発明の実施形態の上面を示している。この実施形態では、ハイサイドパワースイッチ110を構成する並列接続された4つのパワー半導体トランジスタダイ200が例示され、例示的な抵抗素子810a、810b、810c、810dは、半導体パワートランジスタダイ200について、それぞれ、ゲート制御信号320cの相互接続構造とゲート端子パッド230との間に直列に電気的に接続される。例えば、そのような抵抗要素は、銅クラッド層にはんだ接合された表面実装金属フィルム抵抗体からなる。
【0050】
本発明の別の例示的な実施形態には、温度感知装置850が設けられる。温度感知装置850の第1端子は、リードフレームピン830aに接合された銅クラッド層形状840aに接合され、温度感知装置850の第2端子は、リードフレームピン830bに接合された銅クラッド層形状840bに接合される。他の実施形態では、第1端子は、銅クラッド層形状840aに焼結接合され、第2端子は、銅クラッド層形状840bにワイヤ接合してもよい。ある例示的な実施形態では、温度感知装置850は、サーミスタ、熱電対、または抵抗温度検出器(RTD)とすることができる。温度感知装置850は、診断や熱出力抑制制御、または熱遮断制御を目的として、外部回路によってパッケージ内部温度を監視するために使用される。
【0051】
本発明のある例示的な実施形態には、さらに、半導体パワートランジスタ200のスイッチングによって誘起される過渡電圧振動を抑制するために使用される、例示的なエネルギー吸収スナバデバイス800を設けてもよい。エネルギー吸収スナバデバイスは、正電圧外部端子150と負電圧外部端子170との間に電気的に接続される。スナバデバイスは、例えば、その底面が外部コンデンサ端子800bに対応し、その上面がその外部抵抗端子800dに対応する半導体ダイとして実装された直列接続されたコンデンサ800aおよび抵抗800cからなる抵抗容量型(RC)スナバデバイス800であってもよい。本発明のある実施形態では、複数のスナバダイ820a、820bにおいて、そのそれぞれの端子800bが銅クラッド層形状630にはんだまたは焼結接合され、端子800dが複数のボンドワイヤ825を用いて銅クラッド層形状640に接合される。本発明では、エネルギー吸収スナバデバイス800を設けることにより、半導体パワートランジスタに対する電圧応力を低減すると共に、高周波電圧振動を低減することが可能になる。
【0052】
本明細書では、本開示は特定の実施形態を参照して説明されている。しかしながら、当業者であれば理解するように、本明細書に開示される様々な実施形態は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な方法で変形したり実施したりすることができる。したがって、この説明は例示的であると見なされるべきであり、開示された発明の様々な実施形態を作製および使用する方法を当業者に教示する目的で提示されている。本明細書に示され、説明される開示の形態は、代表的な実施形態である。同等の要素、材料、プロセス、またはステップは、本明細書に代表的に図示され、説明されるものと置換されてもよい。さらに、本開示の特定の特徴は、他の特徴の使用と独立して利用されてもよい。
【0053】
本明細書で使用する「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」といった語、またはそれらの任意の文脈上の変形は、非排他的な包含を意図している。例えば、要素のリストから構成されるプロセス、製品、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的にリストされていない他の要素またはそのようなプロセス、製品、物品、または装置に固有の要素を含んでもよい。また、「または」という表現は、特に断りのない限り、包括的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味するものではない。例えば、「AまたはB」という条件は、例えば、Aは真(または存在する)でBは偽(または存在しない)、Aは偽(または存在しない)でBは真(または存在する)、および、AおよびBの両方が真(または存在する)のうち、いずれかを満たす。
【0054】
また、図面に示される要素のうちの1つまたは複数は、特定の用途に従って有用となるように、分離または統合して実装することもできる。さらに、これらの要素は、除去または動作不能にしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8