(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01R 33/07 20060101AFI20240614BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20240614BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20240614BHJP
G01R 33/10 20060101ALI20240614BHJP
H10N 52/00 20230101ALI20240614BHJP
H10N 52/80 20230101ALI20240614BHJP
H10N 59/00 20230101ALI20240614BHJP
【FI】
G01R33/07
G01R15/20 A
G01R31/396
G01R33/10
H10N52/00 Z
H10N52/80 Z
H10N59/00
(21)【出願番号】P 2022564021
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 GB2021050946
(87)【国際公開番号】W WO2021214449
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-12-13
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520258057
【氏名又は名称】パラグラフ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PARAGRAF LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラス,ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ,アンドリュー
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-089819(JP,A)
【文献】特開2017-125714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0293834(US,A1)
【文献】特表2018-536143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00-33/26
G01R 15/20
G01R 31/396
H10N 52/00
H10N 52/80
H10N 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルを提供するステップと、
磁場を測定するためのグラフェン導体を備えるホール効果センサを提供するステップと、
前記ホール効果センサを前記セルの面に隣接する第1の位置に配置するステップと、
前記セルに負荷を加えるステップと、
前記第1の位置と整列した前記セルの一部にある前記セルによって生成された磁場を検出するために、前記ホール効果センサの出力を測定するステップと
を含
み、
前記ホール効果センサは、
上に層構造を有する基板であって、前記層構造が、
前記基板の第1の領域上の下層であって、前記下層が前記下層を横切って延びる1つまたは複数のグラフェン層を備える、下層と、
前記下層上にあり、誘電体材料から形成される上層とを備え、
前記グラフェン層および前記上層が、連続した外縁面を共有し、
前記基板のさらなる領域上に設けられ、前記連続した外縁面を介して前記1つまたは複数のグラフェン層と直接接触するオーミックコンタクトを備える、基板と、
前記層構造を囲むか、または前記基板、前記層構造、および前記オーミックコンタクトを横切る、連続した耐空気性コーティング層と
を備える、負荷下のセルをフィールドマッピングする方法。
【請求項2】
前記ホール効果センサを前記第1の位置から前記セルの前記面に隣接する第2の位置に移動させるステップと、
前記第2の位置と整列した前記セルの一部にある前記セルによって生成された磁場を検出するために、前記第2の位置で前記ホール効果センサの前記出力を測定するステップと をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホール効果センサを前記第2の位置から前記セルの前記面に隣接する一連のN個の後続位置に移動させるステップと、
前記後続位置と整列した前記セルの部分にある前記セルによって生成された磁場を検出するために、前記後続位置の各々において前記ホール効果センサの前記出力を測定するステップと
をさらに含み、
前記N個の後続位置が、前記セルの前記面にわたって分布する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記N個の後続位置が、前記セルの前記面を横切るアレイを形成する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ホール効果センサが、ホール効果センサのアレイの一部であり、その各々が、前記ホール効果センサと整列した前記セルの対応する部分にある前記セルによって生成される磁場を検出するために前記セルに隣接して配置される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ホール効果センサの前記測定出力を監視するステップと、
セル故障を示す前記磁場の変化を特定するステップと、
前記セル故障の前記セル内の位置を決定するステップと
をさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ホール効果センサ
が、
4つのオーミックコンタクトであって、各コンタクトが、前記基板のさらなる領域上に設けられ、前記
連続した外縁
面と直接接触する、4つのオーミックコンタク
ト
を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記磁場を局所電流密度に変換するステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ホール効果センサのアレイを備える負荷下のセルをフィールドマッピングするための装置であって、各ホール効果センサが、前記ホール効果センサと使用時に整列した前記セルの対応する部分にある磁場を測定するためのグラフェン導体
と、
上に層構造を有する基板であって、前記層構造が、
前記基板の第1の領域上の下層であって、前記下層が前記ホール効果センサと使用時に整列した前記セルの対応する部分にある磁場を測定するための前記下層を横切って延びる1つまたは複数のグラフェン層を備える、下層と、
前記下層上にあり、誘電体材料から形成される上層とを備え、
前記グラフェン層および前記上層が、連続した外縁面を共有し、
前記基板のさらなる領域上に設けられ、前記連続した外縁面を介して前記1つまたは複数のグラフェン層と直接接触するオーミックコンタクトを備える、基板と、
前記層構造を囲むか、または前記基板、前記層構造、および前記オーミックコンタクトを横切る、連続した耐空気性コーティング層とを備える、装置。
【請求項10】
作動システムに取り付けられたホール効果センサを備える、負荷下でセルをフィールドマッピングするための装置であって、前記作動システムが、前記セル上の場所に対応する複数の位置の間で前記ホール効果センサを移動させるように構成され、各ホール効果センサが、前記ホール効果センサと使用時に整列した前記セルの対応する部分にある磁場を測定するためのグラフェン導体
と、
上に層構造を有する基板であって、前記層構造が、
前記基板の第1の領域上の下層であって、前記下層が前記ホール効果センサと使用時に整列した前記セルの対応する部分にある磁場を測定するための前記下層を横切って延びる1つまたは複数のグラフェン層を備える、下層と、
前記下層上にあり、誘電体材料から形成される上層とを備え、
前記グラフェン層および前記上層が、連続した外縁面を共有し、
前記基板のさらなる領域上に設けられ、前記連続した外縁面を介して前記1つまたは複数のグラフェン層と直接接触するオーミックコンタクトを備える、基板と、
前記層構造を囲むか、または前記基板、前記層構造、および前記オーミックコンタクトを横切る、連続した耐空気性コーティング層とを備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本開示は、セルを監視するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充電式バッテリ(個々のセル、バッテリ、またはバッテリパックであるかどうかにかかわらず)には、通常、バッテリ管理システム(BMS)が設けられる。バッテリ管理システムは、特にその安全性および効率を維持するためにバッテリを管理する電子システムである。例えば、バッテリ管理システムは、バッテリがその安全な動作領域外で動作することを禁止することができ、その状態を監視し、2次データを計算し、そのデータを報告し、バッテリ環境を制御し、バッテリを認証し、および/またはバッテリのバランスをとる。
【0003】
典型的には、バッテリの安全性および効率は、全体のパックレベルにおける(すなわち、個々のセルではなくバッテリ全体にわたる)温度データに基づいて監視される。このデータは限られており、細分化されていないため、バッテリ内の局所的な問題が検出されない可能性があるため、バッテリの安全基準は過度に慎重なレベルに設定する必要がある。データは、セルの特定の故障モードに関連することが困難である可能性があり、特に、データは、バッテリの常温変動によってマスクされるか不明瞭になる可能性がある。
【0004】
その結果、バッテリが必要以上に早く使用停止される。これにより、バッテリによって給電されるデバイスの所有者のコストが増加し、効率の改善が最小限に抑えられる。これはまた、古いバッテリを環境に優しい方法で処分することが困難であり得るために環境にも有害である。
【0005】
したがって、より正確な安全限界が設定され得るように故障モードを特徴付けるために、バッテリをより良好に監視するための装置およびこの装置を使用する方法が必要とされている。
【0006】
ホール効果センサ(ホールセンサとしても知られる)は、当技術分野において既知の部品である。それは、磁場に応答してその出力電圧を変化させる変換器である。ホールセンサでは、それに沿って導体に電流が印加され、磁場の存在下で電子が偏向されて駆動電流に垂直な電圧を生成する。特定のホールセンサでは、導体の薄いストリップは、それに沿って印加される電流を有し、磁場の存在下で、電子は導体ストリップの一方の縁部に向かって偏向され、ストリップの短辺を横切る(供給電流に垂直な)電圧勾配を生成する。導体は、典型的には、基板層上に設けられる。誘導センサとは対照的に、ホールセンサは、静的(変化しない)磁場を検出することができるという利点を有する。
【0007】
バッテリ内のセルの電流密度は、セルの健全性を判定するために監視することができるパラメータである。電流密度は、1平方メートル当たりのアンペアで測定される、選択された断面の単位面積を通って流れる単位時間当たりの電荷量である。この電流密度は、セルによって生成された磁場に基づいて測定することができる。
【0008】
可能な技術の概説は、Harrisonらの「Magnetic tomography for lead acid batteries」に記載されており、これは電流分布を決定するための磁場の測定を検討している。これは、高レベルの技術的検討を表すが、商業規模で実行可能な解決策を提供しない。ホール効果センサの使用は、「外部磁場を読み取るのに十分な感度がない」ために推奨されていない。
【0009】
米国特許出願公開第2015/0061602号明細書は、磁気センサを有する電気化学セルを対象としている。磁気センサは、各々が有機p-n接合を有する磁場センサのアレイを備える。ここでも、ホール効果センサの使用は、「そのような既知のセンサは、典型的には、脆弱な材料...からなるか、または電極スタックに統合することができない規定された幾何学的形状を必要とするために柔軟性がない」ため、「セル内の小さな局所電流を高分解能で確実に検出するためには、バッテリケースへのセンサの取り付けが遠すぎる」ために推奨されていない。
【0010】
Xuらの「Batch-fabricated high-performance graphene Hall elements」は、ホール素子にグラフェンを使用することを開示している。
【0011】
国際公開第2020/010624号パンフレットは、バッテリ試験方法およびシステム、ならびにバッテリ分析装置を開示している。
【0012】
中国特許出願公開第106750469号明細書は、グラフェン薄膜コイル状材料の製造装置および製造プロセスを開示している。
【0013】
米国特許出願公開第2017/067970号明細書は、グラフェンホールセンサを開示している。
【0014】
米国特許出願公開第2014/346579号明細書は、磁場センサデバイスを開示している。
【0015】
米国特許出願公開第2018/231620号明細書は、電荷担体ホール効果センサを開示している。
【0016】
Haakeらの「A New Type of Robot System for High-Resolution Field Mapping」は、ギガヘルツ横電磁セル内の磁場分布の測定を達成する磁場スキャナを扱っている。
【0017】
したがって、セルの電流密度を監視するための安価な装置および方法が必要とされている。
【0018】
バッテリ管理システムはまた、バッテリの健全性を監視するためにセルの電流の入力および/または出力を監視することができる。これは、抵抗がどのように変化しているかの指標を提供するが、バッテリ自体の健全性の直接的な測定ではない。通常、この測定はシャント抵抗を介して行われる。シャント抵抗を回路の負荷と直列に配置し、シャント抵抗の両端の電圧降下を測定する。次に、オームの法則に従って電流を計算することができる。典型的には、シャント抵抗は、約1ミリオームなどの低抵抗を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
このようなシャント抵抗の測定は、典型的には分解能が低い。さらに、シャント抵抗が故障すると、回路全体(セルまたはバッテリパック全体であり得る)も故障する。
【0020】
したがって、セルの入力または出力電流を測定する改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
概要
本発明は、セルを提供するステップと、磁場を測定するためのグラフェン導体を備えるホール効果センサを提供するステップと、ホール効果センサをセルの面に隣接する第1の位置に配置するステップと、セルに負荷を加えるステップと、ホール効果センサの出力を測定するステップとを含む、負荷下のセルをフィールドマッピングする方法を提供する。このようなホール効果センサは、セル内の電流密度を高感度かつ広範囲に検出することができる。したがって、単一のホール効果センサは、様々な電力レベルの負荷に対してセルを適切にマッピングすることができる。
【0022】
本方法は、ホール効果センサを第1の位置からセルの面に隣接する第2の位置に移動させるステップと、第2の位置でホール効果センサの出力を測定するステップとをさらに含むことができる。これにより、セルにわたる局所的な電流密度に基づいて、セルのマップを形成することが可能になる。
【0023】
本方法は、ホール効果センサを第2の位置からセルの面に隣接する一連のN個の後続位置に移動させるステップと、後続場所の各々においてホール効果センサの出力を測定するステップとをさらに含むことができ、N個の後続位置は、セルの表面にわたって分布する。これにより、セルのマップを均一に分布させて、セル全体の全体的な健全性を示すことができる。
【0024】
N個の後続位置は、セルの面を横切ってアレイを形成することができる。アレイは、セル全体を適切にマッピングすることを可能にする。
【0025】
ホール効果センサは、ホール効果センサのアレイの一部であってもよく、その各々は、セル内の磁場を検出するためにセルに隣接して配置される。アレイは、セル全体を適切にマッピングすることを可能にする。
【0026】
アレイは、セルの面にわたって均等に分布してもよい。セルの面上の均一な分布は、セル内の局所的な欠陥が見逃されるリスクを低減する。
【0027】
本方法は、ホール効果センサの測定出力を監視するステップと、セル故障を示す磁場の変化を特定するステップと、セル故障のセル内の位置を決定するステップとをさらに含むことができる。
【0028】
本発明はまた、セルの磁場を測定するためのグラフェン導体を備えるホール効果センサの使用を提供する。以上のように、このようなホール効果センサは、セル内の磁界を高感度かつ広範囲に検出することができる。したがって、単一のホール効果センサは、様々な電力レベルの負荷に対してセルを適切にマッピングすることができる。
【0029】
磁場を局所電流密度に変換することができる。局所電流密度は、セルの健全性に関する情報を提供する。
【0030】
本発明はまた、セルの入力電流または出力電流を測定するためのグラフェン導体を備えるホール効果センサの使用を提供する。このホール効果センサは、シャント抵抗を必要とせずにセルの入力または出力電流を決定することができる。したがって、センサが故障しても、回路自体は危険にさらされない。これは、シャント抵抗の故障が回路全体の故障にもつながるシャント抵抗とは対照的である。
【0031】
本発明はまた、ホール効果センサのアレイを備える負荷下のセルをフィールドマッピングするための装置を提供し、各ホール効果センサは、磁場を測定するためのグラフェン導体を備える。ホール効果センサのアレイは、いくつかの点におけるセルの健全性を監視することを可能にする。
【0032】
本発明はまた、作動システムに取り付けられたホール効果センサを備える負荷下でセルをフィールドマッピングするための装置を提供し、作動システムは、セル上の場所に対応する複数の位置の間でホール効果センサを移動させるように構成される。ホール効果センサを移動させることにより、いくつかの点におけるセルの健全性を監視することを可能にする。
【0033】
複数の位置は、アレイを形成してもよい。そのような規則的に配置された構造は、セルの全体的なマッピングを改善することができる。
【0034】
本発明はまた、セルの磁場に応答してピックアップコイルに電流が生成されるようにセルに隣接して配置するためのピックアップコイルと、ピックアップコイル内の電流が伝達されて測定コイル内に電流を発生させるように、ピックアップコイルと電気的に連通している測定コイルと、測定コイル内の電流によって生成された磁場を検出するように構成された磁場センサとを備える、負荷下のセルをフィールドマッピングするための装置を提供する。これは、容易に製造することができる技術を使用して、セルの電流密度を測定する簡単な方法を提供する。さらに、セルからの接続の数を減らすことができ、酸素および水の侵入に対するセルの封止を改善する。
【0035】
ピックアップコイルは、セルの磁場に応答して各ピックアップコイルに電流が生成されるようにセルに隣接して各々配置される複数のピックアップコイルのうちの1つであってもよい。複数のピックアップコイルは、複数の位置で測定することによってセル上の健全性プロファイルを決定することを可能にする。
【0036】
複数のピックアップコイルは、アレイ状に配置された複数のアレイコイルを含むことができる。アレイコイルは、典型的には、セルのプロファイルを確立することを可能にする規則的に繰り返されるパターンである。
【0037】
複数のピックアップコイルは、各々が複数のピックアップコイルのうちの少なくとも1つの他のピックアップコイルと重なるように配置された複数の入れ子状コイルを備えることができる。このような入れ子状コイルを使用して、1つのコイルを使用して広い領域にわたって統合された磁場を測定することができ、内部に入れ子になったコイルを使用して局所的な磁場を決定することができる。このようにして、相対的な空間変動を測定することができ、地球の磁場を含む外部ソースによって生成された共通モード磁場を排除するのに役立つ。
【0038】
複数のピックアップコイルのうちの少なくとも1つのピックアップコイルは、アレイコイルおよび入れ子状コイルの両方であってもよい。これにより、空間的変動を除去しながら、セルのプロファイルを形成することができる。特に、アレイ全体は、マスターコイルなどの外側入れ子状コイル内に設けられてもよい。
【0039】
複数のピックアップコイルは、複数のピックアップコイルの各々を取り囲むマスターコイルを備えることができる。このマスターコイルは、それが囲むピックアップコイルの空間的変動を効果的に除去することができる。
【0040】
複数のピックアップコイルの各ピックアップコイルは、ピックアップコイル内の電流が伝達されて、それぞれの測定コイル内に電流が発生するように、対応する測定コイルと電気的に連通していてもよく、各測定コイルは、それぞれの測定コイル内の電流によって発生した磁場を検出するように構成された対応する磁場センサを有する。
【0041】
複数のピックアップコイルの各々は、マルチプレクサと電気的に連通していてもよく、測定コイルは、マルチプレクサと電気的に連通しており、マルチプレクサは、ピックアップコイルのうちの1つの電流を測定コイルに選択的に伝達するように構成される。これにより、セルを出る接続の数がさらに減少する。
【0042】
マルチプレクサは、ピックアップコイルの各々の電流を測定コイルに順次伝達するために、ピックアップコイルの各々を順に巡回するように構成することができる。このようにして、各ピックアップコイルを順次サンプリングして、セル全体をマッピングすることができる。
【0043】
各磁場センサは、ホール効果センサ、好ましくは、磁場を測定するためのグラフェン導体を備えるホール効果センサであり得る。そのようなセンサは、その分解能および感度のためにこの用途に特に有効である。
【0044】
アレイは、セルの面にわたって均等に分布してもよい。この均等な分布は、セル内の異常が見逃される可能性を低減する。
【0045】
本発明はまた、装置とセルとを備えるアセンブリを提供する。このアセンブリは、上述したホール効果センサの利点を実現することを可能にする。
【0046】
アセンブリは、各ホール効果センサの出力を入力として受信するように構成されたバッテリ管理システムをさらに備えることができる。バッテリ管理システムは、セルをプロアクティブに管理するためのより大きな管理システムの一部としてこれらの出力を取得することができる。
【0047】
バッテリ管理システムは、各ホール効果センサの出力に基づいてセルの局所電流密度のマップを生成するように構成されてもよい。このマップは、セル内の偏差の領域を示すことができ、したがって、故障率および/または故障モードを予測するために使用することができる。
【0048】
前述のすべてにおいて、ホール効果センサは、上に層構造を有する基板であって、層構造が、基板の第1の領域上の下層であって、下層が下層を横切って延びる1つまたは複数のグラフェン層を備える、下層と、下層上にあり、誘電体材料から形成される上層とを備え、グラフェンおよび上層が、4つのアームを有する十字形であり、連続した外縁面を共有する、基板と、基板のさらなる領域上に設けられ、連続した外縁面を介して1つまたは複数のグラフェン層と直接接触するオーミックコンタクトと、4つのオーミックコンタクトであって、各コンタクトが、基板のさらなる領域上に設けられ、十字形の4つのアームの各々の縁面の遠位部分と直接接触する、4つのオーミックコンタクトと、層構造を囲むか、または基板、層構造、および少なくとも1つのオーミックコンタクトを横切る、連続した耐空気性コーティング層とを備え得る。そのようなホール効果センサは、改善された感度を提供し、したがって上述の方法、使用、および装置に特に有用である。
【0049】
基板は、サファイア、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、またはIII-V族半導体、好ましくはサファイアまたはシリコンであり得る。
【0050】
ホール効果センサは、その上に層構造を有するサファイア基板であって、層構造が、サファイア基板の第1の領域上のグラフェンの単層と、グラフェン単層上のアルミナ層とを備え、グラフェンおよびアルミナが4つのアームを有する十字形であり、連続した外縁面を共有する、サファイア基板と、4つの金オーミックコンタクトであって、各コンタクトが、サファイア基板のさらなる領域上に設けられ、十字形の4つのアームの各々の縁面の遠位部分と直接接触する、4つの金オーミックコンタクトと、層構造を取り囲む連続したアルミナコーティング層とを備えることができる。そのようなホール効果センサは、改善された感度を提供し、したがって上述の方法、使用、および装置に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1A】セルを監視するためのさらなる装置の概略図である。
【
図2】セルを監視するための代替装置の概略図である。
【
図3】セルを監視するためのさらなる代替装置の概略図である。
【
図5】
図3の装置のさらなる代替構成の概略図である。
【
図6】
図3の装置のさらなる代替構成の概略図である。
【
図7】セルの入力および/または出力電流を監視するための装置の概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
詳細な説明
本出願での使用に適したホール効果センサは、例えば、国際公開第2019/138232号パンフレットに開示されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、国際公開第2019/138232号パンフレットには、センサの導体がグラフェンで形成されたホール効果センサを構築できることが開示されている。背景技術で説明したように、ホール効果センサは、それに沿って印加される電流を有する導体の典型的には薄いストリップを備える。磁場がホール効果センサに印加されると、電流の電子は導電性ストリップの一方の縁部に向かって偏向される。これにより、ストリップを横切って(すなわち、電流の流れを横切る方向または電流の流れに垂直な方向に)電圧勾配が生じる。
【0053】
グラフェンは、材料の理論的な並外れた特性によって推進される多数の提案された用途を有する既知の材料である。そのような特性および用途の良好な例は、A.K.GeimおよびK.S.Novoselevによる「The Rise of Graphene」、Nature Materials、vol.6,March 2007,183-191に詳述されている。
【0054】
グラフェン導体を有するホール効果センサは、高い感度および解像度を示す。これは、グラフェンのシートキャリア濃度が低いためである。シートキャリア濃度が低いほど、ホール効果センサの感度は高くなる。グラフェンの汚染(例えば、銅触媒、ポリマー移動などからの残留物)は、シートキャリア濃度を増加させ、それにより、得られるホール効果センサの感度を低下させる。
【0055】
高い分解能および感度により、ホール効果センサを交換する必要なく、ホール効果センサが広い範囲の値にわたって電流密度を検出することが可能になる。従来のホール効果センサは、通常、比較的狭い範囲のユースケースにのみ適している。したがって、従来のホール効果センサは、特定の使用事例を検知するように選択されなければならない。
【0056】
例えば、電流密度を検出することができる特定の使用事例は、自動車などの乗り物用バッテリである。このバッテリには、低電力部品(カーラジオなど)または高電力部品(カースタータモータなど)を負荷することができ、これらの負荷のそれぞれにわたってバッテリの健全性を試験することが有用である。従来のホール効果センサは、これらの負荷の両方を検出することができない。代わりに、低電力ホール効果センサおよび高電力ホール効果センサが存在する必要がある。グラフェン導体を有するホール効果センサは、低電力負荷および高電力負荷の両方について電流密度を検出することができる。
【0057】
結果として、従来技術のホール効果センサが適していない動作で使用することができる。
【0058】
特定のユースケースでは、
図1および
図2の実施形態に示すように、セルを監視するための装置を提供することができる。
【0059】
図1は、セル10を監視するための装置100を示す。セル10は、電気回路に接続するための複数の電流タブ12を有する。装置100は、複数のホール効果センサ20を備える。ホール効果センサ20は、セル10の面に広がるアレイに配置される。アレイは、セル10の面を横切って一連の測定位置を形成する。セル10はパウチ内に設けられてもよく、ホール効果センサ20はこのパウチの内側または外側に設けられてもよい。特に、アレイは、アレイによって境界付けられた周囲が、測定しているセル10の面の表面積の80%を超える面積を画定するように選択することができる。アレイは、規則的に繰り返すパターンを画定してもよく、または特定のセル10に対して適切に選択された任意の他のパターンを有してもよい。アレイは、セル10の面にわたって均等に分布してもよい。
【0060】
使用時には、電流(または電圧)が各ホール効果センサ20に印加される。次に、負荷がセル10に加えられる。この負荷は、充電負荷または放電負荷であり得る。負荷の結果として、セル10によって磁場が生成される。次に、各ホール効果センサ20は、整列されたセル10の部分の磁場を検出する。この磁場は局所電流密度に比例する。これにより、セル10の電流密度の詳細なマップを形成することができる。次に、この詳細なマップを使用して、セル10を監視し、特定の故障モードを特徴付けることができる。
【0061】
ホール効果センサ20のアレイは、キャリア材料または層上に設けられてもよい。次に、このキャリア材料を、監視されているセル10の面に隣接してまたは接触して配置することができる。あるいは、アレイは、セル10、またはセル10のハウジング/ケーシングと実質的に一体的に形成されてもよい。したがって、アレイは、単一の集積セル10を試験するために使用することができ、またはアレイに近接した複数のセル10を順に試験するために使用することができる。
【0062】
アレイは、セル10にわたる電流密度の変動を測定するように選択されてもよい。例えば、より大きな電流密度が予想される領域には、より多くのアレイ位置が存在し得る。そのような領域は、セル10の電流タブ12の近傍にあってもよい。したがって、アレイは、電流タブの近傍により多くの測定位置を含み得る。
【0063】
図1Aは、これによる例示的なアレイを示す。このアレイでは、セル10は複数の領域、この例では3つに分割される。電流領域10aは、電流タブ12の最も近くに画定される。端部領域10cは、電流タブ12に対してセル10の反対側の端部に画定される。中央領域10bは、電流領域10aと端部領域10cとの間に画定される。領域10a、10b、10cは、セルにわたって等しい分布で画定されてもよい。あるいは、領域10a、10b、10cは、任意の適切な方法で画定されてもよい。
【0064】
電流領域10aは、端部領域10cおよび/または中央領域10bよりも多くのホール効果センサ20をアレイ内に有することができる。
図1Aに示すような特定の実施形態では、電流領域10aおよび中央領域10bは同じ数のホール効果センサ20を有することができ、端部領域はより少ないホール効果センサ20を有することができる。
【0065】
図1Aの配置で実行された実験では、電流密度は電流タブ12の最も近くで最大であり、測定が行われる電流タブ12から離れるほど減少することが示されている。
【0066】
さらなる実施形態では、各電流タブ12に1つまたは複数のホール効果センサ20を配置することができる。これは、本明細書に開示される構成のいずれにおいても使用され得る。セル10の内部抵抗を決定するために、これらのホール効果センサ20の読み取り値間の差を監視することができる。これは、セル10の劣化を判定するために、経時的に変化しているときに監視することができる。
【0067】
いくつかのセル10を互いに接続してバッテリパックを形成することができる。複数のセル10の電流タブ12は、このバッテリパック内のバスバーを介して互いに接続されてもよい。内部を流れる電流を検出するために、これらのバスバー上に1つまたは複数のホール効果センサ20を配置することができる。これは、セル10に過大な電流が供給されることを防止するための安全対策として用いることができる。これはまた、その寿命の間、セルによる電流引き込みの任意の変化を測定するために使用することができる。そのような変化は、セル10の劣化の兆候であり得る。
【0068】
それに加えて、またはその代わりに、バッテリパック内の各セル10の入力部に1つまたは複数のホール効果センサ20を設けることができる。これにより、個々のセル10ごとに電流引き込みの変化を検出することができる。この情報により、効率的な充電および/または放電のために、およびバッテリパックの全容量の使用を可能にするために、バッテリパックへの電流の流れを最適化することができる。個々のセル10がバッテリパック内で故障した場合、これを識別することができ、故障したセル10を分離することができる。したがって、バッテリパックの寿命を延ばすことができる。
【0069】
図2に示すように、装置100の代替実施形態が提供される。この代替実施形態では、軌道システム30に接続された1つまたは複数のホール効果センサ20が設けられている。軌道システム30は、軌道34上に取り付けられた可動アーム32を含む。ホール効果センサ20は、それらがアーム32と共に移動することができ、それによってセル10の面を横切る任意の位置で局所電流密度を測定することができるように軌道に取り付けられる。単純な線形軌道システム30が
図2に示されているが、ホール効果センサ20を複数の位置の間で移動させるのに適したホール効果センサ20用の任意の適切な作動システムも使用できることが予想される。
【0070】
ホール効果センサ20は、セル10の面上の複数の位置に移動することができ、これらの位置の各々で局所電流密度の測定が行われる。例えば、ホール効果センサ20は、セル10の面を横切ってN個の別個の位置に移動することができる。位置は、それらが集合的にアレイを画定するように選択されてもよい。例えば、位置は、
図1に示すアレイを集合的に画定することができる。
【0071】
N個の位置の各々において、ホール効果センサ20の出力を測定し、記録することができる。
【0072】
装置100およびセル10のアセンブリが設けられてもよい。例えば、アセンブリは自動車用のバッテリであってもよい。そのようなアセンブリでは、装置100およびセル10は、本明細書で説明するように動作の準備ができた状態で同じ場所に配置されてもよい。
【0073】
各装置100は、セル10に取り付けられることが好ましい。例えば、これはセル10のケーシング内にあってもよい。あるいは、各装置100は、セル10のケーシングに取り付けられてもよい。さらなる代替例では、各装置100は、セル10および装置100を定位置に固定するより大きなハウジングによってその場で保持されてもよい。したがって、セル10またはホール効果センサ20のいかなる振動も、追加の誤差の導入を回避するために各構成要素によって等しく感じられる。
【0074】
各装置100は、より広範なバッテリ管理システムに組み込まれてもよい。例えば、バッテリ管理システムは、セル10が乗り物に電力を供給している自動車などの乗り物用の全体的なバッテリ管理システムであってもよい。ホール効果センサ20の出力は、バッテリ管理システムへの入力とすることができる。バッテリ管理システムは、セル10のパラメータまたはセルに関するパラメータを検出するための任意のさらなるセンサをさらに備えることができる。バッテリ管理システムは、ホール効果センサ20の出力に基づいてセル10の充電および/または放電を制御するように構成されてもよい。
【0075】
バッテリ管理システムは、ホール効果センサ20の出力に基づいて、セル10が劣化および/または故障していることをユーザに警告するように構成されてもよい。セル10の面を横切る異なる位置で(
図1のホール効果センサ20の固定アレイを介して、または
図2のホール効果センサ20の移動装置を介して)行われた複数の測定により、セル10を横切る電流密度をマッピングすることができる。このマッピングは、バッテリ管理システムによって実行されてもよい。このようなマッピングにより、故障が発生しているセル10内の正確な位置を識別することができ、早期警告標識の識別を可能にすることができる。これにより、セル10の不良部品の一部を交換することができる。
【0076】
さらに、セル10の充電状態の関数として電流の流れの変化を評価するために、例えばバッテリ管理システムによってホール効果センサ20を連続的に監視することができる。電流の流れの変化は、セル10の内部抵抗の変化を表す。そのような情報は、改善されたセル10またはその管理戦略を開発するために使用され得るセル10の内部機構を理解するために使用され得る。
【0077】
セル10およびホール効果センサ20の温度も測定電圧に影響を及ぼす可能性があるため、バッテリ管理システムは温度補償機能をさらに備えることができる。特に、ホール効果センサ20の温度の上昇は、生成されるホール電圧を増加させる可能性がある。この関係は、線形相関であってもよいし、より複雑な関係で表されてもよい。いずれにせよ、この温度依存性を補正するために、ホール効果センサ20に補正係数を適用することができる。
【0078】
ホール効果センサ20またはセル10上など、ホール効果センサ20の近傍に1つまたは複数の温度センサを設けることができる。次に、検知された温度を使用して、ホール効果センサ20からの生の電圧読み取り値に適用される適切な補正係数を決定することができる。測定値に影響を及ぼすセンサの温度を直接感知するため、温度センサはホール効果センサ20に直接適用されることが好ましい。いずれの場合でも、温度センサとホール効果センサ20への温度効果との間に熱的遅延がある。補正係数は、例えばそれに応じて補正係数を調整することによって、この温度遅延を考慮に入れることができる。
【0079】
本ホール効果センサ20の感度は、電流の方向も検出することができるようなものである。すなわち、セル10の充電電流と放電電流との差が検出され得る。充電時に磁場強度(テスラ、T)は増加する可能性があり、充電中に磁場強度は減少する可能性がある(またはその逆)。磁場強度はまた、充電と放電との間で符号(すなわち、正の値から負の値へ、またはその逆)を変化させ得る。この意味で、磁場強度の変化率および/またはその符号を使用して、セル10内の電流の流れの方向を示す(すなわち、充電と放電を決定する)ことができる。そのような感知は、ホール電圧読み取り値が上述のように温度補正される場合に特に識別することができる。セル10上の特定の位置のみが電荷の方向を示す場合があり、ホール効果センサ20が所与の方向に配置されることを必要とする場合がある。
【0080】
したがって、本開示は、セル10の磁場を測定するためのグラフェン導体を有するホール効果センサ20の使用を含む。セル10の局所電流密度は、この磁場から導き出すことができる。
【0081】
本発明はまた、負荷下でセル10をフィールドマッピングするためのさらなる装置200を含む。このさらなる装置200は、様々な構成で
図3~
図6に全体的に示されている。
【0082】
図3は、アセンブリを形成するためにセル10に適用された、その最も単純な状態のこのさらなる装置200を示す。装置200は、使用時にセル10の少なくとも一部分を覆うように配置されたピックアップコイル52を備える。ピックアップコイル52は、シングルターンコイルであってもよいし、複数巻きのコイル(マルチターンコイル)であってもよい。ピックアップコイル52の巻数は、発電電流を増減させるためのものである。
【0083】
ピックアップコイル52は、磁束変圧器コイルであり、セル10内で充電された電気の移動によって生成された電界を統合して、電流をピックアップコイル52に流すことができる。ピックアップコイル52は、セル10またはパウチに挿入され、セル10またはパウチの内部に印刷され、セル20またはパウチの表面にあるか、またはセルまたはパウチの外部に適用されてもよい。
【0084】
ピックアップコイル52は、測定コイル54と電気的に連通している(および/または電気的に接続されている)。ピックアップコイル52と同様に、測定コイル54は磁束変圧器コイルであり、シングルターンコイルまたはマルチターンコイルとすることができる。最も単純な解決策は、ピックアップコイル52および測定コイル54の各々のためのシングルターンコイルであり、これは、そうでなければ製造プロセスにおいて複数の積層または印刷工程を必要とする電気的交差の必要性がないことを意味するためである。
【0085】
ピックアップコイル52および測定コイル54は、測定コイルによって生成される磁束を低減または集中させるように設計することができる。これは、典型的には、各コイルの巻線のサイズおよび/または数を変えることによって達成される。測定コイル54に発生する磁束は、ピックアップコイルによって検出される磁束に比例する。コイルが磁束を集中させるように設計されている(すなわち、測定コイル54により大きな磁束を発生させる)場合、セル表面上に配置されたピックアップコイル52の面積は、磁気センサ21上の測定コイル54の面積よりも大きくてもよく、またはより多くの巻数を有してもよい。磁束を集中させることにより、所与の磁気センサ感度に対してより高感度の磁場測定を行うことが可能になる。
【0086】
この通信は、
図3の概略図に示すように、一般に直接的であってもよい。あるいは、通信は、
図4に示すマルチプレクサ(MUX)60などの中間部品を介してもよい。
【0087】
使用中、セル10内の磁束は、ピックアップコイル52内に電流を誘導する。そして、この誘導された電流は、ピックアップコイル52から測定コイル54に伝達される。これにより、測定コイル54に電流が流れ、磁場が発生する。
【0088】
磁場センサ21は、測定コイル54と整列して設けられている。磁場センサ21は、測定コイル54に発生する磁場を検出するように構成される。磁場センサ21は、任意の適切な磁場センサであってもよい。特定の実施形態では、磁場センサ21は、上述のグラフェン導体を有するホール効果センサ20などのホール効果センサ20であってもよい。
【0089】
この意味で、セル10の磁束は、ピックアップコイル52および測定コイル54を介して、磁場センサ21によって検出することができる。その結果、セル10またはパウチの内部にセンサは配置されない。これにより、パウチの外側から内側への接続数が低減され、パウチの封止がより簡単になる。
【0090】
図3は、この装置200の最も単純な配置を示しており、これは、概してセル全体にわたって磁束を検出する。
【0091】
装置200の別の構成が
図4に示されている。この装置200では、セル10上の異なる位置に対応するいくつかの位置に複数のピックアップコイル52が設けられている。各ピックアップコイル52は、特に明記しない限り、一般に、
図3に関連して上述した通りである。複数のピックアップコイル52は各々、マルチプレクサ60と電気的に連通していてもよい。参照を容易にするために、各ピックアップコイル52とマルチプレクサ60との間の接続は
図4から省略されている。
【0092】
マルチプレクサ60は、磁場センサ21で読み取るために、複数のピックアップコイル52のうちの1つに誘導された電流を測定コイル54に選択的に伝送するように構成することができる。特に、マルチプレクサ60は、ピックアップコイル52の各々を循環させ、各ピックアップコイル52に誘導された電流を測定コイル54に順次伝送することができる。
【0093】
あるいは、
図6に関連して以下に説明するように、各ピックアップコイル52は、それ自体の測定コイル54と電気的に連通してもよい。次に、各測定コイルを、対応する磁場センサ21によって測定することができる。
【0094】
これらの配置の組み合わせも可能であり、複数のピックアップコイル52はいくつかのサブグループに分けられる。ピックアップコイル52の各サブグループは、マルチプレクサ60と電気的に通信することができ、各マルチプレクサに測定コイル54および磁場センサ21が設けられる。
【0095】
ピックアップコイル52は、
図4に示すような規則的なアレイに配置することができる。上述したように、アレイは、セル10の完全なプロファイルが生成されることを可能にするために、セル10の面にわたって均等に分布してもよい。アレイは、セル100の故障または劣化が予想される場所にピックアップコイル52を配置するようなものであってもよい。
【0096】
図5は、マスターピックアップコイル52をさらに含む、
図4の構成の変形例を示す。マスターピックアップコイル52は、特に明記しない限り、一般に、前述のピックアップコイル52と同じである。マスターピックアップコイル52mは、複数のピックアップコイル52を取り囲む。特に、マスターピックアップコイル52mは、セル10上に設けられた他のすべてのピックアップコイル52を取り囲んでもよい。マスターピックアップコイル52は、一般に、例えばセル10の外周から外周全体の周りに一定量だけオフセットされることによって、セル10の外周に対応することができる。
【0097】
図6は、装置200のさらなる構成を示す。この装置200では、複数のピックアップコイル52は、1つまたは複数の入れ子状ピックアップコイル52を含む。入れ子状ピックアップコイル52は、複数のピックアップコイル52のうちの別のピックアップコイル52と重なる。
図6に見られるように、重なりの程度は、隣接するピックアップコイル52の間など、比較的小さくてもよい。マスターピックアップコイル52mは、他のすべてのピックアップコイル52と重なるため、実質的に入れ子状コイルの形態である。
【0098】
図6の構成では、各ピックアップコイル52は、それ自体の対応する測定コイル54と電気的に連通している。ここでも、参照を容易にするために、ピックアップコイル52とそれぞれの測定コイル54との間の接続は、
図6から省略されている。当然ながら、
図6の入れ子状コイル52の構成は、ピックアップコイルと1つまたは複数の測定コイル54との間にマルチプレクサ60を含む構成と共に使用されてもよい。
【0099】
これらの入れ子状コイル52の使用は、任意のバックグラウンド直流電場をピックアップコイル52の読み取り値から除去できることを意味する。これは特に、マスターピックアップコイル52mを使用して達成される。これにより、例えば、地球の磁場のバックグラウンド効果または局所的な周囲によって引き起こされるものを除去することができる。したがって、これは一定レベルの補償を達成する。
【0100】
ピックアップコイル52は、所望の空間分解能または補償を提供するように、多くの異なる方法で配置および/または入れ子にすることができる。配置はまた、所与の用途に対して十分な空間分解能および補償を提供する費用効果の高い配置を達成するように選択することができる。
【0101】
アセンブリは、セル10と組み合わされた装置200を備えることができる。特に、ピックアップコイル52は、セルパウチの内側など、セル10に取り付けられて設けられてもよい。マルチプレクサ60、測定コイル54などの外部部品は、測定が望まれるときに選択的に取り付けられてもよい。あるいは、取り付けは永久的であってもよい。この意味で、一体化された測定可能なセル10が提供される。このアセンブリ、または
図3~
図6の配置のいずれかは、セル10が自動車のバッテリである場合に特に有用であり得る。
【0102】
図3~
図6の装置200のいずれも、
図1および
図2の装置100に関連して上述したのと同じ方法で、バッテリ管理システムへの入力として接続され、その制御構造で使用され得る。
【0103】
さらなる実施形態では、
図7に示すように、グラフェン導体を有するホール効果センサ20を使用して、セル10の入力および/または出力電流を測定することができる。
【0104】
セル10は、負荷40に電力を供給するように接続される。負荷40は、セル10から電力を引き出す任意の要素であってもよい。例えば、負荷40は乗り物の電子機器システムであってもよく、セル10は自動車のバッテリであってもよい。従来技術のシステムでは、シャント抵抗が負荷40と直列に設けられる。このシャント抵抗は、測定されるセル10の入力電流であるか出力電流であるかに応じて、負荷40の両側に設けられてもよい。シャント抵抗にわたる電圧降下読み取り値が取得され、電流はオームの法則に従って計算される。シャント抵抗が負荷40と直列に設けられているので、シャント抵抗が故障した場合、これは負荷40を通る電流の流れに影響を及ぼすか、またはそれを阻害する可能性がある。
【0105】
本開示では、シャント抵抗を削除する。代わりに、セル10の入力および/または出力ラインには、1つまたは複数のホール効果センサ20が設けられる。これらのホール効果センサ20は、上述のようにグラフェン導体を含む。
図3は、セル10の入力ラインおよび出力ラインの両方のホール効果センサ20を示しているが、これは必須ではない。代わりに、単一のホール効果センサ20がセル10の入力ラインまたは出力ラインの一方に設けられてもよい。
【0106】
グラフェン導体を有するそのようなホール効果センサ20は、シャント抵抗よりも高い分解能を提供する。さらに、これらのホール効果センサ20は、低い電力消費を必要とし、したがって、バッテリ管理システムの全体的な電力消費に実質的に影響を及ぼさない。
【0107】
したがって、本開示は、セル10の入力および/または出力電流を測定するためのグラフェン導体を有するホール効果センサ20の使用に関する。
【0108】
本開示はセル10に焦点を当てているが、技術および装置は、燃料電池、キャパシタ、バッテリ、バッテリスタックなどにも等しく適用可能であることに留意されたい。
【0109】
本開示は一般的なグラフェンホール効果センサ20を論じているが、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる英国特許出願第2020131.5号の開示に従って製造されたグラフェンを使用することにより、ホール効果センサ20の性能を大幅に改善できることが理解されている。
【0110】
そのようなホール効果センサは、製造中にグラフェンシートの外縁のみが露出するように同時にパターニングされたグラフェン導体およびその上の誘電体材料の層を備える。グラフェン導体は、グラフェンシート(単層)であってもよいし、1枚~10枚のグラフェンシートからなるグラフェン層構造であってもよい。これにより、グラフェンと誘電体層は連続した外縁面を共有する。誘電体層は、例えば、蒸発または原子層堆積(ALD)のいずれかによって形成されたシリカ、ハフニアまたはアルミナ、好ましくはアルミナであり得る。次にオーミックコンタクトが堆積され、したがってグラフェンシートの外縁面にのみ接触するが、これは(グラフェンの表面上のオーミックコンタクトと比較して)グラフェンへの著しく改善された電流注入を提供することが分かっている。縁部オーミックコンタクトはまた、グラフェンシートとの接触面積を最小限に抑え、それによって、センサ感度を制限し得る典型的な金属接触(例えば、チタン、アルミニウム、クロムおよび金のうちの1つまたは複数)からの望ましくないドーピングを最小限に抑える。
【0111】
誘電体層は、グラフェン表面全体をコーティングするので、大気汚染物質からの実質的な保護を提供するが、ホール効果センサは、少なくとも残りの連続した外縁面がコーティングされるように、コーティングされたグラフェンにわたって延在する連続した耐空気性コーティング層をさらに含んでもよい。これにより、グラフェンが完全に封入され、大気汚染から保護される。連続した耐空気性コーティング層はまた、好ましくは、蒸発またはALDによって形成されたアルミナまたはハフニアであり得る。ALDは、より効果的な耐空気性コーティングを提供する基板全体にわたってコンフォーマルコーティングを提供するため好ましい。アルミナまたはハフニアは、蒸発によってパターニングされ得るが、そのような方法の方向性は、シャドーイングに起因して露出したままのグラフェンのいくつかの縁部を危険にさらす。しかしながら、パターニングは、オーミックコンタクトが露出したままであり、基板のストリートがコーティングされていないままであることを可能にし、それによって、コーティング層を損傷する危険性を伴って基板のダイシングが実行され得る。ホール効果センサは、従来のワイヤボンディングまたはオーミックコンタクトへのはんだバンピングを使用して回路に統合されてもよい。コーティング層がALDによって形成される場合、コーティング層の損傷または亀裂を引き起こす危険性があるワイヤボンディングのために、オーミックコンタクトに達するようにコーティングを穿刺することが必要な場合がある。別の実施形態では、パターニングされたグラフェンおよび誘電体層は、耐空気性コーティング層でコーティングされた後、オーミックコンタクトが堆積される。コーティング層を選択的にエッチングしてグラフェン縁部の一部を露出させることができ、その際、エッチングされた部分にオーミックコンタクトを堆積させてグラフェン縁面に接触させることができるが、選択的にエッチングされた部分内にオーミックコンタクトを堆積させることはより複雑である。
【0112】
したがって、ホール効果センサは、
上に層構造を有する基板であって、層構造が、
基板の第1の領域上の下層であって、下層を横切って延びる1つまたは複数のグラフェン層を備える下層と、
下層の上にあり、誘電体材料で形成された上層と
を備え、
グラフェンおよび上層が十字形であり、連続した外縁面を共有する、基板と、
基板のさらなる領域上に設けられ、連続した外縁面を介して1つまたは複数のグラフェン層と直接接触するオーミックコンタクトと、
4つのオーミックコンタクトであって、各コンタクトが基板のさらなる領域に設けられ、十字形の4つのアームの各々の縁面の遠位部分と直接接触する、4つのオーミックコンタクトと、
層構造を囲むか、または基板、層構造、および少なくとも1つのオーミックコンタクトを横切る、連続した耐空気性コーティング層と
を備え得る。
【0113】
十字形のアームとは、十字形を構成する4つの凸部を意味する。
基板は、サファイア、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、またはIII-V族半導体、好ましくはサファイアまたはシリコンであり得る。
【0114】
好ましくは、ホール効果センサは、
その上に層構造を有するサファイア基板であって、層構造が、
サファイア基板の第1の領域上のグラフェンの単層と、
グラフェン単層上のアルミナ層と
を備え、
グラフェンおよびアルミナが十字形であり、連続した外縁面を共有する、サファイア基板と、
4つの金オーミックコンタクトであって、各コンタクトがサファイア基板のさらなる領域に設けられ、十字形の4つのアームの各々の縁面の遠位部分と直接接触する、4つの金オーミックコンタクトと、
層構造を取り囲む連続したアルミナコーティング層と
を備える。
【0115】
英国特許出願第2020131.5号に開示された方法によって提供される保護コーティング層は、他の既知のホール効果センサと比較して、より長期間にわたるデバイス性能の改善された安定性につながる大気汚染からの優れた保護をグラフェンホール効果センサのグラフェンに提供し、それによってデバイスの寿命を延ばし、デバイスの再較正の必要性を最小限に抑える。そのようなホール効果センサは、セル10にわたる電流密度のリアルタイム監視を可能にする瞬間的なセンサ応答を生成する。
【0116】
上述した任意のホール効果センサ20について、スピニング電流変調技術を組み込むことによって測定の信頼性を高めることができることがさらに理解されている。適切な技術は、Mosserらの「A Spinning Current Circuit for Hall Measurements Down to the Nanotesla Range」で論じられている。これにより、ホール効果センサのバイアス端子およびセンス端子を迅速かつ周期的に交換することによって、オフセットおよび低周波ノイズの動的な相殺が可能になる。これは、上述した構成および実施形態のいずれかに関連して使用することができる。