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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】再生表面を使用する較正
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240614BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240614BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20240614BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61B5/00 N
G01N1/00 C
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022568521
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021062039
(87)【国際公開番号】W WO2021228688
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】20173942.2
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ファン リースハウト ロン マルティヌス ラウレンチウス
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マーク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】デリーモア キラン ハミルトン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フアイブレグツ ローレンシア ヨハンナ
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-167130(JP,A)
【文献】特表2017-529216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0142311(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03646788(EP,A1)
【文献】特開2014-119320(JP,A)
【文献】特開2000-356639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/145- 5/157
G01N 33/48 -33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の体液サンプル中の検体分子を検出するためのセンサデバイスを較正するための較正ユニットであって、前記較正ユニットが、
前記対象者の前記体液サンプル中の既知の量の前記検体分子と可逆的に結合するために較正受容体が上に固定された捕捉表面を有する較正マトリクスであって、結合した前記検体分子が、前記センサデバイスを較正するために使用可能な較正分子を表す、較正マトリクスと、
前記較正分子を前記捕捉表面から水溶液中に放出して、前記センサデバイスを較正するための較正流体を形成することによって、前記捕捉表面を再生する再生アセンブリと
を含む、較正ユニット。
【請求項2】
前記水溶液が、前記対象者の前記体液サンプルである、
請求項1に記載の較正ユニット。
【請求項3】
前記再生アセンブリが、前記較正分子を前記捕捉表面から放出するために、電位を前記捕捉表面に印加する、
請求項1又は2に記載の較正ユニット。
【請求項4】
前記再生アセンブリが、前記水溶液を電気分解する電気分解アセンブリを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の較正ユニット。
【請求項5】
前記電気分解アセンブリが、
前記捕捉表面上の少なくとも3つの空間的に分離された導電性区域と、
前記捕捉表面で受け取られた前記水溶液を電気分解するのに十分な電圧が、前記少なくとも3つの導電性区域の第1のペアの組合せを横切って供給される第1の設定、及び
前記捕捉表面で受け取られた前記水溶液を電気分解するのに十分な電圧が、前記少なくとも3つの導電性区域の第2のペアの組合せを横切って供給される第2の設定であって、前記第2のペアの組合せが前記第1のペアの組合せと異なる、第2の設定
を実施する電源と
を含む、
請求項4に記載の較正ユニット。
【請求項6】
前記水溶液が流路を通って流れる当該流路と、
誘導電極及びイオン選択電極のうちの少なくとも1つを含む電極アレンジメントと
を含むアセンブリをさらに含み、
前記誘導電極が、前記流路の周辺のまわりに円周方向に配置され、前記水溶液中の移動イオンが前記流路を通って流れることに応じて摩擦電気電位を発生させ、
前記イオン選択電極が、前記流路の内側に配置され、前記水溶液中の移動イオンが前記流路を通って流れることに応じて電気化学電位を発生させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の較正ユニット。
【請求項7】
前記アセンブリは、(i)前記較正分子を前記捕捉表面から放出するために、前記摩擦電気電位及び前記電気化学電位のうちの少なくとも一方を前記捕捉表面に印加する再生アセンブリ、又は(ii)発生した前記摩擦電気電位及び発生した前記電気化学電位のうちの少なくとも一方が、移動イオンの所与の速度に対応する所定の閾値を超えたときに前記再生アセンブリの起動をトリガするトリガアセンブリである、
請求項6に記載の較正ユニット。
【請求項8】
前記再生アセンブリは、
皮膚表面に排泄された体液サンプルの液滴を受け取るための入口、及び、前記体液サンプルの前記液滴が、前記体液サンプルでチャンバを充填した後に生じて、出口からはみ出るような当該出口を有する前記チャンバと、
- 前記出口からはみ出る前記液滴を放出し、放出された前記液滴を前記較正マトリクスに輸送する流体輸送アセンブリであって、それによって、前記出口を利用可能にして、前記チャンバのさらなる充填の際に、次の液滴が生じて、前記出口からはみ出る、流体輸送アセンブリと
を含む流体収集アセンブリを含み、
前記流体輸送アセンブリは、それぞれの前記液滴が互いに接触しないように、放出された前記液滴を、次の前記液滴が前記出口からはみ出るのと少なくとも同じ速さで輸送し、
前記流体輸送アセンブリが、前記皮膚表面に最初に排泄された1つ又は複数の液滴を前記較正マトリクスに輸送して、前記較正分子を前記捕捉表面から放出し、前記較正流体を形成する、
請求項1又は2に記載の較正ユニット。
【請求項9】
前記較正マトリクスが、異なる量の較正分子を前記水溶液中に放出して、異なる濃度をもつ較正流体を形成して、前記センサデバイスを較正するための較正曲線を構築する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の較正ユニット。
【請求項10】
異なる濃度をもつ較正流体は、
前記再生アセンブリを異なる時間間隔で起動して、前記較正分子を前記捕捉表面から放出し、それによって、異なる濃度をもたらすこと、
多数の捕捉区域を設け、その各々が、異なる量の較正受容体を有し、その結果、各捕捉区域が、異なる量の較正分子を放出すること、及び
異なるタイプの較正受容体を有し、その各々が、異なる量の水素イオンで前記較正分子を放出すること
のうちの少なくとも1つによって形成される、
請求項9に記載の較正ユニット。
【請求項11】
流体を前記捕捉区域から取り除くキャピラリポンプと、
取り除かれた前記流体を蒸発させる蒸発器と
をさらに含む、請求項10に記載の較正ユニット。
【請求項12】
対象者の体液サンプル中の検体分子を検出するための体液モニタリング装置であって、前記体液モニタリング装置が、
請求項1から11のいずれか一項に記載の較正ユニットと、
前記体液サンプル中の前記検体分子を検出するためにセンサ分子が捕捉表面の上に固定されている当該捕捉表面を有するセンサデバイスであって、少なくとも較正イベントにおいて前記較正ユニットと流体連通する、センサデバイスと、
前記体液サンプルを前記較正ユニット及び前記センサデバイスに供給するための流体収集アセンブリと
を含む、体液モニタリング装置。
【請求項13】
(i)前記較正ユニット及び前記センサデバイスの両方を収容する輸送チャネル、又は
(ii)前記較正ユニット及び前記センサデバイスを別々に収容する2つの輸送チャネル、並びに前記2つの輸送チャネル間の流体の流れを制御するバルブ構成部
を含む、請求項12に記載の体液モニタリング装置。
【請求項14】
対象者の体液サンプル中の検体分子を検出するためのセンサデバイスを較正するための方法であって、前記方法が、
a)較正ユニットを用いて、前記対象者の前記体液サンプルを受け取るステップであって、
前記較正ユニットは、較正受容体が捕捉表面の上に固定されている当該捕捉表面を有する較正マトリクスを含む、受け取るステップと、
b)前記較正受容体に、前記対象者の前記体液サンプル中の既知の量の検体分子を可逆的に結合させるステップであって、結合した前記検体分子が、前記センサデバイスを較正するために使用可能な較正分子を表す、結合させるステップと、
c)再生アセンブリを用いて、前記較正分子を前記捕捉表面から水溶液中に放出して、較正流体を形成することによって、前記捕捉表面を再生するステップと、
d)前記センサデバイスを較正するために、放出された前記較正分子を前記センサデバイスに輸送するステップと
を有する、方法。
【請求項15】
対象者の体液サンプル中の検体分子を検出するためのセンサデバイスを較正するためのプログラムであって、プロセッサによって実行されると、請求項14に記載の方法を実行する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液モニタリングに関し、特に、較正ユニット、体液モニタリング装置、及びコンピュータプログラム要素に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサ及び電気化学センサなどのセンサは、時間とともにドリフトし、較正又は再較正を必要とすることが知られている。電気化学センサでは、ドリフトは、機能(例えば、酵素機能)の低下、固有のドリフト、及びセンサの汚れによって引き起こされるドリフトによって引き起こされる。
【0003】
一般に、較正は、対象の分子の既知の濃度をもつ較正液体を使用して行われる。較正液体は、パッチの内部に貯蔵することができるが、この解決策は、安定性、パッチ設計、及び再使用の問題を引き起こす。別のやり方は、較正液体をパッチに手動で供給することであるが、この解決策は、液体の供給を行うのに訓練された要員を必要とし、較正プロセスの複雑さ及びエラーの可能性を増加させる。第3のオプションは、標準化された測定方法、例えば、中央検査室の検査を使用する較正である。再び、このオプションは、患者へのさらなる負担を引き起こす欠点を有しており、このオプションは、訓練された要員を必要とし、ワークフローの問題を持ち込む。
【0004】
その上、マトリクス効果が、バイオセンサ分野における大きい問題である。マトリクス効果、すなわち、生体液(bioliquid)内の妨害成分による結合条件の変化は、同じ生体液中の対象のもの以外の分子の存在によって引き起こされ、真の検査濃度の過大評価又は過小評価をもたらす。マトリクス効果は、患者ごとに異なり、患者が病気にかかっている場合に増加する。
【0005】
米国特許出願公開第2019/142311A1号は、電気化学アプタマーベースの生物流体センサを較正するためのデバイスを記載している。いくつかの実施形態では、較正物質は、EABセンサに隣接して配置され、較正は、生物流体をデバイス内に導入することによって促進される。他の実施形態は、較正溶液をセンサに導入するための様々な機構を含み、それには、電位を介して較正溶液をセンサに接触させること、インクジェット式ノズルなどの吐出機構、並びに圧力作動吐出が含まれる。さらに、較正と生物流体感知を交互に可能にする分岐した生物流体輸送経路を利用する実施形態が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイオセンサの較正を改善する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、独立請求項によって定義され、さらなる実施形態は従属請求項に組み込まれる。本発明の以下に記載の態様は、較正ユニット、体液モニタリング装置、及びコンピュータプログラム要素にも適用されることに留意されたい。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、対象者の体液サンプル中の検体を検出するためのセンサデバイスを較正するための較正ユニットが提供される。較正ユニットは、対象者の体液サンプル中の検体分子と結合するために較正受容体が上に固定されている捕捉表面を有する較正マトリクスを含む。結合した検体分子は、センサデバイスを較正するために使用可能な較正分子を表す。較正ユニットは、較正分子を捕捉表面から水溶液中に放出して、センサデバイスを較正するための較正流体を形成することによって、捕捉表面を再生するように構成された再生アセンブリをさらに含む。
【0009】
言い換えれば、センサデバイスを較正するための試薬なしの較正方法を使用することが提案される。試薬なしの較正方法は、患者の生体液の内部の検体分子(すなわち、較正分子)を捕捉し、較正のために必要とされるときそれを放出するステップを有する。その結果、この試薬なしの較正方法は、オンボード試薬保管の必要性を除く。提案する較正ユニットは、較正方法を使用し、対象の生体液と長期間接触する任意のバイオセンサに有用である。バイオセンサの例には、例えば、ウェアラブル、パッチ、インサータブル、インプランタブルが含まれる。バイオセンサの例には、例えば中心ラインを介して、例えば間質液及び/又は血液中で測定を実行するための、対象の生体液の内部のセンサ要素がさらに含まれる。
【0010】
この目的を達成するために、対象者の体液サンプル中の検体分子と結合するために較正受容体が上に固定されている捕捉表面を有する較正マトリクスを含む較正ユニットが提案される。任意選択で、較正ユニットは、センサデバイスの統合された部品とすることができる。較正受容体は、較正ユニットにおける受容体を指す。受容体は、1つ又は複数の検体分子に対して妥当な親和性及び特異性を有する合成又は天然由来のいずれかの任意の分子を指す。固定された受容体及び検体分子はまた、生物学的結合パートナとも呼ばれ、それは、種々の既知の配位子を含む。例えば、当業者は、生物学的結合パートナには、例えば、抗原又は抗体、ホルモン又は神経伝達物質及び受容体、基質又はアロステリックエフェクター及び酵素、レクチン及び糖、アプタマー及びそれの結合種(他のDNA又はRNA種又は結合タンパク質を含む)などのDNA又はRNA構造、タンパク質、ビオチン及びアディビン又はストレプトアビジン系、酵素とその基質及びインヒビタ、脂質結合系、並びにそれらの組合せが含まれることを認識するであろう。検体分子と受容体の結合は、受容体-検体複合体を形成する。例えば、抗体が、較正ユニットの捕捉表面に固定され、抗体は、特定の抗原を捕捉し、抗原は、対象の検体(すなわち、検体分子)である。したがって、サンプルが表面に接触すると、較正受容体は、サンプルに存在する検体と結合する。
【0011】
較正受容体を用いて、較正ユニットの捕捉表面は、十分な量の検体分子を捕捉する。捕捉表面によって捕捉される検体分子の量は、捕捉表面の較正受容体の所定の量と、受容体分子のタイプとを選ぶことによって制御される。事前定義された量の検体分子が捕捉されると、較正分子として使用される準備が整い、較正分子は、緩衝液又は対象者の体液サンプルなどの水溶液中に放出されて、較正流体が形成される。較正受容体への検体の結合の可逆的な性質は、検体が、原理的に、較正受容体から遊離され、それによって、較正流体によってセンサ表面を再生し、較正区域の再使用を可能にすることを意味する。
【0012】
捕捉表面を再生するために、較正ユニットは、再生アセンブリをさらに含む。以下で、再生アセンブリの3つの例が簡潔に説明される。
【0013】
再生アセンブリの第1の例は、水性媒体の電気分解を利用して捕捉表面を再生するという認識に基づく。この目的を達成するために、水溶液、例えば体液サンプル又は緩衝液を電気分解するための電気分解アセンブリを含む再生アセンブリが提案される。電圧、例えば電圧プロフィルが、表面上の複数の空間的に分離された導電性区域のペアの組合せを横切って供給され、それにより、各ペアの組合せのそれぞれの導電性区域は、アノード及びカソードになる。電圧は、水性媒体を電気分解するのに十分であり、それにより、水素イオンがアノードで生成され、ヒドロキシルイオンがカソードで生成されることになる。それにより、アノードの近くのpHは低下し、カソードの近くのpHは上昇する。これらのpHの局所的変化は、受容体-検体複合体の破壊、例えば変性をもたらし、捕捉表面の少なくとも一部を再生する。
【0014】
再生アセンブリの第2の例は、較正ユニットを通る流体の流れに応じて電位が発生するという認識に基づく。この目的を達成するために、流体が流路を通って流れるように構成された当該流路と、流路の周辺のまわりに円周方向に配置された誘導電極(又はアレイ)とを含む再生アセンブリが提案される。誘導電極(又はアレイ)は、流路を通って流れる流体中の移動イオンにより、摩擦電気電位を発生させる。誘導電極によって発生される摩擦電気電位は、流路を通って流れる流体中の移動イオンの速度に対応する。より具体的には、流路を通って流れる流体中の移動イオンの速度及び濃度(すなわち、流速及び濃縮倍率)に対応する。流路を通って移動するイオンは、誘導電極と相互作用して、摩擦電気電位(電圧)を誘導し、それは、再生捕捉表面のための電流として直接使用される。代替として又は追加として、較正ユニットは、流体が流路を通って流れるように構成された流路と、流路の内側に配置された1つ又は複数のイオン選択電極とを含む。イオン選択電極は、流路を通って流れる流体中の移動イオンにより、電気化学電位を発生させる。イオン選択電極によって発生される電気化学電位は、流路を通って流れる流体中の(特定の)移動イオンの速度又は濃度に対応する。流路を通って移動するイオンは、イオン選択電極と相互作用して、電気化学電位(電圧)を誘導し、それは、再生捕捉表面のための電流として直接使用される。
【0015】
再生アセンブリの第3の例は、皮膚表面に排泄された体液サンプル(例えば、汗、皮脂、及び間質液)の液滴の第1の画分のpHが、最初には、約2であり、汗、皮脂、及び間質液が、捕捉表面からの較正分子の放出を支援するのに十分に酸性であるという認識に基づく。例えば汗滴の場合、発汗速度が増加するにつれて、PHは、ほぼ中性のpH、すなわち、pH≒7に達するまで、pHは徐々に上昇する。これは、汗管に沿ったイオンの再吸収フラックスと、発汗速度との間の逆関係に起因して生じる。それゆえ、活性汗腺から皮膚表面に出て来る1つ又は複数の汗滴の第1の画分は、2のpHを有し、この第1の画分のみが較正分子を放出するために使用されるこの目的を達成するために、再生アセンブリは、入口を介して皮膚からの体液サンプルを収集するチャンバを有する。チャンバはまた、出口を有し、出口は、チャンバが充填されると、体液サンプルの液滴が出口からはみ出るように構成されている、例えば、寸法を合わされている。流体輸送アセンブリは、液滴の体液サンプルを出口から放出し、放出された液滴をセンサに向かって輸送する。流体輸送アセンブリは、液滴がセンサに向かって輸送されているとき、液滴の離散的な形態を保持する。放出された液滴の輸送が、出口からの体液サンプルの後続の液滴の突出と少なくとも同じ速さである、好ましくは、それよりも速いことにより、センサへの液滴の滴状供給が行われる。これにより、そのような後続の汗滴が、センサに輸送されるプロセス中の放出された汗滴に対してはみ出て、それと合体することが避けられる。特に、2のpHを有する皮膚表面に出て来た体液サンプル(例えば、汗、皮脂、及び間質液)の1つ又は複数の液滴の第1の画分は、電気機械的(例えば、エレクトロウェッティング)勾配又は化学的勾配によって捕捉表面に輸送される。これらのpHの局所的変化は、受容体-検体複合体の破壊、例えば変性をもたらし、捕捉表面の少なくとも一部を再生する。
【0016】
一例では、較正ユニットは、センサデバイスと同じ輸送チャネル内にある。別の例では、較正ユニットは、センサデバイスとは異なる輸送チャネルに配置される。この例では、較正ユニットの捕捉区域は、事前装填され、液体は、キャピラリポンプ及び蒸発器を使用することによって捕捉区域から取り除かれ、その結果、較正分子は劣化しにくい。較正が必要とされるとき、バルブ及び再生アセンブリは、較正分子を放出するように構成される。
【0017】
一般に、較正は、較正曲線/範囲を使用して行われる。一例では、多数の捕捉区域を較正ユニットに統合し、それらを異なる時間間隔で解放することによって、センサを較正するための較正曲線が作成される。較正分子の時間分離放出は、
(1)異なる濃度をもたらす異なる時間間隔で再生ゾーンを活性化すること、
(2)放出の後に異なる濃度を提供する異なる量の受容体をもつ多数のゾーン(すなわち、捕捉区域のサイズ)を有すること、及び/又は
(3)異なるpH値で放出する受容体を有すること
によって行われる。これらの受容体タイプの混合を組み込むことによって、異なるpH条件で同じ再生ゾーンを活性化することによって特定の濃度をトリガする。抗体はpH条件に関連する異なるKoffを有するように設計されることに留意されたい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、水溶液は、対象者の体液サンプルである。
【0019】
較正分子が、測定と同じマトリクス(すなわち、生体液)中にあるので、マトリクス効果(すなわち、生体液中の妨害成分による結合条件の変化)も補正される。通常の較正液体は、緩衝液であり、定義によれば、生体液、すなわち、同じ対象者の体液サンプルと同じ液体ではない。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、再生アセンブリは、較正分子を捕捉表面から放出するために、電位を捕捉表面に印加するように構成される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、再生アセンブリは、水溶液を電気分解するように構成された電気分解アセンブリを含む。
【0022】
この例では、再生アセンブリは、例えば、試薬が再生をもたらすという要件を除去又は最小にするために、表面を再生するのに水の電気分解を利用するという認識に基づく。提案する再生アセンブリは、水性媒体を電気分解するための電気分解アセンブリを含む。電圧が、表面上の複数の空間的に分離された導電性区域のうちの少なくとも2つを横切って供給され、それにより、少なくとも2つの導電性区域は、アノード及びカソードになる。電圧は、水を電気分解するのに十分であり、それにより、水素イオンがアノードで生成され、ヒドロキシルイオンがカソードで生成されることになる。それにより、アノードの近くのpHは低下し、カソードの近くのpHは上昇する。これらのpHの局所的変化は、捕捉種-検体複合体の破壊、例えば変性をもたらし、表面の少なくとも一部を再生する。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、電気分解アセンブリは、捕捉表面上の少なくとも3つの空間的に分離された導電性区域と、電源とを含む。電源は、捕捉表面で受け取られた水溶液を電気分解するのに十分な電圧が、前記少なくとも3つの導電性区域の第1のペアの組合せを横切って供給される第1の設定、及び捕捉表面で受け取られた水溶液を電気分解するのに十分な電圧が、前記少なくとも3つの導電性区域の第2のペアの組合せを横切って供給される第2の設定であって、第2のペアの組合せは、前記第1のペアの組合せと異なる、第2の設定を実施するように構成される。
【0024】
それぞれのペアの組合せは、例えば、導電性区域間の間隔と、(交互の)導電性区域に印加される電圧極性の配置との両方に関して、互いに異なる。
【0025】
電圧は、第1の構成と第2の構成とで異なっていてもよい。例えば、電圧は、第1の設定よりも第2の設定において高いか、又は直線的に増加していてもよい。代替として又は追加として、導電性区域の第2のペアの組合せは、導電性区域の第1のペアの組合せよりも表面上でさらに離間される。そのような方策は、捕捉表面の電解再生の程度を増加させるのを支援する。
【0026】
導電性区域は、互いに対して、櫛形構成で、例えば平面櫛形構成で配置される。櫛形構成は、水の電気分解に由来する局所的pH変化が再生を推進する表面上の場所を提供しながら、比較的大きい面積、例えば、数mm~cmの程度にわたって電圧を供給するのを支援する。同様の効果は、例えば、複数の同心のリング状部分として配置された導電性区域を使用して達成される。
【0027】
複数の空間的に分離された導電性区域は、隣接する導電性区域間の間隔が、大きい離隔距離と小さい離隔距離との間で交互である導電性区域のアレイを含み、電源は、大きい離隔距離で離間された隣接する導電性区域を横切って電圧を供給するように構成され、小さい離隔距離で離間された隣接する導電性区域は、互いに同じ極性である。そのような配置は、電解再生が生じない表面上の区域を減少させるのを支援する。その結果、表面の電解再生の程度が強化される。
【0028】
複数の空間的に分離された導電性区域が、導電性ストリップのグリッドを含み、電源は、電圧(プロフィル)が第1の方向に延びる平行なストリップを横切って供給される第1のモードと、電圧が第2の方向に延びる平行なストリップを横切って供給される第2のモードとを実施するように構成され、第2の方向は、第1の方向と異なる。電源は、例えば、第1のモードと第2のモードを順次実施するように構成される。このようにして、表面のより完全な再生が達成される。
【0029】
電源は、少なくとも2つの導電性区域にかけられる電圧の極性を切り替えるように構成される。特定の受容体-検体(例えば、抗体-抗原)複合体は、例えば、最適な酸性又はアルカリ性のpHでのみ変性され、さもなければ、大きいpH変動に対して頑健である。この理由から、電源は、電極の極性及び電界の方向を切り替えるために、それぞれの導電性区域にかけられる電圧の極性を切り替えるか、又はより大きいAC電圧をDC電圧に重畳するように構成される。この極性切り替えは、それぞれの導電性区域の両方の近くに位置する捕捉種の再生をもたらす。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、較正ユニットは、水溶液が流路を通って流れるように構成された当該流路を含むアセンブリをさらに含む。アセンブリは、誘導電極及び/又はイオン選択電極を含む電極アレンジメントをさらに含む。誘導電極は、流路の周辺のまわりに円周方向に配置され、水溶液中の移動イオンが流路を通って流れることに応じて摩擦電気電位を発生させるように構成される。イオン選択電極は、流路の内側に配置され、水溶液中の移動イオンが流路を通って流れることに応じて電気化学電位を発生させるように構成される。
【0031】
言い換えれば、電位は、流体の検出から直接較正ユニットによって発生される。すなわち、流体の検出は、再生アセンブリの起動をトリガするために使用されるか、又は較正ユニットの再生可能な捕捉表面のための電流として直接使用される電圧を発生する。
【0032】
アセンブリの第1の例は、流体が流路を通って流れるように構成された流路と、流路の周辺のまわりに円周方向に配置された誘導電極(又はアレイ)とを含む。誘導電極(又はアレイ)は、流路を通って流れる流体中の移動イオンにより、摩擦電気電位を発生させる。誘導電極によって発生される摩擦電気電位は、流路を通って流れる流体中の移動イオンの速度に対応する。より具体的には、流路を通って流れる流体中の移動イオンの速度及び濃度(流速及び濃縮倍率)に対応する。流路を通って移動するイオンは、誘導電極と相互作用して、摩擦電気電位(電圧)を誘導する。
【0033】
誘導電極は、例えば、複数の誘導電極が設けられる場合、流体が1対の誘導電極間を流れるように、流路の円周要素/アレイとして連続して配置される。誘導電極は、接地に対して調整される。好ましくは、少なくとも2つの誘導電極、すなわち、正電極と、接地電極又は基準電極とが設けられる。誘導電極で発生される摩擦電気電位は、2つの電極間の差に対応し、較正分子放出の受動的なトリガを提供する。
【0034】
アセンブリの第2の例は、流体が流路を通って流れるように構成された当該流路と、流路の内側に配置された1つ又は複数のイオン選択電極とを含む。イオン選択電極は、流路を通って流れる流体中の移動イオンにより、電気化学電位を発生させる。イオン選択電極によって発生される電気化学電位は、流路を通って流れる流体中の(特定の)移動イオンの速度又は濃度に対応する。流路を通って移動するイオンは、イオン選択電極と相互作用して、電気化学電位(すなわち、電圧)を誘導する。
【0035】
イオン選択電極及び基準電極は、流体が基準電極のまわりを流れるように、流路に配置される、例えば、同心的に配置される。好ましくは、2つのイオン選択電極、すなわち、正電極と、接地電極又は基準電極とが設けられる。イオン選択電極の発生信号は、基準電極(の電位)に対して測定される。流体は、イオン選択膜電極を通って流れ、電極は、基準電位/溶液を使用する電位差pH測定プローブと同等である。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、アセンブリは、(i)較正分子を捕捉表面から放出するために、摩擦電気電位及び電気化学電位のうちの少なくとも一方を捕捉表面に印加するように構成された再生アセンブリ、又は(ii)発生した摩擦電気電位及び発生した電気化学電位のうちの少なくとも一方が、移動イオンの所与の速度に対応する所定の閾値を超えたときに再生アセンブリの起動をトリガするように構成されたトリガアセンブリである。
【0037】
言い換えれば、微小流体システムを通る過渡的又は拍動的汗流波(移動イオン)は、液体摩擦電気又は電気化学電位を発生し、それは、再生アセンブリの起動をトリガするために使用されるか、又は再生捕捉表面のための電流として直接使用される。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、再生アセンブリは、流体収集アセンブリを含む。流体収集アセンブリは、皮膚表面に排泄された体液サンプルの液滴を受け取るための入口と、体液サンプルの液滴が体液サンプルでチャンバを充填した後に生じて、出口からはみ出るように構成される、当該出口とを有するチャンバを含む。再生アセンブリは、出口からはみ出る液滴を放出し、放出された液滴を較正マトリクスに輸送し、それによって、出口を利用可能にして、チャンバのさらなる充填の際に、次の液滴が生じ、出口からはみ出るように構成された流体輸送アセンブリをさらに含む。流体輸送アセンブリは、それぞれの液滴が互いに接触しないように、放出された液滴を、次の液滴が出口からはみ出るのと少なくとも同じ速さで輸送するように構成される。流体輸送アセンブリは、皮膚表面に最初に排泄された1つ又は複数の液滴を較正マトリクスに輸送して、較正分子を捕捉表面から放出し、較正流体を形成するように構成される。
【0039】
この例では、再生アセンブリは、皮膚表面に排泄された体液サンプル(例えば、汗、皮脂、及び間質液)を収集し、それを離散的な液滴の形態で較正ユニットに供給することが、体液サンプルの連続的な流れを利用することと比べて有利であるという認識に基づく。この離散化の手法は、皮膚表面から出て来る体液サンプルの1つ又は複数の液滴の第1の画分を較正ユニットの捕捉表面に、例えば、電気機械的勾配又は化学的勾配によって輸送することを可能にする。1つ又は複数の液滴の第1の画分のpHは、最初には、約2であるので、1つ又は複数の液滴のこの第1の画分は、捕捉表面の少なくとも一部を再生するような受容体-検体複合体の破壊、例えば変性をもたらす。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、較正マトリクスは、異なる量の較正分子を水溶液に放出して、異なる濃度をもつ較正流体を形成し、センサデバイスを較正するために較正曲線を構築するように構成される。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、異なる濃度をもつ較正流体は、再生アセンブリを異なる時間間隔で起動して、較正分子を捕捉表面から放出し、それによって、異なる濃度をもたらすこと、多数の捕捉区域を設け、その各々が、異なる量の較正受容体の有し、その結果、各捕捉区域が、異なる量の較正分子を放出すること、及び異なるタイプの較正受容体を有し、その各々が、異なる量の水素イオンで較正分子を放出するように構成されることのうちの少なくとも1つによって形成される。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、較正ユニットは、流体を捕捉区域から取り除くように構成されたキャピラリポンプと、取り除かれた流体を蒸発させるように構成された蒸発器とをさらに含む。
【0043】
この例では、較正ユニットの捕捉区域は、センサデバイスとは異なる輸送チャネルに配置される。較正ユニットの捕捉区域は、事前装填され、液体は、キャピラリポンプ及び蒸発器を使用することによって捕捉区域から取り除かれ、その結果、較正分子は劣化しにくい。較正が必要とされるとき、バルブ及び再生アセンブリは、較正分子を放出するように構成される。
【0044】
本発明の第2の態様によれば、対象者の体液サンプル中の検体を検出するための体液モニタリング装置が提供される。体液モニタリング装置は、第1の態様及び任意の関連する例による較正ユニットと、体液サンプル中の検体を検出するためにセンサ分子がその上に固定されている捕捉表面を有するセンサユニットであって、少なくとも較正イベントにおいて較正ユニットと流体連通するセンサユニットと、体液サンプルを較正ユニット及びセンサユニットに供給するための流体収集アセンブリとを含む。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、体液モニタリング装置は、較正ユニットとセンサユニットの両方を収容するように構成された輸送チャネルをさらに含む。代替として、体液モニタリング装置は、較正ユニットとセンサユニットを別々に収容するように構成された2つの輸送チャネルと、2つの輸送チャネル間の流体の流れを制御するように構成されたバルブ構成部とをさらに含む。
【0046】
本発明の第3の態様によれば、対象者の体液サンプル中の検体を検出するためのセンサを較正するための方法が提供される。この方法は、以下のステップ、
a)較正ユニットを用いて、対象者の体液サンプルを受け取るステップであって、
較正ユニットは、較正受容体がその上に固定されている捕捉表面を有する較正マトリクスを含む、受け取るステップと、
b)較正受容体に、対象者の体液サンプル中の既知の量の検体分子を結合させるステップであって、結合した検体分子が、センサを較正するために使用可能な較正分子を表す、結合させるステップと、
c)再生アセンブリを用いて、較正分子を捕捉表面から水溶液中に放出して、較正流体を形成することによって、捕捉表面を再生するステップと、
d)センサデバイスを較正するために、放出された較正分子をセンサデバイスに輸送するステップと
を有する。
【0047】
本発明の別の態様によれば、対象者の体液サンプル中の検体を検出するためのセンサを較正するためのプログラム要素が提供され、プログラム要素は、プロセッサによって実行されると、第3の態様及び任意の関連する例による方法を実行するように構成される。
【0048】
有利には、上述の態様のいずれかによって提供される利益は、他の態様のすべてに等しく当てはまり、その逆も同様である。
【0049】
本開示のこの詳細な説明において、当業者は、「上に」、「下に」、「上部の」、「下部の」などの方向を示す用語、及び他の同様の用語が、図面を参照する読者の便宜のために使用されることに留意されたい。さらに、当業者は、この説明が、本開示の原理から逸脱することなく、位置、方位、及び方向を伝えるために他の用語を含むことに気づくべきである。
【0050】
任意の形態の体液サンプル(例えば、移動しているか又は静止しているかにかかわらず、液滴又は連続体)が、電極、アレイ、マトリクス、又は表面「の上に」、「に」、又は「の上方に」あると記載される場合、そのような液体は、電極/アレイ/マトリクス/表面と直接接触するか、又は液体と電極/アレイ/マトリクス/表面との間に介在される1つ又は複数の層又は薄膜に接触する。
【0051】
さらに、この詳細な説明において、「概して」、「実質的に」、「ほとんど」などの定量的限定用語、及び他の用語は、一般に、参照される物体、特性、又は品質が、参照の対象の大部分を構成することを意味するように使用されることに当業者は留意すべきである。これらの用語のいずかの意味は、それが使用される文脈に依存し、その意味は、明示的に変更され得る。
【0052】
「コントローラ」という用語は、一般に、ストリームプローブ装置、システム、又は方法の動作に関連する様々な装置を記載するために使用される。コントローラは、本明細書で論じられる様々な機能を実行するための多数のやり方(例えば、専用ハードウェアを用いるなど)で実装される。「プロセッサ」は、本明細書で論じられる様々な機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされる1つ又は複数のマイクロプロセッサを利用するコントローラの1つの例である。コントローラは、プロセッサを利用して又は利用せずに実装され、さらに、ある機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路)の組合せとして実装される。本開示の様々な実施形態で利用されるコントローラ構成要素の例には、限定はしないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が含まれる。本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載の実施形態から明らかになり、それを参照して解明される。
【0053】
様々な実施態様において、プロセッサ又はコントローラは、1つ又は複数のストレージ媒体(本明細書では総称して「メモリ」と呼ぶ、例えば、揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ)に関連付けられる。いくつかの実施態様において、ストレージ媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラで実行されたときに本明細書で論じられる機能の少なくとも一部を実行する1つ又は複数のプログラムで符号化される。様々なストレージ媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されてもよく、或いはそこに格納された1つ又は複数のプログラムが、本明細書で論じられる本開示の様々な態様を実施するためにプロセッサ又はコントローラにロードされるように可搬であってもよい。「プログラム」又は「コンピュータプログラム」という用語は、本明細書では、1つ又は複数のプロセッサ又はコントローラをプログラムするために利用される任意のタイプのコンピュータコード(例えば、ソフトウェア又はマイクロコード)を指すように一般的な意味で使用される。
【0054】
前述の概念と、以下でより詳細に論じられる追加の概念(そのような概念が相互に矛盾しないという条件での)とのすべての組合せは、本明細書で開示される本発明の主題の一部であると考えられることを認識されたい。特に、本開示の末尾に現れる特許請求される主題のすべての組合せは、本明細書で開示される本発明の主題の一部であると考えられる。
【0055】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載の実施形態から明らかであり、それを参照して解明される。
【0056】
図面において、同様の参照文字は、一般に、異なる図の全体を通して同じ部分を参照する。さらに、図面は必ずしも縮尺通りではなく、それよりむしろ、一般に、本発明の原理を示すことに重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】較正ユニットの一例を概略的に示す図である。
図2】較正方法の流れ図である。
図3図2の較正方法をより詳細に図式的に示す図である。
図4】再生アセンブリの一例を概略的に示す図である。
図5】較正ユニットの捕捉表面の例示的な再生を概略的に示す図である。
図6】例示的な櫛形導電性区域を概略的に示す図である。
図7】別の例示的な櫛形導電性区域を概略的に示す図である。
図8】再生アセンブリの別の例を概略的に示す図である。
図9】例示的な誘導電極の断面を概略的に示す図である。
図10】自己選択ペースでの60分間の活動中の発汗速度及びpH値を示す図である。
図11】再生アセンブリのさらなる例を概略的に示す図である。
図12】体液モニタリング装置の一例を概略的に示す図である。
図13】体液モニタリング装置のさらなる例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、較正ユニット10の一例を概略的に示す。較正ユニット10は、較正マトリクス12と再生アセンブリ20とを含む。
【0059】
較正マトリクス12は、対象者の体液サンプル中の既知の量の検体分子18と結合するために較正受容体16が上に固定されている捕捉表面14を有する。対象者の体液サンプルは、生体液とも呼ばれ、例えば、汗、皮脂、間質液、血液、尿、又は唾液を含む。結合した検体分子は、センサデバイスを較正するために使用可能な較正分子を表す。
【0060】
較正受容体16は、センサデバイスが感知することを意図されている特定の検体分子18に応じて選択される。関連する検体分子18には、限定はしないが、例えば900g/mol未満の分子量を有する小分子化合物、例えば、尿素、クレアチニン、コレステロール、トリグリセリド、ステロイドホルモン(例えば、コルチゾール)、グルコース、及びメラトニンなどが含まれる。
【0061】
較正受容体16は、ペプチド及びタンパク質などの他の分子タイプと結合するように選択される。タンパク質の場合、較正受容体16は、較正受容体16が適切な結合部位を含むタンパク質のエピトープを介して可逆的に結合する。較正受容体16は、例えば、IL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-6、TNFアルファ、IL-8及びTGFベータIL-6、システインプロテイナーゼなどのサイトカインと結合するように選択される。タンパク質結合は、例えば、捕捉表面14へのウィルスなどの比較的大きいバイオマーカーの結合及び検出を可能にする。これは、C型肝炎ウィルスなどの特定のウィルスが、汗腺中で複製し、汗で放出されるので、汗感知のためのセンサデバイスの較正に特に関連する。
【0062】
較正受容体16は、例えば、特定の標的分子に結合するオリゴヌクレオチド又はペプチド分子であるアプタマーを含む。抗体の場合のように、アプタマーは、検体分子18への必要な親和性を達成するのに、3次元形状に依拠する。
【0063】
他の例では、較正受容体16は、抗原又は抗原の一部でインプリントされている分子インプリントポリマーを含む。そのような材料は、必要な「鍵と鍵穴」構造を達成するように、抗原の3次元形状を補完する3次元形状を有する腔を含む。分子インプリントポリマーは、pH変化によりその構造を変化させる。1つの例は、pHに応じて薬物を結合又は放出することが知られているpH感受性パントプラゾールインプリントポリマーである。
【0064】
較正受容体16は、任意の適切なやり方で捕捉表面14に固定される。非限定的な例において、適切なメルカプタンリンカーが、金表面である捕捉表面14に較正受容体を繋ぎ止めるために使用され、リンカーは、硫黄-金相互作用を介して捕捉表面14にグラフトされ、較正受容体16は、リンカーにグラフトされる、例えば、共有結合される。較正受容体16を捕捉表面14に固定する非常に多くの代替手段が、当業者には直ちに明らかであろう。
【0065】
非限定的な例では、検体分子18は抗原を含み、較正受容体は抗体を含む。免疫グロブリン(IgG)は、例えば、捕捉表面14上に固定するための適切な抗体である。IgGは、ヒト循環系における最も一般的なタイプの抗体である。抗体は、広範囲の分子を捕捉するために使用される。抗体構造は、一般に、定常ドメイン(Fc)及び抗原結合ドメイン(Fab)を含むが、例えば、Fab部分のみ、又はFab部分の一部を含む他の形態が使用されてもよい。抗原は、例えば、タンパク質及び多糖類を含む。それ自体よく知られているように、抗体は、ウィルスなどの外来侵入種と戦うために生成されるタンパク質を含む。いわゆる「鍵と鍵穴」相互作用は、抗原を抗体に選択的に結合させる。抗体と抗原との間の結合の強さは、「親和性」と呼ばれる。親和性は、抗体の関連結合部位における抗原と抗体との間の引力と反発力の合計に対応する。引力は、少なくとも部分的に、結合部位における引力のある抗原-抗体相互作用の数によって決定される。抗体と抗原との間の水素結合、静電相互作用、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用などの非共有結合相互作用は、抗原の抗体への結合が可逆的であることを意味する。その結果、抗体の電荷及び/又は形状の調節により、引力のある抗原-抗体相互作用の数を減少させることができる。その上、反発力の合計は、例えばそれぞれ抗体及び抗原の正味の電荷変化に起因して、例えば増加する。それゆえに、抗原と抗体との間の「嵌合」が、そのような調節を行うことによって破壊され、その結果、抗原は抗体から放出される。
【0066】
再生アセンブリ20は、較正分子(すなわち、結合した検体分子)を捕捉表面14から水溶液(例えば、緩衝液又は生体液)に放出して、センサデバイスを較正するための較正流体を形成することによって、捕捉表面14を再生するように構成される。例示的な再生アセンブリが、以下で、特に図4から図11を参照して論じられる。
【0067】
任意選択で、水溶液は、対象者の体液サンプルである。言い換えれば、較正分子は、測定と同じマトリクス(すなわち、生体液)中にある。その結果、マトリクス効果、すなわち、生体液中の妨害成分による結合条件の変化も補正される。通常の較正液体は、緩衝液であり、定義によれば、生体液、すなわち、対象者の体液サンプルと同じ液体ではない。
【0068】
図2は、較正方法300の流れ図を示し、それは、図3Aから図3Dでより詳細に説明される。
【0069】
ステップ310、すなわち、ステップa)において、較正ユニット10は、対象者の体液サンプルを受け取る。較正ユニット10は、較正マトリクス12を含み、それは、較正受容体16が上に固定されている捕捉表面14を有する。
【0070】
ステップa)は、図3においてより詳細に示される。このステップは、センサデバイス60で使用されるものと同じ生体液での較正ユニット10の捕捉区域14の曝露(例えば、再循環による)を含むことに留意されたい。センサデバイス60は、センサ分子64が上に固定されている捕捉表面62を含む。センサ分子64は、検体分子と結合するための受容体、又は検体を生成物に変換しやすくするための酵素である。この例では、較正受容体16及びセンサ分子64は、異なる形状によって表された異なる受容体を含む。他のいくつかの例(図示せず)では、較正受容体16及びセンサ分子64は同じ受容体を含む。
【0071】
図2を参照すると、ステップ320、すなわちステップb)において、較正受容体16は、対象者の体液サンプル中の既知の量の検体分子18と結合する。結合した検体分子は、センサデバイスを較正するために使用可能な較正分子を表す。
【0072】
ステップb)は、図3においてより詳細に示される。このステップにおいて、十分な量の対象の分子(すなわち、検体分子18)が、較正受容体16によって捕捉される。対象の分子は、センサデバイス60によって検出されるものと同じ分子である。較正受容体16によって捕捉される検体分子18の総量は、ラングミュア式によって決められ、それは、以下で簡潔に説明される。
【0073】
検体と受容体との間の反応は、質量作用の法則によって記述され、ここで、成分Aは定数であり、成分Bは変数である。
【数1】
【0074】
成分Aと成分Bとが混合されると、それらは生成物ABを形成する。これは会合段階と呼ばれる。左へのシフトがあると、成分A及び成分Bが、生成物ABから形成され、それは解離と呼ばれる。Aの総濃度([A]、ここで、Tは合計を表す)は、遊離Aと、AB複合体中のAとに分けられる。複合体[AB]の濃度は、ラングミュア式によって決められ、
【数2】
ここで、konは、会合定数であり、対象の分子(B)の受容体(A)への結合を推進し、Koffは、解離定数であり、対象の分子(B)の受容体(A)からの放出を推進する。pHが変化すると、受容体は立体配座を変化させ、kon及びKoffが変化して、分子の高速の放出を可能にすることに留意されたい。インキュベーション時間とも呼ばれる反応時間(t)は、反応が平衡に達するのを可能にするように十分に長くすべきである。それゆえに、捕捉される分子の量は、反応が平衡状態にあると仮定して、特定の区域の受容体の所定の量(Aの濃度)と、分子のタイプ(会合及び解離)とを選ぶことによって制御される。
【0075】
事前定義された量の検体分子18が捕捉されると、式1に関する条件が満たされる場合に較正溶液として使用される準備ができている。これは、検体分子が捕捉区域に接触している時点である。しかしながら、式1は、液体が枯渇していない場合にのみ有効であり、したがって、液体は、補充される必要があり、捕捉表面上を流れる必要がある。
【0076】
図2を参照すると、ステップ330、すなわち、ステップc)において、再生アセンブリ20は、較正分子を捕捉表面14から水溶液中に放出して、センサデバイスを較正するための較正流体を形成することによって、捕捉表面14を再生する。
【0077】
ステップc)は、図3により詳細に示されており、図3は、再生アセンブリの起動の後の較正分子(すなわち、結合した検体分子)の放出を示す。この例では、再生アセンブリは、水の電気分解を引き起こすために活性化される電極を含む。水の電気分解に由来する局所的なpH変化は、結合した検体分子18(すなわち、較正分子)の放出を引き起こしている。この例は、図4から図7を参照してより詳細に説明される。再生アセンブリのさらなる例が、以下で、特に図8から図11を参照して説明される。
【0078】
較正分子の放出は、較正の必要性によってトリガされる。これにはいくつかの理由があり、以下が含まれるセンサデバイスの漸進的な化学的劣化、電子構成要素に関連するドリフト、より高い又はより低い温度及び湿度などの環境条件の変動、大気圧の変化、比較的高濃度の対象の標的検体への曝露、センサデバイスが硬い表面上に落下若しくは衝突するか、又は液体中に沈められる場合などの厳しい保管及び動作条件、並びにセンサごとの製造における変動。較正はまた、文脈上の理由及び/又は臨床的な理由によってトリガされる。例えば、測定値が通常の基準値から外れている場合、センサのドリフトが原因ではないことを確認するために較正をトリガする。
【0079】
図2を参照すると、ステップ340、すなわち、ステップd)において、放出された較正分子は、センサデバイス60に輸送される。
【0080】
ステップd)は、図3においてより詳細に示される。既知の体積の較正分子が、センサデバイス60によって測定される。センサデバイスから導出された値を使用して、センサデバイス60を較正する。
【0081】
例えば、較正自体は、既知の濃度の対象の分子(この場合、「捕捉区域」によってもたらされる)を信号応答と比較することによって行われる。感知された濃度x(t)(すなわち、時間tとともに変化する患者の体液のバイオマーカーの濃度)は、捕捉されたバイオマーカーが放出されると、既知の濃度であるCで補われる。それゆえに、
較正信号=x(t)+C (3)
であり、較正の瞬間のx(t)は、依然として、分子が放出される直前のバイオマーカーの濃度(すなわち、x(t-1))とほぼ等しい。それゆえに、信号へのCの寄与を測定することができる。
【0082】
一般に、較正は、較正曲線/範囲を使用して行われる。オプションとして、多数の捕捉区域を統合し、異なる時間間隔でそれらを解放することによって、較正曲線が、センサを較正するために作成される。較正分子の時間分離放出は、
(1)式2によって示されるような異なる濃度をもたらす異なる時間的間隔で再生ゾーンを活性化すること、
(2)放出の後に異なる濃度を提供する異なる量の受容体(すなわち、捕捉区域のサイズ)をもつ多数のゾーンを有すること、及び
(3)異なるpH値で放出する受容体を有すること
のうちの少なくとも1つによって行われる。これらの抗体タイプの混合物を組み込むことによって、同じ再生ゾーンを異なるpH条件で活性化することにより特定の濃度をトリガする。抗体はpH条件に関連する異なるKoffを有するように設計されることに留意されたい。
【0083】
以下において、再生アセンブリの3つの例がより詳細に説明される。
【0084】
再生アセンブリの第1の例は、水性媒体の電気分解を利用して捕捉表面を再生するという認識に基づく。この目的を達成するために、再生アセンブリは、水溶液、例えば、体液サンプル又は緩衝液を電気分解するための電気分解アセンブリを含む。電圧、例えば、電圧プロフィルは、表面上の複数の空間的に分離された導電性区域のペアの組合せを横切って供給され、それにより、各ペアの組合せのそれぞれの導電性区域は、アノード及びカソードになる。電圧は、水性媒体を電気分解するのに十分であり、その結果、水素イオンがアノードで生成され、ヒドロキシルイオンがカソードで生成される。したがって、アノードの近くのpHは低下し、カソードの近くのpHは上昇する。これらのpHの局所的変化は、受容体-検体複合体の破壊、例えば変性をもたらし、捕捉表面の少なくとも一部を再生する。
【0085】
例示的な電気分解アセンブリ20aが図4に示される。電気分解アセンブリ22aは、捕捉表面14上に空間的に分離された複数の導電性区域22を含む。導電性区域22は、間隔24だけ離間される。間隔24は、0.1mmから3mmの範囲であり、例えば、約1.5mmなどである。導電性区域22によりパターン化された捕捉表面14は、任意の適切な技法を使用して製造される。例えば、適切なパターン化法は、プリンテッドエレクトロニクス、薄膜技術、レーザアブレーションなどの分野で知られている。
【0086】
電気分解アセンブリ20aは、導電性区域22のうちの少なくとも2つを横切って電圧を供給するための電源26をさらに含み、それにより、導電性区域22のうちの少なくとも2つは、アノード28及びカソード30を構成する。電圧は、捕捉表面14で受け取られた水溶液に含まれる水を電気分解するのに十分なDC電圧である。電気分解アセンブリ20aを使用した捕捉表面14の再生は、図5を参照してより詳細に説明される。
【0087】
図5は、較正ユニット10の捕捉表面14の再生を概略的に示す。捕捉表面14は、較正受容体16のすべてが検体分子18と複合化されると飽和状態になる。結合した検体分子18は較正分子を表す。
【0088】
捕捉表面14を再生するプロセスは、図5において左から右に矢印32の方向に示される。導電性区域22は表面14に設けられ、導電性区域22は、電源26が導電性区域22を横切って電圧を供給する場合に電極28、30を構成する。このDC電圧は、サンプルが捕捉表面14に接触したとき、サンプルの水性媒体に含まれる水を電気分解するのに十分である。
【0089】
例えば、汗のサンプルの場合、水性媒体は、希釈塩化ナトリウム溶液に対応する。生理的塩化ナトリウム濃度は、汗中で約50mmol/lである(血漿中で140mmol/lを参照)。緩衝液で使用される典型的な塩化ナトリウム濃度は0.9重量%である。そのような希釈塩化ナトリウム溶液の電気分解は水の電気分解に近い。酸素ガスがアノード28で発生し、水素ガスがカソード30で発生する。より高い濃度の塩化ナトリウム溶液の電気分解では、それ自体よく知られているように、塩素ガスがアノード28で生成されることになる。形成されたガスの一部は、再吸収されるか、又はベントを使用してシステムから排除される。酸素ガスは、通常、別のドナーイオン(Na、Cl)が存在するか、又は塩化ナトリウム濃度が高い場合には発生しない。水素ガスは、汗によって吸収されるか、又はナノバブルに変換される。形成された気泡は、再吸収されるか、又は小さすぎて微小流体の流れを妨害しないので、センサの作用を妨害しない(特に、電気分解がセンサを再生するために使用されるので)、すなわち、バイオマーカー測定は、電気分解中に生成される少量のガスの発生が、水性媒体(汗)に再吸収/溶解されてから一定期間後に行われる。
【0090】
ネルンストによれば、水の電気分解は、標準条件、すなわち、標準温度(273.15K)の下で約1.23Vよりも高い電圧で行われ、標準的な水の電気分解は、過渡的な水素イオン(H)及びヒドロキシル(OH)イオンの濃度勾配圧力(100kPa、1bar)をもたらす。一実施形態では、電極28、30にかけられる電圧は、例えば、3Vから4.5Vの範囲にある。
【0091】
図5の中央区画に示されるように、水の電気分解により、過渡的な水素イオン(H)及びヒドロキシル(OH)イオンの濃度勾配圧力がアノード28とカソード30との間に形成されることになる。アノード28に近接する局所的酸性ゾーンは、結合した検体分子18、すなわち、較正分子を、酸性ゾーン内の較正受容体16から遊離させることになる。代替として又は追加として、カソード30に近接する局所的アルカリゾーンは、検体分子18、すなわち、較正分子を、アルカリゾーン内の較正受容体16から遊離させることになる。
【0092】
較正受容体16と、結合した検体分子18(すなわち、較正分子)との間の結合が、水の電気分解に由来するより酸性及び/又はよりアルカリ性のpHによって破壊されるかどうかは、例えば、結合部位の性質に依存する。抗体-抗原複合体の変性にとって好ましいpHは、例えば、pH2から3の範囲の酸性の範囲にあるが、変性はアルカリ性条件の下でも達成される。局所的なpH変化は、例えば、較正受容体18の立体配座変化を推進する。例えば、較正受容体18が抗体を含む場合、pHの局所的変化は、抗体タンパク質の二次構造又は三次構造のアンフォールディングをトリガする。
【0093】
捕捉表面14の再生中に望ましくなく高い検体18の濃度が局所的に蓄積されるリスクを低減するために、pHの緩やかな変化が、電圧を徐々に増加させることによって達成される。代替の例では、電圧は、比較的短いパルス又はバーストで印加され、それは、パルスが安全に実現されるならば、捕捉表面14の再生のための局所的pH変化を引き起こすのに好ましい。
【0094】
水の電気分解に由来する局所的なpH変化が、結合した検体分子18、すなわち、較正分子の較正受容体16からの放出を引き起こした後、較正受容体16は、図5の一番右側の区画に示されるように、捕捉表面14に付着したままである。水の電気分解に由来する局所的なpH変化の過渡的性質により、pHは、電解再生の前のpHに戻る。それにより、較正受容体の結合部位は、回復され、別の較正イベントでさらなる検体分子と結合するために完全に機能し続ける。
【0095】
電気分解中のガス(H、O、又はClなど)の形成は、十分な精度及び信頼性でのセンサデバイスの較正を妨げない。ガス、特にHは、水溶液に吸収される。或いは、ガス、特にHは、「ナノバブル」を形成し、それは、較正に影響しないか、又はごくわずかしか影響しない。吸収された気泡又はナノバブルは非常に小さいので較正ユニット内の微小流体の流れを妨害しない。
【0096】
その上、遅延を再生と後続の較正との間に採用して、較正の前に、少量のガスを溶解させることができる。代替として又は追加として、電気分解ガスは、ガス通気孔を介して、及び/又は較正ユニットのチャネル又は孔を介して放出される。非限定的な例では、そのようなガスは、較正ユニットから疎水性メッシュの開口を介して放出される。ガスが捕捉表面14から脱出した後、センサデバイスの較正へのそのようなガスの妨害は回避される。
【0097】
図6は、櫛形導電性区域22の一例を示す。図6は、捕捉表面14の平面図を示し、較正受容体16(図3には図示せず)は、捕捉表面14に対して垂直に向けられている。電源26が導電性区域22を横切ってDC電圧を供給すると、それぞれの導電性区域22の一方はアノード28になり、それぞれの導電性区域22の他方はカソード30になる。
【0098】
図7は、別の例による櫛形導電性区域22を示す。この場合、多数の櫛形部分が捕捉表面14に設けられる。図6及び図7に示される櫛状の櫛形電極28、30は、例えば数cmの程度の比較的大きい面積にわたって電圧を供給するのを支援するとともに、水の電気分解に由来する局所的なpH変化が、受容体-検体複合体の結合動態を乱すことによって捕捉表面14の再生を推進する捕捉表面14上の場所を提供する。
【0099】
同様の効果は、例えば、複数の同心のリング状部分として配置された導電性区域22を使用して達成される。
【0100】
上述の再生アセンブリの第1の例では、再生は、水分子をH及びOHに電気分解することによって達成される。これにより、pHが変化し、較正受容体の較正分子が放出される。
【0101】
再生アセンブリの第2の例は、較正ユニットを通る流体の流れに応じて電位が発生するという認識に基づく。較正ユニットの再生可能な捕捉表面の活性化は、「インキュベーション時間」に由来する制約が満たされた後(すなわち、式1に関する条件が満たされたとき)、内部プロセスを使用して行われる。この例では、微小流体システムを通る過渡的又は拍動的汗流波(移動イオン)は、液体摩擦電気又は電気化学電位を発生し、それを使用して、較正分子の放出をトリガする。言い換えれば、較正分子放出の受動的トリガとして使用される液体摩擦電気又は電気化学電位を発生させることが提案される。この文脈における「受動的」という用語は、較正ユニットが、捕捉表面を再生するために電圧を能動的に印加しないか、又はpHを能動的に変化させないことを意味する。むしろ、液体摩擦電気又は電気化学電位を発生するのは、微小流体システムを通る過渡的又は拍動的汗流波(移動イオン)である。
【0102】
この目的を達成するために、再生アセンブリは、流体が流路を通って流れるように構成された流路と、流路の周辺のまわりに円周方向に配置された誘導電極(又はアレイ)とを含む。誘導電極(又はアレイ)は、流路を通って流れる流体中の移動イオンにより、摩擦電気電位を発生させる。誘導電極によって発生される摩擦電気電位は、流路を通って流れる流体中の移動イオンの速度に対応する。より具体的には、流路を通って流れる流体中の移動イオンの速度及び濃度(すなわち、流速及び濃縮倍率)に対応する。流路を通って移動するイオンは、誘導電極と相互作用して、摩擦電気電位(電圧)を誘導し、それは、再生捕捉表面のための電流として直接使用される。代替として又は追加として、較正ユニットは、流体が流路を通って流れるように構成された流路と、流路の内側に配置された1つ又は複数のイオン選択電極とを含む。イオン選択電極は、流路を通って流れる流体中の移動イオンにより、電気化学電位を発生させる。イオン選択電極によって発生される電気化学電位は、流路を通って流れる流体中の(特定の)移動イオンの速度又は濃度に対応する。流路を通って移動するイオンは、イオン選択電極と相互作用して、電気化学電位(電圧)を誘導し、それは、再生捕捉表面のための電流として直接使用される。
【0103】
較正ユニットの電極を使用して、新しい流体が発生すると、微小流体システムを通る(最初は)過渡的又は拍動的な流体流/圧力波(移動イオン)が、液体摩擦電気又は電気化学電位(過渡信号)を発生する。生成された信号は、微小流体システムの流路のまわりに円周方向に配置された誘導電極、又は微小流体システムの流路の内側のイオン選択電極によって集められ、較正分子放出の受動的トリガのために使用される。
【0104】
図8は、再生アセンブリの第2の例による電極及び流路の図を示す。再生アセンブリ20bは、流路34と、流路34の外側に円周方向に配置された誘導電極、又は流路34の内側のイオン選択電極のいずれかである電極を含む電極アレンジメント36とを含む。ユーザの皮膚に由来する流体(例えば、皮膚によって排泄された汗、皮膚から引き出された間質液)は、流路34に流れ込む。流体は、水中でイオンを移動させると考えられ、イオンは、電極アレンジメントと相互作用して、電位を発生する。液体は、例えば、ナトリウムイオンNa、水酸化物イオンOH、塩化物イオンCl、及び/又は水素イオンHを含む。
【0105】
図9は、例示的な誘導電極の断面を示す。電極アレンジメント36は、第1の誘導電極36aと第2の誘導電極36bとを含み、流路34が、誘導電極と連携して設けられる。第1の誘導電極36a及び第2の誘導電極36bは、銅で形成される。流路34の断面が、図8に示され、それは、シリコーン、PTFEなどで形成される。流体(例えば、汗)は、第1の誘導電極36a及び第2の誘導電極36bにわたって供給され、流体は、移動イオンを含む。それにより、摩擦電気電位が、移動イオンによって発生される。「ウェイクアップ」信号は、信号が、最初に「プロセッサ」に行き、プロセッサが、再生のために異なる電源を使用するように信号を処理することを示唆する。
【0106】
代替として、液体摩擦電気又は電気化学電位は、再生アセンブリの起動をトリガするためのウェイクアップ信号として使用される。例えば、ウェイクアップ信号は、コントローラを起動し、再生アセンブリをウェイクアップさせるために、再生アセンブリの電源(例えば、図4の電源26)を制御するコントローラに供給される。摩擦電気電荷誘導電極を備えたウェイクアップシステムにおいて、電極対間の電圧差は、非常に大きい入力インピーダンス(例えば、200TΩ)を有する増幅器によって測定されるが、その理由は、摩擦電気信号が、一般に、高い最適出力インピーダンスを有し、高い最適出力インピーダンスが、電力変換エレクトロニクスを使用して適切なウェイクアップ電流に整合及び変換される必要があるからである。この信号は、一般に、交流信号(AC)であり、交流信号(AC)は、ウェイクアップエレクトロニクスによって利用される前に整流される必要がある。
【0107】
第2の例に関連する顕著な利点は、捕捉表面を再生するために較正ユニットの捕捉表面に電力を供給する必要がないことである。
【0108】
再生アセンブリの第3の例は、皮膚表面に排泄された流体液滴(例えば、汗、皮脂、及び間質液)の第1の画分のpHが、最初には、約2であり、それは、較正分子の放出を支援するのに十分な酸性であり、その後、流体速度が増加するにつれて、pHは、ほぼ中性のpH(すなわち、pH≒7)に達するまで徐々に上昇するという認識に基づく。
【0109】
例えば、汗サンプルの場合、図10は、自己選択ペースでの60分間の活動中の発汗速度及びpH値を示す(Coyle等、Proceedings of the 3d International ICST Conference on Pervasive Computing Technologies for Healthcare、4~9頁、ICST、2009年)。これは、汗腺管に沿ったイオンの再吸収フラックスと、発汗速度との間の逆関係に起因して生じる(Sonner等、Biomicrofluidics 9、031301 2015年)。それゆえに、ここで、活性汗腺から皮膚表面に出て来る汗滴などの流体液滴の第1の画分のみが、2のpHを有し、この第1の画分のみが較正分子を放出するために使用されることを強調することは重要である。汗の第1の画分が、半径30~50μmをもつ半球状液滴(V=2/3πr)で、0.2nl/分/腺の平均発汗速度で、及びバースト中1.2nl/分/腺の発汗速度で(汗腺は、汗を生成する30秒と汗を生成しない150秒の一般的なサイクルによるバースト式に働く)、cm当たり10個の活性腺により皮膚表面に出て来ると仮定する場合、利用可能なpH2をもつ汗の体積と、液滴形成に要する時間とを推定することが可能である。汗滴の体積(V)は、
【数3】
である。
【0110】
さらに、液滴形成(腺当たり)に要する時間tは、体積V及び発汗速度(Q)に関して、
【数4】
として表される。
【0111】
汗滴形成のこれらの時間は、妥当であり、実際に実現可能である。
【0112】
以下では、例えば、汗滴のための方法を利用して、電気機械的(例えば、エレクトロウェッティング)勾配又は化学的勾配によって、流体の液滴を較正捕捉表面に輸送することが提案される。皮膚表面に出て来る汗滴などの流体液滴の第1の画分は、較正分子を放出して、較正流体を形成するために使用される。
【0113】
図11は、第3の例による例示的な再生アセンブリ20cを断面図で概略的に示す。この例示的な再生アセンブリは、実際には、体液サンプルを較正ユニット及びセンサデバイスに供給するための流体収集アセンブリである。流体収集アセンブリは、特に、液滴離散化、例えば、汗滴離散化のために構成され、それゆえに、皮膚に出て来る汗の第1の画分(すなわち、1つ又は複数の液滴)が較正ユニットに輸送されることを可能にする。この第1の画分は、2のpHを有し、したがって、較正分子の放出を支援するのに十分な酸性である。その結果、較正が必要とされるとき、流体収集アセンブリは、皮膚表面に排泄された汗滴の第1の画分を収集するために使用され、それは、較正流体のための較正分子の放出を支援する。
【0114】
再生アセンブリ20cは、入口40を有するチャンバ38を含む。入口40は、皮膚42からの流体、例えば、汗などを受け取る。図11に示されるように、入口40は、皮膚42の表面に隣接して配される。図11には単一のチャンバ38が示されているが、これは、限定を意図するものではなく、他の例では、複数のチャンバ38が、再生アセンブリ42に含まれる。
【0115】
本明細書に記載のデバイス及び方法についての理解を容易にするために、汗が今後説明される。汗腺によって排泄された汗は、入口40を介してチャンバ38に入り充填する。図11に示されるように、再生アセンブリ20cは、皮膚42の表面に取り付けられるプレート44を含む。図示の例では、プレート44の下面が、皮膚42の表面と直接接触する。この場合、チャンバ38は、プレート44によって境界を定められた開口の形態をとる。プレート44は、皮膚に配することができる適切な材料、例えばポリマーで形成される。例えば、プレート44は、皮膚42の表面に共形の適応性を可能にするように少なくともある程度の可撓性を有する。入口40が皮膚42から汗を受け取ることができるならば、より剛性のプレート44も考えられる。
【0116】
対象者からの汗を収集するために、プレート44は、例えば、適切な生体適合性接着剤を使用して皮膚42の表面に接着されてもよい。代替として、プレート44は、プレート44を対象者の体に取り付けるための締結具、例えばストラップによって皮膚42の表面に押しつけて保持されてもよい。
【0117】
皮膚42からの汗を受け取るための入口40の直径は、比較的小さく、例えば200~2000μm、例えば300~1200μmなど、例えば約360μm又は約1130μmとなるように選択されることが好ましい。皮膚42の表面の汗腺出口の直径は、一般に、約60μm~120μmの範囲にある。比較的小さい入口40は、センサ信号の解釈を複雑にする、2つ以上の汗腺が同じ入口40内に排泄する可能性を低減するのを支援する。個々のチャンバ38内に受け取られる汗の量が限定されることを補償するために、再生アセンブリ20cは、例えば、複数のそのようなチャンバ38、例えば2個から50個のチャンバ38、例えば10個から40個のチャンバ38、例えば約25個のチャンバ38を含む。
【0118】
チャンバ38が汗で満たされると、汗滴46はチャンバ38の出口48からはみ出る。図11に示された例では、出口48はプレート44の上面によって境界を定められ、チャンバ38が汗で満たされると、半球状汗滴46が出口48の上に生じる。
【0119】
より一般的には、再生アセンブリ20cは、汗滴46の形成の速度が発汗速度によって決定され、一方、汗滴46の体積が流体輸送アセンブリによって決定されるように構成される。
【0120】
入口40及び出口48のそれぞれの面積は、発汗速度の範囲にわたって、チャンバ38の効率的な充填、及び汗滴46の形成を確実にするように選択される。いくつかの例では、入口40及び出口48は、この目的のために、選択された固定寸法を有する。代替として、再生アセンブリ20cは、汗滴46の形成に関連する寸法及び形状の少なくとも一部を変更することができるように構成可能である。
【0121】
好ましい例(図11に図示せず)では、チャンバ38は、10~15分以内に汗で満たされるように寸法を合わされる。チャンバ38の充填の後の半球状汗滴46の形成は、好ましくは、一般に、比較的遅い発汗速度、例えば、0.2nl/分/腺で10秒以内に行われる。
【0122】
出口48の直径は、例えば、汗滴の体積が均一で再現可能であるように汗滴サイズを制御するのを支援するために、10μmから100μm、例えば、15μmから60μmの範囲、例えば、約33μmなどである。出口48がそのような直径、例えば約33μmを有することによって、0.2nl/分/腺のような遅い発汗速度でさえ、数個の汗滴46が汗腺の単一の発汗バースト(典型的には30秒間続く)中に形成される。その結果、発汗速度を確実に推定するために、再生アセンブリ20cによって十分な汗滴46が発生され、較正ユニット10に輸送される。
【0123】
再生アセンブリ20cは、比較的均一なサイズの汗滴46の形成を可能にし、加えて、可変の汗滴46の体積も扱う。後者に関して、再生アセンブリ20cが汗滴46を輸送する較正ユニットは、汗滴46を数えることと、各汗滴46が較正ユニット10を通過するのに要する時間を決定することの両方を行うように構成される。この時間は、先験的に知られている移行速度を介して汗滴46の体積と線形に関連付けられる。
【0124】
図11に示された例示的な再生アセンブリ20cのパーツのスケールの指標として、チャンバ38、入口40、及び出口48の寸法は、例えば対象者の発汗速度に応じて選択される。チャンバ38の体積は、充填時間を短くするために最小にされる。これは、実際の汗排出と、汗滴46の感知/モニタリングとの間の最小遅延を保証することを支援する。例えば、チャンバ38の体積は、0.1~100nl、例えば0.5~50nlなど、例えば1~20nlの範囲にある。
【0125】
チャンバ38の体積は、チャンバ38を汗で充填するのに必要とされる時間を最小にするために様々なやり方で最小にされる。そのような変更は、例えば、チャンバ38の境界を定めるプレート44に対するものである。
【0126】
図11は、チャンバ38が入口40から出口48に向かってテーパになっている一例を示している。実例により、図11に示されたプレート44の長さ寸法は約500μmである。この例のテーパ状チャンバ38は、円錐形形状を有する、すなわち、1/3πh[R+Rr+r](h=50μm、R=360μm、r=33μm)の体積をもつ円錐台形を有する。0.2nl/分/腺の比較的低い発汗速度では、このテーパ状チャンバ38の充填時間は約10分であり、汗滴46の形成は約12秒を要する。対照的に、同じ高さ(50μm)及びベース(360μm)の寸法を有する図1に示される円筒形チャンバ38の充填は、約50分を要し、半球状汗滴46の形成時間は3時間を超える。
【0127】
この時点で、汗腺は、発汗バーストで排泄する傾向があり、各発汗バーストは、その後に、腺が排泄していない休止期間が続くことに留意されたい。発汗バースト期間中、発汗速度は、平均発汗速度よりも約6倍大きい。その理由は、180秒の時間窓において、一般には30秒の発汗バーストと、一般には150秒の休止期間があり、したがって、平均発汗速度と、発汗バースト中の発汗速度との間に6倍の違いがあるからである。截頭円錐形状を有するチャンバ38の上述の例示の例では、描かれた汗滴46を形成する時間は、汗腺の発汗バースト中に約12秒である。
【0128】
図11に示された例では、汗滴46の表面積の56%が、プレート44の上面に接触する。プレート44の上面は、流体輸送アセンブリに関連して以下で本明細書においてさらに論じるように、出口48からの汗滴46を放出し、汗滴46をセンサに輸送する目的で、トポロジー的勾配及び/又は化学的勾配などの勾配を備える。この時点であえて言うならば、そのようなトポロジー的勾配及び/又は化学的勾配の場合、出口48から汗滴46を放出するために必要とされる、プレート44の上面に接触する汗滴46の表面積は、化学的勾配及び/又はトポロジー的勾配の峻度と、汗滴46の体積とに依存する。
【0129】
代替として、チャンバ38は、同じ高さ及びベース直径の寸法を有する円筒形チャンバ(図示せず)とすることができる。
【0130】
さらに、再生アセンブリ22cは、出口48からはみ出る汗滴46の放出を可能にするように構成された流体輸送アセンブリを含む。したがって、流体輸送アセンブリは、例えば、出口48から汗滴46、例えば半球状汗滴46を分離する構造を含む。
【0131】
形成された汗滴46は、汗中の水分子間の分子間引力により、チャンバ38を充填した汗の本体に固定される。
【0132】
実際には、汗滴46は単一の接触角値を有するのではなく、むしろ、それぞれ、前進接触角及び後退接触角と呼ばれる最大接触角から最小接触角までの範囲を有する。前進接触角と後退接触角との間の差は、接触角ヒステリシスとして知られている。
【0133】
これらの力は、出口48からの汗滴46の移動に抵抗する。そのような力は、充填されたチャンバ38上の汗滴46の保持をもたらす。流体輸送アセンブリは、汗滴46を分離する(そして汗滴46をセンサに向かって下流に輸送する)ように、これらの力に打ち勝つことができる。流体輸送アセンブリは、チャンバ38からの汗滴46の明確な取り除きを可能にするように構成される。言い換えれば、汗滴46の分離は、曖昧でない離散的な汗滴46の明確さを確実にする。
【0134】
流体輸送アセンブリは、例えば、汗滴46を取り除く、すなわち、放出するために、受動的勾配及び/又は能動的勾配を備える。受動的勾配は、化学的勾配及び/又はトポロジー的勾配を含む。能動的勾配は、印加された圧力によって、及び/又はエレクトロウェッティング構成部の電界によって与えられる。
【0135】
汗滴46の分離又は放出は、いくつかの例では、汗滴46が特定の直径に達した瞬間に生じる。その直径において、例えば、汗滴46の少なくとも一部、好ましくは全体が経験する能動的勾配及び/又は受動的勾配は、汗滴46の接触角ヒステリシスに打ち勝つのに十分な大きさであり、その結果、汗滴46は出口48から放出される。
【0136】
図11は、汗滴46の分離がエレクトロウェッティング技法によって引き起こされる一例を概略的に示す。これは、汗滴46の接触角ヒステリシスに打ち勝つために力が能動的に加えられる「能動的」界面張力法の一例と見なされる。
【0137】
図11に示されるように、プレート44の上面は、一連の離散的なエレクトロウェッティングタイル50を備える。出口48から分離する、及び/又は水性汗滴を輸送する目的で、エレクトロウェッティングタイル50は、フルオロポリマーなどの疎水性材料で被覆された電極を含む。輸送アセンブリは、直列のエレクトロウェッティングタイル50の各々を順番に帯電及び放電させるための電界発生器(図示せず)を含む。エレクトロウェッティングタイル50の帯電は、エレクトロウェッティングタイル50の表面特性を疎水性から親水性に切り替え、それによって、汗滴46の接触角ヒステリシスに瞬時に打ち勝つ。汗滴46は、それに対応して、帯電したエレクトロウェッティングタイル50上に移行する。帯電したエレクトロウェッティングタイル50の後続の放電と、連続した次のエレクトロウェッティングタイル50の帯電とは、汗滴46を次のエレクトロウェッティングタイル50に移行させる、などである。このシーケンスは、汗滴46を方向53に較正ユニットの方に移動させる「エレクトロウェッティング波」と見なされる。
【0138】
図11に示された例では、出口48からの分離は、汗滴46が成長して、汗滴46が1対のエレクトロウェッティングタイル50に少なくとも部分的に重なる十分に大きい直径を取得したときに生じる。この場合に、エレクトロウェッティング波がエレクトロウェッティングタイル50に沿って通過すると、対のエレクトロウェッティングタイル50にまたがる汗滴46は、それに応じて、出口48から取り除かれる。この例では、汗滴46は、汗滴46の必要な直径への到達からエレクトロウェッティング波の到着までの期間に、程度の差はあるが、成長し続けるので、汗滴46は、すべてが均一のサイズ又は体積であるとは限らない。この点で、汗滴のサイズは、エレクトロウェッティング波の周波数によって決定される。
【0139】
代替の例(図示せず)では、流体輸送アセンブリは、出口48から汗滴46を放出するために「受動的」勾配を利用する。この文脈における「受動的」という用語は、一般論として、流体輸送アセンブリが、汗滴46の接触角ヒステリシスに打ち勝つために力を能動的に加えないことを意味する。
【0140】
例えば(図示せず)、プレート44の上面は、出口48からの汗滴46の分離を可能にする化学的勾配及び/又はトポロジー的勾配を備える。トポロジー的勾配は、プレート44の上面が傾斜していることによって設けられ、その結果、再生アセンブリ20cが使用のために調整されると、汗滴46の直径にわたる傾斜の勾配は、接触角ヒステリシスに打ち勝つように十分な大きさになる。化学的勾配は、表面が親水性部分と疎水性部分とを有することによって与えられ、それらの部分は、表面に沿った濡れ性勾配を与えるように構成される。例えば、疎水性CH 部分(皮膚106の方にある)及び親水性OH部分(センサの方にある)により機能化された微小流体チャネルを使用して、化学的勾配を作り出す(Morgenthaler等、Langmuir、2003、19(25)10459~10462頁)。
【0141】
化学的勾配は、例えば、濡れ性勾配が表面に沿って実質的に連続的に変化するように分子レベルの親水性/疎水性ドメインを備える。そのような化学的勾配は、例えば、グラフトポリマー鎖がプレート44の表面を機能的にすることによって設けられる。代替として又は追加として、μm寸法の親水性/疎水性ドメインが、ステップ状濡れ性勾配を提供するように表面に設けられる。好ましくは、ドメインは、センサの方向において表面の長さにわたって分布が緩やかに変化するように配置される。
【0142】
そのような受動的勾配、例えば、化学的勾配及び/又はトポロジー的勾配が汗滴46の分離のために利用される場合、汗滴46、例えば半球状汗滴46が、特定のサイズ達すると、分離が生じる汗滴46の直径が、その直径にわたる勾配が接触角ヒステリシスに打ち勝つように、十分に大きくなると、汗滴46は、出口48から分離するようになる。この意味で、そのような勾配により、センサに輸送される汗滴46の各々は、互いに対して同様のサイズ/体積を有することになる。汗滴46が分離された後、粘性抵抗は、さらに、表面エネルギー勾配によって作り出される駆動力により、汗滴46の動きを減速させる役割を果たす。
【0143】
図11に示された例では、流体輸送アセンブリは、さらなるプレート52を含み、それは、チャンバ38の境界を定めるプレート44から分離され、それと向かい合う。さらなるプレート52は、汗滴46の体積に対して制御を行うことを可能にする。これは、例えば、さらなるプレート52が定義された距離54だけプレート44から隔てられることによって達成される。汗滴46は、さらなるプレート52に接触するまでサイズが増加する。実際には、汗滴46がさらなるプレート52に接触すると、汗滴46は、さらなるプレート52に「飛び移る」ことによって分離されるようになる。これは、出口48から汗滴46を分離するための界面張力法のさらなる例と見なされる。
【0144】
この例では、較正ユニット10は、較正ユニット10の捕捉表面14が、較正分子を表す既知の量の検体分子18を捕捉するように、例えば汗滴で事前装填される。皮膚表面に出て来る汗滴の第1の画分は、汗滴の第1の画分のpHが約2であるので、分子を放出して、較正流体を形成するために使用される。較正流体は、センサデバイス60を較正するためにセンサデバイス60に送り出される。
【0145】
第3の例に関連する顕著な利点は、捕捉表面を再生するために較正ユニットの捕捉表面に電力を供給する必要がないことである。
【0146】
図12は、対象者の体液サンプル内の検体を検出するための体液モニタリング装置200の一例を概略的に示す。いくつかの例では、体液モニタリング装置200は、ユーザの皮膚に由来する体液(例えば汗、皮脂、及び間質液)を検出し、ユーザ、特に、ユーザの体液及び/又はユーザの体液の特性の連続的又は半連続的モニタリングに関連する。いくつかの例では、体液モニタリング装置200は、血液、尿、及び唾液などの他の体液を検出することができる。体液モニタリング装置の例には、例えば、ウェアラブル、パッチ、インサータブル、インプランタブルが含まれる。例えば、体液モニタリング装置200は、汗を測定する皮膚へのウェアラブルパッチ、間質液又は血液中へのインプランタブルデバイス、唾液を測定する歯ブラシ、乳液を測定する哺乳瓶、乳液を測定する搾乳器、尿を測定するトイレットセンサ、体外での血液測定、などである。
【0147】
体液モニタリング装置200は、上述のいずれかの例による較正ユニット10を含む。
【0148】
体液モニタリング装置200は、体液サンプル中の検体を検出するためにセンサ分子64が上に固定されている捕捉表面62を有するセンサユニット60をさらに含む。いくつかの例では、センサ分子64は、検体分子を結合するための受容体である。いくつかの例では、センサ分子は、例えば、検体の生成物への変換を促進するための酵素である。変換により、測定可能信号が生ずる。例示的なセンサユニットが図3に示される。センサユニット60は、少なくとも較正イベントにおいて較正ユニット10と流体連通する。
【0149】
体液モニタリング装置200は、体液サンプルを較正ユニット10及びセンサユニット60に供給するための流体収集アセンブリ66をさらに含む。
【0150】
この例では、較正ユニット10及びセンサユニット60は、同じ輸送チャネル68に配置される。較正分子は、較正ユニット10の捕捉区域に結合される。結合した較正分子は、体液モニタリングの間十分な精度及び信頼性でのセンサユニット60の検出を妨げない。較正分子の放出は、較正の必要性によってトリガされる。これは、前回の較正からの時間(すなわち、ドリフト)、異常な測定値、及び/又は背景信号の増加によるものである。次いで、放出された較正分子は、センサユニット60に輸送され、センサユニット60は、既知の体積中の較正分子を測定する。センサユニット60から導出された値を使用して、センサユニット60を較正する。
【0151】
この例では、較正ユニット10の捕捉表面がセンサユニット60と同じ輸送チャネル内にあるので、較正受容体の安定性は、生体液との接触によっても影響される。しかしながら、電気化学センサの場合、センサユニット上の酵素と較正ユニット上の抗体との間の分解度(degradation degree)が異なる。それによって、抗体の安定性は、はるかに安定であることが証明されている。それゆえに、ウェアラブル/パッチの寿命を通じて、較正分子を捕捉して一定の量の較正分子を供給する能力が提供される。加えて、ファウリング機構は、再生プロセスで使用されるものと同じ溶出プロセスによって抑制される。これにより、捕捉表面によって捕捉及び放出される安定した量の較正分子が保証される。
【0152】
図13は、体液モニタリング装置200の別の例を概略的に示す。
【0153】
この例では、体液モニタリング装置200は、2つの輸送チャネル68a及び68bを含む。較正ユニット10は、輸送チャネル68bの内部に配置され、一方、センサデバイスは、輸送チャネル68bに配置される。バルブ構成部70は、2つの輸送チャネル間の流体の流れを制御するように構成される。
【0154】
この例は、長期間の間、生体液内の較正ユニット10の捕捉区域の滞留時間を短縮することから利益を得るように設計される。特に、較正ユニット10は、バルブ構成部70が流体を輸送チャネル68bに輸送することを可能にするように設定されたときのみ負荷をかけられる。十分な負荷時間の後、較正ユニット10の捕捉表面は、較正ユニット10の捕捉表面に結合した較正分子が劣化しにくいようにキャピラリポンプ及び蒸発器構成部72によって乾燥される。較正が必要とされるとき、バルブ構成部及び再生アセンブリは、較正分子を放出し、それをセンサデバイス60に輸送するように構成される。
【0155】
本明細書で定義及び使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれた本明細書における定義、及び/又は定義される用語の普通の意味を管理するように理解されるべきである。
【0156】
本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される不定冠詞は、そうでないことが明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0157】
本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」により列挙された複数の要素は、同じように、すなわち、「1つ又は複数」のそのように結合された要素と解釈されるべきである。具体的に識別された要素に関連するかしないかにかかわらず、「及び/又は」の節によって具体的に識別された要素以外の他の要素がオプションとして存在してもよい。
【0158】
本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される「又は」は、上述で定義された「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区別する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的である、すなわち、いくつかの要素又はリストの要素のうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上をさらに含む、及びオプションとしてリストに列挙されていない追加の項目を含むと解釈されるべきである。一般に、本明細書で使用される「又は」という用語は、「いずれか」又は「のうちの1つ」などの排他性の用語が先行する場合にのみ排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すと解釈されるべきである。
【0159】
本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用されるとき、1つ又は複数の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト中の要素のうちの任意の1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙されているありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト中の要素の任意の組合せを排除しないことを理解すべきである。この定義はまた、要素が、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に識別される要素以外の要素が、具体的に識別される要素に関連するかしないかにかかわらず、オプションとして存在してもよいことを許容する。
【0160】
特許請求の範囲並びに上述の明細書において、「含む、備える」、「含む」、「有する」、「含有する」などのすべての移行句は、オープンエンドである、すなわち、含むが限定しないことを意味すると理解されるべきである。
【0161】
本発明の別の例示的な実施形態では、前出の実施形態のうちの1つによる方法の方法ステップを適切なシステムで実行するように構成されることを特徴とするコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0162】
それゆえに、コンピュータプログラム要素は、本発明の一実施形態の一部でもあるコンピュータユニットに格納される。このコンピューティングユニットは、上述の方法のステップを実行するか、又はその実行を誘導するように構成される。その上、それは、上述の装置の構成要素を操作するように構成される。コンピューティングユニットは、自動的に動作するように、及び/又はユーザの命令を実行するように構成される。コンピュータプログラムは、データプロセッサのワーキングメモリにロードされる。したがって、データプロセッサは、本発明の方法を実行するように装備される。
【0163】
本発明のこの例示的な実施形態は、最初から本発明を使用するコンピュータプログラムと、更新によって、既存プログラムを、本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムとの両方をカバーする。
【0164】
さらに続けて、コンピュータプログラム要素は、上述の方法の例示的な実施形態の手順を満たすためにすべての必要なステップを提供することができる。
【0165】
本発明のさらなる例示的な実施形態によれば、CD-ROMなどのコンピュータ可読媒体が提示され、コンピュータ可読媒体は、そこに格納されたコンピュータプログラム要素を有し、コンピュータプログラム要素は、前節に記載されている。
【0166】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に供給されるか又は他のハードウェアの一部として供給される光学ストレージ媒体又は固体媒体などの好適な媒体に格納及び/又は分配されてもよいが、さらに、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムなどを介して他の形態で分配されてもよい。
【0167】
しかしながら、コンピュータプログラムは、さらに、ワールドワイドウェブのようなネットワークを介して提示されてもよく、そのようなネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされてもよい。本発明のさらなる例示的な実施形態によれば、コンピュータプログラム要素をダウンロードできるようにする媒体が提供され、コンピュータプログラム要素は、本発明の前述の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成される。
【0168】
発明のいくつかの実施形態が本明細書に記載及び図示されたが、当業者は、機能を実行するための、及び/又は本明細書に記載の結果及び/又は利点のうちの1つ又は複数を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に思い描き、そのような変更及び/又は変形の各々は、本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が、例示的であるように意図されていること、及び実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される1つ又は複数の特定の応用に依存することを容易に認識するであろう。当業者は、本明細書に記載の特定の発明の実施形態の多くの均等物を認識するか、又はせいぜい日常の実験を使用して確認することができる。それゆえに、前述の実施形態は、単に例として提示されていること、並びに添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、発明の実施形態は、具体的に記載及び特許請求されるものとは別のやり方で実践することができることを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載の個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が互いに矛盾しない場合、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13