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特許7504239固体電解質材料を含む全固体電池を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】固体電解質材料を含む全固体電池を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240614BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240614BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240614BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240614BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/1395
H01M10/0562
H01M10/052
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022581623
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2021008752
(87)【国際公開番号】W WO2022010292
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0084326
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヘ-リ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】フェ-ジン・ハ
(72)【発明者】
【氏名】ヒェア-ウン・ハン
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0157648(US,A1)
【文献】特開2014-216131(JP,A)
【文献】特開2015-156297(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067107(WO,A1)
【文献】特開2011-142007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1)正極と第1固体電解質膜とを積層し加圧して正極部材を収得する第1加圧工程と、
S2)第2固体電解質膜を用意し、前記第2固体電解質膜のみを加圧する第2加圧工程と、
S3)前記正極部材、前記加圧された第2固体電解質膜、及び負極を順次に積層し加圧して電極組立体を収得する第3加圧工程と、
を含む、全固体電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1加圧工程が、15℃~30℃の温度条件及び300MPa~600MPaの圧力条件で行われる、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項3】
前記正極部材における第1固体電解質膜の気孔度が45vol%~60vol%である、請求項1または2に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項4】
前記第2加圧工程が、15℃~30℃の温度条件及び300MPa~600MPaの圧力条件で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項5】
前記第3加圧工程が、第1加圧工程時及び第2加圧工程時に印加される圧力よりも低い圧力下で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項6】
前記第3加圧工程が、100MPa~300MPaの圧力条件で行われる、請求項5に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項7】
前記負極は、集電体及び前記集電体の表面に形成された電極活物質層を含み、前記電極活物質層は、リチウム金属を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項8】
前記第1固体電解質膜及び第2固体電解質膜は、固体電解質材料を含み、前記固体電解質材料は、硫化物系固体電解質材料を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項9】
前記第3加圧工程は、第1加圧工程時及び第2加圧工程時に印加される圧力よりも低い圧力下で行われ、
前記負極は、負極活物質としてリチウム金属を含み、
前記第1固体電解質膜及び第2固体電解質膜は固体電解質材料を含み、前記固体電解質材料は硫化物系固体電解質材料を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項10】
前記第1加圧工程時に正極の周縁に保護部材を囲んで加圧して固体電解質膜の損傷を防止する、請求項1から9のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月8日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0084326号に基づく優先権を主張する。本発明は、固体電解質材料を含む全固体電池及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、全固体電池は、負極、固体電解質膜及び正極を順次に積層した後、加圧して層間結着させる方法で製造される。全固体電池は、液体電解質を使用しないため、電極素子同士が離隔せず密接に結着して、界面抵抗が増加しないことが重要である。また、加圧工程によって気孔度を低減させてイオン伝導度を改善することが重要である。
【0003】
図1は、従来の全固体電池を製造する方法を概略的に示した図である。図1を参照すると、正極集電体2の一面に形成された正極活物質層1を含む正極、固体電解質膜5、及び負極集電体3の一面に形成された負極活物質層4を含む負極を順次に積層し、これらを一緒に加圧して電極組立体100を収得する。全固体電池は液体電解質を使用しないので、電極活物質とイオン伝導体である固体電解質材料とを密着させ、電気化学反応が起きない空いた空間(気孔)を最小化するため、強い圧力が印加されることがある。しかし、負極材料としてリチウム金属を使用し、固体電解質膜が硫化物系固体電解質材料を含む場合、加圧工程でリチウム金属と硫化物系固体電解質材料とが反応して短絡を起こすおそれがあり、それにより電池の製造収率が低下するという問題がある。一方、負極と固体電解質膜との反応を制御しようとして印加される圧力を下げる場合は、固体電解質膜の気孔度を所望の水準まで低減し難いという問題がある。
【0004】
そこで、リチウム金属と硫化物系固体電解質材料とが反応せず、固体電解質膜が低い気孔度を維持でき、電池の生産収率が高い新たな製造工程が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、リチウム金属と固体電解質層との反応を防止して電池の製造収率を高めた全固体電池を製造する方法を提供することを目的とする。本発明の他の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段またはその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、全固体電池の製造方法に関し、該方法は、S1)正極と第1固体電解質膜とを積層し加圧して正極部材を収得する第1加圧工程と、S2)第2固体電解質膜を用意し、前記第2固体電解質膜を加圧する第2加圧工程と、S3)前記正極部材、前記加圧された第2固体電解質膜、及び負極を順次に積層し加圧して電極組立体を収得する第3加圧工程と、を含む。
【0007】
本発明の第2態様によれば、第1態様において、前記第1加圧工程は15℃~30℃の温度条件及び300MPa~600MPaの圧力条件で行われる。
【0008】
本発明の第3態様によれば、第1または第2態様において、前記正極部材における第1固体電解質膜の気孔度は45vol%~60vol%である。
【0009】
本発明の第4態様によれば、第1~第3態様のうちいずれか一つにおいて、前記第2加圧工程は15℃~30℃の温度条件及び300MPa~600MPaの圧力条件で行われる。
【0010】
本発明の第5態様によれば、第1~第4態様のうちいずれか一つにおいて、前記第3加圧工程は第1加圧工程時及び第2加圧工程時に印加される圧力よりも低い圧力下で行われる。
【0011】
本発明の第6態様によれば、第5態様において、前記第3加圧工程は100MPa~300MPaの圧力条件で行われる。
【0012】
本発明の第7態様によれば、第1~第6態様のうちいずれか一つにおいて、前記負極は、集電体及び前記集電体の表面に形成された電極活物質層を含み、前記電極活物質層はリチウム金属を含む。
【0013】
本発明の第8態様によれば、第1~第7態様のうちいずれか一つにおいて、前記第1固体電解質膜及び第2固体電解質膜は固体電解質材料を含み、前記固体電解質材料は硫化物系固体電解質材料を含む。
【0014】
本発明の第9態様によれば、第1~第8態様のうちいずれか一つにおいて、前記第3加圧工程は第1加圧工程時及び第2加圧工程時に印加される圧力よりも低い圧力下で行われ、前記負極は負極活物質としてリチウム金属を含み、前記第1固体電解質膜及び第2固体電解質膜は固体電解質材料を含み、前記固体電解質材料は硫化物系固体電解質材料を含む。
【0015】
本発明の第10態様によれば、第1~第9態様のうちいずれか一つにおいて、前記第1加圧工程時に正極の周縁に保護部材を囲んで加圧して固体電解質膜の損傷を防止する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様による全固体電池の製造方法は、電極素子同士の結着のための加圧工程時に負極と固体電解質膜との反応が制御される。特に、負極としてリチウム金属を含み、固体電解質膜として硫化物系固体電解質材料を含む場合、リチウム金属と硫化物系固体電解質材料との反応を制御することができる。また、本発明の全固体電池の製造方法によって製造された全固体電池は、正極及び固体電解質膜の気孔度が低く、固体電解質膜とリチウム金属である負極とが反応しないため短絡発生が防止され、電池の製造収率が改善される効果がある。
【0017】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の全固体電池を製造する方法を概略的に示した図である。
図2a】本発明による全固体電池を製造する方法を概略的に示した図である。
図2b】本発明による全固体電池を製造する方法を概略的に示した図である。
図2c】本発明による全固体電池を製造する方法を概略的に示した図である。
図3】第1加圧時に正極の周縁部分に保護部材を配置した様子を示した図である。
図4】実施例1の電池の充放電プロファイルを示した図である。
図5】比較例1の電池の充放電プロファイルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。これに先だち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0020】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0021】
また、本明細書の全体で使われる用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0022】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」との記載は「A、Bまたはこれら全て」を意味する。
【0023】
本発明は、固体電解質を電解質材料として使用する全固体電池の製造方法に関する。本発明の一実施形態において、前記全固体電池は、リチウムイオン二次電池であり得る。
【0024】
図2a~図2cは、本発明の一実施形態による全固体電池の製造方法を概略的に示した図である。以下、これら図面を参照して本発明の全固体電池を製造する方法を詳しく説明する。
【0025】
まず、正極、第1固体電解質膜、第2固体電解質膜、及び負極を用意する。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記第1固体電解質膜及び第2固体電解質膜は、全固体電池において負極と正極との間に配置されるものであって、負極と正極とを電気的に絶縁させると同時に、負極と正極とのイオン伝達経路として提供されるものである。それぞれの固体電解質膜は、固体電解質材料を含むシート形態で設けられ得る。必要に応じて、前記固体電解質膜は、膜の形態を安定的に維持するため、バインダー樹脂をさらに含んでもよい。
【0027】
前記固体電解質材料は、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料及び高分子系固体電解質材料のうち選択された1種以上を含み得る。本発明の一実施形態によれば、前記第1固体電解質膜及び第2固体電解質膜は望ましくは硫化物系固体電解質材料を含み得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記第1固体電解質膜及び第2固体電解質膜は、固体電解質材料として硫化物系固体電解質材料のみを含み得る。
【0028】
本発明において、前記固体電解質膜の製造は、固体電解質材料を含むシート形態で用意できれば、方法が特に限定されない。例えば、前記固体電解質膜は、固体電解質材料を溶媒に投入して電解質膜製造用スラリーを用意した後、これを離型フィルムに塗布して乾燥する方式で製造し得る。前記離型フィルムは、後述する段階で正極と固体電解質膜とを積層する前に、固体電解質膜から除去される。
【0029】
本発明において、前記第1固体電解質膜と第2固体電解質膜とは、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記固体電解質膜を製造するとき、前記溶媒は非極性溶媒であり得る。前記硫化物系固体電解質成分は、極性溶媒と接触すると、イオン伝導性が低下するなどの物性劣化が引き起こされるおそれがある。そこで、本発明では電池製造時の溶媒として非極性溶媒を含み得る。前記非極性溶媒は、極性度(polarity index)が0~3であり、及び/または、誘電定数が5未満であるものを含み得る。このように非極性溶媒を使用することで、極性溶媒の使用によって硫化物系固体電解質のイオン伝導度が低下することを防止することができる。このような非極性溶媒の非制限的な例としては、ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、アニソール、ヘプタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、酪酸ブチルなどが挙げられ、前記溶媒はこれらから選択された1種または2種以上の混合物を含み得る。
【0031】
前記負極は、負極集電体30、及び前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層40を含む。前記負極活物質層は、負極活物質としてリチウム金属を含み得る。前記負極活物質層は、集電体の表面にリチウム金属薄膜が積層された形態であり得る。または、リチウム金属が集電体の表面に電着されて形成されたものであっても良く、化学的や物理的気相蒸着方法によって形成されたものであってもよい。
【0032】
前記正極は、正極集電体20、及び前記集電体の表面に形成された正極活物質層10を含む。前記活物質層は、複数の電極活物質粒子及び固体電解質材料を含み得る。本発明の一実施形態において、前記正極は、必要に応じて導電材及びバインダー樹脂のうち一つ以上をさらに含み得る。また、前記正極は、電気化学的特性の補完又は改善を目的として多様な添加剤をさらに含み得る。本発明において、前記正極の製造は、正極活物質及び固体電解質を含むシート形態で用意できれば、方法が特に限定されない。例えば、前記正極は、正極活物質及び固体電解質材料を溶媒に投入して正極製造用スラリーを用意した後、これを集電体に塗布して乾燥する方式で製造し得る。
【0033】
前記正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものであれば、特定の成分に限定されない。その非制限的な例としては、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn、LiMnOなど)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(xは0~0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-x(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)またはLiMnMO(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOのうち1種または2種以上の混合物が挙げられる。本発明において、前記正極は、固体電解質材料として高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうち一つ以上を含み得る。
【0034】
次いで、正極と第1固体電解質膜50aとを積層し、加圧工程(第1加圧工程)を行って正極部材を用意する。前記正極は、正極集電体20及び前記集電体の表面に形成された正極活物質層10を含む。前記正極部材は、正極と第1固体電解質膜とが加圧によって密着及び/または結着した結果物である。前記積層の際、第1固体電解質膜は、前記正極の正極活物質層と面接するように積層される。前記第1加圧工程は常温条件で行われ得る。本発明において、「常温」とは、15℃~30℃の範囲内で所定範囲に制御される温度を意味する。例えば、前記常温条件は18℃~25℃範囲であり得る。前記加圧時に印加される圧力は、約300MPa~600MPaに制御され得る。本発明の一実施形態において、正極及び第1固体電解質膜の気孔度を下げるという面で、前記加圧は上記の範囲内で、望ましくは約450MPa以上の圧力を維持し得る。例えば、前記圧力は約450MPa~550MPa内に調節され得る。一方、加圧は1分~30分間行われ得る。一方、前記第1加圧工程後に収得される正極及び第1固体電解質膜の気孔度は、それぞれ45~60vol%の水準を維持することが望ましい。しかし、前記圧力や加圧時間は、特定の範囲に限定されず、正極の厚さ及び/または固体電解質膜の厚さ、所望の気孔度水準を考慮して適切に調節可能である。
【0035】
また、第2固体電解質膜50bに対して加圧工程(第2加圧工程)を行う。
【0036】
前記第2加圧工程は、常温条件(15℃~30℃)で行われ得る。前記加圧時に印加される圧力は、約300MPa~600MPaに制御され得る。本発明の一実施形態において、第2固体電解質膜の気孔度を下げるという面で、前記加圧は上記の範囲内で、望ましくは約450MPa以上の圧力を維持し得る。例えば、前記加圧は約450MPa~550MPa内に調節され得る。一方、加圧は1分~30分間行われ得る。一方、前記第2加圧工程後に収得される第2固体電解質膜の気孔度は、45~60vol%の水準を維持することが望ましい。しかし、前記圧力や加圧時間は、特定の範囲に限定されず、第2固体電解質膜の厚さや所望の気孔度水準を考慮して適切に調節可能である。
【0037】
次いで、正極部材及び負極を順次に積層し、加圧工程(第3加圧工程)を行って電極組立体200を収得する。前記負極は、負極集電体30及び前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層40を含む。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記第3加圧工程時に印加される圧力は、第1加圧工程時及び第2加圧工程時に印加される圧力よりも低く調節される。前記第3加圧工程において、第1固体電解質膜50aと第2固体電解質膜50bとが互いに結合されて単一の固体電解質膜50が形成される。すなわち、前記第1固体電解質膜と第2固体電解質膜とは、相互に面接する境界部分が結合によって混合されて境界が不明になるか、又は、境界が完全に無くなって単一の固体電解質膜50を形成するようになる。
【0039】
前記第3加圧工程は、常温条件(15℃~30℃)で行われ得る。前記加圧時に印加される圧力は、約100MPa~300MPaに制御されるが、第2加圧工程時に印加された圧力未満に制御される。一方、前記第3加圧工程は、1分~5分間行われ得る。一方、前記第3加圧工程後に収得される電極組立体において、第1固体電解質膜と第2固体電解質膜とが結着して形成された単一の固体電解質膜の気孔度は1~10vol%である。また、収得された電極組立体のうち正極の気孔度は、1~20vol%の水準を維持することが望ましい。
【0040】
一方、本発明において、前記気孔度は、測定対象物の真密度及び見掛密度の関係式((1-真密度)/(見掛密度))、重量、及び厚さを用いて測定し得る。
【0041】
このように収得された電極組立体は、固体電解質膜に対して2回の加圧工程が行われるため、気孔度を下げることができ、イオン伝導度を改善することができる。望ましくは、前記固体電解質膜の気孔度は5vol%以下に調節され得る。また、固体電解質膜と負極とは第3加圧工程によって結着されるが、このとき、第1及び第2加圧工程で印加される圧力に比べて低い圧力が印加される。このように低い圧力条件範囲でラミネーション工程が行われるため、負極と固体電解質膜との反応が抑制できる。
【0042】
本発明において、前記加圧工程は、正極と固体電解質膜とを結着し、適切な気孔度を確保可能な方法であれば、制限なく適用し得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記加圧は、ロールプレス、圧着プレス、冷間等方圧加工法(CIP、Cold Isotatic Pressing)など公知の加圧方法のうち適切なものを選択して適用し得、特にいずれかの方法に限定されることはない。
【0043】
一方、本発明の一実施形態において、前記第1加圧工程時に正極の周縁に保護部材を配置し得る。通常、固体電解質膜は、正極と負極とを電気的に絶縁させ、正極と負極との短絡を防止するため、電極の面積よりも広い面積を有するように設けられる。また、電極と固体電解質膜とを積層するとき、正極及び負極は固体電解質膜の内側に配置される。このように正極の面積が固体電解質膜の面積よりも小さいため、加圧工程時に正極のエッジによって固体電解質膜の表面が損傷されるおそれがある。そこで、正極の周縁の全部または少なくとも一部に、正極と固体電解質膜との面積差を相殺可能な保護部材を配置することで、加圧時の固体電解質膜の損傷を防止することができる。一方、本発明の具体的な一実施形態において、前記保護部材は加圧工程後に除去され得る。
【0044】
図3には、正極と固体電解質膜との面積差が発生した部分に保護部材60が配置された状態が示されている。前記保護部材を配置する場合、保護部材の側面部と正極の側面部とは、互いに離隔せず、当接するように配置され得る。また、前記保護部材の外郭寸法を固体電解質膜と同一にするか又は固体電解質膜よりも大きくすることで、正極との面積差によって露出した固体電解質膜の表面が前記保護部材で全部覆われるようにすることがより望ましい。すなわち、保護部材の外郭周縁やエッジによって固体電解質膜の表面が押し付けられて変形されないように、保護部材が配置されることが望ましい。また、前記保護部材は、正極と同じ高さを有することが望ましい。このように保護部材が正極と同じ高さを有すると、加圧時に保護部材及び正極を通じて固体電解質膜へと膜全体に対して均一な圧力が加えられることになる。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記保護部材は、加圧時に固体電解質膜を損傷させず、加圧後に正極及び固体電解質膜の損傷なく除去可能なものであれば、材料的な面で特に限定されることはない。例えば、前記保護部材は、絶縁性の高分子樹脂を含み得る。一実施形態において、前記絶縁性の高分子樹脂は、SBRゴムなどの弾性材料を含み得る。
【0046】
一方、本発明において、前記集電体としては、金属板などの電気伝導性を有して二次電池分野で公知の集電体を、電極の極性に合わせて適切に使用し得る。
【0047】
本発明において、前記導電材は、通常、電極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1wt%~30wt%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材から選択された1種または2種以上の混合物を含み得る。
【0048】
本発明において、前記バインダー樹脂は、活物質と導電材などとの結合、及び集電体に対する結合を補助する成分であれば特に制限されず、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。前記バインダー樹脂は、通常、電極層100wt%に対して1~30wt%、または1~10wt%の範囲で含まれ得る。
【0049】
一方、本発明において、それぞれの電極活物質層は、必要に応じて酸化安定添加剤、還元安定添加剤、難燃剤、熱安定剤、防曇剤(antifogging agent)などのような添加剤を1種以上含み得る。
【0050】
本発明において、前記硫化物系固体電解質材料は、硫黄(S)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものであって、Li-P-S系ガラスやLi-P-S系ガラスセラミックを含み得る。このような硫化物系固体電解質の非制限的な例としては、LiS-P、LiS-LiI-P、LiS-LiI-LiO-P、LiS-LiBr-P、LiS-LiO-P、LiS-LiPO-P、LiS-P-P、LiS-P-SiS、LiS-P-SnS、LiS-P-Al、LiS-GeS、LiS-GeS-ZnSなどが挙げられ、これらのうち一つ以上を含み得るが、これらに限定されることはない。
【0051】
また、前記酸化物系固体電解質材料は、酸素(O)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものである。その非制限的な例としては、LLTO系化合物、LiLaCaTa12、LiLaANb12(AはCaまたはSr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、LAGP系化合物、LATP系化合物、Li1+xTi2-xAlSi(PO3-y(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiAlZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiTiZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LISICON系化合物、LIPON系化合物、ペロブスカイト系化合物、NASICON系化合物及びLLZO系化合物から選択された1種以上を含み得るが、これらに限定されることはない。
【0052】
前記固体電解質材料において、正極の場合、固体電解質としては酸化安定性に優れた電解質材料を使用し得る。また、負極の場合は、固体電解質として還元安定性に優れた電解質材料を使用し得る。しかし、ここに限定されることはなく、電極で主にリチウムイオンを伝達する役割をするため、イオン伝導度が高い素材、例えば10-7S/cm以上または10-5S/cm以上のものであれば制限なく使用可能であり、特定の成分に限定されることはない。
【0053】
また、本発明は、上述した構造を有する二次電池を提供する。また、本発明は、前記二次電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。このとき、前記デバイスの具体的な例としては、電気モーターによって動力を受けて駆動するパワーツール;電気自動車(Electric Vehicle:EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート;電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇がこれらに限定されることはない。
【0055】
(1)電極の製造
実施例1
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1、固体電解質としてLiS-P、バインダーとしてニトリルブタジエンラバー(NBR)、導電材として気相成長炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)を75.5:22.1:1.5:1の比率(重量比)でアニソールに投入して正極活物質層形成用スラリー(固形分含量70wt%)を用意した。これをアルミニウム薄膜(厚さ約10μm)の一面に塗布して60℃で6時間乾燥して正極を用意した。
【0056】
固体電解質としてLiS-P、バインダーとしてNBRを95:5の比率(重量比)でアニソールに投入して固体電解質膜形成用スラリー(固形分含量60wt%)を用意した。前記スラリーはシンキーミキサー(Thinkky mixer)で1分間、2000rpmの速度で混合して用意した。これをポリエチレンテレフタレート素材の離型フィルムの一面に塗布して常温常圧条件で一晩(overnight)乾燥し、離型フィルムを除去して第1固体電解質膜を用意した。同様の方法で第2固体電解質膜を用意した。前記第1固体電解質膜及び第2固体電解質膜の厚さはそれぞれ30μmであった。
【0057】
その後、負極を用意した。前記負極は10μmのニッケル薄膜集電体の表面に20μm厚さのリチウム金属薄膜が付着された状態で用意した。
【0058】
次いで、前記正極と第1固体電解質膜とを積層し、500MPaの圧力で5分間加圧して積層体を用意した。収得された前記積層体において、正極の気孔度は15vol%、第1固体電解質膜の気孔度は5vol%であった。第2固体電解質膜に対しても500MPaの圧力で5分間加圧した。前記収得された第2固体電解質膜の気孔度は5vol%であった。その後、前記積層体、前記第2固体電解質膜、及び負極を順次に積層し、200MPaで5分間加圧して電極組立体を収得した。収得された前記電極組立体において、正極の気孔度は15vol%、固体電解質膜の気孔度は5vol%であった。それぞれの段階において、加圧はCIP装置を用いて行った。
【0059】
実施例2
第1及び第2加圧は450MPaの圧力で行い、第3加圧は100MPaの圧力で行うことを除き、実施例1と同様の方法で電極組立体を製造した。
【0060】
比較例1
実施例と同様の方法で正極、負極及び固体電解質膜(60μm)を用意して順次に積層した。これを500MPaで5分間加圧して電極組立体を収得した。収得された前記電極組立体において、正極の気孔度は20vol%、固体電解質膜の気孔度は10vol%であった。加圧はCIP装置を用いて行った。
【0061】
比較例2
450MPaの圧力を印加することを除き、比較例1と同様の方法で電極組立体を収得した。
【0062】
(2)電気化学的特性の比較結果
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で収得された電極組立体を用いて全固体電池を製造した。これらを対象にして3回充放電を繰り返した後、開放回路電圧(OCV)を測定した。前記充放電は、4.25Vまで(0.01Cカットオフ)0.1CでCC(定電流)-CV(定電圧)モードで充電し、0.1Cで3Vまで放電した。前記開放回路電圧は日置製の電圧測定機を用いて測定した。実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の初回充放電の結果を下記の表1に示した。比較例1及び比較例2の場合は、充放電効率が低く(約43%水準)、電池性能が低下したことが分かった。一方、実施例1及び実施例2の場合は、約93%水準と高かった。また、実施例1及び比較例1の1回目~3回目の充放電プロファイルをそれぞれ図4(実施例1)及び図5(比較例1)に示した。これらから確認できるように、比較例1の電池の場合は、非可逆容量が高くて放電容量が充分に発現できず、実施例1に比べて電池性能が低かった。
【0063】
【表1】
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5