(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】軸継手及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16D 3/68 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
F16D3/68
(21)【出願番号】P 2023005436
(22)【出願日】2023-01-17
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000176992
【氏名又は名称】三木プーリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩平
(72)【発明者】
【氏名】中島 僚
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第217951045(CN,U)
【文献】特開2014-092168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00-9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの軸がそれぞれ嵌め込まれる軸孔を有する金属製の一対のハブと、
前記各ハブに対してそれぞれ所定の間隔をおいて前記一対のハブの間に配置されるエレメントと、を備え、
前記エレメントは、
前記各ハブに面するようにそれぞれ配置される一対の端面および前記各端面の周縁に連なる周面をそれぞれ有し、かつ前記一対のハブに対して締結具によってそれぞれ固定される複数の金属製のインサート部材と、
前記複数のインサート部材と一体をなすように、前記各インサート部材の前記周面の少なくとも一部を覆うように設けられるエラストマー製の弾性部材と、を含み、
前記複数のインサート部材は、前記一対のハブの一方に対してのみ固定される第1のインサート部材と、前記一対のハブの他方に対してのみ固定される第2のインサート部材と、を含
み、
前記エレメントは、円環状をなし、
前記複数のインサート部材は、前記エレメントの周方向において等間隔に配置され、
前記各インサート部材は、軸方向視において扇状の外形を有するように設けられ、
前記弾性部材は、前記各インサート部材の前記周面の全体を覆うように設けられる、軸継手。
【請求項2】
前記一対のハブおよび前記エレメントは、軸方向視において同一の外径を有するように設けられる、請求項
1に記載の軸継手。
【請求項3】
前記各ハブは、前記軸孔の周囲に割り溝が設けられ、前記割り溝の拡縮により前記軸を着脱自在に固定する、請求項
1に記載の軸継手。
【請求項4】
軸継手の製造方法であって、
前記軸継手は、
2つの軸がそれぞれ嵌め込まれる軸孔を有する金属製の一対のハブと、
前記各ハブに対してそれぞれ所定の間隔をおいて前記一対のハブの間に配置されるエレメントと、を備え、
前記エレメントは、
前記各ハブに面するようにそれぞれ配置される一対の端面および前記各端面の周縁に連なる周面をそれぞれ有し、かつ前記一対のハブに対して締結具によってそれぞれ固定される複数の金属製のインサート部材と、
前記複数のインサート部材と一体をなすように、前記各インサート部材の前記周面の少なくとも一部を覆うように設けられるエラストマー製の弾性部材と、を含み、
前記複数のインサート部材は、前記一対のハブの一方に対してのみ固定される第1のインサート部材と、前記一対のハブの他方に対してのみ固定される第2のインサート部材と、を含み、
前記複数のインサート部材と前記弾性部材とが一体をなすように、前記エレメントのインサート成形を行う成形工程と、
前記インサート成形されたエレメントを、前記一対のハブに対して前記締結具により固定する組立工程と、を含む、軸継手の製造方法。
【請求項5】
前記各インサート部材は、軸方向の一方側または他方側に向けて先細り状をなすように設けられる、請求項
4に記載の軸継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの軸を連結する軸継手及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御用モータの駆動軸と負荷側の従動軸とを接続する軸継手であって、それら駆動軸及び従動軸にそれぞれ取り付けられる一対のハブと、それらハブの間に介在するウレタン樹脂組成物からなる弾性部材と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。その軸継手によれば、アルミニウムやステンレスからなる一対のハブの間にウレタン樹脂組成物からなる弾性体を介在させることにより、ハブの間に金属製のベローズやリング板ばねを介在させた場合と比べて、より安定した振動減衰特性が得られる。
【0003】
また、そのような弾性部材を備えた軸継手の製造方法として、一対のハブの中間体を製造する工程と、両中間体を金型のインサート室にインサートし、両中間体の外端面に形成された位置決め突起又は位置決め孔を係合した状態で、両中間体の対向する内端面の間に形成された空間に弾性材料を注入して弾性部材を成形する工程と、軸継手の離型後、両中間体の位置決め突起または位置決め孔を除去する工程と、両中間体の中心部に連結孔を形成する工程と、を含むものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-327774号公報
【文献】特開2008-241029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載された従来技術では、軸継手の離型後における一対のハブが弾性部材によって一体化された状態で、両中間体の位置決め突起または位置決め孔を除去する工程と、両中間体の中心部に連結孔を形成する工程と、が更に実施される。
【0006】
つまり、上記従来技術では、一対のハブの間に弾性部材を介在させた構成を得るために、一対のハブが弾性部材によって一体化された状態(すなわち、軸継手が組み立てられた状態)で、高い精度を要求される機械加工(例えば、軸孔の形成)を行う必要があるため、軸継手の製造工程が複雑になる。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑み、一対のハブの間に弾性部材を介在させた構成を容易に実現できる軸継手及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、2つの軸(2A、2B)がそれぞれ嵌め込まれる軸孔(10A、10B)を有する金属製の一対のハブ(3A、3B)と、前記各ハブに対してそれぞれ所定の間隔をおいて前記一対のハブの間に配置されるエレメント(4)と、を備え、前記エレメントは、前記各ハブに面するようにそれぞれ配置される一対の端面(27、28)および前記各端面の周縁に連なる周面(29)をそれぞれ有し、かつ前記一対のハブに対して締結具(41)によってそれぞれ固定される複数の金属製のインサート部材(21A-21D)と、前記複数のインサート部材と一体をなすように、前記各インサート部材の前記周面の少なくとも一部を覆うように設けられるエラストマー製の弾性部材(22)と、を含み、前記複数のインサート部材は、前記一対のハブの一方に対してのみ固定される第1のインサート部材(21A、21C)と、前記一対のハブの他方に対してのみ固定される第2のインサート部材(21B、21D)と、を含む構成とする。
【0009】
この態様によれば、軸継手が組み立てられた状態で、高い精度を要求される機械加工(例えば、軸孔の形成)を行う必要がないため、一対のハブの間に弾性部材を介在させた構成を容易に実現できる。また、この態様によれば、各ハブとエレメントとの組み合わせの自由度が高まるという利点もある。
【0010】
上記の態様において、前記エレメントは、円環状をなし、前記複数のインサート部材は、前記エレメントの周方向において等間隔に配置されるとよい。
【0011】
この態様によれば、2つの軸の回転時にエレメントを円滑に回転させることができる。
【0012】
上記の態様において、前記各インサート部材は、軸方向視において扇状の外形を有するように設けられるとよい。
【0013】
この態様によれば、2つの軸の回転時に各インサート部材に作用する力を、弾性部材に対して適切に(すなわち、均等に)伝達することができる。
【0014】
上記の態様において、前記弾性部材は、前記各インサート部材の前記周面の全体を覆うように設けられるとよい。
【0015】
この態様によれば、インサート部材および弾性部材の一体性が高まり、2つの軸の回転時にエレメントを安定的に回転させることができる。
【0016】
上記の態様において、前記一対のハブおよび前記エレメントは、軸方向視において同一の外径を有するように設けられるとよい。
【0017】
上記の態様において、前記各ハブは、前記軸孔の周囲に割り溝(14)が設けられ、前記割り溝の拡縮により前記軸を着脱自在に固定するとよい。
【0018】
この態様によれば、割り溝の拡縮(拡大または縮小)により軸孔に対して軸を着脱自在に取り付けることができる。
【0019】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、前記軸継手の製造方法であって、前記複数のインサート部材と前記弾性部材とが一体をなすように、前記エレメントのインサート成形を行う成形工程と、前記インサート成形されたエレメントを、前記一対のハブに対して前記締結具により固定する組立工程と、を含む構成とする。
【0020】
この態様によれば、軸継手が組み立てられた状態で、高い精度を要求される機械加工(例えば、軸孔の形成)を行う必要がないため、製造工程を複雑にすることなく、一対のハブの間に弾性部材を介在させた構成を容易に実現できる。また、この態様によれば、ハブとは独立してエレメントを完成させることができるため、軸継手の製造に要する時間を短縮できるという利点もある。
【0021】
上記の態様において、前記各インサート部材は、軸方向の一方側または他方側に向けて先細り状をなすように設けられるとよい。
【0022】
この態様によれば、インサート部材の周囲に弾性部材を形成するためのインサート成形後に金型からの取外しが容易となる。
【発明の効果】
【0023】
以上の態様によれば、軸継手及びその製造方法に関し、一対のハブの間に弾性部材を介在させた構成を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る軸継手及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。説明の便宜上、図面(
図1等)に矢印で示すように上下方向および前後方向を定める。
【0026】
図1に示すように、軸継手1は、回転可能な2つの軸2A、2Bを連結するためのものであり、一対の金属製のクランプハブ3A、3Bと、それらクランプハブ3A、3Bの間に介装されエレメント4と、を備える。
【0027】
軸2A、2Bは、それぞれ前後方向に延在し、ともに軸線5を回転の中心とするように配置される。軸2Bの外径は、軸2Aの外径よりも大きく設定されている。ただし、軸2A、2Bは、互いに同一の外径を有するように設けられてもよい。軸2A、2Bには、例えば、図示しないモータの駆動軸およびモータによって駆動される装置の軸(負荷側の従動軸)を用いることができる。ただし、軸継手1の連結対象となる軸の形態は、それらに限定されるものではない。
【0028】
図2に示すように、クランプハブ3A、3Bは、略円環状をなし、それらの中心部には軸孔10A、10Bがそれぞれ形成されている。軸孔10A、10Bには、軸2A、2Bがそれぞれ嵌め込まれた状態で固定される。上述の軸2A、2Bの外径の大きさに対応するように、軸孔10Bの径は、軸孔10Aの径よりも大きく設定されている。クランプハブ3Bは、軸孔10Bの大きさの違いを除いて、クランプハブ3Aと同様の構成を有している。ただし、クランプハブ3Bは、前後方向においてクランプハブ3Aとは逆向きに配置される。
【0029】
以下では、クランプハブ3A、3Bに関して、互いに同一(または略同一)の形状や機能を有する部分には同一の符号を付す。クランプハブ3A、3Bに付属する部材(ボルト等)についても同様である。
【0030】
クランプハブ3Aには、前後方向(軸方向)に延在する2つの貫通孔11が設けられている。2つの貫通孔11は、互いに回転対称の位置(すなわち、軸線5を中心として180度回転させると重なる位置)に配置される。また、クランプハブ3Aには、前後方向に延在する2つのねじ孔12が設けられている。2つのねじ孔12は、2つの貫通孔11に対して概ね回転対称となる位置(すなわち、軸線5を中心として90度回転させると概ね重なる位置)に配置される。
【0031】
また、クランプハブ3Aには、前側から見た場合に、直径方向に沿って形成された割り溝14と、周方向(または、軸線5に直交する方向)に沿って形成されたスリット15とを有する。
【0032】
割り溝14は、クランプハブ3Aの前面17および外周面18に開口する。割り溝14は、クランプハブ3Aをその上部から軸孔10Aを超えて直径方向の途中まで(すなわち、クランプハブ3Aを完全に切断しない位置まで)切り欠くように設けられる。割り溝14の後端部は、スリット15に連通する。
【0033】
スリット15は、クランプハブ3Aの外周面18に開口する。スリット15は、クランプハブ3Aにおける前後方向の中間において、クランプハブ3Aをその上部から軸孔10Aを超えて軸線5に直交する方向に途中まで切り欠くように設けられる。
【0034】
また、クランプハブ3Aには、割り溝14の上部と直交する方向に延在する締結用ねじ孔19が設けられている。
【0035】
クランプハブ3Aは、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属材料によって形成される。なお、クランプハブ3Bの構成は、上述のクランプハブ3Aの構成と同様である。
【0036】
図3に示すように、エレメント4は、略円環状をなし、その中心部には前後方向に延在する軸孔20が形成されている。軸孔20は、クランプハブ3A、3Bの軸孔10A、10Bと同軸上に設けられる(すなわち、エレメント4の軸線は、クランプハブ3A、3Bの軸線5に一致する)。エレメント4は、クランプハブ3A、3Bのスペーサとしても機能し得る。また、軸孔20は、クランプハブ3Bの軸孔10Bと略同一の径を有する。さらに、エレメント4は、軸方向視において、クランプハブ3A、3Bと同一の外径を有するように設けられるとよい。
【0037】
エレメント4は、複数(ここでは、4つ)の金属製のインサート部材21A-21Dと、それらインサート部材21A-21Dの間に介在するエラストマー製の弾性部材22と、を含む。インサート部材21A-21Dは、軸方向視において、エレメント4の周方向に等間隔(ここでは、90度毎)に配置される。また、インサート部材21A-21Dは、クランプハブ3A、3Bと同様に金属材料によって形成され得る。
【0038】
以下では、インサート部材21A-21Dに関して、互いに同一または略同一の形状や機能を有する部分には同一の符号を付す。
【0039】
インサート部材21A、21C(第1のインサート部材の一例)は、同一の構成を有している。各インサート部材21A、21Cは、軸方向視において、エレメント4の周方向に沿って円弧状に延在することにより、略扇状の外形を有するように設けられている。各インサート部材21A、21Cの周方向の中央部には、
図4にも示すように、前後方向に延在する複数(ここでは、)のボルト収容孔24が設けられている。各ボルト収容孔24は、対応するクランプハブ3A、3Bにおける一方の貫通孔11および他方のねじ孔12(
図4では、クランプハブ3Aのねじ孔12およびクランプハブ3Bの貫通孔11)と同軸上に設けられる。
【0040】
各ボルト収容孔24は、各インサート部材21A、21Cの前面27に開口する小径部24Aと、小径部24Aの後方に連なり、各インサート部材21A、21Cの後面28に開口する大径部24Bを含む。各インサート部材21A、21Cは、後方から前方(すなわち、一方側)に向けて先細り状をなすように(すなわち、後面28から前面27にかけて外形が徐々に小さくなるように)設けられている。これにより、各インサート部材21A、21Cの外周面部29Aおよび内周面部29Bを覆う弾性部材22の厚みは、
図4に示す断面図に示すように、それぞれ後方から前方に向けて徐々に増大する。
【0041】
また、インサート部材21B、21D(第2のインサート部材の一例)は、インサート部材21A、21Cと同様の構成を有している。ただし、インサート部材21B、21Dは、インサート部材21A、21Cとは前後方向において逆向きに配置されている。つまり、インサート部材21B、21Dのボルト収容孔24において、大径部24Bは、インサート部材21B、21Dの前面27に開口し、また、小径部24Aは、インサート部材21B、21Dの後面28に開口する。各インサート部材21B、21Dは、インサート部材21A、21Cと同様に、前方から後方に向けて先細り状をなすように(すなわち、前面27から後面28にかけて外形が徐々に小さくなるように)設けられている。
【0042】
なお、インサート部材21B、21Dの前面27側には、周方向において大径部24Bを挟み込むように、軸方向視において略円形をなす一対の凹部30が設けられている(インサート部材21A、21Cの後面28側についても同様)。
【0043】
各インサート部材21A-21Dの周面29は、前面27および後面28(端面の一例)の周縁に連なる。周面29は、外周面部29A、内周面部29B、並びにそれら外周面部29A及び内周面部29Bの周方向の端縁をそれぞれ接続する一対の平面部29Cを含む(
図3を参照)。ただし、外周面部29A及び内周面部29Bと、平面部29Cとの接続部分は曲面をなす(R面取りがなされている)。
【0044】
弾性部材22は、インサート部材21A-21Dと一体をなすように、インサート部材21A-21Dの周面29の全体を覆うように設けられる。つまり、弾性部材22は、軸方向視において、インサート部材21A-21Dがそれぞれ収容される複数の略扇状の貫通孔を有する。一方、弾性部材22は、インサート部材21A-21Dの前面27および後面28を露出する。ただし、弾性部材22は、インサート部材21A-21Dの前面27および後面28の少なくとも一部(小径部24Aおよび大径部24Bの開口)を露出するように設けられればよい。また、弾性部材22は、インサート部材21A-21Dの周面29における内周面部29Bの少なくとも一部を覆わないように(すなわち、露出するように)設けられてもよい。例えば、
図4に示すように、インサート部材21A、21Cの内周面部29Bの端縁(ここでは、前端縁)を露出する構成のみならず、内周面部29Bの前後方向の中間部を露出する構成としてもよい。
【0045】
弾性部材22は、例えば、比較的高い弾性を示すエラストマーによって形成される。弾性部材22は、2種以上のエラストマーからなる部材が組み合わされる(例えば、互いに異なる複数の部材が軸方向に層状に重ねられる)ことにより構成されてもよい。弾性部材22に用いられるエラストマーには、熱硬化性エラストマーおよび熱可塑性エラストマーが含まれる。熱硬化性エラストマーには、天然ゴムおよび合成ゴムに加え、熱硬化性樹脂系エラストマー(例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、 フッ素ゴムなど)が含まれ得る。熱可塑性エラストマーには、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、PVC(polyvinyl chloride)系、及びアミド系などの公知のエラストマーが含まれ得る。
【0046】
軸継手1を組み立てる際には、クランプハブ3A、3Bおよびエレメント4が正規の組み立て位置に配置された後、
図4に示すように、2本の連結ボルト41(締結具の一例)が、クランプハブ3Bの貫通孔11およびボルト収容孔24を通して、クランプハブ3Aの2つのねじ孔12にそれぞれ締結される。これにより、エレメント4は、クランプハブ3Aに対して連結ボルト41によって固定される。このとき、インサート部材21A、21Cは、一対のクランプハブ3A、3Bのうちクランプハブ3Aに対してのみ固定される。
【0047】
このとき、各ボルト収容孔24の大径部24Bには、各連結ボルト41の頭部41Aおよび座金42が収容される。また、各連結ボルト41のねじ部41Bは、その基端側(頭部41A側)が小径部24Aに挿通され、その先端側がクランプハブ3Aのねじ孔12にねじ込まれる。また、各連結ボルト41のねじ部41Bは、エレメント4とクランプハブ3Aとの間(より詳細には、ボルト収容孔24の小径部24Aとねじ孔12との間)に介装された複数の円環状のディスタンスピース45にそれぞれ挿通される。互いに連結されたクランプハブ3Aとエレメント4との間には、それらディスタンスピース45によって隙間が確保される。つまり、エレメント4は、クランプハブ3Aに対して所定の間隔を置いて配置される。
【0048】
上述のクランプハブ3Aの場合と同様に、エレメント4は、クランプハブ3Bに対しても連結ボルト41によって固定される。このとき、インサート部材21B、21Dは、一対のクランプハブ3A、3Bのうちクランプハブ3Bに対してのみ固定される。組み立てられた軸継手1のクランプハブ3A、3Bにおいて、締結用ねじ孔19に嵌め合わされた軸固定ボルト50が締め付けられると、割り溝14が縮小する(すなわち、割り溝14の周囲が弾性変形する)ことで、軸2A、2Bが軸孔10A、10Bにそれぞれ固定される。また、クランプハブ3A、3Bにおいて、軸固定ボルト50が緩められることにより、割り溝14が再び拡大する(割り溝14が復元する)ことにより、軸孔10A、10Bに対する軸2A、2Bの固定が解除される。
【0049】
次に、軸継手1の製造方法について説明する。
【0050】
軸継手1の製造では、まず、クランプハブ3A、3Bが金属材料の切削加工によって製作される。これと並行して、インサート部材21A-21Dが、ダイカストによって製作される。ただし、インサート部材21A-21Dは、プレス加工や切削加工によって形成されてもよい。その後、エレメント4がインサート成形される。なお、クランプハブ3A、3Bおよびインサート部材21A-21Dの製作方法は、特に限定されず、必要に応じて適宜変更され得る。
【0051】
エレメント4は、インサート成形(または加硫接着)によって製作される。エレメント4の製作では、例えば、インサート部材21A-21Dがセットされた金型(図示せず)にエラストマー材料が流し込まれ、それらが金型内において所定の圧力および温度の条件下で一体に成形される(成形工程の一例)。このとき、上述のように、インサート部材21A-21Dは、所定の方向(すなわち、軸方向の一方側または他方側)に向けて先細り状をなす形状を有するため、インサート部材21A-21Dの周囲に弾性部材22を形成するためのインサート成形後に金型からの取外しが容易となる。
【0052】
その後、クランプハブ3A、3Bおよびエレメント4がそれぞれ完成すると、上述のようにそれらが連結ボルト41を用いて軸継手1が組み立てられる(組立工程の一例)。
【0053】
このような軸継手1およびその製造方法によれば、軸継手1が組み立てられた状態で、高い精度を要求される機械加工(例えば、軸孔10A、10B及び軸孔20の形成)を行う必要はないため、製造工程を複雑にすることなく、一対のクランプハブ3A、3Bの間に弾性部材22を有するエレメント4を介在させた構成を容易に実現できる。また、この軸継手1によれば、各クランプハブ3A、3Bとエレメント4との組み合わせの自由度が高まるという利点もある。さらに、クランプハブ3A、3Bとは独立してエレメント4を完成させることができるため、軸継手1の製造に要する期間を短縮できるという利点もある。
【0054】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上述の実施形態に示した軸継手及びその製造方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも当業者であれば本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 :軸継手
2A、2B:軸
3A、3B:クランプハブ
4 :エレメント
5 :軸線
10A、10B:軸孔
11 :貫通孔
12 :ねじ孔
14 :割り溝
15 :スリット
17 :前面
18 :外周面
20 :軸孔
21A-21D:インサート部材
22 :弾性部材
24 :ボルト収容孔
24A:小径部
24B:大径部
27 :前面
28 :後面
29 :周面
29A:外周面部
29B:内周面部
29C:平面部
30 :凹部
41 :連結ボルト
41A:頭部
41B:ねじ部
42 :座金
45 :ディスタンスピース
50 :軸固定ボルト
【要約】
【課題】軸継手において、一対のハブの間に弾性部材を介在させた構成を容易に実現する。
【解決手段】軸継手1は、金属製の一対のハブ3A、3Bと、各ハブ3A、3Bに対してそれぞれ所定の間隔をおいて、ハブ3A、3Bの間に配置されるエレメント4と、を備え、エレメント4は、一対の端面27、28および周面29をそれぞれ有し、かつハブ3A、3Bに対して締結具41によってそれぞれ固定される複数の金属製のインサート部材21A-21Dと、それらインサート部材21A-21Dと一体をなすように、各インサート部材21A-21Dの周面29の少なくとも一部を覆うように設けられるエラストマー製の弾性部材22と、を含み、インサート部材21A-21Dは、ハブ3A、3Bの一方のみに対して固定される第1のインサート部材21A、21Cと、ハブ3A、3Bの他方のみに対して固定される第2のインサート部材21B、21Dと、を含む構成とする。
【選択図】
図2