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特許7504251可搬型基準センサシステムを較正するための方法、可搬型基準センサシステム、および可搬型基準センサシステムの使用
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  • 特許-可搬型基準センサシステムを較正するための方法、可搬型基準センサシステム、および可搬型基準センサシステムの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】可搬型基準センサシステムを較正するための方法、可搬型基準センサシステム、および可搬型基準センサシステムの使用
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240614BHJP
   G01S 17/86 20200101ALI20240614BHJP
   G01S 17/931 20200101ALN20240614BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/86
G01S17/931
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023029954
(22)【出願日】2023-02-28
(65)【公開番号】P2023129329
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】10 2022 104 880.2
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】523014902
【氏名又は名称】アーファオエル ソフトウェア アンド ファンクションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AVL SOFTWARE AND FUNCTIONS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルミン エングストル
(72)【発明者】
【氏名】ディエゴ トゥラド ブランコ
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/150057(WO,A1)
【文献】米国特許第10723281(US,B1)
【文献】国際公開第2019/176118(WO,A1)
【文献】特開2021-117087(JP,A)
【文献】特表2022-501975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0051317(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0270947(US,A1)
【文献】国際公開第2021/172264(WO,A1)
【文献】特開2021-021654(JP,A)
【文献】特開2020-051793(JP,A)
【文献】特開2019-060680(JP,A)
【文献】特表2019-537703(JP,A)
【文献】特開2015-075382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 7/00- 7/42
G01S 7/48- 7/51
G01S13/00-13/95
G01S17/00-17/95
G01S19/00-19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準座標系を規定する第1光学センサと、前記第1光学センサとは異なる複数の第2光学センサとを含む複数のセンサと、少なくとも1つの位置センサとを有し且つ車両に搭載可能な可搬型基準センサシステムを較正する方法であって、
a)各々の前記第2光学センサの座標系が前記基準座標系に対して較正されるように、各々の前記第2光学センサの回転行列および/または並進行列を決定することによって、前記基準センサシステムの前記第2光学センサを前記基準座標系に較正するステップであり、前記それぞれの回転行列および/または並進行列は、前記基準センサシステムの外部に配置された外部較正オブジェクトを各々の前記第2光学センサで検出することによって決定される、ステップと、
b)前記a)のステップの後で、前記位置センサの座標系の車両座標系に対する較正を実行するステップと
を含み、
前記b)のステップは、
b1)外部カメラシステムにより検出された位置マーカであり、車両の後車軸またはホイールハブに取り付けられた前記位置マーカを前記外部較正オブジェクトに取り付け、車両座標での位置が既知の後車軸に対する前記外部較正オブジェクトの位置を決定することと、
b2)前記外部較正オブジェクトに取り付けられた前記位置マーカを前記第1光学センサで検出することで、前記基準座標系に対する前記外部較正オブジェクトの位置を決定することと、
b3)前記基準座標系に対する前記外部較正オブジェクトの位置に基づいて、前記車両座標系に対する前記位置センサの前記回転行列および/または並進行列を決定して、前記位置センサの前記基準座標系の車両座標系に対する較正を実行することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第2光学センサを較正するステップにおいて、前記基準センサシステムは、前記外部較正オブジェクトを前記第2光学センサによって検出できるように、並進運動および/または回転運動によって前記外部較正オブジェクトに対して移動させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検出された各々の外部較正オブジェクトについて、前記外部較正オブジェクトのそれぞれの法線ベクトルを生成することによって、前記それぞれの回転行列および/または並進行列が生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2光学センサの較正後かつ前記位置センサの較正前に、前記基準センサシステムは車両に搭載される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記基準センサシステムを第1車両に搭載し、前記b)のステップを実行し、較正済みの基準センサシステムを得ることと、
前記較正済みの基準センサシステムを前記第1車両とは異なる第2車両に搭載することと、
前記位置センサと前記第2車両の後車軸との間の三次元距離の測定によって、前記車両座標系に対する前記位置センサの並進行列を決定することと、
決定した並進行列と、前記第1車両に搭載した際の較正により既知の回転行列とに基づいて、前記位置センサの前記基準座標系の車両座標系に対する較正を実行することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学センサと少なくとも1つの位置センサとを有する可搬型基準センサシステムを較正するための方法に関する。さらに、本発明は、較正された基準センサシステムおよび較正された基準センサシステムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者支援システム(ADAS)センサおよびそれらのアルゴリズムの性能を評価するための大量の代表的な実際の運転データの統計的評価が、車両の自動化の程度(SAEレベル0~5)が高くなるにつれて、ますます決定的になる。この背景において、絶対基準に対するセンサ信号の客観的な比較が、費用効率が高くかつ信頼できるセンサの開発および検証を実現するための唯一の方法である。それにもかかわらず、製造業者に依存しない標準化された基準センサシステムは、関連の認証機関が常に独自の環境画像に基づいて評価を行うがゆえに、将来の自動化車両の承認/型式認証の基本的な前提条件である。自動運転に向けた技術的ステップを自社のビジネスモデルの重要な部分とみなしているWaymoおよびUberなどの米国企業は、自社製品の継続的な改善および最適化のために、データ駆動型の開発の手法を一貫して追求している。さらなる開発のたびに、製品のあらゆる新たな反復が、既存のデータベースに対して常に試験され、生成された分析結果に基づいて継続的に最適化される。
【0003】
車両の自動運転にとって、車両の静的および動的環境を記録し、理解し、再構築することができる車両センサまたは車両センサシステムがきわめて重要である。車両センサシステムの各々の車両センサは、この目的のためにそれ自身の座標系を使用し、この座標系において、センサのそれぞれの検出範囲内の環境の少なくとも一部が検出される。車両環境全体を再構築し、センサのそれぞれの座標系の間の幾何学的関係を確立させることができるように、車両センサシステムのすべてのセンサと車両との間の相対位置が決定され、較正される必要がある。
【0004】
車両センサシステムまたは車両センサシステムを備える車両の開発、較正、および検証のために、技術水準は、すべての車両に対して同一の可搬型基準センサシステムを使用する。まず、車両に基準センサシステムが備え付けられる。車両センサシステムのセンサ信号を基準センサシステムのセンサ信号と比較できるようにするために、以下のステップにおいて、基準センサシステムを車両に対して較正し、あるいは車両に対する可搬型基準センサシステムの位置を決定する必要がある。現在の技術水準では、この目的のために、例えばモーションキャプチャシステムなどの外部較正装置が使用される。外部較正装置による較正の欠点は、較正が面倒で時間がかかることである。とりわけ、さまざまな車両環境(気候条件、天候、道路状況、交通状況、など)での運転中に必要な量のセンサデータを生成するために必要な大規模な車両フリートにおいて、大規模な測定シリーズの管理がきわめて困難である。とりわけ、可搬型基準センサシステムおよび外部較正装置が、限られたリソースである。車両センサシステムのすべてのセンサおよび基準センサシステムのすべてのセンサが互いに較正され、あるいは互いのそれぞれの位置が既知である場合、それぞれのセンサデータを記録し、互いに比較することができる。
【0005】
基準センサシステムが車両から取り外され、後に車両に再び取り付けられる場合、基準センサシステムも、変位に関して数ミリメートル程度または回転に関して10分の数度程度の必要とされる測定公差を維持することができるように、外部較正装置によって車両上で再び較正されなければならない。実際には、これは、基準センサシステムを車両に対して較正するために、この車両を外部較正装置まで再び運ばなければならないことを意味する。これにより、較正手順がさらに時間および費用のかかるものになる。さらなる欠点は、外部較正装置によって基準センサシステムを車両に対して較正するために、車両に基準センサシステムを備え付けなければならず、したがって、この基準センサシステムを、同時に、例えば運転中のセンサデータの取得のために、他の場所では利用することができないことである。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の課題は、先行技術における車両と比較して、可搬型基準センサシステムの位置を決定するための方法の欠点を克服する方法を提供することである。
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。好都合な実施形態が、従属請求項からもたらされる。
【0008】
本発明の核となる考え方は、光学センサと少なくとも1つの位置センサとを有する可搬型基準センサシステムを較正する方法であって、
a)各々のセンサの座標系が前記基準座標系に対して較正されるように、各々のセンサの回転行列および/または並進行列を決定することによって、前記基準センサシステムの前記光学センサを所定の基準座標系に較正するステップであり、前記それぞれの回転行列および/または並進行列は外部較正オブジェクトを検出することによって決定される、ステップと、
b)位置マーカを検出することによって前記位置センサを前記基準座標系に較正することによって、前記位置センサの座標系の車両座標系に対する較正を、回転行列および/または並進行列を決定することによって実行するステップと、
を含む。
【0009】
光学センサは、カメラおよび複数のLIDARセンサであってよい。好ましくは、少なくとも1つの位置センサは、dGPSまたはGNSSである。とくに好ましくは、少なくとも1つの位置センサは、ポジショニングシステムの一部である。
【0010】
好ましい実施形態によれば、基準センサシステムの基準座標系は、中央ライダセンサによって形成される。これは、他のすべてのセンサが、中央ライダセンサの基準座標系に対して較正されることを意味する。
【0011】
車両は、それ自身の座標系を有し、そのゼロ点は、通常は、車両の後車軸の中央に定められる。車両の座標系は、通常は、3つの軸が前方向、高さ方向、および横方向を向き、その各々が互いに直交するように向けられている。
【0012】
通常は、基準センサシステムの3つの軸は、基準センサシステムの前方向、高さ方向、および横方向に向けられる。車両に対する基準センサシステムの位置を決定するために、車両の座標系のゼロ点に対する基準センサシステムの座標系のゼロ点の(例えば、ベクトルによる)変位または並進を、とくには1ミリメートル刻みで判定することがとくに必要である。さらに、車両の座標系に対する基準センサシステムの基準座標系の回転を判定する必要がある。2つの座標系がお互いに対して回転していないことが理想的であるが、小さなずれは可能であり、1度の1/10程度のずれを判定する必要がある。
【0013】
角度誤差に関する基準座標系と車両座標系との間のずれは、この誤差が距離につれて拡大するがゆえに、考慮すべき重要な誤差である。基準座標系と車両座標系との間の1°の誤差は、100メートルの距離において横方向のずれが1.75メートルであることを意味する。
【0014】
したがって、要件として、0.2°以下の最大角度誤差が許容可能であると考えられる。
【0015】
本発明による可搬型基準センサシステムを較正するための方法を実行した後に、基準センサシステムを輸送することができ、方法において使用された車両とは無関係の任意の車両において、今や使用される車両への再較正を必要とせずに使用することができる。これにより、較正ホールまたは外部較正に頼る必要がなく、可搬型基準センサシステムのみをそれぞれの使用場所に持って行くだけでよい。これは、本明細書において詳細に後述される。
【0016】
好ましくは、外部較正オブジェクトは、例えばチェス盤パターンなどのパターンまたは較正パターンを有することができる。好ましくは、外部較正オブジェクトは、例えばホールまたは較正ホール内の固定の位置に配置される。
【0017】
好ましい実施形態によれば、較正オブジェクトの較正パターンが定められる。とくに、これは、較正パターンの幾何学的形状に関する情報が入手可能または読み出し可能であることを意味する。さらに、較正パターンの長さおよび角度などの寸法、または較正パターンの特徴点の座標が、較正オブジェクトの座標系において既知であり、手順のための情報として用いられる。好ましくは、較正パターン、とくには特徴点は、基準センサシステムによる認識がきわめて容易である。これは、例えば、高い色コントラストおよび鋭い色エッジによって達成される。
【0018】
好ましくは、較正パターンは、単純または反復パターンである。さらに好ましくは、較正パターンは、チェス盤パターンまたはドットパターンである。さらに、プロセスにとくに適した任意の他のパターンを使用することができる。
【0019】
特に好ましい実施形態によれば、光学センサを較正するステップにおいて、基準センサシステムは、較正オブジェクトを光学センサによって検出できるように、並進運動および/または回転運動によって較正オブジェクトに対して移動させられることが提供されてもよい。光学センサは、特に好ましいカメラである。
【0020】
相対移動をより容易にするために、基準センサシステムを車両に搭載するのではなく、例えばテーブル上に配置し、基準センサシステムを有するテーブルを較正オブジェクトに対して移動させることが好ましいかもしれない。
【0021】
特に好ましい実施形態によれば、検出された各々の較正オブジェクトについて、前記較正オブジェクトのそれぞれの法線ベクトルを生成することによって、前記それぞれの回転行列および/または並進行列が生成されることが提供されてもよい。
【0022】
それぞれの生成された回転行列および/または並進行列は、例えば中央ライダセンサによって指定される基準座標系に対してそれぞれのセンサを較正する。
【0023】
これにより、基準センサシステムのすべてのセンサを、対応する回転行列および/または並進行列を決定することによって、基準座標系に対して較正することができる。好ましくは、基準座標系を指定するセンサは、基準座標系を指定するため、それ自体に対して較正されることがない。
【0024】
さらなる実施形態によれば、プロセスステップa)に先立ち、カメラによって与えられる光学センサは、それぞれのレンズまたはカメラレンズの歪みの影響が排除されるように較正される。
【0025】
とくに好ましくは、それぞれのカメラレンズの特定の焦点距離が、とくに好ましくは製造公差を考慮して、基準センサシステムの較正ルーチンによって決定される。特定の焦点距離は、カメラ画像を生成するときに考慮される。
【0026】
さらなる好ましい実施形態によれば、光学センサの較正後かつ位置センサの較正前に、基準センサシステムは車両に搭載されることが提供できる。
【0027】
本発明によれば、車両座標系に対する基準を提供することが想定され、したがって、基準センサシステムがまだ車両に搭載されていない場合、それは車両に対して設定されなければならない。
【0028】
基準センサシステムがプロセスステップa)において車両にすでに搭載されている場合、搭載ステップを省略することができる。
【0029】
本発明によれば、基準座標系に対する位置センサの較正が位置マーカを検出することによって実行されることにより、車両座標系に対する位置センサの座標系の較正が、回転行列および/または並進行列を決定することによって実行される。
【0030】
特に好ましい実施形態によれば、位置センサの較正中に、位置マーカが較正オブジェクトおよび車両の後車軸において検出され、基準センサシステムに対する較正オブジェクトの位置が決定されることにより、後車軸に対する較正オブジェクトの位置が決定されることで、車両座標系に対する基準センサシステムの回転行列および/または並進行列が決定されることが提供されてもよい。
【0031】
例えば中央LIDARによって与えられる基準座標系に対する位置センサまたはGNSSシステムなどのポジショニングシステムの較正は、直接の光学的測定が利用できないため、本発明による較正ルーチンの最も困難な部分である。
【0032】
後述される多段階較正プロセスは、較正ホール内で、外部基準座標系から車両座標系較正への転換を介して実現され、この理由で、この較正ステップのために、基準センサシステムは車両に搭載される。
【0033】
とくに好ましくは、位置マーカを、外部カメラシステムによって検出することができる。例えば、外部カメラシステムは、ホールに設置または配置されてよい。とくに好ましくは、外部カメラシステムは、3Dカメラシステムである。
【0034】
外部カメラシステムによって正確に検出される位置マーカが、後車軸またはホイールハブが車両座標系に対応するように、車両の後車軸またはホイールハブに取り付けられるとともに、較正オブジェクトに取り付けられる。中央LIDARは、較正オブジェクトに対する中央LIDARの相対位置を検出する。外部カメラシステムは、車両座標系に対する較正オブジェクトの位置を決定する。これにより、車両への外部較正基準センサシステムの回転行列および/または並進行列を実行することが可能になる。
【0035】
ポジショニングシステムの内部較正ルーチンの助けを借りて、ポジショニングシステムと後車軸、すなわち車両座標系との間の回転行列が決定される。
【0036】
好ましくは、ポジショニングシステムの製造業者によって指定された移動パターンが、オープンエアにおいてトレースされる。この移動パターンが数回トレースされた後に、このようにして決定される角度オフセットを、製造業者の仕様に従って0.05~0.1°として与えることができる。ポジショニングシステムと車両座標系との間の並進行列は、外部カメラシステムまたはポジショニングシステムのハウジングに配置されたマーカによって決定される。
【0037】
さらに、根底にある問題は、本発明による方法によって較正された較正済みの基準センサシステムによって解決される。
【0038】
さらに、根底にある問題は、較正済みの基準センサシステムを任意の車両と共に使用することによって解決される。任意の車両とは、本方法に従って使用された車両以外の任意の車両を意味する。
【0039】
車両に対する基準センサシステムの外部較正をすでに説明したが、較正済みの基準センサシステムの任意の車両における使用に関して、特別な課題が生じる。較正試験ベンチまたは較正ホールはどこでも利用可能というわけではないため、或る車両から別の車両への基準センサシステムの変更を、ホールを必要とせずに現場においても可能にするために、(任意の)車両への基準センサシステムの外部較正を、他のやり方で提示しなければならない。
【0040】
この目的のために、上述の較正手順が、基準センサシステムの較正手順とは反対の方向に実行される。
【0041】
基準座標系、例えば中央ライダに対するポジショニングシステムの向き、あるいは対応する回転行列および並進行列は、既知であるため、現在使用されている車両の後車軸または車両の基準座標系に対するポジショニングシステムの回転行列は、車両の変更のたびにポジショニングシステムの較正ルーチンの助けを借りて決定される。
【0042】
並進行列の比較的小さい誤差の影響ゆえに、任意の車両の後車軸までのポジショニングシステムの三次元距離を、例えばポケット定規または接触測定アームの助けを借りて測定することができる。
【0043】
基準センサシステム、すなわちポジショニングシステムの基準座標系に対する既知の外部較正と、後車軸に対するポジショニングシステムの較正とを形式的に組み合わせることによって、車両または後車軸に対する基準座標系の外部較正を計算することができる。
【0044】
特に好ましい実施形態によれば、較正済み基準センサシステムが任意の車両に搭載され、基準センサシステムの搭載後に、位置センサによって、任意の車両の後車軸に対する位置センサの回転行列が決定され、前記任意の車両の前記後車軸に対する前記位置センサの前記並進行列が測定されることが提供されてもよい。
【0045】
上記で説明したように、基準位置センサシステムの使用は、外部較正オブジェクトおよび位置マーカとは無関係であることを提供することが特に有利である。
【0046】
とくに、本車両にかかわらず、さらなる装置を必要とせずに任意の場所で基準センサシステムを使用することが可能である。したがって、この方法の助けを借りて、可搬型基準センサシステムを、好都合なことに、車両を基準センサ環境が取り付けられた状態で外部較正装置まで走行させる必要なく、都市交通などの実際の車両環境において、或る車両によって別の車両へと取り付けて較正することができる。これにより、位置決定のための時間および費用を節約することができ、試験シリーズの管理を簡素化することができ、外部較正装置のリソースを節約することができる。
【0047】
この課題は、装置によってさらに解決される。装置は、方法の文脈においてすでに上述したすべての特徴を、個別に、または互いに組み合わせて備えることができ、逆もまた同様である。
【0048】
本発明によれば、可搬型基準センサシステムを較正するための方法を実行するための装置が提供され、この装置は、車両に取り付けることができる可搬型基準センサシステムを備え、基準センサシステムは、光学センサおよび少なくとも1つの位置センサを備える。
【0049】
したがって、この装置は、本発明による方法および使用を実行することができる。
【0050】
好ましい実施形態によれば、可搬型基準センサシステムは、車両の屋根に少なくとも部分的に取り付け可能である。好ましくは、基準センサシステムは、任意の市販の車両の屋根に搭載することができるルーフボックスを備える。とくには、基準センサシステムを、車両に着脱可能に接続することができ、好ましくは、例えば車両に差し込み、ねじ込み、クランプし、あるいは吸い付けることが可能である。好ましくは、例えば基準センサシステムを動作させるための電力供給およびデータ転送に必要なインフラストラクチャを、車両のトランク内に収容することができる。
【0051】
これは、基準センサシステムを或る車両から別の車両に迅速に変換できるという利点を有する。さらに、車両の屋根に配置されるとき、基準センサシステムは、車両環境の全体的な360°の基準データセットを生成することが可能である。
【0052】
好ましくは、基準センサシステムは、AVLダイナミックグラウンドトゥルース(DGT)システムである。
【0053】
好ましい実施形態によれば、可搬型基準センサシステムは、光学センサ、および少なくとも1つの位置センサまたはポジショニングシステムを備える。さらに好ましくは、基準センサシステムは、少なくとも1つの演算ユニットを備える。基準センサシステムは、さらに好ましくは、メモリユニットを備える。
【0054】
光学センサは、好ましくは、ライダセンサ、レーダセンサ、カメラ、超音波センサ、赤外線センサ、およびこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つである。
【0055】
位置センサは、航法衛星システムからの信号の受信機であってもよい。
【0056】
好ましくは、基準センサシステムから取得されたセンサデータを、演算ユニットによって処理し、メモリユニットに記憶することができる。
【0057】
すべてのセンサユニットのカバレッジは、好ましくは、基準データをできるだけ多くの先進運転者支援システム(ADAS)機能に使用できるようにするために、車両の周囲の360°における車両環境の最大カバレッジのために最適化される。
【0058】
好ましい実施形態によれば、車両は、車両センサシステムを備え、したがって、車両センサシステムの取得したセンサデータを、車両環境の基準センサシステムの取得した環境データと比較することができる。車両センサシステムは、好ましくは、運転者支援システム(ADAS)の少なくとも一部である。
【0059】
とくに、車両センサシステムは、動的および静的なオブジェクトを車両に対して検出、分類、および位置特定することができるように、車両に対して較正される。とくには、車両に対する基準センサシステムの第3の位置を装置によって決定することができるため、センサデータの比較が可能であり、したがって動的および静的なオブジェクトも、車両に対して検出、分類、および位置特定することができる。
【0060】
出願書類に開示されたすべての特徴は、すべてのカテゴリの請求項に関して、適切な表現にて対応するやり方で開示され得る。
【0061】
本発明のさらなる目的、利点、および有用性が、添付の図面および以下の説明を参照して解説される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】基準センサシステムの基本的な要件を示している。
図2】第1のプロセスステップの図を示している。
図3A】さらなるプロセスステップの図を示している。
図3B】基準センサシステムを使用するための用途または方法を示している。
図4】基準センサシステムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図において、同一の構成要素は、対応する参照符号を有すると理解されるべきである。分かりやすくするために、いくつかの構成要素は、一部の図においては参照符号を持たず、他の場所で指定されている場合がある。
【0064】
基準センサシステム1の主な用途は、ADAS/ADセンサおよびシステムの開発および検証段階において、環境の独立した高精度の基準画像を生成することであり、この基準画像に対して、被試験システム(SUT)または車両センサ技術を試験することができる。
【0065】
これを可能にするために、車両センサシステムおよび基準センサシステムのデータは、一方では、時間に関して同期して記録されなければならず、他方では、基準座標系、すなわち基準座標系7および車両座標系8に関して、互いに連携されなければならない。
【0066】
例えば、車両座標系8と基準センサシステム1の基準座標系7との間のわずか1°の角度オフセット13が、図1に見られるように、三角法により、100メートルの距離において、検出される物体の位置が横方向に約1.75メートルずれることにつながる。
【0067】
したがって、100メートルの距離における約0.35メートルの位置ずれに関連して、基準センサシステム1の外部較正の要件として、0.2°までの最大角度オフセット13が、許容可能であると定められる。絶対並進較正誤差は距離に比例することがなく、最大0.05メートルのずれを達成することができるため、この要件は無視することができる。
【0068】
精度基準に加えて、とりわけ較正プロセスにおける較正データの記録に関して、さらなる機能的要件が保証されなければならない。
-高度な再現性:プラグアンドプレイの基準システムとして、基準センサシステム1は、生産終了時に較正されなければならず、すべての関連の機能チェックが実行されていなければならない。使用される較正/試験ルーチンは、プロセス安全かつ再現可能でなければならない;
-較正データの記録の時間効率の良い実行;
-較正および試験報告の自動生成。
【0069】
これらの要件を満たすために、開発の初期段階で、定義された外部較正オブジェクト9を有する較正試験スタンドを使用することを決定した。オンラインまたは自己較正とは対照的に、精度が、既知の較正パターン10および較正オブジェクト9の定義された位置ゆえに、より正確であり、検証可能である。好ましくは、監視アルゴリズムは、現場またはフリート試験におけるセンサ較正の品質をさらに監視する。
【0070】
車両1の車両座標系9は、好ましくは、車両2の後車軸12の中心に原点を有する。車両座標系9の軸は、これらの軸が前方向、高さ方向、および横方向を向き、各々が互いに直交するように向けられている。基準センサシステム1の基準座標系8も、図1に示されており、この図においては、例えば中央ライダ5などの固定のセンサに原点を有する。
【0071】
基準座標系8と車両座標系9とを互いに較正できるようにするために、まず基準センサシステム1を較正する必要がある。
【0072】
本発明によれば、光学センサ3と少なくとも1つの位置センサ6とを有する可搬型基準センサシステム1を較正するための方法が実行され、この方法は、以下の方法ステップを含む。
a)基準センサシステム1の光学センサ3を、各々のセンサの座標系が基準座標系7に対して較正されるように、各々のセンサ3、6の回転行列および/または並進行列を決定することによって所定の基準座標系7に対して較正し、それぞれの回転行列および/または並進行列は、外部較正オブジェクト9を検出することによって決定される。
b)位置マーカ11を検出することによって位置センサ6を基準座標系7に対して較正することによって、位置センサ6の座標系の車両座標系8に対する較正を、回転行列および/または並進行列を決定することによって実行する。
【0073】
方法ステップa)が、図2に例示的に示されており、基準センサシステム1が、較正ホール16内に配置され、好ましくは可動テーブル17上に配置されている。さらに、較正ホール16内に、較正パターン10を有する複数の外部較正オブジェクト9が配置されている。
【0074】
とくに好ましい実施形態によれば、光学センサ3を較正するステップにおいて、基準センサシステム1を、較正オブジェクト9を光学センサ3によって検出できるように、並進運動および/または回転運動によって較正オブジェクトに対して移動させる。光学センサ3は、とくに好ましくは、カメラ4である。基準センサシステム1の回転運動および/または並進運動を、テーブル17を相応に移動させることによって実行することができる。
【0075】
相対移動をより容易にするために、基準センサシステム1を車両2に搭載するのではなく、例えばテーブル17上に配置し、基準センサシステム1を有するテーブル17を較正オブジェクト9に対して移動させることも好ましいかもしれない。
【0076】
さらに好ましい実施形態によれば、検出された各々の較正オブジェクト9について、較正オブジェクト9のそれぞれの法線ベクトルを生成することによって、それぞれの回転行列および/または並進行列を生成することができる。
【0077】
それぞれの生成された回転行列および/または並進行列は、例えば中央ライダセンサ5’によって示される基準座標系7に対してそれぞれの光学センサ3を較正する。
【0078】
このようにして、基準センサシステム1のすべての光学センサ3を、対応する回転行列および/または並進行列を決定することによって、基準座標系7に対して較正することができる。好ましくは、基準座標系7を指定するセンサは、基準座標系7を指定するため、それ自体に対して較正されることがない。
【0079】
基準センサシステム1のすべての光学センサ3が、今や基準座標系に対して較正される。
【0080】
ステップb)において、位置センサ6またはポジショニングシステム6が、基準座標系7に対して較正される。しかしながら、これには光学的較正が利用できないため、多段階較正が提供される。
【0081】
後述される多段階較正プロセスは、較正ホール16内で、外部基準座標系7から車両座標系較正への転換を介して実施され、この理由で、この較正ステップのために、基準センサシステム1は車両2に取り付けられる。
【0082】
とくに好ましくは、位置マーカ11を、いくつかの外部カメラ15を備える外部カメラシステム14によって検出することができる。例えば、外部カメラシステム14は、ホール16に設置または配置されてよい。とくに好ましくは、外部カメラシステム14は、3Dカメラシステムである。
【0083】
外部カメラシステム14によって正確に検出される位置マーカ11が、後車軸12またはホイールハブが車両座標系8に対応するように、車両2の後車軸12またはホイールハブに取り付けられるとともに、較正オブジェクト9に取り付けられる。中央ライダ5’は、較正オブジェクト9に対する中央ライダ5’の相対位置を検出する。外部カメラシステム14は、車両座標系8に対する較正オブジェクト9の位置を決定する。これにより、車両2への外部較正基準センサシステム1の回転行列および/または並進行列を実行することが可能になる。
【0084】
ポジショニングシステム6の内部較正ルーチンの助けを借りて、ポジショニングシステム6と後車軸12、すなわち車両座標系8との間の回転行列が決定される。
【0085】
図3Aが、基準センサシステム2を較正するための上述の手順を示している。
【0086】
矢印Aが、矢印BおよびCで表される転換によってのみ実行することができる手順ステップb)を示している。
【0087】
矢印Bは、基準座標系に対する後車軸12、したがって車両座標系8の位置が知れるように、後車軸12上の位置マーカ11を認識することに対応する。
【0088】
矢印Cは、ポジショニングシステム6と後車軸12、すなわち車両座標系8との間の回転行列を決定するポジショニングシステム6の内部較正ルーチンによる手順のステップに対応する。
【0089】
これにより、基準センサシステム1が較正され、すなわち、すべてのセンサ3、6が基準座標系7に対して較正される。
【0090】
図3Bが、較正された基準センサシステム1の使用を示しており、較正された基準センサシステム1が、任意の車両2に搭載される。車両座標系8が変化したことにより、基準座標系7に対する車両座標系8の較正が必要になる。
【0091】
図3Bによれば、基準センサシステム1が較正されているため、矢印Aが今や既知である。さらに、ポジショニングシステム6の内部較正ルーチンゆえに、矢印Cが既知であり、したがって回転行列が既知である。並進行列は、ポジショニングシステム6と後車軸12との間の三次元距離の単純な測定によって決定可能である。
【0092】
矢印Aおよび矢印Cを知ることによって、いまだ必要とされている矢印Bを推測することが可能であり、したがって較正ホール16における較正を省略することができる。
【0093】
図4が、基準センサシステム1の斜視図を示している。
【0094】
基準センサシステムは、一方ではLIDARセンサ5、5’およびカメラ4として設計されているいくつかの光学センサ3を備える。さらに、少なくとも1つの位置センサ6を有するポジショニングシステム6が示されている。中央LIDAR 5’とも呼ばれるLIDAR 5’が、基準座標系7を定める。他のLIDARセンサ5は、側方LIDARセンサと呼ばれる。
【0095】
各々のセンサ4、5は、基準座標系に対して較正された自身の座標系を有する。前方または中央カメラ4’の座標系が、一例として示されている。
【0096】
上記で説明した実施形態は、本発明による装置の第1の実施形態にすぎないと理解される。この点で、本発明の実施形態は、これらの実施形態に限定されない。
【0097】
出願書類に開示されたすべての特徴は、それらが個別に、または組み合わせにて、先行技術と比較して新規である場合、進歩性があると主張される。
【符号の説明】
【0098】
1 基準センサシステム
2 車両
3 光学センサ
4 カメラ
5 LIDAR
5’ 中央LIDAR
6 ポジショニングシステム、位置センサ
7 基準座標系
8 車両座標系
9 外部較正オブジェクト
10 較正パターン
11 位置マーカ
12 後車軸
13 角度、角度オフセット
14 外部カメラシステム
15 外部カメラ
16 較正ホール
17 テーブル
図1
図2
図3A
図3B
図4