(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】送電装置およびその通信方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20240614BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240614BHJP
H02J 50/60 20160101ALI20240614BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H02J50/60
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2023065210
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2021094574の分割
【原出願日】2013-04-19
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七野 隆広
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-249364(JP,A)
【文献】特開2012-016170(JP,A)
【文献】特開2006-314181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 -50/90
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置であって、
受電装置に無線で送電する送電手段と、
受電装置による負荷変調を介した通信により、当該受電装置と通信を行う第1通信手段と、
Bluetooth(登録商標)の規格に準拠する通信を受電装置と行う第2通信手段と、
を有し、
前記第2通信手段は、受電装置のアドレス情報を含む第1信号を受信し、
前記第1通信手段は、受電装置のアドレス情報を含む第2信号を受信し、
前記第2通信手段は、前記第1信号に含まれるアドレス情報と前記第2信号に含まれるアドレス情報が同じ場合、前記第1信号と前記第2信号とを送信した受電装置に第3信号を送信する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記第2通信手段は、前記受電装置と、送電する電力のパラメータに関する通信を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記第3信号は、乱数を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の送電装置。
【請求項4】
送電装置の通信方法であって、
受電装置に無線で送電する送電工程と、
Bluetooth(登録商標)の規格に準拠する通信により、受電装置のアドレス情報を含む第1信号を受信する第1受信工程と、
受電装置による負荷変調を介した通信により、当該受電装置のアドレス情報を含む第2信号を受信する第2受信工程と、
前記第1信号に含まれるアドレス情報と前記第2信号に含まれるアドレス情報が同じ場合、前記第1信号と前記第2信号とを送信した受電装置に第3信号を送信する送信工程と、を含む
ことを特徴とする通信方法。
【請求項5】
請求項4に記載の通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線電力伝送システムの技術開発は広く行われている。ところで、送電装置の送電可能範囲内に金属片などの異物が存在する場合、当該異物内に渦電流が流れ、意図しない発熱が生じる。そのため、無線電力伝送システムにおいては、異物への影響を考慮しつつ、受電装置に適切な送電を行う必要がある。例えば、特許文献1では、受電装置に送電アンテナのQ値測定回路を設け、Q値の測定結果により異物検出を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、受電装置に適切に送電する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の問題点を解決するため、本発明に係る送電装置は以下の構成を備える。すなわち、送電装置は、
受電装置に無線で送電する送電手段と、
受電装置による負荷変調を介した通信により、当該受電装置と通信を行う第1通信手段と、
Bluetooth(登録商標)の規格に準拠する通信を受電装置と行う第2通信手段と、
を有し、
前記第2通信手段は、受電装置のアドレス情報を含む第1信号を受信し、
前記第1通信手段は、受電装置のアドレス情報を含む第2信号を受信し、
前記第2通信手段は、前記第1信号に含まれるアドレス情報と前記第2信号に含まれるアドレス情報が同じ場合、前記第1信号と前記第2信号とを送信した受電装置に第3信号を送信する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、受電装置に適切に送電する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る電力伝送システムの全体構成図である。
【
図2】電力伝送システムにおける送電範囲周辺の状態を例示的に示す図である。
【
図5】送電部113と検出部103の動作を説明するタイミング図である。
【
図6】送電装置の動作を説明するタイミング図である。
【
図7】システム状態記憶部105が記憶するフラグを例示的に示す図である。
【
図8】送電装置のID記憶部106が記憶する情報を例示的に示す図である。
【
図9】受電装置のID記憶部121が記憶する情報を例示的に示す図である。
【
図10】検出部103の動作フローチャートである。
【
図11】送電装置100におけるBT制御の動作フローチャートである。
【
図12】送電装置100における送電制御の動作フローチャートである。
【
図13】受電装置101におけるBT制御の動作フローチャートである。
【
図14】受電装置101における受電制御の動作フローチャートである。
【
図15】インピーダンス記憶部110が記憶する情報を例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施の形態はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
【0009】
(第1実施形態)
本発明に係る電力伝送システムの第1実施形態として、無線送電を行う送電装置100と受電装置101を含む無線電力伝送システムを例に挙げて以下に説明する。
【0010】
<装置構成>
図1は、第1実施形態に係る電力伝送システムの全体構成図である。送電装置100と受電装置101は媒体102を介して電力伝送を行う。なお、以下で詳述するが、送電装置と受電装置とは、無線送電の制御に使用する制御情報のやりとりを、各装置が備える通信部を介して行う。そのため、送電装置と受電装置との間の通信路の確立、切断の制御に関しても併せて説明する。
【0011】
まず、送電装置100の構成について説明する。検出部103は、送電部113を構成するE級増幅器の直流電圧源401の出力インピーダンス値を検出する(以後Z検出という)機能部であり、詳細については後述する。制御部104は、検出部103の検出結果に応じて送電装置100を制御する機能部である。システム状態記憶部105は、電力伝送システムの状態を記憶する機能部であり、詳細は
図7を参照して後述する。ID記憶部106は、受電装置101の識別情報を記憶する機能部であり、詳細は
図8を参照して後述する。
【0012】
第1タイマ107、第2タイマ108、第3タイマ109は、システムの動作状態に応じて使い分けられるタイマであり、詳細は後述する。インピーダンス記憶部110は、検出部103によるインピーダンス値の検出結果を記憶する機能部であり、詳細は
図15を参照して後述する。エラー解除スイッチ111は、システムのエラー状態を解除する為、例えば、ユーザからの操作を受け付ける機能部である。表示部112は、無線電力伝送システムに関する情報を表示する機能部であり、例えばエラー情報を表示する。
【0013】
送電部113は、媒体102を介して送電される電力を送電アンテナ115に供給する。ここでは、送電部113はE級増幅器で構成されるものとして説明する。共振制御部114は、送電アンテナ115、受電アンテナ125および媒体102で構成される伝送路の共振周波数および特性インピーダンスを制御する機能部である。
【0014】
通信部116(送電装置側通信手段)は、送電アンテナ115と受電アンテナ125間で伝送する電力に関する制御信号の送受信を行う機能部である。なお、当該制御信号の送受信は、図示しない通信用アンテナを介して行う。第1実施形態においては、通信部116は、Bluetooth(登録商標)規格(以後BTという)に対応したものとするがその他の通信規格に対応したものでもよい。また、ここでは通信部116はBT規格のマスタ機器として機能する。また、詳しくは後述するが、送電装置100は、SDP(Service Discovery Protocol)を利用して、自身が提供するサービスを周囲の機器にアナウンスするよう構成されている。ここでは、自身が提供するサービスとして、ワイヤレス充電器(Wireless Charger)という名称のサービスを提供していることをアナウンスするものとする。
【0015】
次に、受電装置101の構成について説明する。受電部117は、外部装置(ここでは、送電装置100)から送電される電力を受電する機能部である。負荷118は受電部117が受電した電力を消費するが、ここでは充電回路および電池で構成される。通信部119(受電装置側通信手段)は、送電アンテナ115と受電アンテナ125間で伝送する電力に関する制御信号の送受信を行う機能部である。通信部116と同様にBT規格に対応したものである。ここでは通信部119はBT規格のスレーブ機器として機能するものとして説明する。
【0016】
比較部120は、受電アンテナ125で受信した情報と通信部119で受信した情報を比較する機能部である。ID記憶部121は、受電アンテナ125で受信した情報と通信部119で受信した送電装置100の識別情報を記憶する。第4タイマ122および第5タイマ123は、システムの動作状態に応じて使い分けられるタイマであり、詳細は後述する。
【0017】
表示部124は、無線電力伝送システムに関する情報を表示する機能部であり、例えばエラー情報を表示する。受電アンテナ125は、送電アンテナ115と電磁的に結合し電力を受電する機能部である。切替え部125は、受電アンテナ125を共振部128または高抵抗127に接続する機能部である。
【0018】
高抵抗127は、例えば数メガオーム程度の定抵抗である。受電アンテナ125と定抵抗117とを接続することにより、送電アンテナ115からみた受電アンテナ125のインピーダンスが、ハイインピーダンス(以後Hi-Zという)となるよう構成されている。なお、Hi-Zにすることにより受電アンテナ125を流れる電流はほぼゼロとなる。
【0019】
共振部128は、電力伝送路を特定のインピーダンスで共振させるための機能部である。ここで、電力伝送路は、共振制御部114、送電アンテナ115、伝送路となる媒体102、受電アンテナ125とにより構成される。なお、特性インピーダンス129は、負荷切替え部130から共振回路を見た場合の特性インピーダンスであり、ここでは値がZoであるとする。
【0020】
負荷切替え部130は、抵抗値がZoと略等しい整合抵抗132、負荷制御部133、および中抵抗131を切り替える機能部である。中抵抗131は、高抵抗127に比べて抵抗値は低く、整合抵抗122と比較して抵抗値は高い抵抗値を有する。中抵抗131は、負荷切替え部130を接続することで、送電アンテナ115からみた受電アンテナ125のインピーダンスを中インピーダンス(以後Md-Zという)にする為のものである。送電アンテナ115からみた受電アンテナ125のインピーダンスをMd-Zにすることにより受電アンテナ125および中抵抗131に微小電流が流れることになる。
【0021】
負荷制御部133は、負荷118の消費電力に応じて変化する負荷インピーダンスを、特性インピーダンス119(Zo)と整合させる動作を行うインピーダンス変換回路であり、DC-DCコンバータなどで構成される。なお、負荷インピーダンスとは、負荷制御部133から負荷118を見たインピーダンスを意味する。
【0022】
なお、以降ではインピーダンス変換の動作を負荷インピーダンス制御と表現する。負荷制御部133および整合抵抗132は共振部128とのインピーダンス整合をとるという点では同じ機能である。ただし、負荷制御部133は負荷118のインピーダンス変化を検出した後、インピーダンス変換を行う為、動作が安定するまで一定の時間を要する。一方、整合抵抗132は定抵抗である為動作が安定するまでの時間はかからない。
【0023】
<送電範囲周辺の状態におけるインピーダンス>
図2は、電力伝送システムにおける送電範囲周辺の状態を例示的に示す図である。なお、通信範囲200は、送電装置100の通信部116による通信が可能な範囲を示している。送電範囲201は、送電アンテナ115による送電が可能な範囲を示している。
図2に示されるように、通信範囲200は送電範囲201よりも広く、通信範囲200は送電範囲201全体を包含するよう構成されている。
【0024】
図2(a)は、送電範囲201に何も配置されていない状態を示している。すなわち、送電範囲201には、受電装置101も異物202も存在しない。
図2(b)は、送電範囲201に異物202のみが存在する状態を示している。
図2(c)は、送電範囲201に受電装置101のみが存在する状態を示している。ただし、
図2(c)においては、送電装置100は、受電装置101に対して送電は行っていない。
図2(d)は、受電装置101が送電範囲201に存在する点は
図2(b)と同じであるが、送電装置100は、受電装置101に対して送電を行っている。なお、矢印202は、送電を行っていることを概念的に示している。
【0025】
送電装置100は、送電範囲201に存在する物体が異物202である場合(
図2(b))、送電を行わないように制御する必要がある。一方、送電装置100は、送電範囲201に存在する物体が受電装置101である場合(
図2(c))、送電を行うよう制御する必要がある。
【0026】
図3は、検出部103の動作を説明する図である。
図3は送電アンテナ115、受電アンテナ125および異物202で構成される。電圧V1は、送電アンテナ115の両端の電圧を示している。電流I1は、受電アンテナ125を流れる電流を、電流I2は、異物202を流れる電流を示している。Zは受電アンテナ125のインピーダンス値である。
【0027】
電圧V1の値は、電流I1と、電流I2によって変化する。よって、
図2(a)のように送電範囲201に異物202および受電装置101がない状態の電圧V1(ここではV_initという)は、
図2(b)のように送電範囲201に異物202がある状態の電圧V1と異なる値を示す。つまり、送電装置100は送電範囲201に異物202および受電装置101がない状態の電圧V_initを予め記憶しておけば、
図2(b)の状態で電圧V1を検出し、V_initと比較することで、異物202を検出できる。また、
図2(c)のように送電範囲201に受電装置101が存在する場合も、同様に、電圧V1はV_initと異なる値を示す。つまり、送電装置100は、V_initと電圧V1を比較することで、異物202又は受電装置101が送電範囲201にあることを検出できる。
【0028】
ところで、受電アンテナ125を流れる電流I1の大きさは、インピーダンスZを変化させることで制御可能である。インピーダンスZをHi-Z(例えば無限大)とすれば、電流I1はゼロとなる。
図2(c)のように送電範囲201に受電装置101がある場合、前述のように電圧V1はV_initと異なる値を示す。この状態において受電装置101がインピーダンスZをHi-Z、つまり電流I1がゼロになるように制御したとすれば、電圧V1はV_initと等しくなる。
【0029】
図2(c)の状態において、送電装置100は、異物202又は受電装置101が送電範囲201に存在することを電圧V1の変化で検出可能である。しかしながら、送電装置100は、変化要因が異物202であるのか受電装置101であるのかを判別することはできない。
【0030】
ところで、
図2(c)の状態において、受電装置101がHi-ZになるようにインピーダンスZを制御した場合、電流I1がゼロになり、電圧V1はV_initとなる。つまり、送電装置100は、送電範囲201に存在するものが受電装置101であることを判別できる。一方、受電装置101がHi-ZになるようにインピーダンスZを制御し、電圧V1がV_initと等しくない場合、送電装置100は、異物202が送電範囲201に存在することを検出できる。
【0031】
また、
図2(c)の状態において、受電装置101がMd-ZになるようにインピーダンスZを制御したとすれば、受電アンテナ125およびインピーダンスZに微小電流が流れる。そのため、受電装置101は、微小電流を検出することで送電装置100を検出することが可能である。なお、電圧V1の変化は、電圧V1を、送電アンテナ115を流れる電流で除算して得られる送電アンテナ115の入力インピーダンスの変化にも表れる。
【0032】
図4は、送電部113を構成するE級増幅器の構成を例示的に示す図である。E級増幅器は、NチャネルMOSFET405と、2個のインダクタおよび2個のコンデンサで構成される。403はゲート端子、402はドレイン端子、404はソース端子である。401はNチャネルMOSFET405に入力される直流電圧源である。送電部113は、共振制御部114を介して送電アンテナ115に接続されている。そのため、送電アンテナ115の入力インピーダンスは、E級増幅器の出力インピーダンスの変化としてあらわれることになる。また、E級増幅器の出力インピーダンスの変化は、直流電圧源401の出力インピーダンスの変化としてあらわれることになる。
【0033】
つまり、送電装置100は、
図2(a)の状態における直流電圧源の出力インピーダンス値を予め記憶しておけば、異物202又は受電装置101を検出できる。以下では、
図2(a)の状態における直流電圧源の出力インピーダンス値(初期インピーダンス値)をZ_initと表現する。
【0034】
次に、受電装置101のインピーダンスとして設定される、3つのインピーダンス値(Hi-Z、Md-Z、Zo)について説明する。
【0035】
Hi-Zは、装置保護及び装置検出の為に使用するインピーダンス値である。受電アンテナ125を含む受電回路117に不意に大電流が流れると、回路が破壊されるリスクがあり、回路保護の観点から大変危険である。そこで、受電装置101のインピーダンスをHi-Zにすることで、原理的に受電回路117を流れる電流I1をゼロにでき、リスクを低減できる。よって、回路保護の観点から受電装置101は出来る限りHi-Zであるようにする。また、前述したように、送電装置100は、電圧V1の変化を検出することによって異物202か受電装置101の少なくとも一方が送電範囲201に存在するとを検出できるものの、何れであるかは判別できない。この時に、受電装置101のインピーダンスをHi-Zにすることで、送電装置100による判別を可能にする。
【0036】
Md-Zは、装置検出の為に使用するインピーダンス値である。前述の通り、受電装置101はインピーダンスをMd-Zにすることにより、送電装置100を検出することができる。また、受電アンテナ125を流れる微小電流により送電アンテナ115の電圧V1は変化する為、受電装置101のインピーダンスをMd-Zとすれば送電装置100も受電装置101を検出できる。
【0037】
Zoは、伝送効率を算出する際に使用するインピーダンス値である。送電アンテナ115と受電アンテナ125と間の伝送効率は、送電アンテナの出力インピーダンス(
図3では出力インピーダンスZ)と負荷のインピーダンスとの間で整合が取れていない場合、反射により効率が低下する。そのため、送電装置100は、受電装置101に送電を開始する前に送受電アンテナ間の伝送効率を算出し、あまりにも低効率な場合は送電をしない方がよい。伝送効率を算出する際に、Hi-Z、Md-Zの場合、受電アンテナと負荷のインピーダンス整合が取れず反射が大きい為、送受電アンテナ間の伝送効率を正確に算出できない。よって伝送効率を算出する時に、受電アンテナの出力インピーダンスZoと整合が取れるように受電装置101のインピーダンスをZoにする。当然ながら、伝送効率を向上させるため、送電装置100から電力を受電する際にも受電装置101のインピーダンスをZoにする。
【0038】
<送電装置の検出部の動作>
図5は、送電部113と検出部103の動作を説明するタイミング図である。横軸は時間である。送電部113は、時間T1から時間T2の間、送電アンテナ115を介して、検出部103がZ検出を行う為の検出信号502を送電する。また、時間T2から時間T3の間、送電アンテナ115を介して、通信部116に対し固有に割り当てられたアドレスであるBTアドレスをBTアドレス信号503で送電する。
【0039】
検出部103は、時間T1から時間T3の間、直流電圧源401のインピーダンスを検出する。四角504は検出部103がZ検出を行っていることを示す。また、四角504の高さは、Z検出したインピーダンスの大きさを概念的に示している。例えば、
図2(a)の場合、四角504の高さは、Z_initに対応する。以下の説明では、検出信号502とBTアドレス信号503を合計した506を以後の説明において「パルス」と表現する。
【0040】
<各種記憶部に記憶される情報>
図7は、システム状態記憶部105が記憶するフラグを例示的に示す図である。
【0041】
送電フラグ700は、送電装置100が送電を開始する時に「1」に設定され、送電を停止する時に「0」に設定されるフラグである。保留フラグ701は、制御部104が判別を行う間送電を停止する時に「1」に設定され、そうでない時に「0」に設定されるフラグである。禁止フラグ703は、送電を禁止する時に「1」が設定され、そうでない時に「0」が設定されるフラグである。装置フラグ704は、送電装置100の通信部116と受電装置101の通信部119との間でBT接続がなされている場合に「1」が設定され、そうでなければ「0」が設定されるフラグである。
【0042】
図8は、送電装置のID記憶部106が記憶する情報を例示的に示す図である。インピーダンス変化の要因が受電装置101であると制御部104により判別された後、受電装置101のBTアドレスが、記憶領域800に記憶される。また、制御部104が受電装置101とのBT接続を切断した場合、対応する受電装置101のBTアドレスを記憶領域800からクリアする。
【0043】
図9は、受電装置のID記憶部121が記憶する情報を例示的に示す図である。送電部113が送電アンテナ115を介して送電するパルス506を受電アンテナ125で受信し、パルス506に含まれるBTアドレスを検出した際に、検出したBTアドレスを記憶領域900に記憶する。また、送電装置100が送電を停止した際、つまり保留フラグまたは禁止フラグが「1」の場合に、受電装置101は、記憶領域900に記憶されたBTアドレスを消去する。
【0044】
一方、記憶領域901に記憶されるBTアドレスは、送電装置100の通信部116を介して受電装置101の通信部119が受信した送電装置100のBTアドレスである。送電装置100が後述するInquiryメッセージを送信し、受電装置101がInquiryメッセージを受信した際に、受電装置101はInquiryメッセージのヘッダ情報から送信元である送電装置のBTアドレスを検出する。そして、検出したBTアドレスを記憶領域901に記憶する。また、送電装置100と受電装置101のBTによる接続が切断した場合は、受電装置101は記憶領域901に記憶されたBTアドレスを消去する。
【0045】
図15は、インピーダンス記憶部110が記憶する情報を例示的に示す図である。列1501のZ_nowには、検出部103によるZ検出の結果得られたインピーダンス値が記憶(上書き)される。なお、上書きに先立って、検出部103は、列1500のZ_beforeにZ_nowの内容をコピーする。こうすることで、Z_beforeには前回のZ検出におけるインピーダンス値が記憶され、最新のZ検出の結果であるZ_nowと比較することが可能になる。
【0046】
<電力伝送システムの動作例1(異物がある場合の動作)>
図6は、送電装置の動作を説明するタイミング図である。特に、
図6(a)は、時間Ta4において、異物202が送電範囲201に入った場合の送電装置100のタイミング図であり、横軸は時間である。また、
図10は、検出部103の動作フローチャートである。
【0047】
まず、
図2(a)の状態、すなわち、何も配置されていない初期状態における送電装置100の動作について説明する。
図2(a)に示す状態において、システム状態記憶部105は、行705に示すフラグが記憶された状態となっている。行705によれば、送電装置100は送電を行っておらず、送電フラグ700は「0」である(S1000でYES)。
【0048】
よって、検出部103は、Z_beforeをZ_initに更新する。そして、時間Ta1において第1タイマ107をリセットする(S1002)。時間Ta2において第1タイマ107がタイムアウトすると(S1003でYES)、検出部103は、時間Ta3までの間、パルス506を送電する(S1004)。そして検出部103は時間Ta2からTa3までの間、Z検出を行う(S1005)。
【0049】
四角602は時間Ta2からTa3までの間、検出部103がZ検出を行っていることを示しており、四角602の高さはこの時検出したインピーダンスの大きさを概念的に示している。
図6(a)によれば、四角602の高さはZ_initと等しい。よって検出部103は、Z_nowにZ_initを記憶する(S1006)。
【0050】
この時のインピーダンス記憶部110に記憶された情報を行1502に示す。行1502においては、Z_beforeとZ_nowは共にZ_initであり等しい(S1011でYES)。また、行705によれば、送電フラグ700は「0」であり(S1012でNO)、禁止フラグ703は「0」(S1013でNO)、装置フラグ704も「0」である(S1016でNO)。よって、検出部103は時間Ta3において再び第1タイマ107をリセットする。
【0051】
つづいて、時間Ta4において、異物202が送電範囲201に入ったとする。すなわち、時間Ta4において、
図2(b)に示す状態に移行したとする。四角604は時間Ta4から時間Ta7の間、異物202が送電範囲201に存在することを示している。
【0052】
検出部103は、Ta5からTa6までの間Z検出を行う。なお、第1タイマ107により、Z検出はTa6においてタイムアウトするよう設定されている。この時検出したインピーダンスを四角603に示す。四角603の高さはこの時検出したインピーダンスの大きさを概念的に示しており、ここではZ1とする。
図6(a)によれば、四角602の高さZ1は、Z_initと等しくない。
【0053】
この時のインピーダンス記憶部110に記憶された情報を行1503に示す。行1503においては、Z_nowとZ_beforeは等しくない(S1011でNO)。よって検出部103は異物202か受電装置101が送電範囲201に存在すると判定する(S1018)。
【0054】
この時のシステム状態記憶部105に記憶されたフラグは行705のようになっており、送電フラグ700は「0」である(S1019でNO)。つづいて検出部103は、保留フラグ701を「1」に更新し(S1020)する。この時のシステム状態記憶部105を行706に示す。行706によれば、保留フラグ701が「1」であり、制御部104は、インピーダンス変化の要因が異物202、受電装置101のいずれによるものかを判別しなければならないことを意味している。当該判別を行う為、検出部103は、制御部104を起動させS1100(
図11)へ進む。
【0055】
図11は、送電装置100におけるBT制御の動作フローチャートである。ここでは、
図2(b)に示す状態となっており、受電装置101は存在していない。そのため、送電装置100のBT(通信部119)は起動していない(S1100でNO)。よって、制御部104は、BTをマスタとして起動する(S1101)し、BT規格において周辺のBT対応機器の問い合わせを行うInquiryメッセージを、通信部119から送信する(S1102、605)。
【0056】
ここで、受電装置101が存在すれば、Inquiryメッセージへの応答であるInquiry応答メッセージ(応答信号)が返信される。しかしながら、異物202はInquiryメッセージに応答しないので、制御部104はInquiry応答メッセージを受信しない(S1103でNO)。よって、制御部104は、時間Ta5からTa6において検出したインピーダンス変化の要因はBTに非対応であり(S1127)、異物202であると判別する(S1120)。併せて、保留フラグ701を「0」に、禁止フラグ703を「1」に更新する(S1121、S1122)。
【0057】
そして制御部104は表示部112に異物202が送電範囲201に存在する旨、もしくは送電を禁止している旨をユーザに通知すべくエラー表示を行う(S1123)。この時のシステム状態記憶部105に記憶されたフラグは行707に示すものとなっている。異物202が送電範囲201に存在する為、禁止フラグ703は「1」である。行707によれば、受電装置101とBT接続しておらず装置フラグ704は「0」である(S1124でNO)。そのため、制御部104は、異物202が送電範囲201から除去されていることを確認する為、検出部103を動作させ(S1126)、S1000に戻る(S1129)。ここでTa7において、例えば、エラー表示を見たユーザが異物202を送電範囲201から除去するとする。
【0058】
時間Ta8からTa9において、検出部103はパルスを送電し、Z検出を行う。異物202は送電範囲201から除去されているため、Ta8からTa9の間は
図2(a)の状態であり、インピーダンス記憶部110は行1502に示すものとなる。行707によれば、禁止フラグ703は「1」であるので(S1013でYES)、検出部103は異物202は取り除かれたと判定し(S1017)、禁止フラグ703を「0」に更新した後、エラー表示OFFする(S1015)。そして、検出部103はS1000の処理に戻る。
【0059】
以上のように、検出部103は、異物202と受電装置が共に送電範囲201に存在しない状態においてパルスを送電した際のE級増幅器の直流電圧源の出力インピーダンスをZ_initとして記憶する。そして、定期的に送電アンテナを介してパルスを送電し、その時の出力インピーダンスと記憶したZ_initとを比較する構成とした。これにより、送電装置100は、インピーダンス変化を検出することで、異物202及び受電装置101の少なくとも一方が送電範囲201に存在することを認識可能となる。併せて、送電装置100は、Inquiryメッセージに対する応答がないことを確認することにより、異物202であることを認識可能となる。
【0060】
なお、上述の説明においては、検出部103は、直流電圧源401の出力インピーダンスを検出する構成としたが、送電アンテナ115と異物202が電磁的に結合することで変化する他の物理量を検出するよう構成しても良い。例えば、送電アンテナ115の電圧V1を検出するよう構成しても良い。また、送電装置100は通信部116をBTのマスタとして動作させ、605においてInquiryメッセージを送信するようにしている。故にInquiryメッセージに応答しない異物を早期に判別することができる。Inquiryメッセージは受電装置101からの応答を期待するその他のパケットでもよい。また、通信部116は、BT以外の通信規格(例えば無線LAN)を用いる構成でもよい。
【0061】
<電力伝送システムの動作例2(受電装置がある場合の動作)>
図6は、送電装置の動作を説明するタイミング図である。特に、
図6(b)は、受電装置101が送電範囲201に存在する場合の送電装置100および受電装置101のタイミング図である。なお、横軸は時間、縦軸は、送電アンテナ115から見た受電装置101のインピーダンスを概念的に示している。
【0062】
また、所定の3つのインピーダンス値として、Hi-Z、Md-Z、Zo(Hi-Z>Md-Z>Zo)を示している。それぞれのインピーダンスにする為の受電装置101の制御は前述したとおりである。四角610は時間Tb1からTb2の間、受電装置101のインピーダンスはHi-Zであることを示す。四角611は時間Tb2からTb3の間、受電装置101のインピーダンスはMd-Zであることを示す。四角615は時間Tb5からTb6の間、受電装置101のインピーダンスはZoであることを示す。
【0063】
また、四角612は、時間Tb2からTb3の間、検出部103がパルス506を送電すると共にZ検出を行い、Z検出結果が点線624であることを示している。点線624とZ_initを比較すれば明らかなように、時間Tb2からTb3の間に検出部103が検出したインピーダンスは、Z_initと等しくない。
【0064】
図13は、受電装置101におけるBT制御の動作フローチャートである。受電装置101は電池残量が予め決めた閾値(例えば95%)未満であれば(S1300でYES)、時間Tb1において第4タイマ122を起動し(S1302)、受電装置101をHi-Zにする(S1303)。
【0065】
時間Tb2で第4タイマ122がタイムアウトすると(S1304)、受電装置101は、第5タイマ123を起動し(S1305)、切替え部126を共振部128に接続する(S1306)。そして受電装置101は負荷切替え部130を中抵抗131に接続し、受電装置101をMd-Zにする(S1307)。
【0066】
ここで第4タイマ122、第5タイマ123の機能について説明する。第4タイマ122は、受電装置101がHi-Zである時間を規定し、第5タイマ123はMd-Zである時間を規定している。つまり、受電装置101は、送電装置100からのパルス506を受電しなければ(後述するS1308でNO)、受電装置101はHi-Z、Md-Zの状態変化を繰り返す。
【0067】
検出部103は、時間Tb2からTb3の間、Z_initと異なるインピーダンスを検出する。そのため、検出部103は、異物202又は受電装置101が送電範囲201に存在すると分かる。
【0068】
ここで、受電装置101はインピーダンスをMd-Zにしている為、Tb2からTb3で送電部113が送電するパルス506(つまり検出信号502とBTアドレス信号503)により中抵抗131に微小な電流が流れる。そこで、中抵抗131の両端に発生する電圧を検出することで、受電装置101は、BTアドレス信号503に含まれる送電装置100のBTアドレスを取得することができる。この時点で、受電装置101は、自身が送電装置100の送電範囲201に存在することを認識できる。
【0069】
受電装置101は、パルス506(制御信号)を受電すると(S1308でYES)、前述した回路保護の観点から、第5タイマ123がタイムアウトしたか否かに関わらず、時間Tb3において受電装置101のインピーダンスを即座にHi-Zにする(S1310)。
【0070】
そして、受電装置101は、S1311で取得した送電装置100のBTアドレスをID記憶部121の記憶領域900に記憶(更新)する(S1312)。ここでは、パルス506から取得した送電装置100のBTアドレス(識別子)は「aa aa aa aa aa aa」であるとする。そして、受電装置101はBT(通信部119)を起動する(S1313)。
【0071】
一方、送電装置100は、時間Tb3の前後でインピーダンスが変化したことを検出すると、BT(通信部116)を起動し(S1101)、Inquiryメッセージを送信する(S1102、605)。
【0072】
受電装置100は、Inquiryメッセージを受信すると(S1314でYES)、Inquiryメッセージのヘッダ部に格納されている送信元機器のBTアドレスを取得し、ID記憶部121の記憶領域901に記憶(更新)する。そして、送電装置100は、ID記憶部121の記憶領域900,901に記憶された2つのBTアドレスを比較する(S1316)。
【0073】
この時のID記憶部121に記憶された2つのBTアドレスを
図9に示す。
図9によれば、記憶領域900のBTアドレスおよび記憶領域901のBTアドレスはいずれも送電装置100のBTアドレスであり、一致している(S1317でYES)。そこで、S1318において、受電装置101は、ID記憶部121に記憶しているBTアドレスに対応する機器と接続済みであるか判断する。ここではまだBT接続をされていない(S1318でNO)。そのため、受電装置101は、ID記憶部121に記憶したBTアドレスに対応する機器(この場合送電装置100)が送信したInquiryメッセージに対して、Inquiry応答メッセージ(応答信号)を送信する(S1319、613)(応答信号送信手段)。つまり、受電装置は、自身が送電範囲201に存在することを認識した上で、Inquiry応答メッセージ(応答信号)を送信する。
【0074】
送電装置100は、613のInquiry応答メッセージを受信すると(S1103でYES)、Inquiry応答メッセージの送信元が、BT接続していない装置であるか判定する。ここでは、送電装置100と受電装置101はBT接続していない(S1104でYES)為、送電装置100は受電装置101の認証処理を行う。
【0075】
ところで、BT規格の認証では、PINコードが用いられ、送電装置100と受電装置101が使用するPINコードが同一である場合に認証が成功する。そこで、送電装置100は、例えば、自身のBTアドレスをPINコードとして使用する(S1105)。また受電装置101は、S1311においてパルス506から取得した送電装置100のBTアドレスをPINコードとして使用する(S1320)。PINコードが共通化されているため、認証は成功し、送電装置100と受電装置101は同一の暗号化鍵を共有することができる。
【0076】
送電装置100は、BT規格の認証手順に基づいて初期化キーを生成し(S1106)、送電装置100内部で発生させた乱数を受電装置101に送信する(不図示)。受電装置101は、乱数を受信すると、PINコードと乱数を元に初期化キーを生成する。
【0077】
次に送電装置100は、新たに発生させた乱数を受電装置に送信する(S1107)。受電装置101は、S1107における乱数を受信すると、この乱数と、送電装置100のBTアドレスおよび初期化キーからSRES(Signal Response)メッセージを生成し、送電装置100に送信する。
【0078】
送電装置100は、SRESメッセージを受信すると(S1108)、自身が生成したSRESメッセージと比較する(S1109)。送電装置100と受電装置101が使用するPINコードは前述のように共通なので、SRESメッセージは一致し(S1109でYES)、認証は成功する(S1110、S1321でYES)。
【0079】
続いて、受電装置101は、SDP(Service Discovery Protocol)_inquiresメッセージを送信する(S1322)。送電装置100は、SDP_inquiresメッセージそれを受信すると(S1112)、提供できるサービス情報である「Wireless Charger」を含むSDP_responseメッセージを送信する(S1113)。受電装置101は、SDP_responseメッセージを受信すると(S1323)、自身が所望するサービスと、S1323で取得したサービス情報と一致しているか比較する(S1324)。ここでは、受電装置101は、負荷118である電池の充電のため「Wireless Charger」のサービスを要求しているため、一致していると判断する(S1325でYES)。
【0080】
制御部104は、受電装置101とBT接続が成功したので、装置フラグ704を「1」に更新する(S1116)。そして、制御部104は、異物202が送電範囲201に存在しないか判別する為に、受電装置101に対しインピーダンスをHi-Zにするよう指示する(S1117)。つづいて、制御部104は、検出部103を動作させ、既に説明したS1001、S1004、S1005、S1030、S1006の処理を行い、インピーダンス記憶部110を比較する(S1118)。
【0081】
ここでは、送電部113は、S1004で送電するパルス506を時間Tb4からTb5の間に送電したとする。ここでは
図2(c)に示す状態にあり、異物202は送電範囲201に存在しない。そのため、時間Ta4から時間Ta5において検出部103が検出するインピーダンスはZ_initと等しい(S1119でYES)。そのため、制御部104は、時間Tb2から時間Tb3において検出したインピーダンス変化の要因は受電装置101と判定し(S1114)、ID記憶部106の記憶領域800のBTアドレスを受電装置101のBTアドレスに更新する(S1115)。なお、受電装置101のBTアドレスは、S1112で受信したSDP_responseメッセージのヘッダなどから取得できる。ここでは、受電装置101のBTアドレス(識別子)は「bb bb bb bb bb bb」であるとする。
【0082】
図12は、送電装置100における送電制御の動作フローチャートである。また、
図14は、受電装置101における受電制御の動作フローチャートである。
【0083】
まず制御部104は、時間Tb4において、送電アンテナ115と受電アンテナ125間の伝送効率を算出する為に、インピーダンスをZoに変更する指示(Zo指示)を受電装置101に対して送信する(S1200、614)。受電装置101は、Zo指示を受信すると(S1400でYES)、受電装置101のインピーダンスをZoにし(S1401)、Zoにしたことを示すZo指示応答を送電装置100に送信する(S1402)。
【0084】
制御部104は、Zo指示応答を受信すると(S1201)、パルス506を送電アンテナ115から送電する(S1202)。受電装置101は、パルスを受電すると(S1403でYES)、電圧値または電力値を示す受電応答を送電装置100に送信する(S1431)。
【0085】
制御部104は、S1203で受信した受電応答がゼロでなければ(S1230)、伝送効率を導出し(S1204)、共振制御部114を動作させ(S1205)、伝送効率がピークになるように共振制御部114を制御する。伝送効率がピークになれば(S1205でYES)。伝送効率と予め記憶している閾値を比較する(S1207)。閾値以上であれば(S1208でYES)、制御部104は、受電装置101に対して効率通知(効率は高い)を送信し(S1231)、Hi-Z指示を送信する(S1232、616)。この場合、効率算出の為のパルス送電(S1202)を以後行われない。受電装置101は、効率通知を受信すると(S1405でYES)、インピーダンスをHi-Zにし(S1432)、Hi-Z指示を受けHi-Zにしたことを示すHi-Z指示応答を送電装置100に送信する。なお、閾値未満である場合(S1208でNO)は、効率通知(効率は低い)を通知し(S1220)送電を行わないよう制御するとよい。
【0086】
つづいて制御部104は、受電装置101が要求する電力量や受電回路117が許容できるピーク電圧などを示す受電パラメータを、受電装置101に要求し(S1209)、受電装置101はそれに応答する(S1408)。制御部104は、S1210で取得した受電パラメータと、自身の送電能力を比較して送電可否判定を行う(S1211)。そして、制御部104は、送電可能であれば(S1221でYES)、検出部103を動作させ、既に説明したS1001、S1004、S1005、S1030、S1006、S1011の処理を行い、インピーダンス記憶部110を比較する(S1233)。
【0087】
ここでは、送電部113は、S1004で送電するパルス506を時間Tb6からTb7の間に送電したとする。
図2(c)に示す状態では異物202は送電範囲201に存在しないので、時間Ta6から時間Ta7において検出部103が検出するインピーダンスはZ_initと等しい(S1234でYES)。そのため、制御部104は、受電装置101に送電許可通知を行い(S1213)、送電許可応答を受信すると(S1214)、受電装置101に対して充電回路に接続することを指示する(S1215)。
【0088】
なお、時間Ta6からTa7で検出部103を動作させるのは、Tb5からTb6の間に、異物202が送電範囲201に入る可能性があるからである。このように、制御部104は、送電を開始する前には必ず検出部103を動作させ異物202がないことを確認する。
【0089】
受電装置101は送電許可通知を受信すると(S1409でYES)、送電許可応答を送信する(S1410)。そして、受電装置101は充電回路接続指示を受信し(S1411)、負荷切替え部130を負荷制御部133に接続する(S1412)。更に、受電装置101は負荷制御部133を起動し(S1413)、充電回路接続応答を送信する(S1414)。
【0090】
制御部104は、充電回路接続応答を受信すると(S1216)、送電開始を通知し、時間Tb7において送電を開始する(S1217、617)。そして、制御部104は、保留フラグ701を「0」に更新し(S1218)、送電フラグ700を「1」に更新する(S1219)。
【0091】
受電装置101は、負荷インピーダンス制御を開始し(S1416)、送電開始通知を受信すると受電を開始し(S1416)、表示部124に充電している旨の表示を行う。この時、
図2(d)に示される状態にあり、システム状態記憶部105は、行708に示すフラグが記憶された状態となっている。
【0092】
時間Tb7以降は、受電装置101のインピーダンスはZoで一定である。送電部113はE級増幅器を用いているので、検出部103が検出する直流電圧源のインピーダンスも一定である。ここでは、Tb7以降において送電装置100が送電している時の直流電圧源のインピーダンスをZ_txとし、Z_txを四角618に示す。
【0093】
送電装置100は、送電を開始すると(S1000でYES)、第1タイマに比べて短い微小時間(例えば数ミリセカンド)でタイムアウトする第2タイマをリセットする。そして、タイムアウトすると、送電装置はZ検出を行う。
【0094】
ここで、送電中に異物202が送電範囲201に侵入した場合、異物202の影響を受けZ検出の結果はZ_txと異なる値を示す。この時点で、制御部104は、異物202又は
図2(d)に図示しない新しい受電装置が送電範囲201に侵入した、もしくは受電装置101が送電範囲201の外に移動し、インピーダンスが変化したことがわかる。送電装置100は、後述の処理を行い、インピーダンス変化の要因が異物202なのか新しい受電装置なのか、それとも受電装置101の移動なのかの判定を行う。
【0095】
送電フラグが「1」であるので(S1019でYES)、送電装置100は、受電装置101に対して、判定が終了するまで送電を一旦停止することを示す送電保留通知を行う(S1025)。そして、送電フラグを「0」に更新した後(S1027)、送電を停止する(S1026)。そして、送電装置100は、受電装置101に対してHi-Z指示を行う(S1028)。
【0096】
受電装置100は、送電保留通知を受信すると(S1429でYES)、送電保留通知応答を送信する。この時点で、受電装置101は、送電装置100が判定を行う為送電を保留した、もしくは受電装置101自身が送電範囲201外に移動した、のいずれかであることがわかる。また、送電が停止されると(S1430)受電装置101は、自身が送電範囲201にいるかどうかについては分からなくなるので、記憶領域900に記憶されたBTアドレスを消去する(S1422)。また、送電保留通知を受信すると、受電装置101は、送電が停止されたにも関わらず、充電表示をOFFしない(S1421)。そして、Hi-Z指示を受信すると、Hi-Zにした後(S1423)、Hi-Z指示応答を送信する。
【0097】
送電装置100は、Hi-Z指示応答を受信すると(S1029でYES)、保留フラグ701を「1」に更新する(S1020)。そして、送電装置100は、判別を行う為S1100の処理に戻る(S1023)。この時点でシステム状態記憶部105は、行709に示すフラグが記憶された状態となっている。
【0098】
この時点で受電装置101はHi-Zである為、送電装置100が行うZ検出は送電装置の影響を受けない。よって送電装置100は、
図2(a)を用いて既に説明した処理により異物202を検出する(S1120)。装置フラグ704は「1」であるので(S1126でYES)、送電装置100は受電装置101に対してエラー通知を行う(S1126)。この時点でのシステム状態記憶部105は、行710に示すフラグが記憶された状態となっている。受電装置101は、エラー通知を受信すると(S1424でYES)、充電表示をOFFし(S1425)、表示部124にエラー表示を行う(S1426)。
【0099】
送電装置100は、S1126において検出部を動作させ、S1000の処理に移行するので(S1126、S1129)、
図2(a)を使用して既に説明したように、異物202が取り除かれたことも検出できる。
【0100】
異物202が取り除かれると、装置フラグ704は「1」であるので(S1016でYES)、送電装置100は、受電装置に対してエラー解除通知を行う(S1021)。受電装置101は、エラー通知を受信すると(S1427YES)、S1400に移行し、Zo指示を待つ。以後、送電装置100は、
図6(b)を使用して説明した処理により、送電を開始する。
【0101】
また、送電中に新しい受電装置が送電範囲201に侵入した場合、新しい受電装置の影響を受けZ検出の結果はZ_txと異なる値を示す。すると送電装置100は、
図2(b)を用いて既に説明した処理により新しい受電装置を検出できる。そして、S1200において、この時点で記憶領域800に記憶されている全てのBTアドレスに対してZo指示を行う。つまり、受電装置101のBTアドレスと新しい受電装置のBTアドレスに対してZo指示を行う。そして、送電装置100は、受電装置101および新しい受電装置に対して送電を開始する。受電装置101は、S1421において、送電装置100が判定を行う間、つまり送電が停止されたにも関わらず続けて受電できる可能性がある場合は、充電表示をOFFしないようにするとよい。これにより、新しい受電装置が頻繁に送電範囲201入った場合に、その都度充電表示がOFFすることがなく、受電装置101のユーザが、充電が出来ていないといった不安を感じることがなくなる。
【0102】
なお、例えば、Inquiryメッセージに応答できるが、情報を共有しない他のBT機器が送電範囲201に存在する場合は、S1109でNOとなり、送電装置100は当該他のBT機器を異物と判別する(S1120)。
【0103】
以上説明したように、第1実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、検出部103は、異物202と受電装置101が共に送電範囲201に存在しない状態(初期状態)における直流電圧源401の出力インピーダンスをZ_initとして記憶した。そして、定期的に送電アンテナ115を介してパルスを送電し、その時の出力インピーダンスとZ_initとを比較することにより、特別な回路を付加することなく異物検出を実現することが可能となる。
【0104】
また、受電装置101においてインピーダンスを制御する機能を設けた。送電装置100の指示に従って受電装置101がインピーダンスを制御することにより、送電装置100は、異物202と受電装置101のいずれが送電範囲201に存在するかを判別することができる。また、送電装置100は、受電装置101に対しより良好な伝送効率で送電することが可能となる。
【0105】
また、送電装置は、S1234においてZ_initとZ_beforeが等しくない場合(S1234でNO)、異物と判定し(S1235,S1120)、送電を禁止する。こうすることで、時間Tb5からTb6の間に、送電範囲に異物が侵入した時は送電を禁止することが出来る。
【0106】
また、送電装置はSRESが一致しない場合は、異物と判断し送電を禁止する。これは、Wireless Chargerサービスを享受できないBT機器が送電範囲に侵入し、BTの認証処理を行った場合が該当する。その場合、送電装置はBT機器を異物と同等と捉え、送電しないようにできる。
【0107】
また、受電装置が期待する応答を返さない場合は、BTによる通信を停止してもよい。期待する応答を返さない場合とは、例えば、受電装置からZo指示応答を受信しない場合、受電パラメータ応答を受信しない場合である。
【0108】
また、送電装置はS1212において判定結果によらず送電可否判定通知を行う構成、および受電装置は通知に対して送電可否判定応答を送信する構成とした際に、送電装置が送電可否判定応答を受信しない場合である。あるいは、送電装置が、送電許可応答を受信しない場合、充電回路接続応答を受信しない場合である。
【0109】
更に、受電装置が送電開始通知に対して送電開始通知応答を送信する構成とした場合に、送電開始応答を受信しない場合、Hi-Z指示応答を受信しない場合である。また、受電装置がエラー通知に対してエラー通知応答を送信する構成とした場合に、送電装置がエラー通知応答を受信しない場合である。また、受電装置がエラー解除通知に対してエラー解除通知応答を送信する構成とした場合に、送電装置がエラー解除通知応答を受信しない場合である。また、受電装置が効率通知に対して効率通知応答を送信する構成とした場合に効率通知応答を受信しない場合である。
【0110】
以上の場合は、例えば、受電装置がなんらかの理由により通信範囲の外に移動した、または受電装置の故障、送電装置の通信部の故障などが考えられる。また、送電装置は、電波環境の悪化などによりBT通信が切断された場合も、送電を停止又は禁止する構成としてもよい。そうすることで、制御信号のやり取りが出来なくなった場合に送電を停止又は禁止することができる。
【0111】
また、受電装置は、次に期待する処理を送電装置が実行しない場合は、BTを切断し、記憶領域901のBTアドレスを消去した後、BTを停止してもよい。期待する処理を送電装置が実行しない場合とは、例えば、受電装置が送電可否判定を受信しない場合、Hi-Z指示を受信しない場合、送電許可通知を受信しない場合、充電回路接続指示を受信しない場合である。
【0112】
また、受電装置が送電装置から受電する受電量を検出する構成とした際に、受電量が0になったにもかかわらず送電保留通知を受信しない場合である。また、受電装置がS1403においてパルスを受電しない(S1403でNO)場合である。なお、S1403においてパルスを受電しない(S1403でNO)場合は、受電装置は、BTを切断する前にパルスを受電しなかった旨を示す受電不可通知を送電装置に通知してもよい。
【0113】
以上の場合は、例えば、送電範囲に存在する受電装置が、送電範囲の外に持ち去られたもしくは移動した場合や、受電装置または送電装置の故障の場合も該当する。そうすることで、送電装置および受電装置に予期せぬ事態が起きた場合にも対応できる。
【0114】
また、第2タイマを微小時間に設定する構成とすることで、異物202が送電範囲201に侵入したことを直ちに検出でき、送電を速やかに停止できる。また、第1タイマを第2タイマより長い時間に設定することで、送電を行っていない、あるいはBTを起動していない状態において、送電装置の低消費電力化を図ることができる。
【0115】
また、送電装置はInquiryメッセージ応答を受信した場合、受電装置をHi-Zにすることによって、異物が送電範囲に存在するかそうでないかを確認するようにした。そうすることで、異物が存在した場合に受電装置にエラー通知を行い、送電を禁止する旨を通知することもできる。
【0116】
また、送電装置は効率算出に先立ってZ検出を行うようにした。そうすることで、効率算出を行う前に異物を検出でき、効率算出を正確に実行することができる。また、送電装置は、送電開始に先立ってZ検出を行うようにしたので、時間Tb5からTb6の間に送電範囲に異物が侵入した場合、異物の侵入を送電開始前に認識できる。
【0117】
また、受電装置はS1429において送電保留通知を受信し、一旦受電が停止したとしても、エラー通知を受信するまで、充電表示をOFFしないようにした。そうすることで、一旦受電が停止したとしても、つづけて受電できる可能性がある場合は、充電表示をONしたままにできる。つまり、複数の受電装置が次々に送電範囲201に入ってくるような場合において、その都度充電表示がOFFになることがない。
【0118】
また、受電装置は、自身が送電範囲201に存在することを認識した上で、BTの認証処理を行うようにした。そうすることで、送電装置はBTの認証処理に成功した受電装置は送電範囲201に存在することを認識できる。また、受電装置は、認識を行った上でInquiry応答メッセージを送信するようにしたので、送電装置はInquiry応答メッセージを送信した受電装置は送電範囲に存在すると認識できる。よって送電装置は送電範囲201に存在する受電装置と通信制御を実現できる。
【0119】
また、送電装置は、通信範囲200より狭い送電範囲201で使用する送電アンテナを介して自身のBTアドレスを通知するようにした。そして受電装置は受電アンテナで取得したBTアドレスをもつ送電装置とのみ認証処理を行うようにした。そうすることで、受電装置は近接する他の送電装置とBT接続するという不具合を回避できる。
【0120】
また、受電装置は、送電装置から次に期待される指示または通知を受信しなければ、通信部を停止するようにした。そうすることで、システムの誤動作を防止することができる。また、送電装置も、受電装置から期待される応答を受信しなければ、通信部を停止し、送電シーケンスを停止するようにした。そうすることで、システムの誤動作を防止することができる。
【0121】
また、送電装置は、インピーダンス変化を検出した後に通信部を起動するようにした。そうすることで、通信部に対して無駄に電力供給をすることがなく、低消費電力を実現できる。
【0122】
また、受電装置は、電池残量が閾値より大(S1300でNO、S1418でYES)であればHi-Zにするようにした(S1301、S1441)。こうすることで、充電する必要がない受電装置は、送電装置100が実行するZ検出において影響を与えることがない。また、受電装置は、電池残量が閾値より大(S1300でNO、S1418でYES)であれば、送電装置とBT接続することがなく、受電装置および送電装置の小電力化を図ることが出来る。
【0123】
(変形例1)
以下に、他の構成について説明するが、以下のいずれかまたはその組み合わせであっても同様の効果が得られる。
【0124】
高抵抗はまた受電アンテナに発生する高周波電圧の周波数において高いインピーダンスを示すコンデンサでもよい。また高抵抗127を実装しないようにすることも考えられる。この場合受電アンテナはオープン状態となり受電アンテナを流れる電流はゼロである。つまり受電アンテナのインピーダンスを非常に高くできる。また、Z_initは、ある固定値ではなく、固定値に対して誤差を含めた値であってもよい。例えば100オーム±3%といった値であっても同様の効果が得られる。
【0125】
また、パルスは検出信号502とBTアドレス信号503とを組み合わせた構成として説明したが、BTアドレス信号503のみでもよい。また、送電装置はパルスを間欠的に送電する構成としたが、これは連続して送電する構成としても同様の効果が得られる。
【0126】
また、送電装置は、エラー解除通知(S1021)を行った後、受電装置に対してインピーダンスをMd-Zにすることを示すMd-Z指示を行い、受電装置はMd-Zにするようにしてもよい。そうすることで、受電装置は自身が送電範囲201に存在するかどうかを認識できるので、システムの誤動作を防止することができる。
【0127】
また、上述の説明においては、送電装置が送電アンテナを介して自身のBTアドレスを受電装置に通知するようにした。これは、BTアドレスに特定の演算を施したものを通知してもよい。送電装置および受電装置間で特定の演算を共有しておくことにより同様の効果が得られることに加え、セキュリティが向上する。特定の演算の例としては、所定の6バイトのビット列と、BTアドレス(6バイト)のビット列の排他的論理和をとるなどの方法がある。
【0128】
また、BTアドレスだけでなく、PINコードを併せてパルスで送電するようにしてもよい。PINコードを適宜変更する構成とすることにより、暗号鍵の複雑さが増し、セキュリティが向上する。
【0129】
また、上述の説明においては、送電装置が、送電アンテナを介して自身のBTアドレスを受電装置に通知するようにした。BTアドレスは、送電装置を識別できる他の情報であってもよい。例えば、送電装置がランダムに発生させた乱数であてもよい。その場合、送電装置は時間Tb2からTb3の間で乱数を送電し、Inquiryメッセージに乱数を付加するようにする。そして受電装置は時間Tb2からTb3において受電した乱数とInqiryに付加された乱数に関してS1316において比較しても同様の効果が得られる。
【0130】
また、受電装置はBTの認証および暗号鍵生成処理において、自身がWireless Chargerサービスを享受できることを示す情報要素を、Inquiry応答メッセージの内部に付加して送電装置に応答してもよい。例えば、Wireless Power Receiverという情報要素を付加してもよい。送電装置は受信したInquiry応答の内、情報要素を含む応答の送信元とのみ認証処理を行うことで、Wireless Chargerサービスを享受できないBT機器との間で無駄な認証処理を行うことを回避できる。
【0131】
また、上述の説明においては、送電装置はマスタとして動作し、受電装置はInquiryの送信元アドレスに基づいてInquiry応答を行うか否かを判定した。しかし、S1111において暗号鍵を共有する以前に送受信する他のパケット、すなわちスレーブからの応答を期待するその他のパケットでもよい。例えば、呼び出し(Page)時に送受信するIDパケットでもよい。
【0132】
また、BTアドレス信号503は送電装置が送電する構成としたが、受電装置が自身のBTアドレスを送電する構成としてもよい。その場合、受電装置は、例えばアンテナ切替えスイッチと共振部との接続を制御することで、送電装置が送電するパルスに負荷変調をかける。これにより、送電装置から受電装置をみたインピーダンスが変化することとなり、BTアドレスの情報を送信することができる。
【0133】
この場合は、送電装置が記憶領域900および記憶領域901を有する構成となる。送電装置は、記憶領域900には負荷変調により受信した受電装置のBTアドレスを、記憶領域901にはInquiry応答メッセージの送信元である受電装置のBTアドレスを記憶する。そして、送電装置がS1316の処理によりBTアドレスを比較して一致したBTアドレスに対して認証および暗号鍵生成の処理を行う。この場合は、送電範囲201に存在する受電装置とのみBTの認証処理を行うので、SRESは必ず一致し、他のBT機器と無駄な認証処理を行うことがない。
【0134】
また、送電装置および受電装置ともに各々のBTアドレスを送電アンテナおよび受電アンテナから送信するようにしてもよい。この場合、送電装置と受電装置は、共に、記憶領域900および記憶領域901を有する構成となる。受電装置は、
図5における時間T3において送電装置のBTアドレス信号503を受信すると、続いて受電装置のBTアドレスを送信する。この場合、受電装置は送電範囲201に存在する送電装置にのみInquiry応答を行う。また、送電装置は、送電範囲201に存在する受電装置とのみ認証処理を行う為、Wireless Chargerサービスを享受できないBT機器と認証処理を行うような無駄な処理が発生しないという効果がある。
【0135】
(変形例2)
また、通信部116および通信部119はBT規格以外の通信規格例えば無線LANに対応していても同様の効果が得られる。無線LANの場合、BTアドレスをMACアドレス、InquiryメッセージをProbeRequestメッセージ、Inquiry応答メッセージをProbeResponseメッセージに置き換えて構成すると良い。
【0136】
たとえば、認証および接続処理には、Wi-Fiアライアンスで規格化が検討されているWi-Fi Direct Service規格(以下WFDS規格という)を使用することが出来る。WFDS規格は、無線LANのアクセスポイント1台、ステーション1台の間で認証および接続処理を実現できるプロトコルである。また、送電装置および受電装置ともに各々のMACアドレスを送電アンテナおよび受電アンテナから送信する構成とする。
【0137】
そして、送電装置および受電装置は、記憶領域900および記憶領域901に記憶したMACアドレスが一致すれば、WFDSを開始するようにする。そして、送電装置および受電装置がそれぞれの記憶領域900および記憶領域901に記憶しているMACアドレスを有する無線LAN装置とのみ認証および接続処理を行うようにすれば、送電装置は送電可能範囲内に存在する受電装置と通信制御を行うことができる。
【0138】
ここで、制御信号を無線LANを使用して送受信するシステムにおいて、送電範囲201に複数台の受電装置が存在する場合を考える。アクセスポイントとして動作しているある受電装置が何らかの理由で通信範囲200の外に出たとする。すると、送電装置とアクセスポイントとして動作している受電装置との間の無線LAN接続が切断される。そのため、送電装置は残りの受電装置との間で制御信号の送受信が不可能になる。そのため、送電装置がアクセスポイントとして動作するよう構成することがのぞましい。
【0139】
ただし、WFDS規格に対応した無線LAN端末は、ステーション、アクセスポインのいずれにもなる可能性がある。そして、ステーションおよびアクセスポイントのいずれの役割を担うかは、WFDS規格におけるGroupNegotiationフェーズ(以下、GNフェーズという)で決定される。また、WFDS規格では、GNフェーズにおいて送受信する0から15までのintent値が大きい方がアクセスポイント、小さい方がステーションの役割を果たす。
【0140】
そのため、送電装置が送信するintent値は、受電装置が送信するintent値より大きくするとよい。一例として、送電装置100はGNフェーズにおいて受電装置101に送信するintent値を「15」とし、受電装置101はGNフェーズにおいて送電装置100に送信するintent値を「0」とすることで、送電装置100はアクセスポイント、受電装置101はステーションとして動作することができる。
【0141】
また、認証および接続処理を行うプロトコルとしてWFDS規格を例に説明したが、これはWi-Fi Direct規格であってもよい。
【0142】
また、送電装置および受電装置ともに各々のMACアドレスを送電アンテナおよび受電アンテナから送信する構成としたが、これは送電装置または受電装置のいずれかが送信する構成としてもよい。このように、送電装置は、無線LAN規格に基づき、送電可能範囲内に存在する受電装置と通信制御を行うことができ、送受電間で互いを識別することが可能となる。
【0143】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。