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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】ストッパー装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/00 20170101AFI20240614BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20240614BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
E05F5/00 B
E05F5/02 B
B60J5/10 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023505231
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2022004942
(87)【国際公開番号】W WO2022190744
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2021040076
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮前 仁志
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第9580951(US,B2)
【文献】特開2006-51889(JP,A)
【文献】特開2006-62633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 5/00
E05F 5/02
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、該固定部材に対して近接離反するように移動する移動部材との間に配置される、ストッパー装置であって、
前記固定部材又は前記移動部材のいずれか一方に固定されるベース部材と、
前記固定部材又は前記移動部材のいずれか他方に当接する当接部を有すると共に、前記ベース部材内に回転規制された状態で昇降可能に収容される軸部材と、
前記ベース部材に対して回転可能で且つ昇降不能に装着された回転部材と、
前記回転部材の内側において、同回転部材に対して回転規制された状態で配置されるギヤ部材と、
前記軸部材及び前記ギヤ部材の間に配置され、前記軸部材に前記ギヤ部材を仮固定させる仮固定部と、
前記ベース部材及び前記ギヤ部材の間に配置され、カム斜面及び該カム斜面に当接するカム当接部からなり、前記回転部材の所定方向の回転により、前記ギヤ部材を上昇させるカム機構とを有しており、
前記ギヤ部材は、前記回転部材の回転に連動して回転することにより、前記仮固定部による前記軸部材の仮固定状態を維持しながら、前記カム機構により前記軸部材を上昇させる構造となっており、
更に前記ギヤ部材は、上昇した状態の前記軸部材の昇降動作を規制する本固定部を有することを特徴とするストッパー装置。
【請求項2】
前記ギヤ部材は、前記回転部材の内周に沿って湾曲して延びる板状片からなる請求項1記載のストッパー装置。
【請求項3】
前記ギヤ部材は、前記本固定部の一側部から周方向に延出した延出部を有しており、該延出部に前記仮固定部が設けられている請求項2記載のストッパー装置。
【請求項4】
前記軸部材の外周面の周方向所定範囲に、軸方向に沿って複数の歯が形成されており、
前記ギヤ部材の前記本固定部の内面及び前記延出部の内面に亘って、前記軸部材の前記歯に歯合する突条部が連続して設けられている請求項3記載のストッパー装置。
【請求項5】
前記軸部材及び前記ギヤ部材の間には、前記回転部材を、前記軸部材の上昇時とは反対方向に回転させたときに、上昇した前記ギヤ部材を下降させる構造が設けられている請求項1~4のいずれか1つに記載のストッパー装置。
【請求項6】
前記仮固定部は、第1仮固定部と第2仮固定部とを有しており、
前記第2仮固定部による、前記軸部材と前記ギヤ部材との仮固定力が、前記第1仮固定部による、前記軸部材と前記ギヤ部材との仮固定力よりも大きくなるように構成されている請求項1記載のストッパー装置。
【請求項7】
前記ギヤ部材が前記カム機構により上昇するように前記回転部材を回転させる際の、回転方向における基端側に、前記ギヤ部材の前記本固定部をなす部分が配置され、前記回転方向における先端側に、前記ギヤ部材の前記第1仮固定部をなす部分が配置され、前記第1仮固定部分をなす部分と前記本固定部をなす部分との間に、前記ギヤ部材の前記第2仮固定部をなす部分が配置されるように構成されている請求項6記載のストッパー装置。
【請求項8】
前記ギヤ部材は、前記本固定部をなす部分の一側部から前記回転方向に延出した、2つの延出部を有しており、
一方の延出部に、前記第2仮固定部をなす部分となる突条部が設けられ、
他方の延出部の、一方の延出部よりも先端側に、前記第1仮固定部をなす部分となる突条部が設けられており、
他方の延出部は、一方の延出部よりも長く延出している請求項7記載のストッパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材と、該固定部材に対して近接離反するように移動する移動部材との間に配置される、ストッパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の荷室側のボディ等の固定部材の開口部には、バックドア等の移動部材が開閉可能に取付けられている。この移動部材と、固定部材との間には、移動部材が固定部材に直接衝突するのを防止して衝撃を抑制するための、ストッパー装置が配置されていることが多い。
【0003】
上記のようなものとして、下記特許文献1には、略筒状をなしたソケットと、該ソケットに回転可能に装着されたリングと、該リング内に昇降可能に収容された緩衝ヘッドとを有する、自己調整可能なストッパーを備えた緩衝装置が記載されている。
【0004】
ソケットの外周には、リングの抜け止めをするための、爪が形成されている。また、リングの上端外周からは環状のカラーが突出しており、リングの下端側には、傾斜面を有する突片(スラストランプ)が突設され、該突片の上方には、切欠きが形成されている。この切欠きに、ソケット外周の爪が係合することで、ソケットにリングが抜け止め保持される。また、リングの内周に、溝が形成されており、緩衝ヘッドの軸の外周に形成された溝に歯合している。
【0005】
そして、リングを回転させると、突片の傾斜面を介してリングが上昇し、それに伴って緩衝ストップの溝に歯合した軸が上昇し、緩衝ヘッド全体が上昇するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US9580951B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の緩衝装置では、リングを回転させる際には、ソケットの上端開口からから露出した、リングの上端外周のカラーを把持して、リングを直接回転させる必要がある。この際、突片の傾斜面によりリングが上昇しながら回転するため、リングの回転操作中に、リングからの押し上げ力が、作業者の手に作用することになり、リングの操作性が良いとは言えなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、固定部材又は移動部材に対する当接部の突出量の調整及び位置固定をする際の、回転部材の操作性を向上させることができる、ストッパー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、固定部材と、該固定部材に対して近接離反するように移動する移動部材との間に配置される、ストッパー装置であって、前記固定部材又は前記移動部材のいずれか一方に固定されるベース部材と、前記固定部材又は前記移動部材のいずれか他方に当接する当接部を有すると共に、前記ベース部材内に回転規制された状態で昇降可能に収容される軸部材と、前記ベース部材に対して回転可能で且つ昇降不能に装着された回転部材と、前記回転部材の内側において、同回転部材に対して回転規制された状態で配置されるギヤ部材と、前記軸部材及び前記ギヤ部材の間に配置され、前記軸部材に前記ギヤ部材を仮固定させる仮固定部と、前記ベース部材及び前記ギヤ部材の間に配置され、カム斜面及び該カム斜面に当接するカム当接部からなり、前記回転部材の所定方向の回転により、前記ギヤ部材を上昇させるカム機構とを有しており、前記ギヤ部材は、前記回転部材の回転に連動して回転することにより、前記仮固定部による前記軸部材の仮固定状態を維持しながら、前記カム機構により前記軸部材を上昇させる構造となっており、更に前記ギヤ部材は、上昇した状態の前記軸部材の昇降動作を規制する本固定部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固定部材に対して移動部材を近接させると、固定部材又は移動部材のどちらか一方が当接部に当接して、仮固定部により仮固定された軸部材が、当接部を介して押し込まれる。次いで、固定部材から移動部材を離反させた後、回転部材を回転させると、それに連動してギヤ部材が回転すると共に、軸部材の仮固定状態を維持しながら、カム機構により軸部材を上昇させ、更に、ギヤ部材の本固定部によって、軸部材の昇降動作が規制されるので、当接部の突出量が調整されると共にその位置が固定される。そして、回転部材の回転操作時においては、回転部材自体はベース部材に対して昇降せず、ギヤ部材のみが回転部材の内側で上昇するので、回転部材の回転操作時に、作業者に余計な力が作用せず、回転部材の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るストッパー装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同ストッパー装置の斜視図である。
図3】同ストッパー装置を構成するベース部材の拡大斜視図である。
図4】同ストッパー装置を構成するベース部の、図3とは異なる方向から見た場合の拡大斜視図である。
図5】同ストッパー装置を構成する回転部材を、図1とは異なる方向から見た場合の拡大斜視図である。
図6】同ストッパー装置を構成するギヤ部材を、図1とは異なる方向から見た場合の拡大斜視図である。
図7】同ストッパー装置において、軸部材の上昇のために、ベース部材に対して回転部材を回転させる前の状態の底面図である。
図8】同7の状態から、軸部材を上昇させるべく、ベース部材に対して回転部材を回転させた後の状態の底面図である。
図9図2のA-A矢示線における断面図である。
図10】同ストッパー装置において、ベース部材に対して回転部材を回転させる前の状態の正面図である。
図11】同ストッパー装置において、ベース部材に対して回転部材を回転させた後の状態の正面図である。
図12】同ストッパー装置における軸部材とギヤ部材との関係を示しており、左側の図は、軸部材が押し込まれる前の状態の説明図、中央の図は、軸部材が押し込まれて下降した状態の説明図、右側の図は、中央の状態から軸部材が上昇した状態の説明図である。
図13図2のB-B矢示線における断面図である。
図14】同2のD-D矢示線における断面図である。
図15図13に示す状態から、軸部材が押し込まれた場合の断面図である。
図16】同14に示す状態から、軸部材が押し込まれた場合の断面図である。
図17図15に示す状態から、軸部材が上昇した場合の断面図である。
図18】同16に示す状態から、軸部材が上昇した場合の断面図である。
図19】本発明に係るストッパー装置の、他の実施形態を示しており、同ストッパー装置を構成する軸部材の拡大斜視図である。
図20】同ストッパー装置を構成するギヤ部材の拡大斜視図である。
図21】同ストッパー装置を構成するギヤ部材を、図20とは異なる方向から見た場合の拡大斜視図である。
図22】同ストッパー装置における軸部材とギヤ部材との関係を示しており、左側の図は、軸部材が押し込まれる前の状態の説明図、中央の図は、軸部材が押し込まれて下降した状態の説明図、右側の図は、中央の状態から軸部材が上昇した状態の説明図である。
図23】本発明に係るストッパー装置の、更に他の実施形態を示しており、同ストッパー装置を構成するギヤ部材の拡大斜視図である。
図24】同ストッパー装置を構成するギヤ部材を、図23とは異なる方向から見た場合の拡大斜視図である。
図25】同ストッパー装置において、第1仮固定部による、軸部材とギヤ部材との仮固定状態を示す斜視図である。
図26図25の状態における、ベース部材のフランジ部と回転部材との関係を示しており、(а)はその底面図、(b)は要部拡大斜視図である。
図27】同ストッパー装置において、第2仮固定部による、軸部材とギヤ部材との仮固定状態を示す斜視図である。
図28図27の状態における、ベース部材のフランジ部と回転部材との関係を示しており、(а)はその底面図、(b)は要部拡大斜視図である。
図29】同ストッパー装置において、軸部材とギヤ部材との本固定定状態を示す斜視図である。
図30図29の状態における、ベース部材のフランジ部と回転部材との関係を示しており、(а)はその底面図、(b)は要部拡大斜視図である。
図31】同ストッパー装置を構成するギヤ部材の変形例を示しており、その拡大斜視図である。
図32】同変形例のギヤ部材において、図31とは異なる方向から見た場合の拡大斜視図である。
図33】同ストッパー装置の使用方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ストッパー装置の、一実施形態)
以下、図1~18を参照して、本発明に係るストッパー装置の、一実施形態について説明する。
【0013】
図13及び図14に示すように、このストッパー装置10は、固定部材1と、該固定部材1に対して近接離反するように移動する移動部材5との間に配置されて、移動部材5が固定部材1側に近接移動したときに、移動部材5が固定部材1に直接衝突するのを防止して衝撃を抑制するためのものである。また、固定部材1には、固定孔3が形成されている(図1参照)。
【0014】
固定部材1としては、例えば、車体パネルや車体フレーム、グローブボックスのボックス等が挙げられ、移動部材5としては、例えば、車両のドア(スライドドア、ハッチバックドア、バックドア等も含む)や、グローブボックスのリッド、ボンネット等を挙げることができる。
【0015】
図1に示すように、この実施形態のストッパー装置10は、固定部材1に固定されるベース部材20と、移動部材5に当接する当接部54を有すると共に、ベース部材20内に回転規制状態で昇降可能に収容される軸部材50と、ベース部材20に対して回転可能で且つ昇降不能に装着された回転部材60と、回転部材60の内側において、回転部材60に対して回転規制された状態で配置されるギヤ部材80と、回転部材60及び固定部材1の間に配置される、円環状をなしたシールリング100から、主として構成されている。
【0016】
更に、このストッパー装置10は、軸部材50及びギヤ部材80の間に配置され、当接部54が固定部材1に近接する方向に、軸部材50を押し込み可能となるように、軸部材50にギヤ部材80を仮固定させる仮固定部と、ベース部材20及びギヤ部材80の間に配置され、カム斜面39及び該カム斜面39に当接するカム当接部89aからなり、回転部材60の所定方向の回転により、ギヤ部材80を上昇させるカム機構とを有している。
【0017】
なお、軸部材50及びギヤ部材80が「昇降」するとは、ベース部材20に対する回転部材60の回転軸心C(図2参照)に沿った方向(回転軸心方向)に往復移動することを意味し、「上昇」とは、回転軸心Cの一端側の矢印C1方向に移動すること(固定部材1から離れる方向への移動)を意味し、「下降」とは、回転軸心Cの他端側の矢印C2方向に移動すること(固定部材1に近接する方向への移動)を意味する。
【0018】
また、図2に示すように、ベース部材20に対して、矢印R1に示す方向に回転部材60を回転させることで、ギヤ部材80を連動して回転させて(連れ回りさせて)、ギヤ部材80を上昇させると共に、軸部材50を上昇させることが可能となっている(詳細は後述する)。この際の、回転部材60の回転方向(ギヤ部材80がカム機構により上昇するように回転部材60を回転させる際の、回転方向)を、以下の説明で、「回転方向R1」又は「R1方向」ともいう。
【0019】
一方、回転部材60をR1方向に回転させた後、図2の矢印R2に示す方向(回転方向R1とは反対方向)に回転部材60を回転させることで、ギヤ部材80を連れ回りさせて、ギヤ部材80を下降させて初期状態に戻すことが可能となっている(詳細は後述する)。この際の、回転部材60の回転方向を、以下の説明で、「戻り方向R2」又は「R2方向」ともいう。
【0020】
なお、図面を分かりやすくするため、便宜上、図10及び図11においては、ベース部材20及びギヤ部材80のみを図示し、図12においては、軸部材50及びギヤ部材80のみを図示している。
【0021】
まず、ベース部材20について説明する。
【0022】
図3を併せて参照すると、この実施形態のベース部材20は、前記固定孔3に挿入される有底筒状をなしたベース本体21と、該ベース本体21の先端側外周に設けられ、固定部材1の表側(移動部材5に対向する側)に配置される略円環状をなしたフランジ部23と、該フランジ部23を介して前記ベース本体21と反対側に設けられ、回転部材60が外装される回転部材装着部25とを有している。
【0023】
ベース本体21は、対向配置された一対の側壁21a,21aと、該一対の側壁21a,21aに対して直交するように対向配置された一対の側壁21b,21bとを有している。両側壁21a,21aの外面は、互いに平行な平坦面状をなしている。また、各側壁21bの外面は、固定孔3の内周に適合する曲面状をなしている。
【0024】
更に、一対の側壁21a,21aの外面であって、側壁21bの基端側(底がある端部側)からは、フランジ部23に向けて碇足状をなすように斜め外方に延出した、一対の係止片29,29が延設されている。各係止片29の延出方向先端側の外面には、段状をなした係止段部29aが形成されている。そして、図13に示すように、一対の係止片29,29の係止段部29a,29が、固定孔3の裏側周縁に係止することで、固定孔3にベース部材20が固定されるようになっている。
【0025】
また、ベース部材20の内側には、軸部材50を昇降可能に収容保持する、軸収容部27が、ベース本体21、フランジ部23、及び回転部材装着部25に亘って、ベース部材20の高さ方向(軸部材50の軸方向に沿った方向)に形成されている。この軸収容部27は、前記ベース本体21の一対の側壁21a,21aに対応する位置に、互いに平行に配置されると共に、平坦面状をなした一対の内面27a,27aを有している。これらの内面27a,27によって、軸部材50が回転規制された状態でベース部材20内に収容される(詳細は軸部材50の記載にて説明する)。また、軸収容部27の、前記ベース本体21の一対の側壁21b,21bに対応する位置の内面には、ベース部材20の高さ方向に沿って延びる、凹溝状をなした凹部27b,27bが形成されている。これらの凹部27b,27bには、軸部材50の、後述する複数の歯57からなるネジ溝状部分や係止爪55が移動可能に挿入されるようになっている(図14,16,18参照)。
【0026】
また、図3に示すように、各凹部27bの、軸収容部27の上方開口部側には、軸係止孔28がそれぞれ形成されている。各軸係止孔28は、回転部材装着部25の径方向に貫通して設けられている。図14に示すように、これらの一対の軸係止孔28,28には、軸部材50の後述する一対の係止爪55,55が係止して、ベース部材20に対して軸部材50が抜け止め保持される。
【0027】
更に図4に示すように、フランジ部23の裏側(固定部材1に近接する側)であって、その外周縁部には、段状をなした段状部31が形成されている。図7を併せて参照すると、この段状部31の、べース本体21の一方の側壁21bに整合する位置からは、一対の突部32,33が突設されている。また、突部32の一側面には、テーパ面32aが形成されており、突部33の一側面(テーパ面32aに対向する側面)には、フランジ部23の面方向に対して直立した回転規制面33aが形成されている(図4参照)。更に図7に示すように、上記段状部31の、べース本体21の他方の側壁21bに整合する位置からは、突部34が突設されている。この突部34の両側面には、それぞれテーパ面34a,34bが形成されている(図7参照)。
【0028】
なお、上記の段状部31には、図7図8に示すように、回転部材60の後述する複数の抜け止め突部67が摺接可能に係止して、ベース部材20に対して回転部材60が回転可能に抜け止め保持され、また、抜け止め突部67と、上記突部32,33,34との関係が変化するが、これらについては回転部材60の記載にて詳細に説明する。
【0029】
図3図4、及び図7に示すように、フランジ部23の外周縁部には、周方向に均等な間隔を空けて、複数の切欠き部35が形成されている(ここでは3つ)。各切欠き部35は、ベース部材20に対する回転部材60の装着時に、同回転部材60の対応する抜け止め突部67を通過させるものとなっている。
【0030】
図3に示すように、前記回転部材装着部25は、その外周が円形状をなしており、その外周に、回転部材60の後述する筒状壁61(図1参照)が配置されるようになっている。この回転部材装着部25の外周の所定箇所は、回転部材装着部25の径方向内方に向けて所定範囲で抉られており、ギヤ部材80が配置されるギヤ配置部37が設けられている。図10に示すように、このギヤ配置部37には、軸部材50を上昇させるべく、回転部材60をR1方向に回転させる前におけるギヤ部材80が配置される。なお、ギヤ部材80がギヤ配置部37に配置された状態では、回転部材装着部25の外周面と、ギヤ部材80の外周面とは、ほぼ面一となる。
【0031】
更に、回転部材装着部25の、ギヤ配置部37の回転方向R1側に位置する箇所に、カム斜面39が形成されている(図3参照)。このカム斜面39は、回転方向R1に沿って、フランジ部23の表面に対して次第に高くなるように突出した形状となっている。そして、ギヤ配置部37にギヤ部材80が配置された状態で、回転部材60をR1方向に回転させたときに、カム斜面39によって、ギヤ部材80が上昇するようになっている(図10及び図11参照)。
【0032】
また、回転部材装着部25の、カム斜面39の頂部39aに隣接した位置には、フランジ部23の表面からの高さが一定とされた、ギヤ乗り上げ面41が形成されている。このギヤ乗り上げ面41によって、上昇したギヤ部材80の高さが保持されるようになっている(図11参照)。なお、ギヤ乗り上げ面41の周方向一端部(R1方向側の端部)には、テーパ面状をなしたギヤ当接面41aが形成されており(図3参照)、このギヤ当接面41aに、ギヤ部材80のカム当接部89aが当接することで、上昇した状態のギヤ部材80の位置決めがなされるようになっている。また、図3に示すように、カム斜面39及びギヤ乗り上げ面41の内周縁部には、前記凹部27bを挟んで一対の突部40,40が突設している。
【0033】
更に図3図11に示すように、回転部材装着部25の、ギヤ配置部37の戻り方向R2側であって、回転部材装着部25の天井面25aよりも高い位置には、ギヤ下降突部43が設けられている。このギヤ下降突部43の下面(フランジ部23側の面)側には、戻り方向R2側に向けて、フランジ部23の表面に対する隙間を次第に小さくする、ギヤ当接面44が形成されている。そして、上昇したギヤ部材80がギヤ乗り上げ面41に乗り上げた状態で、回転部材60を図11のR2方向に回転させると、ギヤ下降突部43にギヤ部材80が当接した後、ギヤ当接面44によってギヤ部材80を下降させる。また、図10に示すように、ギヤ当接面44は、R1方向に回転部材60を回転させる前の状態で、ギヤ部材80の後述する傾斜面93に対向しており、回転部材60のR2方向への回転規制となっている。
【0034】
次に、軸部材50について説明する。
【0035】
この軸部材50は、先端部53に当接部54を有すると共に、外周面の周方向所定範囲に、ギヤ部材80に歯合する歯57が軸方向に複数形成されている。より具体的には、この実施形態の軸部材50は、所定長さで延びる略筒状をなした軸部51を有している。この軸部51の軸方向の先端部53(固定部材1から離反した端部)は、略円板状をなしている。そして、この先端部53の外周には、ゴムやラバー等の弾性部材からなる当接部54が装着されるようになっている。この当接部54は、上方に天井板を有し、その周縁から周壁が垂設し、下方が開口した略キャップ状をなしている。なお、当接部54の周壁の軸方向の基端部を、基端部54aとする。
【0036】
また、軸部51は、対向配置された一対の側壁51a,51aと、該一対の側壁51a,51aに対して直交するように対向配置された一対の側壁51b,51bとを有している。両側壁51a,51aの外面は、互いに平行な平坦面状をなしている。また、各側壁51bの外面は曲面状をなしている。この軸部51は、一対の側壁51a,51aを、軸収容部27の一対の内面27a,27aに位置合わせした状態で、ベース部材20内に収容される。その結果、ベース部材20に対して軸部材50が回転規制される。
【0037】
更に、軸部51の各側壁51bの軸方向基端側(固定部材1に近接した端部側)に、略コ字状をなしたスリット55aを介して、撓み変形可能な係止爪55がそれぞれ形成されている。また、軸部51の各側壁51bの外周面であって、先端部53と係止爪55との間には、側壁51bの周方向に沿って延びる歯57が、側壁51bの軸方向に沿って所定間隔で複数形成されており、ネジ溝状部分が設けられている。
【0038】
これらの係止爪55及び複数の歯57からなるネジ溝状部分は、ベース部材20内への軸部材50の収容時に、軸収容部27の一対の凹部27b,27b内に配置される。また、図13に示すように、一対の係止爪55,55が、ベース部材20の一対の軸係止孔28,28にそれぞれ係止することで、ベース部材20に対して軸部材50が抜け止め保持されると共に、ベース部材20に対して当接部54が、それ以上突出しないように規制される。
【0039】
次に、回転部材60について説明する。
【0040】
図1及び図5に示すように、この実施形態の回転部材60は、略円筒状をなした筒状壁61と、該筒状壁61の基端部61a(固定部材1に近接する端部)の外側に同心状に配置され、外周が円形状をなした把持部63とを有している。なお、筒状壁61の基端部61aと、把持部63との間には、内周面にすり鉢状斜面を設けた凹溝状の、クッション収容部64が形成されている(図1及び図13参照)。
【0041】
前記把持部63は、回転部材60を回転させる際に、操作者が把持する部分となる。また、筒状壁61の先端部61b(固定部材1から離反した端部)の内周には、環状の薄肉リブ状を呈した環状リブ61cが設けられている。環状リブ61cは、回転部材60内に収容されたギヤ部材80の上方に配置され、回転部材60の上方開口側からの、ギヤ部材80の抜け止めを図ると共に、軸部材50の最大押し込み時に(図15及び図16参照)、先端部53に当接して、軸部材50の押し込み規制を図るものとなっている。
【0042】
前記筒状壁61の内径は、ベース部材20の回転部材装着部25の外径にほぼ適合しており、回転部材装着部25の外側に配置される筒状壁61の回転動作がガイドされるようになっている。また、把持部63の内径は、ベース部材20のフランジ部23の外径にほぼ適合しており、フランジ部23の外側に配置される把持部63の回転動作がガイドされるようになっている。
【0043】
更に、ベース部材20に回転部材60を装着した状態で、筒状壁61の基端部61aの端面は、ベース部材20のフランジ部23の表面に対向配置される(図13参照)。その結果、回転部材60の下方開口側からの、ギヤ部材80の抜け止めが図られると共に、ギヤ部材80の下降動作が規制される。
【0044】
更に、把持部63の基端部63a(固定部材1に近接する端部)側には、周方向に沿って所定長さで延びるスリット65aが、把持部63の周方向に均等な間隔を空けて複数形成されている(ここでは3つ)。これらのスリット65aを介して、把持部63の基端部63aには、撓み変形可能な撓み片65が設けられている(図5参照)。そして、各撓み片65の内周から、回転部材60の回転中心方向に向けて、舌片状をなした抜け止め突部67がそれぞれ突出している。各抜け止め突部67は、ベース部材20のフランジ部23の段状部31に摺接可能に係止する。
【0045】
そして、回転部材60をベース部材20に装着する際には、回転部材60の各抜け止め突部67を、ベース部材20の各切欠き部35に整合させた状態で、ベース部材20に対して回転部材60を押し込んで、各抜け止め突部67を対応する各切欠き部35に通過させて、各抜け止め突部67を、ベース部材20のフランジ部23の段状部31に位置させる。その後、ベース部材20に対して回転部材60を所定方向に回転させることで、各抜け止め突部67が、フランジ部23の段状部31に係止するので、ベース部材20に対して回転部材60が回転可能に装着される(図7参照)。
【0046】
この状態では、ベース部材20に対して回転部材60が上昇しようとしても、回転部材60の抜け止め突部67が、ベース部材20の段状部31に係止して引っ掛かるので、回転部材60は上昇できない。一方、ベース部材20に対して回転部材60が下降しようとしても、回転部材60の筒状壁61の基端部61aが、ベース部材20のフランジ部23の表面に当接するので(図13参照)、回転部材60は下降できない。よって、ベース部材20に対して回転部材60が昇降不能となっている。
【0047】
また、図7に示す状態では、回転部材60は、ベース部材20に対して、R1方向には回転可能だが、R2方向には回転規制される。すなわち、図7のR2方向に回転部材60を回転させようとしても、回転部材60の抜け止め突部67が回転規制面33aに当接するので、回転部材60が回転規制される。
【0048】
一方、図7のR1方向に回転部材60を回転させた場合には、図8に示すように、所定の抜け止め突部67が、テーパ面32aを介して突部32を乗り越え可能であるため、回転部材60はR1方向には回転可能となっている。なお、回転部材60をR1方向に回転させると、図8に示すように、突部32を乗り越えた抜け止め突部67とは別の、抜け止め突部67が、一方のテーパ面34aを介して突部34の頂部を乗り越えて、他方のテーパ面34bに当接するようになっている。なお、図8に示す状態から、回転部材60を矢印R2に示す方向に回転させた場合も、回転部材60の抜け止め突部67が、他方のテーパ面34bを介して突部34の頂部を乗り越え可能となっている。
【0049】
また、図5図9に示すように、回転部材60の筒状壁61の内周の所定箇所には、回転部材60の径方向内方に向けて突出し、且つ、回転部材60の軸方向に沿って延びる、複数のリブ69,70,71が設けられている。図9に示すように、リブ69は、ギヤ部材80の基部81の一側部81bの外側に配置される。また、リブ70は、断面略L字状をなしており、ギヤ部材80の基部81の他側部81cの外側に配置される。更に、リブ71は、ギヤ部材80の第1延出部87の先端部87aの端面外側に配置される。なお、リブ69,70,71の上端部は、前記環状リブ61cに連結されており、剛性の向上が図られている。
【0050】
これらのリブ69,70,71によって、回転部材60に対してギヤ部材80を回転規制すると共に、回転部材60の軸方向にギヤ部材80を移動可能にガイドするようになっている。
【0051】
また、図5に示すように、回転部材60の筒状壁61の内周の所定箇所には、回転部材60の径方向内方に向けて突出し、且つ、回転部材60の軸方向に沿って延びるリブ73aが設けられており、このリブ73aを介して同リブ73aよりも幅広の板状部73が設けられている。この板状部73の内面には、板状部73の周方向(幅方向)に沿って延びる歯75が、板状部73の軸方向(高さ方向)に所定間隔で複数形成されており、ネジ溝状部分が設けられている。なお、リブ73a及び板状部73の上端部は、前記環状リブ61cに連結されており、剛性の向上が図られている。
【0052】
次に、ギヤ部材80について説明する。
【0053】
このギヤ部材80は、回転部材60の回転に連動して回転し、且つ、カム機構による上昇に伴って、仮固定部による軸部材50の仮固定状態を維持しながら、軸部材50を上昇させる構造となっている。更にギヤ部材80は、上昇した状態の軸部材50の昇降動作を規制する本固定部83を有している。
【0054】
図6を併せて参照すると、この実施形態のギヤ部材80は、回転部材60の内周に沿って湾曲して延びる板状片からなる。
【0055】
すなわち、この実施形態のギヤ部材80は、ベース部材20の回転部材装着部25と、回転部材60の筒状壁61との隙間に、配置可能な板厚でもって、回転部材装着部25の外周及び筒状壁61の内周に沿って湾曲して延びる板状片からなる。
【0056】
より具体的には、このギヤ部材80は、回転部材装着部25のギヤ配置部37に収容可能な板厚で、且つ、同ギヤ配置部37の内周に沿って湾曲しつつ、所定長さで長く延びる長板状をなした基部81を有している。
【0057】
また、基部81の内周からは、ギヤ部材80に隣接配置される回転部材60の径方向内方に向けて、突出部81aが所定厚さで突出している。ここでは、基部81の基端部側(固定部材1側の端部)を除く位置から、突出部81aが突出している。なお、基部81の周方向の一側部(R1方向側の側部)を「一側部81b」とし、周方向の他側部(R2方向側の側部)を、「他側部81c」とする。
【0058】
図6に示すように、突出部81aの内面側であって、基部81の周方向の一側部81b側の箇所に、本固定部83が設けられている。この本固定部83は、突出部81aの周方向に延びると共に、突出部81aの軸方向に沿って配置された、複数の突部84,84及び後述の突条部85の基部(第1延出部87にも亘って延びる突条部85のうち、突出部81a内面に位置する部分)とからなる。各突部84及び突条部85は、略山形状をなして延びた形状をなしており、軸部材50の歯57に歯合可能となっている。また、本固定部83は、基部81及び突出部81aに設けられており、後述する第1延出部87に対して肉厚となっており、第1延出部87のように撓み変形はしない剛体となっている。
【0059】
更に、本固定部83の一側部から、周方向に第1延出部87が延出している。ここでは、本固定部83の周方向の一側部から、回転部材60の回転方向R1に沿って、本固定部83よりも幅狭の帯状をなした、第1延出部87が延出している。この第1延出部87の内面、及び、前記本固定部83の内面に亘って、軸部材50の歯57に歯合する突条部85が連続して設けられている。なお、第1延出部87は、前記本固定部83に対して幅狭の帯状となっているので、撓み変形可能となっている。また、第1延出部87の延出方向の先端部87aは、それ以外の部分よりもやや肉厚となっている。
【0060】
更に、基部81の周方向の一側部81bであって、その基端部側からは、回転部材60の回転方向R1に沿って、基部81よりも幅狭の帯状をなした、第2延出部89が延出している。この第2延出部89の延出方向先端部には、ギヤ部材80の軸方向一端側(固定部材1から離反した側)から軸方向他端側(固定部材1に近接した側)に向けて、且つ、R2方向側に向けて傾斜したカム当接部89aが設けられている。
【0061】
また、基部81の周方向の他側部81cであって、その基端部側からは、回転部材60の戻り方向R2に沿って、基部81よりも幅狭の帯状をなした、第3延出部91が延出している。この第3延出部91の延出方向先端部であって、ギヤ部材80の軸方向一端側から突片92が突出している。更に、第3延出部91の延出方向先端、及び、前記突片92のR2方向側の先端面に亘って、ギヤ部材80の軸方向一端側から軸方向他端側に向けて、且つ、R2方向側に向けて傾斜した傾斜面93が形成されている。また、基部81の他側部81cと、前記突片92との間には、ギヤ部材80の軸方向に沿って一定幅で延びる、ガイド溝94が形成されている(図10及び図11参照)。
【0062】
そして、図9に示すように、ギヤ部材80は、回転部材60の内側に配置された状態で、基部81の一側部81bの外側に、回転部材60のリブ69が係止され、基部81の他側部81cの外側に、回転部材60のリブ70が係止され、第1延出部87の先端部87aの端面外側に、回転部材60のリブ71が係止されるようになっている。また、回転部材60のリブ70は、ギヤ部材80のガイド溝94内に挿入される。
【0063】
その結果、回転部材60内において、ギヤ部材80の、回転部材60の径方向内方及び径方向外方への移動が阻止されると共に(リブ69,70,71により径方向内方への移動が阻止され、筒状壁61により径方向外方への移動が阻止される)、リブ69,70,71によって回転部材60の周方向移動が阻止され、更に、リブ69,70,71によって、回転部材60の軸方向に沿ったギヤ部材80の昇降動作がガイドされるようになっている。また、リブ69,70,71によって回転部材60の周方向移動が阻止されることで、回転部材60の回転に連動して、ギヤ部材80も回転する(回転部材60の回転時にギヤ部材80が連れ回りする)。
【0064】
なお、上述したカム当接部89aは、回転部材60をR1方向に回転させたときに、ベース部材20のカム斜面39に当接して、ギヤ部材80を上昇させるものとなっている。すなわち、図10に示すように、ベース部材20の回転部材装着部25のギヤ配置部37内に、ギヤ部材80が収容保持された状態で、回転部材60をR1方向に回転させると、それに連動してギヤ部材80も回転し、そのカム当接部89aが、ベース部材20のカム斜面39に当接して押し上げられるので、ギヤ部材80が、リブ69,70,71によってガイドされながら回転部材60内で上昇して、図11に示すように、ギヤ乗り上げ面41上に乗り上がるようになっている。
【0065】
すなわち、このカム当接部89aとカム斜面39とが、本発明における「カム機構」をなしている。
【0066】
また、図11に示すように、上昇したギヤ部材80がベース部材20のギヤ乗り上げ面41に乗り上げた状態で、回転部材60をR2方向に回転させると(すなわち、ギヤ部材80の上昇時とは反対方向に回転させる)、ベース部材20のギヤ下降突部43に、ギヤ部材80の傾斜面93が当接した後、ベース部材20のギヤ当接面44から、傾斜面93に対してギヤ部材80を押し下げる力が作用し、その結果、ギヤ部材80をR2方向に回転させつつ下降させて、図10に示すように、ギヤ部材80がギヤ配置部37内に収容されると共に、ギヤ当接面44の下方に、ギヤ部材80の突片92が潜り込んで、図10に示す初期位置にギヤ部材80が戻るようになっている。
【0067】
すなわち、ベース部材20のギヤ下降突部43及びギヤ当接面44、ギヤ部材80の傾斜面93が、本発明における、「上昇したギヤ部材を下降させる構造」をなしている。
【0068】
図12には、軸部材50及びギヤ部材80の関係が図示されている。
【0069】
図12の左側の図は、図13及び図14に対応しており、ベース部材20に対して軸部材50が押し込まれていない状態となっている。この状態では、軸部材50の、軸方向基端側の歯57に、ギヤ部材80の、第1延出部87の内面における突条部85が歯合しており(図14参照)、図12中の3つの態様の中で、当接部54が固定部材1から最も離反するように、軸部材50にギヤ部材80が仮固定されている(図14参照)。このように、この実施形態においては、軸部材50の歯57と、ギヤ部材80の第1延出部87内面の突条部85とが、本発明における「仮固定部」をなしている。
【0070】
図12の中央の図は、図15及び図16に対応しており、図12の左側の状態から、ベース部材20に対して軸部材50が押し込まれた状態となっている。すなわち、固定部材1に対して移動部材5が近接する方向に移動すると(図13,14の移動部材5参照)、当接部54を介して軸部材50が押し込まれる。この際、軸部材50の歯57によって、ギヤ部材80の第1延出部87内面の突条部85が押されて、第1延出部87が撓み変形して、その突条部85が歯57に段階的に歯合しながら(ラチェット嵌合とも言える)、軸部材50が押し込まれて下降していく。すなわち、仮固定部による軸部材50とギヤ部材80との仮固定状態を維持しながら、軸部材50が押し込まれて下降し、最終的に軸部材50の軸方向先端側の歯57に突条部85が歯合して(図16参照)、固定部材1に対して当接部54が近接した位置となる(図15,16参照)。
【0071】
なお、本発明における「軸部材にギヤ部材を仮固定」とは、所定値以上の押圧力によって、当接部が押されたときに、軸部材とギヤ部材との固定状態が解除されて、軸部材がベース部材内に引き込まれて、固定部材又は移動部材に対する当接部の高さが低くなる一方、所定値未満の押圧力によって、当接部が押されたときには、軸部材とギヤ部材との固定状態が保持されて、軸部材はベース部材内には引き込まれずに、固定部材又は移動部材に対する当接部の高さが維持されることを意味する。
【0072】
図12の右側の図は、図17及び図18に対応しており、図12の中央の状態から、ベース部材20に対して回転部材60をR1方向に回転させた状態となっている。すなわち、図12の中央の状態から回転部材60をR1方向に回転させると、それに連動してギヤ部材80がR1方向に回転して、軸部材50を上昇させながら、軸部材50に本固定部83が固定して、上昇した状態の軸部材50の昇降動作が規制される。
【0073】
この実施形態の場合、図12の中央の状態から、ベース部材20に対して回転部材60をR1方向に回転させると、連動して回転したギヤ部材80が、上述したカム機構によって上昇する。すると、軸部材50の歯57に歯合した、第1延出部87内面の突条部85が、ネジ溝状をなした歯57内を周方向に移動して、突条部85が歯57の内面を押し上げるので、軸部材50を上昇させる。更に回転部材60をR1方向に回転させると、第1延出部87内面の突条部85に誘導されながら、本固定部83内面の突条部85が軸部材50の歯57に歯合すると共に、本固定部83内面の複数の突部が、軸部材50の歯57に歯合し(図18参照)、本固定部83が複数の歯57の外側に被さるように移動する(図12の右側の図参照)。その結果、図12の右側の図に示すように、図12の中央の状態よりもやや軸部材50を上昇させた状態で、本固定部83によって、上昇した軸部材50の昇降動作が規制されて、固定部材1に対する当接部54の突出量が変動しないように固定される。
【0074】
以上説明したストッパー装置を構成する、ベース部材、軸部材、回転部材、ギヤ部材、仮固定部、カム機構、ギヤ部材による軸部材の昇降構造、ギヤ部材の本固定部、上昇したギヤ部材を下降させるギヤ部材下降構造等の、形状や構造は特に限定されない。また、上記実施形態では、ベース部材20を固定部材1側に固定しているが、ベース部材を移動体側に固定させてもよい。
【0075】
更に、この実施形態のベース部材20は板状片からなるが、この態様に限定されず、回転部材内側にて、回転規制状態で配置可能であればよい。また、この実施形態では、仮固定部は、軸部材50の複数の歯57と、ギヤ部材80の突条部85とからなるが(複数の歯と一つの突部との歯合)、例えば、軸部材及びギヤ部材共に複数の歯を設けて、これらによる歯合による仮固定部としたり、軸部材及びギヤ部材に凹凸を設けて凹凸嵌合による仮固定部としたり、軸部材及びギヤ部材間を摩擦や圧接等による仮固定部としたりしてもよい。
【0076】
また、この実施形態のギヤ部材80は、突条部85が第1延出部87内面及び本固定部83内面に亘り連続して設けた形状となっており、いわば仮固定部を構成する部分の一つと、本固定部とが連続して設けられた態様となっているが、連続して設けなくとも別個独立に設けてもよい。更に、本固定部の態様も、突条部に限定されるものではなく、ベース部材に対して軸部材が押し込み不可能となるように、固定部材に対する当接部の突出量、突出位置、高さ等が変動しないように固定することが可能であればよい。
【0077】
(作用効果)
次に、上記構成からなる本発明に係るストッパー装置10の作用効果について説明する。
【0078】
図13及び図14には、固定部材1にストッパー装置10が取付けられた状態が示されている。すなわち、ベース部材20のフランジ部23の裏側にシールリング100を介装した状態で、固定部材1の固定孔3の表側からベース本体21を挿入することで、図13図14に示すように、シールリング100が固定孔3の表側周縁に当接すると共に、一対の係止片29,29の係止段部29a,29aが、固定孔3の裏側周縁に係合して、固定部材1にベース部材20が固定される。
【0079】
また、この状態では、軸部材50の軸方向基端側の歯57に、ギヤ部材80の、第1延出部87の内面における突条部85が歯合して(図14参照)、当接部54が固定部材1から所定の突出量で離反した状態で、軸部材50にギヤ部材80が仮固定されている(図13及び図14参照)。
【0080】
上記状態で、固定部材1に対して移動部材5を近接する方向に移動させると(図13,14参照)、当接部54を介して軸部材50が押し込まれ、軸部材50の歯57により、ギヤ部材80の第1延出部87内面の突条部85が押されて、第1延出部87が撓み変形して、その突条部85が歯57に段階的に歯合しながら、軸部材50が下降していく。そして、回転部材60の環状リブ61cに、軸部材50の先端部53が当接するまで、軸部材50が押し込まれていき、図15図16に示すように、固定部材1に対して当接部54が近接する。これによって、固定部材1に対する当接部54の突出量が仮決めされる。なお、軸部材50が最大限押し込まれた状態では、当接部54の基端部54aが、回転部材60のクッション収容部64内に収容されるようになっている(図15及び図16参照)。
【0081】
次いで、固定部材1から移動部材5を離反する方向に移動させ、軸部材50に移動部材5からの荷重を受けない状態とした後、ベース部材20に対して回転部材60をR1方向に回転させる。すると、回転部材60に連動して、ギヤ部材80がR1方向に回転し、ギヤ部材80のカム当接部89aが、ベース部材20のカム斜面39に当接することで、ギヤ部材80がリブ69,70,71によりガイドされながら回転部材60内で上昇して、第1延出部87内面の突条部85が、歯57を介して軸部材50を上昇させる。更に回転部材60をR1方向に回転させると、第1延出部87内面の突条部85に誘導されながら、本固定部83内面の突条部85が軸部材50の歯57に歯合すると共に、本固定部83内面の複数の突部が、軸部材50の歯57に歯合し(図18参照)、軸部材50をやや上昇させた状態で、本固定部83によって、上昇した軸部材50の昇降動作が規制される。その結果、固定部材1に対する当接部54の突出量が変動しないように固定することができる(固定部材1に対する当接部54の高さを固定できる)。
【0082】
そして、このストッパー装置10においては、上述したように、回転部材60の回転操作時においては、回転部材60自体はベース部材20に対して昇降せず、ギヤ部材80のみが回転部材60の内側で上昇するので、回転部材60の回転操作時に、作業者に余計な力が作用せず、回転部材60の操作性を向上させることができる。すなわち、把持部63を把持して、回転部材60を所定方向に回転させても、回転部材60が回転するだけであって、特許文献1の緩衝装置におけるリングのように、回転部材60が上昇することはないので、作業者に、回転部材60に起因する押し上げ力が作用することがない。その結果、作業者は、回転部材60をスムーズに回転させることができ、その操作性を高めることが可能となる。
【0083】
また、回転部材60はベース部材20に対して昇降せず、ギヤ部材80のみが回転部材60の内側において、カム機構を介して上昇し、軸部材50を上昇させ、固定部材1に対する当接部54の突出量を調整することができるので、ストッパー装置10を軸方向において、コンパクトにすることができる。
【0084】
更に、このストッパー装置10は、ベース部材20や、軸部材50、回転部材60とは、別体のギヤ部材80を有しており、このギヤ部材80とベース部材20との間に、カム機構が設けられているため、特許文献1の緩衝装置のように、リングの下端側に突片を有する構造と比べて、回転部材60を低く形成することができ、ストッパー装置10の軸方向におけるコンパクト化に寄与する。
【0085】
ところで、一般的に知られる、ネジ込み式のラバー製のストッパーでは、作業者がストッパーを適宜回して、固定部材に対するストッパー先端部の突出量を調整していたため、作業者によりバラツキが生じやすく、精度の点で問題があった。更に、ストッパー先端部の突出量が不十分な場合や十分でない場合は、車両のドアを何回か開け閉めして、ストッパー先端部の突出量を調整することもあり、調整作業が煩雑であった。
【0086】
これに対して、このストッパー装置10では、上述したように、回転部材60の回転に連動してギヤ部材80が回転して上昇し、軸部材50を上昇させて、本固定部83により軸部材50の昇降動作が規制されるので、固定部材1に対する当接部54の突出量を、精度良く正確に調整することができる。すなわち、固定部材1に対する当接部54の突出量を、所望の突出量にしたい場合には、例えば、軸部材50の歯57のピッチ間隔や、カム機構によるギヤ部材80の上昇量等を適宜調整することによって、だれが回転部材60を回しても当接部54の突出量を一定にすることができ、当接部54の突出量の調整を精度良く行うことができる。
【0087】
また、固定部材1に対して移動部材5を近接させて、移動部材5を離反させた後、回転部材60を回すという作業を一度だけ行うことで、固定部材1に対する当接部54の突出量を調整できるので、調整作業を容易に行うことができる。
【0088】
更に、この実施形態においては、ギヤ部材80は、回転部材60の内周に沿って湾曲して延びる板状片からなる。この態様によれば、ギヤ部材80を回転部材60の内周に沿って配置して、回転部材60の外径を小さくしやすくすることができるため、ストッパー装置10を径方向においてコンパクトにすることができる。
【0089】
また、この実施形態においては、ギヤ部材80は、本固定部83の一側部から周方向に延出した第1延出部87を有しており、該第1延出部87に仮固定部が設けられている。上記態様によれば、本固定部83の一側部から周方向に延出した第1延出部87に、仮固定部が設けられているので、仮固定部を容易に形成することができる。
【0090】
更に、この実施形態においては、軸部材50の外周面の周方向所定範囲に、軸方向に沿って複数の歯57が形成されており、ギヤ部材80の本固定部83の内面及び第1延出部87の内面に亘って、軸部材50の歯57に歯合する突条部85が連続して設けられている。
【0091】
上記態様によれば、ギヤ部材80の本固定部83の内面及び第1延出部87の内面に亘って、軸部材50の歯57に歯合する突条部85が連続して設けられているので、仮固定部によって軸部材50にギヤ部材80が仮固定された状態から、本固定部83による軸部材50の上昇規制状態へと移行させやすい。
【0092】
すなわち、回転部材60の回転前は、軸部材50の歯57に、第1延出部87内面における突条部85が歯合することで、軸部材50とギヤ部材80との仮固定状態が維持されるが、この状態で回転部材60をR1方向に回転させ、連動してギヤ部材80が回転すると、軸部材50の歯57に歯合した第1延出部87内面における突条部85が回動し、該突条部85によって誘導されながら、軸部材50の歯57に、本固定部83内面における突条部85が歯合することになる。その結果、軸部材50の歯57に対しての、突条部85の歯合状態が途切れることなく続くことになり、軸部材50に対するギヤ部材80の仮固定状態から、軸部材50の上昇規制状態へとスムーズに移行させることができる。
【0093】
また、この実施形態においては、軸部材50及びギヤ部材80の間には、回転部材60を、軸部材50の上昇時とは反対方向に回転させたときに(R2方向に回転させたとき)、上昇したギヤ部材80を下降させる構造が設けられている。
【0094】
上記態様によれば、前記ギヤ部材下降構造によって、図11に示すように上昇したギヤ部材80を下降させることでき(図10参照)、固定部材1に対する当接部54の突出量を、再度調整することができる。
【0095】
(ストッパー装置の、他の実施形態)
図19~22には、本発明に係るストッパー装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0096】
この実施形態のストッパー装置は、主として、軸部材50Aにギヤ部材80Aを仮固定させる構造が前記実施形態と異なっている。
【0097】
図19及び図22に示すように、軸部材50Aの軸部51の平坦面状をなした一対の側壁51a,51aの外面には、スリット52aを介して、撓み変形可能な帯状片52がそれぞれ設けられている。各帯状片52は、基端が軸部51の基端側に連結され、先端がフランジ部23の裏側に連結されており、その内側にスリット52aが形成されていることで、撓み変形可能となっている。また、各帯状片52の外面に、軸方向に沿って複数の歯58が形成されている。
【0098】
一方、図20及び図21に示すように、ギヤ部材80Aは、突出部81aの周方向一側部から、第1延出片87Aが延出しており、突出部81aの周方向一側部側の内面及び第1延出片87Aの内面に亘って、略山形状をなして延びる突条部85が軸方向に複数配置されている(ここでは3つの突条部85が設けられている)。これらの複数の突条部85が、撓み変形しない本固定部83Aをなしている。
【0099】
図22の左側の図には、ベース部材20に対して軸部材50が押し込まれていない状態が図示されている。この状態では、軸部材50Aの帯状片52外面の複数の歯58に、ギヤ部材80Aの複数の突条部85が歯合しており、当接部54が固定部材1から最も離反するように、軸部材50にギヤ部材80が仮固定されている。すなわち、この実施形態においては、軸部材50Aの複数の歯58と、ギヤ部材80Aの複数の突条部85とが、本発明における「仮固定部」をなしている。
【0100】
そして、固定部材1に対して移動部材5が近接する方向に移動すると、当接部54を介して軸部材50Aが押し込まれる。すると、図22の中央の図に示すように、ギヤ部材80Aの複数の突条部85によって、軸部材50Aの複数の歯58が押圧されて、帯状片52が撓み変形して、複数の突条部85が複数の歯58に段階的に歯合しながら、軸部材50が押し込まれて下降し、固定部材1に対して当接部54が近接した位置となる。
【0101】
その後、回転部材60をR1方向に回転させると、それに連動してギヤ部材80AがR1方向に回転して、軸部材50Aを上昇させながら、軸部材50Aに本固定部83Aが固定して、上昇した状態の軸部材50の昇降動作が規制される(図22の右側の図参照)。
【0102】
この実施形態においても、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0103】
(ストッパー装置の、更に他の実施形態)
図23~33には、本発明に係るストッパー装置の、更に他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0104】
この実施形態のストッパー装置は、主として、軸部材50にギヤ部材80Bを仮固定させる構造が前記実施形態と異なっている。
【0105】
図24に示すように、この実施形態のギヤ部材80Bにおける本固定部83は、突出部81aの軸方向に沿って配置された突条部85と突部84とからなる。具体的には、突出部81aの軸方向先端側(第2延出部89から離反した位置)に設けられた突条部85と、突出部81bの軸方向基端側(第2延出部89に近接した位置)に設けられた突条部85と、それらの突条部85,85の間に配置された突部84とから、本固定部83が構成されている。
【0106】
また、この実施形態においては、仮固定部は、第1仮固定部と第2仮固定部とを有しており、第2仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力が、第1仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力よりも大きくなるように構成されている。
【0107】
なお、本発明における「軸部材とギヤ部材との仮固定力」とは、所定値未満の押圧力が当接部に作用したときには、軸部材とギヤ部材との固定状態を保持して、固定部材又は移動部材に対する当接部の高さを維持可能であり、且つ、所定値以上の押圧力が当接部に作用したときには、軸部材とギヤ部材との固定状態が解除されて、固定部材又は移動部材に対する当接部の高さを低くすることが可能な力(すなわち、所定値未満の押圧力には対抗し得るが、所定値以上の押圧力には対抗し得ない力)であることを意味する。
【0108】
また、この実施形態においては、ギヤ部材80Bがカム機構により上昇するように回転部材60を回転させる際の、回転方向R1における基端側に、ギヤ部材80Bの本固定部83をなす部分が配置され、回転方向R1における先端側に、ギヤ部材80Bの第1仮固定部をなす部分が配置され、第1仮固定部分をなす部分と本固定部83をなす部分との間に、ギヤ部材80Bの第2仮固定部をなす部分が配置されるように構成されている。
【0109】
以下、仮固定部の構造について詳述する。図23及び図24に示すように、この実施形態のギヤ部材80Bは、本固定部83をなす部分の一側部(R1方向側の側部)から回転方向R1に延出した、2つの延出部87,95を有している。ここでは、第4延出部95が、本発明における「一方の延出部」をなしており、第1延出部87が、本発明における「他方の延出部」をなしている。そして、他方の延出部である第1延出部87の、前記回転方向R1における基端側に、第2仮固定部をなす部分となる突条部85が設けられていると共に、他方の延出部である第1延出部87の、一方の延出部である第4延出部95よりも先端側に、第1仮固定部をなす部分となる突条部85が設けられている。また、他方の延出部である第1延出部87は、一方の延出部である第4延出部95よりも長く延出している。
【0110】
具体的には、本固定部83の周方向一側部であって、突出部81aの軸方向先端側から、回転部材60の回転方向R1に沿って延出した第1延出部87と、本固定部83の周方向一側部であって、突出部81aの軸方向基端側から、回転部材60の回転方向R1に沿って延出した第4延出部95とを有している。また、各延出部87,95の内面には、本固定部83を構成する突条部85,85が周方向に連続して延びている。
【0111】
そして、第1延出部87の、回転方向R1における基端側の内面に設けられた突条部85と、第4延出部95の内面に設けられた突状部85とが、本発明における「ギヤ部材の第2仮固定部をなす部分」となっている(図23の符号K2で示す部分)。また、第1延出部87の、回転方向R1における先端側、ここでは、第1延出部87の、第4延出部95よりも回転方向R1における先端側に位置する部分の内面側に設けられた突条部85が、本発明における「ギヤ部材の第1仮固定部をなす部分」となっている(図23の符号K1で示す部分)。
【0112】
なお、本発明における「第1仮固定部」は、上記のギヤ部材の第1仮固定部をなす部分と、軸部材50の歯57とからなる。また、本発明における「第2仮固定部」は、上記のギヤ部材の第2仮固部をなす部分と、軸部材50の歯57とからなる。
【0113】
そして、この実施形態においては、上述したように、第2仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力が、第1仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力よりも大きくなるように構成されているが、これについて具体的に説明すると、図25に示すように、第1延出部87の回転方向R1における先端側内面の突条部85が、軸部材50の歯57に歯合した状態が、第1仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定状態をなしている。この図25に示す状態では、ギヤ部材80Bは、ベース部材20のフランジ部23の表面上に配置されている。
【0114】
図25に示す第1仮固定部による軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定状態から、図示しない回転部材60を介してギヤ部材80BをR1方向に回転させると、図27に示すように、第1延出部87の回転方向R1における基端側内面の突条部85が、軸部材50の歯57に歯合すると共に、第4延出部95内面の突条部85が、軸部材50の歯57に歯合する。この状態が、第2仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定状態をなしている。この図27に示す状態では、ギヤ部材80Bの第2延出部89が、ベース部材20のカム斜面39の頂部39aに当接した状態となっている。
【0115】
また、図27に示す第2仮固定部による軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定状態から、ギヤ部材80BをR1方向に回転させると、図29に示すように、本固定部83が軸部材50の歯57に歯合して、軸部材50とギヤ部材80Bとが本固定されるようになっている。この図29に示す状態では、ギヤ部材80Bの第2延出部89が、ベース部材20のギヤ乗り上げ面41に乗り上がっている。
【0116】
なお、上記の図25に示す状態、図27に示す状態、図29に示す状態は、回転部材60の突部67と、ベース部材20のフランジ部23の裏側に設けた突部34A,34B,34C,34Dとの関係で、その状態がロックされるようになっている。(ベース部材20に対して回転部材60が回転規制されるようになっている)。
【0117】
すなわち、図26に示すように、この実施形態におけるベース部材20のフランジ部23の裏側であって、ベース本体21の他方の側壁21bに近接する位置には、突部34Aが突設されている。この突部34Aの一側面には、テーパ面34aが形成されており、他側面には、フランジ部23の面方向に対して直立した回転規制面34cが形成されている。また、図28及び図30に示すように、フランジ部23bの裏側であって、ベース本体21の一方の側壁21bに近接する位置には、周方向に隣接して配置された一対の突部34B,34Cと、突部34Cから周方向に離間して配置された突部33Dとが突設されている。各突部34B,34C,34Dの両側面には、それぞれテーパ面が形成されている。
【0118】
そして、図25に示される、第1延出部87の回転方向R1における先端側内面の突条部85が軸部材50の歯57に歯合した、第1仮固定部による軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定状態では、図26に示すように、回転部材60は、ベース部材20に対して、R1方向には回転可能だが、R2方向には回転規制される。すなわち、図7のR2方向に回転部材60を回転させようとしても、回転部材60の所定の抜け止め突部67が、突部34Aの回転規制面34cに当接するので、ベース部材20に対して回転部材60が回転規制される。
【0119】
また、図27に示される、第1延出部87の回転方向R1における基端側内面の突条部85が軸部材50の歯57に歯合すると共に、第4延出部95内面の突条部85が軸部材50の歯57に歯合した、第2仮固定部による軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定状態では、図28に示すように、回転部材60の所定の抜け止め突部67が、一対の突部34B,34Cとの間に配置される。そのため、回転部材60に対して所定値以上の回転力でもって、R1方向又はR2方向に回転させて、突部34B,34Cのテーパ面を乗り越えさせない限りは、ベース部材20に対して回転部材60が回転規制される。
【0120】
更に図29に示される、本固定部83が軸部材50の歯57に歯合して、軸部材50とギヤ部材80Bとが本固定された状態では、図30に示すように、回転部材60の所定の抜け止め突部67が、突部34Dの一方のテーパ面34аに隣接した位置に配置される。そのため、R2方向へは、所定の抜け止め突部67が、突部34Dのテーパ面34aを乗り越えない限り、ベース部材20に対して回転部材60が回転規制される。一方、R1方向への回転については、図29に示すように、ベース部材20のギヤ当接面41aと、ギヤ部材80Bの第2延出部89のカム当接部89aとが当接することで、ベース部材20に対して回転部材60が回転規制される。
【0121】
なお、この実施形態においては、本固定部83の周方向一側部から延出した2つの延出部87,95の内面に設けた突条部85,85が、第1仮固定部をなす部分や第2仮固定部をなす部分を構成しているが、第1仮固定部をなす部分や第2仮固定部をなす部分としては、このような態様に限定されない。例えば、(1)本固定部の一側部から、3つ以上の延出部を設けて、これらの内面の突条部を、第1,第2仮固定部をなす部分としたり、(2)本固定部の一側部から1つの延出部を設けて、その延出方向先端部(回転方向R1の先端部)を幅狭として、これを第1仮固定部をなす部分とし、延出方向途中部分を幅広として、これを第2仮固定部をなす部分としたりしてもよい。
【0122】
図31及び図32には、ギヤ部材の変形例が示されている。
【0123】
このギヤ部材80Cは、本固定部83の一側部であって、第1延出部87と第4延出部95との間から、連結壁部97が延出しており、第1延出部87と第4延出部95とが連結壁部97に連結された構造となっている。また、連結壁部97の内面には、延出部87,95の内面に設けた突条部85が突出されておらず、連結壁部97は、延出部87,95よりも肉薄となっている。
【0124】
図23~33に示す実施形態の使用方法の一例)
次に、図33を参照して、この実施形態のストッパー装置の使用方法の一例について説明する。
【0125】
この場合、固定部材1が、ワンボックスカーやハッチバック車等の車体フレームであり、移動部材5が、いわゆるバックドアとなっている。
【0126】
まず、移動部材5を、固定部材1である車体フレームの開口部から開いた状態で、治具で保持した後、塗装する(ステップS1)。
【0127】
その後、ストッパー装置を、固定部材1の開口部周縁に取付けると共に、回転部材60を介してギヤ部材80Bを回転させて、図27に示す、第2仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定状態とする(ステップS2)。
【0128】
次いで、固定部材1の開口部に対して、移動部材5を閉じる(ステップS3)。このとき、第2仮固定部によって、軸部材50とギヤ部材80Bとが仮固定されていて、その仮固定力が、第1仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力よりも大きいので、移動部材5からの押し込み力が軸部材50に作用しても、軸部材50は下降しないようになっている。そのため、固定部材1の開口部に対して移動部材5が完全には閉じず、固定部材1の開口部から移動部材5が少し浮いた状態に保持される(固定部材1の開口部と移動部材5との間に隙間が生じる)。
【0129】
そして、固定部材1の開口部と移動部材5との隙間を利用して、移動部材5に、ストライカーやウェザーストリップ等の各種部材を取付けると共に、固定部材1と移動部材5との間にガスステー等の部材を取付ける(ステップS4)。
【0130】
その後、回転部材60を介してギヤ部材80BをR2方向に回転させて、図25に示す、第1仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定状態とする。その後、固定部材1に対して移動部材5を押し込むことで、第1仮固定部をなす第1延出部87の突条部85が、軸部材50の歯57に段階的に歯合して軸部材50が下降していく。そして、固定部材1の開口部の表側周縁に対して、移動部材5の表面を位置合わせすることで、固定部材1に対する当接部54の突出量を調整する(ステップS5)。
【0131】
次いで、固定部材1の開口部から移動部材5を開いて、回転部材60を介してギヤ部材80BをR1方向に回転させて、図29に示すように、本固定部83を軸部材50の歯57に歯合させて、軸部材50とギヤ部材80Bとを本固定する。それによって、軸部材50の昇降動作が規制されて、固定部材1に対する当接部54の突出量が固定される(ステップS6)。
【0132】
図23~33に示す実施形態の作用効果)
次に、上記構造からなるストッパー装置の作用効果について説明する。
【0133】
すなわち、この実施形態においては、仮固定部は、第1仮固定部と第2仮固定部とを有しており、第2仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力が、第1仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力よりも大きくなるように構成されている。
【0134】
そのため、第2仮固定部によって軸部材50にギヤ部材80Bが仮固定された状態(図27参照)では、第1仮固定部によって、軸部材50にギヤ部材80Bが仮固定された状態(図25参照)よりも、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力を高めることができる。
【0135】
その結果、図33のステップS3に示すように、固定部材1に対して移動部材5を近接移動させたときに、固定部材1に移動部材5が当接することを防止(ここでは、固定部材1の開口部の周縁に、移動部材5の周縁が当接することを防止)して、固定部材1と移動部材5との間に隙間を設けることができる。
【0136】
したがって、図33のステップS4で示すように、固定部材1と移動部材5との隙間を利用して、移動部材5に、ストライカーやウェザーストリップ等の各種部材を取付けることができると共に、固定部材1と移動部材5との間にガスステー等の部材を取付けることができ、ストライカー等の部材の取付け作業性を向上させることができる。
【0137】
なお、上記のように、固定部材1に対して移動部材5を近接移動させたときに、固定部材1に対して移動部材5が当接してしまうと、ストライカー等の各種部材の取付け時に、固定部材1に対して移動部材5を離反させる工程が必要となり、煩雑となる。
【0138】
また、この実施形態では、ギヤ部材80Bがカム機構により上昇するように回転部材60を回転させる際の、回転方向R1における基端側に、ギヤ部材80Bの本固定部83をなす部分が配置され、回転方向R1における先端側に、ギヤ部材80Bの第1仮固定部をなす部分(図23のK1で示す部分)が配置され、第1仮固定部分をなす部分と本固定部83をなす部分との間に、ギヤ部材80Bの第2仮固定部をなす部分(図23のK2で示す部分)が配置されるように構成されている。
【0139】
上記態様によれば、上記のような構造を採用したので、回転部材60を介してギヤ部材80BをR1方向に回転させると、まず、第1仮固定部によって、軸部材50にギヤ部材80Bが仮固定され(図25参照)、その後、更にギヤ部材80BをR1方向に回転させることで、第2仮固定部によって、軸部材50にギヤ部材80Bが仮固定される(図27参照)。
【0140】
その結果、第2仮固定部によって、軸部材50にギヤ部材80Bが仮固定された状態の場合には、移動部材5や、固定部材1と移動部材5の間に対する、ストライカー等の各種部材の取付け作業性を高めることができると共に、第1仮固定部によって、軸部材50にギヤ部材80Bが仮固定された状態の場合には、固定部材1に対する当接部54の突出量を調整することができる。
【0141】
そして、この実施形態においては、ギヤ部材80Bの、本固定時の回転方向(R1方向)に沿って、ギヤ部材80Bにおける第1仮固定部をなす部分、第2仮固定部をなす部分、本固定部83が順番に配置されているので、作業者が感覚的に作業しやすくなる。
【0142】
更に図23及び図24に示すように、この実施形態においては、ギヤ部材80Bは、本固定部83の周方向の一側部から回転方向R1に延出した、2つの延出部87,95を有しており、一方の延出部(第4延出部95)に、第2仮固定部をなす部分となる突条部85が設けられ、他方の延出部(第1延出部87)の、一方の延出部(第4延出部95)よりも先端側に、第1仮固定部をなす部分となる突条部85が設けられており、他方の延出部(第4延出部95)は、一方の延出部(第1延出部87)よりも長く延出している。
【0143】
上記態様によれば、上記のような構造を採用したので、第1仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力、及び、第2仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力に、差異を設けやすくなる。すなわち、一方の延出部である第4延出部95が、他方の延出部である第1延出部87よりも短いので、一方の延出部である第4延出部95を、他方の延出部である第1延出部87よりも変形させにくくして、第2仮固定部による仮固定力を、第1仮固定部による仮固定力よりも高めやすくなる。その結果、第2仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力が、第1仮固定部による、軸部材50とギヤ部材80Bとの仮固定力よりも大きくなるように構成されている、という構造を実現しやすくなる。
【0144】
また、図31及び図32に示すギヤ部材80Cのように、第1延出部87と第4延出部95とが連結壁部97に連結された構造では、両延出部87,95の、連結壁部97による連結された部分の剛性を高めて撓み変形させにくくすることができる。その結果、第2仮固定部による、軸部材50に対するギヤ部材80Cの仮固定力をより高めることができる、という効果が得られる。
【0145】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
1 固定部材
5 移動部材
10 ストッパー装置
20 ベース部材
39 カム斜面
50,50A 軸部材
54 当接部
57,58 歯
60 回転部材
80,80A,80B,80C ギヤ部材
83,83A 本固定部
85 突条部
87 第1延出部
89 第2延出部
91 第3延出部
95 第4延出部
100 シールリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33