(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】熱分解炭化処理装置
(51)【国際特許分類】
F04F 5/04 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
F04F5/04 Z
(21)【出願番号】P 2024516488
(86)(22)【出願日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2023037518
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519247121
【氏名又は名称】株式会社FUKUMURA
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】福村 猛
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-143709(JP,U)
【文献】実開昭50-138618(JP,U)
【文献】特開昭62-258924(JP,A)
【文献】特開2018-021173(JP,A)
【文献】仏国特許発明第1292530(FR,A)
【文献】特開平06-221531(JP,A)
【文献】特開2002-180060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04F 1/00 -99/00
F23G 5/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風を生成する燃焼室と、
炭化炉ケース内に収納された炭化室の内部に炭化処理対象物が収納され、炭化炉ケースの内側面と前記炭化室の外周側面との間の熱流路層に熱流路が形成され、前記燃焼室に連通する熱風供給路を介して前記燃焼室から導入される熱風によ
る輻射熱で前記炭化処理対象物を
加熱して気化物と非気化物とに熱分解し、前記熱風を外気に排出するとともに前記炭化室と前記燃焼室とを接続する乾留ガス移送管を介して前記気化物が吸引により前記燃焼室に吐出可能な炭化処理装置本体と
、
下流に向けて内径断面積が漸次拡大して駆動流空気を導入する導入部と、前記導入部の下流端に接続され湾曲した円管である湾曲部と、前記湾曲部の下流端に接続され内径断面積が漸次縮小して駆動流空気を加速する加速部と、前記加速部の下流端に接続された円管である合流部と、前記合流部の中心軸に一致し、前記加速部の下流端の径に比して小さい径の円管であって、前記湾曲部の径が大きい外壁の外側から前記湾曲部の内部に貫通し、先端開口が前記加速部の下流端の上流側に配置される吸引管とを有し、前記加速部において前記加速部の内壁と前記吸引管の先端部の外壁との間で前記駆動流空気が加速され、前記駆動流空気の減圧により前記吸引管の内部流体を下流側に吸引し、前記合流部において前記駆動流空気と吸引された前記内部流体とを合流及び混合させて吐出するエジェクタと
を備えた熱分解炭化処理装置であって、
乾留ガス移送管の途中に
前記エジェクタを配置し、前記炭化室側の乾留ガス移送管の下流側を前記吸引管とし、空気ブロアから供給される駆動流空気を前記導入部に導入し、前記吸引管の上流側及び前記導入部の上流側にそれぞれ開度調整が可能な自動開閉バルブを設け、乾留ガスを含む前記気化物を吸引して前記駆動流空気と前記気化物とが混合した流体を前記燃焼室に供給
可能であることを特徴とする熱分解炭化処理装置。
【請求項2】
少なくとも前記炭化処理装置本体に接続される前記熱風供給路の配管にベローズを介在させることを特徴とする請求項
1に記載の熱分解炭化処理装置。
【請求項3】
前記熱流路は、前記炭化炉ケースの内側面と前記炭化室の炭化処理対象物出入口側を除いた外周五側面との間の熱流路層に形成され、
前記炭化炉ケースは、前記炭化処理対象物出入口側に開口部及び扉部を設け、
前記炭化炉ケースの開口部の周縁面には、油圧シリンダにより垂直及び水平作動するコマ軸を配設し、該コマ軸上に離散配置したテーパーコマが配列され、
前記扉部には、前記テーパーコマに対応する位置に前記テーパーコマの傾斜面とは反対方向の傾斜面が形成された扉部用コマが配置され、
前記扉部を閉状態にする場合、前記油圧シリンダによる前記コマ軸の押圧により前記テーパーコマの傾斜面と前記扉部用コマの傾斜面とが向かい合う方向に摺動して前記扉部を前記炭化炉ケースの周縁面に密着させ、前記油圧シリンダの押圧状態を圧力保持回路の残圧により保持することを特徴とする請求項
1に記載の熱分解炭化処理装置。
【請求項4】
前記燃焼室に供給される燃料の供給量を制御して前記炭化室の温度を制御する燃焼室温度制御モードと、前記燃焼室に供給される燃料の供給量を最小量に固定して前記燃焼室の種火とし、前記エジェクタから前記燃焼室への空気及び乾留ガスの供給量を調整して前記炭化室の温度を制御する乾留ガス制御モードとを有し、前記炭化室において前記乾留ガスが発生している場合、前記乾留ガス制御モードにより前記炭化室の温度制御を行い、前記乾留ガスが発生していない場合、前記燃焼室温度制御モードにより前記炭化室の温度制御を行う制御装置を備えたことを特徴とする請求項
1~
3のいずれか一つに記載の熱分解炭化処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成で送風能力に対する吸引力を大きくすることができるエジェクタを用いた熱分解炭化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、各種産業界、畜産業界、下水処理場及び医療関係機関などの種々の業界で日々排出される有機系の廃棄物(以下、単に「炭化処理対象物」と言う。)の処理は、環境に配慮しつつ一定の基準に即して処理する必要があり、これらの業界において大きな負担となっていた。
【0003】
これに対し、炭化処理対象物を無酸素状態で間接的に加熱することで熱分解し、固定炭素として資源化可能とする炭化炉処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような炭化処理装置は、熱風を発生させる燃焼室と、熱風が流通する蛇型構造の熱流路で扉部部分を除いた五側面を囲繞した箱型形状の炭化室とを備えており、熱風を熱流路全体に送風循環させ、炭化室内に収容した炭化処理対象物を炭化室外部から間接的に加熱して炭化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の炭化処理装置では、炭化室で分解された気化物である水蒸気や乾留ガスを燃焼室に供給して燃焼し、有害な乾留ガスの大気への放出を防止するとともに脱臭処理を行っている。
【0007】
この乾留ガスの燃焼のために、炭化室と燃焼室とを接続する乾留ガス移送管の途中にエジェクタを設け、ブロアにより供給される空気を駆動流として炭化室内の乾留ガスを含む気化物を吸引して燃焼室に吐出していた。
【0008】
しかし、このエジェクタは通常の送風能力を有するブロアから供給される空気をノズルによって駆動流として吐出し、ノズルの外周に送り込まれる乾留ガスを吸引していたため、空気の送風能力に対する乾留ガスの吸引力が小さく、乾留ガスの排出に時間がかかってしまい、結果として熱分解炭化処理時間が長くなってしまう。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で送風能力に対する吸引力を大きくすることができるエジェクタを用いた熱分解炭化処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る熱分解炭化処理装置は、熱風を生成する燃焼室と、炭化炉ケース内に収納された炭化室の内部に炭化処理対象物が収納され、炭化炉ケースの内側面と前記炭化室の外周側面との間の熱流路層に熱流路が形成され、前記燃焼室に連通する熱風供給路を介して前記燃焼室から導入される熱風による輻射熱で前記炭化処理対象物を加熱して気化物と非気化物とに熱分解し、前記熱風を外気に排出するとともに前記炭化室と前記燃焼室とを接続する乾留ガス移送管を介して前記気化物が吸引により前記燃焼室に吐出可能な炭化処理装置本体と、下流に向けて内径断面積が漸次拡大して駆動流空気を導入する導入部と、前記導入部の下流端に接続され湾曲した円管である湾曲部と、前記湾曲部の下流端に接続され内径断面積が漸次縮小して駆動流空気を加速する加速部と、前記加速部の下流端に接続された円管である合流部と、前記合流部の中心軸に一致し、前記加速部の下流端の径に比して小さい径の円管であって、前記湾曲部の径が大きい外壁の外側から前記湾曲部の内部に貫通し、先端開口が前記加速部の下流端の上流側に配置される吸引管とを有し、前記加速部において前記加速部の内壁と前記吸引管の先端部の外壁との間で前記駆動流空気が加速され、前記駆動流空気の減圧により前記吸引管の内部流体を下流側に吸引し、前記合流部において前記駆動流空気と吸引された前記内部流体とを合流及び混合させて吐出するエジェクタとを備えた熱分解炭化処理装置であって、乾留ガス移送管の途中に前記エジェクタを配置し、前記炭化室側の乾留ガス移送管の下流側を前記吸引管とし、空気ブロアから供給される駆動流空気を前記導入部に導入し、前記吸引管の上流側及び前記導入部の上流側にそれぞれ開度調整が可能な自動開閉バルブを設け、乾留ガスを含む前記気化物を吸引して前記駆動流空気と前記気化物とが混合した流体を前記燃焼室に供給可能であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る熱分解処理装置は、上記の発明において、少なくとも前記炭化処理装置本体に接続される前記熱風供給路の配管にベローズを介在させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る熱分解処理装置は、上記の発明において、前記熱流路は、前記炭化炉ケースの内側面と前記炭化室の炭化処理対象物出入口側を除いた外周五側面との間の熱流路層に形成され、前記炭化炉ケースは、前記炭化処理対象物出入口側に開口部及び扉部を設け、前記炭化炉ケースの開口部の周縁面には、油圧シリンダにより垂直及び水平作動するコマ軸を配設し、該コマ軸上に離散配置したテーパーコマが配列され、前記扉部には、前記テーパーコマに対応する位置に前記テーパーコマの傾斜面とは反対方向の傾斜面が形成された扉部用コマが配置され、前記扉部を閉状態にする場合、前記油圧シリンダによる前記コマ軸の押圧により前記テーパーコマの傾斜面と前記扉部用コマの傾斜面とが向かい合う方向に摺動して前記扉部を前記炭化炉ケースの周縁面に密着させ、前記油圧シリンダの押圧状態を圧力保持回路の残圧により保持することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る熱分解処理装置は、上記の発明において、前記燃焼室に供給される燃料の供給量を制御して前記炭化室の温度を制御する燃焼室温度制御モードと、前記燃焼室に供給される燃料の供給量を最小量に固定して前記燃焼室の種火とし、前記エジェクタから前記燃焼室への空気及び乾留ガスの供給量を調整して前記炭化室の温度を制御する乾留ガス制御モードとを有し、前記炭化室において前記乾留ガスが発生している場合、前記乾留ガス制御モードにより前記炭化室の温度制御を行い、前記乾留ガスが発生していない場合、前記燃焼室温度制御モードにより前記炭化室の温度制御を行う制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構成で送風能力に対する吸引力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施の形態である熱分解炭化処理装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、熱分解炭化処理装置の外観を示す正面図である。
【
図3】
図3は、熱分解炭化処理装置の平断面図である。
【
図4】
図4は、炭化室を囲繞する熱流路の構成を一側面上方側からみた斜視図である。
【
図5】
図5は、炭化室を囲繞する熱流路の構成を他側面下方側からみた斜視図である。
【
図6】
図6は、炭化トレイを炭化室2に装入設置した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、炭化トレイの側面図と正面図とを示す図である。
【
図8】
図8は、燃焼室の全体構成及び燃焼室内部における熱風の旋回流の発生状態を示す説明図である。
【
図9】
図9は、エジェクタの構成の一部を破断した断面図である。
【
図10】
図10は、炭化室を炭化炉ケースへ収容する際の載置構造を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、炭化室を炭化炉ケースへ収容する際の載置構造の側面図である。
【
図12】
図12は、熱分解炭化処理装置を搭載する前のトレーラとトラクタを示す斜視図、及び、熱分解炭化処理装置を搭載した炭化処理車両を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、ベローズの構成を示す一部破断した断面図である。
【
図14】
図14は、閉扉状態の炭化装置本体の構成を示す図である。
【
図15】
図15は、開扉状態の炭化装置本体の構成を示す図である。
【
図16】
図16は、炭化炉ケース正面のシーリング構造を示す図である。
【
図18】
図18は、扉部の扉部用コマと炭化炉ケースのテーパーコマとの係合関係を示す図である。
【
図19】
図19は、制御装置による熱分解炭化処理制御時の炭化室温度の時間変化を示す図である。
【
図20】
図20は、過熱水蒸気と熱風の保有熱量を比較した図である。
【
図21】
図21は、制御装置が行う燃焼制御モードの概念を説明する説明図である。
【
図22】
図22は、制御装置による熱分解炭化処理手順を示すフローチャートである(その1)。
【
図23】
図23は、制御装置による熱分解炭化処理手順を示すフローチャートである(その2)。
【
図24】
図24は、制御装置による熱分解炭化処理手順を示すフローチャートである(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る熱分解炭化処理装置について説明する。
図1は、本実施の形態である熱分解炭化処理装置100の全体構成を示す模式図である。また、
図2は、熱分解炭化処理装置100の外観を示す正面図である。さらに、
図3は、熱分解炭化処理装置100の平断面図である。また、
図4は、炭化室2を囲繞する熱流路4の構成を一側面上方側からみた斜視図である。さらに、
図5は、炭化室2を囲繞する熱流路4の構成を他側面下方側からみた斜視図である。
【0018】
<全体構成>
図1~
図3に示すように、熱分解炭化処理装置100の中央部に熱風を発生させる燃焼室6と、燃焼室6の上方両端側に熱風が流通する熱流路層3,3´で正面を除いた外周を囲まれた2つの炭化室2,2´と、を備えており、熱風を熱流路層3,3´全域に亘って送風循環させ、炭化室2,2´内に収容した炭化処理対象物を炭化室2,2´外部から間接的に加熱して炭化しようとするものである。
【0019】
図4及び
図5に示すように、熱流路層3には、蛇型構造の熱流路4が形成されており、炭化室2、2´の外周で熱風を規則的に流通させて熱エネルギーを効果的に炭化室2、2´内部の炭化処理対象物に伝熱する。
【0020】
特に、この熱流路4の構造は、炭化室2の外周を囲む単純な蛇型構造としているのではなく、1つの炭化室2の外周において2つの熱流路4a,4bに分け、それぞれの上流側から下流側にかけて炭化室2の五側面に熱流路4a,4bを一定の規則に従ってジグザグ状に形成している。
【0021】
具体的には、
図4に示すように、第1流路4aの始端と第2流路4bの始端は共に炭化室2の一側面2aに開口した燃焼室6からの熱風供給路5の終端開口部5bに連通して合流すると共に、
図5に示すように、第1流路4aの終端と第2流路4bの終端は共に熱風供給路5の終端開口部と反対側の炭化室2の一側面2aに設けた熱風排出路10の始端開口部10cに連通して合流する構成とし、ジグザグ形状を構成すると共に各流路間は複数の隔壁41で区画されている。
【0022】
炭化室2の外周側面に複数の隔壁41を立設して炭化室2の外方をジグザグ形状に区画すると、この区画された通路が熱流路4となり、外気と遮断した熱流路層3を形成することとなる。
【0023】
また、第1流路4aと第2流路4bとは、熱風流入管5aの終端開口部5bを半分にする位置で炭化室2の一側面2aに設けた分流壁40により区画される。
【0024】
第1流路4aは、炭化室2の一側面2aに形成した第1流路上流部4a-1と、炭化室2の上面2bに形成した第1流路中流部4a-2と、炭化室2の他側面2cに形成した第1流路下流部4a-3とで形成している。
【0025】
同様にして、第2流路4bは、炭化室2の背面2dに形成した第2流路上流部4b-1と、炭化室2の下面2eに形成した第2流路下流部4b-2とで形成している。
【0026】
そして、第1流路4aや第2流路4bは、それぞれ上流側と下流側の各流路部の始端と終端が連通している。
【0027】
また、第1流路4aと第2流路4bのそれぞれの終端は、炭化室2の分流壁40を設けた一側面2aと反対側の側壁6dに、熱風排出路10である排出管10aの始端開口部10cで連通して合流するように構成している。
【0028】
そして、このようなジグザグ状の熱流路4a,4b内を熱風が流通することにより、熱風の熱エネルギーが炭化室2、2´内部の炭化処理対象物Cに極めて効果的且つ効率よく伝わる。
【0029】
また、ジグザグ状の熱流路4a,4bに冷風を流通させることで高熱状態にある炭化室2,2´を急速冷却すると炭化室2,2´の熱斑に起因した偏奇ひずみや劣化を防止しつつ炭化室2,2´側壁の均一な熱収縮を実現する。
【0030】
このように間接加熱方式で車載可能な熱分解炭化処理装置100は、熱媒流体又は冷媒流体との間で加熱や冷却といった熱交換率を飛躍的に上昇させる熱流路4a,4bを炭化室2,2´に対し一定の規則性に従って備え、熱交換時に発生する弊害を防止している。
【0031】
炭化室2は、
図2及び
図3に示すように、ボックス形状に形成しており、炭化室2と相似形の炭化炉ケース1内に収納されている。
【0032】
すなわち、炭化炉ケース1と炭化室2とで入れ子構造とし、炭化炉ケース1内側面と炭化室2の炭化処理対象物出入口2f側を除いた外周五側面との間に外気と遮断するように外周を外側板3aで閉塞した熱流路層3を形成し、この熱流路層3にジグザグ状の熱流路4を形成している。
【0033】
さらに、
図1及び
図3に示すように、熱流路層3の外側板3aと炭化炉ケース1の内側板との間には一定の間隙を形成して断熱空気層80としている。
【0034】
従って、炭化炉ケース1とその内部に入れ子構造で収納した炭化室2、すなわち熱流路層3の外側板3aとの間には扉部12と底面を除いた他の周側面の間に断熱空気層80が介在して形成されていることになる。
【0035】
また、炭化炉ケース1の壁厚内部には断熱素材としてのセラミックウール81を充填している。
【0036】
また、
図2及び
図3に示すように、炭化室2は、内部に炭化処理対象物Cを収容する空間と、正面側に炭化処理対象物Cの炭化室内部への装入及び炭化処理対象物Cの収集を可能とする正面開口の炭化処理対象物出入口2fを形成し、炭化処理対象物出入口2fには扉部が開閉自在に枢支されている。
【0037】
また、扉部12の内部には、
図3に示すように、セラミックウール81などの断熱素材が充填されており、実際にはシート状のセラミックウール81を数枚積層して貫通ボルトなどにより固定している。
【0038】
さらに、炭化室2は、
図1及び
図4に示すように、その一側面2aの中央部上部で乾留ガス移送管7を介して燃焼室6内と連通連設し炭化室2内で生成した乾留ガスを燃焼室6内に還流して高燃焼効率化を図っている。
【0039】
炭化室2の内部には炭化処理対象物Cとして、例えば廃棄材木や日用品のうち有機材料でできている廃棄物などが収納される。そのために、炭化室2内には炭化処理対象物Cの収納機構90を取り出し自在に収納する。
【0040】
<炭化室の収納機構>
以下、
図3、
図6、
図7を参照しながら、炭化室2に収納する収納機構90について具体的に説明する。収納機構90は、方形箱型の炭化トレイ20として構成している。
図6は、炭化トレイ20を炭化室2に装入設置した状態を示す斜視図である。また、
図7(a)は、炭化トレイ20の構成を示す側面図であり、
図7(b)は、炭化トレイ20の構成を示す正面図である。
【0041】
炭化トレイ20は、
図3、
図6、
図7に示すように、炭化室2の内部空間よりやや小さい方形状に形成しており、上方開放の箱型とし方形組み付けのフレームの周壁や底面は金網20aで構成し、底部フレーム20cの四隅には脚部20bを突設して炭化トレイ20を数段に重ねて積層したときに脚部20bを介して上下段の炭化トレイ20の間にフォークリフトのリフト爪が差し込まれる空間Sが形成されるように構成している。
【0042】
すなわち、炭化室2内に収納する炭化処理対象物Cの収納機構90は、上方開放の方形状箱型に構成すると共に、少なくとも側面は金網20aで形成し、しかも、外底部の四隅には互いに積層した場合に下方の収納機構90との間にリフト爪が挿入できるだけの間隙Sが形成されるように脚部20bを突設し、炭化室2内において収納機構90に収納した炭化処理対象物Cに可及的均一迅速にかつ万遍なく輻射熱が照射されるように構成している。
【0043】
このようにして炭化室2内において収納機構90に収納された炭化処理対象物Cは可及的均一迅速にかつ万遍なく輻射熱が照射され効率よく炭化処理される。
【0044】
特に、収納機構90を積層構造としたために輻射熱の照射が効率よく行われる。例えば、
図7に示すように、脚部20bの介在によって上下の収納機構90の間に熱風の流通流路が形成され、同時に側壁の金網20aを透過した熱風は上昇して上層の収納機構底部の金網20aから上方に流通し効率的な熱風の流通(図中、破線矢印)を形成し、任意に不整列に積層した不定形状の炭化処理対象物Cの間隙を熱風が効率よく流通して不定形状の炭化処理対象物Cの全面に可及的に熱風を接触させ炭化処理の効率化を行うことができる。
【0045】
このように構成した炭化トレイ20は、その上部開口から熱ガス対流筒20dの外周を囲むように底部に炭化処理対象物Cを積載収容することで炭化処理対象物Cと底部と熱ガス対流筒20dとの接触面積を拡大すると共に、加熱時における炭化室2内部の輻射熱効率や熱ガスの対流効率をさらに向上させて炭化処理対象物Cの効果的な熱分解環境を形成することを可能としている。
【0046】
<燃焼室の構成>
次に、
図1及び
図8を参照しつつ、燃焼室6の構成について説明する。
図8(a)は、燃焼室6の全体構成を示す説明図であり、
図8(b)は、燃焼室6内部における熱風の旋回流の発生状態を示す説明図である。
【0047】
燃焼室6は、直方体形状でトレーラ31上に載置した前後二個の炭化炉ケース1の間に挟まれるように配設されている。
【0048】
図8(a)に示すように、燃焼室6の前側壁6a略中央には熱風生成用のバーナー61が設けられ、燃焼室6の上側壁6bの前部位置から燃焼室6内方に乾留ガス移送管7、7´が突出され、燃焼室6の上側壁6bの後部位置には2つの熱風流入管5a,5a´及びその上部で連通する熱風送気部62が配設され、熱風送気部62後方には混焼部63が形成されている。なお、燃焼室6の外周側は、
図1に示すように、耐火材料、例えば耐火煙瓦やセラミックウール等の耐熱性壁体64で囲繞している。
【0049】
バーナー61は、灯油ガスを燃料とする。また、一対の乾留ガス移送管7、7´は、燃焼室6の上側壁6bの前部位置から燃焼室6の内方にそれぞれ突出している。
図8(a)中、7c,7c´は乾留ガス移送管7,7´の先端開口部を示し、6cは燃焼室6の後側壁を示す。
【0050】
すなわち、一対の乾留ガス移送管7、7´の先端開口部7c,7c´は、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、乾留ガス移送管7,7´から燃焼室6内部へ噴出供給される乾留ガスや燃焼用空気が左右両側壁6d,6d´に斜め方向に突き当たると共にバーナー61の火炎噴射方向両側に沿って互いに回転方向を違える2つの旋回流を発生させるように配設している。
【0051】
混焼部63は、熱風送気部62の後方で、燃焼室6の後側壁6c、上下側壁及び左右両側壁6d,6d´で囲まれる所定空間として設けている。
【0052】
熱風送気部62は、燃焼室6の上側壁6bの後部位置から上方に向けて突設された所定空間を有する箱型部材であり、その上部で2つの熱風流入管5a,5a´を連設している。
【0053】
このように燃焼室6を構成することにより、互いに旋回方向を違えた乾留ガスと燃焼空気とからなる2つの旋回流は、負圧の中心部に更なる乾留ガスや燃焼空気を引き込みつつ、バーナー61の火炎噴射方向に沿って燃焼しながら混焼部63に移動する。
【0054】
そして混焼部63では、移動してきた旋回流が燃焼室6の後側壁や左右側壁に突き当たり乱流状態となることで混焼が促進され乾留ガスを完全燃焼して高温の熱風を生起させることを可能としている。
【0055】
この熱風は、いったん燃焼室6の上側壁6b後部の熱風送気部62内に一定量が吹き溜まり、2つの熱風流入管5a,5a´に対して流入する熱風の分流量割合を一定としている。
【0056】
また、燃焼室6は、熱風流入管5a,5a´を介して炭化室2、2´の外周に形成した熱流路4、4´と連通連設している。
【0057】
すなわち、燃焼室6で生成した熱風は、熱風流入管5a,5a´を介して、炭化室2,2´の外周に形成した熱流路4,4´を循環し、熱風排出路10である排出管10aを通じて煙突10bから排出されることとなる。
【0058】
<熱風流通機構>
次いで、
図1及び
図8を参照しながら、熱風の流通機構の説明をする。燃焼室6のバーナー61の基部は、
図1に示すように、灯油供給管14aを介して灯油タンク14と、また、燃焼空気送管13を介して燃焼用空気送風用の送風機9aと、それぞれ連通連設している。
【0059】
また、炭化室2と燃焼室6とを連通する乾留ガス移送管7,7´の途中には、エジェクタ7b,7b´が配置される。エジェクタ7b,7b´は、送風機9bからの燃焼用空気を駆動流として導入する燃焼空気送管16,16´´が連結され、炭化室2,2´内の水蒸気や乾留ガスを吸引流として導入する乾留ガス移送管7,7´及び燃焼用空気と乾留ガス等とを混合した混合流を導出する乾留ガス移送管8,8´が連結される。これにより、炭化室2内部の水蒸気及び乾留ガスはこのエジェクタ7b,7b´により吸引され、燃焼室6に導出される。
【0060】
また、燃焼空気送管13、灯油供給管14a、燃焼空気送管16,16´、乾留ガス移送管7,7´の中途部には自動開閉バルブ13a,14b,16a,16a´´,7a,7a´が設けられ制御装置15により操作制御される。なお、
図1中、15aはバーナー制御ユニット、Vは開閉バルブ、T1は燃焼室温度を検出する温度センサ、T2は熱流路温度を検出する温度センサ、T3は炭化室温度を検出する温度センサである。
【0061】
そして、燃焼室6で発生した高温の熱風は、
図4及び
図6に示すように、炭化室2外周の五側面に熱単体流路42を多数平行して形成した第1流路4aと第2流路4bとをジグザグ状に流通して炭化室2と熱交換する。
【0062】
このように形成した熱流路4は、炭化処理対象物Cの炭化処理後に炭化室2を冷却する冷却流路として兼用することができる。すなわち、送風機9a,9bの他に、冷却専用の送風機9cから供給される冷風を、熱風供給路5を介して熱流路4に流通させて炭化室2を冷却する。
【0063】
このような炭化処理後の冷却方式により、熱流路4を備えた炭化室2に強制空冷式の冷却機能を付与し、炭化室の冷却時間の短縮することができる。
【0064】
<エジェクタの構成>
図9は、エジェクタ7b,7b´の構成の一部を破断した断面図である。
図9に示すように、エジェクタは、下流に向けて内径断面積が漸次拡大して空気ブロア9から送風される駆動流空気を導入する導入部121と、導入部121の下流端に接続され湾曲した円管である湾曲部122と、湾曲部122の下流端に接続され内径断面積が漸次縮小して駆動流空気を加速する加速部123と、加速部123の下流端に接続された円管である合流部124とを有した駆動流部120と、合流部124の中心軸に一致し、加速部123の下流端の径に比して小さい径の円管であって、湾曲部122の径が大きい外壁の外側から湾曲部122の内部に貫通し、先端開口が加速部123の下流端の上流側に配置される吸引管130とを有する。なお、合流部124は、乾留ガス移送管8,8´の上流端部である。また、吸引管130は、乾留ガス移送管7,7´の炭化室2,2´側の配管であって、下流側の端部の配管である。また、導入部121には、燃焼空気送管16,16´が接続される。
【0065】
そして、加速部123において加速部123の内壁と吸引管130の先端部の外壁との間で駆動流空気が加速され、駆動流空気の減圧により吸引管130の内部流体である乾留ガスを下流側に吸引し、合流部において駆動流空気と吸引された乾留ガスとを合流及び混合させて燃焼室6側に吐出する。
【0066】
なお、合流部124の径d3は、吸引管130の径d2よりも小さい。また、湾曲部122の径d4は、導入部121の上流端の径d1より大きく、加速部123の下流端の径d4より大きく、径d1は径d3よりも小さい。
【0067】
導入部121に導入された駆動流空気は、導入部121、湾曲部122、加速部123が形成する胃袋形状あるいは卵型形状に類似するバッファ空間を形成し、駆動流空気が合流部124の中心軸に対して直交あるいは斜めから流入する場合であっても、加速部123に形成される加速部123の内壁と吸引管130の外壁との間の加速領域PPで加速される駆動流の流速を加速領域PPにおいて均一化することができる。
【0068】
従来のエジェクタは、中心軸に配置されたノズルからの駆動流の周囲に吸引流を生成していたが、エジェクタ7b,7b´は、この駆動流と吸引流とが逆になる。そして、均一化された駆動流は、吸引流の外周を包み込んで乾留ガスを吸引するため、空気ブロア9などの送風能力であっても、大きな吸引力を得ることができるとともに、渦流などの吸引流の乱れが発生しにくいため、圧力損失を小さくすることができるとともに安定した吸引流を得ることができる。
【0069】
なお、湾曲部122は、径が同一の配管であったが、中央部の径を大きくしてもよい。すなわち、上流端から中央部にかけて曲線状に径を大きくし、中央部から下流端にかけて曲線状に径を小さくするようにしてもよい。なお、導入部121の内壁の径は直線状に増大あるいは減少しているが、曲線状に増大あるいは減少するようにしてもよい。このような曲線状の内壁にすることで駆動流の乱れがなくなり、加速部領域において流速が均一になる。この場合、湾曲部122の内壁と加速部123の内壁とは、滑らかな面で接続されるとよい。また、加速部123の内壁は、流れ方向に対して直線状であったが、内側に凸となる曲線状としてもよい。この場合、さらに加速領域PPにおける加速が促進される。
【0070】
これにより、本実施の形態のエジェクタは、簡易な構成で、空気ブロア9の送風能力に対する吸引力を大きくすることができる。また、均一な駆動流が形成されるため、安定した吸引流の流量制御を行うことができる。
【0071】
乾留ガス移送管7は、熱分解後、冷却工程に移行して熱流路を冷却流路として兼用する場合、乾留ガス中に含まれるタール分等の気化物は冷えると隅々に溜まるが、熱分解炭化処理装置100にエジェクタ7b,7b´を適用すると、均一な駆動流が形成され、乾留ガスの吸引流が配管内をスムーズに流れるため、これを防止することができる。なお、エジェクタは、逆流防止機能も有する。
【0072】
また、本実施の形態では、燃焼室容積は、0.5m2とする極小燃焼室構造であるのに対し、炭化室容積は4m2×2=8m2と大きい。ここで、大量の乾留ガスが一挙に小さな燃焼室に供給されると、完全燃焼されず、乾留ガス中に含まれる臭気成分や有害物質を分解することができない。このため、乾留ガスの流量及び流速を精度高くコントロールすることが必要である。エジェクタ7b,7b´の駆動流側及び乾留ガス側にはそれぞれ自動開閉バルブが設けられ、開度調整を行うが、乾留ガスの発生量は加熱とともに大きく変化する場合があり、迅速な乾留ガスの流量及び流速を制御する必要がある。本実施の形態では、エジェクタ7b,7b´によって乾留ガスの吸引流が、湾曲しない直線状の円筒の配管内をスムーズに流れるため、迅速な乾留ガスの流量及び流速の制御が可能になる。
【0073】
<車両搭載>
次に、
図10~
図12を参照しながら熱分解炭化処理装置100を搭載する車両と搭載構造について説明する。
図10は、炭化室を炭化炉ケースへ収容する際の載置構造を示す斜視図である。また、
図11は、炭化室を炭化炉ケースへ収容する際の載置構造の側面図である。また、
図12(a)は、熱分解炭化処理装置100を搭載する前のトレーラ31とトラクタ32を示す斜視図であり、
図12(b)は、熱分解炭化処理装置100を搭載した炭化処理車両30を示す斜視図である。
【0074】
熱分解炭化処理装置100に係る炭化装置本体11は、
図12(b)に示すように、車両左右方向に炭化室2,2´の正面2g,2g´及び背面2d,2d´を向けてトレーラ31上に積載されており、トラクタ32により牽引して移動可能な構造としている。
【0075】
熱分解 炭化処理車両30は、2個の炭化装置本体11の正面側と背面側を車両左右方向に向け、また、互いの炭化装置本体11の間に燃焼室6を配設してトレーラ31のシャーシ33上に搭載し、トラクタ32により牽引して移動可能に構成している。
【0076】
すなわち、本実施の形態の車載式の熱分解炭化処理装置100における炭化装置本体11は、
図10や
図11に示すように、炭化室2は底面の所定箇所、例えば、下方に敷設するレール34,34´に対応する位置の4か所に支持突起21,21´を突設して炭化炉ケース1底部に敷設したレール34,34´上に載置可能に構成している。
【0077】
しかも、炭化室2の支持突起21,21´はレール34,34´に穿設した突起支持孔34a,34a´に一定のクリアランスを保持して遊嵌されるように構成しており、熱膨張による構成部材の伸縮から生じる炭化室2の変形変位を突起支持孔34a,34a´のクリアランスで吸収すべく構成している。
【0078】
より具体的には、炭化炉ケース1の底部には、所定間隔を隔てて平行に一対のH鋼35,35´が敷設されており、レール34,34´の両側面とH鋼35,35´の上側面とにわたって支持片35aを当接溶着している。
【0079】
レール34、34´は、
図12に示すように、炭化炉ケース1底部に所定間隔を隔てて平行に敷設した一対のH鋼35,35´の上面に配設している。
【0080】
炭化室2,2´の底面、すなわち炭化室2,2´の底面下層に形成した熱流路層3,3´の底板の略四角形となる左右端略近傍には、所定間隔を隔てて方形状の4個の支持突起21,21´を突設している。
【0081】
また、一対のレール34,34´の上面には、炭化室2,2´底面側に設けた支持突起21,21´と嵌合する位置で支持突起21,21´よりも一回り大きめの方形状溝である突起支持孔34a,34a´をそれぞれ2つ穿設している。
【0082】
そして、レール34,34´の各突起支持孔34a,34a´に対して炭化室2,2´底面の各支持突起21,21´を遊嵌して炭化室2,2´を載置することにより、支持突起21と突起支持孔34aとの間に所定のクリアランスを形成している。
【0083】
なお、突起支持孔34aと支持突起21との間の空間には断熱性の不織布、例えばセラミックウール等を敷き詰めることとしてもよい。
【0084】
また、本実施形態に係る支持突起21,21´は幅員約9cm2、長さ約3cmに形成し、突起支持孔34a,34a´は幅員約25cm2、奥行長さ約5cmに形成して、支持突起21を突起支持孔34aに遊嵌した際に所定のクリアランスを形成可能としている。
【0085】
このように炭化装置本体11を構成することにより、炭化室2,2´の熱膨張によって生起する構成部材の伸縮を、突起支持孔34a,34a´と支持突起21,21´との間のクリアランスで吸収することを可能としている。
【0086】
すなわち、炭化処理中に高温の熱風により炭化室2,2´の構成部材に熱膨張変形を生じ炭化室2,2´の構成枠が変形変位しても上記の構成が炭化室2,2´の変位を吸収して炭化室2、2´の摺動を促し熱分解炭化処理装置100の全体のひずみや構成部材の亀裂や熱損壊を防止することができ、翻っては燃焼室6からの熱風を遺漏することなく有効に利用して熱エネルギーを最大限に活用した炭化処理対象物Cの熱分解炭化処理装置100とすることができる。
【0087】
次いで、このように構成した炭化装置本体11をトレーラ31に積載するに際しては、
図12に示すように、車載用のトレーラ31のシャーシ33に二個の炭化装置本体11の各部材や構造セクションの重量負荷を可及的に軽減できるような重量配分を行うように構成している。
【0088】
また、トレーラ31のシャーシ33の後半部33bを前半部33aよりやや下方位置に形成し、後半部33bのシャーシ33には二個の炭化装置本体11、11´を前後に配設すると共にその間に燃焼室6を介設し、前半部33aのシャーシ33には操作及び作動関係の付属関連部材91を配設した。
【0089】
操作及び作動関係の付属関連部材91としては、前半部33aのシャーシ33上面に、制御装置15を備える制御装置15や発電装置18、灯油タンク14、灯油ポンプ14cが配設されている。
【0090】
灯油タンク14は、バーナー61の火炎燃料となる灯油を貯溜しており、前半部33aのシャーシ33のトラクタ32側の右上面に配設している。
【0091】
また、前半部33aのシャーシ33上面の灯油タンク14の後方位置に灯油タンク14に隣接して灯油ポンプ14cを、更にその後方位置には制御装置15を備えた制御装置15をそれぞれ配設している。
【0092】
そして、灯油ポンプ14cは、制御装置15で制御されており灯油タンク14から灯油供給管14aを介してバーナー61へ上述のごとく所定量の灯油を供給する。
【0093】
また、発電装置18は、灯油ポンプ14cや制御装置15、上述の送風機9や後述する扉部12の油圧シリンダ70に対して動力源となる電気を生成する部位であり、前半部33aのシャーシ33のトラクタ32側の左上面に配設している。
【0094】
また、シャーシ33の後半部33bの上面には、
図11(a)に示すように、車両前後方向に沿って所定間隔を隔てて平行に2つの溝部が連設されており、溝部より肉厚の平板合板である一対のライナー36,36´が前後摺動可能に溝部に嵌合して敷設されている。
【0095】
なお、ライナー36,36´の車両前後方向の両端側近傍には、前後摺動幅を一定に規制するL字アングルを配設している。
【0096】
そして、上述のごとくレール34,34´を介して炭化炉ケース1に収容した炭化室2すなわち炭化装置本体11やその間に配設する燃焼室6は、この一対のライナー36,36´を介してトレーラ31のシャーシ33に対し車両前後方向位置で後輪31aに負荷される後軸重が最大荷重となる位置に、それぞれ並べて搭載固定されている。
【0097】
このように構成することで炭化装置本体11や燃焼室6とシャーシ33との間に所定の断熱空間を形成し、しかも車両前後方向に沿う振動をライナー36,36´が摺動吸収して炭化装置本体11や燃焼室6に与える振動負荷を軽減し、しかも炭化装置本体11の各部材や構造セクションの重量負荷を可及的に軽減している。
【0098】
すなわち、シャーシ33の後半部33bに前半部33aより下位置で二個の炭化装置本体11の大重量負荷をかけてトラクタ32とトレーラ31との連結部分における重量負荷の軽減を図ることができ、可及的に牽引動力の伝達を円滑に行うことができるために炭化装置の路上走行移動に伴う牽引に何ら支障がない。
【0099】
しかも、トレーラ31とトラクタ32とを連結して炭化処理車両30全体を長大化させて路上走行を行う場合に路上カーブのハンドリングに際し、シャーシ33の後半部33bでシャーシ33の前半部33aより下位置において二個の炭化装置本体11の重量負荷をかけているので、シャーシ33の最後尾が振れる状態を可及的に防止することができることになりより安全な走行を行うことができる。
【0100】
また、シャーシ33の前半部33aに操作及び作動関係の付属関連部材91を配設したことにより、装置の点検やメンテナンス作業が行い易く、また、前半部33aが後半部33bより高い位置にあるため、路上走行時の路面の凹凸に伴う振動衝撃を直接に受けることなく計器類の誤作動や故障を可及的に防止することができる。
【0101】
<ベローズの配置>
ここで、炭化装置本体11,11´が車載される場合、炭化装置本体11,11´にそれぞれ接続される熱風供給路5の配管には、それぞれベローズ110,110´が設けられている。ベローズ110,110´は、
図13に示すように、蛇腹形状であるため、形状変形により、炭化装置本体11,11´の熱膨張、熱収縮による配管への応力を吸収することができる。また、配管の軸C方向の変形に限らず、軸C方向に垂直な方向へのずれも吸収することができる。特に、熱分解炭化処理装置100では、温度上昇と冷却とを繰り返して行うため、ベローズ110,110´の配置は有用である。なお、複数のねじ穴113を有するリング状のフランジ112は、ベローズ本体111の両端に形成されている。
【0102】
このベローズ110,110´の配置は、装置運転中の形状変形のみならず、装置の組立や車載時における位置ずれも吸収することができる。
【0103】
なお、ベローズは、熱風供給路5の配管に限らず、必要に応じて各種の配管に設けてもよい。例えば、エジェクタ7b,7b´の入出力配管に設けてもよい。
【0104】
<扉のロック機構>
なお、熱分解炭化処理装置100において本実施の形態では扉部12にシール機構を持たせている。
図14は、閉扉状態の炭化装置本体11の構成を示し、
図15は、開扉状態の炭化装置本体11の構成を示している。
【0105】
すなわち、炭化装置本体11において、扉部12と炭化炉ケース1、炭化室2等の開口部1a、2fとの間のシーリング構造を改良することにより炭化室2の熱風ガス(乾留ガス)を漏洩させることなく熱効率のよい炭化処理が行えるように構成している。
【0106】
炭化炉ケース1と炭化炉ケース1内に収納された炭化室2とは、外周六面体のうち一面体は炭化処理対象物Cの出し入れ用に開放して、炭化炉ケース1の開口部1aや炭化室開口部2fに、
図15及び
図16に示すように、外気と遮断するための扉部12を開閉自在に枢支している。
【0107】
扉部12の閉扉に関する構造としては、閉扉時に扉部12の周縁の押圧フランジ12aが炭化室2を内嵌する炭化炉ケース1の開口部周縁面1bに圧着されるが、その間に炭化室2の開口部周縁の炭化室フランジ2iを挟持圧着すべく構成している。
図16は、炭化炉ケース1正面のシーリング構造を示す。また、
図17は、
図16に示した炭化装置本体11のA-A断面図であり、
図17(a)及び
図17(b)は、それぞれ開扉状態と閉扉状態とを示す。
【0108】
すなわち、
図17(b)に示すように、炭化室フランジ2iが扉部12の周縁の押圧フランジ12aと炭化炉ケース1の開口部周縁面1bとにより挟持されることにより、炭化室2の固定がなされる構造に構成していると共に、炭化室2の開口部2fと炭化炉ケース1の開口部1aとを扉部12の周縁の押圧フランジ12aで密封自在となるように構成している。
【0109】
すなわち、
図17(b)に示すように、扉部12の端縁部12bには断面コ字状の鋼鉄製の樋条12cを突設し、樋条12c中には扉部用緩衝密着ロープ12dを嵌入敷設し、扉部12の周縁に扉部用緩衝密着ロープ12dを張り巡らした状態とする。
【0110】
該緩衝密着ロープ12dは素材をセラミックウールにより構成し、一定の弾性力による密着機能と共に熱に対する耐熱機能により強度を保持し、しかも断熱効果を得ることができ、閉扉時に扉部の端縁部12bを炭化炉ケース前端面1eに圧着可能として炭化室内の熱エネルギーの熱損失を可及的に少なくなるように構成している。
【0111】
また、断熱空気層80を介して炭化室2を被覆する炭化炉ケース1においても、同様に開口部周縁面1bには断面コ字状の鋼鉄製の樋条1cを突設し樋条1c中に炉緩衝密着ロープ1dを嵌入して炭化炉ケース1の周縁に炉緩衝密着ロープ1dを張り巡らしている。そして該ロープ素材はセラミックウールにより構成している。
【0112】
また、閉扉時に扉部12の最先端縁部12eに設けたフランジ先端縁12fは、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、炭化炉ケース1の炉緩衝密着ロープ1dに当接可能に構成している。
【0113】
このように構成することにより閉扉時に扉部12の最先端縁部12eを炭化炉ケース前端面1eに圧着可能に構成し、閉扉時の大重量の扉部12の衝撃を緩衝することができると共に炭化炉ケースの開口部1aの密封機能を果たすことができる。
【0114】
また、
図16及び
図17に示すように、炭化室2の炭化室フランジ先端面2hと炭化炉ケース前端面1eとの間には鋼鉄製の断面コ字状の樋条50中に嵌入した密着区画ロープ51を介在している。該ロープ素材はセラミックウールにより構成している。
【0115】
密着区画ロープ51は、
図17(a)に示すように、扉部12の端縁部に張り巡らした扉部用緩衝密着ロープ12dに対応する位置に配設しており、扉部用緩衝密着ロープ12dとの間には炭化室2の周縁のフランジ2iを介しており、閉扉時に扉部周縁の押圧フランジ12aの重量負荷がかかってもその重量負荷を重なった二本の重合ロープ12d、51によって強固に支持し確実に扉部の密着閉扉を行うことができる。
【0116】
また、炭化炉ケース1の開口部周縁面1bには、
図14~
図16に示すように、油圧シリンダ70により垂直及び水平作動するコマ軸71を配設している。
図18(a)は、扉部12の扉部用コマ12gと炭化炉ケース1のテーパーコマ72とが開放している状態を示し、
図18(b)は互いのコマ72,12g同士が嵌合している状態を示す。また、
図18(c)は、平面視におけるコマ軸71の摺動による互いのコマ72、12gのテーパー嵌合機構を示す。
【0117】
すなわち、
図14に示すように、炭化炉ケース1の開口部周縁にうち左右縦方向には左右の縦コマ軸71a,71bが、また、上下横方向には上下の横コマ軸71c,71dがそれぞれ摺動自在に架設されている。
【0118】
かかるコマ軸71の端部には油圧シリンダ70が連設されており油圧シリンダ70の作動によりコマ軸71は上下左右に摺動するように構成されている。
【0119】
しかも、コマ軸71には所定の間隔で複数のテーパーコマ72が連設されていると共に、
図18に示すように、扉部12の周縁部にも閉扉時においてコマ軸71のテーパーコマ72と略対応する位置に扉部用コマ12gが突設されている。
【0120】
これらのコマ72,12gは、
図18(c)に示すように、互いの当接面がテーパーの傾斜状に形成されており、テーパーコマ72は上方に向かって狭窄状に形成されており、扉部用コマ12gはテーパーコマ72と反対のテーパーの傾斜状に形成されている。
【0121】
すなわち、各コマ72、12gの当接摺動面は互いに反対方向の傾斜面を形成しており、
図18(c)に示すように、閉扉時のコマ軸71の摺動により各コマ72,12gの当接摺動によって扉部周縁部12hはコマ72,12gのテーパー機能により炭化炉ケース1の開口部周縁面1bに密着することができる。
【0122】
ここで、油圧シリンダ70は、
図18(c)に示すように、圧力保持回路200に接続される。圧力保持回路200は、油圧ユニット25を介して制御され、扉部12を閉状態にする場合、油圧シリンダ70によるコマ軸の押圧によりテーパーコマの傾斜面と扉部用コマの傾斜面とが向かい合う方向に摺動して扉部12を炭化炉ケース1の周縁面に密着させ、油圧シリンダ70の押圧状態を残圧により保持する。圧力保持回路200は、ポンプに接続された4方3位置弁201と油圧シリンダ70との間にチェック弁202が配置される。
【0123】
扉部12は上記した密着区画ロープ51や扉部用緩衝密着ロープ12dや炉緩衝密着ロープ1dなどを介して炭化室2や炭化炉ケース1の開口部1a,2fに密着できると共に、テーパー状のコマ72,12gの当接機能によってもさらに強固な密着機能を果たすことができ、かかる構造によって熱漏洩を可及的に減じて炭化処理のための熱エネルギーの効率的で有効な利用が可能となる。
【0124】
<熱分解炭化処理>
図19は、制御装置15による熱分解炭化処理制御時の炭化室温度の時間変化(曲線L3)を示す図である。
図19に示した熱分解炭化処理制御の処理条件は、炭化温度500℃、燃焼室温度1000℃としている。
図19に示すように、熱分解炭化処理制御には、昇温工程PR1(時点to~t1)、炭化工程PR2(時点t1~t2)、追焼工程PR3(時点t2~t3)、冷却工程PR4(時点t3~t4)を有する。この追焼工程は、オプションである。なお、
図19では、燃焼室温度(曲線L1)及び熱流路4内の流路ガス温度の変化(曲線L2)も示している。
【0125】
昇温工程では、燃焼室6の点火後、燃料を燃焼させて炭化室2,2´内の炭化室温度を設定炭化室温度である500℃まで昇温させる。その後、炭化工程に移行し、設定炭化室温度で一定時間(設定炭化ホールド時間)、炭化室2,2´内の炭化処理対象物を間接加熱し、炭化処理を促進する。この時、燃焼室温度は1000℃に維持される。
【0126】
その後、追焼工程を行う場合は、さらに炭化室温度を上げ、例えば、炭化室温度が追焼温度(800℃)に達するまで昇温し、この時点で燃焼室6の燃焼を止めて消火し、炭化室を密閉した後に、熱風供給路5に外気を供給して、冷却工程に移行する。冷却工程は、炭化室温度が冷却終了温度(例えば外気温や100℃)に降下した時点で終了する。
【0127】
ここで、炭化室2,2´の気化物は、乾留ガス以外に、昇温開始後、水が水蒸気として炭化室内に発生する。本実施の形態では、この水蒸気の特性を利用し、炭化室の昇温を行う。すなわち、
図20に示すように、過熱水蒸気は、沸点(大気圧の場合、100℃)を超える温度に加熱された上記であり、高温の乾いた蒸気である。この過熱水蒸気は、燃焼室での燃料の燃焼により生成した熱風と比較し、同じ温度、同じ質量でも非常に大きな熱量(2500kJ/kg以上)を有しており、炭化室で発生した水から過熱水蒸気を生成して炭化室の加熱を行うようにしているので、効率的な炭化室の昇温を行うことができる。なお、水蒸気は大気に放出しても問題はない。
【0128】
<燃焼制御モード>
図21は、制御装置15が行う燃焼制御モードの概念を説明する説明図である。燃焼制御モードには、燃焼室温度制御モードm1と乾留ガス制御モードm2とがある。燃焼室温度制御モードm1は、燃焼室に供給される燃料の供給量を制御して炭化室の温度を制御するモードである。また、乾留ガス制御モードは、燃焼室に供給される燃料の供給量を最小量に固定して燃焼室のパイロット炎(種火)とし、エジェクタから燃焼室への空気及び乾留ガスの供給量を調整して炭化室の温度を制御するモードである。そして、制御装置15は、炭化室において乾留ガスが発生している場合、乾留ガス制御モードにより炭化室の温度制御を行い、乾留ガスが発生していない場合、燃焼室温度制御モードにより炭化室の温度制御を行う。
【0129】
<熱分解炭化処理>
つぎに、制御装置15による熱分解炭化処理手順について説明する。
図22~
図24は、制御装置15による熱分解炭化処理手順を示すフローチャートである。なお、設定炭化室温度は、400℃に設定している。この炭化室温度を含めた各種パラメータは、炭化処理対象物によって異なる。
【0130】
図22~
図24に示すように、まず、制御装置15は、燃料及び空気をバーナーに供給して燃焼室6の点火を行う(ステップS101)。その後、各種温度の温度トレンドの描画を開始する(ステップS102)。そして、最初は、水蒸気も乾留ガスも発生していないため、燃焼室温度制御モードm1に設定されて燃焼制御を開始する(ステップS103)。
【0131】
その後、炭化室温度が50℃以上になったか否かを判定する(ステップS104)。なお、炭化室温度が50℃以上とは、水蒸気及び乾留ガスの発生が開始する温度である。炭化室温度が50℃以上でない場合(ステップS104:No)には、本判定処理を繰り返す。
【0132】
一方、炭化室温度が50℃以上である場合(ステップS104:Yes)、自動開閉バルブ16,16´(エジェクタ空気電動弁)を全閉から20%開にするとともに、自動開閉バルブ7a,7a´(乾留ガス電動弁)を全閉から50%開にする(ステップS105)。これにより、燃焼室6では、燃料を用いた燃焼に加えて水蒸気や乾留ガスの燃焼が徐々に開始する。
【0133】
その後、自動開閉バルブ14b(燃料弁)の開度が最小(min)であり、かつ、炭化室温度が設定炭化室温度(400℃)を超えたか否かを判定する(ステップS106)。自動開閉バルブ14b(燃料弁)の開度が最小(min)であり、かつ、炭化室温度が設定炭化室温度(400℃)を超えていない場合(ステップS106:No)には、本判定処理を繰り返す。一方、自動開閉バルブ14b(燃料弁)の開度が最小(min)であり、かつ、炭化室温度が設定炭化室温度(400℃)を超えた場合(ステップS106:Yes)には、乾留ガス制御モードm2に移行する(ステップS107)。
【0134】
そして、燃料弁の開度を最小に維持して種火状態にし、エジェクタ空気電動弁の開度を50%~100%にし、さらに、乾留ガス電動弁の開度を50%から100%の開度にする(ステップS108)。これにより、燃焼室で完全燃焼が可能な乾留ガスを燃焼室に取り込む。
【0135】
その後、乾留ガス空気電動弁が開度100%(全開)になった後、炭化室温度が所定温度、例えば5℃、低下したか否かを判定する(ステップS109)。なお、炭化室温度が所定温度低下する現象は、乾留ガスの発生が終息に入ったことを示している。乾留ガス空気電動弁が開度100%(全開)になった後、炭化室温度が所定温度、低下していない場合(ステップS109:No)、ステップS108の設定状態で加熱燃焼を維持する。
【0136】
一方、乾留ガス空気電動弁が開度100%(全開)になった後、炭化室温度が所定温度、低下した場合(ステップS109:Yes)、燃焼室温度制御モードm1に移行し、燃料の供給量を可変にして燃料の燃焼による制御を行う(ステップS110)。そして、この際、エジェクタ空気電動弁の開度を50%にし、乾留ガス電動弁の開度を100%にする(ステップS111)。これにより、主として燃料の燃焼による火炎によって温度を上昇させる。
【0137】
その後、炭化室温度が設定炭化室温度になったか否かを判定する(ステップS112)。炭化室温度が設定炭化室温度になっていない場合(ステップS112:No)には、本判定処理を繰り返し、燃焼室温度制御モードm1による制御を継続する。一方、炭化室温度が設定炭化室温度になった場合(ステップS112:Yes)には、次の炭化工程を開始する(ステップS201)。すなわち、ステップS101~S112までの処理は昇温工程である。
【0138】
炭化工程が開始されると、設定炭化ホールド時間を経過したか否かを判定する(ステップS202)。この設定炭化ホールド時間は、設定炭化温度となっている状態の経過時間である。なお、炭化工程では、炭化室温度が設定炭化温度となる燃焼制御が行われる。そして、設定炭化ホールド時間を経過していない場合(ステップS202:No)、炭化室温度が設定炭化温度となる燃焼制御が続行される。一方、設定炭化ホールド時間を経過した場合(ステップS202:Yes)、炭化工程を終了する。
【0139】
追焼工程の実施指示を受けているか否かを判定する(ステップS301)。追焼工程の実施指示を受けている場合(ステップS301:Yes)、追焼工程を開始する(ステップS302)。すなわち、炭化室温度が設定追焼温度になるまで炭化室を昇温させる(ステップS303)。そして、炭化室温度が設定追焼温度になったか否かを判定する(ステップS304)。炭化室温度が設定追焼温度になった場合(ステップS304:Yes)、追焼工程を終了してステップS401の冷却工程に移行する。一方、追焼工程の実施指示を受けていない場合(ステップS301:No)、追焼工程を終了してステップS401の冷却工程に移行する。
【0140】
冷却工程では、まず、燃料弁を閉にする(ステップS401)。さらに、乾留ガス電動弁を全閉にする(ステップS402)。さらに、自動開閉バルブ14b(冷却用空気電動弁)、自動開閉バルブ13b(燃焼用空気電動弁)、エジェクタ空気電動弁をそれぞれ全開にし(ステップS403)、熱流路4に外気を送り込んで炭化室を冷却する。
【0141】
その後、炭化室温度が冷却終了温度になったか否かを判定する(ステップS404)。炭化室温度が冷却終了温度になっていない場合(ステップS404:No)、本処理を繰り返し、炭化室の冷却を続行する。一方、炭化室温度が冷却終了温度になった場合(ステップS404:Yes)、冷却用空気電動弁、燃焼用空気電動弁、エジェクタ空気電動弁をそれぞれ全閉にし(ステップS405)、温度トレンドの描画を終了するとともに記憶し(ステップS406)、本処理を終了する。
【0142】
このような熱分解炭化処理手順を行うことにより、炭化室容積が大きい炭化室から大量の乾留ガスが一挙に小さな燃焼室に供給されずに、乾留ガス中に含まれる臭気成分や有害物質を分解する完全燃焼が実現できるとともに、水蒸気及び乾留ガスの熱エネルギーを有効利用することができる。
【0143】
なお、上記の実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明のエジェクタを用いた熱分解炭化処理装置は、簡易な構成で送風能力に対する吸引力を大きくして炭化処理対象物の熱分解炭化処理を行う場合に有用である。
【符号の説明】
【0145】
1 炭化炉ケース
1a 開口部
1b 開口部周縁面
2,2´ 炭化室
3 熱流路層
4 熱流路
5 熱風供給路
5a 熱風流入管
6 燃焼室
7,7´ 乾留ガス移送管
7a,7a,13a,13b,14b,16,16´ 自動開閉バルブ
7b,7b´ エジェクタ
8,8´ 乾留ガス移送管
9,9a,9b,9c 空気ブロア(送風機)
10 熱風排出路
11,11´ 炭化装置本体
12 扉部
12a 押圧フランジ
12b 端縁部
12c 樋条
12d 扉部用緩衝密着ロープ
12e 最先端縁部
12f フランジ先端縁
12g 扉部用コマ
12h 扉部周縁部
13 燃焼空気送管
14 灯油タンク
14a 灯油供給管
14c 灯油ポンプ
15 制御装置
16,16´ 燃焼空気送管
20 炭化トレイ
25 油圧ユニット
30 炭化処理車両
31 トレーラ
32 トラクタ
33 シャーシ
34 レール
61 バーナー
62 熱風送気部
63 混焼部
64 耐熱性壁体
70 油圧シリンダ
71 コマ軸
71a 縦コマ軸
71c 横コマ軸
72 コマ
72 テーパーコマ
80 断熱空気層
81 セラミックウール
90 収納機構
91 付属関連部材
100 熱分解炭化処理装置
110,110 ベローズ
111 ベローズ本体
112 フランジ
113 ねじ穴
120 駆動流部
121 導入部
122 湾曲部
123 加速部
124 合流部
130 吸引管
200 圧力保持回路
201 4方3位置弁
202 チェック弁
【要約】
簡易な構成で送風能力に対する吸引力を大きくすることができるエジェクタ及びこれを用いた熱分解炭化処理装置を提供することを目的とし、エジェクタ7b、7b´は、下流に向けて内径断面積が漸次拡大して駆動流空気を導入する導入部121と、導入部121の下流端に接続され湾曲した円管である湾曲部122と、湾曲部122の下流端に接続され内径断面積が漸次縮小して駆動流空気を加速する加速部123と、加速部123の下流端に接続された円管である合流部124と、合流部124の中心軸に一致し、加速部123の下流端の径に比して小さい径の円管であって、湾曲部122の径が大きい外壁の外側から前記湾曲部の内部に貫通し、先端開口が加速部123の下流端の上流側に配置される吸引管130とを備え、加速部123において駆動流空気が加速され、駆動流空気の減圧により吸引管130の内部流体を下流側に吸引する。