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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】駐車支援装置および駐車支援方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 99/00 20090101AFI20240617BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B60R99/00 330
B60W30/06
B60R99/00 322
B60R99/00 371
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022011503
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110206
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 吉正
(72)【発明者】
【氏名】三小田 啓人
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193014(JP,A)
【文献】特開2014-156201(JP,A)
【文献】特開2014-034322(JP,A)
【文献】特開2019-020769(JP,A)
【文献】特開2014-034321(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03929046(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第110444044(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102012014207(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 99/00
B60W 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路の側方に位置する駐車領域への車両の並列駐車を支援する駐車支援装置であって、
前記車両の周囲の障害物を検知した位置を示す検知点の情報を取得する取得回路と、
前記検知点を検知点群に分け、前記検知点群の各々にあてはまる近似直線を算出し、前記検知点群の各々から算出した前記近似直線に対する前記検知点のばらつきを算出する分析回路と、
前記検知点に基づいて、前記車両が駐車する駐車地点を設定し、前記近似直線と前記ばらつきとに基づいて、前記駐車地点における前記車両の方向である駐車方向を設定する設定回路と、
前記検知点が構造物を示すとする推定の尤もらしさを示す尤度を算出する推定回路と、
前記駐車方向の設定後に、前記駐車方向を補正する補正回路と、を備え、
前記取得回路は、前記検知点のうち、第一の検知点を前記駐車方向の設定前に取得し、第二の検知点を前記駐車方向の設定後に取得し、
前記分析回路は、前記第一の検知点を第一の検知点群に分け、前記第二の検知点を第二の検知点群に分け、前記第一の検知点群の各々に対して第一の近似直線を各々算出し、前記第二の検知点群の各々に対して第二の近似直線を各々算出し、前記第一の近似直線の各々に対する前記第一の検知点群の第一のばらつきを各々算出し、前記第二の近似直線に各々に対する前記第二の検知点群の第二のばらつきを各々算出し、
前記設定回路は、前記第一の検知点に基づいて、前記駐車地点を設定し、前記第一の近似直線と前記第一のばらつきとに基づいて、前記駐車方向を設定し、
前記推定回路は、前記第一の検知点群および前記第二の検知点群の各々に対して、前記尤度を算出し、
前記補正回路は、前記第二のばらつきと前記第二の検知点群から算出した前記尤度とに基づいて前記第二の近似直線の各々を重み付けし、重み付けされた前記第二の近似直線を用いて前記駐車方向の補正量を算出し、前記補正量を用いて前記駐車方向を補正する、
駐車支援装置。
【請求項2】
前記推定回路は、前記第一のばらつきおよび前記第二のばらつきのうち、小さいばらつきを有する検知点群について、大きいばらつきを有する検知点群よりも、前記尤度を高く算出する、
請求項に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記推定回路は、前記第一の近似直線および前記第二の近似直線のうち、他の近似直線と略平行、または略直角となる近似直線は、他の近似直線と略平行、または略直角とならない近似直線よりも、前記尤度を高く算出する、
請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記推定回路は、前記検知点群の幅に対する当該検知点群における直線区間の長さの比率が大きい検知点群に、前記比率が小さい検知点群よりも前記尤度を高く算出する、
請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記補正回路は、前記駐車地点における前記駐車方向を基準として、前記第二の検知点群を、第一の検知点小群と第二の検知点小群とに分けられる場合、前記通路と略平行な方向に分布する検知点群の尤度がより高い検知点小群に対して、前記尤度が低い検知点小群よりも高く重み付けする、
請求項2から請求項のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記補正回路は、前記駐車地点における前記駐車方向を基準として、前記第二の検知点群を第一の検知点小群と第二の検知点小群とに分けられる場合、前記駐車方向と略平行な方向に分布する検知点の数がより多い検知点小群に対して、前記検知点の数が少ない検知点小群よりも高く重み付けする、
請求項2から請求項のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項7】
前記設定回路は、前記第一のばらつきに基づいて前記第一の近似直線の重み付けを算出し、前記第一の近似直線の重み付けと前記第一の近似直線の方向とを用いて、前記駐車方向を設定する、
請求項2から請求項のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項8】
前記補正回路は、前記駐車地点における前記駐車方向と略平行な方向に分布する検知点の数に応じて、前記補正量を変化させる、
請求項2から請求項のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項9】
前記取得回路は、時間に対する受信強度の変化を示す受信強度波形を取得し、
前記推定回路は、前記受信強度波形に基づいて、前記尤度を推定する、
請求項2から請求項のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項10】
通路の側方に位置する駐車領域への車両の並列駐車を支援する駐車支援方法であって、
前記車両の周囲の障害物を検知した位置を示す検知点の情報を取得し、
前記検知点を検知点群に分け、前記検知点群の各々にあてはまる近似直線を算出し、前記検知点群の各々から算出した前記近似直線に対する前記検知点のばらつきを算出し、
前記検知点に基づいて、前記車両が駐車する駐車地点を設定し、前記近似直線と前記ばらつきとに基づいて、前記駐車地点における前記車両の方向である駐車方向を設定し、
前記検知点が構造物を示すとする推定の尤もらしさを示す尤度を算出し、
前記駐車方向の設定後に、前記駐車方向を補正し、
前記検知点は、前記駐車方向の設定前に第一の検知点が取得され、前記駐車方向の設定後に第二の検知点が取得され、
前記第一の検知点は、第一の検知点群に分けられ、
前記第二の検知点は、第二の検知点群に分けられ、
前記第一の検知点群の各々に対して第一の近似直線が各々算出され、
前記第二の検知点群の各々に対して第二の近似直線が各々算出され、
前記第一の近似直線の各々に対する前記第一の検知点群の第一のばらつきが各々算出され、
前記第二の近似直線の各々に対する前記第二の検知点群の第二のばらつきが各々算出され、
前記第一の検知点に基づいて、前記駐車地点が設定され、
前記第一の近似直線と前記第一のばらつきとに基づいて、前記駐車方向が設定され、
前記第一の検知点群および前記第二の検知点群の各々に対して、前記尤度が算出され、
前記第二のばらつきと前記第二の検知点群から算出した前記尤度とに基づいて前記第二の近似直線の各々が重み付けされ、
重み付けされた前記第二の近似直線を用いて前記駐車方向の補正量が算出され、
前記補正量を用いて前記駐車方向が補正される、
駐車支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駐車支援装置および駐車支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、隣接する障害物の側面の方向に沿って、車両を並列駐車させる駐車支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-34321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の駐車支援装置では、駐車車両の左右に隣接する障害物の位置をソナーで検知して、検知された検知点群が直線状に並んだ区間長が閾値を超えた場合に、閾値を超えた区間長を有する直線の方向に沿って車両を並列駐車させている。
【0005】
例えば、駐車枠の左右いずれか一方に角柱があり、他方に駐車車両があった場合、通常、角柱の側面は駐車枠の長辺と平行なので、角柱の側面に沿って並列駐車を行うのが望ましいが、特許文献1の駐車支援装置では、検知点群が直線状に並んだ区間長が閾値を超えた場合に、当該区間長を有する直線の方向を駐車方向としているため、側面がより長い駐車車両の方向が駐車方向に設定されてしまう。したがって、駐車車両の姿勢が駐車枠の長辺に対して斜めであると、角柱の側面に沿って並列駐車を行うことは困難であった。
【0006】
本開示は、より適切な車両姿勢で自動駐車を行うことができる駐車支援装置および駐車支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る駐車支援装置は、通路の側方に位置する駐車領域への車両の並列駐車を支援する駐車支援装置であって、前記車両の周囲の障害物を検知した位置を示す検知点の情報を取得する取得回路と、前記検知点を検知点群に分け、前記検知点群の各々にあてはまる近似直線を算出し、前記検知点群の各々から算出した前記近似直線に対する前記検知点のばらつきを算出する分析回路と、前記検知点に基づいて、前記車両が駐車する駐車地点を設定し、前記近似直線と前記ばらつきとに基づいて、前記駐車地点における前記車両の方向である駐車方向を設定する設定回路と、前記検知点が構造物を示すとする推定の尤もらしさを示す尤度を算出する推定回路と、前記駐車方向の設定後に、前記駐車方向を補正する補正回路と、を備え、前記取得回路は、前記検知点のうち、第一の検知点を前記駐車方向の設定前に取得し、第二の検知点を前記駐車方向の設定後に取得し、前記分析回路は、前記第一の検知点を第一の検知点群に分け、前記第二の検知点を第二の検知点群に分け、前記第一の検知点群の各々に対して第一の近似直線を各々算出し、前記第二の検知点群の各々に対して第二の近似直線を各々算出し、前記第一の近似直線の各々に対する前記第一の検知点群の第一のばらつきを各々算出し、前記第二の近似直線に各々に対する前記第二の検知点群の第二のばらつきを各々算出し、前記設定回路は、前記第一の検知点に基づいて、前記駐車地点を設定し、前記第一の近似直線と前記第一のばらつきとに基づいて、前記駐車方向を設定し、前記推定回路は、前記第一の検知点群および前記第二の検知点群の各々に対して、前記尤度を算出し、前記補正回路は、前記第二のばらつきと前記第二の検知点群から算出した前記尤度とに基づいて前記第二の近似直線の各々を重み付けし、重み付けされた前記第二の近似直線を用いて前記駐車方向の補正量を算出し、前記補正量を用いて前記駐車方向を補正する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る駐車支援装置によれば、より適切な車両姿勢で自動駐車を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、ソナーモジュールの概略構成を示すブロック図である。
図1B図1Bは、ソナーモジュールの発信音波と受信音波の一例を示す図である。
図1C図1Cは、超音波の反射について説明する図である。
図1D図1Dは、受信強度波形の一例を示す図である。
図2A図2Aは、駐車支援装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2B図2Bは、駐車支援装置が搭載された車両に配置されたソナーモジュールの配置例を示す図である。
図3図3は、物体までの距離を特定する方法を説明する図である。
図4図4は、駐車支援装置の動作概要を説明する図である。
図5A図5Aは、駐車支援装置が、自動駐車を実施する前に取得または設定する各種パラメータを説明する第1の図である。
図5B図5Bは、駐車支援装置が、自動駐車を実施する前に取得または設定する各種パラメータを説明する第2の図である。
図5C図5Cは、駐車支援装置が、自動駐車を実施する際に取得または設定する各種パラメータを説明する図である。
図6A図6Aは、物体の端部において、検知点が実際の物体よりも膨らんで検知される例を示す第1の図である。
図6B図6Bは、物体の端部において、検知点が実際の物体よりも膨らんで検知される例を示す第1の図である。
図7A図7Aは、ソナーモジュールが、駐車車両を測距している様子を示す図である。
図7B図7Bは、ソナーモジュールが、構造物(角柱)を測距している様子を示す図である。
図7C図7Cは、図7Aにおけるソナーモジュールの受信強度波形の一例を示す図である。
図7D図7Dは、図7Bにおけるソナーモジュールの受信強度波形の一例を示す図である。
図8図8は、検知点群に占める直線区間の割合によって構造物(角柱)と駐車車両とを判別する方法を説明する図である。
図9図9は、検知点群の直線区間の長さによって構造物(角柱)と駐車車両とを判別する方法を説明する図である。
図10A図10Aは、2台の駐車車両の間に駐車する場合の目標駐車位置の設定方法を説明する図である。
図10B図10Bは、1台の駐車車両と角柱との間に駐車する場合の目標駐車位置の設定方法を説明する図である。
図10C図10Cは、1台の駐車車両の横に駐車する場合の目標駐車位置の設定方法を説明する図である。
図10D図10Dは、構造物が検知されない場合の目標駐車位置の設定方法を説明する図である。
図11A図11Aは、目標駐車位置の側方の障害物の尤度が高い場合の一例を示す図である。
図11B図11Bは、目標駐車位置の側方の障害物の尤度が低い場合の一例を示す図である。
図12A図12Aは、車両が自動駐車を開始する直前の状態の一例を示す図である。
図12B図12Bは、車両が切り返し地点に到達した状態の一例を示す図である。
図12C図12Cは、車両が目標駐車位置に向けて後退している状態の一例を示す図である。
図13A図13Aは、検知点群が構造物であると推定される尤度が高い場合に、車両の舵角の補正量を制御する方法を説明する図である。
図13B図13Bは、検知点群が構造物であると推定される尤度が低い場合に、車両の舵角の補正量を制御する方法を説明する図である。
図14A図14Aは、車両の左側の障害物の尤度が右側の障害物の尤度よりも高い場合に、駐車方向を補正する際の重み付けを説明する図である。
図14B図14Bは、車両の左右の障害物の尤度がともに低い場合に、駐車方向を補正する際の重み付けを説明する図である。
図14C図14Cは、車両の左側の障害物の尤度が低く、右側の障害物の尤度が0である場合に、駐車方向を補正する際の重み付けを説明する図である。
図15A図15Aは、従来の駐車支援装置の動作を説明する図である。
図15B図15Bは、本実施形態の駐車支援装置の動作を説明する図である。
図16図16は、駐車支援装置が備えるセンサ制御部の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図17図17は、駐車支援装置が備える駐車支援部の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図18図18は、駐車支援装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図19図19は、駐車地点および駐車方向の設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図20図20は、駐車方向の設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図21図21は、目標駐車位置中心線の設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図22図22は、第2の実施形態の駐車支援装置が設定する目標駐車位置を説明する図である。
図23図23は、第2の実施形態の駐車支援装置が、車両の舵角の補正量を制御する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示に係る駐車支援装置の第1の実施形態について説明する。
【0011】
(ソナーモジュールの概略構成と動作概要)
まず、図1A図1B図1C図1Dを用いて、駐車支援装置10が備えるソナーモジュール12の概略構成と動作概要を説明する。図1Aは、ソナーモジュールの概略構成を示すブロック図である。図1Bは、ソナーモジュールの発信音波と受信音波の一例を示す図である。図1Cは、超音波の反射について説明する図である。図1Dは、受信強度波形の一例を示す図である。
【0012】
図1Aに示すように、ソナーモジュール12は、圧電素子19と、駆動回路20と、受信回路21と、コントローラ22とを備える。また、コントローラ22は、タイマー22aと、波形メモリ22bと、通信回路22cと、閾値メモリ22dと、判定回路22eとを備える。また、コントローラ22は、伝送路23を介して、駐車支援装置10(図2A参照)と接続する。
【0013】
ソナーモジュール12は、圧電素子19に電圧を印加することにより、超音波を発信する。例えば、コントローラ22が駆動回路20を制御して、圧電素子19に、例えば50KHzの交流電圧を印加することにより、圧電素子19が同じ周波数の超音波を発信する。発信される超音波は、タイマー22aによって発信期間が管理されたパルス状の波形を有する。当該パルス状の超音波は、路面や障害物に当たると反射して、一部がソナーモジュール12に返って来る。
【0014】
そして、圧電素子19は、返ってきた反射波の音圧を電圧に変換する。受信回路21は、圧電素子19によって音圧から変換された電圧を増幅する非図示の増幅回路(アンプ)を備える。受信回路21は、圧電素子19によって音圧から変換された電圧を増幅回路で増幅した上で整流し、音波受信強度に変換する。当該変換された音波受信強度の時間変化を示す波形(図1D)を受信強度波形という。受信信号と増幅された受信信号は交流であり、音波受信強度は増幅された受信信号を整流したものなので、交流と直流の違いがあるが、いずれも受信信号を処理して得られたものなので、交流か直流かで区別せず、一括して受信信号と呼ぶ事がある。また、検知の場面では受信音波の波形ではなく、受信強度に変換した状態で閾値と比較する。そのため実用上、受信音波の波形ではなく、受信強度の波形を指して受信強度波形と呼んでいる。
【0015】
ソナーモジュール12は、圧電素子19から、例えば図1Bに示す発信音波Sを発信する。そして、ソナーモジュール12は、圧電素子19から、例えば図1Bに示す受信音波Rを受信する。
【0016】
発信音波Sは、予め決められた発信期間を有するパルス状の音波である。そして、発信された音波は障害物に当たってソナーモジュールの方向に戻り、受信音波Rとなる。このとき、障害物が遠くにあるほど、音波が返ってくるまでの時間が長くなる。
【0017】
受信回路21は、駆動回路20が超音波を発信した後に所定の受信期間を設定して、当該受信期間に、音波の反射波を受信する。例えば、受信回路21は、所定の受信期間以外の範囲をマスクする機能を備える。なお受信期間は、ソナーモジュール12が検知する障害物までの距離に応じて、適宜設定すればよい。
【0018】
図1Cに示すように、車両5に搭載されたソナーモジュール12が発信したパルス状の超音波は、音波のコーン24となって空中に放出される。そして、音波のコーン24は、路面や障害物25a,25bに当たると反射して、一部が圧電素子19に返ってくる。この反射波がエコー26である。
【0019】
図1Dは、受信強度波形の一例を示す図である。図1Dの横軸は距離dおよび時間t、縦軸は音波の受信強度I、例えば音波受信強度を示す。なお、音波受信強度を単に受信強度と呼ぶ事がある。受信強度波形は、コントローラ22の波形メモリ22bに記憶される。
【0020】
遠くの物体ほど、超音波がソナーモジュール12から発信されてからソナーモジュール12に返るまでの時間が長いため、発信から受信までの時間の長さを、ソナーモジュール12から物体までの距離に換算できる。ソナーモジュール12は車両5の端部に設けられているので、ソナーモジュール12から物体までの距離は、車両5から物体までの距離と略等しい。以下、ソナーモジュール12から物体までの距離を、車両5から物体までの距離と表現する事がある。
【0021】
超音波を反射する物体のうち、車両5の走行の妨げになる物体を障害物と呼び、車両5の走行の妨げにならない物体を非障害物と呼ぶ。非障害物には、路上の小さな石や路面の段差などの凹凸や、路面自体が含まれる。このような非障害物からの反射波を検知しないようにするために、音波受信強度の閾値が設定される。音波受信強度の閾値は、検知閾値ともいう。また、音波受信強度の閾値を単に閾値と呼んでも良い。当該検知閾値は、コントローラ22の閾値メモリ22dに記憶される。
【0022】
受信強度が検知閾値以下の反射波は、非障害物による反射波として、検知対象から除外される。また、超音波は空気中で急速に減衰するので、車両5から物体までの距離が遠くなるほど、受信強度波形の高さ、例えば反射波の受信強度が低くなる。このため、図1Dに示すように、検知閾値Tは、車両5からの距離が長いほど小さくなるように設定される。また、車両5からの距離は、超音波の発信から当該超音波による反射波の受信までの時間の長さに対応するため、検知閾値Tは、超音波の発信から当該超音波による反射波の受信までの時間の長さが長いほど、小さくなる。例えば、検知閾値Tは、単一の数値ではなく、異なる距離に対応付けられた複数の値であり、受信強度波形の上では折れ線や曲線で表される。
【0023】
受信強度波形の上で障害物からの反射波を示すパルス波形は幅を持っており、そのパルス幅は「ソナーモジュール12から障害物の異なる部位までの距離の違いの範囲」に相当するので、受信強度波形のパルスの立ち上がりまでの時間を距離に換算する事で、ソナーモジュール12から(車両5から)障害物までの最短距離を算出できる。なお、受信強度波形の上で障害物からの反射波を示す波形(山またはコブ)を指してエコー波形と呼ぶ事がある。例えば、図1Dの受信強度波形には二つのエコー波形があり、各々、図1Cの2つの障害物、25a、25bからの反射波(エコー)に対応する。また、受信強度波形全体を指してエコー波形と呼ぶ事もある。
【0024】
コントローラ22の判定回路22eは、受信強度波形(エコー波形)を閾値メモリ22dに記憶された検知閾値Tと比較する事により、車両5の周囲の物体を検知する。より正確には、増幅された受信信号を整流して音波受信強度とし、この音波受信強度を検知閾値Tと比較する。判定回路22eは、検知閾値Tを超える受信強度Iの反射波が受波された場合に、障害物を検知したと判定し、障害物を検知したこと、および車両5から障害物までの距離を示す距離情報を通信回路22cに送出する。通信回路22cは、障害物を検知したこと、および車両5から障害物までの距離を示す距離情報を、車内LAN等の伝送路23を介して、駐車支援装置10(図2A参照)に送信する。
【0025】
また、図1Dには1回分の発信に対応する受信強度波形を示したが、ソナーモジュール12は、タイマー22aで管理された所定の時間間隔をおいて、繰り返し超音波を発信する。
【0026】
(駐車支援装置の概略構成)
図2A図2Bを用いて、本実施形態の駐車支援装置10の概略構成を説明する。図2Aは、駐車支援装置の概略構成の一例を示すブロック図である。図2Bは、駐車支援装置が搭載された車両に配置されたソナーモジュールの配置例を示す図である。
【0027】
図2Aに示すように、駐車支援装置10は、車両5に備えられて、メカセンサ11と、ソナーモジュール12と、駐車支援部13と、操作部14と、センサ制御部15と、車両制御部16と、測位処理部17とを備える。なお、図2Aには、車体やエンジン等は省略して、制御に関係する部分について記載している。また、図2Aに示すブロックの数は、物理的な箱の数と対応しない。なお、図2Aに示す各機能部位は、例えば車内LAN等の伝送路23で互いに接続されている。
【0028】
メカセンサ11は、車両5の舵角、ギヤ位置、車速、車輪の回転数などを計測するセンサ含む。
【0029】
ソナーモジュール12は、車両5に複数(例えば12個)備えられる。詳しくは後述する(図2B参照)。なお、ソナーモジュール12は、車両制御部16と専用の配線で直結されてもよい。
【0030】
駐車支援部13は、ソナーモジュール12による検知情報を利用して、自動駐車の目標位置と目標位置までの経路と目標位置における駐車方向とを設定し、自動駐車中に追加される検知情報に応じて、駐車方向を補正する。
【0031】
操作部14は、ディスプレイ、タッチパネル、スイッチ、スピーカー等の入出力装置を含む。操作部14は、自動駐車を行う際に、運転手の操作指示を受け付ける。また、操作部14は、自動駐車動作の進捗を、運転手に伝達する。
【0032】
センサ制御部15は、測位処理部17が検出した車両5の自車位置情報を得る。また、センサ制御部15は、車両5が駐車場にいることを検出した場合に、ソナーモジュール12が取得したデータを処理して検知情報を得る。具体的には、三角測量の原理と複数のソナーからの距離に基づいて障害物の位置を特定した検知点の座標を算出し、複数の検知点の分布や座標の連続性に基づいて複数の検知点を検知点群に分類する。これら複数の検知点、または検知点群の情報を総じて検知情報と呼ぶ。また、センサ制御部15は、検知情報を分析することによって、検知点群が構造物であると推定される尤もらしさを示す尤度を算出する。実施例中で、障害物の尤度、と表現する場合と、検知点群の尤度、と表現する場合があるが、実世界にある障害物は、センサ制御部15の内部では検知点群として処理されているので、障害物の尤度と検知点群の尤度に処理上の違いはない。なお、センサ制御部15は、ソナーモジュール12の発信制御も行う。
【0033】
車両制御部16は、自動駐車の為の車両5の舵角制御や速度制御を行う。車両制御部16は、車両5のパワーステアリングの操舵補助を行う。また、車両制御部16は、車両5の駆動源であるエンジン、モータとブレーキとの制御を行う。
【0034】
測位処理部17は、メカセンサ11が出力する車輪の回転数や、GPSナビ等の出力に基づいて、車両5の自車位置情報を出力する。
【0035】
図2Aに示す各ブロックは、車内LAN18で接続されており、命令やデータは、車内LAN18を介して送受信される。例えば、駐車支援部13は車内LAN18経由で、測位処理部17から得た自車位置情報をもとに、車両5が路上にいるか、駐車場内にいるかを判断する。自動駐車の際は、車両制御部16は、駐車支援部13の指令に基づいて車体を制御する。
【0036】
車両5には、図2Bに示すように、12個のソナーモジュール12が設置されている。例えば、車両5の左側方には、車両5の前方側(FLS:Front Left Side)にソナーモジュール12aが設置されて、車両5の後方側(BLS:Back Left Side)にはソナーモジュール12bが設置されている。4個のソナーモジュールが備えられている。また、車両5の右側方には、車両5の前方側(FRS:Front Right Side)にソナーモジュール12cが設置されて、車両5の後方側(BRS:Back Right Side)にはソナーモジュール12dが設置されている。これら4個のソナーモジュールは、車両側方の障害物を検知するため、サイドソナーとも呼ばれる。
【0037】
また、車両5の前方には、車両5の前進方向左側から順に、ソナーモジュール12e(FLC:Front Left Corner)、ソナーモジュール12f(FL:Front Left)、ソナーモジュール12g(FR:Front Right)、ソナーモジュール12h(FRC:Front Right Corner)が設置されている。内側に備えられるソナーモジュール12fとソナーモジュール12gとは、車両5が直進する際に進行方向の障害物を検知する。また、外側に備えられるソナーモジュール12eとソナーモジュール12hとは、車両5が曲がる際に、曲がる方向の障害物を検知する。ソナーモジュール12e,12hは、コーナーソナーとも呼ばれる。なお、4つのソナーモジュール12e,12f,12g,12hの検知範囲は、互いに重複するように設置されている。
【0038】
また、車両5の後方には、車両5の前進方向左側から順に、ソナーモジュール12i(BLC:Back Left Corner)、ソナーモジュール12j(BL:Back Left)、ソナーモジュール12k(BR:Back Right)、ソナーモジュール12l(BRC:Back Right Corner)が設置されている。内側に備えられるソナーモジュール12jとソナーモジュール12kとは、車両5が後退する際に進行方向の障害物を検知する。また、外側に備えられるソナーモジュール12iとソナーモジュール12lとは、車両5が後退し、曲がる際に、曲がる方向の障害物を検知する。ソナーモジュール12i,12lは、コーナーソナーとも呼ばれる。なお、4つのソナーモジュール12i,12j,12k,12lの検知範囲は、互いに重複するように設置されている。
【0039】
なお、車両5の側方に設置されたソナーモジュール12a,12b,12c,12dの検知範囲は、車両5の前方と後方に設置されたソナーモジュールの検知範囲に比べて狭く設定されている。これは、車両5が移動した際のサイドソナーの検知範囲の重複をできるだけ小さくすることによって、駐車支援装置10が車両5の側方の駐車スペースを検出する際の検出分解能を向上させるためである。また、各ソナーモジュールは、車両5が駐車を行う際に、周囲の障害物を検知しやすい高さおよび俯角で設置されている。
【0040】
(検知点の座標の特定方法)
図3を用いて、ソナーモジュール12が検知した信号から検知点の座標を特定する方法を説明する。図3は、物体までの距離を特定する方法を説明する図である。
【0041】
図3に示すソナー12pが音波を発信し、時刻T1後に、ソナー12pから距離d1離れた物体Оからの反射波を検知した場合、音波の経路長は2d1である。したがって、音速Mで距離2d1進む間に、時刻がT1経過した事になる。よって、ソナー12pから物体Oまでの片道の距離d1は、式(1)で算出することができる。
【0042】
d1=T1×M÷2・・・(1)
【0043】
また、ソナー12qが、ソナー12pの発信から時刻T2後に物体Оからの反射波を検知したとすると、ソナー12qから物体Оを経てソナー12qに至る経路長はd1+d2であるため、ソナー12qから物体Оまでの片道の距離d2は、式(2)で算出することができる。
【0044】
d2=T2×M-d1・・・(2)
【0045】
ソナー12pとソナー12qの位置は既知であるため、物体Оの座標は、ソナー12pを中心とする距離d1(半径)の円弧C1と、ソナー12qを中心とする距離d2(半径)の円弧C2の交点の座標として特定することができる。
【0046】
(駐車支援装置の動作概要)
図4を用いて、本実施形態の駐車支援装置10の動作概要を説明する。図4は、駐車支援装置の動作概要を説明する図である。
【0047】
駐車支援装置10を搭載した車両5は、駐車場の通路27を前進し、車両5を駐車させることが可能駐なスペースを探索する。ここでは、車両5の進行方向に向かって左側に駐車可能なスペースを検出し、このスペースの中に目標駐車位置33を設定するものとする。
【0048】
車両5は通路27を前進し、サイドソナー(ソナーモジュール12a,12b)を用いて測距を行う。そして、駐車支援装置10は、測距の結果得られた検知点の分布状態に基づいて、車両5を駐車させることができるスペースが発見されたことを条件として、このスペースの中に目標駐車位置33を設定する。
【0049】
例えば、図4の例では、駐車車両6bと駐車車両6cとの間に、車両5を駐車させることができるスペースが発見される。例えば、駐車車両6bと駐車車両6cとの間には、車両5の進行方向に沿う幅が、車両5の車幅よりも広く、なおかつ、車両5の進行方向に直交する方向に、車両5の全長よりも長いスペースが発見されたものとする。このスペースの範囲内で、例えば駐車車両6bと駐車車両6cの真ん中に、駐車車両6bと駐車車両6cに平行に並ぶ様に目標駐車位置33を設定すれば良い。
【0050】
目標駐車位置33を設定した後で、駐車支援装置10は、現在位置からスタートして、目標駐車位置33に車両5を並列駐車させる駐車経路を設定する。図4の例では、駐車支援装置10は、駐車経路L1と駐車経路L2とを設定する。例えば、駐車支援装置10は、現在位置から右に操舵して前進し、折り返し地点Uに至る駐車経路L1と、折り返し地点Uにおいてシフトポジションをリバース(R)位置に切り替えて、目標駐車位置33に向かって後退する駐車経路L2とを設定する。
【0051】
なお、駐車支援装置10は、車両5が駐車経路L2を走行する際に、ソナーモジュール12b,12dで車両5の側方の測距を行う。そして、検出された検知点の位置に応じて、障害物に接触しないように、操舵角を補正し、車両5を目標駐車位置33に向かって後退させる。
【0052】
本実施形態の駐車支援装置10は、第1ステップと第2ステップの2つの処理ステップを実行する。第1ステップは、駐車場の通路27を走行し、ソナーモジュール12によって車両5の周囲の障害物を検知した位置を示す検知点を取得して、取得した複数の検知点の配置に基づいて目標駐車位置33を設定するまでのステップである。第2ステップは、現在位置から目標駐車位置33に至る駐車経路L1,L2を設定して、設定された駐車経路L1,L2に沿って、操舵角を補正し、車両5を目標駐車位置33まで後退させるステップである。以下、第1ステップと第2ステップとで行われる処理の内容を詳細に説明する。
【0053】
(実施形態の説明で使用する用語の説明)
次に、図5A図5B図5Cを用いて、駐車支援装置10が行う具体的な処理の内容を説明するために使用する用語を説明する。
【0054】
まず、図5A図5Bを用いて、駐車支援装置10が目標駐車位置33を設定するまで、例えば、前述した第1ステップで使用する各種パラメータを説明する。
【0055】
駐車支援装置10が設定する目標駐車位置33は、図5Aに示す駐車地点30と、目標駐車位置中心線31と、駐車方向32と、車両5の大きさ(全長と車幅)とによって決定する。
【0056】
車両の位置を代表する代表点は、車両の二つの後輪の中点の位置である。駐車経路L1,L2(図4参照)は、代表点が移動する経路として定義される。駐車地点30は、駐車が完了した時に代表点が達する、駐車経路の終点である。目標駐車位置中心線31は、駐車地点30を通る車体の前後軸を示す直線であり、駐車方向32は駐車地点30に向かって車両が進行する方向を示す。本実施例は後退駐車の例を示すので、駐車方向32は車体の後尾の方向に当たるが、前進駐車の場合は車体の先頭の方向が駐車方向となる。
【0057】
車両の代表点や駐車経路の本実施例における定義は一例であり、任意に定めても良い。例えば、4輪が接地する点を頂点とする長方形の対角線が交わる点を車両の代表点として、その車両の代表点の移動経路を駐車経路と定義しても良い。
【0058】
駐車方向32の角度の基準も任意に定めて良い。本実施例においては、駐車方向32は、目標駐車位置33を決めた時の車両5の前後軸28を角度の基準(車両5の前方を0°)として、当該前後軸28と目標駐車位置中心線31とがなす角度が駐車方向32の角度であるが、地軸を角度の基準(真北を0°)として駐車方向32を決めても良い。
【0059】
駐車支援装置10は、設定した駐車地点30と、目標駐車位置中心線31と、駐車方向32とに、更に車両5の大きさ(全長と車幅)を加味することによって、目標駐車位置33を設定する。
【0060】
なお、駐車支援装置10は、目標駐車位置33を決めた時の車両5の二つの後輪の中点29を原点として、相対的に位置を定めるが、位置を緯度と経度で絶対的に定めても良い。
【0061】
駐車支援装置10は、駐車地点30と目標駐車位置中心線31と駐車方向32とを設定する際に、ソナーモジュール12a,12bが検知した複数の検知点Pの座標を利用する。
【0062】
図5Aの例において、駐車支援装置10は、駐車車両6a,6b,6c,6dが駐車している状態で、車両5が通路27に沿って定速走行しつつソナーモジュール12a,12bによる測距を行い、検知された検知点Pが途切れている区間があることを検出する。検知点Pが途切れている区間の長さが車両5の車幅より大きければ、車両5を駐車可能なスペースを検出した、と駐車支援装置10が判定する。駐車支援装置10は、駐車可能なスペースを通って左右の検知点Pまでの距離が等距離(wa)になる位置に目標駐車位置中心線31を定める。左右は、目標駐車位置33に車両が駐車した時に乗員の左右の手がある方向に対応しており、図5Aの例では、駐車車両6bが左側,駐車車両6cが右側にある。
【0063】
次に、図5Bを用いて、駐車支援装置10が、ソナーモジュール12a,12bが検知した検知点Pの座標に基づいて、駐車方向32を設定するために算出するパラメータを説明する。
【0064】
ソナーモジュール12a,12bによって検知される検知点Pは、車両5の周囲に存在する障害物の、車両5に面する外周縁付近に検出される。したがって、検知点Pは、障害物毎に異なる群を形成する。例えば、図5Bの例では、角柱7の、車両5に面する外周縁付近で検知された検知点群34aと、駐車車両6の、車両5に面する外周縁付近で検知された検知点群34bと、駐車スペースの奥の壁面や車止め付近で検知された検知点群34cとが形成される。なお、第1ステップにおいて検知される検知点Pを第一の検知点Pと呼び、第一の検知点Pで構成される検知点群を第一の検知点群と呼ぶ。以下、検知点群34a,34b,34cを区別せずに、単に第一の検知点群を表す場合、検知点群34または第一の検知点群34と呼ぶ。
【0065】
駐車支援装置10は、検知点群34の各々に於いて、当該検知点群34を構成する複数の検知点Pに対して、近似直線35を当てはめる。例えば、図5Bにおける検知点群34aには近似直線35aが当てはめられる。また、検知点群34bには近似直線35bが当てはめられる。そして、検知点群34cには近似直線35cが当てはめられる。以下、近似直線35a,35b,35cを区別せずに、一般の近似直線を意味する場合、単に近似直線35と呼ぶ。なお、検知点群34に近似直線35を当てはめる方法は特に限定されない。例えば、検知点群34を構成する各検知点Pの座標(X,Y)を最小二乗近似することによって近似直線35を当てはめればよい。なお、第一の検知点群に当てはめられた近似直線35を第一の近似直線35と呼ぶ。
【0066】
また、駐車支援装置10は、各検知点群34に対して、近似直線35に対する検知点Pのばらつき36を算出する。例えば、検知点群34aに対して、近似直線35aの周りの検知点Pのばらつき36aが算出される。また、検知点群34bに対して、近似直線35bの周りの検知点Pのばらつき36bが算出される。更に、検知点群34cに対して、近似直線35cの周りの検知点Pのばらつき36cが算出される。以下、ばらつき36a,36b,36cを区別せずに、一般のばらつきを意味する場合、単にばらつき36と呼ぶ。ばらつき36は、近似直線35の直線らしさを表す。例えば、ばらつき36が小さいほど近似直線35の直線らしさが高い。逆に、ばらつき36が大きいほど近似直線35の直線らしさが低い。なお、近似直線35の周りの検知点Pのばらつき36を第一のばらつき36と呼ぶ。
【0067】
ばらつき36の算出方法は特に限定されない。例えば、近似直線35と各検知点Pとの平均二乗誤差をばらつき36としてもよいし、相関係数や(共)分散をばらつき36としてもよい。また、近似直線35に沿って検知点Pが並ぶ直線区間の長さの逆数をばらつき36として、近似直線35に沿って検知点Pが並ぶ直線区間が長いほど、ばらつき36が小さいとしてもよい。
【0068】
駐車支援装置10は、このようにして算出された近似直線35の向きや、検知点Pのばらつき36の大きさに基づいて、車両5の駐車方向32を設定する。詳しくは後述する。
【0069】
次に、駐車支援装置10が目標駐車位置33と現在位置から目標駐車位置33に至る駐車経路とを設定した後で、設定された駐車経路に沿って、操舵角を補正し、車両5を後退させる際、例えば、前述した第2ステップで使用する各種パラメータを、図5Cを用いて説明する。
【0070】
第2ステップにおいて、車両5は、左右の障害物の間を後退する。図5Cの例では、車両5は、角柱7と駐車車両6との間を後退する。
【0071】
このとき、ソナーモジュール12b,12dによって検知される検知点Pは、車両5の周囲に存在する障害物の、車両5に面する外周縁付近に検出される。したがって、検知点Pは、障害物毎に異なる群を形成する。図5Cの例では、角柱7のうち、車両5に面する外周縁付近で検知された検知点群37aと、駐車車両6のうち、車両5に面する外周縁付近で検知された検知点群37bが形成される。なお、第2ステップにおいて検知される検知点Pを第二の検知点Pと呼び、第二の検知点Pで構成される検知点群を第二の検知点群と呼ぶ。また、第二の検知点群が、車両5の左側と右側とからそれぞれ検出された場合、一方の側の検知点群を第一の検知点小群と呼び、他方の側の検知点群を第二検知点小群と呼ぶ。例えば、図5Cの場合、検知点群37aが第一の検知点小群であり、検知点群37bが第二の検知点小群である。以下、検知点群37a,37bを区別せずに、単に第二の検知点群を表す場合、検知点群37または第二の検知点群37と呼ぶ。
【0072】
駐車支援装置10は、検知点群37の各々に対して、当該検知点群37を構成する複数の検知点Pに対して、近似直線38を当てはめる。例えば、図5Cにおける検知点群37a(第一の検知点小群)には近似直線38aが当てはめられる。また、検知点群37b(第二の検知点小群)には近似直線38bが当てはめられる。以下、近似直線38a,38bを区別せずに、一般の近似直線を意味する場合、単に近似直線38と呼ぶ。なお、第二の検知点群に当てはめられた近似直線38を第二の近似直線38と呼ぶ。
【0073】
また、駐車支援装置10は、各検知点群37に対して、近似直線38に対する検知点Pのばらつき39を算出する。例えば、検知点群37a(第一の検知点小群)に対して、近似直線38aの周りの検知点Pのばらつき39aが算出される。また、検知点群37b(第二の検知点小群)に対して、近似直線38bの周りの検知点Pのばらつき39bが算出される。以下、ばらつき39a,39bを区別せずに、一般のばらつきを意味する場合、単にばらつき39と呼ぶ。ばらつき39は、近似直線38の直線らしさを表す。例えば、ばらつき39が小さいほど近似直線38の直線らしさが高い。逆に、ばらつき39が大きいほど近似直線38の直線らしさが低い。なお、近似直線38の周りの検知点Pのばらつき39を第二のばらつき39と呼ぶ。
【0074】
駐車支援装置10は、このようにして算出された近似直線38の向きや、検知点Pのばらつき39の大きさに基づいて、第1ステップで設定した駐車方向32を補正する。駐車方向32を補正すると、その補正量は舵角に反映され、車体姿勢が変化する。駐車方向32の補正について、詳しくは後述する。
【0075】
(構造物らしさの推定方法)
次に、図6A図6B図7Aから図7D図8図9を用いて、検知された検知点群が、構造物(例えば角柱や壁面など、駐車場の建物の一部分)によるものか、駐車車両によるものかを判別する方法を説明する。図6Aは、物体の端部において、検知点が実際の物体よりも膨らんで検知される例を示す第1の図である。図6Bは、物体の端部において、検知点が実際の物体よりも膨らんで検知される例を示す第2の図である。図7Aは、ソナーモジュールが、駐車車両を測距している様子を示す図である。図7Bは、ソナーモジュールが、構造物(例えば角柱や壁面)を測距している様子を示す図である。図7Cは、図7Aにおけるソナーモジュールの受信強度波形の一例を示す図である。図7Dは、図7Bにおけるソナーモジュールの受信強度波形の一例を示す図である。図8は、検知点群に占める直線区間の割合によって構造物(例えば角柱)と駐車車両とを判別する方法を説明する図である。図9は、検知点群の直線区間の長さによって構造物(例えば角柱)と駐車車両とを判別する方法を説明する図である。
【0076】
ソナーモジュールは、超音波が到達した物体の表面のうち、最もソナーモジュールに近い点までの距離を検知する。したがって、図6Aに示すように、角柱7の前をソナーモジュールがX軸に沿って通過する時、ソナーモジュールに角柱7が対面している時は、ソナーの軌跡から角柱7の面まで下ろした垂線の距離が検知されるが、角柱7から斜めに外れた位置では、ソナーから角柱7の角までの、斜めの距離が検知される。そのため、角柱7を検知した検知点群は、実際の角柱7よりも横方向に膨らんで分布する。
【0077】
また、図6Bに示すように、車両を角柱7の横に駐車させる際に、車両がY軸に沿って後退する時、ソナーモジュールが角柱7の側面を検知した時も同じ事が起きる。例えば、ソナーモジュールが角柱7の側面と対面した状態になると、検知点群は、近似直線38eに沿って分布する。一方、角柱7の側面から少し外れた位置で検知した検知点群は、実際の角柱7よりも横方向に膨らんで分布するため、ソナーモジュール12が角柱7の角の手前に位置する時は、検知点群は、近似直線38cや近似直線38dに沿って分布する。
【0078】
例えば、車両が角柱7に接近し始めた初期の時点においては、検知点は実際の角柱7よりも膨れた部分にあるため、近似直線38cや近似直線38dの角度は、実際の角柱7の側面の角度を反映していない。したがって、初期の検知点から角柱7の側面の角度を推定して車体制御に反映すると、車体のふらつきを招いてしまう。
【0079】
次に、図7Aから図7Dを用いて、ソナーモジュール12の受信強度波形によって構造物(角柱)と駐車車両とを判別する方法を説明する。
【0080】
駐車車両6のフロント部にソナーの音波が当たった時と、同じ距離にある角柱7に音波が当たった時とで、音波を反射する反射面を比較する。図7Aに示すように、駐車車両6の反射面F1は、駐車車両6のソナーモジュール12の方向に面するヘッドライト周辺が主な部分となる。例えばボンネット、フロントガラスは、ソナーモジュール12からの音波が飛来する方向に対する角度が浅いために車両5のソナーモジュール12の方向に反射波が返らないので、実効的に反射面F1に含まれない。図7Bに示すように、角柱7の反射面F2は、駐車車両6のソナーモジュール12の方向に面しているので、図7Aの反射面F1よりも広くなる。例えば、図7A図7Bに示すように、ソナーモジュール12から駐車車両6までの距離dと、ソナーモジュール12から角柱7までの距離dとが等しい場合、図7C図7Dに示すように、受信強度Ia、Ibは、同じ時刻t1において立ち上がる。駐車車両6の反射面F1は、角柱7の反射面F2よりも狭いため、図7Dに示す角柱7からの反射波の受信強度Ibは、図7Cに示す駐車車両6からの反射波の受信強度Iaよりも強くなる。
【0081】
また、図7Aに示すように、駐車車両6のフロント部の奥行(凹凸)D1は、図7Bの角柱7の側面の奥行D2よりも大きい。図7Cでは、反射面1からソナーモジュール12までの距離が部分によって異なり、反射波が時間軸上で分散して届くため、受信強度波形は緩いピークになる。これに対して、図7Dでは、角柱7の反射面F2からソナーモジュール12までの距離が概ね同じであり、奥行D2が小さいため、反射波が時間軸上で集中して届くので、受信強度波形は鋭いピークになる。
【0082】
このように、ソナーモジュール12の受信強度波形の特徴を評価する事により、構造物と車両とを判別することができる。
【0083】
次に、図8を用いて、検知点群の分布状態に基づいて、構造物(角柱)と駐車車両とを判別する方法を説明する。図8は、検知点群に占める直線区間の割合によって構造物(角柱)と駐車車両とを判別する方法を説明する図である。
【0084】
車両5のフロント部は、空気抵抗を低減する事と、狭隘な曲がり角を通過し易くする事を目的として、一般に、角部を丸くする車体設計が行われている。そのため、ソナーの検知点群34eに近似直線35eを当てはめると、検知点が一直線上に並ぶ直線区間40eの長さは、検知点群が分布する幅に対して、比較的短い一部分になる。
【0085】
一方、駐車車両6と同じ幅の角柱7をソナーで検知した場合、ソナーの検知点群34fに近似直線35fを当てはめると、検知点が一直線上に並ぶ直線区間40fの長さは、角柱7の一辺の長さと略等しくなる。例えば、検知点群の幅の大部分が直線区間になる。このように、検知点群の幅(検知点群に属する最も距離が離れた2つの検知点Pの距離)に対する直線区間長の比率に基づいて構造物(この場合、角柱7)と駐車車両6とを判別することができる。なお、直線区間長のみならず、検知点群を直線近似した時のばらつきの大きさに基づいて、構造物と駐車車両6とを判別しても良い。例えば、図8において、駐車車両6に係る検知点群34eのばらつき36eは、角柱7に係る検知点群34fのばらつき36fよりも大きくなる。なお、ばらつきの大きさは、検知点群を直線近似したときの分散や、近似直線から検知点までの平均距離によっても定量化することができる。
【0086】
なお、角柱7にあっては、正面側の面に当てはめた近似直線35f(第一の近似直線)と、側面側の面に当て嵌めた近似直線(第二の近似直線)とは略直交する。これに対して、駐車車両6にあっては、検知点群34eのうち車両の角部に近い検知点を結ぶ近似直線は、駐車車両6の側面を検知した検知点を結ぶ近似直線と直交しない。したがって、駐車支援装置10が第1ステップで取得した第一の近似直線35と、第2ステップで取得した第二の近似直線38との直交性が高い場合、該当する障害物は構造物(例えば角柱7)である可能性が高いと推定してもよい。
【0087】
地下駐車場などに角柱7を設ける際は、収容可能台数を大きくする為に、強度設計が許す範囲で角柱7を細くする。そのため、多くの場合、角柱7の1辺、例えば、図9に示す直線区間40aの長さは、1.8m(車両5の車幅相当)よりも小さい。このように、検知点群の直線区間の長さが、例えば1.5m未満である場合、検知点群34aは角柱7の一部であると推定することができる。
【0088】
また、図9に示す直線区間40bの長さは、駐車車両6の車幅相当の長さになる。このように、検知点群の直線区間の長さが、例えば1.5m以上2.1m未満である場合、検知点群34bは駐車車両6の一部であると推定することができる。
【0089】
更に、図9に示す直線区間40cの長さは、車幅を超えて、例えば2.1m以上になる。このように、検知点群の直線区間長が、例えば2.1m以上である場合、検知点群34cは壁やガードレールの一部であると推定することができる。
【0090】
なお、駐車枠の間に角柱7を設ける時は、図9に示すように、駐車を妨げない様に駐車枠の間口から奥に引いて設置する事が多い。したがって、直線区間が通路27の近く(通路27沿い)にある場合は駐車車両6らしいと推定し、直線区間が通路27から奥まった位置にある場合は、角柱7や壁などの構造物らしいと推定しても良い。
【0091】
また、図9に示すように、直線区間が3か所以上で検知されて、各々の角度が違う場合は、角度の基準とする直線区間を多数決で決めても良い。例えば、直線区間40aと直線区間40cは角度が概ね同じであるのに対し、直線区間40bは他の二つの直線区間と角度が異なっているので、直線区間40aと直線区間40cが構造物らしいと推定し、それらの角度を角度の基準とすると良い。なお、ばらつきとは、標準からの偏差や相互の差を指すので、例えば、直線区間40aと直線区間40cは角度のばらつきが小さく、直線区間40bは他の二つの直線区間との角度のばらつきが大きいので、角度のばらつきが小さい直線区間40aと直線区間40cを角度の基準としても良い。また、車止めを検知して、角度の基準に加えても良い。
【0092】
このように、駐車支援装置10は、ソナーモジュール12で検知した検知点群34の分布状態に基づいて、駐車車両6と角柱7とを判別する。角柱7の通路27に面した面は、一般に通路27と平行になっており、角柱7の駐車スペースに面した面は、一般に駐車スペースと平行になっている(または通路27と直交している)。したがって、駐車支援装置10は、構造物である角柱7を検出した場合、当該角柱7の面の向き、例えば近似直線35の向きを、目標駐車位置を設定する際の基準とする。なお、以降の説明において、検知点群34のばらつき36の小ささや、検知点群34に当てはめた近似直線35が検知点群34に占める割合の大きさや、直線区間の長さや、直線区間の角度と他の直線区間の角度との整合性などに基づいて、検知点群34が構造物であると推定される尤もらしさの度合いを、尤度と呼ぶ。
【0093】
(目標駐車位置の設定方法)
図10A図10B図10C図10Dを用いて、駐車支援装置10が目標駐車位置33を設定する方法を説明する。図10Aは、2台の駐車車両の間に駐車する場合の目標駐車位置の設定方法を説明する図である。図10Bは、1台の駐車車両と角柱との間に駐車する場合の目標駐車位置の設定方法を説明する図である。図10Cは、1台の駐車車両の横に駐車する場合の目標駐車位置の設定方法を説明する図である。図10Dは、構造物が検知されない場合の目標駐車位置の設定方法を説明する図である。
【0094】
まず、図10Aを用いて、2台の駐車車両6b,6cの間に駐車する場合の目標駐車位置33の設定方法を説明する。
【0095】
2台の駐車車両6b,6cの間に駐車する場合であって、空いている駐車スペースの背後の構造物(壁やガードレールなど)に対応する検知点群がある場合、駐車支援装置10は、駐車スペースの背後の構造物と直角な方向を駐車方向32とする。そして、駐車車両6b,6c,6dによる、駐車スペースを挟む左右の検知点群の駐車スペース側の端部から、それぞれ距離waとなる位置に、目標駐車位置中心線31を設定する。駐車支援装置10は自動駐車を行う際に、車両5の前後軸28が目標駐車位置中心線31と重なる様に車両5を制御する。
【0096】
また、駐車支援装置10は、背後の構造物の位置と、左右の駐車車両(駐車車両6b,6c)の前端の位置の一方、または両方と、車両5の全長との関係から、駐車地点30を設定する。
【0097】
次に、図10Bを用いて、1台の駐車車両6cと角柱7との間に駐車する場合の目標駐車位置33の設定方法を説明する。
【0098】
このような場合、角柱7に対応する検知点群を駐車方向32の基準として利用できる。例えば、駐車支援装置10は、図10Bにおける角柱7の通路27に面する側の検知点群に当てはめた近似直線35aの方向を基準として、近似直線35aに直交する方向を駐車方向32に設定する。なお、駐車スペースの背後の構造物も検知できる場合、例えば、図10Bにおいて、駐車スペースの背後の構造物に係る検知点群に当てはめた近似直線35cが検出される場合、駐車支援装置10は、当該近似直線35cに直交する方向を駐車方向32に設定してもよい。また、駐車支援装置10は、近似直線35aの方向と近似直線35cの方向との加重平均に基づいて駐車方向32を設定しても良い。例えば、角柱7が細くて、近似直線35aの直線区間が短い時は、近似直線35aの方向の重みを小さくして、近似直線35aの方向と近似直線35cの方向との荷重平均に基づいて駐車方向32を設定しても良いし、近似直線35cの方向から駐車方向32を設定しても良い。
【0099】
また、駐車支援装置10は、車両5を目標駐車位置33に駐車させた時に、車両5の先端が、駐車車両6cに係る検知点群に当てはめた近似直線上に位置するように、駐車地点30を設定する。
【0100】
更に、駐車支援装置10は、角柱7と駐車車両6cによる、駐車スペースを挟む左右の検知点群の駐車スペース側の端部から、それぞれ距離waとなる位置に、目標駐車位置中心線31を設定する。
【0101】
次に、図10Cを用いて、1台の駐車車両6cの横に、2台分以上の空間がある場合の目標駐車位置33の設定方法を説明する。
【0102】
このような場合、駐車スペースの奥(Y軸正方向側)に構造物が検知されれば、駐車支援装置10は、検知された構造物に係る検知点群に当てはめた近似直線35cの方向を基準として、近似直線35cに直交する方向に駐車方向32を設定する。
【0103】
また、駐車スペースの奥に構造物が検知されずに、通路27を挟んで駐車スペースと反対側(Y軸負方向側)に構造物が検知された場合、駐車支援装置10は、駐車スペースと反対側で検知された構造物に係る検知点群に当てはめた近似直線35dの方向を基準として、近似直線35dに直交する方向に駐車方向32を設定する。
【0104】
また、駐車支援装置10は、車両5を目標駐車位置33に駐車させた時に、車両5の先端が、駐車車両6cに係る検知点群に当てはめた近似直線上に位置するように、駐車地点30を設定する。
【0105】
そして、駐車支援装置10は、駐車車両6cから所定の距離wb離れた位置に、目標駐車位置中心線31を設定する。なお、距離wbは、例えば、wb=(車両5の車幅)÷2+α(αは予め設定した所定値)によって定めても良いし、駐車車両6dと駐車車両6cの前を通過した際に駐車車両同士の間隔を測定して、車両5が駐車した時に駐車車両同士が等間隔に並ぶようにwbを設定しても良い。
【0106】
次に、図10Dを用いて、2台の駐車車両6b,6cの間に駐車する場合の目標駐車位置33の設定方法を説明する。
【0107】
2台の駐車車両6b,6cの間に駐車する場合であって、構造物が検知されない場合、駐車支援装置10は、図10Dに示すように、目標駐車位置33の左右の駐車車両6b,6cの2台分の検知点群に基づいて、近似直線35bを求める。そして、求められた近似直線35bに直交する方向に駐車方向32を設定する。なお、2台の駐車車両6b,6cの他に、駐車車両6dがある場合は、駐車車両6dに係る検知点群を近似直線35bに加えても良い。また、左右どちらか一方にしか駐車車両が無い場合は、利用可能な検知点群に当てはめた近似直線を用いればよい。
【0108】
また、駐車支援装置10は、車両5を目標駐車位置33に駐車させた時に、車両5の先端が、近似直線35b上に位置するように、駐車地点30を設定する。
【0109】
(目標駐車位置の左右の障害物の尤度)
図11A図11Bを用いて、目標駐車位置33の左右の障害物の尤度について説明する。図11Aは、目標駐車位置の側方の障害物の尤度が高い場合の一例を示す図である。図11Bは、目標駐車位置の側方の障害物の尤度が低い場合の一例を示す図である。
【0110】
駐車支援装置10は、駐車方向32を設定する際に、角柱7のように基準となる構造物があった時は、駐車方向32の尤度が高いと判断する。一方、角柱7のように基準となる構造物が無い時は、駐車方向32の尤度が低いと判断する。また、検知点群の近似直線からのばらつきが大きい場合や、近似直線の算出に利用した検知点の数が少ない場合は、駐車方向32の尤度が更に低いと判断する。駐車支援装置10は、自動駐車の開始時に、駐車方向32の尤度を記憶する。そして、駐車支援装置10は、記憶した尤度を、第2ステップにおいて、サイドソナーが検知した目標駐車位置33に隣接する障害物(角柱や駐車車両)の側面の検知点の角度に基づいて、駐車方向32を補正する際に利用する。駐車方向32の尤度とは、駐車方向32が正しい方向である事の尤もらしさであり、駐車方向の確からしさとか、信頼性と言い換えても良い。例えば、駐車支援装置10は、駐車方向32の尤度が低ければ、元々、駐車方向32は確からしくないので、目標駐車位置33に進入した際に、速やかに隣接する障害物の側面の検知点の角度に合うよう、駐車方向32を補正して良いし、逆に、駐車方向32の尤度が高い場合は、出来るだけ駐車方向32が保持される様に補正して良い。これによって、駐車支援装置10は、仮に柱の側面に付属物が有って側面の検知点の角度の特定が影響を受ける場合にも、駐車方向32の変動を抑えることが出来る。
【0111】
また、駐車支援装置10は、障害物が目標駐車位置33の左右にある場合には、左と右の障害物の尤度を、右の尤度、左の尤度とする。障害物が無い場合の尤度は、障害物がある場合の尤度よりも低い尤度、例えばゼロとする。駐車支援装置10は目標駐車位置33を決める際に、左右の尤度を記憶する。そして第2ステップにおいて、駐車支援装置10は、記憶した左右の尤度を参照して、どちら側の障害物の側面の方向を重視して駐車方向32を補正するかの選択に利用する。なお、駐車支援装置10は、左右の尤度と駐車方向32の尤度とを別に記憶しても良いが、簡易な構成として、第2ステップでは、駐車方向32の尤度は算出せずに左右の尤度を記憶し、第2ステップでは、左右の尤度のうち大きい方を駐車方向32の尤度として用いても良い。以下、右の尤度と左の尤度の例を示す。
【0112】
例えば、図11Aは、目標駐車位置33の左側の尤度が高く、目標駐車位置33の右側の尤度が低い例を示す。
【0113】
図11Aにおいて、目標駐車位置33の左側から検出された検知点群の幅に占める直線区間40aの長さの比率は、目標駐車位置33の左側から検出された検知点群の幅に占める直線区間長の比率よりも高い。そのため、駐車支援装置10は、目標駐車位置33の左側から検出された検知点群の尤度を、目標駐車位置33の右側から検出された検知点群の尤度よりも高く算出する。その結果、記憶する左右の尤度は左側が高い。
【0114】
また、図11Bは、目標駐車位置33の左側の尤度がゼロで、目標駐車位置33の右側の尤度が低い例を示す。
【0115】
例えば、図11Bにおいて、目標駐車位置33の左側からは検知点が検知されない。したがって、駐車支援装置10は、目標駐車位置33の左側に対して、尤度はゼロであると判断する。
【0116】
また、目標駐車位置33の右側から検出された検知点群の幅に占める直線区間長の比率が、所定の閾値に満たないことから、駐車支援装置10は、目標駐車位置33の右側から検出された検知点群に低い尤度を算出する。しかし、検知点が無い場合よりは尤度が高いので、記憶する左右の尤度は右側が高い。
【0117】
なお、ここでは、検知点群の幅に示す直線区間長の比率に基づいて尤度を算出する例を示したが、尤度の算出は、検知点群のばらつきの大きさに基づいて行っても良いし、検知点群の直線区間長に基づいて行っても良い。例えば図11Aにおいて、直線区間40aの長さが車幅(1.8m)より短い点を評価して、尤度を加算しても良い。
【0118】
(目標駐車位置を設定した後の車両の移動経路)
図12A図12B図12Cを用いて、目標駐車位置33が決定した後の車両5の移動経路を説明する。図12Aは、車両が自動駐車を開始した直後の状態の一例を示す図である。図12Bは、車両が切り返し地点に到達した状態の一例を示す図である。図12Cは、車両が目標駐車位置に向けて後退している状態の一例を示す図である。
【0119】
目標駐車位置33、例えば、駐車地点30と目標駐車位置中心線31と駐車方向32とが決まると、駐車支援装置10は駐車経路を計算する。その後、車両5は、図12Aに示すように、自動駐車開始位置において、最大舵角で右に転向を開始する。
【0120】
その後、図12Bに示すように、車両5が駐車経路L1に沿って約45度転向すると、駐車支援装置10は車両5を一端停止させる。そして、駐車支援装置10は、車両5の舵角を左に切り返し、目標駐車位置33に向かって後退を開始する。
【0121】
その後、図12Cに示すように、駐車支援装置10は、車両5を駐車経路L2に沿って後退させる。このように、駐車支援装置10は、自動駐車を開始すると、舵角とギヤと車速とを自動制御して、車両5を、予め設定した駐車経路L1,L2に沿って走行させる。そして、車両5の後輪の中点が目標駐車位置中心線31に乗った時に、同時に車体の向きが駐車方向32になるよう、後退時の舵角を調整する。なお、車両5の車速は、例えば、駐車場内では約8km/h、自動駐車中は、約5km/hに制限される。
【0122】
(駐車方向の尤度による補正量の制御)
図13A図13Bを用いて、駐車支援装置10が、第1ステップの処理として駐車方向を決定した際に記憶した、駐車方向の尤度に応じて、第2ステップの処理として車両5の舵角の補正量を制御する方法を説明する。図13Aは、駐車方向の尤度が高い場合に、車両の舵角の補正量を制御する方法を説明する図である。図13Bは、駐車方向の尤度が低い場合に、車両の舵角の補正量を制御する方法を説明する図である。
【0123】
まず、図13Aを用いて、駐車方向の尤度が高い場合について説明する。
【0124】
駐車支援装置10は、目標駐車位置33(図4参照)に隣接する障害物の側面をサイドソナーが検知して、駐車方向32を補正する際に、当初に駐車方向32を決めた時の駐車方向32の尤度が高ければ、障害物の側面の角度、例えば第二の検知点群の方向を、目標駐車位置33に車両5が収まる割合に比例して駐車方向32に反映する補正を行う。
【0125】
例えば、図13Aに示すように、駐車方向32の中で当初に設定した駐車方向32が占める割合を重み係数α、第二の検知点群の方向が占める割合を重み係数βとしたとき、補正を開始する時刻taから時刻tbに亘って、α+β=1の制約下で、重み係数αを単調減少させて、重み係数βを単調増加させる。そして、時刻tbから駐車を終了する時刻tcに亘っては、第二の検知点群の方向に対する重み係数βを1とする。なお、重み係数を決める処理を重み付けと呼び、重み係数を大きくする事を、高く重み付けする、という事がある。また、重み係数を単に重みと呼ぶ事がある。
【0126】
そして、駐車支援装置10は、全期間に亘って、車両5の角度と駐車方向32との差を、車両5の舵角に100%反映させる。例えば、駐車方向32の尤度が高ければ駐車方向32は安定するので、図13Aに示すように、舵角への反映率γを100%として良い。このような舵角制御を行うことによって、駐車方向32は、尤度が高い構造物の側面の角度に徐々に一致し、車両5の角度が、尤度が高い構造物の側面と平行になって駐車を終了する。
【0127】
次に、図13Bを用いて、駐車方向32の尤度が低い場合について説明する。
【0128】
駐車支援装置10は、駐車方向32の尤度が低い場合、尤度が高い場合よりも迅速に、目標駐車位置33に隣接する障害物の側面の角度を車両5の舵角に反映する。例えば、補正を開始する時刻taから第二の検知点群の方向を100%駐車方向に反映する時刻tbまでの時間差を、尤度が高い場合(図13A)よりも短くする。駐車支援装置10は、駐車方向32の尤度が低い場合は、第一の検知点群の方向が正しくない可能性がある場合であり、当初設定された駐車方向32が正しい駐車方向から大きくずれている可能性があるので、駐車方向32の尤度が高い場合より早い時点で第二の検知点群の方向を車体姿勢(車両5の角度)に反映させてもよい。車体姿勢の変更は舵角の変更によって行われ、舵角を変更した後で車両が後退する事によって車体姿勢が変化する(例えば、舵角の変化から車体姿勢の変化まで時間差がある)ので、駐車終了よりも早い時点で舵角制御を第二の検知点群の方向に従わせてもよい。
【0129】
なお、舵角の制御を始めた時期は、第二の検知点群を検知し始めた時期であり、障害物の実際の面から外側に外れた位置に検知点が現れ、それを直線近似すると障害物の実際の面とは異なる角度になる事がある。そのため、第二の検知点群の方向を駐車方向32に反映すると、車両5の方向が急変する事があるため、車両5の角度と駐車方向32との差を車両5の舵角に反映させる反映率γを、図13Bに示すように、補正を開始する時刻taでは50%に抑える。そして、目標駐車位置33に隣接する障害物の側面の検知が進むにつれて、反映率を単調に増加させ、時刻tb以降は、舵角への反映率γを100%とする。ここでは、駐車方向32の尤度が低い場合は、第二の検知点群の方向の駐車方向32への反映率を早い時期から高くする事を考慮して、この舵角の制御を始めた時期に舵角の変動量を抑える制御を加えているが、駐車方向32の尤度が低い場合にも、舵角の制御を始めた時に舵角の変動が大きくなる現象が起こりうるので、この舵角の制御を始めた時期に舵角の変動を抑える制御を、駐車方向32の尤度の大小に関係なく行っても良い。
【0130】
(駐車方向補正時の、左右の障害物の尤度に応じた重み付け)
図14A図14B図14Cを用いて、駐車支援装置10が、目標駐車位置33の左右の障害物の尤度に応じて駐車方向32を補正する際の重み付けについて説明する。図14Aは、車両の左側の障害物の尤度が右側の障害物の尤度よりも高い場合に、駐車方向を補正する際の重み付けを説明する図である。図14Bは、車両の左右の障害物の尤度がともに低い場合に、駐車方向を補正する際の重み付けを説明する図である。図14Cは、車両の左側の障害物の尤度が低く、右側の障害物の尤度が0である場合に、駐車方向を補正する際の重み付けを説明する図である。
【0131】
図14の状態に至る前に、駐車支援装置10は駐車方向32を設定する際に、通路を走行中に検知した障害物の前面(通路側の面)の検知点群を評価し、各々の障害物の尤度を計算して記憶している。図14の状態で駐車支援装置10は、目標駐車位置33に隣接する障害物の側面をソナーモジュール12b,12d(サイドソナー)が検知して、駐車方向32を補正する際に、記憶している障害物の前面(通路側の面)で検知された検知点群に応じた尤度に基づいて、左右どちら側の障害物の側面を重視して駐車方向32を補正するかを決める。
【0132】
例えば、図14Aのように、車両5の左側に、例えば角柱7のように尤度が高い障害物があり、車両5の右側に、例えば駐車車両6cのように尤度が低い障害物がある場合、駐車支援装置10は、角柱7の側面の角度を80%、駐車車両6cの側面の角度を20%、の割合で駐車方向32の補正に反映させる。この割合(80%と20%)が左右の重み係数であり、左右の障害物の尤度に応じて重み付けしている。例えば、駐車支援装置10は、第二の検知点群37を、第一の検知点小群37aと第二の検知点小群37bとに分けた場合、記憶している通路側の検知点群の尤度がより高い検知点小群に対して、記憶している尤度が低い検知点小群よりも高く重み付けする。なお、駐車支援装置10は、第二の検知点群37を、第一の検知点小群37aと第二の検知点小群37bとに分けた場合、駐車方向と略平行な方向に分布する検知点Pの数がより多い検知点小群に対して、検知点Pの数が少ない検知点小群よりも高く重み付けしても良いし、検知点Pの数が少ない側の重みを、記憶している尤度に基づく重みよりも小さくして良い。例えば、角柱7の通路側の面は尤度が高いので、角柱7の側面(駐車方向と略平行な面)を基準に駐車方向32を制御すると良好な車体姿勢になる事が期待できるが、角柱7の側面にパイプなどの構造物があり、直線上に分布する検知点の数が少なくて駐車方向32を補正する角度の基準として不適な場合は、角柱7の尤度(左の尤度)を低く評価し直し、駐車方向と略平行な方向に分布する検知点Pの数がより多い(例えば駐車車両6cの)側の重みを増して駐車方向32を制御した方が、より良好な車体姿勢で駐車できる事がある。逆に、角柱7の側面に所定の閾値を超える長さの直線区間があって、角柱7の通路側の面の角度と略直角の関係がある場合は、角柱7の尤度(左の尤度)を更に高く評価し直し、角柱の角度を基準とする比率を増しても良い。
【0133】
また、図14Bのように、車両5の両側に駐車車両6b,6cがある場合は記憶している尤度が左右で同等になるので、駐車支援装置10は、目標駐車位置33の左側の検知点群の角度と目標駐車位置33の左側の検知点群の角度とを50%ずつ駐車方向32の補正に反映させる。
【0134】
また、図14Cのように、目標駐車位置33の一方の側が駐車車両6bで、他方に何もないか、または側面の角度を特定することが困難な円柱8がある場合には、記憶している右の尤度がゼロ、またはゼロに近い値となる。このため、駐車支援装置10は、目標駐車位置33の左側の駐車車両6bの角度を駐車方向32の補正に100%反映させる。なお、駐車支援装置10は、目標駐車位置33の右側の情報は、駐車方向32の補正に利用しなくても良い。
【0135】
なお、駐車支援装置10は、駐車方向32を設定する際に、通路を走行中に検知した障害物の前面(通路側の面)の検知点群の尤度を記憶せず、駐車方向と略平行な方向に分布する目標駐車位置33の右側面の尤度と左側面の尤度とを算出する様にしても良い。また、駐車支援装置10は、駐車方向32に目標駐車位置33の左右の側面の角度を反映させる際の反映比率を、算出した右側面の尤度と左側面の尤度とに基づいて決定する様にしても良い。
【0136】
(従来の駐車支援装置と本実施形態の駐車支援装置の動作の比較)
図15A図15Bを用いて、従来の駐車支援装置の動作と本実施形態の駐車支援装置10の動作との違いを説明する。図15Aは、従来の駐車支援装置の動作を説明する図である。図15Bは、本実施形態の駐車支援装置の動作を説明する図である。
【0137】
図15Aに示すように、従来の駐車支援装置は、ソナーによる検知点群の直線区間の長さに基づいて、障害物の方向を評価していた。そして、検知点群の直線区間の長さが閾値を越えない場合は、検知点群を車両5の角度の基準としていなかった。そのため、車両5が左右の障害物の間に一定距離以上入り込むまで、車両5の舵角制御を開始しなかった。
【0138】
例えば、図15Aにおいて車両5が後退している際に、駐車車両6cの側面から検知される検知点群の直線区間の長さが閾値を越えて、尚且つ左の角柱7の側面の長さが閾値以下の場合、従来の駐車支援装置は、側面の長さが短い角柱7の側面を角度の基準とせず、車両5の方向を駐車車両6cの側面に平行にするように舵角制御を開始していた。このとき、車両5は後端部よりも前端部の方が左右に動きやすいので、駐車車両6cと平行になるように舵角制御すると、前端部を左に振る事になる。この運動は、駐車車両6cから検知される検知点群の直線区間の長さが閾値を越えた時に急に始まるので、車両5の乗員を驚かせる恐れがあった。また、車両5が角柱7に接近して、車両5と角柱7の間を通り抜けられなくなる、といった不都合も発生する。
【0139】
従来の駐車支援装置が行う自動駐車は、左右の障害物の真ん中に車両5が収まる様に計画して始まるが、車両5が半ばまで駐車枠に収まってから舵角制御を始めていたため、車両5の前端を左に振った状態で終わる。車両5の後輪部分が駐車枠に入った頃に舵角制御を始めていれば、車体姿勢を変えてから駐車枠に収まることが出来るので、車両5の前端を左に振った状態で終わる事は無い。このように、舵角制御の開始が遅い事が、従来の駐車支援装置において発生することがあった。
【0140】
また、駐車車両6cは、図15Aに示すように斜めに駐車している事があるが、角柱7などの構造物は、一般に駐車枠に平行に設置されるため、自動駐車を行う際の角度の基準として好ましい。しかしながら、従来の駐車支援装置は、検知点群の直線区間の長さが閾値を超える事を条件として車両5の舵角車制御の基準とするか否かを判断していたため、直線区間の長さが短い角柱7などの構造物は、車両5の舵角車制御の基準として利用することが困難な場合があった。
【0141】
これに対して、本実施形態の駐車支援装置10は、駐車枠への進入を開始する前の時点で、通路に面した障害物の通路側の面を検知し、その障害物が角柱や壁面などの構造物であるか、駐車車両であるかを判別する。その際に、検知点群の直線区間の長さが車幅以下である事を条件として、駐車車両ではなく角柱などの構造物であると判定するので、直線区間の長さが短くても角度の基準から除外されない。そして、障害物が構造物であると判定された場合は、構造物の側面は、通路側の面と直角であると推定して、駐車時の車両5の向きが構造物の側面と平行になるように駐車方向を定める。そして、本実施形態の駐車支援装置10は、構造物の横の駐車スペースに進入する際には、車両5が構造物の側面と平行になるように舵角を制御する。したがって、駐車を完了した時の車体姿勢を、図15Bに示すように、構造物である角柱7の側面と平行にすることができ、より好適な状態で駐車を完了させることができる。
【0142】
また、本実施形態の駐車支援装置10は、駐車枠の周囲に構造物が無い時も、左右の障害物を検知し始めた時点から直線性の評価値に応じた重み付け加算により目標駐車角を補正するので、舵角制御の開始を早期に開始している事により、好適に自動駐車を行うことができる。
【0143】
(センサ制御部の機能構成)
図16を用いて、駐車支援装置10が備えるセンサ制御部15の機能構成を説明する。図16は、駐車支援装置が備えるセンサ制御部の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0144】
センサ制御部15は、走行場所取得部71と、検知点取得部72と、検知点分析部73と、構造物推定部74と、操作指示取得部75と、検知点情報出力部76とを備える。
【0145】
走行場所取得部71は、測位処理部17から、車両5の自車位置情報を取得する。また、走行場所取得部71は、車両5の現在位置が道路から路外領域に進入したと判定されたことをトリガとして、駐車支援装置10を起動する。
【0146】
検知点取得部72は、ソナーモジュール12から、車両5の周囲の障害物を検知した位置を示す検知点Pの情報を取得する。また、検知点取得部72は、時間に対するソナーモジュール12の受信強度Iの変化を示す受信強度波形を取得する。なお、検知点取得部72は、本開示における取得回路の一例である。
【0147】
検知点分析部73は、検知点Pを検知点群37に分け、検知点群37の各々にあてはまる近似直線35,38を算出し、検知点群37の各々から算出した近似直線35,38に対する検知点Pのばらつき36,39を算出する。なお、検知点分析部73は、本開示における分析回路の一例である。
【0148】
構造物推定部74は、第一の検知点群34および第二の検知点群37の各々に対して、構造物を示す検知点群であるとする推定の尤もらしさを示す尤度を算出する。また、構造物推定部74は、第一のばらつき36および第二のばらつき39のうち、小さいばらつきを有する検知点群について、大きいばらつきを有する検知点群よりも、尤度を高く算出する。また、構造物推定部74は、第一の近似直線35および第二の近似直線38のうち、他の近似直線と略平行、または略直角となる近似直線は、他の近似直線と略平行、または略直角とならない近似直線よりも、尤度を高く算出する。また、構造物推定部74は、第一の検知点群34の幅に対する当該検知点群34における直線区間40の長さの比率が大きい検知点群に、前記比率が小さい検知点群よりも尤度を高く算出する。また、構造物推定部74は、検知点群34における直線区間40の長さが四輪車の車幅(例えば1.8m)に近い場合は、直線区間40の長さが四輪車の車幅と大きく異なる場合よりも尤度を低く評価する。また、構造物推定部74は、検知点取得部72が受信した受信強度波形に基づいて、尤度を推定する。なお、構造物推定部74は、本開示における推定回路の一例である。
【0149】
操作指示取得部75は、操作部14から、車両5の乗員の操作情報を取得する。
【0150】
検知点情報出力部76は、駐車支援部13に対して、検知点分析部73の分析結果と、構造物推定部74の推定結果とを出力する。
【0151】
(駐車支援部の機能構成)
図17を用いて、駐車支援装置10が備える駐車支援部13の機能構成を説明する。図17は、駐車支援装置が備える駐車支援部の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0152】
駐車支援部13は、検知点情報取得部81と、駐車地点および駐車方向設定部82と、駐車位置中心線設定部83と、駐車経路設定部84と、舵角補正指示部85とを備える。
【0153】
検知点情報取得部81は、センサ制御部15から、検知点分析部73の分析結果と、構造物推定部74の推定結果とを取得する。
【0154】
駐車地点および駐車方向設定部82は、第一の検知点群34に基づいて、車両5が駐車する駐車地点30を設定し、近似直線35とばらつき36とに基づいて、駐車地点30における車両5の方向である駐車方向32を設定する。また、駐車地点および駐車方向設定部82は、第一のばらつき36に基づいて第一の近似直線35の重み係数を算出し、第一の近似直線35の重み係数と第一の近似直線35の方向とを用いて、駐車方向32を設定する。また、駐車地点および駐車方向設定部82は、第一の検知点群34から目標駐車位置中心線31の左右に位置する検知点群を抽出し、左右の検知点群の尤度、例えば左右の尤度と、駐車方向32の尤度を算出して記憶する。第一のばらつき36は、左右の尤度と言い換えてもよい。例えば、重み係数は左右の尤度に基づいて算出する。なお、駐車地点および駐車方向設定部82は、本開示における設定回路の一例である。
【0155】
駐車位置中心線設定部83は、駐車地点30を通って、駐車方向32に沿って車両5を前後に貫く目標駐車位置中心線31を設定する。
【0156】
駐車経路設定部84は、車両5を、駐車地点30まで移動させる駐車経路L1,L2を設定する。
【0157】
舵角補正指示部85は、第二の検知点群37に基づいて、駐車方向32を補正する。また、舵角補正指示部85は、第一の検知点群34に基づいて算出され、駐車地点および駐車方向設定部82が記憶した駐車地点の尤度および左右の尤度と、第二の検知点群37から算出した左右の障害物の尤度を用いて第二の近似直線38の各々を重み付けする。また、舵角補正指示部85は、目標駐車位置中心線31を境として、第二の検知点群37を、第一の検知点小群37aと第二の検知点小群37bとに分けた場合、通路27と略平行な方向に分布する検知点群の尤度がより高い検知点小群に対して、尤度が低い検知点小群よりも高く重み付けする。また、舵角補正指示部85は、目標駐車位置中心線31を境として、第二の検知点群37を第一の検知点小群37aと第二の検知点小群37bとに分けた場合、駐車方向32と略平行な方向に分布する検知点の数がより多い検知点小群に対して、検知点の数が少ない検知点小群よりも高く重み付けする。また、舵角補正指示部85は、駐車地点30における駐車方向32と略平行な方向に分布する検知点Pの数に応じて、駐車方向32の補正量を変化させる。なお、舵角補正指示部85は、本開示における補正回路の一例である。
【0158】
(駐車支援装置が行う処理の流れ)
図18を用いて、駐車支援装置10が行う処理の流れを説明する。図18は、駐車支援装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0159】
走行場所取得部71は、測位処理部17から取得した車両5の現在位置に基づいて、車両5が道路から外れて路外領域に進入したかを判定する(ステップS11)。車両5が路外領域に進入したと判定されない(ステップS31:No)とステップS11を繰り返す。
【0160】
ステップS11において、車両5が路外領域に進入したと判定される(ステップS31:Yes)とステップS12に進み、走行場所取得部71は、駐車支援装置10を起動する(ステップS12)。ステップS11では車両5は路外領域、例えば駐車場である可能性がある領域に進入したと判断したので、自動駐車が出来る様に駐車支援装置10を起動するのである。
【0161】
続いて、駐車可能なスペースを検出する為に、検知点取得部72は、ソナーモジュール12が検知した検知点Pを収集して記憶する(ステップS13)。
【0162】
メカセンサ11(図2A参照)は、車両5が停止したかを判定する(ステップS14)。車両5が停止したと判定されない(ステップS14:No)とステップS13に戻る。一方、車両5が停止したと判定される(ステップS14:Yes)と次のステップS15に進む。ここでは、車両5が停止した事を運転手の駐車する意図の表れと解釈している。
【0163】
駐車地点および駐車方向設定部82は、駐車地点および駐車方向の設定処理を行う(ステップS15)。図示を略すが、駐車地点および駐車方向の設定処理に成功した場合は、自動駐車の指示を自動駐車ボタンで示すよう求める報知を行い、設定処理に成功しなかった場合は、駐車可能なスペースがない旨を表示して移動を促すステップを挿入すると良い。なお、駐車地点および駐車方向の設定処理の流れは後述する(図19参照)。
【0164】
操作部14(図2A参照)は、自動駐車ボタンが押されたかを判定する(ステップS16)。自動駐車ボタンが押されたと判定されない(ステップS16:No)とステップS18に進む。
【0165】
ステップ18では車両5が走行を再開したかを判定する(ステップS18)。車両5が走行を再開したと判定される(ステップS18:Yes)とステップS13に戻る。一方、車両5が走行を再開したと判定されない(ステップS18:No)とステップS16に戻る。
【0166】
ステップS16において、自動駐車ボタンが押されたと判定されると、構造物推定部74は、目標駐車位置33を挟む左右の障害物、例えば通路27に沿って車両5の前方と後方にある障害物の尤度、例えば、駐車方向の左右の尤度をそれぞれ記憶する。この際に、駐車方向の尤度も同時に記憶する(ステップS17)。
【0167】
ステップS17に続いて、駐車経路設定部84は、駐車経路L1,L2を決定する(ステップS19)。
【0168】
車両制御部16(図2A参照)は、車両5の舵角と車速を制御することによって、駐車経路L1に沿って車両5を前進させる(ステップS20)。
【0169】
メカセンサ11は、車両5が折り返し地点Uに到達したかを判定する(ステップS21)。車両5が折り返し地点Uに到達したと判定されない(ステップS21:No)とステップS21を繰り返す。一方、車両5が折り返し地点Uに到達したと判定される(ステップS21:Yes)とステップS22に進む。
【0170】
折り返し地点Uにおいて、車両制御部16は、車両5を停車させて、舵角を駐車経路L2に合わせて変更する(ステップS22)。このとき、車両制御部16は、車両5のシフトポジションをリバース(R)位置に切り替えて走行を再開する(ステップS22)。
【0171】
メカセンサ11は、車両5が走行を再開したかを判定する(ステップS23)。車両5が走行を再開したと判定されない(ステップS23:No)とステップS23を繰り返す。一方、車両5が走行を再開したと判定される(ステップS23:Yes)とステップS24に進む。
【0172】
車両制御部16は、車両5の舵角と車速を制御することによって、駐車経路L2に沿って車両5を後退させる(ステップS24)。
【0173】
検知点取得部72は、サイドソナーが検知点Pを取得したかを判定する(ステップS25)。サイドソナーが検知点Pを取得したと判定されない(ステップS25:No)とステップS24に戻る。一方、サイドソナーが検知点Pを取得したと判定される(ステップS25:Yes)とステップS26に進む。
【0174】
ステップS25においてサイドソナーが検知点Pを取得したと判定されると、舵角補正指示部85は、車両制御部16に対して、車両5を後退させながら駐車方向を補正するように指示する(ステップS26)。
【0175】
メカセンサ11は、車両5が駐車地点30に到達したかを判定する(ステップS27)。車両5が駐車地点30に到達したと判定されない(ステップS27:No)とステップS26に戻る。一方、車両5が駐車地点30に到達したと判定される(ステップS27:Yes)とステップS28に進む。
【0176】
車両5が駐車地点30に到達したので、車両制御部16は、車両5を停車させる(ステップS28)。そして、駐車支援装置10は、図18の処理を終了する。
【0177】
(駐車地点および駐車方向の設定処理の流れ)
図19を用いて、図18のステップS15で行われる駐車地点30および駐車方向32の設定処理の流れを説明する。図19は、駐車地点および駐車方向の設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0178】
検知点取得部72は、所定範囲の検知点マップを生成する(ステップS31)。なお、検知点マップとは、例えば図5A図5Bに示す検知点Pの分布図である。検知点マップを生成する範囲は適宜設定すればよいが、例えば、車両5の前方のサイドソナーを頂点とする側方8m、後方8mの範囲とする。
【0179】
検知点分析部73は、車両5の左側に、検知点Pがない所定サイズ以上の領域があるかを判定する(ステップS32)。所定サイズ以上の領域があると判定される(ステップS32:Yes)とステップS33に進む。一方、所定サイズ以上の領域があると判定されない(ステップS32:No)とステップS35に進む。なお、所定サイズの領域は、車両5が駐車可能な領域以上のサイズに設定される。例えば、所定サイズは、前後方向1.8m以上(車両5の車幅以上)、側方5m以上(車両5の全長以上)に設定される。
【0180】
ステップS32において、所定サイズ以上の領域があると判定されると、検知点分析部73は、検知点Pがない領域を検知点マップ上に図示して車両5のディスプレイに表示する(ステップS33)。更に、検知点分析部73は、車両5の乗員に対して、表示した領域への自動駐車の承認を求める。
【0181】
操作部14は、車両5の乗員の承認が得られたかを判定する(ステップS34)。車両5の乗員の承認が得られたと判定される(ステップS34:Yes)とステップS37に進む。一方、車両5の乗員の承認が得られたと判定されない(ステップS34:No)とステップS35に進む。なお、車両5の乗員の承認が得られたことは、例えば、操作部14が、承認ボタンが押下されたことを検知することによって判定すればよい。
【0182】
ステップS34において、車両5の乗員の承認が得られたと判定されると、駐車地点および駐車方向設定部82は、駐車方向32の設定処理を行う(ステップS37)。なお、駐車方向32の設定処理の流れは後述する(図20参照)。
【0183】
続いて、駐車地点および駐車方向設定部82は、目標駐車位置中心線31の設定処理を行う(ステップS38)。なお、目標駐車位置中心線31の設定処理の流れは後述する(図21参照)。
【0184】
次に、駐車地点および駐車方向設定部82は、駐車地点30を設定する(ステップS39)。なお、駐車地点30は、例えば、車両5を目標駐車位置33に駐車させた時に、車両5の先端が、隣接する駐車車両の前端に係る検知点Pを直線近似した近似直線上に位置するように設定する。また、目標駐車位置33の奥側で検知された検知点Pを直線近似した近似直線から、所定距離手前に駐車地点30を設定してもよい。その後、駐車地点および駐車方向設定部82は、図19の処理を終了して図18のステップS16に戻る。なお、図18のステップS16の自動駐車ボタンは、図19のステップS34で駐車する領域を承認したボタンと同一のボタンで良い。例えば、駐車する領域の承認を求める表示が出た時に押すと駐車領域の承認ボタンとして機能し、自動駐車の指示を求める表示が出た時に押すと自動駐車の指示ボタンとして機能する。そのようにすると、運転手は手を移動させずに2回ボタンを押すことによって、素早く自動駐車を開始できる。
【0185】
ステップS32において、所定サイズ以上の領域があると判定されないと、検知点分析部73は、駐車可能なスペースがない旨を表示する(ステップS35)。
【0186】
メカセンサ11は、車両5が走行を開始したかを判定する(ステップS36)。車両5が走行を開始したと判定される(ステップS36:Yes)と、図18のステップS13に戻る。なお、このとき、ステップS35で表示された駐車可能なスペースがない旨を表示は消去される。一方、車両5が走行を開始したと判定されない(ステップS36:No)とステップS36を繰り返す。
【0187】
(駐車方向の設定処理の流れ)
図20を用いて、駐車方向32の設定処理の流れを説明する。図20は、駐車方向の設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0188】
構造物推定部74は、車両5から所定範囲(例えば3m以内)にある検知点Pに近似直線を当てはめる。より正確には、車両5の前後軸と略平行な方向に延びて分布する検知点群を抽出し、抽出した検知点群を直線近似する。そして、検知点群単体としてのばらつきや、検知点群の間でのばらつき(近似直線の傾きの整合性)に基づいて、構造物らしさを示す尤度を計算する(ステップS40)。続くステップS41では、尤度を所定の閾値と比較して構造物が検出されたか否かを判定する(ステップS41)。構造物が検出されたと判定される(ステップS41:Yes)とステップS42に進む。一方、構造物が検出されたと判定されない(ステップS41:No)とステップS43に進む。
【0189】
ステップS41において、構造物が検出されたと判定されると、駐車地点および駐車方向設定部82は、構造物の角度を基準に車両5の駐車方向32に設定する(ステップS42)。検出された構造物が複数ある場合は、尤度(ばらつき)に基づいて重み係数を算出し、その重み係数を用いた加重平均で基準とする角度を算出すれば良い。その後、図19のステップS38に戻る。
【0190】
ステップS41において、構造物が検出されなかった場合、駐車地点および駐車方向設定部82は、尤度が最も高い検知点群の近似直線の角度を基準に駐車方向32に設定する(ステップS43)。その後、図19のステップS38に戻る。
【0191】
(目標駐車位置中心線の設定処理の流れ)
図21を用いて、目標駐車位置中心線31の設定処理の流れを説明する。図21は、目標駐車位置中心線の設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0192】
検知点分析部73は、駐車可能なスペース(通路27に停車した車両5の側方の検知点Pが無い領域)を前後方向に挟むように検知点Pがあるかを判定する(ステップS51)。前後に挟むように検知点Pがあると判定される(ステップS51:Yes)とステップS52に進む。一方、前後に挟むように検知点Pがあると判定されない(ステップS51:No)とステップS53に進む。
【0193】
ステップS51において、前後に挟むように検知点Pがあると判定されると、駐車位置中心線設定部83は、前後の検知点Pの真ん中に目標駐車位置中心線31を設定する。例えば、図20のフローで決められた駐車方向と平行であって、前後の検知点Pから各々垂線を下ろすと垂線が同じ長さになる直線を、目標駐車位置中心線31とする(ステップS52)。その後、図19のステップS39に戻る。
【0194】
一方、ステップS51において、前後に挟むように検知点Pがあると判定されないと、検知点分析部73は、駐車可能なスペースの前後いずれか一方に検知点Pがあるかを判定する(ステップS53)。駐車可能なスペースの前後いずれか一方に検知点Pがあると判定される(ステップS53:Yes)とステップS54に進む。一方、駐車可能なスペースの前後いずれか一方に検知点Pがあると判定されない(ステップS53:No)と、ステップS55に進む。
【0195】
ステップS53において、駐車可能なスペースの前後いずれか一方に検知点Pがあると判定されると、駐車位置中心線設定部83は、検知点Pから所定距離離れた位置(例えば1m離れた位置)に目標駐車位置中心線31を設定する。例えば、図20のフローで決められた駐車方向と平行であって、検知点Pから駐車可能なスペースの方向に1m離れた直線を、目標駐車位置中心線31とする(ステップS54)。その後、図19のステップS39に戻る。
【0196】
一方、ステップS53において、駐車可能なスペースの前後いずれか一方に検知点Pがあると判定されないと、駐車位置中心線設定部83は、車両5の後輪を通る位置に目標駐車位置中心線31を設定する(ステップS55)。その後、図19のステップS39に戻る。
【0197】
(第1の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第1の実施形態に係る駐車支援装置10は、通路の側方に位置する駐車領域への車両5の並列駐車を支援する駐車支援装置であって、車両5の周囲の障害物を検知した位置を示す検知点の情報を取得する検知点取得部72(取得回路)と、検知点を検知点群に分け、検知点群の各々にあてはまる近似直線を算出し、検知点群の各々から算出した近似直線に対する検知点のばらつきを算出する検知点分析部73(分析回路)と、検知点に基づいて、車両5が駐車する駐車地点30を設定し、近似直線とばらつきとに基づいて、駐車地点30における車両5の方向である駐車方向32を設定する駐車地点および駐車方向設定部82(設定回路)と、駐車方向32の設定後に、駐車方向32を補正する舵角補正指示部85(補正回路)と、を備え、検知点取得部72は、検知点のうち、第一の検知点Pを駐車方向32の設定前に取得し、第二の検知点Pを駐車方向32の設定後に取得し、検知点分析部73は、第一の検知点Pを第一の検知点群34に分け、第二の検知点Pを第二の検知点群37に分け、第一の検知点群34の各々に対して第一の近似直線35を各々算出し、第二の検知点群37の各々に対して第二の近似直線38を各々算出し、第一の近似直線35の各々に対する第一の検知点群34の第一のばらつき36を各々算出し、第二の近似直線38の各々に対する第二の検知点群37の第二のばらつき39を各々算出し、駐車地点および駐車方向設定部82は、第一の検知点Pに基づいて、駐車地点30を設定し、第一の近似直線35と第一のばらつき36とに基づいて、駐車方向32を設定し、舵角補正指示部85は、第二のばらつき39に基づいて第二の近似直線38の各々を重み付けし、重み付けされた第二の近似直線38を用いて駐車方向32の補正量を算出し、補正量を用いて駐車方向32を補正する。したがって、より適切な車両姿勢で自動駐車を行うことができる。
【0198】
また、第1の実施形態に係る駐車支援装置10は、第一の検知点群34および第二の検知点群37の各々に対して、構造物を示す検知点群であるとする推定の尤もらしさを示す尤度を算出する構造物推定部74(推定回路)を更に備え、舵角補正指示部85は、更に、第二の検知点群37から算出した尤度を用いて第二の近似直線38の各々を重み付けする。したがって、駐車スペースの隣に角柱7のような構造物がある場合は、車体が角柱7の側面と概ね平行になる様に自動駐車を行うことができる。
【0199】
また、第1の実施形態に係る駐車支援装置10において、構造物推定部74(推定回路)は、第一のばらつき36および第二のばらつき39のうち、小さいばらつきを有する検知点群について、大きいばらつきを有する検知点群よりも、尤度を高く算出する。したがって、算出された尤度に基づいて、角柱7のような構造物が隣接していることを確実に認識することができる。
【0200】
また、第1の実施形態に係る駐車支援装置10において、構造物推定部74(推定回路)は、第一の近似直線35および第二の近似直線38のうち、他の近似直線と略平行、または略直角となる近似直線は、他の近似直線と略平行、または略直角とならない近似直線よりも、前記尤度を高く算出する。したがって、隣接する面が直交する角柱7のような構造物と、角が丸みを帯びる駐車車両6とを確実に識別することができる。
【0201】
また、第1の実施形態に係る駐車支援装置10において、構造物推定部74(推定回路)は、検知点群の幅に対する当該検知点群における直線区間40の長さの比率が大きい検知点群に、直線区間40の長さの比率が小さい検知点群よりも尤度を高く算出する。したがって、隣接する面が直交する角柱7のような構造物と、角が丸みを帯びた駐車車両6とを確実に識別することができる。
【0202】
また、第1の実施形態に係る駐車支援装置10において、舵角補正指示部85(補正回路)は、駐車地点30における駐車方向32を基準として、第二の検知点群37を第一の検知点小群37aと第二の検知点小群37bとに分けられる場合、通路27と略平行な方向に分布する検知点群の尤度がより高い検知点小群に対して、尤度が低い検知点小群よりも高く重み付けする。したがって、目標駐車位置33に隣接する角柱7のような構造物に沿って駐車することができる。
【0203】
また、第1の実施形態に係る駐車支援装置10において、舵角補正指示部85(補正回路)は、駐車地点30における駐車方向32を基準として、第二の検知点群37を第一の検知点小群37aと第二の検知点小群37bとに分けられる場合、駐車方向32と略平行な方向に分布する検知点の数がより多い検知点小群に対して、検知点の数が少ない検知点小群よりも高く重み付けする。したがって、駐車スペースに隣接する障害物のうち、より尤度が高い障害物を、駐車方向の基準とすることができる。
【0204】
また、第1の実施形態に係る駐車支援装置10において、駐車地点および駐車方向設定部82(設定回路)は、第一のばらつき36に基づいて第一の近似直線35の重み付けを算出し、第一の近似直線35の重み付けと第一の近似直線35の方向とを用いて、駐車方向32を設定する。したがって、目標駐車位置33の周囲の障害物の配置状態に応じて、より適切な駐車方向32を設定することができる。
【0205】
また、第1の実施形態に係る駐車支援装置10において、舵角補正指示部85(補正回路)は、駐車地点30における駐車方向32と略平行な方向に分布する検知点Pの数に応じて、補正量を変化させる。したがって、検知点Pの数が多い側に対する重み付けを高くして、駐車方向32を補正することができる。
【0206】
また、第1の実施形態に係る駐車支援装置10において、検知点取得部72(取得回路)は、時間に対する受信強度Iの変化を示す受信強度波形を取得し、構造物推定部74(推定回路)は、受信強度波形に基づいて尤度を推定する。したがって、ソナーの受信強度波形に基づいて、障害物が角柱7のような構造物である度合を確実に判定することができる。
【0207】
なお、第1の実施形態は、車両5が進行方向左側の駐車スペースに駐車する場合を例にして説明したが、駐車支援装置10は、車両5が進行方向右側の駐車スペースに駐車する場合も、同様に作用する。具体的には、図18のステップS13において、サイドソナーは、車両5の左側と右側の両側について検知点Pの収集を行う。そして、車両5の右側に駐車可能な駐車スペースが見つかった場合、駐車支援装置10は、現在位置から左に操舵して前進し、折り返し地点に至る駐車経路と、折り返し地点においてシフトポジションをリバース(R)位置に切り替えて、車両5の進行方向右側に設定された目標駐車位置に向かって後退する駐車経路とを設定する。そして、駐車支援装置10は、前記したのと同様の舵角制御を行って、車両5を進行方向右側の目標駐車位置に自動駐車させる。
【0208】
(第2の実施形態)
以下、図22図23を参照しながら、本開示に係る駐車支援装置の第2の実施形態について説明する。
【0209】
第2の実施形態の駐車支援装置は、第1の実施形態で説明した自動駐車に対して、第1ステップに相当する処理を省略した自動駐車を行う。例えば、第2の実施形態の駐車支援装置は、駐車場の通路27を走行し、ソナーモジュール12によって車両5の周囲の障害物を検知した位置を示す検知点を取得して、取得した複数の検知点の配置に基づいて目標駐車位置33を設定する処理を省略する。
【0210】
第2の実施形態の駐車支援装置は、図22に示すように、運転手が駐車したいスペース(構造物である角柱7と駐車車両6cの間)の付近に停車し、駐車する領域(図22の場合は車両5の左側)を指定することで、指定された側に90°転向して後退で並列駐車を行う。第1の実施形態では角柱7や駐車車両6cを検知して目標駐車位置33を設定したが、この場合、駐車支援装置は、車両5を基準にして目標駐車位置33を設定する。例えば、車両5の前後方向の中央を通り、車両5の前後軸28に直交する方向を、目標駐車位置中心線31および駐車方向32に設定する。また、目標駐車位置中心線31に対して、車両5の車幅に応じた領域を目標駐車位置33に設定する。なお、操作部(HMI)14を介して目標駐車位置33を運転者に提示し、運転手が任意に駐車領域を補正出来る様にしても良い。
【0211】
その後、駐車支援装置は、図4で説明したように、車両5の舵角を右に操舵して前進し、折り返し地点Uに至る駐車経路L1と、折り返し地点Uにおいてシフトポジションをリバース(R)位置に切り替えて、目標駐車位置33に向かって後退する駐車経路L2とを設定する。
【0212】
そして、駐車支援装置は、車両5の乗員から駐車開始の指示を受けて、駐車経路L1,L2に沿って移動を開始する。駐車経路L2に沿って後退する際に、駐車支援装置は、サイドソナーで左右の障害物との距離や角度を検知し、車両5の姿勢を補正することにより、概ね好ましい状態で、車両5を駐車させる事ができる。
【0213】
第2の実施形態の自動駐車の方式では、駐車支援装置は、車両5の姿勢を補正する際に、角柱7または駐車車両6cにおける検知点のうち、通路27に面した検知点を利用せず、目標駐車位置33に面した検知点を利用する。第1の実施形態の自動駐車の方式に当てはめると、例えば、角柱7及び駐車車両6cの検知点群のうち、通路27に面する検知点群から算出した尤度が低く、角柱7及び駐車車両6cのいずれを基準とするか、角柱7及び駐車車両6cから算出した尤度に基づいて決めることが困難であり、駐車方向32の尤度が低い場合に相当する。したがって、駐車支援装置は、第1の実施形態の駐車方向32の尤度が低い場合に相当する舵角制御を実施する。
【0214】
例えば、図23に示すように、舵角の制御を始めたtaの時期は、駐車方向32が急変する事があるため、車両5の角度と駐車方向32との差を、車両5の舵角に反映させる反映率γを、補正を開始する時刻taまでは50%に抑える。そして、目標駐車位置33に隣接する障害物の側面の検知が進むにつれて、反映率を単調に増加させる。時刻tb以降は、舵角への反映率γを100%とする。なお、補正を開始する時刻taは、例えば、検知された検知点Pの数が閾値に達した時刻、または、駐車支援装置が検知点Pを検知し始めてからの車両5の移動距離が閾値に達した時刻とすればよい。
【0215】
また、駐車支援装置は、駐車方向32の尤度が低い場合と同様に、駐車方向32の尤度が高い場合よりも迅速に、目標駐車位置33に隣接する障害物の側面の角度を車両5の舵角に反映させる。そのため、図23に示すように、当初に設定した駐車方向32に対する重み係数αと、車両5が後退している際に検知した第二の検知点群の方向に対する重み係数βは、tbの時点までに逆転し、第二の検知点群の方向に従って駐車方向を決定する。
【0216】
そして、駐車支援装置は、駐車経路L2に沿って後退する際に、左右の障害物を検知し始めてから、当該障害物の尤度を算出し、尤度が高い方(例えば角柱7)の障害物の側面に沿う様に車両5の舵角を制御する。第二の検知点群の方向を加重平均で算出する際の、左の検知点群に与える重みと右の検知点群に与える重みは、通路側の検知点群(第一の検知点群)の情報が無いので、障害物の側面の検知点群の尤度に応じて決める。その際に、障害物の側面の検知点群の尤度から重みを算出しても良いし、舵角の制御を始めたtaの時の重みは50%ずつとし、taとtbの間は第二の検知点群の検知点数の増加に応じて、障害物の側面の検知点群の尤度から算出した重みに移行させても良い。
【0217】
なお、本実施形態の駐車支援装置のハードウエア構成および機能構成は、第1の実施形態の駐車支援装置10と同じであり、実行する処理の内容が異なる。例えば、本実施形態の駐車支援装置は、駐車支援装置10が行っていた第1ステップの処理のうち、通路27を走行し、ソナーモジュール12によって車両5の周囲の障害物を検知した位置を示す検知点Pを取得して、取得した複数の検知点Pの配置に基づいて目標駐車位置33を設定する処理が省略される。
【0218】
(第2の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第2の実施形態に係る駐車支援装置は、車両5の停車位置の真横に駐車方向32と目標駐車位置中心線31とで形成される目標駐車位置33を設定して、停車位置から目標駐車位置33に至る駐車経路L1,L2を設定する。そして、駐車経路L2に沿って後退する際に検知した左右の障害物の尤度に基づいて、駐車方向32の補正量を算出し、当該補正量を用いて駐車方向32を補正する。したがって、第1の実施形態で説明した自動駐車に対して、より簡易な自動駐車を実現することができる。
【0219】
以上の説明において、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0220】
また、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力と出力を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、各機能ブロックの一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法にはLSIに限らず、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続、設定が再構成可能なリコンフィグラブル・プロセッサーを利用してもよい。更には、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、別技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあり得る。
【0221】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0222】
5…車両、6,6a,6b,6c,6d…駐車車両、7…角柱、8…円柱、10…駐車支援装置、12,12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i,12j,12k,12l…ソナーモジュール、12p,12q…ソナー、13…駐車支援部、14…操作部、15…センサ制御部、16…車両制御部、17…測位処理部、27…通路、28…前後軸、30…駐車地点、31…目標駐車位置中心線、32…駐車方向、33…目標駐車位置、34,34a,34b,34c,34e,34f…検知点群(第一の検知点群)、35,35a,35b,35c,35e,35f…近似直線(第一の近似直線)、36,36a,36b,36c,36e,36f…ばらつき(第一のばらつき)、37…検知点群(第二の検知点群)、37a…検知点群(第一の検知点小群)、37b…検知点群(第二の検知点小群)、38,38a,38b,38c,38d…近似直線(第二の近似直線)、39,39a,39b…ばらつき(第二のばらつき)、40,40a,40b,40c,40e,40f…直線区間、71…走行場所取得部、72…検知点取得部(取得回路)、73…検知点分析部(分析回路)、74…構造物推定部(推定回路)、75…操作指示取得部、76…検知点情報出力部、81…検知点情報取得部、82…駐車地点および駐車方向設定部(設定回路)、83…駐車位置中心線設定部、84…駐車経路設定部、85…舵角補正指示部(補正回路)、D1,D2…奥行、d1,d2…距離、F1,F2…反射面、I…受信強度、L1,L2…駐車経路、P…検知点(第一の検知点、第二の検知点)、R…受信音波、S…発信音波、U…折り返し地点、wa,wb…距離、α,β…重み係数、γ…反映率
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
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図15A
図15B
図16
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図23