(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】チェーンスプロケットホイール
(51)【国際特許分類】
F16H 55/30 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
F16H55/30 Z
(21)【出願番号】P 2020209054
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】522334564
【氏名又は名称】ゼクサスチェン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 亮一
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-079697(JP,A)
【文献】特開平08-141317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンを外周に掛け渡すチェーンスプロケットホイールであって、
チェーンが係合する多数の歯を有するホイール部と、固定部と、を備え、
前記ホイール部が周方向に複数の部分ホイールに分割され、各部分ホイールが着脱可能に前記固定部に取り付けられ、
前記固定部には、前記部分ホイールの内周面と当接して、該部分ホイールの前記固定部に対する周方向への回転を規制する接続面が形成され、
前記固定部の前記接続面と前記部分ホイールの内周面は、ノックピンを介して互いに接合される
ことを特徴とするチェーンスプロケットホイール。
【請求項2】
前記固定部は、本体部と、該本体部に着脱可能であるとともに前記部分ホイールの背面側に配置される固定盤と、を備え、
前記固定盤と前記部分ホイールのうち、いずれか一方に凸部が、他方に凹部が形成されており、前記凸部と前記凹部とが係合して前記部分ホイールの径方向への移動が規制されることを特徴とする請求項1に記載のチェーンスプロケットホイール。
【請求項3】
前記固定部は、前記部分ホイールの正面側の少なくとも基端部を覆う被覆部を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチェーンスプロケットホイール。
【請求項4】
前記部分ホイールは、前記被覆部と係合する切り欠き部を備えていることを特徴とする請求項3に記載のチェーンスプロケットホイール。
【請求項5】
隣設された前記部分ホイール間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載のチェーンスプロケットホイール。
【請求項6】
前記ホイール部が前記歯の谷部を通って周方向に分割されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載のチェーンスプロケットホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に掛け渡されたチェーンを長さ方向に可動させるチェーンスプロケットホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なチェーン機構のチェーンスプロケットホイールは、複数配置されてその外周にチェーンが掛け渡され、少なくとも一つのチェーンスプロケットホイールが駆動装置で回転され、その回転力をチェーンに伝達して長さ方向に移動させるようになっている。
チェーンはチェーンスプロケットホイールの歯の一部に係合されるので、この歯に大きな荷重が加わることになり、破損や摩耗が生じやすい。特に、重量物を搬送するチェーンコンベアや、汚泥かき寄せ装置のチェーン機構では、歯の損傷が激しいため、チェーンスプロケットホイールの交換頻度が高くなる。この際、大型のチェーンスプロケットホイール全体を交換すると、多大な労働力及び作業時間を要するだけでなく、コストも非常に高くついた。
また、従動チェーンスプロケットホイールについても同様である。
【0003】
そこで、従来、ホイール本体とこれを取り付け固定する固定盤とからなり、ホイール本体は、取替え可能に分割型に形成してあるチェーンスプロケットホイールが特許文献1に開示されている。
このような分割型のチェーンスプロケットホイールは、歯が部分的に欠損したり、摩耗するなどして使用に耐えられなくなった場合に、チェーンを掛け渡したまま、ホイール本体の分割片の一部を交換するのみで補修することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のようなチェーンスプロケットホイールは、ホイール本体の分割片と固定盤がボルト・ナットのみで取り付け固定されているので、歯の一部に大きい力が加わると、分割片が固定盤に対してがたつき、チェーンとの間で力の伝達が十分に行われないおそれがあった。
【0006】
また、上記特許文献1に記載のようなチェーンスプロケットホイールは、ホイール本体の分割片と固定盤がボルト・ナットで取り付け固定されているので、ボルトの着脱の際にホイールの正面側、すなわちボルト頭側にボルトを抜き差しするスペースが狭い場合(例えば、スプロケットホイールが二つ並ぶダブルスプロケットホイールなどの場合)には、作業が困難となり、採用することができない場合がある。
【0007】
本発明の目的は、チェーンを取り外すことなく、部分ホイールの一部のみを交換することができ、部分ホイールが固定盤に対してがたつきにくく、ホイールの正面側のスペースが狭くても交換が可能なチェーンスプロケットホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に係る発明は、チェーンを外周に掛け渡すチェーンスプロケットホイールであって、チェーンが係合する多数の歯を有するホイール部と、固定部と、を備え、前記ホイール部が周方向に複数の部分ホイールに分割され、各部分ホイールが着脱可能に前記固定部に取り付けられ、前記固定部には、前記部分ホイールの内周面と当接して、該部分ホイールの前記固定部に対する周方向への回転を規制する接続面が形成され、前記固定部の前記接続面と前記部分ホイールの内周面は、ノックピンを介して互いに接合されることを特徴とするチェーンスプロケットホイールである。
【0009】
本願請求項2に係る発明は、前記固定部は、本体部と、該本体部に着脱可能であるとともに前記部分ホイールの背面側に配置される固定盤と、を備え、前記固定盤と前記部分ホイールのうち、いずれか一方に凸部が、他方に凹部が形成されており、前記凸部と前記凹部とが係合して前記部分ホイールの径方向への移動が規制されることを特徴とする請求項1に記載のチェーンスプロケットホイールである。
【0010】
本願請求項3に係る発明は、前記固定部は、前記部分ホイールの正面側の少なくとも基端部を覆う被覆部を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチェーンスプロケットホイールである。
【0011】
本願請求項4に係る発明は、前記部分ホイールは、前記被覆部と係合する切り欠き部を備えていることを特徴とする請求項3に記載のチェーンスプロケットホイールである。
【0012】
本願請求項5に係る発明は、隣設された前記部分ホイール間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載のチェーンスプロケットホイールである。
【0013】
本願請求項6に係る発明は、前記ホイール部が前記歯の谷部を通って周方向に分割されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載のチェーンスプロケットホイールである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、いずれかの部分ホイールに不具合が生じた場合に、その部分ホイールをチェーンと係合しない位置に移動させて、チェーンを取り外すことなく簡単に摩耗や損傷した部分ホイールのみを交換することができ、交換に要する手間やコストを大幅に低減することが可能となる。
また、固定部に、部分ホイールの内周面と当接して部分ホイールの固定部に対する周方向への回転を規制する接続面を形成して、接続面と部分ホイールの内周面は、ノックピンを介して互いに接合されているので、部分ホイールの固定部に対する周方向への回転が規制され、部分ホイールががたつかず、安定して固定される。
さらに、ノックピンにより位置決めが精度よく行われることで部分ホイールが正確に配置され偏摩耗などの発生を低下させる。ホイールの正面側にスペースが狭くても部分ホイールの交換作業が行いやすい。
【0015】
加えて、固定部は、本体部と、本体部に着脱可能であるとともに部分ホイールの背面側に配置される固定盤と、を備え、固定盤と部分ホイールのうち、いずれか一方に凸部が、他方に凹部が形成されており、凸部と凹部とが係合して部分ホイールの径方向への移動が規制されるので、部分ホイールに固定部に対して径方向に引っ張られる力が作用しても対抗することができるとともにがたつきをさらに抑えることができる。
【0016】
加えて、固定部は、部分ホイールの正面側の少なくとも基端部を覆う被覆部を備えているので、ノックピンにおける部分ホイールの正面側方向へのせん断力にも対抗できるとともに、部分ホイールの正面側や背面側へ倒れることを防止することができる。また、部分ホイールが固定盤に挟持される構造により、部分ホイールのがたつきをさらに効果的に抑制することができる。
【0017】
加えて、部分ホイールは、被覆部と係合する切り欠き部を備えているので、固定部の被覆部によって部分ホイールをしっかりと保持することが可能となり、部分ホイールのがたつきをさらに効果的に抑制することができる。
【0018】
加えて、隣設して配置された部分ホイール間に隙間を形成することにより、部分ホール同士が競ることを防止し部分ホイールの着脱が容易となる。
また、隙間があったとしてもノックピンによって正確な位置に部分ホイールを取付けることができる。
【0019】
加えて、ホイール部が歯の谷部を通って周方向に分割されることにより、山部同士の分割に比較して、接触面が少なくなり着脱が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの正面図。
【
図2】本発明の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの断面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る固定部の部分ホイール取付部の断面図。
【
図7】本発明の実施形態における部分ホイールの正面図。
【
図8】本発明の第2実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0022】
図1には、本実施形態を示すチェーンスプロケットホイール1の正面図が示されている。また、
図2にはチェーンスプロケットホイール1の断面図が、
図3には固定部3の側面図が、
図4には固定部3の部分ホイール取付部31の断面図が、
図5及び
図6には固定盤6の正面図及び断面図が、
図7には部分ホイール5の正面図がそれぞれ示されている。
【0023】
図1等に示された本実施形態のチェーンスプロケットホイール1は、駆動チェーンスプロケットホイールであって、外周に掛け渡したチェーン(図示せず)を、チェーンスプロケットホイール1の回転動作によって、長さ方向に移動させるものである。また、
図1及び
図2等に示すように、チェーンスプロケットホイール1は、主に、ホイール部2と、円盤状の固定部3とから構成されている。
【0024】
ホイール部2は、その外周にチェーンが係合する複数の歯4を有し、山部41と谷部42を形成している。また、ホイール部2の内周面5aは、
図1に破線で示されているように、正多角形状(図示される実施例では正八角形状)となっている。
【0025】
ホイール部2は、周方向に等間隔で複数(本実施形態では8個)の部分ホイール5に分割されている。この分割数については、不図示のチェーンをUターン状に掛け渡した際において、チェーンが係合しない部分ホイール5が少なくとも一つ以上存在できるだけの分割数として設定すればよい。
【0026】
ホイール部2は、山部41と、固定部3に形成された正多角形の部分ホイール取付部31の頂点を通って径方向に伸びる分割線(
図1の一点鎖線を参照)に沿って分割され、すべての部分ホイール5を固定部3の周方向に組み合わせることにより、全体として円盤状に形成される。また、すべての部分ホイール5を組み合わせると、隣接する部分ホイール5の間には、わずかな隙間7が形成される。
【0027】
図7に示すように、部分ホイール5の内周面5aは直線である。内周面5aが、後述する固定部3の正多角柱の部分ホイール取付部31のそれぞれの辺の接続面33と当接する。また、内周面5aには、ノックピン8を挿入する挿入孔9(図示下方の点線部)が2箇所形成されている。
【0028】
部分ホイール5の背面側には、後述する固定盤6の凸部11と係合する凹部12(図示点線部)が形成されている。また、部分ホイール5を固定部3に取り付けた際に、部分ホイール5の正面側で、固定部3の被覆部32と嵌合する切り欠き部13が形成されている(
図2、
図7)。
【0029】
固定部3は、略筒状の本体部3aと、本体部3aに着脱可能であるとともに部分ホイール5の背面側に配置される固定盤6を備えている。
図1及び
図2等に示されるように、本体部3aには、図示しないシャフトを通すための開口部30が形成されている。
【0030】
本体部3aには、正多角柱(本実施形態では正八角柱)の形状をした部分ホイール取付部31が形成されており、この多角形の辺を構成する面が部分ホイール5の内周面5aが接合される接続面33を形成している(
図1、
図2、
図3、
図4)。また、接続面33には、ノックピン8が打ち込まれて挿入される挿入孔9が形成されている(
図3、
図4)。
【0031】
図2等に示されるように、本体部3aの部分ホイール5の正面側であって部分ホイール取付部31の正面側に隣接して、接続面33を含んで部分ホイール5の基端部を覆う被覆部32が一体に形成されている。被覆部32の外周は円形状である。被覆部32は、部分ホイール5が取付けられた際に切り欠き部13に係合する。
【0032】
このような構成により、ノックピン8における部分ホイール5の正面側方向へのせん断力にも対抗できるとともに、部分ホイール5の正面側や背面側へ倒れることを防止することができる。また、部分ホイール5が後述する固定盤6に挟持される構造により、部分ホイール5のがたつきをさらに効果的に抑制することができる。
【0033】
本体部3aには、部分ホイール取付部31の背面側に隣接して、後述する固定盤6が取付けられる円柱形の固定盤取付部3bが形成されている(
図2、
図3、
図5)。固定盤取付部3bの外周面にはボルト孔34が中心方向に向かって複数(本実施形態では4つ)形成されている(
図3、
図5)。
【0034】
図2に示されるように、固定部3は、本体部3aに着脱可能であるとともに取付けられた部分ホイール5の背面側に配置される固定盤6を備えている。固定盤6は、円盤状で部分ホイール5の背面側に当接するようにして取付けられる。
【0035】
図5及び
図6に示すように、固定盤6には部分ホイール5の背面に当接する当接面14が形成され、さらにその外周部分には、正面側に向かって突出する凸部11が形成されている。凸部11は取付けられた部分ホイール5の凹部12に係合するように形成されている。
また、固定盤6の外周面から当該固定盤6中心に向かって複数(図示する例では4箇所)のボルト挿通孔35が形成されている。固定盤6の内周面を固定盤取付部3bに合わせてボルト挿通孔35とボルト孔34とに不図示のボルトを通して締結することにより、本体部3aに固定盤6を固定することが可能となっている。
【0036】
それぞれの部分ホイール5は、
図1のA部の透視図に示されているように、固定部3に二つのノックピン8を介して取付けられている。具体的には、本体部3aの部分ホイール取付部31の接続面33と部分ホイール5の内周面5aが当接された状態で、ノックピン8が部分ホイール5と部分ホイール取付部31の双方の挿入孔9にわたって挿入された状態となっている。
ノックピン8の双方の挿入孔9への挿入は、ノックピン8の一端側を部分ホイール5の挿入孔9に打ち込んで挿入してから、当該部分ホイール5から露出したノックピン8の他端側を部分ホイール取付部31の挿入孔9に合わせて当該部分ホイール5を押圧するようにしても良いし、逆にノックピン8の一端側を部分ホイール取付部31の挿入孔9に打ち込んで挿入してから、部分ホイール取付部31から露出したノックピン8の他端側を部分ホイール5の挿入孔9に合わせて当該部分ホイール5を押圧するようにしても良い。
【0037】
部分ホイール5を固定部3に取付けた後、固定盤6を本体部3aに取り付ける。具体的には、固定盤6の内周面を固定盤取付部3bに合わせてボルト挿通孔35とボルト孔34とに不図示のボルトを通して締結することにより、固定盤取付部3bに固定盤6を固定する(
図2、
図5)。そうすると、
図2に示すように、部分ホイール5の背面側に固定盤6の当接面14が当接されるとともに、部分ホイール5に形成された凹部12に、固定盤6の凸部11が係合する。
【0038】
よって、チェーンスプロケットホイール1を回転させてチェーンを駆動する際に、固定部3に、部分ホイール5の内周面5aと当接して部分ホイール5の固定部3に対する周方向への回転を規制する接続面33を形成して、接続面33と部分ホイール5の内周面5aは、ノックピン8を介して互いに接合されているので、部分ホイール5の固定部3に対する周方向への回転が規制され、部分ホイール5ががたつかず、安定して固定される。凸部11と凹部12とが係合して部分ホイール5の径方向への移動が規制されるので、部分ホイール5に固定部3に対して径方向に引っ張られる力が作用しても対抗することができるとともにがたつきをさらに抑えることができる。また、円形の凸部11と凹部12との係合や円形の被覆部32と切り欠き部13との係合、及びノックピン8の存在によって、部分ホイール5の内周面5aと接続面33とで平行であってホイールの回転前後方向におけるせん断力に部分ホイール5が対抗することができる。
【0039】
使用中のチェーンスプロケットホイール1のいずれかの部分ホイール5が摩耗・損傷した場合の交換作業について説明する。
本体部3aに取り付けられた固定盤6のボルト孔34から図示しないボルトを抜き、固定盤6を背面側へ取り外して移動させ、固定盤6の凸部11と部分ホイール5の凹部12の係合状態を解除させる。なお、ボルトを全方向から抜くことができないときは、チェーンスプロケットホイール1を回転して停止させてからボルトを抜いていく。
【0040】
チェーンスプロケットホイール1からチェーンを取り外さないで、その部分ホイール5がチェーンと係合しない位置までチェーンスプロケットホイール1を回転移動させる。
そして、摩耗・損傷を受けた部分ホイール5を取り外して、新たな部分ホイール5を取り付けて交換を行う。
【0041】
部分ホイール5の交換作業に際しては、隣設して配置された部分ホイール5間に隙間7が形成されているので、隣接する部分ホイール5と交換対象の部分ホイール5とが競ることなく、隣接する部分ホイール5に邪魔されずに、容易に部分ホイール5の交換ができる。
【0042】
固定盤6を背面側に移動させた際に、凸部11と部分ホイール5の凹部12の係合状態を解除させても、ノックピン8によって部分ホイール5は固定部3に接合されているので、チェーンが装着されていても部分ホイール5が倒れることはないが、安全を考慮してサポート部材などで部分ホイール5が倒れないようにしても良い。
【0043】
また、固定部3にノックピン8によって接合された部分ホイール5を取り外すには、固定盤6を移動させて露出した凹部12に治具を係合させて、固定部3に反力をとって引き抜くようにしても良い。
【0044】
このようにノックピン8の抜き差しによって部分ホイール5を固定部3に対して半径方向に引き抜き、または取付けるので、チェーンスプロケットホイール1の正面側のスペースが狭くても部分ホイールの交換作業が行いやすい。
【0045】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明に係る第2の実施形態について
図8及び
図9と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0046】
第2の実施形態において、ホイール部2は、谷部42を通って径方向に伸びる分割線に沿って、複数の部分ホイール5に分割されている。このようにホイール部2を谷部42で分割することで、チェーンに対して最も負荷が掛かる山部41を一体形成することができ、山部41の欠けなどを抑制することが可能となる。
【0047】
また、部分ホイール5の着脱に際して、隣設して配置された部分ホイール5と接触し得る部分が少なくなるので、隣設して配置された部分ホイール5が邪魔にならず、着脱が容易になり、さらに、隙間7に指を挟む可能性も低くなって安全に着脱作業を行うことができる。
【0048】
取り付けられた8個の部分ホイール5は、部分ホイール取付部31に対してノックピン8を介して取り付けられるが、製造誤差などにより、隣り合う部分ホイール5同士との間で、段差が生じる可能性がある。このような場合であっても、谷部42を通って径方向に伸びる分割線に沿って、複数の部分ホイール5が分割されていれば、チェーンの可動に対する段差の存在による影響が小さくすることができ、チェーンのスムーズな可動に貢献する。
【0049】
図9は上記した効果を説明するための図であり、
図9(イ)は、
図1の実施形態における山部41で分割されたホイール部2を側面視した拡大図で、
図9(ロ)は、
図8の第2の実施形態における谷部42で分割されたホイール部2を側面視した拡大図である。
【0050】
チェーンと係合することになる二つの山部41の距離は、
図9(イ)の山部41で分割した場合でL1、
図9(ロ)の谷部42で分割した場合でL1よりも長い距離のL2となる。したがって、前述したように、隙間7を挟んで互いに隣接する部分ホイール5の間に、図示されるような段差Zが生じた場合、
図9(ロ)のように谷部42で分割した方が二つの山部41の距離が長いため、チェーンに対する山部41の段差Zによる悪影響を軽減させることができる。すなわち、
図9(イ)の山部41で分割されるケースでは、チェーンの一つの穴において、当該穴に係合する山部41間で段差Zが生じることになるが、
図9(ロ)の谷部42で分割されるケースでは、チェーンの二つの穴に係合する山部41間で段差Zが生じることとなるので、チェーンに対する段差の影響を軽減することができる。
【0051】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0052】
本実施形態では、チェーンスプロケットホイール1を駆動ホイールとして説明したが、これに限られず、従動ホイールであっても良い。
【0053】
本実施形態では、ホイール部を8個の部分ホイールに分割してあるが、チェーンスプロケットホイールの大きさ、チェーンが係合する角度等によって、分割する数は適宜変更できる。これに伴って、固定部3の部分ホイール取付部31には、部分ホイールの数に対応した数の接続面33及びノックピン8を挿入するための挿入孔9が形成される。
【0054】
本実施形態では、部分ホイール5の内周面5a及び固定部3の接続面33を平面状としてあるが、部分ホイール5の周方向への移動を規制する形状であればよく、屈曲面、凹凸面等とすることもできる。
【0055】
本実施形態では、固定盤6に凸部11を形成し、部分ホイール5に凹部12を形成したが、もちろん、固定盤6に凹部を形成し、部分ホイール5に凸部を形成してもよい。
【0056】
本実施形態では、固定盤6の外周縁全長に沿って円形状の凸部11を形成したが、これに限られない。外周縁全てに沿ってではなく断続的に設けるようにしてもよい。また、外周縁でなく内側の部分ホイール5との当接面14に凸部11を形成してもよい。また、その場合、凸部11と嵌合する凹部も部分ホイール5の対応する位置に形成することはいうまでもない。
【0057】
本実施形態では、各部分ホイール5を二つのノックピン8によって固定部3に取り付けているが、これに限られず、一つのノックピン8又は三つ以上のノックピン8で固定部3に取り付けてもよい。
【0058】
本実施形態では、被覆部32の一部が部分ホイール5に嵌合するように、部分ホイール5に切り欠き部13が形成したが、必ずしもこのような形態に限定されるものではない。例えば、部分ホイール5に切り欠き部13を形成することなく、被覆部32の一部が部分ホイール5の正面側の面に当接するように構成してもよい。
【0059】
本実施形態では、固定盤6が一部材で複数の部分ホイール5のすべて背面側に配置されるようになっていたが、これに限られない。固定盤を部分ホイールと同様に周方向に分割して形成し、それぞれ分割された固定盤をボルトで本体部に着脱可能に設けるようにしても良い。固定盤の分割数と分割線は、例えば部分ホイール5の分割数と分割線と同じにしても良い。また分割ホイール二つに対して分割した固定盤を1つ(部分ホイールが8個であれば分割した固定盤は4つ)にしても良い。このようにすれば、交換対象でないチェーンがかかった部分ホイールが倒れる可能性も低くなってより安全に交換作業を行うことができる。
【0060】
本実施形態では、従来のボルトを用いずに部分ホイールを固定部にノックピンを介して取付けるものであったが、ボルトが抜き差しできるスペースが確保できる場合には、従来同様にボルト締結を併用するようにしても良い。すなわち、本発明はボルトでの締結を排除するものではない。
【0061】
本実施形態では、チェーンをスプロケットホイールに装着したまま部分ホイールの交換作業を行ったが、これに限られず、チェーンを取り外してから交換作業を行っても良い。
【0062】
本発明は、チェーンスプロケットホイールの構造についてのものであったが、本明細書で述べた技術思想を歯車の構造に適用して、歯車の発明としてもよい。この場合には、多数の歯に係合するのはチェーンではなく他の歯車の歯となる。
【0063】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 チェーンスプロケットホイール
2 ホイール部
3 固定部
4 歯
5 部分ホイール
6 固定盤
7 隙間
8 ノックピン
9 挿入孔
11 凸部
12 凹部
13 切り欠き部
14 当接面
30 開口部
31 部分ホイール取付部
32 被覆部
33 接続面
34 ボルト孔
35 ボルト挿通孔