(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】光又は熱硬化方法、及び硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 75/045 20160101AFI20240617BHJP
C08G 79/10 20060101ALI20240617BHJP
C08L 81/02 20060101ALI20240617BHJP
C08L 85/00 20060101ALI20240617BHJP
C09D 181/02 20060101ALI20240617BHJP
C09D 185/00 20060101ALI20240617BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240617BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240617BHJP
H05K 1/05 20060101ALI20240617BHJP
H05K 3/44 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C08G75/045
C08G79/10
C08L81/02
C08L85/00
C09D181/02
C09D185/00
C09K5/14 E
G03F7/004 501
H05K1/05 A
H05K3/44 A
(21)【出願番号】P 2019525466
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2018022484
(87)【国際公開番号】W WO2018230580
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2017115314
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】富士フイルム和光純薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 正
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信彦
(72)【発明者】
【氏名】簗場 康佑
(72)【発明者】
【氏名】今關 重明
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-155896(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131047(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/076395(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111640(WO,A1)
【文献】特表2016-503829(JP,A)
【文献】特表2016-511706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00- 85/00
C08F 2/00-299/08
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
C09K 5/00- 5/20
G03F 7/00- 7/42
H05K 1/00- 3/46
H01B 3/00- 3/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、(D)水、及び(F)キレート剤を反応させてゾル化し、(E)一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物を得る工程1と、
前記化合物(A)の存在下、前記縮合物(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーを、光照射又は加熱条件下で反応させる工程2を含む、
光又は熱硬化方法。
(式[6]中、3つのR
32はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R
32で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【請求項2】
(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、(D)水、及び(F)キレート剤を反応させて、(E)ゾルを得る工程1と、
前記化合物(A)の存在下、光照射又は加熱により、前記ゾル(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーから、硬化物を得る工程2を含む、
光又は熱硬化方法
。
(式[6]中、3つのR
32はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R
32で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【請求項3】
(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物及び(I)フィラーの存在下、(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び(D)水を反応させてゾル化し、(E)一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物を得る工程1と、
前記化合物(A)の存在下、前記縮合物(E)、前記化合物(H)、及び前記フィラー(I)を、光照射又は加熱条件下で反応させる工程2を含む、
光又は熱硬化方法。
(式[6]中、3つのR
32はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R
32で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【請求項4】
(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物及び(I)フィラーの存在下、(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び(D)水を反応させて、(E)ゾルを得る工程1と、
前記化合物(A)の存在下、光照射又は加熱により、前記ゾル(E)、前記化合物(H)、及び前記フィラー(I)から、硬化物を得る工程2を含む、
光又は熱硬化方法。
(式[6]中、3つのR
32はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R
32で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記工程2が、前記化合物(A)の存在下、前記縮合物(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、(I)フィラー、及び(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を、光照射又は加熱条件下で反応させる工程である、請求項1に記載の硬化方法。
【請求項6】
前記工程2が、前記化合物(A)の存在下、光照射又は加熱により、前記ゾル(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、(I)フィラー、及び(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物から、硬化物を得る工程である、請求項2に記載の硬化方法。
【請求項7】
前記工程1が、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、(I)フィラー、及び(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物の存在下、前記化合物(A)、前記アルミニウムアルコキシド(B)、前記シランカップリング剤(C)、及び前記水(D)を反応させてゾル化し、前記縮合物(E)を得る工程であって、
前記工程2が、前記化合物(A)の存在下、前記縮合物(E)、前記化合物(H)、前記フィラー(I)、及び前記化合物(J)を、光照射又は加熱条件下で反応させる工程である、請求項3に記載の硬化方法。
【請求項8】
前記工程1が、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、(I)フィラー、及び(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物の存在下、前記化合物(A)、前記アルミニウムアルコキシド(B)、前記シランカップリング剤(C)、及び前記水(D)を反応させて、前記ゾル(E)を得る工程であって、
前記工程2が、前記化合物(A)の存在下、光照射又は加熱により、前記ゾル(E)、前記化合物(H)、前記フィラー(I)、及び前記化合物(J)から、硬化物を得る工程である、請求項4に記載の硬化方法。
【請求項9】
前記化合物(A)が、一般式[1]で示されるものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化方法。
(式[1]中、R
1~R
8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又は一般式[2]で示される基を表し、R
9及びR
10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子又はニトロ基を表すか、あるいはR
9及びR
10が、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基を介して互いに結合していることを表す。ただし、R
1~R
8で示される基のうちの少なくとも1つは、一般式[2]で示される基を表す。)
一般式[2]:
(式[2]中、R
11及びR
12はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、Z
1
+は、アミジニウムカチオン、グアニジニウムカチオン又はビグアニジニウムカチオンを表す。)
【請求項10】
前記アルミニウムアルコキシド(B)が、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化方法。
【請求項11】
前記シランカップリング剤(C)が、一般式[7]で示されるものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化方法。
(式[7]中、3つのR
33はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、R
34は、少なくとも1つのメルカプト基を有する炭素数1~8のアルキル基を表す。ただし、R
33で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルコキシ基を表す。)
【請求項12】
前記シランカップリング剤(C)が、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシランから選ばれるものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化方法。
【請求項13】
前記アルミニウムアルコキシド(B)と前記シランカップリング剤(C)のmol比の割合が、1:10~9:1である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化方法。
【請求項14】
前記キレート剤(F)が、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、2-(2-チオキサンテニル)ジエチルマロン酸、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、及び乳酸エチルから選ばれるものである、請求項1又は2に記載の硬化方法。
【請求項15】
前記フィラー(I)が、熱伝導性フィラーである、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化方法。
【請求項16】
前記熱伝導性フィラーが、窒化アルミニウムである、請求項15に記載の硬化方法。
【請求項17】
(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーを含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物と(D)水との反応によるゾル化を経由することによって、硬化物を得るための
硬化性樹脂組成物。
(式[6]中、3つのR
32はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R
32で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【請求項18】
(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(E)一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、並びに(I)フィラーを含む、硬化性樹脂組成物であって、
前記縮合物(E)が、前記化合物(A)と、前記アルミニウムアルコキシドと、前記シランカップリング剤と、水(D)及びキレート剤(F)との反応によるゾル化によって得られるものである、硬化性樹脂組成物。
(式[6]中、3つのR
32はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R
32で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【請求項19】
(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(E)一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、並びに(I)フィラーを含む、硬化性樹脂組成物であって、
前記アルミニウムアルコキシドと前記シランカップリング剤のmol比の割合が1:5~1:1.5であり、
前記縮合物(E)が、前記化合物(A)と、前記アルミニウムアルコキシドと、前記シランカップリング剤と、水(D)との反応によるゾル化によって得られるものである、硬化性樹脂組成物。
(式[6]中、3つのR
32はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R
32で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【請求項20】
さらに、(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
請求項17~19のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物を有する電子回路形成用熱伝導性基板。
【請求項22】
請求項17~19のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を、金属基板に塗布して塗布膜を得た後、該塗布膜を光照射又は加熱することにより、前記塗布膜を硬化させ、金属基板の表面に熱伝導性絶縁膜を形成することを特徴とする、電子回路形成用熱伝導性基板の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーを含有する硬化物(架橋物・樹脂)を得るための光又は熱硬化方法、及び該硬化方法に用いられる硬化性樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
照明用に需要が拡大しているハイパワーLEDデバイス、高速大容量の情報を扱うPCやタブレット端末に代表されるエレクトロニクスデバイス、また、電気自動車やハイブリッド自動車の電気モーターを司るパワー半導体等は、機器の小型化、高性能化、高密度化に伴って、素子から発生する熱が問題視されている。発生する熱は、製品のパフォーマンスや寿命に大きな影響を与えるなどの問題がある。小型化・軽量化・薄型化等の製品性能を犠牲にせず、如何にして発生する熱を効率良く放熱するかが課題となっている。
【0003】
一般的に、熱伝導率の高い材料として、金属やセラミックスが挙げられる。金属の多くは導電性を示すため、絶縁性が必要とされる電子回路にそのまま使用することは難しい。一方で、セラミックスは、電気絶縁性が高く種類が豊富なため、様々な性能の付与を期待できるが、加工性が悪く、成型処理時に高温加熱が必要であり、生産性が低い。
【0004】
また、加工性が良好という観点では、樹脂を電子回路の放熱材として使用することが考えられるが、樹脂は、金属やセラミックスと比較して熱伝導性が低く、発生する熱を逃がし難いため、そのままでは放熱材としては使用できない。このため、セラミックスのような熱伝導率の高い熱伝導性フィラーを樹脂中に充填した熱伝導性樹脂組成物を作製する試みがなされている。
【0005】
例えば、樹脂組成物全体に対してフィラーを70%以上含有させて、熱伝導率を向上させた樹脂組成物が検討されている(例えば、特許文献1、2、3等)。しかしながら、これらの樹脂組成物は、分子構造が複雑であるため多段階の合成工程が必要であったり、樹脂組成物の硬化時に長時間の高温加熱が必要であり、生産性が低いという問題がある。
【0006】
このため、樹脂組成物の硬化を加熱ではなく、光(活性エネルギー線)で硬化させる硬化方法が検討されている。光硬化は、樹脂組成物中に光開始剤を共存させておき、該樹脂組成物に光(活性エネルギー線)を照射することにより、光開始剤から、ラジカル、酸、塩基等の様々な活性種を発生させ、その活性種を利用して反応性モノマーを迅速に硬化させる手法である。
【0007】
光硬化用の樹脂組成物のうち、光照射によってラジカルを発生する樹脂組成物としては、例えば、アルミナ等の熱伝導性フィラーを(メタ)アクリル酸系高分子中に充填した樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献4)。しかしながら、このような樹脂組成物から得られる樹脂のポリマー成分は、その大部分が(メタ)アクリル酸系ポリマーであるが故に、硬化収縮が大きく、ヒドロキシル基等のアンカー効果が乏しいため、基材への密着性が悪く、剥離が起こり易い。特に、光を散乱するフィラーが樹脂組成物中に大量に存在する場合には、光が深部まで届きにくいため、硬化性能を失って硬化が不十分となり、脆い膜となり易い。従って、このような樹脂組成物から得られる樹脂は、金属基板上の熱伝導膜としての性能を満たしているとは言い難い。
【0008】
光硬化用の樹脂組成物のうち、光照射によって強酸を発生する樹脂組成物は、ラジカルでは硬化できないエポキシ系モノマー等を樹脂原料とした組成物の硬化を実現できる。しかしながら、光照射によって強酸を発生するため、金属と接触する部分では腐食が起こり易いため、銅板等に塗布して使用することが想定される熱伝導性樹脂組成物に適用することが難しい。
【0009】
光硬化用の樹脂組成物のうち、光照射によって塩基を発生する樹脂組成物は、種々のものが知られているが、最近では、光照射によって塩基を発生させるとともにラジカルを発生させて、ゾル-ゲル化とチオール-エン反応を同時に行うことで、シリコーン含有樹脂(架橋物)を作製する方法が提案されている(例えば、特許文献5)。本方法は、低分子モノマーからビルドアップ方式で組成物を調製できるため、シリコンアルコキシドが重縮合して高分子量化する前に、フィラー等の添加剤を加えながら調製することが可能であり、基材への密着性等を上げることができる。しかしながら、本方法は、有機系の樹脂原料を一定量添加する必要があるため、組成物全体に対するフィラーの充填率の上限が限られており、得られる樹脂(架橋物)の熱伝導率が十分と言えない場合がある。
【0010】
このような状況から、複雑な構造のポリマーをあらかじめ調製したり、煩雑な操作を行うことなく、フィラーを大量に含む系においても、迅速且つ効率的に所望の性能を有する硬化物(架橋物・樹脂)を作製できる硬化方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-149191号公報
【文献】特開2013-127022号公報
【文献】特開2012-251100号公報
【文献】特開2000-044640号公報
【文献】国際公開第2017/131047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した状況に鑑み成されたものであり、アルカリ現像性、基材への密着性、耐有機溶剤性等に優れ、高い強度を有する硬化物(架橋物・樹脂)を作製できる光又は熱硬化方法、並びに該硬化方法に用いられる樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
特に、フィラーとして熱伝導性(放熱性)フィラーを用いることで、1.0W/m・K以上、好ましくは3.0W/m・K以上の熱伝導率を達成できる硬化物(架橋物・樹脂)を作製できる光又は熱硬化方法、該硬化方法に用いられる樹脂組成物、並びに該樹脂組成物から得られる硬化物を有する電子回路形成用熱伝導性基板等を提供することにある。
【0014】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、バインダー成分として、アルミニウムアルコキシドとメルカプト基を有するシランカップリング剤を組み合わせることで、得られる硬化物(架橋物・樹脂)の硬度、基材への密着性、熱伝導率等の種々の物性が向上することを見出した。また、一般的に、アルミニウムアルコキシドは加水分解が起こり易く、空気中で容易に白化する。そのため、アルミニウムアルコキシドは、急激にゲル化が進行してしまい、フィラーとの均一混合が困難となり品質が不安定となる。しかしながら、カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物(塩基及びラジカル発生剤)は、アルミニウムアルコキシドやシランカップリング剤との相溶性が高く、無溶剤でアルミニウムアルコキシドやシランカップリング剤を溶解させることができる。そのため、該化合物は、フィラーを均一に混合でき、且つキレート能をも有しているため、上述した急激なゲル化を抑える働きがあることを本発明者らは見出した。従来の塩基発生剤の多くは油溶性であり、アルミニウムアルコキシド、水、アルコール等に対する親和性が低く、キレート能をほとんど有していない。故に、本発明者らは、フィラーを含む硬化系において、塩基及びラジカル発生剤とアルミニウムアルコキシドとメルカプト基を有するシランカップリング剤と2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物とを組み合わせることにより、ゾル-ゲル化とチオール-エン反応又はチオール-イン反応を効率的に行うことができ、且つ所望の性能を有する硬化物(架橋物・樹脂)を作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
また、本発明の光又は熱硬化方法は、上記化合物(塩基及びラジカル発生剤)が、塩基発生剤、ラジカル発生剤及び触媒(アルミニウムアルコキシドとシランカップリング剤との反応促進剤)の3つの機能を有しているため、有機物に対して相対的にフィラーの量を多くでき、ひいては、例えば、熱伝導性樹脂、電気伝導性樹脂等の種々の特性を有する硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる光又は熱硬化方法である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下の構成よりなる。
(1)(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)アルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び(D)水から、(E)アルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物を得る工程1と、
前記化合物(A)の存在下、前記縮合物(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーを、光照射又は加熱条件下で反応させる工程2を含む、
光又は熱硬化方法。
【0017】
(2)(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)アルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び(D)水を反応させて、(E)ゾルを得る工程1と、
前記化合物(A)の存在下、光照射又は加熱により、前記ゾル(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーから、硬化物を得る工程2を含む、
光又は熱硬化方法。
【0018】
(3)前記工程1が、前記化合物(A)、前記アルミニウムアルコキシド(B)、前記シランカップリング剤(C)、前記水(D)、及び(F)キレート剤から、(E)アルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物を得る工程である、前記(1)に記載の硬化方法。
【0019】
(4)前記工程1が、前記化合物(A)、前記アルミニウムアルコキシド(B)、前記シランカップリング剤(C)、前記水(D)、及び(F)キレート剤を反応させて、(E)ゾルを得る工程である、前記(2)に記載の硬化方法。
【0020】
(5)前記工程2が、前記化合物(A)の存在下、前記縮合物(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、(I)フィラー、及び(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を、光照射又は加熱条件下で反応させる工程である、前記(1)又は(3)に記載の硬化方法。
【0021】
(6)前記工程2が、前記化合物(A)の存在下、光照射又は加熱により、前記ゾル(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、(I)フィラー、及び(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物から、硬化物を得る工程である、前記(2)又は(4)に記載の硬化方法。
【0022】
(7)前記化合物(A)が、一般式[1]で示されるものである、前記(1)~(6)のいずれか1つに記載の硬化方法。
(式[1]中、R
1~R
8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又は一般式[2]で示される基を表し、R
9及びR
10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子又はニトロ基を表すか、あるいはR
9及びR
10が、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基を介して互いに結合していることを表す。ただし、R
1~R
8で示される基のうちの少なくとも1つは、一般式[2]で示される基を表す。)
一般式[2]:
(式[2]中、R
11及びR
12はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、Z
1
+は、アミジニウムカチオン、グアニジニウムカチオン又はビグアニジニウムカチオンを表す。)
【0023】
(8)前記アルミニウムアルコキシド(B)が、一般式[6]で示されるものである、前記(1)~(7)のいずれか1つに記載の硬化方法。
(式[6]中、3つのR
32はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R
32で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0024】
(9)前記アルミニウムアルコキシド(B)が、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドである、前記(1)~(7)のいずれか1つに記載の硬化方法。
【0025】
(10)前記シランカップリング剤(C)が、一般式[7]で示されるものである、前記(1)~(9)のいずれか1つに記載の硬化方法。
(式[7]中、3つのR
33はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、R
34は、少なくとも1つのメルカプト基を有する炭素数1~8のアルキル基を表す。ただし、R
33で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルコキシ基を表す。)
【0026】
(11)前記シランカップリング剤(C)が、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシランから選ばれるものである、前記(1)~(9)のいずれか1つに記載の硬化方法。
【0027】
(12)前記アルミニウムアルコキシド(B)と前記シランカップリング剤(C)のmol比の割合が、1:10~9:1である、前記(1)~(11)のいずれか1つに記載の硬化方法。
【0028】
(13)前記キレート剤(F)が、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、2-(2-チオキサンテニル)ジエチルマロン酸、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、及び乳酸エチルから選ばれるものである、前記(3)~(12)のいずれか1つに記載の硬化方法。
【0029】
(14)前記フィラー(I)が、熱伝導性フィラーである、前記(1)~(13)のいずれか1つに記載の硬化方法。
【0030】
(15)前記熱伝導性フィラーが、窒化アルミニウムである、前記(14)に記載の硬化方法。
【0031】
(16)(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)アルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーを含む、硬化性樹脂組成物(本発明の第1の樹脂組成物と略記する場合がある。)。
【0032】
(17)(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(E)アルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーを含む、硬化性樹脂組成物(本発明の第2の樹脂組成物と略記する場合がある。)。
【0033】
(18)さらに、(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を含む、前記(16)又は(17)に記載の樹脂組成物。
【0034】
(19)前記(16)~(18)のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物を有する電子回路形成用熱伝導性基板。
【0035】
(20)前記(16)~(18)のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を、金属基板に塗布して塗布膜を得た後、該塗布膜を光照射又は加熱することにより、前記塗布膜を硬化させ、金属基板の表面に熱伝導性絶縁膜を形成することを特徴とする、電子回路形成用熱伝導性基板の作製方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明の光又は熱硬化方法は、水を添加して、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)又はシランカップリング剤(C)同士の部分的な縮合(ゾル化)を行った後、光(活性エネルギー線)の照射又は加熱によって、化合物(A)から塩基とラジカルの両方を発生させることにより、ゾル化で得られたSi-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物(E)同士の重縮合(ゲル化)と、縮合物(E)中のメルカプト基と化合物(H)中の重合性不飽和基とのチオール-エン反応又はチオール-イン反応とを同一系内で行う方法であり、ゾル-ゲル化とチオール-エン反応又はチオール-イン反応を効率的に行えるばかりでなく、フィラーを大量に含んでいても、簡便に硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる光又は熱硬化方法である。
【0037】
また、本発明の光又は熱硬化方法は、化合物(A)が、塩基発生剤、ラジカル発生剤及び触媒(アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)との反応促進剤)の3つの機能を有しているため、有機物に対して相対的にフィラーの量を多くでき、ひいては、例えば、熱伝導性樹脂、電気伝導性樹脂等の種々の特性を有する硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる光又は熱硬化方法である。
【0038】
本発明の第1の樹脂組成物は、保存安定性が高く、該組成物に水を添加して、光(活性エネルギー線)照射又は加熱することにより、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)又はシランカップリング剤(C)同士の重縮合(ゲル化)と、チオール-エン反応又はチオール-イン反応とを同一系内で効率的に行えるばかりでなく、アルカリ現像性、基材への密着性、耐有機溶剤性等に優れる硬化物(架橋物・樹脂)が得られる有用な樹脂組成物である。
【0039】
本発明の第2の樹脂組成物は、本発明の光又は熱硬化方法における工程1を経た後に得られる樹脂組成物、すなわち、工程2に付す前の樹脂組成物であり、該組成物に光(活性エネルギー線)を照射又は加熱することにより、該組成物中で塩基とラジカルの両方が発生するため、効率的に硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる有用な組成物である。
【0040】
本発明の電子回路形成用熱伝導性基板は、本発明の第1又は第2の樹脂組成物から得られる硬化物(架橋物・樹脂)を有することを特徴とするものであり、フィラー(I)として熱伝導性フィラーを用いることで、熱伝導性に優れる基板となり得るものである。
【0041】
本発明の電子回路形成用熱伝導性基板の作製方法は、本発明の第1又は第2の樹脂組成物を用いることを特徴とするものであり、フィラー(I)として熱伝導性フィラーを用いることで、熱伝導性に優れるばかりでなく、アルカリ現像性、基材への密着性、耐有機溶剤性等に優れる硬化物(架橋物・樹脂)を有する基板を得ることができる有用な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明において、光(活性エネルギー線)とは、波長を特定した場合を除き、可視領域の波長の電磁波(可視光線)のみならず、例えば、紫外領域の波長の電磁波(紫外線)、赤外領域の波長の電磁波(赤外線)、X線等の非可視領域の波長の電磁波が含まれる。本発明においては、光(活性エネルギー線)に対して感受性を示す塩基発生剤(活性エネルギー線の照射によって塩基を発生する塩基発生剤)を光塩基発生剤、光(活性エネルギー線)に対して感受性を示すラジカル発生剤(活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生するラジカル発生剤)を光ラジカル発生剤と表記する場合がある。また、波長365nm、405nm、436nmの光(活性エネルギー線)をそれぞれ、i線、h線、g線と表記する場合がある。
【0043】
-本発明の光又は熱硬化方法-
本発明の光又は熱硬化方法は、
(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)アルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び(D)水から、(E)アルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物を得る工程1と、
前記化合物(A)の存在下、前記縮合物(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーを、光照射又は加熱条件下で反応させる工程2を含む、方法である。
【0044】
すなわち、本発明の光又は熱硬化方法における工程1は、カルボン酸とアミンとの塩からなる化合物(A)が触媒(反応促進剤)として作用することで、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)と水(D)とを反応させ、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物(E)を得る工程である。
【0045】
本発明の光又は熱硬化方法における工程2は、化合物(A)に対して光(活性エネルギー線)を照射する又は化合物(A)を加熱することで、化合物(A)から塩基とラジカルの両方を発生させることにより、工程1で得られたSi-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物(E)と化合物(H)とフィラー(I)とを反応させる工程である。すなわち、前記工程2は、化合物(A)から生じた塩基により、縮合物(E)中のヒドロキシル基同士もしくは縮合物(E)中のヒドロキシル基とアルコキシ基又は/及び縮合物(E)中のヒドロキシル基とフィラー(I)を反応(重縮合・ゲル化)させつつ、化合物(A)から生じたラジカルにより、縮合物(E)中のメルカプト基と化合物(H)中の重合性不飽和基を反応(チオール-エン反応又はチオール-イン反応)させて、硬化物(架橋物・樹脂)を得る工程である。なお、ここでいう硬化物(架橋物・樹脂)とは、上記縮合物(E)と化合物(H)とフィラー(I)の3成分のみを反応させて得られる硬化物(架橋物・樹脂)に限定されず、硬化物(架橋物・樹脂)中に、縮合物(E)、化合物(H)及びフィラー(I)以外の構成単位を含むことを排除しない。
【0046】
換言すれば、本発明の光又は熱硬化方法は、
(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)アルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び(D)水を反応させて、(E)ゾルを得る工程1と、
前記化合物(A)の存在下、光照射又は加熱により、前記ゾル(E)、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーから、硬化物を得る工程2を含む、方法である。
【0047】
すなわち、前記工程1は、カルボン酸とアミンとの塩からなる化合物(A)が触媒(反応促進剤)として作用することで、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)と水(D)とが反応し、(E)ゾルを生じさせる工程である。言い換えれば、前記工程1は、上記(A)~(D)を反応させて、少なくとも上記(B)~(D)の反応物からなる(E)ゾルを得る工程である。
【0048】
前記工程2は、化合物(A)に対して光(活性エネルギー線)を照射する又は化合物(A)を加熱することで、化合物(A)から塩基とラジカルの両方を発生させることにより、工程1で得られたゾル(E)と化合物(H)とフィラー(I)とを反応させる工程である。言い換えれば、前記工程2は、化合物(A)から生じた塩基により、ゾル(E)中のヒドロキシル基同士もしくはゾル(E)中のヒドロキシル基とアルコキシ基又は/及びゾル(E)中のヒドロキシル基とフィラー(I)を反応(重縮合・ゲル化)させつつ、化合物(A)から生じたラジカルにより、ゾル(E)中のメルカプト基と化合物(H)中の重合性不飽和基を反応(チオール-エン反応又はチオール-イン反応)させて、硬化物(架橋物・樹脂)を得る工程である。なお、ここでいう硬化物(架橋物・樹脂)とは、上記ゾル(E)と化合物(H)とフィラー(I)の3成分のみを反応させて得られる硬化物(架橋物・樹脂)に限定されず、硬化物(架橋物・樹脂)中に、ゾル(E)、化合物(H)及びフィラー(I)以外の構成単位を含むことを排除しない。
【0049】
前記工程1の反応系内には、少なくとも化合物(A)、アルミニウムアルコキシド(B)、シランカップリング剤(C)及び水(D)が含まれているが、前記工程1の反応系内には、さらに化合物(H)やフィラー(I)が含まれていてもよい。化合物(A)は、光(活性エネルギー線)を照射又は加熱しない限り、塩基及びラジカルが潜在化されているため、工程1に悪影響を及ぼすことがほとんどない。また、あらかじめ化合物(H)やフィラー(I)を含有させれば、前記工程1と工程2の間で化合物(H)やフィラー(I)を添加する工程を必要とせず作業性が向上する。
【0050】
前記工程2の反応系内には、前記工程1で得られた縮合物(E)、化合物(A)、化合物(H)及びフィラー(I)が含まれており、これらの混合物を硬化性樹脂組成物と称する場合がある。
【0051】
前記工程1の反応系内には、上述した(A)~(D)及び要すれば化合物(H)やフィラー(I)以外の成分が含まれていてもよく、このような成分としては、例えば、有機溶剤、(F)キレート剤等のその他種々の添加剤等が挙げられる。また、前記工程2の反応系内には(硬化性樹脂組成物には)、上述した縮合物(E)、化合物(A)、化合物(H)及びフィラー(I)以外の成分が含まれていてもよく、このような成分としては、例えば、(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物、有機溶剤等のその他種々の添加剤等が挙げられる。有機溶剤は、(A)~(F)及び(H)~(I)の相溶性を向上させたり、金属基板等の固体表面(基材)への塗布性を高めて作業性を向上させることができる。なお、前記工程2には、前記工程1で使用した水(D)や未反応のアルミニウムアルコキシド(B)又は/及びシランカップリング剤(C)が含まれていてもよいことは言うまでもない。
【0052】
前記工程1の反応系内のpHは、(A)~(D)の反応(ゾル化)を円滑に進行させるために、4~8の範囲であることが好ましく、6~7の範囲であることがより好ましい。このような好ましいpHで前記工程1を実施する場合には、強酸性又は強塩基性を示す化合物を使用しないことが望ましい。
【0053】
前記工程2は、重縮合(ゲル化)と、チオール-エン反応又はチオール-イン反応を並行して進行させる工程であるが、そのうちの重縮合(ゲル化)をアルカリ条件下で行うことを特徴とする。前記工程2の光(活性エネルギー線)の照射又は加熱前は中性付近であるが、光(活性エネルギー線)を照射する又は加熱することにより、化合物(A)のカルボキシレート基が脱炭酸して塩基が発生することで、反応系内のpHがアルカリ性にシフトしてアルカリ条件となる。アルカリ性とは、通常7を越え14以下のpHを指すが、そのなかでも、pH8~14の範囲であることが好ましく、pH10~14の範囲であることがより好ましい。このような好ましいpHで前記工程2を実施する場合には、pH10~14である塩基を発生できる化合物(A)を用いればよく、前記工程2における重縮合(ゲル化)が円滑に進行し、所望の架橋密度、硬度、基材への密着性、耐有機溶剤性等を有する硬化物(架橋物・樹脂)が得られ易い。
【0054】
前記工程1は、反応生成物であるSi-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物(E)中にヒドロキシル基又はアルコキシ基が残存するように反応を終了させることが望ましい。縮合物(E)は、アルミニウムアルコキシド(B)やシランカップリング剤(C)の加水分解によって生成した、(B)や(C)中のヒドロキシル基が反応(重縮合)することによって得られるものであるが、(B)や(C)中のヒドロキシル基が過剰に反応(重縮合)してしまうとゲル化するおそれがある。すなわち、前記工程1は、(A)~(D)を反応(加水分解及び縮合)させてゾルを得る工程であるから、縮合物(E)中におけるヒドロキシル基又はアルコキシ基をある程度残存させてゲル化させないことが望ましい。なお、前記工程1のゾル化は、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)に対する水の当量数、反応時間等でコントロールすることができる。なお、「縮合物(E)中におけるヒドロキシル基又はアルコキシ基をある程度残存させる」とは、アルミニウムアルコキシド(B)中の全てのアルコキシ基とシランカップリング剤(C)中の全てのアルコキシ基に対応する、縮合物(E)中のヒドロキシル基又はアルコキシ基が、通常10~90%、好ましくは30~70%残存することを意味する。
【0055】
本発明の光又は熱硬化方法における化合物(A)は、光(活性エネルギー線)又は熱に対して感受性を示す化合物である。より具体的には、化合物(A)は、通常波長100~780nm、好ましくは波長200~450nm、より好ましくは波長250~450nmの光(活性エネルギー線)を吸収して分解するか、あるいは通常80~250℃、好ましくは100~200℃、より好ましくは120~180℃の熱エネルギーを吸収して分解することによって、該化合物(A)中のカルボニル基からラジカルが発生するとともに、カルボキシレート基が脱炭酸して塩基が発生する化合物である。該化合物(A)中のカルボニル基からのラジカル発生とカルボキシレート基の脱炭酸は、必ずしも同一の波長領域の光(活性エネルギー線)又は同一温度の熱エネルギーに起因する必要はない。しかしながら、工程2は、重縮合(ゲル化)と、チオール-エン反応又はチオール-イン反応を並行して進行させる工程であるため、該化合物(A)中のカルボニル基からのラジカル発生とカルボキシレート基の脱炭酸は、同一波長領域の光(活性エネルギー線)又は同一温度の熱エネルギーに起因することが好ましい。言い換えれば、化合物(A)は、カルボニル基からのラジカル発生とカルボキシレート基の脱炭酸とが、同一の波長領域の光(活性エネルギー線)又は同一温度の熱エネルギーで進行するような感光基又は熱分解性基を有するものが好ましい。なお、化合物(A)は、上述した波長領域のなかでも、i線、h線、g線の少なくとも1つ以上の光(活性エネルギー線)に対して吸収を示すものが、汎用性の観点から好ましい。
【0056】
工程1における化合物(A)の含有量は、アルミニウムアルコキシド(B)のmol量とシランカップリング剤(C)のmol量との和((B)と(C)の総mol量)を基準に決定すればよく、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)の総mol量に対して、通常0.001~1当量、好ましくは0.005~0.5当量、より好ましくは0.005~0.1当量である。工程1において、化合物(A)は、アルミニウムアルコキシド(B)に対する触媒(反応促進剤)として作用するため、触媒量(0.001当量)以上含んでいればよいが、工程2は、化合物(A)から塩基とラジカルを発生させて、重縮合(ゲル化)とチオール-エン反応又はチオール-イン反応を生じさせる工程であるから、化合物(A)を0.005当量以上含んでいることが好ましい。化合物(A)を0.005当量以上含有させることで、工程1から工程2にかけて化合物(A)を添加する必要がなくなり、作業性が向上するばかりでなく、工程1をより円滑に進行させることができる。
【0057】
工程2における化合物(A)の含有量は、アルミニウムアルコキシド(B)のmol量とシランカップリング剤(C)のmol量との和((B)と(C)の総mol量)を基準に決定すればよく、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)の総mol量に対して、通常0.001~1当量、好ましくは0.005~0.5当量、より好ましくは0.005~0.1当量である。化合物(A)を0.005当量以上含有させることで、前記工程2をより円滑に進行させることができる。
【0058】
前記工程1におけるアルミニウムアルコキシド(B)の含有量は、シランカップリング剤(C)のmol量を基準に決定すればよく、シランカップリング剤(C)のmol量に対して、通常0.1~9当量、好ましくは0.2~4当量、より好ましくは0.4~2当量である。好ましい範囲の当量数、あるいはより好ましい範囲の当量数のアルミニウムアルコキシド(B)を使用することで、後述する(I)フィラーの分散安定性が高まり、硬化物(架橋物・樹脂)の硬度や熱伝導率等の諸物性をさらに向上させることができる。
【0059】
すなわち、前記工程1におけるアルミニウムアルコキシド(B)の含有量は、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)のmol比の割合が、通常1:10~9:1、好ましくは1:5~4:1、より好ましくは1:2.5~2:1となるように設定することが望ましい。
【0060】
前記工程1における水(D)の含有量は、アルミニウムアルコキシド(B)のmol量とシランカップリング剤(C)のmol量との和((B)と(C)の総mol量)を基準に決定すればよく、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)の総mol量に対して、通常0.01~3当量、好ましくは0.1~2当量、より好ましくは0.3~2当量である。好ましい範囲の当量数、あるいはより好ましい範囲の当量数の水(D)を使用することで、(B)や(C)中のヒドロキシル基の重縮合によるゲル化を抑制でき、ゾル化した状態で、反応をより容易に終了させ易くなる。
【0061】
前記工程1における縮合物(E)の含有量は、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)の使用量に依存する。すなわち、工程1において、使用したシランカップリング剤(C)の全量がアルミニウムアルコキシド(B)や水(D)と反応すれば、縮合物(E)中には、シランカップリング剤(C)のmol量と同じmol量のシリル基が存在する。一方で、使用したシランカップリング剤(C)が反応しきれずに、工程1を終了した後の反応系内にシランカップリング剤(C)が残存した場合等には、縮合物(E)中には、使用したシランカップリング剤(C)のmol量よりも少ないmol量のシリル基が存在する。
【0062】
前記工程2における化合物(H)の含有量は、シランカップリング剤(C)中のメルカプト基のmol量に対して、化合物(H)中の重合性不飽和基の当量数が下記の範囲となるように決定すればよい。すなわち、シランカップリング剤(C)中のメルカプト基のmol量に対して、化合物(H)中の重合性不飽和基の当量数が、通常0.1~2当量、好ましくは0.2~1.5当量、より好ましくは0.4~1.2当量となるように、化合物(H)の含有量を決定すればよい。好ましい範囲の当量数、あるいはより好ましい範囲の当量数から算出される化合物(H)を使用することで、得られる硬化物(架橋物・樹脂)の硬度、基材への密着性、耐有機溶剤性等の諸物性をさらに向上させることができる。
【0063】
前記工程2におけるフィラー(I)の含有量は、アルミニウムアルコキシド(B)の質量とシランカップリング剤(C)の質量との和((B)と(C)の総質量)を基準に決定すればよく、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)の総質量に対して、通常1~20倍量、好ましくは3~17倍量、より好ましくは5~15倍量である。好ましい範囲の量、あるいはより好ましい範囲の量のフィラー(I)を使用することで、得られる硬化物(架橋物・樹脂)の硬度や熱伝導率等の諸物性をさらに向上させることができる。
【0064】
前記工程1で(F)キレート剤を用いる場合、該キレート剤(F)の含有量は、アルミニウムアルコキシド(B)のmol量を基準に決定すればよく、アルミニウムアルコキシド(B)のmol量に対して、通常0.01~20当量、好ましくは0.05~10当量、より好ましくは0.1~8当量である。好ましい範囲の当量数、あるいはより好ましい範囲の当量数のキレート剤(F)を使用することで、前記工程1におけるゲル化を抑制できるため、操作性の改善とより効率的なゾル化促進が期待できる。
【0065】
前記工程2で(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を用いる場合、該化合物(J)の含有量は、シランカップリング剤(C)中のメルカプト基のmol量と化合物(H)中の重合性不飽和基のmol量を基準に、化合物(J)中のエポキシ基の当量数が下記の範囲となるように決定すればよい。すなわち、シランカップリング剤(C)中のメルカプト基のmol量から化合物(H)中の重合性不飽和基のmol量を差し引いたmol量(シランカップリング剤(C)中のメルカプト基のmol量-化合物(H)中の重合性不飽和基のmol量)に対して、化合物(J)中のエポキシ基の当量数が、通常0.2~2当量、好ましくは0.5~1.5当量、より好ましくは0.8~1.2当量となるように、化合物(J)の含有量を決定すればよい。好ましい範囲の当量数、あるいはより好ましい範囲の当量数から算出される化合物(J)を使用することで、得られる硬化物(架橋物・樹脂)の硬度、基材への密着性等の諸物性をさらに向上させることができる。
【0066】
前記工程2に係る光(活性エネルギー線)は、化合物(A)が感光して、塩基とラジカルの両方を発生できる波長の光(活性エネルギー線)であれば特に制限されないが、なかでも、光(活性エネルギー線)の主波長が100~780nmの範囲内にある光(活性エネルギー線)が好ましく、光(活性エネルギー線)の主波長が200~450nmの範囲内にある光(活性エネルギー線)がより好ましく、光(活性エネルギー線)の主波長が250~450nmの範囲内にある光(活性エネルギー線)がさらに好ましい。
【0067】
また、光(活性エネルギー線)の照射量としては、前記工程2の反応において、重縮合(ゲル化)とチオール-エン反応又はチオール-イン反応が進行し、硬化物(架橋物・樹脂)が得られれば、その照射量(積算露光量)は特に制限されないが、光(活性エネルギー線)の照射量(積算露光量)は、0.1J以上が好ましく、0.5J以上がより好ましく、1J以上がさらに好ましい。光(活性エネルギー線)の照射量(積算露光量)が、1J以上であれば、架橋密度の高い硬化物(架橋物・樹脂)が得られ、ひいては、より優れた耐溶剤性を有し、且つより高い硬度を有する硬化物(架橋物・樹脂)が得られる傾向にある。
【0068】
前記工程2に係る光(活性エネルギー線)の照射は、上述した範囲に主波長を有する光(活性エネルギー線)を適宜選択し、光(活性エネルギー線)の照射量(積算露光量)が、上述した照射量(積算露光量)以上となるような時間をかけて行えばよい。なお、光(活性エネルギー線)の照射は、上述した波長の光(活性エネルギー線)を照射できる一般的な露光装置を用いて行えばよい。
【0069】
前記工程2に係る熱は、化合物(A)が熱分解して、塩基とラジカルの両方を発生できる熱エネルギーであれば特に制限されないが、例えば、熱エネルギーを温度に換算すると、通常80~250℃、好ましくは100~200℃、より好ましくは120~180℃である。
【0070】
また、加熱時間としては、前記工程2の反応において、重縮合(ゲル化)とチオール-エン反応又はチオール-イン反応が進行し、硬化物(架橋物・樹脂)が得られれば、加熱時間は特に制限されないが、加熱時間は、通常0.1~180分、好ましくは0.5~120分、より好ましくは1~90分である。加熱時間が長くなるほど、架橋密度の高い硬化物(架橋物・樹脂)が得られ、ひいては、耐溶剤性に優れ、且つ高い硬度を有する硬化物(架橋物・樹脂)が得られる傾向にあるが、生産性が低下する傾向にあるため、加熱時間は上述の範囲内で行うことが望ましい。
【0071】
前記工程2に係る熱エネルギーの付与(加熱)は、上述した範囲の温度を適宜選択し、上述した範囲の加熱時間をかけて行えばよい。また、前記工程2を熱エネルギーの付与(加熱)のみで行う場合には、工程2を遮光条件で行うことが望ましい。なお、熱エネルギーの付与は、この分野で用いられる加熱装置を用いて行えばよい。
【0072】
前記工程1は、通常-20~60℃、好ましくは0~50℃、より好ましくは10℃~40℃の温度範囲で実施すればよい。このように、前記工程1は、穏和な条件で実施することができるので、優れた光又は熱硬化方法である。
【0073】
前記工程1及び工程2は、一連の工程が滞りなく行えるような圧力範囲で実施すればよく、特に制限されないが、一般的には常圧で実施すればよい。
【0074】
前記工程1及び工程2は、所望の架橋密度、硬度、基材への密着性、耐有機溶剤性等を有する硬化物(架橋物・樹脂)が得られるように、反応時間(前記工程1及び工程2の実施時間)を設定すればよい。反応時間は、前記工程1にあっては、化合物(A)、アルミニウムアルコキシド(B)及び水(D)の含有量、キレート剤(F)の有無、反応温度、ならびに圧力等により異なり、前記工程2にあっては、光(活性エネルギー線)の波長又は/及び照射量(積算露光量)、化合物(A)、化合物(H)及びフィラー(I)の含有量、加熱温度、圧力等により異なるため一概には言えないが、例えば、前記工程1の反応時間(前記工程1の実施時間)は、通常1分~24時間、好ましくは1分~12時間、より好ましくは1分~6時間であり、例えば、前記工程2の反応時間(前記工程2の実施時間)は、通常0.1~180分、好ましくは0.5~120分、より好ましくは0.5~90分である。
【0075】
本発明の光又は熱硬化方法を利用して硬化物(架橋物・樹脂)を得る方法の具体的手法を以下に説明する。まず、(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)アルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び(D)水、ならびに必要に応じて(F)キレート剤及び/又は有機溶剤を反応容器に添加して、該アルミニウムアルコキシド(B)と該シランカップリング剤(C)と水(D)とを所定時間反応させて、(E)アルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物((E)ゾル)を得る(工程1)。好ましくは、化合物(A)、アルミニウムアルコキシド(B)、及びシランカップリング剤(C)、ならびに必要に応じてキレート剤(F)及び/又は有機溶剤を含有する反応容器に水(D)を添加して、該アルミニウムアルコキシド(B)と該シランカップリング剤(C)と水(D)とを所定時間反応させて、縮合物(E)(ゾル(E))を得る(工程1)。次に、前記工程1で得られた縮合物(E)(ゾル(E))と化合物(A)を含有する組成物に、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物及び(I)フィラーを添加し、必要に応じて(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を添加した後、該組成物(硬化性樹脂組成物)に所定の波長の光(活性エネルギー線)を、所定の照射量(積算露光量)以上となるような時間で照射するか、あるいは所定の温度で所定の時間加熱して、化合物(A)から塩基とラジカルの両方を発生させる。塩基とラジカルを発生させて、縮合物(E)(ゾル(E))のゲル反応とチオール-エン反応又はチオール-イン反応を行うことで、硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる(工程2)。なお、上記組成物(硬化性樹脂組成物)は、種々の形状に成形させてもよく、例えば、該組成物(硬化性樹脂組成物)を金属基板等の適当な固体表面(基材)に塗布し、要すればベーク等の乾燥操作を行って塗布膜としてもよい。また、当該塗布膜に対して、所定の波長の光(活性エネルギー線)を、所定の照射量(積算露光量)以上となるような時間で照射するか、あるいは所定の温度で所定の時間加熱して、硬化物(架橋物・樹脂)を得てもよい。なお、本発明の光又は熱硬化方法を使用してパターンを形成する場合には、前記工程2における光(活性エネルギー線)照射を、適当なパターンマスクを介して行った後、適当な現像液を用いて現像処理を行うことで、適当なパターンを有する硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる。なお、前記工程1の段階で、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物及び(I)フィラーを添加しても差し支えない。以上のように、本発明の光又は熱硬化方法に係る工程1と工程2は、必ずしも連続して行う必要はなく、前記工程1と工程2の間で、例えば、上述したような塗布工程、ベーク工程、乾燥工程等を行ってもよいし、前記工程1と工程2を連続して行ってもよい。
【0076】
上述した塗布工程における塗布方法、ベーク工程におけるベーク方法、乾燥工程における乾燥方法、現像工程における現像処理方法等は、公知の方法を適宜採用すればよい。例えば、上記ベーク工程が有機溶剤等の乾燥工程であって、前記工程2の加熱(熱硬化)と区別される場合のベーク温度としては、通常50~250℃、好ましくは70~200℃、より好ましくは80~160℃であり、ベーク時間としては、通常0.1~60分、好ましくは0.5~30分、より好ましくは1~10分であり、例えば、上記ベーク工程が前記工程2の加熱(熱硬化)を兼ねる場合のベーク温度としては、通常80~250℃、好ましくは100~200℃、より好ましくは120~180℃であり、ベーク時間としては、通常0.1~180分、好ましくは0.5~120分、より好ましくは1~90分である。例えば、現像工程における現像処理方法としては、例えば、本発明の光又は熱硬化方法を利用して得られた硬化物(架橋物・樹脂)をアセトンやメチルエチルケトン等の有機溶媒に10秒~5分間浸漬する方法や、該硬化物(架橋物・樹脂)を水酸化カリウムやテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等を含むアルカリ水溶液に10秒~5分間浸漬する方法等が挙げられる。
【0077】
本発明の光又は熱硬化方法に係る、(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物とは、光(活性エネルギー線)又は熱に対して感受性を示す化合物である。より具体的には、化合物(A)は、光(活性エネルギー線)に対して感受性を示す基(感光基)又は熱エネルギーに対して感受性を示す基(熱分解性基)を有し、該感光基が光を吸収するか、該熱分解性基が熱を吸収することに起因して、ラジカルを発生できるカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基とを有するものである。このような化合物(A)の具体例としては、例えば、一般式[1]で示される化合物が挙げられる。
一般式[1]:
(式[1]中、R
1~R
8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又は一般式[2]で示される基を表し、R
9及びR
10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子又はニトロ基を表すか、あるいはR
9及びR
10が、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基を介して互いに結合していることを表す。ただし、R
1~R
8で示される基のうちの少なくとも1つは、一般式[2]で示される基を表す。)
一般式[2]:
(式[2]中、R
11及びR
12はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表し、Z
1
+は、アミジニウムカチオン、グアニジニウムカチオン又はビグアニジニウムカチオンを表す。)
【0078】
一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数1~12のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、なかでも、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、そのなかでも、炭素数1のアルキル基がさらに好ましい。また、該アルキル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、シクロウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基(ノルボルナン-χ-イル基)、ボルニル基(ボルナン-χ-イル基)、メンチル基(メンタ-χ-イル基)、アダマンチル基、デカヒドロナフチル基等が挙げられる。これらのアルキル基のなかでも、炭素数1~6の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましく、なかでも、炭素数1~4の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基がより好ましく、そのなかでも、メチル基が特に好ましい。
【0079】
一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数6~14のアリール基としては、単環式もしくは縮合多環式のいずれであってもよく、なかでも、炭素数6のアリール基が好ましい。このようなアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。これらのアリール基のなかでも、フェニル基が好ましい。
【0080】
一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数7~15のアリールアルキル基としては、単環式もしくは縮合多環式のいずれであってもよく、なかでも、炭素数7のアリールアルキル基が好ましい。このようなアリールアルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、フェニルプロピル基、1-メチルフェニルエチル基、フェニルブチル基、2-メチルフェニルプロピル基、テトラヒドロナフチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、インデニル基、フルオレニル基、アントラセニルメチル基(アントリルメチル基)、フェナントレニルメチル基(フェナントリルメチル基)等が挙げられる。これらのアリールアルキル基のなかでも、ベンジル基が好ましい。
【0081】
一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数1~12のアルコキシ基としては、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、なかでも、炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましく、そのなかでも、炭素数1のアルコキシ基がさらに好ましい。また、該アルコキシ基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、1-エチルプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、1-エチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec-ヘプチルオキシ基、tert-ヘプチルオキシ基、ネオヘプチルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、ネオオクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec-ノニルオキシ基、tert-ノニルオキシ基、ネオノニルオキシ基、シクロノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec-デシルオキシ基、tert-デシルオキシ基、ネオデシルオキシ基、シクロデシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、シクロウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロドデシルオキシ基、ノルボルニルオキシ基(ノルボルナン-χ-イルオキシ基)、ボルニルオキシ基(ボルナン-χ-イルオキシ基)、メンチルオキシ基(メンタ-χ-イルオキシ基)、アダマンチルオキシ基、デカヒドロナフチルオキシ基等が挙げられる。これらのアルコキシ基のなかでも、炭素数1~6の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルコキシ基が好ましく、なかでも、炭素数1~4の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルコキシ基がより好ましく、そのなかでも、メトキシ基が特に好ましい。
【0082】
一般式[1]におけるR1~R10で示されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、なかでも、フッ素原子及び塩素原子が好ましい。
【0083】
一般式[2]におけるR11~R12で示される炭素数1~6のアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、なかでも、炭素数1のアルキル基がより好ましい。また、該アルキル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらのアルキル基のなかでも、炭素数1~3の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましく、そのなかでも、メチル基がより好ましい。
【0084】
一般式[2]におけるR11~R12で示される炭素数1~6のヒドロキシアルキル基としては、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基が好ましく、なかでも、炭素数1のヒドロキシアルキル基がより好ましい。また、該ヒドロキシアルキル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよく、アルキル基に結合しているヒドロキシル基は、1個のみならず、2~4個等の複数個存在していてもよい。このようなヒドロキシアルキル基の具体例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1,2-ジヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシ-n-プロピル基、2-ヒドロキシ-n-プロピル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル基、1-ヒドロキシメチルエチル基、4-ヒドロキシ-n-ブチル基、5-ヒドロキシ-n-ペンチル基、6-ヒドロキシ-n-ヘキシル基等が挙げられる。これらのヒドロキシアルキル基のなかでも、炭素数1~3の直鎖状、分枝状もしくは環状のヒドロキシアルキル基が好ましく、そのなかでも、ヒドロキシメチル基がより好ましい。
【0085】
一般式[1]におけるR9及びR10が、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基を介して互いに結合しているとは、R9及びR10とで、-O-、-S-又は-C(=O)-で示される基を形成していることを意味する。
【0086】
一般式[1]におけるR9及びR10が、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子又はニトロ基である場合、あるいは、R9及びR10が、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合している場合には、一般式[2]で示される基は、R2、R4、R5及びR7のいずれかに結合していることが望ましい。すなわち、R9及びR10が、カルボニル基を介して互いに結合している場合には、一般式[2]で示される基は、R1~R8のいずれかに結合していればよいが、R9及びR10が、それ以外の基の場合には、一般式[2]で示される基は、R2、R4、R5及びR7のいずれかに結合していることが望ましい。
【0087】
一般式[1]におけるR1、R2、R4、R5及びR8としては、水素原子及び一般式[2]で示される基が好ましい。
【0088】
一般式[1]におけるR3及びR6としては、水素原子が好ましい。
【0089】
一般式[1]におけるR7としては、水素原子及び一般式[2]で示される基が好ましく、なかでも、水素原子がより好ましい。
【0090】
一般式[1]におけるR9及びR10としては、水素原子、あるいはR9及びR10が酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合していることが好ましく、なかでも、水素原子、あるいはR9及びR10が硫黄原子を介して互いに結合していることがより好ましい。
【0091】
一般式[2]におけるR11としては、水素原子及び炭素数1~6のアルキル基が好ましく、なかでも、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
【0092】
一般式[2]におけるR12としては、水素原子及び炭素数1~6のアルキル基が好ましく、なかでも、水素原子がより好ましい。
【0093】
一般式[1]で示される化合物(A)の好ましい具体例としては、例えば、一般式[1-A]~[1-C]で示される化合物が挙げられる。
一般式[1-A]:
(式[1-A]中、R
2a、R
4a、R
5a及びR
7aはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又は前記一般式[2]で示される基を表し、R
1a、R
3a、R
6a、R
8a、R
9a及びR
10aはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子又はニトロ基を表す。ただし、R
2a、R
4a、R
5a及びR
7aで示される基のうちの少なくとも1つは、前記一般式[2]で示される基を表す。)
一般式[1-B]:
(式[1-B]中、R
2b、R
4b、R
5b及びR
7bはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又は前記一般式[2]で示される基を表し、R
1b、R
3b、R
6b及びR
8bはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子又はニトロ基を表し、Y
1は、酸素原子又は硫黄原子を表す。ただし、R
2b、R
4b、R
5b及びR
7bで示される基のうちの少なくとも1つは、前記一般式[2]で示される基を表す。)
一般式[1-C]:
(式[1-C]中、R
1c~R
8cはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基又は前記一般式[2]で示される基を表す。ただし、R
1c~R
8cで示される基のうちの少なくとも1つは、前記一般式[2]で示される基を表す。)
【0094】
一般式[1-A]におけるR1a~R10a、一般式[1-B]におけるR1b~R8b及び一般式[1-C]におけるR1c~R8cで示される炭素数1~12のアルキル基の具体例としては、一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数1~12のアルキル基と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0095】
一般式[1-A]におけるR1a~R10a、一般式[1-B]におけるR1b~R8b及び一般式[1-C]におけるR1c~R8cで示される炭素数6~14のアリール基の具体例としては、一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数6~14のアリール基と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0096】
一般式[1-A]におけるR1a~R10a、一般式[1-B]におけるR1b~R8b及び一般式[1-C]におけるR1c~R8cで示される炭素数7~15のアリールアルキル基の具体例としては、一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数7~15のアリールアルキル基と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0097】
一般式[1-A]におけるR1a~R10a、一般式[1-B]におけるR1b~R8b及び一般式[1-C]におけるR1c~R8cで示される炭素数1~12のアルコキシ基の具体例としては、一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数1~12のアルコキシ基と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0098】
一般式[1-A]におけるR1a~R10a、一般式[1-B]におけるR1b~R8b及び一般式[1-C]におけるR1c~R8cで示されるハロゲン原子の具体例としては、一般式[1]におけるR1~R10で示されるハロゲン原子と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0099】
一般式[1-A]におけるR1a、R3a、R6a、R8a、R9a及びR10aとしては、水素原子が好ましい。
【0100】
一般式[1-A]におけるR2aとしては、一般式[2]で示される基が好ましい。
【0101】
一般式[1-A]におけるR4aとしては、水素原子及び一般式[2]で示される基が好ましい。
【0102】
一般式[1-A]におけるR5a及びR7aとしては、水素原子及び一般式[2]で示される基が好ましく、なかでも、水素原子がより好ましい。
【0103】
一般式[1-A]におけるR1a~R10aの好ましい組み合わせとしては、表1の<1>~<5>で示される組み合わせが挙げられる。
【0104】
【0105】
一般式[1-B]におけるR1b、R3b、R6b及びR8bとしては、水素原子が好ましい。
【0106】
一般式[1-B]におけるR2bとしては、一般式[2]で示される基が好ましい。
【0107】
一般式[1-B]におけるR4bとしては、水素原子及び一般式[2]で示される基が好ましい。
【0108】
一般式[1-B]におけるR5b及びR7bとしては、水素原子及び一般式[2]で示される基が好ましく、なかでも、水素原子がより好ましい。
【0109】
一般式[1-B]におけるY1としては、硫黄原子が好ましい。
【0110】
一般式[1-B]におけるY1及びR1b~R8bの好ましい組み合わせとしては、表2の<1>~<10>で示される組み合わせが挙げられる。
【0111】
【0112】
一般式[1-C]におけるR1c、R2c、R4c、R5c及びR8cとしては、水素原子及び一般式[2]で示される基が好ましい。
【0113】
一般式[1-C]におけるR3c及びR6cとしては、水素原子が好ましい。
【0114】
一般式[1-C]におけるR7cとしては、水素原子及び一般式[2]で示される基が好ましく、なかでも、水素原子がより好ましい。
【0115】
一般式[1-C]におけるR1c~R8cの好ましい組み合わせとしては、表3の<1>~<11>で示される組み合わせが挙げられる。
【0116】
【0117】
一般式[1-A]で示される化合物(A)の具体例としては、例えば、式[1-A1]~[1-A10]で示される化合物が挙げられる。
式[1-A1]~[1-A10]:
【0118】
一般式[1-B]で示される化合物(A)の具体例としては、例えば、式[1-B1]~[1-B12]で示される化合物が挙げられる。
式[1-B1]~[1-B12]:
【0119】
一般式[1-C]で示される化合物(A)の具体例としては、例えば、式[1-C1]~[1-C14]で示される化合物が挙げられる。
式[1-C1]~[1-C14]:
【0120】
化合物(A)としては、化合物(A)を製造する際の原料の入手容易性及び経済性の観点から、一般式[1-A]で示される化合物及び一般式[1-B]で示される化合物が好ましい。また、本発明の光又は熱硬化方法において、耐候助剤を用いる場合には、化合物(A)のなかでも、一般式[1-B]におけるY1が硫黄原子である化合物が好ましい場合がある。このような化合物は、350~450nmに主波長を有する光(活性エネルギー線)に対して感受性を示すため、光(活性エネルギー線)の吸収を耐候助剤に妨害されずに、重縮合(ゲル化)とチオール-エン反応又はチオール-イン反応を円滑に進行させることができる。
【0121】
一般式[1]における、一般式[2]中のZ
1
+で示されるカチオンは、「アミジニウムカチオン、グアニジニウムカチオン又はビグアニジニウムカチオン」のいずれかのカチオンを表し、なかでも、活性プロトンを有するカチオンが好ましい。このようなカチオンの具体例としては、例えば、一般式[3]で示される「アミジニウムカチオン」、一般式[4]で示される「グアニジニウムカチオン」、一般式[5]で示される「ビグアニジニウムカチオン」が挙げられる。
一般式[3]:
(式[3]中、R
13~R
17はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を表すか、あるいはR
13とR
17又は/及びR
15とR
16が、炭素数2~8のアルキレン基を介して互いに結合していることを表す。ただし、R
13~R
17で示される基のうちの少なくとも1つは、水素原子を表す。)
一般式[4]:
(式[4]中、R
18~R
23はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を表すか、あるいはR
18とR
23又は/及びR
19とR
20が、炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合していることを表す。ただし、R
18~R
23で示される基のうちの少なくとも1つは、水素原子を表す。)
一般式[5]:
(式[5]中、R
24~R
28及びR
31はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を表し、R
29及びR
30はそれぞれ独立して、水素原子;炭素数1~12のアルキル基;又は炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表すか、あるいはR
29とR
30が、炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合していることを表す。ただし、R
24~R
31で示される基のうちの少なくとも1つは、水素原子を表す。)
【0122】
一般式[3]におけるR13~R17で示される炭素数1~12のアルキル基の具体例としては、一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数1~12のアルキル基と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0123】
一般式[3]における「R13とR17又は/及びR15とR16が、炭素数2~8のアルキレン基を介して互いに結合している」場合の炭素数2~8のアルキレン基としては、炭素数3~5のアルキレン基が好ましい。また、該アルキレン基としては、直鎖状もしくは分枝状のいずれであってもよく、なかでも、直鎖状のものが好ましい。このようなアルキレン基の具体例としては、例えば、ジメチレン基(エチレン基)、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルジメチレン基(1,2-ジメチルエチレン基)、1,1-ジメチルジメチレン基(1,1-ジメチルエチレン基)、エチルジメチレン基(エチルエチレン基)、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。これらのアルキレン基のなかでも、炭素数3~5の直鎖状のアルキレン基である、トリメチレン基、テトラメチレン基及びペンタメチレン基が好ましい。
【0124】
一般式[3]において、「R13とR17が、炭素数2~8のアルキレン基を介して互いに結合している」場合には、該アルキレン基と、該アルキレン基に結合する-C-N-基とで、4~10員環の環状構造を形成する。
【0125】
上記環状構造の具体例としては、例えば、ピロリジン環(テトラメチレンイミン環)、2-メチルピロリジン環、3-メチルピロリジン環、ピペリジン環(ペンタメチレンイミン環)、2-メチルピペリジン環、3-メチルピペリジン環、4-メチルピペリジン環、ヘキサメチレンイミン環、ヘプタメチレンイミン環、オクタメチレンイミン環、ノナメチレンイミン環、デカメチレンイミン環等が挙げられる。これらの環状構造のなかでも、ピロリジン環(テトラメチレンイミン環)及びヘキサメチレンイミン環が好ましい。
【0126】
一般式[3]において、「R15とR16が、炭素数2~8のアルキレン基を介して互いに結合している」場合には、該アルキレン基と、該アルキレン基に結合する-N=C-N-基とで、5~11員環の環状構造を形成する。
【0127】
上記環状構造の具体例としては、例えば、イミダゾリン環、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環、4-メチルイミダゾリン環、5-メチルイミダゾリン環、1,3-ジアザ-2-シクロヘプテン環、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-メチルピリミジン環、1,4,5,6-テトラヒドロ-5-メチルピリミジン環、1,4,5,6-テトラヒドロ-6-メチルピリミジン環、4-エチルイミダゾリン環、5-エチルイミダゾリン環、4,4-ジメチルイミダゾリン環、4,5-ジメチルイミダゾリン環、5,5-ジメチルイミダゾリン環が挙げられる。これらの環状構造のなかでも、イミダゾリン環が好ましい。
【0128】
一般式[3]におけるR13及びR17としては、炭素数1~12のアルキル基、あるいはR13とR17が炭素数2~8のアルキレン基を介して互いに結合していることが好ましく、なかでも、R13とR17が炭素数2~8のアルキレン基を介して互いに結合していることがより好ましい。
【0129】
一般式[3]におけるR14としては、水素原子及び炭素数1~12のアルキル基が好ましく、なかでも、水素原子がより好ましい。
【0130】
一般式[3]におけるR15及びR16としては、炭素数1~12のアルキル基、あるいはR15とR16が炭素数2~8のアルキレン基を介して互いに結合していることが好ましく、なかでも、R15とR16が炭素数2~8のアルキレン基を介して互いに結合していることがより好ましい。
【0131】
一般式[3]においては、R13とR17及びR15とR16とが、ともに炭素数2~8のアルキレン基を介して結合していることが好ましい。すなわち、一般式[3]で示されるアミジニウムカチオンとしては、縮合環を形成しているカチオンが好ましい。
【0132】
一般式[4]におけるR18~R23で示される炭素数1~12のアルキル基の具体例としては、一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数1~12のアルキル基と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0133】
一般式[4]における「R18とR23又は/及びR19とR20が、炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合している」場合の炭素数2~4のアルキレン基としては、炭素数3のアルキレン基が好ましい。また、該アルキレン基としては、直鎖状もしくは分枝状のいずれであってもよく、なかでも、直鎖状のものが好ましい。このようなアルキレン基の具体例としては、例えば、ジメチレン基(エチレン基)、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルジメチレン基(1,2-ジメチルエチレン基)、1,1-ジメチルジメチレン基(1,1-ジメチルエチレン基)、エチルジメチレン基(エチルエチレン基)等が挙げられる。これらのアルキレン基のなかでも、トリメチレン基が好ましい。
【0134】
一般式[4]において、「R18とR23が、炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合している」場合には、該アルキレン基と、該アルキレン基に結合する-N-C-N-基とで、5~7員環の環状構造を形成する。
【0135】
上記環状構造の具体例としては、例えば、イミダゾリジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、4-メチルイミダゾリジン環、1,3-ジアザシクロヘプタン環、ヘキサヒドロ-4-メチルピリミジン環、ヘキサヒドロ-5-メチルピリミジン環、4-エチルイミダゾリジン環、4,4-ジメチルイミダゾリジン環、4,5-ジメチルイミダゾリジン環等が挙げられる。これらの環状構造のなかでも、ヘキサヒドロピリミジン環が好ましい。
【0136】
一般式[4]において、「R19とR20が、炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合している」場合には、該アルキレン基と、該アルキレン基に結合する-N-C=N-基とで、5~7員環の環状構造を形成する。
【0137】
上記環状構造の具体例としては、例えば、イミダゾリン環、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環、4-メチルイミダゾリン環、5-メチルイミダゾリン環、1,3-ジアザ-2-シクロヘプテン環、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-メチルピリミジン環、1,4,5,6-テトラヒドロ-5-メチルピリミジン環、1,4,5,6-テトラヒドロ-6-メチルピリミジン環、4-エチルイミダゾリン環、5-エチルイミダゾリン環、4,4-ジメチルイミダゾリン環、4,5-ジメチルイミダゾリン環、5,5-ジメチルイミダゾリン環等が挙げられる。これらの環状構造のなかでも、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環が好ましい。
【0138】
一般式[4]におけるR18及びR23としては、炭素数1~12のアルキル基、あるいはR18とR23が炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合していることが好ましい。
【0139】
一般式[4]におけるR19及びR20としては、炭素数1~12のアルキル基、あるいはR19とR20が炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合していることが好ましい。
【0140】
一般式[4]において、R18とR23が炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合している場合には、R19とR20は炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合していることが好ましい。すなわち、一般式[4]で示されるグアニジニウムカチオンとしては、R18とR23が互いに結合して環状構造を形成している場合には、R19とR20も互いに結合して環状構造を形成し、縮合環を形成しているカチオンが好ましい。
【0141】
一般式[4]におけるR21としては、水素原子及び炭素数1~12のアルキル基が好ましく、なかでも、水素原子がより好ましい。
【0142】
一般式[4]におけるR22としては、水素原子及び炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0143】
一般式[5]におけるR24~R31で示される炭素数1~12のアルキル基の具体例としては、一般式[1]におけるR1~R10で示される炭素数1~12のアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0144】
これらのアルキル基のうち、R24~R28及びR31で示されるアルキル基については、炭素数1~6の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましく、なかでも、炭素数1~4の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基がより好ましく、そのなかでも、メチル基が特に好ましい。これらの好ましい具体例としては、一般式[1]におけるR1~R10で示される好ましいアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0145】
また、R29及びR30で示されるアルキル基については、炭素数2~8の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましく、なかでも、炭素数3~6の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基がより好ましく、そのなかでも、炭素数3~6の分枝状もしくは環状のアルキル基が特に好ましい。
【0146】
一般式[5]におけるR24~R27としては、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、なかでも、R24~R27のすべてが、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましい。
【0147】
一般式[5]におけるR28及びR31としては、水素原子が好ましく、なかでも、R28及びR31の両方が、水素原子であることがより好ましい。
【0148】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における「置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」とは、置換基を有さない炭素数6~14のアリール基と置換基を有する炭素数6~14のアリール基の両方を含むことを意味する。
【0149】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数6~14のアリール基としては、単環式もしくは縮合多環式のいずれであってもよく、なかでも、炭素数6のアリール基が好ましい。このようなアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。これらのアリール基のなかでも、フェニル基が好ましい。なお、ここで示されるアリール基の炭素数は、該アリール基を構成する炭素数を意味し、置換基を構成する炭素数は、「炭素数6~14のアリール基」における「炭素数6~14」で示される炭素数には含まない。
【0150】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数1~6のアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。また、該アルキル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらのアルキル基のなかでも、炭素数1~3の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましい。
【0151】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数1~6のアルコキシ基としては、炭素数1~3のアルコキシ基が好ましい。また、該アルコキシ基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、1-エチルプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、1-エチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。これらのアルコキシ基のなかでも、炭素数1~3の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルコキシ基が好ましい。
【0152】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数1~6のアルキルチオ基としては、炭素数1~3のアルキルチオ基が好ましい。また、該アルキルチオ基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなアルキルチオ基の具体例としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、シクロブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、sec-ペンチルチオ基、tert-ペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、2-メチルブチルチオ基、1,2-ジメチルプロピルチオ基、1-エチルプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、イソヘキシルチオ基、sec-ヘキシルチオ基、tert-ヘキシルチオ基、ネオヘキシルチオ基、2-メチルペンチルチオ基、1,2-ジメチルブチルチオ基、2,3-ジメチルブチルチオ基、1-エチルブチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等が挙げられる。これらのアルキルチオ基のなかでも、炭素数1~3の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキルチオ基が好ましい。
【0153】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数2~12のジアルキルアミノ基としては、炭素数2~6のジアルキルアミノ基が好ましい。また、該ジアルキルアミノ基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなジアルキルアミノ基の具体例としては、例えば、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジ-n-プロピルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基、N,N-ジシクロプロピルアミノ基、N,N-ジ-n-ブチルアミノ基、N,N-ジイソブチルアミノ基、N,N-ジ-sec-ブチルアミノ基、N,N-ジ-tert-ブチルアミノ基、N,N-ジシクロブチルアミノ基、N,N-ジ-n-ペンチルアミノ基、N,N-ジイソペンチルアミノ基、N,N-ジ-sec-ペンチルアミノ基、N,N-ジ-tert-ペンチルアミノ基、N,N-ジネオペンチルアミノ基、N,N-ジ(2-メチルブチル)アミノ基、N,N-ビス(1,2-ジメチルプロピル)アミノ基、N,N-ジ(1-エチルプロピル)アミノ基、N,N-ジシクロペンチルアミノ基、N,N-ジ-n-ヘキシルアミノ基、N,N-ジイソヘキシルアミノ基、N,N-ジ-sec-ヘキシルアミノ基、N,N-ジ-tert-ヘキシルアミノ基、N,N-ジネオヘキシルアミノ基、N,N-ジ(2-メチルペンチル)アミノ基、N,N-ビス(1,2-ジメチルブチル)アミノ基、N,N-ビス(2,3-ジメチルブチル)アミノ基、N,N-ジ(1-エチルブチル)アミノ基、N,N-ジシクロヘキシルアミノ基、N,N-エチルメチルアミノ基、N,N-メチル-n-プロピルアミノ基、N,N-メチルイソプロピルアミノ基、N,N-メチルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-ブチルメチルアミノ基、N,N-イソブチルメチルアミノ基、N,N-sec-ブチルメチルアミノ基、N,N-tert-ブチルメチルアミノ基、N,N-シクロブチルメチルアミノ基、N,N-メチル-n-ペンチルアミノ基、N,N-n-ヘキシルメチルアミノ基、N,N-n-ヘプチルメチルアミノ基、N,N-メチル-n-オクチルアミノ基、N,N-メチル-n-ノニルアミノ基、N,N-n-デシルメチルアミノ基、N,N-メチル-n-ウンデシルアミノ基、N,N-エチル-n-プロピルアミノ基、N,N-エチルイソプロピルアミノ基、N,N-エチルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-ブチルエチルアミノ基、N,N-イソブチルエチルアミノ基、N,N-sec-ブチルエチルアミノ基、N,N-tert-ブチルエチルアミノ基、N,N-シクロブチルエチルアミノ基、N,N-エチル-n-ペンチルアミノ基、N,N-エチル-n-ヘキシルアミノ基、N,N-エチル-n-ヘプチルアミノ基、N,N-エチル-n-オクチルアミノ基、N,N-エチル-n-ノニルアミノ基、N,N-エチル-n-デシルアミノ基、N,N-n-プロピルイソプロピルアミノ基、N,N-n-プロピルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-ブチル-n-プロピルアミノ基、N,N-イソブチル-n-プロピルアミノ基、N,N-sec-ブチル-n-プロピルアミノ基、N,N-tert-ブチル-n-プロピルアミノ基、N,N-シクロブチル-n-プロピルアミノ基、N,N-n-ペンチル-n-プロピルアミノ基、N,N-n-ヘキシル-n-プロピルアミノ基、N,N-n-ヘプチル-n-プロピルアミノ基、N,N-n-オクチル-n-プロピルアミノ基、N,N-n-ノニル-n-プロピルアミノ基、N,N-イソプロピルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-ブチルイソプロピルアミノ基、N,N-イソブチルイソプロピルアミノ基、N,N-sec-ブチルイソプロピルアミノ基、N,N-tert-ブチルイソプロピルアミノ基、N,N-シクロブチルイソプロピルアミノ基、N,N-n-ペンチルイソプロピルアミノ基、N,N-n-ヘキシルイソプロピルアミノ基、N,N-n-ヘプチルイソプロピルアミノ基、N,N-n-オクチルイソプロピルアミノ基、N,N-n-ノニルイソプロピルアミノ基、N,N-n-ブチルシクロプロピルアミノ基、N,N-イソブチルシクロプロピルアミノ基、N,N-sec-ブチルシクロプロピルアミノ基、N,N-tert-ブチルシクロプロピルアミノ基、N,N-シクロブチルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-ペンチルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-ヘキシルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-ヘプチルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-オクチルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-ノニルシクロプロピルアミノ基、N,N-n-ブチルイソブチルアミノ基、N,N-n-ブチル-sec-ブチルアミノ基、N,N-n-ブチル-tert-ブチルアミノ基、N,N-n-ブチルシクロブチルアミノ基、N,N-n-ブチル-n-ペンチルアミノ基、N,N-n-ブチル-n-ヘキシルアミノ基、N,N-n-ブチル-n-ヘプチルアミノ基、N,N-n-ブチル-n-オクチルアミノ基、N,N-イソブチル-sec-ブチルアミノ基、N,N-イソブチル-tert-ブチルアミノ基、N,N-イソブチルシクロブチルアミノ基、N,N-イソブチル-n-ペンチルアミノ基、N,N-イソブチル-n-ヘキシルアミノ基、N,N-イソブチル-n-ヘプチルアミノ基、N,N-イソブチル-n-オクチルアミノ基、N,N-sec-ブチル-tert-ブチルアミノ基、N,N-sec-ブチルシクロブチルアミノ基、N,N-sec-ブチル-n-ペンチルアミノ基、N,N-sec-ブチル-n-ヘキシルアミノ基、N,N-sec-ブチル-n-ヘプチルアミノ基、N,N-sec-ブチル-n-オクチルアミノ基、N,N-tert-ブチルシクロブチルアミノ基、N,N-tert-ブチル-n-ペンチルアミノ基、N,N-tert-ブチル-n-ヘキシルアミノ基、N,N-tert-ブチル-n-ヘプチルアミノ基、N,N-tert-ブチル-n-オクチルアミノ基、N,N-シクロブチル-n-ペンチルアミノ基、N,N-シクロブチル-n-ヘキシルアミノ基、N,N-シクロブチル-n-ヘプチルアミノ基、N,N-シクロブチル-n-オクチルアミノ基、N,N-n-ヘキシル-n-ペンチルアミノ基、N,N-n-ヘプチル-n-ペンチルアミノ基等が挙げられる。これらのジアルキルアミノ基のなかでも、炭素数2~6の直鎖状、分枝状もしくは環状のジアルキルアミノ基が好ましい。
【0154】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、なかでも、フッ素原子及び塩素原子が好ましい。
【0155】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基」としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基が好ましく、なかでも、炭素数1~6のアルキル基及び炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましく、そのなかでも、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましい。
【0156】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数6~14のアリール基上の置換基の数としては、0(無置換)~9の整数が挙げられ、なかでも、0(無置換)~5の整数が好ましく、そのなかでも、0(無置換)~2の整数がより好ましい。
【0157】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数6~14のアリール基がフェニル基である場合、フェニル基上の置換基の置換位置は、2位~6位のいずれでもよく、なかでも、2位、4位又は6位が好ましく、そのなかでも、2位又は6位がより好ましい。
【0158】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数6~14のアリール基がナフチル基である場合、R29又はR30に結合する窒素原子のナフチル基上の結合位置は、1位又は2位のいずれでもよい。
【0159】
上記ナフチル基において、ナフチル基上の置換基の置換位置は、1位~8位のいずれでもよく、なかでも、1位~4位が好ましい。ただし、R29又はR30に結合する窒素原子との結合位置と重複しない。
【0160】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数6~14のアリール基がアントラセニル基である場合、R29又はR30に結合する窒素原子のアントラセニル基上の結合位置は、1位、2位又は9位のいずれでもよく、9位が好ましい。
【0161】
上記アントラセニル基において、R29又はR30に結合する窒素原子のアントラセニル基上の結合位置が1位又は2位の場合、アントラセニル基上の置換基の置換位置は、1位~10位のいずれでもよく、なかでも、1位~4位が好ましい。ただし、R29又はR30に結合する窒素原子との結合位置と重複しない。
【0162】
上述したアントラセニル基において、R29又はR30に結合する窒素原子のアントラセニル基上の結合位置が9位の場合、アントラセニル基上の置換基の置換位置は、1位~8位又は10位のいずれでもよく、なかでも、10位が好ましい。
【0163】
一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の置換基を有さない(無置換の)炭素数6~14のアリール基;例えば、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、2,6-ジ-n-プロピルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、1-(2-メチル)ナフチル基、2-(1-メチル)ナフチル基、9-(10-メチル)アントラセニル基等の炭素数1~6のアルキル基で置換されている(炭素数1~6のアルキル基を有する)炭素数6~14のアリール基;例えば、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、2,6-ジエトキシフェニル基、2,6-ジ-n-プロポキシフェニル基、2,6-ジイソプロポキシフェニル基、1-(2-メトキシ)ナフチル基、2-(1-メトキシ)ナフチル基、9-(10-メトキシ)アントラセニル基等の炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている(炭素数1~6のアルコキシ基を有する)炭素数6~14のアリール基;例えば、2-メチルチオフェニル基、3-メチルチオフェニル基、4-メチルチオフェニル基、2,4-ジメチルチオフェニル基、2,6-ジメチルチオフェニル基、2,4,6-トリメチルチオフェニル基、2,6-ジエチルチオフェニル基、2,6-ジ-n-プロピルチオフェニル基、2,6-ジイソプロピルチオフェニル基、1-(2-メチルチオ)ナフチル基、2-(1-メチルチオ)ナフチル基、9-(10-メチルチオ)アントラセニル基等の炭素数1~6のアルキルチオ基で置換されている(炭素数1~6のアルキルチオ基を有する)炭素数6~14のアリール基;例えば、2-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、3-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、2,4-ビス(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、2,6-ビス(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、2,4,6-トリス(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、2,6-ビス(N,N-ジエチルアミノ)フェニル基、2,6-ビス(N,N-ジ-n-プロピルアミノ)フェニル基、2,6-ビス(N,N-ジイソプロピルアミノ)フェニル基、1-[2-(N,N-ジメチルアミノ)]ナフチル基、2-[1-(N,N-ジメチルアミノ)]ナフチル基、9-[10-(N,N-ジメチルアミノ)]アントラセニル基等の炭素数2~12のジアルキルアミノ基で置換されている(炭素数2~12のジアルキルアミノ基を有する)炭素数6~14のアリール基;例えば、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、2,6-ジヨードフェニル基、1-(2-フルオロ)ナフチル基、2-(1-フルオロ)ナフチル基、9-(10-フルオロ)アントラセニル基等のハロゲン原子で置換されている(ハロゲン原子を有する)炭素数6~14のアリール基;例えば、2-ニトロフェニル基、3-ニトロフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基、2,6-ジニトロフェニル基、2,4,6-トリニトロフェニル基、1-(2-ニトロ)ナフチル基、2-(1-ニトロ)ナフチル基、9-(10-ニトロ)アントラセニル基等のニトロ基で置換されている(ニトロ基を有する)炭素数6~14のアリール基等が挙げられる。これらの炭素数6~14のアリール基のなかでも、置換基を有さない(無置換の)炭素数6~14のアリール基;炭素数1~6のアルキル基で置換されている(炭素数1~6のアルキル基を有する)炭素数6~14のアリール基;炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている(炭素数1~6のアルコキシ基を有する)炭素数6~14のアリール基;ハロゲン原子で置換されている(ハロゲン原子を有する)炭素数6~14のアリール基;及び、ニトロ基で置換されている(ニトロ基を有する)炭素数6~14のアリール基が好ましく、なかでも、置換基を有さない(無置換の)炭素数6~14のアリール基;炭素数1~6のアルキル基で置換されている(炭素数1~6のアルキル基を有する)炭素数6~14のアリール基;及び、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている(炭素数1~6のアルコキシ基を有する)炭素数6~14のアリール基がより好ましく、そのなかでも、置換基を有さない(無置換の)炭素数6~14のアリール基;及び、炭素数1~6のアルキル基で置換されている(炭素数1~6のアルキル基を有する)炭素数6~14のアリール基がさらに好ましい。なお、上述の具体例において、炭素数6~14のアリール基に置換する「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基及び炭素数2~12のジアルキルアミノ基」におけるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及びジアルキルアミノ基は、normal-体に限定されず、sec-体、tert-体、イソ体、ネオ体等の分枝状もしくはシクロ体等の環状のものも上述した具体例に含まれる。また、上述した置換基を構成する炭素数は、置換基ごとの炭素数を意味し、置換基が複数個存在する場合の総炭素数を意味しない。
【0164】
一般式[5]における「R29とR30が、炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合している」場合の炭素数2~4のアルキレン基としては、炭素数2のアルキレン基が好ましい。また、該アルキレン基としては、直鎖状もしくは分枝状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基の具体例としては、例えば、ジメチレン基(エチレン基)、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルジメチレン基(1,2-ジメチルエチレン基)、1,1-ジメチルジメチレン基(1,1-ジメチルエチレン基)、エチルジメチレン基(エチルエチレン基)等が挙げられる。これらのアルキレン基のなかでも、ジメチレン基(エチレン基)が好ましい。
【0165】
一般式[5]において、「R29とR30が、炭素数2~4のアルキレン基を介して互いに結合している」場合には、該アルキレン基と、該アルキレン基に結合する-N-C=N-基とで、5~7員環の環状構造を形成する。
【0166】
上記環状構造の具体例としては、例えば、イミダゾリン環、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環、4-メチルイミダゾリン環、5-メチルイミダゾリン環、1,3-ジアザ-2-シクロヘプテン環、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-メチルピリミジン環、1,4,5,6-テトラヒドロ-5-メチルピリミジン環、1,4,5,6-テトラヒドロ-6-メチルピリミジン環、4-エチルイミダゾリン環、5-エチルイミダゾリン環、4,4-ジメチルイミダゾリン環、4,5-ジメチルイミダゾリン環、5,5-ジメチルイミダゾリン環が挙げられる。これらの環状構造のなかでも、イミダゾリン環が好ましい。
【0167】
上述した一般式[3]で示されるアミジニウムカチオンの具体例としては、例えば、式[3-1]~[3-2]で示されるカチオンが挙げられる。
式[3-1]~[3-2]:
【0168】
上述した一般式[4]で示されるグアニジニウムカチオンの具体例としては、例えば、式[4-1]~[4-3]で示されるカチオンが挙げられる。
式[4-1]~[4-3]:
【0169】
上述した一般式[5]で示されるビグアニジニウムカチオンの具体例としては、例えば、式[5-1]~[5-7]で示されるカチオンが挙げられる。
式[5-1]~[5-7]:
【0170】
上述したZ1
+で示されるカチオンのなかでも、強塩基を発生できるビグアニジニウムカチオンが好ましい。このようなビグアニジニウムカチオンを有する化合物(A)は、強塩基であるビグアニドを発生できるため、本発明の光又は熱硬化方法において、所望の架橋密度、硬度、基材への密着性、耐有機溶剤性等を有する硬化物(架橋物・樹脂)が得られ易い。
【0171】
一般式[5]で示されるビグアニジニウムカチオンのなかでも、一般式[5']で示されるビグアニジニウムカチオンが好ましい。
一般式[5']:
(式[5']中、R
24'~R
28'及びR
31'はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
29'及びR
30'はそれぞれ独立して、炭素数2~8のアルキル基;又は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基を表す。ただし、R
24'~R
28'及びR
31'で示される基のうちの少なくとも1つは、水素原子を表す。)
【0172】
一般式[5']におけるR24'~R28'及びR31'で示される炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、一般式[5]におけるR24~R28及びR31で示される炭素数1~6のアルキル基と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0173】
一般式[5']におけるR24'~R27'としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0174】
一般式[5']におけるR28'及びR31'としては、水素原子が好ましく、なかでも、R28'及びR31'の両方が、水素原子であることがより好ましい。
【0175】
一般式[5']におけるR29'及びR30'で示される炭素数2~8のアルキル基の具体例としては、一般式[5]におけるR29及びR30で示される炭素数2~8のアルキル基と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0176】
一般式[5']におけるR29'及びR30'で示される「炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基」における「置換基を有していてもよいフェニル基」とは、置換基を有さないフェニル基と置換基を有するフェニル基の両方を含むことを意味する。
【0177】
一般式[5']におけるR29'及びR30'で示される「炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基」における炭素数1~3のアルキル基の具体例としては、一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数1~6のアルキル基の好ましい具体例である炭素数1~3のアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0178】
一般式[5']におけるR29'及びR30'で示される「炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基」における炭素数1~3のアルコキシ基の具体例としては、一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数1~6のアルコキシ基の好ましい具体例である炭素数1~3のアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
【0179】
一般式[5']におけるR29'及びR30'で示される「炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基」におけるハロゲン原子の具体例としては、一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」におけるハロゲン原子と同様のものが挙げられ、好ましい具体例も同様のものが挙げられる。
【0180】
一般式[5']におけるR29'及びR30'で示される「炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基」としては、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルコキシ基が好ましく、なかでも、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
【0181】
一般式[5']におけるR29'及びR30'で示される「炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基」におけるフェニル基上の置換基の数としては、0(無置換)~5の整数が挙げられ、なかでも、0(無置換)~2の整数が好ましい。
【0182】
一般式[5']におけるR29'及びR30'で示される「炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基」におけるフェニル基において、フェニル基上の置換基の置換位置としては、一般式[5]におけるR29及びR30で示される「炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基」における炭素数6~14のアリール基がフェニル基である場合におけるフェニル基上の置換基の置換位置と同様であり、好ましい置換位置、より好ましい置換位置も同様である。
【0183】
一般式[5']におけるR29'及びR30'で示される「炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基」の具体例としては、例えば、フェニル基等の置換基を有さない(無置換の)フェニル基;例えば、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、2,6-ジ-n-プロピルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基等の炭素数1~3のアルキル基で置換されている(炭素数1~3のアルキル基を有する)フェニル基;例えば、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、2,6-ジエトキシフェニル基、2,6-ジ-n-プロポキシフェニル基、2,6-ジイソプロポキシフェニル基等の炭素数1~3のアルコキシ基で置換されている(炭素数1~3のアルコキシ基を有する)フェニル基;例えば、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、2,6-ジヨードフェニル基等のハロゲン原子で置換されている(ハロゲン原子を有する)フェニル基;例えば、2-ニトロフェニル基、3-ニトロフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基、2,6-ジニトロフェニル基、2,4,6-トリニトロフェニル基等のニトロ基で置換されている(ニトロ基を有する)フェニル基等が挙げられる。これらのフェニル基のなかでも、置換基を有さない(無置換の)フェニル基;炭素数1~3のアルキル基で置換されている(炭素数1~3のアルキル基を有する)フェニル基;及び、炭素数1~3のアルコキシ基で置換されている(炭素数1~3のアルコキシ基を有する)フェニル基が好ましく、なかでも、置換基を有さない(無置換の)フェニル基;及び、炭素数1~3のアルキル基で置換されている(炭素数1~3のアルキル基を有する)フェニル基がより好ましい。なお、上述した置換基を構成する炭素数は、置換基ごとの炭素数を意味し、置換基が複数個存在する場合の総炭素数を意味しない。例えば、2,6-ジイソプロピルフェニル基及び2,6-ジイソプロポキシフェニル基を例に挙げると、これらは、炭素数3のアルキル基又はアルコキシ基で置換されている(炭素数3のアルキル基又はアルコキシ基を有する)フェニル基に該当するが、イソプロピル基又はイソプロポキシ基を2つ有しているため、置換基の総炭素数としては6となる。
【0184】
一般式[5']におけるR29'及びR30'としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0185】
上述した一般式[5']で示されるビグアニジニウムカチオンの具体例としては、例えば、前記式[5-1]~[5-5]及び式[5-7]で示されるカチオンが挙げられる。
【0186】
ビグアニジニウムカチオンのなかでも、一般式[5']で示されるビグアニジニウムカチオンを有する化合物(A)は、本発明の光又は熱硬化方法における光(活性エネルギー線)の照射において、露光部(光を照射した部分)と未露光部(光を照射していない部分)とのコントラスト比をより高くできる。
【0187】
上述した一般式[5']で示されるビグアニジニウムカチオンを有する化合物(A)の具体例としては、例えば、式[1-1]~[1-7]で示される化合物が挙げられる。
式[1-1]~[1-7]:
【0188】
本発明の光又は熱硬化方法に係る化合物(A)は、市販のものや、例えば、国際公開第2014/208632号、Macromolecules 2012, 45, 2219-2224.、J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 7996-8002.、J. Org. Chem., 2002, 67, 2, 541-555.等に記載の公知の方法によって適宜合成したものを用いればよい。これらの化合物(A)の製造方法の具体例としては、例えば、チオサリチル酸誘導体とm-フェニレンジ酢酸誘導体を硫酸中で反応させてスルフィドとし、引き続き、加熱条件下で反応させることにより、Friedel-Craftsアシル化型の脱水閉環反応が進行し、チオキサントン環上に酢酸ユニットを2つ有する化合物を合成する。また、別法として、ベンゾフェノン環、キサントン環、チオキサントン環又はアントラキノン環上の芳香環を構成する炭素原子上に、1又は複数のハライドを有する化合物に対して、マロン酸エステル、パラジウム触媒、ホスフィンリガンド及び塩基(例えば、リン酸三カリウム等)を加えて、トルエン中、加熱条件下で反応させることにより、芳香環のハライドの位置にマロン酸ユニットを選択的に導入した化合物を合成する。次いで、得られたマロン酸エステル誘導体に、必要に応じて様々な塩基と求電子剤(例えばアルキルハライド、アルデヒド等)を反応させることにより炭素鎖を導入した後、マロン酸エステルを加水分解する。さらに、これらの化合物に対し、一般式[2]におけるZ1
+の元となる、アミジン、グアニジン又はビグアニドから選ばれる塩基を反応させて塩を形成させることにより合成することができる。
【0189】
本発明の光又は熱硬化方法に係る化合物(A)は、塩基発生剤やラジカル発生剤として作用するだけでなく、工程1における触媒(アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)との反応促進剤)としても作用する。工程1において、化合物(A)が触媒として作用した場合における活性化体の推定構造の一例を以下に示す。
一般式[G-1]~[G-2]:
(式[G-1]~[G-2]中、R
1、R
3~R
10及びR
24~R
30は、前記に同じ。)
【0190】
本発明の光又は熱硬化方法に係るアルミニウムアルコキシド(B)とは、本発明の光又は熱硬化方法において、(E)アルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物((E)ゾル)の原料となるものであって、水(D)の存在下で、シランカップリング剤(C)と縮合反応(ゾル化)を生じさせる少なくとも1つのアルコキシ基を有するアルミニウム化合物である。
【0191】
このようなアルミニウムアルコキシド(B)の具体例としては、例えば、一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシドが挙げられる。
一般式[6]:
(式[6]中、3つのR
32はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R
32で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0192】
一般式[6]におけるR32で示される炭素数1~4のアルキル基としては、炭素数2~4のアルキル基が好ましく、なかでも、炭素数3~4のアルキル基がより好ましく、そのなかでも、炭素数4のアルキル基が特に好ましい。また、該アルキル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよく、なかでも、分枝状のものが好ましい。このようなアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。これらのアルキル基のなかでも、炭素数2~4の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましく、そのなかでも、炭素数3~4の分枝状のアルキル基がより好ましく、sec-ブチル基が特に好ましい。
【0193】
一般式[6]におけるR32としては、3つのR32のうち、少なくとも2つのR32が、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、なかでも、3つのR32のすべてが、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましい。
【0194】
一般式[6]で示されるアルミニウムアルコキシド(B)の具体例としては、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ-n-プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリシクロプロポキシド、アルミニウムトリ-n-ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド、アルミニウムトリ-tert-ブトキシド、アルミニウムトリシクロブトキシド等が挙げられる。これらのアルミニウムアルコキシドのなかでも、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドが、大気中での加水分解が起こりにくく、液状で扱いやすいという点で好ましい。なお、これらのアルミニウムアルコキシド(B)は、1種類のアルミニウムアルコキシドを単独で用いてもよいし、2種以上のアルミニウムアルコキシドを組み合わせて用いてもよい。
【0195】
本発明の光又は熱硬化方法に係るシランカップリング剤(C)とは、本発明の光又は熱硬化方法において、(E)アルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムと、メルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物((E)ゾル)の原料となるものであって、水(D)の存在下で、シランカップリング剤(C)と縮合反応(ゾル化)を生じさせる少なくとも1つのアルコキシシリル基と、チオール-エン反応又はチオール-イン反応を生じさせる少なくとも1つのメルカプト基を有するシランカップリング剤である。
【0196】
このようなシランカップリング剤(C)の具体例としては、例えば、一般式[7]で示されるシランカップリング剤が挙げられる。
一般式[7]:
(式[7]中、3つのR
33はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、R
34は、少なくとも1つのメルカプト基を有する炭素数1~8のアルキル基を表す。ただし、R
33で示される基のうちの少なくとも1つは、炭素数1~4のアルコキシ基を表す。)
【0197】
一般式[7]におけるR33で示される炭素数1~4のアルキル基としては、炭素数1のアルキル基が好ましい。また、該アルキル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。これらのアルキル基のなかでも、メチル基が好ましい。
【0198】
一般式[7]におけるR33で示される炭素数1~4のアルコキシ基としては、炭素数1~2のアルコキシ基が好ましい。また、該アルコキシ基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロブトキシ基等が挙げられる。これらのアルコキシ基のなかでも、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
【0199】
一般式[7]におけるR33としては、3つのR33のうち、少なくとも2つのR33が、炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましく、なかでも、3つのR33のすべてが、炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0200】
一般式[7]におけるR34で示される「少なくとも1つのメルカプト基を有する炭素数1~8のアルキル基」における炭素数1~8のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、なかでも、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。また、該アルキル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基(ノルボルナン-χ-イル基)等が挙げられる。これらのアルキル基のなかでも、炭素数1~6の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましく、そのなかでも、炭素数1~4の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基がより好ましい。
【0201】
一般式[7]におけるR34で示される「少なくとも1つのメルカプト基を有する炭素数1~8のアルキル基」におけるメルカプト基(チオール基)は、アルキル基の鎖中又は/及び末端に結合しており、その結合位置は限定されない。また、該メルカプト基(チオール基)は、少なくとも1つ結合していればよく、例えば、2~4個等の複数個のメルカプト基(チオール基)がアルキル基に結合していてもよい。
【0202】
一般式[7]で示されるシランカップリング剤(C)の具体例としては、例えば、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリプロポキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリブトキシシラン、1,4-ジメルカプト-2-(トリメトキシシリル)ブタン、1,4-ジメルカプト-2-(トリエトキシシリル)ブタン、1,4-ジメルカプト-2-(トリプロポキシシリル)ブタン、1,4-ジメルカプト-2-(トリブトキシシリル)ブタン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリメトキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリエトキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリプロポキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリブトキシシラン、3-メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤のなかでも、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン及び3-メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシランが、加水分解及び重縮合の反応性に優れるという点で好ましい。なお、これらのシランカップリング剤(C)は、1種類のシランカップリング剤を単独で用いてもよいし、2種以上のシランカップリング剤を組み合わせて用いてもよい。
【0203】
本発明の光又は熱硬化方法に係る水(D)とは、工程1において、アルミニウムアルコキシド(B)を加水分解したり、シランカップリング剤(C)中のアルコキシシリル基を加水分解するなどの目的で使用される。このような水(D)としては、通常この分野において使用される水であれば特に限定されず、具体的には、例えば、蒸留水、脱イオン水等の精製水等が挙げられる。
【0204】
上記水(D)は、大気中の水分やフィラー(I)に含まれる水に由来するものであってもよい。前記工程1を進行させるために必要な水(D)が、大気中の水分やフィラー(I)に含まれる水から賄える場合には、いわゆる液状の水の添加を要しない場合もある。
【0205】
本発明の光又は熱硬化方法に係る(E)アルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物とは、工程1において、化合物(A)の存在下、水(D)の作用によって、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)とから得られる縮合物であり、その構造中に、主骨格として、Si-O-Alの構成単位又Si-O-Siの構成単位を含んでいる。
【0206】
また、縮合物(E)は、第2工程において、化合物(H)やフィラー(I)と反応し得るものであり、流動性を持ったゾルの状態である。故に、アルミニウムアルコキシド(B)中の全てのアルコキシ基とシランカップリング剤(C)中の全てのアルコキシ基に対応する、縮合物(E)中のヒドロキシル基又はアルコキシ基が、通常10~90%、好ましくは30~70%残存していることが望ましい。
【0207】
縮合物(E)は、アルミニウムアルコキシド(B)由来の構成単位とシランカップリング剤(C)由来の構成単位とが、mol比で、通常1:10~9:1、好ましくは1:5~4:1、より好ましくは1:2.5~2:1の割合で構成されていることが望ましい。
【0208】
縮合物(E)は、その構造中に、シランカップリング剤(C)由来のメルカプト基を有しており、該メルカプト基が、化合物(H)中の重合性不飽和基と反応する。また、縮合物(E)中のメルカプト基のmol量は、シランカップリング剤(C)中のメルカプト基のmol数に依存し、例えば、シランカップリング剤(C)中に1つのメルカプト基を有している場合では、シランカップリング剤(C)の全量が縮合物(E)に変換されたと仮定すると、縮合物(E)中には、使用したシランカップリング剤(C)のmol数と同mol数のメルカプト基が存在する。また、例えば、シランカップリング剤(C)中に2つのメルカプト基を有している場合では、シランカップリング剤(C)の全量が縮合物(E)に変換されたと仮定すると、縮合物(E)中には、使用したシランカップリング剤(C)のmol数に対し、2倍のmol数のメルカプト基が存在する。
【0209】
縮合物(E)は、その構造中に、アルミニウムアルコキシド(B)及びシランカップリング剤(C)由来のヒドロキシル基又はアルコキシ基を有しており、該ヒドロキシル基又は該アルコキシ基が、フィラー(I)や金属基板の表面に微量に存在するヒドロキシル基と反応する。
【0210】
本発明の光又は熱硬化方法に係る(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物とは、工程1で得られた縮合物(E)中のメルカプト基と反応して硬化物(架橋物・樹脂)を得るための原料となるものであって、チオール-エン反応又はチオール-イン反応を生じさせる2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物である。
【0211】
このような化合物(H)としては、通常この分野で一般的に用いられる化合物が挙げられ、例えば、特開2007-291313号公報、特開2014-28938号公報等に記載の化合物の他;例えば、ジアリルヘキサヒドロフタレート、ジアリルクロレンデート、ジアリルジフェニルシラン等のアリル基を2つ有する化合物;例えば、シアヌル酸トリアリル(2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジン)、トリメリット酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル等のアリル基を3つ有する化合物;例えば、ピロメリット酸テトラアリル等のアリル基を4つ以上有する化合物等の多官能アリル化合物;例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAEO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFEO変性ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を2つ有する化合物;例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールEO変性テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を3~6つ有する化合物等の多官能(メタ)アクリル化合物;例えば、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、イソプレン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、ジシクロペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,4-ヘプタジエン、1,5-ヘプタジエン、1,6-ヘプタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,11-ドデカジエン、1,12-トリデカジエン、1,13-テトラデカジエン、テトラアリルオキシエタン、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、3,3'-ジビニルビフェニル、3,4'-ジビニルビフェニル、4,4'-ジビニルビフェニル、4,4'-ジイソプロペニルビフェニル、2,6-ジイソプロペニルナフタレン、1,2-ビス(ビニルフェニル)エタン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,6-ヘキサンジオールビス(5-ノルボルネンカルボキシレート)、ペンタエリスリトールテトラ(5-ノルボルネンカルボキシレート)、1,3-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、プロピレングリコールビスマレイミドアセテート、ビス[N-(2-エチル)マレイミド]ヘキサメチレンカルバメート、ポリエーテル系ビスマレイミド酢酸エステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサン、2-ビニルオキシ-5-(ビニルオキシメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3-ビニルオキシ-5-(ビニルオキシメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン等のアリル化合物及び(メタ)アクリル化合物以外の多官能オレフィン化合物;例えば、1,6-ヘプタジイン、1,7-オクタジイン、1,8-ノナジイン、1,9-デカジイン、ジプロパルギルアミン、ジエチレングリコールビス(2-プロピニル)エーテル、エチレングリコール-1,2-ビス(2-プロピニル)エーテル、1,3-ジエチニルベンゼン、1,4-ジエチニルベンゼン、1,3-ビス(2-プロピニルオキシ)ベンゼン、3,5-ビス(プロパルギルオキシ)ベンジルアルコール、ビスフェノールAジプロパルギルエーテル、ビスフェノールEジプロパルギルエーテル、4,4'-ジエチニルビフェニル、2,6-ジエチニルナフタレン、9,10-ジエチニルアントラセン、3,6-ジエチニルカルバゾール等のアルキニル基を2つ有する化合物;例えば、トリプロパルギルアミン、1,3,5-トリアルキニルベンゼン、2,4,6-トリス(プロピニル-2-オキシ)-1,3,5-トリアジン等のアルキニル基を3つ有する化合物;例えば、テトラキス(4-エチニルフェニル)メタン等のアルキニル基を4つ以上有する化合物等の多官能アルキニル化合物等が挙げられる。これらの化合物(H)のなかでも、例えば、シアヌル酸トリアリル(2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジン)、トリメリット酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル等のアリル基を3つ有する化合物;例えば、ピロメリット酸テトラアリル等のアリル基を4つ以上有する化合物等の3官能以上のアリル化合物;及び、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールEO変性テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を3~6つ有する化合物等の3官能以上の(メタ)アクリル化合物が好ましく、そのなかでも、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールEO変性テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を3~6つ有する(メタ)アクリル化合物が、架橋密度の高い架橋物を得ることができるという点でより好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、これらの化合物(H)は、1種類の化合物(H)を単独で用いてもよいし、2種以上の化合物(H)を組み合わせて用いてもよい。
【0212】
本発明の光又は熱硬化方法に係る(I)フィラーとは、工程1で得られた縮合物(E)中のヒドロキシル基又はアルコキシ基と反応して、得られる硬化物(架橋物・樹脂)に種々の特性を付与するための原料となるものである。
【0213】
このようなフィラー(I)の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、銀等の金属;例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化鉄、フェライト、酸化銅、亜酸化銅、酸化亜鉛等の金属酸化物;例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト等の金属水酸化物等の無機フィラー;例えば、炭化ケイ素等の金属炭化物;例えば、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;例えば、黒鉛、炭素、カーボンブラック、ダイヤモンド等の絶縁性炭素材料等の有機フィラー等が挙げられる。これらのフィラー(I)のなかでも、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)等の金属酸化物や、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物等の熱伝導性フィラーが、電気絶縁性が高く、熱伝導性の高い硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができるという点で好ましく、なかでも、窒化アルミニウムがより好ましい。これらのフィラー(I)は、球状、粉末状、ガラス状、繊維(ファイバー)状、フレーク状、箔状、バルーン状、毬藻状等のいずれの形状であってもよい。なお、これらのフィラー(I)は、1種類のフィラー(I)を単独で用いてもよいし、2種以上のフィラー(I)を組み合わせて用いてもよい。本発明の電子回路形成用熱伝導性基板は、本発明の第1又は第2の樹脂組成物から得られる硬化物(架橋物・樹脂)を有することを特徴とするものであり、フィラー(I)として熱伝導性フィラーを用いることで、熱伝導性に優れる基板となり得る。
【0214】
フィラー(I)の粒子径は、通常この分野で一般的に用いられている粒子径であれば特に制限なく使用することができる。具体的には、フィラー(I)の平均粒子径(メジアン径)は、通常0.1~50μm、好ましくは0.2~30μm、より好ましくは0.5~20μmである。好ましい範囲の平均粒子径を有するフィラー(I)、あるいはより好ましい範囲の平均粒子径を有するフィラー(I)を使用することで、得られる硬化物(架橋物・樹脂)の硬度や熱伝導率等の諸物性をさらに向上させることができる。また、平均粒子径の異なる2種のフィラー(I)を併用すると、得られる硬化物(架橋物・樹脂)の熱伝導性が高くなる傾向がある。2種のフィラー(I)のうち、1種のフィラー(I-A)の平均粒子径(メジアン径)としては、通常5~50μm、好ましくは7~30μm、より好ましくは10~20μmであり、もう1種のフィラー(I-B)の平均粒子径(メジアン径)としては、通常0.1~3μm、好ましくは0.2~2μm、より好ましくは0.5~1.8μmである。熱伝導性の高い硬化物(架橋物・樹脂)が求められる場合には、フィラー(I-A)とフィラー(I-B)を、質量基準で、通常1:10~10:1、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:3~3:1の割合で併用することが望ましい場合がある。なお、フィラー(I)は、その表面に加水分解を抑制する表面処理が施してあってもよい。
【0215】
本発明の光又は熱硬化方法において、必要に応じて用いられる(F)キレート剤とは、工程1において、アルミニウムアルコキシド(B)と錯体を形成して、シランカップリング剤(C)同士の反応を促進、又はアルミニウムアルコキシド(B)(の錯体)とシランカップリング剤(C)との反応を促進させる化合物である。
【0216】
このようなキレート剤(F)の具体例としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、2-(2-チオキサンテニル)ジエチルマロン酸、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、乳酸エチル等が挙げられる。なお、これらのキレート剤(F)は、1種類のキレート剤(F)を単独で用いてもよいし、2種以上のキレート剤(F)を組み合わせて用いてもよい。
【0217】
本発明の光又は熱硬化方法において、必要に応じて用いられる(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物とは、工程2において、化合物(A)から発生する塩基を直接的又は間接的に介して、シランカップリング剤(C)のメルカプト基と反応するか、又は化合物(J)同士が反応(連鎖重合)して、得られる硬化物(架橋物・樹脂)の硬度や基材への密着性を向上させるための原料となるものであり、構造中に、少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物である。
【0218】
このような化合物(J)の具体例としては、例えば、ジグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリ-1,3-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビフェニルジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ-1,3-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、シアヌル酸トリグリシジル(2,4,6-トリ(グリシジルオキシ)-1,3,5-トリアジン)、イソシアヌル酸トリグリシジル等が挙げられる。これらの化合物(J)は、ハロゲン化されていてもよいし、水素添加されていてもよい。また、これらの化合物(J)は、上述した具体例の誘導体も含まれる。なお、これらの化合物(J)は、1種類の化合物(J)を単独で用いてもよいし、2種以上の化合物(J)を組み合わせて用いてもよい。
【0219】
本発明の光又は熱硬化方法おいて、必要に応じて用いられる有機溶剤としては、通常この分野で一般的に用いられる有機溶剤であれば特に制限はない。このような有機溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、テトラヒドロナフタレン、メンタン、スクワラン等の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素系溶剤;例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、スチレン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)等のハロゲン系溶剤;例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶剤;例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、2-メトキシエタノール等のアルコール系溶剤;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート系溶剤;例えば、2-プロパノン(アセトン)、2-ブタノン(エチルメチルケトン)、ジエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン(メチルイソブチルケトン)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等のケトン系溶剤;例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸-sec-ブチル、酢酸-tert-ブチル、酪酸エチル、酪酸イソアミル、乳酸エチル(EL)、乳酸-n-プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸イソブチル、乳酸-sec-ブチル、乳酸-tert-ブチル、乳酸イソアミル、γ-ブチロラクトン、ステアリン酸ブチル等のエステル系溶剤;例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(ジメチルエチレン尿素)等のアミド系溶剤;例えば、アセトニトリル等のニトリル系溶剤等が挙げられる。なお、これらの有機溶剤は、1種類の有機溶剤を単独で用いてもよいし、2種以上の有機溶剤を組み合わせて用いてもよい。
【0220】
工程1又は/及び工程2において、有機溶剤を含有する場合における該有機溶剤の含有量(使用量)は、例えば、(A)~(F)、(H)及び(I)の相溶性を高めたり、工程1で得られる縮合物(E)(ゾル(E))の基材への塗布性を向上させる等の目的に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、該有機溶剤の含有量(使用量)としては、例えば、フィラー(I)1gに対して、通常0.01~10gである。
【0221】
本発明の光又は熱硬化方法おいて、キレート剤(F)や化合物(J)等の添加剤の他に、必要に応じて用いられる添加剤としては、例えば、重合禁止剤、増感剤、分散剤、分散助剤、シランモノマー、耐候助剤、顔料、染料、硬化促進剤・連鎖移動触媒、酸素除去剤・還元剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面改質剤、発泡剤、消泡剤、pH調整剤、カブリ防止剤、界面活性剤、着色剤、退色防止剤、蛍光増白剤、ハレーション防止剤、増量剤、可塑剤、可塑促進剤、難燃剤、紫外線吸収剤、防カビ剤、帯電防止剤、タレ防止剤、磁性体等が挙げられる。また、これらの添加剤は、通常この分野で一般的に用いられるものであれば特に制限なく使用することができる。
【0222】
重合禁止剤の好ましい具体例としては、例えば、p-メトキシフェノール、ヒドロキノン、アルキル置換ヒドロキノン、カテコール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、クペロン、アンモニウム N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリフェニルホスホネート、ピロガロール等が挙げられる。
【0223】
増感剤の好ましい具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、p,p'-テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p'-テトラエチルジアミノベンゾフェノン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-トリフルオロメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、アントロン、ベンズアントロン、アントラセン、9-エトキシアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、アセナフテン、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-エチルアントラキノン、ベンゾキノン等が挙げられる。
【0224】
分散剤の好ましい具体例としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等のポリエーテル、ポリアルキレンポリアミン、ポリアルキレンスルホン酸等の高分子系分散剤等が挙げられる。
【0225】
シランモノマーの好ましい具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アリルトリブトキシシラン等が挙げられる。
【0226】
添加剤の含有量については、目的とする硬化物(架橋物・樹脂)が得られるように適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、分散剤の含有量(使用量)としては、例えば、アルミニウムアルコキシド(B)の質量とシランカップリング剤(C)の質量との和((B)と(C)の総質量)1gに対して、通常0.001~0.1g、好ましくは0.005~0.05gである。なお、これらの添加剤は、1種類の添加剤を単独で用いてもよいし、2種以上の添加剤を組み合わせて用いてもよい。
【0227】
本発明の光又は熱硬化方法に係るアルミニウムアルコキシド(B)、シランカップリング剤(C)、水(D)、化合物(H)及びフィラー(I)、ならびに任意成分である、キレート剤(F)、化合物(J)、有機溶剤及び添加剤等は、市販のもの、あるいは公知の方法によって適宜合成したものを用いればよい。
【0228】
-本発明の硬化性樹脂組成物(本発明の第1の樹脂組成物)-
本発明の硬化性樹脂組成物(第1の樹脂組成物)は、(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(B)アルミニウムアルコキシド、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーを含有し、さらに(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を含有していてもよい、硬化性樹脂組成物である。
【0229】
-本発明の硬化性樹脂組成物(本発明の第2の樹脂組成物)-
本発明の硬化性樹脂組成物(第2の樹脂組成物)は、(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物、(E)アルミニウムアルコキシド由来のアルミニウムとメルカプト基を有するシランカップリング剤由来のシランから得られる、Si-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び(I)フィラーを含有し、さらに(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を含有していてもよい、硬化性樹脂組成物である。
【0230】
本発明の硬化性樹脂組成物(本発明の第1及び第2の樹脂組成物)には、上述した成分以外に、例えば、(F)キレート剤、有機溶剤、添加剤等を含有してもよい。
【0231】
本発明の硬化性樹脂組成物(本発明の第1及び第2の樹脂組成物)における、化合物(A)、アルミニウムアルコキシド(B)、シランカップリング剤(C)、キレート剤(F)、化合物(H)、フィラー(I)及び化合物(J)の各成分、ならびに有機溶剤、添加剤等の具体例は、上述したとおりである。
【0232】
本発明の硬化性樹脂組成物(本発明の第1及び第2の樹脂組成物)における、化合物(A)、アルミニウムアルコキシド(B)、シランカップリング剤(C)、キレート剤(F)、化合物(H)、フィラー(I)及び化合物(J)の各成分、ならびに有機溶剤、添加剤等の含有量も、上述したとおりである。
【0233】
本発明の第1の樹脂組成物は、例えば、以下の方法によって調製することができる。アルミニウムアルコキシド(B)に、要すればキレート剤(F)を添加した後、化合物(A)及びシランカップリング剤(C)を加えてマグネチックスターラー等で攪拌する。得られた混合物を、フィラー(I)並びに要すれば有機溶剤及び添加剤を含む混合物に添加して自転公転ミキサー等で混練する。次いで、得られたスラリーに、化合物(H)及び要すれば化合物(J)を加えて自転公転ミキサー等で混練することによって、本発明の第1の樹脂組成物を調製することができる。また、本発明の第1の樹脂組成物は、化合物(A)、アルミニウムアルコキシド(B)、シランカップリング剤(C)及びキレート剤(F)を含有する混合物を、化合物(H)、フィラー(I)、化合物(J)、有機溶剤及び添加剤を含む混合物に添加して自転公転ミキサー等で混練することでも調製することができる。なお、フィラー(I)を含む混合物の混練は、例えば、ボールミル、ロールミル、ヘンシェルミキサー等を用いて行ってもよい。
【0234】
本発明の第1の樹脂組成物は、本発明の光又は熱硬化方法に係る(A)~(C)及び(H)~(I)を含有する樹脂組成物であり、本発明の光又は熱硬化方法に係る工程1に付す前の組成物の1形態である。該組成物は、保存安定性が良好であるという特徴を有し、且つ該組成物に水を添加して、光(活性エネルギー線)を照射したり、熱エネルギーを付与すれば、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)又はシランカップリング剤(C)同士の重縮合(ゲル化)と、チオール-エン反応又はチオール-イン反応とを同一系内で効率的に行うことができ、目的とする硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる。
【0235】
本発明の第2の樹脂組成物は、本発明の第1の樹脂組成物に水(D)を添加して、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)を縮合(ゾル化)させることによって得られる樹脂組成物である。すなわち、本発明の第2の樹脂組成物は、本発明の第1の樹脂組成物に水(D)を添加して、本発明の第1の樹脂組成物を、本発明の光又は熱硬化方法に係る工程1に付した後に得られる組成物の1形態である。該組成物に光(活性エネルギー線)を照射したり、熱エネルギーを付与すれば、目的とする硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる。故に、本発明の第1及び第2の樹脂組成物は、光(活性エネルギー線)照射又は加熱によって硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる有用な組成物である。
【0236】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、塗料、インキ材、コーティング材料、接着材料、歯科材料、レジスト、カラーフィルタ、フレキシブルディスプレー用フィルム、電子部品、層間絶縁膜、熱伝導膜、熱伝導性絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム等の光学部材又は電子部材における樹脂原料として使用することができる。
【0237】
-本発明の電子回路形成用熱伝導性基板-
本発明の電子回路形成用熱伝導性基板は、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物(架橋物・樹脂)を有することを特徴とするものである。すなわち、本発明の電子回路形成用熱伝導性基板は、例えば、アルミニウム板等の金属基板の上部に、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物(架橋物・樹脂)を有する基板である。
【0238】
上記金属基板を構成する金属としては、軽量で良好な熱伝導性を示すアルミニウムや高い熱容量を有する銅を用いることが好ましい。また、金属基板の厚さとしては、例えば、0.1~5mm等が挙げられる。
【0239】
上記硬化物(架橋物・樹脂)は、通常0.5W/m・K以上、好ましくは0.8W/m・K以上、より好ましくは1.0W/m・K以上、さらに好ましくは2.0W/m・K以上、特に好ましくは3.0W/m・K以上、最も好ましくは6.0W/m・K以上の熱伝導率を有することが望ましい。
【0240】
上記硬化物(架橋物・樹脂)は、電気抵抗率が、通常1Ω・cm以上、好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは105Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上、最も好ましくは1013Ω・cm以上である電気絶縁性を有することが望ましい。
【0241】
本発明の電子回路形成用熱伝導性基板は、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物(架橋物・樹脂)の上部に、例えば、銅箔等の電子回路形成用の金属箔を有していてもよい。
【0242】
-本発明の電子回路形成用熱伝導性基板の作製方法-
本発明の電子回路形成用熱伝導性基板の作製方法は、本発明の第1の樹脂組成物に水(D)を添加してゾル化させた組成物(本発明の光又は熱硬化方法における工程1に付した後に得られる組成物)又は本発明の第2の樹脂組成物を、例えば、アルミニウム板等の金属基板に塗布して塗布膜を得た後、該塗布膜を光照射又は加熱することにより、前記塗布膜を硬化させ、金属基板の表面に熱伝導性絶縁膜を形成することを特徴とするものである。
【0243】
本発明の電子回路形成用熱伝導性基板の作製方法の別法として、本発明の第1の樹脂組成物を金属基板に塗布した後に、大気中の水分に由来する水の作用で、前記工程1を進行させてもよい。
【0244】
本発明の硬化性樹脂組成物の金属基板への塗布方法としては、有機溶剤を添加して適した粘度に調製した本発明の硬化性樹脂組成物を、例えば、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スピンコート法等の方法により金属基板上に塗布する方法が挙げられる。
【0245】
金属基板上に塗布した塗布膜を、例えば、約60~150℃の温度に加熱(プレベーク)して組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗布膜を形成できる。
【0246】
熱伝導性絶縁膜は、得られた塗布膜に対して、上述した波長の光(活性エネルギー線)を、上述した照射量(積算露光量)以上となるような時間で照射するか、あるいは上述した温度で上述した時間加熱することにより形成させることができる。また、所定の回路パターンを有する熱伝導性絶縁膜を形成させる場合には、光(活性エネルギー線)照射を、適当なパターンマスクを介して行った後、上述した現像液等を用いて現像処理を行えばよい。すなわち、上記塗布膜上において、本発明の光又は熱硬化方法における工程2を進行させることで熱伝導性絶縁膜を得ることができる。
【0247】
このようにして得られる本発明の電子回路形成用熱伝導性基板は、高い熱伝導性と電気絶縁性を有しているため、高輝度LEDやパワー半導体の放熱用基板や電気絶縁性基板として有用なものである。
【実施例】
【0248】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されない。
【0249】
実施例1:光(活性エネルギー線)の照射による樹脂組成物を用いた硬化膜の作製及び得られた硬化膜の物性評価
1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド[アルミニウムアルコキシド(B)]及び(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン[シランカップリング剤(C)]の混合物中に、イオン交換水[水(D)]とカルビトールアセテート[有機溶剤]を混和した溶液を加えて30分間撹拌しゾル液を調製した。次いで、シアヌル酸トリアリル[化合物(H)]、窒化アルミニウム[フィラー(I)]、CF-180[分散剤]及びカルビトールアセテート[有機溶剤]の混合物中に、上記で調製したゾル液を添加し、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR-250」)を用い、回転数2000rpmで3分間混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物をアルミニウム板上に塗布して塗布膜を作製し、150℃でプレベークした後、この塗布膜に対して、セン特殊光源製「HLR-100-2」を用い、光(活性エネルギー線:面照度254nm=9mJ/cm2及び365nm=11mJ/cm2)を1分間照射し、さらに150℃で5分間加熱して、膜厚10~20μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜の諸物性を以下の評価方法で評価した。各成分の使用量(mol量)及び評価結果を表4に示す。なお、実施例1で使用した各成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0250】
-(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物-
1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート;
式[1-1]で示される化合物(国際公開第2014/208632号に従って合成したものを使用した。)
式[1-1]:
-(B)アルミニウムアルコキシド-
アルミニウムトリ-sec-ブトキシド(富士フイルム和光純薬(株)製)
-(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤-
(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製;SILQUEST A-189 SILANE)
-(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物-
シアヌル酸トリアリル(富士フイルム和光純薬(株)製)
-(I)フィラー-
窒化アルミニウム(AlN)(東洋アルミニウム(株)製;Toyalnite JC(登録商標);平均粒子径1.2μm)
-分散剤-
CF-180(富士フイルム和光純薬(株)製;カルボン酸含有アクリレートポリマーPGMEA溶液(固形分30%))
【0251】
-硬化膜の諸物性の評価方法-
[アルカリ現像性]
硬化膜を3%水酸化カリウム水溶液に浸漬した際に、硬化膜の露光部と未露光部との間で硬化膜の溶解速度に差が見られ、シャワーなどの特別な洗浄操作を行わずに浸漬のみで像が現れるまでに要する時間を計測した。1分以内に像が現れた場合を「アルカリ現像性:○」、1分経過しても像が現れなかった場合を「アルカリ現像性:×」と評価した。
[耐有機溶剤性]
硬化膜をアセトン、メタノール及びメチルエチルケトンの3種類の溶剤にそれぞれ30秒間浸漬して溶解および剥がれを確認した。アセトン、メタノール及びメチルエチルケトンの3種類の溶剤に浸漬した場合において、硬化膜がいずれも溶解しなかった及び剥がれなかった場合を「耐有機溶剤性:○」、硬化が不十分でいずれかの溶剤に溶解した又は剥がれが生じた場合を「耐有機溶剤性:×」と評価した。
[密着性(碁盤目試験)]
硬化膜に対して、カッターナイフで素地まで到達するように、碁盤目状に1mm間隔で切込みを入れた(100マス)。次いで、碁盤目状にカットした硬化膜に約50mm付着するように粘着テープを貼り付け、粘着テープの上から消しゴムでこすって硬化膜にテープを付着させた。テープを付着させてから1~2分経過後に、テープの端を持って硬化膜面に直角に保ちながら瞬間的にひきはがして、硬化膜の剥がれについて評価した。硬化膜が全く剥がれなかった場合を「密着性:○」、硬化膜が一部剥がれてしまった場合を「密着性:×」と評価した。
[鉛筆硬度]
B~9Hの鉛筆の芯を先が平らになるように研ぎ、それぞれの鉛筆をひっかき硬度試器「KT-VF2380」に装填し、鉛筆の芯を硬化物に対して約45°の角度で押しつけ、硬化膜が剥がれなかった時の鉛筆の硬さを記録した(JIS K5600に準拠、荷重750g)。
[熱伝導率]
円柱状のシリコン型を用い、実施例と同一条件で、樹脂組成物から幅5mmφ×厚み1mmの円形硬化膜を作製し、表面を黒鉛処理後、厚さ(小数点第3位)、直径(小数点第3位)、重さ(小数点第4位)を正確に計測して比重を算出した。キセノンレーザーフラッシュ法熱物性測定装置「LFA502」(京都電子工業(株)製)を用い、熱拡散率と比熱を求めた(JIS R1611-2010「ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量、熱伝導率の測定方法」の熱拡散率・比熱容量試験方法、JIS H7801-2005「金属レーザーフラッシュ法による熱拡散率測定」に準拠)。熱伝導率は、得られた熱拡散率、比重、比熱を全て乗じることで算出した。
[耐熱性(質量減少率)]
示差走査熱量計TG-DTA「2000SA」((株)BRUKER AXS製)を用い、アルゴン雰囲気下、硬化膜を昇温速度10℃/分で室温~500℃まで昇温させ、250℃における質量減少率を測定した。なお、表中における「-」は、未測定であることを表す。
【0252】
比較例1~3:光(活性エネルギー線)の照射による樹脂組成物を用いた硬化膜の作製及び得られた硬化膜の物性評価
実施例1で用いた1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート及びアルミニウムトリ-sec-ブトキシドを表4に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様の方法に準じて硬化膜を作製し、その諸物性を評価した。各成分の使用量(mol量)及び評価結果を表4に示す。なお、比較例1~3で使用した各成分のうち、実施例1で使用していない成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0253】
-光照射又は加熱によりラジカルを発生するカルボニル基を有する化合物(カルボン酸)-
ケトプロフェン(富士フイルム和光純薬(株)製)
-アルミニウム化合物-
(エチルアセトアセテート)アルミニウムジイソプロポキシド(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0254】
【0255】
表4の結果から明らかなように、アルミニウムアルコキシドを含有する実施例1の樹脂組成物を用いた場合には、高い硬度と良好な熱伝導率を有する硬化物が得られることがわかった。一般的に、アルミニウムアルコキシドは、水に対する反応性が高いため容易にゲル化し易いが、メルカプト基を有するシランカップリング剤とともに本発明に係る化合物(A)を添加した状態で加水分解を行うと、ゲル化せずにオルガノゾルが得られることがわかった。特に、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドは、液状であり、メルカプト基を有するシランカップリング剤と相溶性が高く、有機溶剤を使用しなくても本発明に係る化合物(A)を溶解することができた。
【0256】
また、本発明に係る化合物(A)、アルミニウムアルコキシド及びメルカプト基を有するシランカップリング剤の3種類の成分を含有する組成物に水を添加すると、室温下でアルミノシロキサン結合(Al-Si-O)が生じていることがFT-IR(600cm-1付近)にて確認できた。このことから、本発明の光又は熱硬化方法によれば、温和な条件下でゾル-ゲル化を行えることがわかった。また、本発明に係る化合物(A)は、窒化アルミニウムのような光を透過しにくいフィラーの共存下であっても、光(活性エネルギー線)照射によって効率的にラジカルを発生できるため、チオール-エン反応を促進できることがわかった。故に、フィラーを大量に含んでいても、ゾル-ゲル化とチオール-エン反応を効率的に行えるため、本発明の光又は熱硬化方法は、硬度や基材への密着性、熱伝導率等の物性値が高い硬化物を簡便に得ることができる硬化方法であることがわかった。
【0257】
その一方で、アルミニウムアルコキシドの代わりに、一部がキレート化しているアルミニウム化合物を用いた硬化系や(比較例1)、アルミニウムアルコキシドを用いない硬化系の場合には(比較例2)、硬化物が得られなかったり、硬化物が得られたとしても、アルカリ現像性や硬度が十分でない硬化物しか得られなかった。すなわち、アルミニウムアルコキシドは、本硬化系において必須であることがわかった。また、本発明に係る化合物(A)の代わりに、光(活性エネルギー線)を照射するとラジカルは発生するが塩基は発生しないカルボン酸を用いた硬化系の場合には(比較例3)、硬化物が得られなかった。このことから、本硬化系においては、塩基とラジカルの両方を発生できる化合物も必須であることがわかった。
【0258】
実施例2~5:2つ以上のエポキシ基を有する化合物を添加した樹脂組成物を用いた硬化膜の作製及び得られた硬化膜の物性評価
実施例1の硬化系に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を添加したり、実施例1で用いた窒化アルミニウムの種類を代えた以外は、実施例1と同様の方法に準じて硬化膜を作製し、その諸物性を評価した。各成分の使用量(mol量)及び評価結果を表5に示す。なお、実施例2~5で使用した各成分のうち、実施例1及び比較例1~3で使用していない成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0259】
-(I)フィラー-
窒化アルミニウム(AlN)(東洋アルミニウム(株)製;TFZ-A02P;平均粒子径1.5μm)
窒化アルミニウム(AlN)(東洋アルミニウム(株)製;TFZ-A15P;平均粒子径15.0μm)
-(J)2つ以上のエポキシ基を有する化合物-
ビスフェノールA液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)製;jER 828(登録商標))
シアヌル酸トリグリシジル(2,4,6-トリ(グリシジルオキシ)-1,3,5-トリアジン)(日本カーバイド(株)製;TGC)
イソシアヌル酸トリグリシジル(日産化学(株)製;TEPIC-S(登録商標))
【0260】
【0261】
表5の結果から明らかなように、本硬化系において、2つ以上のエポキシ基を有する化合物を添加すると、硬度の高い硬化物が得られることがわかった。また、粒子径の異なるフィラーを2種以上併用した場合であっても、簡便に硬化物が得られることがわかった。特に、加水分解を抑制する表面処理が施されたフィラー(TFZ-A02P及びTFZ-A15P)を用いた場合には、得られる硬化物の熱伝導率が向上する傾向が見られた。
【0262】
実施例6~7:キレート剤を添加した樹脂組成物を用いた硬化膜の作製及び得られた硬化膜の物性評価
アルミニウムトリ-sec-ブトキシド[アルミニウムアルコキシド(B)]にアセト酢酸メチル[キレート剤(F)]を添加し、発熱が収まるまで攪拌した。次いで、1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]及び(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン[シランカップリング剤(C)]を添加し、さらにイオン交換水[水(D)]とカルビトールアセテート[有機溶剤]を混和した溶液を加えて30分間撹拌しゾル液を調製した。次いで、シアヌル酸トリアリル[化合物(H)]、窒化アルミニウム[フィラー(I)]及びカルビトールアセテート[有機溶剤]の混合物中に、上記で調製したゾル液を添加し、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR-250」)を用い、回転数2000rpmで3分間混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物をアルミニウム板上に塗布して塗布膜を作製し、150℃でプレベークした後、この塗布膜に対して、セン特殊光源製「HLR-100-2」を用い、光(活性エネルギー線:面照度254nm=9mJ/cm2及び365nm=11mJ/cm2)を1分間照射し、さらに150℃で5分間加熱して、膜厚10~20μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜の諸物性を上述した評価方法で評価した。各成分の使用量(mol量)及び評価結果を表6に示す。なお、実施例6~7で使用した各成分のうち、実施例1~5及び比較例1~3で使用していない成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0263】
-(F)キレート剤-
アセト酢酸メチル(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0264】
比較例4:キレート剤を添加しない樹脂組成物を用いた硬化膜の作製
1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド[アルミニウムアルコキシド(B)]及び(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン[シランカップリング剤(C)]の混合物中に、イオン交換水[水(D)]とカルビトールアセテート[有機溶剤]を混和した溶液を加えて撹拌したところ、固体ゲルが析出してしまい、均一なゾル液を調製できず、樹脂組成物を作製できなかった。各成分の使用量(mol量)を表6に示す。
【0265】
【0266】
表6の結果から明らかなように、本硬化系において、アルミニウムアルコキシドの含有量を増やして、アルミニウムアルコキシドとシランカップリング剤のmol比が5:5以上になると、ゾル液を調製しにくい結果となった(比較例4)。しかしながら、本硬化系に、アセト酢酸メチル等のキレート剤を添加すると固体ゲルが析出しなくなり、アルミニウムアルコキシドの含有量を増やしても硬化物が得られ、その物性も良好なものであった。
【0267】
実施例8~9:水の後添加による硬化膜の作製及び得られた硬化膜の物性評価
1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド[アルミニウムアルコキシド(B)]及び(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン[シランカップリング剤(C)]の混合物(実施例(8))中、あるいは1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド[アルミニウムアルコキシド(B)]、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン[シランカップリング剤(C)]及び2-(2-チオキサンテニル)ジエチルマロン酸[キレート剤(F)]の混合物(実施例(9))中に、シアヌル酸トリアリル[化合物(H)]、窒化アルミニウム[フィラー(I)]及びカルビトールアセテート[有機溶剤]を添加し、さらにイオン交換水[水(D)]とカルビトールアセテート[有機溶剤]を混和した溶液を滴下した。該混合物を、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR-250」)を用い、回転数2000rpmで3分間混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物をアルミニウム板上に塗布して塗布膜を作製し、150℃でプレベークした後、この塗布膜に対して、セン特殊光源製「HLR-100-2」を用い、光(活性エネルギー線:面照度254nm=9mJ/cm2及び365nm=11mJ/cm2)を1分間照射し、膜厚10~20μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜の諸物性を上述した評価方法で評価した。各成分の使用量(mol量)及び評価結果を表7に示す。なお、実施例8~9で使用した各成分のうち、実施例1~7及び比較例1~4で使用していない成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0268】
-(F)キレート剤-
2-(2-チオキサンテニル)ジエチルマロン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0269】
【0270】
表7の結果から明らかなように、本硬化系において、水を最後に添加することによってフィラーの分散性が向上し、分散剤を添加しなくても樹脂組成物(ゾル液)が得られ、該組成物に光(活性エネルギー線)を照射することで、硬化物が得られることがわかった。また、得られた硬化物は、高い硬度を有するものであった。すなわち、水を最後に添加することで、2つ以上のエポキシ基を有する化合物を添加しなくても、高い硬化性能を有する樹脂組成物が得られることがわかった。一般的に、窒化アルミニウムは加水分解され易いと言われているが、本硬化系においては、熱伝導率の大幅な低下が見られず、光(活性エネルギー線)照射後に加熱を行わなくても、十分な性能を有する硬化物、すなわち、硬度や密着性が高く、アルカリ現像性や耐有機溶剤性が良好な硬化物が得られることがわかった。また、2-(2-チオキサンテニル)ジエチルマロン酸のようなキレート能を有し、且つ長波長の光(活性エネルギー線)を吸収する化合物を添加した場合には、長波長の光(活性エネルギー線:面照度405nm、積算露光量が1.0J/cm2となるように照射、紫外線照射光源装置(朝日分光(株)製):「REX-250」及びバンドパスフィルターを使用)のみを照射した場合であっても、硬化物が得られたことから、長波長での感光性付与が可能であった。
【0271】
実施例10:多官能(メタ)アクリル化合物を用いた硬化膜の作製及び得られた硬化膜の物性評価
アルミニウムトリ-sec-ブトキシド[アルミニウムアルコキシド(B)]及び(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン[シランカップリング剤(C)]の混合物中に、乳酸エチル[キレート剤(F)兼有機溶剤]を加えて室温で12時間静置した後、1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]及びイオン交換水[水(D)]を加えてゾル液を調製した。次いで、窒化アルミニウム[フィラー(I)]に、上記で調製したゾル液を添加し、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR-250」)を用い、回転数2000rpmで1分間混練した後、さらにジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[化合物(H)]を加えて、回転数500rpmで1分間混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物をアルミニウム板上に塗布して塗布膜を作製し、150℃でプレベークした後、この塗布膜に対して、セン特殊光源製「HLR-100-2」を用い、光(活性エネルギー線:面照度254nm=9mJ/cm2及び365nm=11mJ/cm2)を1分間照射し、さらに150℃で1時間加熱して、硬化膜を得た。得られた硬化膜の諸物性のうち、アルカリ現像性、耐有機溶剤性、密着性及び鉛筆硬度については上述した評価方法で評価し、熱伝導率については以下の評価方法で評価した。各成分の使用量(mol量)及び評価結果を表8に示す。なお、実施例10で使用した各成分のうち、実施例1~9及び比較例1~4で使用していない成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0272】
-(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物-
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製;KAYARAD DPHA)
【0273】
-硬化膜の熱伝導率の評価方法-
2×2cmのシリコン剥離紙からなる型枠に、実施例と同一条件で、樹脂組成物から幅2×2mm×厚み約100μmの硬化膜を作製した。得られた硬化膜を150℃で1時間加熱した後、該硬化膜を1×1cmに切り出し、表面を黒鉛処理してサンプルとし、厚さ(小数点第3位)、直径(小数点第3位)、重さ(小数点第4位)を正確に計測して比重を算出した。得られたサンプルについて、レーザーフラッシュ法熱物性測定装置「LFA447」(NETZTCH社製)を用い、熱拡散率と比熱を求めた。
【0274】
実施例11~13:多官能(メタ)アクリル化合物を用いた硬化膜の作製及び得られた硬化膜の物性評価
実施例10で用いたフィラー(I)の種類を代えた以外は、実施例10と同様の方法に準じて硬化膜を作製し、その諸物性を評価した。各成分の使用量(mol量)及び評価結果を表8に示す。なお、実施例11~13で使用した各成分のうち、実施例1~10及び比較例1~4で使用していない成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0275】
-(I)フィラー-
酸化マグネシウム(マグネシア)(赤穂化成(株)製;MgO6K;平均粒子径6μm)
酸化アルミニウム(アルミナ)(デンカ(株)製;DAW-03;平均粒子径3.7μm)
窒化アルミニウム(AlN)(東洋アルミニウム(株)製;TFZ-A10P;平均粒子径9.9μm)
【0276】
【0277】
表8の結果から明らかなように、乳酸エチルをキレート剤兼有機溶剤として用いることで、ゾル液を安定して調製できることがわかった。また、多官能(メタ)アクリル化合物を用いることで、ラジカルによるチオール-エン反応と、塩基によるMichael付加反応が同時に進行し、高密度で硬化物を作製できることがわかった。さらに、フィラーの充填率を上げることができ、硬化物の熱伝導率も向上した。マグネシア、アルミナ等の窒化アルミニウム以外の熱伝導性フィラーを用いた場合でも高い熱伝導率を有する硬化膜を作製でき、なかでも、粒子径が異なる3種類の窒化アルミニウムを用いることで、高い熱伝導率を有する硬化膜が得られることがわかった。
【0278】
比較例5:市販の放熱性樹脂組成物を用いた硬化膜の作製及び得られた硬化膜の物性評価
放熱性ソルダ―レジスト(太陽インキ製造(株)製;PSR-4000HS2W/CA-4000HS2W=95:5)をアルミニウム板上に塗布して塗布膜を作製し、150℃でプレベークした後、この塗布膜に対して、セン特殊光源製「HLR-100-2」を用い、光(活性エネルギー線:面照度254nm=9mJ/cm2及び365nm=11mJ/cm2)を1分間照射し、膜厚10μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜のアルカリ現像性、密着性、鉛筆硬度及び熱伝導率を評価した。評価結果を表9に示す。なお、評価方法のうち、アルカリ現像性については、実施例1の3%水酸化カリウム水溶液の代わりに5%水酸化カリウム水溶液を用い、鉛筆硬度については、実施例1の荷重750gの代わりに荷重1000±10gで評価した以外は、実施例1と同様の評価方法に準じて硬化膜の諸物性を評価した。
【0279】
【0280】
表9の結果から明らかなように、市販の放熱性樹脂組成物から得られる硬化物は、5%水酸化カリウム水溶液を用いても現像性が悪く、本硬化系における樹脂組成物から得られる硬化物よりも、アルカリ現像が遅い結果であった。また、市販の放熱性樹脂組成物から得られる硬化物は、碁盤目試験において、半分程度の剥離が認められたことから、本硬化系における樹脂組成物から得られる硬化物よりも、基材への密着性が低い結果であった。
【0281】
比較例6:メルカプト基を有するシランカップリング剤を含まない樹脂組成物を用いたチオール-エン反応を利用した硬化膜の作製
1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]、シアヌル酸トリアリル[化合物(H)]、窒化アルミニウム[フィラー(I)]、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ポリビニルピロリドン[分散剤]及び乳酸エチル[キレート剤(F)兼有機溶剤]を含有する混合物を、遊星型ボールミルP-6(フリッチュジャパン(株)製)を用い、回転数2000rpmで3分間混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物をアルミニウム板上に塗布して塗布膜を作製し、150℃でプレベークした後、この塗布膜に対して、窒素気流下でセン特殊光源製「HLR-100-2」を用い、光(活性エネルギー線:面照度254nm=9mJ/cm2及び365nm=11mJ/cm2)を1分間照射したが、硬化膜は得られなかった。各成分の使用量(mol量)を表10に示す。なお、比較例6で使用した各成分のうち、実施例1~13及び比較例1~5で使用していない成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0282】
-メルカプト基は有するがシラノール基を有さない化合物-
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(富士フイルム和光純薬(株)製;PEMP)
-分散剤-
ポリビニルピロリドン(富士フイルム和光純薬(株)製;PVP-K25)
【0283】
比較例7:メルカプト基を有するシランカップリング剤を含まない樹脂組成物を用いたアクリレートのラジカル重合反応を利用した硬化膜の作製
1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、窒化アルミニウム[フィラー(I)]、ポリビニルピロリドン[分散剤]及び乳酸エチル[キレート剤(F)兼有機溶剤]を含有する混合物を、遊星型ボールミルP-6(フリッチュジャパン(株)製)を用い、回転数2000rpmで3分間混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物をアルミニウム板上に塗布して塗布膜を作製し、150℃でプレベークした後、この塗布膜に対して、窒素気流下でセン特殊光源製「HLR-100-2」を用い、光(活性エネルギー線:面照度254nm=9mJ/cm2及び365nm=11mJ/cm2)を1分間照射したが、硬化膜は得られなかった。各成分の使用量(mol量)を表10に示す。
【0284】
比較例8:(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤を含有する樹脂組成物を用いたゾル-ゲル反応とアクリレートのラジカル重合反応を利用した硬化膜の作製
1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン及びケトプロフェンの混合物中に、イオン交換水[水(D)]を加えて30分間攪拌しゾル液を調製した。次いで、窒化アルミニウム[フィラー(I)]、ポリビニルピロリドン[分散剤]及び乳酸エチル[キレート剤(F)兼有機溶剤]の混合物中に、上記で調製したゾル液を添加し、遊星型ボールミルP-6(フリッチュジャパン(株)製)を用い、回転数300rpmで120分間混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物をアルミニウム板上に塗布して塗布膜を作製し、150℃でプレベークした後、この塗布膜に対して、窒素気流下でセン特殊光源製「HLR-100-2」を用い、光(活性エネルギー線:面照度254nm=9mJ/cm2及び365nm=11mJ/cm2)を1分間照射し、さらに150℃で5分間加熱したが、硬化膜は得られなかった。各成分の使用量(mol量)を表10に示す。なお、比較例8で使用した各成分のうち、実施例1~13及び比較例1~7で使用していない成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0285】
-(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤-
3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
【0286】
【0287】
表10の結果から明らかなように、メルカプト基を有するシランカップリング剤の代わりに、メルカプト基は有するがシラノール基を有さない化合物を用いた場合には(比較例6)、チオール-エン反応は進行するものの、ゾル-ゲル化が進行しなかった。このため、フィラーの充填率を80%以上に設定しようとすると、光硬化が適切に進行せず、硬化物が得られないことがわかった。また、メルカプト基を有するシランカップリング剤の代わりに、多官能(メタ)アクリル化合物を用いた場合には(比較例7)、(メタ)アクリル基同士のラジカル重合が進行するものの、フィラーの充填率を80%以上に設定しようとすると、光硬化が適切に進行せず、硬化物が得られないことがわかった。比較例8では、(メタ)アクリル基同士のラジカル重合とゾル-ゲル化の両方が進行しているものの、硬化物が得られなかったことから、(メタ)アクリル基同士のラジカル重合では、所望の硬化物が得られないことが示唆された。比較例6や比較例7の硬化系では、フィラーの充填率を70%程度まで低減させると硬化物自体は得られるものの、得られた硬化物は、碁盤目試験において剥離が生じてしまい、硬化物の密着性が不十分で硬化物が脆い結果であった。以上の結果から、ゾル-ゲル化とチオール-エン反応の両方が、本硬化系を成立させる上で重要な反応系であることがわかった。
【0288】
メルカプト基を有する化合物は、一般的に、各種金属との親和性が高く、アルミニウムや銅のような金属基板上に結合し易いことから、硬化物の密着性を向上させる要因の1つとなっていると考えられる。また、フィラーを大量に含む系では、アルミニウムアルコキシドとメルカプト基を有するシランカップリング剤を組み合わせることで、初めて、フィラーの充填率が高い硬化系において、硬度や密着性が高い硬化物が得られることがわかった。
【0289】
比較例9:金属水酸化物を直接添加した樹脂組成物を用いた硬化膜の作製及び得られた硬化膜の物性評価
1,2-ジイソプロピル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[化合物(A)]、水酸化アルミニウム及び(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン[シランカップリング剤(C)]の混合物中に、シアヌル酸トリアリル[化合物(H)]、窒化アルミニウム[フィラー(I)]、CF-180[分散剤]及びカルビトールアセテート[有機溶剤]を添加し、さらにイオン交換水[水(D)]とカルビトールアセテート[有機溶剤]を混和した溶液を滴下した。該混合物を、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR-250」)を用い、回転数2000rpmで3分間混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物をアルミニウム板上に塗布して塗布膜を作製し、150℃でプレベークした後、この塗布膜に対して、窒素気流下でセン特殊光源製「HLR-100-2」を用い、光(活性エネルギー線:面照度254nm=9mJ/cm2及び365nm=11mJ/cm2)を1分間照射し、さらに150℃で5分間加熱したが、硬化膜は得られなかった。各成分の使用量(mol量)を表11に示す。なお、比較例9で使用した各成分のうち、実施例1~13及び比較例1~8で使用していない成分の名称及び入手先を以下に示す。
【0290】
-アルミニウム化合物-
水酸化アルミニウム(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0291】
【0292】
比較例9では、直接金属水酸化物を用い、水の添加を要しない硬化系を試みた。表11の結果から明らかなように、加水分解された状態である水酸化アルミニウムを用いた場合には、シランカップリング剤との相溶性が悪いため、水酸化アルミニウムとシランカップリング剤を効率的に反応させることができず、硬化物が得られないことがわかった。故に、水を添加せずに金属水酸化物を直接用いる方法は、本硬化系には適さないことがわかった。
【0293】
以上の結果から明らかなように、本発明の光又は熱硬化方法は、ゾル-ゲル化とチオール-エン反応又はチオール-イン反応とが重要であることがわかった。本発明の光又は熱硬化方法は、(I)フィラーを含む硬化系において、ゾル-ゲル化とチオール-エン反応又はチオール-イン反応の両方の反応を効率的に行うことができ、所望の物性を有する硬化物(架橋物・樹脂)が簡便に得られる方法である。上述した実施例及び比較例の結果から、所望の物性を有する硬化物(架橋物・樹脂)を簡便に得るためには、(A)カルボン酸とアミンとの塩からなり、光照射又は加熱により、ラジカルを発生するカルボニル基と脱炭酸して塩基を発生するカルボキシレート基を有する化合物と、(B)アルミニウムアルコキシドと、(C)メルカプト基を有するシランカップリング剤と、(D)水と、(H)2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物と、(I)フィラーを組み合わせて用い、光照射又は加熱によって、化合物(A)から塩基とラジカルの両方を発生させて反応させることが重要であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0294】
本発明の光又は熱硬化方法は、水を添加して、アルミニウムアルコキシド(B)とシランカップリング剤(C)又はシランカップリング剤(C)同士の部分的な縮合(ゾル化)を行った後、光(活性エネルギー線)の照射又は加熱によって塩基とラジカルの両方を発生させることにより、ゾル化で得られたSi-O-Al又は/及びSi-O-Siの構成単位を有する縮合物(E)同士の重縮合(ゲル化)と、縮合物(E)中のメルカプト基と化合物(H)中の重合性不飽和基とのチオール-エン反応又はチオール-イン反応とを同一系内で行う方法であり、ゾル-ゲル化とチオール-エン反応又はチオール-イン反応を効率的に行えるばかりでなく、フィラーを大量に含んでいても、簡便に硬化物(架橋物・樹脂)を得ることができる方法である。故に、本発明の光又は熱硬化方法は、熱伝導性の高い硬化物(架橋物・樹脂)を迅速且つ効率的に作製できる方法として有用なものである。
【0295】
本発明の硬化性樹脂組成物は、従来の硬化性樹脂組成物と比較して、組成物中に大量のフィラーを充填させることができ、アルカリ現像性、耐有機溶剤性、硬度及び密着性に優れる硬化物(架橋物・樹脂)を作製できる有用な組成物である。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、光(活性エネルギー線)照射又は加熱によって、所望の性能を有する硬化物(架橋物・樹脂)を簡便に作製できるため、硬化物の生産性を大幅に向上させることができる有用な組成物である。このため、本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、塗料、インキ材、コーティング材料、接着材料、歯科材料、レジスト、カラーフィルタ、層間絶縁膜、熱伝導膜、熱伝導性絶縁膜、配線被覆膜等の光学部材又は電子部材における樹脂原料として有用なものである。
【0296】
本発明の電子回路形成用熱伝導性基板は、高い熱伝導性と電気絶縁性を有しているため、例えば、高輝度LEDやパワー半導体の放熱用基板や電気絶縁性基板として有用なものである。