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特許7504349半導体リソグラフィー膜形成組成物、並びにレジストパターン形成方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】半導体リソグラフィー膜形成組成物、並びにレジストパターン形成方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240617BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20240617BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240617BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240617BHJP
   G03F 7/039 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/11 502
G03F7/11 503
H01L21/30 573
H01L21/30 574
G03F7/20 501
G03F7/039 601
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019543655
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(86)【国際出願番号】 JP2018034553
(87)【国際公開番号】W WO2019059202
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2017178844
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】牧野嶋 高史
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/11
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 7/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリル化合物を含む、フォトレジスト下層膜形成用組成物であって、
前記ニトリル化合物が、下記式(3)で表される化合物、及び/又は下記式(4)で表される化合物である、
フォトレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】
(上記式(3)中、Xaは、置換基を有しない芳香環であり、n1は、である。)
【化2】
(上記式(4)中、
bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環であり、
Yは、環構造を含む基であり、
Zは、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、-NH-結合、アミド結合、置換基を有していてもよいアルキレンからなる群より選択されるいずれかであり、
n1は、それぞれ独立して、2~10の整数である。)
【請求項2】
前記芳香環が、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、クリセン、ピレン、ペンタセン、ベンゾピレン、ジベンゾクリセン、トリフェニレン、コランニュレン、コロネン、オバレン、フルオレン、ベンゾフルオレン、及びアセナフテンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記芳香環が、ベンゼンである、
請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ニトリル化合物の分子量が、41g/mol以上1000g/mol未満の範囲にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
二種以上の異なるニトリル化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
三種以上の異なるニトリル化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(3)で表される化合物が、下記式(A)群から選ばれる化合物であり、
前記式(4)で表される化合物が、BisAPN又はBiFPNである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【化3】
【化4】
【請求項8】
融点が200℃以上のニトリル化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
溶媒をさらに含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
硬化促進剤をさらに含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
架橋剤をさらに含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
フォトレジスト下層膜の形成に用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
基板上に、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を用いて下層膜を形成し、
前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を硬化した物を含む、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体リソグラフィー膜形成組成物、並びにレジストパターン形成方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われており、近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。また、レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化されており、極端紫外光(EUV、13.5nm)の導入も見込まれている。
【0003】
レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパターンが倒れるといった問題が生じるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。ところが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になっている。
【0004】
現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例えば、従来のエッチング速度の速いレジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比をもつリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、所定のエネルギーが印加されることにより末端基が脱離してスルホン酸残基を生じる置換基を少なくとも有する樹脂成分と、溶媒とを含有する多層レジストプロセス用下層膜形成材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比をもつリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、特定の繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比をもつリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、アセナフチレン類の繰り返し単位と、置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位とを共重合してなる重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
一方、この種のレジスト下層膜において高いエッチング耐性をもつ材料としては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガス等を原料に用いたCVDによって形成されたアモルファスカーボン下層膜がよく知られている。しかしながら、プロセス上の観点から、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスでレジスト下層膜を形成できるレジスト下層膜材料が求められている。
【0006】
また、本発明者らは、エッチング耐性に優れるとともに、耐熱性が高く、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構造の化合物及び有機溶媒を含有するリソグラフィー用下層膜形成組成物(例えば、特許文献4参照)を提案している。
【0007】
さらに、3層プロセスにおけるレジスト下層膜の形成において用いられる中間層の形成方法としては、例えば、シリコン窒化膜の形成方法(例えば、特許文献5参照)、及びシリコン窒化膜のCVD形成方法(例えば、特許文献6参照)が知られている。また、3層プロセス用の中間層材料としては、シルセスキオキサンベースの珪素化合物を含む材料が知られている(例えば、特許文献7及び8参照)。
【0008】
様々な光学部品形成組成も提案されており、例えば、アクリル系樹脂(例えば、特許文献9及び10参照)、及び/又はアリル基で誘導された特定の構造を有するポリフェノール(例えば、特許文献11参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-177668号公報
【文献】特開2004-271838号公報
【文献】特開2005-250434号公報
【文献】国際公開第2013/024779号
【文献】特開2002-334869号公報
【文献】国際公開第2004/066377号
【文献】特開2007-226170号公報
【文献】特開2007-226204号公報
【文献】特開2010-138393号公報
【文献】特開2015-174877号公報
【文献】国際公開第2014/123005号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来、数多くのレジスト用途向けリソグラフィー用膜形成組成物及び下層膜用途向けリソグラフィー用膜形成組成物が提案されているが、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが適用可能な高い溶媒溶解性を有するのみならず、耐熱性及びエッチング耐性を高い次元で両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められている。
【0011】
また、従来、数多くの光学部材向け組成物が提案されているが、耐熱性、透明性及び屈折率を両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められている。
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性、溶解性及びエッチング耐性に優れる膜を形成するために有用な、半導体リソグラフィー膜形成組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐熱性、透明性及び屈折率を両立させた光学部品の作製に用いることもできる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の半導体リソグラフィー膜形成組成物により、上記従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0014】
[1]
ニトリル化合物を含む、半導体リソグラフィー膜形成組成物。
[2]
前記ニトリル化合物の分子量が、41g/mol以上1000g/mol未満の範囲にある、[1]に記載の組成物。
[3]
二種以上の異なるニトリル化合物を含む、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]
三種以上の異なるニトリル化合物を含む、[1]又は[2]に記載の組成物。
[5]
前記ニトリル化合物が、下記式(1)で表される化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
【化1】
(上記式(1)中、
は、炭素数1~70のn価の基であり、
nは、1~10の整数である。)
[6]
前記Rが、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基及び環構造からなる群より選択される少なくとも一つを含む基である、[5]に記載の組成物。
[7]
前記環構造が、置換基を有していてもよい芳香環及び置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基からなる群より選択される少なくとも一つを含む、[6]に記載の組成物。
[8]
前記ニトリル化合物が、置換基を有していてもよい芳香環を含み、ニトリル基が前記芳香環に置換している、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]
前記ニトリル化合物が、下記式(2)で表される化合物である、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
【化2】
(上記式(2)中、
Xは、置換基を有していてもよい芳香環であり、
Yは、環構造を含む基であり、
Zは、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、-NH-結合、アミド結合、置換基を有していてもよいアルキレンからなる群より選択されるいずれかであり、
m1は、0又は1の整数であり、
n1は、1~10の整数であり、n2は、1以上の整数である。
ただし、n1とn2との積は、1~10の整数である。)
[10]
前記ニトリル化合物が、下記式(3)で表される化合物及び/又は下記式(4)で表される化合物である、[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
【化3】
(上記式(3)中、
は、置換基を有していてもよい芳香環であり、n1は、1~10の整数である。)
【化4】
(上記式(4)中、
は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環であり、
Yは、環構造を含む基であり、
Zは、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、-NH-結合、アミド結合、置換基を有していてもよいアルキレンからなる群より選択されるいずれかであり、
n1は、それぞれ独立して、1~10の整数である。)
[11]
前記式(3)で表される化合物が、下記式(A)群から選ばれる化合物であり、前記式(4)で表される化合物が、BisAPN又はBiFPNである、[10]に記載の組成物。
【化5】
【化6】
[12]
融点が200℃以上のニトリル化合物を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の組成物。
[13]
溶媒をさらに含有する、[1]~[12]のいずれかに記載の組成物。
[14]
硬化促進剤をさらに含有する、[1]~[13]のいずれかに記載の組成物。
[15]
架橋剤をさらに含有する、[1]~[14]のいずれかに記載の組成物。
[16]
半導体下層膜の形成に用いられる、[1]~[15]のいずれかに記載の組成物。
[17]
光学部品形成に用いられる、[1]~[16]のいずれかに記載の組成物。
[18]
基板上に、[1]~[16]のいずれかに記載の組成物を用いて下層膜を形成し、
前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン形成方法。
[19]
[1]~[17]のいずれかに記載の組成物を用いて製造されたデバイス。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性、溶解性及びエッチング耐性に優れる膜を形成できる。また、本発明の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、光学部品形成に用いることができ、かかる光学部品は、耐熱性、透明性及び屈折率のバランスに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」ともいう。)について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0017】
[半導体リソグラフィー膜形成組成物]
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、ニトリル化合物を一種以上含有する。本実施形態における半導体リソグラフィー膜形成組成物は、良質な膜の形成の観点から、ニトリル化合物を二種以上含有することが好ましく、良質な膜の保持時間の観点から、ニトリル化合物を三種以上含有することがより好ましい。
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、半導体下層膜形成組成物、半導体上層膜形成組成物、又は光学部品形成組成物であることができる。すなわち、本実施形態は、ニトリル化合物を含む、半導体下層膜形成組成物、半導体上層膜形成組成物、又は光学部品形成組成物でもある。
【0018】
本実施形態の組成物は、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト下層膜を形成するために有用である。
また、本実施形態の組成物は、高温ベーク時に分子内架橋反応が効果的に進行することから膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れたレジスト下層膜を形成することができる。加えて、レジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを形成することができる。
さらには、屈折率が高く、また低温から高温までの広範囲の熱処理による着色が抑制されることから、各種光学形成組成物としても有用である。
【0019】
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、芳香族密度が高いため、屈折率が高く、また低温から高温までの広範囲の熱処理によっても着色が抑制されることから、各種光学部品を形成するための組成物として使用できる。
光学部品としては、特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状の部品の他、プラスチックレンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ、コントラスト向上レンズ等)、位相差フィルム、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路等が挙げられる。
【0020】
本実施形態の組成物は、半導体下層膜用途向けリソグラフィー用膜形成組成物(以下、「下層膜形成材料」ともいう。)として有用である。
【0021】
本実施形態の組成物におけるニトリル化合物の含有量は、塗布性及び品質安定性の点から、組成物全量を100質量%とした場合、好ましくは1~100質量%であり、より好ましくは10~100質量%であり、さらに好ましくは50~100質量%であり、よりさらに好ましくは100質量%である。
【0022】
本実施形態の下層膜形成材料は、湿式プロセスへの適用が可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れる。さらに、本実施形態の下層膜形成材料は、上記物質を用いて、かつ分子間架橋に優れるため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れた下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態の下層膜形成材料は、レジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを得ることができる。なお、本実施形態の下層膜形成材料は、本発明の効果が損なわれない範囲において、既に知られているリソグラフィー用下層膜形成材料等を含んでいてもよい。
【0023】
本実施形態におけるニトリル化合物は、ニトリル基と称することがあるシアノ基を少なくとも一つ含む。
本実施形態におけるシアノ基は、式:-C≡Nで定義することができる。
本実施形態におけるニトリル化合物は、2以上のシアノ基を有していてもよく、2以上のシアノ基を、総じてポリシアノ基ともいう。
本実施形態におけるニトリル化合物の分子量は、41g/mol以上3000g/mol未満の範囲にあることが好ましく、41g/mol以上1000g/mol未満の範囲にあることがより好ましく、100g/mol以上1000g/mol未満の範囲にあることがさらに好ましく、100g/mol以上500g/mol未満の範囲にあることがよりさらに好ましい。
【0024】
ポリシアノ基を有する化合物は、式:τ-(C≡N)[式中、τは価数が少なくとも2の多価の有機基部分であり、nは該多価の有機基部分τの価数に等しい整数である]で表され得る。
τは、複素環式で多価の有機部分である。言い換えれば、τは、飽和であっても不飽和であってもよい複素環基、単環式、二環式、三環式又は多環式であってもよい複素環基、及び一つ以上の同一又は異なるヘテロ原子を含んでいてもよい複素環基を有する有機基である。
τは、一つ以上のヘテロ原子を含んでも含まなくてもよい、非環式で多価の有機基部分(直鎖状又は分枝状)であることが好ましい。
τは、環式部分の環内にヘテロ原子を含まない、環式で多価の有機部分であることが好ましい。
ヘテロ原子としては、例えば、窒素、酸素、硫黄、ホウ素、ケイ素、スズ、及びリン等が挙げられる。
【0025】
ポリシアノ基を有する化合物は、例えば、式:N≡C-R1-C≡N[式中、R1は二価の有機基である]で表されることが好ましい。
二価の有機基としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキニレン基、又はアリーレン基等のヒドロカルビレン基、及び置換ヒドロカルビレン基等が挙げられる。
置換ヒドロカルビレン基は、一つ以上の水素原子がアルキル基等の置換基で置換されたヒドロカルビレン基である。
二価の有機基としては、1個若しくは2個から、又はかかる基を形成する炭素原子の適切な最少個数から20個の炭素原子を含み得る。また、これらの基は、一つ以上のヘテロ原子も含有してもよい。
R1は、非複素環式で二価の基であることが好ましい。
R1は、一つ以上のヘテロ原子を含んでも含まなくてもよい、非環式で二価の有機基(直鎖状又は分枝状)であることが好ましい。
R1は、ヘテロ原子を含まない、環式で二価の有機基であることが好ましい。
R1は、一つ以上の追加のシアノ基(即ち、-C≡N)を含有することがある。
【0026】
ポリシアノ基を有する化合物としては、例えば、(ポリシアノ)アレーン化合物、(ポリシアノ)アルカン化合物、(ポリシアノ)アルケン化合物、(ポリシアノ)アルキン化合物、(ポリシアノ)シクロアルカン化合物、(ポリシアノ)シクロアルケン化合物、及び(ポリシアノ)シクロアルキン化合物等が挙げられる。
ここで(ポリシアノ)アレーン化合物とは、アレーン化合物中の少なくとも二つの水素原子がシアノ基で置換された化合物である。
【0027】
(ポリシアノ)アレーン化合物としては、例えば、ジシアノアレーン化合物、トリシアノアレーン化合物及びテトラシアノアレーン化合物等が挙げられる。
(ポリシアノ)アルカン化合物としては、例えば、ジシアノアルカン化合物、トリシアノアルカン化合物及びテトラシアノアルカン化合物等が挙げられる。
(ポリシアノ)アルケン化合物としては、例えば、ジシアノアルケン化合物、トリシアノアルケン化合物及びテトラシアノアルケン化合物等が挙げられる。
(ポリシアノ)アルキン化合物としては、例えば、ジシアノアルキン化合物、トリシアノアルキン化合物及びテトラシアノアルキン化合物等が挙げられる。
(ポリシアノ)シクロアルカン化合物としては、例えば、ジシアノシクロアルカン化合物、トリシアノシクロアルカン化合物及びテトラシアノシクロアルカン化合物等が挙げられる。
(ポリシアノ)シクロアルケン化合物としては、例えば、ジシアノシクロアルケン化合物、トリシアノシクロアルケン化合物及びテトラシアノシクロアルケン化合物等が挙げられる。
(ポリシアノ)シクロアルキン化合物としては、例えば、ジシアノシクロアルキン化合物、トリシアノシクロアルキン化合物及びテトラシアノシクロアルキン化合物等が挙げられる。
【0028】
(ポリシアノ)アレーン化合物としては、具体的には、1,2-ジシアノベンゼン(フタロニトリル)、1,3-ジシアノベンゼン(イソフタロジニトリル又はイソフタロニトリル)、1,4-ジシアノベンゼン(テレフタロニトリル)、1,2-ジシアノナフタレン、1,3-ジシアノナフタレン、1,4-ジシアノナフタレン、1,5-ジシアノナフタレン、1,6-ジシアノナフタレン、1,7-ジシアノナフタレン、1,8-ジシアノナフタレン、2,3-ジシアノナフタレン、2,4-ジシアノナフタレン、1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジカルボニトリル、1,2-ジシアノアントラセン、1,3-ジシアノアントラセン、1,4-ジシアノアントラセン、1,8-ジシアノアントラセン、1,9-ジシアノアントラセン、2,3-ジシアノアントラセン、2,4-ジシアノアントラセン、9,10-ジシアノアントラセン、9,10-ジシアノフェナントレン、1,2-ジシアノインデン、1,4-ジシアノインデン、2,6-ジシアノインデン、1,2-ジシアノアズレン、1,3-ジシアノアズレン、4,5-ジシアノアズレン、1,8-ジシアノフルオレン、1,9-ジシアノフルオレン、4,5-ジシアノフルオレン、2,6-ジシアノトルエン、2-シアノフェニルアセトニトリル、4-シアノフェニルアセトニトリル、1,3,5-トリシアノベンゼン、1,2,4-トリシアノベンゼン、1,2,5-トリシアノベンゼン、1,4,6-トリシアノインデン、1,3,7-トリシアノナフタレン、1,2,4,5-テトラシアノベンゼン及び1,3,5,6-テトラシアノナフタレン等が挙げられる。
【0029】
(ポリシアノ)アルカン化合物としては、具体的には、マロノニトリル、1,2-ジシアノエタン(スクシノニトリル)、1,2-ジシアノ-1,2-ジフェニルエタン、1,3-ジシアノプロパン(グルタロニトリル)、2-メチルグルタロニトリル、1,2-ジシアノプロパン、ジメチルマロノニトリル、ジフェニルマロノニトリル、1,4-ジシアノブタン(アジポニトリル)、1,5-ジシアノペンタン(ピメロニトリル)、1,6-ジシアノへキサン(スベロニトリル)、1,7-ジシアノヘプタン、1,8-ジシアノオクタン(セバコニトリル)、3,3’-チオジプロピオニトリル、1,1,3-トリシアノプロパン、1,1,2-トリシアノプロパン、1,1,4-トリシアノブタン、1,1,5-トリシアノペンタン、1,1,6-トリシアノへキサン、1,3,5-トリシアノへキサン、1,2,5-トリシアノヘプタン、2,4,6-トリシアノオクタン、トリス(2-シアノエチル)アミン、1,1,3,3-テトラシアノプロパン、1,1,4,4-テトラシアノブタン、1,1,6,6-テトラシアノへキサン及び1,2,4,5-テトラシアノへキサン等が挙げられる。
【0030】
(ポリシアノ)アルケン化合物としては、具体的には、フマロニトリル、1,3-ジシアノプロペン、シス-1,4-ジシアノ-2-ブテン、トランス-1,4-ジシアノ-2-ブテン、2-メチレングルタロニトリル、ベンジリデンマロノニトリル、1,1,2-トリシアノエチレン、1,1,3-トリシアノプロペン、1,1,4-トリシアノ-2-ブテン、1,1,5-トリシアノ-2-ペンテン、テトラシアノエチレン、7,8,8-テトラシアノキノジメタン及び1,1,4,4-テトラシアノ-2-ブテン等が挙げられる。
【0031】
(ポリシアノ)アルキン化合物としては、具体的には、3,3-ジシアノプロピン、3,4-ジシアノ-1-ブチン、3,4-ジシアノ-1-ペンチン、3,4-ジシアノ-1-ペンチン、3,5-ジシアノ-1-ペンチン、3,4-ジシアノ-1-ヘキシン、3,5-ジシアノ-1-ヘキシン、3,6-ジシアノ-1-ヘキシン、4,5-ジシアノ-1-ヘキシン、4,6-ジシアノ-1-ヘキシン、5,6-ジシアノ-1-ヘキシン、1,3,3-トリシアノプロピン、1,3,4-トリシアノ-1-ブチン、1,3,4-トリシアノ-1-ペンチン、1,3,4-トリシアノ-1-ペンチン、1,3,5-トリシアノ-1-ペンチン、1,4,5-トリシアノ-1-ペンチン、3,4,5-トリシアノ-1-ヘキシン、3,4,6-トリシアノ-1-ヘキシン、3,5,6-トリシアノ-1-ヘキシン、3,4,5-トリシアノ-1-ヘキシン及び1,1,4,4-テトラシアノ-2-ブチン等が挙げられる。
【0032】
(ポリシアノ)シクロアルカン化合物としては、具体的には、1,2-ジシアノシクロブタン、1,2-ジシアノシクロペンタン、1,3-ジシアノシクロペンタン、1,2-ジシアノシクロヘキサン、1,3-ジシアノシクロヘキサン、1,4-ジシアノシクロヘキサン、1,2-ジシアノシクロヘプタン、1,3-ジシアノシクロヘプタン、1,4-ジシアノシクロヘプタン、1,2-ジシアノシクロオクタン、1,3-ジシアノシクロオクタン、1,4-ジシアノシクロオクタン、1,5-ジシアノシクロオクタン、1,2,4-トリシアノシクロヘキサン、1,3,4-トリシアノシクロヘキサン、1,2,4-トリシアノシクロヘプタン、1,3,4-トリシアノシクロヘプタン、1,2,4-トリシアノシクロオクタン、1,2,5-トリシアノシクロオクタン、1,3,5-トリシアノシクロオクタン、1,2,3,4-テトラシアノシクロヘキサン、2,2,4,4-テトラシクロヘキサン、1,2,3,4-テトラシアノシクロヘプタン、1,1,4,4-テトラシアノシクロヘプタン、1,2,3,4-テトラシアノシクロオクタン、1,2,3,5-テトラシアノシクロオクタン、3,3-ジメチルシクロプロパン-1,1,2,2-テトラシアノカルボニトリル及びスピロ(2.4)ヘプタン-1,1,2,2-テトラカルボニトリル等が挙げられる。
【0033】
(ポリシアノ)シクロアルケン化合物としては、具体的には、1,2-ジシアノシクロペンテン、1,3-ジシアノシクロペンテン、1,4-ジシアノシクロペンテン、1,2-ジシアノシクロヘキセン、1,3-ジシアノヘキセン、1,4-ジシアノシクロヘキセン、3,6-ジシアノシクロヘキセン、1,2-ジシアノシクロヘプテン、1,3-ジシアノシクロヘプテン、1,4-ジシアノシクロヘプテン、1,6-ジシアノシクロオクテン、3,4-ジシアノシクロヘプテン、1,2,3-トリシアノシクロペンテン、1,2,4-トリシアノシクロペンテン、1,2,4-トリシアノシクロヘキセン、1,3,5-トリシアノシクロヘキセン、1,2,4-トリシアノシクロヘプテン、1,3,4-トリシアノシクロヘプテン、1,2,3-トリシアノシクロオクテン、1,2,5-トリシアノシクロオクテン、1,2,3,4-テトラシアノシクロヘキセン、3,3,4,4-テトラシアノシクロヘキセン、1,2,4,5-テトラシアノシクロヘプテン、3,3,4,4-テトラシアノシクロヘプテン、1,2,3,4-テトラシアノシクロオクテン、3,3,4,4-テトラシアノシクロオクテン、トリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジエン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、1,2,6,7-テトラシアノシクロオクテン、トリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジエン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、3-メチルトリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジエン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、3-フェニルトリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジエン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、3,4-ジメチルトリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジエン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、ビシクロ[7.2.0]ウンデカ-2,4,7-トリエン-10,10,11,11-テトラカルボニトリル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,2,3,3-テトラカルボニトリル及びテトラシクロ[8.2.2.0(2,9).0(3,8)]テトラデカ-3(8),13-ジエン-11,11,12,12-テトラカルボニトリル等が挙げられる。
【0034】
(ポリシアノ)シクロアルキン化合物としては、具体的には、1,2-ジシアノシクロペンチン、1,3-ジシアノシクロペンチン、1,4-ジシアノシクロペンチン、1,2-ジシアノシクロヘキシン、1,3-ジシアノヘキシン、1,4-ジシアノシクロヘキシン、3,6-ジシアノシクロヘキシン、1,2-ジシアノシクロヘプチン、1,3-ジシアノシクロヘプテン、1,4-ジシアノシクロヘプチン、1,6-ジシアノシクロオクチン、3,4-ジシアノシクロヘプチン、1,2,3-トリシアノシクロペンチン、1,2,4-トリシアノシクロペンチン、1,2,4-トリシアノシクロヘキシン、1,3,5-トリシアノシクロヘキシン、1,2,4-トリシアノシクロヘプチン、1,3,4-トリシアノシクロヘプチン、1,2,3-トリシアノシクロオクチン、1,2,5-トリシアノシクロオクチン、1,2,3,4-テトラシアノシクロヘキシン、3,3,4,4-テトラシアノシクロヘキシン、1,2,4,5-テトラシアノシクロヘプチン、3,3,4,4-テトラシアノシクロヘプチン、1,2,3,4-テトラシアノシクロオクチン、3,3,4,4-テトラシアノシクロオクチン、トリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジイン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、1,2,6,7-テトラシアノシクロオクチン、トリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジイン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、3-メチルトリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジイン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、3-フェニルトリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジイン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、3,4-ジメチルトリシクロ[4.2.2.0(2,5)]デカ-3,9-ジイン-7,7,8,8-テトラカルボニトリル、ビシクロ[7.2.0]ウンデカ-2,4,7-トリイン-10,10,11,11-テトラカルボニトリル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-イン-2,2,3,3-テトラカルボニトリル及びテトラシクロ[8.2.2.0(2,9).0(3,8)]テトラデカ-3(8),13-ジイン-11,11,12,12-テトラカルボニトリル等が挙げられる。
【0035】
本実施形態におけるニトリル化合物は、式(1)で表される化合物であることが好ましい。また、式(1)で表される化合物からなる群から選ばれる一種以上を含有することが好ましい。
【0036】
【化7】
【0037】
(式(1)中、
は、炭素数1~70のn価の有機基であり、
nは、1~10の整数である。)
【0038】
は、炭素数1~70のn価の基であり、このRを介してシアノ基が結合している。
上記n価の有機基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基及び環構造等が挙げられ、これらの基が組み合わされた基であってもよい。上記環構造は、置換基を有していてもよい芳香環及び置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基からなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
直鎖状炭化水素基、及び分岐状炭化水素基は、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、-NH-結合、アミド結合等を含んでいてもよい。
【0039】
本実施形態におけるニトリル化合物は、下記式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0040】
【化8】
【0041】
(上記式(2)中、
Xは、置換基を有していてもよい芳香環であり、
Yは、環構造を含む基であり、
Zは、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、-NH-結合、アミド結合、置換基を有していてもよいアルキレンからなる群より選択されるいずれかであり、
m1は、0又は1の整数であり、
n1は、1~10の整数であり、n2は、1以上の整数である。
ただし、n1とn2との積は、1~10の整数である。)
【0042】
本実施形態におけるニトリル化合物は、下記式(3)で表される化合物及び/又は下記式(4)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0043】
【化9】
【0044】
(上記式(3)中、
は、置換基を有していてもよい芳香環であり、n1は、1~10の整数である。)
【0045】
【化10】
【0046】
(上記式(4)中、
は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環であり、
Yは、環構造を含む基であり、
Zは、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、-NH-結合、アミド結合、置換基を有していてもよいアルキレンからなる群より選択されるいずれかであり、
n1は、それぞれ独立して、1~10の整数である。)
【0047】
ここで、上記脂環式炭化水素基については、有橋脂環式炭化水素基も含まれる。
また、上記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;脂環式炭化水素基;架橋性反応基;ヘテロ原子;アルコキシ基;ハロゲン原子;ニトロ基;アミノ基;カルボン酸基;チオール基;水酸基;及び、炭素数6~60の芳香族基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;からなる群より選択される一種以上を有していてもよい。
【0048】
耐熱性及び耐エッチング性の観点から、Rは環構造を含むことが好ましい。
環構造としては、例えば、脂環式炭化水素及び芳香環等が挙げられる。
脂環式炭化水素基における脂環式炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロペンタン、トリシクロデカン、アダマンタン、ノルボルナン等が挙げられる。
芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、クリセン、ピレン、ペンタセン、ベンゾピレン、ジベンゾクリセン、トリフェニレン、コランニュレン、コロネン、オバレン、フルオレン、ベンゾフルオレン、アセナフテン等が挙げられる。
【0049】
Yで表される環構造を含む基としては、置換基を有していてもよい、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルメタン、ベンゾフェノン、ビスフェノキシビフェニル、ビシクロヘキシル、ビシクロヘキシルメタン、ビシクロヘキシルジメチルメタン、及び、式(Y-1)で表されるジフェニルメタン構造、からなる群より選択される少なくとも一つを含む基を好適に挙げることができる。
【0050】
【化11】
【0051】
式(Y-1)中、R及びRは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のハロゲン化アルキル基;である。
また、R及びRは、一緒になって、脂環式炭化水素及び/又は芳香環の環構造を形成していてもよい。脂環式炭化水素及び/又は芳香環としては、上記と同様の例示をすることができる。
【0052】
耐熱性及び耐エッチング性により優れることから、環構造は芳香環であることが好ましく、ニトリル化合物中のニトリル基は上記芳香環に置換していることが好ましい。
【0053】
上記式(1)で表される化合物の具体例を以下に例示するが、式(1)で表される化合物は、ここで列挙した具体例に限定されるものではない。
【0054】
【化12】
【0055】
【化13】
【0056】
【化14】
【0057】
【化15】
【0058】
【化16】
【0059】
【化17】
【0060】
【化18】
【0061】
【化19】
【0062】
半導体リソグラフィー膜形成組成物の保存安定性の観点から、ニトリル化合物は上記式(A)群から選ばれる化合物であることが好ましい。
【0063】
半導体リソグラフィー膜形成組成物の高温ベーク耐性の観点から、半導体リソグラフィー膜形成組成物としては、融点が200℃以上のニトリル化合物を含むことが好ましい。
【0064】
本実施形態におけるニトリル化合物は、市販品を用いてもよく、有機合成手法を用いて合成した化合物を用いてもよい。
【0065】
[溶媒]
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、溶媒を含有してもよい。半導体リソグラフィー膜形成組成物に用いられる溶媒としては、ニトリル化合物を少なくとも溶解するものであれば、公知のものを適宜用いることができる。
【0066】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、一種を単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
上記溶媒の中でも、安全性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、アニソールが好ましい。
【0068】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、化合物の溶解性及び製膜上の観点から、ニトリル化合物100質量部に対して、100~10,000質量部であることが好ましく、200~5,000質量部であることがより好ましく、200~1,000質量部であることがさらに好ましい。
【0069】
[架橋剤]
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、インターミキシングを抑制する等の観点から、必要に応じて架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものを用いることができる。
【0070】
本実施形態で使用可能な架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、アクリレート化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、一種を単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもベンゾオキサジン化合物、エポキシ化合物及びシアネート化合物が好ましく、エッチング耐性向上の観点から、ベンゾオキサジン化合物がより好ましい。
【0071】
前記フェノール化合物としては、公知のものが使用でき、例えば、フェノールの他、クレゾール類、キシレノール類等のアルキルフェノール類、ヒドロキノン等の多価フェノール類、ナフトール類、ナフタレンジオール類等の多環フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、あるいはフェノールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等の多官能性フェノール化合物等が挙げられる。中でも、耐熱性及び溶解性の点から、アラルキル型フェノール樹脂が好ましい。
【0072】
前記エポキシ化合物としては、公知のものが使用でき、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物から選択される。エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3’,5,5’-テトラメチル-ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、2,2’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェノール、レゾルシン、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類のエポキシ化物、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類のエポキシ化物、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、フェノール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるフェノールアラルキル樹脂類のエポキシ化物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニル等から合成されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフトール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるナフトールアラルキル樹脂類のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。耐熱性と溶解性の観点から、フェノールアラルキル樹脂類、ビフェニルアラルキル樹脂類から得られるエポキシ樹脂等の常温で固体状エポキシ樹脂が好ましい。
【0073】
前記シアネート化合物としては、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。本実施形態におけるシアネート化合物としては、好ましくは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の水酸基をシアネート基に置換した構造のものが挙げられる。また、シアネート化合物は、芳香族基を有するものが好ましく、シアネート基が芳香族基に直結した構造のものを好適に使用することができる。このようなシアネート化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールE、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック樹脂、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールAノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂、3官能フェノール、4官能フェノール、ナフタレン型フェノール、ビフェニル型フェノール、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンアラルキル樹脂、脂環式フェノール、リン含有フェノール等の水酸基をシアネート基に置換した構造のものが挙げられる。これらのシアネート化合物は、単独で又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、前記したシアネート化合物は、モノマー、オリゴマー及び樹脂のいずれの形態であってもよい。
【0074】
前記アミノ化合物としては、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン、O-トリジン、m-トリジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール等が挙げられる。さらに、前記アミノ化合物としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等の芳香族アミン類、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチル-ジアミノジシクロヘキシルメタン、テトラメチル-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類等が挙げられる。
【0075】
前記ベンゾオキサジン化合物としては、例えば、二官能性ジアミン類と単官能フェノール類から得られるP-d型ベンゾオキサジン、単官能性ジアミン類と二官能性フェノール類から得られるF-a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
【0076】
前記メラミン化合物としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。
【0077】
前記グアナミン化合物としては、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。
【0078】
前記グリコールウリル化合物の具体例としては、例えば、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。
【0079】
前記ウレア化合物としては、例えば、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレア等が挙げられる。
【0080】
また、本実施形態において、架橋性向上の観点から、少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤を用いてもよい。少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤としては、特に限定されないが、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類、2,2-ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-シアナトシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)エ-テル等のアリルシアネート類、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールアリルエーテル等が挙げられる。これらは単独でも、二種類以上の混合物であってもよい。これらの中でも、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類が好ましい。
【0081】
半導体リソグラフィー膜形成組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、組成物の合計質量100質量部とした場合、5~50質量部であることが好ましく、より好ましくは10~40質量部である。架橋剤の含有量を上記範囲にすることで、半導体リソグラフィー膜形成に膜形成組成物を使用した場合レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められる傾向にある。
【0082】
[架橋(硬化)促進剤]
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物には、必要に応じて架橋、硬化反応を促進させるための架橋促進剤(硬化促進剤ともいう。)を用いることができる。
【0083】
前記架橋促進剤としては、架橋、硬化反応を促進させるものであれば、特に限定されないが、例えば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等が挙げられる。これらの架橋促進剤は、一種を単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもイミダゾール類又は有機ホスフィン類が好ましく、架橋温度の低温化の観点から、イミダゾール類がより好ましい。
【0084】
前記架橋促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0085】
架橋促進剤の含有量としては、通常、組成物の合計質量100質量部とした場合に、好ましくは0.1~10質量部であり、制御のし易さ及び経済性の観点から、より好ましくは、0.1~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部である。
【0086】
[ラジカル重合開始剤]
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物には、必要に応じてラジカル重合開始剤を配合することができる。ラジカル重合開始剤としては、光によりラジカル重合を開始させる光重合開始剤であってもよいし、熱によりラジカル重合を開始させる熱重合開始剤であってもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ケトン系光重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤及びアゾ系重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも一種とすることができる。
【0087】
このようなラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、従来用いられているものを適宜採用することができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のケトン系光重合開始剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノオエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメトルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等の有機過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0088】
また、ラジカル重合開始剤としては、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系重合開始剤も挙げられる。本実施形態におけるラジカル重合開始剤としては、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよく、他の公知の重合開始剤をさらに組み合わせて用いてもよい。
【0089】
前記ラジカル重合開始剤の含有量としては、化学量論的に必要な量であればよいが、ニトリル化合物を含む組成物の合計質量100質量部とした場合に0.05~25質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量が0.05質量部以上である場合には、硬化が不十分となることを防ぐことができる傾向にあり、他方、ラジカル重合開始剤の含有量が25質量部以下である場合には、下層膜形成材料の室温での長期保存安定性が損なわれることを防ぐことができる傾向にある。
【0090】
[酸発生剤]
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、熱による架橋反応をさらに促進させる等の観点から、必要に応じて酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するもの等が知られているが、いずれも使用することができる。酸発生剤としては、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものを用いることができる。
【0091】
半導体リソグラフィー膜形成組成物中の酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、ニトリル化合物を含む組成物の合計質量100質量部とした場合に、好ましくは0.1~50質量部であり、より好ましくは0.5~40質量部である。酸発生剤の含有量を上記範囲にすることで、酸発生量が多くなって架橋反応が高められる傾向にあり、また、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にある。
【0092】
[塩基性化合物]
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、保存安定性を向上させる等の観点から、塩基性化合物を含有していてもよい。
【0093】
塩基性化合物は、酸発生剤から微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものが挙げられる。
【0094】
半導体リソグラフィー膜形成組成物中の塩基性化合物の含有量は、特に限定されないが、ニトリル化合物を含む組成物の合計質量100質量部とした場合に、好ましくは0.001~2質量部であり、より好ましくは0.01~1質量部である。塩基性化合物の含有量を上記範囲にすることで、架橋反応を過度に損なうことなく保存安定性が高められる傾向にある。
【0095】
[その他の添加剤]
また、本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、熱や光による硬化性の付与や吸光度をコントロールする目的で、他の樹脂及び/又は化合物を含有していてもよい。このような他の樹脂及び/又は化合物としては、ナフトール樹脂、キシレン樹脂ナフトール変性樹脂、ナフタレン樹脂のフェノール変性樹脂;ポリヒドロキシスチレン、ジシクロペンタジエン樹脂、(メタ)アクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、ビニルナフタレン、ポリアセナフチレン等のナフタレン環、フェナントレンキノン、フルオレン等のビフェニル環、チオフェン、インデン等のヘテロ原子を有する複素環を含む樹脂や芳香族環を含まない樹脂;ロジン系樹脂、シクロデキストリン、アダマンタン(ポリ)オール、トリシクロデカン(ポリ)オール及びそれらの誘導体等の脂環構造を含む樹脂又は化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。さらに、本実施形態における下層膜形成材料は、公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、熱及び/又は光硬化触媒、重合禁止剤、難燃剤、充填剤、カップリング剤、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0096】
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、少なくともニトリル化合物を含み、さらに溶媒と酸発生剤とを含むことが好ましい。このとき、ニトリル化合物、溶媒、及び酸発生剤の合計を100質量部としたとき、半導体リソグラフィー膜形成組成物の組成は、ニトリル化合物1~30質量部、溶媒20~99質量部、酸発生剤0.01~10質量部であることが好ましく、ニトリル化合物1~20質量部、溶媒40~99質量部、酸発生剤0.01~5質量部であることがより好ましく、ニトリル化合物1~10質量部、溶媒90~99質量部、酸発生剤0.01~5質量部であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、少なくともニトリル化合物を含み、さらに溶媒と酸発生剤と架橋剤とを含むことが好ましい。このとき、ニトリル化合物、溶媒、酸発生剤、及び架橋剤の合計を100質量部としたとき、半導体リソグラフィー膜形成組成物の組成は、ニトリル化合物1~30質量部、溶媒20~99質量部、酸発生剤0.01~10質量部、架橋剤0.01~10質量部であることが好ましく、ニトリル化合物1~20質量部、溶媒40~99質量部、酸発生剤0.01~5質量部、架橋剤0.1~5質量部であることがより好ましく、ニトリル化合物1~10質量部、溶媒90~99質量部、酸発生剤0.01~5質量部、架橋剤0.5~5質量部であることがさらに好ましい。
【0097】
また、本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は溶融状態で硬化剤と配合して製造された重合性組成物あるいは前記プレポリマーを加熱等により溶融させた状態で配合して製造し得る。前記重合性組成物又はプレポリマーは適切な加工温度と広いプロセス温度を有し、硬化性に優れ、前記過程で成形及び硬化が効率的に行われることができる。
【0098】
前記過程でプレポリマー等を形成する方法、そのようなプレポリマー等と充填剤を配合し、加工及び硬化させて、複合体を製造する方法等は、公知の方式によって進行され得る。
【0099】
[リソグラフィー用下層膜及び多層レジストパターンの形成方法]
本実施形態におけるリソグラフィー用下層膜は、上述した半導体リソグラフィー膜形成組成物から形成される。
【0100】
また、本実施形態のレジストパターン形成方法は、上記組成物を用いて基板上に下層膜を形成し、上記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、上記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む。より詳しくは、本実施形態のレジストパターン形成方法は、基板上に、本実施形態の膜形成組成物を用いて下層膜を形成する工程(A-1)と、上記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(A-2)と、上記(A-2)工程の後、上記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程(A-3)と、を有する。
【0101】
さらに、本実施形態の回路パターン形成方法は、上記組成物を用いて基板上に下層膜を形成し、上記下層膜上にレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成し、上記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、
上記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程、
上記レジストパターンをマスクとして上記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして上記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることにより基板にパターンを形成する工程、を含む。
【0102】
より詳しくは、本実施形態の回路パターン形成方法は、基板上に、本実施形態の下層膜形成材料を用いて下層膜を形成する工程(B-1)と、上記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程(B-2)と、上記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(B-3)と、上記工程(B-3)の後、上記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(B-4)と、上記工程(B-4)の後、上記レジストパターンをマスクとして上記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして上記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程(B-5)と、を有する。
【0103】
本実施形態におけるリソグラフィー用下層膜は、本実施形態の下層膜形成材料から形成されるものであれば、その形成方法は特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態の下層膜材料をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布法或いは印刷法等で基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させる等して除去した後、公知の方法で架橋、硬化させて、本実施形態のリソグラフィー用下層膜を形成することができる。架橋方法としては、熱硬化、光硬化等の手法が挙げられる。
【0104】
下層膜の形成時には、上層レジストとのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベークを施すことが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、好ましくは80~700℃であり、より好ましくは200~550℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10~300秒の範囲内であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、通常、好ましくは30~20000nmであり、より好ましくは50~15000nmである。
【0105】
下層膜を作製した後、2層プロセスの場合は、その上に珪素含有レジスト層、或いは通常の炭化水素からなる単層レジスト、3層プロセスの場合はその上に珪素含有中間層、さらにその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。この場合、このレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0106】
基板上に下層膜を作製した後、2層プロセスの場合は、その下層膜上に珪素含有レジスト層或いは通常の炭化水素からなる単層レジストを作製することができる。3層プロセスの場合は、その下層膜上に珪素含有中間層、さらにその珪素含有中間層上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することができる。これらの場合において、レジスト層を形成するためのフォトレジスト材料は、公知のものから適宜選択して使用することができ、特に限定されない。
【0107】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0108】
3層プロセス用の珪素含有中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果を有する中間層としては、以下に限定されないが、193nm露光用としては、フェニル基又は珪素-珪素結合を有する吸光基が導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0109】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で作製した、反射防止膜としての効果が高い中間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによって中間層を形成する方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型、ネガ型のどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0110】
さらに、本実施形態における下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0111】
上記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、上記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法等で塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、80~180℃で10~300秒の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特に限定されないが、一般的には、30~500nmが好ましく、より好ましくは50~400nmである。
【0112】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0113】
上述した方法により形成されるレジストパターンは、下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態における下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させ得る。
【0114】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Ar等の不活性ガスや、CO、CO、NH、SO、N、NO2、ガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO、NH、N、NO2、ガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0115】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、上記の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば、酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜の加工を行うことができる。
【0116】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002-334869号公報(特許文献5)、国際公開第2004/066377号(特許文献6)に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0117】
中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号(特許文献7)、特開2007-226204号(特許文献8)に記載されたものを用いることができる。
【0118】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0119】
本実施形態における下層膜は、基板のエッチング耐性に優れるという特徴を有する。なお、基板としては、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等、種々のLow-k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質が用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、好ましくは50~10,000nmであり、より好ましくは75~5,000nmである。
【0120】
本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物は、半導体デバイスの製造に使用される。すなわち、本実施形態の一つは、本実施形態の半導体リソグラフィー膜形成組成物を含むデバイスである。
【実施例
【0121】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0122】
(実施例1~18、比較例1)
表1に示す組成のリソグラフィー用下層膜形成材料を各々調製した。次に、これらのリソグラフィー用下層膜形成材料をシリコン基板上に回転塗布し、その後、240℃で60秒間ベークして、膜厚200nmの下層膜を各々作製した。
化合物、酸発生剤、架橋剤及び有機溶媒については以下のものを用いた。
【0123】
(化合物)
A-1:ベンゾニトリル(関東化学社製、融点:-13℃)
A-2:イソフタロニトリル(関東化学社製、融点:163-165℃)
BisAPN:後述の合成例1で得られた化合物
BiFPN2:後述の合成例2で得られた化合物
CR-1:後述の比較合成例1で得られた樹脂
【0124】
(酸発生剤)
DTDPI:ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート(みどり化学社製)
【0125】
(架橋剤)
三和ケミカル社製 ニカラックMX270(ニカラック)
小西化学工業社製 ベンゾオキサジン(BF-BXZ)
日本化薬株式会社製 ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-L)
小西化学工業社製 ジアリルビスフェノールA(BPA-CA)
群栄化学工業社製 ジフェニルメタン型プロペニルフェノール樹脂(APG-2)
【0126】
BF-BXZ;
【化20】
【0127】
NC-3000-L;
【化21】
(上記式中、nは1~4の整数である。)
【0128】
BPA-CA;
【化22】
【0129】
APG-2;
【化23】
(上記式中、nは1~3の整数である。)
【0130】
(有機溶媒)
塩化メチレン
ジメチルスルホキシド(DMSO)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートアセテート(PGMEA)
【0131】
(合成例1)化合物(BisAPN)の合成
原料として、ビスフェノールA(関東化学製試薬)37.1g及び200gのDMFを1Lの3つ口フラスコに投入し、常温で撹拌し、溶解させて溶液を得た。次いで、4-ニトロフタロニトリル(関東化学製試薬)58.9gを上記溶液に加え、DMF50gを追加した後、撹拌し、溶解させた。次いで、炭酸カリウム62.2g及びDMF50gを共に投入し、撹拌し、温度を85℃まで昇温させた。5時間程度反応させ、常温で冷却させた。冷却された反応溶液を0.2N塩酸水溶液に注いで中和して、反応生成物を沈殿させ、フィルタリングした後、沈殿物を水で洗浄した。その後、フィルタリングされた反応生成物を100℃の真空オーブンで一日間乾燥させ、水と残留溶媒を除去した後、下記化学式で示される化合物(BisAPN)を80.3%の収率で収得した。
【0132】
【化24】
【0133】
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、上記式の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS) δ(ppm)6.9~7.5(8H,-O-C10-O-)、7.8~8.1(6H,-O-C(CN))、1.6(6H,-C(CH
得られた化合物について、前記方法により分子量を測定した結果、480であった。
【0134】
(合成例2)化合物(BiFPN)の合成
原料として、4,4’-ビフェノール(関東化学製試薬)27.9g及び100mLのDMFを1Lの3つ口フラスコに投入し、常温で撹拌し、溶解させて溶液を得た。次いで、4-ニトロフタロニトリル(関東化学製試薬)51.9gを上記溶液に添加し、DMF50gを追加した後、撹拌し、溶解させた。次いで、炭酸カリウム62.2g及びDMF50gを共に投入した後、撹拌し、温度を85℃まで昇温した。5時間程度反応させた後、常温まで冷却させた。冷却された反応溶液を0.2N塩酸水溶液に注いで中和し、反応生成物を沈殿させ、フィルタリングした後、沈殿物を水で洗浄した。その後、フィルタリングされた反応生成物を100℃の真空オーブンで一日間乾燥させた。水と残留溶媒を除去した後、下記化学式で示される化合物(BiFPN)を83%の収率で得た。
【0135】
【化25】
【0136】
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、上記式の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS) δ(ppm)6.9~7.5(8H,-O-C10-O-)、7.8~8.1(6H,-O-C(CN)
得られた化合物について、前記方法により分子量を測定した結果、438であった。
【0137】
(比較合成例1)
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。
得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の数平均分子量(Mn)は、562であった。
【0138】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、上記のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後、さらに1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR-1)126.1gを得た。
得られた樹脂(CR-1)は、数平均分子量(Mn):885、重量平均分子量(Mw):2220、Mw/Mn:4.17であった。
【0139】
[エッチング耐性の評価]
下記に示す条件でエッチング試験を行い、エッチング耐性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0140】
(エッチング試験の条件)
エッチング装置:サムコインターナショナル社製 RIE-10NR
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス: Arガス流量:CFガス流量:Oガス流量=50:5:5(sccm)
【0141】
エッチング耐性の評価は、以下の手順で行った。
まず、化合物(A-1)に代えてノボラック(群栄化学社製 PSM4357)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、ノボラックの下層膜を作製した。そして、このノボラックの下層膜を対象として、上記のエッチング試験を行い、そのときのエッチングレートを測定した。
次に、実施例1~12及び比較例1の下層膜を対象として、上記エッチング試験を同様に行い、そのときのエッチングレートを測定した。
そして、ノボラックの下層膜のエッチングレートを基準として、以下の評価基準でエッチング耐性を評価した。
【0142】
(評価基準)
A:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが-5%未満であった。
B:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが-5%超過+5%以下であった。
C:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが+5%超過であった。
【0143】
【表1】
【0144】
(実施例13、14)
次に、実施例1~2で得られたリソグラフィー用下層膜形成材料の各溶液を、膜厚300nmのSiO基板上に塗布して、240℃で60秒間ベークすることにより、膜厚70nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。なお、ArFレジスト溶液としては、下記式(11)の化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。
【0145】
式(11)の化合物は、2-メチル-2-メタクリロイルオキシアダマンタン4.15g、メタクリルロイルオキシ-γ-ブチロラクトン3.00g、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テトラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn-ヘキサン中に滴下した。このようにして得られた樹脂を凝固精製し、生成した白色粉末をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて得た。
【0146】
【化26】
【0147】
上記式(11)中、「40」、「40」、「20」とあるのは、各構成単位の比率を示すものであり、ブロック共重合体を示すものではない。
【0148】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。
【0149】
得られた55nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの形状及び欠陥を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察した。
現像後のレジストパターンの形状については、パターン倒れがなく、矩形性が良好なものを「良好」とし、それ以外を「不良」として評価した。また、上記観察の結果、パターン倒れが無く、矩形性が良好な最小の線幅を“解像性”として評価の指標とした。さらに、良好なパターン形状を描画可能な最小の電子線エネルギー量を“感度”として、評価の指標とした。
評価結果を、表2に示す。
【0150】
(比較例2)
下層膜の形成を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にして、フォトレジスト層をSiO基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。結果を表2に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
表1から明らかなように、実施例1~12では、比較例1に比して、エッチング耐性が良好であることが少なくとも確認された。一方、CR-1(フェノール変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂)を用いた比較例1では、エッチング耐性が不良であった。
また、実施例13、14においては、現像後のレジストパターン形状が良好であり、欠陥も見られないことも確認された。さらに、下層膜の形成を省略した比較例2に比べて、解像性及び感度ともに有意に優れていることも確認された。
さらに、現像後のレジストパターン形状の相違から、実施例1~2において用いられたリソグラフィー用下層膜形成材料は、レジスト材料との密着性が良いことも確認された。
【0153】
(実施例15、16)
実施例1~2にて調製したリソグラフィー用下層膜形成材料の溶液を膜厚300nmのSiO基板上に塗布して、240℃で60秒間ベークすることにより、膜厚80nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、珪素含有中間層材料を塗布し、200℃で60秒間ベークすることにより、膜厚35nmの中間層膜を形成した。さらに、この中間層膜上に、上記ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚150nmのフォトレジスト層を形成した。なお、珪素含有中間層材料としては、下記で得られた珪素原子含有ポリマーを用いた。
【0154】
テトラヒドロフラン(THF)200g、純水100gに、3-カルボキシルプロピルトリメトキシシラン16.6gとフェニルトリメトキシシラン7.9gと3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン14.4gとを溶解させ、液温を35℃にし、シュウ酸5gを滴下し、その後80℃に昇温し、シラノールの縮合反応を行った。次に、ジエチルエーテルを200g加え、水層を分別し、有機層を超純水で2回洗浄し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を200g加え、液温を60℃に加熱しながらの減圧下で、THF、ジエチルエーテル、水を除去し、珪素原子含有ポリマーを得た。
【0155】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層をマスク露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、55nmL/S(1:1)のポジ型のレジストパターンを得た。
【0156】
その後、サムコインターナショナル社製 RIE-10NRを用いて、得られたレジストパターンをマスクにして珪素含有中間層膜(SOG)のドライエッチング加工を行い、続いて、得られた珪素含有中間層膜パターンをマスクにした下層膜のドライエッチング加工と、得られた下層膜パターンをマスクにしたSiO膜のドライエッチング加工とを順次行った。
【0157】
各々のエッチング条件は、下記に示すとおりである。
(レジストパターンのレジスト中間層膜へのエッチング条件)
出力:50W
圧力:20Pa
時間:1min
エッチングガス
Arガス流量:CFガス流量:Oガス流量=50:8:2(sccm)
(レジスト中間膜パターンのレジスト下層膜へのエッチング条件)
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CFガス流量:Oガス流量=50:5:5(sccm)
(レジスト下層膜パターンのSiO膜へのエッチング条件)
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:C12ガス流量:Cガス流量:Oガス流量
=50:4:3:1(sccm)
【0158】
[評価]
上記のようにして得られたパターン断面(エッチング後のSiO膜の形状)を、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察したところ、本実施形態の下層膜を用いた実施例は、多層レジスト加工におけるエッチング後のSiO膜の形状は矩形であり、欠陥も認められず良好であることが確認された。
【0159】
(実施例17~18)
実施例1~2及び比較例1にて使用した各化合物を用いて、下記表3に示す配合で光学部品形成組成物を調製した。なお、表3中の光学部品形成組成物の各成分のうち、化合物、酸発生剤、酸架橋剤及び溶媒については、前述のものを用いた。
均一状態の光学部品形成組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中でプレベーク(prebake;PBとも記載する)して、厚さ1μmの光学部品形成膜を形成した。調製した光学部品形成組成物について、膜形成が良好な場合には「A」、形成した膜に欠陥がある場合には「C」と評価した。
【0160】
均一な光学部品形成組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中でPBして、厚さ1μmの膜を形成した。その膜につき、ジェー・エー・ウーラム製多入射角分光エリプソメーターVASEにて、25℃における屈折率(λ=589.3nm)を測定した。調製した膜について、屈折率が1.6以上の場合には「A」、1.55以上1.6未満の場合には「B」、1.55未満の場合には「C」と評価した。また透明性(λ=632.8nm)が90%以上の場合には「A」、90%未満の場合には「C」と評価した。
【0161】
【表3】
【0162】
上述したとおり、本実施形態は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。
【0163】
本発明に係るリソグラフィー用膜形成組成物は湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト下層膜を形成することができる。そして、このリソグラフィー用膜形成組成物は、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れた下層膜を形成することができる。さらには、下層膜を形成した場合、レジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを形成することができる。
【0164】
さらには屈折率が高く、また低温~高温処理によって着色が抑制されることから、本発明に係る膜形成組成物は各種光学部品形成組成物としても有用である。
【0165】
したがって、本発明は、例えば、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器、電子機器及び産業機器等に搭載される電気用積層板、電気機器、電子機器及び産業機器等に搭載されるプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、半導体用のコーティング剤、半導体用のレジスト用樹脂、下層膜形成用樹脂、フィルム状、シート状で使われる他、プラスチックレンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ、コントラスト向上レンズ等)、位相差フィルム、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路等の光学部品等において、広く且つ有効に利用可能である。
【0166】
本出願は、2017年9月19日出願の日本特許出願(特願2017-178844号)に基づくものであり、それらの内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は、リソグラフィー用レジスト、リソグラフィー用下層膜及び多層レジスト用下層膜及び光学部品の分野における産業上利用可能性を有する。