(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】美容機器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2022557361
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2021036475
(87)【国際公開番号】W WO2022080156
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2020174670
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501146513
【氏名又は名称】株式会社ジェイ クラフト
(73)【特許権者】
【識別番号】514079228
【氏名又は名称】ベレガ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】上野 博司
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-125300(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068621(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体へ流す異なる周波数の電流を電極間で干渉させる美容機器において、脂肪層と筋肉層に
40℃~42℃の適温を発生させる
30Vの出
力で60KHz~65KHzの周波数の電流を出力して、互いの周波数の差が100Hz~1000Hzとなる干渉波を流す電極を少なくとも3極有すると共にプラスとマイナスの極を対とする電極を一対より多く有した美容機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪層と筋肉層を振動させることに加えて熱を付与する美容機器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、適切な痩身マッサージを家庭でも行えるような機器を特許文献1(特開2007-125300号公報)において、複数の対をなす電極に所定の差を設けた周波数の電流を流す干渉周波痩身具を提案した。
【0003】
特許文献1は、ある特定の周波数の電流を流すことで皮膚下の筋肉(と脂肪)を強制運動する、つまり痩身効果が得られるが、低周波では皮膚表層に電流が流れるために痛みが伴い、中周波では皮膚下に電流が流れるために痛みは緩和されるものの筋肉層に届いて効いているかの効果が体感できないといった問題を解決するためになされたものである。
【0004】
特許文献1は、筋肉層まで届く中周波同士を振幅変調して干渉させ、全体波形として痛みが発生しない程度の低周波を成形することで、中周波の電流を付与しているにもかかわらず、痛みが伴わないすなわち皮膚下にて確実な筋肉運動を体感できることとしていた。
【0005】
特許文献1では、電気刺激により筋肉を振動させて痩身効果を促すにとどまっており、痩身効果の向上も頭打ちとなっていた。そこで、電気的に筋肉を振動させることにさらに熱という条件を加えることで現状の頭打ちを打破できることに気づいた。
【0006】
しかしながら、単純に皮膚表層から熱を加える(温める)手法では、皮下脂肪が厚い場合、付与温度が低ければ脂肪層と筋肉層まで熱が浸透せず、脂肪層と筋肉層まで熱を浸透させようとして温度を上げれば単に皮膚表層で熱いと感じるだけとなってしまい、効果的な熱付与ができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題は、痩身効果を向上させるために、脂肪層と筋肉層を振動させることに加えて熱を付与しようとした場合に、効果的に熱を付与することができなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、人体へ流す異なる周波数の電流を電極間で干渉させる美容機器において、脂肪層と筋肉層に40℃~42℃の適温を発生させる30Vの出力で60KHz~65KHzの周波数の電流を出力して、互いの周波数の差が100Hz~1000Hzとなる干渉波を流す電極を少なくとも3極有すると共にプラスとマイナスの極を対とする電極を一対より多く有した構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、次の効果を得ることができる。60KHz~65KHzの周波数の電流は、皮膚下の脂肪層及び筋肉層のあたりに到達して熱を発生する。60KHz~65KHzの互いの周波数差で構成される100Hz~1000Hzの干渉波の電流は、皮膚下の脂肪層及び筋肉層のあたりに到達して低周波特有の収縮と緩和の落差を持たせて筋肉を動かすことができる。この作用により、筋肉の引き締め効果と脂肪の燃焼効果とを得ることができ、痩身効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の美容機器を説明するための図である。
【
図2】(a)は本発明の美容機器の動作状況を説明するための概念図、(b)は干渉波を説明するための概念図、である。
【
図3】本発明の美容機器の効果を確認するために行った実験結果を示す図である。
【
図4】本発明の美容機器の効果を確認するために行った実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、脂肪層と筋肉層を振動させることに加えて熱を付与するという目的を、脂肪層と筋肉層に40℃~42℃の適温を発生させる30Vの出力で60KHz~65KHzの周波数の電流を出力して、互いの周波数の差が100Hz~1000Hzとなる干渉波を流す電極を少なくとも3極有すると共にプラスとマイナスの極を対とする電極を一対より多く有した構成により実現したものである。
【0013】
65KHzより高い高周波では出力(電流値)を高くしなければ適温(40℃~42℃)を発生しないので、この種の機器に用いる周波数帯域としては出力に対する発熱のバランスが悪く、何より65KHzより高い高周波で生じる熱量が標準的に高く、使用法や回路的な制御上にエラーが生じたりすると、人体内部組織を破壊したりやけどを負ったりする可能性があると共に、家庭用、例えば無線LANや通信機器と干渉してこれらあるいは自器に障害が生じる可能性がある。一方、60KHzより低い高周波では、上記に対して出力は低くて良いものの、皮膚下深部への浸透性に欠け、抵抗値の高い脂肪層だけで発熱する可能性がある。
【0014】
また、60KHz~65KHzの周波数で互いの周波数の差が100Hzより低いと脂肪及び筋肉の運動は体感できるものの痛さが皮膚下神経に伝達される。一方、60KHz~65KHzの周波数で互いの周波数の差が1000Hzより高いと痛さは緩和されるものの脂肪及び筋肉の運動が体感できない。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の美容機器についての効果を確認する実験結果を記す。実施条件は、次のとおりである。
図1に示すように、プラス極A1、マイナス極A2、プラス極B1、マイナス極B2の4つの極を交互に隣接させて二対の電極を形成した。この構成において、一方(A極)の電極からは基準周波数で15mAの電流を流し(A波)、他方(B極)の電極からはA波の周波数より高い周波数で15mAの電流を流した(B波)。A波とB波の皮膚下における干渉部位は約10cm
2 の範囲を想定した。A波とB波の出力電圧は1KΩの負荷時に30Vとし、電流を流す時間は3分とした。
【0016】
図2に実験のイメージを示す。上記実験において、皮膚下の干渉部位で生じるA波とB波の干渉波C波による、痛み、温熱感、筋肉運動、についての体感(50人)を〇×で評価した。この実験結果を
図3に示す。
【0017】
実験の結果、まず、総評として、干渉波のC波に関しては100Hzに近づくほど筋肉及び脂肪の動きを強く感じることができ、1000Hzに近づくほど筋肉及び脂肪の動きを弱く感じることとなった。なお、表に載せていないが、100Hzより低いC波では痛みが強く、1000Hzより高いC波では筋肉及び脂肪の動きを感じることができなかった。
【0018】
A波、B波の周波数帯域について、54KHz台は全体的に熱を体感できず、体感できても測定時間後半にかすかに感じる程度であった。74KHz台では筋肉及び脂肪の動きを体感することができなかった。
【0019】
比較例1~6は、次の体感となった。
固定波としたA波の54.0KHzに対して、B波を54.1KHzとして100HzのC波を発生させた「比較例1」は、刺すような痛みと共にかすかな熱を感じ、また、筋肉及び脂肪の動きを体感できた。
【0020】
固定波としたA波の54.0KHzに対して、B波を54.4KHzとして400HzのC波を発生させた「比較例2」は、刺すような痛みは比較例1より緩和されるもののやや痛く、またかすかな熱を感じ、さらに、筋肉及び脂肪の動きを体感できた。
【0021】
固定波としたA波の54.0KHzに対して、B波を55.0KHzとして1000HzのC波を発生させた「比較例3」は、やや痛く感じ、また、かすかに熱を感じ、筋肉及び脂肪の動きを体感できた。
【0022】
固定波としたA波の74.0KHzに対して、B波を74.1KHzとして100HzのC波を発生させた「比較例4」、B波を74.4KHzとして400HzのC波を発生させた「比較例5」、B波を75.0KHzとして1000HzのC波を発生させた「比較例6」は、全て、熱量と適度な痛みが体感できるものの、筋肉及び脂肪の動きはかすかに体感できた。
【0023】
比較例1~6に対し、実施例1~5は次の体感を得ることができた。
固定波としたA波の64.0KHzに対して、B波を64.1KHzとして100HzのC波を発生させた「実施例1」は、やや痛く感じたものの十分かつ適切な熱を感じ、さらに、筋肉及び脂肪の動きを体感できた。
【0024】
固定波としたA波の64.0KHzに対して、B波を64.3KHzとして300HzのC波を発生させた「実施例2」、B波を64.4KHzとして400HzのC波を発生させた「実施例3」、B波を64.5KHzとして500HzのC波を発生させた「実施例4」は、全て、適度の痛み及び適度の熱を体感でき、また、筋肉及び脂肪の動きを体感できた。
【0025】
固定波としたA波の64.0KHzに対して、B波を65.0KHzとして1000HzのC波を発生させた「実施例5」は、適度の痛み及び適度の熱を体感でき、実施例1~4ほどではないがはっきりと筋肉及び脂肪の動きを体感できた。
【0026】
次の実験は、上記のいわゆる官能試験のうち、「熱」に関して数値化したものである。実施条件は、プラス極A1、マイナス極A2、プラス極B1、マイナス極B2の4つの極を交互に隣接させて二対の電極を形成して上記(実施例1~5、比較例1~6)同様にA波とB波の電流を30Vで3分間流した。
【0027】
干渉部位に熱電対
Aを配置し、熱電対
Aを配置した位置から少し距離をおいた(電流は流さない)部位にも熱電対
Bを配置した。これら熱電対
A,
Bにより電流を3分流した後の温度を計測した。この結果を
図4に示す。
【0028】
実験の結果、まず、総評として、干渉波のC波に関しては100Hz、400Hzでは結果にばらつきがあって傾向が掴めないものの、1000Hzでは明らかに干渉波のC波が到達している皮膚下深部の温度は、100Hz、400Hzに較べて高くなることが分かった。
【0029】
A波、B波の周波数帯域について、54KHz台は熱電対Aにおいて50.0℃を越えなかった。この結果は、官能試験において、全体的に熱を体感できず、体感できても測定時間後半にかすかに感じる程度という結果と符合する。一方、64KHz台、74KHz台は熱電対において50.0℃を越えた。この結果は、官能試験において、適度の熱さを体感できたという結果に符合する。
【0030】
比較例1~3は、実質的な数値としても体感としても熱が発生しない点で、熱を付与することができないことは判明したが、比較例4~6は、数値としても体感としても熱を付与することができたが、
図4では現れていない下記の体感上の不具合があった。
【0031】
すなわち比較例4~6は、固定波としたA波がそもそも74KHz台であることから、干渉波(C波)が64KHz台の実施例1~5より皮下深部で発生していると推測でき、このことから、同じ50℃台の温度を計測しても、電流を流した3分間は適度な熱さを体感できたが、熱が皮下深部から抜けずにいつまでも熱く、違和感を覚えることが判明した。
【0032】
このように、本発明であれば、皮膚下の脂肪層及び筋肉層に電気刺激と熱を効果的に付与することができるので、特定周波数帯域を用いて熱だけを付与する機器、あるいは電気刺激による振動運動だけを付与する機器、に比べて痩身効果の向上が期待できる。
【符号の説明】
【0033】
A1,B1 プラス極
A2,B2 マイナス極