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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ガラス長繊維用集束剤及びガラスヤーン
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/11 20060101AFI20240617BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20240617BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20240617BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20240617BHJP
   C03C 25/321 20180101ALI20240617BHJP
   C03C 25/36 20060101ALI20240617BHJP
   C03C 25/326 20180101ALI20240617BHJP
   D06M 101/00 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
D06M15/11
D06M15/53
D06M15/55
D06M15/564
C03C25/321
C03C25/36
C03C25/326
D06M101:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019230502
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021098903
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305040569
【氏名又は名称】ユニチカグラスファイバー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260771(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101711296(CN,A)
【文献】特開平04-006126(JP,A)
【文献】特開昭48-024096(JP,A)
【文献】特開2010-228992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
C03C25/00-25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉を含む、ガラス長繊維用集束剤であって、
前記澱粉が、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉と、架橋米澱粉とを含む、ガラス長繊維用集束剤。
【請求項2】
ポリエーテル、エポキシ樹脂及びポリウレタンからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載のガラス長繊維用集束剤。
【請求項3】
前記架橋米澱粉及び前記非架橋豆澱粉の合計100質量部における当該非架橋豆澱粉の割合が45~70質量部である、請求項1又は2に記載のガラス長繊維用集束剤。
【請求項4】
ガラスフィラメントの表面に、請求項1~のいずれか1項に記載のガラス長繊維用集束剤を塗布して得られる皮膜が形成されている、ガラスヤーン。
【請求項5】
ガラスフィラメントの表面に、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉と、架橋米澱粉とを含む皮膜が形成されている、ガラスヤーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス長繊維用集束剤及びガラスヤーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板用ガラスクロスの製織に用いられるガラス長繊維は、製織時の毛羽立ちを防ぐ等の目的で、澱粉を含むガラス長繊維用集束剤により被覆することがおこなわれている。
【0003】
ガラス長繊維用集束剤として、フィルム形成剤、潤滑剤及び水を含有するガラス長繊維用集束剤であって、前記フィルム形成剤は、糊化率5~25重量%の第1の澱粉、及び糊化率50~80重量%且つアミロペクチンの含有率が70~95重量%の第2の澱粉、を含有する、ガラス長繊維用集束剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、特許文献1には、第1の澱粉は架橋米澱粉が好ましいこと、第2の澱粉は馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉が好ましいことが開示されている。そして、該ガラス長繊維用集束剤によれば、製織時のガラス長繊維の糸切れ、毛羽立ちを減少させるガラス長繊維用集束剤、及びこのガラス長繊維用集束剤を用いたガラス長繊維束を提供することができるとされている。
【0004】
また、ガラス長繊維用集束剤として、不揮発性成分に澱粉を含むガラス長繊維用集束剤において、該澱粉はその全量の25質量%以上100質量%以下のアミロースを含むと共に、1~12μmの範囲の平均粒子径を備えることを特徴とするガラス長繊維用集束剤が知られている(例えば、特許文献2参照。)。該ガラス長繊維用集束剤によれば、前記澱粉がその全量の25質量%以上100質量%以下のアミロースを含むので粘度が低くなり、ガラス長繊維フィラメントの間隙に均一に浸透することができ、複数のガラス長繊維フィラメント同士を接着して優れた集束性を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-228992号公報
【文献】特開2013-112917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、プリント配線板用ガラスクロスは薄型化が進み、原料繊維であるガラスヤーンも該ガラスヤーンを構成するガラスフィラメント(ガラス長繊維)の小径化(例えば3~4μm程度)及びガラスフィラメント本数の少本数化(例えば20~50本)する必要がある。ここで、本発明者は、ガラスフィラメントの小径化及び少本数化をおこないつつ、上記特許文献1又は2の集束剤を塗布して得られるガラスヤーンを、ガラスクロスの緯糸としてエアージェット織機で緯入れする際、到達タイミングのバラツキが生じ、これに起因してガラスクロスに毛羽が発生しやすくなることを知得した。すなわち、エアージェット織機においては、緯糸の到達タイミングが部分的に遅くなると、これを検知し自動でエアー圧力を高めて、到達角度が設定どおりとなるようにしている。そして、本発明者は、上記特許文献1又は2の集束剤を塗布して得られるガラスヤーンを緯糸として緯入れした場合、当該エアー圧力の変動が生じ(すなわち、ガラスヤーンの飛走性のバラツキが生じ)、毛羽が生じやすくなることを知得したのである。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、エアージェット織機において緯入れする際に、到達タイミングの変動を抑制するガラスヤーンを得ることに寄与する、ガラス長繊維用集束剤及び該ガラス長繊維用集束剤を塗布して得られるガラスヤーンに関する技術、の提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決すべく本発明者が検討したところ、澱粉の老化に着目した。澱粉の老化とは、糊化した澱粉が冷却されたときにゲル化することをいう。この老化の際には、澱粉分子が、より密な集合状態に移行する。そして、本発明者は、この老化を利用し、澱粉皮膜をガラスフィラメント間に形成し、該澱粉皮膜の老化により該皮膜を収縮させることにより、ガラスフィラメントをより均一に集束させることを企図した。
【0009】
ここで、特許文献1及び2のガラス長繊維用集束剤に用いられている米澱粉は、糊化後も粒子のまま存在するよう架橋処理された架橋米澱粉であることから、皮膜を形成せず、皮膜が老化により収縮しこれによりガラスフィラメントを集束させる、ということが期待できない。一方で、特許文献1では、第2の澱粉として馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉を用いることが開示されているところ、これらの澱粉は架橋されてはいないと考えられ、皮膜は形成する。しかし、本発明者は、一般に、馬鈴薯澱粉及びタピオカ澱粉は、老化が起こりにくい澱粉として知られており、これらを用いた集束剤は、皮膜が老化により収縮しこれによりガラスフィラメントを集束させる機能が小さいと考えた。
【0010】
そこで、本発明者は、あえて、老化性が高い澱粉として知られている豆澱粉に着目し、架橋処理しない豆澱粉を用いることで皮膜形成性を高め、老化による皮膜収縮により集束性を高めることを想起した。そして、本発明者は、さらに検討を重ね、アミロース含量が35~45質量%である非架橋豆澱粉を用いることでガラスフィラメントの均一な集束性を高め、エアージェット織機において緯入れする際に、到達タイミングの変動を抑制することを可能とすることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.澱粉を含む、ガラス長繊維用集束剤であって、前記澱粉が、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉を含む、ガラス長繊維用集束剤。
項2.ポリエーテル、エポキシ樹脂及びポリウレタンからなる群より選ばれる1種以上を含む、項1に記載のガラス長繊維用集束剤。
項3.前記澱粉が、架橋米澱粉を含む、項1又は2に記載のガラス長繊維用集束剤。
項4.前記架橋米澱粉及び前記非架橋豆澱粉の合計100質量部における当該非架橋豆澱粉の割合が45~70質量部である、項3に記載のガラス長繊維用集束剤。
項5.ガラスフィラメントの表面に、項1~4のいずれか1項に記載のガラス長繊維用集束剤を塗布して得られる皮膜が形成されている、ガラスヤーン。
項6.ガラスフィラメントの表面に、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉を含む皮膜が形成されている、ガラスヤーン。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガラス長繊維用集束剤によれば、ガラス長繊維用集束剤であって、前記澱粉が、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉を含むことから、エアージェット織機において緯入れする際に、到達タイミングの変動を抑制するガラスヤーンを得ることに寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のガラス長繊維用集束剤は、澱粉を含む、ガラス長繊維用集束剤であって、前記澱粉が、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉を含む。
【0014】
<非架橋豆澱粉>
本発明のガラス長繊維用集束剤は、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉を含む。前述のように、豆澱粉は老化性が高い澱粉として知られている。本発明者は、ガラスフィラメントの小径化及び小本数化をおこないつつ、エアージェット織機において緯入れする際に、均一なガラスフィラメント集束性を担保すべく、あえて、老化性が高い豆澱粉に着目し、豆澱粉の中でも、架橋処理がなされておらず、アミロース含量が35~45質量%であるものを選択することにより、初めて、ガラスフィラメントの均一な集束性を高め、エアージェット織機において緯入れする際に、到達タイミングの変動を抑制するガラスヤーンを得ることに寄与することができることを見出したのである。
【0015】
本発明のガラス長繊維用集束剤に含まれる、非架橋豆澱粉は、アミロース含量が35~45%である。このようなアミロース含量とすることにより、皮膜形成性と老化性のバランスを取ることができ、均一な集束性に優れたガラスヤーンを得ることが可能となる。なお、本発明において、澱粉のアミロース含量は、ヨウ素親和力測定法の電流滴定法によって求める(澱粉科学ハンドブック、177~179ページ、二国二郎監修、昭和52年初版発行、朝倉書店)。測定に用いる澱粉を、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOという)に溶解後、遠心分離により不純物を除去し、遠心分離後のDMSO溶液中の澱粉をエタノールで再沈殿させたものを減圧乾燥により粉末化したものとする。また、滴定には電位差自動滴定装置(modelAT-118、京都電子工業株式会社製)を用いることができる。
【0016】
豆澱粉の原料としては、エンドウマメ、ヒラマメ、ソラマメ等が挙げられ、エンドウマメが好ましく挙げられる。
【0017】
本発明のガラス長繊維用集束剤において、全不揮発性成分中におけるアミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉の不揮発性成分の含有割合(質量%)としては、10~70質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましい。なお、本発明において、「不揮発性成分」とは、常圧下、110℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。また、後述する架橋米澱粉と、非架橋豆澱粉の合計100質量部における当該非架橋豆澱粉の割合は45~70質量部が好ましい。
【0018】
<架橋米澱粉>
本発明のガラス長繊維用集束剤は、架橋米澱粉を含むことができる。米澱粉はトウモロコシ澱粉等他の澱粉と比較して澱粉の粒子径が小さい。そして、米澱粉を架橋処理されたものとすることにより、ガラスフィラメント上に粒径の小さい米澱粉を皮膜化させずにそのまま存在させ、前述した非架橋豆澱粉皮膜による均一な集束性への阻害が少なく、ボールベアリングのようにガラスヤーンの摩擦を低減させ、主にガラスヤーンの毛羽の発生をより抑制する機能を果たす。
【0019】
米澱粉に架橋処理をおこなう架橋剤としては、公知のものでよく、例えば、エピクロルヒドリン、ジアルデヒド、トリメタリン酸ナトリウム、ジエポキシド、シアヌリッククロライド、ホルマリン等が挙げられ、エピクロルヒドリンが好ましく挙げられる。
【0020】
本発明のガラス長繊維用集束剤において、全不揮発性成分中における架橋米澱粉の不揮発性成分の含有割合(質量%)としては、10~40質量%が好ましく、15~28質量%がより好ましい。
【0021】
<他の澱粉>
本発明のガラス長繊維用集束剤は、本発明の効果を奏する範囲内で、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉、及び架橋米澱粉、以外の他の澱粉(以下、本明細書において「他の澱粉」と記載することがある。)を含むことができる。他の澱粉として、例えば、高アミロース含量トウモロコシ澱粉が挙げられる。高アミロース含量トウモロコシ澱粉のアミロース含量としては、例えば、70%以上が挙げられる。また、本発明のガラス長繊維用集束剤において、全不揮発性成分中における他の澱粉の不揮発性成分の含有量としては、0~25質量%が挙げられ、15~25質量%が挙げられる。
【0022】
本発明のガラス長繊維用集束剤において、全澱粉の不揮発性成分100質量部における非架橋豆澱粉の不揮発性成分の割合としては、30~100質量部が挙げられ、45~70質量部が好ましく挙げられる。
【0023】
<油脂>
本発明のガラス長繊維用集束剤は、油脂を含むことができる。油脂は、主にガラスフィラメント間の潤滑成分として機能することにより、ガラスヤーンに柔軟性を付与し、ガラスヤーンの製糸段階の毛羽抑制効果を一層優れたものとすることができる。
【0024】
本発明で使用される油脂の種類については、特に制限されないが、例えば、動物油、植物油、高級脂肪酸のエステル、炭化水素油等が挙げられる。
【0025】
動物油としては、具体的には、牛脂、牛脂、豚脂、馬油、ミンク油、魚油、卵黄油、及びこれらの硬化油(水素添加物)等が挙げられる。
【0026】
植物油としては、具体的には、ダイズ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、米胚芽油、サフラワー油、綿実油、ヤシ油、アーモンド油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、アボカド油、ツバキ油、パーシック油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ヒマシ油、ホホバ油、カカオ脂、ククイナッツ油、シアバター、月見草油、シソ油、茶実油、パーム核油、パーム油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、メドウホーム油、及びこれらの硬化油等が挙げられる。
【0027】
高級脂肪酸のエステルとしては、例えば、炭素数12~22の高級脂肪酸と炭素数1~22の1価アルコールとのエステル、好ましくは炭素数16~22の高級飽和脂肪酸と炭素数1~10の1価アルコールとのエステル、より好ましくは炭素数16~22の高級飽和脂肪酸と炭素数1~6の1価アルコールとのエステルが挙げられる。高級脂肪酸のエステルとして、具体的には、ステアリン酸ドデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。
【0028】
炭化水素油としては、具体的には、パラフィンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプスワックス等が挙げられる。
【0029】
これらの油脂の中でも、好ましくは高級脂肪酸のエステル及び炭化水素油が挙げられる。
【0030】
本発明のガラス長繊維用集束剤において、油脂は、1種のものを単独で使用してもよく、2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。本発明のガラス長繊維用集束剤において、油脂は、乳化状態で含まれていることが望ましい。油脂の乳化は、乳化剤等を使用して公知の手法によって行うことができる。
【0031】
本発明のガラス長繊維用集束剤において、全不揮発性成分中における油脂の不揮発性成分の含有割合(質量%)としては、15~45質量%が好ましく、25~35質量%がより好ましい。また、本発明のガラス長繊維用集束剤において、全澱粉の不揮発性成分100質量部に対する油脂の不揮発性成分の比率としては、40~80質量部が好ましく、50~70質量部がより好ましい。
【0032】
<樹脂>
本発明のガラス長繊維用集束剤は、樹脂を含むことができる。樹脂は、主に、前述したアミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉からなる皮膜の強度と伸度をより高める役割を果たし、ガラスヤーンの毛羽抑制効果をより優れたものとすることができる。
【0033】
樹脂としては、ポリウレタン、ポリエーテル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコールが挙げられる。また、上記樹脂は水溶性であっても非水溶性であってもよい。本発明における樹脂は、集束剤の調製に先立ち、事前にエマルジョン又はディスパージョンとすることが望ましい。
【0034】
ポリウレタンとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、オレフィン系ポリオール等のポリオールと、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等のポリイソシアネートとを任意の当量比で反応させてなるウレタン樹脂を用いることができる。ポリウレタン末端はイソシアネート基であっても水酸基であってもよく、これらの基は公知の手法によりブロック化されていてもよい。また、ポリウレタンの主鎖は公知の手法による変成がなされていてもよい。中でも、ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるカーボネート系ポリウレタンが好ましい。
【0035】
ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はこれらをイソシアネートで変性したものが挙げられる。
【0036】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0037】
アクリル樹脂は、重合性単量体として(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体を使用して重合させることにより得られるポリマーである。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の双方を含む化合物名である。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸誘導体の中の1種のみを重合させたホモポリマーであってもよく、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸誘導体の中の2種以上を重合させたコポリマー、又は(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸誘導体の中の1種以上と、その他の重合性単量体1種以上とを重合させたコポリマーであってもよい。
【0038】
樹脂の中でも、ポリウレタン、ポリエーテル又はエポキシ樹脂が好ましく、ポリウレタン又はポリエーテルがより好ましい。樹脂は、1種のものを単独で使用してもよく、2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。とりわけ、樹脂として、エポキシ樹脂若しくはポリウレタンと、ポリエーテルとを併用、より好ましくは、ポリウレタンとポリエーテルとを併用すると、集束状態を維持する性能(抱合性)がより一層優れたものとなり、ガラスヤーンの毛羽抑制効果がより一層優れたものとなる。エポキシ樹脂若しくはポリウレタンと、ポリエーテルとの合計100質量部に対する、ポリエーテルの割合としては、30~70質量部が好ましい。
【0039】
本発明のガラス長繊維用集束剤において、全不揮発性成分中における樹脂の不揮発性成分の含有割合(質量%)としては、5~20質量%が好ましく、10~15質量%がより好ましい。また、本発明のガラス長繊維用集束剤において、全澱粉の不揮発性成分100質量部に対する樹脂の不揮発性成分の比率としては、10~30質量部が好ましく、20~30質量部がより好ましい。
【0040】
<澱粉、油脂、樹脂以外の不揮発性成分>
本発明のガラス長繊維集束剤は、本発明の効果を奏する範囲で、澱粉、油脂及び樹脂以外の不揮発性成分を含有することができる。
【0041】
本発明のガラス長繊維集束剤に配合できる澱粉、油脂及び樹脂以外の不揮発性成分として、例えば、柔軟剤成分が挙げられる。柔軟剤成分としては、例えば、ポリアミド誘導体、脂肪酸アミド誘導体、アルキルアミド誘導体、アミノ変性シリコン誘導体、ポリアミン誘導体等が挙げられる。これらの柔軟剤成分の中でも、好ましくはアルキルアミド誘導体が挙げられる。
【0042】
アルキルアミド誘導体としては、例えば、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。一般式(1)中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を示す。Rはアルキル基又はアルケニル基の炭素数としては、例えば、7~23、好ましくは10~18、更に好ましくは12~16が挙げられる。また、一般式(1)中、Rは、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基を示す。
【0043】
【化1】
【0044】
また、本発明のガラス長繊維集束剤に配合できる澱粉、油脂及び樹脂以外の不揮発性成分として、例えば、帯電防止剤が挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、アニオン系、カチオン性の各種界面活性剤が挙げられ、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルスルホネート、カチオン化セルロース、N,N,N,N-テトラアルキル第四級アンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0045】
また、本発明のガラス長繊維集束剤に配合できる澱粉、油脂及び樹脂以外の不揮発性成分として、消泡剤、防腐剤が挙げられる。消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤、エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤等が挙げられる。防腐剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、はっ酵乳、乳酸菌飲料、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム等が挙げられる。
【0046】
本発明のガラス長繊維用集束剤において、全不揮発性成分中における、澱粉、油脂、樹脂以外の不揮発性成分の含有割合(質量%)としては、1~8質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。また、本発明のガラス長繊維用集束剤において、澱粉100質量部に対する澱粉、油脂、樹脂以外の不揮発性成分の比率としては、5~15質量部が好ましく、7~12質量部がより好ましい。
【0047】
<水性溶媒(揮発性成分)>
本発明のガラス長繊維用集束剤は、基剤として水性溶媒(揮発性成分)を含有する。水性媒体の種類については、特に制限されないが、例えば、水、水溶性有機溶媒、及びこれらの混用溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N-メチルピロリドン等の極性溶媒が挙げられる。
【0048】
本発明のガラス長繊維用集束剤における水性溶媒の濃度は、不揮発性成分を除く残部を占めていればよい。
【0049】
本発明のガラス長繊維用集束剤における不揮発性成分の濃度としては、4~8質量%が挙げられ、5~7質量%が好ましく挙げられる。
【0050】
<本発明のガラス長繊維用集束剤の製造方法>
本発明のガラス長繊維用集束剤は、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉、必要に応じて配合される他の不揮発性成分、及び水性溶媒を所定量配合することにより得ることができる。
【0051】
<本発明のガラス長繊維用集束剤の使用方法>
本発明のガラス長繊維用集束剤は、ガラス長繊維を集束させてガラスヤーン(ガラス長繊維束)を調製するために使用される。本発明のガラス長繊維用集束剤で処理されたガラス長繊維は、不揮発性成分によって表面が皮膜で被覆された状態になる。
【0052】
本発明のガラス長繊維用集束剤の処理対象となるガラス長繊維の種類については、特に制限されないが、例えば、Eガラス、Tガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Cガラス、Hガラス、ARGガラス、石英ガラス等が挙げられる。本発明において、Eガラスとは、具体的には、SiOが52~56質量%、Alが12~16質量%、CaO+MgOが20~25質量%、Bが5~10質量%を含むガラス組成物からなるガラス素材である。
【0053】
また、本発明のガラス長繊維用集束剤の処理対象となるガラス長繊維の他の好適な例として、低誘電性を有するガラス長繊維が挙げられる。低誘電性を有するガラス長繊維を構成するガラス組成物としては、例えば、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物が挙げられ、より具体的には、SiOが50~56質量%、Bが20~30質量%、Alが10~20質量%を含むガラス組成物が挙げられる。なお、本明細書において、「誘電率」とは真空の誘電率との比である比誘電率を指す。また、本明細書において、「周波数1MHzにおける誘電率」は、ASTM D150-87に準拠して、測定温度を20℃に設定して測定される値である。
【0054】
本発明のガラス長繊維用集束剤の処理対象となるガラス長繊維の繊維径については、特に制限されないが、毛羽発生の抑制効果をより有効に発揮させるという観点から、好ましくは3~5μm、更に好ましくは3~4.5μmが挙げられる。
【0055】
本発明のガラス長繊維用集束剤の処理対象となるガラス長繊維の番手については、特に制限されないが、毛羽発生の抑制効果をより有効に発揮させるという観点から、好ましくは0.5~12tex、更に好ましくは0.5~5tex、特に好ましくは0.5~3texが挙げられる。
【0056】
本発明のガラス長繊維用集束剤を用いて1本のガラスヤーンに集束させるガラス長繊維のフィラメント数については、特に制限されないが、例えば、20~400本、好ましくは20~200本、更に好ましくは20~50本が挙げられる。
【0057】
本発明のガラス長繊維用集束剤を用いてガラス長繊維を処理してガラスヤーンを調製するには、ガラス長繊維に本発明のガラス長繊維用集束剤を塗布して集束し、乾燥すればよい。本発明のガラス長繊維用集束剤をガラス長繊維に塗布するには、例えば、ベルト型やローラー型のアプリケーター、スプレー等を使用すればよい。また、本発明のガラス長繊維用集束剤が塗布されたガラス長繊維を集束するには、公知の集束機を使用すればよい。また、集束後の乾燥は、例えば、室温~150℃の範囲の温度条件で行えばよい。斯くして、本発明のガラス長繊維用集束剤をガラス長繊維に塗布して集束した後に乾燥することにより、水性溶媒等の揮発性成分が除去され、ガラス長繊維の表面に本発明のガラス長繊維用集束剤に含まれる不揮発性成分による皮膜が形成されたガラスヤーンが得られる。斯くして得られたガラスヤーンは、必要に応じて、撚糸機で撚りをかけて、ガラスクロスの原料糸として使用できる。
【0058】
本発明のガラス長繊維用集束剤を処理対象となるガラス長繊維に付着させる量については、毛羽発生の抑制効果が有効に奏される範囲内になるように適宜設定すればよく、例えば、集束されたガラスヤーンの強熱減量が0.3~2.0質量%、好ましくは0.8~1.5質量%となる範囲内で設定すればよい。ガラスヤーンの強熱減量は、本発明のガラス長繊維用集束剤に含まれる不揮発性成分の付着量に実質的に相当しており、JIS R 3420 2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.3.2 強熱減量」に規定されている方法に従って測定される値である。
【0059】
<ガラスヤーン>
本発明のガラスヤーンは、表面にアミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉を含む皮膜が形成されているガラス長繊維を含むことを特徴とする。
【0060】
本発明のガラスヤーンは、前記ガラス長繊維用集束剤でガラス長繊維を処理することにより得ることができる。本発明のガラスヤーンにおいて、使用するガラス長繊維の種類、繊維径、番手等については、前記の通りである。また、ガラス長繊維上に形成されている皮膜の量は、前述した強熱減量と同様である。また、ガラス長繊維上に形成されている皮膜に含まれるアミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉の構成、当該皮膜に含まれ得るその他の不揮発性成分の種類、当該皮膜の組成等についても、前述のとおりである。
【実施例
【0061】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0062】
1.試験方法
1-1.ガラスヤーン及びガラスクロスの強熱減量
ガラスヤーン及びガラスクロスの強熱減量は、JIS R 3420 2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.3.2 強熱減量」に規定されている方法に従って、測定、算出した。
【0063】
1-2.ガラス長繊維(フィラメント)の単繊維直径(μm)
ガラス長繊維の単繊維直径は、JIS R 3420 2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.6 単繊維直径」のB法(横断面法)に規定されている方法に従って、測定、算出した。
【0064】
1-3.ガラスヤーンの番手(tex)
ガラスヤーンの番手は、JIS R 3420 2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.1 番手」に規定されている方法に従って、測定、算出した。
【0065】
1-4.ガラスヤーンの毛羽(個/100m)
得られたガラスヤーンについて、100m/分の速度で解舒してテンションバーを通過した後の毛羽の数をセンサーにてカウントした。1kmカウントし、100m当たりの毛羽数(個/100m)を求めた。
【0066】
1-5.ガラスヤーンの集束性を維持する性能(抱合性)評価
試験装置として蛭田理研株式会社製抱合力試験機を用い、荷重を30g、40g及び50gとしてそれぞれガラスヤーンの端にセットし、回転速度を100rpmとして、10回転後に停止させたときの糸のばらけ具合を目視で観察した。ガラスヤーン中のフィラメントが開繊した場合に糸がばらけたと判断し、下記判断基準によりガラスヤーンの集束性を評価した。
◎:荷重30g、40g、50gいずれもばらけなし
○:荷重30g、40gでばらけなし、荷重50gでばらけあり
△:荷重30gでばらけなし、荷重40g、50gでばらけあり
×:荷重30g、40g、50gいずれもばらけあり
【0067】
1-6.エアージェット織機において緯入れする際の到達タイミングの変動評価
ガラスヤーンを高速エアージェット織機(津田駒工業株式会社製ZAX9100)にて設定到達角度230°、織機回転数400rpmの条件で製織を行って、1000ピック打ち込んだときの到達タイミングの標準偏差σを測定し、下記判断基準により評価した。△以上を合格とした。
○:σ≦2.0
△:2.0<σ≦3.0
×:3.0<σ
【0068】
2.ガラス長繊維用集束剤の調製に使用した材料
実施例及び比較例において、ガラス長繊維用集束剤における各配合成分としては、以下のものを使用した。
(1)架橋米澱粉(不揮発性成分:90質量%)
(2)非架橋豆澱粉(不揮発性成分:90質量%、アミロース含量:40%、原料:エンドウマメ)
(3)非架橋高アミロース含量トウモロコシ澱粉(不揮発性成分:90質量%、アミロース含量70%)
(4)非架橋馬鈴薯澱粉(不揮発性成分:90%)
(5)油脂(油脂不揮発性成分:40質量%、原料:動物油、植物油、乳化剤)
(6)樹脂A(イソシアネート変性ポリエーテル系高分子、不揮発性成分:100質量%)
(7)樹脂B(変性エポキシ樹脂、不揮発性成分:35質量%)
(8)樹脂C(水系ウレタン樹脂(無黄変型イソシアネート、ポリカーボネート系)、不揮発性成分:25質量%
(9)柔軟剤(アルキルアミド誘導体、不揮発性成分:30質量%)
(10)帯電防止剤(N,N,N,N-テトラアルキル第四級アンモニウム塩、不揮発性成分:25質量%)
【0069】
3.ガラス長繊維用集束剤、ガラスヤーンの製造
(実施例1)
(1)ガラス長繊維用集束剤の製造
不揮発性成分組成比が表1に記載のとおりになるようにして、水性溶媒として所定量の水と混合し、ガラス長繊維用集束剤を得た。ガラス長繊維用集束剤中の不揮発性成分濃度は6.15質量%であった。
【0070】
(2)ガラスヤーンの製造
前記ガラス長繊維用集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラス長繊維(Eガラス、フィラメント径4.1μm)にアプリケーターを用いて塗布し、当該ガラス長繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンは、フィラメント本数が40本、撚り数が0.5Z、番手が1.32tex、強熱減量が1.2質量%であった。
【0071】
(実施例2)
(1)ガラス長繊維用集束剤の製造
不揮発性成分組成比が表1に記載のとおりになるようにして、水性溶媒として所定量の水と混合し、ガラス長繊維用集束剤を得た。ガラス長繊維用集束剤中の不揮発性成分濃度は6.15質量%であった。
【0072】
(2)ガラスヤーンの製造
前記ガラス長繊維用集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラス長繊維(Eガラス、フィラメント径4.1μm)にアプリケーターを用いて塗布し、当該ガラス長繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンは、フィラメント本数が40本、撚り数が0.5Z、番手が1.32tex、強熱減量が1.2質量%であった。
【0073】
(実施例3)
(1)ガラス長繊維用集束剤の製造
不揮発性成分組成比が表1に記載のとおりになるようにして、水性溶媒として所定量の水と混合し、ガラス長繊維用集束剤を得た。ガラス長繊維用集束剤中の不揮発性成分濃度は6.03質量%であった。
【0074】
(2)ガラスヤーンの製造
前記ガラス長繊維用集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラス長繊維(Eガラス、フィラメント径4.1μm)にアプリケーターを用いて塗布し、当該ガラス長繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンは、フィラメント本数が40本、撚り数が0.5Z、番手が1.32tex、強熱減量が1.2質量%であった。
【0075】
(実施例4)
(1)ガラス長繊維用集束剤の製造
不揮発性成分組成比が表1に記載のとおりになるようにして、水性溶媒として所定量の水と混合し、ガラス長繊維用集束剤を得た。ガラス長繊維用集束剤中の不揮発性成分濃度は6.06質量%であった。
【0076】
(2)ガラスヤーンの製造
前記ガラス長繊維用集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラス長繊維(Eガラス、フィラメント径4.1μm)にアプリケーターを用いて塗布し、当該ガラス長繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンは、フィラメント本数が40本、撚り数が0.5Z、番手が1.32tex、強熱減量が1.3質量%であった。
【0077】
(実施例5)
(1)ガラス長繊維用集束剤の製造
不揮発性成分組成比が表1に記載のとおりになるようにして、水性溶媒として所定量の水と混合し、ガラス長繊維用集束剤を得た。ガラス長繊維用集束剤中の不揮発性成分濃度は6.06質量%であった。
【0078】
(2)ガラスヤーンの製造
前記ガラス長繊維用集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラス長繊維(Eガラス、フィラメント径4.1μm)にアプリケーターを用いて塗布し、当該ガラス長繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンは、フィラメント本数が40本、撚り数が0.5Z、番手が1.32tex、強熱減量が1.3質量%であった。
【0079】
(実施例6)
(1)ガラス長繊維用集束剤の製造
不揮発性成分組成比が表1に記載のとおりになるようにして、水性溶媒として所定量の水と混合し、ガラス長繊維用集束剤を得た。ガラス長繊維用集束剤中の不揮発性成分濃度は6.06質量%であった。
【0080】
(2)ガラスヤーンの製造
前記ガラス長繊維用集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラス長繊維(Eガラス、フィラメント径4.1μm)にアプリケーターを用いて塗布し、当該ガラス長繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンは、フィラメント本数が40本、撚り数が0.5Z、番手が1.32tex、強熱減量が1.3質量%であった。
【0081】
(実施例7)
(1)ガラス長繊維用集束剤の製造
不揮発性成分組成比が表1に記載のとおりになるようにして、水性溶媒として所定量の水と混合し、ガラス長繊維用集束剤を得た。ガラス長繊維用集束剤中の不揮発性成分濃度は6.06質量%であった。
【0082】
(2)ガラスヤーンの製造
前記ガラス長繊維用集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラス長繊維(Eガラス、フィラメント径4.1μm)にアプリケーターを用いて塗布し、当該ガラス長繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンは、フィラメント本数が40本、撚り数が0.5Z、番手が1.32tex、強熱減量が1.3質量%であった。
【0083】
(比較例1)
(1)ガラス長繊維用集束剤の製造
不揮発性成分組成比が表1に記載のとおりになるようにして、水性溶媒として所定量の水と混合し、ガラス長繊維用集束剤を得た。ガラス長繊維用集束剤中の不揮発性成分濃度は5.84質量%であった。
【0084】
(2)ガラスヤーンの製造
前記ガラス長繊維用集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラス長繊維(Eガラス、フィラメント径4.1μm)にアプリケーターを用いて塗布し、当該ガラス長繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンは、フィラメント本数が40本、撚り数が0.5Z、番手が1.32tex、強熱減量が1.1質量%であった。
【0085】
(比較例2)
(1)ガラス長繊維用集束剤の製造
不揮発性成分組成比が表1に記載のとおりになるようにして、水性溶媒として所定量の水と混合し、ガラス長繊維用集束剤を得た。ガラス長繊維用集束剤中の不揮発性成分濃度は6.15質量%であった。
【0086】
(2)ガラスヤーンの製造
前記ガラス長繊維用集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラス長繊維(Eガラス、フィラメント径4.1μm)にアプリケーターを用いて塗布し、当該ガラス長繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンは、フィラメント本数が40本、撚り数が0.5Z、番手が1.32tex、強熱減量が1.2質量%であった。
【0087】
4.ガラスヤーンの評価結果
実施例1~7及び比較例1~2で得られたガラスヤーン及びガラスクロスの物性を測定した結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1から、実施例1~7は、澱粉を含む、ガラス長繊維用集束剤であって、前記澱粉が、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉を含む、ガラス長繊維用集束剤であったことから、エアージェット織機において緯入れする際に、到達タイミングの変動を抑制するガラスヤーンを得ることに寄与することが明らかとなった。
【0090】
また、実施例2~7は、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉と、ポリエ
ーテル、エポキシ樹脂及びポリウレタンからなる群より選ばれる1種以上を含むものであったことから、非架橋豆澱粉からなる皮膜の強度と伸度がより高められ、ガラスヤーンの毛羽抑制効果がより優れるものであった。とりわけ、実施例7は、ポリエーテルとポリウレタンとを含むものであったことから、抱合性がより一層優れたものとなり、ガラスヤーンの毛羽抑制効果が一層優れるものであった。
【0091】
さらに、実施例3~7は、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉と、ポリエーテル、エポキシ樹脂及びポリウレタンからなる群より選ばれる1種以上に加え、架橋米澱粉を含むものであったことから、より一層ガラスヤーンの毛羽抑制効果に優れるものであった。
【0092】
一方、比較例1及び2は、澱粉が、アミロース含量が35~45%である非架橋豆澱粉を含まないものであったことから、エアージェット織機において緯入れする際に、到達タイミングの変動を抑制するガラスヤーンを得ることができなかった。