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特許7504375固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1213 20160101AFI20240617BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20240617BHJP
   H01M 8/124 20160101ALI20240617BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/12 101
H01M8/124
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020161058
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054071
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 新宇
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174117(JP,A)
【文献】特開2017-174516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層と、
前記電解質層上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する中間層と、
前記中間層上に設けられたカソードと、を備え、
前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており、
前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
【請求項2】
前記中間層において、前記カソード側に対する凸部における前記空隙の数密度は、前記カソード側に対する凹部における前記空隙の数密度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項3】
前記空隙の平均径は、50nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項4】
前記電解質層の前記凹凸は、前記中間層側の面において、平面視で2次元方向に並ぶように設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項5】
前記中間層は、セリアに添加物が添加された材料であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項6】
酸化物イオン伝導性材料粉末を含むスラリを塗工することで電解質層グリーンシートを作製し、
前記電解質層グリーンシート上に、前記電解質層グリーンシートの前記酸化物イオン伝導性材料粉末のD50%粒径よりも小さいD50%粒径を有する酸化物イオン伝導性材料粉末と、樹脂粒子とを含むスラリを塗工し、焼成することで、表面に凹凸を有する電解質層を形成する工程と、
前記電解質層上に、酸化物イオン伝導性を有しかつカソード活性を有していない中間層をPVD法で成膜し、
前記中間層上にカソードを成膜し、
前記中間層をPVD法で成膜する際に、前記電解質層側から前記カソード側にかけて複数の空隙が所定の線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されるように、成膜速度および基盤加熱温度の少なくともいずれか一方を制御することを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物型燃料電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池は、アノードとカソードとによって固体酸化物系電解質が挟まれた構造を有している。このような固体酸化物型燃料電池に用いられるカソードは、固体酸化物系電解質と反応することがある。そこで、固体酸化物系電解質とカソードとの反応を抑制するために、GDCなどの反応防止膜をカソードと固体酸化物系電解質との間に中間層として設ける技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-504946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、中間層を設けると、発電時の反応抵抗が高くなるおそれがある。また、昇降温を繰り返すと、電解質層と中間層との間の熱膨張率差に起因して中間層に剥がれが生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、中間層の剥がれを抑制しつつ反応抵抗を低下させることができる固体酸化物型燃料電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る固体酸化物型燃料電池は、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する中間層と、前記中間層上に設けられたカソードと、を備え、前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており、前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記固体酸化物型燃料電池の前記中間層において、前記カソード側に対する凸部における前記空隙の数密度は、前記カソード側に対する凹部における前記空隙の数密度よりも大きくてもよい。
【0008】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記空隙の平均径は、50nm以下であってもよい。
【0009】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記電解質層の前記凹凸は、前記中間層側の面において、平面視で2次元方向に並ぶように設けられていてもよい。
【0010】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記中間層は、セリアに添加物が添加された材料であってもよい。
【0011】
本発明に係る固体酸化物型燃料電池の製造方法は、酸化物イオン伝導性材料粉末を含むスラリを塗工することで電解質層グリーンシートを作製し、前記電解質層グリーンシート上に、前記電解質層グリーンシートの前記酸化物イオン伝導性材料粉末のD50%粒径よりも小さいD50%粒径を有する酸化物イオン伝導性材料粉末と、樹脂粒子とを含むスラリを塗工し、焼成することで、表面に凹凸を有する電解質層を形成する工程と、前記電解質層上に、酸化物イオン伝導性を有しかつカソード活性を有していない中間層をPVD法で成膜し、前記中間層上にカソードを成膜し、前記中間層をPVD法で成膜する際に、前記電解質層側から前記カソード側にかけて複数の空隙が所定の線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されるように、成膜速度および基盤加熱温度の少なくともいずれか一方を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、中間層の剥がれを抑制しつつ反応抵抗を低下させることができる固体酸化物型燃料電池およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】燃料電池の積層構造を例示する模式的断面図である。
図2】支持体、混合層、およびアノードの詳細を例示する拡大断面図である。
図3】(a)は電解質層からカソードまでの拡大断面図であり、(b)は中間層の平面図である。
図4】電解質層からカソードまでの拡大断面図である。
図5】中間層を模式的に拡大した拡大図である。
図6】凹部41と凸部42との境界について説明するための図である。
図7】燃料電池の製造方法のフローを例示する図である。
図8】積層工程における電解質層グリーンシートおよび凹凸層用グリーンシートを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0015】
図1は、固体酸化物型の燃料電池100の積層構造を例示する模式的断面図である。図1で例示するように、燃料電池100は、一例として、支持体10上に、混合層20、アノード30、電解質層40、中間層50、およびカソード60がこの順に積層された構造を有する。複数の燃料電池100を積層させて、燃料電池スタックを構成してもよい。
【0016】
電解質層40は、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を主成分とし、ガス不透過性を有する緻密層である。電解質層40は、スカンジア・イットリア安定化酸化ジルコニウム(ScYSZ)、YSZ(イットリア安定化酸化ジルコニウム)、Gd(ガドリニウム)がCeOにドープされたGDC(Gdドープセリア)などを主成分とすることが好ましい。ScYSZを用いる場合、Y+Scの濃度は6mol%~15mol%の間で酸化物イオン伝導性が最も高く、この組成の材料を用いることが望ましい。また、電解質層40の厚みは、20μm以下であることが好ましく、より望ましいのは10μm以下である。電解質は薄いほど良いが、両側のガスが漏れないように製造するためには、1μm以上の厚みが望ましい。
【0017】
カソード60は、カソードとしての電極活性を有する電極であり、電子伝導性および酸化物イオン伝導性を有する。例えば、カソード60は、電子伝導性および酸化物イオン伝導性を有するセラミックス材料を主成分とする。当該セラミックス材料として、例えば、LaCoO系材料、LaMnO系材料、LaFeO系材料などを用いることができる。例えば、LaCoO系材料として、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)などを用いることができる。LSCは、Sr(ストロンチウム)がドープされたLaCoOである。
【0018】
中間層50は、電解質層40とカソード60との反応を防止する成分を主成分とする。中間層50の構成材料は、電解質層40の構成材料と異なっている。中間層50は、酸化物イオン伝導性を有しているが、カソードとしての電極活性を有していない。例えば、中間層50は、セリア(CeO)に添加物が添加された構造を有している。添加物は、特に限定されるものではない。例えば、中間層50は、GDC(例えば、Ce0.8Gd0.22-x)などを主成分とする。一例として、電解質層40がScYSZを含有し、カソード60がLSCを含有する場合には、中間層50は、以下の反応を防止する。
Sr+ZrO→SrZrO
La+ZrO→LaZr
【0019】
図2は、支持体10、混合層20、およびアノード30の詳細を例示する拡大断面図である。図2で例示するように、支持体10は、ガス透過性を有するとともに、混合層20、アノード30、電解質層40、中間層50およびカソード60を支持可能な部材である。支持体10は、金属を主成分とする金属多孔体であり、例えば、Fe-Cr合金の多孔体などである。
【0020】
アノード30は、アノードとしての電極活性を有する電極であり、セラミックス材料の電極骨格を有する。電極骨格には、金属成分が含まれていない。この構成では、高温還元雰囲気での焼成時に、金属成分の粗大化によるアノードの空隙率の低下が抑制される。また、支持体10の金属成分との合金化が抑制され、触媒機能低下が抑制される。
【0021】
アノード30の電極骨格は、電子伝導性および酸化物イオン伝導性を有している。アノード30は、電子伝導性セラミックス31を含有している。電子伝導性セラミックス31として、例えば、組成式がABOで表されるペロブスカイト型酸化物であって、AサイトがCa、Sr、Ba、Laの群から選ばれる少なくとも1種であり、BサイトがTi、Cr、Ni、Mg、Coから選ばれる少なくとも1種であるペロブスカイト型酸化物を用いることができる。AサイトとBサイトのモル比は、B≧Aであってもよい。具体的には、電子伝導性セラミックス31として、LaCrO系材料、SrTiO系材料などを用いることができる。
【0022】
また、アノード30の電極骨格は、酸化物イオン伝導性セラミックス32を含有している。酸化物イオン伝導性セラミックス32は、ScYSZなどである。例えば、スカンジア(Sc)が5mol%~16mol%で、イットリア(Y)が1mol%~3mol%の組成範囲を有するScYSZを用いることが好ましい。スカンジアとイットリアの添加量が合わせて6mol%~15mol%となるScYSZがさらに好ましい。この組成範囲で、酸化物イオン伝導性が最も高くなるからである。なお、酸化物イオン伝導性セラミックス32は、例えば、酸化物イオンの輸率が99%以上の材料である。酸化物イオン伝導性セラミックス32として、GDCなどを用いてもよい。図2の例では、酸化物イオン伝導性セラミックス32として、電解質層40に含まれる固体酸化物と同じ固体酸化物を用いている。
【0023】
図2で例示するように、アノード30において、例えば、電子伝導性セラミックス31と酸化物イオン伝導性セラミックス32とが電極骨格を形成している。この電極骨格によって、複数の空隙が形成される。空隙部分の電極骨格の表面には、アノード触媒が担持されている。したがって、空間的に連続して形成されている電極骨格において、複数のアノード触媒が空間的に分散して配置されている。アノード触媒として、複合触媒を用いることが好ましい。例えば、複合触媒として、酸化物イオン伝導性セラミックス33と、触媒金属34とが、電極骨格の表面に担持されていることが好ましい。酸化物イオン伝導性セラミックス33として、例えば、YがドープされたBaCe1-xZr(BCZY、x=0~1)、YがドープされたSrCe1-xZr(SCZY、x=0~1)、SrがドープされたLaScO(LSS)、GDCなどを用いることができる。触媒金属34として、Niなどを用いることができる。酸化物イオン伝導性セラミックス33は、酸化物イオン伝導性セラミックス32と同じ組成を有していてもよいが、異なる組成を有していてもよい。なお、触媒金属34として機能する金属は、未発電時には化合物の形態をとっていてもよい。例えば、Niは、NiO(酸化ニッケル)の形態をとっていてもよい。これらの化合物は、発電時には、アノード30に供給される還元性の燃料ガスによって還元され、アノード触媒として機能する金属の形態をとるようになる。
【0024】
混合層20は、金属材料21とセラミックス材料22とを含有する。混合層20において、金属材料21とセラミックス材料22とがランダムに混合されている。したがって、金属材料21の層とセラミックス材料22の層とが積層されたような構造が形成されているわけではない。混合層20も多孔質状であり、複数の空隙が形成されている。金属材料21は、金属であれば特に限定されるものではない。図2の例では、金属材料21として、支持体10と同じ金属材料が用いられている。例えば、セラミックス材料22として、ScYSZ、GDC、SrTiO系材料、LaCrO系材料などを用いることができる。SrTiO系材料およびLaCrO系材料は高い電子伝導性を有するため、混合層20におけるオーム抵抗を小さくすることができる。
【0025】
燃料電池100は、以下の作用によって発電する。カソード60には、空気などの、酸素を含有する酸化剤ガスが供給される。カソード60においては、カソード60の電極活性の効果により、カソード60に到達した酸素と、外部電気回路から供給される電子とが反応して酸化物イオンになる。酸化物イオンは、中間層50および電解質層40を伝導してアノード30側に移動する。一方、支持体10には、水素ガス、改質ガスなどの、水素を含有する燃料ガスが供給される。燃料ガスは、支持体10および混合層20を介してアノード30に到達する。アノード30に到達した水素は、アノード30の電極活性の効果により、アノード30において電子を放出するとともに、カソード60側から電解質層40を伝導してくる酸化物イオンと反応して水(HO)になる。放出された電子は、外部電気回路によって外部に取り出される。外部に取り出された電子は、電気的な仕事をした後に、カソード60に供給される。以上の作用によって、発電が行われる。
【0026】
中間層50が設けられた燃料電池100において、カソード反応に最も寄与する場所は、中間層50とカソード60とが接触する界面である。この接触界面の面積は、反応抵抗に反比例する。したがって、単位面積当たりの接触面積が大きいほど、単位面積当たりの反応抵抗が低くなる。以上のことから、中間層50とカソード60との接触面積を向上させることが、燃料電池100の開発の課題となる。
【0027】
そこで、本実施形態に係る燃料電池100は、中間層50とカソード60との接触面積を向上させる構造を有している。図3(a)は、電解質層40からカソード60までの拡大断面図である。図3(a)で例示するように、中間層50は、カソード60側の面に複数の凹部51と凸部52とが交互に並ぶように形成されている。凸部52は、カソード60側に突出して湾曲するような形状を有している。図3(b)で例示するように、凹部51と凸部52とが交互に並ぶ方向は、一方向だけではなく、中間層50の面内で2次元方向に並んでいる。2次元方向は、中間層50の面内で必ずしも直交していなくてもよく、交差していればよい。中間層50に対する平面視において、凸部52が粒子状となっており、中間層50の面内にランダムに並んでいる。
【0028】
中間層50がカソード60側の面に凹凸を有することから、カソード60も中間層50の凹凸に沿うように凹凸を有する。すなわち、カソード60は、図4で例示するように、中間層50の凹部51が形成された箇所に、中間層50側に突出する凸部61を備え、中間層50の凸部52が形成された箇所に凹部62を備える。したがって、中間層50とカソード60との接触界面の面積が大きくなる。また、中間層50およびカソード60の凹凸が並ぶ方向が面内で2次元方向に並ぶため、中間層50とカソード60との接触界面の面積がより大きくなる。この構成では、単位面積あたりの反応場が多くなり、カソード60の反応抵抗を低下させることができる。
【0029】
カソード60の反応抵抗を低下させるためには、電解質層40とカソード60との距離が短いことが望まれる。そこで、電解質層40のカソード60側の面にも凹凸が形成されている。中間層50の電解質層40側の面も、当該電解質層40の凹凸の形状に沿うように形成されている。例えば、図4で例示するように、電解質層40は、カソード60側の面に複数の凹部41と凸部42とが交互に形成されている。中間層50および電解質層40に対する平面視において、凹部51と凹部41の位置が略一致し、凸部52と凸部42の位置が略一致する。したがって、凹部41および凸部42も、一方向だけに並ぶのではなく、電解質層40の面内で2次元方向に並んでいる。したがって、電解質層40に対する平面視において、凸部52が粒子状となっており、電解質層40の面内にランダムに並んでいる。このように、電解質層40に対する平面視において、凹部51と凹部41の位置が略一致し、凸部42と凸部52の位置が略一致することから、中間層50が部分的に厚くなることが抑制され、電解質層40とカソード60との距離が短くなる。したがって、カソード60の反応抵抗を低下させることができる。
【0030】
ところで、中間層50は、電解質層40とカソード60との反応を防止することを目的として設けられているため、中間層50は電解質層40とは異なる材料で構成されている。したがって、電解質層40の熱膨張率と中間層50の熱膨張率との間に差異が生じる。燃料電池100が発電の開始および停止を繰り返すと、燃料電池100が昇降温を繰り返し、当該熱膨張率差に起因して中間層50が電解質層40から剥がれるおそれがある。
【0031】
そこで、本実施形態に係る中間層50は、燃料電池100が昇降温を繰り返しても電解質層40からの剥がれを抑制する構造を有している。図5は、中間層50を模式的に拡大した拡大図である。図5で例示するように、中間層50には、複数の空隙53が形成されている。複数の空隙53は、中間層50内において、電解質層40の凸部42からカソード60に向かう所定線に沿って所定間隔で並ぶように形成されている。すなわち、複数の空隙53の並びが柱状をなしている。例えば、中間層50の積層方向の断面において、凸部42の頂上部を中心としてカソード60側に広がる放射線上に、複数の空隙53が所定の間隔を空けて並んでいる。
【0032】
中間層50内に形成されている空隙53は、電解質層40と中間層50との熱膨張率差に起因する応力を吸収する。したがって、当該応力が生じても、空隙53によって緩和されることになる。その結果、燃料電池100の昇降温サイクル耐性が向上し、電解質層40からの中間層50の剥がれが抑制される。
【0033】
なお、中間層50において空隙53以外の領域は緻密であるため、当該緻密領域を酸化物イオンが移動できる。したがって、中間層50における酸化物イオンの伝導率は高い水準を保つ。また、空隙53は、電解質層40からカソード60まで貫通せずに、所定間隔で設けられていることから、電解質層40とカソード60との間の相互拡散が抑制される。したがって、中間層50は、反応防止層としても機能を維持することができる。
【0034】
中間層50において、空隙53は、主として凸部42に形成されている。すなわち、凹部41における空隙53の数密度よりも、凸部42における空隙53の数密度の方が大きくなっている。
【0035】
ここで、凹部41と凸部42との境界について、図6を参照しながら説明する。凸部42の表面に沿って、表面の接線b1と垂直になる直線a1と、凸部42の山を越えて表面の接線b2と垂直になる直線a2との角度αによって、凹部41と凸部42との境界を定義する。直線a1と直線a2との間の角度αは120°以下の領域は凸部42と定義し、それ以外の部分は凹部41と定義する。
【0036】
各空隙53は、略球状を有している。各空隙53が大きいと、電解質層40からカソード60に至るまでの空隙53の数が少なくなって応力緩和効果が小さくなるおそれがある。そこで、各空隙53の平均径に上限を設けることが好ましい。例えば、空隙53の平均径は、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。空隙53の径は、断面写真において各空隙53を球状に近似する場合の直径とする。例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)像の視野の中で20個以上の空隙53の直径を計測し、平均化した値を平均径とする。
【0037】
各空隙53が小さすぎると、空隙53で十分に応力を吸収できないおそれがある。そこで、各空隙53の平均径に下限を設けることが好ましい。例えば、空隙53の平均径は、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることがさらに好ましい。
【0038】
1つの凸部52当たりに電解質層40からカソード60に至るまでの空隙53の数が少ないと応力緩和効果が小さくなるおそれがある。そこで、電解質層40からカソード60に至るまでの空隙53の数の平均値(1つの凸部52当たり)に下限を設けることが好ましい。例えば、当該平均値は、100個以上であることが好ましく、200個以上であることがより好ましく、300個以上であることがさらに好ましい。
【0039】
電解質層40からカソード60に至るまでの空隙53の数が多いと、酸化物イオンが通りにくくおそれがある。そこで、電解質層40からカソード60に至るまでの空隙53の数の平均値に上限を設けることが好ましい。例えば、当該平均値は、5000個以下であることが好ましく、4000個以下であることがより好ましく、3000個以下であることがさらに好ましい。
【0040】
空隙53が並ぶ方向における各空隙53の平均間隔が短すぎると、酸化物イオンが通りにくくなるおそれがある。そこで、空隙53が並ぶ方向における各空隙53の平均間隔に、下限を設けることが好ましい。例えば、各空隙53の平均間隔は5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、15nm以上であることがさらに好ましい。
【0041】
一方、空隙53が並ぶ方向における各空隙53の平均間隔が長すぎると、空隙53の数が低下し、応力を緩和する効果が得られなくなるおそれがある。そこで、空隙53が並ぶ方向における各空隙53の平均間隔に、上限を設けることが好ましい。例えば、各空隙53の平均間隔は、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
以下、燃料電池100の製造方法について説明する。図7は、燃料電池100の製造方法のフローを例示する図である。
【0043】
(支持体用材料の作製工程)(S1)
支持体用材料として、金属粉末(例えば、粒径が10μm~100μm)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、消失材(有機物)、バインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。支持体用材料は、支持体10を形成するための材料として用いる。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と金属粉末との体積比は、例えば1:1~20:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。
【0044】
(混合層用材料の作製工程)(S1)
混合層用材料として、セラミックス材料22の原料であるセラミックス材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)、金属材料21の原料である小粒径の金属材料粉末(例えば、粒径が1μm~10μm)、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、消失材(有機物)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と、セラミックス材料粉末および金属材料粉末と、の体積比は、例えば1:1~5:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。また、空隙の孔径は、消失材の粒径を調整することによって制御される。セラミックス材料粉末は、電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末とを含んでいてもよい。この場合、電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末との体積比率は、例えば、1:9~9:1の範囲とすることが好ましい。また、電子伝導性材料の代わりに電解質材料ScYSZ、GDCなどを用いても界面のはがれが無く、セルの作製が可能である。ただし、オーム抵抗を小さくする観点から、電子伝導性材料と金属粉末とを混合することが好ましい。
【0045】
(アノード用材料の作製工程)(S1)
アノード用材料として、電極骨格を構成するセラミックス材料粉末、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、消失材(有機物)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。電極骨格を構成するセラミックス材料粉末として、電子伝導性セラミックス31の原料である電子伝導性材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)、酸化物イオン伝導性セラミックス32の原料である酸化物イオン伝導性材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)などを用いてもよい。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と電子伝導性材料粉末との体積比は、例えば1:1~5:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。また、空隙の孔径は、消失材の粒径を調整することによって制御される。電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末との体積比率は、例えば、3:7~7:3の範囲とする。
【0046】
(電解質層用材料の作製工程)(S1)
電解質層用材料として、酸化物イオン伝導性材料粉末(例えば、ScYSZ、YSZ、GDCなどであって、粒径がD50%=10nm~1000nm)、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。有機成分(バインダ固形分、可塑剤)と酸化物イオン伝導性材料粉末との体積比は、例えば6:4~3:4の範囲とする。
【0047】
(凹凸層用材料の作製工程)(S1)
上記の電解質層用材料と同じ材料を用い、スラリを作製する際に材料の分散性が悪くなるように粘度、添加剤、固形分濃度などを適切に調整する。さらに、ScYSZ、YSZ、GDCなどの材料の凝集を作るため、樹脂粒子を添加する。樹脂粒子は、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン粒子、ナイロン微粒子、フェノール樹脂などが挙げられる。樹脂粒子の大きさは、酸化物イオン伝導性材料粉末の粒径より大きいことが好ましい。例えば、樹脂粒子の粒径は、酸化物イオン伝導性材料粉末の1.5倍以上である。また、凝集効果を上げるために、樹脂粒子の粒径は、酸化物イオン伝導性材料粉末の3倍以上であることがより好ましい。樹脂粒子の粒径は、酸化物イオン伝導性材料粉末の5倍以上であることがさらに好ましい。なお、凹凸層用材料における酸化物イオン伝導性材料粉末の粒径は、電解質層用材料における酸化物イオン伝導性材料粉末の粒径よりも小さいことが好ましい。電解質層40の表面に凹凸を形成しやすくなるからである。例えば、凹凸層用材料における酸化物イオン伝導性材料粉末におけるD50%粒径は、電解質層用材料における酸化物イオン伝導性材料粉末のD50%粒径に対して、1/3以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましく、1/10以下であることがさらに好ましい。
【0048】
(焼成工程)(S2)
まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、支持体用材料を塗工することで、支持体グリーンシートを作製する。別のPETフィルム上に、混合層用材料を塗工することで、混合層グリーンシートを作製する。別のPETフィルム上に、アノード用材料を塗工することで、アノードグリーンシートを作製する。別のPETフィルム上に、電解質層用材料を塗工することで、電解質層グリーンシートを作製する。別のPETフィルム上に、凹凸層用材料を塗工することで、凹凸層グリーンシートを作製する。凹凸層グリーンシートは、電解質層グリーンシートの表層に付けるグリーンシートとして用いるため、例えば1μm以下の薄いシートとする。例えば、支持体グリーンシートを複数枚、混合層グリーンシートを1枚、アノードグリーンシートを1枚、電解質層グリーンシートを1枚、凹凸層グリーンシートを1枚の順に積層し、所定の大きさにカットし、酸素分圧が10-20atm以下の還元雰囲気において1100℃~1300℃程度の温度範囲で焼成する。それにより、支持体10、混合層20、アノード30の電極骨格、電解質層40および凹凸層を備えるハーフセルを得ることができる。
【0049】
(アノード含浸工程)(S3)
次に、酸化物イオン伝導性セラミックス33および触媒金属34の原料を、アノード30の電極骨格内に含浸させる。例えば、還元雰囲気で所定の温度で焼成するとGdドープセリアあるいはSc,YドープジルコニアとNiが生成するように、Zr、Y、Sc、Ce、Gd、Niの各硝酸塩または塩化物を水またはアルコール類(エタノール、2-プロパノール、メタノールなど)に溶かし、ハーフセルを含浸、乾燥させ、熱処理を必要回数繰り返す。
【0050】
(中間層形成工程)(S4)
中間層50に含まれる酸化物イオン伝導性セラミックスを、例えばPVDにより電解質層40上に成膜することで、中間層50を成膜する。例えば、PVDにより、Ce0.8Gd0.22-xを厚みが1μmとなるように成膜することで、中間層50を形成する。例えば、成膜の際に、中間層50内に電解質層40からカソード60までに所定線に沿って空隙が所定間隔で並ぶように、成膜速度および基盤加熱温度を制御する。この場合において、成膜速度は10nm/hourから50nm/hourであることが好ましく、基盤加熱温度は200℃から600℃であることが好ましい。
【0051】
(カソード形成工程)(S5)
次に、中間層50上に、スクリーン印刷等により、カソード用材料を塗布し、乾燥させる。その後、1000℃以下の温度で空気雰囲気での熱処理によってカソード用材料を焼結し、カソード60を形成する。金属の酸化を抑えるため、熱処理時の温度を900℃以下とすることが好ましく、800℃以下とすることがより好ましい。
【0052】
本実施形態に係る製造方法によれば、図8で例示するように、電解質層グリーンシート70上に、凹凸層用グリーンシート80が積層される。電解質層グリーンシート70に含まれる酸化物イオン伝導性材料粉末71の粒径よりも、凹凸層用グリーンシート80に含まれる酸化物イオン伝導性材料粉末81の粒径の方が小さくなっている。また、凹凸層用グリーンシート80には、樹脂粒子82が含まれている。この樹脂粒子82がスペーサとして機能し、酸化物イオン伝導性材料粉末81が凝集するようになる。樹脂粒子82は、焼成工程において除去される。凝集した複数の酸化物イオン伝導性材料粉末81が、焼成後に凸部42となる。それにより、焼成後の電解質層40の中間層50側の面内に2次元方向に並ぶ凹凸が形成される。それにより、中間層50も電解質層40の中間層50側の面の形状に沿うようになる。したがって、中間層50のカソード60側の面において、凸部42の位置に略一致するように凸部52が形成される。印刷法では、凹凸を面内の一次元方向にしか形成しにくいが、本実施形態に係る製造方法では、凹凸を面内の2次元方向に形成することができる。なお、中間層50の電解質層40側の面にも、電解質層40のカソード60側の面に沿って凹凸が形成される。さらに、カソード60の中間層50側の面においても、中間層50のカソード60側の面の形状に沿うように凹凸が形成される。
【0053】
さらに、成膜の際に、中間層50内に電解質層40からカソード60までに所定線に沿って空隙が所定間隔で並ぶように、成膜速度および基盤加熱温度が制御される。それにより、複数の空隙53が、中間層50内において、電解質層40の凸部42からカソード60に向かう所定線に沿って所定間隔で並ぶように形成される。
【実施例
【0054】
上記実施形態に係る製造方法に従って、燃料電池100を作製した。
【0055】
(実施例1)
支持体用材料として、SUS(ステンレス)の粉末を用いた。電解質層用材料のセラミックス材料として、ScYSZを用いた。凹凸層用材料には、アクリル樹脂、ポリスチレン粒子、ナイロン微粒子、フェノール樹脂などを樹脂粒子として添加した。アノード用材料の電子伝導性セラミックスにLaCrO系材料を用いて、酸化物イオン伝導性セラミックスにはScYSZを用いた。中間層用材料のセラミックス材料としてGDCを用いた。カソード用材料のセラミックス材料にはLSCを用いた。混合層用材料のセラミックス材料には、LaCrO系材料を用いた。混合層用材料の金属材料には、SUSを用いた。支持体グリーンシート上に、混合層グリーンシート、アノードグリーンシート、電解質層グリーンシート、および凹凸層用グリーンシートを積層し、所定の大きさにカットし、酸素分圧が10-16atm以下の還元雰囲気下で焼成した。GDCおよびNiをアノードの電極骨格に含浸させた後に大気雰囲気下で850℃以下の温度にて焼成した。その後、PVDにより、Ce0.8Gd0.22-xの中間層を形成し、中間層上に、スクリーン印刷等により、カソード用材料を塗布し、乾燥させた。その後、1000℃以下の温度で空気雰囲気での熱処理によってカソード用材料を焼結し、カソードを形成した。なお、中間層を形成する際の成膜速度は10nm/hourとし、基盤加熱温度は300℃とした。中間層のSTEM(走査型透過電子顕微鏡)写真を確認したところ、中間層において電解質層からカソードにかけて複数の空隙が所定線に沿って間隔を空けて形成されていることを確認した。空隙の平均径は、10nmであった。電解質層からカソードまで1つの凸部52当たりの空隙53の個数の平均値は、500個であった。
【0056】
(実施例2)
実施例2では、支持体用材料としてNiO/YSZを用いた。その他の作製条件は実施例1と同様とした。実施例2では、中間層を形成する際の成膜速度は10nm/hourとし、基盤加熱温度は300℃とした。中間層のSTEM写真を確認したところ、中間層において電解質層からカソードにかけて複数の空隙が所定線に沿って間隔を空けて形成されていることを確認した。空隙の平均径は、10nmであった。電解質層からカソードまで1つの凸部52当たりの空隙の個数の平均値は、500個であった。
【0057】
(比較例1)
比較例1では、凹凸層用グリーンシートを設けなかった。その他の条件は実施例1と同様とした。比較例では、凹凸層用グリーンシートを設けなかったため、電解質層層のカソード側の面に凹凸が表れず、中間層およびカソードにも凹凸が表れなかった。
【0058】
(比較例2)
比較例2では、凹凸層用グリーンシートを設けており、中間層のPVD処理において、成膜速度は10nm/hourとし、基盤加熱温度は600℃とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。基盤加熱温度は高いため、断面を観察する際に、空隙53は観察されなかった。凹凸すべての部分が緻密であることが確認された。
【0059】
(発電評価)
実施例1,2および比較例の燃料電池に対してインピーダンス測定を行うことで、各抵抗値を分離し、燃料電池全体のオーム抵抗およびカソードの反応抵抗を測定した。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1では、オーム抵抗は、0.25Ω・cmであった。また、実施例2では、オーム抵抗は0.30Ω・cmであった。このように、実施例1および実施例2では、オーム抵抗が低くなった。これは、中間層の両面に凹凸を設けたことで、イオン伝導の際の抵抗が凹凸構造なし(比較例)とほぼ同程度になったからであるものと考えられる。なお、実施例1のオーム抵抗が実施例2のオーム抵抗よりも低くなったのは、電子伝導性の高い金属支持体を用いたからであると考えられる。
【表1】
【0060】
実施例1では、カソードにおける反応抵抗は0.27Ω・cmであった。実施例2では、カソードにおける反応抵抗は0.27Ω・cmであった。比較例2では、カソードにおける反応抵抗は0.27Ω・cmであった。このように、実施例1、実施例2および比較例2では、カソードにおける反応抵抗が低くなった。これは、中間層のカソード側の面に凹凸が形成されたことで、中間層とカソードとの接触面積が大きくなったからであると考えられる。これに対して、比較例1では、カソードにおける反応は0.56Ω・cmであり、大幅に高くなった。これは、中間層に凹凸が形成されなかったことで、中間層とカソードとの接触面積が十分に大きくなかったからであると考えられる。
【0061】
次に、実施例1,2および比較例1,2の燃料電池に対して、5000サイクルの昇降温の後に、再度インピーダンス測定を行ない、各抵抗値を分離し、燃料電池全体のオーム抵抗およびカソードの反応抵抗を測定した。なお、1サイクルでは、750℃まで昇温と室温までの降温とを行なった。結果を表2に示す。
【表2】
【0062】
表2に示すように、実施例1では、オーム抵抗は0.25Ω・cmであり、カソードの反応抵抗は0.30Ω・cmであった。実施例2では、オーム抵抗は0.30Ω・cmであり、カソードの反応抵抗は0.31Ω・cmであった。このように、オーム抵抗およびカソードの反応抵抗は、昇降温の前後でほとんど変化しなかった。これは、電解質層と中間層との間で剥がれが生じなかったからであると考えられる。その後、目視でセル表面を確認したが、中間層の剥がれは見られなかった。比較例1では、オーム抵抗は0.40Ω・cmであり、カソードの反応抵抗は0.71Ω・cmであった。このように、オーム抵抗が大幅に大きくなった。これは、電解質層と中間層との熱膨張率差に起因して電解質層と中間層との間で剥がれが生じたからであると考えられる。その後、目視でセル表面を確認したところ、中間層に剥がれが確認された。比較例2では、5000サイクル昇降温後に起電力OCVが確認されず、セルを取り出して確認したところ、中間層が剥がれており、電池として動作できなくなったことが確認された。空隙が存在しないため、中間層が熱膨張で剥がれたと考えられる。
【0063】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 支持体
20 混合層
21 金属材料
22 セラミックス材料
30 アノード
31 電子伝導性セラミックス
32 酸化物イオン伝導性セラミックス
33 酸化物イオン伝導性セラミックス
34 触媒金属
40 電解質層
41 凹部
42 凸部
50 中間層
51 凹部
52 凸部
60 カソード
61 凸部
62 凹部
70 電解質層グリーンシート
71 酸化物イオン伝導性材料粉末
80 凹凸層用グリーンシート
81 酸化物イオン伝導性材料粉末
82 樹脂粒子
100 燃料電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8