(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】燃料タンクユニット、及びそれを有する燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23N 1/00 20060101AFI20240617BHJP
F23K 5/02 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
F23N1/00 115Z
F23K5/02 B
(21)【出願番号】P 2019213552
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】519422588
【氏名又は名称】株式会社I-PEC.Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神宮司 一浩
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-210718(JP,A)
【文献】特開2019-117024(JP,A)
【文献】特開2013-189932(JP,A)
【文献】特開昭60-034724(JP,A)
【文献】特開2000-002416(JP,A)
【文献】実開昭51-093431(JP,U)
【文献】特開平09-177568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N1/00
F23K5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置のバーナに接続される燃料タンクユニットであって、
23℃における粘度が20mm
2
/s未満である燃料Aを貯留する第1燃料タンクと、
前記バーナと前記第1燃料タンクとを接続する第1パイプと、
前記第1燃料タンクから前記バーナへと流れる燃料Aの流量を調整する第1弁と、
23℃における粘度が20~50mm
2
/sである燃料Bを貯留する第2燃料タンクと、
前記第1パイプから分岐し、
前記第2燃料タンクに貯留する燃料Bが流れる第2パイプと、
前記第2燃料タンクから前記バーナへと流れる前記燃料Bの流量を調整する第2弁と、
前記燃料Bを35℃以上に加温するヒータと、
前記燃焼装置の運転終了時に、前記第2弁を閉じ、前記第1弁を開けて所定時間運転することで、第1パイプ内及び前記バーナ内のパイプを燃料Aで満たしてから前記燃焼装置の運転を停止する、制御装置と
を有し、
前記第1パイプが前記第2燃料タンクを経由し、
前記第2燃料タンク内において、前記第1パイプから分岐した前記第2パイプが設けられ、前記第2パイプの開口部に前記第2弁が設けられている、燃料タンクユニット。
【請求項2】
前記制御装置が、前記燃焼装置の運転開始時には、前記第1燃料タンクから燃料Aを供給して運転してから、燃料の供給を前記第1燃料タンクから前記第2燃料タンクに切り換える、請求項1に記載の燃料タンクユニット。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の燃料タンクユニットを有する、燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料タンクユニット、及びそれを有する燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な用途で、熱風発生炉、例えば特許文献1に記載のようなボイラが用いられているが、燃料費の低減が求められている。
【0003】
熱風発生炉の燃焼装置に投入される燃料としては、A重油などが用いられているが、再生重油などのA重油よりも安価な燃料は、燃焼装置の燃料として利用することができないという問題があった。なお、A重油とは、JIS規格によって、動粘度により分類された重油1種~3種のうち、1種に分類される重油を指し、再生重油とは、自動車エンジン、工業用途に使用された潤滑油などを原料として製造された炭化水素油のことを指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃焼装置の燃料として再生重油を利用できない原因として、再生重油の粘度が高いことにあることがわかっている。具体的には、燃料の粘度が高いと、燃焼装置のオイルポンプが、燃料を円滑に圧送することができず、安全装置が圧力不足と判断し、燃焼装置の運転を停止してしまうことに原因があった。
【0006】
そこで本発明者は、燃料タンク内をヒータで加温することで粘度を低下させた再生重油を用いてみたが、燃焼装置の運転再開時に、燃料タンクからバーナに接続するパイプ内に、ヒータによって加温されていない再生重油が滞留しているため、パイプ内に滞留していた再生重油がオイルポンプに送られると安全装置が作動し、単に、燃料タンク内を加温するだけでは、燃焼装置を稼働することはできなかった。
【0007】
また、上記に加えて、燃料タンクからバーナに接続するパイプをラインヒータで加温することも試みたが、パイプ内の燃料を充分に加温するためには時間がかかるという問題や、使用者がやけどするなどの使用上の安全性に問題があった。
【0008】
本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、燃焼装置の燃料費を低減することができる、燃料タンクユニット、及びそれを有する燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る燃料タンクユニットは、燃焼装置のバーナに接続される燃料タンクユニットであって、23℃における粘度が20mm
2
/s未満である燃料Aを貯留する第1燃料タンクと、上記バーナと上記第1燃料タンクとを接続する第1パイプと、上記第1燃料タンクから上記バーナへと流れる燃料Aの流量を調整する第1弁と、23℃における粘度が20~50mm
2
/sである燃料Bを貯留する第2燃料タンクと、上記第1パイプから分岐し、前記第2燃料タンクに貯留する燃料Bが流れる第2パイプと、上記第2燃料タンクから上記バーナへと流れる燃料Bの流量を調整する第2弁と、上記燃料Bを35℃以上に加温するヒータと、上記燃焼装置の運転終了時に、上記第2弁を閉じ、上記第1弁を開けて所定時間運転することで、第1パイプ内及び上記バーナ内のパイプを燃料Aで満たしてから上記燃焼装置の運転を停止する、制御装置とを有し、前記第1パイプが前記第2燃料タンクを経由し、前記第2燃料タンク22内において、前記第1パイプから分岐した前記第2パイプが設けられ、前記第2パイプの開口部に前記第2弁が設けられているものとする。
【0010】
上記制御装置は、上記燃焼装置の運転開始時には、上記第1燃料タンクから燃料Aを供給して運転してから、燃料の供給を上記第1燃料タンクから上記第2燃料タンクに切り換えるものとすることができる。
【0013】
本発明の実施形態に係る燃焼装置は、上記燃料タンクユニットを有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の燃焼装置の構成を示す模式図。
【
図2】本発明の一実施形態の燃焼装置における電気的構成を説明するブロック図。
【
図3】本発明の一実施形態の燃焼装置の運転開始時の動作を示すフローチャート。
【
図4】本発明の一実施形態の燃焼装置の運転終了時の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態の燃焼装置1を
図1,2に基づいて説明する。
【0016】
(1)燃焼装置1
燃料タンクユニット20、及びそれを有する燃焼装置1の構造について、
図1,2に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態に係る燃焼装置1は、
図1に示すように、燃料タンクユニット20と、バーナ10と、燃料タンクユニット20とバーナ10とを接続するパイプ2と、燃料タンクユニット20から燃料を圧送するオイルポンプ3と、燃料タンクユニット20から圧送された燃料から固形成分を取り除くストレーナ4と、燃焼装置1の運転を制御する制御装置5(
図1では不図示)と、燃焼装置1の運転の開始又は停止を指示するためのスイッチ6(
図1では不図示)とを有する。
【0018】
本実施形態に係るバーナ10は、バーナ10内に燃料を送るパイプ11と、パイプ11内の燃料を圧送するオイルポンプ12と、燃料の流量を制御する電磁弁13と、燃料を噴射するノズル14と、ノズル14から噴射された燃料に点火する点火装置(不図示)とを有する。
【0019】
本実施形態に係る燃料タンクユニット20は、
図1に示すように、23℃における粘度が20mm
2/s未満である燃料Aを貯留する第1燃料タンク21と、バーナ10と第1燃料タンク21とを接続する第1パイプ23と、第1燃料タンク21からバーナ10へと流れる燃料Aの流量を調整する第1弁25と、23℃における粘度が20~50mm
2/sである燃料Bを貯留する第2燃料タンク22と、第1パイプ23から分岐し、第2燃料タンク22に接続する第2パイプ24と、第2燃料タンク22からバーナ10へと流れる燃料Bの流量を調整する第2弁26と、燃料Bを35℃以上に加温するヒータ27とを有する。ここで、本明細書において「粘度」とは、JIS K 2283に規定する動粘度試験方法に従って測定した値とする。
【0020】
制御装置5は、
図2に示すように、オイルポンプ3、オイルポンプ12、電磁弁13、第1弁25、第2弁26、ヒータ27、及びスイッチ6に接続する。
【0021】
燃焼装置1の運転開始時には、制御装置5は、第1弁25を開けて第1燃料タンク21からの燃料Aの供給を開始し、燃料Aによる運転をした後、第2燃料タンク22内の燃料Bの温度が35℃以上であり、バーナ10が燃焼炎を噴射する燃焼炉内の温度が400℃以上であれば、第1弁25を閉じ、第2弁26を開けて、第2燃料タンク22からの燃料Bの供給を開始し、燃料Bによる運転に切り替える。
【0022】
燃焼装置1の運転終了時には、制御装置5は、第2弁26を閉じ、第1弁25を開けて所定時間運転することで、パイプ2、パイプ11、及び第1パイプ23内を燃料Aで満たしてから燃焼装置1の運転を停止する。ここで、所定時間とは、バーナ10と第1燃料タンク21とを接続するパイプの長さや、オイルポンプの能力によって異なり、パイプの長さと、オイルポンプにより燃料Aを圧送する速度に基づいて設定することができる。
【0023】
(2)燃焼装置1の運転開始時の動作状態
燃焼装置1の運転開始時の動作状態について
図3を用いて説明する。
【0024】
ステップS10において、使用者がスイッチ6を操作し、燃焼装置1の運転が開始されると、制御装置5が電磁弁13及び第1弁25を開く。次いで、ステップS11に進む。
【0025】
ステップS11において、制御装置5がオイルポンプ3,12を稼働し、第1燃料タンク21から燃料Aがバーナ10に供給される。次いで、ステップS12に進む。
【0026】
ステップS12において、不図示の点火装置が燃料Aに点火し、燃焼炉内に、燃焼炎が噴射される。次いで、ステップS13に進む。
【0027】
ステップS13において、燃焼炉内の温度が400℃以上である場合(Yes)、ステップS14に進み、400℃未満である場合(No)、ステップS12に戻り、燃料Aの燃焼を継続する。
【0028】
ステップS14において、第2燃料タンク22内の燃料Bの温度が35℃以上である場合(Yes)、ステップS15に進み、35℃未満である場合(No)、ステップS12に戻り、燃料Aの燃焼を継続する。
【0029】
ステップS15において、第1弁25を閉じて、第1燃料タンク21からの燃料Aの供給を停止し、第2弁26を開くことで、第2燃料タンク22からの燃料Bの供給を開始する。次いで、ステップS16に進む。
【0030】
ステップS16において、第2燃料タンク22から供給された燃料Bの燃焼が開始される。
【0031】
(3)燃焼装置1の運転終了時の動作状態
燃焼装置1の運転終了時の動作状態について
図4を用いて説明する。
【0032】
ステップS20において、第2燃料タンク22からバーナ10に燃料Bが供給されている。次いで、ステップS21に進む。
【0033】
ステップS21において、燃料Bが燃焼炉内で燃焼され、燃焼炎が噴射される。次いで、ステップS22に進む。
【0034】
ステップS22において、使用者がスイッチ6を操作し、燃焼装置1に運転終了を指示する。次いで、ステップS23に進む。
【0035】
ステップS23において、制御装置5が第2弁26を閉じて、燃料Bの供給を停止し、第1弁25を開くことで、第1燃料タンク21から燃料Aの供給を開始する。次いで、ステップS24に進む。
【0036】
ステップS24において、第1燃料タンク21から供給された燃料Aの燃焼が開始され、パイプ2、パイプ11、及び第1パイプ23内に燃料Aが充填される。次いで、制御装置5は燃焼装置1の運転を停止する。
【0037】
(4)効果
本実施形態によれば、燃焼装置1の運転を開始する時点においては、第1燃料タンク21からバーナ10内のパイプ11内には、常温23℃における粘度の低い燃料Aが充填されており、第2燃料タンク22内の燃料Bを充分に加温して粘度が下がるまでの間は、燃料Aで運転することができる。そして、燃料Bの粘度が下がり、バーナ10が燃焼炎を噴射する燃焼炉の温度が400℃以上である場合に、燃焼に用いる燃料を燃料Bに切り替えることで、燃料Bを用いて安定して燃焼装置を運転できる。このように、既存の燃焼装置に接続されていた燃料タンクを本実施形態の燃料タンクユニット20に取り替えるだけで、燃焼装置の燃料として従来用いられていたA重油よりも安価な再生重油などを用いることができ、燃料費を低減することができる。
【0038】
(5)変更例
上記実施形態では、第2パイプ24の長さが10cm以下である例について説明したが、5cm以下であることがより好ましい。また、一実施形態として、第1燃料タンク21から伸びる第1パイプ23が、第2燃料タンク22を経由するものであってもよく、その場合、第2燃料タンク22内において、第1パイプ23から分岐した第2パイプ24が設けられ、第2パイプ24の開口部に第2弁26が設けられているものとすることができる。このように、第2パイプ24の長さが10cm以下である場合や、第1パイプ23と第2パイプ24との分岐点が第2燃料タンク22内にある場合、燃焼装置1の運転開始時に、ヒータ27によって温められていない、第2パイプ内に滞留していた燃料Bがバーナ10に流れる量を減らし、燃焼装置1を安定して運転しやすい。
【0039】
上記実施形態では、バーナ10が燃焼炎を噴射する燃焼炉内の温度が400℃以上であることを条件に、燃焼に用いる燃料を燃料Aから燃料Bに切り替える例について説明したが、別の実施形態としては、燃焼炉内の温度が500℃以上であってもよく、燃焼炉内の温度が600℃以上であってもよい。燃焼炉内の温度が高いほど、安定して燃料を燃焼させることができる。
【0040】
上記実施形態では、燃料Aとして、23℃における粘度が20mm2/s未満である例について説明したが、15mm2/s以下であることが好ましい。
【0041】
上記実施形態では、燃料Bとして、23℃における粘度が20~50mm2/sである例について説明したが、20~40mm2/sであることが好ましい。
【0042】
上記実施形態において、使用者の安全性に配慮した上で、パイプ2,11、第1パイプ23、及び/又は第2パイプ24にラインヒータを設けてもよい。
【0043】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る燃料タンクユニットは、農業、畜産、海産、クリーニング、銭湯等、種々な用途で用いられる燃焼装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・燃焼装置、2・・・パイプ、3・・・オイルポンプ、4・・・ストレーナ、5・・・制御装置、6・・・スイッチ、10・・・バーナ、11・・・パイプ、12・・・オイルポンプ、13・・・電磁弁、14・・・ノズル、20・・・燃料タンクユニット、21・・・第1燃料タンク、22・・・第2燃料タンク、23・・・第1パイプ、24・・・第2パイプ、25・・・第1弁、26・・・第2弁、27・・・ヒータ