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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】インバート桟橋及びその移動方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020162914
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2021059967
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2019186050
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】三宅 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中林 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】関根 一郎
(72)【発明者】
【氏名】守屋 毅
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-151397(JP,A)
【文献】特開2018-138738(JP,A)
【文献】特開平11-022390(JP,A)
【文献】特開2017-218888(JP,A)
【文献】特開2001-173382(JP,A)
【文献】特開2012-046986(JP,A)
【文献】特開2001-220996(JP,A)
【文献】特開2012-241333(JP,A)
【文献】特開2017-031687(JP,A)
【文献】特開2003-322000(JP,A)
【文献】特開2019-120115(JP,A)
【文献】特開2002-295195(JP,A)
【文献】特開2018-123680(JP,A)
【文献】特開2007-284989(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109505630(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル横断方向の一方側に半割施工されたインバートの上面であってトンネル横断面の片側にトンネル軸方向に沿って架設され、工事用車両の通行を確保するためのインバート桟橋であって、
前記インバート桟橋は、トンネル軸方向に複数に分割したものを1つのユニットとして、このユニット化された複数のユニットをターンバックル式連結手段によってトンネル軸方向に連結することにより組み立てられるとともに、各ユニットは車両が走行する車両走行部と、ユニット単体でも自立可能に前記車両走行部の下側にトンネル横断方向の中央側及び外側の端部にそれぞれ下側に突出して左右対で設けられた脚部とを備え
前記左右対の脚部は、半割施工されたインバートの傾斜に合わせて、トンネル横断方向の中央側に設けられた脚部の方が、外側に設けられた脚部より長く形成することにより前記車両走行部の上面を水平にするとともに、前記左右の脚部の少なくともいずれか一方の側部に隣接して、前記脚部に直接的又は間接的に接することによりトンネル横断方向の中央側へのズレを防止するズレ止め金具がインバートに設けられるとともに、該ズレ止め金具はトンネル軸方向に隣り合う前記脚部間に連続して設けられていることを特徴とするインバート桟橋。
【請求項2】
トンネル横断方向の中央側の前記脚部は、下側に行くに従ってトンネル横断方向の外側に設けられた脚部側に傾斜する形状で形成されている請求項1記載のインバート桟橋。
【請求項3】
前記脚部のインバート接地面に緩衝材が取り付けられている請求項1、2いずれかに記載のインバート桟橋。
【請求項4】
上記請求項1~3いずれかに記載のインバート桟橋をトンネル軸方向に移動する移動方法であって、
移動するユニットとそれ以外のユニットの間のターンバックル式連結手段を解除して分離するとともに、前記車両走行部の覆工板を取り外し、車両走行部の下側に作業スペースを確保する事前準備ステップと、
前記インバートの上面に枕木を介してジャッキを設置し、移動するユニットを前記ジャッキによって持ち上げ、前記脚部をインバートから浮かせる第1ステップと、
前記トンネル横断方向の中央側及び外側にそれぞれ設けられた脚部に隣接して設けられた下側に延びる支柱の下端部に車輪部を取り付ける第2ステップと、
前記ジャッキを取り外し、前記車輪部で支持した状態で前記移動するユニットをトンネル軸方向に移動する第3ステップとを繰り返すことにより各ユニットを1つずつトンネル軸方向に移動させることを特徴とするインバート桟橋の移動方法。
【請求項5】
前記第2ステップにおいて、トンネル軸方向への移動をガイドするため、前記ズレ止め金具に当接するガイドローラを設けるようにする請求項記載のインバート桟橋の移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルインバート施工時に工事用車両の通行を確保するために設けられるインバート桟橋及びその移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内空断面約50m2程度の断面が比較的狭く、長大で、地山が悪いためほぼ全線に亘ってインバートが必要なトンネルでは、インバートをトンネル横断方向の半分ずつ施工するインバートの半割施工が行われている。
【0003】
このようなインバート施工時においても、ミキサー車やダンプカー等の工事用車両の通行を確保する必要があるため、従来では、図15に示されるように、インバート埋戻し材51または岩ズリ等を施工済みのインバート50上に法(勾配)をつけて盛ることにより、その上を車両が走行できるようにしていた。
【0004】
また、図16に示されるように、トンネル横断方向の中央部にトンネル軸方向に沿って土留め用の矢板52(ブロック)を設けておき、インバート埋戻し材51または岩ズリ等を施工済みのインバート50上に盛ることにより、その上を車両が走行できるようにしたものもある(下記特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-145390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図15に示されるように、埋め戻し材51に法をつけた場合、工事車両の走行に必要な通路幅を十分にとることができないとともに、路肩が崩れやすく安全性が確保できないなどの課題があった。また、図16に示されるように矢板を設けて埋め戻した場合、通路幅を広くとることができるが、生コン車等の工事用の大型車両が通行する際、路盤の土圧に耐える矢板を設置するのは施工に手間がかかるという問題があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、車両の走行の安全性が確保でき、施工の効率化が図れるインバート桟橋及びその移動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、トンネル横断方向の一方側に半割施工されたインバートの上面であってトンネル横断面の片側にトンネル軸方向に沿って架設され、工事用車両の通行を確保するためのインバート桟橋であって、
前記インバート桟橋は、トンネル軸方向に複数に分割したものを1つのユニットとして、このユニット化された複数のユニットをターンバックル式連結手段によってトンネル軸方向に連結することにより組み立てられるとともに、各ユニットは車両が走行する車両走行部と、ユニット単体でも自立可能に前記車両走行部の下側にトンネル横断方向の中央側及び外側の端部にそれぞれ下側に突出して左右対で設けられた脚部とを備え
前記左右対の脚部は、半割施工されたインバートの傾斜に合わせて、トンネル横断方向の中央側に設けられた脚部の方が、外側に設けられた脚部より長く形成することにより前記車両走行部の上面を水平にするとともに、前記左右の脚部の少なくともいずれか一方の側部に隣接して、前記脚部に直接的又は間接的に接することによりトンネル横断方向の中央側へのズレを防止するズレ止め金具がインバートに設けられるとともに、該ズレ止め金具はトンネル軸方向に隣り合う前記脚部間に連続して設けられていることを特徴とするインバート桟橋が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、半割施工したインバートの傾斜に合わせて、左右対の脚部が形成されている。更に、傾斜したインバート上に設置したインバート桟橋が、インバートの傾斜によってトンネル横断方向の中央側にずれるのを防止するため、左右の前記脚部の少なくともいずれか一方に、ズレ止め金具が備えられている。これによって、車両走行部の車両の走行面が水平に保持でき、車両の走行の安全性が確保できるとともに、埋め戻し材で埋め戻す前のインバート上面に桟橋を設置しているため、施工の効率化が図れるようになる。
【0010】
請求項2に係る本発明として、トンネル横断方向の中央側の前記脚部は、下側に行くに従ってトンネル横断方向の外側に設けられた脚部側に傾斜する形状で形成されている請求項1記載のインバート桟橋が提供される。
【0011】
上記請求項2記載の発明では、トンネル横断方向の中央側の前記脚部を、下側に行くに従ってトンネル横断方向の外側に傾斜する形状で形成しているため、前記ズレ止め金具をトンネル横断方向の中央側の脚部の側部に取り付けても、この脚部によって前記車両走行部のトンネル横断方向の中央側端部近傍が支持され、車両走行部の安定性が向上するとともに、トンネル横断方向の中央側の脚部が傾斜したインバートの上面に対して略垂直方向に延びるように設置されるため、インバート桟橋がトンネル横断方向の中央側にズレにくくなる。
【0012】
請求項3に係る本発明として、前記脚部のインバート接地面に緩衝材が取り付けられている請求項1、2いずれかに記載のインバート桟橋が提供される。
【0013】
上記請求項3記載の発明では、比較的弱材令のインバートコンクリートに与える衝撃等を緩和し、インバートの損傷を防止するため、前記脚部のインバート接地面にゴム板等の緩衝材を取り付けている。
【0014】
請求項に係る本発明として、上記請求項1~3いずれかに記載のインバート桟橋をトンネル軸方向に移動する移動方法であって、
移動するユニットとそれ以外のユニットの間のターンバックル式連結手段を解除して分離するとともに、前記車両走行部の覆工板を取り外し、車両走行部の下側に作業スペースを確保する事前準備ステップと、
前記インバートの上面に枕木を介してジャッキを設置し、移動するユニットを前記ジャッキによって持ち上げ、前記脚部をインバートから浮かせる第1ステップと、
前記トンネル横断方向の中央側及び外側にそれぞれ設けられた脚部に隣接して設けられた下側に延びる支柱の下端部に車輪部を取り付ける第2ステップと、
前記ジャッキを取り外し、前記車輪部で支持した状態で前記移動するユニットをトンネル軸方向に移動する第3ステップとを繰り返すことにより各ユニットを1つずつトンネル軸方向に移動させることを特徴とするインバート桟橋の移動方法が提供される。
【0015】
上記請求項記載の発明は、前記インバート桟橋が、トンネル軸方向に分割された複数のユニットを連結して構成した場合において、各ユニットを1つずつ移動できるようにしたものである。
【0016】
請求項に係る本発明として、前記第2ステップにおいて、トンネル軸方向への移動をガイドするため、前記ズレ止め金具に当接するガイドローラを設けるようにする請求項記載のインバート桟橋の移動方法が提供される。
【0017】
上記請求項記載の発明では、傾斜するインバート上をインバート桟橋がトンネル軸方向に移動する際の直進性を保持するため、前記ズレ止め金具に当接するガイドローラを設けている。
【発明の効果】
【0018】
以上詳説のとおり本発明によれば、車両の走行の安全性が確保でき、施工の効率化が図れるインバート桟橋及びその移動方法が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るインバート桟橋1を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図2図1(B)のII-II線矢視図である。
図3図1(B)のIII-III線矢視図である。
図4】車両走行部2を構成する1つのユニット2aを示す平面図である。
図5図2のV部拡大図である。
図6】変形例に係るインバート桟橋1の側面図である。
図7】変形例に係るインバート桟橋1の側面図である。
図8】変形例に係るインバート桟橋1の横断面図(図1(B)のII-II線矢視図に対応する図)である。
図9】変形例に係るインバート桟橋1の側面図である。
図10】変形例に係るインバート桟橋1の平面図である。
図11】変形例に係るインバート桟橋1の側面図である。
図12】変形例に係るインバート桟橋1の移動方法(第1ステップ)を示す横断面図である。
図13】変形例に係るインバート桟橋1の移動方法(第2ステップ)を示す横断面図である。
図14】変形例に係るインバート桟橋1の移動方法(第3ステップ)を示す横断面図である。
図15】従来の施工方法(その1)を示すトンネルの横断面図である。
図16】従来の施工方法(その2)を示すトンネルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0021】
本発明に係るインバート桟橋1は、図1図3に示されるように、トンネル横断方向の一方側に半割施工されたインバート10の上面に、トンネル軸方向に沿って架設されるもので、生コン車やダンプカー等の工事用車両の通行を確保するためのものである。
【0022】
前記インバート桟橋1は、図1に示されるように、トンネル軸方向に延び、車両が走行する車両走行部2と、前記車両走行部2の下側にトンネル横断方向に左右対で設けられた複数の脚部3、3…とを備えている。前記車両走行部2の上面の両側部にはそれぞれ、長手方向のほぼ全長に亘って、差し込み式の手摺り4が取り付けられている。
【0023】
前記インバート桟橋1は、図4に示されるように、トンネル軸方向に複数に分割したものを1つのユニット1aとして、このユニット化された複数のユニット1a、1a…をトンネル軸方向に連結することにより組み立てるのが、施工の効率化の観点から好ましい。1つのユニット1aには、車両走行部2の下側の所定位置に、ユニット1a単体でも自立可能とした脚部3が設けられている。隣り合うユニット1a、1a同士は、所定の連結手段によって連結されている。この連結手段としては、ボルトによる螺合手段やフックによる掛止手段など公知の方法を広く用いることができ、一例として、図9及び図10では、ターンバックルによる連結手段15が図示されている。
【0024】
前記車両走行部2は、H鋼などの鋼材によって枠組みされた架台の上面に覆工板2a,2a…が敷き詰められて構成されたものであり、図1(B)及び図3に示されるように、ラップ側(坑口側)の端部が、施工済みのインバート上面を埋め戻して整地した埋め戻し材の上面に載置されるとともに、妻側(切羽側)の端部が、インバート掘削前の整地した地山の上面に載置され、その中間部が複数の前記脚部3…によって半割施工されたインバート10上に支持されている。前記車両走行部2の端部と前記埋め戻し材又は地山の上面との段差部には、盛土等によって若干の傾斜路が設けられている。
【0025】
前記脚部3は、前記車両走行部2のトンネル横断方向の中央側及び外側の端部にそれぞれ、下側に突出して設けられ、この左右対の脚部3、3がトンネル軸方向に沿って所定の間隔で複数配置されている。前記脚部3の下端面は、インバート10の上面に直接接している。前記インバート桟橋1は、インバート10の上面に載置されるだけで、インバート10に対して固定されていない。
【0026】
図2に示されるように、半割施工されたインバート10の上面が傾斜しているため、前記左右対の脚部3、3は、長さが異なる非対称な形状で形成されている。すなわち、トンネル横断方向の中央側に設けられた脚部3Aの方が、外側に設けられた脚部3Bより長く形成されている。これによって、車両走行部2の上面をほぼ水平にすることができる。
【0027】
前記脚部3の底面は、インバート10の傾斜する上面とほぼ同じ角度で傾斜する傾斜面となっている。
【0028】
また、本インバート桟橋1では、傾斜するインバート10の上面に設置されたインバート桟橋1のトンネル横断方向の中央側へのズレを防止するため、左右の脚部3、3の少なくともいずれか一方にズレ止め金具5が備えられている。したがって、前記ズレ止め金具5は、トンネル横断方向の中央側の脚部3Aのみ又は外側の脚部3Bのみに設けてもよいし、中央側の脚部3A及び外側の脚部3Bの両方に設けてもよい。図2に示される例では、前記ズレ止め金具5は、トンネル横断方向の中央側の脚部3Aのみに設けられ、外側の脚部3Bには設けられていないが、図11図13に示されるように、トンネル横断方向の外側の脚部3Bのみに設け、中央側の脚部3Aには設けないようにした方が、施工上の観点から好ましい。
【0029】
前記ズレ止め金具5は、図5に示されるように、アンカーボルト6、6…によってインバート10に固定されるとともに、側部に脚部3の側面又は後段で詳述するガイドローラ12が接する当接面5aが設けられている。前記ズレ止め金具5は、各脚部3の側部に隣接して設けられ、各脚部3に直接接して支持するか、後段で詳述するサポート材13を介して支持している。
【0030】
各脚部3に前記ズレ止め金具5が備えられているため、インバート桟橋1のズレが防止でき、車両走行部2の上面が水平に保持され、車両の走行の安全性が確保できるようになる。
【0031】
図2に示されるように、トンネル横断方向の中央側の脚部3Aは、下側に行くに従ってトンネル横断方向の外側に傾斜する形状で形成するのが好ましい。すなわち、図2に示されるトンネル横断方向の断面視で、脚部3Aの上端の中央部は、相対的にトンネル横断方向の中央側に位置し、脚部3Aの下端の中央部は、相対的にトンネル横断方向の外側に位置している。これによって、前記脚部3Aの側部に前記ズレ止め金具5を設けても、前記脚部3Aが車両走行部2のトンネル横断方向の中央側寄り位置で支持され、車両走行部2の安全性が向上するとともに、前記脚部3Aが傾斜したインバート10の上面に対して略垂直方向に延びるように設置されるため、インバート桟橋1がトンネル横断方向の中央側にズレにくくなり、前記ズレ止め金具5にかかる荷重が小さくて済む。図2に示されるトンネル横断方向の断面視で、前記脚部3Aの幅方向中央部を通る中心線Lと鉛直方向線との成す角αは、5~15°が好ましい。
【0032】
図5に示されるように、前記脚部3のインバート10との接地面に、緩衝材9を取り付けるのが好ましい。前記緩衝材9としては、耐荷重が高く、成形性が良好なゴム板を用いるのが望ましい。前記ゴム板は、少なくとも前記脚部3の底面の全面に配置するのが好ましく、底面の周縁より外側に延在させ、この延在部を脚部3の側面に折り返すようにして配置するのがより好ましい。前記緩衝材9を設けることにより、比較的弱材令のインバートコンクリートに与える衝撃が緩和でき、インバート10の損傷が防止できるようになる。また、ゴム板の摩擦力によってインバート桟橋1のズレも防止できる。
【0033】
インバート10にかかる荷重を分散する観点から、図6に示されるように、前記脚部3の下面に、前記脚部3の底面より大面積の荷重分散板7を設けるのが好ましい。前記荷重分散板7を設けることにより、脚部3にかかる荷重が脚部3の底面に集中せず、これより大面積の荷重分散板7に分散して作用するため、インバート10に与える衝撃が緩和でき、インバート10の損傷が防止できるようになる。前記荷重分散板7をトンネル横断方向の中央側の脚部3Aに設ける場合、トンネル軸方向及びトンネル横断方向の外側に延在する大きさで形成するのが好ましく、トンネル横断方向の中央側には前記ズレ止め金具5が配置されているため延在させないのが好ましい。トンネル軸方向に対する片側の突出幅Tは、脚部3の幅Wに対して、0.5以上(T≧0.5W)、好ましくは0.5~2(T=0.5W~2W)とするのがよい。
【0034】
インバート10にかかる荷重を更に分散する観点から、図7に示されるように、前記荷重分散板7を、トンネル軸方向に隣り合う前記脚部3、3間に連続して設けることにより、前記脚部3、3…のトンネル軸方向の配置区間のほぼ全長に亘って連続して設けてもよい。前記荷重分散板7をトンネル軸方向に連続して設けることにより、インバート10にかかる荷重が更に分散できる。
【0035】
また、図8に示されるように、前記荷重分散板7が、トンネル横断方向に隣り合う脚部3A、3B間に連続して設けられるようにしてもよい。更に、前記荷重分散板7をトンネル軸方向及びトンネル横断方向の両方に連続して設けてもよい。
【0036】
前記インバート桟橋1は、トンネルの掘進に伴って順次妻側に移動させる必要がある。移動の際は、インバート桟橋1を解体して移動場所で再度組み立てる方式でもよいが、インバート桟橋1を組み立てたまま移動できる移動式の方が、施工の効率化の観点から好ましい。以下、この移動式とした場合について詳細に説明する。インバート桟橋1を組み立てたまま移動するには、所定の形態でインバート桟橋1に走行用の車輪部8が備えられるようにする。
【0037】
前記車輪部8の参考第1形態例としては、図9に示されるように、車両走行部2の下側に車輪部8が備えられ、前記車輪部8で支持した状態でインバート桟橋1がトンネル軸方向に移動できるようになっている。具体的には、ジャッキなどによって上下方向に伸縮可能に構成された車輪部8が、当初から予め車両走行部2の下側に備えられ、車両走行部2上を車両が走行するインバート桟橋1の運用時にはジャッキを収縮させて前記脚部3…でインバート桟橋1を支持し、インバート桟橋1の移動時にはジャッキを伸長させてこの車輪部8…でインバート桟橋1を支持するようになっている。これによって、インバート桟橋1を解体して移動し、再構築する手間が省け、インバート桟橋1を組み立てた状態のまま移動することができるようになる。
【0038】
前記車輪部8の本発明第2形態例として、図10図14に示されるように、後付けで取り付けられるようにしてもよい。
【0039】
この第2形態例に係る車輪部8によって前記インバート桟橋1をトンネル軸方向に移動する手順について、図12図14に基づいて説明すると、先ずはじめに、事前準備として、図10に示されるように、移動するユニット1aとそれ以外のユニット1aとの間の連結手段15を取り外しておく。更に、車両走行部2の中央の覆工板2aを取り外し、その中に作業員が入り込んで車両走行部2の下側で作業できるスペースを確保するとともに、前記ズレ止め金具5と脚部3Bとの間に配置されたサポート材13を取り外しておく。
【0040】
次いで、第1ステップとして、図12に示されるように、前記インバート桟橋1をジャッキ14によって持ち上げ、前記脚部3…をインバート10から浮かせる。前記ジャッキ14は、わずかな隙間に爪部を挿入して持ち上げることが可能な爪付きジャッキを用いるのが好ましい。このジャッキ14は、枕木を介してインバート10の上面に設置する。
【0041】
次に、第2ステップとして、図13に示されるように、前記車両走行部2の下側に、前記車輪部8を取り付ける。前記車輪部8は、車両走行部2の下側に延びる各支柱11の下端部に取り付ける。また、トンネル横断方向の外側の支柱11Bには、前記ズレ止め金具5に当接するガイドローラ12を取り付ける。
【0042】
その後、第3ステップとして、前記ジャッキ14をジャッキダウンさせて前記ジャッキ14を取り外し、インバート桟橋1を前記車輪部8で支持した状態で、インバート桟橋1をトンネル軸方向に移動する。
【0043】
しかる後、所定の移動場所で再びジャッキアップして前記車輪部8を取り外した後、ジャッキダウンして前記脚部3によってインバート桟橋1を支持する。
【0044】
前記車輪部8は、チルローラ等の重量物を積載して移動できるようにした装置であり、前記脚部3とは別に設けられた前記車両走行部2の下側に延びる支柱11の下端部に取り付けられている。
【0045】
前記車輪部8が取り付けられる支柱11は、トンネル横断方向の中央側及び外側それぞれに設けられた脚部3A、3Bに隣接して設けられている。具体的には、図12図14に示されるように、各脚部3A、3Bに対して、インバート桟橋1の幅方向内側位置にそれぞれ設けられている。
【0046】
前記ズレ止め金具5をトンネル横断方向の外側の脚部3Bに設けた場合、トンネル横断方向の外側の支柱11Bは、前記脚部3Bと、この脚部3Bのズレを防止するためのズレ止め金具5との間に設けるのが好ましい。これにより、図13及び図14に示されるように、前記支柱11Bのズレ止め金具5に対する対向面に、インバート桟橋1のトンネル軸方向への移動をガイドするため、前記ズレ止め金具5に当接するガイドローラ12を設けることができるようになる。前記ガイドローラ12で移動をガイドすることにより、インバート桟橋1がトンネル軸方向に直進しやすくなり、インバート桟橋1のスムーズな移動が可能になる。前記ズレ止め金具5と脚部3Bとの間に前記支柱11Bが配置されることにより、インバート桟橋1の運用時にこれらの間が離隔するため、図12に示されるように、インバート桟橋1の運用時には、ズレ止め金具5と脚部3Bとの間に、木材や鋼材などからなるサポート材13が配置される。
【0047】
前記インバート桟橋1の移動の際、傾斜するインバート上におけるトンネル軸方向への移動をガイドするため、図9に示されるように、前記ズレ止め金具5を、トンネル軸方向に隣り合う前記脚部3、3間に連続させるとともに、インバート桟橋1のほぼ全長に亘って連続して設けるのが好ましい。前記脚部3を浮かせた状態で前記車輪部8によってトンネル軸方向に移動させる際、前記ガイドローラ12が前記ズレ止め金具5に当接して転動することにより、又は前記脚部3…が前記ズレ止め金具5に直接摺接することにより、インバート桟橋1がトンネル横断方向の中央側にズレるのが防止でき、インバート桟橋1をトンネル軸方向に直進させやすくなる。
【0048】
移動の際には、連結された全てのユニット1a、1a…をまとめて、インバート桟橋1の全体を前記車輪部8によって支持した状態で移動してもよいし、インバート桟橋1の各ユニット1aを1つずつ、又は2つ~5つ程度の複数のユニット1a、1a…をまとめて、前記車輪部8によって支持した状態で移動してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…インバート桟橋、2…車両走行部、3…脚部、4…手摺り、5…ズレ止め金具、6…アンカーボルト、7…荷重分散板、8…車輪部、9…緩衝材、10…インバート、11…支柱、12…ガイドローラ、13…サポート材、14…ジャッキ、15…連結手段
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