(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸分泌刺激剤、ヒアルロン酸分泌刺激用化粧品、およびヒアルロン酸分泌刺激用医薬品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/98 20060101AFI20240617BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240617BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20240617BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K35/28
A61P17/18
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2022132330
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2020007954の分割
【原出願日】2020-01-22
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517331871
【氏名又は名称】医薬資源研究所株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508263604
【氏名又は名称】株式会社リアルメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(74)【代理人】
【識別番号】100174012
【氏名又は名称】小前 陽一
(72)【発明者】
【氏名】團 克昭
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526723(JP,A)
【文献】特開2014-172888(JP,A)
【文献】特開2013-237661(JP,A)
【文献】特開2003-267992(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0069301(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0037399(KR,A)
【文献】アンチエイジング株式会社, 細胞のリバースエイジング効果を持つエクソソームをDDSとして発展させた新素,FRAGRANCE JOURNAL,2019年12月,page.62-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C12N 5/00- 5/28
A61K 35/00-35/768
A61P 39/00-39/06
A61P 17/00-17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正常細胞に対して酸化ストレスを与える前または/および酸化ストレスを与えた後に投与することを特徴とする間葉系幹細胞由来のExosomeを含むヒアルロン酸分泌刺激剤。
【請求項2】
正常皮膚繊維芽細胞に添加することを特徴とする請求項1記載のヒアルロン酸分泌刺激剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヒアルロン酸分泌刺激剤を配合させた
ヒアルロン酸分泌刺激用化粧品。
【請求項4】
請求項1または2に記載のヒアルロン酸分泌刺激剤を配合させた
ヒアルロン酸分泌刺激用医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸分泌刺激剤、化粧品、および医薬品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒト等の酸素を用いてエネルギーを生成する生体においては、代謝の過程で活性酸素種(ROS)が産生する。生体は、ROSによる損傷に対して解毒・修復・防御等を行う生体が有する抗酸化機能を有しているが、この抗酸化機能による処理能力を上回るROSが産生すると、酸化ストレスが引き起こされる。
【0003】
また、1956年には、生体内で生成するフリーラジカルによってDNA、タンパク質、脂質が損傷するというフリーラジカル説が、Harmanらによって最初に提唱されている。フリーラジカルとしては酸化ストレスによるROSが挙げられ、酸化ストレスが各種老年疾患の主要な原因の一つとして挙げられている。
【0004】
酸化ストレスによるROSは、生体分子を損傷し、生体構造の変化、機能の低下を引き起こす老化の促進や老年疾患の発症、重篤化において重要な役割を果たしている(非特許文献1および2)。酸化ストレスによるROSが細胞老化を促進する機構については、詳細な検討がなされており、細胞内における様々な現象や各種分子の役割が明らかにされつつある。例えば、DNAが断片化されたり(例えば、非特許文献3)、テロメア領域の短縮が促進されたり(非特許文献4)、DNA修復のためにpoly(ADP-ribose)polymerase(PARP)が活性化され、NAD+が消費されたり(非特許文献5)、SIRT1の活性が低下する(非特許文献6)等の現象や役割が明らかになってきている。
【0005】
さらにヒト胎児肺線維芽細胞に対する酸化ストレスとして過酸化水素を用いた実験では、SIRT1の活性低下によってアセチル化p53が経時的に増加し、p53の下流分子であるp21の発現が誘導され、細胞周期の停止によって細胞老化が引き起こされる機構が強く示唆された(非特許文献7)。
【0006】
最近皮膚線維芽細胞の活性化にアクアポリン-1、アクアポリン-3(AQP-1、AQP-3)が関係していることが示されており、酸化ストレスによってAQP-1、AQP-3が減少することも明らかとなった(非特許文献8)。また過酸化水素がAQP-3によって細胞内へ輸送され、second messengerとしてcell signalingを制御していること、およびその調節不全が、皮膚におけるさまざまな病態に必須であることなどが明らかとなった(非特許文献9)。
【0007】
再生医療が進歩する中、自己間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell; MSC)を体外で培養増殖させた後、体内へ注入することで損傷部位の再生を促すことが報告されている(非特許文献10)。そして幹細胞に限らず、その分泌物であるExosomeが様々な疾患モデルにおいて治療成果をあげる報告も蓄積されてきているが(非特許文献11)、標的細胞の増殖促進またはアポトーシスの抑制などの現象を捉えたものが多く、メカニズムの解明には至っていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Kawanishi S, Hiraku Y, and Oikawa S. Mechanism of guanine-specific DNA damage by oxidative stress and its role in carcinogenesis and aging. Mutat Res, 488:65-76, 2001
【文献】Saxena S, Vekaria H, Sullivan PG, and Seifert AW. Connective tissue fibroblasts from highly regenerative mammals are refractory to ROS-induced cellular senescence. Nat Commun. 27;10(1):4400, 2019
【文献】Ben-Porath I, Weinberg RA. The signals and pathways activating cellular senescence. Int J Biochem Cell Biol 37:961-976, 2005
【文献】Richter T, von Zglinicki T. A continuous correlation between oxidative stress and telomere shortening in fibroblasts. Exp. Gerontol, 42:1039-1042, 2007
【文献】Mizutani H, Tada-Oikawa S, Hiraku Y, Oikawa S, Kijima M and Kawanishi S. Mechanism of apoptosis induced by a new topoisomerase inhibitor through the generation of hydrogen peroxide. J Biol Chem, 277:30684-30689, 2002
【文献】Burnet A, Sweeney LB, Sturgill JF, Chua KF, Greer PL, Lin Y, Tran H, Ross SE, Mostoslavsky R, Cohen HY, Hu LS, Cheng HL, Jedrychowski MP, Gygi SP, Sinclair DA, Alt FW and Greenberg ME. Stress-dependent regulation of FOXO transcription factors by the SIRT1 deacetylase. Science, 303:2011-2015, 2004
【文献】Furukawa A, Tada-Oikawa S, Kawanishi S and Oikawa S. H2O2accelerates0 cellular senescence by accumulation of acetylated p53 via decrease in the function of SIRT1 by NAD+ depletion. Cell Physiol Biochem, 20:45-54, 2007.
【文献】Xu Y, Yao H, Wang Q, Xu W, Liu K, Zhang J, Zhao H, Hou G. Aquaporin-3 Attenuates Oxidative Stress-Induced Nucleus Pulposus Cell Apoptosis Through Regulating the P38 MAPK Pathway. Cell Physiol Biochem. 50(5):1687-1697, 2018
【文献】Glady A, Tanaka M, Moniaga CS, Yasui M, Hara-Chikuma M. Involvement of NADPH oxidase 1 in UVB-induced cell signaling and cytotoxicity in human keratinocytes. Biochem. Biophys. Rep. 14:7-15, 2018
【文献】Kraitchman DL, Tatsumi M, et al. Dynamic imaging of allogeneic mesenchymal stem cells trafficking to myocardial infarction. Circulation. 112(10):1451-61, 2005
【文献】Yin K, Wang S, Robert Chunhua Zhao. Exosomes from mesenchymal stem/stromal cells: a new therapeutic paradigm. Biomarker Research. 7:1-8, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、間葉系幹細胞由来の物質を用いたヒアルロン酸分泌刺激剤、また、このヒアルロン酸分泌刺激剤を配合させた化粧品及び医薬品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、間葉系幹細胞由来のExosomeを用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、
(1) 酸化ストレスを与える前または/および酸化ストレスを与えた後に投与することを特徴とする間葉系幹細胞由来のExosomeを含むヒアルロン酸分泌刺激剤、
(2) 皮膚繊維芽細胞に添加することを特徴とする(1)記載のヒアルロン酸分泌刺激剤、
(3) (1)または(2)に記載のヒアルロン酸分泌刺激剤を配合させた化粧品、
(4) (1)または(2)に記載のヒアルロン酸分泌刺激剤を配合させた医薬品
が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、間葉系幹細胞由来の物質を用いたヒアルロン酸分泌刺激剤、またこのヒアルロン酸分泌刺激剤を配合させた化粧品及び医薬品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例において酸化ストレスを与えた皮膚線維芽細胞の細胞生存率を示すグラフである。
【
図2】実施例において酸化ストレスを与えた皮膚繊維芽細胞におけるアクアポリン-1のmRNAレベルを示すグラフである。
【
図3】実施例において酸化ストレスを与えた皮膚繊維芽細胞におけるアクアポリン-3のmRNAレベルを示すグラフである。
【
図4】実施例において酸化ストレスを与えた皮膚繊維芽細胞におけるヒアルロン酸量を示すグラフである。
【
図5】実施例において酸化ストレスを与えた皮膚線維芽細胞における細胞内シグナル伝達に関わる分子(SIRT1)のmRNAレベルを示すグラフである。
【
図6】実施例において酸化ストレスを与えた皮膚線維芽細胞における細胞内シグナル伝達に関わる分子(P53)のmRNAレベルを示すグラフである。
【
図7】実施例において酸化ストレスを与えた皮膚線維芽細胞における細胞内シグナル伝達に関わる分子(P21)のmRNAレベルを示すグラフである。
【
図8】実施例において酸化ストレスを与えた皮膚線維芽細胞における老化細胞の存在量を示すグラフである。
【
図9】実施例において酸化ストレスを与えた皮膚線維芽細胞内における活性酸素種の産生量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の抗酸化ストレス剤について説明する。本発明の抗酸化ストレス剤は、間葉系幹細胞由来のExosomeを含む。
【0015】
(間葉系幹細胞)
間葉系幹細胞は、骨細胞、心筋細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞など、間葉系に属する一種以上の細胞への分化能を有する多能性幹細胞である。また、間葉系幹細胞は、この分化能を保持したまま増殖することができる。また、間葉系幹細胞は、間葉系組織を有する全ての組織に存在すると考えられ、例えば、脂肪組織、臍帯、臍帯血、骨髄、胎盤、歯髄、羊膜、骨格筋、骨膜、子宮内膜等に間葉系幹細胞は存在する。本発明においては、間葉系幹細胞として、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、胎盤由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞等、特に限定することなく用いることができる。
【0016】
なお、本発明において、間葉系幹細胞は、ヒト由来(自家細胞)であってもよいし、異種由来(他家細胞)であってもよい。異種由来の間葉系幹細胞の種として、牛、馬、豚、犬、猫、マウス、ラット、羊等が挙げられる。
また、自家細胞を用いる場合、自己間葉系細胞を用いてもよいし、他人の間葉系幹細胞を用いてもよい。
【0017】
本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系幹細胞を含む細胞集団であってもよく、細胞集団において間葉系幹細胞が好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは98%以上含まれる。
【0018】
なお、本発明において、間葉系幹細胞を培養して用いてもよいが、間葉系幹細胞の培養方法としては、間葉系幹細胞の多能性を維持する観点から、牛やヒト、馬等の血清を用いない無血清培地により培養することが好ましい。また、この無血清培地は、フェノールレッドをも含まないことが好ましい。
【0019】
ここで、血清を含む培地を用いると、間葉系幹細胞に対して刺激が付与されることにより分化誘導がおこり多能性を有する間葉系幹細胞ではなく、組織幹細胞の状態へ変化する虞がある。そのため、本発明においては、無血清培地を用いることにより、培養時における間葉系幹細胞の分化誘導を防ぐことができる。
【0020】
(Exosomeの抽出)
Exosomeの抽出方法としては、超遠心分離法、限外濾過法、ゲル濾過法、HPLC、抽出用試薬を用いる方法、Exosomeをトラップできるように処理されたろ紙を用いる方法等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、例えば、皮膚線維芽細胞に対して間葉系幹細胞由来Exosomeを添加することが好ましいが、皮膚繊維芽細胞に間葉系幹細胞由来のExosomeを添加するタイミングは、酸化ストレスを加える前であっても後であってもよい。即ち、本発明の抗酸化ストレス剤は、酸化ストレスに対する予防効果及び酸化ストレスを受けた後の治療・回復効果を有する。換言すると、本発明の抗酸化ストレス剤は、酸化ストレスに由来する活性酸素種(ROS)の産生及び細胞老化促進機構に対する予防または治療効果を有する。
また、本発明の抗酸化ストレス剤は、肌細胞の保湿効果や抗加齢作用効果を有する。
【0022】
このように抽出された間葉系幹細胞由来のExosomeを化粧品に配合することができる。化粧品としては、化粧水、乳液、洗顔料、クレンジング、美容液、クリーム、ファンデーション、アイブロー、マスカラ、アイシャドウ、アイライン、口紅、グロス、チーク、白粉、マニキュア等が挙げられる。また、化粧品の形態としては、液体、クリーム、固体、スティック、粉末等の形態を採用することができる。
【0023】
また、本発明の抗酸化ストレス剤は、肌細胞の保湿効果や抗加齢作用効果を有するため、これらを目的とした医薬品に配合させることもできる。医薬品としては、予防薬、治療薬のいずれにも用いることができる。
【0024】
医薬品に配合させる場合には、本発明の抗酸化ストレス剤を単独で用いてもよいし、又は一般に製剤上許容される添加剤と共に混和し、製剤化してもよい。また、投与形態としては、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、エキス剤等の経口剤を用いた投与形態または、注射剤、液剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤、パップ剤、ローション剤等の非経口剤を用いた投与形態等が挙げられるが、特に制限はなく、治療や予防の目的等に応じて適宜選択することができる。
【0025】
また、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、散剤の場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の添加剤を含有させることができる。賦形剤としては、デンプン、カルボキシメチルセルロース、白糖、デキストリン、コーンスターチ等を挙げることができる。
【0026】
結合剤としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが挙げられる。
【0027】
崩壊剤としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントが挙げられる。
【0028】
滑沢剤としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0029】
また、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤の場合には、水や植物油等の一般的に用いられる不活性な希釈剤の他、着色剤、矯味剤、着香剤等を添加剤として含有させてもよい。
【0030】
また、注射剤の場合には、懸濁液、乳濁液、用時溶解剤等の添加剤を含有させることができる。また、軟膏剤、坐剤の場合には、脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、ろう、樹脂、プラスチック、基剤、グリコール類、高級アルコール、水、乳化剤、懸濁化剤等を添加剤として含有させることができる。また、パップ剤の場合にはグリセリン、水、水溶性高分子、吸水性高分子等を添加物として含有させることができる。また、ローション剤の場合には、溶剤、乳化剤、懸濁化剤等を添加剤として含有させることができる。
【0031】
また、本発明の抗酸化ストレス剤を、食品や飲料等に配合させてもよい。食品としては、パン類、麺類、菓子類、食肉加工品、魚介加工品、冷凍食品、ゼリー類、アイスクリーム類、乳製品、各種調味料等が挙げられる。また、一般食品の他、特定保健用食品、医薬部外品、健康食品、サプリメントにも配合させることができる。飲料としては、清涼飲料水、乳飲料、酒類、茶、紅茶飲料、コーヒー、果汁飲料、炭酸飲料、ミネラルウォーター類、果実・野菜飲料等が挙げられる。
また、本発明の抗酸化ストレス剤を配合させた食品や飲料を、錠剤、カプセル剤、シロップ等の経口投与製剤と同様の形態としてもよい。
【0032】
また、本発明の抗酸化ストレス剤を配合させた食品や飲料を製造する際に、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて、甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、乳化剤、膨張剤、酸味料、光沢剤、香料等の添加剤;溶剤;油を添加してもよい。これらの添加剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記食品や飲料中に配合される抗酸化ストレス剤の割合は、使用目的に応じて適宜調整することができるが、上記食品や飲料中に配合される抗酸化ストレス剤の割合は、好ましくは0.0001~80重量%、より好ましくは0.003~50重量%、さらに好ましくは0.005~30重量%である。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における部および%は、特記しない限り重量基準である。また、実施例の結果を示すグラフ(
図1~6)において、標準偏差の表示も行い、統計的な有意性の判断は分散分析(ANOVA)により行い、P値が0.05未満である場合を統計的に有意とみなした。
【0035】
(間葉系幹細胞の培養)
ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞:Human Mesenchymal Stem Cells from Adipose Tissue (hMSC-AT)(C-12977)と専用培地(C-28009)及び、正常ヒト皮膚線維芽細胞(小児):Normal Human Dermal Fibroblasts (NHDF), juvenile foreskin(C-12300)と専用培地(C-23020)、はすべてPromo Cell社から購入して使用した。
【0036】
各細胞は37℃、5%CO2の条件下のインキュベーター内で培養して、実験に用いた。また、以下において、特に断りのない限り、インキュベーションはこの条件にて行った。
【0037】
(生化学試薬)
過酸化水素水など生化学試薬は和光純薬工業株式会社より購入した。
【0038】
(Exosomeの抽出、定量及び細胞への添加)
間葉系幹細胞、線維芽細胞はそれぞれCulture Flaskを用いて、7日間培養し、80%程度コンフルエントになった状態の培養上清を回収し、遠心(12,000rpm、15分)によって細胞のデブリスを除去した上澄みをExosomeの単離まで4℃で保存した。
【0039】
また、培養液中に含まれるExosomeの単離にはmiRCURY Exosome Isolation Kit (Product#: 300102; EXIQON製)を用いた。単離されたExosome量はCD9 / CD63 ELISA キット(ヒト由来Exosome定量用)を用いて測定した。
単離したExosomeは1/100量で(最終濃度;100pg/ml)培養液に添加して、4時間インキュベーションした。
【0040】
(細胞への酸化ストレス処理及びExosome処理)
0.2 mM過酸化水素水を添加した培地で、皮膚線維芽細胞を2時間インキュベーションしたのち、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄除去し、通常の培地に入れ替えてインキュベーションを継続した。その後、48時間経過後に細胞または培養液を回収し、細胞生存率の測定を行った。結果を
図1のH2O2-NHDFとして示した。
【0041】
また、0.2mM過酸化水素水を添加した培地で、皮膚線維芽細胞を2時間インキュベーションしたのち、間葉系幹細胞由来Exosomeまたは皮膚線維芽細胞由来Exosomeをそれぞれ添加し、4時間インキュベーションし、PBSで洗浄除去し、通常の培地に入れ替えて培養を継続した。その後、48時間経過後に細胞または培養液を回収し、細胞生存率の測定を行った。結果を間葉系幹細胞由来Exosomeを用いたものについては、
図1の「H2O2 / MSC-Exo.」として、皮膚線維芽細胞由来Exosomeを用いたものについては、
図1の「H2O2 / NHDF-Exo.」としてそれぞれ示した。
【0042】
また、あらかじめ間葉系幹細胞由来Exosomeまたは皮膚線維芽細胞由来Exosomeをそれぞれ添加した皮膚線維芽細胞を4時間インキュベーションしたのち、0.2mM過酸化水素水で2時間処理した。その後、PBSで洗浄除去し、さらにインキュベーションを行い、48時間経過後に細胞または培養液を回収し、細胞生存率の測定を行った。結果を間葉系幹細胞由来Exosomeを用いたものについては、
図1の「MSC-Exo. / H2O2」として、皮膚線維芽細胞由来Exosomeを用いたものについては、
図1の「NHDF-Exo. / H2O2」としてそれぞれ示した。
【0043】
なお、
図1には皮膚線維芽細胞にExosomeも過酸化水素水も加えずに、培地にてX時間インキュベーションした結果(Nontreat-NHDF)、皮膚線維芽細胞に過酸化水素水を加えずに間葉系幹細胞由来Exosomeを添加し、培地にて48時間インキュベーションした結果(MSC-Exo.)及び皮膚線維芽細胞に過酸化水素水を加えずに皮膚線維芽細胞由来Exosomeを添加し、培地にて48時間インキュベーションした結果(NHDF-Exo.)についても示した。
【0044】
図1に示すように、皮膚線維芽細胞にExosomeを加えた場合(MSC-Exo.およびNHDF-Exo.)には、生存率への影響は特にみられなかったが、過酸化水素水のみを加えた場合(H2O2-NHDF)では、細胞生存率は88%となった。同様の酸化ストレスを与えた後にExosomeを治療的に添加した場合(H2O2 / MSC-Exo.およびH2O2 / NHDF-Exo.)には、過酸化水素水のみを加えた場合(H2O2-NHDF)と比較して細胞生存率に大きな変動は見られなかった。
一方、予め間葉系幹細胞由来Exosomeを添加し、その後上記と同様の酸化ストレスを与えた場合(MSC-Exo. / H2O2)の細胞生存率は、有意な上昇を示し、その上昇幅は予め皮膚繊維芽細胞由来Exosomeを添加し、その後上記と同様の酸化ストレスを与えた場合(NHDF-Exo. / H2O2)と比較しても有意な差であった。
【0045】
(皮膚線維芽細胞の活性化に関わるアクアポリンの分泌刺激効果の検討)
上記「細胞への酸化ストレス処理及びExosome処理」における処理と同様の処理を行い、アクアポリン-1(AQP-1)およびアクアポリン-3(AQP-3)の量を測定し、結果をそれぞれ
図2および
図3に示した。アクアポリンの分泌刺激効果の検討については、皮膚繊維芽細胞に過酸化水素水を予め加えて、その後、間葉系幹細胞由来Exosomeを添加したもの(H2O2 / MSC-Exo.)、皮膚繊維芽細胞に過酸化水素水を予め加えて、その後、皮膚線維芽細胞由来Exosomeを加えたもの(H2O2 / NHDF-Exo.)、皮膚線維芽細胞に間葉系幹細胞由来Exosomeを添加し、その後、過酸化水素水を加えたもの(MSC-Exo. / H2O2)及び、皮膚線維芽細胞に皮膚線維芽細胞由来Exosomeを添加し、その後、過酸化水素水を加えたもの(NHDF-Exo. / H2O2)について測定を行った。また、皮膚線維芽細胞にExosomeも過酸化水素水も添加しないもの(Nontreat-NHDF)についても測定を行った。
なお、AQP-1および、AQP-3の測定としては、定量PCR法を用いた。
【0046】
定量PCR法の具体的な手順としては以下のように行った。回収した検体から、Trizol試薬を用いてTotal RNAを抽出し、55℃で10分間逆転写を行った。PCR反応液はLuna Universal One-Step Reaction Mix (2x)10μL、 Luna WarmStart(登録商標)RT Enzyme Mix 1μL、Total RNA溶液2μL、primer pair mix 1.6μL(各プライマーにつき0.4μM)及び水5.4μLからなる20μLを用い、反応は95℃にて1分を1サイクル、さらに95℃にて10秒のサイクルを45サイクルおよび60℃にて30秒のサイクルを50サイクルの条件にて行った。比較Ct法(ΔΔCt法)より相対定量を行った。ΔΔCtの差が2より大きい場合に有意差があると判断することができる。なお、各種ターゲット及びハウスキーピング遺伝子(GAPDH)について、所定のプライマーをそれぞれ用いた。
【0047】
図2および
図3に示すように、皮膚線維芽細胞に酸化ストレスを与える前または後に間葉系幹細胞由来Exosomeを与えた場合(MSC-Exo. / H2O2およびH2O2 / MSC-Exo.)には、AQP-1およびAQP-3のmRNAレベルが修復することが示された。この現象は、酸化ストレスを与える前に間葉系幹細胞由来Exosomeを添加した場合および酸化ストレスを与えた後に間葉系幹細胞由来Exosomeを添加した場合のどちらにも認められた。さらに、間葉系幹細胞由来Exosomeを添加した場合(MSC-Exo. / H2O2およびH2O2 / MSC-Exo.)の方が、皮膚線維芽細胞由来Exosomeを添加した場合(NHDF-Exo. / H2O2およびH2O2 / NHDF-Exo.)よりも強い修復効果が認められた。
【0048】
(皮膚線維芽細胞の活性化に関わるヒアルロン酸の分泌刺激効果の検討)
上記「細胞への酸化ストレス処理及びExosome処理」における処理と同様の処理を行い、ヒアルロン酸の量を測定し、結果を
図4に示した。なお、測定は、細胞培養上清中のヒアルロン酸をELISA Kit , Hyaluronan Enzyme-Linked Immunosorbent Assay kit ( R&D systems.、 Inc. Mineapolis, MN 55413 USA)を用いて測定した。
【0049】
ヒアルロン酸の分泌刺激効果の検討については、皮膚繊維芽細胞に過酸化水素水を先に加えて、その後、間葉系幹細胞由来Exosomeを添加したもの(H2O2 / MSC-Exo.)、皮膚繊維芽細胞に過酸化水素水を先に加えて、その後、皮膚線維芽細胞由来Exosomeを加えたもの(H2O2 / NHDF-Exo.)、皮膚線維芽細胞に間葉系幹細胞由来Exosomeを添加し、その後、過酸化水素水を加えたもの(MSC-Exo. / H2O2)及び、皮膚線維芽細胞に皮膚線維芽細胞由来Exosomeを添加し、その後、過酸化水素水を加えたもの(NHDF-Exo. / H2O2)について測定を行った。また、皮膚線維芽細胞にExosomeを添加せず、過酸化水素水を加えたもの(H2O2-NHDF)及び皮膚線維芽細胞にExosomeも過酸化水素も加えないもの(Nontreat-NHDF)についても測定を行った。
【0050】
図4に示すように、皮膚線維芽細胞に酸化ストレスのみを与えた場合(H2O2-NHDF)には、線維芽細胞から分泌されるヒアルロン酸量が減少することが示された。その酸化ストレスを与える前または後に間葉系幹細胞由来Exosomeを与えた場合(MSC-Exo. / H2O2およびH2O2 / MSC-Exo.)には、ヒアルロン酸量が回復する傾向にあることが示された。また、間葉系幹細胞由来Exosomeを添加した場合(MSC-Exo. / H2O2およびH2O2 / MSC-Exo.)の方が、皮膚線維芽細胞由来Exosomeを添加した場合(NHDF-Exo. / H2O2およびH2O2 / NHDF-Exo.)よりも強い回復効果が認められた。
【0051】
(酸化ストレスによる細胞老化の誘導に対する効果の検討)
上記「細胞への酸化ストレス処理及びExosome処理」における処理と同様の処理を行い、細胞内シグナル伝達にかかわる分子(SIRT1、P53及びP21)のmRNAレベルを測定し、結果をそれぞれ
図5~7に示した。また、老化細胞が染色される状態を顕微鏡下に観察し、蛍光量を数値化して、
図8に示した。
【0052】
酸化ストレスによる細胞老化の誘導に対する効果の検討については、皮膚繊維芽細胞に過酸化水素水を先に加えて、その後、間葉系幹細胞由来Exosomeを添加したもの(H2O2 / MSC-Exo.)、皮膚繊維芽細胞に過酸化水素水を先に加えて、その後、皮膚線維芽細胞由来Exosomeを加えたもの(H2O2 / NHDF-Exo.)、皮膚線維芽細胞に間葉系幹細胞由来Exosomeを添加し、その後、過酸化水素水を加えたもの(MSC-Exo. / H2O2)及び、皮膚線維芽細胞に皮膚線維芽細胞由来Exosomeを添加し、その後、過酸化水素水を加えたもの(NHDF-Exo. / H2O2)について測定を行った。また、皮膚線維芽細胞にExosomeを添加せず、過酸化水素水を加えたもの(H2O2-NHDF)についても測定を行った。
【0053】
また、蛍光量の数値化(
図8)については、皮膚線維芽細胞にExosomeも過酸化水素も加えないもの(Nontreat-NHDF)についても測定を行った。
【0054】
ここで、SIRT1、P53及びP21の量の測定については、定量PCR法を用いた。定量PCR法については、上記「皮膚線維芽細胞の活性化に関わるアクアポリンの分泌刺激効果の検討」において示した手順により行った。なお、SIRT1およびP53の量は、酸化ストレスによる刺激を与えてから4時間後の測定結果を示すが、P21の量については4時間後の測定結果に変動はみられなかった。そのため、P21の量は、酸化ストレスによる刺激を与えてから16時間後の測定結果を示した。これはP53が蓄積されてから、P21へシグナルが伝達され作動するまでに、遅れが発生するためと考えられる。
【0055】
また、蛍光量の測定については、酸化ストレスを与えた皮膚線維芽細胞に各種Exosomeを継続的に添加し、培養、継代を繰り返しながら、細胞老化を測定するためにCellular Senescence detection Kit -SPiDER-β Gal Kit(SG03; DOJINDO :Kumamoto, JAPAN)により老化細胞が染色される状態を顕微鏡下に観察した。取得した画像から老化細胞の存在量を蛍光量として数値化して評価した。
【0056】
図5~7に示すように、皮膚線維芽細胞に酸化ストレスのみを与えた場合(H2O2-NHDF)には、酸化ストレスによってSIRT1のmRNAレベルが減少することが示された。一方、その酸化ストレスを与える前または後に間葉系幹細胞由来Exosomeを与えた場合(MSC-Exo. / H2O2およびH2O2 / MSC-Exo.)には、SIRT1のmRNAレベルが回復する効果が認められた。
また、間葉系幹細胞由来Exosomeを添加した場合(MSC-Exo. / H2O2およびH2O2 / MSC-Exo.)の方が、皮膚線維芽細胞由来Exosomeを添加した場合(NHDF-Exo. / H2O2およびH2O2 / NHDF-Exo.)よりも強い回復効果が認められた。
【0057】
SIRT1の活性低下によってP53が増加し、P53の下流分子であるP21の発現は4時間では変化は認めなかったが(図示せず)、16時間後には誘導された。この場合のExosome添加の効果に関して、酸化ストレスを与えた後に間葉系幹細胞由来Exosomeを添加した場合(H2O2 / MSC-Exo.)には、酸化ストレスの抑制についての強い効果はみられなかったが、予め間葉系幹細胞由来Exosomeを添加し、その後上記と同様の酸化ストレスを与えた場合(MSC-Exo. / H2O2)には、酸化ストレスに対して抵抗を示す働きが認められた。
【0058】
また、
図8に示すように、皮膚線維芽細胞に酸化ストレスのみを与えた場合(H2O2-NHDF)には、酸化ストレスによって老化細胞が増加し、蛍光プローブ量は正常細胞(Nontreat-NHDF)の613に比較して4730に上昇した。その酸化ストレスを与える前または後にそれぞれ皮膚線維芽細胞由来のExosomeを添加した場合(NHDF-Exo. / H2O2およびH2O2 / NHDF-Exo.)には、有意の酸化ストレスの抑制効果はみられなかったが(前処理;4381、後処理;4567)、間葉系幹細胞由来Exosomeを添加した場合(MSC-Exo. / H2O2およびH2O2 / MSC-Exo.)ではExosomeを添加するタイミングが酸化ストレスを与える前であっても、後であっても、有意の酸化ストレス抑制効果が認められた(前処理;3403、後処理;3730)。
【0059】
(細胞内の活性酸素種(ROS)産生の測定)
上記「細胞への酸化ストレス処理及びExosome処理」における処理と同様の処理を行い、その後、それぞれの検体について、PBSで洗浄したのち、1M蛍光プローブ(CM-H2DCFDA (Molecular Probes Inc., Eugene, OR)を加え、37℃で60分インキュベーションした。そして、細胞内の活性酸素種(ROS)の産生量をfluorescence intensity using the micro plate reader (SYNERGY/HT, BioTek, Japan)を用いて測定し、蛍光量を数値化した。結果を
図9に示した。
【0060】
細胞内の活性酸素種(ROS)産生の測定については、皮膚繊維芽細胞に過酸化水素水を予め加えて、その後、間葉系幹細胞由来Exosomeを添加したもの(H2O2 / MSC-Exo.)、皮膚繊維芽細胞に過酸化水素水を予め加えて、その後、皮膚線維芽細胞由来Exosomeを加えたもの(H2O2 / NHDF-Exo.)、皮膚線維芽細胞に間葉系幹細胞由来Exosomeを添加し、その後、過酸化水素水を加えたもの(MSC-Exo. / H2O2)及び、皮膚線維芽細胞に皮膚線維芽細胞由来Exosomeを添加し、その後、過酸化水素水を加えたもの(NHDF-Exo. / H2O2)について測定を行った。また、皮膚線維芽細胞にExosomeを添加せず、過酸化水素水を加えたもの(H2O2-NHDF)及び皮膚線維芽細胞にExosomeも過酸化水素も加えないもの(nontreat-NHDF)についても測定を行った。
【0061】
図9に示すように、皮膚線維芽細胞に酸化ストレスのみを与えた場合(H2O2-NHDF)には、酸化ストレスによって細胞内の蛍光プローブ量は正常細胞(nontreat-NHDF)の2310に比較して16300に上昇した。その酸化ストレスを与える前または後にそれぞれ皮膚線維芽細胞由来のExosomeを添加した場合(NHDF-Exo. / H2O2およびH2O2 / NHDF-Exo.)には、有意の酸化ストレスの抑制効果はみられなかったが(前処理;13960、後処理;14670)、間葉系幹細胞由来Exosomeを添加した場合(MSC-Exo. / H2O2およびH2O2 / MSC-Exo.)ではExsomeを添加するタイミングが酸化ストレスを与える前であっても、後であっても、有意の酸化ストレス抑制効果が認められた(前処理;11230、後処理;12600)。